(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記本体には、前記蓋体が開けられた場合に、前記鍋状容器を前記加熱コイルから離れる方向に移動させる移動手段が設けられることを特徴とする請求項8に記載の炊飯器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る炊飯器について図面を参照して説明する。なお、この図面の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における炊飯器100の構成を概略的に示す断面模式図である。本実施の形態における炊飯器100は、被加熱物(例えば米および水)を加熱して炊き上げる家庭用炊飯器である。
図1に示すように、炊飯器100は、外観が有底筒状の本体1と、本体1に取り付けられ、本体1の上部開口を開閉する蓋体10と、本体1の内部に収容される鍋状容器5と、を備えている。
【0012】
(本体1)
本体1は、容器収納体2と、本体側加熱コイル3と、鍋底温度センサー4aと、蓋体10を開閉自在に支持するヒンジ部6と、各部を駆動制御して炊飯工程および保温工程を実行する制御部7と、各種情報を記憶する記憶部8とを備えている。
【0013】
容器収納体2は、有底筒状に形成されており、その内部に鍋状容器5が着脱自在に収容される。容器収納体2の底部中央には、鍋底温度センサー4aが挿入される孔部2aが設けられている。また、容器収納体2の開口周縁部には肩部2bが形成されている。容器収納体2の肩部2bに鍋状容器5のフランジ部5dを置くことで、容器収納体2内に鍋状容器5が収容される。
【0014】
本体側加熱コイル3は、制御部7により駆動制御され、鍋状容器5を誘導加熱する。本体側加熱コイル3は鍋状容器5の底部5aの近傍に位置し、鍋状容器5の底部5aを加熱する。なお、本体側加熱コイル3の配置は図示のものに限定されるものではなく、鍋状容器5の湾曲部5cおよび側部5bの近傍にも加熱コイルを設けてもよい。
【0015】
鍋底温度センサー4aは、例えばサーミスタで構成され、鍋状容器5の温度を検知する。本実施の形態の鍋底温度センサー4aは、バネ等の弾性手段4bによって上方に付勢されており、容器収納体2の底部中央に設けられた孔部2aを介して、鍋状容器5の底面に接する。鍋底温度センサー4aが検知した鍋状容器5の温度に関する情報は、制御部7に出力される。なお、鍋底温度センサー4aの具体的構成はサーミスタに限定されず、鍋状容器5に接触して温度を検知する接触式温度センサーのほか、例えば赤外線センサー等の鍋状容器5の温度を非接触で検知する非接触式温度センサーを採用してもよい。
【0016】
ヒンジ部6は、本体1の上部の一端側(
図1の紙面右側)に設けられ、蓋体10を開閉自在に支持する。なお、本体1に、炊飯器100を運搬するためのハンドル(図示せず)を設けておいても良い。ハンドルを設ける場合には、ハンドルを本体1の側面上部の略前後中央に軸支し、ハンドルの回転方向を蓋体10の回動方向と一致させると良い。そうすれば、炊飯器100を運搬する際には、使用者はハンドルの軸支点のほぼ直上に位置するようにハンドルを回転させて持ち上げ、ハンドルのみを持って炊飯器100を運搬することが可能となる。
【0017】
制御部7は、鍋底温度センサー4a、ならびに蓋体10に設けられた操作表示部15および内部温度センサー16からの出力に基づいて、炊飯器100の動作全般を制御する。詳しくは、制御部7は、炊飯工程および保温工程に応じて本体側加熱コイル3および蓋体10に設けられた蓋体側加熱コイル17に供給する高周波電流の動作を制御する。制御部7は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコン又はCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。記憶部8は、例えば不揮発性メモリなどで構成され、炊飯器100の制御に用いられる各種プログラムおよび各種制御データなどを記憶する。
