特許第6366533号(P6366533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366533
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】分電盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/40 20060101AFI20180723BHJP
   H02B 1/20 20060101ALI20180723BHJP
   H02B 1/56 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H02B1/40 D
   H02B1/20 C
   H02B1/56 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-67832(P2015-67832)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-189643(P2016-189643A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 悠磨
(72)【発明者】
【氏名】松本 雄多
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−166565(JP,A)
【文献】 特開2004−64867(JP,A)
【文献】 実開昭63−58830(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/40− 1/44
H02B 1/00− 1/38
H02B 1/46− 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分電盤に設けられた複数の分岐開閉器のそれぞれに電力を供給する複数本の母線を上記分電盤に固定する母線固定台と対向して配置され、上記複数本の上記母線のそれぞれを互いに絶縁する絶縁壁が、上記母線が延在する方向に沿って複数個配置されており、
上記複数個の絶縁壁のそれぞれは、隣接する他の絶縁壁と離間して配置されていることを特徴とする分電盤。
【請求項2】
上記絶縁壁には、上記複数本の上記母線のそれぞれが挿入される溝が複数形成されており、
上記複数の溝のそれぞれは、隣接する他の溝と離間して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の分電盤。
【請求項3】
上記絶縁壁の上記複数の溝が形成されている側と反対側の面に、上記絶縁壁の頂部側から底面側に向けて延在するスリットが複数形成されていることを特徴とする請求項2に記載の分電盤。
【請求項4】
上記絶縁壁の底面側に、上記母線固定台の底面側に設けられた被係合部と係合する係合部が形成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分電盤に設けられた複数の分岐開閉器のそれぞれに電力を供給する複数本の母線のそれぞれを絶縁するために絶縁壁が用いられている。このような絶縁壁に関する従来技術として、特許文献1に開示されたバーホルダーがある。この特許文献1に開示されたバーホルダーは、母線全体を覆う構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−166565号公報(2006年6月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のように母線全体を覆う構造のバーホルダーでは、バーホルダーの作成時の構成材料の使用量が多くなるため製作コストが高くなってしまうという問題点がある。また、上記のようにバーホルダーで母線全体を覆ってしまうと、分電盤の通風性が悪化してしまうという問題点もある。
【0005】
