【文献】
Biochem. J., 2004, 384(Pt 2), pp.385-390
【文献】
Biochim. Biophys. Acta, 2008, 1784(7-8), pp.1002-1010
【文献】
Biochem. J., 2007, 405(Pt 3), pp.397-405
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可溶性ビオチン結合タンパク質が、配列番号:1に対して少なくとも85%同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記融合タンパク質が、前記抗原性タンパク質またはペプチドと前記ビオチン結合タンパク質との間にペプチドリンカーを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
前記抗原性タンパク質またはペプチドが、肺炎球菌抗原、結核抗原、炭疽菌抗原、HIV抗原、季節性または流行性インフルエンザ抗原、インフルエンザ抗原、百日咳抗原、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)抗原、髄膜炎菌抗原、ヘモフィルス(Haemophilus)抗原、HPV抗原、大腸菌(E. coli)抗原、サルモネラ(Salmonella)抗原、エンテロバクター(Enterobacter)抗原、シュードモナス(Pseudomonas)抗原、クレブシエラ(Klebsiella)抗原、シトロバクター(Citrobacter)抗原、クロストリジウム(Clostridia)抗原、腸内病原体抗原、癌もしくは腫瘍抗原、トキソイド、毒素、もしくは毒素の部分、またはそれらの組み合わせから成る群より選択される抗原である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
前記抗原性タンパク質またはペプチドが、黄色ブドウ球菌α溶血素の変種を含み、黄色ブドウ球菌α溶血素の変種が、等しい力価の野生型α溶血素(Hla)より低い溶血活性を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的実施形態の詳細な説明
本発明は、本明細書に記載の特定の組成、方法論、プロトコル、および試薬等に限定されず、かつしたがって変化し得ることを理解されたい。本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的に過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0016】
理論に拘束されることを望むものではないが、当技術分野でのビオチン結合タンパク質の低発現は、ビオチン結合タンパク質の各モノマーの中のジスルフィド結合に起因する折り畳み不良によるものであり得、これは大腸菌の細胞質中では全くまたは非常に低いレベルでしか生じない。現在、本発明者らは、大腸菌の周辺質空間の中へ送達することによって、正しい折り畳みを達成できることを発見している。したがって、組み換えビオチン結合タンパク質の正しい折り畳みは、ビオチン結合タンパク質の完全天然シグナル配列を大腸菌分泌シグナル配列と置換することによって向上させることができる。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、大腸菌細胞の周辺質空間の中への組み換えタンパク質の移行を促進する。よって、大腸菌の周辺質空間の中への組み換えタンパク質の移行は、ビオチン結合タンパク質(例えば、リズアビジン)において機能的に重要なジスルフィド結合を提供することができ、該タンパク質が、可溶性形態で、かつ高収率で正しく折り畳まれることができる。
【0017】
一態様では、大腸菌において可溶性形態および高収率で発現することができるビオチン結合タンパク質が、本明細書で提供される。本明細書で使用される際、「ビオチン結合タンパク質」という用語は、ビオチンまたはその類似体あるいは誘導体に非共有的に結合する、タンパク質を指す。高収率とは、約10mg/L、11mg/L、12mg/L、13mg/L、14mg/L、15mg/L、20mg/L、25mg/L、30mg/L、35mg/L、30mg/L、35mg/L、40mg/L、45mg/L、50mg/L以上の量で、大腸菌において可溶性形態でタンパク質を発現できることを意味する。
【0018】
一部の実施形態において、ビオチン結合タンパク質は、組み換えタンパク質であり得る。ビオチン結合タンパク質のコード配列は、元の遺伝子に存在する希少コドンに起因する大腸菌での発現の際のあらゆる困難を回避するために、大腸菌発現コドンを使用して最適化することができる。
【0019】
一般に、ビオチン結合タンパク質は、ビオチン結合ドメインを含む。本明細書で、「ビオチン結合ドメイン」とは、ビオチンに結合するポリペプチド配列を指す。完全ビオチン結合タンパク質をビオチン結合ドメインとして使用することができる一方で、タンパク質のビオチン結合部分のみを使用することができる。一部の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、リズアビジンに由来する。
【0020】
一部の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、野生型リズアビジンのアミノ酸45〜179に対応するアミノ酸配列から成る、または本質的に成る。
野生型リズアビジンのアミノ酸配列は、
である。
【0021】
言い換えれば、ビオチン結合ドメインは、野生型リズアビジンのアミノ酸1〜44
を含まない(即ち、それが欠けている)。一部の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、アミノ酸配列
を含む。
【0022】
一部の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、配列番号:1に対する少なくとも50%同一性、少なくとも55%同一性、少なくとも60%同一性、少なくとも65%同一性、少なくとも70%同一性、少なくとも75%同一性、少なくとも80%同一性、好ましくは少なくとも85%同一性、少なくとも90%同一性、少なくとも95%同一性、少なくとも96%同一性、少なくとも97%同一性、少なくとも98%同一性、または少なくとも99%同一性、およびより好ましくは少なくとも99.3%同一性を有する、アミノ酸配列を含む。
【0023】
Helppolainenら(Biochem J.,2007,405:397−405)が、全長リズアビジンの最初の24個の残基のみを除去することを記載したが、本発明者らは、全長リズアビジンの最初の44個の残基がリズアビジンのコア構造および機能に不必要であることを見出した。さらに、予想外に、大腸菌シグナルペプチドによる全長リズアビジンの最初の44個の残基の置換が本明細書に記載のビオチンタンパク質の大腸菌における可溶性および分泌の増大をもたらしたため、全長リズアビジンのアミノ酸25〜44
は、大腸菌において発現されたリズアビジンの可溶性および分泌を低減させる。
【0024】
本明細書に記載のビオチン結合タンパク質において、該ビオチン結合ドメインのN末端が野生型リズアビジンのアミノ酸配列1〜44に対応するアミノ酸配列を含まないという条件で、該ビオチン結合ドメインをNまたはC末端で1つ以上のアミノ酸によって拡張することができる。本発明者らは、野生型リズアビジンのN末端の最初の44個のアミノ酸を切断することにより、大腸菌における可溶性形態でのビオチン結合タンパク質の発現を劇的に増加させることができると発見している。したがって、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、配列X
1−X
2−X
3を含み、X
2は、野生型リズアビジンのアミノ酸45〜179に対応するアミノ酸配列を有するペプチドであり、X
1およびX
3は独立して、存在しないか、または、X
1のN末端が野生型リズアビジンのアミノ酸1〜44のN末端に対応するアミノ酸配列を含まないという条件で、1から約100個のアミノ酸のペプチドである。
【0025】
一部の実施形態において、ビオチン結合タンパク質は、該ビオチン結合タンパク質のN末端にコンジュゲートしたシグナルペプチドを含むことができ、即ち、X
1は、シグナルペプチドを含むことができる。シグナルペプチドは、N末端ではリーダーペプチドとも称され、これは膜を通って移行した後、切断されてもよく、または切断されなくてもよい。分泌/シグナルペプチドは、以下でさらに詳細に説明される。一部の実施形態において、シグナル配列は、
、またはその誘導体あるいは機能性部分である。
【0026】
シグナルペプチドは、直接的(例えば、結合を介して)または間接的(例えば、リンカーによって)に、ビオチン結合ドメインのN末端に連結されることができる。一部の実施形態において、シグナルペプチドは、ペプチドリンカーによってビオチン結合ドメインのN末端に連結されることができる。ペプチドリンカー配列は、任意の長さであり得る。例えば、ペプチドリンカー配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15アミノ酸長以上であり得る。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、4アミノ酸長である。
【0027】
ペプチドリンカー配列は、任意のアミノ酸配列を含むことができる。例えば、ペプチドリンカーは、シグナルペプチダーゼによって開裂することができるアミノ酸配列を含むことができる。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列AQDP(配列番号:8)またはVSDP(配列番号:9)を含む。
【0028】
ビオチン結合タンパク質において、ビオチン結合ドメインは、そのC末端で1〜100個のアミノ酸のペプチドにコンジュゲートすることができる。C末端におけるかかるペプチドは、精製タグ、他のドメインへのリンカー、および同等物に使用することができる。
【0029】
一部の実施形態において、ビオチン結合タンパク質は、そのNまたはC末端に、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)の精製タグを含む。精製タグの例は、限定されないが、ヒスチジンタグ、c−myタグ、Haloタグ、Flagタグ、および同等物を含む。一部の実施形態において、ビオチン結合タンパク質は、そのC末端に、ヒスチジンタグ、例えば(His)
6(配列番号10)を含む。
【0030】
精製タグは、タグが外側に露出される可能性が増大するようにペプチドリンカーによってビオチン結合タンパク質にコンジュゲートすることができる。リンカーの長さは、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個)のアミノ酸であり得る。リンカーペプチドは非限定的に、任意のアミノ酸配列を含むことができる。一部の実施形態において、リンカーペプチドは、アミノ酸配列
を含む。
【0031】
一部の実施形態において、ビオチン結合タンパク質は、そのC末端に、アミノ酸配列
を含む。
【0032】
一部の実施形態において、ビオチン結合タンパク質は、アミノ酸配列:
を含む。
【0033】
四量体を形成する既知のビオチン結合タンパク質と比較して、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、二量体を形成する。理論に拘束されることを望むものではないが、二量体を形成することにより、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質の大腸菌における可溶性タンパク質としての発現をさらに向上させることができる。
【0034】
ビオチン結合タンパク質は当技術分野で公知であるが、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、当技術分野で現在公知であるアビジンおよびアビジン様タンパク質との有意差を含む。第1に、現在公知であるアビジンは、大腸菌において可溶性タンパク質として発現させることが極めて困難である。しかしながら、本発明者らが実証しているように、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、高収率で大腸菌において可溶性タンパク質として発現することができる。
【0035】
本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、大腸菌における発現によって、例えば、培養液1リットルあたり30mg以上の高収率にて、可溶性形態で得ることができる。したがって、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、当技術分野で記載されたものよりも可溶性であり、根本的な違いを示している。理論に拘束されることを望むものではないが、可溶性の差は、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質と当技術分野で公知である他のビオチン結合タンパク質との間の物理および/または化学および/または構造の根本的な違いに起因し得る。
【0036】
第2に、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、野生型リズアビジンのアミノ酸45〜179から成るビオチン結合ドメインを含む。野生型リズアビジンおよびその部分的切断部分は当技術分野で公知であるが、野生型リズアビジンのアミノ酸45〜179のアミノ酸配列を含みかつ大腸菌において高収率で得ることができる可溶性タンパク質をもたらし得る大腸菌シグナル配列を有するビオチン結合タンパク質については、当技術分野において開示も示唆もなされていない。Helppolainenら(Biochem J.,2007,405:397−405)によれば、野生型リズアビジンのアミノ酸25〜44は、推定シグナル配列を含む。しかしながら、本明細書で述べるように、本発明者らは、係る推定シグナル配列の大腸菌シグナル配列による置換が、大腸菌における可溶性形態のビオチン結合タンパク質発現の増加につながることを発見して実証した。
【0037】
第3に、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、アミノ酸配列
のペプチドを含む。C末端におけるこのペプチドは、精製のためのヒスチジンタグと、ビオチンタンパク質中への他のドメイン、例えば抗原ドメインの挿入のための場所とを提供する。さらに、Helppolainenら(Biochem J.,2007,405:397−405)が、大腸菌におけるリズアビジンの発現を記載しているが、Helppolainenらは、リズアビジンのビオチン結合ドメインのC末端に追加のペプチドをコンジュゲートすることに関して開示も示唆もしていない。
【0038】
第4に、リズアビジンは、他のアビジン様タンパク質と比較して、卵アビジンに対する配列相同性がより低い(22.4%の配列同一性および35.0%の類似性)。したがって、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、アビジンおよび他のアビジン様タンパク質とは異なる。
【0039】
第5に、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、アビジンおよび他のアビジン様分子と比較して、低い等電点(pI)を有する。野生型リズアビジンの等電点は、4.0である。(Helppolainen et al.,Biochem J.,2007,405:397−405)。他の既知のビオチン結合タンパク質の等電点は、概して、6.1以上である(Helppolainen et al.,Biochem J.,2007,405:397−405を参照)。比較すると、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質のpIは、5.4である。本明細書に記載の結合タンパク質の酸性pIは、非特異的結合の低減をもたらす。現在公知であるアビジンおよび他のアビジン様ペプチドの使用における問題は、その非特異的結合である。現在公知であるアビジンおよび他のアビジン様ペプチドは、細胞だけでなく、DNA、タンパク質、および膜等の生物学的物質にも非特異的に結合することができる。例えば、アビジン−ビオチン結合を使用した物質の検出において、アビジンは、検出されるべき対象物質以外の物質に非特異的に結合して、バックグラウンドを増加させる。アビジンの高い非特異的結合の理由の1つには、その高い等電点が含まれる。アビジンは、10以上の有意に高い等電点を有する強塩基性タンパク質であり、全体として正電荷を持つ。したがってアビジンは、多くの場合に負電荷を持つ生物学的物質に、容易に結合すると考えられる。したがって、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質の低いpIは、現在公知であるアビジンおよび他のアビジン様ペプチドよりも有利である。
【0040】
第6に、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質のサイズは、現在公知であるアビジンおよび他のアビジン様タンパク質と比べて、比較的小さい。ビオチン結合タンパク質は、28kDaよりも小さい(二量体サイズ)。しかしながら、現在公知であるアビジンおよび他のアビジン様タンパク質の大部分は全て、60kDaよりも大きなサイズを有する(四量体サイズ)。野生型リズアビジンは、サイズが約29kDa(二量体サイズ)であると言われる。小さなサイズのビオチン結合タンパク質を用いて、目的とする分子間の結合コンジュゲートの負荷量を増加させることができる。例えば、ビオチン結合タンパク質は、第1の目的とする分子を第2の目的とする分子とコンジュゲートさせるために使用することができる。目的とする分子のうちの一方を1つ以上のビオチンまたはビオチン様分子に結合させることができ、第2の分子を、ビオチン結合タンパク質に結合、コンジュゲート、または融合させることができる。本明細書に記載のビオチン−タンパク質の小さなサイズを考慮すると、ビオチンまたはビオチン様分子は、第2の分子がより大きな現在公知のアビジンおよび他のアビジン様分子であった場合よりも多くの結合を可能にするように、ともにより近接して配置されることができる。
【0041】
第7に、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、二量体である。二量体を形成することにより、可溶性タンパク質としての本明細書に記載のビオチン結合タンパク質の大腸菌における発現をさらに向上させることができる。加えて、ビオチン結合タンパク質が、他の全ての公知のアビジン様タンパク質のような四量体よりもむしろ二量体を形成するので、1)融合抗原の構造的複雑性が低減し、2)組み換えビオチン結合タンパク質融合タンパク質を発現させる困難さが同様に低減し、3)ビオチン結合タンパク質融合の操作の立体障害が最小になり、これは、例えば、限定されないが、ビオチン、ビオチン模倣剤、またはビオチン誘導体を用いたさらなる操作にとって、有利であり、かつ、4)ビオチン結合タンパク質融合の可溶性が大幅に増大する。したがって、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質と当技術分野で公知であるものとの間の根本的な違いを実証する。
【0042】
第8に、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、対象において卵に関連するアレルギー反応を誘導する同タンパク質を含む免疫原性組成物のリスクを低減させる。また、本明細書に記載のビオチン結合ドメインに対する抗体は、卵アビジンに対する明らかな交叉反応を有さない(逆も同様である)。
【0043】
さらに、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、野生型リズアビジンの特性を保持しながら、非特異的結合の低減またはビオチン結合のさらなる向上等の特性の改善を有することができる。アビジン−ビオチン結合を利用して被分析物を測定するための、例えば免疫学的検定または核酸ハイブリダイゼーション分析における検出のための、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質の使用は、バックグラウンドを低減させ、感度を増加させ、かつ厳しい条件でのビオチンとの結合特性を維持することができる。
【0044】
本研究は、アビジンおよび他のアビジン様タンパク質と比べた、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質の利点および差異を明確に実証する。したがって、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、アビジン−ビオチン技術を利用した広範囲の用途において、強力かつ多用途のツールとしての潜在性を有する。
【0045】
非限定的に、ビオチン結合タンパク質は、アビジン−ビオチン系の使用を必要とする任意の方法論、組成、またはシステムで使用することができる。当業者がよく認識しているように、アビジン−ビオチン系は、バイオコンジュゲート、標的分子検出、試料からの標的分子単離、精製、または濃縮、タンパク質検出、核酸検出、タンパク質単離、精製、または濃縮、核酸単離、精製、または濃縮、ELISA、フローサイトメトリ、および同等物等の多数の研究室方法に使用することができる。
【0046】
したがって、本明細書に記載の組み換えビオチン結合タンパク質の例示的な使用は、限定されないが、バイオコンジュゲート、標的分子検出、試料からの標的分子単離、精製、または濃縮、タンパク質検出、核酸検出、タンパク質単離、精製、または濃縮、核酸単離、精製、または濃縮、ELISA、フローサイトメトリ、および同等物を含む。
【0047】
一部の実施形態において、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質は、その全ての内容が、その全体で参照することにより本明細書に組み込まれる、2012年5月11日出願の米国仮出願第61/48,934号、2012年3月8日出願の米国仮出願第61/608,168号、および2012年3月13日出願の米国仮出願第61/609,974号、2012年5月11日出願のPCT出願PCT/US第12/37412号で説明されているように、多重抗原提示系(MAPS)で親和性ペアの一部として使用することができる。MAPSはまた、以下でさらに詳細に説明される。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載のビオチン結合タンパク質の使用は、対象において卵によるアレルギー反応を誘導するというMAPSのリスクを低減させる。また、組み換え修飾リズアビジンに対する抗体は、卵アビジンに対する明らかな交叉反応を有さない(逆も同様である)。
【0048】
脂質付加ビオチン結合タンパク質
別の態様では、脂質付加ビオチン結合タンパク質が本明細書で提供される。本明細書で使用される際、「脂質付加ビオチン結合タンパク質」という用語は、脂質と共有結合的にコンジュゲートされるビオチン結合タンパク質を指す。脂質部分は、ジアシル脂質またはトリアシル脂質であり得る。
【0049】
脂質付加ビオチン結合タンパク質は、脂質付加配列を使用して作製することができる。本明細書で説明されるように、「脂質付加配列」という用語は、細菌、例えば大腸菌において、脂質付加配列を運搬するポリペプチドの脂質付加を促進するアミノ酸配列を指す。脂質付加配列は、タンパク質のN末端またはC末端に存在することができる。従来の組み換え技術によって大腸菌において発現されたときに脂質付加形態となる融合タンパク質を形成するために、脂質付加配列を、組み換えビオチン結合タンパク質に連結させることができる。一部の実施形態において、脂質付加配列は、ビオチン結合タンパク質のN末端に位置する。
【0050】
当業者に公知である任意の脂質付加配列を使用することができる。一部の実施形態において、脂質付加配列は、
、またはその誘導体あるいは機能性部分である。他の例示的な脂質付加配列は、限定されないが、
、およびその誘導体または機能性部分を含む。
【0051】
一部の実施形態において、脂質付加配列を、ペプチドリンカーを介してビオチン結合タンパク質に融合させることができ、ここで該ペプチドリンカーが該脂質付加配列をビオチン結合タンパク質に付着させる。
【0052】
一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列VSDP(配列番号:9)を含む。
【0053】
一実施形態では、ビオチン結合脂質タンパク質は、アミノ酸配列
を含む。
【0054】
脂質付加ビオチン結合タンパク質は、Toll様受容体(TLR)のリガンドである。本明細書に記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質は、このように、TLRリガンドとして使用することができる。例えば、脂質付加ビオチン結合タンパク質を、TLR2刺激を誘導するための組成物中で用いることができる。これは、他の抗原/病原体への免疫原性を誘導するために有用であり得る。したがって、ビオチン結合リポタンパク質は、抗原に対する共刺激因子またはアジュバントとして免疫原性組成物中で使用することができる。
【0055】
本明細書で使用される際、「Toll様受容体」という用語は、一般に、任意の種の生物の任意のToll様受容体を指すように意図されている。TLRは、任意の哺乳類種に由来し得る。TLRは、限定されないが、例えばヒト、モルモット、およびマウスを含む、種々の哺乳類種で同定されている。起源の種(例えば、ヒト、マウス等)、特定受容体(例えば、TLR2、TLR3、TLR9等)、または両方を付加的に参照することにより、特定のTLRを同定することができる。一部の実施形態において、脂質付加ビオチン結合タンパク質は、TLR2のリガンドである。
【0056】
Toll様受容体(TLR)は、自然免疫系の病原体認識および活性化を促進する、一群の生殖細胞系にコードされた膜貫通タンパク質である。Toll様受容体(TLR)は、パターン認識受容体(PRR)であり、マクロファージ、樹状細胞、およびNK細胞を含む、自然免疫系の細胞によって発現される。TLRの既知のリガンドの例は、グラム陽性菌(TLR−2)、細菌内毒素(TLR−4)、フラジェリンタンパク質(TLR−5)、細菌DNA(TLR−9)、二本鎖RNAおよびポリI:C(TLR−3)、および酵母(TLR−2)を含む。細胞内パターン認識受容体、スカベンジャー受容体、またはマンノース結合受容体に結合する他のリガンドもまた、本発明によって考慮することができる。TLRは、保存的な病原体由来リガンドに係合し、後に、種々のエフェクタ遺伝子を誘導するようにTLR/IL−1Rシグナル変換経路を活性化する。Toll様受容体(TLR)は、病原体または微生物関連分子パターンを感知することができる、重要なPRR群を表す。それらは、多くの種類の細胞、特に樹状細胞(DC)だけでなく、マクロファージ、上皮細胞、およびリンパ球によっても、血液、脾臓、肺、筋肉、および腸において広く発現される。
【0057】
細胞表面上に位置するTLRのいくつかは微生物の脂質およびタンパク質に特異的である一方で、細胞の内側のエンドソーム区画に結合する他のTLRは核酸に特異的である。それらの特異的リガンドによるTLRのライゲーションは、受容体の立体配座変化をもたらし、MyD88およびTRIF依存性経路を主に伴う下流シグナル変換につながる。TLR3を除く全ての他のTLRは、炎症性サイトカインを誘導するために、MyD88経路を通してシグナル伝達することができ、これは、IBキナーゼ(IKK)−NF−Bを含む細胞内タンパク質キナーゼカスケード、および細胞外シグナル調節タンパク質キナーゼ(ERK)、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)、およびp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)の活性化を伴う。MyD88から独立しているTRIF経路はTLR3およびTLR4の両方によって利用され、I型インターフェロンの誘導を仲介する。
【0058】
本明細書に記載の組み換えビオチン結合リポタンパク質は、強化された免疫原性を有する。理論に拘束されることを望むものではないが、リポタンパク質またはリポペプチドのN末端における脂質部分は、アジュバント活性に寄与する。したがって、追加の実施形態は、単離ビオチン結合リポタンパク質もしくはその生体内発現のための好適なベクターまたは両方と、好適なキャリアとを含む、免疫反応を誘導するための免疫原性組成物またはワクチン組成物、ならびに、単離組み換えビオチン結合リポタンパク質、組み換えビオチン結合リポタンパク質を発現させるベクター、または組み換えリポタンパク質もしくはベクターを含有する組成物を、反応を誘発するのに十分な量で宿主に投与する工程を含む、免疫反応または防御反応を誘発するための方法を提供する。
【0059】
ビオチン結合リポタンパク質を含む免疫組成物または免疫原性組成物は、局所的または全身的な免疫反応を誘発する。反応は、防御反応であり得るが、その必要はない。本明細書で使用される際、「免疫組成物」および「免疫原性組成物」という用語は、(係る用語が防御組成物であり得るため)「ワクチン組成物」を含むことに留意されたい。本明細書に記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質は、非限定的に、免疫組成物、免疫原性組成物、またはワクチン組成物の中の抗原、アジュバント、または共刺激因子として使用することができる。さらに、脂質付加ビオチン結合タンパク質がビオチン結合ドメインを含むため、脂質付加タンパク質は、MAPSのポリマー骨格に組み込むことができる。したがって、本明細書ではまた、宿主哺乳類において免疫反応を誘導する方法も提供される。本方法は、本明細書に記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質と、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む、免疫原性組成物、免疫組成物、またはワクチン組成物を宿主に投与する工程を含む。
【0060】
一部の実施形態において、脂質付加ビオチン結合タンパク質は、脂質付加ビオチン結合タンパク質と、タンパク質またはペプチドとを含む、融合タンパク質である。
【0061】
非溶血性Hla
溶血素は、赤血球の溶解を引き起こす細菌によって産生される外毒素である。極めて免疫原性であるが、ワクチンでのそれらの使用は、赤血球の溶解を引き起こすため限定されている。したがって、別の態様では、黄色ブドウ球菌α溶血素(Hla)の変種、ビオチン結合タンパク質とのその融合構築物、およびその使用が、本明細書で提供される。本明細書では「mHla」と指定されるこれらの変種は、実質的に非溶血性、即ち、実質的に低い溶血活性を有する。本明細書で使用される際、「実質的に非溶血性」という語句は、等しい力価の野生型Hlaで赤血球を溶解させることができないことを意味する。「野生型Hla」という用語は、かかる語句と関連付けられる通常の定義、即ち、有能細菌源によって自然に分泌されるHlaである。定義によって「野生型Hla」は、例えば、組み換えDNA技法を介して導出されるHla融合生成物を含まない。一部の実施形態において、mHlaの溶血活性は、等しい力価の野生型Hlaより少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも
25%、少なくとも30%
、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%低い。一部の実施形態において、mHlaは、検出可能な溶血活性を持たない。本発明者らはまた、mHlaをビオチン結合タンパク質と連結させることによってmHlaの溶血活性をさらに低減できることを見出した。したがって、本開示はまた、mHlaタンパク質とビオチン結合タンパク質とを含む、融合タンパク質も説明する。
【0062】
本明細書で提供されるように、野生型Hla中の残基W205またはW213がアラニン(A)で置換されたかまたはトリペプチドDRD209〜211がトリアラニンペプチド(AAA)で置換された、非溶血性Hlaを作製することができる。突然変異Hlaタンパク質を大腸菌発現系において発現させ、精製することができる。突然変異体は、迅速変化突然変異誘発を使用した点突然変異によって作製することができる。例えば、野生型Hlaの中の所与のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるように、野生型Hlaをコードする核酸のヌクレオチド配列を変化させることができる。
