特許第6366592号(P6366592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366592高分子電解質およびこれを用いたリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366592
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】高分子電解質およびこれを用いたリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20180723BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20180723BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20180723BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20180723BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20180723BHJP
   H01G 11/56 20130101ALN20180723BHJP
【FI】
   H01M10/0565
   H01M10/0525
   H01M4/58
   H01M4/485
   H01B1/06 A
   !H01G11/56
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-539467(P2015-539467)
(86)(22)【出願日】2014年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2014076169
(87)【国際公開番号】WO2015046591
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-205349(P2013-205349)
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014856
【氏名又は名称】日本乳化剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(72)【発明者】
【氏名】島村 寛人
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 人志
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 博樹
(72)【発明者】
【氏名】村山 駿
(72)【発明者】
【氏名】村田 卓
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−080301(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/132339(WO,A1)
【文献】 特開平08−259698(JP,A)
【文献】 特開2011−142073(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0075176(US,A1)
【文献】 J Solid State Electrochem,2012年,Vol.16,p.847-855
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0565
H01B 1/06
H01M 4/485
H01M 4/58
H01M 10/0525
H01G 11/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2〜15質量%以下の下記式(1)で表わされるアルミン酸エステルと、
エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、
グライムと、
リチウム塩と、を含む電解質前駆体組成物を重合してなる、高分子電解質;
【化1】
式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基、炭素原子数3〜6のアルケニル基、アクリロイル基、またはメタクリロイル基を表し、A、A、およびAは、それぞれ独立して、炭素原子数2〜4のアルキレン基を表し、kは平均付加モル数であって、1〜100の実数を表し、lおよびmは平均付加モル数であって、それぞれ独立して0〜100の実数を表す。
【請求項2】
前記グライムが、下記式(2)で表される、請求項1に記載の高分子電解質;
【化2】
式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、Aは、炭素原子数2〜4のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、2〜20の実数を表す。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和結合を有するモノマーがエチレン性不飽和結合を1つ有する単官能モノマーである、請求項1または2に記載の高分子電解質。
【請求項4】
エチレン性不飽和結合を2つ以上有する多官能モノマーをさらに含む、請求項3に記載の高分子電解質。
【請求項5】
前記多官能モノマーが、下記式(3)で表される、請求項4に記載の高分子電解質;
【化3】
式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、o、p、およびqは平均付加モル数であって、それぞれ独立して、1〜50の実数を表す。
【請求項6】
前記多官能モノマーが下記式(4)で表される、請求項4に記載の高分子電解質;
【化4】
式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、AおよびAは、それぞれ独立して、炭素原子数2〜4のアルキレン基を表し、rおよびsは平均付加モル数であって、それぞれ独立して、1〜30の実数を表す。
【請求項7】
前記リチウム塩が、LiPF、LiBF、LiClO、LiCFSO、LiAsF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SO)(SOCF)、LiCSO、LiC(CFSO、LiCFCO、およびLiSbFからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子電解質。
【請求項8】
正極と、負極と、前記正極および前記負極に挟持された請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質と、を含む、リチウムイオン二次電池。
【請求項9】
前記正極がオリビン型リン酸鉄リチウムを含み、前記負極がチタン酸リチウムを含む請求項8に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子電解質および該高分子電解質を用いたリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、カメラ一体型ビデオテープレコーダ、ノート型パソコン、ヘッドフォンステレオ、ミニディスクプレイヤー等の携帯用電子機器の電源として、小型のリチウムイオン二次電池が使用されている。さらに、将来的には、電動自転車、自動二輪車、電気自動車および産業車両等の電源、ならびに余剰電力の貯蔵ができる大容量リチウムイオン二次電池やキャパシタ等の電気化学ディバイスへの応用が期待され、既に実用化されつつある。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、一般的に金属酸化物を正極に含み、炭素材料等を負極に含み、そして電極間に高価なセパレータと電解質とを挟んだ構造を有する。このうち電解質は、高い電圧を得るために、これまで主に電位窓の広い非プロトン性の液体電解質が用いられてきた。液体電解質としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、およびビニレンカーボネート等のカーボネート類;エチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールジメチルエーテル等のグライム類;γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ならびに2−メチルテトラヒドロフラン等が汎用されている。
