【文献】
P.E. Markovsky,Preparation and properties of ultrafine (submicron) structure titanium alloys,Materials Science and Engineering A,NL,Elsevier,1995年 5月 2日,203,L1-L4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
UNS R56260、UNS R54620、UNS R54250、UNS R56700、およびUNS R56620から選択されるチタン合金を含むワークピースの粒径を微細化する方法であって、
前記ワークピースをβ焼鈍することと、
前記β焼鈍されたワークピースを、前記チタン合金のβトランザス温度未満の温度まで冷却することと、
前記ワークピースを多軸鍛造することを含み、前記多軸鍛造することは、
前記ワークピースを、前記ワークピースの内部領域が断熱的に加熱されるのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの第1の直交軸の方向に、ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度でプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記内部領域が断熱的に加熱されるのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの第2の直交軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度でプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記内部領域が断熱的に加熱されるのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの第3の直交軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度でプレス鍛造することと、
少なくとも1.0で3.5未満の範囲内の全真ひずみが前記ワークピースにおいて達成されるまで、前記プレス鍛造のうちの少なくとも1つを繰り返すことと、を含み、プレス鍛造中に使用される前記ひずみ速度は、0.2秒−1〜0.8秒−1の範囲内である、前記方法。
前記β焼鈍されたワークピースを冷却することは、前記ワークピースを前記ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却することを含む、請求項1に記載の方法。
前記ワークピースをβ焼鈍することは、前記ワークピースを、前記チタン合金の前記βトランザス温度〜前記チタン合金の前記βトランザス温度を最大300°F(166.7℃)上回る温度の範囲内の温度でβ焼鈍することを含む、請求項1に記載の方法。
前記β焼鈍されたワークピースを冷却する前に、前記ワークピースを、前記チタン合金のβ相領域において塑性変形温度で塑性変形させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記ワークピースを前記チタン合金の前記β相領域において塑性変形温度で塑性変形させることは、前記ワークピースを延伸すること、据え込み鍛造すること、および高ひずみ速度で多軸鍛造することのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
前記塑性変形温度は、前記チタン合金の前記βトランザス温度〜前記チタン合金の前記βトランザス温度を最大300°F(166.7℃)上回る温度の範囲内である、請求項9に記載の方法。
前記ワークピースを塑性変形させることは、高ひずみ速度で多軸鍛造することを含み、前記ワークピースを冷却することは、前記ワークピースが前記チタン合金のα+β相領域において前記ワークピース鍛造温度まで冷却するときに、前記ワークピースを高ひずみ速度で多軸鍛造することを含む、請求項9に記載の方法。
前記ワークピース鍛造温度は、前記チタン合金の前記βトランザス温度を100°F(55.6℃)下回る温度〜前記チタン合金の前記βトランザス温度を700°F(388.9℃)下回る温度の範囲内である、請求項1に記載の方法。
逐次の複数回のプレス鍛造の間に、前記ワークピースの外側表面を、前記ワークピース鍛造温度範囲内の前記ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱しながら、前記ワークピースの前記断熱的に加熱された内部領域を、前記ワークピース鍛造温度範囲内の前記ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記ワークピースの前記外側表面を加熱することは、火炎加熱、箱形炉加熱、誘導加熱、および放射加熱のうちの1つ以上を用いて加熱することを含む、請求項15に記載の方法。
前記ワークピースをプレス鍛造するために使用される鍛造炉のダイは、前記ワークピース鍛造温度〜前記ワークピース鍛造温度を100°F(55.6℃)下回る温度の範囲内の温度まで加熱される、請求項15に記載の方法。
少なくとも1.0で3.5未満の全真ひずみが前記ワークピースにおいて達成されるまで、前記プレス鍛造のうちの少なくとも1つを繰り返すことは、前記ワークピースを第2のワークピース鍛造温度でプレス鍛造することを含み、前記第2のワークピース鍛造温度は、前記ワークピースの前記チタン合金の前記α+β相領域内であり、前記第2のワークピース鍛造温度は、前記ワークピース鍛造温度よりも低い、請求項1に記載の方法。
UNS R56260、UNS R54620、UNS R54250、UNS R56700、およびUNS R56620から選択されるチタン合金を含むワークピースの粒径を微細化する方法であって、
前記ワークピースをβ焼鈍することと、
前記β焼鈍されたワークピースを、前記チタン合金のβトランザス温度未満の温度まで冷却することと、
前記ワークピースを多軸鍛造することを含み、前記多軸鍛造することは、
前記ワークピースを、前記ワークピースの内部領域が断熱的に加熱されるのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの第1の直交A軸の方向に、ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度で、前記ワークピースの各直交軸に対して所望の最終鍛造寸法に相当する距離である主要圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの第2の直交B軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で主要圧下スペーサ高さよりも大きい第1の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの第3の直交C軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で主要圧下スペーサ高さよりも大きい第2の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記内部領域が断熱的に加熱されるのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの前記第2の直交B軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記主要圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記第3の直交C軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記第1の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記第1の直交A軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記第2の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記内部領域が断熱的に加熱されるのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの前記第3の直交C軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記主要圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記第1の直交A軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記第1の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記第2の直交B軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記第2の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
