(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液拡散シートは、JIS P8141に規定されるクレム吸水度が10分で25mm以上であり、かつ前記上層シート及び下層シートより厚み方向の液透過性が低い請求項1記載の吸収性物品。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に、体液を吸収し保持する機能を備えた吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、前記吸収体として、2層のシート間に高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを有するものが提案されている。前記ポリマーシートは、大量の体液を吸収して保持する点では優れているが、内部に粉粒状の高吸水性ポリマーの集合体が備えられているため、このポリマー集合体の内部まで体液が浸入しにくく、前記ポリマー集合体の表面付近を流れて、この表面付近の高吸水性ポリマーにだけ体液が吸収されるという課題があった。
【0004】
このようなポリマーシートを用いた吸収性物品としては、例えば下記特許文献1〜3を挙げることができる。下記特許文献1においては、上側シート状吸収層と繊維集合層と下側シート状吸収層とをトップシート側からこの順で有し、前記上側シート状吸収層と前記下側シート状吸収層はそれぞれ、不織布シート間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有さず、前記不織布シート間に、吸水性樹脂が配された複数の吸水性樹脂存在領域と、前記吸水性樹脂存在領域に隣接して吸水性樹脂非存在領域とを有し、前記吸水性樹脂非存在領域で、不織布シートどうしが接合されて封止部を形成している吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、段落[0039]〜[0046]及び
図4において、吸収性コアは、不織布からなる基質層(100)、吸収性ポリマー材料の層(110)、繊維性熱可塑性材料の層(120)及び不織布からなる覆い層(130)で構成され、前記吸収性ポリマー材料の層が不連続層として供給され、前記基質層の表面の一部が吸収性ポリマー材料で覆われないように配置され、前記繊維性熱可塑性材料の層が、前記吸収性ポリマー材料の層の上に置かれて、吸収性ポリマー材料の層の表面と直接接触するとともに、吸収性ポリマー材料で覆われない基質層の表面とも直接接触することにより、繊維性熱可塑性材料の層が吸収性ポリマー材料の表面と基質層の表面とで波形になっている吸収性物品が開示されている。
【0006】
更に、下記特許文献3では、請求項1、段落[0066]及び
図7(B)において、第1シート(1)及び第2シート(2)の間に吸水性ポリマー(3)を配置した構造を有し、前記第1シートは第1突出部(11)と第2突出部(12)とを有する凹凸形状であり、前記第2シートは第3突出部(23)と第4突出部(24)とを有する凹凸形状であり、前記第1シートと第2シートとは互いの凹凸の周期が一致した配置とされ、前記第3突出部は第1突出部の内部空間に入り込んで部分的に接合固定され、前記第2突出部は第4突出部の内部空間に内部空間を一部残して入り込み、前記第4突出部の内部空間には、第2突出部側に間隙部を残して前記吸水性ポリマーが充填されており、前記第2シートの非肌面側に、第4シート(9)を積層させた吸収体を備えた吸収性物品が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0020】
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1及び
図2に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された2層のシート間に高吸水性ポリマーを配置してなるポリマーシート4と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイド不織布7,7とから構成されている。また、前記ポリマーシート4の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2、透液性表面シート3の外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部ではポリマーシート4の側縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、外周にポリマーシート4の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0021】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0022】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。前記透液性表面シート3は、後段で詳述するポリマーシート4の上層シート10が肌当接面層を構成する場合には、設けなくてもよい。