【0004】
しかしながら、このような液体電解質は液漏れの虞があるために、電池の形状に制限があった。さらに、電池が発熱した場合には、これらの液体電解質が燃焼する虞があり、安全性が不十分であるという問題点を有していた。
【0005】
このような液体電解質の欠点を克服するため、電解質として高分子化合物を用いた、いわゆる高分子電解質が種々検討されている。例えば、アルミン酸エステル化合物の1種以上と、有機高分子化合物と、リチウムイオン源と、を含んでなるリチウムイオン電池用固体高分子電解質が開発されている(特許文献1)。
【0006】
特許文献1に記載のリチウムイオン電池用固体高分子電解質により、上述の液体電解質の問題点である液漏れ等の危険性は解消されたが、高分子電解質の特性上、リチウムイオン導電率が液体電解質と比較して低い値に留まり、所望の出力密度を得られないという問題点を有していた。上記の問題点を解決するため、アルミン酸エステル、エチレン性不飽和結合を2つ以上有する多官能モノマー、およびリチウム塩を含む混合物に、さらにグライムを添加して電解質前駆体組成物を調製し、これを重合することによって、優れたリチウムイオン伝導性を有する高分子電解質が得られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/132339号
【特許文献2】特開2010−80301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載のリチウムイオン二次電池は、50℃以上の高温下で充放電を繰り返すと性能が低下することが見出された。このため、従来のリチウムイオン二次電池では、高温下で使用する場合にも性能を落とさずに電池寿命を延ばすため、冷却装置を追加して電池を冷却する必要がある。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、高温下でも冷却装置を追加することなく充放電性能を維持できる高分子電解質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、所定量の反応性アルミン酸エステル、エチレン性不飽和結合を有するモノマー、およびリチウム塩を含む混合物に、さらにグライムを添加して電解質前駆体組成物を調製し、これを重合することによって、高温下でも優れたリチウムイオン伝導性を有する高分子電解質が得られることを見出した。そして、上記知見に基づいて本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の高分子電解質は、全体を100質量%としたとき25質量%以下の下記式(1)で表わされるアルミン酸エステルと、エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、グライムと、リチウム塩と、を含む電解質前駆体組成物を重合してなる。
【0012】
【化1】
【0013】
式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基、炭素原子数3〜6のアルケニル基、アクリロイル基、またはメタクリロイル基を表し、A、A、およびAは、それぞれ独立して、炭素原子数2〜4のアルキレン基を表し、kは平均付加モル数であって、1〜100の実数を表し、lおよびmは平均付加モル数であって、それぞれ独立して0〜100の実数を表す。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、優れたリチウムイオン伝導性を有する高分子電解質が得られる。さらに、該高分子電解質を用いたリチウムイオン二次電池は、50℃以上の高温下で充放電を繰り返しても充放電性能が低下せず、高い出力密度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ポリマーイオン導電率を示すグラフである。
図2】リチウムイオン二次電池の50℃でのサイクル特性を示すグラフである。
図3】リチウムイオン二次電池の70℃でのサイクル特性を示すグラフである。
図4】リチウムイオン二次電池の100℃でのサイクル特性を示すグラフである。
図5】高分子電解質の熱重量分析を示すグラフである。
図6】別の正極材による50℃でのサイクル特性を示すグラフである。
図7】別の正極材による50℃でのサイクル特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。
【0017】
本実施形態は、全体を100質量%としたとき25質量%以下の下記式(1)で表わされるアルミン酸エステルと、エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、グライムと、リチウム塩と、を含む電解質前駆体組成物を重合してなる、高分子電解質に関する。
【0018】
【化2】
【0019】
式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基、炭素原子数3〜6のアルケニル基、アクリロイル基、またはメタクリロイル基を表し、A、A、およびAは、それぞれ独立して、炭素原子数2〜4のアルキレン基を表し、kは平均付加モル数であって、1〜100の実数を表し、lおよびmは平均付加モル数であってそれぞれ独立して、0〜100の実数を表す。
【0020】
[高分子電解質]
以下、本発明の高分子電解質の原料となる電解質前駆体組成物に含まれる部材成分について説明する。
(アルミン酸エステル)
アルミン酸エステルは、本発明の高分子電解質において、リチウムイオン伝導性を向上させる役割を果たす。これは、アルミン酸エステルのルイス酸性が、リチウム塩が解離してなる陰イオンと相互作用することにより、陰イオンが安定化することによる。結果的に、リチウム塩の解離が促進されるとともに、リチウムイオン輸率が増大し、実質的に有効なリチウムイオン伝導性が向上しうる。また、アルミン酸エステルは、高分子電解質中の高分子骨格を可塑化させる性質を有するので、リチウムイオンのセグメント運動を促進させうる。さらに、アルミン酸エステルの添加により、難燃性が付与されるため、熱安定性に優れた高分子電解質が得られうる。
【0021】
本発明におけるアルミン酸エステルは、下記式(1)で表わされる。
【化3】
【0022】
式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基、炭素原子数3〜6のアルケニル基、アクリロイル基、またはメタクリロイル基を表わす。炭素原子数1〜8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、および2−エチルヘキシル基等が挙げられる。このうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、およびn−ブチル基等の炭素原子数1〜4の直鎖状アルキル基であることが好ましく、メチル基およびエチル基等の炭素原子数1または2のアルキル基であることがより好ましい。炭素原子数3〜6のアルケニル基としては、例えば、アリル基、2―メチルアリル基、3,3−ジメチルアリル基、および2,3,3−トリメチルアリル基等が挙げられる。このうち、アリル基、2―メチルアリル基であることが好ましく、アリル基であることがより好ましい。アクリロイル基およびメタクリロイル基のうちでは、メタクリロイル基であることが好ましい。また、R、R、およびRは、それぞれ異なる官能基であってもよいし、同一の官能基が含まれていても勿論よい。
【0023】
