特許第6366525号(P6366525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366525
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20180723BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20180723BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B60C11/03 300B
   B60C11/13 C
   B60C11/12 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-38318(P2015-38318)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-159696(P2016-159696A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 剛史
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−155789(JP,A)
【文献】 特開2009−214761(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0211354(US,A1)
【文献】 特開2010−274846(JP,A)
【文献】 特開平11−78433(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/072717(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/083657(WO,A1)
【文献】 特開2010−179827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/12
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド面に、タイヤ周方向に連続して延びる6〜8本の主溝と、その主溝によって区分された複数の陸部とが設けられた空気入りタイヤにおいて、
ショルダー陸部、ショルダー主溝、外側メディエイト陸部、メディエイト主溝、内側メディエイト陸部、センター主溝及びセンター陸部が、この順でタイヤ幅方向の外側から内側に向かって設けられ、2〜4本設けられた前記センター主溝同士の間に1〜3本の前記センター陸部が配置され、
前記内側メディエイト陸部及び前記センター陸部が、それぞれ横溝によって複数のブロックに区分され、その横溝は、溝幅が相対的に大きく且つ前記主溝に開口する一対の幅広部と、溝幅が相対的に小さく且つ一対の前記幅広部を連結する幅狭部とを有し、
前記内側メディエイト陸部に設けられた前記横溝の溝底に、前記幅広部で開口して前記幅狭部で閉塞した片側クローズドサイプが形成され、前記センター陸部に設けられた前記横溝の溝底に、前記幅広部及び前記幅狭部で開口した両側オープンサイプが形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記内側メディエイト陸部及び前記センター陸部に設けられた前記横溝が、それぞれ前記幅狭部の両端で屈曲したクランク状に形成されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記横溝の深さは、前記幅広部が開口する前記主溝の深さの10〜60%であり、
前記横溝の溝底を基準とした前記片側クローズドサイプと前記両側オープンサイプの深さが、それぞれ前記主溝の深さから前記横溝の深さを差し引いて得られる深さの40〜90%である請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記幅狭部における前記両側オープンサイプの深さが、前記幅広部における前記両側オープンサイプの深さよりも小さく設定されている請求項1〜3いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記外側メディエイト陸部が横溝によって複数のブロックに区分され、その横溝の溝底に波形サイプが形成されている請求項1〜4いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ショルダー陸部に、タイヤ幅方向に延びてタイヤ周方向に一定間隔で配置された複数の浅溝が形成され、前記浅溝の深さが前記ショルダー主溝の深さの10%以下である請求項1〜5いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド面の構造に特徴を有して耐偏摩耗性に優れる空気入りタイヤに関し、特に重荷重用空気入りタイヤとして有用である。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのトレッド面には、タイヤ周方向に連続して延びる複数本の主溝と、それらによって区分されるリブやブロック列などの陸部が設けられ、要求されるタイヤ性能や使用条件に応じた各種のトレッドパターンが形成される。ブロック列はリブに比べて剛性が低いことから、ブロック基調のパターンでは、リブ基調のパターンに比べて耐偏摩耗性が低くなる。これに対し、ブロックを区分する横溝の深さを小さくすることにより剛性を確保する手法が採用されうるが、その場合には摩耗中期以降にトラクション性が低下する傾向にある。
