(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蓄電モジュールは、相互に直列接続された複数の蓄電セルを含み、前記蓄電セルの各々は、蓄電セル本体、及び前記蓄電セル本体から引き出された一対の電極タブを含み、前記電極タブを通して前記蓄電セルに充放電電流が流れ、
前記第1の温度センサは、少なくとも1つの前記蓄電セルの少なくとも一方の前記電極タブの温度を測定する請求項1に記載の蓄電装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、実施例による建設機械の側面図を示す。下部走行体10に、旋回機構11を介して上部旋回体12が搭載されている。上部旋回体12にブーム13、アーム15、及びバケット17が連結されている。ブーム13、アーム15、及びバケット17は、それぞれブームシリンダ14、アームシリンダ16、及びバケットシリンダ18により油圧駆動される。ブーム13、アーム15、及びバケット17により、掘削用のアタッチメントが構成される。なお、掘削用のアタッチメントの他に、破砕用のアタッチメント、リフティングマグネット用のアタッチメント等を連結することも可能である。
【0012】
図2に、
図1に示した建設機械のブロック図を示す。
図2において、機械的動力系を二重線で表し、高圧油圧ラインを太い実線で表し、パイロットラインを破線で表し、電気駆動系及び制御系を細い実線で表す。
【0013】
エンジン20の駆動軸がトルク伝達機構21の入力軸に連結されている。エンジン20には、ディーゼルエンジン等の内燃機関が用いられる。電動発電機22の駆動軸が、トルク伝達機構21の他の入力軸に連結されている。電動発電機22は、電動(アシスト)運転と、発電運転との双方の運転動作を行うことができる。トルク伝達機構21の出力軸に、メインポンプ25の駆動軸が連結されている。
【0014】
電動発電機22がアシスト運転を行う場合には、電動発電機22で発生する動力がトルク伝達機構21を介してメインポンプ25に伝達される。これにより、エンジン20に加わる負荷が軽減される。電動発電機22が発電運転を行う場合には、エンジン20で発生する動力がトルク伝達機構21を介して電動発電機22に伝達される。
【0015】
メインポンプ25は、高圧油圧ライン26を介して、コントロールバルブ27に油圧を供給する。コントロールバルブ27は、運転者からの指令により、油圧モータ19A、19B、ブームシリンダ14、アームシリンダ16、及びバケットシリンダ18に油圧を分配する。油圧モータ19A及び19Bは、それぞれ下部走行体10(
図1)に備えられた左右の2本のクローラを駆動する。
【0016】
電動発電機22がアシスト運転されている期間は、必要な電力が、蓄電回路40からインバータ41を通して電動発電機22に供給される。電動発電機22が発電運転されている期間は、電動発電機22よって発電された電力が、インバータ41を通して蓄電回路40に供給される。これにより、蓄電回路40内の蓄電モジュール42が充電される。
【0017】
旋回電動機45が、インバータ43によって駆動され、力行動作及び回生動作の双方の運転を行うことができる。旋回電動機45の力行動作中は、蓄電回路40からインバータ43を介して旋回電動機45に電力が供給される。旋回電動機45が、減速機46を介して旋回機構11(
図1)を駆動する。回生動作時には、上部旋回体12(
図1)の回転運動が、減速機46を介して旋回電動機45に伝達されることにより、旋回電動機45が回生電力を発生する。発生した回生電力は、インバータ43を介して蓄電回路40に供給される。これにより、蓄電回路40内の蓄電モジュール42が充電される。
【0018】
レゾルバ47が、旋回電動機45の回転軸の回転方向の位置を検出する。レゾルバ47の検出結果が、制御装置50に入力される。旋回電動機45の運転前と運転後における回転軸の回転方向の位置を検出することにより、旋回角度及び旋回方向が導出される。
【0019】
メカニカルブレーキ48が、旋回電動機45の回転軸に連結されており、機械的な制動力を発生する。メカニカルブレーキ48の制動状態と解除状態とは、制御装置50からの制御を受け、電磁的スイッチにより切り替えられる。
【0020】
パイロットポンプ30が、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生する。発生したパイロット圧は、パイロットライン31を介して操作装置35に供給される。操作装置35は、レバーやペダルを含み、運転者によって操作される。操作装置35は、パイロットライン31から供給される1次側の油圧を、運転者の操作に応じて、2次側の油圧に変換する。2次側の油圧は、油圧ライン32を介してコントロールバルブ27に伝達されると共に、他の油圧ライン33を介して圧力センサ37に伝達される。