本発明は、以上の問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、絶縁壁の製作コストを低減させるとともに、通風性を向上させることができる分電盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の分電盤は、分電盤に設けられた複数の分岐開閉器のそれぞれに電力を供給する複数本の母線を上記分電盤に固定する母線固定台と対向して配置され、上記複数本の上記母線のそれぞれを互いに絶縁する絶縁壁が、上記母線が延在する方向に沿って複数個配置されており、上記複数個の絶縁壁のそれぞれは、隣接する他の絶縁壁と離間して配置されていることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、複数個の絶縁壁のそれぞれは、隣接する他の絶縁壁と離間して配置されている。このため、複数の絶縁壁のそれぞれは、各母線の一部を部分的に覆う構造となっている。このため、母線全体を覆う構造の絶縁壁と比較して、絶縁壁の作成時の構成材料の使用量が少なくなるため、絶縁壁の製作コストを低減させることができる。また、上記のように、絶縁壁は、各母線の一部を部分的に覆っているだけなので、母線全体を覆う構造の絶縁壁と比較して分電盤の通風性を向上させることができる。以上により、絶縁壁の製作コストを低減させるとともに、通風性を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の分電盤は、上記構成に加えて、上記絶縁壁には、上記複数本の上記母線のそれぞれが挿入される溝が複数形成されており、上記複数の溝のそれぞれは、隣接する他の溝と離間して配置されていることが好ましい。上記構成によれば、絶縁壁の複数の溝のそれぞれに複数本の母線のそれぞれの一部が挿入されれば、母線同士の絶縁を確保することができる。
【0009】
また、本発明の分電盤は、上記構成に加えて、上記絶縁壁の上記複数の溝が形成されている側と反対側の面に、上記絶縁壁の頂部側から底面側に向けて延在するスリットが複数形成されていても良い。
【0010】
絶縁壁の複数の溝が形成されている側と反対側の面にスリットを形成しないとその面にヒケが生じる可能性がある。このようなヒケが生じる可能性を低減させるため、上記構成では、絶縁壁の複数の溝が形成されている側と反対側の面にスリットを形成している。また、上記構成によれば、スリットが形成されていない絶縁壁と比較して、絶縁壁の成形時の構成材料の使用量を少なくすることができる。また、上記構成によれば、スリットが形成されていない絶縁壁と比較して絶縁壁の放熱性を高くすることができる。
【0011】
また、本発明の分電盤は、上記構成に加えて、上記絶縁壁の底面側に、上記母線固定台の底面側に設けられた被係合部と係合する係合部が形成されていることが好ましい。上記構成によれば、母線固定台に対して絶縁壁を確実に固定することができる。また、母線固定台の被係合部に絶縁壁の係合部が係合することで、絶縁壁が母線固定台からはずれないようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、絶縁壁の製作コストを低減させるとともに、通風性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の一形態に係る分電盤に関し、ケースに内部ユニットを取付けた状態を示す正面図である。
図2】上記分電盤に関し、内部ユニットの構造を示す斜視図である。
図3】上記分電盤に関し、母線マトメ部材の構造を示す斜視図である。
図4】上記母線マトメ部材の組立工程(前半)を示す斜視図であり、(a)は、母線固定台にL1母線を取付ける前の状態を示し、(b)は、母線固定台にL1母線を取付けた後の状態を示し、(c)は、母線固定台にL2母線を取付ける前の状態を示し、(d)は、母線固定台にL2母線を取付けた後の状態を示す。
図5】上記母線マトメ部材の組立工程(後半)を示す斜視図であり、(a)は、母線固定台にN母線を取付ける前の状態を示し、(b)は、母線固定台にN母線を取付けた後の状態を示し、(c)は、母線固定台と絶縁壁とで上記各母線を固定する前の状態を示し、(d)は、母線固定台と絶縁壁とで上記各母線を固定した後の状態を示す。
図6】上記絶縁壁の構造を示す斜視図であり、(a)は、上記絶縁壁の上記各母線が取り付けられる側を示し、(b)は、上記絶縁壁の上記各母線が取り付けられる側と反対側を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、図1図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0015】
(分電盤30の概略的な構成)
まず、図1に基づいて本発明の実施の一形態に係る分電盤30の概略的な構成について説明する。図1は、ケース21に内部ユニット20を取り付けた状態の分電盤30を示す正面図である。ケース21は、分電盤30の内部構成を収容するものであり、図1に示すようにケース21の内部には、内部ユニット20が収容されている。内部ユニット20は、分電盤30の外部トランス(不図示)から供給される電力を単相3線式で引き込み、引き込んだ電力を100Vまたは200Vの電圧として、図2に示す分岐ブレーカ12における複数の分岐開閉器のそれぞれに供給するものである。