【0023】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在されるポリマーシート4は、肌側(透液性表面シート3側)に配置された上層シート10と非肌側(不透液性裏面シート2側)に配置された下層シート11との間に、高吸水性ポリマー12が配置された構造を有している。前記高吸水性ポリマー12は、パルプなどの繊維状吸収材に混入されるのではなく、粉粒状の高吸水性ポリマー12のみの集合体として配置されている。このため、前記ポリマーシート4の厚みが薄くなり、生理用ナプキン1の薄型化を図ることが可能となる。このポリマーシート4については、後段で詳細に説明する。
【0024】
一方、本生理用ナプキン1の表面側の両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによってウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0025】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0026】
前記サイド不織布7の内方側は、
図2に示されるように、前記サイド不織布7をほぼ二重に折り返すとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材8,8が配設され、その収縮力によって前記二重シート部分を肌側に起立させた立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0027】
〔ポリマーシート4について〕
以下、前記ポリマーシート4について詳細に説明する。前記ポリマーシート4を構成する前記上層シート10としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、前記透液性表面シート3と同様に、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができる。前記不織布の加工法は問わないが、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法など、得られた製品の繊維密度が大きくなる加工法とするのが好ましい。前記多孔性プラスチックシートの開孔径は、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、高吸水性ポリマー12の外形より小さくするのが好ましい。また、後段で詳述するように、上層シート10は所定の凹凸加工が成されるため、熱可塑性を有する素材を含むのが好ましい。
【0028】
前記下層シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートの他に、遮水性を有するシート材を用いることが可能である。前記上層シート10と同様に、不織布の加工法は問わないが、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法など、得られた製品の繊維密度が大きくなる加工法とするのが好ましい。前記多孔性プラスチックシートの開孔径は、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、高吸水性ポリマー12の外形より小さくするのが好ましい。前記遮水性のシート材としては、前記不透液性裏面シート2と同様の素材を用いることができる。
【0029】
前記高吸水性ポリマー12としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。
【0030】
前記ポリマーシート4には、
図3に示されるように、前記高吸水性ポリマー12が配置されたポリマー配置領域13と、前記高吸水性ポリマー12が配置されないポリマー無配置領域14とが形成されている。前記ポリマー配置領域13は、前記上層シート10と下層シート11との間に高吸水性ポリマー12が所定の目付以上で介在する領域である。前記ポリマー無配置領域14は、前記ポリマー配置領域13に隣接する前記ポリマー配置領域13以外の領域であり、2層のシート10、11間に高吸水性ポリマー12が全く介在しないか、前記ポリマー配置領域13に高吸水性ポリマー12を散布する際にこぼれ落ちるなどして若干高吸水性ポリマー12が存在するが、その量が前記ポリマー配置領域13と比較して極端に少ない領域である。前記ポリマー配置領域13は、上層シート10及び下層シート11の外縁まで達しない上層シート10及び下層シート11の中間領域に形成されている。
【0031】