なお、式(1)中、R、R、およびRが全てアルキル基である場合は、高分子電解質中でアルミン酸エステルは液体の状態で後述のエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合してなる高分子骨格に保持される。R、R、およびRのうちのいずれか1つがエチレン性不飽和結合を有する場合は、該モノマーと重合することによって高分子骨格中に取り込まれる。さらに、R、R、およびRのうちのいずれか2つ以上がエチレン性不飽和結合を有する場合は、該モノマーと共に三次元網目状構造を形成しうる。
【0024】
また、式(1)中、A、A、およびAは、それぞれ独立して、炭素原子数2〜4のアルキレン基を表す。炭素原子数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、メチルメチレン基、1−メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基等が挙げられる。このうち、エチレン基またはプロピレン基であることが好ましい。また、式(1)中、kは平均付加モル数であって、1〜100の実数を表し、lおよびmは平均付加モル数であって、それぞれ独立して、0〜100の実数を表す。このうち、kは2〜50の実数であることが好ましく、3〜25の実数であることがより好ましい。そして、lおよびmは、2〜50の実数であることが好ましく、3〜25の実数であることがより好ましい。なお、kが2以上である場合、すなわち、−AO−で表されるオキシアルキレンユニットが複数存在する場合、複数あるAは、1種類のアルキレン基であってもよく、2種以上のアルキレン基であってもよい。(AO)で表されるポリオキシアルキレンが2種以上のアルキレン基を含む場合、付加状態はランダム状であってもブロック状であってもよい。lおよびmが2以上である場合の(AO)および(AO)についても同様である。このうち、A、A、およびAは、それぞれ1種類のアルキレン基であることが好ましく、さらに、A、A、およびAは、同一のアルキレン基であることが好ましい。これらのアルミン酸エステルは、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
上記式(1)で表されるアルミン酸エステルは、対応するポリアルキレングリコール誘導体とトリアルキルアルミン酸エステルとをエステル交換反応することによって得られうる。アルミン酸エステルの製造方法は、上述の特許文献1等に開示されているので、本明細書での説明を省略する。
【0026】
上記アルミン酸エステルの含有量は、電解質前駆体組成物の全質量に対して、一般に25質量%以下であり、特に1〜20質量%であることが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましく、3〜12質量%であることがさらに好ましい。アルミン酸エステルの含有量が25質量%を有意に上回ると、充放電サイクル特性が低下するため望ましくない。アルミン酸エステルの含有量が上記範囲内にあると、充放電サイクル特性が顕著に向上することが見出された。また陰イオンの捕捉効果により、リチウム塩の解離度が高まり、良好なリチウムイオン伝導性が得られると共に、難燃性が付与されるため安全性が高まる。
【0027】
(グライム)
グライムは、高分子電解質中においてリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす。よって、高分子電解質がグライムを含むことによって、リチウム塩の解離度が高まり、良好なリチウムイオン伝導性が得られるため、リチウムイオン二次電池の出力密度が著しく向上する。
【0028】
なお、本明細書においてグライムとは、オキシアルキレン構造を有する(ポリ)アルキレングリコールジエーテルの総称を意味する。グライムは、オキシアルキレン構造を有する(ポリ)アルキレングリコールジエーテルであれば、特に制限なく用いることができるが、なかでも、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0029】
【化4】
【0030】
式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8の炭化水素基を表す。該炭化水素基は、飽和または不飽和を問わず、さらに、直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状のいずれであっても構わない。炭素原子数1〜8の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素原子数1〜8の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、2―メチルアリル基、3,3−ジメチルアリル基、および2,3,3−トリメチルアリル基、3−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、4−ペンテニル基、2,4−ペンタジエニル基、5−ヘキセニル基、1,3,5−ヘキサトリエニル基、2−シクロペンテニル基、2,4−シクロペンタジエニル基、2−シクロヘキセニル基、2,5−シクロヘキサジエニル基等が挙げられる。また、Aは、炭素原子数2〜4のアルキレン基を表わす。炭素原子数2〜6のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、メチルメチレン基、1−メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、ペンチレン基、プロピルエチレン基、1−エチル−2−メチルエチレン基、ヘキシレン基、およびブチルエチレン基等が挙げられる。なお、複数あるAは、1種類のアルキレン基であってもよく、2種以上のアルキレン基であってもよい。(AO)で表されるポリオキシアルキレンが2種以上のアルキレン基を含む場合、付加状態はランダム状であってもブロック状であってもよい。そして、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、2〜20の実数を表す。このうち、nは2〜10の実数であることが好ましく、2〜5の実数であることがより好ましい。
【0031】
このような構造を有するグライムとしては、具体的には、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、ヘプタエチレングリコールジメチルエーテル、オクタエチレングリコールジメチルエーテル、ノナエチレングリコールジメチルエーテル、デカエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルベンジルエーテル、ジエチレングリコールメチル2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールメチルヘキシルエーテル、およびトリエチレングリコールブチルオクチルエーテルが挙げられる。このうち、トリエチレングリコールジメチルエーテルまたはテトラエチレングリコールジメチルエーテルを用いることが好ましい。このようなグライムは、リチウムイオンの移動に特に適している。これらのグライムは、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記グライムの含有量は、電解質前駆体組成物の全質量に対して、0.5〜80質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることがさらに好ましい。このような量のグライムを含むことにより、高分子電解質のリチウムイオン伝導性が向上し、電解質−電極界面におけるリチウムイオン伝導性が向上することから、良好な電池の出力密度と化学的安定性が得られる。なお、100℃以上の高温下で充放電を繰り返す場合には、グライムの重量減少を考慮し、グライム含有量を、例えば0.5〜3重量%程度に低下させるとよい。
【0033】
(エチレン性不飽和結合を有するモノマー)