【0018】
(蓋体10)
蓋体10は、外蓋11と、内蓋12とを有している。外蓋11は、蓋体10の上部を構成し、外蓋11の下部(鍋状容器5に対向する部分)には、係止材13を介して、内蓋12が取り付けられている。外蓋11の下部には内部温度センサー16および内部温度センサー16の外周の隙間を塞ぐパッキン11aが取り付けられている。また、外蓋11には、カートリッジ14および操作表示部15が設けられている。さらに、蓋体10には、鍋状容器5のフランジ部5dを加熱するための蓋体側加熱コイル17が設けられている。
【0019】
内蓋12の周縁部には、鍋状容器5のフランジ部5dとの密閉性を確保するシール材である蓋パッキン9が取り付けられている。また、内蓋12には内部温度センサー16を挿入させる孔部12aが設けられている。さらに、内蓋12には、鍋状容器5内で発生した蒸気が出入する蒸気口12bが設けられ、後述するカートリッジ14の蒸気取入口14aと通じている。
【0020】
カートリッジ14には、炊飯中に発生する蒸気圧に応じて上下動する弁(図示せず)を備えた蒸気取入口14aと、蒸気取入口14aの弁を通過した蒸気を外部へ排出する蒸気排出口14bとが設けられている。蒸気取入口14aは、蒸気口12bに通じており、蒸気口12bを通過して蒸気取入口14aからカートリッジ14内に入ってカートリッジ14内を流れ、蒸気排出口14bからカートリッジ14の外へ放出する。
【0021】
操作表示部15は、外蓋11の上面部に設けられている。操作表示部15は、使用者からの操作入力を受け付けるとともに、操作入力に関する情報および炊飯器100の動作状態を表示する。操作表示部15に対して設定可能な項目としては、例えば、炊飯の開始、取り消し、炊飯予約、炊飯メニューがある。炊飯メニューの具体例としては、白米炊飯又は玄米炊飯等の米の種類に関するもの、標準炊飯又は早炊き炊飯等の炊飯時間に関するもの、かため又はやわらかめ等の炊き上がりの米飯のかたさに関するもの等が挙げられる。操作表示部15が表示する項目としては、例えば、炊飯中又は予約待機中等の炊飯器100の状態、設定されている炊飯メニューの内容、炊き上がりの予定時刻、現在時刻、炊飯する米の量等が挙げられる。なお、ここで示した操作表示部15の具体的構成は一例であり、本発明を限定するものではない。操作表示部15に対して使用者による操作入力が行われると、本体1の制御部7が、入力された炊飯メニューおよび炊飯する米の量に合わせた炊飯プログラムに従って、本体側加熱コイル3および蓋体側加熱コイル17を動作させて炊飯工程および保温工程を実行する。
【0022】
内部温度センサー16は、鍋状容器5内の温度を検知する。内部温度センサー16の一部は内蓋12の孔部12aに挿入されており、内部温度センサー16は孔部12aを介して鍋状容器5内の温度を検知する。内部温度センサー16は、例えばサーミスタで構成することができる。内部温度センサー16が検知した鍋状容器5内の温度に関する情報は、制御部7に出力される。
【0023】
蓋体側加熱コイル17は、制御部7により駆動制御され、鍋状容器5のフランジ部5dを誘導加熱する。蓋体側加熱コイル17は、蓋体10が閉じられた状態において、フランジ部5dに対向する位置に同心円状に配置される。なお、蓋体側加熱コイル17の形状は同心円に限定されるものではなく、複数の小型の蓋体側加熱コイル17をフランジ部5dの周縁上に間隔を空けて配置してもよい。
【0024】
(鍋状容器5)
鍋状容器5は、有底円筒形状を有し、誘導加熱により発熱する磁性体金属を含む材料で構成される。なお、鍋状容器5は、非金属材料(炭素材または土鍋)によって構成されてもよい。また、鍋状容器5は、底部5a、底部5aに対して略垂直方向に延びる側部5b、底部5aと側部5bとの間において湾曲する湾曲部5c、および側部5bの上端に形成されるフランジ部5dで構成される。鍋状容器5の内部には、被加熱物である米および水が収容される。
【0025】
