特許第6366590号(P6366590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366590エポキシ樹脂混合物、エポキシ樹脂組成物、硬化物および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366590
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂混合物、エポキシ樹脂組成物、硬化物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/26 20060101AFI20180723BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20180723BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C08G59/26
   H01L23/30 R
【請求項の数】7
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-536583(P2015-536583)
(86)(22)【出願日】2014年9月9日
(86)【国際出願番号】JP2014073807
(87)【国際公開番号】WO2015037584
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-186859(P2013-186859)
(32)【優先日】2013年9月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-143791(P2014-143791)
(32)【優先日】2014年7月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌照
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/142466(WO,A1)
【文献】 特公昭45−012131(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 63/00−63/10
H01L 23/29
H01L 23/31
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を60〜75%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー 面積%)、及び、ビフェノールのエポキシ化物を5〜25%(同上)含有するエポキシ樹脂混合物。
【化1】

(式中、複数存在するG、Rはそれぞれ独立して存在し、Gはグリシジル基を、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、もしくは炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
【請求項2】
軟化点が80〜100℃である請求項1に記載のエポキシ樹脂混合物。
【請求項3】
150℃におけるICI溶融粘度(コーンプレート法)が0.08〜0.35Pa・sである請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂混合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂混合物と硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂混合物と硬化触媒を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項7】
半導体チップを請求項4又は5に記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止して得られる半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性が要求される電気電子材料用途に好適なエポキシ樹脂混合物、エポキシ樹脂組成物、その硬化物および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は作業性及びその硬化物の優れた電気特性、耐熱性、接着性、耐湿性(耐水性)等により電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く用いられている。
【0003】
しかし近年、電気・電子分野においてはその発展に伴い、樹脂組成物の高純度化をはじめ耐湿性、密着性、誘電特性、フィラー(無機または有機充填剤)を高充填させるための低粘度化、成型サイクルを短くするための反応性のアップ等の諸特性の一層の向上が求められている。又、構造材としては航空宇宙材料、レジャー・スポーツ器具用途などにおいて軽量で機械物性の優れた材料が求められている。特に半導体封止分野、基板(基板自体、もしくはその周辺材料)においては、その半導体の変遷に従い、薄層化、スタック化、システム化、三次元化と複雑になっていき、非常に高いレベルの耐熱性や高流動性といった要求特性が求められる。なお、特にプラスチックパッケージの車載用途への拡大に伴い、耐熱性の向上要求がいっそう厳しくなっている。具体的には、半導体の駆動温度の上昇により、150℃以上の耐熱性が求められるようになってきている。一般にエポキシ樹脂は軟化点が高いほど、その硬化物は高い耐熱性を有する傾向がある。しかし、その反面、粘度が上昇するという傾向があるため封止材には使用が困難となる。この課題に対し、ナフタレン構造を導入することで耐熱性を出そうとすることが試みられたが、固くもろくなり機械強度が低下するという課題があった。また、多官能のエポキシ樹脂が検討されているが、難燃性が著しく低下するという課題があった。
また、近年、反りや、はんだリフロー等の半田ショックに対する耐性が非常に強く求められている。特にチップが薄型化していく中、鉛フリー半田の温度(260℃)に耐えられることが求められており、この半田ショックの応力を回避するために高温での弾性率が低く応力を逃すことのできる封止材が求められている。また反りに関してはその抑制のため、高い耐熱性と高温での低弾性率が求められている。この低弾性率と耐熱性は難燃性と同様、相反する特性であり、耐熱性を上げようと架橋密度をあげてしまうと高温での弾性率が高くなり、リフロー時の応力を逃しきれず、チップに負荷がかかる、またパッケージにクラック、反りがでる等の問題が生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“2008年 STRJ報告 半導体ロードマップ専門委員会 平成20年度報告”、第8章、p1−1、[online]、平成21年3月、JEITA (社)電子情報技術産業協会 半導体技術ロードマップ専門委員会、[平成24年5月30日検索]、<http://strj-jeita.elisasp.net/strj/nenjihoukoku-2008.cfm>
【非特許文献2】高倉信之他、松下電工技報 車関連デバイス技術 車載用高温動作IC、74号、日本、2001年5月31日、35−40頁
【非特許文献3】中村正志、パナソニック電工技報 先端半導体用封止材料の技術動向、Vol.56 No.4[平成25年6月6日検索]<http://panasonic.co.jp/ptj/pew/564j/pdfs/564_02.pdf>
【非特許文献4】“BGAパッケージの反り解析” JEITA (社)電子情報技術産業協会[平成24年9月30日検索]<http://home.jeita.or.jp/ecb/material/No011.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エポキシ樹脂の高機能化で特に要求される特性のひとつとして、硬化物の耐熱性が挙げられる。従来より、エポキシ樹脂の硬化物の耐熱性は重要視されていたものの、前述のように、一般に該耐熱性を上げるともろくなり機械強度が悪くなる、また(硬化物の)難燃性が悪くなる、粘度が高くなる、(硬化物の)高温での弾性率が高くなる等の問題が同時に生じ、全ての特性を満たすことが難しい。
そこで、硬化物の耐熱性及び該耐熱性と相反する特性を両立できるエポキシ樹脂の開発が望まれていた。
即ち、本発明は、優れた硬化物の耐熱性を有しながら、該耐熱性と相反する特性である、硬化物の機械強度、難燃性、高温での弾性率に優れ、硬化前は粘度が低い等の特性を同時に満たすことができるエポキシ樹脂混合物を提供することを目的とし、さらに該エポキシ樹脂混合物を用いた、エポキシ樹脂組成物、硬化物および半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記したような実状に鑑み、鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