また、前記ポリマーシート4は、
図4及び
図5に示されるように、前記下層シート11の肌側面に隣接して、面方向の体液の拡散を促進する液拡散シート15が積層されている。すなわち、前記ポリマーシート4は、下層シート11の上面に液拡散シート15が積層されるとともに、前記液拡散シート15の上面に前記ポリマー配置領域13及びポリマー無配置領域14が形成され、更にその上面に前記上層シート10が積層された構造を成している。
【0032】
前記液拡散シート15は、面方向の体液の拡散性に優れ、かつ上層シート10及び下層シート11より厚み方向の液透過性が低い繊維集合体で構成するのが好ましい。このような特性を備えた素材としては、例えばクレープ紙やティッシュペーパーを挙げることができる。
【0033】
前記液拡散シート15は、高吸水性ポリマー12の非肌側のみに設けられ、高吸水性ポリマー12の肌側には設けられないようにするのが好ましい。仮に、高吸水性ポリマー12の肌側に設けた場合には、前記液拡散シート15によって厚み方向の尿の浸透速度が低下し、ポリマーシート4の吸収スピードが遅くなるおそれがある。
【0034】
前記液拡散シート15は、1層のみで構成してもよいし、複数のシートを積層した多層構造としてもよい。多層構造からなる場合、全て同じ性質を有するシート部材を積層したものでもよいし、異なる性質を有するシート部材を積層したものでもよい。すなわち、少なくとも1つの層が面方向の体液の拡散性に優れ、且つ厚み方向の液拡散性が低い性質を有するもので構成するか、少なくとも1つの層が面方向の体液の拡散性に優れ、他の少なくとも1つの層が厚み方向の液透過性が低い性質を有するもので構成する。後者の場合、肌側面を構成する層が面方向の体液の拡散性に優れる性質を有し、非肌側面を構成する層が厚み方向の液透過性が低い性質を有するように配置するのが好ましい。
【0035】
前記液拡散シート15に備えられる面方向の体液の拡散性に優れた性質としては、JIS P8141に規定される「紙及び板紙のクレム法による吸水度試験方法」によるクレム吸水度が10分で25mm以上、特に30mm以上であるのが好ましい。かかる性質を有するものとしては、具体的にはクレープ紙やティッシュペーパーなどの薄い吸収紙が好ましい。
【0036】
具体的に、次の各素材について、前記クレム吸水度を測定した結果を表1に示す。測定は、素材のライン流れ方向(MD方向)と、これと直交する方向(CD方向)とについて、それぞれ10回ずつ行い、その平均値をクレム吸水度とした。測定に用いた素材は、(1)液拡散シート15(クレープ紙、15g/m
2)、(2)エアスルー不織布(ポリエチレン/ポリプロピレンの複合繊維と、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの複合繊維の積層体、25g/m
2)、(3)スパンボンド不織布(ポリプロピレン、18g/m
2)の3種類である。表1に示されるように、クレム吸水度は、素材によって大きく異なるが、本発明で使用する(1)の素材は面方向の液拡散性に優れるようになる。
【0037】
【表1】
前記液拡散シート15は、前記上層シート10及び下層シート11より厚み方向の液透過性が低い性質を有するのが好ましい。このような性質を有すると、液拡散シート15に吸収された体液が直ちに下層シート11に移動するのではなく、液拡散シート15内でより広範囲に拡散し、より多くの高吸水性ポリマー12と接触できるようになるため好ましい。これによって、高吸水性ポリマー12が体液をより確実に吸収できるようになる。
【0038】
このような性質を有するものとしては、クレープ紙やティッシュペーパーなどの薄い吸収紙や、前記上層シート10及び下層シート11より親水度の低い不織布等の繊維集合体、孔開きフィルム等を用いることができる。
【0039】
前記液拡散シート15は、
図1に示されるように、上層シート10及び下層シート11とほぼ同じ形状で形成されるか、これより若干小さな少なくとも全てのポリマー配置領域13を含む大きさで形成するのが好ましい。また、前記液拡散シート15は、面方向の体液の拡散を促進させたい部分のみ、例えば排尿口部対応領域とその周辺領域のみに配置してもよい。
【0040】
前記上層シート10は、前記ポリマー無配置領域14において、前記液拡散シート15に直接接触した状態で所定の接合部16で接合されている。前記接合部16としては、ホットメルト接着剤などによる接着手段や熱又は超音波による溶着手段を用いることができる。前記接合部16は、ポリマー配置領域13を囲うパターンで配置するのが好ましい。
【0041】
前記ポリマー無配置領域14に介在する上層シート10は、少なくとも前記接合部16が形成される部分が液拡散シート15に直接接触した状態で配設されている。前記接合部16以外の部分は、液拡散シート15に接触しない状態としてもよいし、一部が液拡散シート15に接触し、残りの一部が液拡散シート15より肌側に突出するなど液拡散シート15に直接接触しない状態としてもよいし、ポリマー無配置領域14の上層シート10の全部が液拡散シート15に直接接触した状態としてもよい。