少なくとも1.0で3.5未満の範囲内の全真ひずみが前記ワークピースにおいて達成されるまで、先行するプレス鍛造のうちの少なくとも1つを繰り返すことと、を含み、プレス鍛造中に使用される前記ひずみ速度は、0.2秒−1〜0.8秒−1の範囲内である、前記方法。
前記ワークピースをβ焼鈍することは、前記ワークピースを、前記チタン合金の前記βトランザス温度〜前記チタン合金の前記βトランザス温度を最大300°F(166.7℃)上回る温度の範囲内の温度でβ焼鈍することを含む、請求項21に記載の方法。
前記β焼鈍されたワークピースを、前記チタン合金の前記βトランザス温度未満の温度まで冷却する前に、前記ワークピースを、前記チタン合金のβ相領域において塑性変形温度で塑性変形させることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
前記ワークピースを前記チタン合金の前記β相領域において塑性変形温度で塑性変形させることは、前記ワークピースを、延伸すること、据え込み鍛造すること、および高ひずみ速度で多軸鍛造することのうちの少なくとも1つを含む、請求項29に記載の方法。
前記塑性変形温度は、前記ワークピースの前記チタン合金の前記βトランザス温度〜前記ワークピースの前記チタン合金の前記βトランザス温度を最大300°F(166.7℃)上回る温度の範囲内である、請求項29に記載の方法。
前記ワークピースを塑性変形させることは、高ひずみ速度で多軸鍛造することを含み、前記β焼鈍されたワークピースを冷却することは、前記ワークピースが、前記ワークピース鍛造温度まで冷却するときに、前記ワークピースを高ひずみ速度で多軸鍛造することを含む、請求項29に記載の方法。
前記ワークピース鍛造温度は、前記チタン合金の前記βトランザス温度を100°F(55.6℃)下回る温度〜前記チタン合金の前記βトランザス温度を700°F(388.9℃)下回る温度の範囲内である、請求項21に記載の方法。
逐次の複数回のプレス鍛造の間において、前記ワークピースの外側表面領域が、前記ワークピース鍛造温度範囲内の前記ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱される間に、前記ワークピースの前記断熱的に加熱された内部領域は、前記ワークピース鍛造温度範囲内の前記ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却される、請求項21に記載の方法。
前記ワークピースの前記外側表面を加熱することは、火炎加熱、箱形炉加熱、誘導加熱、および放射加熱のうちの1つ以上を用いて加熱することを含む、請求項35に記載の方法。
前記ワークピースをプレス鍛造するために使用される鍛造炉のダイは、前記ワークピース鍛造温度〜前記ワークピース鍛造温度を100°F(55.6℃)下回る温度の範囲内の温度まで加熱される、請求項35に記載の方法。
少なくとも1.0で3.5未満の全真ひずみが前記ワークピースにおいて達成されるまで、前記プレス鍛造のうちの少なくとも1つを繰り返すことは、前記ワークピースを第2のワークピース鍛造温度でプレス鍛造することを含み、前記第2のワークピース鍛造温度は、前記チタン合金ワークピースのα+β相領域内であり、前記第2のワークピース鍛造温度は、前記ワークピース鍛造温度よりも低い、請求項21に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
読者は、本開示による特定の非限定的な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することにより、前述の詳細ならびにその他を理解するであろう。
【0025】
操作例、または別段に指示されるもの以外の非限定的な実施形態の本説明において、量または特性を表す全ての数は、全ての例において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、別段にそれとは反対の指示がない限り、以下の説明に記載される任意の数値パラメータは、本開示による方法によって獲得することが望まれる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低限において、また特許請求の範囲と同等である原理の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、通常の丸め技術を適用することによって、報告される有効桁数を考慮して解釈されるべきである。
【0026】
また、本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に含まれる全ての部分範囲を含むように意図される。例えば、「1〜10」の範囲は、記載される最小値1と記載される最大値10との間の(およびこれらを含む)、即ち、1以上の最小値および10以下の最大値を有する、全ての部分範囲を含むように意図される。本明細書に記載される任意の最大数値限定は、その中に含まれる全てのより小さい数値限定を含むように意図され、また本明細書に記載される任意の最小数値限定は、その中に含まれる全てのより大きい数値限定を含むように意図される。したがって、出願人らは、本明細書に明示的に記載される範囲内に含まれる任意の部分範囲を明示的に記載するように、特許請求の範囲を含む本開示を改変する権利を留保する。全てのかかる範囲は、任意のかかる部分範囲を明示的に記載する改正が、米国特許法第112条第1項および米国特許法第132条(a)の要件に従うように、本明細書に本質的に開示されるように意図される。
【0027】
本明細書で使用するとき、文法上の冠詞「one」、「a」、「an」、および「the」は、別段に指示されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むように意図される。したがって、本明細書において、冠詞は、1つまたは1つを超える(即ち、少なくとも1つの)冠詞の文法上の目的語を指すために使用される。例として、「構成要素」は、1つ以上の構成要素を意味し、またしたがって、1つを超える構成要素が企図され得、説明される実施形態の実装において用いられるか、または使用されてもよい。
【0028】
本開示は、種々の実施形態の説明を含む。本明細書に説明される全ての実施形態は、例示的、例証的、および非限定的であることが理解されるべきである。したがって、本発明は、種々の例示的、例証的、および非限定的な実施形態の説明によって限定されない。むしろ、本発明は、本明細書に明示的または本質的に記載されるあらゆる特徴を記載するために改正され得る、ないしは別の方法で本開示によって明示的または本質的に支持される、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0029】
参照により本明細書に全体または一部が組み込まれることが言及されるあらゆる特許、刊行物、または他の開示資料は、組み込まれる資料が既存の定義、記述、または本開示に記載される他の開示資料と矛盾しない範囲内でのみ本明細書に組み込まれる。したがって、また必要な範囲で、本明細書に記載の開示は、参照により本明細書に組み込まれるあらゆる矛盾する資料に優先する。参照によって本願に組み込まれることが言及されるが、しかし既存の定義、声明、または本開示に記載される他の開示資料と矛盾するあらゆる資料またはその一部分は、その組み込まれた資料と既存の開示資料との間に矛盾が発生しない範囲内でのみ組み込まれる。
【0030】
本開示の態様は、粒径を微細化する鍛造ステップ中に高ひずみ速度の適用を含む、チタン合金のための多軸鍛造プロセスの非限定的な実施形態に関する。これらの方法の実施形態は、概して、「高ひずみ速度多軸鍛造」または「高ひずみ速度MAF」として本開示において言及される。本明細書で使用するとき、用語「
圧下」および「ヒット」は互換的に、ワークピースがダイ表面間で鍛造される個々のプレス鍛造ステップを指す。本明細書で使用するとき、語句「スペーサ高さ」は、その軸に沿った
圧下後に1つの直交軸に沿って測定されるワークピースの寸法または厚さを指す。例えば、特定の軸に沿って4.0インチのスペーサ高さにプレス鍛造
圧下した後、その軸に沿って測定されるプレス鍛造されたワークピースの厚さは、約4.0インチとなる。スペーサ高さの概念および使用は、プレス鍛造の分野の当業者に周知であり、本明細書においてさらに述べる必要はない。
【0031】
「Ti−6−4」合金とも称されることもあるTi−6Al−4V合金(ASTMグレード5;UNS R56400)等の合金に関して、ワークピースを少なくとも3.5の全ひずみに鍛造する高ひずみ速度多軸鍛造は、超微細粒ビレットを調製するために使用され得ることがこれまでに決定されている。このプロセスは、本明細書にその全体が参照により組み込まれる、2010年9月15日に出願された「Processing Routes for Titanium and Titanium Alloys」(「‘538出願」)と題される米国特許公開第12/882,538号に開示される。少なくとも3.5のひずみを付与することは、著しい処理時間および複雑さを必要とすることがあり、費用を追加し、予期せぬ問題の機会を増加させる。本開示は、少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の全ひずみを使用する、超微細粒構造を提供することができる高ひずみ速度多軸鍛造プロセスを開示する。