本発明の高分子電解質に含まれるエチレン性不飽和結合を有するモノマーは、アルキレンオキシドを含みかつ、エチレン性不飽和結合を1つ有する場合には単官能モノマーとして、またエチレン性不飽和結合を2つ以上有する場合には多官能モノマー(架橋剤)として作用する。すなわち、所望の高分子電解質に求められる機械的強度に応じて、単官能モノマーのみを使用する場合、多官能モノマーのみを使用する場合、単官能モノマーと多官能モノマーを併用する場合があり得る。このような単官能モノマーとして、例えば、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールブチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なかでも、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートが好適に用いられうる。これらの単官能モノマーは1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記単官能モノマーの含有量は、電解質前駆体組成物の全質量に対して、1〜80質量%であることが好ましく、3〜70質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがさらに好ましい。このような量の単官能モノマーを含むことにより、高分子電解質のリチウムイオン伝導性や屈曲性が向上しうる。
【0035】
本発明の高分子電解質は、多官能モノマーを、単独で又は単官能モノマーと組み合わせて、含むことができる。多官能モノマーは、重合することによって、高分子電解質における骨格構造を形成し、高分子電解質に含まれるグライム等の液体成分を保持する役割を果たす。該多官能モノマーはエチレン性不飽和結合を2つ以上有するので、その重合体である高分子骨格は、三次元網目構造を有する。多官能モノマーを含む場合、上述のエチレン性不飽和結合を有するモノマーは、重合反応によって、多官能モノマーと共重合体を形成する。
【0036】
多官能モノマーは、エチレン性不飽和結合を含む官能基を2つ以上有するものであれば特に制限なく用いることができる。エチレン性不飽和結合を含む官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタクリル基、アクリロイル基、およびメタクリロイル基が挙げられ、これらの官能基を単独であるいは2種以上組み合わせて含むモノマーであることが好ましい。また、多官能モノマーは、アルキレンオキシドユニットを含むことが好ましい。
【0037】
このような多官能モノマーのうち、下記式(3)または式(4)の構造を有する化合物であることがより好ましい。
【0038】
【化5】
【0039】
【化6】
【0040】
式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表わし、o、p、およびqは平均付加モル数であって、それぞれ独立して、1〜50の実数を表す。このうち、oおよびqは、それぞれ独立して、1〜30の実数であることが好ましく、1〜20の実数であることがより好ましい。また、pは1〜40の実数であることが好ましく、1〜35の実数であることがより好ましい。式(3)における親水性のエチレンオキシ基と疎水性のプロピレンオキシ基とのトリブロック共重合の部分はプルロニック(登録商標)として知られるポロキサマーであり、種々の化合物が市販されている。したがって、(メタ)アクリル酸と種々のポロキサマーとエステル化反応させることによって、所望の多官能モノマーを容易に調製することができる。このような多官能モノマーを重合してなる高分子は、リチウムイオンの伝導性や、グライム等の液体成分の保持力に優れる。また、該高分子は、優れた屈曲性(柔軟性、可撓性、弾力性)を有することから、電池を構成した際には電極界面との良好な接触性が得られ、柔軟性のある外装体を使用するラミネート型電池などにも適用できる。
【0041】
一方、式(4)中、式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、AおよびAは、それぞれ独立して、炭素原子数2〜4のアルキレン基を表す。このうち、炭素原子数2〜4のアルキレン基としては、例えば、炭素原子数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、メチルメチレン基、1−メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、および1,2−ジメチルエチレン基等が挙げられる。また、rおよびsは平均付加モル数であって、それぞれ独立して、1〜30の実数を表す。このうち、rおよびsは、それぞれ独立して、1〜15の実数であることが好ましく、1〜10の実数であることがより好ましい。なお、式(4)で表されるモノマーは従来公知の方法を適宜参照して製造することができる。以下に限定されることはないが、2,2−ビス[4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパンを合成する場合を一例に挙げると、まず、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)1当量に対して酸化エチレンを4当量付加する。そして、得られた化合物を、メタクリル酸メチルを用いてエステル交換することによって、該目的化合物を合成できる。このような多官能モノマーを重合してなる高分子電解質は機械的強度に優れるため、柔軟性のある外装を用いたラミネート型電池等に採用した場合には、圧縮による短絡を防止し、安全性に優れた電池を提供することができる。これらの多官能モノマーは、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記多官能モノマーの含有量は、電解質前駆体組成物の全質量に対して、0〜80質量%であることが好ましく、0〜60質量%であることがより好ましく、0〜40質量%であることがさらに好ましい。このような量の多官能モノマーを含む電解質前駆体組成物を重合してなる高分子電解質は、屈曲性および機械的強度に優れ、ラミネート型電池に好適である。
【0043】
(リチウム塩)
リチウム塩は、リチウムイオン源としての役割を果たし、電解質中において解離することによってリチウムイオンを生成する。本発明においてリチウム塩は、従来公知のものを制限なく用いることができるが、具体的には、LiPF、LiBF、LiClO、LiCFSO、LiAsF、LiN(SOCF(LiTFSI)、LiN(SO、LiN(SO)(SOCF)、LiCSO、LiC(CFSO、LiCFCO、LiSbF等が挙げられる。これらのリチウム塩のうち、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、およびLiN(SOからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、なかでもLiN(SOCFおよびLiPFは高いリチウムイオン伝導性を付与できるので特に好ましい。これらのリチウム塩は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
上記リチウム塩の含有量は、電解質前駆体組成物の全質量に対して、5〜40質量%であることが好ましく、7〜30質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。このような量のリチウム塩を含むことにより、リチウムイオン伝導性が高まり、良好な電池性能を発揮しうる。
【0045】
さらに、本発明の効果を妨げない限りにおいて、グライムの他に非プロトン性の有機溶剤を添加することができる。このような有機溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、クロロエチレンカーボネート、トリフロロプロピレンカーボネート、およびカテコールカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、および2−メチルテトラヒドロフランのような環状エーテル類;メチルアセテート、メチルプロピオネート、ギ酸メチル等のエステル類;スルホラン等が挙げられる。このうち、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートを含むことが好ましい。