【0021】
圧力センサ37で検出された圧力の検出結果が、制御装置50に入力される。圧力の検出結果により、制御装置50は、下部走行体10(
図1)、旋回電動機45、ブーム13、アーム15、及びバケット17(
図1)の操作の状況を検知することができる。インバータ41、43、及び蓄電回路40は、制御装置50により制御される。
【0022】
図3に、実施例による建設機械に搭載された蓄電回路40、制御装置50、及び蓄電回路40の負荷の概略図を示す。
【0023】
蓄電回路40が、蓄電モジュール42、DC−DCコンバータ60、及びDCバスライン61を含む。蓄電モジュール42は、相互に直列接続された複数の蓄電セル420、及びコールドプレート421を含む。
【0024】
蓄電モジュール42が、DC−DCコンバータ60を介してDCバスライン61に接続されている。DCバスライン61に、インバータ41、43が接続されている。DC−DCコンバータ60は、制御装置50によって制御されることにより、蓄電モジュール42を充放電させる。蓄電モジュール42の放電時に、DC−DCコンバータ60は、蓄電モジュール42の端子間電圧を昇圧し、DCバスライン61に接続されているインバータ41、43に電力を供給する。蓄電モジュール42の充電時には、DC−DCコンバータ60は、インバータ41、43から出力される電力を、DCバスライン61を介して蓄電モジュール42に供給する。
【0025】
コールドプレート421が蓄電モジュール42に熱的に結合している。さらに、コールドプレート421は、冷却媒体流路66を介して放熱器67に接続されている。冷却媒体流路66に挿入された循環ポンプ68が、冷却媒体、例えば水を、コールドプレート421と放熱器67との間で循環させる。ファン69が放熱器67に外気を送り込む。
【0026】
電流センサ63が、蓄電モジュール42の充放電電流を測定する。電圧センサ64が、蓄電モジュール42の端子間電圧を測定する。第1の温度センサ62が、蓄電モジュール42の温度測定点620の温度(以下、測定点温度Tpという。)を測定する。第2の温度センサ70が、外気温に依存する温度(以下、外気依存温度Taという。)を測定する。例えば、第2の温度センサ70は、放熱器67に流入する空気の温度、エンジン20(
図2)の吸気温等を測定する。これらの測定結果が、制御装置50に入力される。
【0027】
図4に、蓄電モジュール42(
図3)を構成する蓄電セル420の斜視図を示す。蓄電セル420は、板状の蓄電セル本体4201と、一対の電極タブ4202とを含む。蓄電セル420として、例えばリチウムイオンキャパシタが用いられる。蓄電セル420として、リチウムイオンキャパシタの他に、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ等を用いることも可能である。蓄電セル本体4201は、板状の外形を有し、その平面形状は、ほぼ長方形である。蓄電セル本体4201の対向する2つの縁から、それぞれ電極タブ4202が引き出されている。電極タブ4202を通して、蓄電セル420の充放電が行われる。
【0028】
第1の温度センサ62(
図3)の温度測定点620が、少なくとも一方の電極タブ4202の表面に設定されている。従って、第1の温度センサ62で測定される測定点温度Tpは、電極タブ4202の温度に相当する。
【0029】
図5に、蓄電モジュール42が収容された蓄電装置の断面図を示す。上方に向かって開放された下部筐体4205の開口部が、蓋4206で塞がれている。下部筐体4205と蓋4206の間に、蓄電モジュール42が収容されている。
【0030】
蓄電モジュール42は、複数の蓄電セル420及び複数の伝熱板423を含む。蓄電セル420と伝熱板423とが、例えば、1枚ずつ交互に積み重ねられている。なお、2枚の蓄電セル420に対して1枚の伝熱板423を配置してもよい。複数の蓄電セル420は、電極タブ4202同士を接続することにより、相互に直列接続されている。複数の蓄電セル420及び複数の伝熱板423からなる積層構造体の両端に、それぞれ加圧板425が配置されている。加圧板425により、積層構造体に圧縮力が印加される。相互に隣り合う2枚の蓄電セル420が、紙面の手前側の電極タブ4202、及び紙面の奥側の電極タブ4202(
図5には現れていない)により相互に接続されている。
【0031】
温度測定点620(