【0063】
一部の実施形態において、mHlaは、mHlaと、ビオチン結合タンパク質とを含む、融合タンパク質である。一部の実施形態において、ビオチン結合mHla融合タンパク質は、アミノ酸配列
を含む。
【0064】
本明細書に記載のHla変種は、Toll様受容体(TLR)のリガンドである。本明細書に記載のHla変種は、このように、TLRリガンドとして使用することができる。例えば、Hla変種は、TLR2刺激を誘導するための組成物中で使用することができる。これは、他の抗原/病原体への免疫原性を誘導するために有用であり得る。したがって、本明細書に記載のHla変種は、抗原に対する共刺激因子またはアジュバントとして免疫原性組成物中で使用することができる。さらに、mHlaをビオチン結合タンパク質と融合させると、該融合タンパク質は、MAPSのポリマー骨格とコンジュゲートすることができる。
【0065】
一部の実施形態において、mHlaは、免疫原性組成物またはワクチン組成物の中の共刺激因子として使用することができる。
【0066】
さらに、mHlaが対象において免疫応答を誘導するため、mHlaは、黄色ブドウ球菌に対して対象にワクチン接種するための免疫原性組成物またはワクチン組成物の中で使用することができる。
【0067】
本明細書に記載のmHlaは、強化された免疫原性を有する。したがって、追加の実施形態は、mHla、またはその生体内発現のための好適なベクター、あるいは両方と、好適なキャリアとを含む、免疫反応を誘導するための免疫原性組成物またはワクチン組成物、ならびに、反応を誘発するのに十分な量で、単離mHla、mHlaを発現させるベクター、またはmHlaもしくはベクターを含有する組成物を宿主に投与する工程を含む、免疫反応または防御反応を誘発するための方法を提供する。
【0068】
mHlaを含む免疫組成物または免疫原性組成物は、局所的または全身的な免疫反応を誘発することができる。反応は、防御反応であり得るが、その必要はない。したがって、本明細書に記載のHlaの非溶血性突然変異体は、免疫組成物、免疫原性組成物、またはワクチン組成物の中の抗原、アジュバント、または共刺激因子として存在し得る。
【0069】
さらに、本明細書ではまた、宿主哺乳類において免疫反応を誘導する方法も提供される。本方法は、本明細書に記載のHlaの非溶血性突然変異体と、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む、免疫原性組成物、免疫組成物、またはワクチン組成物を宿主に投与する工程を含む。
【0070】
別の態様では、抗原性タンパク質またはペプチドに連結された本明細書に記載のビオチン結合タンパク質を含む融合タンパク質が、本明細書で提供される。これらの融合タンパク質はまた、本明細書ではビオチン結合融合タンパク質および抗原融合タンパク質とも称される。ビオチン結合タンパク質および抗原性タンパク質またはペプチドは、任意の構成で結合させることができ、例えば、ビオチン結合タンパク質が融合タンパク質のN末端に、抗原ペプチドがC末端にあり得、またはその逆も同様である。
【0071】
一部の実施形態において、ビオチン結合タンパク質および抗原性タンパク質またはペプチドは、ペプチドリンカーによって相互に連結される。ペプチドリンカーは非限定的に、任意のアミノ酸配列を含むことができ、任意の長さであり得る。例えば、ペプチドリンカー配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15アミノ酸長以上であり得る。一部の実施形態において、抗原ドメインをビオチン結合ドメインに連結させるペプチドリンカーは、8アミノ酸長である。
【0072】
一部の実施形態において、抗原ドメインをビオチン結合ドメインに連結させるペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGGSSS(配列番号:22)を有する。
【0073】
一部の実施形態において、抗原性タンパク質は、本明細書に記載の非溶血性Hlaである。
【0074】
一部の実施形態において、非溶血性Hlaタンパク質は、ビオチン結合タンパク質と、本明細書に記載の非溶血性Hlaとを含む、融合タンパク質である。
【0075】
一部の実施形態において、非溶血性Hlaタンパク質は、脂質付加ビオチン結合タンパク質と、本明細書に記載の非溶血性Hlaとを含む、融合タンパク質である。
【0076】
免疫原性組成物
別の態様では、抗原融合タンパク質、脂質付加ビオチン結合、または本明細書に記載のHlaの非溶血性変種を含む免疫原性組成物が、本明細書で提供される。加えて、本明細書ではまた、ポリマー骨格に付着した少なくとも1つの抗原融合タンパク質または複数の抗原融合タンパク質を含む免疫原性複合体を含む、免疫原性組成物およびワクチン組成物であって、対象に投与された場合に、該ポリマーに付着した抗原の各々に対するおよび任意で該ポリマー自体に対する免疫応答を誘発する際に使用するための、免疫原性組成物およびワクチン組成物も提供される。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載の免疫原性組成物は、体液性免疫および細胞性免疫応答を刺激する;これは、単一のMAPS免疫原性構築物を使用して、複数のタンパク質抗原に対する抗体応答およびTh1/Th17応答を生成することができる。生命体に対するBおよびT細胞免疫の組み合わせは、肺炎球菌疾患関連の侵襲性感染および鼻咽頭輸送を含む、多くの疾患に対する最適なワクチン戦略を表す。一部の実施形態において、免疫原性組成物は、ワクチンであるか、またはワクチンに含まれる。
【0077】
したがって、本明細書における実施形態は、対象において免疫応答を高めるために有用な免疫原性組成物および方法を提供し、それのみで、または本質的に任意の既存のワクチン手法とともにもしくは混合で、使用することができる。
【0078】
一部の実施形態において、本明細書で開示されるような免疫原性組成物は、少なくとも2つの抗原、または少なくとも3つの抗原、または少なくとも5つの抗原、または2〜10の抗原、または10〜15の抗原、または15〜20の抗原、または20〜50の抗原、または50〜100の抗原、または100よりも多くの抗原を含む。一部の実施形態において、本明細書で開示されるような免疫原性組成物が、少なくとも2つの抗原を含む場合、抗原は、同じ抗原または少なくとも2つの異なる抗原であり得る。一部の実施形態において、抗原は、同じもしくは異なる病原体からとすることができるか、または同じ抗原性タンパク質の異なるエピトープもしくは部分とすることができるか、または同じ病原体の異なる血清型もしくは季節性変型(例えば、インフルエンザウイルスA、B、およびC)に特異的である、同じ抗原とすることができる。
【0079】
一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物は、病原性生命体または異常組織からの抗原を含む。一部の実施形態において、抗原は、腫瘍抗原である。一部の実施形態において、抗原は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)もしくは破傷風菌(M. tetanus)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、HIV、季節性もしくは流行性インフルエンザ抗原(H1N1もしくはH5N1等)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、または淋菌(N. gonorrhoeae)、HPV、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、HSV、または他のヘルペスウイルス、またはプラスモジウム(Plasmodia)属の抗原等の病原体または寄生生物の抗原より選択される少なくとも1つの抗原であり得る。これらの抗原は、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、または多糖を含んでもよい。一部の実施形態において、抗原は、トキソイドまたは毒素の部分である。
【0080】
一部の実施形態において、本明細書で開示されるような免疫原性組成物は、例えば、Vi抗原(チフス菌(Salmonella typhi)莢膜多糖)、肺炎球菌莢膜多糖、肺炎球菌細胞壁多糖、Hib(ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)B型)莢膜多糖、髄膜炎菌莢膜多糖、および他の細菌莢膜もしくは細胞壁多糖、またはこれらの任意の組み合わせといった、抗原性多糖を含む。多糖は、タンパク質構成要素、例えばウイルスに由来するもの等の糖タンパク質を有し得る。
【0081】
一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物は、ポリマーまたは多糖と会合する少なくとも1つの共刺激因子をさらに含み、共刺激因子は、直接的にまたは間接的に会合することができる。例えば、一部の実施形態において、共刺激因子はポリマーに共有結合することができる。例えば、一部の実施形態において、共刺激因子は第1の親和性分子に共有結合することができ、これは次いでポリマーに架橋結合する。例えば一部の実施形態において、共刺激因子は相補的親和性分子に付着することができ、これが第1の親和性分子と会合して、該共刺激因子をポリマーに連結させる。一部の実施形態において、共刺激因子は、アジュバントである。代替的な実施形態において、共刺激因子は、当業者に公知であるいずれかであり得、任意の組み合わせ、例えば、非限定的に、Toll様受容体アゴニスト(TLR2、3、4、5、7、8、9等に対するアゴニスト)、NODアゴニスト、またはインフラマソームのアゴニストを含む。
【0082】
一部の実施形態において、共刺激因子は、脂質付加ビオチン結合タンパク質、またはα溶血素の非溶血性変種、または本明細書に記載のビオチン結合タンパク質とmHlaの融合タンパク質であり得る。
【0083】
本発明の別の態様は、対象における免疫応答を誘発するように対象に投与される、本明細書で開示されるような免疫原性組成物の使用に関する。一部の実施形態において、免疫応答は、抗体/B細胞応答、CD4
+T細胞応答(Th1、Th2、およびTh17細胞を含む)、および/またはCD8
+T細胞応答である。一部の実施形態において、少なくとも1つのアジュバントが、免疫原性組成物とともに投与される。
【0084】
本発明の別の態様は、本明細書で開示されるような免疫原性組成物を対象に投与する工程を含む、対象において少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を誘導するための方法に関する。
【0085】
本発明の別の態様は、本明細書で開示されるような免疫原性組成物を含むワクチン組成物を投与する工程を含む、少なくとも1つの抗原に対して、動物、例えばトリ、哺乳類、またはヒトにワクチン接種する方法に関する。
【0086】
本明細書で開示されるような全ての態様において、動物または対象はヒトとすることができる。一部の実施形態において、対象は、農耕動物もしくは野生動物、または飼育動物とすることができる。一部の実施形態において、本明細書で開示されるような免疫原性組成物を含むワクチン組成物は、皮下、鼻腔内、経口、舌下、膣内、直腸内、皮内、腹腔内、または筋肉内注射を介して投与することができる。
【0087】
本明細書で開示されるような全ての態様において、免疫応答は、1つまたは複数のタンパク質/ペプチド抗原に対する、抗体/B細胞応答、CD4
+T細胞応答(Th1、Th2、およびTh17応答を含む)、またはCD8+T細胞応答である。一部の実施形態において、免疫応答は、ポリマー、例えば肺炎球菌多糖に対する抗体/B細胞応答である。一部の実施形態において、少なくとも1つのアジュバントが、免疫原性組成物とともに投与される。
【0088】
本発明の別の態様は、病原体または免疫原性物質への曝露に関する診断における使用のための、本明細書で開示されるような免疫原性組成物の使用に関する。
【0089】
多重抗原提示系
本明細書ではまた、ワクチンにおいて有用なもの等の免疫原性組成物の産生に有用である、免疫原性多重抗原提示系(MAPS)も提供される。特に、本発明は、任意で抗原性であり得る少なくとも1つのタイプのポリマー、例えば多糖と;少なくとも1つの抗原性タンパク質またはペプチドと;第1の親和性分子および相補的親和性分子が該ポリマーと該抗原性タンパク質またはペプチドとの間の間接的連結として働くように(i)該ポリマーと会合する第1の親和性分子、および(ii)該タンパク質またはペプチドと会合する相補的親和性分子を含む、少なくとも一対の相補的親和性分子とを含む、免疫原性複合体を含む組成物に関する。したがって、ポリマーは、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または複数の同じもしくは異なるタンパク質またはペプチド抗原を付着させることができる。一部の実施形態において、ポリマーは抗原性であり、例えば、ポリマーは肺炎球菌莢膜多糖である。一部の実施形態において、タンパク質またはペプチド抗原は組み換えタンパク質またはペプチド抗原である。
【0090】
本明細書で開示されるような免疫原性組成物は、1つまたは複数の抗原に対する体液性応答および細胞応答の両方を同時に誘発することができる。免疫原性組成物は、長期にわたる記憶応答を提供し、潜在的に、将来の感染から対象を保護する。これは、機能的抗多糖抗体の高い力価を高め、かつ従来のコンジュゲートワクチンによって誘導される抗体レベルと同様であるか、または遜色がない、単一の免疫原性組成物を可能にする。さらに、特定のキャリアタンパク質に制限されず、かつ、頑強な抗多糖抗体応答を生成するためにMAPS構築物において種々の抗原タンパク質を使用することができる。
【0091】
加えて、強力な抗体応答およびTh17/Th1応答は、MAPS組成物を介して提示される複数のタンパク質抗原に特異的である。これは、1つの構築物で2つの形態の免疫を誘発するための手段として、主要な利点を提示する。タンパク質キャリアにコンジュゲートされた抗原性多糖に対するより従来的な免疫応答に加えて、本発明は、全身的に注射されるタンパク質に対するT細胞応答、より具体的にはTh17およびTh1応答を提供する。さらに、本免疫原性組成物は、ポリマー骨格上へリガンドを組み込むことができる。これは、タンパク質/ポリマー比率、複合体サイズを修正することによって、またはTLR2/4リガンド等の特定の共刺激因子を組成物に組み込むことによって、特定のB細胞またはT細胞応答を増強する可能性を提供する。
【0092】
タンパク質の厳しい処理を含む典型的なコンジュゲート技術と比較して、本方法は、ペプチド抗原の他の修飾の変性のリスクを回避する。これは、含まれたタンパク質の抗原性を保存するという実質的な利点を提供し、タンパク質自体が(単にキャリアというよりもむしろ)抗原として働く可能性を増加させる。同様に、本方法は、重度の化学架橋がないため、多糖骨格の不必要な修飾/損傷を回避し、ビオチン化を、多糖の特定の官能基と反応するように正確に制御することができ、ビオチン化レベルを容易に調節することができる。これは、免疫原性の低下および保護を引き起こし得る重要な側鎖またはエピトープへの損傷をもたらす、コンジュゲートの典型的なプロセスを回避する上で有利である。
【0093】
本願の親和性ベースのアセンブリは、免疫原性組成物の容易で、かつ高度に柔軟性のある調製を提供する。これは、高度に特異的かつ安定的であり、数か月間冷所におくことができ、その効力を保持することができる。アセンブリプロセスは、高い再現性を保証するのに十分な程単純である;数ステップしか必要でなく、これにより、ロット間の変動リスクが低下し、産業的に大いに有利である。MAPSアセンブリは、低濃度のタンパク質および多糖(0.1mg/ml等)でさえも高度に効率的である(95%以上);コンジュゲート作製における非効率性(典型的に、効率は<50%の範囲内である)が主要な障害およびワクチンのコストが高い理由に相当するため、このことは大きな利点である。製剤化について、最終生成物の組成および物理的特性を調節することは容易である。複合体におけるタンパク質:ポリマー比率は調節可能である;ポリマーの中程度のビオチン化では、タンパク質:ポリマーは10:1(w/w)以上であり得;反対に、それが免疫学的目標に基づく関心対象である場合、比率は1:10以下であり得る。加えて、免疫原性MAPS組成物のサイズは、ポリマーサイズの選択によって調節することができる。MAPSを作製する本方法は、ほとんど修飾することなくタンパク質およびポリマーを組み合わせる上での容易性を提供する。単一の免疫原性構築物において同じまたは異なる病原体(例えば、肺炎球菌および結核)からの複数のタンパク質抗原を負荷することによる最終生成物の潜在的な多価は、2つ以上の疾患に対して対象を免疫化するのに必要なワクチンの数を減少させるために使用することができる、組成物を提供する。さらに、MAPS組成物は高度に安定的であり、煮沸でしか解離せず、4℃では何か月後も免疫原性を維持する。MAPS複合体の免疫原性は、抗原性タンパク質またはペプチド構成要素の安定性によって制限され得、この安定性は、MAPS複合体に包含されることによって延長され得る。本明細書において使用される特異的な抗原は、室温で、かつ少なくとも1つの凍結融解サイクル後、安定性を呈した。これは、「コールドチェーン」が注意深く維持されなければ支障を来す現在のワクチンに勝る重要な利点を提供する。
【0094】
したがって、本発明の一態様は、ポリマーと、少なくとも1つのタンパク質またはペプチド抗原と、少なくとも一対の相補的親和性分子とを含む、免疫原性組成物に関し、相補的親和性分子の対は、第1の親和性分子が相補的親和性分子と会合する時に間接的に該抗原を該ポリマーに連結させるように、該ポリマーと会合する第1の親和性分子と、該タンパク質またはペプチド抗原と会合する相補的親和性分子とを含む。
【0095】
一部の実施形態において、第1の親和性分子は、架橋試薬、例えばCDAP(1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート)、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]塩酸カルボジイミド)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、臭化シアン、または重炭酸アンモニウム/ヨード酢酸より選択される架橋試薬を用いて、ポリマーに架橋される。一部の実施形態において、第1の親和性分子は、ポリマーのカルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、フェノキシル、ヘミアセタール、およびメルカプト官能基に架橋される。一部の実施形態において、第1の親和性分子は、ポリマーに共有結合される。
【0096】
一部の実施形態において、第1の親和性分子は、ビオチンまたはその誘導体、あるいはビオチンと類似の構造または物理的特性を伴う分子、例えばアミン−PEG3−ビオチン((+)−ビオチン化−3−6,9−トリクサウンデカンジアミン)またはその誘導体である。
【0097】
一部の実施形態において、免疫原性組成物のタンパク質またはペプチド抗原は、相補的親和性結合分子と融合する抗原性タンパク質またはペプチドを含む、融合タンパク質である。融合は、遺伝子構築物、即ち、組み換え融合ペプチドまたはタンパク質であり得る。一部の実施形態において、抗原は、融合タンパク質として、相補的親和性分子に共有結合することができる。代替的な実施形態において、抗原は、相補的親和性分子に非共有結合する。
【0098】
一部の実施形態において、相補的親和性分子は、ビオチン結合タンパク質、またはその誘導体もしくは機能性部分である。一部の実施形態において、相補的親和性分子は、例えばリズアビジンまたはその誘導体であるがこれに限定されない、アビジン様タンパク質またはその誘導体もしくは機能性部分である。一部の実施形態において、相補的親和性分子は、アビジンまたはストレプトアビジン、あるいはその誘導体もしくは機能性部分である。
【0099】
一部の実施形態において、分泌シグナルペプチドは、アビジン様タンパク質のN末端に位置する。当業者に公知である任意のシグナル配列を使用することができ、一部の実施形態において、シグナル配列は、
、またはその誘導体もしくは機能性部分である。一部の実施形態において、抗原を、柔軟性のあるリンカーペプチドを介して相補的親和性分子に融合させることができ、該柔軟性のあるリンカーペプチドが、該抗原を該相補的親和性分子に付着させる。
【0100】
一部の実施形態において、イムノゲンのポリマー構成要素は、生きた生命体に由来するポリマー、例えば多糖を含む。一部の実施形態において、ポリマーは、天然源から精製および単離することができるか、またはそれは、天然組成物/構造と同様に合成することができるか、またはそれは、合成(例えば、人工組成物/構造との)ポリマーとすることができる。一部の実施形態において、ポリマーは、細菌、古細菌、または真菌のような真核細胞、昆虫、植物、もしくはそのキメラから成る群より選択される生命体に由来する。一部の実施形態において、ポリマーは、病原性細菌に由来する多糖である。特定の実施形態において、多糖は、肺炎球菌莢膜多糖、肺炎球菌細胞壁多糖、またはチフス菌Vi多糖である。
【0101】
一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物のポリマーは、分岐鎖ポリマー、例えば分岐多糖であるか、または代替的に、直鎖ポリマー、例えば単一鎖ポリマー、例えば多糖とすることができる。一部の実施形態において、ポリマーは多糖、例えばデキストランまたはその誘導体である。一部の実施形態において、ポリマー、例えばデキストラン多糖は、425kD〜500kDaを含むか、または、一部の実施形態において、500kDa超の平均分子量とすることができる。一部の実施形態において、ポリマー、例えばデキストラン多糖は、60kD〜90kDaを含むか、または、一部の実施形態において、70kDaよりも小さな平均分子量とすることができる。デキストランポリマーは、ロイコノストック・メセントロイデス(Leuconostoc mesenteroides)等の細菌に由来し得る。
【0102】
一部の実施形態において、本明細書で開示されるような免疫原性組成物は、少なくとも2つの抗原、または少なくとも3つの抗原、または少なくとも5つの抗原、または2〜10の抗原、または10〜15の抗原、または15〜20の抗原、または20〜50の抗原、または50〜100の抗原、または100よりも多くの抗原を含む。一部の実施形態において、本明細書で開示されるような免疫原性組成物が、少なくとも2つの抗原を含む場合、抗原は、同じ抗原または少なくとも2つの異なる抗原であり得る。一部の実施形態において、抗原は、同じもしくは異なる病原体に由来し得る、または同じ抗原性タンパク質の異なるエピトープもしくは部分であり得る、または同じ病原体の異なる血清型もしくは季節性変型(例えば、インフルエンザウイルスA、B、およびC)に特異的である同じ抗原であり得る。
【0103】
一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物は、病原性生命体または異常組織からの抗原を含む。一部の実施形態において、抗原は、腫瘍抗原である。一部の実施形態において、抗原は、肺炎連鎖球菌、結核菌もしくは破傷風菌、炭疽菌、HIV、季節性もしくは流行性インフルエンザ抗原(H1N1もしくはH5N1等)、百日咳菌、黄色ブドウ球菌、髄膜炎菌、または淋菌、HPV、クラミジア・トラコマチス、HSV、または他のヘルペスウイルス、またはプラスモジウム属の抗原等の病原体または寄生生物の抗原より選択される少なくとも1つの抗原であり得る。これらの抗原は、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、または多糖を含んでもよい。一部の実施形態において、抗原は、トキソイドまたは毒素の部分である。
【0104】
一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物は、例えばVi抗原(チフス菌莢膜多糖)、肺炎球菌莢膜多糖、肺炎球菌細胞壁多糖、Hib(ヘモフィルスインフルエンザB型)莢膜多糖、髄膜炎菌莢膜多糖、炭疽菌(炭疽病の原因物質)の多糖、および他の細菌莢膜もしくは細胞壁多糖、またはこれらの任意の組み合わせといった、抗原性多糖を含む。多糖は、タンパク質構成要素、例えばウイルス由来のものなどの、糖タンパク質を有し得る。
【0105】
一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物は、ポリマーまたは多糖と会合する少なくとも1つの共刺激因子をさらに含み、共刺激因子は、直接的にまたは間接的に会合することができる。例えば、一部の実施形態において、共刺激因子はポリマーに共有結合することができる。例えば、一部の実施形態において、共刺激因子は第1の親和性分子に共有結合することができ、これは次いでポリマーに架橋結合する。例えば一部の実施形態において、共刺激因子は相補的親和性分子に付着することができ、これが第1の親和性分子と会合して、該共刺激因子をポリマーに連結させる。一部の実施形態において、共刺激因子は、アジュバントである。代替的な実施形態において、共刺激因子は、当業者に公知であるいずれかであり得、任意の組み合わせ、例えば、非限定的に、Toll様受容体アゴニスト(TLR2、3、4、5、7、8、9等に対するアゴニスト)、NODアゴニスト、またはインフラマソームのアゴニストを含む。
【0106】
本発明の別の態様は、対象における免疫応答を誘発するように対象に投与される、本明細書で開示されるような免疫原性組成物の使用に関する。一部の実施形態において、免疫応答は、抗体/B細胞応答、CD4
+T細胞応答(Th1、Th2、およびTh17細胞を含む)、および/またはCD8
+T細胞応答である。一部の実施形態において、少なくとも1つのアジュバントが、免疫原性組成物とともに投与される。
【0107】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの抗原に対して、対象における免疫応答を誘導するための方法に関し、該方法は、対象に本明細書において開示される免疫原性組成物を投与する工程を含む。
【0108】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの抗原に対して、動物、例えばトリ、哺乳類、またはヒトにワクチン接種する方法に関し、該方法は、本明細書において開示される免疫原性組成物を含むワクチン組成物を投与する工程を含む。
【0109】
本明細書において開示される全ての態様において、動物または対象はヒトとすることができる。一部の実施形態において、対象は、農耕動物もしくは野生動物、または飼育動物とすることができる。一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物を含むワクチン組成物は、皮下、鼻腔内、経口、舌下、膣内、直腸内、皮内、腹腔内、筋肉内注射を介して、または経皮免疫化のための皮膚パッチを介して、投与することができる。
【0110】
本明細書で開示されるような全ての態様において、免疫応答は、1つまたは複数のタンパク質/ペプチド抗原に対する、抗体/B細胞応答、CD4
+T細胞応答(Th1、Th2、およびTh17応答を含む)、またはCD8+T細胞応答である。一部の実施形態において、免疫応答は、ポリマー、例えば肺炎球菌多糖に対する抗体/B細胞応答である。一部の実施形態において、少なくとも1つのアジュバントは、免疫原性組成物とともに投与される。
【0111】
本発明の別の態様は、病原体または免疫原性物質への曝露に対する診断における使用のための本明細書において開示される免疫原性組成物の使用に関する。
【0112】
本明細書において開示される免疫原性組成物で、対象、例えば哺乳類、例えばヒトにワクチン接種する方法もまた、本明細書において提供され、該方法は、本明細書において開示されるワクチン組成物を対象に投与する工程を含む。
【0113】
概して、免疫原性組成物および免疫原性複合体を含む組成物は、対象に投与された場合に、ポリマーに付着した抗原の各々に対するおよび任意でポリマー自体に対する免疫応答を誘発する際に使用するための、ポリマー骨格に付着した少なくとも1つの抗原または複数の抗原を含むことができる。この多重抗原提示系(MAPS)は、体液性免疫応答および細胞免疫応答を刺激し、単一のMAPS免疫原性構築物を使用して、複数のタンパク質抗原に対する抗多糖抗体応答およびB細胞/Th1/Th17応答を生成することができる。生命体に対するBおよびT細胞免疫の組み合わせは、肺炎球菌疾患関連の侵襲性感染および鼻咽頭輸送を含む、多くの疾患に対する最適なワクチン戦略を表し得る。一部の実施形態において、免疫原性組成物は、ワクチンであるか、またはワクチンに含まれる。
【0114】
したがって、本発明の一態様は、少なくとも1つのポリマー、例えば1つの多糖と;少なくとも1つのタンパク質もしくはペプチド抗原と;該抗原を該ポリマーに間接的に付着させるように働く(例えば、第1の親和性分子が相補的親和性分子と会合して、該抗原を該ポリマーに連結させる)、(i)該ポリマーと会合する第1の親和性分子、および(ii)該抗原と会合する相補的親和性分子を含む、少なくとも一対の相補的親和性分子とを含む、免疫原性組成物(多重抗原提示系、またはMAPS)に関する。したがって、ポリマーは、同じもしくは異なる抗原のうちの少なくとも1つ、または少なくとも2つ、またはそれ以上(例えば、複数)を付着させるための骨格として使用することができる。本明細書において開示される免疫原性組成物は、多重抗原に対する体液性免疫および細胞免疫の両方を同時に誘発するために使用することができる。
【0115】
したがって、本明細書における実施形態は、対象において免疫応答を高めるために有用な免疫原性組成物および方法を提供し、それのみで、または本質的に任意の既存のワクチン手法とともにもしくは混合で、使用することができる。
【0116】
MAPSは、特定の、広範囲の、または種々の抗原性標的を誘発するように設計および製造することができる、柔軟性かつ多用途の組成物である。表1は、MAPS実施形態の柔軟性を想定するための単純な例示的指針を提供する。
【0117】
(表1)MAPSプラットフォームの多用途性
【0118】
ポリマー
MAPの一構成要素は、「骨格」、典型的にはポリマーから成る。ポリマーは、抗原性または非抗原性であり得る。これは、ポリマーが免疫原性的様式で免疫系に対して1つまたは複数の会合抗原を提示する手段として働くという条件で、本明細書に記載のように多種多様な物質で作製することができる。一部の実施形態において、ポリマーは、合成ポリマーである。一部の実施形態において、ポリマーは、天然ポリマー、例えば細菌細胞に由来またはそれから精製される多糖である。一部の実施形態において、多糖は、真核細胞、例えば真菌、昆虫、または植物細胞に由来、またはそれらから精製される。なお他の実施形態において、ポリマーは、ウイルス感染細胞または癌細胞といった、哺乳類細胞に由来する。一般的に、かかるポリマーは、当技術分野において公知であり、本明細書において開示される方法および組成物における使用のために包含される。
【0119】
一部の実施形態において、ポリマーは、以下のいずれかより選択される多糖である:デキストラン、チフス菌のVi多糖、肺炎球菌莢膜多糖、肺炎球菌細胞壁多糖(CWPS)、髄膜炎菌多糖、ヘモフィルスインフルエンザb型多糖、またはウイルス、原核生物、もしくは真核起源の任意の別の多糖。
【0120】
一部の実施形態において、多糖は、抗原性糖部分から成る、またはそれを含む。例えば、一部の実施形態において、本明細書において開示される方法および免疫原性組成物における使用のための多糖は、チフス菌のVi多糖である。Vi莢膜多糖は、腸チフスといった細菌腸内感染に対して開発されている。Robbins et al.,150 J.Infect.Dis.436(1984);Levine et al.,7 Baillieres Clin.Gastroenterol.501(1993)。Viは、C−2位にNアセチル、およびC−3位に可変O−アセチル化を有する、a−1→4−ガラクツロン酸のポリマーである。チフス菌の病原性は、この分子の発現と相関する。Sharma et al.,101 PNAS 17492(2004)。チフス菌のVi多糖ワクチンは、いくつかの利点を有する。副作用は、低頻度かつ軽度であり、単回投与は、一貫した免疫原性および有効性をもたらす。Vi多糖は、他の多糖ワクチンに対して検証された物理化学的方法によって確実に標準化され得、Viは、室温で安定しており、それは、免疫原性および耐性に影響することなく、他のワクチンと同時に投与されてもよい。 Azze et al.,21 Vaccine 2758(2003)。