【0046】
上記有機溶剤の含有量は、電解質前駆体組成物の全質量に対して、0〜50質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましく、0質量%である(有機溶剤を含まない)ことがさらに好ましい。有機溶剤は、電池性能を向上する観点からは添加することが好ましいが、安全性を維持するためには少量を添加するかあるいは添加しないことが好ましい。
【0047】
次に、本発明の高分子電解質の製造方法について説明する。
本発明の高分子電解質は、上記のアルミン酸エステルと、エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、グライムと、リチウム塩とを含む電解質前駆体組成物を重合反応に供し、重合可能なエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合することによって製造できる。重合反応は、特に制限はなく、熱重合反応、紫外線もしくは可視光照射による光重合反応、または電子線の照射による重合反応を適宜採用することができる。このうち、簡便性やコストの観点から、熱重合反応または紫外線照射による光重合反応を用いることが好ましい。
【0048】
熱重合反応または光重合反応を用いる際には、重合開始剤が添加されうる。熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等のジアシルパーオキサイド類;tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類;過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤;クメンヒドロパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド等の高温重合開始剤;またはレドックス剤等が挙げられる。一方、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン、1−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のケトン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等のビスアシルフォスフィンオキシド類等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
高分子電解質の製造方法の好ましい態様としては、電解質前駆体組成物を多孔質セパレータに含浸させた後、これを加熱して重合させる方法がある。多孔質セパレータとしては、リチウムイオン二次電池用に市販されているセルロースセパレータを使用することができる。別法として、多官能モノマーを含む電解質前駆体組成物を低沸点有機溶剤に溶解して電解質前駆体組成物溶液を調製し、これをキャスティングして低沸点溶剤を除去しつつ多官能モノマーを熱重合反応させることによって機械的強度に優れた高分子電解質を得ることができる。また、別の態様としては、多官能モノマーを含む電解質前駆体組成物溶液を調製した後、これをキャスティングして低沸点溶剤を除去して、電解質前駆体組成物を含む薄膜を形成し、該薄膜に、紫外線、可視光、または電子線等を照射することによって重合反応を行い、高分子電解質の薄膜を得ることができる。さらに、別の態様としては、多官能モノマーを含む電解質前駆体組成物溶液を、所望の厚さになるように設計した型に流し込み、これに紫外線、可視光、または電子線等を照射することによって重合反応を行い、薄膜を製造することもできる。
【0050】
[リチウムイオン二次電池]
本発明の高分子電解質は、リチウムイオン二次電池に好適に用いられる。該リチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、前記正極および負極に挟持された本発明の高分子電解質と、を含む。該正極および負極は、集電体表面に活物質を含む活物質層が形成されてなる。以下、本発明のリチウムイオン二次電池に含まれる部材について説明する。
【0051】
(集電体)
正極および負極の集電体は、活物質と外部とを電気的に接合する役割を果たす。このような集電体は、化学変化が起こりにくい電子伝導体であれば特に制限なく用いることができる。正極の集電体としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、およびチタン等の金属材料を1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、アルミニウムまたはアルミニウムを含む合金であることが好ましい。なお、2種以上の材料を組み合わせた集電体の形態は特に制限はないが、一例を挙げると、金属材料に表面処理を施した形態が挙げられる。具体的には、アルミニウムまたはステンレス鋼の表面に、メッキまたはコーティング等により、カーボン、ニッケル、チタン、または銀等の被膜を形成した集電体が好適に用いられうる。負極の集電体としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、およびチタン等の1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、銅または銅を含む合金であることが好ましい。集電体の形状は、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、および繊維群の成形体等も用いることができる。
【0052】
(活物質)
活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および脱離することによって、電気エネルギーを生み出す役割を果たす。
【0053】
正極活物質は、無機系活物質と有機系活物質とに大別される。無機系活物質である正極活物質としては、例えば、リチウム複合酸化物、リチウム複合硫化物、オリビン型リン酸鉄リチウム等のリチウム含有化合物;TiS、MoS、FeS、NbS等の金属硫化物;ならびにTiO、MnO、V13、およびV等の金属酸化物等が挙げられる。このうち、エネルギー密度を高くするためには、リチウム複合酸化物を含むことが好ましい。このようなリチウム複合酸化物としては、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiNiCo1−z(ただし、yおよびzは電池の充放電状態によって異なり、通常、0<y<1、0.7<z≦1である。)、LiNiMnCo1−x−y等が挙げられる。有機系活物質である正極活物質としては、例えば、ポリアニリン、ポリ−o−トルイジン、ポリ−m−トルイジン、ポリ−o−アニシジン、ポリ−m−アニシジン、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N−フルオロピリジニウム塩等が挙げられる。これらの正極活物質のうち、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiNiCo1−z(ただし、yおよびzは電池の充放電状態によって異なり、通常、0<y<1、0.7<z≦1である。)等のリチウム複合酸化物またはオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)を用いることが好ましく、オリビン型リン酸鉄リチウムを用いることがより好ましい。オリビン型リン酸鉄リチウムは酸素の解離温度が高いために、熱安定性および安全性の観点から優れている。また、コバルトやニッケルなどの希少金属を含まないために比較的安価で、また環境規制の問題も少ない。さらに、比較的低い上限電圧(4V以下)で充放電可能なことから、高分子電解質の分解を抑制することができる。なお、上記の正極活物質は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、オリビン型リン酸鉄リチウムを正極活物質として用いる場合には、導電性向上のために、活物質表面を導電性炭素等でコーティングすることが好ましい。
