(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多灯式照明装置の場合、複数の光源からそれぞれ放射される光が、1つの照明光となって基板に照射される。したがって、ステージ上に配置された照度計は、すべての光源に基づく照度(全体照度)を検出し、各光源の照度を検出していない。
【0006】
光源には個体差があり、使用経過に伴う消耗具合も異なる。したがって、各光源に対し同じ電力(供給電力)を供給しても、照度低下は光源ごとに相違する。しかしながら、特定の光源に起因して全体照度が低下すると、定照度点灯制御では、すべての光源に対し供給電力を一律に増加させる。
【0007】
その結果、照度低下のほとんどない光源に対し供給電力が過度に大きくなり、消耗を早める。これは、さらなる全体照度の低下を招き、多灯式照明装置の発光効率の悪化、寿命短縮につながる。
【0008】
一方、各光源の傍に複数の照度計を設置した場合、光源側で計測される照度と、基板側で計測される照度は必ずしも一致しない。これは、照明光学系の配置特性、あるいは、ステージ付近における装置外部からの照明光に起因する。したがって、光源からの放射光以外の外光が重畳されると、適切に照度を計測することができない。
【0009】
したがって、照明装置において、光源の照度もしくは強度を適切に検出することが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の照明装置は、照明光をそれぞれ発光する複数の光源と、照明光学系と被照射領域との間に配置され、複数の光源による全体照明光の照度もしくは強度(以下、照度/強度と表す)を検出する光検出部と、複数の光源それぞれに対し、発光制御を行う照明制御部とを備える。照度一定を維持する定照度点灯方式の場合、照明制御部は、各光源に対する供給電力を、一律に制御すればよい。
【0011】
照明制御部は、複数の光源から、複数の光源に対応したそれぞれ異なる周波数に従って照度/強度が変動する計測照明光を、それぞれ発光させる。そして、光検出部は、それぞれ異なる周波数に基づき、各光源の計測照明光を重ねた全体計測照明光から、各光源における変動分を含まない照明光の照度/強度を得る。
【0012】
照明制御部は、各光源に供給される電力の周期変動に応じて照度/強度の周期変動を生じさせる周波数に基づいて、計測照明光を発光させることが可能である。
【0013】
例えば、複数の光源が、それぞれ、交流電力によって照明光を発光し、照明制御部が、各光源に対し、基本周波数とその光源に応じた特定周波数とを重ねた合成周波数をもつ交流電力を供給し、計測照明光を発光させる。
【0014】
特定周波数を確実に抽出することを考慮すれば、照明制御部は、基本周波数の少なくとも2倍を超える特定周波数を、基本周波数に重ねるのがよい。また、複数の光源に応じた複数の特定周波数が、許容最少間隔以上の周波数間隔を互いにもつようにするのがよい。
【0015】
例えば、照明制御部が、以下の式範囲にある特定周波数を基本周波数に重ねることが可能である。この式における上限値は、従来認識されていなかった供給電力と特定周波数との関係から経験的に導き出している。なお、fmは上限値以下を満たし、あるいは下限値以上を満たす範囲にあるように定めることも可能である。
6×F≦fm≦10/PW0
但し、fmは特定周波数(kHz)、Fは基本周波数(kHz)、PW0は基本周波数Fをもつ矩形波の交流電力(kW)を表す。
【0016】
各光源の照度を検出する構成として、例えば、光検出部が、同期検波部を設けることが可能である。
【0017】
あるいは、光検出部において、全体照明光を各光源の計測照明光にそれぞれ分離するフィルタを備えることが可能であり、光検出部は、各光源の計測照明光の振幅幅から、揺らぎ照明光の照度/強度を検出する。
【0018】
本発明の他の態様に於ける照明装置は、照明光を発光する単一の光源と、照明光学系と被照射領域との間に配置され、光源による全体照明光の照度/強度を検出する光検出部と、光源に対し、発光制御を行う照明制御部とを備える。照明制御部は、光源の電力波形と、光源に応じた特定周波数とを重ねた合成周波数をもつ交流電力を光源に供給することによって、光源から、合成周波数に従って変動する計測照明光を発光させ、光検出部は、合成周波数に基づき、光源の計測照明光を重ねた全体計測照明光から、光源の変動分を含まない照明光の照度/強度を得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光源から放射される照明光の照度/強度(以下、単に照度と称す場合がある。)を適切に検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1は、第1の実施形態である露光装置のブロック図である。