【0007】
(1)
下記式(1)で表される化合物を60〜75%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー 面積%)、及び、ビフェノールのエポキシ化物を5〜30%(同上)含有するエポキシ樹脂混合物。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、複数存在するG、Rはそれぞれ独立して存在し、Gはグリシジル基を、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、もしくは炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
【0010】
(2)
軟化点が80〜100℃である前項(1)に記載のエポキシ樹脂混合物。
(3)
150℃におけるICI溶融粘度(コーンプレート法)が0.08〜0.35Pa・sである前項(1)又は(2)に記載のエポキシ樹脂混合物。
(4)
前項(1)〜(3)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂混合物と硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
(5)
前項(1)〜(3)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂混合物と硬化触媒を含有するエポキシ樹脂組成物。
(6)
前項(4)又は(5)に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化した硬化物。
(7)
半導体チップを前項(4)又は(5)に記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止して得られる半導体装置、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂混合物は、粘度が低く、その硬化物が耐熱性、吸水特性及び難燃性に優れた特性を有するため電気電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例22で使用した96Pin QFPリードフレームを示す図である。
図2】実施例22で作成、使用した耐半田クラック性の試験評価用試験片を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のエポキシ樹脂混合物は、フェノールフタレイン骨格誘導体構造を有する化合物を含むエポキシ樹脂混合物に関する。本発明の式(1)で表される化合物の基礎骨格はイギリス特許1158606号公報(特許文献1)にて開示されている。特許文献1によると、epoxy equivalents per kgが3.4(現在のエポキシ当量に換算すると294g/eq.)、色相がガードナー8(40% in メチルグリコール)、軟化点が66℃(kolfer heater)、塩素含有量が2.2%というフェノールフタレイン骨格誘導体構造を有するエポキシ樹脂が開示されている。また、DDS(ジアミノジフェニルスルホン)との硬化物性が開示されている。
上記データから特許文献1に記載のエポキシ樹脂は塩素量が非常に多く、電子材料用途には不向きであり、また非常に着色があることから色味の必要とされる用途においては使用が困難であることが示唆される。また、エポキシ当量が294g/eq.と理論値(252.7g/eq.)と比較し大きいこと、また塩素量の多さから、エポキシが閉環せずに残留したエピハロヒドリン構造が多く含有されることが示唆され、二官能であるにも関わらず、このようなエポキシ環が完成されていない構造であれば、架橋がうまく進まず、フェノール樹脂による硬化や、イミダゾール等の塩基性触媒によるアニオン重合、オニウム塩等によるカチオン重合を行った際に、その機械特性や吸水性といった特性において課題が生じる場合が多い。特に電子材料用途においてはこれらの硬化だけでなく、アミン系の硬化においても硬化時の塩素の遊離が起因となる配線の腐食等が予想され、電気信頼性を落とす要因となる。
近年特に半導体のチップと基板との接合に銅のワイヤを使用することが多くなってきており、このような電気腐食の課題はいっそう重要となっており、解決すべき課題点となる。
さらに本特許文献1に記載のエポキシ樹脂はその分子内の極性の問題から粘度が高くなる。さらには構造の特性から機械強度や密着性が悪くなるという傾向があり、半導体の封止材等の用途への展開が難しい状態であった。
【0014】
本発明は、下記式(1)で表される化合物を60〜75%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー 面積%)、ビフェノールのエポキシ化物を5〜30%(同上)含有するエポキシ樹脂混合物である。
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、複数存在するG、Rはそれぞれ独立して存在し、Gはグリシジル基を、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、もしくは炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
【0017】
ここで、前記式(1)で表される化合物の含有量が75%を上回る場合、結晶性が高くなる可能性や、強靭性の低下が見られる可能性がある。前記式(1)で表される化合物の含有量が60%を下回ると、エポキシの環が閉環しきらず、官能基を有さない化合物が多く含まれることから好ましくない。またこれら閉環しきらなかった化合物の多くには塩素が含有されている場合が多く、電子材料用途としては高温多湿条件での塩素イオンの遊離、およびそれによる配線の腐食が懸念されることから好ましくない。
Rで最も好ましいのは水素原子である。Rが示す、上記炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖、分岐鎖または環状構造を有するアルキル基が挙げられる。ここで、Rはメチル基、エチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
Rが示す、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の直鎖、分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基が挙げられる。ここで、Rはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0018】
ビフェノールのエポキシ化物が30%を超えると前記式(1)で表される化合物の構造に起因する硬化物の耐熱性を活かしきれず、また5%未満であると低粘度化、機械強度、密着性の面で効果が少ない。本発明のエポキシ樹脂混合物中におけるビフェノールのエポキシ化物の含有量は5〜25%が特に好ましい。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂混合物のエポキシ当量は、原料となるフェノール骨格の理論エポキシ当量に対し、通常1.01倍〜1.13倍であり、好ましくは1.02〜1.10倍である。1.01倍を下回る場合、エポキシの合成、精製に多大な費用がかかることがあり、また1.13倍を超えた場合、上述同様塩素量による課題が生じることがある。
また、本発明のエポキシ樹脂に含有されている全塩素としては5000ppm以下が好ましく、より好ましくは3000ppm以下、特に好ましくは2000ppm以下である。塩素量による悪影響については前述と同様である。なお、塩素イオン、ナトリウムイオンについては各々5ppm以下が好ましく、より好ましくは3ppm以下である。塩素イオンは先に記載し、いうまでも無いが、ナトリウムイオン等のカチオンも、特にパワーデバイス用途においては非常に重要なファクターとなり、高電圧がかかった際の不良モードの一因となる。
ここで、理論エポキシ当量とは、原料であるフェノール化合物のフェノール性水酸基が過不足なくグリシジル化した時に算出されるエポキシ当量を示す。
