【実施例】
【0028】
本発明を、原子力発電システムに適用した場合を例として説明する。
【0029】
図1は、本発明が適用される原子力発電システムの概略構成図である。
【0030】
図1において、通常運転における原子力発電システムは、原子炉圧力容器1における核分裂による発生熱出力で蒸気を発生させ、その蒸気は主蒸気配管2を経由してタービン3に送られる。
【0031】
そして、蒸気によって、タービン3を回転させることによりタービン3に直結された発電機4にて電気を発生している。タービン3への蒸気量はタービン3上流に配置されたタービン蒸気加減弁5にて制御される。
【0032】
タービン3で使用された蒸気は復水器6にて回収される。回収された復水は復水ポンプ7、給水ポンプ8で昇圧され、給水として給水配管9を経由して原子炉圧力容器1へ戻される。
【0033】
原子炉圧力容器1内の圧力は、原子炉圧力計測器11により計測される。また、原子炉圧力容器1内の中性子束は、中性子束計測器14により計測される。主蒸気配管2の蒸気流量、つまり、タービン3の蒸気流量は、蒸気流量計測器12により計測される。また、タービン3の蒸気圧力は、蒸気圧力計測器13により計測される。
【0034】
これら原子炉圧力計測器11、中性子束計測器14、蒸気流量計測器12、蒸気圧力計測器13は、機器構造物を疲労させるパラメータを計測するパラメータ計測器である。
【0035】
原子炉における熱出力発生メカニズムは以下の通りである。
【0036】
沸騰水型原子力発電システムでは、核分裂による熱出力はボイド反応度等を制御することにより実現している。沸騰水型原子力発電システムの場合、ボイド反応度はボイド率(冷却材密度)変化に依存するため、原子炉を循環する冷却材のボイド率を制御することにより発生熱出力を制御、すなわち発生蒸気量を制御している。
【0037】
発電機4の出力、すなわち、タービン3で消費する蒸気を減少させる必要がある場合には、原子炉再循環ポンプ10により原子炉再循環流量を減少させることにより、原子炉圧力容器1内のボイド率が増加して発生熱出力が減少する。この発生熱出力の減少により発生蒸気流量が減少する。
【0038】
タービン蒸気加減弁5の開度を、減少した蒸気量に応じた開度とすることでタービン3へ送られる蒸気量が減少し、タービン3に直結した発電機4の発電機出力は減少する。
【0039】
さらに、タービン3で仕事をして復水器6へ回収される蒸気量も減少する。また、回収された復水は復水ポンプ7、給水ポンプ8で昇圧され給水として給水配管9を経由して原子炉圧力容器1へ戻されるが、発生蒸気量が減少するため、原子炉圧力容器1へ戻される給水量も減少する。
【0040】
一方、発電機4の出力を増加させる必要がある場合は、発生蒸気流量を増加させると、タービン3へ送られる蒸気流量が増加し、発電機出力が増加する。さらに、復水器6へ回収される蒸気量も増加する。また、原子炉圧力容器1へ戻される給水量も増加する。
【0041】
つまり、発電機出力を増減させることにより循環する蒸気または水の量が増減するため、原子力発電システムを循環する蒸気または水が通過する全ての機器構造物に生じる応力が変化することとなる。
【0042】
例えば、周波数応答運転を実施する場合など、繰り返し発電機出力を変更することで、これら機器構造物に疲労が蓄積し、劣化が進行する可能性がある。
【0043】
発電機出力変更による機器構造物劣化の可能性に対して、機器構造物に蓄積した疲労を監視し、機器構造物が劣化し、本来の機能を発揮できなくなる前に運転員が発電機出力一定運転へ切り替える、または機器構造物を新規交換することで、機器構造物の劣化進行を抑制することができる。
【0044】
図2は、本発明の実施例における出力変動監視方式の出力変動監視フローチャートである。
【0045】
図2において、発電機出力の変更によって変動するパラメータから、個々の機器構造物(例えば、原子炉圧力容器1、タービン3)に生じる応力の変化を算出する(ステップS1)。
【0046】
ここで、パラメータとは、原子炉圧力容器1の場合は、圧力計測器11によって計測される原子炉圧力容器1内の圧力と、中性子束計測器14によって計測される中性子束である。
【0047】
また、タービン3の場合は、蒸気流量計測器12により計測されるタービン3の蒸気流量と、蒸気圧力計測器13により計測されるタービン3の蒸気圧力とである。
【0048】
次に、ステップS1にて算出された応力の振幅により得られる累積疲労係数(算出式は後述する)を算出し(ステップS2)、機器毎に算出された累積疲労係数と予め設定しておいた累積疲労係数設定値を比較する(ステップS3)。
【0049】
算出された累積疲労係数と予め設定しておいた累積疲労係数設定値(例えば0.9)との比較の結果、算出された累積疲労係数が累積疲労係数設定値を下回った場合は、発電機出力の変更が可能であると判定する。そして、発電機の出力が、そのときに要求される出力に変更される。
【0050】
一方、ステップS3において、算出された累積疲労係数が累積疲労係数設定値以上となった場合は、発電機出力変更によって機器構造物の劣化進行が加速される可能性(健全性を損なう可能性)があると判定し、運転員に対して、算出された累積疲労係数が累積疲労係数設定値以上となった機器構造物が健全性を損なう可能性があることを、その機器構造部を表示して警報にて知らせる(ステップ4)。