【0023】
露光装置10は、フォトレジストなどの感光材料を塗布あるいは貼り付けた基板Sに対し、照明光を投影してパターンを形成する露光装置であり、描画テーブル(図示せず)に基板Sが設置されている。
【0024】
露光装置10は照明デバイス20、露光ヘッド30、制御部50を備え、制御部50によって露光動作が実行、制御される。照明デバイス20は、ここでは4つの光源ユニット20A〜20Dによって構成される。光源ユニット20Aは、放電ランプ28Aとリフレクタ29Aを備え、他の光源ユニット20B〜20Dも、ショートアーク型放電ランプ28B、28C、28Dとリフレクタ29B、29C、29Dをそれぞれ備えている。
【0025】
放電ランプ28A〜28Dは、ここではショートアーク型放電ランプが適用されており、水銀量が0.15mg/mm
3以上封入されている。また、放電ランプ28A〜28Dは、交流電力に基づき点灯し、ここでは、およそ0.05〜0.2(kHz)の周波数(基本周波数)をもつ矩形波交流電力が電源回路22A〜22Dによって供給される。
【0026】
放電ランプ28A〜28Dからそれぞれ放射された光は、それぞれリフレクタ29A〜29Dによって折り返しミラー24で反射する。折り返しミラー24で反射した光は、照明光学系26に入射する。照明光学系26は、フライアイレンズなどの光学系を有し、空間的に均一な強度をもつ光束から成る光を出射する。照明光学系26から射出した光は、ミラー21などを介して露光ヘッド30内のDMD(図示せず)へ導かれる。
【0027】
制御部50は、描画テーブルに対する基板Sの相対位置に合わせてラスタデータをDMDへ送信する。空間光変調器であるDMDでは、微小矩形状マイクロミラーがマトリクス状に2次元配列されている。DMDの各マイクロミラーは、ラスタデータに基づいてON/OFF制御される。
【0028】
照度センサ40は、テーブルの端に設置されており、露光動作開始前に露光エリアの場所に移動する。照度計測のとき、制御部50は、電源回路22A〜22Dを制御し、放電ランプ28A〜28D各々の光出力を変動させ、個別の照明光および全体の照明光に揺らぎを生じさせる。照度測定部45は、計測される全体の照明光から、ランプ個別の照明光の照度を検知する。
【0029】
制御部50は、定照度点灯制御を実行し、放電ランプ28A〜28Dへの供給電力を一律に制御する。それとともに、制御部50は、各放電ランプの照度を個別にモニタリングする。特定の放電ランプの照度が、あらかじめ定められた範囲を超えて低下している場合、モニタ(図示せず)に対してランプ交換を知らせるデータを送信する。あるいは、ブザー音を鳴らすように構成してもよい。
【0030】
図2は、照度計測のとき、各ランプに供給される交流電力を示した図である。
図3は、
図2の電極矩形波を部分的に拡大した図である。
図4は、各ランプの照明光を合成した全体照明光から照度センサによって検出された揺らぎを示した図である。
図2〜4を用いて、照度計測時に供給される交流電力特性について説明する。
【0031】
通常の露光動作においては、低周波数F(以下、基本周波数という)の矩形波をもつ交流電力PW0が放電ランプ28A〜28Dに送られる。供給電力の値は、いずれの放電ランプも同じである。ここでは、基本周波数Fは、0.05〜0.2(kHz)の範囲で定められる。
【0032】
一方、照度計測を行う場合、すなわち、基板取り替え時、ランプ点灯開始からの定期検査時、露光装置のシステム変更時など、パターンに基板を形成しないとき、制御部50は、基本周波数Fに対して高周波数(以下、特定周波数という)fmを重ねた周波数(合成周波数)の交流電力PWを供給する。
【0033】
図2では、振幅W、基本周波数Fをもつ矩形波の交流供給電力PW0と、特定周波数fm(m=1〜4)を基本周波数Fに重ねた合成周波数の交流供給電力PWの波形を示している。また、
図3には、
図2の交流供給電力PWの矩形波半サイクル分(M)を拡大して示している。放電ランプ28A〜28Dへの供給電力は、基本周波数Fに特定周波数f1〜f4をそれぞれ重ねた周波数に基づいた交流電力波形をもつ。放電ランプ28A〜28Dの供給電力波形は、それぞれ符号A〜Dで表される。