【0016】
内部ユニット20(図2における分岐取付板11)には、ケース21に取り付けられるための孔が形成され、当該孔はねじ締め箇所として利用される。なお、分電盤30の内部を構成する内部ユニット20以外の部材について、図示を省略している。
【0017】
(内部ユニット20の要部構造)
次に、図2に基づいて内部ユニット20の要部構造について説明する。図2は、内部ユニット20の構造を示す斜視図である。図示のように、内部ユニット20は、母線マトメ部材10、分岐取付板11および分岐ブレーカ12を備えている。母線マトメ部材10は、N母線1、L1母線2、L2母線3、母線固定台4および絶縁壁5を組み立てたものである。母線マトメ部材10の詳細については、図3にて後述する。
【0018】
分岐取付板11は、母線マトメ部材10および分岐ブレーカ12をケース21(図1参照)に取り付けるための金属板である。分岐取付板11には、母線マトメ部材10および分岐ブレーカ12を分岐取付板11に固定するための凹部、孔および突起(不図示)が形成されている。また、例えば、図1にて上述した通り、分岐取付板11には、ケース21に取り付けられるための孔が形成されている。なお、分岐取付板11の具体的な形状は任意の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0019】
母線マトメ部材10は、分岐取付板11に形成された形状に沿って配置され、母線マトメ部材10(図3における母線固定台4)に形成された孔をねじ締め箇所として固定され、分岐取付板11に取り付けられる。そして、分岐ブレーカ12は、分岐取付板11に取り付けられた母線マトメ部材10に接続された状態で分岐取付板11に取り付けられる。
【0020】
(母線マトメ部材10の構成)
図3は、母線マトメ部材10の構造を示す斜視図である。図3に示すように、母線マトメ部材10は、N母線1、L1母線2、L2母線3(複数本の母線)、母線固定台4および絶縁壁5を組み立てたものである。
【0021】
N母線1、L1母線2およびL2母線3は、電源側から分岐ブレーカ12に電流を流す板状の金属導体であり、分岐ブレーカ12における複数の分岐開閉器のそれぞれに電力を供給する。N母線1、L1母線2およびL2母線3は、互いに電位が異なるものである。L1母線2は第1の電圧極であり、L2母線3は第2の電圧極であり、N母線1は中性極である。
【0022】
母線固定台4は、N母線1、L1母線2およびL2母線3を分電盤30に固定するものである。絶縁壁5は、N母線1、L1母線2およびL2母線3のそれぞれを互いに絶縁するものであり、母線固定台4と対向して配置される。母線固定台4および絶縁壁5は、樹脂材料からなる絶縁部材である。
【0023】
図3に示すように、絶縁壁5は、各母線1〜3が延在する方向に沿って複数個配置されている。そして、各母線1〜3は、自身が延在する方向において互いに平行となるように、複数個の絶縁壁5と母線固定台4とで挟まれて固定されている。例えば、図3では、2つの絶縁壁5が配置されている。
【0024】
そして、複数個の絶縁壁5のそれぞれは、隣接する他の絶縁壁5と離間して配置されている。すなわち、複数の絶縁壁5のそれぞれは、各母線1〜3の一部を覆う構造となっている。このため、各母線1〜3の全体を覆う構造の絶縁壁と比較して、絶縁壁5の作成時の構成材料(例えば樹脂)の使用量が少なくなるため、絶縁壁5の製作コストを低減させることができる。また、絶縁壁5は、各母線1〜3の一部を覆っているだけなので、各母線1〜3の全体を覆う構造の絶縁壁と比較して分電盤30の通風性を向上させることができる。
【0025】
(母線マトメ部材10の組立工程)
図4および図5に基づいて、母線マトメ部材10の組立工程について説明する。図4は、母線マトメ部材10の組立工程(前半)を示す斜視図であり、図5は、母線マトメ部材10の組立工程(後半)を示す斜視図である。
【0026】
まず、L1母線2を母線固定台4に取り付ける工程について説明する。図4の(a)は、母線固定台4にL1母線2を取付ける前の状態を示す。図4の(a)に示すように、L1母線2において母線固定台4と接する側の側面には、分岐ブレーカ12に接続するための複数の端子が形成され、母線固定台4には、当該複数の端子を通すための複数の開口部〔図5の(a)に示す開口部4aおよび4b参照〕が形成されている。
【0027】
