【実施例】
【0062】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
エポキシ当量: JIS K 7236 (ISO 3001) に準拠
ICI溶融粘度: JIS K 7117−2 (ISO 3219) に準拠
軟化点: JIS K 7234 に準拠
全塩素: JIS K 7243−3 (ISO 21672−3) に準拠
塩素イオン: JIS K 7243−1 (ISO 21672−1) に準拠
GPC:
カラム(Shodex KF−603、KF−602x2、KF−601x2)
連結溶離液はテトラヒドロフラン
流速は0.5ml/min.
カラム温度は40℃
検出:RI(示差屈折検出器)
ガラス転移点(Tg):
TMA 熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
測定温度範囲:40℃〜280℃
昇温速度:2℃/分
【0063】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(DPPI1)(前記式(
4)において置換基Rがすべて水素原子の化合物 SABIC
PPPBP)137.7部、ビフェノール27.9部、エピクロロヒドリン555部、ジメチルスルホキシド139部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後水洗を行い、油層からロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液20部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂混合物(EP1)を210部得た。得られたエポキシ樹脂混合物のエポキシ当量は226g/eq.、軟化点が92℃、ICI溶融粘度0.15Pa・s(150℃)、全塩素量505ppm、加水分解性塩素480ppm、塩素イオン0.1ppm、ナトリウムイオン0.1ppmであった。また前記式(1)の化合物は72面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物は16面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=4.5、モル比率で2.64である。他構造については前記式(
4)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(
4)とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0064】
合成例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(DPPI1)(前記式(
4)において置換基Rがすべて水素原子の化合物 SABIC
PPPBP)295部、エピクロロヒドリン971部、ジメチルスルホキシド165部を加え、水浴を45℃にまで昇温した。内温が40℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム66部を90分かけて分割添加した後、更に45℃2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後水洗を行い、油層からロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン760部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液30部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで前記式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂(EP4)を353部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は267g/eq.、軟化点が99℃、ICI溶融粘度0.91Pa・s(150℃)、全塩素量540ppm、加水分解性塩素430ppm、塩素イオン0.1ppm、ナトリウムイオン0.1ppmであった。また前記式(1)の構造の化合物は88面積%(GPC)、残り12面積%は前記式(
4)の構造の化合物同士が結合した化合物を含むものであった。
【0065】
実施例2および比較例1、2
実施例1で得られた本発明のエポキシ樹脂混合物(EP1)と比較用のエポキシ樹脂(EP2;フェノール-ビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂 日本化薬株式会社製 NC−3000、EP3;トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂 日本化薬株式会社製 EPPN−502H)、を使用し、エポキシ樹脂と硬化剤(フェノールノボラック(明和化成工業(株)製 H−1)またはフェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製 ミレックスXLC−3L))を等当量で配合し、硬化触媒(硬化促進剤、トリフェニルホスフィン(北興化学(株)製 TPP))と必要に応じてフィラー(溶融シリカ 瀧森製 MSR−2122 表中のフィラー量%はエポキシ樹脂組成物全体に対する割合)を入れ、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化された本発明及び比較用のエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。また、硬化物の物性の評価項目によって、使用する硬化剤種は下記表1の通りとし、硬化促進剤の使用量は、耐熱性及び収縮率の評価に使用する試料ではエポキシ樹脂重量に対し1%とし、難燃性の評価に使用する試料ではエポキシ樹脂重量に対し2%とした。
【0066】
<硬化収縮>
JISK−6911(成型収縮率)に準拠
<難燃性試験>
・難燃性の判定:UL94に準拠して行った。ただし、サンプルサイズは幅12.5mm×長さ150mmとし、厚さは0.8mmで試験を行った。