図4)は、必ずしも全ての蓄電セル420に設ける必要はない。例えば、蓄電モジュール42に含まれる一部の蓄電セル420に温度測定点620を設けてもよい。この場合、例えば、複数の温度測定点620で測定された温度の平均値を、測定点温度Tpとして採用すればよい。
【0032】
伝熱板423の下側及び上側の端面が、それぞれ下部筐体4205及び蓋4206に接触しており、伝熱板423が下部筐体4205及び蓋4206に熱的に結合している。蓋4206の上板に流路4208が設けられている。流路4208は、冷却媒体流路66(
図3)に接続される。蓋4206の上板が、コールドプレート421(
図3)を兼ねている。
【0033】
蓄電セル本体4201の内部で発生した熱が、伝熱板423を通してコールドプレート421まで伝達される。電極タブ4202においても、充放電電流が流れることによってジュール熱が発生する。電極タブ4202で発生した熱は、蓄電セル本体4201、及び伝熱板423を通ってコールドプレート421に伝達される。
【0034】
図6に、測定点温度Tp(
図3)の測定値と、蓄電モジュール42の内部抵抗の測定値Rmとの関係を示す。横軸は、測定点温度Tpを単位「℃」で表し、縦軸は内部抵抗の測定値Rmを任意単位で表す。
【0035】
次に、蓄電モジュール42の内部抵抗の測定方法の一例について説明する。まず、電圧センサ64で蓄電モジュール42の開放電圧Voを測定する。その後、蓄電モジュール42を放電させ、電流センサ63で放電電流Iを測定すると同時に、電圧センサ64で蓄電モジュール42の端子間電圧Vrを測定する。内部抵抗Riは、以下の計算式により、算出される。
Ri=(Vr−Vo)/I ・・・(1)
上述の計算式(1)のように、内部抵抗Riは、開放電圧Vo、放電電流I、及び放電時の端子間電圧Vrを用いて算出することができる。電流センサ63及び電圧センサ64は、内部抵抗を算出するための物理量を測定する内部抵抗測定器としての機能を有する。充電電流Iと端子間電圧Vr、及び開放電圧Voとに基づいて、内部抵抗Riを算出することも可能である。
【0036】
図6は、放電電流Iを100Aに調整して測定された内部抵抗Riを示す。
図6に示したように、内部抵抗の測定値Rmは、測定点温度Tpに依存する。内部抵抗の測定値Rmから蓄電モジュール42の劣化度を推定するためには、測定点温度Tpの影響を排除しなければならない。例えば、劣化度の指標として用いる内部抵抗の測定は、蓄電モジュール42の測定点温度Tpを、ある基準温度(例えば20℃)に維持した状態で行うことが好ましい。または、任意の温度で内部抵抗を測定した後に、測定時の温度と基準温度との差に基づいて、内部抵抗の測定値Rmを、基準温度相当の値に補正してもよい。
【0037】
図6に示されているように、測定点温度Tpが20℃よりも低い領域では、温度変化に対する内部抵抗の変化量が大きい。これに対し、温度が20℃以上の領域では、温度変化に対する内部抵抗の変化量が小さい。内部抵抗の測定値Rmの信頼性を高めるために、測定点温度Tpが20℃以上の範囲で内部抵抗を測定することが好ましい。以下、内部抵抗の測定を行うことが好ましい温度範囲を、「測定推奨範囲」ということとする。
図6に示した例では、測定推奨範囲は、20℃以上70℃以下と考えられる。
【0038】
本願の発明者による種々の評価実験によると、測定点温度Tpが一定でも、外気依存温度Taが異なると、内部抵抗の測定値Rmも異なることが判明した。従って、内部抵抗の測定値Rmの信頼性を高めるためには、内部抵抗の測定時における測定点温度Tp、及び外気依存温度Taを一定の基準温度に維持することが好ましい。ところが、建設機械は、寒冷地、猛暑地等で使用されることも多いため、外気依存温度Taを基準温度に維持することは現実的ではない。
【0039】
次に、測定点温度Tpが一定であるにもかかわらず、外気依存温度Taが異なると、内部抵抗の測定値Rmも異なってしまう理由について説明する。
図6に示したように、内部抵抗は、測定点温度Tpに依存するが、実質的には、蓄電セル420(
図4)の電解液、正極活物質、負極活物質等の温度(以下、「内部温度Ti」という。)に依存すると考えられる。内部温度Tiを実際に測定することは困難であるため、内部温度Tiに代えて、電極タブ4202の表面の温度(測定点温度Tp)が測定される。
【0040】
図5を参照して説明したように、電極タブ4202で発生したジュール熱は、蓄電セル本体4201、及び伝熱板423を経由して、コールドプレート421まで伝達される。コールドプレート421内を流れる冷却媒体の温度は、コールドプレート421で上昇した後、放熱器67(