【0051】
また、機器構造物を交換した場合には、リセット信号により交換した機器構造物の累積疲労係数を初期化する。ただし、交換した機器構造物以外の機器構造物の累積疲労係数についてはリセットされずホールドされる。
【0052】
図3は、出力変動監視方式のロジック例のブロック図である。
【0053】
図3において、出力変動監視ロジック部(出力変動監視部)15は、スイッチ部16と、メモリ17と、累積疲労計算部22と、疲労蓄積状態判定部23と、OR回路部24とを備えている。
【0054】
発電機出力変更運転時、中央制御部(中央制御室)18から伝達される発電機出力変更運転信号20がトリガーとなり、機能としてのスイッチ部16がオンとなり、計測したパラメータの計測信号21が累積疲労係数計算部22に供給され、累積疲労係数が計算される。
【0055】
上記累積疲労係数とは累積疲労指標とも呼ばれ、次式(1)により算出される。
f=Σ(n(σ)/N
F(σ)) ・・・ (1)
【0056】
上記式(1)において、fは、累積疲労係数であり、n(σ)は、その機器構造物の応力σの応力サイクル数(発電機出力変動回数)であり、N
F(σ)は、応力σの応力サイクルによりその機器構造物に損傷が発生したときの応力サイクル数である。その機器構造物に損傷が発生したか否かの判断は、応力サイクル数である出力変動の大きさや、使用年数等から、機器構造物毎に設定した値により行うことができる。
【0057】
つまり、原子炉圧力計測器11により計測された原子炉圧力容器1内の圧力、中性子束計測器14により計測された原子炉圧力容器1内の中性子束、蒸気流量計測器12により計測された主蒸気配管2の蒸気流量、蒸気圧力計測器13により計測され、タービン3の蒸気流量等の、機器構造物を疲労させるパラメータの値の変動量、使用年数等から、機器構造物毎に設定した値によって、その機器構造物に損傷が発生したか否かの判断を行うことが出来る。
【0058】
また、Σは、応力サイクルについての総和である。
【0059】
累積疲労係数fが1を超えれば、その機器構造物に損傷が発生する確率が高く、累積疲労係数fが1未満のときは、その機器構造物に損傷が生じる確率は小さいとされている。
【0060】
各機器構造物の応力σ、応力サイクル数はメモリ17に格納されており、応力が加わる毎に、つまり、出力変動がある毎に応力サイクル数を加算していく。また、メモリ17には、機器構造物毎に、その機器構造物に損傷が発生したと判断される回数も格納され、更新されるように構成されている。
【0061】
後述するように、リセット信号25により、該当する機器構造物の応力サイクル数はリセットされ、初期回数とされる。
【0062】
累積疲労係数計算部22により、計算された累積疲労係数は、累積疲労係数判断部23に供給される。疲労蓄積状態判定部23は、累積疲労係数計算部22により計算された累積疲労係と、予めメモリ17に格納された設定値とを比較する。
【0063】
そして、累積疲労係数計算部22により計算された累積疲労係数が、設定値を上回った場合、疲労蓄積状態判定部23は、OR回路部24に信号「1」を出力する。
【0064】
このとき、OR条件が成立し、OR回路部24から疲労破損警報発生部19に警報信号が供給されることにより疲労破損警報が発せられる。
【0065】
疲労破損警報発生部19には、表示部が備えられており、表示部に、該当する機器構造物名が表示され、併せて疲労破損警報も表示される。
【0066】
また、機器構造物を新規交換した場合は、リセット信号25が中央制御部18から累積疲労係数計算部22に供給される。累積疲労係数計算部22は、新規交換された機器構造物についての、メモリ17に格納された応力サイクル数を初期値にリセットする。これにより、累積疲労係数は初期化される。リセット信号は、中央制御部18が有する操作部によりオペレーターが手動操作することにより発生される。
【0067】
以上のように、本発明の実施例によれば、原子力発電所の発電機出力の変更要請があった際に、原子力発電所の各構成機器に対して、出力変動による累積疲労係数を算出し、算出した累積疲係数が設定値を超える場合には、その機器構造物が損傷する可能性を警報し、発電機出力変更を行わないように構成されている。
【0068】
これによって、原子力発電所の機器構造物のそれぞれについて、発電機出力の変動による累積疲労を考慮して、個々の機器の整備、交換等を行うことが可能な、発電所における出力変動監視装置および方法を実現することができる。
【0069】
また、発電機出力変更により機器構造物の劣化が進行し、損傷することを未然に防ぐことができる。
【0070】
また、機器構造物を交換した場合には、交換した機器構造物の累積疲労係数がリセットされる。このため、原子力発電システムの運転寿命期間を通じて、適切に機器構造物の状態を監視することができる。
【0071】
なお、上述した例は、本発明を原子力発電所に適用した場合の例であるが、本発明は、原子力発電所のみならず、火力発電所等の他の発電所にも適用可能である。