【0034】
特定周波数f1〜f4は、基本周波数Fよりも高い周波数であり、数kHz〜数100kHの範囲に定められている。また、特定周波数fmの値はランプごとに異なる。特定周波数fmの下限値に関しては、基本となる交流電力PW0の矩形波形と干渉しないように定められる。例えば、基本周波数Fの矩形波の略半サイクル分の期間において、特定周波数fmの波形が少なくとも1サイクル分現れる、すなわち基本周波数Fの2倍を超えるように規定すればよい。
【0035】
一方、特定周波数fmの上限に関しては、照明光の照度が不安定にならないように定められる。具体的には、供給電力の変動に合わせて照明光が変動する、すなわち、供給電力の周期変動に比例するように照度/強度が周期変動することが可能な範囲で上限値が定められる。
【0036】
照明光の変動は、供給電力の変動に応じた電極温度および水銀蒸発量等の変動によって生じる。特に、水銀が0.15(mg/mm
3)以上封入されたショートアーク型放電ランプの場合、照度の変動速度には限界があり、供給電力の変動に応じた照明光の変動の応答性にも限りがある。
【0037】
そのため、供給電力が大きくランプの照度が高いランプでは、特定周波数が重畳されることによる供給電力の変動量が大きくなる一方、照度が供給電力の変動に追従できなくなり、正確な照度変動量を測定できなくなる。
【0038】
よって、上記ショートアーク型放電ランプの場合、特定周波数は照度が供給電力の変動に追従できる最大値(特定周波数上限値fmmax)以下である必要がある。本実施形態では、ランプの水銀封入量が所定範囲にある場合、特定周波数と供給電力との関係から、特定周波数の上限を定めることができることを経験的に見出した。具体的には、ランプに封入された水銀量が0.15〜0.4(mg/mm
3)、ランプに供給される交流電力が0.05〜0.6(kW)の場合、特定周波数上限値は、以下の式で求められる。但し、fmmaxは特定周波数上限値(kHz)を表す。
fmmax=10/PW0 ・・(1)
【0039】
また、ショートアーク型放電ランプの照度は、供給電力の変動のほかに、周辺の環境(例えばランプ周辺温度)によって微小に変化する可能性がある。このような照度変動の影響を受けずに特定周波数を抽出するためには、基本周波数に対してある基準を超えた高周波数でなければならない。
【0040】
具体的には、供給電力の変動に応じた正確な照明光の変動量を検出するため、基本周波数Fの矩形波の半サイクル分の期間において、特定周波数fmの波形が少なくとも3サイクル分現れる、すなわち、次式に示すように、基本周波数Fの6倍を超えるように特定周波数fmを規定することが望ましい。
6×F≦fm≦10/PW0 ・・(2)
【0041】
さらに、特定周波数f1〜f4は、その周波数間隔がある一定値以上離れる(許容最少間隔以上の周波数間隔をもつ)ように定められる。これは、照度/強度の個別の検出処理を容易にするためである。ここでは、基本周波数Fが90Hzの場合、特定周波数f1、f2、f3、f4は、それぞれ2.43(kHz)、2.61(kHz)、2.79(kHz)、2.97(kHz)に定められる。なお、等間隔で特定周波数を定めてもよい。
【0042】
各放電ランプから放射される個別の照明光は、
図3の各放電ランプに対する供給電力波形に比例するように周期的に変動する。照明センサ40は、各ランプの照明光を合成した全体照明光を検出することから、
図4に示すように、全体的な照明光の揺らぎは、不規則なものとなる。
【0043】
図5は、同期検波によって検知される各放電ランプの照度を示した図である。
【0044】
照度測定部45は、同期検波によって各放電ランプの照度を求める。照度測定部45は、制御部50から送られてくる特定周波数f1〜f4に合わせたクロックパルス信号に従い、同期タイミングを取りながら各放電ランプ照度を検知する。
【0045】
図5では、放電ランプ28A〜28Dそれぞれの照度を、符号A〜Dで表している。同期検波により、全体的な照明光の揺らぎから直流成分として各放電ランプの照度を検出する。制御部50は、測定された各放電ランプの照度A〜Dのうち、規格範囲から外れているものがあるか否かを判断する。なお、ランプ点灯開始時の照度を基準値とし、基準値をベースにした照度低下率を各放電ランプに対して測定してもよい。
【0046】
