特許第6366594号(P6366594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366594発作性心房細動をTnTに基づいて診断するためのデータを提供する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366594
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】発作性心房細動をTnTに基づいて診断するためのデータを提供する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   G01N33/68
【請求項の数】15
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2015-541170(P2015-541170)
(86)(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公表番号】特表2016-502659(P2016-502659A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】EP2013073476
(87)【国際公開番号】WO2014072500
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年8月30日
(31)【優先権主張番号】12191996.3
(32)【優先日】2012年11月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ブロック,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ラティーニ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】マッソン,セルジェ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーンヒューズ−テレン,ウルスラ−ヘンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ツァウグ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ツィーグラー,アンドレ
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−528115(JP,A)
【文献】 CHENG T. et al.,MOLECULAR MEDICINE REPORTS,SPANDIDOS PUBLICATIONS LTD.,2012年 9月,V6 N3,P581-584
【文献】 RIZOS I. et al.,JOURNAL OF HUMAN HYPERTENSION,2010年 7月,V24 N7,P447-457
【文献】 NAOYUKI SATA et al.,C-REACTIVE PROTEIN AND ATRIAL FIBRILLATION,JAPANESE HEART JOURNAL,2004年 5月 1日,V45 N3,P441-445
【文献】 R. LATINI et al.,Circulating cardiovascular biomarkers in recurrent atrial fibrillation: data from the GISSI-Atrial fibrillation trial,JOURNAL OF INTERNAL MEDICINE,2011年 2月 1日,V269 N2,P160-171
【文献】 MASSON SERGE,HEART,英国,BRITISH CARDIAC SOCIETY,2010年12月 1日,V96 N23,P1909-1914
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における最近の自発的に終結する発作性心房細動を診断するためのデータを提供する方法であって:
(a)被験体由来の試料における心臓トロポニンの量を決定し、そして
(b)前記の決定した量を、参照量と比較して、それによって最近の自発的に終結する発作性心房細動を診断するためのデータを提供する
ここで、被験体は試料を得た時点で心房細動を患っていない、そして最近の自発的に終結する発作性心房細動は試料を得た1〜30日前以内に発生したものである、
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
最近の発作性心房細動が、試料を得た1〜7日前以内に発生した、請求項1の方法。
【請求項3】
最近の発作性心房細動が、脳卒中と関連しては発生していなかった、請求項1または2の方法。
【請求項4】
試料が血液、血清または血漿試料である、請求項1〜3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
被験体がヒトである、請求項1〜4のいずれか一項の方法。
【請求項6】
参照量が、計算した参照量であり、そして参照量に比べて、心臓トロポニンの量の増加が、最近の発作性心房細動の診断を示し、そして/または、参照量に比べて、心臓トロポニンの量の減少が、被験体が最近、発作性心房細動を患っていなかったことを示す、請求項1〜5のいずれか一項の方法。
【請求項7】
参照量が、(i)最近、発作性心房細動を患っていたことが知られる被験体または被験体群に由来し、ここで、参照量に比べて、本質的に同じ量または増加した量の心臓トロポニンが、最近の発作性心房細動の診断を示し、そして/または参照量が、(i)最近、発作性心房細動を患っていなかったことが知られる被験体または被験体群に由来し、ここで、参照量に比べて、本質的に同じ量または減少した量の被験体由来の試料における心臓トロポニンが、被験体が最近、発作性心房細動を患っていなかったことを示す、請求項1〜5のいずれか一項の方法。
【請求項8】
i)心臓トロポニンおよびhsCRPの量を決定し、そして被験体が、試料を得る前の30日間の期間内に、発作性心房細動を患っていたかどうかを診断するためのデータを提供する、またはii)心臓トロポニンおよびBNP型ペプチドの量を決定し、そして被験体が、試料を得る前の1週間の期間内に、発作性心房細動を患っていたかどうかを診断するためのデータを提供する、請求項1〜7のいずれか一項の方法。
【請求項9】
心房細動のエピソードが自発的に終結した、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
抗凝固療法に感受性である被験体を同定するための方法であって:
(a)最近の自発的に終結する発作性心房細動を患ったと推測される被験体由来の試料における心臓トロポニンの量を決定し、そして
(b)前記の決定した量を、参照量と比較して、それによって抗凝固療法に感受性である被験体を同定する
ここで、被験体は試料を得た時点で心房細動を患っていない、そして最近の自発的に終結する発作性心房細動は試料を得た1〜30日前以内に発生したものである
ことを含む、前記方法。
【請求項11】
抗凝固療法が、ヘパリン、クマリン誘導体ワルファリンジクマロール、組織因子経路阻害剤(TFPI)、アンチトロンビンIII、因子IXa阻害剤、因子Xa阻害剤、因子VaおよびVIIIaの阻害剤、トロンビン阻害剤より選択される、請求項10の方法。
【請求項12】
参照量が計算した参照量であり、そして参照量と比較した際の心臓トロポニンの量の増加が、被験体が抗凝固療法に感受性であることを示し、そして/または、参照量と比較した際の心臓トロポニンの量の減少が、被験体が抗凝固療法に感受性でないことを示す、請求項10または11の方法。
【請求項13】
参照量が、(i)抗凝固療法に感受性である被験体または被験体群に由来し、ここで、参照量に比べて、本質的に同じ量または増加した量の被験体由来の試料における心臓トロポニンが、被験体が抗凝固療法に感受性であることを示し、そして/または参照量が、(i)抗凝固療法に感受性でないことが知られる被験体または被験体群に由来し、ここで、参照量に比べて、本質的に同じ量または減少した量の被験体由来の試料における心臓トロポニンが、被験体が抗凝固療法に感受性でないことを示す、請求項10〜12のいずれか一項の方法。
【請求項14】
被験体における最近の自発的に終結する発作性心房細動を診断するための、または抗凝固療法に感受性である被験体を同定するための、被験体試料におけるi)心臓トロポニン、あるいはii)心臓トロポニンに特異的に結合する検出剤の使用であって、被験体が試料を得た時点で心房細動を患っていない、そして最近の自発的に終結する発作性心房細動は試料を得た1〜30日前以内に発生したものである、前記使用。
【請求項15】
被験体における最近の自発的に終結する発作性心房細動を診断するために適応したデバイスであって
a)心臓トロポニンに特異的に結合する検出剤を含むアナライザー装置であって、試料における心臓トロポニンの量を決定するために適応した、前記装置;および
b)決定した量と参照量を比較し、それによって、最近の発作性心房細動を診断するためのアナライザー装置であって、請求項6または7に示すような参照量を含むデータベース、および請求項6または7に示すような比較を実行するためのコンピュータが実施するアルゴリズムを含む、前記装置
を含む、
ここで、被験体が試料を得た時点で心房細動を患っていない、そして最近の自発的に終結する発作性心房細動は試料を得た1〜30日前以内に発生したものである、前記デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最近の発作性心房細動を診断するための方法に関する。該方法は、被験体由来の試料における心臓トロポニン、NT−プロBNP(脳ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン)、hsCRP、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの決定、ならびにこうして決定した量(単数または複数)と参照量(単数または複数)の比較に基づく。さらに、本発明は、抗凝固療法に感受性である被験体を同定するための方法に、そしてIGFBP7の量の決定に基づいて、進行中の心房細動を診断するための方法に関する。さらに想定されるのは、本明細書に開示する方法を実行する際に用いる系、試薬およびキットである。
【発明の概要】
【0002】
背景技術
心房細動は、最も一般的な心不整脈である。しかし、心房細動(AF)は、しばしば、患者によっては認識されない。これは、患者のおよそ40%にあてはまり、心房細動の診断に関して問診があまり感度がよくないことを示す(Kamel H.ら, Curr Atheroscler Rep 2011:13:338−343)。これらの数字は、持続性心房細動に関連するが、発作性心房細動は、診断がさらにより困難であり、そして入院患者の心臓遠隔測定またはさらにホルターモニタリングによってのみ捕捉可能である。したがって、発作性心房細動の認識は、特に全体人口の少なくとも1%が持続性心房細動を有し、そして頻度は年齢とともに増加するため、重要な課題である(Rizos T.ら)。
【0003】
発作性心房細動は、7日間未満、通常は24時間未満の、自発的に終結する心房細動の再発性エピソードと定義される。これは、自己終結性であるか、または断続性であるか、いずれかでありうる。発作性心房細動は一般的である(高齢被験体の5〜10%)(心房細動の有病率、発生率および生涯リスク:ロッテルダム研究 Heeringaら, Eur Heart J. 2006;27(8):949)。未治療患者では、脳卒中リスクが増加する(抗凝固を伴わない場合)。
【0004】
心房細動を検出する判断基準は心電図(ECG)であり、好ましくは24時間ECG(ホルターモニタリング)として実行される。しかし、ホルターモニタリングは、不整脈がECG記録の24時間の期間中に起こる場合にしか心房細動を検出できない。
【0005】
いくつかの刊行物は、心房細動と、レベルが増進したバイオマーカーの関連を暗示する(心房細動におけるバイオマーカー:生物学的妥当性、原因、および影響の研究 R. Becker Journal of Thrombosis and Thrombolysis 19(1), 71−75, 2005)。
【0006】
Nt−プロBNP評価は、収縮機能障害を評価する手段を提供する。高感度トロポニンアッセイは、無症候性心臓傷害の検出を可能にする。トロポニンTおよびNt−プロBNPの両方のレベルの上昇は、独立に、6ヶ月後または12ヶ月後の心房細動の最初の再発のより高いリスクを予測する(再発性心房細動における循環心臓血管バイオマーカー:GISSI−心房細動試験からのデータ, R. Latiniら, J Intern Med2011;269:160−171). 。I. Beaulieu−Boireは、急性虚血性脳卒中(AIS)または一過性虚血性発作(TIA)の患者におけるcTnIレベルの上昇が、初発AFを予測し、そしてより劣った予後およびより高い死亡率と関連することを記載した(I. Beaulieu−Boireら. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2012 Feb 15, オンラインで入手可能、印刷中)。
【0007】
いくつかの他の刊行物が、心房細動の診断および/または予測と、バイオマーカーレベルの増加の関連を記載する(Kirchhofら, 2011 July 26, Europace Epub, 心房細動患者における包括的リスク減少:新たな診断および療法オプション−第三回心房細動能力ネットワーク/欧州心拍協会コンセンサス会議からの報告;再発性心房細動における循環心臓血管バイオマーカー:GISSI−心房細動試験からのデータ, R. Latiniら, J Intern Med 2011;269:160−171)。発作性心房細動の最近の発生の診断を可能にするであろう血液バイオマーカーの決定は、抗凝固療法から利益を受けうる患者の同定を可能にするであろうため、こうしたバイオマーカーが非常に望ましい。
【0008】
Bugnicourtら、2010(Eur Neurol 2010;63:24−28)は、心臓トロポニンIレベルが、虚血性脳卒中患者における初発心房細動を予測することを開示する。該文献はまた、トロポニンIレベル上昇が心房細動と関連することが知られることも開示する。
【0009】
Hijaziら、2012(Circulation.125:1605−1616)は、トロポニンIおよびNTプロBNPの上昇が、AF患者に共通しており、そして独立に、脳卒中リスクおよび死亡率上昇に関連することを開示する。
【0010】
Marcusら、2008(Heart Rhythm. 2008 Feb;5(2):215−21)は、CRPおよびIL−6レベルが心房細動を提示する患者において上昇していることを開示する。
【0011】
Choudhuryら、2008(Sep;l34(3):574−81)は、心房細動を診断する、sCD40L検出に基づく方法を開示する。特に、AF患者は、健康な対照被験体に比べて、有意により高いsCD40Lレベルを有した。
【0012】
Cohenら、2007(doi:10.1093/eurheartj/ehm170)は、心房細動を診断する、D−二量体検出に基づく方法を報告する。
Latiniら、2011(J Intern Med. 2011 Feb;269(2):160−71)は、AF歴を持つ患者におけるNTプロANP、hsTnTまたはNTプロBNPの検出に基づいて、心房細動の再発を予測するための方法を開示する。
【0013】
Wachterら、2012(PLoS ONE 7(4): e34351. doi:l0.1371/journal.pone.0034351)は、BNPを用いて発作性AFを検出可能であることを開示する。
【0014】
Rizosら、2010(Journal of Human Hypertension 24, 447−457)は、hsCRPおよびIL−6を用いて、発作性AFを検出可能であることを開示する。
【0015】
本発明の根底にある技術的問題は、前述の必要性に応じるための手段および方法の提供として見られうる。
技術的問題は、請求項および以下の本明細書に特徴付けられる態様によって解決される。
【0016】
したがって、本発明は、被験体における最近の発作性心房細動を診断するための方法であって:
(a)被験体由来の試料における心臓トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−プロBNP(脳ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン)、hsCRP、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの量を決定し、そして
(b)前記の少なくとも1つのマーカーの決定した量(単数または複数)を、参照量(単数または複数)と比較し、それによって最近の発作性心房細動を診断する
ここで、被験体は試料を得た時点で心房細動を患っていない
ことを含む、前記方法に関する。
【0017】
好ましくは、最近の発作性心房細動は、工程b)で実行した比較の結果に基づいて、最近の発作性心房細動を診断するさらなる工程c)を実行することによって診断される。
1つの態様において、工程(a)のバイオマーカー(単数または複数)の量(単数または複数)の決定は、バイオマーカー(単数または複数)に特異的に結合する検出剤(単数または複数)と試料を接触させ、それによって検出剤およびバイオマーカーを含む複合体を形成し、形成された複合体(単数または複数)の量(単数または複数)を検出し、それによってバイオマーカーの量を決定することによって行われる。用語「検出剤」は、本明細書の別の箇所に明記されている。
【0018】
1つの態様において、前述の方法は、被験体由来の試料におけるバイオマーカー(単数または複数)の量が参照量(単数または複数)より高い場合は最近の発作性心房細動の診断を提供し、そして/または被験体由来の試料におけるバイオマーカー(単数または複数)の量(単数または複数)が参照量より低い場合は、心房細動の非存在の診断を提供する工程(c)をさらに含むことも可能である。
【0019】
本発明の方法は、好ましくは、ex vivoまたはin vitro法である。さらに、上に明らかに言及するものに加えて、工程を含むことも可能である。例えば、さらなる工程は、試料の前処理、または方法によって得られる結果の評価に関連することも可能である。方法を手動で実行してもよいし、または自動化によって補助してもよい。好ましくは、工程(a)および/または(b)は、工程(a)における決定、あるいは工程(b)における前記比較に基づくコンピュータが実施する比較および/または区別のため、全体で、または部分的に、自動化、例えば適切なロボットおよび感覚装置によって、補助されてもよい。
【0020】
したがって、本発明はまた、被験体における最近の発作性心房細動を診断するための系であって、
a)肺炎を患う被験体由来の試料の一部を、in vitroで、心臓トロポニン、BNP型ペプチド、hsCRP(高感度CRP)、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーに対する特異的結合アフィニティを含むリガンド(単数または複数)と、接触させるよう設定された、アナライザー装置、
b)リガンド(単数または複数)と接触させた被験体由来の試料の一部から、シグナルを検出するように設定された、アナライザー装置、