・残炎時間:5個1組のサンプルに10回接炎したあとの残炎時間の合計
【0067】
【表1】
【0068】
比較例1の硬化物は難燃性に優れるが、耐熱性が低い。比較例2の硬化物においては耐熱性は高いが難燃性がなく、難燃性試験において全燃してしまうという結果であるのに対し、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物においては高い耐熱性と難燃性を両立させることができる。また硬化時の収縮率もよく寸法安定性に優れることがわかる。
【0069】
実施例3および比較例3
実施例1で得られた本発明のエポキシ樹脂混合物(EP1)と合成例1で得られた比較用のエポキシ樹脂(EP4)を使用し、エポキシ樹脂と硬化剤(フェノールノボラック(明和化成工業(株)製 H−1)またはフェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製 ミレックスXLC−3L))を等当量で配合し、硬化触媒(硬化促進剤、トリフェニルホスフィン(北興化学(株)製 TPP))と必要に応じてフィラー(溶融シリカ 瀧森製 MSR−2122 表中のフィラー量%はエポキシ樹脂全体に対する割合)を入れ、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化された本発明及び比較用のエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。また、硬化物の物性の評価項目によって、使用する硬化剤種は下記表2の通りとし、硬化促進剤の使用量は、耐熱性、機械強度及び密着性の評価に使用する試料ではエポキシ樹脂重量に対し1%とし、難燃性の評価に使用する試料ではエポキシ樹脂重量に対し2%とした。
【0070】
<TMA測定条件>
・熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
・測定温度範囲:40℃〜280℃
・昇温速度:2℃/分
<曲げ試験>
・JIS K 6911に準拠 室温と120℃でテストを行った。
<ピール強度>
・180℃剥離試験 JIS K−6854−2に準拠 圧延銅箔使用
<難燃性試験>
・難燃性の判定:UL94に準拠して行った。ただし、サンプルサイズは幅12.5mm×長さ150mmとし、厚さは0.8mmで試験を行った。
・残炎時間:5個1組のサンプルに10回接炎したあとの残炎時間の合計
【0071】
【表2】
【0072】
本発明のエポキシ樹脂組成物は非常に低い溶融粘度を有し、かつその硬化物は前記式(1)の構造に由来する耐熱性を維持する。さらには難燃性において残炎時間が短くなることから難燃性の向上、また曲げ強度、ピール強度が比較用エポキシ樹脂組成物の硬化物と比較して良好であることが明らかである。
【0073】
合成例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコにフェノール化合物(DPPI1)(前記式(
4)において置換基Rがすべて水素原子の化合物 SABIC PPPB
P)256部、エピクロロヒドリン971部、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド3部を加え、水浴を70℃にまで昇温した。ここに49%水酸化ナトリウム水溶液100部を90分かけて滴下した後、更に70℃で4時間後反応を行った。反応終了後水洗を行い、油層からロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去することで前記式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂(EP5)を290部得た。得られた前記式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は297g/eq.、軟化点が95℃、ICI溶融粘度0.70Pa・s(150℃)、全塩素量10450ppm、加水分解性塩素9700ppmであった。
【0074】
実施例4および比較例4
実施例1で得られた本発明のエポキシ樹脂混合物(EP1)と合成例2で得られた比較用のエポキシ樹脂(EP5)用い、エポキシ樹脂と硬化剤(フェノールノボラック(明和化成工業(株)製 H−1))を等当量で配合し、硬化触媒(硬化促進剤)としてトリフェニルフォスフィン(北興化学(株)製 TPP)をエポキシ樹脂の重量に対し、1%添加し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
【0075】
<TMA測定条件>
・熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
・測定温度範囲:40℃〜280℃
・昇温速度:2℃/分
【0076】
【表3】
【0077】
本発明のエポキシ樹脂組成物は従来公知のエポキシ樹脂組成物に比べて大幅に粘度が低く、その硬化物においても耐熱性に優れることが確認できた。
【0078】
実施例5
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコにビフェノール100部、エピクロロヒドリン971部、メタノール97部を加え、水浴を70℃にまで昇温した。ここにフレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間後反応を行った。反応後、析出したエポキシ樹脂と塩化ナトリウムとの混合物を溶剤類から濾別した。70℃の温水200部で5回洗浄し、乾燥することで、前記式(5)で表されるビフェノール型のエポキシ樹脂(EP7)を121部得た。
得られたエポキシ樹脂(EP7)と合成例1で得られたエポキシ樹脂(EP4)を、それぞれ20部と80部の割合でテトラヒドロフラン300部に加え、そのままロータリーエバポレータにて180℃で減圧下にテトラヒドロフランを留去することで本発明のエポキシ樹脂混合物(EP8)を得た。得られたエポキシ樹脂混合物(EP8)は半晶状であり、そのエポキシ当量は247g/eq.、軟化点が95℃、ICI溶融粘度0.18Pa・s(150℃)、全塩素量 1820ppm、加水分解性塩素 1670ppmであった。