続いて、炊飯器100の動作について説明する。炊飯器100の制御部7は、操作表示部15を介して入力される指示に従い、炊飯工程および保温工程を実行する。炊飯工程では、まず吸水工程が行われる。吸水工程では、鍋状容器5内の米の内部にまで吸水が促される。次に、昇温工程が行われる。昇温工程では、吸水工程終了後から鍋状容器5内の水が沸騰するまで鍋状容器5が加熱される。鍋状容器5内の水が沸騰すると、次の沸騰維持工程に移行される。沸騰維持工程では、鍋状容器5内の温度が沸騰温度を保持するように加熱され、米のデンプンの糊化が促進される。続いて、蒸らし工程が行われる。蒸らし工程では、鍋状容器5内の米が蒸らされ、米粒中心部まで糊化が進行されるとともに、米粒内の水分の分布が均一にされる。
【0026】
そして、所定の蒸らし時間が経過すると、蒸らし工程が終了され、保温工程に移行される。保温工程においては、米飯の変質や腐敗防止(菌の繁殖の抑制)のために適切な温度管理をする必要がある。そこで、本実施の形態では、制御部7によって、蓋体10の開閉状態が検出され、検出された開閉状態に応じて、保温温度が調整される。
図2は、蓋体10が開けられた状態の炊飯器100の一部を拡大した断面模式図である。
図2に示すように、蓋体10が開けられると、蓋体10に取り付けられた蓋体側加熱コイル17は、蓋体側加熱コイル17により誘導加熱される鍋状容器5から離れる方向へ移動する。すなわち、蓋体10が開けられることにより、蓋体側加熱コイル17とフランジ部5dとの距離が変化する。
【0027】
ここで、蓋体側加熱コイル17のように電磁誘導によって加熱を行う場合であって、出力および負荷の種類が固定の場合、負荷との距離に応じて磁気結合における結合係数が変化し、これにより蓋体側加熱コイル17の電気的特性が変化することが知られている。具体的には、結合係数の変化によって蓋体側加熱コイル17の相互インダクタンスが変化する。ここで、負荷とは、誘導加熱される対象であり、炊飯器100においては鍋状容器5のフランジ部5dである。IHクッキングヒーター等では、天板上に色々な種類の鍋が載せられるが、炊飯器100では鍋状容器5は専用のため、負荷は固定となる。また、蓋体側加熱コイル17の相互インダクタンスが変化することで、蓋体側加熱コイル17の電源回路20における電流および電圧も変化する。そのため、蓋体側加熱コイル17の電源回路20における電流または電圧を検出することで、蓋体側加熱コイル17とフランジ部5dとの距離の変化を検出することができる。
【0028】
図3は、蓋体側加熱コイル17の電源回路20を示す図である。本体側加熱コイル3と蓋体側加熱コイル17とは、それぞれ個別に電源回路を備え、制御部7によってそれぞれ制御される。本体側加熱コイル3の電源回路は、蓋体側加熱コイル17の電源回路20と同様に構成される。なお、本体側加熱コイル3および蓋体側加熱コイル17が1つの電源回路を備え、制御部7によって排他的に制御されてもよい。電源回路20は、商用電源80を高周波電力に変換して蓋体側加熱コイル17に供給するための回路である。
図3に示すように、電源回路20は、整流回路を構成するダイオードブリッジ21と、平滑回路を構成するチョークコイル22および平滑コンデンサ23と、蓋体側加熱コイル17に並列に接続された共振コンデンサ24と、インバータ回路を構成するスイッチング素子25とを備える。なお、
図3では一つのスイッチング素子25を示しているが、スイッチング素子の数を限定するものではない。電源回路20は、駆動回路30によって駆動される。駆動回路30は、制御部7からの制御信号に基づいてスイッチング素子25をON/OFF動作させ、商用電源80の出力を所定周波数の交流電力に変換する。Vce検出部40は、スイッチング素子25のコレクタ−エミッタ間飽和電圧(Vce)を検出し、制御部7に出力する。
【0029】
図4は、Vce検出部40によって検出されるVceと、鍋状容器5と蓋体側加熱コイル17との距離との関係を示すグラフである。