そして、規定範囲外の照度低下が生じている放電ランプが存在する場合、その旨がオペレータに知らされる。オペレータが新しいランプに交換すると、再び、一律に電力調整を行う定照度点灯制御が実行される。
【0047】
このように本実施形態によれば、各放電ランプの交流供給電力を、基本周波数Fにランプごとに異なる特定周波数f1〜f4を重ねた交流供給電力とし、各放電ランプの照明光を周期的に変動させる。照度センサ40は、各放電ランプの揺らぎのある照明光を重ねあわせた合成照明光の照度を検出する。照度測定部45は、互いに異なる特定周波数f1〜f4に基づき、同期検波によって揺らぎを含まない各放電ランプの照度を検出する。
【0048】
放電ランプの照度を個別に検出することにより、供給電力を一律に調整する定照度点灯制御において、照度低下のない放電ランプの供給電力を過度に上げることを防ぐ。その結果、照明装置全体の寿命が延び、発光効率が向上する。
【0049】
特定周波数fmが基本周波数Fに対して十分高いため、基本周波数Fの電力矩形波と干渉しない。その一方、特定周波数fmを過度に高くしていないため、放射光の変動が供給電力の変動に追随しないといった不安定な揺らぎを防ぐことができる。また、周波数間隔がほぼ等しいため、同期検波しやすい。
【0050】
次に、
図6を用いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、フィルタによって照明光をランプごとに分離し、照明光の振幅幅に基づいて光強度度を測定する。それ以外の構成については、第1の実施形態と同じである。
【0051】
図6は、第2の実施形態におけるフィルタ後の照明光の時系列的変動を示した図である。
【0052】
第2の実施形態では、照度測定部45は、従来公知のフィルタ回路を有し、全体の照明光はフィルタ回路によって、各放電ランプの照明光に分離される。そして、以下の式に基づき、各放電ランプの照明光の照度を求める。ただし、Em(m=1〜4)は、フィルタによって検出される各放電ランプの照度、Vmは、各放電ランプの特定周波数による供給電力の振幅幅、Wmは各放電ランプの照明光の振幅幅を示す。また、k、Yは、照明光学系などの光学特性に基づく係数を示す。
Em=k×(Wm/Vm)+Y ・・(3)
【0053】
なお、複数の放電ランプの代わりに1つの放電ランプで照明装置を構成してもよい。この場合、ランプ以外の外光が照度センサに入射する場合においても、各放電ランプの照明光の照度/強度を正確に検出することができる。さらに、直流電力を供給する放電ランプも適用可能であり、放電ランプ以外の光源を使用することもできる。
【実施例】
【0054】
以下では、上記(1)式を満たす放電ランプについて、実施例を用いて説明する。
【0055】
本発明の実施例である放電ランプは、光源として単一の放電ランプで構成され、水銀封入量が0.15〜0.4(mg/mm
3)に定められている。特定周波数と供給電力を変えながら、照度変動の追従性について確認する実験を行った。
【0056】
まず、特定周波数を重畳せずに照度を測定し、次に、特定周波数を重ねて照度を検出した。そして、異なる供給電力に対して照度をそれぞれ測定した。以下の表1は、その結果である。
【0057】
【表1】
【0058】
表1より、照度の追従性が認められる範囲での供給電力(kW)と特定周波数(kHz)の関係性は、供給電力(kW)と特定周波数(kHz)の積が10以下となることが明らかである。なお、供給電力が0.05〜0.6(kW)の間においても、それに合わせて特定周波数をいくつか用意したとき、同様の上限値が導かれる。
【0059】
本発明に関しては、添付されたクレームによって定義される本発明の意図および範囲から離れることなく、様々な変更、置換、代替が可能である。さらに、本発明では、明細書に記載された特定の実施形態のプロセス、装置、製造、構成物、手段、方法およびステップに限定されることを意図していない。当業者であれば、本発明の開示から、ここに記載された実施形態がもたらす機能と同様の機能を実質的に果たし、又は同等の作用、効果を実質的にもたらす装置、手段、方法が導かれることを認識するであろう。したがって、添付した請求の範囲は、そのような装置、手段、方法の範囲に含まれることが意図されている。
【0060】
本願は、日本出願(特願2013−166551号、2013年8月9日出願)を基礎出願として優先権主張する出願であり、基礎出願の明細書、図面およびクレームを含む開示内容は、参照することによって本願全体に組み入れられている。