c)プロセッサを有し、そして前記分析装置と機能可能な通信がある、計算デバイス、および
d)プロセッサによって実行可能な複数の命令を含む非一過性機械読み取り可能媒体であって、命令が実行された際、少なくとも1つのマーカーの量(単数または複数)を計算し、そして参照量(単数または複数)と少なくとも1つのマーカーの量(単数または複数)を比較して、それによって被験体における最近の発作性心房細動を診断する、前記媒体
を含む、前記系に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
用語「診断する」は、本明細書において、好ましくは、本明細書に言及するような被験体が、最近、発作性心房細動を患ったかどうかを評価することを意味する。特に、被験体が、最近、発作性心房細動のエピソードを患ったかどうかを評価する。当業者に理解されるであろうように、こうした評価は、通常、診断しようとする被験体の100%に関して正確であることは意図されない。該用語は、しかし、被験体の統計的に有意な部分(例えばコホート研究におけるコホート)に関して評価が正しいことを必要とする。部分が統計的に有意であるかどうかは、多様な周知の統計評価ツール、例えば信頼区間の決定、p値決定、スチューデントのt検定、マン−ホイットニー検定等を用いて、当業者によって、容易に決定可能である。詳細は、DowdyおよびWearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に見出される。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。
【0022】
本発明の文脈において、最近の発作性心房細動を診断するものとし、すなわち、被験体が最近、発作性心房細動を患ったかどうかを診断するものとする。
用語「心房細動」は、当該技術分野に周知である。心房細動は、例えば、その全開示内容が本明細書に援用される、Fusterらによって概説される(Fuster V, Ryden LE, Asinger RWら 心房細動患者の管理のためのACC/AHA/ESC指針: 要旨。北米ぺーシング・電気生理学会と共同で発展された、診療指針に関する米国心臓病学会/米国心臓協会特別委員会、ならびに診療指針および方針会議のための欧州心臓病学会委員会(心房細動患者の管理のための指針を発展させるための委員会)の報告。 Circulation. Oct 23 2001;104(17):2118−50)。心房細動は、心臓の2つの上部チャンバーに関与する異常な心拍である。正常な心拍においては、洞房結節によって生成されたインパルスが心臓全体に広がり、そして心筋の収縮および血液のポンピングを引き起こす。心房細動において、洞房結節の通常の電気インパルスは、無秩序で迅速な電気インパルスに置き換わり、これが不規則な心拍を生じる。
【0023】
心房細動(AF)は、永続的、持続性または発作性(しばしば「断続的」と称される)でありうる。
被験体は、好ましくは、AFが1年より長く持続している場合、永続的AFを患う。特に、洞律動に戻る変換は生じない(または治療した場合にのみ生じる)。
【0024】
被験体は、好ましくは、AFが7日間持続し、そして心房細動を終結させるために、薬理学的または電気的介入のいずれかを必要としうる場合、持続性AFを患う。したがって、持続性AFはエピソードで起こるが、不整脈は、自発的に洞律動に戻るようには変換されない。
【0025】
本発明の文脈において、最近の発作性心房細動を診断するものとし、特に最近(試料を得る前)起こった発作性心房細動のエピソードを診断するものとする。発作性心房細動は、好ましくは、数分間から最長7日間持続する心房細動の断続的エピソードを指す。好ましくは、エピソードは、1時間未満持続する。より好ましくは、エピソードは1日未満持続する。さらにより好ましくは、エピソードは3日または5日未満持続する。好ましくは、心房細動のエピソードは、自発的に終結した。したがって、心房細動は、好ましくは自発的に終結した。
【0026】
心房細動の終結との関連において、用語「自発的」は、当業者によってよく理解される。用語「自発的終結」は、本明細書において、好ましくは、介入を伴わずに、特に電気除細動を伴わずに、心房細動が終結したことを意味する。
【0027】
好ましくは、発作性心房細動は、本発明の方法を実行する、最長12週前に生じていた場合(またはより正確には、試験しようとする試料を得る、最長12週前に生じていた場合)、最近生じたと見なされる。したがって、試料を得る前、12週間の期間内に、被験体が発作性心房細動、特に発作性心房細動のエピソードを患っているか(またはいないか)を診断する。
【0028】
より好ましくは、発作性心房細動は、試料を得る、最長6週前に生じていた場合、最近生じたと見なされる。したがって、試料を得る前、6週間の期間内に、被験体が発作性心房細動、特に発作性心房細動のエピソードを患っているか(またはいないか)を診断する。
【0029】
さらにより好ましくは、発作性心房細動は、試料を得る、最長15または30日前に生じていた場合、最近生じたと見なされる。したがって、試料を得る前、15または30日間(特に30日間)の期間内に、被験体が発作性心房細動、特に発作性心房細動のエピソードを患っているか(またはいないか)を診断する。1つの態様において、最近の発作性AFは、試料を得る前、1〜30日間以内に生じた。
【0030】
さらにより好ましくは、発作性心房細動は、試料を得る、最長7日前に生じていた場合、最近生じたと見なされる。したがって、試料を得る前、1週間の期間内に、被験体が発作性心房細動、特に発作性心房細動のエピソードを患っているか(またはいないか)を診断する。特に、最近の発作性心房細動は、試料を得る前、1〜7日間以内に生じたことが好ましい。
【0031】
また、最近の発作性心房細動は、試料を得る前、72時間以内に生じたと想定される。
好ましくは、本明細書に言及する期間は、心房細動の最後のエピソードの終結に関する。
【0032】
用語「被験体」は、本明細書において、動物、好ましくは哺乳動物、そしてより好ましくはヒトに関する。被験体は男性(特に60または65歳より上の男性)であってもよい。さらに、被験体は女性(特に60または65歳より上の女性)であってもよい。さらに、被験体は、心房細動を患わない、特に試験しようとする試料を得た時点で、心房細動を患わない、すなわちAFのエピソードを示さないことが想定される。被験体がこの時点で心房細動を患わないかどうかは、当業者によって容易に決定可能である。好ましくは、心房細動を患わない被験体は、心臓の正常の洞律動を示す(またはその逆:心房細動を患わない被験体は、異常な洞律動を示さない)。したがって、被験体が最近の発作性心房細動を患う場合、心房細動は、特に、試料を得た時点で、(正常の)洞律動に戻るように変換されているものとする。好ましくは、心房細動は、試料を得る少なくとも30分前には、(正常)洞律動に戻るように変換されているものとする。したがって、被験体は、試料を得る前、30分以内には、心房細動(AF)のエピソードを示さないものとする。好ましくは、心房細動は、試料を得る、少なくとも3または6時間前には、(正常の)洞律動に戻るように変換されているものとする。より好ましくは、心房細動は、試料を得る、少なくとも24または36時間前には、(正常の)洞律動に戻るように変換されているものとする。さらにより好ましくは、心房細動は、試料を得る、少なくとも72時間前には、(正常の)洞律動に戻るように変換されているものとする。やはり想定されるのは、心房細動が、試料を得る、少なくとも6日前に、(正常の)洞律動に戻るように変換されているものとすることである。
【0033】
したがって、被験体は、好ましくは、試料を得る前、30分以内に、心房細動(AF)のエピソードを示さないものとする。やはり好ましくは、被験体は、試料を得る前、3または6時間以内に、心房細動(AF)のエピソードを示さないものとする。より好ましくは、被験体は、試料を得る前、24または36時間以内に、心房細動(AF)のエピソードを示さないものとする。さらにより好ましくは、被験体は、試料を得る前、72時間以内に、心房細動(AF)のエピソードを示さないものとする。やはり想定されるのは、被験体が、試料を得る前、6日間以内に、心房細動(AF)のエピソードを示さないことである。したがって、診断しようとする最近の発作性AFは、前述の期間内には生じなかったと想定される。好ましくは、上述の期間は、発作性AFの(最近の)エピトープの終結に関する。
【0034】
したがって、本発明にしたがって、試料を得る、好ましくは30分より前、より好ましくは3または6時間より前、さらにより好ましくは24または36時間より前、そして最も好ましくは72時間より前に生じた(特に終結した)発作性AF、特に発作性AFのエピソードを診断することが想定されるが、好ましくは、試料を得る前、7日未満、より好ましくは15日未満、そして最も好ましくは30日未満のものを診断することが想定される。
【0035】
好ましい態様において、試料を得た、30分または3時間より前、しかし7日未満に生じた(特に終結した)発作性AF、特に発作性AFのエピソードを診断することが想定される。別の態様において、試料を得た、6時間より前、しかし7日未満に生じた(特に終結した)発作性AF、特に発作性AFのエピソードを診断することが想定される。別の態様において、試料を得た、24時間より前、しかし15または30日未満に生じた(特に終結した)発作性AF、特に発作性AFのエピソードを診断することが想定される。また、試料を得た、72時間より前、しかし30日未満に生じた(特に終結した)発作性AF、特に発作性AFのエピソードを診断することが想定される。
【0036】
さらに、試料を得た、6時間より前、しかし72時間未満に生じた(特に終結した)発作性AF、特に発作性AFのエピソードを診断することが想定される。
好ましくは、上述の期間は、発作性AFの(最近の)エピトープの終結に関する。
【0037】
本発明の前述の方法にしたがった被験体は、最近の発作性心房細動を患うと推測されるものとする。最近の心房細動を患うと推測される被験体は、好ましくは、心房細動の1またはそれより多いリスク要因を有する被験体である。これらのリスク要因は当該技術分野に周知であり、そしてこれには、弁の問題、ならびに心臓発作歴および心臓手術歴、全身性高血圧、特に生活様式変化または投薬でうまく調節されない場合、ならびにアルコール消費を含む、心臓疾患が含まれる。好ましくは、被験体はリスク群に属すると推測される。特に、被験体が、心臓障害、例えば動脈性または全身性高血圧、糖尿病、喫煙者、高脂血症またはメタボリックシンドロームの徴候を伴う個体、特に被験体が高齢の場合(60、65、70歳より上、および好ましくは75、または80歳より上)などの心臓障害に対する素因があるリスク要因を有する被験体を含む、証明されたまたは推測された心臓障害を伴う被験体であると想定される。あるいは、またはさらに、被験体は、好ましくは、弁障害、好ましくは僧帽弁障害を患うことも可能である。
【0038】
本発明の方法の特に好ましい態様において、被験体は、高血圧および/または心不全を患う。
本発明の1つの態様において、被験体は、58歳の男性ではない。
【0039】
高血圧は、当業者に知られる、いかなる型の高血圧であってもよい。本発明の好ましい態様において、個体は、動脈性高血圧、収縮期高血圧および/または拡張期高血圧を患う。特に、被験体は、動脈性高血圧を患うものとする。好ましくは、被験体は、収縮期圧が140mmHgを超え、そして/または拡張期圧が90mmHgを超える場合、動脈性高血圧を患う。より好ましくは、被験体は、3ヶ月またはそれより長く、6ヶ月またはそれより長く、12ヶ月またはそれより長く、2年またはそれより長く、3年またはそれより長く、あるいは5年またはそれより長く、収縮期圧が140mmHgを超え、そして/または拡張期圧が90mmHgを超える場合、動脈性高血圧を患う。
【0040】
用語「心不全」は、本明細書において、好ましくは、当業者に知られるような、心不全の明らかな徴候が付随する損なわれた収縮機能および/または拡張機能に関する。好ましくは、本明細書で言及する心不全はまた、慢性心不全である。本発明記載の心不全には、明らかなおよび/または進行した心不全が含まれる。明らかな心不全において、被験体は、当業者に知られるような心不全の症状を示す。用語「心不全」は、本明細書において、ACC/AHA分類の病期CおよびDを指すことが特に意図される。これらの病期において、被験体は、心不全の典型的な症状を示し、すなわち被験体は見かけ上健康ではない。心不全を有し、そして病期CまたはDと分類される被験体は、心筋に対する永続的で、不可逆的な構造および/または機能の変化を経ており、そしてこれらの変化の結果、完全な健康回復は不可能である。
【0041】
ACC/AHA分類は、米国心臓病学会および米国心臓協会によって開発された心不全の分類である(J. Am. Coll. Cardiol. 2001;38;2101−2113, 2005年改訂を参照されたい。J. Am. Coll. Cardiol. 2005;46;e1−e82を参照されたい)。4つの病期、A、B、CおよびDが定義される。病期AおよびBはHF(心不全)ではないが、「真の」HFを発展させる前の患者の早期同定を補助すると見なされる。病期AおよびBの患者は、HFを発展させるリスク要因を持つ患者と定義するのが最適である。例えば、左室(LV)機能障害、肥大、または幾何学的心室変形をいまだ示さない、冠動脈疾患、高血圧、または糖尿病を有する患者は、病期Aと見なされるであろうし、一方、無症候性であるが、LV肥大(LVH、心室壁が肥厚する現象)および/またはLV機能障害を示す患者は、病期Bと指定されるであろう。次いで、病期Cは、根底にある構造的心臓疾患に関連したHFの現在のまたは過去の症状を伴う患者(HF患者の大部分)を示し、そして病期Dは、真性の難治性HFの患者を示す。
【0042】
本発明の好ましい態様において、試験しようとする被験体は、病期Aの被験体と分類される(上述のようなACC/AHA分類にしたがう)。
好ましくは、診断しようとする最近の発作性心房細動は、脳卒中と関連して生じなかった。特に、被験体は脳卒中歴を持たないものとすることが想定される。
【0043】
好ましくは、発作性心房細動は、発作性心房細動および脳卒中の間に、一時的なおよび/または必然的な関係がある場合、脳卒中と関連して起こっているようである。好ましくは、発作性心房細動は、脳卒中前および/または後の1週間以内に起こる場合、脳卒中と関連して起きていると見なされる。より好ましくは、発作性心房細動は、脳卒中前および/または後の1ヶ月以内に起こる場合、脳卒中と関連して起こると見なされる。
【0044】
好ましくは、脳卒中歴がない被験体は、試験しようとする試料が得られるより前の3ヶ月以内に脳卒中を患わなかった。より好ましくは、脳卒中歴がない被験体は、試験しようとする試料が得られるより前に、まったく脳卒中を患わなかった。
【0045】
用語「脳卒中」は、当該技術分野に周知である。本明細書において、該用語は、好ましくは、脳への血流の途絶による、脳の特定の領域における細胞突然死を指す。脳卒中はまた、脳アクシデント、脳梗塞、または脳血管アクシデントとも称されうる。脳への血流の途絶は、動脈遮断または動脈破裂が正常血液循環を阻むことによって引き起こされうる。脳卒中には、一過性虚血性発作(TIA)、または小規模脳卒中が先行することも可能であり、これらは、脳への血流の一時的な途絶によって特徴付けられる。脳卒中は、失明、言語障害、筋肉調節障害、意識障害、昏睡および死亡を導きうる。
【0046】
特に、最近の発作性心房細動は、虚血性脳卒中と関連しては生じなかったことが想定される。用語「虚血性脳卒中」(本明細書において「脳卒中」とも称される)は、当業者に周知である(例えば、Adamsら, 虚血性脳卒中を患う成人の初期管理のための指針、米国心臓協会/米国脳卒中協会脳卒中審議会、臨床心臓病審議会、心臓血管放射線学および介入審議会の指針、ならびに研究学際作業グループにおけるアテローム硬化性末梢血管疾患およびケア転帰品質 Stroke. 2007;38:1655;またはStroke Genetics, Hugh S. Markus監修, 第1章「脳卒中序論」, Oxford University Press, Incorporated, 6/3刊行を参照されたい。どちらもその全開示内容に関して、本明細書に援用される)。本明細書において、該用語は、好ましくは、脳虚血性脳卒中を指す。虚血性脳卒中は、脳細胞への酸素送達減少(供給不足)を導く、脳またはその一部への血流減少によって引き起こされる。虚血性脳卒中は、動脈血の流入妨害によって引き起こされる組織貧血によって特徴付けられうる。これは、脳細胞死による不可逆的な組織損傷を導きうる。
【0047】
虚血性脳卒中には多様な古典的系がある。オックスフォード・コミュニティ脳卒中プロジェクト分類(OCSP、バンフォードまたはオックスフォード分類としてもまた知られる)は、主に、初期の症状に頼り;症状の度合いに基づいて、脳卒中エピソードを、全前方循環梗塞(TACI)、部分的前方循環梗塞(PACI)、ラクナ梗塞(LACI)または後方循環梗塞(POCI)と分類する。これらの4つの実体は、脳卒中の度合い、影響を受けた脳の領域、根底にある原因、および予後を予測する。
【0048】
被験体が脳卒中、特に虚血性脳卒中を患っているかどうかは、周知の方法によって決定可能である。さらに、脳卒中の症状は、当該技術分野に周知であり、そして例えばAdamsら(前引用箇所)に記載される。例えば、脳卒中症状には、顔面、腕または脚の、特に体の片側の突然の無感覚または脱力感、突然の意識混濁、発話困難または理解困難、片眼または両眼の突然の見えにくさ、ならびに突然の歩行困難、目眩、平衡感覚または協調性の喪失が含まれる。
【0049】
さらに、本発明の文脈において、被験体は、腎機能障害を持たないことが想定される。好ましくは、被験体は腎不全を患っていないものとし、特に被験体は、急性、慢性および/または末期腎不全を患っていないものとする。さらに、被験体は、好ましくは、腎性高血圧を患わないものとする。被験体が腎機能障害を示すかどうかを評価する方法は、当該技術分野に周知である。知られており、そして適切と見なされる任意の手段によって、腎障害を診断することも可能である。特に、糸球体濾過率(GFR)によって、腎機能を評価することも可能である。例えば、Cockgroft−GaultまたはMDRD公式によって、GFRを計算することも可能である(Levey 1999, Annals of Internal Medicine, 461−470)。GFRは、単位時間あたりに、腎糸球体毛細管からボウマン嚢内に濾過される液体の体積である。臨床的には、これは、しばしば、腎機能を決定するために用いられる。GFRは、元来、血漿内にインスリンを注入することによって概算された(GFRは決定不可能であり、Cockgroft−Gault公式またはMDRD公式などの公式から得られるすべての計算は、概算でしかなく、そして「真の」GFRではない)。インスリンは糸球体濾過後には腎臓によって再吸収されないため、その排出速度は、糸球体フィルターの水および溶質の濾過速度に正比例する。しかし、臨床診察においては、GFRを測定するためには、クレアチニンクリアランスが用いられる。クレアチニンは、内因性の分子であり、体において合成され、糸球体によって自由に濾過される(しかしまた、非常に少量、腎尿細管によって分泌される)。クレアチニンクリアランス(CrCl)は、したがって、GFRの近似値である。GFRは、典型的には、1分あたりのミリリットルで記録される(mL/分)。男性に関するGFRの正常範囲は、97〜137mL/分であり、女性に関するGFRの正常範囲は、88〜128ml/分である。したがって、腎機能障害を示さない被験体のGFRは、この範囲内であることが特に意図される。さらに、前記被験体は、好ましくは、0.9mg/dlより低い、より好ましくは1.1mg/dlより低い、そして最も好ましくは、1.3mg/dlより低い血液クレアチニンレベル(特に血清クレアチニンレベル)を有する。