【0079】
実施例6、7
前記実施例1で得られたエポキシ樹脂混合物(EP1)及び、実施例5で得られたエポキシ樹脂(EP8)を使用し、エポキシ樹脂と硬化剤(フェノールアラルキル樹脂(日本化薬(株)製 KAYAHARD GPH−65))を等当量で配合し、硬化触媒(硬化促進剤、トリフェニルホスフィン(北興化学(株)製 TPP)をエポキシ樹脂の重量に対し2%添加)と必要に応じてフィラー(溶融シリカ 瀧森製 MSR−2122 表中のフィラー量%はエポキシ樹脂組成物全体に対する割合)を入れ、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
【0080】
<TMA測定条件>
・熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
・測定温度範囲:40℃〜280℃
・昇温速度:2℃/分
<難燃性試験>
・難燃性の判定:UL94に準拠して行った。ただし、サンプルサイズは幅12.5mm×長さ150mmとし、厚さは0.8mmで試験を行った。
・残炎時間:5個1組のサンプルに10回接炎したあとの残炎時間の合計
【0081】
【表4】
【0082】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は難燃性の向上、また耐熱性が良好であることが明らかである。
【0083】
以上の結果から、本発明のエポキシ樹脂混合物は流動性に優れ、さらにはその硬化物は難燃性・耐熱性に特に優れることが明らかであり、高機能化が求められる半導体封止材、また高フィラー充填化が求められる薄膜基板材料(層間絶縁膜を含む)に有用であることがわかる。
【0084】
実施例8
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)137.7部、ビフェノール27.9部、エピクロロヒドリン470部、ジメチルスルホキシド120部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂混合物(EP13)を205部得た。得られたエポキシ樹脂混合物のエポキシ当量は236g/eq.、軟化点が92℃、ICI溶融粘度0.15Pa・s(150℃)、全塩素量 309ppm、加水分解性塩素 278ppm、塩素イオン0.1ppm、ナトリウムイオン0.1ppmであった。また前記式(1)の化合物の含有割合は65面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物の含有割合は15面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=4.3、モル比率で2.55である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0085】
実施例9
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)125.7部、ビフェノール33.6部、エピクロロヒドリン463部、ジメチルスルホキシド116部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂混合物(EP14)を195部得た。得られたエポキシ樹脂混合物のエポキシ当量は225g/eq.、軟化点が81℃、ICI溶融粘度0.09Pa・s(150℃)、全塩素量 377ppm、加水分解性塩素 281ppm、塩素イオン0.1ppm、ナトリウムイオン0.1ppmであった。また前記式(1)の化合物の含有割合は63面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物の含有割合は19面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=3.3、モル比率で1.96である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0086】
実施例10
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)151.5部、ビフェノール21.4部、エピクロロヒドリン463部、ジメチルスルホキシド116部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂混合物(EP15)を210部得た。得られたエポキシ樹脂混合物のエポキシ当量は248g/eq.、軟化点が83℃、ICI溶融粘度0.31Pa・s(150℃)、全塩素量 410ppm、加水分解性塩素 299ppm、塩素イオン0.1ppm、ナトリウムイオン0.1ppmであった。また前記式(1)の化合物の含有割合は72面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物の含有割合は12面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=6.0、モル比率で3.56である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0087】
実施例11〜13および比較例8〜10
実施例8〜10で得られたエポキシ樹脂混合物(EP13、14、15)、比較用のエポキシ樹脂EP10〜12(EP10: 日本化薬製 オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂 EOCN-1020-70、EP11: 三菱化学製 ビフェニルタイプエポキシ樹脂 YX-4000H、EP12: 日本化薬製 ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂 NC-3000)を使用し、エポキシ樹脂と硬化剤(フェノールノボラック:明和化成工業製 H-1)を等当量で配合し、硬化促進剤としてトリフェニルフォスフィンをエポキシ樹脂の重量に対し、1%添加し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