図4の(b)は、母線固定台4にL1母線2を取付けた後の状態を示す。図4の(b)に示すように、L1母線2に形成されている複数の端子のそれぞれが母線固定台4に形成されている複数の開口部を通って露出するように、L1母線2が母線固定台4に配置される。
【0028】
次に、L2母線3を母線固定台4に取り付ける工程について説明する。図4の(c)は、母線固定台4にL2母線3を取付ける前の状態を示す。図4の(c)に示すように、L2母線3において母線固定台4と接する側の側面には、分岐ブレーカ12に接続するための複数の端子が形成され、母線固定台4には、当該複数の端子を通すための複数の開口部が形成されている。
【0029】
図4の(d)は、母線固定台4にL2母線3を取付けた後の状態を示す。図4の(d)に示すように、L2母線3に形成されている複数の端子のそれぞれが母線固定台4に形成されている複数の開口部を通って露出するように、L2母線3が母線固定台4に配置される。
【0030】
図5の(a)は、母線固定台4にN母線1を取付ける前の状態を示す。図5の(a)に示すように、L1母線2およびL2母線3が取り付けられている母線固定台4において、L1母線2における分岐ブレーカ12に接続するための複数の端子と、L2母線3における分岐ブレーカ12に接続するための複数の端子とが、母線固定台4から露出して交互に配列されている。
【0031】
さらに、N母線1を母線固定台4に取り付ける工程について説明する。図5の(a)に示すように、N母線1において母線固定台4と接する側の側面には、分岐ブレーカ12に接続するための複数の端子が形成され、母線固定台4には、当該複数の端子を通すための複数の開口部4aおよび4bが形成されている。
【0032】
図5の(b)は、母線固定台4にN母線1を取付けた後の状態を示す。図5の(b)に示すように、N母線1に形成されている複数の端子のそれぞれが母線固定台4に形成されている複数の開口部4aを通って露出するように、N母線1が母線固定台4に配置される。
【0033】
図5の(c)は、母線固定台4と絶縁壁5とで各母線1〜3を挟み込んで固定する前の状態を示す。図5の(c)に示すように、L1母線2、L2母線3およびN母線1は、母線固定台4の長手方向において互いに平行となるように配置されている。L1母線2およびN母線1において、絶縁壁5に取り付けられる側の形状は板形状であり、L2母線3において、絶縁壁5に取り付けられる側の形状はL字形状である。絶縁壁5には、N母線1、L1母線2およびL2母線3に対応する溝51〜53が形成されている。溝51〜53については、図6にて後述する。
【0034】
図5の(d)は、母線固定台4と絶縁壁5とで各母線1〜3を挟み込んで固定した後の状態を示す。図5の(d)に示すように、絶縁壁5に形成された溝51〜53には、対応する母線1〜3が挿入され、N母線1、L1母線2およびL2母線3が母線固定台4と絶縁壁5とで挟み込んで固定される。
【0035】
(絶縁壁の構造)
図6は、絶縁壁5の構造を示す斜視図である。図6の(a)は、絶縁壁5の各母線1〜3が取り付けられる側を示し、図6の(b)は、絶縁壁5の各母線1〜3が取り付けられる側と反対側を示す。図6の(a)に示すように、絶縁壁5には、3つの溝51、溝52および溝53が互いに平行となるように、この順に形成されている。なお、説明の便宜上、絶縁壁5において溝51が形成されている側の端部を頂部側(紙面において上側)とし、絶縁壁5において溝53が形成されている側の端部を底面側(紙面において下側)とする。
【0036】
溝51、溝52および溝53のそれぞれは、N母線1、L2母線3およびL1母線2のそれぞれの一部が挿入されるものであり、隣接する他の溝と離間して配置されている。このため、絶縁壁5の溝51〜53のそれぞれに母線1〜3のそれぞれの一部が挿入されると、母線同士の絶縁を確保することができる。
【0037】
例えば、溝51は板状のN母線1の一部(図3参照)が嵌合する空間を有し、溝52はL字形状のL2母線3の一部(図3参照)が嵌合する空間を有し、溝53は板状のL1母線2の一部(図3参照)が入る空間をそれぞれ有している。溝51および溝52は、絶縁壁5に挿入されたN母線1とL2母線3との間の距離(沿面距離)が6mm以上(空間距離4mm)となるように形成されている。
【0038】
また、絶縁壁5の底面側に、母線固定台4の底面側(L1母線2が挿入される側の面)に設けられた被係合部と係合する係合爪(係合部)54が形成されている。このため、母線固定台4に対して絶縁壁5を確実に固定することができる。また、母線固定台4の被係合部に絶縁壁の係合爪54が係合することで、絶縁壁5が母線固定台4からはずれないようにすることができる。