【0003】
摩耗中期以降のトラクション性を確保しながら耐偏摩耗性を向上するためには、摩耗中期以降にトラクション効果を相応に発揮できるとともに、ブロックの過度の変形を抑制できる構成が必要である。特許文献1〜5には、種々のトレッドパターンを備えた空気入りタイヤが開示されているものの、これらは、そのような構成を備えたものではなく、上述した問題に関してその解決手段を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−271792号公報
【特許文献2】国際公開第2007/072717号
【特許文献3】国際公開第2007/083657号
【特許文献4】特開2008−155789号公報
【特許文献5】特開2010−179827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、摩耗中期以降のトラクション性を確保しながら耐偏摩耗性を向上できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド面に、タイヤ周方向に連続して延びる6〜8本の主溝と、その主溝によって区分された複数の陸部とが設けられた空気入りタイヤにおいて、ショルダー陸部、ショルダー主溝、外側メディエイト陸部、メディエイト主溝、内側メディエイト陸部、センター主溝及びセンター陸部が、この順でタイヤ幅方向の外側から内側に向かって設けられ、2〜4本設けられた前記センター主溝同士の間に1〜3本の前記センター陸部が配置され、前記内側メディエイト陸部及び前記センター陸部が、それぞれ横溝によって複数のブロックに区分され、その横溝は、溝幅が相対的に大きく且つ前記主溝に開口する一対の幅広部と、溝幅が相対的に小さく且つ一対の前記幅広部を連結する幅狭部とを有し、前記内側メディエイト陸部に設けられた前記横溝の溝底に、前記幅広部で開口して前記幅狭部で閉塞した片側クローズドサイプが形成され、前記センター陸部に設けられた前記横溝の溝底に、前記幅広部及び前記幅狭部で開口した両側オープンサイプが形成されているものである。
【0007】
このタイヤでは、6〜8本の主溝が設けられたトレッド面において、内側メディエイト陸部とセンター陸部とが、上記の如き一対の幅広部と幅狭部とを有する横溝によって複数のブロックに区分される。このため、接地圧が相対的に高いタイヤ幅方向の中央部においてブロックの過度の変形を抑制し、それにより耐偏摩耗性を向上することができる。また、トラクション性に寄与の高いタイヤ幅方向の中央部に設けられたセンター陸部では、横溝の溝底に両側オープンサイプを形成しているので、摩耗中期以降のトラクション性を確保することができる。
【0008】
更に、内側メディエイト陸部では、横溝の溝底に片側クローズドサイプ(片側オープンサイプ)を形成しており、これによっても摩耗中期以降のトラクション性を確保する効果が得られる。本発明者は、トレッド幅の1/4点からややタイヤ赤道寄りの部位において成長量(走行時における外径の拡大量)が大きく、この部位のブロックの剛性を高めることが耐偏摩耗性の向上に有効であることを見出しており、このサイプを片側クローズドサイプとしているのは、内側メディエイト陸部がトレッド幅の1/4点からややタイヤ赤道寄りの部位に該当するからである。
【0009】
前記内側メディエイト陸部及び前記センター陸部に設けられた前記横溝が、それぞれ前記幅狭部の両端で屈曲したクランク状に形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、ブロックの過度の変形を効果的に抑制できるため、耐偏摩耗性の向上に資する。
【0010】
摩耗中期以降のトラクション性を確保するうえで、前記横溝の深さは、前記幅広部が開口する前記主溝の深さの10〜60%であり、前記横溝の溝底を基準とした前記片側クローズドサイプと前記両側オープンサイプの深さが、それぞれ前記主溝の深さから前記横溝の深さを差し引いて得られる深さの40〜90%であることが好ましい。
【0011】
前記幅狭部における前記両側オープンサイプの深さが、前記幅広部における前記両側オープンサイプの深さよりも小さく設定されていることが好ましい。これにより、センター陸部を構成するブロックの剛性を効果的に高めて耐偏摩耗性を向上できる。
【0012】