なお、硬化物の物性は以下の要領で測定した。
【0088】
<弾性率・耐熱性(DMA)>
動的粘弾性測定器:TA−instruments、DMA−2980
測定温度範囲:−30〜280℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)
Tg:Tan−δのピーク点をTgとした。
【0089】
【表5】
【0090】
表5より、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、従来用いられているエポキシ樹脂組成物の硬化物に比較して高い耐熱性を保持しているにもかかわらず、同DMAで測定した際の250℃での弾性率は大幅に低減されていることがわかる。
【0091】
実施例14〜16及び比較例11
実施例11〜13及び比較例10において、硬化剤をビフェニルタイプフェノールアラルキル樹脂(日本化薬製 KAYAHARD GPH-65)に変更した以外は同様の操作を行った。
【0092】
【表6】
【0093】
表6より、硬化剤を変えても本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物においてより低い弾性率を示すことが確認できた。
【0094】
実施例17よび比較例12
実施例8で得られたエポキシ樹脂混合物(EP13)と比較用のエポキシ樹脂(EP16;トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂 日本化薬株式会社製 EPPN−501H)、を使用し、各々のエポキシ樹脂と硬化剤(ビフェニルタイプフェノールアラルキル樹脂: 軟化点73℃ 日本国特開2003-113225 実施例1に記載の手法を用いて合成 水酸基当量 207g/eq.)を等当量で配合し、硬化促進剤としてトリ-p-トリルフォスフィン(エポキシ樹脂重量に対し、1%)を添加し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得、下記の測定を行なった。
【0095】
<TMA測定条件>
熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
測定温度範囲:40℃〜280℃
昇温速度:2℃/分
【0096】
<DMA測定条件>
動的粘弾性測定器:TA−instruments製、DMA−2980
測定温度範囲:−30℃〜280℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)。
解析条件Tg:DMA測定に於けるTanδのピーク点(tanδMAX)をTgとした。
【0097】
<耐熱分解特性測定条件>
得られた試験片の一部をサイクルミルにより粉砕し、粉状とし、篩にかけ100μmメッシュ通過、75μmメッシュオンの粒径にそろえ、5-10mgのサンプルをとり、TG-DTAで熱重量減少温度を確認した。5%の重量減少温度を指標とした。
TG−DTAにて測定(Td5)
測定サンプル :粉状 (100μmメッシュ通過、 75μmメッシュオン) 5-10mg
測定条件 : 昇温速度 10℃/ min Air flow 200ml/min5%重量減少温度を測定した。
【0098】
【表7】
【0099】
表7より、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、高い耐熱性だけでなく、高い熱分解特性を有することがわかる。
【0100】
実施例18
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)138部、ビフェノール28部、エピクロロヒドリン463部、ジメチルスルホキシド115部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂(EP17)を189部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は241g/eq.、軟化点が85.3℃、ICI溶融粘度0.15Pa・s(150℃)、全塩素量 460ppm、加水分解性塩素 394ppm、塩素イオン0.6ppm、ナトリウムイオン0.7ppmであった。また前記式(1)の構造は69.5面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物は15.0面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=4.6、モル比率2.73である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0101】
実施例19
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)126部、ビフェノール34部、エピクロロヒドリン463部、ジメチルスルホキシド116部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム43部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂(EP18)を190部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は235g/eq.、軟化点が93.0℃、ICI溶融粘度0.09Pa・s(150℃)、全塩素量 467ppm、加水分解性塩素 388ppm、塩素イオン0.3ppm、ナトリウムイオン0.4ppmであった。また前記式(1)の構造は65.0面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物は18.6面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=3.5、モル比率2.08である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を含むものであった。
【0102】
比較例13