【0121】
したがって、少なくとも1つの抗原をチフス菌のVi多糖に付着させるために、該多糖を、本明細書において開示されるように第1の親和性分子に架橋させてもよい。一部の実施形態において、抗原は、結果として生じる免疫原性組成物が、1つの病原体、または2つの異なる病原体に対する少なくともいくらかのレベルの免疫を付与するように、同じまたは別の生命体に由来し得る。抗原が、肺炎球菌に対する保護を付与する場合、ポリマー骨格がVi多糖である免疫原性組成物は、チフス菌および肺炎球菌の両方に対する免疫原性応答を高めることができる。他の例は、2つの異なる病原体に対する免疫応答を高める免疫原性組成物を提供するように、カプセル化された細菌(髄膜炎菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、Hib等)からの糖、および結核抗原を組み合わせることを含む。
【0122】
デキストラン、細菌細胞壁多糖(CWPS)等の代わりに本発明において使用され得る他の多糖(PS)部分としては、癌の炭水化物抗原が挙げられる。
【0123】
さらに、肺炎球菌多糖に関して、多糖は、例えば、限定されないが、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、6D、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、および33Fを含む、これまでに同定されている肺炎球菌の93以上の血清型のいずれかに由来することができる。追加の血清型が、本明細書に記載の本免疫原性組成物において同定され、含まれ得る。2つ以上の肺炎球菌多糖を、本免疫原性組成物のポリマー骨格として、または本MAPS組成物を含むワクチンに含むことができる。
【0124】
多糖はまた、本発明に由来することができ、免疫原性組成物は、血清群A、C、W、W135、またはYのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つからの髄膜炎菌莢膜多糖を含む。
【0125】
さらなる実施形態は、5型、8型、または黄色ブドウ球菌の多糖あるいはオリゴ糖のうちのいずれかを含む。
【0126】
一部の実施形態において、ポリマーは、2つ以上のタイプのポリマーを含む、キメラポリマーである。例えば、本明細書で開示されるような免疫原性組成物のポリマーは、ポリマーAの一部分、およびポリマーBの残りの部分を含むことができる。単一のMAPS骨格エンティティにおいて使用することができる、異なるタイプのポリマーの量に制限はない。一部の実施形態において、ポリマーが分岐ポリマーである場合、鎖ポリマーは、ポリマーAであり得、分岐は、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ以上の異なるポリマーであり得る。
【0127】
一部の実施形態において、ポリマーは、分岐ポリマーである。一部の実施形態において、ポリマーは、一本鎖ポリマーである。
【0128】
一部の実施形態において、ポリマーは、少なくとも10個の炭水化物繰り返し単位、または少なくとも20個、または少なくとも50個、または少なくとも75個、または少なくとも100個、または少なくとも150個、または少なくとも200個、または少なくとも250個、または少なくとも300個、または少なくとも350個、または少なくとも400個、または少なくとも450個、または少なくとも500個、または500個よりも多くを含む繰り返し単位を含む、多糖である。
【0129】
本発明の一態様において、多糖(PS)は、<500kDaまたは>500kDaの分子量を有することができる。本発明の別の態様において、PSは、<70kDaの分子量を有する。
【0130】
一部の実施形態において、ポリマーは、大きい分子量のポリマーであり、例えば、ポリマーは、約425〜500kDaを含む、例えば、少なくとも300kDa、または少なくとも350kDa、または少なくとも400kDa、または少なくとも425kDa、または少なくとも450kDa、または少なくとも500kDa、または500kDaより多くを含むが、典型的には、500kDa未満の平均分子量であり得る。
【0131】
一部の実施形態において、ポリマーは、小さい分子量のポリマーであり得、例えば、ポリマーは、約60kDA〜約90kDa、例えば、少なくとも50kDa、または少なくとも60kDa、または少なくとも70kDa、または少なくとも80kDa、または少なくとも90kDa、または少なくとも100kDa、または100kDaより多くを含むが、一般的には、約120kDa未満の平均分子量であり得る。
【0132】
一部の実施形態において、ポリマーは、天然源から採取および精製され、他の実施形態においては、ポリマーは、合成である。合成多糖を含む、合成ポリマーを生成するための方法は、当業者に既知であり、本明細書において開示される組成物および方法に包含される。
【0133】
1つ以上の抗原または抗原タイプに対する骨格としての機能を果たすことができる多糖ポリマーのうちの数個を、表2に例示する。
【0134】
(表2)例示的な多糖ポリマーMAPS骨格および関連する例示的な抗原
【0135】
本明細書に記載の免疫原性MAPS組成物において使用することができる追加のポリマーとしては、ポリエチレングリコール系ポリマー、ポリ(オルトエステル)ポリマー、ポリアクリルキャリア、PLGA、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、β−アミノエステルポリマー、ポリリン酸エステル(PPE)、リポソーム、ポリマーソーム、核酸、ホスホロチオエート化オリゴヌクレオチド、キトサン、シルク、高分子ミセル、タンパク質ポリマー、ウイルス粒子、ウイルス様粒子(VLP)、または他の微粒子が挙げられる。例えば、El−Sayed et al.,Smart Polymer Carriers for Enhanced Intracellular Delivery of Therapeutic Molecules,5 Exp.Op.Biol.Therapy,23(2005)を参照されたい。核酸送達のために開発される生体適合性ポリマーは、本明細書における骨格としての使用のために適合され得る。例えば、BIOCOMPATIBLE POL.NUCL.ACID.DELIV.(Domb et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.Hoboken,NJ,2011)を参照されたい。
【0136】
例えば、VLPは、ウイルスに似ているが、それらは、いかなるウイルス遺伝物質も含有しないため、非感染性である。エンベロープまたはカプシド構成要素といった、ウイルス構造タンパク質の組み換え発現を含む発現は、VLPの自己集合をもたらし得る。VLPは、パルボウイルス(例えば、アデノ関連ウイルス)、レトロウイルス(例えば、HIV)、およびフラビウイルス(例えば、BまたはC型肝炎ウイルス)を含む、多種多様なウイルスファミリーの構成要素から生成されている。VLPは、哺乳類細胞株、昆虫細胞株、酵母、および植物細胞を含む、多様な細胞培養系において生成することができる。組み換えVLPは、ウイルス構成要素を本明細書に記載の組み換え抗原に融合することができるため、特に有利である。
【0137】
抗原
本明細書で開示されるような融合タンパク質および免疫原性組成物は、対象において免疫応答を誘発する任意の抗原を含むことができる。一部の実施形態において、少なくとも1つ以上の抗原は、組成物のポリマーと会合される。一部の実施形態において、少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも5個、または少なくとも10個、または少なくとも15個、または少なくとも20個、または少なくとも50個、または少なくとも100個、または100個よりも多くの抗原が、本明細書において開示されるポリマーと会合してもよい。一部の実施形態において、免疫原性組成物が1個を超える抗原を含む場合、これらの抗原は同じ抗原であってもよく、またはこれらの抗原は、ポリマーと会合した多様な異なる抗原であってもよい。一部の実施形態において、免疫原性組成物が1個を超える抗原を含む場合、この抗原は、同じ病原体由来または異なる病原体由来の抗原であってもよく、あるいは代替的に、同じ病原体由来の異なる抗原、または異なる血清型の病原体由来の同様の抗原であってもよい。
【0138】
本明細書に記載の融合タンパク質および免疫原性組成物および方法で使用するための抗原は、限定されないが、病原性ペプチド、毒素、トキソイド、それらのサブユニット、またはそれらの組み合わせ(例えば、コレラ毒素、破傷風トキソイド)を含む、任意の抗原であり得る。
【0139】
一部の実施形態において、相補的親和性分子と融合されていてもよい抗原は、感染性疾患、または癌もしくは免疫疾患と関連するいかなる抗原であってもよい。一部の実施形態において、抗原は、ウイルス、細菌、真菌、または寄生生物を含む多様な感染因子のいずれによって発現された抗原であってもよい。
【0140】
一部の実施形態において、抗原は、病原性生命体に由来する(例えば、取得される)。一部の実施形態において、抗原は、癌抗原または腫瘍抗原、例えば腫瘍細胞または癌細胞に由来する抗原である。
【0141】
一部の実施形態において、病原性生命体に由来する抗原は、感染性疾患に関連する抗原であり、これはウイルス、細菌、真菌、または寄生生物を含む多様な感染病原体のいずれに由来してもよい。
【0142】
一部の実施形態において、標的抗原は、病態、例えば感染性疾患または病原体、あるいは癌または自己免疫疾患等の免疫疾患に関連するあらゆる抗原である。一部の実施形態において、抗原は、ウイルス、細菌、真菌、または寄生生物を含む多様な感染病原体のいずれによって発現されてもよい。本明細書において開示される方法および組成物で使用するための標的抗原はまた、例えば、病原性ペプチド、毒素、トキソイド、それらのサブユニット、またはそれらの組み合わせ(例えば、コレラ毒素、破傷風トキソイド)も含み得る。
【0143】
感染性ウイルスの非限定的例は、レトロウイルス科(Retroviridae);ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科(Calciviridae)(胃腸炎を引き起こす株等);トガウイルス科(Togaviridae)(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(Flaviridae)(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(Coronaviridae)(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウイルス);ブンガウイルス科(Bungaviridae)(例えば、ハンターンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス、およびナイロウイルス);アレナウイルス科(Arena viridae)(出血熱ウイルス);レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、レオウイルス、オルビウイルス、およびロタウイルス);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(Parvoviridae)(パルボウイルス);パポバウイルス科(Papovaviridae)(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(Adenoviridae)(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)(単純ヘルペスウイルス(HSV)1およびHSV−2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、マレック病ウイルス、ヘルペスウイルス);ポックスウイルス科(Poxviridae)(天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);およびイリドウイルス科(Iridoviridae)(アフリカブタ熱ウイルス等);ならびに未分類ウイルス(例えば、海綿状脳症の病原因子、デルタ肝炎の因子(B型肝炎ウイルスの欠損サテライトであると考えられる)、非A非B型肝炎の因子(クラス1=内部伝染型;クラス2=非経口伝染型(即ち、C型肝炎);ノーウォークウイルスおよび関連ウイルス、ならびにアストロウイルス)を含む。本明細書に記載の組成物および方法は、これらのウイルス因子による感染症の治療における使用が企図される。
【0144】
本実施形態に抗原を含めることにより対処可能な真菌感染症の例としては、アスペルギルス症、鵞口瘡(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)により引き起こされる)、クリプトコッカス症(クリプトコッカス(Cryptococcus)により引き起こされる)、およびヒストプラスマ症が挙げられる。このため、感染性真菌の例としては、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、クラミジア・トラコマチス、カンジダ・アルビカンスが挙げられるが、これらに限定されない。これらの生命体の構成要素は、本明細書に記載のMAPSに抗原として含めることができる。
【0145】
本発明の一態様では、抗原は、感染性微生物、例えば百日咳菌、ブルセラ菌(Brucella)、腸球菌(Enterococci)属、髄膜炎菌、淋菌、モラクセラ(Moraxella)、分類可能もしくは分類不可能なヘモフィルス(Haemophilus)、シュードモナス(Pseudomonas)、サルモネラ(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、エンテロバクター(Enterobacter)、シトロバクター(Citrobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、大腸菌、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、クロストリジウム(Clostridia)、バクテロイド(Bacteroides)、クラミジア科(Chlamydiaceae)、コレラ菌(Vibrio cholera)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、トレポネーマ(Treponemes)、ライム病ボレリア(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリウム(Mycobacteria)属(結核菌、マイコバクテリウム・アビウム(M. avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M. intracellulare)、カンサシ菌(M. kansaii)、マイコバクテリウム・ゴルドナエ(M. gordonae)、ライ菌(M. leprae)等)、黄色ブドウ球菌、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌(Streptococcus))、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、連鎖球菌(ビリダンス群)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、連鎖球菌(嫌気性)属、肺炎連鎖球菌、病原性カンピロバクター(Campylobacter)属、腸球菌 (Enterococcus)属、ヘモフィルス・インフルエンザ、炭疽菌、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、レプトスピラ(Leptospira)属、パスツレラ・マルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイド(Bacteroides)属、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidium)、トレポネーマ・ペルテニュ(Treponema pertenue)、およびアクチノマイセス・イスラエリー(Actinomyces israelli)に由来する。本明細書に記載の組成物および方法は、これらの細菌因子に対する感染症の治療または予防における使用が企図される。
【0146】
抗原が由来し得る追加の寄生生物病原体は、例えば、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、リーシュマニア(Leishmania)属、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、リケッチア(Rickettsia)、および蠕虫類(Helminths)を含む。
【0147】
本発明の別の態様では、抗原は、切断肺炎球菌PsaAタンパク質、肺炎球菌溶血素トキソイド肺炎球菌セリン/トレオニンタンパク質キナーゼ(StkP)、肺炎球菌セリン/トレオニンタンパク質キナーゼ繰り返し単位(StkPR)、肺炎球菌PcsBタンパク質、ブドウ球菌α溶血素、結核菌mtbタンパク質ESAT−6、結核菌細胞壁コア抗原、クラミジアCT144、CT242、もしくはCT812ポリペプチドまたはこれらのフラグメント、クラミジアDNAジャイレースサブユニットB、クラミジア亜硫酸塩合成/重リン酸塩脱リン酸化酵素、クラミジア細胞分裂タンパク質FtsY、クラミジアメチオニル−tRNA合成酵素、クラミジアDNAヘリカーゼ(uvrD)、クラミジアATP合成酵素サブユニットI(atpI)、またはクラミジア金属依存性加水分解酵素である。
【0148】
本発明の一実施形態は、細胞内細菌性寄生生物である病原体結核菌(TB)を標的とする免疫原性組成物を提供する。TB抗原の一例は、TbH9(Mtb 39Aとしても知られている)である。他のTB抗原は、DPV(Mtb8.4としても知られている)、381、Mtb4l、Mtb40、Mtb32A、Mtb64、Mtb83、Mtb9.9A、Mtb9.8、Mtb16、Mtb72f、Mtb59f、Mtb88f、Mtb7lf、Mtb46f、およびMtb31f(「f」は、それが融合体または2つ以上のタンパク質であることを示す)を含むが、それらに限定されない。
【0149】
上述のように、本発明の免疫原性組成物に使用するための抗原は、クラミジア(Chlamydia)属に由来してもよい。クラミジア科(クラミジア(Chlamydiae)およびクラミドフィラ(Chlamydophila)からなる)は、偏性細胞内グラム陰性細菌である。クラミジア・トラコマチス感染症は、最もよく見られる細菌性性感染症の1つであり、毎年おそらく8,900万人が新たに性器クラミジア感染症を発症している。本発明のクラミジアには、例えば、クラミジア・トラコマチス、肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae)、クラミジア・ムリダルム(C. muridarum)、クラミジア・スイス(C. suis)、クラミドフィラ・アボルタス(Chlamydophila abortus)、クラミドフィラ・シタッシ(Chlamydophila psittaci)、クラミドフィラ・キャビエ(Chlamydophila caviae)、クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)、クラミドフィラ・ペコルム(Chlamydophila pecorum)、および肺炎クラミジアが含まれる。クラミジア感染症の動物モデルは、T細胞が、初期感染の排除および感受性宿主の再感染予防の双方において重要な役割を果たすことを立証した。したがって、本明細書において開示される免疫原性組成物を使用して、クラミジア感染に対する細胞免疫応答を誘発することにより、特定の利益をもたらすことができる。
【0150】
より具体的には、本発明で有用なクラミジア抗原は、DNAジャイレースサブユニットB、亜硫酸塩合成/重リン酸塩脱リン酸化酵素、細胞分裂タンパク質FtsY、メチオニル−tRNA合成酵素、DNAヘリカーゼ(uvrD);ATP合成酵素サブユニットI(atpI)、または金属依存性加水分解酵素(米国特許出願公開第20090028891号)を含む。追加のクラミジア・トラコマチス抗原は、CT144ポリペプチド、CT144のアミノ酸残基67〜86を有するペプチド、CT144のアミノ酸残基77〜96を有するペプチド、CT242タンパク質、CT242のアミノ酸109〜117を有するペプチド、CT242ポリペプチドのアミノ酸112〜120を有するペプチド、CT812タンパク質(pmpD遺伝子由来)、CT812タンパク質のアミノ酸残基103〜111を有するペプチド;ならびにクラミジア・トラコマチス由来のいくつかの他の抗原性ペプチド:
を含む。国際公開第2009/020553号を参照されたい。加えて、前述のポリペプチドのホモログ(米国特許第6,919,187号を参照)を含む肺炎クラミジア抗原は、本明細書で開示されるような免疫原性組成物および方法において抗原として使用できる。
【0151】
真菌抗原は、カンジダ種および他の酵母菌、または他の真菌(アスペルギルス、他の環境真菌)に由来してもよい。他の寄生生物に関しては、マラリア、ならびに虫およびアメーバは、本明細書において開示される免疫原性組成物および方法で使用するための抗原性抗原をもたらし得る。
【0152】
一部の実施形態において、抗原が抗インフルエンザイムノゲンを生成する場合、表面糖タンパク質である赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)は、一般に最適な抗原である。核タンパク質(NP)ポリペプチドおよびマトリックス(M)の両者は、内部ウイルスタンパク質であり、したがって抗体に基づく免疫のためのワクチン設計において、通常は考慮されない。インフルエンザワクチンは、日常的にヒトに使用されており、不活化した全インフルエンザウイルス、弱毒化生インフルエンザウイルス、またはウイルス株由来の精製および不活化した材料に由来するワクチンを含む。例えば、従来のインフルエンザワクチンは、3つの潜在的に脅威となるインフルエンザウイルス株を用いて製造することができる。これらの株は、通常は受精鶏卵中で成長させられるが、これは卵の接種およびインキュベーション、卵採取、ウイルスの精製および不活化、ウイルスまたはウイルス構成要素の最終ワクチン製剤となるまでの処理および貯蔵、ならびに適切な容器への無菌充填を含む、広範囲の処理を必要とする。典型的には、この卵に基づく産生サイクルは、70週間を超える。大規模なインフルエンザが流行した場合、強力かつ安全なワクチンの入手可能性は大きな懸案事項である。さらに、抗生物質および混入物質等の卵内の不純物に関するリスクがあり、これはワクチンの無菌性に悪影響を与える。さらに、卵由来のインフルエンザワクチンは、卵タンパク質に重度のアレルギーがある者およびギラン・バレー症候群の病歴があるものには禁忌である。本発明は、卵に関するselequaeを避けるためだけではなく、高度に制御されたプラットフォームで複数のインフルエンザ抗原を使用するためのプラットフォームを提供する、卵に基づくインフルエンザワクチンに代わるものを提供する。
【0153】
一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物に使用するための抗原はまた、CMI応答を引き起こし得る、リシン等の生物戦争において使用されるものを含んでもよい。
【0154】
さらに、本発明はまた、癌に対する免疫応答をもたらす抗原を含む免疫原性組成物も提供する。これらのコンジュゲートでは、抗原は、癌または腫瘍によって発現された抗原、あるいは腫瘍に由来する抗原である。一部の実施形態において、かかる抗原は、本明細書において、「癌抗原」と称され、典型的には、主に癌細胞で発現されたタンパク質であり、そのコンジュゲートがこのタンパク質に対する強力な体液免疫および強力な細胞免疫の両者を誘発する。多数の癌関連抗原が特定されており、そのうちのいくつかは、実験的癌治療ワクチンを作製するために現在使用されており、このため本実施形態での使用に好適である。1つよりも多くの種類の癌に関連する抗原は、癌胎児性抗原(CEA)、NY−ESO−1等の癌/精巣抗原、シアリルTn(STn)等のMucin−1(MUC1)、GM3およびGD2等のガングリオシド、p53タンパク質、ならびにHER2/neuタンパク質(ERBB2としても知られる)を含む。特定の種類の癌に特有の抗原は、EGFRvIIIと称される突然変異体型の上皮成長因子受容体、チロシナーゼ、MART1、gp100、系統関連癌・精巣群(MAGE)およびチロシナーゼ関連抗原等のメラニン細胞/メラノーマ分化抗原、前立腺特異抗原、融合タンパク質BCR−ABL、ウィルムス腫瘍タンパク質およびプロテイナーゼ3等の白血病関連抗原(LAA)、ならびにイディオタイプ(Id)抗体を含む。例えば、Mitchell,3 Curr.Opin.Investig.Drugs 150(2002)、Dao & Scheinberg,21 Best Pract.Res.Clin.Haematol.391(2008)を参照されたい。
【0155】
癌に対する免疫応答を生じるための別の手法は、癌の発症を引き起こす、または癌の発症に関与する微生物由来の抗原を使用する。これらのワクチンは、肝細胞癌(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrin))、リンパ腫および鼻咽頭癌(エプスタイン・バーウイルス)、結腸直腸癌、胃癌(ヘリコバクター・ピロリ)、膀胱癌(ビルハルツ住血吸虫(Schisosoma hematobium) )、T細胞白血病(ヒトT細胞白血病ウイルス)、頸癌(ヒトパピローマウイルス)等を含む癌に対して使用されてきた。これまでに、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、頸癌、腎臓癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、白血病、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、および固形腫瘍を標的とするワクチンのための臨床試験が行われている。Pardoll et al.,ABELOFF FS CLIN.ONCOL.(4th ed.,Churchill Livingstone,Philadelphia 2008)、Sioud,360 Methods Mol.Bio.277(2007)、Pazdur et al.,30 J.Infusion Nursing 30(3):173(2007)、Parmiani et al.,178 J.Immunol.1975(2007)、Lollini et al.,24 Trends Immunol.62(2003)、Schlom et al.,13 Clin.Cancer Res.3776(2007)、Banchereau et al.,392 Nature 245(1998)、Finn,358 New Engl.J.Med.2704(2008)、Curigliano et al.,7 Exp.Rev.Anticancer Ther.1225(2007)を参照されたい。家禽に腫瘍を引き起こすヘルペスウイルスであるマレック病ウイルスは、長い間ワクチンにより管理されている。このため、本実施形態は、予防的(preventiveまたはprophylactic)抗癌免疫原性組成物および治療的/治癒的癌ワクチンの両者を包含する。
【0156】
企図される増殖性疾患および癌には、AIDS関連癌、聴神経腫瘍、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、特発性骨髄線維症、脱毛症、胞状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、星状細胞腫、毛細血管拡張性運動失調症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳およびCNS腫瘍、乳癌、カルチノイド腫瘍、頸癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、例えば眼球メラノーマおよび網膜芽細胞腫を含む眼癌、卵管癌、ファンコニー貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、消化管カルチノイド腫瘍、泌尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液悪性腫瘍、有毛細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、ホジキン病、ヒトパピローマウイルス関連頸癌、胞状奇胎、下咽頭癌、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー・フラウメニ症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、腎臓の悪性横紋筋様腫瘍、髄芽細胞腫、メラノーマ、メルケル細胞癌、中皮腫、転移癌、口癌、多発性内分泌腫瘍症、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイミーヘン染色体不安定症候群、非メラノーマ皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵巣癌(ostomy ovarian cancer)、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢性神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロトムンド・トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行細胞癌(膀胱)、移行細胞癌(腎盂/尿管)、絨毛性癌、尿道癌、泌尿器系癌、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍が含まれる。
【0157】
一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物に使用するための抗原は、自己免疫疾患の抗原を含んでもよく、例えば、これらは「自己抗原」であってもよい。本明細書に記載のアッセイによる診断に企図される自己免疫疾患としては、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、アジソン病、再生不良性貧血、多発性硬化症、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労症候群、慢性炎症性脱髄性症候群(CFIDS)、慢性炎症性多発性ニューロパシー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病(I型)、扁平苔癬、狼瘡、メニエール病、混合性結合組織疾患、重症筋無力症、心筋炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ヴェーグナー症候群、血管炎、および白斑症が挙げられるが、これらに限定されない。自己免疫疾患を有する、または自己免疫疾患を有する疑いがある、または自己免疫疾患にかかりやすい対象において、潜在的または実際のCMI応答性を評価することは、一般に重要である。
【0158】
一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物に使用するための抗原は、炎症性疾患または状態に関連する抗原であってもよい。抗原が有用となり得る炎症性疾患状態の例としては、なかでも、座瘡、アンギナ、関節炎、誤嚥性肺炎、膿胸、胃腸炎、壊死性腸炎、骨盤内炎症性疾患、咽頭炎、胸膜炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、および慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