【0042】
前記接合部16は、少なくとも上層シート10と液拡散シート15とを接合したものであるが、更に下層シート11も含めて一体的に接合したものとするのが好ましい。前記下層シート11は、少なくとも周縁部で上層シート10又は液拡散シート15に接合されていればよいが、前記接合部16で液拡散シート15及び上層シート10と接合した方が接合部16の接合強度を高める点で好ましい。
【0043】
以上の構成からなる本ポリマーシート4では、前記ポリマー無配置領域14において上層シート10が液拡散シート15に接触した状態で接合されているため、前記ポリマー無配置領域14において上層シート10から液拡散シート15に浸透した尿が、液拡散シート15の面方向の液拡散作用によって面方向に素早く拡散され、広い範囲の高吸水性ポリマー12に尿が接触して、効率良く吸収できるようになる。また、前記液拡散シート15によって面方向に拡散した尿が、ポリマー配置領域13に配置された高吸水性ポリマー12の下側から回り込むようにして吸収されるため、高吸水性ポリマー12による体液吸収が効率良く行われるようになる。更に、前記液拡散シート15によって面方向に拡散させた尿を広い領域の高吸水性ポリマー12によって吸収しているため、特定の狭い領域の高吸水性ポリマー12のみに体液が集中して吸収されることにより、この狭い領域の高吸水性ポリマー12だけが膨潤して増厚する装着感の悪化が防止できるようになる。
【0044】
前記ポリマーシート4は、
図3に示されるように、平面視で、少なくとも上下左右位置が上層シート10を液拡散シート15に接合する接合部16によって囲まれるとともに、生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向に沿って正格子状に配列され、内部が前記ポリマー配置領域13とされた複数の第1画成領域19、19…と、隣接する4つの第1画成領域19、19…の中央に位置するとともに、内部がポリマー無配置領域14とされた第2画成領域20とに区画された構造とするのが好ましい。
【0045】
より具体的に説明すると、前記ポリマーシート4は、
図3に示されるように、上層シート10と液拡散シート15とが、千鳥格子状配置で設けられた第1接合部17によって接合されるとともに、上下左右位置に存在する4つの各第1接合部17、17…同士を結ぶ斜め中間位置に設けられた第2接合部18によって接合されている。前記千鳥格子状配置とは、ピッチが同じ隣り合う行又は列を、1行おき又は1列おきに半ピッチずらして配置したものであり、1行おき又は1列おきに上下方向及び左右方向に整列するように配置したものである。また、本書において、上下位置とは、生理用ナプキン1の長手方向(前後方向)に一致する方向の位置であり、左右位置とは、生理用ナプキン1の幅方向に一致する方向の位置である。
【0046】
また、前記ポリマーシート4は、前記第1接合部17と第2接合部18とによって囲まれるとともに、ナプキン長手方向及び幅方向に沿って正格子状に配列された、内部に高吸水性ポリマー12が封入された複数の第1画成領域19と、隣接する(上下方向及び左右方向に近接する)4つの第1画成領域19、19…の中央に位置するとともに、斜め4方向が前記第2接合部18によって囲まれた第2画成領域20とに区画されている。
【0047】
すなわち、前記第1画成領域19は、上下左右位置にそれぞれ配置された第1接合部17、17…と、上下左右位置の中間であって斜め4方向位置にそれぞれ配置された第2接合部18、18…とによって囲まれている。また、前記第2画成領域20は、正格子状に配列された前記第1画成領域19、19…が上下方向及び左右方向に近接する4つの第1画成領域19、19…で囲まれた中央に位置し、斜め4方向がそれぞれ前記第2接合部18によって囲まれている。
【0048】
ある1つの第1画成領域19を基準としてみたとき、その周囲には、パッド長手方向の両端部にそれぞれ第1画成領域19が隣接するとともに、パッド幅方向の両側部にそれぞれ第1画成領域19が隣接し、かつこれら周囲に配置された第1画成領域19、19…の中間であって、基準となる中央の第1画成領域19の斜め4方向にそれぞれ第2画成領域20が隣接している。
【0049】
前記第1画成領域19では、
図3及び
図4に示されるように、前記第1接合部17及び第2接合部18で囲まれた領域内の上層シート10が、概ね中央部を頂点としてドーム状に肌側に膨出することにより、上層シート10と液拡散シート15との間に空間部が形成されるようになっている。また、第2画成領域20では、
図3及び