【0032】
本開示による方法は、Ti−6−4合金よりも遅い有効なα析出および成長速度を示すチタン合金に対する、‘538出願に開示される複数の据え込みおよび延伸(MUD)プロセス等の多軸鍛造およびその派生物の適用を含む。具体的には、「Ti−6−2−4−2」合金とも称されることがあるTi−6Al−2Sn−4Zr−2Mo−0.08Si合金(UNS R54620)は、Si等の追加の粒ピンニング元素の結果として、Ti−6−4合金よりも遅い有効なα速度を有する。また、「Ti−6−2−4−6」合金とも称されることがあるTi−6Al−2Sn−4Zr−6Mo合金(UNS R56260)は、増加されたβ安定化内容の結果として、T−6−4合金よりも遅いα速度を有する。合金化元素の観点から、α相の成長および析出は、チタンベース合金中の合金化元素の拡散速度の関数であることが認識される。モリブデンは、全てのチタン合金化添加物の中でより低い拡散速度のうちの1つを有することが既知である。それに加えて、モリブデン等のβ安定剤は、合金のトランザス温度(T
β)を低め、より低いT
βは概して、合金の処理温度において合金中の原子のより低い拡散をもたらす。Ti−6−2−4−2およびTi−6−2−4−6合金の比較的遅い有効なα析出および成長速度の結果、本開示の実施形態によるMAFの前に使用されるβ熱処理は、Ti−6−4合金におけるかかる処理の効果と比較して、微細で安定したαラスサイズを生成する。それに加えて、β熱処理および冷却後、Ti−6−2−4−2およびTi−6−2−4−6合金は、α粒成長の反応速度を制限する微細なβ粒構造を有する。
【0033】
α成長の有効な反応速度論は、βトランザスの直ぐ下の温度において最も低速の拡散種を同定することによって評価することができる。このアプローチは、文献内で理論的に概説され、実験的に検証されている(Semiatin et al.,
Metallurgical and Materials Transactions A:Physical Metallurgy and Materials Science 38(4),2007,pp.910−921を参照)。チタンおよびチタン合金において、可能性のある合金化元素の全てに関する拡散率データは容易に入手可能ではないが、しかしながら、Lutjering and Williamsによる
Titanium(第2版、2007)中のもの等の文献調査は、幾つかの一般的な合金化元素に関する次の相対的順位に概して同意している:
D
Mo<D
Nb<D
Al〜D
V〜D
Sn〜D
Zr〜D
Hf<D
Cr〜D
Ni〜D
Cr〜D
Co〜D
Mn〜D
Fe
【0034】
したがって、Ti−6−2−4−6合金およびTi−6−2−4−2合金等の、モリブデンを含有する合金は、反応速度がアルミニウムの拡散によって制御されるTi−6−4合金よりも比較的遅いひずみにおいて、超微細粒微細構造を達成するのに必要とされる望ましい低α速度を示す。周期表の族の関係に基づき、タンタルおよびタングステンは、低速拡散体(slow diffuser)の族に属することが合理的に仮定され得る。
【0035】
α相の有効な反応速度を低減するような低速拡散元素の包含に加えて、アルミニウム拡散によって制御される合金においてβトランザス温度を低減することは、同様の効果を有するであろう。100℃のβトランザス温度低減は、概ね、βトランザス温度における規模の順序によってβ相中のアルミニウムの拡散率を低減するであろう。ATI 425(登録商標)合金(Ti−4Al−2.5V;UNS 54250)およびTi−6−6−2合金(Ti−6Al−6V−2SN;UNS 56620)等の合金のα速度は、アルミニウム拡散によって制御され得るが、しかしながら、これらの合金のTi−6Al−4V合金と比較してより低いβトランザス温度はまた、望ましいより遅い有効なα反応速度をもたらす。通常Ti−6Al−4V合金の生物医学的バージョンであるTi−6Al−7Nb合金(UNS R56700)も、ニオブ含有量のため、より遅い有効なα速度を示すことができる。
【0036】
Ti−6−4合金以外のα+β合金は、同様のα相の体積分率をもたらす温度において、‘538出願に開示されるものと同様の条件下で処理され得ると初めは予想された。例えば、Computherm,LLC,Madison,Wisconsin,米国から入手可能である市販のコンピュータツール、PANDATソフトウェアを使用した予測によると、1500°F(815.6℃)でのTi−6−4合金は、1600°F(871.1℃)でのTi−6−2−4−2合金および1200°F(648.9℃)でのTi−6−2−4−6合金の双方と概ね同一のα相体積分率を有するはずであると予測された(
図1参照)。しかしながら、Ti−6−2−4−2およびTi−6−2−4−6合金の双方とも、同様のα相体積分率を生み出すであろうと予測される温度を用いて、‘538出願にてTi−6−4合金を処理した方法で処理したときに、激しく亀裂を生じた。より低いα平衡体積分率および/または一通過あたりの著しく低減されたひずみをもたらす遥かにより高い温度が、Ti−6−2−4−2およびTi−6−2−4−6合金を成功裏に処理するために必要とされた。
【0037】
α/β鍛造温度(単数または複数)、ひずみ速度、1ヒットあたりのひずみ、ヒット間の保持時間、再加熱の数および間隔、ならびに中間の熱処理を含む、高ひずみ速度MAFプロセスへの変形は各々、結果として生じる微細構造ならびに亀裂の存在および範囲に影響を与えることができる。より低い全ひずみは初め、超微細粒構造が生じるという予想を伴わず、亀裂を阻害するために試みられた。しかしながら、調査すると、より低い全ひずみを使用して処理されたサンプルは、超微細粒構造を生成するための著しい有望性を示した。この結果は、全く予期せぬものであった。
【0038】
本開示による非限定的な実施形態において、超微細粒径を生成するための方法は、以下のステップを含む:1)Ti−6−4合金よりも低い有効なα相成長速度を示すチタン合金を選択すること、2)チタン合金をβ焼鈍して、微細で安定したαラスサイズを生成すること、および3)少なくとも1.0、または別の実施形態では、少なくとも1.0〜最大3.5未満の全ひずみまでの高ひずみ速度MAF(または、‘538出願に開示される複数の据え込みおよび延伸(MUD)プロセス等の同様の派生プロセス)。本明細書で使用するとき、粒およびラスサイズを説明するための語「微細」は、達成され得る最少の粒およびラスサイズを指し、非限定的な実施形態では約1μmである。本明細書において、語「安定した」は、多軸鍛造ステップが、α粒径を著しく粗大化せず、また約100%を超えてα粒径を増加させないことを意味するために使用される。
【0039】
図2の流れ図および
図3の概略図は、高ひずみ速度多軸鍛造(MAF)を使用してチタン合金の粒径を微細化する方法(16)の本開示による非限定的な実施形態の態様を例証する。多軸鍛造(26)前に、チタン合金ワークピース24は、β焼鈍(18)および冷却(20)される。空冷は、例えば、4インチの立方体等のより小さいワークピースにおいて可能であるが、しかしながら、水または液体冷却を使用することもできる。より速い冷却速度は、より微細なラスサイズおよびα粒径をもたらす。β焼鈍(18)は、ワークピース24のチタン合金のβトランザス温度超にワークピース24を加熱することと、ワークピース24内の全てのβ相を形成するのに十分な時間、保持することとを含む。β焼鈍(18)は、当業者に周知のプロセスであり、したがって本明細書では詳細に説明しない。β焼鈍の非限定的な実施形態は、ワークピース24を、チタン合金のβトランザス温度を約50°F(27.8℃)上回るβ焼鈍温度まで加熱することと、ワークピース24をその温度で約1時間保持することとを含むことができる。
【0040】
β焼鈍(18)後、ワークピース24は、ワークピース24のチタン合金のβトランザス温度未満の温度まで冷却される(20)。本開示の非限定的な実施形態では、ワークピースは、周囲温度まで冷却される。本明細書において使用するとき、「周囲温度」は、周辺の温度を指す。例えば、非限定的な商業生産シナリオでは、「周囲温度」は、工場周辺の温度を指す。非限定的な実施形態では、冷却(20)は、急冷を含むことができる。急冷は、ワークピース24を水、油、または別の好適な液体中に浸けることを含み、治金分野の当業者によって理解されるプロセスである。他の非限定的な実施形態では、特により小さいサイズのワークピースに関して、冷却(20)は、空冷を含むことができる。現在または将来的に当業者に既知であるチタン合金ワークピース24を冷却する任意の方法は、本開示の範囲内である。それに加えて、特定の非限定的な実施形態では、冷却(20)は、その後の高ひずみ速度多軸鍛造のために、ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度まで直接冷却することを含む。
