【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るラジアルピストン式油圧機械は、
ラジアルピストン式の油圧機械であって、
前記油圧機械の周方向に配列された複数のピストンと、
前記油圧機械の半径方向に沿って前記複数のピストンをそれぞれ往復運動可能に案内するための複数のシリンダが形成されたシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの内周側又は外周側に位置するカム室内において、前記複数のピストンに対向して設けられるカムと、
前記油圧機械の軸方向において前記シリンダブロックに隣接して設けられ、前記シリンダブロックとともに前記油圧機械の静止部を形成するエンドプレートと、
前記ピストンと前記シリンダとによって形成される作動室に連通するとともに、前記カム室に連通する前記シリンダブロックと前記エンドプレートとの間の隙間に開口するように前記シリンダブロック内に設けられる第1内部流路と、
前記隙間を介して前記第1内部流路の開口端に対向する開口端を有し、前記隙間を介して前記第1内部流路に連通するように前記エンドプレート内に設けられる第2内部流路と、
前記シリンダブロックと前記エンドプレートとの間の前記隙間を塞ぐように前記油圧機械の周方向に設けられる第1シールと、
前記シリンダブロックと前記エンドプレートとの間の前記隙間内に配置され、前記第1内部流路の前記開口端および前記第2内部流路の前記開口端を取り囲むように設けられる第2シールと、
を備える。
【0010】
上記(1)のラジアルピストン式油圧機械は、静止部が、少なくともシリンダブロックとこれに隣接して配置されるエンドプレートとを含む分割構造をなしている。このような分割構造においては、シリンダブロックとエンドプレートとの間に隙間が形成されてしまう。一方、作動油が流れる内部流路(第1内部流路および第2内部流路)は、シリンダブロック及びエンドプレートに跨って延在しており、また、油が充填されるカム室はシリンダブロック及びエンドプレートに囲まれている。そのため、内部流路やカム室は前記隙間に連通することとなる。こうした構成においては、例えばラジアルピストン式油圧機械が各種応力によって弾性変形した場合、前記隙間を介して油が漏れ出るリスクが高くなる。
【0011】
そこで、上記(1)のラジアルピストン式油圧機械では、シリンダブロックとエンドプレートとの間の隙間を塞ぐように油圧機械の周方向に第1シールを設けるとともに、シリンダブロックとエンドプレートとの間の隙間内に、第1内部流路の開口端および第2内部流路の開口端を取り囲むように第2シールを設けている。これにより、ラジアルピストン式油圧機械が各種応力によって弾性変形した場合であっても、内部流路またはカム室からの油漏れを確実に阻止することができる。すなわち、第2シールによって、内部流路(第1内部流路および第2内部流路)を流れる比較的高圧の作動油の漏れを抑制し、第1シールによって、第2シールを漏れ出た比較的低圧の作動油やカム室内の比較的低圧の油の漏れを防止するようになっている。このように、比較的低圧の油については第1シールによって漏れを阻止し、比較的高圧の油については第1シール及び第2シールからなる二重のシール構造によって漏れを阻止することによって、ラジアルピストン式油圧機械が弾性変形した場合であっても、油漏れを確実に防止できる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記第1シールは、前記隙間を塞ぐための液体ガスケットを含み、
前記第2シールは、前記第1内部流路の前記開口端および前記第2内部流路の前記開口端を取り囲むOリングを含む。
【0013】
上記(2)の構成によれば、第1シールが前記隙間を塞ぐための液体ガスケットを含むため、第1シールの前記隙間への密着性を高く保持できる。さらに、液体ガスケットは充填性が良好で施工が容易であることから、油圧機械の修理やメンテナンスに際してシリンダブロックを一旦取り外した後、元の位置に戻したとき、第1シールを容易に再施工することができる。
また、第2シールが、第1内部流路の開口端および第2内部流路の開口端を取り囲むOリングを含むため高いシール性を確保でき、比較的高圧の作動油についても漏れを確実に抑制できる。なお、第2シールは、静止部の表面には露出せず静止部の内部に配置されるため、ラジアルピストン式油圧機械の弾性変形によって第2シールが前記隙間から外れてしまうことは殆どない。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記エンドプレート及び前記シリンダブロックには、前記エンドプレート及び前記シリンダブロックとの間の前記隙間が溝底に開口するように、前記エンドプレートと前記シリンダブロックとの間の接合線に沿って前記周方向に延在する凹溝が形成されており、