また、具体的なエポキシ当量の値としては、Rが全て水素原子の場合、210.0g/eq.〜280.0g/eq.が好ましく、220.0g/eq.〜250.0g/eq.が特に好ましい。エポキシ当量が上記範囲内にあることで、硬化物の耐熱性、電気信頼性に優れたエポキシ樹脂を得ることができる。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂混合物は軟化点を有する樹脂状の形態を有する。ここで、軟化点としては70〜130℃が好ましく、より好ましくは80〜120℃である。置換基Rが全て水素原子である場合は、80〜120℃が好ましく、より好ましくは80〜100℃である。軟化点が低すぎると保管時のブロッキングが問題となり、低温で取り扱いをしないといけない等、課題が多い。逆に軟化点が高すぎる場合、他の樹脂との混練の際に、ハンドリングが悪くなる等の問題が生じることがある。
また、溶融粘度は0.08〜0.35Pa・s(ICI 溶融粘度 150℃ コーンプレート法)、より好ましくは0.08〜0.3Pa・s、特に好ましくは0.08〜0.25Pa・sである。無機材料(フィラー等)を混合して用いる場合、流動性が悪い等の課題が生じる。
【0021】
以下、本発明のエポキシ樹脂混合物の製造法について述べる。
本発明のエポキシ樹脂混合物は、前記式(1)で表される化合物とビフェノールのエポキシ化物を所定の比率で混合しても構わないが、下記式(4)で表されるフェノール化合物(DPPI)とビフェノールの混合物とエピハロヒドリンとの反応によって合成してもよい。
【0022】
【化3】
【0023】
(式中、Rは前記式(1)のRと同じ意味を示す。)
【0024】
前記式(4)で表されるフェノール化合物(DPPI)はフェノールフタレイン誘導体とアミノベンゼン誘導体から合成される(例えば、日本国特開2005−290378号公報が挙げられる)。
【0025】
フェノールフタレイン誘導体としてはフタル酸と該当する各種フェノール類で合成が可能であることは公知であり、使用するフェノール類がフェノールであればフェノールフタレインが、クレゾールであればクレゾールフタレインが得られる。
ここで、前記各種フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、キシレノール、メチルブチルフェノールなどが挙げられる。本発明においてはフェノールフタレインの使用が好ましい。
また、前記合成により得られるフェノールフタレイン誘導体としては、例えば下記式(2)で表される構造が挙げられる。
【0026】
【化4】
【0027】
(式中、Rは前記式(1)のRと同じ意味を示す。)
【0028】
アミノベンゼン誘導体としては、下記式(3)で表される構造のものが挙げられる。
【0029】
【化5】
【0030】
(式中、Rは前記式(1)のRと同じ意味を示す。)
【0031】
フェノール化合物(DPPI)における残留フェノールフタレイン誘導体の量は2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下、さら好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.1%以下である(高速液体クロマトグラフィーで測定)。このフェノールフタレイン誘導体が残留する場合、反応時に着色が大きくなる傾向がある。アミノベンゼン誘導体も同様である。また残留する鉄分(ICP発光分析)量も着色に起因するファクターの一つである。残留鉄分は100ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下であり、特に好ましくは10ppm以下である。また本体であるフェノール化合物(DPPI)は95%以上、より好ましくは98%以上の純度が望まれる。
残存フェノールフタレイン誘導体の量はDPPIの精製(洗浄、再結晶、再沈殿等)によって調整可能である。
また、本発明において使用されるDPPIは、軟化点が100℃以上であることが好ましい。軟化点が100℃以上であることで、生成するエポキシ樹脂混合物の耐熱性に寄与する。特に本発明において使用されるDPPIは融点を有することが好ましく、その融点が200℃以上であることが好ましい。
【0032】
本発明に用いるビフェノールは下記式(5)で表される構造を有する。
【0033】
【化6】
【0034】
(式(5)中、複数存在するRは各々独立して存在し、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、kは1〜4の整数を表す。)
前記式(5)で表される構造のビフェノールは、例えば2,2’体、2,4’体、4,4’体等が存在するが、中でも4,4’体のビフェノールが好ましい。
また、純度は95%以上のものが好適に使用できる。
【0035】
以下に、フェノール化合物(DPPI)とビフェノールの混合物とエピハロヒドリンとの反応により本発明のエポキシ樹脂混合物を得る方法について記載する。フェノール化合物(DPPI)とビフェノールの混合物を以下、本発明で用いられるフェノール混合物と記載する。
【0036】
本発明で用いられるフェノール混合物は、フェノール化合物(DPPI)とビフェノールの混合物であればよいが、フェノール化合物(DPPI)とビフェノールの混合比率は、モル比率で、フェノール化合物(DPPI):ビフェノールが5:5〜9:1であることが好ましく、6:4〜8:2であることがより好ましい。また、重量比で、フェノール化合物(DPPI):ビフェノールが6:4〜9:1であることが好ましく、7:3〜8.6:1.4であることがより好ましい。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂混合物の合成法に使用するエピハロヒドリンとしては工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は本発明で用いられるフェノール混合物の水酸基1モルに対し通常3.0〜15モル、好ましくは3.0〜10モル、より好ましくは3.5〜8.5モルであり、特に好ましくは4.0〜6.0モルである。
3.0モルを下回るとエポキシ当量が大きくなることがあり、また、できたエポキシ樹脂の作業性が悪くなる可能性がある。15モルを超えると溶剤量が多量となるため、廃棄物、生産性の面で好ましくない。
【0038】
上記反応においてはアルカリ金属水酸化物が使用できる。上記反応において使用しうるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形物を利用してもよく、その水溶液を使用してもよいが、本発明においては特に、溶解性、ハンドリングの面からフレーク状に成型された固形物の使用が好ましい。
アルカリ金属水酸化物の使用量は原料の本発明で用いられるフェノール混合物の水酸基1モルに対して通常0.90〜1.5モルであり、好ましくは0.95〜1.25モル、より好ましくは0.99〜1.15モルである。
【0039】
反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加してもかまわない。4級アンモニウム塩の使用量としては原料フェノール混合物の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
【0040】
本反応においては上記エピハロヒドリンに加え、非極性プロトン溶媒(ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ジメチルイミダゾリジノン等)や、炭素数1〜5のアルコールを併用することが好ましい。炭素数1〜5のアルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類である。非極性プロトン溶媒もしくは炭素数1〜5のアルコールの使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50重量%、好ましくは4〜25重量%である。また、共沸脱水等の手法により、系内の水分をコントロールしながらエポキシ化を行ってもかまわない。
系中の水分が多い場合には、得られたエポキシ樹脂混合物の硬化物において電気信頼性が悪くなることがあり、水分は5%以下にコントロールして合成することが好ましい。また、非極性プロトン溶媒を使用してエポキシ樹脂を得た際には、電気信頼性に優れるエポキシ樹脂の硬化物が得られるため、非極性プロトン溶媒は好適に使用できる。
【0041】
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。特に本発明においては、より高純度なエポキシ化のために60℃以上が好ましく、還流条件に近い条件での反応が特に好ましい。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間、特に好ましくは1〜3時間である。反応時間が短いと反応が進みきらず、反応時間が長くなると副生成物ができることがある。