一部の実施形態において、抗原は、無傷(即ち、完全または全)抗原、または1個を超えるエピトープを含む抗原の機能性部分であってよい。一部の実施形態において、抗原は、抗原のペプチド機能性部分である。これに関して、「無傷」とは、抗原が、その抗原ポリペプチドが天然に存在するのと同様の全長抗原であることを意味する。これは抗原の小部分またはペプチドのみの送達とは全く対照的である。無傷抗原を細胞に送達することは、単一または選択されたわずかなペプチドエピトープだけではなく、無傷抗原の全てのエピトープに対する免疫応答を可能にする、または誘発する。したがって、本明細書に記載の方法および免疫原性組成物は、単一エピトープペプチドに基づく抗原の使用と比較して、より感受性が高く、かつより高い特異性を有する免疫応答のために、ポリマーと会合した無傷抗原を包含する。
【0160】
代替的に、一部の実施形態において、無傷抗原は、最初の抗原のサイズに応じて、多くの部分に分割することができる。典型的には、全抗原が多量体ポリペプチドである場合、全タンパク質は、サブユニットおよび/またはドメインに分割することができ、このとき抗原のそれぞれ個々のサブユニットまたはドメインは、本明細書において開示される方法により、ポリマーと会合させることができる。代替的に、一部の実施形態において、無傷抗原は、包括的に、全抗原の機能性フラグメントまたは部分、例えば、少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも15個、または少なくとも20個、または少なくとも25個、または25個超の部分(例えば、断片またはフラグメント)に分割することができ、抗原の各個別機能性フラグメントは、本明細書で開示されるような方法に従って、ポリマーと会合させることができる。
【0161】
全長抗原ポリペプチドのフラグメント化または分割は、全長抗原ポリペプチドの均等分割であってもよく、あるいは代替的に、一部の実施形態において、フラグメント化は、不対照または不均等である。非限定的例として、抗原を2つの重複フラグメントに分割する場合、抗原は、ほぼ同じ(均等な)サイズのフラグメントに分割することができ、あるいは代替的に、一方のフラグメントが全抗原の約45%であり得、他方のフラグメントが65%であり得る。さらなる非限定的例として、全抗原を異なるサイズのフラグメントの組み合わせに分割することができ、例えば、抗原を2つのフラグメントに分割する場合、フラグメントは、全抗原の約40%(40%を含む)と約70%(70%を含む)、または約45%(45%を含む)と約65%(65%を含む)、または約35%(35%を含む)と約75%(75%を含む)、または約25%(25%を含む)と約85%(85%を含む)に分割することができる。抗原の重複ポリペプチドのパネルを作製する際に使用するために、全長の全抗原の重複フラグメントのいかなる組み合わせも包含される。例示のみとして、抗原を5つの部分に分割する場合、それらの部分は、均等に(即ち、各重複フラグメントが、抗原の全長全体の約21%〜25%である)、または不均等に(即ち、抗原を以下の5つの重複フラグメントに分割することができ、フラグメント1は、全長抗原のサイズの約25%、フラグメント2は約5%、フラグメント3は約35%、フラグメント4は約10%、およびフラグメント5は約25%であり、但し各フラグメントは、少なくとも1つの他のフラグメントと重複する)分割することができる。
【0162】
典型的には、抗原部分のパネルは、全(即ち無傷)抗原ポリペプチドの全長を実質的に包含してもよい。したがって、一部の実施形態において、免疫原性組成物は、同じ無傷抗原の多くの異なる、および/または重複するフラグメントを有するポリマーを含む。抗原の重複タンパク質フラグメントは、ペプチド抗原のみの使用と比較して、はるかに迅速かつ安価で、かつ向上した安定性で生産することができる。さらに、一部の実施形態において、エピトープ認識に立体構造が重要であり、またより大きい抗原ペプチドまたはフラグメントは、ペプチドフラグメントよりも優れた利益をもたらすことから、単純ペプチドよりも大きいポリペプチドである抗原が好ましい。
【0163】
当業者は、全抗原を抗原の重複タンパク質に分割して、抗原のポリペプチドのパネルを作成することができる。例示のみとして、TB特異的抗原TB1(培養濾液−10またはCFP−10としても知られるCFP)は、例えば、それぞれが、異なるが重複するTB特異的抗原TB1(CFP)フラグメントを含む、17個の異なるポリペプチドのパネルを生成するように、少なくとも17個の部分に分割することができる。培養濾液タンパク質(CFP−10)(Genbank AAC83445)は、結核菌由来の10kDaの100アミノ酸残基タンパク質フラグメントである。これは、L45抗原ホモログタンパク質(LHP)としても知られている。
【0164】
本明細書に記載の方法および組成物で使用するための標的抗原は、組み換え手段によって発現させることができ、任意で、精製を促進するように親和性またはエピトープタグを含むことができ、その方法は、当技術分野において周知である。本発明の抗原を得るために、遊離した、またはキャリアタンパク質とコンジュゲートした、いずれかのオリゴペプチドの化学合成を使用することができる。オリゴペプチドは、ポリペプチドの一種とみなされる。抗原は、例えばリズアビジンまたはその誘導体もしくは機能性フラグメントであるが、それらに限定されない相補的親和性分子との融合体として発現させることができる。代替的に、標的抗原を調整してから、例えばリズアビジンまたはその誘導体もしくは機能性フラグメントであるが、それらに限定されない相補的親和性分子にそれをコンジュゲートさせることも可能である。
【0165】
ポリペプチドはまた、米国特許第5,229,490号および第5,390,111号で開示されるもの等の分岐構造体として合成することもできる。抗原性ポリペプチドは、例えば、合成型または組み換え型のB細胞およびT細胞エピトープ、ユニバーサルT細胞エピトープ、ならびに1つの生命体または疾患由来のT細胞エピトープおよび別のものに由来するB細胞エピトープの混合物を含む。
【0166】
抗原は、組み換え手段または化学的ポリペプチド合成により得ることができ、また天然源または抽出物から得た抗原を分画もしくはクロマトグラフィによる等、その抗原の物理的および化学的特性を用いて精製してもよい。これらの技法は、当技術分野で公知である。
【0167】
一部の実施形態において、抗原は、水、メタノール等の溶媒、または緩衝液で可溶化することができる。好適な緩衝液は、Ca
2+/Mg
2+不含有のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、通常生理食塩水(水中の150mM NaCl)、およびトリス緩衝液を含むが、これらに限定されない。中性緩衝液に可溶性でない抗原は、10mM酢酸で可溶化してから、PBS等の中性緩衝液で所望の用量に希釈することができる。酸性pHでのみ可溶性の抗原の場合は、希酢酸で可溶化した後、酸性pHで酢酸−PBSを希釈剤として使用してもよい。グリセロールは、本明細書に記載の組成物、方法、およびキットで使用するための好適な非水性溶媒となり得る。
【0168】
典型的には、病原体に対するタンパク質ワクチンを設計するとき、細胞外タンパク質またはウイルスの環境に曝露されたものは、ワクチン中の抗原構成要素としての理想的な候補であることが多い。その細胞外タンパク質に対して作製された抗体は、感染中の病原体に対する防御の第一線となる。抗体は、病原体のタンパク質に結合して抗体のオプソニン化を促進し、マクロファージ等の食細胞により摂取および破壊する病原体をマークする。抗体のオプソニン化はまた、抗体依存性細胞傷害作用により、病原体を殺傷することもできる。抗体は、単球、好中球、好酸球、およびナチュラルキラー細胞等の細胞からの溶解産物の放出を促す。
【0169】
本明細書に記載の発明の一実施形態において、本明細書において開示される組成物に使用するための抗原である、全ての野生型タンパク質は、アミノ酸残基に見られるような、天然に存在するウイルスに認められる配列を有し、選択成長条件または分子生物学的方法により変更されていない。
【0170】
一実施形態において、本明細書に記載の免疫原性組成物は、グリコシル化タンパク質である抗原を含んでもよい。換言すると、関心抗原はそれぞれ、グリコシル化タンパク質であってもよい。本明細書に記載の免疫原性組成物の一実施形態において、抗原、または抗原融合ポリペプチドは、O結合型グリコシル化されている。本明細書に記載の免疫原性組成物の別の実施形態において、抗原、または抗原融合ポリペプチドは、N結合型グリコシル化されている。本明細書に記載の免疫原性組成物のさらに別の実施形態において、抗原、または抗原融合体は、O結合型グリコシル化され、かつN結合型グリコシル化されている。他の実施形態において、他のタイプのグリコシル化、例えばC−マンノシル化が可能である。タンパク質のグリコシル化は、主に真核細胞で発生する。N−グリコシル化は、一部の真核タンパク質の折り畳みに重要であり、膜タンパク質および分泌タンパク質の構造および機能を調節する翻訳時および翻訳後修飾機序をもたらす。グリコシル化は、サッカライドを連結させてグリカンを生成し、それらをタンパク質および脂質に付着させる酵素プロセスである。N−グリコシル化では、グリカンは、タンパク質翻訳中にアスパラギン側鎖のアミド窒素に付着する。グリカンを形成する3つの主要なサッカライドは、グルコース、マンノース、およびN−アセチルグルコサミン分子である。N−グリコシル化コンセンサスは、Asn−Xaa−Ser/Thrであり、式中、Xaaは、既知のアミノ酸のいずれであってもよい。O結合型グリコシル化は、タンパク質プロセシングにおける後半段階で、おそらくゴルジ装置内で発生する。O結合型グリコシル化では、N−アセチル−ガラクトサミン、O−フコース、O−グルコース、および/またはN−アセチルグルコサミンが、セリン残基またはトレオニン残基に付加される。当業者は、本発明におけるポリペプチド中のN−およびO−グリコシル化部位を見出すために、Technical University(Denmark)のNetNGlyc 1.0およびNetOGlyc Predictionソフトウェア等のバイオインフォマティクスソフトウェアを使用することができる。NetNglycサーバーは、Asn−Xaa−Ser/Thrシークオンの配列前後関係を調べる人工神経網を用いて、タンパク質中のN−グリコシル化部位を予測する。NetNGlyc 1.0およびNetOGlyc 3.1 Predictionソフトウェアは、EXPASYウェブサイトでアクセスできる。一実施形態において、N−グリコシル化は、本明細書に記載の融合ポリペプチドの標的抗原ポリペプチドにおいて発生する。
【0171】
親和性分子の対
本明細書において開示されるように、一部の実施形態において、抗原は、相補的親和性対を介してポリマーに接続される。抗原とポリマーのこの接続は該ポリマーに仲介され、該ポリマーが第1の親和性分子に接続されており、第1の親和性分子が第2の(例えば、相補的)親和性分子と会合し、第2の(例えば、相補的)親和性分子が該抗原に付着している。相補的親和性対の例は、ビオチン/ビオチン結合タンパク質である。
【0172】
親和性相補的親和性対の例には、非限定的に、ビオチン結合タンパク質、またはビオチンに結合するアビジン様タンパク質を含む。例えば、第1の親和性結合分子がビオチン(ポリマーと会合するもの)である場合、相補的親和性分子は、ビオチン結合タンパク質またはアビジン様タンパク質、あるいはそれらの誘導体、例えば、限定されないが、アビジン、リズアビジン、またはストレプトアビジン、あるいはそれらの変種、誘導体、もしくは機能性部分であり得る。
【0173】
一部の実施形態において、第1の親和性結合分子は、ビオチン、ビオチン誘導体、またはビオチン模倣体、例えば、限定されないが、アミン−PEG3−ビオチン(((+)−ビオチン化−3−6,9−トリクサウンデカンジアミン)、またはその誘導体もしくは機能性フラグメントである。特定のビオチン模倣体は、式中、X
aが、RまたはLであり、X
bが、SまたはTであり、X
cが、YまたはWである、DX
aAX
bPX
c(配列番号:39)またはCDX
aAX
bPX
cCG(配列番号:40)の配列を含有する、特定のペプチドモチーフを有する。これらのモチーフは、アビジンおよびニュートラアビジンとは結合できるが、ストレプトアビジンとは結合できない。例えば、Gaj et al.,56 Prot.Express.Purif.54(2006)を参照されたい。
【0174】
第1の親和性分子とポリマー、および相補的親和性分子と抗原の結合は、非共有結合、または化学機序、例えば共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、および複合体形成であってよい。共有結合は、極めて安定な結合をもたらし、本実施形態に特に好適である。共有結合は、既存の側鎖の直接縮合によって、または外部結合分子の組み込みによってのいずれかで達成することができる。
【0175】
例えば、一部の実施形態において、抗原は、相補的付着対において、対の一方に非共有結合させてもよい。代替的な実施形態において、抗原は、相補的付着対において、対の一方と共有結合または融合させてもよい。融合タンパク質を作製するための方法は、当技術分野で公知であり、また本明細書において考察される。
【0176】
他の実施形態において、第1の親和性結合分子は、非共有結合または共有結合によってポリマーに連結される。一部の実施形態において、架橋試薬を使用して、第1の親和性結合分子を本明細書において開示されるポリマーに共有結合させる。
【0177】
一部の実施形態において、第1の親和性結合分子は、静電相互作用、水素結合、疎水性相互作用(即ち、ファン・デル・ワールス力)、親水性相互作用、および他の非共有相互作用を含むが、これらに限定されない、当技術分野で既知の非共有結合会合により、相補的親和性分子と会合する。また、仲介部分との他の高次相互作用も企図される。
【0178】
一部の実施形態において、相補的親和性分子は、アビジン関連ポリペプチドである。具体的な実施形態において、相補的親和性分子は、組み換えリズアビジン等のリズアビジンである。特に、組み換えリズアビジンは、大腸菌において高収率で発現可能な修飾リズアビジンである。典型的な収率は、大腸菌培養物1Lあたり>30mgである。リズアビジンは、他のアビジン様タンパク質と比較して、卵アビジンに対する配列相同性がより低い(22.4%の配列同一性および35.0%の配列類似性)。修飾リズアビジンを使用することで、MAPSが対象において卵によるアレルギー反応を誘導するリスクが減少する。さらに、組み換え型の修飾リズアビジンに対する抗体は、卵アビジンに対する明らかな交叉反応を有さない(逆も同様である)。
【0179】
より具体的には、一部の実施形態は、大腸菌での組み換え発現のために設計された修飾リズアビジンを含む。元の遺伝子に存在する希少コドンによる、大腸菌における発現中のあらゆる困難を回避するように、大腸菌発現コドンを使用して、リズアビジン遺伝子のコード配列を最適化した。バイオインフォマティクスおよび構造に基づく分析の後、全長リズアビジンの最初の44個の残基が、コア構造および機能にとって不必要であることが分かったため、構築物を単純化するために、これらを除去した。大腸菌細胞の周辺質空間(ここでリズアビジンにおいて機能的に重要なジスルフィド結合が正しく形成される)内への組み換えタンパク質の移行を促進するように短縮リズアビジン(45〜179)のN末端に大腸菌分泌シグナル配列を付加することによって、組み換えタンパク質の正しい折り畳みを向上させた。四量体を形成する既知のアビジン様タンパク質と比べて、修飾組み換えリズアビジンは、二量体を形成し、大腸菌における可溶性タンパク質としての組み換えリズアビジン−抗原融合体の発現をさらに向上させる。
【0180】
さらに、本明細書の別の場所でさらに詳細に考察するように、大腸菌における融合抗原の発現および溶解度を向上させるために、リズアビジンと抗原タンパク質との間に、柔軟性のあるリンカー領域を付加した。加えて、バイオインフォマティクスおよび構造分析に基づいて、(全長抗原または重要な機能的ドメインのいずれかである)異なる抗原構築物をクローニングして発現させ、あるいはキメラタンパク質が、2つの異なる抗原を含んだ。
【0181】
本明細書に記載の方法および組成物において有用となり得る追加の親和性対は、抗原−抗体、金属/イオン−金属/イオン−結合タンパク質、脂質/脂質結合タンパク質、サッカライド/サッカライド結合タンパク質、アミノ酸/ペプチド/アミノ酸もしくはペプチド結合タンパク質、酵素−基質もしくは酵素−阻害剤、リガンド−アゴニスト/受容体、またはビオチン模倣体を含む。代替的な親和性対を使用する場合、遺伝子融合よりも生体外酵素反応等のそれぞれのポリマーと抗原とを付着させる代替的な手段を利用してもよい。より具体的には、抗原−抗体親和性対は、極めて強く、かつ特異的相互作用をもたらす。抗原は、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、多糖/オリゴ糖、イオン等を含む、任意のエピトープであり得る。抗体は、任意の種類の免疫グロブリン、またはFabフラグメント等の免疫グロブリンのAg結合部分であり得る。金属/イオン-金属/イオン結合タンパク質に関しては、例として、Ni NTA対ヒスチジンタグ付きタンパク質、またはZn対Zn結合タンパク質が挙げられる。脂質/脂質結合タンパク質に関しては、例として、コレステロール対コレステロール結合タンパク質が挙げられる。サッカライド/サッカライド結合タンパク質の例は、マルトース対マルトース結合タンパク質、マンノース/グルコース/オリゴ糖対レクチンを含む。酵素−基質/阻害剤は、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、糖、またはイオンを含む、広範囲の物質に由来する基質を含む。阻害剤は、一般により強固に、さらには不可逆的に酵素に結合することができる、実際の基質の類似体であってもよい。例えば、トリプシン対大豆トリプシン阻害剤である。阻害剤は、天然分子または合成分子であってよい。他のリガンド/アゴニスト−受容体に関しては、リガンドは、幅広い物質に由来してもよく、これにはタンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、糖、イオン、アゴニストが含まれ、実際のリガンドの類似体であってもよい。例として、LPS対TLR4相互作用が挙げられる。
【0182】
架橋試薬:
タンパク質分子を他の分子にカップリングする際に、多くの二価または多価の連結剤が有用である。例えば、代表的なカップリング剤は、有機化合物、例えばチオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼン、およびヘキサメチレンジアミンを含み得る。この一覧は、当技術分野で既知の様々な種類のカップリング剤の包括的一覧であることを意図せず、これはむしろ、より一般的なカップリング剤の例示的な一覧である。Killen & Lindstrom,133 J.Immunol.1335(1984)、Jansen et al.,62 Imm.Rev.185(1982)、Vitetta et alを参照されたい。
【0183】
一部の実施形態において、文献に記載されている架橋試薬剤は、本明細書において開示される方法、免疫原性組成物、およびキットにおける使用のために包含される。例えば、Ramakrishnan,et al.,44 Cancer Res.201(1984)(MBS(M−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)の使用を記載している)、Umemoto et al.,米国特許第5,030,719号(オリゴペプチドリンカーによって抗体にカップリングされたハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用を記載している)を参照されたい。特定のリンカーは、(a)EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)塩酸カルボジイミド、(b)SMPT(4−スクシンイミジルオキシカルボニル−アルファ−メチル−アルファ−(2−ピリジル−ジチオ)−トルエン(Pierce Chem.Co.,Cat.(21558G)、(c)SPDP(スクシンイミジル−6[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.,Cat#21651G)、(d)スルホ−LC−SPDP(スルホスクシンイミジル6[3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド(propianamide)]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.Cat.#2165−G)、および(f)EDCとコンジュゲートしたスルホ−NHS(N−ヒドロキシスルホ−スクシンイミド:Pierce Chem.Co.,Cat.#24510)を含む。
【0184】
上述の連結または連結剤は、異なる特質を有する構成要素を含み、このため異なる生理化学的特性を有する共役体をもたらす。例えば、アルキルカルボキシレートのスルホ−NHSエステルは、芳香族カルボキシレートのスルホ−NHSエステルよりも安定である。リンカーを含むNHS−エステルは、スルホ−NHSエステルよりも可溶性が低い。さらに、リンカーSMPTは、立体障害ジスルフィド結合を含み、安定性が向上した共役体を形成することができる。ジスルフィド連結は生体外で切断される可能性があり、これが利用可能なコンジュゲートの減少につながるため、一般に、他の連結よりも安定性が低い。スルホ−NHSは、特に、カルボジイミドカップリングの安定性を強化することができる。カルボジイミドカップリング(EDC等)は、スルホ−NHSと組み合わせて使用したとき、カルボジイミドカップリング反応のみの場合よりも、加水分解耐性が高いエステルを形成する。
【0185】
本明細書で開示されるような方法および免疫原性組成物で使用するための例示的な架橋分子は、表3および表4に記載されるものを含むが、これらに限定されない。
【0186】
(表3)例示的なホモ二官能性架橋剤
*
*いずれかの末端に同じタイプの反応基を有する架橋試薬。試薬は、どの化学基を架橋するか(左欄)、およびそれらの化学組成(中央欄)によって分類する。製品は、各マス内の短いものから順に記載する。
【0187】
(表4)例示的なヘテロ二官能性架橋剤
*
*いずれかの末端に異なる反応基を有する架橋試薬。試薬は、どの化学基を架橋するか(左欄)、およびそれらの化学組成(中央欄)によって分類する。製品は、各マス内の短いものから順に記載する。
【0188】
共刺激因子
一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物は、少なくとも1つの共刺激分子を含む。一部の実施形態において、共刺激因子は、ポリマーに架橋される。一部の実施形態において、共刺激因子は、抗原がポリマーに会合されるのと同様に、相補的親和性対によってポリマーと会合される。一部の実施形態において、共刺激因子をポリマーと連結する相補的親和性対は、抗原をポリマーに連結する相補的親和性対と同じまたは異なる相補的親和性対である。
【0189】
一部の実施形態において、少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも5個、または少なくとも10個、または少なくとも15個、または少なくとも20個、または少なくとも50個、または少なくとも100個、または約100個(100個を含む)よりも多くの共刺激因子を、本明細書で開示されるようなポリマーと会合させてもよい。一部の実施形態において、共刺激因子は、同じ共刺激因子であってもよく、またはこれらは、ポリマーと会合した多様な異なる共刺激因子であってもよい。
【0190】
一部の実施形態において、共刺激因子は、Toll様受容体のリガンド/アゴニスト、例えば、限定されないが、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11等である。一部の実施形態において、共刺激因子は、NODリガンド/アゴニスト、またはインフラマソームの活性剤/アゴニストである。理論に拘束されることを望むものではないが、インフラマソームは、カスパーゼ1、PYCARD、NALP、および場合によってはカスパーゼ5またはカスパーゼ11から成る、多タンパク質オリゴマーであり、炎症性サイトカインであるインターロイキン1−βおよびインターロイキン18の成熟を促進する。
【0191】
一部の実施形態において、共刺激因子はサイトカインである。一部の実施形態において、サイトカインは、GM−CSF、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12、IL−23、IFN−α、IFN−β、IFN−β、IFN−γ、MIP−1α、MIP−1β、TGF−β、TNFα、およびTNFβから成る群より選択される。一部の実施形態において、共刺激因子は、アジュバントであり、これは上記で考察したように、ポリマーと会合させてもよく、あるいは対象への投与前または投与と同時に、MAPS組成物に添加してもよい。アジュバントについては、本明細書の他の場所でさらに説明する。
【0192】
組み換えタンパク質の生成
組み換えタンパク質は、当業者によって、または市販のキット、例えばPROBOND(商標)Purification System(Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA)を使用することによって、利便的に発現および精製してもよい。一部の実施形態において、組み換え抗原は、当業者に既知の細菌発現系、酵母菌発現系、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系、哺乳動物細胞発現系、またはトランスジェニック植物もしくは動物系を用いて、タンパク質精製方法により合成および精製することができる。
【0193】
本明細書に記載の、タンパク質、ポリペプチド、および融合ポリペプチドは全て、当業者に周知であるタンパク質および分子法によって合成および精製することができる。分子生物学的方法および組み換え異種タンパク質発現系が使用される。例えば、組み換えタンパク質は、細菌、哺乳動物、昆虫、酵母菌、または植物細胞;またはトランスジェニック植物もしくは動物宿主で発現させることができる。
【0194】
一実施形態において、本明細書に記載の融合ポリペプチドまたは非融合ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドが、本明細書において提供される。従来のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術を使用して、本明細書に記載の融合ポリペプチドをコードするキメラまたは融合コード配列を構築することができる。コード配列は、pUC19、pBR322、pBLUESCRIPT(登録商標)ベクター(Stratagene,Inc.)、またはpCR TOPO(登録商標)(Invitrogen)等の汎用クローニングベクターにクローニングすることができる。本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸を担持する得られた組み換えベクターは、その後、本明細書に記載の変種融合ポリペプチドを作成するために、部位特異的突然変異誘発等のさらなる分子生物学的操作に使用することができ、あるいは哺乳動物細胞株、昆虫細胞株、酵母菌、細菌、および植物細胞から成る群より選択される宿主細胞を用いた、多様なタンパク質発現系でのタンパク質合成のために、タンパク質発現ベクターまたはウイルスベクターにサブクローニングすることができる。
【0195】
各PCRプライマーは、増幅される領域に、その対応する鋳型と重複する、少なくとも15個のヌクレオチドを有するべきである。PCR増幅で使用されるポリメラーゼは、PCR増幅プロセス中の配列の間違いを低減させるために、PfuULTRA(登録商標)ポリメラーゼ(Stratagene)のように、高忠実度を有するべきである。例えば融合ポリペプチドの構築の際に、いくつかの別個のPCRフラグメントを一緒にライゲーションし、続いてクローニングベクターに挿入するのを容易にするために、PCRプライマーは、それらの隣接末端に、PCR増幅中にDNA鋳型にアニールしない、明確な固有の制限消化部位も有するべきである。特異的プライマーの各対の制限消化部位の選択は、融合ポリペプチドをコードするDNA配列がインフレームであり、終止コドンを含まずに、最初から最後まで融合ポリペプチドをコードするようなものであるべきである。同時に、選択された制限消化部位は、融合ポリペプチドのコードDNA配列中に見られないものであるべきである。目的のポリペプチドのコードDNA配列は、増幅、キメラコード配列の忠実性と信頼性の検証、特定のアミノ酸突然変異のための置換/または特定の部位特異的突然変異誘発、およびポリペプチドにおける置換のために、クローニングベクターpBR322またはその誘導体の1つの中にライゲーションすることができる。
【0196】
代替的に、ポリペプチドのコードDNA配列は、例えばpCR(登録商標)−TOPO、pCR(登録商標)−Blunt II−TOPO、pENTR/D−TOPO(登録商標)、およびpENTR/SD/D−TOPO(登録商標)等のトポイソメラーゼ補助TAベクターを含むTOPO(登録商標)クローニング法(Invitrogen,Inc.,Carlsbad,CA)を用いて、ベクターにPCRクローニングすることもできる。pENTR/D−TOPO(登録商標)およびpENTR/SD/D−TOPO(登録商標)の両方が、GATEWAY(登録商標)発現ベクターへの5'から3'の方向でのDNA配列のクローニングを可能にする指向性TOPO導入ベクターである。5'から3'の方向での指向性クローニングは、DNA配列をタンパク質発現ベクターに一方向挿入すること容易にし、それによってプロモーターが融合ポリペプチドをコードするDNA配列の5'ATG開始コドンの上流にあり、プロモーターによって促進されるタンパク質発現が可能になる。融合ポリペプチドのコードDNA配列を担持する組み換えベクターは、XL1 Blue、SURE(登録商標)(STRATAGENE(登録商標))、およびTOP−10細胞(Invitrogen)等の一般的なクローニング大腸菌にトランスフェクトし、増殖することができる。
【0197】
当業者は、当技術分野で公知の特別に設計されたオリゴヌクレオチドプローブおよびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の方法を用いて、関心抗原のコード領域を相補的親和性分子のコード領域とともにクローニングおよびライゲーションして、抗原またはそのフラグメントおよびその誘導体の相補的親和性分子を含む、融合ポリペプチドのキメラコード配列を構築することができるであろう。当業者はまた、融合タンパク質のキメラコード配列を選択されたベクター、例えば細菌発現ベクター、昆虫発現ベクター、またはバキュロウイルス発現ベクターの中にクローニングおよびライゲーションすることができるであろう。抗原および標的抗原ポリペプチドまたはそのフラグメントのコード配列は、インフレームでライゲーションすべきであり、キメラコード配列は、プロモーターの下流およびプロモーターと転写ターミネーターとの間でライゲーションすべきである。その後、組み換えベクターをXL1Blue等の通常のクローニング大腸菌にトランスフェクトする。次に、抗生物質耐性によって導入ベクターDNAを含む組み換え大腸菌を選択して、非組み換えプラスミドDNAを含むあらゆる大腸菌を除去する。選択された形質転換大腸菌を成長させ、続いて、スポドプテラ・フルギペルダ(S. frugiperda)細胞にトランスフェクトするために、組み換えベクターDNAを精製することができる。
【0198】
一部の実施形態において、本明細書において開示される抗原は、細菌の周辺質空間内への移行のためのシグナルペプチドを含んでもよい。シグナルペプチドは、N末端ではリーダーペプチドとも称され、これは膜を通って移行した後、切断されるか、または切断されない。シグナルペプチドの一例は、本明細書で開示されるような