図5に示されるように、前記第2接合部18によって斜め4方向が囲まれた領域内の上層シート10が、概ね中央部を頂点として略四角錐状に肌側に膨出することにより、上層シート10と液拡散シート15との間に空間部が形成されるか、
図6に示されるように、上層シート10の平坦部分が液拡散シート15の上面に積層されることにより、上層シート10と液拡散シート15との間に空間部が形成されないようにすることが可能である。前記第1画成領域19は、内部空間に前記高吸水性ポリマー12が充填されたポリマー配置領域13とされている。
【0050】
前記第2接合部18の接合強度は、前記第1接合部17の接合強度より小さく設定されており、高吸水性ポリマー12が吸液して膨潤したときに、第1接合部17より第2接合部18の接合が優先的に剥離するようにするのが好ましい。すなわち、第1接合部17の接合強度>第2接合部18の接合強度、の関係を有するのが好ましい。前記第2接合部18の接合強度を第1接合部17の接合強度より小さくすることによって、高吸水性ポリマー12が吸液して膨潤したとき、比較的弱い力で第2接合部18の接合が剥離するようになる。また、更に高吸水性ポリマー12の膨潤が進み、より大きな力を生じたときには、前記第1接合部17の接合も剥離するようになる。
【0051】
以上の構成からなるポリマーシート4の体液吸収メカニズムについて、
図3、
図7及び
図8に基づいて説明する。まず、
図3及び
図7に示されるように、第1画成領域19を幅方向に横断するとともに左右両側の第1接合部17、17を通る横断面で切断した断面視において、幅方向に隣り合う第1画成領域19、19の間が相対的に接合強度の大きな第1接合部17によって上層シート10と液拡散シート15とが接合されているため、第1画成領域19に封入された高吸水性ポリマー12が吸液して膨潤したときに、第1接合部17の接合が容易に剥離せず、この状態では膨潤した高吸水性ポリマー12によって上層シート10や液拡散シート15に歪みや凹凸が生じやすい状況となっている。
【0052】
ところが、本発明に係るポリマーシート4では、
図3及び
図8に示されるように、第1画成領域19を斜めに横断するとともに第1画成領域19及び第2画成領域20を交互に通る横断面で切断した断面視において、斜め方向に隣り合う第1画成領域19と第2画成領域20との間が相対的に接合強度の小さな第2接合部18によって上層シート10と液拡散シート15とが接合されているため、第1画成領域19に封入された高吸水性ポリマー12が吸液して膨潤したときに、第2接合部18の接合が剥離し、第1画成領域19と第2画成領域20とが連通するようになる。このため、体液の拡散性が良好になるとともに、吸液して膨潤した高吸水性ポリマー12の流動性が良くなり、高吸水性ポリマー12同士が結合しにくいとともにゲルブロッキングが生じなくなり、高吸水性ポリマー12によって効率良く吸液できるようになる。また、高吸水性ポリマー12が吸液して膨潤したときに第1画成領域19の内部空間が斜め4方向の第2画成領域20の内部空間と連通するため、高吸水性ポリマー12の膨潤による応力を逃がすことができ、シートに歪みや凹凸が生じにくく、装着感が良好になる。また、前記ポリマーシート4は、第1画成領域19の周囲の接合部が全て同時に剥離するのではなく、接合強度が弱い部分と強い部分とを設け、弱い部分を優先的に剥離し、強い部分の接合を残すことによって、膨潤後のポリマーが大きく移動し、シートが歪んだりよれたりするのが防止できる。
【0053】
前記第2画成領域20は、前記第1画成領域19より少ない量の高吸水性ポリマー12が内部に封入されたポリマー配置領域13、又は高吸水性ポリマー12が介在しないポリマー無配置領域14とされている。前記第2画成領域20は第1画成領域19より小さな面積で形成され、内部空間も第1画成領域19より小さな体積となるため、高吸水性ポリマー12の封入量も相対的に少なくするのが好ましい。また、前記第2画成領域20は、第1画成領域19よりポリマー量を少なくするかポリマー無配置領域14とすることにより、第1画成領域19と第2画成領域20との間の接合部が外れて吸液して膨潤した高吸水性ポリマー12が第1画成領域19から第2画成領域20に流動しやすくなり、第1画成領域19でのゲルブロッキングがより確実に防止できるようになる。
【0054】
図3に示されるように、前記第2画成領域20は、第1画成領域19よりも小さい面積で形成するのが好ましい。これにより、ポリマーシート4の吸水効率を低下させることなく、第2画成領域20が第1画成領域19内のポリマーが膨潤したときの応力を逃がすためのバッファーゾーンとして作用しやすくなる。また、前記第2画成領域20は、内部空間が第1画成領域19よりも小さな体積で形成するのが好ましい。これにより、第1画成領域19と第2画成領域20の内部空間が連通した際に、高吸水性ポリマー12が大きく移動することによりポリマーシートが歪むのが防止できる。
【0055】