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂混合物とするために、回収したエポキシ化物を炭素数4〜7のケトン化合物(たとえば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。)を溶剤として溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した本発明で用いられるフェノール混合物の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0042】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂混合物が得られる。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂混合物はアモルファス状の樹脂状もしくは半晶状の樹脂状を示す。本発明のエポキシ樹脂混合物においては、半晶状の樹脂状であると、低粘度となり、機械強度、密着性が高いものとなるため好ましい。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂混合物においては前記式(1)で表される化合物とビスグリシジルオキシビフェニル(ただし、置換基をその芳香環に有する場合、置換基の数は4以下、炭素数は4以下である。)が同時に存在することになるが、上記のような好ましい条件での反応においては、上記式()で表されるフェノール樹脂構造とビフェノール構造がエピハロヒドリンによってつながった構造も存在する。そのため、フェノール混合物を同時にエポキシ化を行うことにより、前記構造が生成し、比較的粘度が低くなりやすく、本発明の目的とする流動性の向上において好ましい。
また、ビフェノールのみをエポキシ化した場合と比較して、このような製法で得られたエポキシ樹脂混合物は結晶性が低いため、精製が容易に行えることから残存塩素量が少ないエポキシ樹脂混合物を得ることが容易となる。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂混合物と硬化触媒(硬化促進剤)及び/または硬化剤を含有する。また任意成分として他のエポキシ樹脂を含有することは好ましい。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂混合物以外に他種のエポキシ樹脂を含有してもかまわない。全エポキシ樹脂中、本発明のエポキシ樹脂混合物の割合は20重量%以上が好ましく、より好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上である。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂混合物と併用し得る他のエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン又は1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類並びにアルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明に使用できる硬化触媒の具体例としてはトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2'−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−ウンデシルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−エチル,4−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等の各種の複素環式化合物類、及び、それら複素環式化合物類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、ジシアンジアミド等のアミド類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらのテトラフェニルボレート、フェノールノボラック等の塩類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルプロピルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルセチルアンモニウムヒドロキシド、トリオクチルメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムアセテート、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリ(トルイル)ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類やホスホニウム化合物、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト、カルボン酸金属塩(2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ミスチリン酸などの亜鉛塩、スズ塩、ジルコニウム塩)やリン酸エステル金属(オクチルリン酸、ステアリルリン酸等の亜鉛塩)、アルコキシ金属塩(トリブチルアルミニウム、テトラプロピルジルコニウム等)、アセチルアセトン塩(アセチルアセトンジルコニウムキレート、アセチルアセトンチタンキレート等)等の金属化合物等、が挙げられる。本発明においては特にホスホニウム塩やアンモニウム塩、金属化合物類が硬化時の着色やその変化の面において好ましい。また4級塩を使用する場合、ハロゲンとの塩はその硬化物にハロゲンを残すことがある。
硬化促進剤は、エポキシ樹脂100に対して0.01〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤を含有することが好ましい。例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール樹脂、カルボン酸系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂などの含窒素化合物(アミン、アミド化合物);無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、などの酸無水物;各種アルコール、カルビノール変性シリコーン、と前述の酸無水物との付加反応により得られるカルボン酸樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン又は1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物などのフェノール樹脂;イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明においては特に電子材料用途に使用するため、前述のフェノール樹脂が好ましい。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物における硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られないことがある。
【0051】
なお、他成分としてシアナートエステル化合物の使用は好ましい。シアナートエステル化合物は単独での硬化反応に加え、エポキシ樹脂との反応により、より架橋密度の高い、耐熱性の硬化物とすることができる。シアナートエステル樹脂としては、例えば、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)エタン、これらの誘導体、芳香族シアネートエステル化合物等が挙げられる。また、例えば前述の硬化剤に記載したような、各種フェノール樹脂と青酸もしくはその塩類との反応により合成も可能である。本発明においては特に2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンやその誘導体(部分重合物等)のように分子内にベンジル位のメチレン構造を有しない構造のものが好ましく、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1未満では難燃性が不十分であり、0.6を超えると硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0053】