図4に示すように、鍋状容器5と蓋体側加熱コイル17との距離が長くなるほど、Vceは低下する。そこで、本実施の形態の制御部7は、電源回路20におけるVceに基づいて蓋体10の開閉状態を検出する。なお、Vceに替えて、電源回路20における共振コンデンサ24の電圧または蓋体側加熱コイル17を流れる電流を検出し、蓋体10の開閉状態の検出を行ってもよい。なお、共振コンデンサ24の電圧および蓋体側加熱コイル17の電流についても、Vceと同様に鍋状容器5と蓋体側加熱コイル17との距離が長くなるほど、小さくなる関係にある。
【0030】
図5は、本実施の形態の蓋体開閉検出処理のフローチャートである。本処理は、保温工程に移行された際に開始される。本処理では、まず、Vce検出部40によって、蓋体側加熱コイル17の電源回路20におけるVceが検出される(S1)。検出されたVceは制御部7に出力され、制御部7によって、検出されたVceが閾値VTより小さいか否かが判断される(S2)。ここで、閾値VTは、蓋体10が開けられた状態における蓋体側加熱コイル17と鍋状容器5のフランジ部5dとの距離に対応するVceであり、予め実験等により求められ、記憶部8に記憶されている。
【0031】
そして、検出されたVceが閾値VT以上である場合(S2:NO)、蓋体10は、閉じられた状態であると判断され(S3)、本処理を終了する。一方、検出されたVceが閾値VTより小さい場合(S2:YES)、蓋体10が開けられたと判断され(S4)、本処理を終了する。本処理は、保温工程が終了するまで繰り返し実行される。そして、制御部7は、蓋体開閉検出処理で判断された蓋体10の開閉状態に応じて、保温温度の調整を行う。具体的には、蓋体10が開けられたと判断された場合は、鍋状容器5内の温度低下を防ぐために保温温度を上げるよう本体側加熱コイル3が駆動制御される。
【0032】
上記のように、本実施の形態では、鍋状容器5を加熱するための蓋体側加熱コイル17の電気的特性(相互インダクタンス)の変化に基づいて、蓋体10の開閉状態を検出することで、追加の部品を設ける必要がなく、部品点数およびコストの増加を抑制できる。また、蓋体側加熱コイル17は加熱部であるため、配置の制約が少なく、設計が煩雑になることを抑制することができる。
【0033】
実施の形態2.
続いて、本発明の実施の形態2について説明する。
図6は、本発明の実施の形態2における炊飯器100Aの一部を拡大した断面模式図であり、(a)は蓋体10Aが閉じられた状態を示し、(b)は蓋体10Aが開けられた状態を示す。本実施の形態における炊飯器100Aは、鍋状容器5Aが羽釜形状を有する点、およびそれに伴う蓋体側加熱コイル17Aの配置において実施の形態1と相違する。その他の炊飯器100Aの構成については、実施の形態1と同様である。
【0034】
図6(a)に示すように、炊飯器100Aの鍋状容器5Aは羽釜形状を有している。詳しくは、鍋状容器5Aは、鍋状容器5と同様の底部5a、湾曲部5cおよび側部5bを有する。さらに、鍋状容器5Aは、側部5bから外側へ突出する鍔部50と、鍔部50から上方に向かって突出する鍔上部50aとを有している。鍋状容器5Aの鍔部50を容器収納体2の周縁部に設けられた肩部2bに置くことで、鍋状容器5Aが容器収納体2内に収容される。また、蓋体側加熱コイル17Aは、蓋体10Aが閉じられた状態において、鍔部50の上面部に対向する位置に配置され、鍔部50を加熱する。また、蓋体側加熱コイル17Aは、蓋体10Aの鍔部50の上面部に対向する面に沿って配置される。
【0035】
図6(b)に示すように蓋体10Aが開けられると、蓋体側加熱コイル17Aと鍋状容器5Aの鍔部50との距離が変化する。そして、この距離の変化に伴い、蓋体側加熱コイル17Aの相互インダクタンスおよびVce等も変化する。そのため、本実施の形態においても、実施の形態1と同様の蓋体開閉検出処理を行うことで、蓋体10Aの開閉状態を検出することができる。なお、本実施の形態における蓋体側加熱コイル17Aの電源回路の構成は、実施の形態1と同様である。このように、羽釜形状の鍋状容器5Aを用いた場合でも、実施の形態1と同様に、追加の部品を設けることなく、蓋体10Aの開閉状態を検出することができる。
【0036】
実施の形態3.