【0050】
さらに、被験体が、ACS(急性冠動脈症候群)を患わないことがさらに想定される。用語「ACS」には、本明細書において、STEMI(ST上昇心筋梗塞)、NSTEMI(非ST上昇心筋梗塞)および不安定狭心症が含まれる。試験しようとする被験体は、ACS歴を持たないことがさらに想定される。特に、被験体は、本発明の方法を実行する1ヶ月以内(より正確には、試料を得る前の1ヶ月以内)に、ACSを患っていないものとする。
【0051】
被験体が冠動脈疾患を患っていないこともまた意図される。CADと略される用語「冠動脈疾患」は、しばしば、冠動脈心臓疾患(CHD)またはアテローム硬化性心臓疾患とも称され、当業者に知られる。好ましくは、該用語は、心臓に血液および酸素を供給する血管が狭窄している状態を指す。冠動脈疾患は、通常、アテローム性動脈硬化症と呼ばれる状態によって引き起こされ、該状態は、プラークと呼ばれる脂肪性の成分および物質が、動脈壁上に蓄積した際に起こる。これによって血管が狭窄する。特に、CADは、心筋(心臓の筋肉)に供給する動脈壁内のアテローム性プラークの集積の結果である。好ましくは、CADを患う被験体は、少なくとも1つの主要冠動脈において、少なくとも50%の狭窄(そしてしたがって少なくとも50%の閉塞)を有する。したがって、CADを患っていない被験体は、好ましくは、主要冠動脈において、50%未満の狭窄を有する。冠動脈の閉塞の度合いを評価する方法は、当該技術分野に周知であり、好ましくは、度合いは、冠動脈造影によって評価される。疾患の進行した状態において、冠動脈疾患の症状および徴候が認められるが、冠動脈疾患を伴う個体の大部分は、急性事象の最初の発症、しばしば「突然の」心臓発作が最終的に起こるまで、疾患が進行するにつれて、何十年も、疾患の証拠をまったく示さない。
【0052】
さらに、被験体は妊娠していないものとする。また、被験体は、好ましくはアスリートではない。
用語「試料」は、体液試料、分離された細胞の試料、あるいは組織または臓器由来の試料を指す。体液試料は、周知の技術によって得られることも可能であり、そしてこれには、好ましくは、血液、血漿、血清、または尿の試料、より好ましくは、血液、血漿または血清の試料が含まれる。組織または臓器試料は、例えば、生検によって任意の組織または臓器から得られうる。分離された細胞は、分離技術、例えば遠心分離または細胞ソーティングによって、体液、あるいは組織または臓器から得られうる。好ましくは、細胞、組織または臓器試料は、本明細書に言及するペプチドを発現するかまたは産生する細胞、組織または臓器から得られる。被験体が、最近、発作性心房細動を患っている場合、最近の発作性心房細動終結、すなわちエピソード終結、特に発作性心房細動の最後のエピソード終結の、好ましくは少なくとも30分後、そしてより好ましくは少なくとも3時間後、または最も好ましくは少なくとも6時間後に、試料を得る。
【0053】
用語「心臓トロポニン」は、心臓の細胞、そして好ましくは心内膜下細胞において発現されるすべてのトロポニン・アイソフォームを指す。これらのアイソフォームは、例えば、Anderson 1995, Circulation Research, vol. 76, no. 4:681−686およびFerrieres 1998, Clinical Chemistry, 44:487−493に記載されるように、当該技術分野において、よく特徴付けられる。好ましくは、心臓トロポニンは、トロポニンTおよび/またはトロポニンIであり、そして最も好ましくは、トロポニンTである。トロポニンのアイソフォームは、本発明の方法において、一緒に、すなわち同時にまたは連続して、あるいは個々に、すなわち他のアイソフォームをまったく決定せずに、決定することも可能であることが理解されるものとする。ヒトトロポニンTおよびヒトトロポニンIのアミノ酸配列は、Anderson、前引用箇所およびFerrieres 1998, Clinical Chemistry, 44:487−493に開示される。
【0054】
用語「心臓トロポニン」はまた、前述の特定のトロポニンの、すなわち好ましくはトロポニンIの、そしてより好ましくはトロポニンTの変異体も含む。こうした変異体は、特定の心臓トロポニンと、少なくとも同じ本質的な生物学的および免疫学的特性を有する。特に、これらは、本明細書において言及するものと同じ特異的アッセイによって、例えば前記心臓トロポニンを特異的に認識するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を用いたELISAアッセイによって、検出可能である場合、同じ本質的な生物学的および免疫学的特性を共有する。さらに、本発明にしたがって言及されるような変異体は、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失および/または付加のために異なるアミノ酸配列を有するものと理解され、ここで、変異体のアミノ酸配列はなお、好ましくは、特定のトロポニンのアミノ酸配列と(特に全長に渡って)、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である。好ましくは、同一性の度合いは、比較ウィンドウに渡って2つの最適に整列された配列を比較することによって決定されるものとし、ここで、比較ウィンドウ中のアミノ酸配列の断片は、最適整列のため、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較した際、付加または欠失(例えばギャップまたはオーバーハング)を含んでもよい。両方の配列において同一のアミノ酸残基が存在する位の数を決定して、マッチした位の数を得て、比較ウィンドウ中の位の総数で、マッチした位の数を割り、そして結果に100を乗じて、配列同一性パーセントを得ることによって、割合を計算する。比較のための配列の最適な整列を、SmithおよびWaterman Add. APL. Math. 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch J. Mol. Biol. 48:443(1970)の相同性整列アルゴリズムによって、PearsonおよびLipman Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)85:2444(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装によって(Wisconsin Genetics Software Package中のGAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group(GCG), 575 Science Dr., Madison, WI)、または視覚的検査によって、実行可能である。2つの配列が、比較のために同定されたならば、好ましくは、GAPおよびBESTFITを使用して、最適整列を決定し、そしてしたがって同一性の度合いを決定する。好ましくは、ギャップ加重の5.00、およびギャップ加重長の0.30のデフォルト値を用いる。変異体はアレル変異体または任意の他の種特異的相同体、パラログ、またはオルソログであってもよい。さらに、本明細書に言及する変異体には、断片が上述のような本質的な免疫学的および生物学的特性を有する限り、特定の心臓トロポニンまたは前述のタイプの変異体の断片が含まれる。好ましくは、心臓トロポニン変異体は、ヒトトロポニンTまたはトロポニンIのものに匹敵する免疫学的特性(すなわちエピトープ組成)を有する。したがって、変異体は、心臓トロポニンの濃度の決定に用いられる前述の手段またはリガンドによって認識可能であるはずである。こうした断片は、例えばトロポニンの分解産物であってもよい。さらに含まれるのは、リン酸化またはミリスチン化などの翻訳後修飾のために異なる変異体である。好ましくは、トロポニンIおよびその変異体の生物学的特性は、アクトミオシンATPアーゼを阻害するか、またはin vivoおよびin vitroの血管新生を阻害する能力であり、これらは、例えば、Mosesら 1999 PNAS USA 96(6):2645−2650によって記載されるアッセイに基づいて、検出可能である。好ましくは、トロポニンTおよびその変異体の生物学的特性は、トロポニンCおよびIと複合体を形成して、カルシウムイオンに結合するか、あるいは好ましくはトロポニンC、IおよびTの複合体、またはトロポニンC、トロポニンIおよびトロポニンT変異体によって形成される複合体として存在する場合、トロポミオシンに結合する能力である。低濃度の循環心臓トロポニンは、多様な条件で被験体において検出可能であることが知られるが、それぞれの役割および率を理解するためには、さらなる研究が必要である(Massonら, Curr Heart Fail Rep(2010)7:15−21)。
【0055】
好ましくは、心臓トロポニンはトロポニンT、特にヒトトロポニンTである。好ましくは、トロポニンTの量は、実施例、またはWO2012/025355に記載されるような高感度トロポニンアッセイを用いることによって決定される。
【0056】
本明細書において、用語「BNP型ペプチド」は、プレ−プロBNP、プロBNP、NT−プロBNP、およびBNPを含む。特に、BNP型ペプチドはNT−プロBNPまたはBNPである。
【0057】
プレ−プロペプチド(プレ−プロBNPの場合は134アミノ酸)は、短いシグナルペプチドを含み、該シグナルペプチドは、酵素的に切断されて、プロペプチドを放出する(プロBNPの場合は108アミノ酸)。プロペプチドは、さらに切断されてN末端プロペプチド(NT−プロペプチド、NT−プロBNPの場合は76アミノ酸)となり、そして活性ホルモン(BNPの場合は32アミノ酸)となる。好ましくは、本発明にしたがったBNP型ペプチドは、NT−プロBNP、BNP、およびその変異体である。BNPは活性ホルモンであり、そしてそれぞれの不活性対応物NT−プロBNPよりも短い半減期を有する。BNPは血液中で代謝され、一方、NT−プロBNPは、インタクトな分子として血液中を循環し、そしてこうしたものとして、腎臓で排出される。NT−プロBNPのin vivo半減期は、20分であるBNPの半減期より120分長い(Smith 2000, J Endocrinol. 167:239−46.)。前解析は、NT−プロBNPでよりロバストであり、中央実験室に試料を容易に輸送することが可能である(Mueller 2004, Clin Chem Lab Med 42:942−4.)。血液試料は、数日間、室温で保存してもよく、あるいは回収損失を伴わずに郵送または搬送することも可能である。対照的に、室温または4℃でBNPを48時間保存すると、少なくとも20%の濃度損失につながる(Mueller、前引用箇所; Wu 2004, Clin Chem 50:867−73.)。したがって、時間経過または関心対象の特性に応じて、ナトリウム利尿ペプチドの活性型または不活性型のいずれかの測定が好適でありうる。本発明にしたがって最も好ましいナトリウム利尿ペプチドは、NT−プロBNPまたはその変異体である。上に簡潔に論じるように、ヒトNT−プロBNPは、本発明にしたがって称される際、好ましくは、ヒトNT−プロBNP分子のN末端部分に対応する長さ76アミノ酸を含むポリペプチドである。ヒトBNPおよびNT−プロBNPの構造は、先行技術、例えばWO 02/089657、WO 02/083913またはBonow、前引用箇所にすでに詳細に記載されてきている。好ましくは、ヒトNT−プロBNPは、本明細書において、EP 0 648 228 B1に開示されるような、ヒトNT−プロBNPである。これらの先行技術文献は、文献中に開示されるNT−プロBNPおよびその変異体の特定の配列に関して、本明細書に援用される。本発明にしたがって言及されるNT−プロBNPは、上に論じるヒトNT−プロBNPの前記の特定の配列のアレル変異体および他の変異体をさらに含む。具体的には、アミノ酸レベルで、ヒトNT−プロBNPに、好ましくはヒトNT−プロBNPの全長に渡って、好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一である変異体ポリペプチドが想定される。2つのアミノ酸配列間の同一性の度合いは、当該技術分野に周知のアルゴリズムによって決定可能である。好ましくは、同一性の度合いは、2つの最適に整列される配列を、比較ウィンドウに渡って比較することによって決定されるものとし、ここで、比較ウィンドウ中のアミノ酸配列の断片は、最適整列のため、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較した際、付加または欠失(例えばギャップまたはオーバーハング)を含んでもよい。両方の配列において同一のアミノ酸残基が存在する位の数を決定して、マッチした位の数を得て、比較ウィンドウ中の位の総数で、マッチした位の数を割り、そして結果に100を乗じて、配列同一性パーセントを得ることによって、割合を計算する。比較のための配列の最適な整列を、SmithおよびWaterman Add. APL. Math. 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch J. Mol. Biol. 48:443(1970)の相同性整列アルゴリズムによって、PearsonおよびLipman Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)85:2444(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装によって(Wisconsin Genetics Software Package中のGAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group(GCG), 575 Science Dr., Madison, WI)、または視覚的検査によって、実行可能である。2つの配列が、比較のために同定されたならば、好ましくは、GAPおよびBESTFITを使用して、最適整列を決定し、そしてしたがって同一性の度合いを決定する。好ましくは、ギャップ加重の5.00、およびギャップ加重長の0.30のデフォルト値を用いる。上に言及する変異体はアレル変異体または任意の他の種特異的相同体、パラログ、またはオルソログであってもよい。診断手段によって、またはそれぞれの全長ペプチドに対して向けられるリガンドによって、なお認識されるタンパク質分解性分解産物は、実質的に類似であり、そしてやはり想定される。ポリペプチドがNT−プロBNP特性を有する限り、ヒトNT−プロBNPのアミノ酸配列に比較して、アミノ酸欠失、置換、および/または付加を有する変異体ポリペプチドもまた含まれる。本明細書に言及するようなNT−プロBNP特性は、免疫学的および/または生物学的特性である。好ましくは、NT−プロBNP変異体は、ヒトNT−プロBNPのものに匹敵する免疫学的特性(すなわちエピトープ組成)を有する。したがって、変異体は、ナトリウム利尿ペプチドの量の決定のために用いられる前述の手段またはリガンドによって認識可能であるものとする。生物学的および/または免疫学的NT−プロBNP特性は、Karlら(Karl 1999, Scand J Clin Lab Invest 230:177−181)、Yeoら(Yeo 2003, Clinica Chimica Acta 338:107−115)に記載されるアッセイによって検出可能である。変異体にはまた、グリコシル化ペプチドなどの翻訳後修飾ペプチドも含まれる。さらに、本発明にしたがった変異体はまた、試料収集後に、例えばペプチドへの標識、特に放射性または蛍光標識の共有または非共有付着によって修飾されているペプチドまたはポリペプチドである。
【0058】
本明細書において、C反応性タンパク質とも称されるCRPは、肺炎球菌のC多糖に結合する血液タンパク質であることが75年以上前に発見された、急性期タンパク質である。CRPは、反応性炎症性マーカーとして知られ、そして原発性病変部位から生じるケモカインまたはインターロイキンに応答または反応して、遠位臓器(すなわち肝臓)によって産生される。CRPは、非共有結合して、そして分子量およそ110〜140kDaの環状五量体として集合する、5つの単一のサブユニットからなる。好ましくは、CRPは、本明細書において、ヒトCRPに関する。ヒトCRPの配列は周知であり、そして例えば、Wooら(J. Biol. Chem. 1985. 260(24), 13384−13388)によって開示される。CRPのレベルは、通常、正常個体においては低いが、炎症、感染または傷害のため、100〜200倍またはそれより高く上昇しうる(Yeh(2004) Circulation. 2004;109:II−11〜II−14)。CRPは、心臓血管リスクの予測のため、独立の要因であることが知られる。特に、CRPは、心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患および心臓突然死の予測因子として適切であることが示されてきている。さらに、上昇した量のCRPはまた、急性冠動脈症候群(ACS)の被験体および冠動脈介入を経験している被験体において、再発性虚血および死を予測することもまた可能である。CRPの決定は、専門委員会によって(例えば米国心臓協会によって)、冠動脈心疾患のリスクがある患者において推奨される(Pearsonら(2003)炎症および心臓血管疾患のマーカー Circulation, 107:499−511もまた参照されたい)。用語CRPはまた、その変異体にも関する。
【0059】
好ましくは、被験体試料中のCRPの量を、高感度CRPアッセイを用いることによって決定する。こうしたアッセイによって決定されたCRPは、しばしば、高感度CRP(hsCRP)とも称される。hsCRPアッセイは、例えば、心臓疾患のリスクを予測するために用いられる。適切なhsCRPアッセイが当該技術分野に知られる。本発明の文脈において、特に好ましいhsCRPアッセイは、検出限界0.1mg/lのRoche/Hitachi CRP(Latex)HS試験である。
【0060】
インターロイキン−6(IL−6と略される)は、T細胞およびマクロファージによって分泌され、例えば感染中に、そして外傷、特に火傷または他の組織損傷の後に、免疫反応を刺激して、炎症を導く、インターロイキンである。IL−6は、炎症促進性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの両方として作用する。ヒトにおいては、IL−6はIL6遺伝子によってコードされる。ヒトIL−6の配列は、GenBankを通じてアクセス(assessed)可能である(ポリヌクレオチド配列に関しては、NM_000600.3を、そしてアミノ酸配列に関しては、NP_000591.1を参照されたい)。IL−6は、リガンド結合性IL−6Rα鎖(CD126)、およびシグナル伝達構成要素gp130(CD130とも呼ばれる)からなる細胞表面I型サイトカイン受容体複合体を通じてシグナル伝達する。CD130は、白血病阻害因子(LIF)、毛様体神経栄養因子、オンコスタチンM、IL−11およびカルジオトロフィン−1を含む、いくつかのサイトカインの共通のシグナル伝達因子であり、そして大部分の組織において、ほぼ遍在性に発現されている。対照的に、CD126の発現は、特定の組織に限定される。IL−6がその受容体と相互作用すると、これによって、gp130およびIL−6Rタンパク質が複合体を形成するよう誘発され、こうして受容体が活性化される。これらの複合体は、gp130の細胞内領域を一緒にして、特定の転写因子、Janusキナーゼ(JAK)およびシグナル伝達因子および転写活性化因子を通じたシグナル伝達カスケードを開始する。