【0039】
それゆえ、図3に示す母線マトメ部材10を横倒しにして、図2に示すように分岐取付板11に取り付けたとしても、絶縁壁5は母線固定台4からはずれないため、絶縁壁5と母線固定台4とで挟むことにより各母線1〜3を固定することができる。
【0040】
また、係合爪54は、絶縁壁5の底面側において、母線固定台4に対して絶縁壁5を確実に固定する。このため、溝53は、挿入されるL1母線2の厚みよりも大きい空間を形成していてもよい。なお、N母線1は溝51を形成する絶縁壁5により挟持され、L2母線3は溝52を形成する絶縁壁5により挟持される。
【0041】
次に、絶縁壁5の各母線1〜3が取り付けられる側と反対側について説明する。図6の(b)に示すように、絶縁壁5の溝51〜53が形成されている側と反対側の面(以下、絶縁壁5の背面とする)に、絶縁壁5の頂部側(N母線1が挿入される側)から底面側(L1母線2が挿入される側)に向けて延在するスリット55が複数形成されていてもよい。スリット55は、材料が起こす成形収縮によって生じるへこみ(ヒケ)を低減するために形成される。スリット55の個数は例えば3つである。
【0042】
絶縁壁5の背面にスリット55が形成されることにより、絶縁壁5に変形が生じる可能性が低減する。このため、図1に示すように、絶縁壁5を備えた内部ユニット20をケース21に取り付けやすくなる。また、スリットが形成されていない絶縁壁と比較して、スリット55が形成されている絶縁壁5の成形時の構成材料(例えば樹脂)の使用量を少なくすることができる。さらに、スリットが形成されていない絶縁壁と比較して、スリット55が形成されている絶縁壁5の放熱性を高くすることができる。
【0043】
また、絶縁壁5の背面にスリット55を形成することにより、絶縁壁5の背面にヒケを低減させるための凹部を形成した場合と比較して、絶縁壁5の背面の強度を保つことが可能となる。また、絶縁壁5の頂部側における表面には、N母線1が挿入される方向に延びる突起が複数形成されている。この突起により、絶縁壁5の頂部側の強度を保つことが可能となる。また、絶縁壁5の頂部側が溝51側へ撓むことを抑えることが可能となる。
【0044】
以上の様にして組み立てた母線マトメ部材10を横倒しにして、図2に示すように分岐取付板11に取り付けた場合、分岐取付板11と接する母線マトメ部材10の部材は、絶縁壁5となる。このため、分岐取付板11と各母線1〜3との絶縁を確保することができる。
【0045】
また、図4の(d)に示すように、L1母線2およびL2母線3の端部において、電源側とは反対側の端部の形状は、分岐ブレーカ12に供給する電力の電圧を100Vから200Vに切替えるために形成された形状となっている。例えば、L2母線3の電源側とは反対側における端部において、母線固定台4とは反対側に張り出した面3cが、L1母線2と絶縁距離を保つように形成されている。面3cは、絶縁壁に形成された溝52に挿入することが不可能な形状である。そして、図5の(d)に示すように、絶縁壁5が母線固定台4に固定されると、絶縁壁5(図6に示す溝51と溝52との間にある絶縁壁5)は、L2母線3における面3cを母線固定台4に向かって押さえつけ、L2母線3のガタつきを抑える。このため、L2母線3の端部が、絶縁壁5に形成された溝52に挿入されない場合であっても、L2母線3を母線固定台4に固定することが可能となる。
【0046】
また、図3に示すように、絶縁壁5は、母線固定台4と対となって、N母線1、L1母線2およびL2母線3を挟んで固定する構造である。このため、図2に示すように、母線マトメ部材10の各母線1〜3に分岐ブレーカ12を接続させる場合、接続の際に分岐ブレーカ12から各母線1〜3に掛る力を、分岐取付板11に取り付けられている絶縁壁5で受け止めることが可能となる。すなわち、絶縁壁5は、接続の際に掛る各母線1〜3に対する力の衝撃を受け止めて、各母線1〜3を支えることが可能となる。
【0047】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、分電盤に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 N母線
2 L1母線
3 L2母線
4 母線固定台
5 絶縁壁
12 分岐ブレーカ(分岐開閉器)
51〜53 溝
54 係合爪(係合部)
55 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6