【0054】
負極活物質としては、例えば、グラファイト、コークス等の炭素系活物質、および無機系活物質が挙げられる。また、炭素系活物質と、金属、金属塩、または酸化物等との混合体や、炭素系活物質の粒子表面が、金属、金属塩、または酸化物等で被覆された形態であってもよい。また、無機系活物質としては、ケイ素、スズ、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物や硫酸塩、リチウム金属、チタン酸リチウム、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−亜鉛合金、リチウム−スズ合金、リチウム−鉛合金、リチウム−イリジウム合金、リチウム−ビスマス−カドミウム合金、リチウム−スズ―カドミウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコン等を使用することができる。これらの負極活物質のうち、グラファイト、コークス等の炭素系活物質、リチウム金属、またはチタン酸リチウムであることが好ましく、リチウム金属、またはチタン酸リチウムであることがより好ましい。リチウム金属を用いた場合は、高エネルギー密度が得られうる。一方、チタン酸リチウムを用いると、繰り返しの充放電によっても格子の劣化が少ないため、耐久性に優れる。また、電位が1.55Vと高いために金属リチウムが析出しにくく、安全性に優れる。なお、上記の負極活物質は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよいし、負極活物質の粒子の表面を、導電性炭素等でコーティングして使用してもよい。
【0055】
(添加剤)
本発明のリチウムイオン電池は、導電材、結着材、およびフィラー等の添加剤をさらに含みうる。
【0056】
導電材は、活物質と集電体との間の電導性を向上するために配合される添加物をいう。導電材は、化学変化を起こしにくい電子伝導性材料であれば特に制限なく用いることができる。例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人工黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、炭素繊維、各種金属粉(銅、ニッケル、アルミニウム、銀等)、金属繊維、およびポリフェニレン誘導体等の導電性材料を挙げることができ、これらのうち1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0057】
結着材は、高分子電解質と電極とを結着させるために配合される添加物をいう。このような結着材としては、例えば、高分子電解質と親和性のあるフッ素ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1,1−ジメチルエチレン等のアルカン系ポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の不飽和系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリ−N−ビニルピロリドン等の環を有するポリマー、スチレンブタジエンゴム等が挙げられこれらのうち1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0058】
フィラーは、高分子電解質の機械的強度や伝導度を改善するために配合される添加物をいう。フィラーは、化学変化を起こしにくい繊維状材料であることが好ましく、通常、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、ガラス繊維、または炭素繊維等が好適に用いられうる。
【0059】
本発明の高分子電解質を用いたリチウムイオン二次電池は、液漏れの心配がないために、外装材にアルミラミネートシートを用いたラミネート型電池とすることができ、電池の軽量、小型、薄型化を実現できる。ラミネート型電池は、放熱性に優れていることから、積層し大容量化も可能である。本発明のリチウムイオン二次電池はラミネート型のほか、扁平型、角型、コイン型、円筒型等の種々の形態とすることもできる。
【0060】
このような構成を有するリチウムイオン二次電池は、従来公知の方法を適宜参照することによって製造することができる。以下に、本発明のリチウムイオン二次電池の好ましい製造方法を説明するが、これらの製造方法に限定されるものではない。
【0061】
まず、アルミン酸エステル、エチレン性不飽和結合を有するモノマー、必要に応じて多官能モノマー、グライム、およびリチウム塩を混合することによって、電解質前駆体組成物を調製する。該電解質前駆体組成物に必要に応じて有機溶剤および/または重合開始剤を添加し、電解質前駆体組成物溶液を調製する。得られた電解質前駆体組成物溶液を多孔質セパレータに含浸させた後、加熱または紫外線等を照射することにより重合反応を行う。別法として、多官能モノマーを含む電解質前駆体組成物溶液を剥離剤処理済のPETフィルムに挟まれた型に流し込み、薄膜状にする。該薄膜に、直ちに加熱または紫外線等を照射することにより重合反応を行う。該重合反応では、多官能モノマーにより鎖状ポリマー間で架橋反応が起こるため、三次元網目構造を有するフィルム状の高分子電解質が形成される。このフィルム状の高分子電解質を必要により室温まで冷却した後、オリビン型リン酸鉄リチウム等の正極活物質を含む正極シートおよびチタン酸リチウム等の負極活物質を含む負極シートの間に挟み、貼り合わせプレスすることによりリチウムイオン二次電池の単セルが製造される。該単セルは、高電池容量を達成するために、通常、複数の単セルを積層してケースに収納した積層型電池として製造されうる。
【0062】
本発明の高分子電解質は、グライムを含んでいるため、従来の高分子電解質と比較して、優れたリチウムイオン伝導性を有する。また、多官能モノマーが重合されてなる重合体を含有するので、鎖状ポリマー同士が一部架橋された三次元網目構造を有しており、液漏れの心配がなく、機械的強度に優れ、熱に対して安定である。さらに、本発明の高分子電解質は電極との密着性も良好である。よって、このような高分子電解質を用いることにより、高出力密度、高電池容量を有するリチウムイオン二次電池が製造されうる。
【0063】
本発明のリチウムイオン二次電池は、幅広い分野の電気駆動製品に適用することができる。好適な用途としては、例えば、電子機器に搭載する場合、携帯電話、ノートパソコン、モバイルパソコン、携帯情報端末、電子ブックプレイヤー、コードレスフォンの子機、携帯型ファックス、携帯型コピー、携帯型プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービーレコーダー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、コンパクトディスクプレイヤー、ミニディスクプレイヤー、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯型テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、カメラ、ゲーム機器、医療機器(ペースメーカー、補聴器等)、照明器具、玩具、時計等の家庭用もしくは医療用電子機器、あるいは車両等の駆動に用いられる移動体用電源、定置型の無停電電源等が挙げられる。
【実施例】
【0064】
本発明の作用効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、本実施例では、露点温度−40℃以下のドライルーム内で試料調製を行った。
【0065】
[実施例1]
(オリビン型リン酸鉄リチウムを含む正極)