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、エポキシ樹脂と硬化剤の合計100重量部に対して通常0.05〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら充填材は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中において、用途にもよるが一般に0〜95重量%を占める量が用いられ、特に封止材の用途で使用する場合、好ましくは50〜95重量%、特に好ましくは65〜95重量%の範囲でパッケージの形状により使い分けることが好ましい。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、酸化防止剤、光安定剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。特にカップリング剤についてはエポキシ基を有するカップリング材、もしくはチオールを有するカップリング剤の添加が好ましい。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えばエポキシ樹脂成分と硬化剤成分並びに必要により硬化促進剤、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填材および配合剤等とを必要に応じて押出機、ニーダー、ロール、プラネタリーミキサー等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、得られたエポキシ樹脂組成物が液状である場合はポッティングやキャスティングにより、該組成物を基材に含浸したり、金型に流し込み注型したりして、加熱により硬化させる。また得られたエポキシ樹脂組成物が固形の場合、溶融後注型、あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに加熱により硬化させる。硬化温度、時間としては80〜200℃で2〜10時間である。硬化方法としては高温で一気に硬化させることもできるが、ステップワイズに昇温し、硬化反応を進めることが好ましい。具体的には80〜150℃の間で初期硬化を行い、100℃〜200℃の間で後硬化を行う。硬化の段階としては2〜8段階に分けて昇温するのが好ましく、より好ましくは2〜4段階である。
【0056】
また本発明のエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、硬化性樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。
【0057】
また本発明のエポキシ樹脂組成物をフィルム型封止用組成物として使用することもできる。このようなフィルム型樹脂組成物を得る場合は、本発明の硬化性樹脂組成物を剥離フィルム上に前記ワニスを塗布し加熱下で溶剤を除去、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤を得る。このシート状接着剤は、多層基板などにおける層間絶縁層、光半導体の一括フィルム封止として使用することが出来る。
【0058】
これら組成物の具体的な用途としては、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む、封止材の他、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物)や、レジスト用硬化剤としてアクリル酸エステル系樹脂等、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。本発明においては。電子材料用の絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む、封止材の他、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物)への使用が特に好ましい。
【0059】
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
【0060】
封止剤、基板としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)およびパッケージ基板などを挙げることができる。またネットワーク基板や、モジュール基板といった機能性が求められる基板用途へも好適である。
【0061】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に半導体装置に使用されることが好ましい。
半導体装置とは前述に挙げるICパッケージ群となる。
本発明の半導体装置は、パッケージ基板や、ダイなどの支持体に設置したシリコンチップを本発明のエポキシ樹脂組成物で封止することで得られる。成型温度、成型方法については前述のとおりである。
【実施例】
【0062】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
エポキシ当量: JIS K 7236 (ISO 3001) に準拠
ICI溶融粘度: JIS K 7117−2 (ISO 3219) に準拠
軟化点: JIS K 7234 に準拠
全塩素: JIS K 7243−3 (ISO 21672−3) に準拠
塩素イオン: JIS K 7243−1 (ISO 21672−1) に準拠
GPC:
カラム(Shodex KF−603、KF−602x2、KF−601x2)
連結溶離液はテトラヒドロフラン
流速は0.5ml/min.
カラム温度は40℃
検出:RI(示差屈折検出器)
ガラス転移点(Tg):
TMA 熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
測定温度範囲:40℃〜280℃
昇温速度:2℃/分
【0063】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(DPPI1)(前記式()において置換基Rがすべて水素原子の化合物 SABIC PPPBP)137.7部、ビフェノール27.9部、エピクロロヒドリン555部、ジメチルスルホキシド139部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後水洗を行い、油層からロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液20部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂混合物(EP1)を210部得た。得られたエポキシ樹脂混合物のエポキシ当量は226g/eq.、軟化点が92℃、ICI溶融粘度0.15Pa・s(150℃)、全塩素量505ppm、加水分解性塩素480ppm、塩素イオン0.1ppm、ナトリウムイオン0.1ppmであった。また前記式(1)の化合物は72面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物は16面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=4.5、モル比率で2.64である。他構造については前記式()の化合物同士、ビフェノール同士、前記式()とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0064】
合成例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(DPPI1)(前記式()において置換基Rがすべて水素原子の化合物 SABIC PPPBP)295部、エピクロロヒドリン971部、ジメチルスルホキシド165部を加え、水浴を45℃にまで昇温した。内温が40℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム66部を90分かけて分割添加した後、更に45℃2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後水洗を行い、油層からロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン760部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液30部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで前記式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂(EP4)を353部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は267g/eq.、軟化点が99℃、ICI溶融粘度0.91Pa・s(150℃)、全塩素量540ppm、加水分解性塩素430ppm、塩素イオン0.1ppm、ナトリウムイオン0.1ppmであった。また前記式(1)の構造の化合物は88面積%(GPC)、残り12面積%は前記式()の構造の化合物同士が結合した化合物を含むものであった。