である。別のシグナル配列は、
である。シグナルペプチドの他の例は、ワールドワイドウェブサイト「proline.bic.nus.edu.sg/spdb/」で見られる、SPdb(シグナルペプチドデータベース)で見ることができる。
【0199】
一部の実施形態において、抗原がビオチン結合タンパク質に融合している場合、シグナル配列は、ビオチン結合タンパク質のN末端に位置してもよい。一部の実施形態において、シグナル配列は、大腸菌の周辺質空間の中への移行後に、ビオチン結合タンパク質から切断される。
【0200】
一部の実施形態において、抗原が相補的親和性タンパク質に融合している場合、シグナル配列は、相補的親和性タンパク質のN末端に位置してもよい。例えば、抗原がアビジン様タンパク質に融合している場合、シグナル配列は、相補的親和性タンパク質のN末端に位置してもよい。一部の実施形態において、シグナル配列は、相補的親和性タンパク質が第1の親和性分子と会合する前に、相補的親和性タンパク質から切断される。
【0201】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗原および/または相補的親和性タンパク質はシグナル配列を有さない。
【0202】
本明細書に記載のポリペプチドは、多様な発現宿主細胞、例えば細菌、酵母菌、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、クラミドモナス等の藻細胞、または無細胞発現系で発現させることができる。一部の実施形態において、核酸は、クローニングベクターから、細菌、哺乳動物、昆虫、酵母菌、もしくは植物細胞、または無細胞発現系、例えばウサギ網状赤血球発現系での融合ポリペプチドの発現に適した組み換え発現ベクターにサブクローニングすることができる。一部のベクターは、単一の組み換え反応における哺乳動物細胞、昆虫細胞、および酵母菌での発現のためのコード核酸を導入するように設計される。例えば、GATEWAY(登録商標)(Invitrogen)デスティネーションベクターの一部は、バキュロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、およびレンチウイルスの構築用に設計されており、これはそれぞれの宿主細胞の感染時に、適切な宿主細胞での融合ポリペプチドの異種発現を可能にする。遺伝子のデスティネーションベクターへの導入は、製造業者の使用説明に従って、2ステップで達成される。昆虫細胞、哺乳動物細胞、および酵母菌でのタンパク質発現用のGATEWAY(登録商標)発現ベクターがある。大腸菌における形質転換および選択後、発現ベクターは、適切な宿主での発現に使用できる。
【0203】
他の発現ベクターおよび宿主細胞の例は、CHO、COS、HEK−293、Jurkat、およびMCF−7等の哺乳動物細胞株での発現用の、強力なCMVプロモーターベースのpcDNA3.1(Invitrogen)およびpCINEOベクター(Promega);アデノウイルス媒介遺伝子導入および哺乳動物細胞での発現用の、複製能力のないアデノウイルスベクターである、ベクターpADENO−X(商標)、pAd5F35、pLP−ADENO(商標)−X−CMV(CLONTECH(登録商標))、pAd/CMV/V5−DEST、pAd−DESTベクター(Invitrogen);レトロウイルス媒介遺伝子導入および哺乳動物細胞での発現用の、RETRO−X(商標)系(Clontech)とともに使用するためのpLNCX2、pLXSN、およびpLAPSNレトロウイルスベクター;レンチウイルス媒介遺伝子導入および哺乳動物細胞での発現用の、pLenti4/V5−DEST(商標)、pLenti6/V5−DEST(商標)、およびpLenti6.2/V5−GW/lacZ(Invitrogen);アデノ随伴ウイルス媒介遺伝子導入および哺乳動物細胞での発現用の、アデノウイルス随伴ウイルス発現ベクター、例えばpAAV−MCS、pAAV−IRES−hrGFP、およびpAAV−RCベクター(Stratagene);スポドプテラ・フルギペルダ9(Sf9)、Sf11、Tn−368、およびBTI−TN−5B4−1昆虫細胞株での発現用の、BACpak6バキュロウイルス(Clontech)およびpFASTBAC(商標)HT(Invitrogen);ショウジョウバエシュナイダーS2細胞での発現用の、pMT/BiP/V5−His(Invitrogen);ピキア・パストリスでの発現用の、ピキア発現ベクターpPICZα、pPICZ、pFLDα、およびpFLD(Invitrogen)、ならびにメチロトローフ酵母での発現用のベクターpMETαおよびpMET;酵母菌出芽酵母での発現用のpYES2/GSおよびpYD1(Invitrogen)ベクターである。
【0204】
コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)での大規模発現異種タンパク質の最近の進展が記載されている。Griesbeck.,34 Mol.Biotechnol.213(2006)、Fuhrmann,94 Methods Mol Med.191(2006)。外来異種コード配列が、相同的組み換えにより、核、葉緑体、およびミトコンドリアのゲノムに挿入される。スペクチノマイシンまたはストレプトマイシンに対する耐性を付与する、最も多用途の葉緑体選択可能マーカーであるアミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼ(aadA)を担持する葉緑体発現ベクターp64を用いて、葉緑体で外来タンパク質を発現させることができる。微粒子遺伝子銃を用いて、藻類においてベクターを導入することができる。葉緑体に入ると、外来DNAが遺伝子銃粒子から放出されて、相同組み換えによって葉緑体ゲノム内に結合する。
【0205】
また、抗原に融合した相補的親和性分子も本発明に含まれる。一部の実施形態において、融合構築物はまた、精製タグおよび/または分泌シグナルペプチドを任意に含んでもよい。これらの融合タンパク質は、いかなる標準的方法で産生してもよい。例えば、抗原−相補的親和性分子融合タンパク質を発現する安定な細胞株の産生のために、PCR増幅した抗原核酸を哺乳動物発現ベクターの誘導体の制限部位にクローニングしてもよい。例えば、pcDNA3の誘導体であるKA(Invitrogen)は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タグ(HA)をコードするDNAフラグメントを含む。代替的に、c−mycタグまたはポリヒスチジンタグ等の他のタグをコードするベクター誘導体を使用してもよい。抗原−相補的親和性分子融合発現構築物は、例えば、製造業者の使用説明に従ってLIPOFECTAMINE(商標)(Gibco−BRL,Gaithersburg,MD)を、または当技術分野で既知の他の好適なトランスフェクション技術を使用して、適切な哺乳動物細胞株(例えば、COS、HEK293T、またはNIH 3T3細胞)に、マーカープラスミドとともに共トランスフェクトされてもよい。好適なトランスフェクションマーカーは、例えば、β−ガラクトシダーゼもしくは緑色蛍光タンパク質(GFP)発現プラスミド、または抗原−相補的親和性分子融合タンパク質と同じ検出可能なマーカーを含有しない任意のプラスミドを含む。融合タンパク質発現細胞は、選別してさらに培養してもよく、あるいはタグ付き抗原−相補的親和性分子融合タンパク質を精製してもよい。一部の実施形態において、抗原−相補的親和性分子融合タンパク質をシグナルペプチドとともに増幅する。代替的な実施形態において、抗原−相補的親和性分子融合タンパク質をコードするcDNAは、シグナルペプチドを用いずに増幅し、強い分泌シグナルペプチドを有するベクター(pSecTagHis)にサブクローニングしてもよい。別の例では、抗原−相補的親和性分子融合タンパク質は、精製のためのアルカリホスファターゼ(AP)タグまたはヒスチジン(His)タグを有してもよい。抗原および/または抗原−相補的親和性分子融合タンパク質のタンパク質精製のための当業者に既知のいかなる方法も本発明の方法における使用のために包含される。
【0206】
一部の実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドのいずれかは、組み換えバキュロウイルスベクターからの発現によって産生される。別の実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドのいずれかは、昆虫細胞により発現される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドのいずれかは、昆虫細胞から単離される。昆虫細胞におけるバキュロウイルスによるタンパク質発現にはいくつかの利点があり、これには高い発現レベル、規模拡大の容易性、翻訳後修飾を有するタンパク質の産生、および簡単な細胞成長が含まれる。昆虫細胞は、成長にCO
2を必要とせず、大規模発現のための高密度浮遊培養に容易に適合させられる。哺乳動物系に存在する翻訳後修飾経路の多くは、昆虫細胞でも利用され、天然の哺乳動物タンパク質と抗原的、免疫原性的、および機能的に同様の組み換えタンパク質の産生を可能にする。
【0207】
バキュロウイルスは、バキュロウイルス科のDNAウイルスである。これらのウイルスは、主に鱗翅目種の昆虫(チョウおよびガ)に限定される、狭い宿主域を有することが知られている。原型バキュロウイルスとなったバキュロウイルスキンウワバ科(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)は、感受性培養昆虫細胞において効率的に複製する。AcNPVは、約130,000塩基対の2本鎖閉環状DNAゲノムを有し、宿主域、分子生物学、および遺伝学に関して、十分に特徴付けられている。バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)は、昆虫細胞および昆虫における組み換えタンパク質の豊富な産生のための安全かつ迅速な方法である。バキュロウイルス発現系は、昆虫細胞における高レベルの組み換えタンパク質発現のための強力かつ多用途の系である。バキュロウイルス発現系を使用して、最大500mg/lの発現レベルが報告されており、これを高レベル発現用の理想的な系としている。外来遺伝子を発現する組み換えバキュロウイルスは、バキュロウイルスDNAと関心遺伝子配列を含むキメラプラスミドとの間の相同的組み換えによって構築される。組み換えウイルスは、それらの明確なプラーク形態により検出することができ、均質になるまでプラーク精製することができる。
【0208】
本明細書に記載の組み換え融合タンパク質は、鱗翅目種スポドプテラ・フルギペルダに由来する細胞を含むがこれに限定されない昆虫細胞で産生可能である。バキュロウイルスによって感染可能な他の昆虫細胞、例えばカイコ(Bombyx mori)、ガレリア・メラノーマ(Galleria mellanoma)、イラクサギンウワバ(Trichplusia ni)、またはマイマイガ(Lamanthria dispar)の種に由来するものもまた、本明細書に記載の組み換えタンパク質を産生するための好適な基質として使用できる。組み換えタンパク質のバキュロウイルス発現は、当技術分野で公知である。米国特許第4,745,051号、第4,879,236号、第5,179,007号、第5,516,657号、第5,571,709号、第5,759,809号を参照されたい。発現系がバキュロウイルス発現系に限定されないことが、当業者によって理解されるであろう。重要なことは、その発現系が、発現された組み換えタンパク質のN−グリコシル化を導くことである。本明細書に記載の組み換えタンパク質はまた、エントモポックスウイルス(昆虫のポックスウイルス)、細胞質多角体病ウイルス(CPV)、および1つまたは複数の組み換え遺伝子の構成的発現による昆虫細胞の形質転換体等の他の発現系で発現させることもできる。かなりの数のバキュロウイルス導入ベクターおよび対応する適切に修飾された宿主細胞が市販されており、例えば、BD BiosciencesからのpAcGP67、pAcSECG2TA、pVL1392、pVL1393、pAcGHLT、およびpAcAB4、NOVAGEN(登録商標)からのpBAC−3、pBAC−6、pBACgus−6、およびpBACsurf−1、ならびにSIGMA ALDRICH(登録商標)からのpPolh−FLAGおよびpPolh−MATである。
【0209】
プロモーターと転写ターミネーターとの間の領域は、この場合は抗原ポリペプチドおよび相補的親和性分子のコードDNA配列である外来コード配列のクローニングを促進するために、複数の制限酵素消化部位を有してもよい。追加の配列、例えばシグナルペプチドおよび/またはタグコード配列、例えばHis−タグ、MAT−タグ、FLAGタグ、エンテロキナーゼ認識配列、ミツバチメリチン分泌シグナル、β−ガラクトシダーゼ、分泌、特定、正確な挿入、組み換えウイルスの正の選択、および/または組み換えタンパク質の精製を促進するためのMCS上流のグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)タグを含めてもよい。
【0210】
一部の実施形態において、融合タンパク質は、本明細書において開示されるN末端シグナル配列を含んでもよい。一部の実施形態において、シグナル配列は、本明細書において開示される相補的親和性分子のN末端に付着している。
【0211】
一部の実施形態において、本明細書に記載のような融合ポリペプチドは、スペーサーペプチド、例えば、抗原を相補的親和性分子から分離する、14残基スペーサー
を有する。かかる短いスペーサーのコード配列は、プライマーの相補的対をアニールすることによって構築することができる。当業者は、選択されたスペーサーをコードするオリゴヌクレオチドを設計および合成することができる。スペーサーペプチドは、概して、グリシンおよびプロリン等の非極性アミノ酸残基を有するべきである。
【0212】
当業者に既知の標準的技術を使用して、本明細書に記載の融合ポリペプチドの抗原ポリペプチド配列中に、例えば、抗原の本明細書に記載の融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列中に、アミノ酸置換を作成するために、例えば、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発を含む、突然変異を導入することができる。好ましくは、変種融合ポリペプチドは、本明細書に記載の融合ポリペプチドに対して、包括的に、50個未満のアミノ酸置換、40個未満のアミノ酸置換、30個未満のアミノ酸置換、25個未満のアミノ酸置換、20個未満のアミノ酸置換、15個未満のアミノ酸置換、10個未満のアミノ酸置換、5個未満のアミノ酸置換、4個未満のアミノ酸置換、3個未満のアミノ酸置換、または2個未満のアミノ酸置換を有する。
【0213】
また、コードされたアミノ酸配列、または膜貫通送達を促進する能力を変更しない、ある特定のサイレントまたは中立ミスセンス突然変異をDNAコード配列中に作成してもよい。これらのタイプの突然変異は、コドン使用頻度を最適化するため、または組み換えタンパク質の発現および産生を向上させるために有用である。
【0214】
ベクターにおける融合ポリペプチドのコード配列の特定の部位特異的突然変異誘発を用いて、特定のアミノ酸突然変異および置換を作成することができる。部位特異的突然変異誘発は、例えばQUICKCHANGE(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を用いて、製造業者の使用説明に従って実施することができる。
【0215】
一実施形態において、例えば、細菌、哺乳動物、昆虫、酵母菌、または植物細胞から選択される宿主細胞を用いて、タンパク質発現系から産生された組み換えポリペプチドの発現および精製のための、本明細書に記載のポリペプチドのコードDNA配列を含む発現ベクターが本明細書において説明される。発現ベクターは、そのそれぞれの宿主細胞における効率的な遺伝子転写および翻訳のために、プロモーター配列、リボソーム認識およびTATAボックス、ならびに3'UTR AAUAAA転写終結配列等の必要な5'上流および3'下流調節要素を有するべきである。発現ベクターは、好ましくは、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、βアクチンプロモーター、SV40(サルウイルス40)プロモーター、および筋クレアチンキナーゼプロモーターから成る群より選択される転写プロモーター、ならびにSV40ポリ(A)およびBGHターミネーターから成る群より選択される転写ターミネーターを有するベクターであり、より好ましくは、サイトメガロウイルスの初期プロモーター/エンハンサー配列およびアデノウイルス3分節リーダー/イントロン配列を有し、SV40の複製起点とポリ(A)配列を含有する発現ベクターである。発現ベクターは、例えば、発現された融合ポリペプチドに組み込むことができる、6X−ヒスチジン、V5、チオレドキシン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、c−Myc、VSV−G、HSV、FLAG、マルトース結合ペプチド、金属結合ペプチド、HA、および「分泌」シグナル(ミツバチメリチン、α因子、PHO、Bip)をコードする領域等の追加のコード領域を有することができる。さらに、これらのコード領域の後に酵素消化部位を組み込んで、それらが不要な場合に、酵素的除去を促進してもよい。これらの追加の核酸は、融合ポリペプチド発現の検出、親和性クロマトグラフィによるタンパク質精製、宿主細胞質における組み換えタンパク質の溶解度の向上、および/または発現された融合ポリペプチドの培養培地または酵母菌細胞のスフェロプラスト中への分泌のために有用である。融合ポリペプチドの発現は、宿主細胞において構成的であってもよく、あるいはこれは、硫酸銅、ガラクトース等の糖類、メタノール、メチルアミン、チアミン、テトラサイクリン、バキュロウイルスによる感染、およびラクトースの安定な合成類似体である(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)IPTGによって誘導されてもよい。
【0216】
別の実施形態において、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、なかでもアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、およびレンチウイルスベクター等のウイルスベクターである。組み換えウイルスは、遺伝子発現研究および治療的応用のための多用途な系をもたらす。
【0217】
一部の実施形態において、本明細書に記載の融合ポリペプチドは、哺乳動物細胞のウイルス感染により発現される。ウイルスベクターは、例えばアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、およびレンチウイルスであってよい。組み換えアデノウイルスを作製するための単純化した系は、He et al.、95 PNAS 2509(1998)により提示される。関心遺伝子は、まず、シャトルベクター、例えばpAdTrack−CMVにクローニングされる。得られたプラスミドを制限エンドヌクレアーゼPmeIで消化することによって直線化し、続いてアデノウイルス骨格プラスミド、例えばStratageneのADEASY(商標)アデノウイルスベクター系であるpADEASY−1を用いて、大腸菌BJ5183細胞に同時形質転換する。組み換えアデノウイルスベクターをカナマイシン耐性について選択し、組み換えを制限エンドヌクレアーゼ分析により確認する。最後に、直線化した組み換えプラスミドをアデノウイルスパッケージング細胞株、例えばHEK 293細胞(E1−形質転換ヒト胎児腎細胞)または911(E1形質転換ヒト胎児網膜細胞)にトランスフェクトする。Fallaux、et al.7 Human Gene Ther.215(1996)。組み換えアデノウイルスは、HEK 293細胞内で生成される。
【0218】
組み換えレンチウイルスは、分裂および非分裂哺乳動物細胞で融合ポリペプチドを送達および発現させる利点を有する。HIV−1に基づくレンチウイルスは、モロニー白血病ウイルス(MoMLV)に基づくレトロウイルス系よりも広い宿主域を効果的に形質導入することができる。組み換えレンチウイルスの調製は、例えば、pLenti4/V5−DEST(商標)、pLenti6/V5−DEST(商標)、またはpLentiベクターをVIRAPOWER(商標)レンチウイルス発現系(Invitrogen,Inc.)と一緒に使用して達成することができる。
【0219】
組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターは、多くの異なるヒトおよび非ヒト細胞株または組織を含む多種多様な宿主細胞に適用できる。rAAVは、多種多様な細胞型を形質導入することができ、形質導入は活発な宿主細胞分裂に依存しない。10
8ウイルス粒子/mLを超える高い力価が、上清中で容易に得られ、さらに濃縮すると、10
11〜10
12ウイルス粒子/mLが得られる。トランス遺伝子は、宿主ゲノムに組み入れられ、そのため発現は長期間かつ安定である。
【0220】
AAVベクターの大規模調製は、半コンフルエントの293個の細胞の50×150mmプレートへの、コード核酸を担持するAAVベクター、AAV repおよびcap遺伝子を含有するAAV RCベクター、およびアデノウイルスヘルパープラスミドpDF6といった、パッケージング細胞株の3プラスミド同時トランスフェクションによって行われる。細胞をトランスフェクションの3日後に回収して、3回の凍結融解サイクルまたは超音波処理によってウイルスを放出させる。
【0221】
AAVベクターは、ベクターの血清型に応じて、2つの異なる方法で精製することができる。AAV2ベクターは、ヘパリンに対するその親和性に基づいて1ステップ重力流カラム精製法によって精製される。Auricchio et.al.,12 Human Gene Ther.71(2001)、Summerford & Samulski,72 J.Virol.1438(1998)、Summerford & Samulski,5 Nat.Med.587(1999)。AAV2/1およびAAV2/5ベクターは、現在、3連続CsCl勾配により精製されている。
【0222】
理論に拘束されることを望むものではないが、タンパク質が細菌細胞を含む細胞によって発現されるとき、そのタンパク質は、細胞中の特定の部分に局在化するか、または細胞から分泌される。このため、タンパク質局在化またはタンパク質選別は、細胞が細胞中もしくは細胞外の適切な位置にタンパク質を輸送する機序である。選別の標的は、細胞小器官の内部空間、いくつかの内膜のうちのいずれか、細胞の外膜、または分泌を介したその外部であってよい。この送達プロセスは、タンパク質自体に含まれる情報に基づいて実行される。正しい選別は、細胞にとって極めて重要であり、誤りは疾患を招き得る。
【0223】
いくつかの例外はあるものの、細菌は、真核生物に見られるような膜結合細胞小器官を有さないが、ガス胞および貯蔵顆粒等の種々のタイプの封入体上にタンパク質を集合させることができる。また、細菌の種に応じて、細菌は、単一の形質膜を有するか(グラム陽性細菌)、または内(形質)膜および外細胞壁膜の両方と、それら2つの間に周辺質と称される水を含む空間を有し得る(グラム陰性細菌)。タンパク質は、外膜の有無によって、環境に分泌され得る。形質膜における基本的機序は、真核生物のものと同様である。さらに、細菌は、タンパク質を外膜の中または反対側に指向させる。細菌外膜の反対側にタンパク質を分泌するためのシステムは、極めて複雑であり得、発症機序において重要な役割を果たし得る。これらのシステムは、I型分泌、II型分泌等として表すことができる。
【0224】
ほとんどのグラム陽性細菌において、形質膜を越えた排出およびその後の細菌細胞壁への共有結合的な付着のための特定のタンパク質が存在する。特殊化した酵素であるソルターゼは、LPXTGモチーフ(配列番号:42)(Xは任意のアミノ酸であり得る)等のタンパク質C末端近傍の特徴的な認識部位の標的タンパク質を切断し、次いで、そのタンパク質を細胞壁上に輸送する。エキソソルターゼ/PEP−CTERMと称される、モチーフPEP−CTERM(配列番号:43)を有する、ソルターゼ/LPXTGに類似する系が、広い範囲のグラム陰性細菌中に存在することが提案されている。
【0225】
適切なN末端標的シグナルを有するタンパク質は、細胞質で合成され、次いで特定のタンパク質輸送経路に向けられる。細胞膜を横断するその移行の最中または直後に、タンパク質がプロセシングを受けて、その活性型に折り畳まれる。次いで、移行したタンパク質は、細胞の周辺質側に保持されるか、または環境に放出される。タンパク質を膜に指向させるシグナルペプチドは、輸送経路特異性の重要な決定因子であることから、これらのシグナルペプチドは、それらがタンパク質を導く輸送経路によって分類される。シグナルペプチドの分類は、シグナルペプチドの除去を担うシグナルペプチダーゼ(SPase)の種類に基づいて分類される。排出されるタンパク質の大部分は、一般「分泌(Sec)経路」を介して細胞質から排出される。グラム陽性病原体によって分泌される最もよく知られている毒性因子(例えば、黄色ブドウ球菌の外毒素、炭疽菌の防御抗原、リステリア菌のリステリオリシンO)は、それらをSec経路に導き得る典型的なN末端シグナルペプチドを有する。この系を介して分泌されるタンパク質は、折り畳まれていない状態で細胞膜の反対側に移行される。これらのタンパク質の後続のプロセシングおよび折り畳みは、膜の向こう側の細胞壁環境で行われる。Sec系に加え、一部のグラム陽性細菌は、折り畳まれたタンパク質を膜の反対側に移行させることができるTat系も含む。病原性細菌は、ごくわずかなタンパク質の輸送にのみ特異的に関与する、特異的用途の輸送系を含み得る。例えば、マイコバクテリウムにおいて、特異的経路(ESAT−6)を介して環境に分泌される、マイコバクテリウム発症機序にとって重要なタンパク質をコードするいくつかの遺伝子クラスターが、特定されている。特異的ATP結合カセット(ABC)輸送体は、バクテリオシンと称される抗菌性小ペプチドの輸送およびプロセシングを導く。溶菌の発生に関与するエンドリシンの遺伝子は、ホリン様タンパク質をコードする遺伝子の近傍に位置することが多く、これらのホリンが細胞壁へのエンドリシン排出に関与することを示唆している(Wooldridge,BACT.SECRETED PROTS:SECRETORY MECHS.& ROLE IN PATHOGEN.(Caister Academic Press,2009))。
【0226】
一部の実施形態において、本発明で有用なシグナル配列はOmpAシグナル配列であるが、バクテリオファージ感染細胞外への抗菌因子の輸送および分泌を可能にする、当業者に一般に知られるいかなるシグナル配列も本発明における使用のために包含される。
【0227】
細菌細胞からのタンパク質の分泌を導くシグナル配列は、当技術分野で周知であり、例えば、国際出願第2005/071088号において開示されている。例えば、表5に示されるシグナルペプチドの非限定的例のうちのいくつかを使用することができ、これを、抗菌因子改変バクテリオファージ、例えばAMP改変バクテリオファージによって発現されるように、抗菌ペプチド(Amp)または抗菌ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に付着させることができる。付着は、抗菌因子改変バクテリオファージ、例えばAMP改変バクテリオファージに感染した細菌からの分泌をもたらす、選択された抗原もしくは抗原−相補的親和性分子融合タンパク質との融合またはキメラ組成物を介してよい。
【0228】
(表5)細菌細胞のタンパク質またはペプチド抗原もしくは抗原−相補的親和性分子融合タンパク質の分泌を導くシグナルペプチドの例
【0229】
本明細書に記載のポリペプチド、例えば抗原または抗原−相補的親和性分子融合タンパク質は、当業者に既知の様々な方法によって発現および精製が可能であり、例えば、本明細書に記載の融合ポリペプチドは、いかなる好適な発現系から精製してもよい。融合ポリペプチドは、当技術分野で公知の、硫酸アンモニウムのような物質を用いた選択的沈殿、カラムクロマトグラフィ、免疫精製法等を含む標準的技術によって、実質的に純粋になるまで精製することができる。例えば、Scopes,Protein PURIFICATION:PRINCIPLES & PRACTICE(1982)、米国特許第4,673,641号を参照されたい。
【0230】
組み換えタンパク質を精製する際には、多くの手順を利用することができる。例えば、確立された分子接着特性を有するタンパク質を最適なタンパク質に可逆的に融合させることができる。適切なリガンドを用いて、タンパク質を精製カラムに選択的に吸着させ、次に比較的純粋な形態でカラムから遊離させることができる。次いで、融合タンパク質を酵素活性によって除去する。最後に、親和性または免疫親和性カラムを用いて、最適なタンパク質を精製することができる。
【0231】
宿主細胞においてタンパク質が発現された後、宿主細胞を溶解して、精製のために発現されたタンパク質を遊離することができる。種々の宿主細胞を溶解する方法は、「Sample Preparation−Tools for Protein Research」EMD BioscienceおよびCurrent Protocols in Protein Sciences(CPPS)に取り上げられている。精製法の例は、ヒスチジンタグ付き融合ポリペプチドに対するニッケル、コバルト、または亜鉛親和性樹脂を用いた金属イオン親和性クロマトグラフ等の親和性クロマトグラフィである。ヒスチジンタグ付き組み換えタンパク質を精製する方法は、ClontechによりそのTALON(登録商標)コバルト樹脂を使用することによって、またNOVAGEN(登録商標)によりそのpETシステムマニュアル第10版において記載されている。別の好ましい精製方法は、免疫親和性クロマトグラフィであり、例えば、抗myc抗体コンジュゲート樹脂を用いて、mycタグ付き融合ポリペプチドを親和性精製することができる。適切なプロテアーゼ認識配列が存在するとき、融合ポリペプチドをヒスチジンまたはmycタグから切断することができ、ヒスチジンタグおよびmycタグを親和性樹脂に付着させたまま、融合ポリペプチドを親和性樹脂から解放する。
【0232】
組み換えタンパク質および天然に存在するタンパク質を精製するための標準的タンパク質分離技術は、当技術分野で公知であり、例えば、溶解度による分画、サイズ排除ゲル濾過、および種々のカラムクロマトグラフィがある。
【0233】
溶解度による分画:しばしば、最初のステップとして、特にタンパク質混合物が複雑である場合、最初の塩分画により不要な宿主細胞タンパク質(または細胞培養培地に由来するタンパク質)の多くを関心タンパク質から分離することができる。好ましい塩は、硫酸アンモニウムである。硫酸アンモニウムは、タンパク質混合物中の水の量を効果的に減少させることにより、タンパク質を沈殿させる。次いでタンパク質は、その溶解度に基づいて沈殿する。タンパク質がより疎水性であるほど、そのタンパク質は、より低い硫酸アンモニウム濃度で沈殿する傾向にある。典型的なプロトコルは、得られた硫酸アンモニウム濃度が20〜30%であるように、飽和硫酸アンモニウムをタンパク質溶液に添加することを含む。この濃度は、最も疎水性のタンパク質を沈殿させることになる。次に、沈殿物を廃棄し(関心タンパク質が疎水性でない限り)、関心タンパク質を沈殿させることが知られている濃度まで、上清に硫酸アンモニウムを添加する。次いで、沈殿物を緩衝液で可溶化して、必要であれば、透析または透析濾過のいずれかによって、過剰塩を除去する。冷エタノール沈殿等のタンパク質の溶解度に依存する他の方法は、当業者に公知であり、複雑なタンパク質混合物を分画するために使用できる。
【0234】
サイズ排除濾過:最適なタンパク質の分子量を用いて、異なる孔径の膜(例えば、AMICON(登録商標)膜またはMILLIPORE(登録商標)膜)による限外濾過を使用して、より大きなまたは小さなサイズのタンパク質をそれから単離することができる。第1ステップとして、関心タンパク質の分子量よりも低い分画分子量を有する孔径の膜を通して、タンパク質混合物を限外濾過する。限外濾過の残留物を次いで、関心タンパク質の分子量よりも高い分画分子量の膜に対して限外濾過する。組み換えタンパク質は、膜を通過して濾液に入る。次いで、濾液に、後述のようにクロマトグラフィを行うことができる。