続いて、本発明の実施の形態3について説明する。
図7は、本発明の実施の形態3における炊飯器100Bの一部を拡大した断面模式図であり、(a)は蓋体10Bが閉じられた状態を示し、(b)は蓋体10Bが開けられた状態を示す。本実施の形態における炊飯器100Bは、蓋体側加熱コイル17Bの配置において実施の形態2と相違する。その他の炊飯器100Bの構成および鍋状容器5Aの形状については、実施の形態2と同様である。
【0037】
図7(a)に示すように、炊飯器100Bは、実施の形態2と同様の羽釜形状の鍋状容器5Aを備える。本実施の形態の蓋体側加熱コイル17Bは、蓋体10Bが閉じられた状態において、鍔上部50aに対向する位置に配置され、鍔上部50aを加熱する。また蓋体側加熱コイル17Bは、蓋体10Bの鍔上部50aに対向する面に沿って配置される。
【0038】
図7(b)に示すように、蓋体10Bが開けられると、蓋体側加熱コイル17Bと鍋状容器5Aの鍔上部50aとの距離が変化する。そして、この距離の変化に伴い、蓋体側加熱コイル17Bの相互インダクタンスおよびVce等も変化する。そのため、本実施の形態においても、実施の形態1と同様の蓋体開閉検出処理を行うことで、蓋体10Bの開閉状態を検出することができる。なお、本実施の形態における蓋体側加熱コイル17Bの電源回路の構成は、実施の形態1と同様である。
【0039】
また、
図8は、蓋体10Bが開けられている途中の状態の炊飯器100Bの一部を拡大した断面模式図である。ここで、本実施の形態の蓋体側加熱コイル17Bと加熱対象である鍔上部50aは、蓋体10Bの移動方向と略直交する方向(すなわち左右方向)に並んで配置されている。そのため、蓋体側加熱コイル17Bと鍔上部50aとの距離は、
図7に示すように、蓋体10Bが開けられてからしばらくはほとんど変化しない。詳しくは、蓋体10Bが開けられても、蓋体10Bと鍋状容器5Aの鍔上部50aとが対向している間は距離がほとんど変化しない。そして、蓋体10Bが鍋状容器5Aの鍔上部50aと対向しない位置まで開けられ、鍋状容器5Aの開口部が露出されるようになると、蓋体側加熱コイル17Bと鍔上部50aとの距離が変化する。そのため、実施の形態のように蓋体側加熱コイル17Bを配置することで、特定の角度における(例えば鍋状容器5A内の温度変化などに影響を及ぼす場合における)蓋体10Aの開閉を検出することができる。
【0040】
実施の形態4.