【0061】
マーカーIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)は当該技術分野に周知である。インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP)系は、細胞増殖および分化において、重要な役割を果たす。該タンパク質は、2つのリガンド、IGF−IおよびIGF−II、2つの受容体1型および2型IGF受容体、そして1995年現在で、6つのIGF結合タンパク質(IGFBP)、IGFBP−1〜−6(Jones, J.I.ら, Endocr. Rev. 16(1995)3−34)を含む。近年、IGFBPファミリーは、IGFBPと有意な構造的類似性を有する、IGFBP関連タンパク質(IGFBP−rP)も含むように拡大されてきている(Hwa, V.ら, Endocr. Rev 20(1999)761−787)。したがって、IGFBPスーパーファミリーには、IGFに対して高いアフィニティを有する6つの慣用的なIGFBP、ならびにIGFBPの保存されたアミノ末端ドメインを共有するだけでなく、ある程度の度合いのIGFおよびインスリンに対するアフィニティも示す、少なくとも10のIGFBP−rPが含まれる。IGFBP−rPは、多様な細胞機能、例えば細胞増殖、細胞接着および遊走、ならびに細胞外マトリックスの合成を制御する、システインリッチタンパク質群である。さらに、これらのタンパク質は、組織増殖および分化、再生、血管新生、創傷修復、炎症、線維症、および腫瘍発生のような生物学的プロセスに関与する可能性もある(Hwa, V.ら, Endocr. Rev 20(1999)761−787)。
【0062】
IGF結合タンパク質7(=IGFBP7)は、内皮細胞、血管平滑筋細胞、線維芽細胞、および上皮細胞によって分泌されることが知られる30kDaのモジュール糖タンパク質である(Ono, Y.ら, Biochem Biophys Res Comm 202(1994)1490−1496)。文献において、この分子はまた、FSTL2;IBP7;IGF結合タンパク質関連タンパク質I;IGFBP 7;IGFBP 7v;IGFBP rP1;IGFBP7;IGFBPRP1;インスリン様増殖因子結合タンパク質7;インスリン様増殖因子結合タンパク質7前駆体;MAC25;MAC25タンパク質;PGI2刺激因子;およびPSFまたはプロスタサイクリン刺激因子とも称されてきている。ノーザンブロット研究によって、心臓、脳、胎盤、肝臓、骨格筋、および膵臓を含む、ヒト組織におけるこの遺伝子の広い発現が明らかになった(Oh, Y.ら, J. Biol. Chem. 271(1996)30322−30325)。
【0063】
IGFBP7は、対応物腫瘍細胞に比べて、正常な軟髄膜および乳腺上皮細胞において示差的に発現される遺伝子として最初に同定され、そして髄膜腫関連cDNA(MAC25)と命名された(Burger, A.M.ら, Oncogene 16(1998)2459−2467)。発現されるタンパク質は、腫瘍由来接着因子(後に、アンギオモジュリンと改名された)(Sprenger, C.C.ら, Cancer Res 59(1999)2370−2375)として、そしてプロスタサイクリン刺激因子(Akaogi, K.ら, Proc Natl Acad Sci USA 93(1996)8384−8389)として、独立に精製された。さらに、該分子は、乳癌において下方制御される遺伝子、T1A12としても報告されてきている(StCroix, B.ら, Science 289(2000)1197−1202)。
【0064】
好ましくは、用語「IGFBP7」は、ヒトIGFBP7を指す。該タンパク質の配列は、当該技術分野において周知であり、そして例えばGenBank(NP_001240764.1)を通じてアクセス可能である。IGFBP7は、本明細書において、好ましくは、特定のIGFBP7ポリペプチドの変異体もまた含む。
【0065】
前述の方法と関連して決定されることが好ましいマーカーは、心臓トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−プロBNP(脳ナトリウム利尿ペプチドN末端プロホルモン)、およびhsCRP、またはIL−6(インターロイキン−6)である。
【0066】
本発明の方法の文脈において言及されるようなペプチドまたはポリペプチドの量を決定する工程は、量または濃度を、好ましくは半定量的または定量的に測定する工程に関する。測定は、直接または間接的に行うことも可能である。直接測定は、ペプチドまたはポリペプチド自体から得られるシグナル、および試料中に存在するペプチドの分子数と直接相関する強度に基づいて、ペプチドまたはポリペプチドの量または濃度を測定する工程に関する。こうしたシグナルは、本明細書において時に、強度シグナルと称され、例えばペプチドまたはポリペプチドの特定の物理的または化学的特性の強度値を測定することによって得られうる。間接的測定には、二次構成要素(すなわちペプチドまたはポリペプチド自体ではない構成要素)または生物学的読み取り値、例えば測定可能な細胞反応、リガンド、標識、または酵素反応産物から得られるシグナルを測定する工程が含まれる。
【0067】
本発明にしたがって、ペプチドまたはポリペプチドの量を決定する工程は、試料におけるペプチドの量を決定するためのすべての既知の手段によって達成可能である。前記手段は、イムノアッセイ、および多様なサンドイッチ、競合、または他のアッセイ形式で標識分子を利用可能な方法を含む。こうしたアッセイは、好ましくは、検出剤、例えば決定しようとするペプチドまたはポリペプチドを特異的に認識する抗体に基づく。検出剤は、直接または間接的のいずれかで、ペプチドまたはポリペプチドの存在または非存在を示すシグナルを生成することが可能であるものとする。さらに、シグナル強度は、好ましくは、試料中に存在するポリペプチドの量に、直接または間接的に相関(例えば反比例)することも可能である。さらに適切な方法は、ペプチドまたはポリペプチドに特異的な物理的または化学的特性、例えばその正確な分子量またはNMRスペクトルを測定することを含む。前記方法は、好ましくは、バイオセンサー、イムノアッセイにカップリングした光学デバイス、バイオチップ、分析デバイス、例えば質量分析器、NMRアナライザー、またはクロマトグラフィデバイスを含む。さらに、方法には、マイクロプレートELISAに基づく方法、完全自動化またはロボットイムノアッセイ(例えばElecsysTMアナライザー装置上で利用可能)、CBA(例えば、Roche−HitachiTMアナライザー上で利用可能な、酵素的コバルト結合アッセイ)、およびラテックス凝集アッセイ(例えば、Roche−HitachiTMアナライザー上で利用可能)が含まれる。
【0068】
好ましくは、ペプチドまたはポリペプチドの量を決定する工程は、(a)その強度が、ペプチドまたはポリペプチドの量の指標となる細胞反応を誘発可能な細胞と、前記ペプチドまたはポリペプチドを、適切な期間、接触させ、(b)該細胞反応を測定することを含む。細胞反応を測定するため、試料またはプロセシングされた試料を、好ましくは細胞培養に添加し、そして内部または外部細胞反応を測定する。細胞反応には、レポーター遺伝子の測定可能な発現、あるいは物質、例えばペプチド、ポリペプチド、または小分子の分泌が含まれうる。発現または物質は、ペプチドまたはポリペプチドの量に相関する強度シグナルを生じるものとする。
【0069】
やはり好ましくは、ペプチドまたはポリペプチドの量を決定する工程は、試料におけるペプチドまたはポリペプチドから得られうる特異的強度シグナルを測定することを含む。上述のように、こうしたシグナルは、マススペクトルにおいて観察されるペプチドまたはポリペプチドに特異的なm/z変数、あるいはペプチドまたはポリペプチドに特異的なNMRスペクトルで観察されるシグナル強度であることも可能である。
【0070】
ペプチドまたはポリペプチドの量を決定する工程は、好ましくは、(a)特異的リガンドとペプチドを接触させ、(b)(場合によって)非結合リガンドを除去し、(c)結合したリガンド、すなわち工程(a)で形成されたリガンド複合体の量を測定することを含むことも可能である。好ましい態様にしたがって、接触し、除去し、そして測定する前記工程は、本明細書に開示する系のアナライザー装置によって実行されてもよい。いくつかの態様にしたがって、前記工程は、前記系の単一のアナライザー装置によって、または互いに機能可能な通信がある1より多いアナライザー装置によって、実行可能である。例えば、特定の態様にしたがって、本明細書に開示する前記系には、接触させ、そして除去する前記工程を実行するための第一のアナライザー装置、および輸送装置(例えばロボットアーム)によって前記の第一のアナライザー装置に機能可能であるように連結されている、測定する前記工程を実行する、第二のアナライザー装置が含まれることも可能である。
【0071】
結合したリガンド、すなわち、リガンドまたはリガンド/ペプチド複合体は、強度シグナルを生じるであろう。本発明にしたがった結合には、共有および非共有結合の両方が含まれる。本発明にしたがったリガンドは、本明細書記載のペプチドまたはポリペプチドに結合する、任意の化合物、例えばペプチド、ポリペプチド、核酸、または小分子であってもよい。好ましいリガンドには、抗体、核酸、ペプチドまたはポリペプチド、例えば該ペプチドまたはポリペプチドに関する受容体または結合パートナー、および該ペプチドに対する結合ドメインを含むその断片、ならびにアプタマー、例えば核酸またはペプチドアプタマーが含まれる。こうしたリガンドを調製する方法は、当該技術分野に周知である。例えば、適切な抗体またはアプタマーの同定および産生はまた、商業的供給者によっても提供される。当業者は、より高いアフィニティまたは特異性を持つリガンドの誘導体を発展させる方法をよく知っている。例えば、ランダム突然変異を、核酸、ペプチドまたはポリペプチド内に導入することも可能である。次いで、これらの誘導体を、当該技術分野に知られるスクリーニング法、例えばファージディスプレイにしたがって、結合に関して試験することも可能である。本明細書に言及するような抗体には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方、ならびに抗原またはハプテンに結合可能な、その断片、例えばFv、FabおよびF(ab)2断片が含まれる。本発明にはまた、一本鎖抗体およびヒト化ハイブリッド抗体も含まれ、ここで、望ましい抗原特異性を示す非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列を、ヒトアクセプター抗体の配列と組み合わせる。ドナー配列には、通常、少なくともドナーの抗原結合アミノ酸残基が含まれるが、ドナー抗体の他の構造的および/または機能的に適切なアミノ酸残基もまた含まれてもよい。こうしたハイブリッドは、当該技術分野に周知のいくつかの方法によって調製可能である。好ましくは、リガンドまたは剤は、ペプチドまたはポリペプチドに特異的に結合する。本発明にしたがった特異的結合は、リガンドまたは剤が、分析しようとする試料中に存在する別のペプチド、ポリペプチドまたは物質に実質的に結合(これらと「交差反応」)してはならないことを意味する。好ましくは、特異的に結合するペプチドまたはポリペプチドは、いかなる他の関連するペプチドまたはポリペプチドよりも、少なくとも3倍高い、より好ましくは少なくとも10倍高い、そしてさらにより好ましくは少なくとも50倍高いアフィニティで結合しなければならない。非特異的結合は、例えばウェスタンブロット上のサイズにしたがって、または試料における、比較的より高い存在量によって、それがなお区別可能であり、そして明白に測定可能である場合、許容されうる。リガンドの結合は、当該技術分野に知られる任意の方法によって測定可能である。好ましくは、前記方法は、半定量的または定量的である。ポリペプチドまたはペプチドの決定のためのさらなる適切な技術を以下に記載する。
【0072】
リガンドの結合を直接、例えばNMRまたは表面プラズモン共鳴によって測定することも可能である。好ましい態様にしたがって、リガンド結合の測定は、本明細書に開示する系のアナライザー装置によって実行される。その後、本明細書に開示する系の計算デバイスによって、測定した結合の量を計算することも可能である。リガンドがまた、関心対象のペプチドまたはポリペプチドの酵素活性の基質としても働く場合、酵素反応産物を測定してもよい(例えば、切断された基質の量を、例えばウェスタンブロット上で測定することによって、プロテアーゼの量を測定することも可能である)。あるいは、リガンドは、それ自体、酵素特性を示すことも可能であり、そして「リガンド/ペプチドまたはポリペプチド」複合体、あるいはペプチドまたはポリペプチドによってそれぞれ結合されるリガンドを、適切な基質と接触させて、強度シグナルの生成による検出を可能にすることも可能である。酵素反応産物の測定のため、好ましくは基質の量は飽和量である。基質はまた、反応の前に検出可能な標識で標識されてもよい。好ましくは、試料を基質と適切な期間接触させる。適切な期間は、検出可能な、好ましくは測定可能な量の産物が産生されるために必要な時間を指す。産物の量を測定する代わりに、所定の(例えば検出可能な)量の産物の出現に必要な時間を測定することも可能である。第三に、リガンドを、共有的にまたは非共有的に、リガンドの検出および測定を可能にする標識にカップリングすることも可能である。標識を、直接または間接的方法によって行ってもよい。直接標識は、標識をリガンドに直接(共有的または非共有的に)カップリングすることを含む。間接的標識は、第一のリガンドに二次リガンドを(共有的または非共有的に)結合させることを含む。二次リガンドは、第一のリガンドに特異的に結合しなければならない。前記の二次リガンドを、適切な標識にカップリングさせてもよいし、そして/または前記の二次リガンドは該二次リガンドに結合する三次リガンドのターゲット(レセプター)であってもよい。二次、三次、またはさらにより高次のリガンドは、しばしば、シグナルを増加させるために用いられる。適切な二次およびより高次のリガンドには、抗体、二次抗体、および周知のストレプトアビジン−ビオチン系(Vector Laboratories, Inc.)が含まれることも可能である。リガンドまたは基質はまた、当該技術分野に知られるような1またはそれより多いタグで、「タグ付け」されていてもよい。こうしたタグは次いで、より高次のリガンドのターゲットであることも可能である。適切なタグには、ビオチン、ジゴキシゲニン、His−タグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、FLAG、GFP、myc−タグ、インフルエンザAウイルス赤血球凝集素(HA)、マルトース結合タンパク質等が含まれる。ペプチドまたはポリペプチドの場合、タグは、好ましくはN末端および/またはC末端にある。適切な標識は、適切な検出法によって検出可能な任意の標識である。典型的な標識には、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム、酵素的活性標識、放射性標識、磁気標識(例えば常磁性および超常磁性標識を含む「磁気ビーズ」)、および蛍光標識が含まれる。酵素的活性標識には、例えば西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、およびその誘導体が含まれる。検出に適した基質には、ジアミノベンジジン(DAB)、3,3’−5,5’−テトラメチルベンジジン、NBT−BCIP(Roche Diagnosticsから既製ストック溶液として入手可能な、4−ニトロブルーテトラゾリウムクロリド、および5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ホスフェート)、CDP−StarTM(Amersham Biosciences)、ECFTM(Amersham Biosciences)が含まれる。適切な酵素−基質の組み合わせは、着色反応産物、蛍光または化学発光を生じることも可能であり、これらは当該技術分野に知られる方法にしたがって(例えば感光フィルムまたは適切なカメラ系を用いて)測定可能である。酵素反応の測定に関しては、上述の基準が同様に適用される。典型的な蛍光標識には、蛍光タンパク質(例えばGFPおよびその誘導体)、Cy3、Cy5、テキサスレッド、フルオレセイン、およびAlexa色素(例えばAlexa568)が含まれる。さらなる蛍光標識は、例えばMolecular Probes(Oregon)から入手可能である。蛍光標識としての量子ドットの使用もまた意図される。典型的な放射性標識には、35S、125I、32P、33P等が含まれる。放射性標識は、既知のおよび適切な任意の方法、例えば感光フィルムまたはホスホイメージャーによって、検出可能である。本発明にしたがった適切な測定法にはまた、沈降(特に免疫沈降)、電気化学発光(電気生成化学発光)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素連結免疫吸着アッセイ)、サンドイッチ酵素免疫試験、電気化学発光サンドイッチイムノアッセイ(ECLIA)、解離増進ランタニド蛍光イムノアッセイ(DELFIA)、シンチレーション近接アッセイ(SPA)、比濁法、比濁分析、ラテックス増進比濁法または比濁分析、あるいは固相免疫試験も含まれる。当該技術分野に知られるさらなる方法(例えばゲル電気泳動、2Dゲル電気泳動、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、ウェスタンブロッティング、および質量分析)を、単独で、あるいは上述の標識または他の検出法と組み合わせて、用いてもよい。
【0073】
ペプチドまたはポリペプチドの量はまた、好ましくは、以下のように決定可能である:(a)上に明記するようなペプチドまたはポリペプチドに対するリガンドを含む固体支持体を、ペプチドまたはポリペプチドを含む試料と接触させ、そして(b)支持体に結合しているペプチドまたはポリペプチドの量を測定する。好ましくは、リガンドは、核酸、ペプチド、ポリペプチド、抗体およびアプタマーからなる群より選択され、好ましくは、固定された型で、固体支持体上に存在する。固体支持体を製造するための材料は、当該技術分野に周知であり、そしてとりわけ、これには、商業的に入手可能なカラム材料、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、コロイド金属粒子、ガラスおよび/またはシリコンチップおよび表面、ニトロセルロースストリップ、膜、シート、デュラサイト(duracyte)、反応トレイのウェルおよび壁、プラスチックチューブ等が含まれる。リガンドまたは剤を、多くの異なるキャリアーに結合させてもよい。周知のキャリアーの例には、ガラス、ポリスチレン、塩化ポリビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトが含まれる。キャリアーの性質は、本発明の目的のため、可溶性または不溶性のいずれであることも可能である。前記リガンドを固定/不動化するための適切な方法が周知であり、そしてこれには、限定されるわけではないが、イオン性、疎水性、共有相互作用等が含まれる。本発明にしたがったアレイとして、「懸濁アレイ」の使用もまた意図される(Nolan 2002, Trends Biotechnol. 20(1):9−12)。こうした懸濁アレイにおいて、キャリアー、例えばマイクロビーズまたは微小球体が懸濁中に存在する。アレイは、標識されていてもよく、異なるリガンドを所持する、異なるマイクロビーズまたは微小球体からなる。例えば固相化学反応および光感受性保護基に基づいて、こうしたアレイを産生する方法が、一般的に知られる(US 5,744,305)。