【0235】
カラムクロマトグラフィ:最適なタンパク質は、そのサイズ、正味表面電荷、疎水性、およびリガンドに対する親和性に基づいて、他のタンパク質から分離することもできる。さらに、組み換えタンパク質または天然に存在するタンパク質に対して産生された抗体をカラムマトリックスにコンジュゲートさせ、タンパク質を免疫精製することができる。これらの方法は全て、当技術分野において周知である。クロマトグラフィ技術は、任意の規模で、多くの異なる製造業者(例えば、Pharmacia Biotech)からの機器を使用して行うことができることが、当業者に明白となるであろう。例えば、抗原ポリペプチドは、PA63七量体親和性カラムを用いて精製することができる(Singh et al.,269,J.Biol.Chem.29039(1994))。
【0236】
一部の実施形態において、本明細書に記載の融合ポリペプチドを精製するために、例えば、(a)イオン交換クロマトグラフィ、(b)ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、(c)疎水性相互作用クロマトグラフィ、および(d)サイズ排除クロマトグラフィを含む、精製ステップの組み合わせを使用することができる。
【0237】
無細胞発現系もまた企図されている。無細胞発現系は、タンパク質の折り畳みに有利なように反応条件を容易に変更できること、産物毒性に対する感度の低下、ならびに反応用量および処理時間の低減により、迅速な発現スクリーニングまたは大量のタンパク質産生などのハイスループット戦略に適していることを含む、従来の細胞に基づく発現方法よりも優れたいくつかの利点を提供する。無細胞発現系では、プラスミドまたは線状DNAを使用することができる。さらに、翻訳効率の改善により、反応混合物1ミリリットル当たりタンパク質1ミリグラムを超える収率が得られている。市販の無細胞発現系には、ウサギ網状赤血球に基づくインビトロ系を用いる、TNT coupled reticulocyte lysate Systems(Promega)がある。
【0238】
免疫組成物の製剤および使用方法
本発明の具体的な実施形態は、動物において免疫応答を誘発するための、本明細書において開示される免疫原性組成物の使用を提供する。より具体的には、組成物は、体液免疫および細胞免疫の両方、ならびに多くの場合、粘膜免疫を誘発する。本発明の実施形態は、特に肺炎球菌による、感染からの少なくとも部分的保護、または該感染後の部分的改善を提供する。肺炎球菌は、髄膜炎、肺炎、菌血症、および中耳炎等の多数の疾患を引き起こす。世界中で毎年ほぼ百万人の小児が、肺炎球菌疾患が原因で死亡する。肺炎連鎖球菌は、大規模に研究されており、ゲノムの少なくともいくつかが配列決定されている。例えば、米国特許第7,141,418号を参照されたい。既知の血清型を定義する莢膜多糖類に対する抗体は、血清型特異的防御を付与するが、他の免疫の防御機序も説明されている。Malley et al.,88 J.Mol.Med.135(2010)を参照されたい。これらの他の防御機序としては、非莢膜抗原に対する抗体、および肺炎球菌成分に対するT細胞応答が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質−多糖コンジュゲートワクチンであるPCV7の適用は、疾患を有意に低減させている。Black et al.,24(S2)Vaccine 79(2006)、Hansen et al.,25 Pediatr.Infect.Dis.J.779(2006)。しかし、最近の研究は、PCV7に他の血清型が欠如していることにより、新たな代替肺炎球菌血清型がもたらされたことを示している。Pichichero & Casey,26(S10)Pediatr.Infect.Dis.J.S12(2007)。
【0239】
この種の全ての血清型に共通のある特定の肺炎球菌抗原、例えば、表面タンパク質PspA、PspC、PsaA、および細胞毒素肺炎球菌溶血素またはニューモリソイド突然変異体は、封入にもかかわらず、免疫防御の可能性を有することが示されており(Basset et al.,75 Infect.Immun.5460(2007)、Briles et al.,18 Vaccine 1707(2000))、ゲノミクスおよび変異ライブラリーの使用により、数ダースの追加の種共通タンパク質が同定された(Hava & Camilli,45 Mol.Microbiol.1389(2002)、Wizemann et al.,60 Infect.Immun.1593(2001))。動物モデルにおいて、個々の抗原によって免疫が誘導されているが(Alexander et al.,62 Infect.Immun.5683(1994)、Balachandran et al.,70 Infect.Immun.2526(2002)、Chung et al.,170 J.mmunol.1958(2003)、Glover et al.,76 Infect.Immun.2767(2008)、Wu et al.,175 J.Infect.Dis.839(1997))、共通抗原に基づくワクチンは、これまでヒトでの使用に承認されていない。
【0240】
一実施形態において、対象に投与された場合に、ポリマーに付着した1つ以上の抗原に対する免疫応答を誘発する際に使用するための、少なくとも1つのタイプのポリマー骨格、例えば多糖または炭水化物ポリマーに付着した少なくとも1つまたは複数の抗原を含む免疫原性組成物を投与する工程を含む、哺乳類にワクチンを接種する方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態において、免疫応答は、体液および/または細胞免疫応答である。
【0241】
したがって、本発明の一態様は、少なくとも1つのタイプのポリマー、例えば多糖と、少なくとも1つの抗原と、(i)該ポリマー、例えば多糖と会合する第1の親和性分子、および(ii)該抗原を該ポリマー、例えば多糖に付着させるように該抗原と会合する相補的親和性分子(例えば、第1の親和性分子が該相補的親和性分子と会合して、該抗原と該ポリマー、例えば多糖を連結させる)を含む、少なくとも一対の相補的親和性分子とを含む、免疫原性組成物を対象に投与する工程を含む、対象において免疫応答を誘発するための方法に関する。
【0242】
したがって、本発明の一態様は、例えば、対象に投与される免疫原性組成物が、少なくとも1つ、または少なくとも2つ以上、例えば、複数の同じもしくは異なる抗原を含む、ポリマーを含む場合、多重抗原に対する体液性および/または細胞免疫を同時に誘発するための方法に関する。
【0243】
本発明の一態様は、病原体に対して、対象、例えばトリもしくは哺乳類、例えばヒトを免疫化またはワクチン接種する方法に関し、該方法は、1つ以上の病原体に由来する少なくとも1つの抗原を含む、本明細書において開示される免疫組成物を投与する工程を含む。一部の実施形態において、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも5つ、または少なくとも10、または少なくとも15、または少なくとも約20、または少なくとも50、または少なくとも約100、または100より多くの異なる病原体に対して、対象を同時に免疫化することができ、ここで、対応する異なる抗原として免疫原性組成物のポリマーが付着している。
【0244】
一部の実施形態において、対象には、本明細書において開示されるいくつかの異なる免疫原性組成物を投与することができ、例えば、対象には、1つまたは複数の抗原、例えば抗原A、B、C、およびD等とともにポリマーを含む組成物を投与することができ、かつ異なる1つの抗原または異なる一連の抗原、例えば抗原W、X、Y、およびZ等を含むポリマーを含む組成物を投与することもできる。代替的に、対象には、1つまたは複数の抗原、例えば抗原A、B、C、およびD等とともにポリマーAを含む組成物を投与することができ、かつ同じもの、例えば抗原A、B、C、およびD等、または異なる一連の抗原を含むポリマーBを含む組成物を投与することができる。本発明は、100以上も多くの抗原での免疫化を可能にするように、所望されるだけ多くの抗原を用いた、例えば、本明細書に記載の種々の異なる免疫原性複合体を用いた、対象の免疫化のための方法を提供することが想定される。
【0245】
一実施形態において、本明細書に記載の免疫原性組成物は、薬学的に許容可能なキャリアを含む。別の実施形態において、本明細書に記載の免疫原性組成物組成物は、ワクチンとして、またはワクチンにおいて、トリ、哺乳類、またはヒトに投与するために製剤化される。好適な製剤化は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences(2006),またはIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms(4th ed.,Lea & Febiger,Philadelphia,1985)において見出すことができる。
【0246】
一実施形態において、本明細書に記載の免疫原性組成物は、本質的に非毒性および非治療的である、薬学的に許容可能なキャリアを含む。かかるキャリアの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝液物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、およびポリエチレングリコールが挙げられる。全ての投与に関して、従来のデポー形態が好適に使用される。かかる形態としては、例えばマイクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、硬膏、吸入形態、鼻スプレー、舌下錠、および持続放出調製物が挙げられる。持続放出組成物の例に関しては、米国特許第3,773,919号、第3,887,699号、欧州特許第58,481A号、欧州特許第158,277A号、カナダ特許第1176565号、Sidman et al.,22 Biopolymers 547(1983)、Langer et al.,12 Chem.Tech.98(1982)を参照されたい。タンパク質は通常、患者一人あたり1回の使用ごとに約0.1mg/ml〜100mg/mlの濃度で、製剤化され得る。
【0247】
一実施形態において、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、例えばポリアルギニンもしくはトリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン;単糖類、二糖類、およびセルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;ならびに糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトールを含む、他の材料をワクチン製剤に添加することができる。
【0248】
一部の実施形態において、本MAPSイムノゲン組成物は、少なくとも1つのアジュバントとともに投与される。アジュバントは、同時に投与される抗原に対する免疫学的応答を増強する物質の異質な群である。場合によっては、アジュバントは、必要とされるワクチンがより少なくなるように、免疫応答を改善する。アジュバントは、抗原(特異的な保護免疫応答を刺激する物質)を免疫系と接触させて、生成される免疫のタイプならびに免疫応答の質(大きさまたは持続時間)に影響するように働く。アジュバントはまた、ある抗原の毒性を減少させ、かつ一部のワクチン構成要素に可溶性を提供することもできる。抗原に対する免疫応答の増強のために今日使用されるほとんど全てのアジュバントは、粒子であるか、または抗原とともに粒子を形成する。VACCINE DESIGN−SUBUNIT & ADJUVANT APPROACH(Powell & Newman,Eds.,Plenum Press,1995)という書籍において、多くの既知のアジュバントが、それらの免疫学的活性、およびそれらの化学特性の両方に関して、説明されている。粒子を形成しないタイプのアジュバントとは、免疫学的シグナル物質として作用し、かつ、粒子アジュバント系の投与後の免疫学的活性化の結果として通常条件下で免疫系によって形成される物質から成る、物質群である。
【0249】
免疫原性組成物およびワクチンのためのアジュバントは、当技術分野で周知である。例として、モノグリセリドおよび脂肪酸(例えば、モノオレイン、オレイン酸、および大豆油の混合物)、無機塩、例えば水酸化アルミニウムゲルおよびリン酸アルミニウムゲルまたはリン酸カルシウムゲル、オイルエマルションおよび界面活性剤系製剤、例えばMF59(マイクロ流動化洗剤で安定化した水中油エマルション)、QS21(精製サポニン)、AS02[SBAS2](水中油エマルション+MPL+QS−21)、MPL−SE、Montanide ISA−51およびISA−720(安定化油中水エマルション)、粒子アジュバント、例えばウイロゾーム(インフルエンザ赤血球凝集素を組み込む単層リポソームビヒクル)、AS04([SBAS4]MPLを伴うAl塩)、ISCOMS(サポニンおよび脂質の構造複合体)、ポリラクチドコグリコリド(PLG)、微生物誘導体(天然および合成)、例えばモノホスホリル脂質A(MPL)、Detox(MPL+M.Phlei細胞壁骨格)、AGP[RC−529](合成アシル化単糖類)、Detox−PC、DC_Chol(リポソームの中に自己組織化することができるリポイド免疫刺激因子)、OM−174(脂質A誘導体)、CpGモチーフ(免疫刺激性CpGモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチド)、または他のDNA構造、修飾LTおよびCT(非毒性アジュバント効果を提供するように、遺伝子的に修飾された細菌毒素)、内因性ヒト免疫調節因子、例えばhGM−CSFもしくはhIL−12(タンパク質またはコード化されたプラスミドのいずれかとして投与することができるサイトカイン)、Immudaptin(C3dタンデムアレイ)、MoGM−CSF、TiterMax−G、CRL−1005、GERBU、TERamide、PSC97B、Adjumer、PG−026、GSK−I、GcMAF、B−alethine、MPC−026、Adjuvax、CpG ODN、Betafectin、Alum、およびMF59、ならびに金粒子等の不活性ビヒクルが挙げられるが、これらに限定されない。追加のアジュバントは、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第6,890,540号、米国特許公開第2005;0244420号、PCT/SE97/01003号を参照されたい。
【0250】
一部の実施形態において、アジュバントは、粒子であり、緩やかな生分解が可能であるという特徴を有することができる。アジュバントが毒性の代謝産物を形成しないということを確実にするように注意しなければならない。好ましくは、一部の実施形態において、基質として使用することができる、かかるアジュバントは、主に、身体を起源とする物質である。これらとしては、乳酸ポリマー、ポリアミノ酸(タンパク質)、炭水化物、脂質、および低い毒性を有する生体適合性ポリマーが挙げられる。体から起源するこれらの物質群の組み合わせ、または体に起因する物質、および生体適合性ポリマーの組み合わせもまた、使用することができる。脂質は、生分解性を与える構造を示し、かつ、それらが全ての生体膜において重要な要素であるという事実を示すので、好ましい物質である。
【0251】
一実施形態において、投与のための本明細書に記載の免疫原性組成物は、対象への投与のために無菌でなければならない。無菌性は、無菌濾過膜(例えば、0.2ミクロンの膜)を通した濾過によって、またはガンマ線照射によって、容易に達成される。
【0252】
一部の実施形態において、本明細書に記載の免疫原性組成物は、生体適合性油、生理食塩水、防腐剤、炭水化物、タンパク質、アミノ酸、浸透圧制御剤、キャリアガス、pH制御剤、有機溶媒、疎水性物質、酵素阻害剤、吸水ポリマー、界面活性剤、吸収プロモーター、および抗酸化剤を含むが、これらに限定されない、薬学的賦形剤をさらに含む。炭水化物の代表的な例としては、可溶性糖質、例えばヒドロプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルセルロース、ヒアルロン酸、チトサン、アルギン酸塩、グルコース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、サッカロース、デキストラン、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。タンパク質の代表的な例としては、アルブミン、ゼラチン等が挙げられる。アミノ酸の代表的な例としては、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アルギニン、リジン、およびそれらの塩が挙げられる。かかる薬学的賦形剤は、当技術分野で公知である。
【0253】
一部の実施形態において、免疫原性MAPS組成物は、例えば、γ−インターフェロン、サイトカイン、化学療法剤、または抗炎症性もしくは抗ウイルス因子を含む、他の治療材料と組み合わせて投与される。一部の実施形態において、本明細書において開示される免疫原性組成物は、本明細書において開示される1つ以上の共刺激分子および/またはアジュバントとともに投与することができる。
【0254】
一部の実施形態において、免疫原性組成物は、純粋、または実質的に純粋な形態で投与されるが、薬学的組成物、製剤、または調製物として投与されてもよい。かかる製剤は、1つ以上の薬学的に許容可能なキャリアおよび任意に他の治療材料とともに、本明細書に記載のMAPSを含む。他の治療材料としては、抗原提示を増強する化合物、例えばガンマインターフェロン、サイトカイン、化学療法剤、または抗炎症剤が挙げられる。製剤は、単位用量形態で利便的に提示することができ、薬学分野において周知の方法によって調製されてもよい。例えば、Plotkin and Mortimer、VACCINES(2nd ed.,W.B.Saunders Co.,1994)において、特定の病原体に特異的な免疫応答を誘導するための動物またはヒトのワクチン接種、ならびに、抗原を調製する、抗原の好適な用量を判定する、および免疫応答の誘導を分析する方法が記載されている。
【0255】
静脈内、筋肉内、鼻腔内、経口、舌下、膣内、直腸、皮下、または腹腔内投与に好適な製剤は、好都合には、受容者の血液と好ましくは等張性である溶液を含む有効成分の無菌水溶液を含む。かかる製剤化は、塩化ナトリウム(例えば、0.1M〜2.0M)、グリシン、および同等物等の生理的に適合性のある物質を含有する水に固体有効成分を溶解すること、および水溶液を産生するように生理学的条件と適合性のある緩衝pHを有すること、および溶液を無菌にすることによって、利便的に調製されてもよい。これらは、単回または複数回投与容器、例えば、封止されたアンプルまたはバイアルに存在してもよい。
【0256】
リポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容可能なキャリアとして使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に説明されるように、当業者に周知である方法に従って調製することができる。
【0257】
鼻腔内送達のための製剤は、米国特許第5,427,782号、第5,843,451号、第6,398,774号に説明されている。
【0258】
免疫原性組成物の製剤は、安定化剤を組み込むことができる。例示的な安定化剤は、それらのみ、または混合物としてのいずれかで使用され得る、ポリエチレングリコール、タンパク質、サッカライド、アミノ酸、無機酸、および有機酸である。2つ以上の安定化剤が、適切な濃度および/またはpHで水溶液において使用されてもよい。かかる水溶液における具体的な浸透圧は、一般に、0.1〜3.0浸透圧の範囲内、好ましくは、0.80〜1.2の範囲内である。水溶液のpHは、pH5.0〜9.0の範囲内、好ましくは、pH 6〜8の範囲内になるであるように調節される。
【0259】
経口調製物が所望される時、免疫原性組成物は、典型的なキャリア、例えば、とりわけ、ラクトース、スクロース、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、結晶性セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、またはアラビアゴムと組み合わせることができる。
【0260】
一部の実施形態において、本明細書に記載の免疫原性組成物は、静脈内、鼻腔内、筋肉内、皮下、腹腔内、舌下、膣内、直腸、または経口投与することができる。一部の実施形態において、投与経路は、経口、鼻腔内、皮下、または筋肉内である。一部の実施形態において、投与経路は、鼻腔内投与である。
【0261】
ワクチン接種は、従来の方法によって行うことができる。例えば、免疫原性組成物は、好適な希釈剤、例えば、食塩水もしくは水、または完全もしくは不完全なアジュバントにおいて使用することができる。免疫原性組成物は、免疫応答を誘発するために適切な任意の経路によって投与することができる。免疫原性組成物は、1度、または免疫応答が誘発されるまで、周期的な間隔で投与することができる。免疫応答は、抗体産生、細胞毒性アッセイ、増殖アッセイ、およびサイトカイン放出アッセイを含むが、これらに限定されない、当業者に既知の多様な方法によって検出することができる。例えば、血液の試料は、免疫化された哺乳類から取り出され、ELISAによって、免疫原性組成物の抗原に対する抗体の存在に関して分析することができ(de Boer et.al.,115 Arch Virol.147(1990)を参照されたい)、これらの抗体の力価は、当技術分野で公知の方法によって判定することができる。
【0262】
製剤において採用されるべき正確な用量もまた、投与経路に依存し、施術者の判断、および各患者の状況に従って決定されるべきである。例えば、25μg〜900μgの範囲の総タンパク質を、3か月間、毎月投与することができる。
【0263】
最終的に、主治医が、特定の個人に投与するべき免疫原性組成物またはワクチン組成物の量を決定する。全ての免疫原性組成物またはワクチンと同様に、イムノゲンの免疫学的に有効な量は、経験的に判定されなければならない。考慮されるべき因子としては、免疫原性、イムノゲンがアジュバントまたはキャリアタンパク質または他のキャリアと複合体化または共有結合するかどうか、投与経路、および、投与されるべき免疫化用量の数が挙げられる。かかる因子は、ワクチンの技術分野において既知であり、過度の実験を伴わずにかかる判定を行うことは、十分に免疫学者の技能の範囲内である。
【0264】
一実施形態では、本明細書に記載の免疫原性組成物またはワクチン組成物は、マウスに投与された場合、抗原(それに対する疾患の症状が予防される)を含む免疫原性組成物の5LD
50で攻撃感染させられた動物の少なくとも20%において、疾患の症状を予防する免疫応答を引き起こすことができる。免疫動物にワクチン接種および攻撃感染する方法が、当業者に公知である。例えば、ワクチン接種1回ごとにマウス1匹あたり、本明細書で開示されるような免疫原性組成物またはワクチン組成物の10μgアリコートを、100μlのPBS中で、および/または不完全フロイントアジュバントの添加によって調製して、筋肉内注射することができる。代替として、非経口、腹腔内、および足蹠注射を使用することができる。足蹠注射の用量は、50μlまで低減させられる。マウスは、その間に数日、例えば14日の間隔を伴って、3回の別個の機会に、本明細書で開示されるような免疫原性組成物またはワクチン組成物で免疫化することができる。
【0265】
ワクチン接種の有効性は、病原体を用いた攻撃感染によって試験することができる。免疫原性組成物の最後の投与の7日後、免疫マウスを、抗原が由来した病原生物に鼻腔内で攻撃感染させる。エーテル麻酔マウス(10g〜12g)を、病原生物の5LD
50を含有する50μlのPBS希釈尿膜腔液に鼻腔内で感染させることができる。21日間の観察期間の全体を通して評価される、動物の生存および体重を監視することによって、防御を測定することができる。重度に罹患したマウスは安楽死させられる。A/Mallard/Pennsylvania/10218/84の1LD
50は、50%組織培養感染量(TCID50)検定の100〜1000に等しい。
【0266】
他の実施形態において、免疫マウスを、種々の異なる病原生物、例えばポリマーに付着した抗原のそれぞれが由来する異なる病原生物に攻撃感染させることができる。例えば、免疫原性組成物は、ポリマー、例えば多糖に付着した5つの異なる抗原を含み、各抗原は5つの異なる病原生物に由来し、免疫マウスを連続的(任意の順序で)または同時のいずれかで、5つの異なる病原生物に攻撃感染させることができる。当業者であれば、当技術分野で公知である方法によって、免疫マウスに攻撃感染させるために使用される各病原生物のLD
50を判定することができるであろう。例えば、LaBarre & Lowy,96 J. Virol. Meths. 107 (2001)、Golub,59J. Immunol. 7 (1948)を参照されたい。
【0267】
キット
本発明はまた、例えば免疫応答に対する抗原または抗原の組み合わせの効果を評価する研究目的のために好ましい抗原を用いて研究者が免疫原性組成物を調整するのに有用である、本明細書で開示されるような免疫原性組成物を産生するためのキットも提供する。かかるキットは、容易に入手可能な材料および試薬から調製することができる。例えば、かかるキットは以下の材料のうちいずれか1つ以上を含むことができる:複数の第1の親和性分子と架橋されるポリマー、例えば多糖を含む容器;および、第1の親和性分子と会合する相補的親和性分子を含む容器、ここで該相補的親和性分子は該抗原と会合する。
【0268】
別の実施形態において、キットは、ポリマー、例えば多糖を含む容器と、複数の第1の親和性分子を含む容器と、第1の親和性分子を該ポリマーに架橋するための架橋試薬を含む容器とを含むことができる。
【0269】
一部の実施形態において、キットは、相補的親和性分子を抗原に付着させるための手段をさらに含み、手段は、架橋試薬による、または何らかの中間融合タンパク質によるものであり得る。一部の実施形態において、キットは、ポリマーに追加することができる、少なくとも1つの共刺激因子を含むことができる。一部の実施形態において、キットは、架橋試薬、例えば、限定されないが、共因子をポリマーに結合するためのCDAP(1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート)、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]塩酸カルボジイミド)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、臭化シアン、重炭酸アンモニウム/ヨード酢酸を含む。
【0270】
キットの意図された使用、特定の標的抗原、およびユーザの必要性に応じて、本明細書に記載の方法で使用するために、種々のキットおよび構成要素を調製することができる。
【0271】
本発明はさらに、以下の番号が付けられた段落で、実施形態のうちのいずれかにおいて説明することができる。
1.アミノ酸配列
とその任意の機能的誘導体とを含む、可溶性ビオチン結合タンパク質。
2.大腸菌(E.coli)中で、培養培地1Lあたり少なくとも10mgのレベルにて、可溶性形態で産生される、段落1に記載のビオチン結合タンパク質。
3.二量体である、請求項1または2に記載のビオチン結合タンパク質。
4.N末端において細菌シグナル配列を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のビオチン結合タンパク質。
5.前記細菌シグナル配列が
である、段落4に記載のビオチン結合タンパク質。
6.前記シグナル配列が、ペプチドリンカーによって、前記ビオチンタンパク質に連結されている、段落4または5に記載のビオチン結合タンパク質。
7.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落6に記載のビオチン結合タンパク質。
8.C末端において精製タグを含む、請求項1〜7のいずれかに記載のビオチン結合タンパク質。
9.前記精製タグが、ヒスチジンタグ、c−myタグ、Haloタグ、Flagタグ、およびそれらの任意の組み合わせから成る群より選択される、段落8に記載のビオチン結合タンパク質。
10.前記ヒスチジンタグが、アミノ酸配列
を含む、段落9に記載のビオチン結合タンパク質。
11.前記精製タグが、ペプチドリンカーを介して前記ビオチン結合タンパク質に連結されている、請求項8〜10のいずれかに記載のビオチン結合タンパク質。
12.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落11に記載のビオチン結合タンパク質。
13.アミノ酸配列
を含む、段落1〜12のいずれかに記載のビオチン結合タンパク質。
14.請求項1〜13のいずれかに記載のビオチン結合タンパク質を含む、組成物。
15.ビオチン結合タンパク質と、タンパク質またはペプチドとを含む、融合タンパク質。
16.前記タンパク質またはペプチドが、ペプチドリンカーによって前記ビオチン結合タンパク質に融合されている、段落15に記載の融合タンパク質。
17.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落15に記載の融合タンパク質。
18.前記タンパク質またはペプチドが、肺炎球菌抗原、結核抗原、炭疽菌抗原、HIV抗原、季節性または流行性インフルエンザ抗原、インフルエンザ抗原、百日咳抗原、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)抗原、髄膜炎菌抗原、ヘモフィルス抗原、HPV抗原、またはそれらの組み合わせから成る群より選択される抗原である、請求項15〜17のいずれかに記載の融合タンパク質。
19.前記抗原が、黄色ブドウ球菌α溶血素の非溶血性変種である、請求項15〜18のいずれかに記載の融合タンパク質。
20.前記黄色ブドウ球菌α溶血素の非溶血性変種が、野生型黄色ブドウ球菌α溶血素のアミノ酸残基205、213、または209〜211において突然変異を含む、段落19に記載の融合タンパク質。
21.前記黄色ブドウ球菌α溶血素の非溶血性変種が、野生型黄色ブドウ球菌α溶血素における(i)残基205 W→A、(ii)残基213 W→A、または(iii)残基209〜211 DRD→AAAの突然変異のうちの1つを含む、段落19に記載の融合タンパク質。
22.前記黄色ブドウ球菌α溶血素の非溶血性変種が、
、ならびにそれらの機能的変種、一部分、および誘導体から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、段落19に記載の融合タンパク質。
23.N末端において細菌シグナル配列を含む、請求項15〜22のいずれかに記載の融合タンパク質。
24.前記細菌シグナル配列が
である、段落23に記載の融合タンパク質。
25.前記シグナル配列が、ペプチドリンカーによって、前記ビオチンタンパク質に連結されている、段落23または24に記載の融合タンパク質。
26.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落25に記載の融合タンパク質。
27.C末端において精製タグを含む、請求項15〜26のいずれかに記載の融合タンパク質。
28.前記精製タグが、ヒスチジンタグ、c−myタグ、Haloタグ、Flagタグ、およびそれらの任意の組み合わせから成る群より選択される、段落27に記載の融合タンパク質。
29.前記ヒスチジンタグが、アミノ酸配列
を含む、段落27に記載の融合タンパク質。
30.前記精製タグが、ペプチドリンカーを介して前記ビオチン結合タンパク質に連結されている、請求項27〜29のいずれかに記載の融合タンパク質。
31.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落30に記載の融合タンパク質。
32.前記ビオチン結合タンパク質が、請求項1〜13のいずれかに記載のビオチン結合タンパク質である、請求項15〜31のいずれかに記載の融合タンパク質。
33.