続いて、本発明の実施の形態4について説明する。
図9は、本発明の実施の形態4における炊飯器100Cの一部を拡大した断面模式図であり、(a)は蓋体10Cが閉じられた状態を示し、(b)は蓋体10Cが開けられた状態を示す。本実施の形態における炊飯器100Cは、実施の形態2の蓋体側加熱コイル17Aおよび実施の形態3の蓋体側加熱コイル17Bの両方を備える。その他の炊飯器100Cの構成および鍋状容器5Aの形状については、実施の形態2と同様である。
【0041】
図9(a)に示すように、本実施の形態では、蓋体10Cが閉じられた状態において、鍋状容器5Aの鍔部50の上面部に対向する位置に配置される蓋体側加熱コイル17Aと、鍋状容器5Aの鍔上部50aに対向する位置に配置される蓋体側加熱コイル17Bとを備える。蓋体側加熱コイル17Aおよび蓋体側加熱コイル17Bによって、鍋状容器5Aの鍔部50および鍔上部50aがそれぞれ加熱される。
【0042】
本実施の形態においても、
図9(b)に示すように蓋体10Cが開けられると、蓋体側加熱コイル17Aおよび蓋体側加熱コイル17Bと鍋状容器5Aの鍔部50および鍔上部50aとの距離がそれぞれ変化する。そして、この距離の変化に伴い、蓋体側加熱コイル17Aおよび蓋体側加熱コイル17Bの相互インダクタンスおよびVce等もそれぞれ変化する。本実施の形態では、蓋体側加熱コイル17Aおよび蓋体側加熱コイル17Bがそれぞれ備える電源回路におけるVceを検出し、検出したVceに応じて蓋体開閉検出処理を行うことで、蓋体10Cの開閉状態が検出される。なお、蓋体側加熱コイル17Aおよび蓋体側加熱コイル17Bは、それぞれ実施の形態1と同様の電源回路を有している。
【0043】
ここで、蓋体側加熱コイル17Aと加熱対象である鍔部50とは、蓋体10Cの移動方向(すなわち上下方向)に並んで配置されているため、蓋体10Cの移動に応じて距離が変化する。そのため、蓋体10Cが開けられたことをすぐに検出することができる。一方、蓋体側加熱コイル17Bと加熱対象である鍔部50とは、蓋体10Cの移動方向に略直交する方向に並んで配置されているため、蓋体10Bと鍋状容器5Aの鍔上部50aとが対向している間は、蓋体10Cが開けられても距離が変化しない。そのため、蓋体側加熱コイル17Aおよび蓋体側加熱コイル17Bそれぞれで検出された蓋体10Cの開閉状態から、蓋体10Cの開き具合(角度など)を推定することもできる。
【0044】
実施の形態5.
続いて、本発明の実施の形態5について説明する。
図10は、本発明の実施の形態5における炊飯器100Dの蓋体10Dが開けられた状態を示す断面模式図である。本実施の形態における炊飯器100Dは、蓋体側加熱コイル17を備えていない点において、実施の形態1と相違する。その他の炊飯器100Dの構成については、実施の形態1と同様である。
【0045】
実施の形態1で説明したように、鍋状容器5の底部5aには、弾性手段4bによって上方に付勢された鍋底温度センサー4aが接している。すなわち、鍋状容器5も、鍋底温度センサー4aを介して弾性手段4bによって上方に付勢されている。ここで、蓋体10が閉じられている状態では、鍋状容器5は蓋体10Dによって下方に押さえられ、本体側加熱コイル3に近接した位置となる。一方、
図10に示すように、蓋体10Dが開けられると、蓋体10Dによる押さえがなくなることで、弾性手段4bに付勢される鍋状容器5が距離Dだけ上方に移動する。これにより、本体側加熱コイル3と、鍋状容器5との距離が変化する。また、この距離の変化に応じて本体側加熱コイル3の相互インダクタンスも変化する。
【0046】
そこで、本実施の形態の制御部7は、本体側加熱コイル3と鍋状容器5との距離の変化に応じて変化する本体側加熱コイル3の相互インダクタンスに基づいて、蓋体10Dの開閉状態を検出する。この場合の蓋体開閉検出処理の流れは、実施の形態1と同様である。ここで、本体側加熱コイル3の相互インダクタンスの変化を検出するために、本体側加熱コイル3の電源回路におけるVceが検出され、閾値VTとの比較が行われる。
【0047】