【0041】
ワークピースの冷却(20)後、ワークピースは、高ひずみ速度多軸鍛造(26)に供される。当業者に理解されるように、多軸鍛造(「MAF」)は、「A−B−C」鍛造とも称されることがあり、重度の塑性変形の形態である。高ひずみ速度多軸鍛造(26)は、本開示の非限定的な実施形態によれば、チタン合金を含むワークピース24を、チタン合金のα+β相領域内のワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度まで加熱した後(
図2中のステップ22)、高ひずみ速度を使用するMAF(26)を含む。冷却ステップ(20)が、ワークピース鍛造温度範囲内の温度まで冷却することを含む実施形態では、加熱ステップ(22)は必要ではないことは明らかである。
【0042】
高ひずみ速度は、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するために高ひずみ速度MAFにおいて使用される。しかしながら、本開示による非限定的な実施形態では、サイクル中の高ひずみ速度MAFのA−B−Cヒットの少なくとも最終サイクルにおいて、チタン合金ワークピース24の内部領域の温度は、チタン合金ワークピースのβトランザス温度(T
β)を超過すべきではない。したがって、かかる非限定的な実施形態では、A−B−Cヒットの少なくとも最終サイクル、または高ひずみ速度MAFのサイクルの少なくとも最後のヒットのためのワークピース鍛造温度は、高ひずみ速度MAF中に、ワークピースの内部領域の温度が、合金のβトランザス温度と等しくないか、またはそれを超えないことを確実にするように選択されるべきである。例えば、本開示による非限定的な実施形態では、ワークピースの内部領域の温度は、少なくとも1.0の、または少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の全ひずみがワークピースの少なくとも一領域において達成されるときに、MAFにおけるA−B−Cヒットの少なくとも最終の高ひずみ速度サイクル中、または少なくとも最後のプレス鍛造ヒット中に、合金のβトランザス温度を20°F(11.1℃)下回る温度、即ち、T
β−20°F(T
β−11.1℃)を超えない。
【0043】
本開示による高ひずみ速度MAFの非限定的な実施形態では、ワークピース鍛造温度は、ワークピース鍛造温度範囲内の温度を含む。非限定的な実施形態では、ワークピース鍛造温度範囲は、ワークピースのチタン合金のβトランザス温度(T
β)を100°F(55.6℃)下回る温度〜チタン合金のβトランザス温度を700°F(388.9℃)下回る温度である。また別の非限定的な実施形態では、ワークピース鍛造温度範囲は、チタン合金のβトランザス温度を300°F(166.7℃)下回る温度〜チタン合金のβトランザス温度を625°F(347℃)下回る温度である。非限定的な実施形態では、ワークピース鍛造温度範囲の下端は、損傷、例えば、亀裂形成およびガウジングが鍛造ヒット中にワークピースの表面に発生しない、α+β相領域内の温度である。
【0044】
約1820°F(996℃)のβトランザス温度(T
β)を有するTi−6−2−4−2合金に適用される
図2に示される非限定的な方法の実施形態では、ワークピース鍛造温度範囲は、1120°F(604.4℃)〜1720°F(937.8℃)であってもよく、または別の実施形態では、1195°F(646.1℃)〜1520°F(826.7℃)であってもよい。約1720°F(940℃)のβトランザス温度(T
β)を有するTi−6−2−4−6合金に適用される
図2に示される非限定的な方法の実施形態では、ワークピース鍛造温度範囲は、1020°F(548.9℃)〜1620°F(882.2℃)であってもよく、または別の実施形態では、1095°F(590.6℃)〜1420°F(771.1℃)であってもよい。また別の非限定的な実施形態では、
図2に示される実施形態を、「Ti−4Al−2.5V」合金と称されることもあり、約1780°F(971.1℃)のβトランザス温度(T
β)を有するATI 425(登録商標)合金(UNS R54250)に適用するとき、ワークピース鍛造温度範囲は、1080°F(582.2℃)〜1680°F(915.6℃)であってもよく、または別の実施形態では、1155°F(623.9℃)〜1480°F(804.4℃)であってもよい。また別の非限定的な実施形態では、
図2の本開示の実施形態を、「Ti−6−6−2」合金と称されることもあり、約1735°F(946.1℃)のβトランザス温度(T
β)を有するTi−6Al−6V−2Sn合金(UNS 56620)に適用するとき、ワークピース鍛造温度範囲は、1035°F(527.2℃)〜1635°F(890.6℃)であってもよく、または別の実施形態では、1115°F(601.7℃)〜1435°F(779.4℃)であってもよい。本開示は、高ひずみ速度多軸鍛造およびその派生物、例えば、‘538出願に開示されるMUD方法等の、Ti−6−4合金よりも低い有効なα析出および成長速度を有するチタン合金への適用を含む。
【0045】
再び
図2および3を参照すると、チタン合金ワークピース24がワークピース鍛造温度にあるとき、ワークピース24は、高ひずみ速度MAF(26)に供される。本開示による非限定的な実施形態では、MAF(26)は、ワークピースを断熱的に加熱するか、またはワークピースの内部領域を少なくとも断熱的に加熱し、ワークピース24を塑性変形させるのに十分なひずみ速度を使用して、ワークピース24を、ワークピース鍛造温度で、ワークピースの第1の直交軸30の方向(A)にプレス鍛造すること(
図3(a)に示されるステップ28)を含む。
【0046】
高ひずみ速度および高ラム速度は、本開示による高ひずみ速度MAFの非限定的な実施形態において、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するために使用される。本開示による非限定的な実施形態では、用語「高ひずみ速度」は、約0.2秒
−1〜約0.8秒
−1の範囲内のひずみ速度を指す。本開示による別の非限定的な実施形態では、用語「高ひずみ速度」は、約0.2秒
−1〜約0.4秒
−1の範囲内のひずみ速度を指す。
【0047】
上に定義される高ひずみ速度を使用する本開示による非限定的な実施形態では、チタン合金ワークピースの内部領域は、ワークピース鍛造温度を約200°F(111.1℃)上回る温度まで断熱的に加熱されてもよい。別の非限定的な実施形態では、プレス鍛造中、内部領域は、ワークピース鍛造温度を約100°F(55.6℃)〜約300°F(166.7℃)上回る温度の範囲内の温度まで断熱的に加熱される。また別の非限定的な実施形態では、プレス鍛造中、内部領域は、ワークピース鍛造温度を約150°F(83.3℃)〜約250°F(138.9℃)上回る温度の範囲内の温度まで断熱的に加熱される。上述の通り、非限定的な実施形態では、ワークピースのいずれの部分も、高ひずみ速度A−B−CMAFヒットの最後のサイクル中、または直交軸上での最後のヒット中に、チタン合金のβトランザス温度を超えて加熱されるべきではない。
【0048】
非限定的な実施形態では、プレス鍛造中(28)、ワークピース24は、20%〜50%の範囲内の高さまたは別の寸法における
圧下まで塑性変形され、即ち、寸法は、この範囲内の割合まで縮小される。別の非限定的な実施形態では、プレス鍛造中(28)、ワークピース24は、30%〜40%の範囲内の高さまたは別の寸法における
圧下まで塑性変形される。
【0049】
既知の超低ひずみ速度(0.001秒
−1以下)多軸鍛造プロセスは、
図4に概略的に描写される。概して、多軸鍛造の態様は、鍛造装置(例えば、自由鍛造であってもよい)による3ストローク毎(即ち、「3ヒット」)のサイクル後、ワークピースの形状およびサイズは、その3ヒットサイクルの第1のヒットの直前のワークピースの形状およびサイズに近付くということである。例えば、一辺5インチの立方体形状のワークピースを、初めに「a」軸の方向に第1の「ヒット」で鍛造し、90°回転させ、直交「b」軸の方向に第2のヒットで鍛造し、次に90°回転させ、直交「c」軸の方向に第3のヒットで鍛造した後、ワークピースは、開始立方体に類似し、約5インチの辺を含むことになる。換言すれば、3ヒットサイクルは、立方体を、立方体の3つの直交軸に沿って3つのステップにおいて変形させたが、個々のヒット間のワークピースの再配置および各ヒット中の
圧下の選択の結果、3つの鍛造変形の全体的な結果は、立方体を概ねその元の形状およびサイズに戻すということである。
【0050】
本開示による別の非限定的な実施形態では、