【0065】
実施例2および比較例1、2
実施例1で得られた本発明のエポキシ樹脂混合物(EP1)と比較用のエポキシ樹脂(EP2;フェノール-ビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂 日本化薬株式会社製 NC−3000、EP3;トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂 日本化薬株式会社製 EPPN−502H)、を使用し、エポキシ樹脂と硬化剤(フェノールノボラック(明和化成工業(株)製 H−1)またはフェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製 ミレックスXLC−3L))を等当量で配合し、硬化触媒(硬化促進剤、トリフェニルホスフィン(北興化学(株)製 TPP))と必要に応じてフィラー(溶融シリカ 瀧森製 MSR−2122 表中のフィラー量%はエポキシ樹脂組成物全体に対する割合)を入れ、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化された本発明及び比較用のエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。また、硬化物の物性の評価項目によって、使用する硬化剤種は下記表1の通りとし、硬化促進剤の使用量は、耐熱性及び収縮率の評価に使用する試料ではエポキシ樹脂重量に対し1%とし、難燃性の評価に使用する試料ではエポキシ樹脂重量に対し2%とした。
【0066】
<硬化収縮>
JISK−6911(成型収縮率)に準拠
<難燃性試験>
・難燃性の判定:UL94に準拠して行った。ただし、サンプルサイズは幅12.5mm×長さ150mmとし、厚さは0.8mmで試験を行った。
・残炎時間:5個1組のサンプルに10回接炎したあとの残炎時間の合計
【0067】
【表1】
【0068】
比較例1の硬化物は難燃性に優れるが、耐熱性が低い。比較例2の硬化物においては耐熱性は高いが難燃性がなく、難燃性試験において全燃してしまうという結果であるのに対し、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物においては高い耐熱性と難燃性を両立させることができる。また硬化時の収縮率もよく寸法安定性に優れることがわかる。
【0069】
実施例3および比較例3
実施例1で得られた本発明のエポキシ樹脂混合物(EP1)と合成例1で得られた比較用のエポキシ樹脂(EP4)を使用し、エポキシ樹脂と硬化剤(フェノールノボラック(明和化成工業(株)製 H−1)またはフェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製 ミレックスXLC−3L))を等当量で配合し、硬化触媒(硬化促進剤、トリフェニルホスフィン(北興化学(株)製 TPP))と必要に応じてフィラー(溶融シリカ 瀧森製 MSR−2122 表中のフィラー量%はエポキシ樹脂全体に対する割合)を入れ、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化された本発明及び比較用のエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。また、硬化物の物性の評価項目によって、使用する硬化剤種は下記表2の通りとし、硬化促進剤の使用量は、耐熱性、機械強度及び密着性の評価に使用する試料ではエポキシ樹脂重量に対し1%とし、難燃性の評価に使用する試料ではエポキシ樹脂重量に対し2%とした。
【0070】
<TMA測定条件>
・熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
・測定温度範囲:40℃〜280℃
・昇温速度:2℃/分
<曲げ試験>
・JIS K 6911に準拠 室温と120℃でテストを行った。
<ピール強度>
・180℃剥離試験 JIS K−6854−2に準拠 圧延銅箔使用
<難燃性試験>
・難燃性の判定:UL94に準拠して行った。ただし、サンプルサイズは幅12.5mm×長さ150mmとし、厚さは0.8mmで試験を行った。
・残炎時間:5個1組のサンプルに10回接炎したあとの残炎時間の合計
【0071】
【表2】
【0072】
本発明のエポキシ樹脂組成物は非常に低い溶融粘度を有し、かつその硬化物は前記式(1)の構造に由来する耐熱性を維持する。さらには難燃性において残炎時間が短くなることから難燃性の向上、また曲げ強度、ピール強度が比較用エポキシ樹脂組成物の硬化物と比較して良好であることが明らかである。
【0073】
合成例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコにフェノール化合物(DPPI1)(前記式()において置換基Rがすべて水素原子の化合物 SABIC PPPBP)256部、エピクロロヒドリン971部、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド3部を加え、水浴を70℃にまで昇温した。ここに49%水酸化ナトリウム水溶液100部を90分かけて滴下した後、更に70℃で4時間後反応を行った。反応終了後水洗を行い、油層からロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去することで前記式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂(EP5)を290部得た。得られた前記式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は297g/eq.、軟化点が95℃、ICI溶融粘度0.70Pa・s(150℃)、全塩素量10450ppm、加水分解性塩素9700ppmであった。
【0074】
実施例4および比較例4
実施例1で得られた本発明のエポキシ樹脂混合物(EP1)と合成例2で得られた比較用のエポキシ樹脂(EP5)用い、エポキシ樹脂と硬化剤(フェノールノボラック(明和化成工業(株)製 H−1))を等当量で配合し、硬化触媒(硬化促進剤)としてトリフェニルフォスフィン(北興化学(株)製 TPP)をエポキシ樹脂の重量に対し、1%添加し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
【0075】
<TMA測定条件>
・熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
・測定温度範囲:40℃〜280℃
・昇温速度:2℃/分
【0076】
【表3】
【0077】
本発明のエポキシ樹脂組成物は従来公知のエポキシ樹脂組成物に比べて大幅に粘度が低く、その硬化物においても耐熱性に優れることが確認できた。
【0078】
実施例5
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコにビフェノール100部、エピクロロヒドリン971部、メタノール97部を加え、水浴を70℃にまで昇温した。ここにフレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間後反応を行った。反応後、析出したエポキシ樹脂と塩化ナトリウムとの混合物を溶剤類から濾別した。70℃の温水200部で5回洗浄し、乾燥することで、前記式(5)で表されるビフェノール型のエポキシ樹脂(EP7)を121部得た。
得られたエポキシ樹脂(EP7)と合成例1で得られたエポキシ樹脂(EP4)を、それぞれ20部と80部の割合でテトラヒドロフラン300部に加え、そのままロータリーエバポレータにて180℃で減圧下にテトラヒドロフランを留去することで本発明のエポキシ樹脂混合物(EP8)を得た。得られたエポキシ樹脂混合物(EP8)は半晶状であり、そのエポキシ当量は247g/eq.、軟化点が95℃、ICI溶融粘度0.18Pa・s(150℃)、全塩素量 1820ppm、加水分解性塩素 1670ppmであった。
【0079】
実施例6、7
前記実施例1で得られたエポキシ樹脂混合物(EP1)及び、実施例5で得られたエポキシ樹脂(EP8)を使用し、エポキシ樹脂と硬化剤(フェノールアラルキル樹脂(日本化薬(株)製 KAYAHARD GPH−65))を等当量で配合し、硬化触媒(硬化促進剤、トリフェニルホスフィン(北興化学(株)製 TPP)をエポキシ樹脂の重量に対し2%添加)と必要に応じてフィラー(溶融シリカ 瀧森製 MSR−2122 表中のフィラー量%はエポキシ樹脂組成物全体に対する割合)を入れ、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