図3)で外気温とほぼ同程度まで低下する。従って、測定点温度Tp、内部温度Ti、及び外気依存温度Taの間には、Ta≦Ti≦Tpの関係が成り立つ。
【0041】
内部温度Tiは、測定点温度Tp及び外気依存温度Taに依存する。測定点温度Tpを一定に維持しても、内部温度Tiは外気依存温度Taの影響を受けるため一定にはならない。内部温度Tiが一定にならないため、測定点温度Tpが一定でも、外気依存温度Taが異なると、内部抵抗の測定値Rmも異なると考えられる。
【0042】
図7に、測定点温度Tpと外気依存温度Taとの温度差Tp−Taと、内部抵抗変化量との対応表Aをグラフ形式で示す。横軸は、測定点温度Tpと外気依存温度Taとの温度差Tp−Taを単位「℃」で表し、縦軸は、内部抵抗変化量を単位「%」で表す。
【0043】
対応表Aにおいては、第1の変数(横軸の変数)と第2の変数(縦軸の変数)との対応関係が規定されている。第1の変数は、測定点温度Tpが一定の条件で外気依存温度Taを変化させたときにおける測定点温度Tpと依存温度との温度差Tp−Taに相当する。第2の変数は、外気依存温度Taが測定点温度Tpに一致するときの内部抵抗の値からの内部抵抗の変化量に相当する。
【0044】
図7に示した内部抵抗は、蓄電モジュール42を恒温槽内に配置し、測定点温度Tpを基準温度20℃に維持し、恒温槽内の温度を20℃から徐々に低下させながら測定した。測定点温度Tpは、蓄電モジュール42に流れる充放電電流の調節することにより、基準温度20℃に維持した。恒温槽内の温度が、外気依存温度Taに相当する。
図7に示した温度差を算出する基礎となる測定点温度Tpは、8箇所の温度測定点620の温度の平均値を示している。
【0045】
図7の原点は、測定点温度Tpと外気依存温度Taとが等しい条件に対応する。この条件では、蓄電セル420の内部温度Tiも、測定点温度Tp及び外気依存温度Taとほぼ等しいと考えられる。この時の内部抵抗の値を補正値Rcということとする。補正値Rcは、蓄電セル420の内部温度Tiを、基準温度20℃に維持した時の内部抵抗と考えることができる。
【0046】
内部抵抗変化量は、(Rm−Rc)/Rcで表される。内部抵抗の測定値Rmは、内部抵抗測定器、すなわち電流センサ63及び電圧センサ64(
図3)を用いて測定される。
【0047】
恒温槽内の温度を低下させている期間中に、蓄電モジュール42の劣化は実質的に進行しないと考えられる。このため、蓄電セル420の内部温度Tiが一定であると、内部抵抗の測定値Rmも一定である。
図7においては、測定点温度Tpが一定であっても、温度差Tp−Taが大きくなるにしたがって内部抵抗の測定値Rmが増加している。これは、外気依存温度Taが低下することによって、蓄電セル420の内部温度Tiが低下するためである。
【0048】
測定点温度Tp、外気依存温度Ta、及び内部抵抗の測定値Rmが決定すると、
図7に示した温度差Tp−Taと内部抵抗変化量(Rm−Rc)/Rcとの対応表に基づいて、内部抵抗の補正値Rcを算出することができる。算出された補正値Rcと、蓄電モジュール42の内部抵抗の標準値Rrとに基づいて、蓄電モジュール42の劣化度を評価することができる。
【0049】
一例として、蓄電モジュール42の劣化度は、Rc/Rrと定義することができる。劣化が進んでいないときの初期状態では、蓄電モジュール42の劣化度がほぼ1である。劣化が進むと、内部抵抗の補正値Rcが増加するため、劣化度が1よりも大きくなる。劣化度の算出に用いた補正値Rcは、内部温度Tiが基準温度20℃のときの内部抵抗の値にほぼ等しい。従って、信頼性の高い劣化度を求めることができる。
【0050】
次に、
図8を参照しながら、制御装置50で実行される処理について説明する。
【0051】
図8に、制御装置50の機能ブロック図を示す。
図8に示した各機能は、例えば、制御装置50に含まれるCPUがコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
図7に示した温度差Tp−Taと内部抵抗変化量(Rm−Rc)/Rcとの対応表Aが、予め制御装置50の記憶装置に記憶されている。蓄電モジュールの劣化度の判定方法において、この対応表Aが参照される。
【0052】
測定点温度取得部501が、第1の温度センサ62(
図3)から測定点温度Tpを取得し、外気依存温度取得部502が、第2の温度センサ70から外気依存温度Taを取得する。測定点温度調整部503が、測定点温度Tpに基づいて、DC−DCコンバータ60を制御する。具体的には、測定点温度Tpが基準温度20℃になるように、蓄電モジュール42の充放電を行う。