【0074】
用語「量」は、本明細書において、ポリペプチドまたはペプチドの絶対量、前記ポリペプチドまたはペプチドの相対量または濃度、ならびにこれらに相関するかまたはこれらから派生しうる任意の値またはパラメータを含む。こうした値またはパラメータは、直接測定によって前記ペプチドから得られるすべての特異的物理的または化学的特性由来の強度シグナル値、例えばマススペクトルまたはNMRスペクトルの強度値を含む。さらに、本明細書の別の箇所に明記する間接的な測定によって得られるすべての値またはパラメータ、例えばペプチドに反応して生物学的読み取り系から決定される反応量、または特異的に結合したリガンドから得られる強度シグナルが含まれる。前述の量またはパラメータに相関する値はまた、すべての標準的な数学演算によっても得られうることが理解されるものとする。本発明の好ましい態様にしたがって、「量」の決定は開示する系によって実行され、それによって計算デバイスが、前記系の1またはそれより多いアナライザー装置によって実行される接触および測定工程に基づいて、「量」を決定する。
【0075】
用語「比較すること」は、本明細書において、本明細書に言及するようなマーカーの量、特に分析しようとする試料によって含まれるペプチドまたはポリペプチドの量を、本明細書の別の箇所に明記する適切な参照供給源の量と比較することを含む。本明細書において、比較することは、対応するパラメータまたは値の比較を指し、例えば絶対量を絶対参照量に比較する一方、濃度を参照濃度に比較するか、または試験試料から得られる強度シグナルを参照試料の同じタイプの強度シグナルに比較すると理解されるものとする。本発明の方法の工程(b)において言及される比較を、手動で、または計算デバイス(例えば本明細書に開示する系の)によって、実行してもよい。コンピュータ補助比較に関しては、決定される量の値を、コンピュータプログラムによってデータベース中に記憶されている適切な参照に対応する値に比較することも可能である。コンピュータプログラムは、比較の結果をさらに評価することも可能であり、すなわち適切な出力形式で所望の評価を自動的に提供する。前記結果は、好ましくは、被験体を本明細書の別の箇所に示すような画像法に基づく診断評価に供するべきであるかどうかを評価する際の補助として働くことも可能である。例えば、比較の結果を生データ(絶対量または相対量)として提供してもよいし、そしていくつかの場合、特定の診断の指標となりうる単語、句、記号、または数値の形の指標として、提供してもよい。したがって、参照量は、比較される量の相違または類似性のいずれかが、本発明の診断を実行することを可能にするように選択されるものとする。
【0076】
用語「参照量」は、本明細書において、発作性心房細動(AF)を最近患った被験体群、または発作性心房細動(AF)を最近患っていない被験体群のいずれかに、被験体を割り当てることを可能にする量を指す。こうした参照量は、これらの群を互いに分離する閾値量であることも可能である。したがって、本明細書に言及するようなバイオマーカーの参照量は、発作性心房細動(AF)を最近患った被験体群、または発作性心房細動(AF)を最近患っていない被験体群のいずれかに、被験体を割り当てることを可能にする量であるものとする。2つの群を分離する適切な閾値量は、発作性心房細動(AF)を最近患った被験体または被験体群、あるいは発作性心房細動(AF)を最近患っていない被験体または被験体群のいずれかに由来する本明細書に言及するようなマーカーの量に基づいて、本明細書の別の箇所に言及する統計検定によって、容易に計算可能である。前述の被験体または被験体群から得られうる好ましい参照量は、本明細書の別の箇所に示される。
【0077】
参照量を用いて、閾値量を定義するかまたは確立することも可能である。閾値量は、好ましくは、被験体が最近発作性心房細動(AF)を患ったかどうかの包含および/または排除を可能にする。前記包含および/または排除は、参照または閾値への、計算された「量」の前記比較に基づいて、本明細書に開示する系の計算デバイスによって提供されうる。例えば、系の計算デバイスは、包含または排除の指標である単語、記号、または数値の形で、指標を提供することも可能である。個々の被験体に適用可能な参照量は、多様な生理学的パラメータ、例えば年齢、性別、または亜集団、ならびに本明細書に言及するポリペプチドまたはペプチドの決定に用いる手段に応じて多様でありうる。適切な参照量を、試験試料と一緒に、すなわち同時にまたは続いて分析しようとする参照試料から決定することも可能である。好ましくは、参照量は、本発明の方法を実行することによって決定される。好ましくは、参照量は、最近の発作性AFに関して同じ期間内に得た試料(単数または複数)において決定される。
【0078】
好ましくは、参照量は計算された参照量である。好ましくは、計算された参照量は、発作性心房細動(AF)を最近患った被験体、および発作性心房細動(AF)を最近患っていない被験体の間を区別することを可能にするものとする。参照量は、原則的に、標準的統計法を適用することによって、所定のバイオマーカーに関する平均値に基づいて、上に明記するような被験体のコホートに関して計算されうる。特に、試験、例えば事象かまたはそうでないかを診断する目的の方法の正確性は、受信者操作特性(ROC)によって最適に記載される(特に、Zweig 1993, Clin. Chem. 39:561−577を参照されたい)。ROCグラフは、観察されるデータの全範囲に渡って決定閾値を連続して変化させることから生じる感度/特異性対のすべてのプロットである。診断法の臨床的成績は、その正確性、すなわち特定の評価、予後または診断に被験体を正確に割り当てる能力に依存する。ROCプロットは、区別を行うために適した閾値の完全な範囲に関して、1−特異性に対して感度をプロットすることによる、2つの分布間の重複を示す。y軸にあるのは感度であるかまたは真の陽性分画であり、これは真の陽性の数および偽陰性試験結果の数の積に対する、真の陽性試験結果の数の比として定義される。これはまた、疾患または状態の存在における陽性とも称されてきている。これは、もっぱら、罹患した下位群から計算される。x軸にあるのは、偽陽性分画、または1−特異性であり、真の陰性の数および偽陽性結果の数の積に対する、偽陽性結果の数の比として定義される。これは、特異性の指標であり、そして完全に、罹患していない下位群から計算される。真の陽性および偽陽性分画は、完全に別個に計算されるため、2つの異なる下位群からの試験結果を用いることによって、ROCプロットは、コホートにおける事象の有病率からは独立である。ROCプロット上の各ポイントは、特定の決定閾値に対応する、感度/特異性対に相当する。完全な区別(結果の2つの分布に重複が全くない)を伴う試験は、上部左隅を通るROCプロットを有し、ここで、真の陽性分画は、1.0、または100%(完全感度)であり、そして偽陽性分画は0(完全特異性)である。区別なしの試験の理論的プロット(2つの群に関する結果の同一の分布)は、下部左隅から上部右隅を通る、45°の対角線である。大部分のプロットは、これらの2つの極値の間に属する。ROCプロットが45°対角線の完全に下にある場合、これは「陽性」に関する基準を「より大きい」から「未満である」に逆転させるか、またはその逆を行うことによって、容易に修正される。定性的には、プロットが上部左隅に近くなればなるほど、試験の全体の正確性が高くなる。望ましい信頼区間に応じて、閾値をROC曲線から得て、感度および特異性、それぞれの適切なバランスで、所定の事象の診断または予測を可能にすることも可能である。したがって、本発明の前述の方法に用いられるべき参照値は、好ましくは、閾値またはカットオフ量であることも可能であり、そしてこれを、好ましくは、上述のような前記コホートに関するROCを確立し、そしてそこから閾値量を得ることによって、生成することも可能である。診断法の望ましい感度および特異性に応じて、ROCプロットは、適切な閾値を得ることを可能にする。
【0079】
好ましくは、以下が診断アルゴリズムとして適用される(特に参照が計算参照量である場合):
好ましくは、参照量(単数または複数)に比べて、少なくとも1つのマーカーの増加した量(単数または複数)は、最近の発作性心房細動の診断の指標であり、一方、参照量(単数または複数)に比べて、少なくとも1つのマーカーの減少した量(単数または複数)は、被験体が最近、発作性心房細動を患わなかったことを示す。
【0080】
好ましい参照量は以下の通りである:
マーカーhsCRPに関して、参照量は、好ましくは2.5〜3.5mg/lの範囲内であり、そしてより好ましくは3.0〜3.5mg/lの範囲内である。最も好ましくは、参照量は3.0または3.5mg/lである。
【0081】
心臓トロポニンに関して、参照量は、好ましくは4.0〜6pg/mlの範囲内であり、そしてより好ましくは5.0〜6.0pg/mlの範囲内である。最も好ましくは、参照量は5.5または6.0pg/mlである。
【0082】
マーカーIl−6に関して、参照量は、好ましくは1.5〜2.0pg/mlの範囲内であり、そしてより好ましくは1.6〜1.9pg/mlの範囲内である。最も好ましくは、参照量は1.7または1.9pg/mlである。
【0083】
マーカーNT−プロBNPに関して、参照量は、好ましくは100〜150pg/mlの範囲内であり、そしてより好ましくは110〜130pg/mlの範囲内である。最も好ましくは、参照量は125または150pg/mlである。
【0084】
IGFBP7の好ましい参照量は70〜100ng/mlの範囲内であり、またはより好ましくは70〜90ng/mlの範囲内である。特に好ましい参照量は、80ng/mlである。
【0085】
上に示すように、参照量(単数または複数)はまた、(i)最近、発作性心房細動を患ったことが知られる被験体または被験体群由来であってもよい。この場合、参照量(単数または複数)に比べて、被験体由来の試料における少なくとも1つのマーカーの本質的に同じ量(単数または複数)および/または増加した量(単数または複数)である少なくとも1つのマーカーの量(単数または複数)は、最近の発作性心房細動の診断の指標である。好ましくは、参照量(単数または複数)は、前記被験体の試料または前記被験体群の試料由来である。
【0086】
好ましくは、前述の参照量を適用することによって、被験体が最近、発作性心房細動を患っていると包含することも可能である。
さらにまたはあるいは、参照量(単数または複数)は、(i)最近、発作性心房細動を患っていないことが知られる被験体または被験体群由来であってもよい。好ましくは、参照量(単数または複数)に比べて、被験体由来の試料における少なくとも1つのマーカーの本質的に同じ量(単数または複数)および/または減少した量(単数または複数)である少なくとも1つのマーカーの量(単数または複数)は、被験体が、発作性心房細動を患わなかったことを示す。好ましくは、参照量は、前記被験体の試料または前記被験体群の試料由来である。
【0087】
好ましくは、前述の参照量を適用することによって、被験体が最近、発作性心房細動を患っていることを排除することも可能である。
用語「被験体」の定義は、本明細書の別の箇所に提供される。該定義はまた、参照被験体(単数または複数)にも当てはまる。好ましくは、試験しようとする被験体および参照被験体(単数または複数)は、同じ年齢、性別および/または人種である。したがって、参照量は、年齢、性別および/または人種に関して調整されていることが好ましい。
【0088】
本明細書に言及するようなマーカーを単独で決定してもよい。しかし、これらを、一緒に決定してもよく、すなわち本発明の方法は、1つのマーカー、2つのマーカー、3つのマーカー、または4つのマーカーの決定を含むことも可能である。特定の好ましい組み合わせは、心臓トロポニンおよびCRP(すなわちhsCRP)の決定である。これらのマーカーの組み合わせ決定は、好ましくは、試料を得る前、30日間の期間内に、そしてより好ましくは、試料を得る前、1週間の期間内に、被験体が発作性心房細動を患っていたかどうかを診断することを可能にする。
【0089】
さらなる好ましい組み合わせは、心臓トロポニンおよびBNP型ペプチド、特にNT−プロBNPの決定である。これらのマーカーの組み合わせ決定は、特に、試料を得る前、1週間の期間内に、被験体が発作性心房細動を患っていたかどうかを診断することを可能にする。
【0090】
さらなる好ましい組み合わせは、心臓トロポニンおよびIL−6の決定である。これらのマーカーの組み合わせ決定は、好ましくは、試料を得る前、30日間の期間内に、そしてより好ましくは、試料を得る前、1週間の期間内に、被験体が発作性心房細動を患っていたかどうかを診断することを可能にする。
【0091】
別の好ましい組み合わせは、IL−6およびBNP型ペプチド、特にNT−プロBNPの決定である。これらのマーカーの組み合わせ決定は、特に、試料を得る前、1週間の期間内に、被験体が発作性心房細動を患っていたかどうかを診断することを可能にする。
【0092】
別の好ましい組み合わせは、CRPおよびBNP型ペプチド、特にNT−プロBNPの決定である。これらのマーカーの組み合わせ決定は、特に、試料を得る前、1週間の期間内に、被験体が発作性心房細動を患っていたかどうかを診断することを可能にする。
【0093】
さらなる好ましい組み合わせは、hsCRPおよびIL−6の決定である。これらのマーカーの組み合わせ決定は、好ましくは、試料を得る前、30日間の期間内に、そしてより好ましくは、試料を得る前、1週間の期間内に、被験体が発作性心房細動を患っていたかどうかを診断することを可能にする。
【0094】
本発明の1つの側面において、被験体において、最近の心房細動を診断するための補助を確立するための方法であって:
a)(i)試料を、心臓トロポニン、BNP型ペプチド、hsCRP(高感度CRP)、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する検出剤(単数または複数)と、前記検出剤(単数または複数)および試料由来の少なくとも1つのマーカーの複合体(単数または複数)の形成を可能にするのに十分な時間、接触させ、(ii)形成された複合体(単数または複数)の量(単数または複数)を測定し、ここで形成された複合体(単数または複数)の前記量(単数または複数)は、試料中に存在する少なくとも1つのマーカーの量(単数または複数)に比例し、そして(iii)形成された複合体の量(単数または複数)を、試料中に存在する少なくとも1つのマーカーの量(単数または複数)を反映する、少なくとも1つのマーカーの量(単数または複数)に変換することによって、前記の少なくとも1つのマーカーの量を決定し;
b)前記量(単数または複数)を参照(単数または複数)に比較し;そして
c)工程b)で行った比較の結果に基づいて、被験体において、最近の心房細動を診断するための補助を確立する
工程を含む、前記方法が意図される。
【0095】
本発明の別の側面において、被験体において、最近の心房細動を診断するための補助を確立するための系であって:
a)試料を、心臓トロポニン、BNP型ペプチド、hsCRP(高感度CRP)、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される前記の少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する検出剤(単数または複数)と、前記検出剤および試料由来の少なくとも1つのマーカーの複合体の形成を可能にするのに十分な時間、接触させるように設定された、アナライザー装置、
b)形成された複合体の量を測定するよう設定された、アナライザー装置、ここで形成された複合体の前記量は、試料中に存在する少なくとも1つのマーカーの量に比例する、
c)プロセッサを有し、そして前記分析装置と機能可能な通信がある、計算デバイス、および
d)プロセッサによって実行可能な複数の命令を含む非一過性機械読み取り可能媒体であって、命令が実行された際、形成された複合体の量を、試料中に存在する少なくとも1つのマーカーの量を反映する少なくとも1つのマーカーの量に変換し、前記量を参照と比較して、そして前記参照への前記比較の結果に基づいて、被験体において、最近の発作性心房細動を診断するための補助を確立する、前記媒体
を含む、前記系が意図される。
【0096】
適切な検出剤は、1つの側面において、本発明の方法によって調べようとする被験体の試料において、少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する抗体、特にモノクローナル抗体、すなわち心臓トロポニン、BNP型ペプチド、hsCRP(高感度CRP)、またはIL−6(インターロイキン−6)に特異的に結合する検出剤であることも可能である。適用可能な別の検出剤は、1つの側面において、試料中の少なくとも1つのマーカーに特異的に結合するアプタマーであることも可能である。さらなる側面において、形成された複合体の量を測定する前に、検出剤および少なくとも1つのマーカーの間で形成された複合体から、試料を取り除く。したがって、1つの側面において、検出剤を固体支持体上に固定してもよい。さらなる側面において、洗浄溶液を適用することによって、固体支持体上に形成された複合体から試料を除去することも可能である。形成された複合体は、試料中に存在する少なくとも1つのマーカーの量に比例するはずである。適用しようとする検出剤の特異性および/または感度は、特異的に結合可能な試料に含まれる少なくとも1つのマーカーの割合の度合いを定義することが理解されるであろう。決定を実行しうる方法のさらなる詳細もまた、本明細書の別の箇所に見出される。形成された複合体の量を、試料中に実際に存在する量を反映する少なくとも1つのマーカーの量に変換するものとする。こうした量は、1つの側面において、本質的に、試料中に存在する量であることも可能であるし、または別の側面において、形成される複合体および元来の試料中に存在する量の間の関連により、その特定の比率である量であることも可能である。
【0097】
前述の方法のさらなる側面において、アナライザー装置、1つの側面において、本明細書の別の箇所に定義するような、アナライザー装置によって、工程a)を実行してもよい。
【0098】