図2(a)に示され、本明細書において「第1のヒット」とも称される第1のプレス鍛造ステップ(28)は、ワークピースがワークピース鍛造温度範囲内の温度である間に、ワークピースを、上面を下にして所定のスペーサ高さにプレス鍛造することを含んでもよい。本明細書で使用するとき、用語「スペーサ高さ」は、特定のプレス鍛造
圧下の完了時のワークピースの寸法を指す。例えば、5インチのスペーサ高さに関して、ワークピースは、約5インチの寸法に鍛造される。本開示の方法の特定の非限定的な実施形態では、スペーサ高さは、例えば、5インチである。別の非限定的な実施形態では、スペーサ高さは、3.25インチである。他のスペーサ高さ、例えば、5インチ未満、約4インチ、約3インチ、5インチ超、または5インチ〜最大30インチは、本明細書における実施形態の範囲内であるが、本開示の範囲を制限するものとして見なされるべきではない。スペーサ高さは、鍛造炉の能力、また任意に、本明細書に見られるように、ワークピースをワークピース鍛造温度に維持するための本開示の非限定的な実施形態による熱管理システムの能力によってのみ制限される。3インチ未満のスペーサ高さも、本明細書に開示される実施形態の範囲内であり、かかる比較的小さいスペーサ高さは、最終製品の所望の特性によってのみ制限される。例えば、本開示による方法における、約30インチのスペーサ高さの使用は、細粒径、微細粒径、または超微細粒径を有する、ビレットサイズの(例えば、一辺30インチの)立方体形状のチタン合金形態の生産を可能にする。従来の合金のビレットサイズの立方体形状の形態は、例えば、航空機または陸上タービン用のディスク、リング、およびケース部品へ鍛造されるワークピースとして用いられている。
【0051】
本開示による方法の種々の非限定的な実施形態において用いられるべき所定のスペーサ高さは、本開示を考慮して、過度の実験を伴わずに当業者によって決定することができる。特定のスペーサ高さは、過度の実験を伴わずに当業者によって決定することができる。特定のスペーサ高さは、鍛造中の亀裂に対する特定の合金の感受性に依存する。亀裂に対してより高い感受性を有する合金は、より大きいスペーサ高さ、即ち、亀裂を防止するために1ヒットあたりより小さい変形を要するであろう。断熱的加熱の制限もまた、ワークピース温度は、ヒットの少なくとも最後のサイクルにおいて合金のT
βを超えるべきではないため、スペーサ高さを選択する際に考慮されなくてはならない。それに加えて、鍛造プレス能力の制限は、スペーサ高さを選択する際に考慮される必要がある。例えば、一辺4インチの立方体のワークピースのプレス中、断面積は、プレスステップ中に増加する。したがって、必要とされるひずみ速度でワークピースを変形させ続けるために必要とされる総荷重は、増加する。荷重は、鍛造プレスの能力を超えて増加することはできない。また、ワークピース形状(geometry)は、スペーサ高さを選択する際に考慮される必要がある。大きな変形は、ワークピースの膨張をもたらすことがある。過度に大きい
圧下は、ワークピースの相対的な平坦化をもたらす可能性があり、その結果、異なる直交軸の方向における次の鍛造ヒットは、ワークピースの屈曲をもたらす可能性がある。
【0052】
特定の非限定的な実施形態では、各直交軸ヒットに使用されるスペーサ高さは、等しい。特定の他の非限定的な実施形態では、各直交軸ヒットに使用されるスペーサ高さは、等しくない。各直交軸に非同等スペーサ高さを使用する高ひずみ速度MAFの非限定的な実施形態は、下に提示される。
【0053】
ワークピース24を、第1の直交軸30の方向、即ち、
図3(a)に示されるA方向にプレス鍛造(28)した後、本開示による方法の非限定的な実施形態は、任意に、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域(図示無し)の温度を、ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却させるステップ(ステップ32)をさらに含み、これは
図3(b)に示される。種々の非限定的な実施形態では、内部領域冷却時間、または「待機」時間は、例えば、5秒〜120秒、10秒〜60秒、または5秒〜5分の範囲に渡ってもよい。本開示による種々の非限定的な実施形態では、本明細書で使用するとき、ワークピースの「断熱的に加熱された内部領域」は、ワークピースの中心から外側に延在し、ワークピースの少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%の体積を有する領域を指す。ワークピースの内部領域をワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却するために必要とされる時間は、ワークピース24のサイズ、形状、および組成、ならびにワークピース24の周辺の大気の条件に依存するであろうことが、当業者によって認識されるであろう。
【0054】
内部領域冷却期間中、本明細書に開示される特定の非限定的な実施形態による熱管理システム33の態様は、任意に、ワークピース24の外側表面領域36をワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱すること(ステップ34)を含む。このようにして、ワークピース24の温度は、均一であるか、または均一に近く、各高ひずみ速度MAFヒット前のワークピース鍛造温度に実質的に等温条件であるか、またはそれに近い温度である。各A軸加熱後、各B軸ヒット後、および/または各C軸ヒット後に、任意に、ワークピース24の外側表面領域36を加熱すること(34)は、本開示の範囲内であることが認識される。非限定的な実施形態では、ワークピースの外側表面は、任意に、A−B−Cヒットの各サイクル後に加熱される(34)。また他の非限定的な実施形態では、外側表面領域は任意に、ワークピースの全体の温度が鍛造プロセス中にワークピース鍛造温度範囲内に維持される限り、任意のヒットまたはヒットのサイクル後に加熱される。各高ひずみ速度MAFヒット前に、ワークピースを、ワークピース24の温度を均一または均一に近く、またワークピース鍛造温度に実質的に等温条件またはそれに近い温度に維持するように加熱するべき時間は、ワークピースのサイズに依存してもよく、またこれは、過度の実験を伴わずに当業者によって決定することができる。本開示による種々の非限定的な実施形態では、本明細書で使用するとき、ワークピースの「外側表面領域」は、ワークピースの外側表面から内側に延在し、ワークピースの少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%の体積を有する領域を指す。これは、中間の任意の時点において認識される。
【0055】
非限定的な実施形態では、ワークピース24の外側表面領域36を加熱すること(34)は、熱管理システム33の1つ以上の表面加熱メカニズム38を使用して達成されてもよい。可能な表面加熱機構の連続的なプレス鍛造ステップの例として、ワークピース全体を、炉の中に定置するか、ないしは別の方法でワークピース鍛造温度範囲に伴う温度まで加熱することができる。
【0056】
特定の非限定的な実施形態では、任意的な特徴として、A、B、およびC鍛造ヒットの各々の間に、熱管理システム33は、ワークピースの外側表面領域36を加熱するために使用され、断熱的に加熱された内部領域は、内部領域冷却時間の間冷却されて、ワークピースの温度は、実質的に均一な温度または選択されるワークピース鍛造温度に近い温度に戻る。本開示による特定の他の非限定的な実施形態では、任意的な特徴として、A、B、およびC鍛造ヒットの各々の間に、熱管理システム33は、ワークピースの外側表面領域36を加熱するために使用され、断熱的に加熱された内部領域は、内部領域冷却時間の間冷却されて、その結果ワークピースの温度は、ワークピース鍛造温度範囲内の実質的に均一な温度に戻る。本明細書において、(1)ワークピースの外側表面領域を、ワークピース鍛造温度範囲内の温度まで加熱するための熱管理システム33と、(2)断熱的に加熱された内部領域が、ワークピース鍛造温度範囲内の温度まで冷却する間の期間との双方を利用する本開示による非限定的な実施形態は、「熱管理された高ひずみ速度多軸鍛造」と称されることもある。38は、限定されないが、ワークピース24の外側表面の火炎加熱に適合された火炎加熱器、誘導加熱に適合された誘導加熱器、および放射加熱に適合された放射加熱器を含む。ワークピースの外側表面領域を加熱するための他の機構および技術は、本開示を考慮すれば、当業者に明らかであり、かかる機構および技術は、本開示の範囲内である。外側表面領域加熱機構38の非限定的な実施形態は、箱形炉を含んでもよい(図示無し)。箱形炉は、火炎加熱機構、放射加熱機構、誘導加熱機構、および現在または将来当業者に既知である任意の他の好適な加熱機構のうちの1つ以上を使用する、ワークピースの外側表面領域を加熱するための種々の加熱機構と共に構成されてもよい。
【0057】