前記外側メディエイト陸部が横溝によって複数のブロックに区分され、その横溝の溝底に波形サイプが形成されていることが好ましい。この場合、複数のブロックに区分された外側メディエイト陸部によってもトラクション性を確保する効果が得られる。また、外側メディエイト陸部は横力を受けやすい部位に位置するが、上記の如く横溝の溝底に波形サイプを形成することにより、横力によるブロックの動きを抑制して耐偏摩耗性を向上できる。
【0013】
前記ショルダー陸部に、タイヤ幅方向に延びてタイヤ周方向に一定間隔で配置された複数の浅溝が形成され、前記浅溝の深さが前記ショルダー主溝の深さの10%以下であることが好ましい。上記の如き浅溝をショルダー陸部に形成することにより、摩耗初期のトラクション性が高められるとともに、横力を受けやすいショルダー陸部の剛性を確保して耐偏摩耗性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例における(a)タイヤ子午線断面図及び(b)要部拡大図
図2図1の(a)A−A断面図、(b)B−B断面図及び(c)C−C断面図
図3図1の(a)D−D断面図、(b)E−E断面図及び(c)F−F断面図
図4図1の(a)G−G断面図及び(b)H−H断面図
図5】8本の主溝が設けられたトレッド面の一例を示す平面展開図
図6】6本の主溝が設けられたトレッド面の一例を示す平面展開図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態では、トレッド面Trに、タイヤ周方向に連続して延びる7本の主溝と、その主溝によって区分された複数の陸部とが設けられた例を示す。このトレッド面Trには、ショルダー陸部21、ショルダー主溝11、外側メディエイト陸部22、メディエイト主溝12、内側メディエイト陸部23、センター主溝13及びセンター陸部24が、この順でタイヤ幅方向の外側から内側に向かって設けられている。
【0017】
7本の主溝は、タイヤ幅方向の最外側に設けられた一対のショルダー主溝11と、ショルダー主溝11とセンター主溝13との間に設けられた一対のメディエイト主溝12と、タイヤ幅方向の中央部に設けられたセンター主溝13とで構成されている。センター主溝13は3本設けられ、その中央のセンター主溝13がタイヤ赤道CLを通るように配置されている。本実施形態では、メディエイト主溝12及びセンター主溝13がジグザグ溝により形成され、これらによってもトラクション効果を発揮できる。
【0018】
7本の主溝により区分された8本の陸部は、トレッド端TEとショルダー主溝11との間に設けられた一対のショルダー陸部21と、ショルダー主溝11とメディエイト主溝12との間に設けられた一対の外側メディエイト陸部22と、メディエイト主溝12とセンター主溝13との間に設けられた一対の内側メディエイト陸部23と、センター主溝13同士の間に設けられたセンター陸部24とで構成されている。本実施形態では、3本設けられたセンター主溝13同士の間に2本のセンター陸部24が配置されている。
【0019】
内側メディエイト陸部23及びセンター陸部24は、それぞれ横溝3,4によって複数のブロックに区分されている。内側メディエイト陸部23とセンター陸部24は、互いに同じブロック形状を有しているが、これに限られない。横溝3は、溝幅が相対的に大きく且つ主溝12,13に開口する一対の幅広部31と、溝幅が相対的に小さく且つ一対の幅広部31を連結する幅狭部32とを有する。これと同様に、横溝4も、溝幅が相対的に大きく且つ主溝13に開口する一対の幅広部41と、溝幅が相対的に小さく且つ一対の幅広部41を連結する幅狭部42とを有する。図2,3は、それぞれ横溝3,4の断面を示している。
【0020】
内側メディエイト陸部23に設けられた横溝3の溝底には、幅広部31で開口して幅狭部32で閉塞した片側クローズドサイプ30(以下、「サイプ30」と呼ぶことがある)が形成されている。本実施形態では、片側クローズドサイプ30が一対で形成されている。サイプ30は、主溝12(または主溝13)に開口した一端から、横溝3の溝底内で終端する他端まで、横溝3の延在方向に沿って延び、幅広部31においてタイヤ径方向外側に開口している。タイヤ周方向に一定間隔で配置された横溝3の各々に、このようなサイプ30が設定されている。
【0021】
また、センター陸部24に設けられた横溝4の溝底には、幅広部41及び幅狭部42で開口した両側オープンサイプ40(以下、「サイプ40」と呼ぶことがある)が形成されている。サイプ40は、主溝13に開口した一端から、別の主溝13に開口した他端まで、横溝4の延在方向に沿って延び、幅広部41と幅狭部42の双方においてタイヤ径方向外側に開口している。タイヤ周方向に一定間隔で配置された横溝4の各々に、このようなサイプ40が設定されている。
【0022】