本発明の方法の側面において、工程a)において決定される量(単数または複数)は、参照に比較される。1つの側面において、参照は、本明細書の別の箇所に定義するような参照である。さらに別の側面において、参照は、測定した複合体の量および元来の試料中に存在する量の間の比例関係を考慮する。したがって、本発明の方法の側面において適用される参照は、用いられている検出剤の限界を反映するよう採用された人工的参照である。別の側面において、前記関係はまた、比較を実施する際、例えば決定した量に関して、決定した量および参照の値を実際に比較する前に、規準化および/または修正計算工程を含めることによって、考慮されてもよい。再び、決定した量に関する規準化および/または修正計算工程は、用いてきた検出剤の限界が適切に反映されるように、比較工程を採用する。1つの側面において、比較を自動的に、例えばコンピュータ系等によって補助して行う。
【0099】
最近の発作性心房細動を診断するための補助は、工程b)において、本明細書の別の箇所に示すように、最近、発作性心房細動を患った被験体群、または最近、発作性心房細動を患っていない被験体群のいずれかに、被験体を割り当てることによって、行われる比較に基づいて確立される。本明細書の別の箇所にすでに論じているように、調べた被験体の割り当ては、調べた例の100%において正しい必要はない。さらに、調べた被験体を割り当てる被験体群は、統計的考慮、すなわち本発明の方法が作動するであろうものに基づく可能性の特定のあらかじめ選択された度合いに基づいて確立される人工的な群である。本発明の側面において、リスク評価を最適化するための補助は、自動的に確立され、例えば本明細書に記載し、そして開示するような、計算デバイス等によって補助される。
【0100】
本発明の方法の側面において、比較結果にしたがって、抗凝固療法を推奨する工程をさらに含む。好ましくは、被験体が最近、発作性心房細動を患った場合、抗凝固療法が推奨される。
【0101】
前述の方法の側面において、工程b)および/またはc)は、本明細書の別の箇所に示すような、1またはそれより多いアナライザー装置によって行われる。
本明細書の上記に提供する定義および説明は、変更すべきところは変更して、以下に適用される:
抗凝固療法に感受性である被験体を同定するための方法
さらに、本発明はまた、抗凝固療法に感受性である被験体を同定するための方法であって:
(a)最近、発作性心房細動を患ったと推測される被験体由来の試料における心臓トロポニン、NT−プロBNP(脳ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン)、hsCRP、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの量を決定し、そして
(b)前記の少なくとも1つのマーカーのこうして決定した量(単数または複数)を、参照量(単数または複数)と比較して、それによって抗凝固療法に感受性である被験体を同定する
ここで、被験体は試料を得た時点で心房細動を患っていない
ことを含む、前記方法にも関する。
【0102】
好ましくは、c)工程b)で実行した比較結果に基づいて、抗凝固療法に感受性である被験体を同定する、さらなる工程を実行することによって、抗凝固療法に感受性である被験体を同定する。
【0103】
1つの態様において、バイオマーカー(単数または複数)に特異的に結合する検出剤(単数または複数)と試料を接触させ、それによって検出剤およびバイオマーカーを含む複合体を形成し、形成された複合体(単数または複数)の量(単数または複数)を検出し、それによってバイオマーカーの量を決定することによって、工程(a)のバイオマーカー(単数または複数)の量(単数または複数)の決定を行う。用語「検出剤」は、本明細書に別の箇所に明記されている。
【0104】
本明細書において、用語「同定する」は、被験体が抗凝固療法に感受性であるかどうか、そしてしたがって前記療法を必要としているかどうかを評価することを意味する。好ましくは、被験体が前記療法から利益を受けるであろう場合、被験体は前記療法に感受性である。特に、療法が前記被験体の脳卒中のリスクを減少させる場合、被験体は前記療法から利益を受ける。さらに、前記療法に感受性である被験体に関して、前記療法の利点は、不都合な点を上回るものとする(特に特定の治療措置の副作用によって引き起こされる不都合な点であるが、また、コストに関しても)。また、前記療法に感受性でない被験体に関して、前記療法の不都合な点(特に副作用に関してであるが、過剰治療によるコストに関しても)は、利点を上回るであろう。特に、被験体が特定の心臓療法を必要としない場合、過剰治療から生じるであろうコストが節約されるであろうし、そして/または副作用が回避されうる。当業者に理解されるであろうように、こうした評価は、通常、同定しようとする被験体のすべて(すなわち100%)に関して正確であることは意図されない。該用語は、しかし、被験体の統計的に有意な部分(例えばコホート研究におけるコホート)が同定可能であることを必要とする。部分が統計的に有意であるかどうかは、多様な周知の統計評価ツール、例えば信頼区間の決定、p値決定、スチューデントのt検定、マン−ホイットニー検定等を用いて、当業者によって、容易に決定可能である。詳細は、DowdyおよびWearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に見出される。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。より好ましくは、集団の被験体の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%が、本発明音方法によって、適切に同定可能である。
【0105】
前述の方法と関連して決定することが好ましいマーカーは、心臓トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−プロBNP(脳ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン)、およびhsCRP、またはIL−6(インターロイキン−6)である。
【0106】
抗凝固療法は当該技術分野に周知である。本明細書において、該用語は、好ましくは、血液の凝固を減少させるかまたは防止することを目的とする療法に関する。好ましい抗凝固療法は、抗凝固剤の投与である。好ましい抗凝固剤は、ヘパリン、クマリン誘導体、例えばワルファリンまたはジクマロール、組織因子経路阻害剤(TFPI)、アンチトロンビンIII、因子IXa阻害剤、因子Xa阻害剤、因子VaおよびVIIIaの阻害剤、トロンビン阻害剤より選択される。
【0107】
抗凝固療法に感受性である被験体はまた、少なくとも1つの抗不整脈剤を伴う治療にも感受性でありうる。好ましい抗不整脈剤は、クラスI、例えばキニジンおよびリドカイン、クラスII剤、すなわちベータ・ブロッカー、クラスIII剤、例えばイブチリド、クラスIV剤、例えばベラパミル、またはクラスV剤、例えばジゴキシンである。
【0108】
用語「参照量」は、本明細書の別の箇所に説明されている。前述の方法の文脈において、該用語は、抗凝固療法に感受性である被験体群、または抗凝固療法に感受性でない被験体群のいずれかに、被験体を割り当てることを可能にする量を指す。こうした参照量は、これらの群を互いに分離する閾値量であってもよい。2つの群を分離する適切な閾値量は、最近、発作性心房細動(AF)を患った被験体または被験体群、あるいは最近、発作性心房細動(AF)を患わなかった被験体または被験体群のいずれか由来の、本明細書に言及するようなマーカーの量に基づいて、本明細書の別の箇所に言及する統計検定によって、容易に計算可能である。
【0109】
好ましくは、以下が診断アルゴリズムとして当てはまる(特に、参照が計算参照量である場合):
好ましくは、参照量(単数または複数)に比べて、少なくとも1つのマーカーの増加した量(単数または複数)は、被験体が抗凝固療法に感受性であることを示し、一方、参照量(単数または複数)に比べて、少なくとも1つのマーカーの減少した量(単数または複数)は、被験体が抗凝固療法に感受性でないことを示す。
【0110】
さらに、参照量(単数または複数)は、(i)抗凝固療法に感受性であることが知られている被験体または被験体群に由来してもよい。この場合、参照量(単数または複数)に比べて、被験体由来の試料における少なくとも1つのマーカーの本質的に同じ量(単数または複数)および/または増加した量(単数または複数)である少なくとも1つのマーカーの量(単数または複数)は、被験体が抗凝固療法に感受性であることを示す。好ましくは、参照量(単数または複数)は、前記被験体の試料または前記被験体群の試料由来である。
【0111】
好ましくは、前述の参照量を適用することによって、被験体が抗凝固療法に感受性であると包含することも可能である。
さらにまたはあるいは、参照量(単数または複数)は、(i)抗凝固療法に感受性でないことが知られる被験体または被験体群由来であってもよい。好ましくは、参照量(単数または複数)に比べて、被験体由来の試料における少なくとも1つのマーカーの本質的に同じ量(単数または複数)および/または減少した量(単数または複数)である少なくとも1つのマーカーの量(単数または複数)は、被験体が、抗凝固療法に感受性でないことを示す。好ましくは、参照量は、前記被験体の試料または前記被験体群の試料由来である。
【0112】
好ましくは、前述の参照量(単数または複数)を適用することによって、被験体が抗凝固療法に感受性でないと排除することも可能である。
さらに、本発明は、抗凝固療法で、そして/または抗不整脈剤で患者を治療する方法であって、
(a)最近、発作性心房細動を患ったと推測される被験体由来の試料における心臓トロポニン、NT−プロBNP(脳ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン)、hsCRP、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの量を決定し、そして
(b)前記の少なくとも1つのマーカーのこうして決定した量(単数または複数)を、参照量(単数または複数)と比較して、そして
(c)少なくとも1つのマーカーの量(単数または複数)が参照量(単数または複数)よりも高い場合、抗凝固療法および/または抗不整脈剤を選択し、そして/または開始する
ことを含む、前記方法を想定する。
【0113】
上述の方法は、さらに、(b1)少なくとも1つのマーカーの量(単数または複数)が、参照量(単数または複数)より高い場合、被験体が最近、心房細動を患っていたと同定することを含むことも可能である。
【0114】
本発明はまた、被験体における最近の発作性心房細動を診断するための、被験体の試料におけるi)心臓トロポニン、BNP型ペプチド、hsCRP(高感度CRP)、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの、あるいはii)BNP型ペプチドに特異的に結合する検出剤、および/または心臓トロポニンに特異的に結合する検出剤、および/またはhsCRPに特異的に結合する検出剤、および/またはIL−6に特異的に結合する検出剤、および/またはIGFBP7に特異的に結合する検出剤の使用にも関する。好ましくは、被験体は、試料を得た時点で、心房細動を患っていない。
【0115】
本発明はまた、抗凝固療法に感受性である被験体を同定するための、被験体の試料におけるi)心臓トロポニン、BNP型ペプチド、hsCRP(高感度CRP)、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの、あるいはii)BNP型ペプチドに特異的に結合する検出剤、および/または心臓トロポニンに特異的に結合する検出剤、および/またはhsCRPに特異的に結合する検出剤、および/またはIL−6に特異的に結合する検出剤、および/またはIGFBP7に特異的に結合する検出剤の使用にも関する。好ましくは、被験体は、試料を得た時点で、心房細動を患っていない。
【0116】
本発明はまた、被験体における最近の発作性心房細動を診断するための診断組成物製造のための、i)心臓トロポニン、BNP型ペプチド、hsCRP(高感度CRP)、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの、あるいはii)BNP型ペプチドに特異的に結合する検出剤、および/または心臓トロポニンに特異的に結合する検出剤、および/またはhsCRPに特異的に結合する検出剤、および/またはIL−6に特異的に結合する検出剤、および/またはIGFBP7に特異的に結合する検出剤の使用にも関する。好ましくは、被験体は、試料を得た時点で、心房細動を患っていない。
【0117】
本発明はまた、抗凝固療法に感受性である被験体を同定するための診断組成物製造のための、i)心臓トロポニン、BNP型ペプチド、hsCRP(高感度CRP)、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの、あるいはii)BNP型ペプチドに特異的に結合する検出剤、および/または心臓トロポニンに特異的に結合する検出剤、および/またはhsCRPに特異的に結合する検出剤、および/またはIL−6に特異的に結合する検出剤、および/またはIGFBP7に特異的に結合する検出剤の使用にも関する。好ましくは、被験体は、試料を得た時点で、心房細動を患っていない。
【0118】
用語「検出剤」は、本明細書において、試料中に存在するバイオマーカー・ポリペプチド(単数または複数)を特異的に認識し、そしてこれに結合することが可能な剤を指す。さらに、前記剤は、前記剤およびバイオマーカーによって形成される複合体の直接または間接的な検出を可能にするものとする。直接検出は、剤の中に検出可能標識を含めることによって達成可能である。間接的標識は、バイオマーカーおよび検出剤を含む複合体に特異的に結合するさらなる剤によって達成可能であり、前記のさらなる剤は、次いで、検出可能なシグナルを生成することが可能である。検出剤として使用可能な適切な化合物が当該技術分野に周知である。好ましくは、検出剤は、バイオマーカーに特異的に結合する抗体またはアプタマーである。用語「抗体」は、本明細書の別の箇所に定義されている。
【0119】
本発明はまた、最近、発作性心房細動を患った被験体を治療するための抗凝固剤または抗不整脈剤であって、患者由来の試料における、心臓トロポニン、BNP型ペプチド、hsCRP(高感度CRP)、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの量が、参照量よりも高い場合、被験体を治療する、前記剤にも関する。
【0120】
本発明の好ましい態様にしたがって、最近の発作性心房細動を診断するために適応したデバイスであって
a)心臓トロポニン、BNP型ペプチド、hsCRP、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択されるマーカーに特異的に結合する検出剤(単数または複数)を含むアナライザー装置であって、試料におけるマーカー(単数または複数)の量(単数または複数)を決定するために適応した、前記装置;および
b)決定した量(単数または複数)と参照量(単数または複数)を比較し、それによって、最近の発作性心房細動を診断するためのアナライザー装置であって、本明細書の別の箇所に示すような参照量(単数または複数)を含むデータベース、および本明細書の別の箇所に示すような比較を実行するコンピュータが実施するアルゴリズムを含む、前記装置
を含む、前記デバイスを提供する。
【0121】
本発明の別の好ましい態様にしたがって、抗凝固療法に感受性である被験体を同定するために適応したデバイスであって
a)心臓トロポニン、BNP型ペプチド、hsCRP、IL−6(インターロイキン−6)およびIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)からなる群より選択されるマーカーに特異的に結合する検出剤(単数または複数)を含むアナライザー装置であって、試料におけるマーカー(単数または複数)の量(単数または複数)を決定するために適応した、前記装置;および
b)決定した量(単数または複数)と参照量(単数または複数)を比較し、それによって、抗凝固療法に感受性である被験体を同定するためのアナライザー装置であって、本明細書の別の箇所に示すような参照量(単数または複数)を含むデータベース、および本明細書の別の箇所に示すような比較を実行するためのコンピュータが実施するアルゴリズムを含む、前記装置
を含む、前記デバイスを提供する。
【0122】
好ましい参照量およびアルゴリズムは、本明細書の別の箇所に開示される。
用語「デバイス」は、本明細書において、本発明の方法にしたがった診断またはモニタリングを可能にするように、互いに機能可能であるように連結された上述の装置を含む系に関する。分析装置に使用可能な好ましい検出剤は、本明細書中の別の箇所に開示される。分析装置は、好ましくは、その量を決定しようとするバイオマーカーを含む試料に接触させるべき固体支持体上に固定された形で、前記検出剤を含む。さらに、分析装置はまた、バイオマーカー(単数または複数)に特異的に結合した検出剤の量を決定する検出装置を含むことも可能である。決定した量を、評価装置に伝達してもよい。前記評価装置は、決定した量および適切な参照の間の比較を実行するための実装されたアルゴリズムとともに、データプロセシング要素、例えばコンピュータを含む。適切な参照は、本発明の方法の文脈において、上に定義するように、被験体または被験体群のいずれかから得られる。結果は、好ましくは絶対量または相対量としてのパラメータ診断生データの出力として提供されうる。これらのデータは、臨床医による解釈を必要とするであろうことが理解されるものとする。しかし、やはり想定されるのは、出力が、解釈に専門医を必要としないプロセシングされた診断生データを含む、エキスパート系デバイスである。
【0123】
本開示の好ましい態様には、最近の発作性心房細動を診断するための系が含まれる。系の例には、化学的または生物学的反応の結果を検出するか、あるいは化学的または生物学的反応の進行を監視するために用いられる、臨床的化学アナライザー、凝固化学アナライザー、免疫化学アナライザー、尿アナライザー、核酸アナライザーが含まれる。より具体的には、本開示の例示的な系には、Roche ElecsysTM系およびCobas(登録商標)eイムノアッセイアナライザー、Abbott ArchitectTMおよびAxsymTMアナライザー、Siemens CentaurTMおよびImmuliteTMアナライザー、ならびにBeckman Coulter UniCelTMおよびAcessTMアナライザー等が含まれることも可能である。
【0124】
系の態様には、本開示を実施するために利用される1またはそれより多いアナライザーが含まれてもよい。本明細書開示の系のアナライザー装置は、知られるように、任意の有線通信、Bluetooth(登録商標)、LANS、または無線シグナルを通じて、本明細書に開示する計算デバイスと機能可能な通信がある。さらに、本開示にしたがって、アナライザー装置は、1つまたは両方の検出、例えば診断目的のための試料の定性的および/または定量的評価を実行する、独立型装置、またはより大きい機器内のモジュールを含むことも可能である。例えば、アナライザー装置は、試料および/または試薬のピペッティング、投薬、混合を実行するかまたはこれらを補助することも可能である。アナライザー装置は、試薬を保持してアッセイを実行するための試薬保持装置を含むことも可能である。試薬を、例えば、貯蔵区画またはコンベヤー内の適切な貯蔵所または位置に配置された、個々の試薬または試薬群を含有する容器またはカセットの形で配置してもよい。検出試薬はまた、固体支持体上に固定された型であってもよく、ここに試料を接触させる。さらに、アナライザー装置には、特定の分析のために最適化可能なプロセスおよび/または検出構成要素が含まれてもよい。