【0053】
測定点温度Tpが基準温度20℃に一致したら、温度差算出部504が、測定点温度Tpと外気依存温度Taとの温度差Tp−Taを算出する。内部抵抗変化量取得部505が、温度差Tp−Taと、温度差−内部抵抗変化量対応表Aとに基づいて、内部抵抗変化量(Rm−Rc)/Rcを求める。
【0054】
内部抵抗測定部506が、蓄電モジュール42の内部抵抗を測定し、測定値Rmを求める。具体的には、電流センサ63及び電圧センサ64(
図3)の測定結果に基づいて、上述の算出式(1)を用いて内部抵抗Riを算出する。
【0055】
内部抵抗補正部507が、内部抵抗変化量(Rm−Rc)/Rc及び内部抵抗の測定値Rmに基づいて、内部抵抗の補正値Rcを算出する。劣化度算出部508が、内部抵抗の標準値Rrと、内部抵抗の補正値Rcとに基づいて、劣化度Dを算出する。劣化度Dは、以下の算出式で求められる。
D=Rc/Rr ・・・(2)
【0056】
充放電制御部509が、DC−DCコンバータ60、インバータ41、43を制御する。言い換えると、蓄電モジュール42の充放電制御を行う。蓄電モジュール42による充放電制御に劣化度Dが反映される。通常、蓄電モジュール42の充放電は、充電電流及び放電電流が定格上限値を超えないように制御される。蓄電モジュール42の劣化度Dが高くなると、充電電流及び放電電流の上限値を、定格上限値よりも低くする。これにより、蓄電モジュール42の過度の劣化を抑制することができる。さらに、蓄電モジュール42の充放電時の電圧降下による過充電及び過放電を抑制することができる。
【0057】
上記実施例では、劣化度Dの算出に、蓄電セル420(
図4)の内部温度Tiが基準温度20℃の条件の下で求められた補正値Rcが用いられる。このため、測定点温度Tpを基準温度20℃に維持した条件で算出された測定値Rmを用いる場合と比べて、信頼性の高い劣化度Dが求まる。これにより、適切な充放電制御を行うことが可能になる。
【0058】
次に、
図9を参照して他の実施例について説明する。以下、
図1〜
図8に示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0059】
図9に、制御装置50の機能ブロック図を示す。
図8に示した実施例では、測定点温度調整部503が、測定点温度Tpを基準温度20℃に一致させたが、
図9に示した実施例では、測定点温度調整部503が、測定点温度Tpを測定推奨範囲、例えば20℃〜70℃の範囲内に維持する。測定点温度取得部501で取得された測定点温度Tpが既に測定推奨範囲内である場合には、直ちに内部抵抗の測定処理を開始する。
【0060】
図8に示した実施例では、温度差−内部抵抗変化量対応表Aに、
図7に示したように、測定点温度Tpが基準温度20℃のときの対応関係のみが規定されていた。
図9に示した実施例では、温度差−内部抵抗変化量対応表Aに、測定推奨範囲内の複数の測定点温度Tpについて、温度差と内部抵抗変化量との対応関係が規定されている。
【0061】
内部抵抗変化量取得部505は、温度差−内部抵抗変化量対応表Aのうち、測定点温度取得部501で取得された測定点温度Tpに関する対応関係を用いて、内部抵抗変化量(Rm−Rc)/Rcを求める。
【0062】
図9に示した実施例では、
図8の内部抵抗補正部507が、第1の内部抵抗補正部5071と第2の内部抵抗補正部5072とで構成される。第1の内部抵抗補正部5071は、内部抵抗測定部506で測定された内部抵抗の測定値Rmと、内部抵抗変化量(Rm−Rc)/Rcとに基づいて、暫定補正値Rc1を算出する。暫定補正値Rc1は、蓄電セル420の内部温度Tiが、測定点温度Tpと等しい条件下における内部抵抗の値を表している。
【0063】
制御装置50の記憶装置に、温度−内部抵抗換算表Bが記憶されている。温度−内部抵抗換算表Bは、蓄電セル420の内部温度Tiと、内部抵抗との対応関係を規定する。この対応関係を用いて、内部温度Tiが基準温度以外のときの内部抵抗を、内部温度Tiが基準温度のときの内部抵抗に換算することができる。
【0064】
第2の内部抵抗補正部5072は、内部温度Tiが測定点温度Tpに等しい条件下における暫定補正値Rc1、及び温度−内部抵抗換算表Bに基づいて、内部抵抗の補正値Rcを算出する。補正値Rcは、内部温度Tiが基準温度の条件下における内部抵抗を表す。
【0065】
図9に示した実施例では、測定点温度Tpを基準温度20℃に一致させる必要がないため、劣化度を迅速に求めることができる。
【0066】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。