このトレッド面Trでは、内側メディエイト陸部23とセンター陸部24が、それぞれ上記の如き横溝3,4により複数のブロックに区分されているため、接地圧が相対的に高いタイヤ幅方向の中央部においてブロックの過度の変形を抑制し、耐偏摩耗性を向上することができる。また、センター陸部24では、横溝4の溝底に両側オープンサイプ40を形成しているので、摩耗中期以降のトラクション性を確保することができる。センター陸部24は、トラクション性に寄与の高いタイヤ幅方向の中央部に設けられるため、このように両端を開口させたサイプ40の配置がトラクション性の確保に効果的である。
【0023】
更に、内側メディエイト陸部23では、横溝3の溝底に片側クローズドサイプ30を形成しており、これによっても摩耗中期以降のトラクション性を確保する効果が得られる。内側メディエイト陸部23は、トレッド幅の1/4点PLからややタイヤ赤道CL寄りの部位に設けられる。この部位の成長量(走行時における外径の拡大量)は比較的大きいことから、内側メディエイト陸部23では、サイプ30を片側クローズドとしてブロックの剛性を高め、耐偏摩耗性の向上を図っている。1/4点PLは、トレッド端TE間のタイヤ幅方向距離であるトレッド幅を四等分する位置にあり、タイヤ赤道CLとトレッド端TEとの中央に位置する。
【0024】
本実施形態では、横溝3,4が、それぞれ幅狭部32,42の両端で屈曲したクランク状に形成されている。かかる構成によれば、ブロックの過度の変形を効果的に抑制できるため、耐偏摩耗性の向上に資する。幅広部31,41は、それぞれ陸部の内方に向かって溝幅を漸減させて幅狭部32,42と滑らかに連なっている。幅広部31,41はタイヤ幅方向に延び、本実施形態ではタイヤ幅方向に対して傾斜しているが、平行でも構わない。幅狭部32,42はタイヤ周方向に延び、本実施形態ではタイヤ周方向に対して傾斜しているが、平行でも構わない。これらの傾斜の向きは、横溝3,4の溝幅の中央を通る基準線に基づいて定めればよい。
【0025】
横溝3の深さD3は、幅広部31が開口する主溝12,13の深さD12,D13の10〜60%であることが好ましい。更に言えば、摩耗初期から中期にかけてのトラクション性を確保するうえで、横溝3の深さD3は、幅広部31が開口する主溝12,13の深さD12,D13の10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。また、耐偏摩耗性を向上する観点から、この深さD3は、深さD12,D13の60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。これらのことは、横溝4の深さD4についても同じである。
【0026】
摩耗中期以降のトラクション性を確保するうえで、横溝3の溝底を基準としたサイプ30の深さD30は、主溝12の深さD12(または主溝13の深さD13)から横溝3の深さD3を差し引いて得られる深さD39の40〜90%であることが好ましい。同じ理由により、横溝4の溝底を基準としたサイプ40の深さは、主溝13の深さD13から横溝4の深さD4を差し引いて得られる深さD49の40〜90%であることが好ましい。本実施形態では、幅広部41と幅狭部42とでサイプ40の深さが異なるが、これらの何れもが上記範囲内であることが望ましい。
【0027】
本実施形態では、幅狭部42におけるサイプ40の深さD42が、幅広部41におけるサイプ40の深さD41よりも小さく設定されている。これにより、センター陸部24を構成するブロックの剛性を効果的に高めて、耐偏摩耗性を良好に向上することができる。 横溝3にサイプ30を加えた深さ(D3+D30)、及び、横溝4にサイプ40を加えた深さ(D4+D41)は、例えば、主溝13の深さD13の60〜90%に設定される。
【0028】
幅狭部32,42の溝幅W32,42は、例えば2mm以上に設定される。サイプ30,40の溝幅W30,W40は、それらが設けられる横溝3,4の溝幅よりも小さく、例えば1.5mm以下に設定される。したがって、横溝3,4の溝幅は、その溝底に形成されるサイプ30,40の溝幅よりも大きい。
【0029】
本実施形態では、外側メディエイト陸部22が横溝2によって複数のブロックに区分され、その横溝2の溝底に波形サイプ20が形成されている。これにより、外側メディエイト陸部22によってもトラクション性を確保する効果が得られるとともに、横力によるブロックの動きを抑制して耐偏摩耗性を向上できる。波形サイプ20は、タイヤ周方向に一定間隔で配置された横溝2の各々に設定されている。本実施形態のように直線状に延びる横溝2は、波形サイプ20を設定しやすいという利点を有するが、これに限定されない。横溝2の深さD2は、それが開口する主溝の深さD11,D12の10〜60%であることが好ましい。
【0030】
波形サイプ20は、ショルダー主溝11に開口した一端から、メディエイト主溝12に開口した他端まで、横溝2の延在方向に沿って延びる。但し、波形サイプ20形態は、このような両側オープンサイプに限られず、横溝2の溝底内で端部を終端させた片側クローズドサイプや両側クローズドサイプであっても構わない。その場合、横力によるブロックの動きを抑制する観点から、波形サイプ20の長さを横溝2の長さの60%以上にすることが好ましい。この波形サイプ20及び横溝2の長さは、その両端を結ぶ直線距離により求めればよい。