【0125】
いくつかの態様にしたがって、アナライザー装置は、試料での分析物、例えばマーカーの光学的検出のために設定されることも可能である。光学検出のために設定された例示的なアナライザー装置は、電磁エネルギーを電気シグナルに変換するために設定されたデバイスを含み、該デバイスは、単一および多要素またはアレイ光学検出装置の両方を含む。本開示にしたがって、光学検出装置は、光学的電磁シグナルを監視し、そして光学経路中に位置する試料における分析物の存在および/または濃度の指標となる、ベースラインシグナルに比較した、電気出口シグナルまたは反応シグナルを提供することが可能である。こうしたデバイスにはまた、例えば、アバランシェフォトダイオードを含む、フォトダイオード、光トランジスタ、光伝導性検出装置、リニアセンサーアレイ、CCD検出装置、CMOSアレイ検出装置を含むCMOS検出装置、光電子増倍管、および光電子増倍管アレイもまた含まれてもよい。特定の態様にしたがって、光検出装置、例えばフォトダイオードまたは光電子増倍管は、さらなるシグナル調整またはプロセシング電子機器を含有してもよい。例えば、光学検出装置には、少なくとも1つのプリアンプ、電子フィルター、または集積回路が含まれてもよい。適切なプリアンプには、例えば、集積、トランスインピーダンス、および電流増幅(電流ミラー)プリアンプが含まれる。
【0126】
さらに、本開示にしたがった1またはそれより多いアナライザー装置は、光放出のための光源を含んでもよい。例えば、アナライザー装置の光源は、試験しようとする試料で、分析物濃度を測定するための、またはエネルギー移動(例えば蛍光共鳴エネルギー移動または酵素触媒を通じて)を可能にするための、少なくとも1つの光放出要素(例えば光放出ダイオード、電力放射源、例えば白熱灯、エレクトロルミネセントランプ、ガス放電ランプ、高輝度放電ランプ、レーザー)からなることも可能である。
【0127】
さらに、系のアナライザー装置には、1またはそれより多いインキュベーション装置(例えば、明記する温度または温度範囲で、試料または試薬を維持するため)が含まれてもよい。いくつかの態様において、アナライザー装置には、試料を反復温度周期に供し、そして試料での増幅産物の量の変化を監視するため、サーモサイクラーが含まれてもよく、リアルタイム・サーモサイクラーが含まれてもよい。
【0128】
さらに、本明細書に開示する系のアナライザー装置は、反応容器またはキュベット供給装置を含んでもよいし、またはこれらに機能可能であるように連結されてもよい。例示的な供給装置には、試料および/または試薬を反応容器に送達する、液体プロセシング装置、例えばピペッティング装置が含まれる。ピペッティング装置は、再使用可能な洗浄可能な針、例えばスチール針、または使い捨てピペットチップを含んでもよい。アナライザー装置は、1またはそれより多い混合装置、例えば液体を含むキュベットを振盪する振盪装置、またはキュベット中の液体を混合する混合パドル、または試薬容器をさらに含んでもよい。
【0129】
上記から、本開示のいくつかの態様にしたがって、本明細書に開示し、そして記載する方法のいくつかの工程の部分を、計算デバイスによって行うことも可能であることになる。計算デバイスは、例えば、汎用コンピュータまたはポータブル計算デバイスであることも可能である。本明細書開示の方法の1またはそれより多い工程を実行するため、例えばネットワークを通じてまたはデータをトランスファーする他の方法を通じて、多数の計算デバイスを一緒に用いてもよいこともまた理解されるべきである。例示的な計算デバイスには、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、パーソナルデータアシスタント(「PDA」)、例えばBLACKBERRY(登録商標)ブランドデバイス、セルラーデバイス、タブレットコンピュータ、サーバー等が含まれる。一般的に、計算デバイスは、複数の命令(例えばソフトウェアのプログラム)を実行可能なプロセッサを含む。
【0130】
計算デバイスは、メモリへのアクセスを有する。メモリは、コンピュータ読み取り可能媒体であり、そして例えば計算デバイスとともにローカルに位置するか、またはネットワークを通じて計算デバイスにアクセス可能である、単一の記憶デバイスまたは多数の記憶デバイスを含むことも可能である。コンピュータ読み取り可能媒体は、計算デバイスによってアクセス可能な任意の利用可能な媒体であることも可能であり、そしてこれには、取り外し可能な媒体および取り外し不能な媒体の両方が含まれる。さらに、コンピュータ読み取り可能媒体は、取り外し可能な媒体および取り外し不能な媒体の一方または両方であることも可能である。例えば、そして限定なしに、コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ記憶媒体を含むことも可能である。例示的なコンピュータ記憶媒体には、限定されるわけではないが、計算デバイスによってアクセス可能な、そして計算デバイスのプロセッサによって実行可能な複数の命令を保存するために使用可能な、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは任意の他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光学ディスク記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶または他の磁気記憶デバイス、あるいは任意の他の媒体が含まれる。
【0131】
本開示の態様にしたがって、ソフトウェアには、計算デバイスのプロセッサによって実行された際、本明細書に開示する方法の1またはそれより多い工程を実行可能な命令が含まれてもよい。命令のいくつかは、他の機械の操作を制御するシグナルを生じるように適応していてもよく、そしてしたがって、これらの制御シグナルを通じて作動して、コンピュータ自体から遠く離れて素材を変換することも可能である。これらの説明および表現は、データプロセシングの当業者によって用いられる手段であり、例えばその研究の内容を他の当業者に最も有効に伝達する。
【0132】
複数の命令はまた、一般的には所望の結果を導く工程の首尾一貫した順序であると想定されるアルゴリズムもまた含んでもよい。これらの工程は、物理量の物理的処理を必要とするものである。必ずしもではないが、通常、これらの量は、記憶し、トランスファーし、変換し、組み合わせ、比較し、そして別の方式で処理することが可能な、電気的または磁気的パルスまたはシグナルの形を取る。時に、原理的には一般の使用のため、これらのシグナルを、こうしたシグナルが具体化されるかまたは表される物理的項目または明示に関連して、値、文字、ディスプレイデータ、数字等で称することが好適であることがわかる。しかし、これらおよび類似の用語はすべて、適切な物理量と関連付けられるものとし、そして本明細書において、単にこれらの量に適用される好適な標識として用いられることを心に留めるべきである。本開示のいくつかの態様にしたがって、本明細書に開示する1またはそれより多いマーカーの決定した量、および適切な参照の間の比較を実行するためのアルゴリズムは、命令を遂行することによって具体化され、そして実行される。結果は、パラメトリック診断生データの出力として、あるいは絶対量または相対量として提供されてもよい。本明細書に開示する系の多様な態様にしたがって、「診断」は、参照または閾値に対する、計算された「量」の前記比較に基づいて、本明細書に開示する系の計算デバイスによって提供可能である。例えば、系の計算デバイスは、特定の診断の指標である単語、記号、または数値の形で、指標を提供することも可能である。
【0133】
計算デバイスはまた、出力デバイスにアクセスを有することも可能である。例示的な出力デバイスには、例えば、ファックス装置、ディスプレイ、プリンタ、およびファイルが含まれる。本開示のいくつかの態様にしたがって、計算デバイスは、本明細書に開示する方法の1またはそれより多い工程を実行することも可能であり、そしてその後、出力デバイスを通じて、方法の結果、徴候、比、または他の要因に関連する出力を提供することも可能である。
【0134】
最後に、本発明は、脳ナトリウム利尿ペプチド、心臓トロポニン、およびsFlt−1からなる群より選択されるマーカーに特異的に結合する検出剤、参照標準、ならびに前記方法を実行するための使用説明書を含む、本発明の方法を実行するために適応したキットに関する。
【0135】
用語「キット」は、本明細書において、好ましくは別個にまたは単一の容器内に提供されている、前述の構成要素のコレクションを指す。容器はまた、本発明の方法を実行するための使用説明書も含む。これらの使用説明書はマニュアルの形であってもよく、または本発明の方法において言及するような比較を実行することが可能であり、そしてコンピュータまたはデータプロセシングデバイス上で実装された際、適宜、診断を確立することが可能な、コンピュータプログラムコードによって提供されてもよい。コンピュータプログラムコードは、データ記憶媒体またはデバイス、例えば光学記憶媒体(例えばコンパクトディスク)上に、あるいはコンピュータまたはデータプロセシングデバイス上に直接、提供されてもよい。さらに、キットは、上に定義するような、参照に関する少なくとも1つの標準、すなわち参照量を示す少なくとも1つのマーカーのあらかじめ定義された量を含む溶液を含むものとする。こうした標準は、例えば、最近、発作性心房細動を患っている被験体または被験体群、あるいは最近、発作性心房細動を患っていない被験体または被験体群由来の少なくとも1つのマーカーの量を示してもよい。
【0136】
いくつかの態様において、本明細書開示のキットには、開示する方法を実施するための、少なくとも1つの構成要素または構成要素のパッケージングされた組み合わせが含まれる。「パッケージングされた組み合わせ」によって、キットが、1またはそれより多い構成要素、例えば本明細書に開示するような、プローブ(例えば抗体)、対照、緩衝剤、試薬(例えばコンジュゲートおよび/または基質)、使用説明書の組み合わせ等を含有する単一のパッケージを提供することを意味する。単一容器を含有するキットもまた、「パッケージングされた組み合わせ」の定義内に含まれる。いくつかの態様において、キットには、少なくとも1つのプローブ、例えば抗体(本明細書に開示するようなバイオマーカーのエピトープに対する特異的アフィニティを有する)が含まれる。例えば、キットには、フルオロフォアで標識された抗体、または融合タンパク質のメンバーである抗体が含まれてもよい。キットにおいて、プローブは固定されていてもよく、そして特定のコンホメーションで固定されていてもよい。例えば、固定されたプローブは、キット中に提供されて、ターゲットタンパク質に特異的に結合し、試料におけるターゲットタンパク質を検出し、そして/または試料からターゲットタンパク質を除去することも可能である。
【0137】
いくつかの態様にしたがって、キットには、少なくとも1つの容器中の、固定されていてもよい少なくとも1つのプローブが含まれる。キットにはまた、1またはそれより多い容器中の、場合によって固定されている多数のプローブも含まれてもよい。例えば、多数のプローブが、単一の容器中に、または別個の容器中に存在してもよく、例えば、各容器が単一のプローブを含有してもよい。
【0138】
いくつかの態様において、キットには1またはそれより多い固定されないプローブ、および固定されたプローブを含むまたは含まない1またはそれより多い固体支持体が含まれてもよい。いくつかのこうした態様は、1またはそれより多いプローブを固体支持体に固定するために必要な試薬およびサプライのいくつかまたはすべて、あるいは試料内の特定のタンパク質に、固定されたプローブを結合させるために必要な試薬およびサプライのいくつかまたはすべてを含んでもよい。
【0139】
特定の態様において、単一のプローブ(同じプローブの多数のコピーを含む)を、単一の固体支持体上に固定し、そして単一の容器中に提供してもよい。他の態様において、各々、異なるターゲットタンパク質または単一のターゲットタンパク質の異なる型(例えば特定のエピトープ)に特異的な、2またはそれより多いプローブを、単一の容器中に提供してもよい。いくつかのこうした態様において、固定されたプローブを、多数の異なる容器中に(例えば単回使用型で)提供してもよいし、または多数の固定されたプローブを、多数の異なる容器中に提供してもよい。さらなる態様において、プローブを多数の異なる型の固体支持体上に固定してもよい。固定されたプローブ(単数または複数)および容器(単数または複数)の任意の組み合わせが、本明細書に開示するキットに意図され、そしてその任意の組み合わせを選択して、望ましい使用に適したキットを達成することも可能である。
【0140】
キットの容器は、例えばプローブ(例えば抗体)、対照、緩衝剤、および試薬(例えばコンジュゲートおよび/または基質)を含む、本明細書に開示する1またはそれより多い構成要素をパッケージングおよび/または含有するのに適した任意の容器であってもよい。適切な材料には、限定されるわけではないが、ガラス、プラスチック、ボール紙または他の紙製品、木材、金属、およびその任意の合金が含まれる。いくつかの態様において、容器は、固定されたプローブ(単数または複数)を完全に包み込んでもよいし、あるいは埃、油等による混入、および光への曝露を最小限にするためにプローブを単に覆ってもよい。いくつかのさらなる態様において、キットは単一の容器または多数の容器を含んでもよく、そして多数の容器が存在する場合、各容器は、すべての他の容器と同じであってもよく、他のものと異なってもよく、またはいくつかとは異なるがすべての他の容器とは異ならなくてもよい。
【0141】
被験体において進行中の心房細動を診断するための方法
好適には、本発明の根底にある研究の文脈において、被験体由来の試料中のIGFBP7の決定は、被験体が進行中の心房細動を患っているかどうかを診断することを可能にする。
【0142】
したがって、本発明は、被験体において、心房細動を診断するための方法であって
(a)被験体由来の試料におけるバイオマーカーIGFBP7の量を決定し、そして
(b)工程(a)で決定したようなバイオマーカーIGFBP7の量を参照量に比較する
ことを含む、前記方法に関する。
【0143】
好ましくは、参照量より高い被験体由来の試料におけるバイオマーカーIGFBP7の量は、被験体が心房細動を有することを示す。やはり好ましくは、参照量より低い被験体由来の試料におけるバイオマーカーIGFBP7の量は、被験体が心房細動を持たないことを示す。
【0144】
1つの態様において、バイオマーカーに特異的に結合する検出剤と試料を接触させ、それによって、検出剤およびバイオマーカーを含む複合体を形成し、形成された複合体の量を検出し、それによってバイオマーカーIGFBP7の量を決定することによって、工程(a)のバイオマーカーの量の決定を行う。用語「検出剤」は、本明細書の別の箇所に明記されている。1つの態様において、剤は、IGFBP7に特異的に結合する抗体、例えばモノクローナル抗体である。
【0145】
本明細書において、バイオマーカーを「検出する」という用語は、本明細書の別の箇所に記載する適切な検出法を使用して、試料中のバイオマーカーの量を検出する方法を指す。
【0146】
1つの態様において、前述の方法は、被験体由来の試料中のバイオマーカーの量が、参照量より高い場合、心房細動の診断を提供し、そして/または被験体由来の試料中のバイオマーカーの量が、参照量より低い場合、心房細動の非存在の診断を提供する工程(c)をさらに含むことも可能である。
【0147】
心房細動を診断する前述の方法の文脈において、試験しようとする試料を得た時点で、被験体が心房細動を患っているかどうかを診断するものとする。したがって、最近の心房細動を診断する方法とは対照的に、被験体が進行中の心房細動を患っているかどうかを診断するものとする。用語「心房細動」は上に定義されている。前述の方法の文脈において、心房細動は、永続的、持続性、または特に発作性心房細動であってもよい。
【0148】
前述の方法と組み合わせて使用する用語「心房細動を診断する」は、本発明記載の方法が、個体を、心房細動を有するか、または別に、心房細動を持たないかとして分類するであろうことを示すよう用いられる。参照量より高いバイオマーカーIGFBP7の量は、心房細動の診断を提供するために用いられる。
【0149】
前述の方法の文脈における用語「被験体が心房細動を有することを示す」は、参照量より高いIGFBP7の量が非常に価値があるが、誤りを伴わない診断ではないことを例示するよう用いられる。心房細動患者のすべて(100%)において、バイオマーカーの量が参照量より高いわけではなく、そしてすべての健康な個体において、バイオマーカーのレベルが参照レベルより低いわけではない。当業者が認識するであろうように、多くの疾患において、いかなる生化学マーカーも100%特異性を有し、そして同時に100%感受性であることはない。こうした場合、例えば心房細動におけるバイオマーカーIGFBP7のレベルに関する評価は、特定の可能性、例えば所定のレベルの特異性または所定のレベルの感受性で実行される。当業者は、特異性、感受性、陽性予測値、陰性予測値、参照値または全誤差を計算するために用いられる数学的/統計的方法をよく知っている。これらのパラメータはいずれも、心房細動の存在または非存在の指標を得るために、計算し、そして用いることも可能である。
【0150】
句「診断を提供する」は、本明細書において、前述と関連して、患者における心房細動を診断するため、患者試料中のIGFBP7のレベルまたは存在に関連して生じる情報またはデータを用いることを指す。情報またはデータは、いかなる型でも、書かれていても口頭でもまたは電子的でもよい。いくつかの態様において、生成した情報またはデータの使用には、通信、提示、報告、記憶、送信、転送、供給、伝達、分配、またはその組み合わせが含まれる。いくつかの態様において、計算デバイス、アナライザー装置、またはその組み合わせによって、通信、提示、報告、記憶、送信、転送、供給、伝達、分配、またはその組み合わせを実行する。いくつかのさらなる態様において、通信、提示、報告、記憶、送信、転送、供給、伝達、分配またはその組み合わせを、実験室または医学的専門職によって実行する。いくつかの態様において、情報またはデータには、IGFBP7のレベルの参照レベルへの比較が含まれる。いくつかの態様において、情報またはデータには、患者が心房細動と診断される指標が含まれる。
【0151】
用語「被験体」は、本明細書において、前述の方法と関連して、動物、好ましくは哺乳動物、そしてより好ましくはヒトに関する。被験体は男性(特に60または65歳より高齢の男性)であってもよい。さらに、被験体は女性(特に60または65歳より高齢の女性)であってもよい。
【0152】
被験体は、心房細動を診断する前述の方法にしたがって、発作性心房細動を患うと推測されるものとする。発作性心房細動を患うと推測される被験体は、好ましくは、心房細動の1またはそれより多いリスク要因を有する被験体である。これらのリスク要因は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、弁の問題、ならびに心臓発作歴および心臓手術歴、全身性高血圧、特に生活様式変化または投薬でよく調節されない場合、ならびにアルコール消費を含む、心臓疾患が含まれる。好ましくは、推測される被験体は、リスク群に属する。特に、被験体が、心臓障害、例えば動脈性または全身性高血圧、糖尿病、喫煙者、高脂血症またはメタボリックシンドロームの徴候を伴う個体、特に被験体が高齢の場合(60、65、70歳より上、および好ましくは75、または80歳より上)などの心臓障害に対する素因があるリスク要因を有する被験体を含む、証明されたまたは推測された心臓障害を伴う被験体であると想定される。あるいは、またはさらに、被験体は、好ましくは、弁障害、好ましくは僧帽弁障害を患うことも可能である。