前記第1画成領域19及び第2画成領域20は、任意の平面形状で形成することが可能である。前記第1画成領域19の平面形状とは、
図3に示されるように、前記第1接合部17と第2接合部18とによって囲まれた領域の基端部分の平面形状のことであり、第1接合部17及び第2接合部18に内接する閉合する仮想線S1の平面形状のことである。また、前記第2画成領域20の平面形状とは、同
図3に示されるように、前記第2接合部18によって囲まれた領域の基端部分の平面形状のことであり、第2接合部18に内接する閉合する仮想線S2の平面形状のことである。前記第1画成領域19の平面形状は、楕円形、円形、多角形、菱形などで形成することができ、第2画成領域20の平面形状は、略菱形、楕円形、円形、多角形などで形成することができる。長手方向と短手方向を有する平面形状からなるものでは、長手方向をナプキン長手方向に配向してもよいし、ナプキン幅方向に配向してもよい。これらの平面形状のうち、特に好ましいものは、
図3に示されるように、前記第1画成領域19の平面形状が、ナプキン長手方向に長い楕円形に形成されるとともに、第2画成領域20の平面形状が、略菱形に形成されるようにしたものである。これにより、ポリマーシート4に第1画成領域19及び第2画成領域20がほぼ隙間なく配置されるようになり、ポリマーシート4の吸水効率が向上できるとともに、高吸水性ポリマー12が吸液して膨潤し、第2接合部18の接合が剥離して第1画成領域19と第2画成領域20とが連通した際のシートの歪みが小さく抑えられるようになる。前記第2画成領域20の平面形状が略菱形とは、各辺が直線からなる菱形の他、各辺が内側に凸の曲線からなる略菱形の形状も含むものである。
【0056】
各第1画成領域19及び第2画成領域20は、
図3に示されるように、隣接する第1画成領域19又は第2画成領域20との間に隙間を空けることなく第1接合部17及び第2接合部18を境界線として隣接配置するのが好ましいが、各第1画成領域19がそれぞれ個別の独立した第1接合部17及び第2接合部18によって囲まれ、隣接する第1画成領域19との間に隙間を空けて配置するようにしてもよい(図示せず)。前者の場合には、高吸水性ポリマー12がポリマーシート4に対してほぼ隙間なく配置されるようになり、吸液効果を高めることができる。また、後者の場合には、第1画成領域19内の高吸水性ポリマー12が膨潤してポリマーシート4の厚みが厚くなったとき、隣接する第1画成領域19、19間の隙間がバッファーゾーンとなってシートの歪みが吸収され、ポリマーシート4全体が歪むのが防止できるようになる。前記隙間は、小さすぎるとシートの歪みが吸収できないし、大きすぎると吸液効果が低下するため、第1画成領域19の長軸方向の長さの10%〜30%程度とするのが好ましい。
【0057】
前記第1画成領域19における上層シート10と液拡散シート15との間の内部空間は、ナプキン長手方向に長い楕円形の底面を有し、横断面視で液拡散シート15の表面から肌側に向けてドーム状の全体的に丸みを帯びた中空の円弧状に形成され、三次元的には、楕円体を長軸方向に略半分にした略半楕円体状に形成するのが好ましい。
【0058】
一方、前記第2画成領域20においては上層シート10と液拡散シート15との間に空間が形成されない平坦な形状とするのが好ましいが、前記第2画成領域20における上層シート10と液拡散シート15との間に内部空間を形成する場合は、略菱形の底面を有し、横断面視で液拡散シート15の表面から肌側に向けて傾斜する直線状の斜面を有する中空の三角形状に形成され、三次元的には、略四角錐体状に形成するのが好ましい。前記第2画成領域20の内部空間の頂部の角度は鋭角とされ、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下で形成するのがよい。
【0059】
前記第1画成領域19の膨出高さと、前記第2画成領域20の膨出高さとは、ほぼ同等に形成するのが望ましい。これによって、第1画成領域19における肌ざわり感を維持したまま、第2画成領域20において体液を吸収体側に移行させやすくなる。仮に、第1画成領域19の高さを第2画成領域20の高さより高くした場合には、第2画成領域20による吸収体側への体液の移行が十分に行われず、肌側の液残りが多くべた付き感を感じやすくなるし、これとは逆に第2画成領域20の高さを第1画成領域19の高さより高くした場合には、主に第2画成領域20の頂部が肌に当たって肌ざわり感が悪化する。なお、第1画成領域19の高さと第2画成領域20の高さとの差はほとんどないのが望ましいが、±3mm程度、好ましくは±2mm程度、より好ましくは±1mm程度の差があっても構わない。
【0060】
前記第1接合部17及び第2接合部18としては、ホットメルト接着剤などの接着剤による接着手段を用いるのが好ましいが、ヒートシールや超音波シールなどの融着による接合手段を用いることも可能である。
