【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る種子コーティング材は、下水処理において発生する汚泥を溶融後冷却して得られるスラグを主成分とする。
【0008】
本発明は、スラグが種子のコーティング材に適しているという新たな知見に基づくものである。つまり、種子コーティング材としてスラグを用いることにより、鉄を用いた場合と同様に、コーティング材による硬い殻が形成されるために鳥害等に強い特性を持つ。また、スラグを主成分とする種子コーティング材は種子をコーティングする際に実質的に酸化反応を伴うものではない。このため、鉄を主成分とする種子コーティング材のような発熱による種子へのダメージを防止することができる。
【0009】
また、一般的に生活排水等の下水はリン化合物を含んでおり、下水処理により得られる汚泥から製造されたスラグにもリン化合物が含まれることとなる。このため、下水処理により得られる汚泥から製造されたスラグを主成分とする種子コーティング材により種子をコーティングした場合、含まれるリン化合物による肥料効果が期待できる。
【0010】
なお、ここで、「スラグを主成分」とは、種子コーティング材にスラグが50wt%以上含まれることをいう。種子コーティング材中のスラグの含有率が50wt%以上であれば、上記の効果が期待できる。
【0011】
上記構成において、前記汚泥が、前記下水処理において、下水中に含まれるリンを汚泥中に濃縮する濃縮工程が実行された汚泥であると好適である。
【0012】
本構成により、スラグ中のリン化合物濃度が高くなり、一層の肥料効果を期待することができる。
【0013】
上記構成において、前記スラグ中の塩基度が0.2〜1.2であると好適である。
【0014】
ここで、「塩基度」とは、CaO重量/SiO
2重量で定義される値である。塩基度をこのように設定することにより、スラグのガラス構造中の架橋酸素原子の割合が少なくなり、スラグ中のリンにおけるク溶性リンの割合を高めることができる。この結果、肥料効果の高い種子コーティング材を得ることができる。
【0015】
上記構成において、前記スラグ中の鉄リンシリカ比が0.2〜0.8であると好適である。
【0016】
ここで、「鉄リンシリカ比」とは、Fe/(P+Si)[mol/mol]で定義される値である。鉄リンシリカ比をこのように設定することにより、汚泥中のリン成分がスラグ中に取り込まれ易くなりスラグ中のリン濃度を高めることができる。この結果、肥料効果の高い種子コーティング材を得ることができる。
【0017】
上記構成において、粒子径が100μm以上の溶融スラグの割合が全溶融スラグの10wt%以下であると好適である。
【0018】
本構成のように、粒子径が100μm以上の溶融スラグの割合が全溶融スラグの10wt%以下とすることにより、確実に種子をコーティングすることができる種子コーティング材を得ることができる。
【0019】
上記構成において、スラグ同士及びスラグと種子とを結合する結合物質を含むと好適である。
【0020】
上記構成により、結合物質の作用により、種子の表面に確実にコーティング層を形成することができる。
【0021】
本発明の種子コーティング材の製造方法は、スラグを主成分とする種子コーティング材の製造方法であって、下水処理工程によって得られた汚泥を溶融する溶融工程と、前記溶融工程によって溶融された溶融汚泥を冷却してスラグを得る冷却工程とを備える。
【0022】
本発明は、スラグが種子のコーティング材に適しているという新たな知見に基づくものである。つまり、種子コーティング材としてスラグを用いることにより、鉄を用いた場合と同様に、コーティング材による硬い殻が形成されるために鳥害等に強い特性を持つ。また、スラグを主成分とする種子コーティング材は種子をコーティングする際に実質的に酸化反応を伴うものではない。このため、鉄を主成分とする種子コーティング材のような発熱による種子へのダメージを防止することができる。
【0023】
また、一般的に生活排水等の下水はリン化合物を含んでおり、下水処理工程により得られる汚泥から製造されたスラグにもリン化合物が含まれることとなる。このため、下水処理により得られる汚泥から製造されたスラグを主成分とする種子コーティング材により種子をコーティングした場合、含まれるリン化合物による肥料効果が期待できる。
【0024】
なお、ここで、「スラグを主成分」とは、種子コーティング材にスラグが50wt%以上含まれることをいう。種子コーティング材中のスラグの含有率が50wt%以上であれば、上記の効果が期待できる。
【0025】
上記構成において、前記下水処理工程に、下水側に含まれるリンを汚泥側に濃縮するリン濃縮工程を含むと好適である。
【0026】
本構成により、スラグ中のリン化合物濃度が高くなり、得られる種子コーティング材は、一層の肥料効果を期待することができる。
【0027】
上記構成において、前記溶融工程に先立ち、前記汚泥に鉄分を添加する鉄添加工程を備えると好適である。
【0028】
本構成のように、溶融工程に先立ち、汚泥に鉄分を添加することにより、溶融工程における汚泥中のリン成分がスラグ中に取りこまれ易くなる。この結果、スラグ中のリン濃度を高めることができる。
【0029】
上記構成において、前記鉄分が酸化第二鉄であると好適である。
【0030】
本構成のように鉄分として第二鉄を用いることにより、酸化反応による発熱を防止することができ、処理が容易になる。
【0031】
上記構成において、前記溶融工程に先立ち、前記汚泥の塩基度が0.2〜1.2となるように塩基度を調整する塩基度調整工程を行うと好適である。
【0032】
塩基度を上記のように調整することにより、スラグのガラス構造中の架橋酸素原子の割合が少なくなり、スラグ中のリンにおけるク溶性リンの割合を高めることができる。
【0033】
上記構成において、前記溶融工程に先立ち、前記汚泥の鉄リンシリカ比が0.2〜0.8となるように鉄リンシリカ比を調整する鉄リンシリカ比調整工程を行うと好適である。
【0034】
鉄リンシリカ比を上記のように調整することにより、溶融工程における汚泥中のリン成分がスラグに取り込まれ易くなり、スラグ中のリン濃度を高めることができる。
【0035】
上記構成において、前記溶融工程における雰囲気の空気比が1.1以下であると好適である。
【0036】
本構成により、雰囲気中の酸素が過剰になることを抑制し、重金属が酸化物となることを抑制することができる。この結果、重金属が比較的低い温度でも気化することとなり、スラグ中に残留する重金属濃度を低くすることができる。
【0037】
上記構成において、前記溶融工程における雰囲気温度が1200℃〜1400℃であると好適である。
【0038】
溶融工程における雰囲気温度をこのように設定することにより、汚泥中のリン成分の揮散を抑制しつつ、重金属を揮散させることができる。この結果、スラグ中のリン化合物濃度を高めつつ、スラグ中に重金属が残存することを抑制することができる。
【0039】
上記構成において、前記冷却工程が液体により前記溶融汚泥を冷却する液体冷却工程を含むと好適である。
【0040】
上記構成により、冷却工程において、溶融汚泥が液体により急速に冷却されることとなる。この結果、得られたスラグは非結晶状態となり、粉砕等による粒径の調整が容易となる。