【0153】
1つの態様において、本発明の方法では、被験体は、高血圧および/または心不全を患う。用語「高血圧」および「心不全」は、上に定義された。定義は適宜適用される。好ましい態様において、被験体は、(上に言及されるような)ACC/AHA分類にしたがって、心不全病期Aまたは病期Bと分類される心不全を患う。本発明の特定の好ましい態様において、試験しようとする被験体は、(上述のようなACC/AHA分類にしたがって)病期A被験体と分類される。
【0154】
(進行中の)心房細動を診断する方法の態様において、被験体は、好ましくは、既知の心房細動歴を持たない。したがって、被験体は、以前、特に慣用的手段によって、心房細動を患うとは診断されていないものとする。
【0155】
用語「試料」は、上に定義されている。1つの態様において、試料は、血液、血清または血漿試料である。
最近の発作性心房細動を診断する方法とは対照的に、心房細動は脳卒中と関連して起こることが想定される。したがって、試験しようとする被験体は、試料を得る時点で脳卒中を患っていることも可能であるし、または脳卒中歴を有することも可能である。好ましくは、脳卒中歴を有する被験体は、試験しようとする試料を得る前、3ヶ月以内に脳卒中を患っている。より好ましくは、脳卒中歴を有する被験体は、試料を得た1ヶ月以内に脳卒中を患っている。
【0156】
マーカーIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)の定義は、上に提供されている。
バイオマーカーの量の決定は、最近の発作性心房細動を診断する方法と関連して記載されてきている。IGFBP7の量は、適宜決定可能である。
【0157】
用語「参照量」は、前述の方法と関連して、あらかじめ決定された値を指す。この文脈において、「量」は絶対量、相対量または濃度、ならびにこれらに相関するかまたはこれらに由来しうる任意の値またはパラメータを含む。当業者が認識するであろうように、参照量があらかじめ決定されており、そして例えば特異性および/または感度に関してルーチンの必要条件を満たすように設定される。これらの必要条件は、例えば規制機関によって多様でありうる。例えば、アッセイ感度または特異性が、それぞれ、特定の制限、例えばそれぞれ80%、90%、95%または98%に設定されなければならない可能性もある。これらの必要条件はまた、陽性または陰性予測値に関しても定義されうる。にもかかわらず、本発明に提供する解説に基づいて、当業者は、こうした必要条件を満たす参照量に到達することが常に可能であろう。1つの態様において、参照量は、健康な個体由来の参照試料において決定される。参照量は、1つの態様において、患者が属する疾患実体由来の参照試料において決定されている。特定の態様において、参照量は、例えば、調べた疾患実体における値の全体の分布の25%〜75%の間の任意の割合に設定可能である。他の態様において、参照量は、調べている疾患実体由来の参照試料における値の全体の分布から決定されるような、中央値、三分位数または四分位数に設定されることも可能である。1つの態様において、参照量は、調べる疾患実体における値の全体の分布から決定されるような中央値に設定される。参照量は、年齢、性別または下位集団などの多様な生理学的パラメータ、ならびに本明細書に言及するIGFBP7の決定に用いる手段に応じて多様でありうる。1つの態様において、参照試料は、本発明の方法に供される個体または患者由来の試料と本質的に同じタイプの細胞、組織、臓器または体液供給源に由来し、例えば本発明にしたがって、個体におけるIGFBP7の量を決定する試料として血液が用いられる場合、参照量もまた、血液またはその一部において決定される。
【0158】
1つの態様において、参照量は、心房細動を患う被験体および心房細動を患わない被験体の間の区別を可能にする(あらかじめ決定された)量である。
IGFBP7の好ましい参照量は70〜115ng/mlの範囲内、またはより好ましくは80〜90ng/mlの間の範囲内である。特に好ましい参照量は、90ng/mlである。
【0159】
特定の態様において、用語「参照レベルより高い」は、参照レベルと比較した際に、本明細書記載の方法によって決定される、参照レベルより高い個体または患者由来の試料中のバイオマーカーのレベル、あるいは5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれより高い全体の増加を指す。特定の態様において、用語、増加は、個体または患者由来の試料におけるバイオマーカーレベルの増加であって、例えば参照試料からあらかじめ決定した参照レベルに比べて、少なくとも約1.5、1.75、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、75、80、90、または100倍高い、前記増加を指す。
【0160】
特定の態様において、用語「減少」または「より低い」は、本明細書において、参照レベルと比較した際に、本明細書記載の方法によって決定される、参照レベルより低い個体または患者由来の試料中のバイオマーカーのレベル、あるいは5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い全体の減少を指す。特定の態様において、用語、減少は、個体または患者由来の試料におけるバイオマーカーレベルの減少であって、例えば参照試料からあらかじめ決定した参照レベルの、最大約0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、または0.01倍、またはそれ未満である、前記減少を指す。
【0161】
前述の方法の好ましい態様において、方法は、BNP型ペプチドの量の決定、およびこうして決定した量の参照量(前記BNP型ペプチドに関するもの)への比較をさらに含む。
【0162】
したがって、本発明はまた、被験体において心房細動を診断するための方法であって
(a)被験体由来の試料におけるIGFBP7およびBNP型ペプチドの量を決定し、そして
(b)工程(a)で決定したような量を、参照量(すなわちIGFBP7の参照量および前記BNP型ペプチドの参照量)に比較する
ことを含む、前記方法も提供する。
【0163】
好ましくは、参照量より高い被験体由来の試料中のバイオマーカーIGFBP7の量および参照量より高い前記BNP型ペプチドの量は、被験体が心房細動を有することを示す。やはり好ましくは、参照量より低い被験体由来の試料中のバイオマーカーIGFBP7の量および参照量より低い被験体由来の試料中のBNP型ペプチドの量は、被験体が心房細動を持たないことを示す。
【0164】
この方法にしたがって、NT−プロBNPの好ましい参照量は200〜500ng/lの範囲内、またはより好ましくは300〜400ng/lの間の範囲である。特に好ましい参照量は400ng/lである。
【0165】
用語「BNP型ペプチド」は、上に定義されている。定義は適宜適用される。1つの態様において、BNP型ペプチドはNT−プロBNPである。
前述の方法の好ましい態様において、方法はさらに、心房細動の治療に適した療法を推奨することを含む。前記療法は、進行中の心房細動の療法に用いられる、当該技術分野に知られる任意の治療を含むことも可能である。好ましくは、前記療法は、(i)前記心房細動を終結させる、例えば電気除細動または抗不整脈剤での除細動、あるいは(ii)抗凝固療法を意図する。
【0166】
用語「抗凝固療法」は、上に定義されている。好ましい抗不整脈剤もまた上に記載される。
さらに、本発明は、心房細動の治療に適した療法で患者を治療する方法であって:
(a)被験体由来の試料におけるIGFBP7、および場合によってBNP型ペプチドの量を決定し、そして
(b)工程(a)で決定したような量(単数または複数)を、参照量(単数または複数)に比較し、そして
(c)IGFBP7の量(またはIGFBP7およびBNP型ペプチドの量)が参照量(単数または複数)を超える場合、心房細動の治療に適した療法を選択し、そして/または開始する
ことを含む、前記方法を想定する。
【0167】
上に言及する方法は、IGFBP7の量(単数または複数)(またはIGFBP7およびBNP型ペプチドの量)が、参照量(単数または複数)を超えている場合、被験体が心房細動を患っていると同定する工程(b1)をさらに含むことも可能である。
【0168】
本発明はさらに、被験体における心房細動、特に進行中の心房細動を診断するための、被験体試料におけるi)IGFBP7、および場合によってBNP型ペプチド、またはii)IGFBP7に特異的に結合する検出剤、および場合によってBNP型ペプチドに特異的に結合する検出剤の使用にも関する。
【0169】
本発明はさらに、心房細動を診断するための診断的組成物の製造のための、i)IGFBP7、および場合によってBNP型ペプチド、またはii)IGFBP7に特異的に結合する検出剤、および場合によってBNP型ペプチドに特異的に結合する検出剤の使用にも関する。好ましくは、参照量を超える被験体由来の試料中のバイオマーカーIGFBP7の量(および場合によって参照量を超える前記BNP型ペプチドの量)は、被験体が心房細動を有することを示す。やはり好ましくは、参照量未満の被験体由来の試料中のバイオマーカーIGFBP7の量(および場合によって、参照量未満の被験体由来の試料中のBNP型ペプチドの量)は、被験体が心房細動を持たないことを示す。
【0170】
本発明の好ましい態様にしたがって、進行中の心房細動を診断するために適応したデバイスであって
(a)IGFBPに特異的に結合する検出剤(および場合によって、BNP型ペプチドに特異的に結合する検出剤)を含むアナライザー装置であって、試料におけるマーカー(単数または複数)の量(単数または複数)を決定するために適応した、前記装置;および
(b)決定した量(単数または複数)と参照量(単数または複数)を比較し、それによって、進行中の心房細動を診断するためのアナライザー装置であって、参照量(単数または複数)を含むデータベース、および本明細書の別の箇所に示すような比較を実行するためのコンピュータが実施するアルゴリズムを含む、前記装置
を含む、前記デバイスを提供する。
【0171】
用語「デバイス」は、本明細書の別の箇所に定義されている。用語「検出剤」は、本明細書の別の箇所に明記されている。1つの態様において、剤は、マーカー(すなわち、それぞれIGFBPおよびBNP型ペプチド)に特異的に結合する抗体、例えばモノクローナル抗体である。
【0172】
本明細書に引用するすべての参考文献は、その全開示内容および本明細書に特異的に言及する開示内容が本明細書に援用される。
【実施例】
【0173】
以下の実施例は、本発明を単に例示するものとする。これらは、どんなものであっても、本発明の範囲を限定するとは見なされないものとする。
実施例1:患者コホート
TnT−hs、IL−6、NT−プロBNP、およびhsCRPレベルを、n=46の患者の血漿試料において決定し、12ヶ月診察時に洞律動(SR)で血液試料を採取し、そしてバイオマーカーをアッセイした。すべての患者は、ランダム化から12ヶ月診察まで、心房細動の>=1回の再発を有した。すべての46人の患者は、自発的に洞律動に変換した。
【0174】
・発作性心房細動(AF)の0〜7日後;n=9人の患者
・発作性AFの8〜30日後;n=10人の患者
実施例2:アッセイ
Rocheの電気化学発光ELISAサンドイッチ試験ElecsysトロポニンT hs(高感度)STAT(短いターンアラウンド時間)アッセイを用いて、トロポニンTを決定した。該試験は、ヒト心臓トロポニンTに対して特異的に向けられる2つのモノクローナル抗体を使用する。抗体は、288アミノ酸からなる心臓トロポニンTタンパク質の中央部分に位置する2つのエピトープ(アミノ酸125〜131位および136〜147位)を認識する。hs−TnTアッセイは、3〜10000pg/mLの範囲のトロポニンTレベルの測定を可能にする。
【0175】
Rocheの電気化学発光ELISAサンドイッチ試験ElecsysプロBNP II STAT(短いターンアラウンド時間)アッセイを用いて、NT−プロBNPを決定した。該試験は、プロBNP(1〜108)のN末端部分(1〜76)に位置するエピトープを認識する、2つのモノクローナル抗体を使用する。
【0176】
電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA、Roche Diagnostics)によって、IL−6(インターロイキン6)を測定した。Roche DiagnosticsのCobas E601アナライザーを用いて試験を行った。試験は、ビオチン化モノクローナルIL−6特異的抗体との最初のインキュベーション、ならびにルテニウム複合体およびストレプトアビジンコーティング微小粒子で標識されたモノクローナルIL−6特異的抗体との第二のインキュベーションに基づく。
【0177】
Roche Diagnosticsの粒子増進免疫比濁アッセイ(Tina−quant心臓C反応性タンパク質(ラテックス)高感度)を用いて高感度(hs)CRPを決定した。この試験において、ラテックス微小粒子にカップリングした抗CRP抗体は、試料中の抗原と反応して、抗原/抗体複合体を形成する。凝集後、複合体を濁度的に測定する。
【0178】
実施例3:結果
結果を以下の表に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
データ評価によって、参照値より高い(本研究において>6pg/mL)TnT−hsレベル(他のバイオマーカーとは独立)を持つ患者は発作性心房細動を有すると推測され、そして抗凝固から利益を受ける可能性もあることが示された。さらに、洞律動にあることを7〜30日後に提示する患者において、TnT−hsレベルを検出してもよいことが示される。hsCRPなどの他のマーカーは、心房細動の自発的終結後、わずかに異なる動力学を示し、そしてしたがって、発作性心房細動の過去のエピソードの検出において、個々に、そして/または組み合わせて補助することも可能である。
【0181】
したがって、7〜30日後以内に、洞律動にあることを提示する患者において、発作性心房細動の最近の発生の診断は、トロポニンT単独の、あるいは炎症マーカー(CRPhs、IL6)および/または心不全のマーカー(NT−プロBNP)と組み合わせたレベル増進の検出を用いて達成可能である。
【0182】
実施例4:進行中の心房細動を伴う被験体におけるIGFBP7およびNT−プロBNPの決定
49人の見かけ上健康な高齢被験体由来の血漿試料において、IGFBP7を決定した。これらの49人の被験体のうち、17人は、臨床診察時、ECGによって検出されたAFのエピソードを提示した。139人の見かけ上健康な高齢被験体由来の血漿試料において、NT−プロBNPを決定した。これらの139人の被験体のうち、45人は臨床診察時にECGによって検出されるAFのエピソードを提示した。性別および年齢が一致した28/82の対照は、ECG上にAFのエピソードを提示しなかった。
【0183】
NT−プロBNPを上記のように決定した。ヒト試料におけるIGFBP7の検出のため、サンドイッチELISAを用いた。抗原の捕捉および検出のため、R&D Systems(カタログ番号:AF 1334)由来の抗IGFBP7ポリクローナル抗体のアリコットを、それぞれビオチンおよびジゴキシゲニンとコンジュゲート化した。
【0184】
結果を以下の表に示す:
【0185】
【表2】
【0186】
ECGによって検出されたAFのエピソードを提示するまたは提示しない被験体において、バイオマーカーレベルを比較した。表から得られうるように、NT−プロBNPおよびIGFBP7は、進行中のAFを伴う被験体において、有意により高いことが見出された。
【0187】
実施例5:個々の症例
クラスA心不全の71歳の女性患者は、30kg/m未満のBMIおよび高血圧を有する。この患者は脳卒中歴を持たない。患者は洞律動を示す。患者から得た血漿試料において、トロポニンT、インターロイキン6およびNt−プロBNPを決定する。トロポニンT値は6pg/ml未満であり、インターロイキン6値は1.5pg/ml未満であり、そしてNt−プロBNP値は125pg/ml未満である。データ評価は、患者が、前週に、発作性心房細動の最近のエピソードを持たなかったことを示す。
【0188】
クラスA心不全の69歳の男性患者は、30kg/m未満のBMIおよび高血圧を有する。患者は洞律動を示す。患者から得た血漿試料において、トロポニンT、C反応性タンパク質およびNt−プロBNPを決定する。トロポニンT値は6pg/ml未満であり、C反応性タンパク質値は1〜3mg/mlの間であり、そしてNt−プロBNP値は125pg/ml未満である。データ評価は、患者が、最長7〜30日前に、発作性心房細動の最近のエピソードを持たなかったことを示す。患者は、12ヶ月後、または症状が悪化した場合、追跡受診に戻ってくるように告げられている。12ヶ月後、患者は追跡受診にやってくる。患者から得た血漿試料において、トロポニンT、C反応性タンパク質およびNt−プロBNPを決定する。トロポニンT値は6pg/mlより高く、C反応性タンパク質値は3mg/lより高く、そしてNt−プロBNP値は125pg/mlより高い。データ評価は、患者が、最長7〜30日前に、発作性心房細動の過去のエピソードを有し、そして抗凝固から利益を受けうることを示す。
【0189】
クラスB心不全の68歳の男性患者は、30kg/mより高いBMIおよび高血圧を有する。患者は洞律動を示す。患者から得た血漿試料において、トロポニンT、C反応性タンパク質およびNt−プロBNPを決定する。トロポニンT値は6pg/mlより高く、CRP値は3mg/lより高く、そしてNt−プロBNP値は125pg/mlより高い。参照量(単数または複数)に比べて、増加した量のマーカーは、被験体が、最長7〜30日前までに、発作性心房細動の過去のエピソードを患ったことを示す。本例は、単独のまたはさらなるマーカーと組み合わせたトロポニンTの決定が、発作性心房細動の診断により、抗凝固から利益を受けうる患者を検出するのに適していることを立証する。
【0190】
クラスA心不全の76歳の女性患者は、心房細動歴を持たない。患者は洞律動を示す。患者から得た血漿試料において、トロポニンT、インターロイキン6、Nt−プロBNPおよびIGFBP−7を決定する。トロポニンT値は6pg/mlより高く、インターロイキン6値は1.5pg/mlより高く、Nt−プロBNP値は125pg/mlより高く、そしてIGFBP−7値は80ng/mlより高い。データ評価は、患者が、数日前に、発作性心房細動の最近のエピソードを有し、そして予防治療から利益を受けうることを示す。
【0191】
結論:
本発明の根底にある研究のデータは、心臓トロポニンが、最近の発作性心房細動の発生を診断する有用なマーカーでありうることを示す。TnT−hsは、心房細動中に心臓から血流に放出される可溶性バイオマーカーであり、そしてデータによって、約1週間遡る不整脈の後、数日間検出可能であり、その後、減少することが示される。hsCRP、NT−プロBNPおよびIL−6に関して類似のパターンが示され、そしてしたがって、これらのマーカーは、単独で、または組み合わせて、心房細動の自発的終結後、最長1ヶ月の発作性心房細動の検出を補助しうる。