【0080】
<TMA測定条件>
・熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
・測定温度範囲:40℃〜280℃
・昇温速度:2℃/分
<難燃性試験>
・難燃性の判定:UL94に準拠して行った。ただし、サンプルサイズは幅12.5mm×長さ150mmとし、厚さは0.8mmで試験を行った。
・残炎時間:5個1組のサンプルに10回接炎したあとの残炎時間の合計
【0081】
【表4】
【0082】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は難燃性の向上、また耐熱性が良好であることが明らかである。
【0083】
以上の結果から、本発明のエポキシ樹脂混合物は流動性に優れ、さらにはその硬化物は難燃性・耐熱性に特に優れることが明らかであり、高機能化が求められる半導体封止材、また高フィラー充填化が求められる薄膜基板材料(層間絶縁膜を含む)に有用であることがわかる。
【0084】
実施例8
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)137.7部、ビフェノール27.9部、エピクロロヒドリン470部、ジメチルスルホキシド120部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂混合物(EP13)を205部得た。得られたエポキシ樹脂混合物のエポキシ当量は236g/eq.、軟化点が92℃、ICI溶融粘度0.15Pa・s(150℃)、全塩素量 309ppm、加水分解性塩素 278ppm、塩素イオン0.1ppm、ナトリウムイオン0.1ppmであった。また前記式(1)の化合物の含有割合は65面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物の含有割合は15面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=4.3、モル比率で2.55である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0085】
実施例9
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)125.7部、ビフェノール33.6部、エピクロロヒドリン463部、ジメチルスルホキシド116部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂混合物(EP14)を195部得た。得られたエポキシ樹脂混合物のエポキシ当量は225g/eq.、軟化点が81℃、ICI溶融粘度0.09Pa・s(150℃)、全塩素量 377ppm、加水分解性塩素 281ppm、塩素イオン0.1ppm、ナトリウムイオン0.1ppmであった。また前記式(1)の化合物の含有割合は63面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物の含有割合は19面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=3.3、モル比率で1.96である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0086】
実施例10
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)151.5部、ビフェノール21.4部、エピクロロヒドリン463部、ジメチルスルホキシド116部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂混合物(EP15)を210部得た。得られたエポキシ樹脂混合物のエポキシ当量は248g/eq.、軟化点が83℃、ICI溶融粘度0.31Pa・s(150℃)、全塩素量 410ppm、加水分解性塩素 299ppm、塩素イオン0.1ppm、ナトリウムイオン0.1ppmであった。また前記式(1)の化合物の含有割合は72面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物の含有割合は12面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=6.0、モル比率で3.56である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0087】
実施例11〜13および比較例8〜10
実施例8〜10で得られたエポキシ樹脂混合物(EP13、14、15)、比較用のエポキシ樹脂EP10〜12(EP10: 日本化薬製 オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂 EOCN-1020-70、EP11: 三菱化学製 ビフェニルタイプエポキシ樹脂 YX-4000H、EP12: 日本化薬製 ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂 NC-3000)を使用し、エポキシ樹脂と硬化剤(フェノールノボラック:明和化成工業製 H-1)を等当量で配合し、硬化促進剤としてトリフェニルフォスフィンをエポキシ樹脂の重量に対し、1%添加し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
【0088】
<弾性率・耐熱性(DMA)>
動的粘弾性測定器:TA−instruments、DMA−2980
測定温度範囲:−30〜280℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)
Tg:Tan−δのピーク点をTgとした。
【0089】
【表5】
【0090】
表5より、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、従来用いられているエポキシ樹脂組成物の硬化物に比較して高い耐熱性を保持しているにもかかわらず、同DMAで測定した際の250℃での弾性率は大幅に低減されていることがわかる。
【0091】
実施例14〜16及び比較例11
実施例11〜13及び比較例10において、硬化剤をビフェニルタイプフェノールアラルキル樹脂(日本化薬製 KAYAHARD GPH-65)に変更した以外は同様の操作を行った。
【0092】
【表6】
【0093】
表6より、硬化剤を変えても本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物においてより低い弾性率を示すことが確認できた。
【0094】
実施例17よび比較例12
実施例8で得られたエポキシ樹脂混合物(EP13)と比較用のエポキシ樹脂(EP16;トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂 日本化薬株式会社製 EPPN−501H)、を使用し、各々のエポキシ樹脂と硬化剤(ビフェニルタイプフェノールアラルキル樹脂: 軟化点73℃ 日本国特開2003-113225 実施例1に記載の手法を用いて合成 水酸基当量 207g/eq.)を等当量で配合し、硬化促進剤としてトリ-p-トリルフォスフィン(エポキシ樹脂重量に対し、1%)を添加し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得、下記の測定を行なった。
【0095】
<TMA測定条件>
熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
測定温度範囲:40℃〜280℃
昇温速度:2℃/分
【0096】
<DMA測定条件>
動的粘弾性測定器:TA−instruments製、DMA−2980
測定温度範囲:−30℃〜280℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)。
解析条件Tg:DMA測定に於けるTanδのピーク点(tanδMAX)をTgとした。
【0097】
<耐熱分解特性測定条件>
得られた試験片の一部をサイクルミルにより粉砕し、粉状とし、篩にかけ100μmメッシュ通過、75μmメッシュオンの粒径にそろえ、5-10mgのサンプルをとり、TG-DTAで熱重量減少温度を確認した。5%の重量減少温度を指標とした。
TG−DTAにて測定(Td5)
測定サンプル :粉状 (100μmメッシュ通過、 75μmメッシュオン) 5-10mg
測定条件 : 昇温速度 10℃/ min Air flow 200ml/min5%重量減少温度を測定した。
【0098】
【表7】
【0099】