から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項15〜32のいずれかに記載の融合タンパク質。
34.請求項15〜33のいずれかに記載の融合タンパク質を含む、組成物。
35.野生型黄色ブドウ球菌α溶血素のアミノ酸残基205、213、または209〜211において突然変異を含む、突然変異体α溶血素(mHla)タンパク質であって、該突然変異体α溶血素が、等しい力価の野生型α溶血素(Hla)よりも低い溶血活性を有する、突然変異体α溶血素タンパク質。
36.前記突然変異体α溶血素の溶血活性が、等しい力価の野生型Hlaより少なくとも25%低い、段落35に記載の突然変異体α溶血素。
37.野生型黄色ブドウ球菌α溶血素における(i)残基205 W→A、(ii)残基213 W→A、または(iii)残基209〜211 DRD→AAAの突然変異のうちの1つを含む、段落35または36に記載の突然変異体α溶血素。
38.
、ならびにそれらの機能的変種、一部分、および誘導体から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13〜15のいずれかに記載の突然変異体α溶血素。
39.請求項35〜38のいずれかに記載の突然変異体α溶血素を含む、組成物。
40.α溶血素とビオチン結合ドメインとを含む融合タンパク質であって、等しい力価の野生型α溶血素(Hla)よりも低い溶血活性を有する、融合タンパク質。
41.前記α溶血素が、請求項35〜38のいずれかに記載の突然変異体溶血素であるか、または前記α溶血素が、黄色ブドウ球菌の野生型α溶血素のアミノ酸27〜319のアミノ酸配列から成る、段落18に記載の融合タンパク質。
42.前記ビオチン結合ドメインが、配列番号:1のアミノ酸配列から成る、段落19に記載の融合タンパク質。
43.前記ビオチン結合ドメインおよび前記突然変異体α溶血素が、ペプチドリンカーによって連結されている、請求項40〜42のいずれかに記載の融合タンパク質。
44.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落43に記載の融合タンパク質。
45.N末端において細菌シグナル配列を含む、請求項40〜44のいずれかに記載の融合タンパク質。
46.前記細菌シグナル配列が
である、段落45に記載の融合タンパク質。
47.前記シグナル配列が、ペプチドリンカーによって、前記ビオチンタンパク質に連結されている、段落45または46に記載の融合タンパク質。
48.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落47に記載の融合タンパク質。
49.C末端において精製タグを含む、請求項40〜48のいずれかに記載の融合タンパク質。
50.前記精製タグが、ヒスチジンタグ、c−myタグ、Haloタグ、Flagタグ、およびそれらの任意の組み合わせから成る群より選択される、段落49に記載の融合タンパク質。
51.前記ヒスチジンタグが、アミノ酸配列
を含む、段落50に記載の融合タンパク質。
52.前記精製タグが、ペプチドリンカーを介して前記ビオチン結合タンパク質に連結されている、請求項49〜51のいずれかに記載の融合タンパク質。
53.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落52に記載の融合タンパク質。
54.前記ビオチン結合ドメインが、請求項1〜13のいずれかに記載のビオチン結合タンパク質である、請求項40〜53のいずれかに記載の融合タンパク質。
55.配列番号:26、配列番号:27、および配列番号:28から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項40〜54のいずれかに記載の融合タンパク質。
56.前記融合タンパク質の溶血活性が、等しい力価の野生型Hlaより少なくとも25%低い、請求項40〜55のいずれかに記載の融合タンパク質。
57.請求項40〜56のいずれかに記載の融合タンパク質を含む、組成物。
58.段落14、34、39、または57に記載の組成物を対象に投与する工程を含む、前記対象において免疫応答を誘導する方法。
59.段落14、34、39、または57に記載の組成物を投与する工程を含む、少なくとも1つの抗原を持つ病原体に対して哺乳類にワクチン接種する方法。
60.前記対象がヒトである、請求項58または59に記載の方法。
61.前記対象が農耕動物または野生動物である、請求項58または59に記載の方法。
62.前記対象が飼育動物である、請求項58または59に記載の方法。
63.投与が、皮下、鼻腔内、皮内、または筋肉内注射を介する、請求項58または59に記載の方法。
64.前記免疫応答が抗体/B細胞応答である、段落58に記載の方法。
65.前記免疫応答が、Th1、Th2、またはTh17応答を含むCD4+T細胞応答である、段落58に記載の方法。
66.前記免疫応答がCD8+T細胞応答である、段落58に記載の方法。
67.病原体または免疫脅威(immune threat)への曝露についての診断に使用するための、請求項14、34、39、または57のいずれか記載の組成物。
68.配列番号:1のアミノ酸配列
とその任意の機能的誘導体とを含む、脂質付加ビオチン結合タンパク質。
69.大腸菌(E.coli)中で、培養培地1Lあたり少なくとも10mgのレベルにて、可溶性形態で産生される、段落68に記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
70.二量体である、請求項68または69に記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
71.N末端において脂質付加配列を含む、請求項68〜70のいずれかに記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
72.前記脂質付加配列が
である、段落71に記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
73.前記脂質付加配列が、ペプチドリンカーによって、前記ビオチンタンパク質に連結されている、段落71または72に記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
74.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落73に記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
75.C末端において精製タグを含む、請求項68〜74のいずれかに記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
76.前記精製タグが、ヒスチジンタグ、c−myタグ、Haloタグ、Flagタグ、およびそれらの任意の組み合わせから成る群より選択される、段落75に記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
77.前記ヒスチジンタグが、アミノ酸配列
を含む、段落76に記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
78.前記精製タグが、ペプチドリンカーを介して前記ビオチン結合タンパク質に連結されている、請求項75〜77のいずれかに記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
79.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落78に記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
80.アミノ酸配列
を含む、段落68〜79のいずれかに記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質。
81.請求項68〜80のいずれかに記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質を含む、組成物。
82.脂質付加ビオチン結合タンパク質と、タンパク質またはペプチドとを含む、融合タンパク質。
83.前記タンパク質またはペプチドが、ペプチドリンカーによって前記脂質付加ビオチン結合タンパク質に融合されている、段落82に記載の融合タンパク質。
84.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落83に記載の融合タンパク質。
85.前記タンパク質またはペプチドが、肺炎球菌抗原、結核抗原、炭疽菌抗原、HIV抗原、季節性または流行性インフルエンザ抗原、インフルエンザ抗原、百日咳抗原、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)抗原、髄膜炎菌抗原、ヘモフィルス抗原、HPV抗原、またはそれらの組み合わせから成る群より選択される抗原である、請求項82〜84のいずれかに記載の融合タンパク質。
86.前記抗原が、黄色ブドウ球菌α溶血素の非溶血性変種である、段落85のいずれかに記載の融合タンパク質。
87.前記黄色ブドウ球菌α溶血素の非溶血性変種が、野生型黄色ブドウ球菌α溶血素のアミノ酸残基205、213、または209〜211において突然変異を含む、段落86に記載の融合タンパク質。
88.前記黄色ブドウ球菌α溶血素の非溶血性変種が、野生型黄色ブドウ球菌α溶血素における(i)残基205 W→A、(ii)残基213 W→A、または(iii)残基209〜211 DRD→AAAの突然変異のうちの1つを含む、段落86に記載の融合タンパク質。
89.前記黄色ブドウ球菌α溶血素の非溶血性変種が、
、ならびにそれらの機能的変種、一部分、および誘導体から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、段落86に記載の融合タンパク質。
90.N末端において脂質付加配列を含む、請求項82〜89のいずれかに記載の融合タンパク質。
91.前記脂質付加配列が
である、段落90に記載の融合タンパク質。
92.前記シグナル配列が、ペプチドリンカーによって、前記ビオチンタンパク質に連結されている、段落90または91に記載の融合タンパク質。
93.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落92に記載の融合タンパク質。
94.C末端において精製タグを含む、請求項82〜93のいずれかに記載の融合タンパク質。
95.前記精製タグが、ヒスチジンタグ、c−myタグ、Haloタグ、Flagタグ、およびそれらの任意の組み合わせから成る群より選択される、段落94に記載の融合タンパク質。
96.前記ヒスチジンタグが、アミノ酸配列
を含む、段落95に記載の融合タンパク質。
97.前記精製タグが、ペプチドリンカーを介して前記ビオチン結合タンパク質に連結されている、請求項93〜96のいずれかに記載の融合タンパク質。
98.前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列
を含む、段落97に記載の融合タンパク質。
99.前記脂質付加ビオチン結合タンパク質が、請求項68〜80のいずれかに記載のビオチン結合タンパク質である、請求項82〜98のいずれかに記載の融合タンパク質。
100.
から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項82〜99のいずれかに記載の融合タンパク質。
101.請求項82〜100のいずれかに記載の脂質付加ビオチン結合タンパク質を含む、組成物。
102.段落81または101に記載の組成物を対象に投与する工程を含む、前記対象において免疫応答を誘導する方法。
103.段落81または101に記載の組成物を投与する工程を含む、少なくとも1つの抗原を持つ病原体に対して哺乳類にワクチン接種する方法。
104.前記対象がヒトである、請求項102または103に記載の方法。
105.前記対象が農耕動物または野生動物である、請求項102または103に記載の方法。
106.前記対象が飼育動物である、請求項102または103に記載の方法。
107.投与が、皮下、鼻腔内、皮内、または筋肉内注射を介する、請求項102または103に記載の方法。
108.前記免疫応答が抗体/B細胞応答である、段落102に記載の方法。
109.前記免疫応答が、Th1、Th2、またはTh17応答を含むCD4+T細胞応答である、段落102に記載の方法。
110.前記免疫応答がCD8+T細胞応答である、段落102に記載の方法。
111.病原体または免疫脅威への曝露についての診断に使用するための、請求項81または101のいずれか記載の組成物。
【0272】
いくつかの選択された定義
便宜上、本出願全体(明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲を含む)において採用されるある用語を、ここにまとめる。別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0273】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される際、単数形は、複数の参照を含み、別途、文脈が明白に示さない限り、逆もまた同様である。「または」という用語は、例えば、「いずれか」によって修飾されない限り、包含的である。動作例以外に、または別途示される場合、本明細書において使用される材料の量または反応条件を表す全ての数字は、「約」という用語によって全ての例において修飾されるように理解されたい。
【0274】
本明細書において使用される「免疫原性組成物」という用語は、対象に投与される時、抗体または細胞性免疫応答といった免疫応答を誘発することが可能な組成物として定義される。本発明の免疫原性組成物は、免疫保護的または治療的であっても、なくてもよい。本発明の免疫原性組成物が、疾患を予防、改善、緩和、または対象から排除する時、免疫原性組成物は、任意にワクチンと称されてもよい。しかしながら、本明細書において使用される際、免疫原性組成物という用語は、ワクチンに限定されることは意図されない。
【0275】
本明細書において使用される際、「抗原」という用語は、物質に対して向けられる免疫応答を促進する任意の物質を指す。一部の実施形態において、抗原は、ペプチドまたはポリペプチドであり、他の実施形態において、それは、任意の化学物質または部分、例えば物質に対して向けられる免疫応答を誘発する炭水化物であり得る。
【0276】
「会合する」という用語は、本明細書において使用される際、非共有または共有結合による2つ以上の分子の連結を指す。一部の実施形態において、2つ以上の分子の連結が、共有結合によって生じる場合、2つ以上の分子は、ともに融合されるか、またはともに架橋されることができる。一部の実施形態において、2つ以上の分子の結合が、非共有結合によって生じる場合、2つ以上の分子は、複合体を形成することができる。
【0277】
「複合体」という用語は、本明細書において使用される際、共有結合的相互作用以外の手段によって、空間的に接続される2つ以上の分子の集団を指し、例えば、それらは、静電相互作用、水素結合によって、または疎水性相互作用によって(即ち、ファン・デル・ワールス力)、接続することができる。
【0278】
本明細書において使用される際、「融合される」という用語は、少なくとも1つのタンパク質またはペプチドが、第2のタンパク質またはペプチドと物理的に会合されることを意味する。一部の実施形態において、融合は、典型的に、共有結合的連結であるが、しかしながら、例えば、静電相互作用、または疎水性相互作用等を介する連結を含む、他のタイプの連結は、「融合される」という用語に包含される。共有結合的連結は、融合タンパク質としての連結、または例えば、2つのシステイン残基間に形成されるジスルフィド結合を介する、化学結合された連結を包含することができる。
【0279】
本明細書において使用される際、「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」という用語は、2つ以上のポリペプチド配列をともに接合することによって創出されるタンパク質を意味する。本発明に包含される融合ポリペプチドは、単一のオープンリーディングフレームを形成するように、1つ以上の抗原、またはそのフラグメントもしくは突然変異体をコードするDNA配列を、第2のポリペプチドをコードするDNA配列と接合させる、キメラ遺伝子構築物の翻訳生成物を含む。換言すると、「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」は、ペプチド結合によって接合される、2つ以上のタンパク質の組み換えタンパク質である。一部の実施形態において、抗原が融合される第2のタンパク質は、相補的親和性対の第1の親和性分子と相互作用することが可能である、相補的親和性分子である。
【0280】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、ペプチド結合によって連結されるアミノ酸残基のポリマーを指すように、および特許請求される本発明の目的上、少なくとも25個のアミノ酸の典型的な最小長を有するように、同義的に使用することができる。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、多量体タンパク質、例えば2つ以上のドメインまたはサブユニットを含有するタンパク質を包含することができる。「ペプチド」という用語は、本明細書において使用される際、25個未満のアミノ酸、例えば約4個のアミノ酸〜25個のアミノ酸長を含有する、ペプチド結合連結されたアミノ酸の配列を指す。タンパク質およびペプチドは、生物学的に、組み換え的に、または合成的に生成されるかどうか、および天然または非天然アミノ酸から成るかどうかにかかわらず、ペプチド結合によって連結される直鎖状に並んだアミノ酸から成ることができ、本定義内に含まれる。全長タンパク質および25個のアミノ酸以上のそのフラグメントの両方が、タンパク質の定義によって包含される。該用語はまた、ポリペプチドの共翻訳(例えば、シグナルペプチド開裂)、および、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、脂質化、タンパク質分解開裂(例えば、メタロプロテアーゼによる開裂)等といった、翻訳後修飾を有する、ポリペプチドを含む。さらに、本明細書において使用される際、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対する欠失、追加、および置換(当業者には既知であろうように、一般的に自然界において保存的)といった修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的な突然変異を通じて、人為的であり得るか、あるいはタンパク質を生成するホストの変異、またはPCR増幅もしくは他の組み換えDNA方法によるエラーを通じて、偶発的であり得る。
【0281】
「シグナル配列」によって、核酸分子に機能的に連結される時、核酸分子によってコードされる生成物(例えば、タンパク質またはペプチド)の分泌を促進する、核酸配列が意味される。一部の実施形態において、シグナル配列は、好ましくは、核酸分子に対する5'に位置する。
【0282】
本明細書において使用される際、「N−グリコシル化された」または「N−グリコシル化」という用語は、ポリペプチドにおけるアスパラギン残基への糖部分の共有結合を指す。糖部分は、グルコース、マンノース、およびN−アセチルグルコサミンを含むことができるが、これらに限定されない。グリカンの修飾、例えばシアリル化も含まれる。
【0283】
「抗原提示細胞」または「APC」は、主要組織適合複合体(MHC)分子を発現し、その表面上でMHCと複合化される外来抗原を提示することができる、細胞である。抗原提示細胞の例は、樹木状細胞、マクロファージ、B細胞、線維芽細胞(皮膚)、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞(脳)、膵臓ベータ細胞、および血管内皮細胞である。
【0284】
「機能性部分」または「機能性フラグメント」という用語は、「抗原の機能性部分」の文脈において使用される際、全長抗原部分と同じ効果を媒介する、例えば、対象において免疫応答を誘発する、または例えば、少なくとも1つのエピトープを含む、他の分子との会合を媒介する、抗原または抗原ポリペプチドの部分を指す。
【0285】
本明細書において使用される際、標的抗原の「部分」とは、少なくとも3アミノ酸長であり得、例えば、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも14個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、または少なくとも25個以上を含むアミノ酸となり得る。
【0286】
「細胞毒性Tリンパ球」または「CTL」という用語は、標的化細胞におけるアポトーシスを誘導するリンパ球を指す。CTLは、標的細胞表面上で処理された抗原(Ag)とTCRの相互作用を介して、標的細胞との抗原特異的コンジュゲートを形成し、標的化細胞のアポトーシスをもたらす。アポトーシス小体は、マクロファージによって排除される。「CTL応答」という用語は、CTL細胞によって媒介される一次免疫応答を指すために使用される。
【0287】
「細胞媒介免疫」または「CMI」という用語は、本明細書において使用される際、抗体または相補体を伴わないが、むしろ、例えば、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞(NK)、抗原特異的細胞毒性Tリンパ球(T細胞)の活性化、および標的抗原に応答して種々のサイトカインの放出を伴う、免疫応答を指す。別の言い方をすれば、CMIは、標的抗原を提示する他の細胞(抗原提示細胞(APC)等)の表面に結合し、応答をトリガする、免疫細胞(T細胞および他のリンパ球等)を指す。応答は、他のリンパ球および/または他の白血球(leukocyte:白血球)のいずれか、ならびにサイトカインの放出に関与し得る。細胞免疫は、(i)ウイルス感染細胞および細胞内細菌を含む細胞等の外来抗原のエピトープを表面に提示している体細胞を破壊することができる、抗原特異的細胞毒性Tリンパ球(CTL)を活性化すること、(2)マクロファージおよびNK細胞を活性化し、細胞内病原体を破壊できるようににすること、ならびに(3)細胞を刺激して、適応免疫応答および先天性免疫応答に関与する他の細胞の機能に影響する種々のサイトカインを分泌させることによって、身体を保護する。
【0288】
「免疫細胞」という用語は、本明細書において使用される際、直接的または間接的抗原性刺激に応答してサイトカインを放出することができる、任意の細胞を指す。本明細書において、「免疫細胞」という用語には、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞(CD4+および/またはCD8+細胞)、B細胞、マクロファージおよび単球、Th細胞、Th1細胞、Th2細胞、白血球、樹木状細胞、マクロファージ、マスト細胞および単球、ならびに直接的または間接的抗原刺激に応答してサイトカイン分子を産生することが可能である任意の他の細胞を含む、リンパ球が含まれる。典型的に、免疫細胞は、リンパ球、例えばT細胞リンパ球である。
【0289】
「サイトカイン」という用語は、本明細書において使用される際、抗原による刺激に応答して免疫細胞から放出される分子を指す。かかるサイトカインの例は、GM−CSF、IL−1α、IL−1β;、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12、IL−17A、IL−17F、またはIL−17ファミリーの他のメンバ、IL−22、IL−23、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、MIP−1α、MIP−1β、TGF−β、TNFα、またはTNFβを含むが、それらに限定されない。「サイトカイン」という用語は、抗体を含まない。
【0290】
「対象」という用語は、本明細書において使用される際、それが免疫応答を誘発するのに有用である任意の動物を指す。対象は、トリまたは哺乳類等の野生、家庭用、商業用、またはコンパニオン動物であり得る。対象は、ヒトであり得る。本発明の一実施形態において、本明細書で開示されるような免疫原性組成物はまた、ヒトにおける治療または予防処理に好適であり得ることが企図されるが、それはまた、温血脊椎動物、例えば非ヒト霊長類等の哺乳類(特に、高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例えば、マウスもしくはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、ならびにニワトリ、アヒル、もしくはシチメンチョウ等の非哺乳類に適用可能である。別の実施形態において、対象は、野生動物、例えば鳥インフルエンザを診断するため等のトリである。一部の実施形態において、対象は、疾患モデルとしての実験動物または動物代用物である。対象は、抗原に対する免疫応答の誘発が、疾患を予防する、および/または疾患、例えばSIV、STL1、SFV、または家畜の場合、蹄病および口腔疾患、またはトリの場合、マレック病もしくは鳥インフルエンザ、ならびに他のかかる疾患の蔓延を制御するのに有用である、獣医学的治療を必要とする対象であってもよい。
【0291】
本明細書において使用される際、「病原体」という用語は、対象において疾患または疾病を引き起こす、生命体または分子を指す。例えば、病原体としては、ウイルス、真菌、細菌、寄生生物、および他の感染性生命体もしくはそれらからの分子、ならびに藻、真菌、酵母、原虫等のカテゴリー内の分類学的に関連する肉眼的生命体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0292】
「癌細胞」は、新たな遺伝物質の摂取を必ずしも必要としない自発的なまたは誘導された表現型の変化を有する、体内、生体外、または組織培養物内のいずれかにおける癌性、前癌性、または形質転換された細胞を指す。形質転換とは、形質転換ウイルスによる感染および新たなゲノム核酸の組み込みまたは外因性核酸の摂取から生じ得るものであるが、これはまた自発的にまたは発癌物質への曝露後にも生じ得、それにより、内因性遺伝子を突然変異させる。形質転換/癌は、例えば、ヌードマウスといった好適な動物宿主における形態学的変化、細胞の不死化、異常成長制御、病巣形成、足場非依存性、悪性、成長の接触阻止および密度制限の喪失、成長因子もしくは血清依存性、腫瘍特異的マーカー、侵襲性もしくは転移、ならびに腫瘍成長と関連付けられる。例えば、Freshney,CULTURE ANIMAL CELLS:MANUAL BASIC TECH.(3rd ed.,1994)を参照されたい。
【0293】
「野生型」という用語は、通常、体内に存在しているような、タンパク質をコードする、天然の正常なポリヌクレオチド配列もしくはその一部分、またはタンパク質配列もしくはその一部分をそれぞれ指す。
【0294】
「突然変異体」という用語は、その遺伝物質における任意の変化、特に、野生型ポリヌクレオチド配列に関する変化(即ち、欠失、置換、追加、または改変)、または野生型タンパク質配列に関する任意の変化を有する、生命体または細胞を指す。「変種」という用語は、「突然変異体」と同義的に使用され得る。遺伝物質における変化は、タンパク質の機能の変化をもたらすことがしばしば推測されるが、「突然変異体」および「変種」という用語は、その変化が、タンパク質の機能を改変する(例えば、増加させる、減少させる、新たな機能を与える)かどうか、またはその変化がタンパク質の機能に影響を及ぼさない(例えば、変異もしくは変型がサイレントである)かどうかにかかわらず、野生型タンパク質の配列における変化を指す。
【0295】
「薬学的に許容可能な」という用語は、過度の毒性を伴わずに、哺乳類に投与され得る、化合物および組成物を指す。「薬学的に許容可能なキャリア」という用語は、組織培地を除外する。例示的な薬学的に許容可能な塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等といった、鉱酸塩、ならびに酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等といった有機酸の塩が挙げられるが、これに限定されない。薬学的に許容可能なキャリアは、当技術分野において公知である。
【0296】
タンパク質またはポリペプチドは、しばしば、一般に20個の天然アミノ酸と称される20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含有すること、および末端アミノ酸を含む多くのアミノ酸は、グリコシル化および他の翻訳後修飾等の天然プロセスによって、または当技術分野において周知である化学的修飾技術によってのいずれかで、所与のポリペプチドにおいて修飾することができることが理解されるであろう。本発明のポリペプチドにおいて存在し得る公知の修飾は、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、製剤化、ガンマ−カルボキシル化、糖化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン化といったタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介追加、およびユビキチン化を含むが、それらに限定されない。
【0297】
本明細書において使用される際、「相同」または「相同体」という用語は、同義的に使用され、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを説明するために使用されるとき、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド、あるいはそれらの指定配列が、例えば、整合のためにデフォルトパラメータとともにBLAST、バージョン2.2.14を使用して、最適に整合および比較されると、ヌクレオチドの少なくとも70%、通常、ヌクレオチドの少なくとも約98〜99%等の約75%〜99%において、適切なヌクレオチド挿入または欠失、あるいはアミノ酸挿入または欠失を伴って、同一であることを示す。ポリペプチドについては、ポリペプチドにおいて少なくとも50%のアミノ酸同一性が存在するべきである。「ホモログ」または「相同」という用語はまた、本明細書において使用される際、構造に関しての相同性を指す。遺伝子またはポリペプチドのホモログの判定は、当業者によって容易に確認することができる。規定のパーセンテージを伴う文脈にある時、規定のパーセンテージの相同性は、少なくともそのパーセンテージのアミノ酸の類似性を意味する。例えば、85%の相同性は、少なくとも85%のアミノ酸の類似性を指す。
【0298】
本明細書において使用される際、核酸配列、タンパク質、またはポリペプチドに関係する「非相同」という用語は、これらの分子が、その細胞において、天然ではないことを意味する。例えば、タンパク質発現ベクターの文脈において、例えば、細胞に挿入される、本明細書に記載の融合抗原ポリペプチドをコードする核酸配列は、非相同核酸配列である。