別の非限定的な実施形態では、ワークピース24の外側表面領域36の温度は、任意に、熱管理システム33の1つ以上のダイ加熱器40を使用して、加熱され(34)、ワークピース鍛造温度またはそれに近い温度で、ワークピース鍛造温度範囲内に維持される。ダイ加熱器40は、ダイ42またはダイのダイプレス鍛造表面44を、ワークピース鍛造温度もしくはそれに近い温度、またはワークピース鍛造温度範囲内の温度に維持するために使用することができる。非限定的な実施形態では、熱管理システムのダイ42は、ワークピース鍛造温度〜ワークピース鍛造温度を100°F(55.6℃)下回る温度を含む範囲内の温度まで加熱される。ダイ加熱器40は、当業者によって現在または将来既知である任意の好適な加熱機構(火炎加熱機構、放射加熱機構、伝導加熱機構、および/または誘導加熱機構が挙げられるが、これらに限定されない)によって、ダイ42またはダイプレス鍛造表面44を加熱してもよい。非限定的な実施形態では、ダイ加熱器40は、箱形炉の構成要素であってもよい(図示無し)。熱管理システム33は、多軸鍛造プロセス(26)の冷却ステップ(32)、(52)、(60)中に配置され、使用されるように示されているが
(図3(b)、(d)、および(f))、熱管理システム33は、
図3(a)、(c)、および(e)に描写される
ようにプレス鍛造ステップ(28)、(46)、(56)中に配置されてもよく、または配置されなくてもよいことが認識されるであろう。
【0058】
図3(c)に示されるように、本開示による多軸鍛造方法(26)の非限定的な実施形態の態様は、ワークピース24またはワークピース24の少なくとも内部領域を断熱的に加熱し、ワークピース24を塑性変形させるのに十分なひずみ速度を使用して、ワークピース24を、ワークピース24の第2の直交軸48の方向(B)に、ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度でプレス鍛造すること(ステップ46)を含む。非限定的な実施形態では、プレス鍛造(46)中、ワークピース24は、高さまたは別の寸法において20%〜50%
圧下の塑性変形に変形される。別の非限定的な実施形態では、プレス鍛造(46)中、ワークピース24は、高さまたは別の寸法において30%〜40%
圧下の塑性変形に変形される。非限定的な実施形態では、ワークピース24は、第1のプレス鍛造ステップ(28)において使用されるものと同じスペーサ高さに、第2の直交軸48の方向にプレス鍛造されてもよい(46)。別の非限定的な実施形態では、ワークピース24は、第1のプレス鍛造ステップ(28)において使用されるものと異なるスペーサ高さに、第2の直交軸48の方向にプレス鍛造されてもよい。別の非限定的な実施形態では、ワークピース24の内部領域(図示無し)は、プレス鍛造ステップ(46)中、第1のプレス鍛造ステップ(28)と同じ温度まで断熱的に加熱される。他の非限定的な実施形態では、プレス鍛造(46)のために使用される高ひずみ速度は、第1のプレス鍛造ステップ(28)に関して開示されるものと同一のひずみ速度範囲内である。
【0059】
非限定的な実施形態では、
図3(b)および(d)に示される通り、ワークピース24は、鍛造表面に対して異なる直交軸を提示するように、連続的なプレス鍛造ステップ(例えば、(28)、(46)、(56))の間に回転される(50)ことができる。この回転は、「A−B−C」回転と称されることもある。異なる鍛造炉構成を使用することによって、ワークピース24を回転させる代わりに鍛造炉上のラムを回転させることが可能であってもよく、または鍛造炉は、ワークピースもしくは鍛造炉のいずれの回転も必要でないように、多軸ラムを装備してもよいことが理解される。明白なことに、重要な態様は、使用されるワークピースおよびラムの位置の相対的な変化であり、ワークピース24の回
転(50)は、不必要であるか、または任意的であってよい。しかしながら、最新の工業用設備設定において、プレス鍛造ステップ間に異なる直交軸に対してワークピースを回転させること(50)は、多軸鍛造プロセス(26)を完了するために必要とされるであろう。
【0060】
A−B−C回転(50)が必要とされる非限定的な実施形態では、ワークピース24は、A−B−C回転(50)を提供するように鍛造炉操作者によって手動でか、または自動回転システム(図示無し)によって回転されることができる。自動A−B−C回転システムとしては、自由揺動クランプ式操作者ツール、または本明細書に開示される非限定的な熱管理された高ひずみ速度多軸鍛造実施形態を可能にするような同類のものを含むことが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0061】
ワークピース24を第2の直交軸48の方向、即ち、B方向に
図3(d)に示されるようにプレス鍛造(46)した後、プロセス(20)は、任意に、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域(図示無し)を、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却させること(ステップ52)をさらに含み、これは、
図3(d)に示される。特定の非限定的な実施形態では、内部領域冷却時間または待機時間は、例えば、5秒〜120秒、または10秒〜60秒、または5秒〜最大5分の範囲に渡ってもよい。最少冷却時間は、ワークピース24のサイズ、形状、および組成、ならびにワークピース周辺の環境の特性に依存することが、当業者によって認識されるであろう。
【0062】
任意的な内部領域冷却期間中、本明細書に開示される特定の非限定的な実施形態による熱管理システム33の任意的な態様は、ワークピース24の外側表面領域36を、ワークピース鍛造温度またはそれに近い温度で、ワークピース鍛造温度範囲内の温度まで加熱すること(ステップ54)を含む。このようにして、ワークピース24の温度は、均一であるか、または均一に近く、各高ひずみ速度MAFヒットの前のワークピース鍛造温度に実質的に等温条件であるか、またはそれに近い温度に維持される。非限定的な実施形態では、断熱的に加熱された内部領域を特定の内部領域冷却時間の間冷却させると共に、熱管理システム33を使用して外側表面領域36を加熱するとき、ワークピースの温度は、各A−B−C鍛造ヒット間の実質的に均一なワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度に戻る。本開示による別の非限定的な実施形態では、断熱的に加熱された内部領域を特定の内部領域冷却時間の間冷却させると共に、熱管理システム33を使用して外側表面領域36を加熱するとき、ワークピースの温度は、各高ひずみ速度MAFヒットの前のワークピース鍛造温度範囲内の実質的に均一な温度に戻る。
【0063】
非限定的な実施形態では、ワークピース24の外側表面領域36を加熱すること(54)は、熱管理システム33の1つ以上の外側表面加熱機構38を使用して達成されてもよい。可能な加熱機構38の例としては、ワークピース24の火炎加熱に適合された火炎加熱器、誘導加熱に適合された誘導加熱器、および/または放射加熱に適合された放射加熱器を挙げることができるが、これらに限定されない。表面加熱機構38の非限定的な実施形態は、箱形炉を含んでもよい(図示無し)。ワークピースの外側表面を加熱するための他の機構および技術は、本開示を考慮すれば、当業者に明らかであり、かかる機構および技術は、本開示の範囲内である。箱形炉は、ワークピースの外側表面を加熱するための種々の加熱機構と共に構成されてもよく、かかる加熱機構は、火炎加熱機構、放射加熱機構、誘導加熱機構、および/または現在もしくは将来当業者に既知である任意の他の加熱機構のうちの1つ以上を備えてもよい。
【0064】
別の非限定的な実施形態では、ワークピース24の外側表面領域36の温度は、熱管理システム33の1つ以上のダイ加熱器40を使用して、加熱され(54)、ワークピース鍛造温度またはそれに近い温度で、ワークピース鍛造温度範囲内に維持されることができる。ダイ加熱器40は、ダイ42またはダイのダイプレス鍛造表面44を、ワークピース鍛造温度もしくはそれに近い温度、またはワークピース鍛造温度範囲内の温度に維持するために使用することができる。ダイ加熱器40は、当業者によって現在または将来既知である任意の好適な加熱機構(火炎加熱機構、放射加熱機構、伝導加熱機構、および/または誘導加熱機構が挙げられるが、これらに限定されない)によって、ダイ42またはダイプレス鍛造表面44を加熱してもよい。非限定的な実施形態では、ダイ加熱器40は、箱形炉の構成要素であってもよい(図示無し)。熱管理システム33は、多軸鍛造プロセス(26)の平衡化および冷却ステップ(32)、(52)、(60)中に配置され、使用されるように示されているが
(図3(b)、(d)、および(f))、熱管理システム33は、
図3(a)、(c)、および(e)に描写される
ようにプレス鍛造ステップ(28)、(46)、(56)中に配置されてもよく、または配置されなくてもよいことが認識されるであろう。
【0065】