このように、本実施の形態では、蓋体10Dに加熱コイルを備えていない場合においても、本体側加熱コイル3と鍋状容器5との距離に応じて変化する本体側加熱コイル3の相互インダクタンスから蓋体10Dの開閉を検出することができる。また、鍋状容器5を本体側加熱コイル3から離れる方向に移動させるための移動手段として、鍋底温度センサー4aを付勢するための弾性手段4bを用いることで、部品点数やコストをより一層削減することが可能となる。
【0048】
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明は、上記の実施の形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形または組み合わせが可能である。例えば、上記実施の形態においては、Vce検出部40によって検出されたVceと記憶部8に記憶された閾値VTとを比較して蓋体10の開閉状態を検出する構成としたが、本発明の蓋体開閉検出処理はこれに限定されるものではない。例えば、閾値VTに替えて、Vceと蓋体10の開閉状態とをマッピングしたテーブルを記憶部8に記憶し、当該テーブルを参照して、蓋体10の開閉状態を検出する構成としても良い。
【0049】
また、上記実施の形態においては、保温工程における温度管理のために蓋体10の開閉状態を検出する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、蓋体の閉じ忘れの防止や鍋状容器内の米飯の残量推定のための開閉回数の検出など、様々な目的に対して、蓋体開閉検出処理を用いることができる。また、蓋体側加熱コイル17または本体側加熱コイル3と鍋状容器5との距離の変化に応じて変化する蓋体側加熱コイル17または本体側加熱コイル3の相互インダクタンスを用いて、蓋体10が実際に開けられたか否かだけでなく、蓋体10が正常に閉じられているか否かを検出することも可能である。例えば、鍋状容器5の底部5aと容器収納体2の間に異物が混入する場合がある。この場合、蓋体10は閉まるものの、正常にロックされていないことがある。このとき、特に圧力をかける炊飯器においては、圧力をかける過程で蓋体10が開いてしまうことがある。このような場合も、異物による鍋状容器5と本体側加熱コイル3との距離が変化し、本体側加熱コイル3の電気的特性も変化する。そのため、本体側加熱コイル3の相互インダクタンスの変化に基づいて蓋体10が正常に閉まっていないことを判断し、警告を行う、または本体側加熱コイル3への通電を停止しても良い。
【0050】
また、蓋体10が開けられた際に、鍋状容器5を本体側加熱コイル3から離れる方向に移動させる移動手段は、上記実施の形態5における弾性手段4bに限定されるものではない。
図11は、本発明の変形例における炊飯器100Eの一部を拡大した断面模式図であり、(a)は蓋体10Eが閉じられた状態を示し、(b)は蓋体10Eが開けられた状態を示す。本変形例における炊飯器100Eは蓋体10Eが開かれる際に鍋状容器5を上方に移動させるための移動手段として回動部材90を備える。
【0051】
図11(a)および(b)に示すように、回動部材90はヒンジ部6に配置され、蓋体10Eの開閉に連動して回動する。回動部材90は、
図11(a)に示すように、蓋体10Eが閉じられている状態では本体1内に収納される。また、回動部材90は、
図11(b)に示すように、蓋体10Eが開けられると蓋体10Eに連動して回動し、鍋状容器5のフランジ部5dの下面部に当接して鍋状容器5を持ち上げる。これにより、蓋体10Eが開けられる際に、鍋状容器5を本体側加熱コイル3から離れる方向へ移動させることができる。また、その他にも容器収納体2の肩部2bにバネ等の弾性手段を設けてもよい。
【0052】
さらに、上記実施の形態において、蓋体10の開閉を検出するために、炊飯工程や保温工程において加熱動作を行う蓋体側加熱コイル17や本体側加熱コイル3を用いる構成としたが、これに限定されるものではなく、単に蓋体10の開閉を検出するための加熱動作を行わないコイルを設けてもよい。この場合のコイルは、蓋体10または本体1の鍋状容器5の底部5aまたはフランジ部5dと対向する位置に設けられる。このように構成することで、非接触で蓋体10の開閉を検出することができる。また、加熱動作を行う必要がないため、コイルの配置の制約が低減される。なお、この場合には、炊飯工程や保温工程において鍋状容器5を加熱する加熱部として、加熱コイルまたはヒーターが用いられる。