表7より、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、高い耐熱性だけでなく、高い熱分解特性を有することがわかる。
【0100】
実施例18
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)138部、ビフェノール28部、エピクロロヒドリン463部、ジメチルスルホキシド115部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂(EP17)を189部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は241g/eq.、軟化点が85.3℃、ICI溶融粘度0.15Pa・s(150℃)、全塩素量 460ppm、加水分解性塩素 394ppm、塩素イオン0.6ppm、ナトリウムイオン0.7ppmであった。また前記式(1)の構造は69.5面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物は15.0面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=4.6、モル比率2.73である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0101】
実施例19
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)126部、ビフェノール34部、エピクロロヒドリン463部、ジメチルスルホキシド116部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム43部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂(EP18)を190部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は235g/eq.、軟化点が93.0℃、ICI溶融粘度0.09Pa・s(150℃)、全塩素量 467ppm、加水分解性塩素 388ppm、塩素イオン0.3ppm、ナトリウムイオン0.4ppmであった。また前記式(1)の構造は65.0面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物は18.6面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=3.5、モル比率2.08である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0102】
比較例13
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)102部、ビフェノール45部、エピクロロヒドリン462部、ジメチルスルホキシド116部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂(EP19)を177部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は220g/eq.、軟化点が109℃、ICI溶融粘度0.03Pa・s(150℃)、全塩素量 457ppm、加水分解性塩素 401ppm、塩素イオン0.9ppm、ナトリウムイオン0.8ppmであった。また前記式(1)の構造は58.0面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物は26.8面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=2.2、モル比率1.31である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を主として含むものであった。
【0103】
実施例20〜21、比較例14
実施例18、19及び比較例13で得られたエポキシ樹脂混合物(EP17、EP18、EP19)を使用し、硬化剤としてビフェニルタイプフェノールアラルキル樹脂(日本化薬製 KAYAHARD GPH-65)を等当量で配合し、硬化促進剤(トリフェニルフォスフィン 北興化学製)をエポキシ樹脂の重量に対し1%添加し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
この評価用試験片を用いて、収縮率と耐熱性を評価した。収縮率は得られた成型物の金型との差を測定することによって成型収縮の大きさを確認した。耐熱性は以下の要領で測定した。
【0104】
<TMA測定条件>
熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
測定温度範囲:40℃〜280℃
昇温速度:2℃/分
<硬化収縮>
JISK−6911(成型収縮率)に準拠
【0105】
【表8】
【0106】
表8より、本発明のエポキシ樹脂混合物に比べて比較用のエポキシ樹脂混合物を使用した硬化物はその成型収縮が大きくなっていることを確認した。
【0107】
実施例22
前述の実施例6の組成の本発明のエポキシ樹脂組成物において耐半田クラック性の試験を行った。表面が金属の銅製の図1に示す96PinQFP(チップサイズ:7×7×厚み0.1mm、パッケージサイズ:14×14×厚み1.35mm)リードフレーム(使用前にアセトンで十分に表面をふき、汚れを取った物を使用)耐半田クラック性評価用リードフレームとし、リードフレームをトランスファー成型金型にセットし、上記同様にしてタブレット化したエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、耐半田クラック性の試験評価用試験片を3サンプル得た(図2)。得られた3つの試験片について60℃/85%RHの相対湿度に設定された恒温槽中に5時間放置し吸湿させ、さらにこの吸湿後、280℃×10秒間の半田リフロー試験を行った。この時の熱衝撃によって生じるパッケージクラックについて目視によってクラックの発生を確認したが、いずれのサンプルにもクラックは見当たらなかった。
【0108】
実施例23、24
実施例18、19で得られた本発明のエポキシ樹脂混合物(EP18、19)と硬化剤(フェノールノボラック(明和化成工業(株)製 H−1))を等当量で配合し、硬化触媒(硬化促進剤)としてトリフェニルフォスフィン(北興化学(株)製 TPP)をエポキシ樹脂の重量に対し、1%添加し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。評価結果を表9に示す。
【0109】
<TMA測定条件>
耐熱性・寸法安定性(線膨張変化率)
熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
測定温度範囲:40℃〜280℃
昇温速度:2℃/分
【0110】
<DMA測定条件>
動的粘弾性測定器:TA−instruments製、DMA−2980
測定温度範囲:−30℃〜280℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)。
解析条件Tg:DMA測定に於けるTanδのピーク点(tanδMAX)をTgとした。
<誘電率、誘電正接>
空洞共振器を使用し、関東電子応用化学製 1GHz用の治具を用いて測定(0.5mmx70mmに切り出したものを使用)
<曲げ試験>
・JIS K 6911に準拠 室温で120℃でテストを行った
<ピール強度>
・180℃剥離試験 JIS K−6854−2に準拠 圧延銅箔使用
<吸水・吸湿率>
・85℃85%の高温高湿槽にて24時間放置後の重量増加%で評価
<KIC:破壊強靭性試験>
・コンパクテンション ASTME−399に準拠
【0111】
【表9】
【0112】
本結果から、本発明のエポキシ樹脂は高い耐熱性と共に、高い機械的特性、低い線膨張、また耐熱性のレベルに対し高い耐湿・耐水特性や優れた誘電特性を有する硬化物を与えることがわかる。
【0113】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2013年9月10日付で出願された日本国特許出願(特願2013−186859)及び2014年7月14日付で出願された日本国特許出願(特願2014−143791)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のエポキシ樹脂混合物は、その硬化物が耐熱性、吸水特性及び難燃性に優れた特性を有するため電気電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である。

図1
図2