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコにフェノール化合物(イギリス特許1,158,606 example7に記載の手法に準拠して合成 純度99%以上 残留フェノールフタレイン14ppm、鉄分<5ppm、融点289-290℃)102部、ビフェノール45部、エピクロロヒドリン462部、ジメチルスルホキシド116部を加え、水浴を50℃にまで昇温した。内温が45℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム44部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン505部を加え溶解し、水洗により生成した塩化ナトリウム等を除去後、有機層を70℃にまで昇温し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂(EP19)を177部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は220g/eq.、軟化点が109℃、ICI溶融粘度0.03Pa・s(150℃)、全塩素量 457ppm、加水分解性塩素 401ppm、塩素イオン0.9ppm、ナトリウムイオン0.8ppmであった。また前記式(1)の構造は58.0面積%(GPC)、ビフェノールのエポキシ化物は26.8面積%(GPC)であった。さらに、前記式(1)の化合物(a)とビフェノールのエポキシ化物(b)は重量比で(a)/(b)=2.2、モル比率1.31である。他構造については前記式(1)の化合物同士、ビフェノール同士、前記式(1)の化合物とビフェノールが混在して結合した化合物を主として含むものであった。
【0103】
実施例20〜21、比較例14
実施例18、19及び比較例13で得られたエポキシ樹脂混合物(EP17、EP18、EP19)を使用し、硬化剤としてビフェニルタイプフェノールアラルキル樹脂(日本化薬製 KAYAHARD GPH-65)を等当量で配合し、硬化促進剤(トリフェニルフォスフィン 北興化学製)をエポキシ樹脂の重量に対し1%添加し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
この評価用試験片を用いて、収縮率と耐熱性を評価した。収縮率は得られた成型物の金型との差を測定することによって成型収縮の大きさを確認した。耐熱性は以下の要領で測定した。
【0104】
<TMA測定条件>
熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
測定温度範囲:40℃〜280℃
昇温速度:2℃/分
<硬化収縮>
JISK−6911(成型収縮率)に準拠
【0105】
【表8】
【0106】
表8より、本発明のエポキシ樹脂混合物に比べて比較用のエポキシ樹脂混合物を使用した硬化物はその成型収縮が大きくなっていることを確認した。
【0107】
実施例22
前述の実施例6の組成の本発明のエポキシ樹脂組成物において耐半田クラック性の試験を行った。表面が金属の銅製の
図1に示す96PinQFP(チップサイズ:7×7×厚み0.1mm、パッケージサイズ:14×14×厚み1.35mm)リードフレーム(使用前にアセトンで十分に表面をふき、汚れを取った物を使用)耐半田クラック性評価用リードフレームとし、リードフレームをトランスファー成型金型にセットし、上記同様にしてタブレット化したエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、耐半田クラック性の試験評価用試験片を3サンプル得た(
図2)。得られた3つの試験片について60℃/85%RHの相対湿度に設定された恒温槽中に5時間放置し吸湿させ、さらにこの吸湿後、280℃×10秒間の半田リフロー試験を行った。この時の熱衝撃によって生じるパッケージクラックについて目視によってクラックの発生を確認したが、いずれのサンプルにもクラックは見当たらなかった。
【0108】
実施例23、24
実施例18、19で得られた本発明のエポキシ樹脂混合物(EP18、19)と硬化剤(フェノールノボラック(明和化成工業(株)製 H−1))を等当量で配合し、硬化触媒(硬化促進剤)としてトリフェニルフォスフィン(北興化学(株)製 TPP)をエポキシ樹脂の重量に対し、1%添加し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。評価結果を表9に示す。
【0109】
<TMA測定条件>
耐熱性・寸法安定性(線膨張変化率)
熱機械測定装置 TA−instruments製、Q400EM
測定温度範囲:40℃〜280℃
昇温速度:2℃/分
【0110】
<DMA測定条件>
動的粘弾性測定器:TA−instruments製、DMA−2980
測定温度範囲:−30℃〜280℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)。
解析条件Tg:DMA測定に於けるTanδのピーク点(tanδMAX)をTgとした。
<誘電率、誘電正接>
空洞共振器を使用し、関東電子応用化学製 1GHz用の治具を用いて測定(0.5mmx70mmに切り出したものを使用)
<曲げ試験>
・JIS K 6911に準拠 室温で120℃でテストを行った
<ピール強度>
・180℃剥離試験 JIS K−6854−2に準拠 圧延銅箔使用
<吸水・吸湿率>
・85℃85%の高温高湿槽にて24時間放置後の重量増加%で評価
<KIC:破壊強靭性試験>
・コンパクテンション ASTME−399に準拠
【0111】
【表9】
【0112】
本結果から、本発明のエポキシ樹脂は高い耐熱性と共に、高い機械的特性、低い線膨張、また耐熱性のレベルに対し高い耐湿・耐水特性や優れた誘電特性を有する硬化物を与えることがわかる。
【0113】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2013年9月10日付で出願された日本国特許出願(特願2013−186859)及び2014年7月14日付で出願された日本国特許出願(特願2014−143791)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。