【0031】
本実施形態では、ショルダー陸部21に、タイヤ幅方向に延びてタイヤ周方向に一定間隔で配置された複数の浅溝1が形成されているため、摩耗初期のトラクション性が高められる。浅溝1は、ショルダー陸部21を分断するように、ショルダー主溝11からタイヤ幅方向外側に延びてトレッド端TEに達している。浅溝1の深さはショルダー主溝11の深さD11の10%以下であることが好ましく、これにより横力を受けやすいショルダー陸部21の剛性を確保して耐偏摩耗性を向上できる。また、トラクション性を発揮するうえで、浅溝1の深さは深さD11の2%以上であることが好ましい。
【0032】
図示を省略しているが、メディエイト主溝12とセンター主溝13の溝底には、それぞれ小石の侵入を抑制するための突起(ストーンエジェクタと呼ばれる)がタイヤ周方向に配列して設けられている。接地圧が相対的に高いタイヤ幅方向の中央部では、主溝に侵入した小石が溝底クラックなどの不具合を引き起こす懸念があることから、かかる構成が有用である。
【0033】
図5は、トレッド面Trに、8本の主溝と、それによって区分された9本の陸部とが設けられた例である。4本設けられたセンター主溝13同士の間に3本のセンター陸部24が配置されている。図6は、トレッド面Trに、6本の主溝と、それによって区分された7本の陸部とが設けられた例である。2本設けられたセンター主溝13同士の間に1本のセンター陸部24が配置されている。いずれの例でも、前述の実施形態と同様に、内側メディエイト陸部23に設けられた横溝3の溝底に片側クローズドサイプ30が形成され、センター陸部24に設けられた横溝4の溝底に両側オープンサイプ40が形成されている。
【0034】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド面を上記の如く構成すること以外は、通常の空気入りタイヤと同等に構成でき、従来公知の材料、形状、構造、製法などが、何れも採用することができる。図示はしないが、図1,5,6に示した空気入りタイヤは、一対のビード部と、そのビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、そのサイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部とを備えており、そのトレッド部の外周面がトレッド面Trによって形成されている。
【0035】
本発明に係る空気入りタイヤは、トラクション性を確保しながら耐偏摩耗性を向上できることから、トラックやバスなどに用いられる重荷重用空気入りタイヤとして有用である。
【0036】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。下記の各性能評価では、タイヤサイズ385/65R22.5のタイヤを22.5×11.75のリムに組み付け、内圧900kPaを充填し、半積載(定積載量の半分)の車輌に装着して評価を実施した。表1に掲載した仕様を除いて、各例におけるタイヤ構造やゴム配合は共通している。
【0038】
(1)トラクション性
水深1mmの濡れた路面において、主溝の深さが50%摩耗したタイヤを装着した車輌が停止状態から20m進むまでの時間を測定し、その逆数を算出した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、数値が大きいほど到着時間が短く、トラクション性に優れることを示す。
【0039】
(2)耐偏摩耗性
20000km走行後の偏摩耗状態(ヒールアンドトウ摩耗量、ショルダー摩耗量及びセンター摩耗量)を測定し、その逆数を算出した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、数値が大きいほど耐偏摩耗性に優れることを示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示すように、実施例1,2では、比較例1,2に比べて、摩耗中期以降のトラクション性を確保しながら耐偏摩耗性を向上できる。特に実施例1では、実施例2よりも各性能において優れている。
【符号の説明】
【0042】
1 浅溝
2 横溝
3 横溝
4 横溝
11 ショルダー主溝
12 メディエイト主溝
13 センター主溝
20 波形サイプ
21 ショルダー陸部
22 外側メディエイト陸部
23 内側メディエイト陸部
24 センター陸部
30 片側クローズドサイプ
31 幅広部
32 幅狭部
40 両側オープンサイプ
41 幅広部
42 幅狭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6