【0061】
前記第1接合部17と第2接合部18との接合強度の調整は、接着剤による接着手段を用いる場合には、単位面積当たりの塗布量や塗布パターンの長さを調整することにより行うことができ、融着による接合手段を用いる場合には、融着面積や融着温度の調整により行うことができる。
【0062】
前記第1接合部17と第2接合部18の接合強度は何れも、高吸水性ポリマー12が吸液して膨潤したときに、上層シート10及び液拡散シート15が破れない程度の強度、すなわち上層シート10及び液拡散シート15の引張強度より小さな強度に設定されている。具体的には、第1接合部13の接合強度は、0.5〜2N/25mm程度が好ましく、第2接合部15の接合強度は、0.2〜1N/25mm程度が好ましい。また、これらの接合強度の差は、0.3N/25mm以上設けるのが好ましい。
【0063】
前記接合強度は、25mmの幅に切り取った前記接合部によって接合されたシート材を300mm/minの速度で引っ張る引張試験を行ったときの引張強度から測定できる。また、実際に前記第1接合部17及び第2接合部18が設けられたシートを用いて、次の方法により各接合部17、18の接合強度を測定してもよい。最初に、前記第1接合部17及び第2接合部18によって上層シート10及び液拡散シート15が接合された状態で前記引張試験を行い接合強度P1を測定する。次いで、ポリマーシートに注水して高吸水性ポリマー12を膨潤させ、前記第2接合部18が剥離し、第1接合部17のみによって上層シート10及び液拡散シート15が接合された状態で前記引張試験を行い接合強度P2を測定する(このときの接合強度P2を第1接合部17の接合強度とする。)。前記接合強度P1とP2との差(P1−P2)を第2接合部18の接合強度とする。
【0064】
図3に示されるように、前記第1画成領域19の上下端に配置される前記第1接合部17は、左右方向(ナプキン幅方向)に長い溝状に形成するのが好ましく、第1画成領域19の左右端に配置される第1接合部17は、上下方向(ナプキン長手方向)に長い溝状に形成するのが好ましい。これにより、第1接合部17は、隣接する第1画成領域19、19の間において、それぞれ接続する接線方向に長い溝状に形成され、隣接する第1画成領域19同士の接続が制限されるようになる。なお、前記第1接合部17は、連続溝状に形成するのが好ましいが、断続的なドット状に形成してもよい。
【0065】
また、前記第2接合部18は、前記第1接合部17と離間して配置されるとともに、隣接する第1接合部17、17同士を結ぶ方向に断続的な複数のドット状に形成するのが好ましい。前記第2接合部18は、高吸水性ポリマー12が吸液して膨潤したときに優先的に剥離するように、第1接合部17より接合強度が弱くなる断続的なドット状に形成するのが好ましい。また、前記第2接合部18は、連続する溝状に形成してもよいし、1つのドットによって形成してもよい。
【0066】
ところで、前記第1画成領域19に充填される高吸水性ポリマー12の重量は、20〜300g/m
2、好ましくは80〜200g/m
2とするのがよい
。
【0067】
前記ポリマーシート4を製造するには、
図9及び
図10に示されるように、前記第1画成領域19に対応する多数の凸状部21a、21a…が配列されるとともに、前記第2画成領域20に対応する多数の凸状部21b、21b…が配列された第1エンボスロール21と、前記凸状部21aに対応する多数の凹状部22a、22a…が配列されるとともに、前記凸状部21bに対応する多数の凹状部22b、22b…が配列された第2エンボスロール22との間に、上層シート10を通過させることにより、前記凸状部21aと凹状部22aとの噛み合わせによって前記第1画成領域19の膨出部分を形成するとともに、前記凸状部21bと凹状部22bとの噛み合わせによって前記第2画成領域20の膨出部分を形成する製造装置24を用いるのが好ましい。
【0068】
その後、前記上層シート10が配置された前記第2エンボスロール22の表面に高吸水性ポリマー12を散布し、第1画成領域19に対応する凹状部22aに高吸水性ポリマー12を収容する
。そして、第2エンボスロール22とフラットロール23との間に、別経路から搬送された液拡散シート15を積層した状態で通過させることにより、前記第1接合部17及び第2接合部18によって前記上層シート10と液拡散シート15とを接合し一体化させる。これらの接合は、前記第2エンボスロール22の凸部に対応する上層シート10の外面にホットメルト接着剤等を塗布しておき液拡散シート15と接着するか、前記フラットロール23との噛み合わせ時に前記第2エンボスロール22の凸部を加熱又は超音波放射により、前記上層シート10と液拡散シート15とを融着させることにより行われる。また、前記液拡散シート15に下層シート11を積層し、必要に応じて、上層シート10、液拡散シート15及び下層シート11を一体的に接合する。