前記凹溝に前記第1シールが設けられる。
【0015】
上記(3)の構成によれば、第1シールは、エンドプレートとシリンダブロックとの間の接合線に沿って周方向に延在する凹溝に設けられている。すなわち、第1シールは、エンドプレート及びシリンダブロックの外部空間に露出するように、前記隙間の端部に設けられている。これにより、第1シールの施工が容易となり、また、隙間を介して油が外部空間に漏れ出ることを確実に防止できる。
【0016】
(4)一実施形態では、上記(3)の構成において、
前記第1シールは、
前記隙間が開口する前記凹溝の前記溝底に密着して前記凹溝内に設けられ、前記溝底から離れるにつれて前記軸方向における厚さが減少する減肉領域を有するベースシールと、
前記ベースシールを覆うように前記凹溝内に設けられるカバーシールと、
を含む。
【0017】
上記(4)の構成によれば、第1シールの施工時、ベースシールを凹溝の溝底に密着させた状態でカバーシールを上から押し込めば、ベースシールの減肉領域にてカバーシールとベースシールとが軸方向(凹溝の幅方向)において重なり合い、凹溝の幅方向に隙間なく第1シールを充填させることができる。よって、第1シールのシール性能を向上させることができる。
【0018】
(5)一実施形態では、上記(4)の構成において、
前記ベースシールは、前記凹溝への設置時において固体状である固体シールであり、
前記カバーシールは、前記凹溝への設置時において液体状である液体ガスケットである。
【0019】
上記(5)の構成によれば、第1シールが固体シールと液体ガスケットとの組み合わせによって形成されるので、液体ガスケットの使用分量を少なくすることができ、第1シールの施工時間(例えば液体ガスケットの乾燥時間)を短縮できる。なお、第1シールは、固体シールの外側に液体ガスケットが配置された構成であるため、第1シールの前記隙間への密着性を向上可能であり、ラジアルピストン式油圧機械が弾性変形した場合であっても、第1シールが前記隙間から剥がれ落ちることを阻止できる。
【0020】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(5)の構成において、
第1シールは、前記液体ガスケットを覆うように設けられる蓋部材をさらに含む。
(7)一実施形態では、上記(6)の構成において、前記蓋部材は、前記液体ガスケットに接着されるゴム板を含む。
【0021】
上記(6)又は(7)の構成によれば、液体ガスケットによって蓋部材を前記隙間に接着することができるので、第1シールのシール性能を向上できる。また、例えばゴム板を含む蓋部材によって液体ガスケットが覆われるようにしたので、液体ガスケットの外部空間からの損傷を防止できる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(7)の何れかの構成において、
前記第1シールを覆うように設けられ、前記シリンダブロック又は前記エンドプレートの少なくとも一方に締結される押さえ板をさらに備える。
【0023】
上記(8)の構成によれば、押さえ板によって第1シールをシリンダブロック又はエンドプレートに確実に固定でき、ラジアルピストン式油圧機械が弾性変形した場合であっても、第1シールが前記隙間から剥がれ落ちることを確実に阻止できる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(8)の何れかの構成において、
前記シリンダブロックは、前記周方向に分割された複数のセグメントを含み、
前記周方向に隣接する一対の前記セグメント間の隙間を塞ぐように前記軸方向に設けられる第3シールをさらに備える。
【0025】
上記(9)の構成によれば、隣接するセグメント間の隙間を塞ぐように軸方向に設けられる第3シールをさらに備えているので、シリンダブロックが周方向に分割された油圧機械においても、外部空間への油漏れを確実に防止できる。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(9)の何れかの構成において、
前記軸方向において前記シリンダブロックの両側にそれぞれ前記エンドプレートが設けられ、
一対の前記第1シールが、各々の前記エンドプレートと前記シリンダブロックの各々の端部との間の隙間を塞ぐように前記周方向に設けられる。
【0027】
上記(10)の構成によれば、シリンダブロックの両側に設けられる一対のエンドプレートの各々とシリンダブロックとで形成される一対の前記隙間を、一対の第1シールによって塞ぐようになっている。これにより、各エンドプレートに対応した前記隙間における油漏れを確実に防止できる。