図3(e)に示されるように、本開示による多軸鍛造方法(26)の実施形態の態様は、ワークピース24を断熱的に加熱するか、またはワークピースの内部領域を少なくとも断熱的に加熱し、ワークピース24を塑性変形させるのに十分なラム速度およびひずみ速度を使用して、ワークピース24を、ワークピース24の第3の直交軸58の方向(C)に、ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度でプレス鍛造すること(ステップ56)を含む。非限定的な実施形態では、ワークピース24は、プレス鍛造(56)中、高さまたは別の寸法において20%〜50%
圧下の塑性変形に変形される。別の非限定的な実施形態では、プレス鍛造(56)中、ワークピースは、高さまたは別の寸法において30%〜40%
圧下の塑性変形に変形される。非限定的な実施形態では、ワークピース24は、第1のプレス鍛造ステップ(28)および/または第2の鍛造ステップ(46)において使用されるものと同じスペーサ高さに、第3の直交軸58の方向にプレス鍛造されてもよい(56)。別の非限定的な実施形態では、ワークピース24は、第1のプレス鍛造ステップ(28)において使用されるものと異なるスペーサ高さに、第3の直交軸58の方向にプレス鍛造されてもよい。本開示による別の非限定的な実施形態では、ワークピース24の内部領域(図示無し)は、プレス鍛造ステップ(56)中、第1のプレス鍛造ステップ(28)と同じ温度まで断熱的に加熱される。他の非限定的な実施形態では、プレス鍛造(56)のために使用される高ひずみ速度は、第1のプレス鍛造ステップ(28)に関して開示されるものと同一のひずみ速度範囲内である。
【0066】
非限定的な実施形態では、
図3(b)、3(d)、および3(e)中に矢印50によって示される通り、ワークピース24は、連続的なプレス鍛造ステップ(例えば、46、56)間に異なる直交軸に対して回転させる(50)ことができる。上述の通り、この回転は、A−B−C回転と称されることもある。異なる鍛造炉構成を使用することによって、ワークピース24を回転させる代わりに鍛造炉上のラムを回転させることが可能であってもよく、または鍛造炉は、ワークピースもしくは鍛造炉のいずれの回転も必要でないように、多軸ラムを装備してもよいことが理解される。したがって、ワークピース24の回転50は、不必要または任意的なステップであってもよい。しかしながら、最新の工業用設定において、プレス鍛造ステップ間に異なる直交軸に対してワークピースを回転させること(50)は、多軸鍛造プロセス(26)を完了するために必要とされるであろう。
【0067】
ワークピース24を第3の直交軸58の方向、即ち、C方向に
図3(e)に示されるようにプレス鍛造56した後、プロセス20は、任意に、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域(図示無し)を、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却させること(ステップ60)をさらに含み、これは、
図3(f)に示される。内部領域冷却時間は、例えば、5秒〜120秒、10秒〜60秒、または5秒〜最大5分の範囲に渡ってもよく、また冷却時間は、ワークピース24のサイズ、形状、および組成、ならびにワークピース周辺の環境の特性に依存することが、当業者によって認識される。
【0068】
任意的な冷却期間中、本明細書に開示される非限定的な実施形態による熱管理システム33の任意的な態様は、ワークピース24の外側表面領域36を、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱すること(ステップ62)を含む。このようにして、ワークピース24の温度は、均一であるか、または均一に近く、各高ひずみ速度MAFヒットの前のワークピース鍛造温度に実質的に等温条件であるか、またはそれに近い温度に維持される。非限定的な実施形態では、断熱的に加熱された内部領域を特定の内部領域冷却時間の間冷却させると共に、熱管理システム33を使用して外側表面領域36を加熱することによって、ワークピースの温度は、各A−B−C鍛造ヒット間の実質的に均一なワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度に戻る。本開示による別の非限定的な実施形態では、断熱的に加熱された内部領域を特定の内部領域冷却時間の間冷却させると共に、熱管理システム33を使用して外側表面領域36を加熱することによって、ワークピースの温度は、連続的なA−B−C鍛造ヒット間のワークピース鍛造温度範囲内の実質的等温条件に戻る。
【0069】
非限定的な実施形態では、ワークピース24の外側表面領域36を加熱すること(62)は、熱管理システム33の1つ以上の外側表面加熱機構38を使用して達成されてもよい。可能な加熱機構38の例としては、ワークピース24の火炎加熱用の火炎加熱器、誘導加熱用の適合された誘導加熱器、および/または放射加熱用の放射加熱器を挙げることができるが、これらに限定されない。ワークピースの外側表面を加熱するための他の機構および技術は、本開示を考慮すれば、当業者に明らかであり、かかる機構および技術は、本開示の範囲内である。表面加熱機構38の非限定的な実施形態は、箱形炉を含んでもよい(図示無し)。箱形炉は、火炎加熱機構、放射加熱機構、誘導加熱機構、および/または現在もしくは将来当業者に既知である任意の他の好適な加熱機構のうちの1つ以上を使用する、ワークピースの外側表面を加熱するための種々の加熱機構と共に構成されてもよい。
【0070】
別の非限定的な実施形態では、ワークピース24の外側表面領域36の温度は、熱管理システム33の1つ以上のダイ加熱器40を使用して、加熱され(62)、ワークピース鍛造温度またはそれに近い温度で、ワークピース鍛造温度範囲内に維持されることができる。ダイ加熱器40は、ダイ42またはダイのダイプレス鍛造表面44を、ワークピース鍛造温度もしくはそれに近い温度、または温度鍛造範囲内の温度に維持するために使用することができる。非限定的な実施形態では、熱管理システムのダイ42は、ワークピース鍛造温度〜ワークピース鍛造温度を100°F(55.6℃)下回る温度を含む範囲内の温度まで加熱される。ダイ加熱器40は、当業者によって現在または将来既知である任意の好適な加熱機構(火炎加熱機構、放射加熱機構、伝導加熱機構、および/または誘導加熱機構が挙げられるが、これらに限定されない)によって、ダイ42またはダイプレス鍛造表面44を加熱してもよい。非限定的な実施形態では、ダイ加熱器40は、箱形炉の構成要素であってもよい(図示無し)。熱管理システム33は、多軸鍛造プロセスの平衡化ステップ(32)、(52)、(60)中に配置され、使用されるように示されているが
(図3(b)、(d)、および(f))、熱管理システム33は、
図3(a)、(c)、および(e)に描写される
ようにプレス鍛造ステップ28、46、56中に配置されてもよく、または配置されなくてもよいことが認識されるであろう。
【0071】
本開示の態様は、ワークピースの3つの直交軸に沿ったプレス鍛造ステップのうちの1つ以上が、少なくとも1.0の全ひずみがワークピースにおいて達成されるまで繰り返される非限定的な実施形態を含む。全ひずみは、全真ひずみである。語句「真ひずみ」は、「対数ひずみ」または「有効ひずみ」としても当業者に既知である。
図2を参照すると、これは、ステップ(g)、即ち、少なくとも1.0の、または少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の全ひずみがワークピースにおいて達成されるまで、プレス鍛造ステップ(28)、(46)、(56)のうちの1つ以上を繰り返すこと(ステップ64)によって例証される。所望のひずみが、プレス鍛造ステップ(28)または(46)または(56)のいずれかにおいて達成された後、さらなるプレス鍛造が不必要であり、また任意的な平衡化ステップ(即ち、ワークピースの内部領域を、ワークピース鍛造温度(32)または(52)または(60)の温度またはそれに近い温度まで冷却させ、ワークピース(34)または(54)または(62)の外側表面を、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱すること)が必要でない場合、ワークピースは、周囲温度まで、非限定的な実施形態では液体中で急冷することによって、または別の非限定的な実施形態では空冷もしくは任意のより高速な冷却によって、単純に冷却され得ることが、さらに認識される。
【0072】
本明細書に開示される通り、非限定的な実施形態では、全ひずみは、多軸鍛造後のワーク全体における全ひずみであることが理解されよう。本開示による非限定的な実施形態では、全ひずみは、各直交軸上に等しいひずみを含んでもよく、または全ひずみは、1つ以上の直交軸上に異なるひずみを含んでもよい。
【0073】
非限定的な実施形態によると、β焼鈍後、ワークピースは、
α+β相領域内の2つの異なる温度で多軸鍛造することができる。例えば、
図3を参照すると、
図2の繰り返しステップ(64)は、ステップ(a)−(任意的なb)、(c)−(任意的なd)、および(e)−(任意的なf)のうちの1つ以上を、特定のひずみが達成されるまで、