【0069】
前記第2エンボスロール22の凹状部22aの底部及び必要に応じて凹状部22bの底部にそれぞれ吸引口を設けることによって、エンボス時に上層シート10を吸引しエンボスしやすくするとともに、高吸水性ポリマー12の散布時に吸引してポリマーの落下を防止することができる。また、高吸水性ポリマー12の散布後、スクレーパーなどで表面を均すことによって、第1画成領域19に収容される高吸水性ポリマー12の量を調整してもよい。
【0070】
しかる後、長手方向に連続するポリマーシート4、4…を、前記第1画成領域19及び第2画成領域20が設けられない上層シート10と下層シート11との接合部にて裁断する。
【0071】
ところで、前記ポリマーシート4は、
図2に示されるように、透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に、単体で介在させてもよいし、
図11及び
図12に示されるように、前記ポリマーシート4の非肌側又は肌側に配置したパルプなどの吸水性の繊維集合体を含む繊維集合体層30との積層体として介在させてもよい。前記繊維集合体層30は、少なくとも吸水性の繊維集合体で構成され、高吸水性ポリマーを混入してもよい。
【0072】
図11では、ポリマーシート4の非肌側に繊維集合体層30を配置し、これらポリマーシート4と繊維集合体層30との積層体を透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に介在させている。これにより、上層のポリマーシート4を透過した体液が下層の繊維集合体層30に吸収され保持されるようになる。この場合、ポリマーシート4を構成する下層シート11としては、透水性のシート材を用いるのが好ましい。
【0073】
図12では、ポリマーシート4の肌側に繊維集合体層30を配置し、これらポリマーシート4と繊維集合体層30との積層体を透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に介在させている。これにより、繊維集合体層30で拡散した体液をポリマーシート4で速やかに吸収できるようになる。この場合、
図12に示されるように、前記繊維集合体層30の幅方向中央部に長手方向に沿って貫通するスリット31を設けてもよい。これにより、このスリット31が体液の一時貯留空間として作用し、このスリット31に沿って体液を長手方向に拡散させつつ、ポリマーシート4において体液を拡散できるので、拡散性に優れ効率良く速やかにポリマーシート4に吸収させることが可能となる。
【0074】
前記ポリマーシート4と繊維集合体層30との積層体とした場合、ポリマーシート4は、繊維集合体層30の全面に配置する必要はなく、例えば、排尿口部を含むナプキン中央領域のみに配置したり、排尿口部を囲む環状領域のみに配置したりすることが可能である。この場合、繊維集合体層30は、前記外周フラップ部を残した生理用ナプキン1の外周部まで配置されている。
【0075】
また、図示しないが、前記透液性表面シート3は必ずしも必須の要素ではなく、ポリマーシート4の上層シート10を肌当接面層として機能させた場合には、透液性表面シート3を配置しなくてもよい。これにより、生理用ナプキン1が更に薄型化できるとともに、資材数の減少によりコスト削減が可能となる。
【実施例】
【0076】
本ポリマーシート4の効果を実証するため、以下の吸水試験を行った。試験では、
図3に示されるように、前記第1接合部17及び第2接合部18によって第1画成領域19及び第2画成領域20が形成されるとともに、前記第1画成領域19及び第2画成領域20が高吸水性ポリマー12(SDPグローバル製EP−2100)が配置されたポリマー配置領域13とされたポリマーシート4を用いた。ポリマー配置領域13の高吸水性ポリマー12の目付は100g/m
2とした。試験は、ポリマーシート4の上面に直径25mmの吸収筒を使用して人工尿3ccを滴下し、吸収スピード(人工尿の滴下から吸収しきるまでの時間)と拡散面積(吸収しきってから1分経過後の拡散面積)を測定し、5回の平均値を得た。前記人工尿は、尿素:20wt%、食塩:8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.3wt%、酸化マグネシウム七水和物:0.8wt%、純水:70.01wt%からなるものである。
【0077】
その結果を表2に示す。なお、比較例は前記液拡散シート15を配置しない上層シートと下層シートとの間に高吸水性ポリマーを介在させたものである。
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示されるように、本ポリマーシート4では、液拡散シート15がない比較例と比較して、拡散面積が大幅に増大し、広い範囲の高吸水性ポリマー12によって尿が吸収できるようになる。