【0299】
配列比較に関して、典型的に1つの配列が、試験配列を比較する対象となる参照配列としての役割を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する時、試験および参照配列は、コンピュータに入力され、必要な場合、部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する1つまたは複数の試験配列に関する配列同一性パーセントを計算する。必要な、または所望される場合、比較のための配列の最適な整合を、任意の多様な手法によって行うことができ、これらは、当技術分野において周知である。
【0300】
「変種」という用語は、本明細書において使用される際、1つ以上のアミノ酸または核酸欠失、追加、置換、もしくは側鎖修飾によって、天然ポリペプチドまたは核酸とは異なるが、なお天然分子の1つ以上の特異的機能または生物学的活性を保持する、ポリペプチドまたは核酸を指し得る。アミノ酸置換は、アミノ酸が異なる天然または非従来のアミノ酸残基で置き換えられる改変を含む。かかる置換は、「保存的」として分類され得、この場合、ポリペプチドに含有されるアミノ酸残基は、極性、側鎖機能、またはサイズのいずれかに関して、別の天然アミノ酸の類似の特徴で置き換えられる。本明細書に記載の変種によって包含される置換はまた、「非保存的」であり得、ここでは、ペプチドに存在するアミノ酸残基は、異なる特性を有するアミノ酸で置換される(例えば、アラニンでの荷電もしくは疎水性アミノ酸の置換)か、または代替的に、天然アミノ酸は、非従来のアミノ酸で置換される。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関係して使用される時、「変種」という用語には、それぞれ参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと比較して(例えば、野生型ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと比較して)、1次、2次、または3次構造における変型が包含される。
【0301】
元の抗原と比較して、抗原または抗原の機能的誘導体の変種を参照して使用される時、「実質的に類似」という用語は、特定の対象配列が、1つ以上の置換、欠失、または追加によって、抗原ポリペプチドの配列から変化するが、対象において免疫応答を誘発するように、少なくとも50%以上、例えば少なくとも60%、70%、80%、90%以上を含む、抗原の機能を保持することを意味する。ポリヌクレオチド配列を判定する際、実質的に類似のアミノ酸配列をコードすることが可能な全ての対象ポリヌクレオチド配列は、コドン配列における相違にかかわらず、参照ポリヌクレオチド配列と実質的に類似すると考えられる。ヌクレオチド配列は、(a)ヌクレオチド配列が、ネイティブ抗原配列のコード領域にハイブリダイズする、または(b)ヌクレオチド配列が、適度にストリンジェントな条件下で、ネイティブ抗原のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることが可能であり、ネイティブ抗原タンパク質と類似の生物学的活性を有する、または(c)ヌクレオチド配列が、(a)もしくは(b)に定義されるヌクレオチド配列に対する遺伝子コードの結果として、縮退している場合、所与の抗原核酸配列に「実質的に類似」する。実質的に類似のタンパク質は、典型的に、ネイティブタンパク質の対応する配列に約80%以上類似しうる。
【0302】
変種は、以降で説明されるように、保存的または非保存的アミノ酸変化を含むことができる。ポリヌクレオチド変化は、参照配列によってコードされるポリペプチドにおけるアミノ酸置換、追加、欠失、融合、および切断をもたらし得る。変種はまた、変種の基礎であるペプチド配列において通常生じない、アミノ酸および他の分子の挿入および置換、例えば、これに限定されないが、ヒトタンパク質において通常生じないオルニチンの挿入を含む、アミノ酸の挿入、欠失、または置換を含み得る。「保存的アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸を、類似の構造的および/または化学的特性を有する別のもので置き換えることに起因する。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野において公知である。例えば、以下の6つの群は、各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:(1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);(4)アルギニン(R)、リジン(K);(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。例えば、Creighton,PROTEINS(W.H.Freeman & Co.,1984)を参照されたい。
【0303】
保存的アミノ酸の選択肢は、ペプチドにおける置換されるべきアミノ酸の場所、例えば、アミノ酸が、ペプチドの外側にあり、溶媒に曝露されるか、または内側にあり、溶媒に曝露されないかどうかに基づいて、選択され得る。かかる保存的アミノ酸置換の選択は、当業者の技能内である。したがって、タンパク質またはペプチドの外部のアミノ酸(即ち、溶媒に曝露されるアミノ酸)に好適な保存的アミノ酸置換を選択することができる。これらの置換は、以下を含むが、これらに限定されない:FでのYの置換、SまたはKでのTの置換、AでのPの置換、DまたはQでのEの置換、DまたはGでのNの置換、KでのRの置換、NまたはAでのGの置換、SまたはKでのTの置換、NまたはEでのDの置換、LまたはVでのIの置換、YでのFの置換、TまたはAでのSの置換、KでのRの置換、NまたはAでのGの置換、RでのKの置換、S、K、またはPでのAの置換。
【0304】
代替的に、タンパク質またはペプチドの内部のアミノ酸(即ち、溶媒に曝露されないアミノ酸)に好適な保存的アミノ酸置換を選択することができる。例えば、以下の保存的置換を使用することができる:YがFで置換される場合、AまたはSでのTの置換、LまたはVでのIの置換、YでのWの置換、LでのMの置換、DでのNの置換、AでのGの置換、AまたはSでのTの置換、NでのDの置換、LまたはVでのIの置換、YまたはLでのFの置換、AまたはTでのSの置換、およびS、G、T、またはVでのAの置換。一部の実施形態において、非保存的アミノ酸置換を含むLFポリペプチドもまた、「変種」という用語内に包含される。本明細書において使用される際、「非保存的」置換という用語は、異なる化学的特性を有する異なるアミノ酸残基に対する、アミノ酸残基の置換を指す。非保存的置換の非限定的な例としては、グリシン(G)で置き換えられているアスパラギン酸(D);リジン(K)で置き換えられているアスパラギン(N);およびアルギニン(R)で置き換えられているアラニン(A)が挙げられる。
【0305】
「誘導体」という用語は、本明細書において使用される際、例えば、ユビキチン化、標識化、ペグ化(ポリエチレングリコールでの誘導体化)、または他の分子の追加によって、化学的に修飾されたペプチドを指す。分子はまた、それが、通常、分子の一部ではない、追加の化学部分を含有する時、別の分子の「誘導体」である。かかる部分は、分子の溶解性、吸収、生物学的半減期等を改善することができる。部分は、代替的に、分子の毒性を減少させること、または分子の望ましくない副作用を排除もしくは軽減すること等ができる。かかる効果を媒介することが可能な部分は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES(21st ed.,Tory,ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2006)に開示される。
【0306】
「誘導体」または「変種」とともに使用される時、「機能的」という用語は、エンティティまたはその誘導体もしくは変種である分子の生物学的活性に実質的に類似である生物学的活性を有する、タンパク質分子を指す。この文脈における「実質的に類似」は、生物学的活性、例えばポリペプチドの抗原性が、参照、例えば、対応する野生型ポリペプチドの少なくとも50%活性、例えば少なくとも60%活性、70%活性、80%活性、90%活性、95%活性、100%活性、またはさらにより高い活性(即ち、変種または誘導体が、野生型を上回る活性を有する)、例えば110%活性、120%活性、またはそれ以上を含むことを意味する。
【0307】
核酸分子を説明するために使用される時、「組み換え」という用語は、自然界においては付随しているポリヌクレオチド配列の全てまたは一部分がその起源または操作のために付随していない、ゲノム、cDNA、ウイルス、半合成、および/もしくは合成起源のポリヌクレオチドを意味する。組み換えという用語は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または組み換え型の融合タンパク質に関して使用される際、組み換えポリヌクレオチドからの発現によって生成されるポリペプチドを意味する。組み換えという用語は、宿主細胞に関して使用される際、組み換えポリヌクレオチドが組み込まれている宿主細胞を意味する。組み換えはまた、材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクター)に関して、材料が、非相同材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクター)の導入によって修飾されていることを指すために、本明細書において使用される。
【0308】
「ベクター」という用語は、宿主細胞に連結されている非相同核酸を輸送できるかまたはその発現を媒介できる核酸分子を指し、プラスミドは、「ベクター」という用語によって包含される属の種である。「ベクター」という用語は、典型的に、複製の起源、ならびに宿主細胞における複製および/または維持に必要な他のエンティティを含有する核酸配列を指す。それらが機能的に連結される、遺伝子および/または核酸配列の発現を指示することが可能なベクターは、本明細書において、「発現ベクター」と称される。一般的に、有用な発現ベクターは「プラスミド」の形態であることが多く、これは、そのベクター形態において染色体には結合せず、かつ典型的に、安定したもしくは一時的な発現のためのエンティティまたはコードされたDNAを含む、環状二重鎖DNA分子を指す。本明細書で開示されるような方法において使用することができる他の発現ベクターは、プラスミド、エピソーム、細菌人工染色体、酵母人工染色体、バクテリオファージ、またはウイルスベクターを含むが、これらに限定されず、かかるベクターは、宿主のゲノムに統合する、または特定の細胞において自律的に複製することができる。ベクターは、DNAまたはRNAベクターであり得る。同等の機能を果たす、当業者によって公知である他の形態の発現ベクター、例えば自己複製染色体外ベクター、または宿主ゲノムに統合するベクターもまた、使用することができる。好ましいベクターは、それらが連結される核酸の自律複製および/または発現が可能なものである。
【0309】
「低減された」もしくは「低減する」または「減少する」という用語は、本明細書において使用される際、概して、参照に対して統計的に有意な量の減少を意味する。誤解を避けるために、「低減された」は、該用語が本明細書において定義されるように、参照レベルと比較して、少なくとも10%の統計的に有意な減少、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、少なくとも90%以上の減少、最大100%を含む減少(即ち、参照試料と比較して非存在レベル)、または参照レベルと比較して10〜100%の任意の減少を意味する。
【0310】
「低い」という用語は、本明細書において使用される際、概して、統計的に有意な量だけ、より低いことを意味し、誤解を避けるために、「低い」は、参照レベルよりも少なくとも10%低い統計的に有意な値、例えば、参照レベルよりも少なくとも20%低い、参照レベルよりも少なくとも30%低い、参照レベルよりも少なくとも40%低い、参照レベルよりも少なくとも50%低い、参照レベルよりも少なくとも60%低い、参照レベルよりも少なくとも70%低い、参照レベルよりも少なくとも80%低い、参照レベルよりも少なくとも90%低い、参照レベルよりも最大100%を含み低い(即ち、参照試料と比較して非存在レベル)値を意味する。
【0311】
「増加した」または「増加する」という用語は、本明細書において使用される際、概して、該用語が本明細書において定義されるように、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍以上の増加を含む、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%以上を含む増加を含む、参照レベルと比較して少なくとも10%の統計的に有意な増加といった、統計的に有意な量の増加を意味する。
【0312】
「高い」という用語は、本明細書において使用される際、概して、参照レベルと比較して、少なくとも2倍高い、少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも5倍高い、少なくとも10倍以上高い等、参照レベルよりも少なくとも10%高い、例えば少なくとも20%高い、少なくとも30%高い、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも60%高い、少なくとも70%高い、少なくとも80%高い、少なくとも90%高い、少なくとも100%を含んで高い統計的に有意な値等の、参照に対して統計的に有意な量だけ、より高いことを意味する。
【0313】
本明細書において使用される際、「含む」という用語は、提示される規定の要素に加えて、他の要素もまた、存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定ではなくむしろ包含を示す。
【0314】
「〜から成る」という用語は、実施形態のその説明において列挙されないいかなる要素も除く、本明細書に記載の組成物、方法、およびそのそれぞれの構成要素を指す。
【0315】
本明細書において使用される際、「本質的に〜から成る」という用語は、所与の実施形態に必要とされるそれらの要素を指す。用語は、本発明のその実施形態の基本的かつ新規または機能的な1つまたは複数の特徴に物質的に影響しない要素の存在を許容する。
【0316】
核酸またはポリペプチドに関して与えられる、全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量または分子質量値は、おおよそであり、説明のために提供されるということがさらに理解されるものとする。本明細書に記載のものと類似または同等である方法および材料を、本開示の実践または試験で使用することができるが、好適な方法および材料が本明細書で説明される。
【0317】
本明細書で使用される際、「ビオチン」という用語は、化合物ビオチン自体、ならびにその類似体、誘導体、および変種を指す。したがって、「ビオチン」という用語は、ビオチン(シス−ヘキサヒドロ−2−オキソ−1H−チエノ[3,4]イミダゾール−4−ペンタン酸)、ならびにビオチン様化合物を含む、その任意の誘導体および類似体を含む。そのような化合物は、例えば、ビオチン−e−N−リジン、ビオシチンヒドラジド、2−イミノビオチンおよびビオチニル−E−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルのアミノまたはスルフィドリル誘導体、スルホスクシンイミドイミノビオチン、ビオチンブロモアセチルヒドラジド、p−ジアゾベンゾイルビオシチン、3−(N−マレイミドプロピオニル)ビオシチン、デスチオビオチン、および同等物を含む。「ビオチン」という用語はまた、リズアビジン、アビジン、ストレプトアビジン、タマビジン部分、または他のアビジン様ペプチドのうちの1つ以上に特異的に結合することができる、ビオチン変種も含む。
【0318】
先述の発明は、理解を明確にする目的で、例証および一例として、いくらか詳細に説明されているが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、ある変更および修正がそれに行われてもよいことが、当業者に容易に明白となるであろう。以下は、本発明の例証であることを意図する。しかしながら、本発明の実践は、実施例によっていかようにも限定または制限されない。
【実施例】
【0319】
実施例1:大腸菌において高収率かつ可溶性の組み換えビオチン結合タンパク質およびその融合タンパク質を発現させる
これらの研究で使用される組み換えリズアビジン(rRhavi)は、野生型タンパク質の残基45〜179のみを含有する、N末端修飾バージョンである。大腸菌におけるrRhaviの発現レベルを最適化するために、大腸菌優先発現コドンを使用することによって、リズアビジンポリペプチドをコードする遺伝子配列(45〜179)を再設計し、次いで、合成してPET21bベクターにクローニングした。正しい折り畳みを促進し、可溶性組み換えタンパク質の高収率を得るために、大腸菌周辺質局在化シグナル配列をコードするDNA配列(19個のアミノ酸、
)を、rRhaviの合成遺伝子の5'末端に導入した。このシグナル配列は、発現のプロセス中に大腸菌の周辺質を標的にした後、組み換えタンパク質から自動的に削除されることが予測される。
【0320】
柔軟リンカー領域およびHisタグをコードするDNA配列
を、合成rRhavi遺伝子の3'末端に直接挿入した。これは、組み換えビオチン結合タンパク質の精製を助ける。さらに、抗原を、両側に柔軟リンカーを有するリンカーの中に挿入することができ、例えば、抗原を、リンカーのアミノ酸SおよびVの間に挿入することができる。抗原は、このように、ペプチドリンカー
によってビオチン結合タンパク質から、およびペプチドリンカー
によってHisタグから分離され、これは、融合タンパク質を安定させることができる。
【0321】
リズアビジン抗原融合タンパク質を構築するためには、融合タンパク質を安定させるのに役立つように、7つのアミノ酸から成る柔軟リンカー領域をコードするDNA配列
を、合成rRhavi遺伝子の3'末端に直接挿入することができる。候補抗原をコードする遺伝子(全長または所望のフラグメント)を、通常のPCR手順によって、関心の病原体のゲノムDNAから増幅し、リンカー領域をちょうど越えてrRhavi発現ベクターに挿入した。
【0322】
タンパク質発現については、標準熱衝撃手順を使用して、標的構築物を含有するプラスミドを、大腸菌株BL21(DE3)に形質転換した。単一のコロニーを、プレートから新たに選び(またはグリセロール原料を後に使用した)、37℃で一晩培養するために、アンピシリン(Amp+)を含有する30mlルリア・ベルターニ(LB)培地の中に植菌した。第2日目に、5ml開始培養を、1リットルのLB培地/Amp+の中に植菌し、OD
600=1に達するまで37℃で成長させた。培地を16℃まで冷却した後、0.2mM最終濃度のIPTGを、一晩誘導するために培養の中へ追加した。
【0323】
修正浸透圧衝撃プロトコルを使用して、タンパク質を周辺質留分から精製した。簡潔には、6リットル培養からの細菌細胞を収集し、30mMトリス(pH8.0)、20%蔗糖、および1mM EDTAを含有する120ml緩衝液の中で再懸濁させた。室温で20分間撹拌した後、10,000rpmで10分間の遠心分離によって細胞を再沈殿させた。上清を留分1として収集し、細胞を、5mM MgCl2、プロテイナーゼ阻害剤、およびデオキシリボヌクレアーゼを含有する80mlの氷のように冷たい溶液の中で再懸濁させた。4°で20分間撹拌した後、混合物に13,000rpmで20分間の遠心分離を受けさせ、上清を留分2として収集した。最終濃度の150mM NaCl、10mM MgCl
2、および10mM イミダゾイルを追加した後、留分1および留分2を組み合わせた上清を、Ni−NTAカラム上にアプライした。Ni−NTAカラムから溶出されたタンパク質を、AKTA精製装置上で作動するsuperdex 200カラムを使用したゲル濾過によってさらに精製した。標的タンパク質を含有するピーク留分を貯蔵して濃縮した。Bio−RadからのBCAタンパク質分析キットを使用して、タンパク質濃度を測定した。精製タンパク質を等分し、液体窒素中で急速冷凍し、将来使用するために−80℃で保持した。
【0324】
ビオチン結合タンパク質の構築物が、
図1で概略的に示され、精製ビオチン結合タンパク質のSDS−PAGEが、
図2に示されている。
【0325】
ビオチン結合タンパク質を含む融合タンパク質の構築物が、
図3で概略的に示され、精製融合タンパク質の例示的なSDS−PAGEが、
図4に示されている。
【0326】
実施例2:ビオチン結合タンパク質の脂質付加誘導体
実施例1で説明されるものに類似する方法を使用して、組み換えビオチン結合タンパク質の脂質付加誘導体を産生した。この研究で使用された脂質付加誘導体は、野生型タンパク質の残基45〜179のみを含有する、野生型リズアビジンのN末端修飾バージョンである。大腸菌におけるrRhaviの発現レベルを最適化するために、大腸菌優先発現コドンを使用することによって、リズアビジンポリペプチドをコードする遺伝子配列(45〜179)を再設計し、次いで、合成してPET21bベクターにクローニングした。脂質付加、正しい折り畳みを促進し、可溶性組み換えタンパク質の高収率を得るために、脂質付加配列をコードするDNA配列(19個のアミノ酸、
)を、rRhaviの合成遺伝子の5'末端に導入した。脂質付加は、発現のプロセス中に、細菌、例えば大腸菌によって、脂質付加配列のCys残基上に追加され得る。
【0327】
タンパク質発現については、標準熱衝撃手順を使用して、標的構築物を含有するプラスミドを、大腸菌株BL21(DE3)に形質転換した。単一のコロニーを、プレートから新たに選び(またはグリセロール原料を後に使用した)、37℃で一晩培養するために、アンピシリン(Amp+)を含有する30mlルリア・ベルターニ(LB)培地の中に植菌した。第2日目に、5ml開始培養を、1リットルのLB培地/Amp+の中に植菌し、OD
600=1に達するまで37℃で成長させた。培地を16℃まで冷却した後、0.2mM最終濃度のIPTGを、一晩誘導するために培養の中へ追加した。
【0328】
脂質付加リズアビジンを、大腸菌膜留分から精製した。大腸菌細胞を収集し、プロテイナーゼ阻害剤、デオキシリボヌクレアーゼ、10mM Mg
2+、およびリゾチームを含有する溶解緩衝液(20mMトリス、500mM NaCl、pH8.0)の中で再懸濁させた。1回の凍結融解サイクルによって細胞を破壊し、13,000rpmで45分間の遠心分離後に上清を除去した。次いで、0.5%SDOCを含有する溶解緩衝液の中で細胞ペレットを再懸濁させ、ビーズビータによって均質化した。次いで、溶解物を13,000rpmで45分間の遠心分離のために適用し、上清を親和性精製のために収集した。0.5%SDOCおよび300mM Imを含有する溶解緩衝液を用いて、脂質付加rhaviを溶出した。
【0329】
Ni−NTAカラムから溶出されたタンパク質を、AKTA精製装置上で作動するsuperdex 200カラムを使用したゲル濾過によってさらに精製した。標的タンパク質を含有するピーク留分を貯蔵して濃縮した。Bio−RadからのBCAタンパク質分析キットを使用して、タンパク質濃度を測定した。精製タンパク質を等分し、液体窒素中で急速冷凍し、将来使用するために−80℃で保持した。
【0330】
産生される脂質付加ビオチン結合タンパク質が、
図5で概略的に示され、精製脂質付加ビオチン結合タンパク質のSDS−PAGEが、
図6に示されている。
【0331】
実施例3:脂質付加ビオチン結合タンパク質のTLR2活性
脂質付加ビオチン結合タンパク質のTLR2活性を、HEK TLR2細胞において試験した。HEK TLR2細胞を、500μl体積で、5×10
5細胞/ウェルにて24ウェルプレートの中に入れた。脂質付加ビオチン結合タンパク質を、37℃で一晩刺激するために異なる濃度で追加した。上清を、ELISAによるIL−8測定のために第2日目に収集した。対照として、HEK 293細胞を同じ条件で刺激するために使用した。
【0332】
脂質付加ビオチン結合タンパク質のTLR2活性を判定した。結果は、脂質付加ビオチン結合タンパク質が、HEK 293細胞ではなくHEK TLR2からIL−8の産生を誘導したことを示す(
図7)。
【0333】
実施例4:Hlaの非溶血性突然変異体および融合タンパク質
野生型Hla成熟ポリペプチドをコードするDNA配列(アミノ酸27〜319)を、黄色ブドウ球菌ゲノムからクローニングした。迅速交換を使用した部位特異的突然変異誘発法によって、Hlaの全ての非溶血性突然変異体を生成した。Hla−ビオチン結合融合タンパク質を作製するために、野生型Hlaまたは突然変異体HlaをコードするDNA配列を、ビオチン結合タンパク質遺伝子に続いて、リンカー領域を越えて挿入した。全ての構築物を、上記で説明されるように、PET21bにクローニングし、発現のために大腸菌に形質転換した。
【0334】
Hlaの非溶血性突然変異体を産生した。例示的なHlaの非溶血性変種が、
図8で概略的に示されている。Hlaの精製野生型または非溶血性変種および融合タンパク質のSDS−PAGEが、
図9および10に示されている。
【0335】
実施例5:野生型Hla、突然変異体Hla、および融合タンパク質の溶血活性
ウサギ血球を使用して、野生型Hla、突然変異体Hla、およびビオチン結合タンパク質を伴うそれらの融合タンパク質の溶血活性を分析した。250μlのウサギ血液からの赤血球を沈殿させ、PBSで2回洗浄し、次いで、10mlのPBSの中で再懸濁させた。野生型Hla、突然変異体Hla、および融合タンパク質を、指示された濃度でPBSで希釈し、次いで、100μl/ウェルで96ウェルプレートの中へ追加した。血球を、25μl/ウェルでHlaまたは融合タンパク質を含有する96ウェルプレートの中へ追加し、次いで、37℃で30分間インキュベートした。2000rpmで5分間の遠心分離後に上清を収集し、OD450でELISAリーダによって分析した。
【0336】
野生型Hla、突然変異体Hla、およびそれらの融合タンパク質の溶血活性を分析した。結果は、突然変異体Hlaが野生型Hlaに対してはるかに低い溶血活性を有することを実証する(
図11)。さらに、ビオチン結合タンパク質を含むHla融合タンパク質は、非融合突然変異体Hlaタンパク質に対してさらに低い溶血活性を有した(
図12)。
【0337】
実施例6:突然変異体Hla融合タンパク質の刺激活性
C57 WTマクロファージ細胞を、非溶血性Hla突然変異体融合タンパク質で刺激した。細胞を、5×10
5細胞/ウェルで24ウェルプレートの中に播種した。突然変異体Hla融合タンパク質を成長培地で希釈し、37℃で一晩刺激するために、指示された濃度でウェルの中に追加した。2000rpmで5分間の遠心分離後の第2日目に上清を収集し、次いで、ELISAによってサイトカイン分泌について分析した。突然変異体Hla融合タンパク質の刺激活性を分析した。結果は、突然変異体Hla融合タンパク質(rhavi−Hla209)が、TNF−α、IL−6、Il−23、IL−1β、およびIL−17を含む、複数の炎症性サイトカインの産生を誘導したことを示した(
図13)。
【0338】
実施例7.脂質付加ビオチン結合タンパク質および突然変異体Hla融合タンパク質が他の抗原に対する免疫応答を促進する
ビオチン化血清型1肺炎球菌莢膜多糖類、リズアビジン融合TB抗原、および非脂質付加リズアビジン、脂質付加リズアビジン、またはrhavi−Hla209のいずれか1つから、MAPSベースのワクチン構築物を作製した。マウスに異なるMAPS構築物で免疫化し、異なる免疫群の中のTB抗原に対するT細胞応答を分析し、3回の免疫付与後に比較した。簡潔には、異なるマウス群からの全血を、37℃で6日間、体外にて精製TBタンパク質で刺激し、上清中のサイトカイン濃度をELISAによって検出した。
【0339】
結果は、脂質付加リズアビジンを含有する、またはrhavi−Hla209を含有するMAPS複合体を受容したマウス群が、TB抗原に対してより良好なTh17(IL−17A)およびTh1細胞(IFN−γ)応答を生成したことを示した(
図14)。これは、脂質付加リズアビジンおよびrhavi−Hla209が、MAPSワクチン形成で共刺激因子/アジュバントの役割を果たすことができることを示した。
【0340】
先述の詳細な説明および実施例は、例示にすぎず、本発明の範囲への制限として解釈されるものではないことが理解される。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者に明白となるであろう、開示された実施形態の種々の変更および修正が行われてもよい。さらに、言及される全ての特許および他の刊行物は、例えば、本発明と関連して使用され得るかかる刊行物において説明される方法論を説明および開示する目的で、参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示の対してのみ提供される。この点において、いかなるものも、本発明者が、先の発明によって、またはいかなる他の理由によっても、かかる開示に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。日付に関する全ての記載、またはこれらの文書の内容の表明は、本出願人に利用可能な情報に基づき、日付またはこれらの文書の内容の正確性に関するいかなる承認も成さない。
【0341】
本明細書および実施例で言及される全ての特許および他の刊行物は、あらゆる目的で、参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示の対してのみ提供される。この点において、いかなるものも、本発明者が、先の発明によって、またはいかなる他の理由によっても、かかる開示に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。日付に関する全ての記載、またはこれらの文書の内容の表明は、本出願人に利用可能な情報に基づき、日付またはこれらの文書の内容の正確性に関するいかなる承認も成さない。
【0342】
好ましい実施形態が本明細書で詳細に描写および説明されているが、本発明の精神から逸脱することなく、種々の修正、追加、置換、および同等物を行うことができ、したがって、これらは、添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の範囲内にあると見なされることが、当業者に明白となるであろう。
【0343】
さらに、まだ指示されていない程度に、本明細書で説明および図示される種々の実施形態のうちのいずれか1つを、本明細書で開示される他の実施形態のうちのいずれかで示される特徴を組み込むようにさらに修正できることが、当業者によって理解されるであろう。