正極活物質であるオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)(平均粒子径:1μm)(84.2質量%)、導電材であるアセチレンブラック(10.1質量%)、および結着材であるスチレン−ブタジエンゴム(SBR)(5.7質量%)を混合し、次いで粘度調整溶媒である純水を適量添加して、活物質スラリーを調製した。次に、このスラリーを集電体用アルミニウム箔(厚さ15μm)に均一に塗布し、乾燥、圧縮成形して、68mm×68mmに切り取り、正極(厚み35μm)を作製した。
【0066】
(チタン酸リチウムを含む負極)
負極活物質であるチタン酸リチウム(LiTi12)(平均粒子径:10μm)(90質量%)、導電材であるアセチレンブラック(5質量%)、および結着材であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(5質量%)を混合し、次いで粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、活物質スラリーを調製した。次に、このスラリーを集電体用アルミニウム箔(厚さ15μm)に均一に塗布し、乾燥、圧縮成形して、70mm×70mmに切り取り、負極(厚さ35μm)を作製した。
【0067】
(高分子電解質)
アルミニウムトリ−sec−ブトキシド(1当量)と、ポリエチレングリコールメタクリレート(オキシエチレン基の平均付加モル数5.0)(1当量)およびポリエチレングリコールモノメチルエーテル(オキシエチレン基の平均付加モル数9.0)(2当量)とをエステル交換反応することによって、反応性アルミン酸エステルを調製した。
該反応性アルミン酸エステル5.10質量%、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)47.10質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)20.48質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)27.32質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.49質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製した。
【0068】
(ラミネート型電池)
上記で作製した正極および負極の間にセルロースセパレータ(型番TF44−25:ニッポン高度紙工業株式会社製)を積層し、該セパレータに上記の電解質前駆体溶液を含浸後、さらにアルミラミネートシートを外側に積層し、真空圧1.20kPa(9mmHg)の条件にて各辺を封止し、100℃で12時間加熱することによりラミネート型電池を作製した。
【0069】
(ポリマーイオン導電率)
セルロースセパレータに上記の電解質前駆体溶液を含浸後、100℃で12時間加熱し、直径1.6cmの円盤状に成形する事で測定用の試料を調製した。これを一対のステンレス電極を有するセル(宝泉株式会社製HSセル)に挟みこんだのち、各温度におけるポリマー電解質のバルク抵抗を複素インピーダンス法(バイオロジック社製VSP)により測定し、イオン導電率を算出した。
【0070】
(放電容量)
充放電試験装置(北斗電工株式会社製HJD0501SM8)を用い、50℃及び70℃にて電流密度0.2Cの定電流を流して充放電試験を行った。電圧は、上限電圧2.05V、下限電圧1.7Vの範囲で制御し、充電・放電を1サイクルとしてサイクル特性を調べた。
【0071】
[実施例2]
反応性アルミン酸エステル10.18質量%、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)44.58質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)19.38質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)25.86質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.49質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0072】
[実施例3]
反応性アルミン酸エステル3.01質量%、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)48.14質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)20.93質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)27.92質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.49質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0073】
[比較例1]
モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)49.63質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)21.58質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)28.79質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.49質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0074】
[比較例2]
反応性アルミン酸エステル1.06質量%、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)49.10質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)21.35質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)28.48質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.49質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0075】
[参考例1]
反応性アルミン酸エステル22.98質量%、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)38.25質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)16.60質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)22.17質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.47質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0076】
実施例1、実施例2、比較例1及び参考例1について測定したポリマーイオン導電率を図1に示す。実施例1で最も高いイオン導電率が得られた。作用は定かではないが、該反応性アルミン酸エステルは、少量の添加で高い可塑化効果を有している為と考えられる。
【0077】
リチウムイオン二次電池の50℃でのサイクル特性について、実施例1〜3、比較例1、比較例2及び参考例1の評価結果を図2に示す。同様に70℃でのサイクル特性について、実施例1、実施例2、比較例1及び参考例1の評価結果を図3に示す。図2から、50℃でのサイクル特性は、反応性アルミン酸エステルの添加量が約3〜23質量%の範囲にある場合に、添加しない場合(比較例1)より向上したことがわかる。一方、70℃でのサイクル特性については、図3が示すように、実施例1、2は、比較例1及び参考例1と比較して顕著に良好であることがわかる。
【0078】
[実施例4]