【0028】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(10)の何れかの構成において、
前記カムが取り付けられ、前記カムとともに回転する回転シャフトと、
前記回転シャフトと前記エンドプレートとの間の隙間をシールするためのオイルシールをさらに備える。
【0029】
上記(11)の構成によれば、回転状態の回転シャフトの外周面と静止状態のエンドプレートとの間の隙間からカム室の油が漏れ出ることを防止できる。
【0030】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(11)の何れかの構成において、
前記作動室に連通する高圧油流路及び該高圧油流路よりも低圧の作動油が流れる低圧油流路をさらに備え、
前記高圧油流路は、少なくとも一部が前記第1内部流路及び前記第2内部流路によって形成される。
【0031】
高圧油流路を流れる高圧の作動油は油漏れのリスクが大きいが、上記(12)の構成によれば、高圧油流路の少なくとも一部がシリンダブロックおよびエンドプレートの内部に形成されるので、外部空間に露出した配管に高圧油流路が形成される場合に比べて、油漏れし難い構成とすることができる。また、第1内部流路及び第2内部流路が連通する前記隙間には、上述したように第1シール及び第2シールが配置されているため、高圧の作動油の漏れをより一層確実に阻止できる。
【0032】
(13)一実施形態では、上記(12)の構成において、
前記低圧油流路に連通するように設けられ、前記低圧油流路における脈動を抑制するための少なくとも一つのアキュムレータをさらに備える。
【0033】
上記(13)の構成によれば、低圧油流路に連通するように少なくとも一つのアキュムレータを設けて、低圧油流路における脈動を抑制するようにしたので、ラジアルピストン式油圧機械の弾性変形を抑制可能であり、油漏れが発生するリスクを低減できる。
【0034】
(14)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風力発電装置は、
風を受けて回転するように構成されたロータと、
前記ロータによって駆動されて圧油を生成するように構成された油圧ポンプと、
前記圧油によって駆動される油圧モータと、を備える風力発電装置であって、
前記油圧ポンプは、上記(1)乃至(13)の何れかに記載のラジアルピストン式油圧機械である。
【0035】
上記(14)の風力発電装置によれば、上述したように、油漏れを確実に防止可能なラジアルピストン式油圧機械を備えているため、環境への影響が小さく、安定運転が可能な風力発電装置とすることができる。
【0036】
(15)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るシール施工方法は、
ラジアルピストン式の油圧機械のためのシール施工方法であって、
前記油圧機械は、
前記油圧機械の周方向に配列された複数のピストンと、
前記油圧機械の半径方向に沿って前記複数のピストンをそれぞれ往復運動可能に案内するための複数のシリンダが形成されたシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの内周側又は外周側に位置するカム室内において、前記複数のピストンに対向して設けられるカムと、
前記油圧機械の軸方向において前記シリンダブロックに隣接して設けられ、前記シリンダブロックとともに前記油圧機械の静止部を形成するエンドプレートと、
前記ピストンと前記シリンダとによって形成される作動室に連通するとともに、前記カム室に連通する前記シリンダブロックと前記エンドプレートとの間の隙間に開口するように前記シリンダブロック内に設けられる第1内部流路と、
前記隙間を介して前記第1内部流路の開口端に対向する開口端を有し、前記隙間を介して前記第1内部流路に連通するように前記エンドプレート内に設けられる第2内部流路と、
を含み、
前記油圧機械の周方向に沿って延在する第1シールによって、前記シリンダブロックと前記エンドプレートとの間の前記隙間を塞ぐステップと、
前記シリンダブロックと前記エンドプレートとの間の前記隙間内において、前記第1内部流路の前記開口端および前記第2内部流路の前記開口端を取り囲むように第2シールを配置するステップと、
を備える。
【0037】
上記(15)のシール施工方法では、油圧機械の周方向に沿って延在する第1シールによってシリンダブロックとエンドプレートとの間の隙間を塞ぎ、シリンダブロックとエンドプレートとの間の隙間内において、第1内部流路の開口端および第2内部流路の開口端を取り囲むように第2シールを配置する。これにより、ラジアルピストン式油圧機械が弾性変形した場合であっても、内部流路またはカム室からの油漏れを確実に防止し得るシール構造を施工することができる。