反応性アルミン酸エステル5.10質量%、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)66.30質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)1.28質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)27.32質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.68質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0079】
[実施例5]
反応性アルミン酸エステル9.95質量%、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)60.27質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)2.49質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)27.29質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.64質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0080】
[実施例6]
反応性アルミン酸エステル22.31質量%、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)44.93質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)5.58質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)27.18質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.53質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0081】
[比較例3]
反応性アルミン酸エステル0質量%、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)71.38質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)1.28質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)27.33質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.71質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0082】
リチウムイオン二次電池の100℃でのサイクル特性について、実施例4〜6及び比較例3の評価結果を図4に示す。グライムの含有量を1質量%程度にまで低下させたことにより、反応性アルミン酸エステルの添加量が約5〜23質量%の範囲全体にわたり、サイクル特性が、添加しない場合(比較例3)より向上したことがわかる。
【0083】
電解質前駆体組成物におけるグライム含有量が高分子電解質の熱重量分析に与える影響について、図5に示す。図5は、グライム含有量20質量%(実施例1)とグライム含有量1質量%(実施例4)について、熱分析計(装置名:マックサイセンス製 TG−DTA 2000S)による分析結果を示すものである。グライム含有量が高いと100℃以上での質量減少が大きくなるため、100℃以上という高温下で充放電を繰り返す場合には、グライム含有量を低下させるとよいことがわかる。
【0084】
[実施例7]
正極活物質としてLiNi0.33Mn0.33Co0.33O2(戸田工業株式会社製、NME−1100)を91質量%、導電材としてアセチレンブラックを5質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを4質量%の割合で混合した。さらにこの混合物に対し、粘度調整溶媒として1−メチル−2−ピロリドンを125質量%添加して混合したものを、集電体としてのアルミ箔上に塗布し、次いで加圧成型後、乾燥して正極を調製したことを除いては、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0085】
[実施例8]
反応性アルミン酸エステル10.18質量%、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)44.58質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)19.38質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)25.86質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.49質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例7と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0086】
[実施例9]
反応性アルミン酸エステル22.98質量%、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)38.25質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)16.60質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)22.17質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.47質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例7と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0087】
[比較例4]
モノマーとしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(平均付加モル数9.0)49.63質量%、グライムとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:DMTG、日本乳化剤株式会社製)21.58質量%を混合し、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSA、東京化成工業株式会社製)28.79質量%を溶解し、さらに重合開始剤としてトリゴノックス257−C70(化薬アクゾ株式会社製)0.49質量%を混合して、電解質前駆体溶液を調製したことを除いては、実施例7と同様の方法でラミネート型電池を作製した。
【0088】
リチウムイオン二次電池の50℃でのサイクル特性について、実施例7の評価結果を図6に、そして実施例8、実施例9及び比較例4の評価結果を図7にそれぞれ示す。図6図7から、正極材をオリビン型リン酸鉄リチウムからリチウム複合酸化物に変更しても、同様に反応性アルミン酸エステルの添加効果が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明による高分子電解質は、50℃以上でも優れたリチウムイオン伝導性を維持するため、該高分子電解質を用いたリチウムイオン二次電池の使用温度域が拡幅する。また、50℃以上の高温下で充放電を繰り返しても充放電性能が低下せず、高い出力密度を維持することから、該高分子電解質を用いたリチウムイオン二次電池の寿命が向上する。さらに、本発明による高分子電解質は、液漏れによる火災の恐れがなく、アルミン酸エステルによる難燃性と併せて、極めて安全性の高いリチウムイオン二次電池を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7