α+β相領域内の第1の温度で繰り返すこと、また次に、ステップ(a)−(任意的なb)、(c)−(任意的なd)、および(e)−(任意的なf)のうちの1つ以上を、最終プレス鍛造ステップ(a)、(b)、または(c)(即ち、(28)、(46)、(56))後、少なくとも1.0、または少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の全ひずみが、ワークピースにおいて達成されるまで、
α+β相領域内の第2の温度で繰り返すことを含むことができる。非限定的な実施形態では、
α+β相領域内の第2の温度は、
α+β相領域内の第1の温度よりも低い。ステップ(a)−(任意的なb)、(c)−(任意的なd)、および(e)−(任意的なf)のうちの1つ以上を、2つを超えるMAFプレス鍛造温度で繰り返すように該方法を実施することは、該温度が鍛造温度範囲内である限り、本開示の範囲内であることが認識される。また、非限定的な実施形態では、
α+β相領域内の第2の温度は、
α+β相領域内の第1の温度よりも高いことも認識される。
【0074】
本開示による非限定的な実施形態では、異なる
圧下は、均等化されたひずみを全ての方向に提供するように、A軸ヒット、B軸ヒット、およびC軸ヒットに関して使用される。高ひずみ速度MAFを適用して、均等化されたひずみを全方向に導入することは、ワークピースのより少ない亀裂、およびワークピースに関するより多くの等軸α粒構造をもたらす。例えば、均等化されていないひずみは、A軸上で3.0インチの高さに高ひずみ速度で鍛造された4インチの立方体から開始することによって、立方体ワークピースに導入することができる。A軸上のこの
圧下は、ワークピースをB軸およびC軸に沿って膨張させる。B軸方向における第2の
圧下が、B軸寸法を3.0インチに縮小する場合、A軸上よりも多くのひずみが、B軸上でワークピースに導入される。同様に、C軸寸法を3.0インチに縮小するようなC軸方向における後続のヒットは、A軸またはB軸上よりも多くのひずみを、C軸上でワークピースに導入することになる。別の例として、均等化されたひずみを全ての直交方向に導入するために、4インチの立方体ワークピースは、3.0インチの高さにA軸上で鍛造(「ヒット」)され、90度回転され、3.5インチの高さにB軸上でヒットされ、次に90度回転され、4.0インチの高さにC軸上でヒットされる。この後者のシーケンスは、一辺約4インチであり、立方体の各直交方向に均等化されたひずみを含む立方体をもたらす。高ひずみ速度MAF中の立方体ワークピースの各直交軸上の
圧下を算出するための一般式は、等式1に提供される。
等式1:ひずみ=−ln(スペーサ高さ/開始高さ)
全ひずみを算出するための一般式は、等式2によって提供される:
【数1】
異なる
圧下は、異なるスペーサ高さを提供する鍛造装置内のスペーサを使用することによって、または当業者に既知である任意の代替的な方法によって実施することができる。
【0075】
ここで
図5を参照し、
図3を考慮すると、本開示による非限定的な実施形態において、超細粒チタン合金の生成のためのプロセス(70)は、チタン合金ワークピースをβ焼鈍すること(71)、β焼鈍したワークピース24を、ワークピースのチタン合金のβトランザス温度未満の温度まで冷却すること(72)、ワークピース24を、ワークピースのチタン合金のα+β相領域内であるワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度まで加熱すること(73)、およびワークピースを高ひずみ速度MAFすること(74)を含み、高ひずみ速度MAF(74)は、異なるスペーサ高さへのワークピースの直交軸に対するプレス鍛造
圧下を含む。本開示による多軸鍛造(74)の非限定的な実施形態では、ワークピース24は、第1の直交軸(A軸)上で主要
圧下スペーサ高さにプレス鍛造される(75)。本明細書で使用するとき、語句「主要
圧下スペーサ高さに・・・プレス鍛造される」は、ワークピースを、特定の直交軸に沿ったワークピースの所望の最終寸法に、直交軸に沿ってプレス鍛造することを指す。したがって、用語「主要
圧下スペーサ高さ」は、各直交軸に沿ったワークピースの最終寸法を獲得するために使用されるスペーサ高さとして定義される。主要
圧下スペーサ高さへの全てのプレス鍛造ステップは、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分なひずみ速度を使用して発生すべきである。
【0076】
図3(a)に示される通り、ワークピース24を、第1の直交A軸の方向に主要
圧下スペーサ高さにプレス鍛造(75)した後、プロセス(70)は任意に、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域(図示無し)を、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却させること(
図3(b)に示されるステップ76)をさらに含む。内部領域冷却時間は、例えば、5秒〜120秒、10秒〜60秒、または5秒〜最大5分の範囲に渡ってもよく、また必要とされる冷却時間は、ワークピースのサイズ、形状、および組成、ならびにワークピース周辺の環境の特性に依存することが、当業者によって認識される。
【0077】
任意的な内部領域冷却期間中、本明細書に開示される非限定的な実施形態による熱管理システム33の態様は、ワークピース24の外側表面領域36をワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱すること(ステップ77)を含んでもよい。このようにして、ワークピース24の温度は、均一であるか、または均一に近く、各高ひずみ速度MAFヒットの前のワークピース鍛造温度に実質的に等温条件であるか、またはそれに近い温度に維持される。断熱的に加熱された内部領域を特定の内部領域冷却時間の間冷却させると共に、熱管理システム33を使用して外側表面領域36を加熱する特定の非限定的な実施形態では、ワークピースの温度は、A、B、およびC鍛造ヒットの各々の中間に、実質的に均一なワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度に戻る。断熱的に加熱された内部領域を特定の内部領域冷却時間の間冷却させると共に、熱管理システム33を使用して外側表面領域36を加熱する、本開示による他の非限定的な実施形態では、ワークピースの温度は、A、B、およびC鍛造ヒットの各々の中間に、ワークピース鍛造温度範囲内の実質的に均一な温度に戻る。
【0078】
非限定的な実施形態では、ワークピース24の外側表面領域36を加熱すること(77)は、熱管理システム33の1つ以上の外側表面加熱機構38を使用して達成されてもよい。可能な外側表面加熱機構38の例としては、ワークピース24の火炎加熱に適合された火炎加熱器、誘導加熱に適合された誘導加熱器、および放射加熱に適合された放射加熱器が挙げられるが、これらに限定されない。ワークピースの外側表面領域を加熱するための他の機構および技術は、本開示を考慮すれば、当業者に明らかであり、かかる機構および技術は、本開示の範囲内である。外側表面領域加熱機構38の非限定的な実施形態は、箱形炉を含んでもよい(図示無し)。箱形炉は、例えば、火炎加熱機構、放射加熱機構、誘導加熱機構、および/または現在もしくは将来当業者に既知である任意の他の好適な加熱機構のうちの1つ以上を使用する、ワークピースの外側表面領域を加熱するための種々の加熱機構と共に構成されてもよい。
【0079】
別の非限定的な実施形態では、ワークピース24の外側表面領域36の温度は、熱管理システム33の1つ以上のダイ加熱器40を使用して、加熱され(34)、ワークピース鍛造温度またはそれに近い温度で、ワークピース鍛造温度範囲内に維持されることができる。ダイ加熱器40は、ダイ42またはダイのダイプレス鍛造表面44を、ワークピース鍛造温度もしくはそれに近い温度、またはワークピース鍛造温度範囲内の温度に維持するために使用することができる。非限定的な実施形態では、熱管理システムのダイ42は、ワークピース鍛造温度〜ワークピース鍛造温度を100°F(55.6℃)下回る温度を含む範囲内の温度まで加熱される。ダイ加熱器40は、当業者によって現在または将来既知である任意の好適な加熱機構(火炎加熱機構、放射加熱機構、伝導加熱機構、および/または誘導加熱機構が挙げられるが、これらに限定されない)によって、ダイ42またはダイプレス鍛造表面44を加熱してもよい。非限定的な実施形態では、ダイ加熱器40は、箱形炉の構成要素であってもよい(図示無し)。熱管理システム33は、多軸鍛造プロセスの冷却ステップ中に配置され、使用されるように示されるが、熱管理システム33は、プレス鍛造ステップ中に配置されてもよく、または配置されなくてもよいことが認識される。
【0080】
非限定的な実施形態では、本明細書において
圧下「
A」と称されることもある、A軸上(
図3参照)での主要
圧下スペーサ高さへのプレス鍛造(75)後、また適用される場合、任意的な冷却の許容(76)および加熱(77)ステップの後、任意的な加熱および冷却ステップを含み得る荒打ち
圧下スペーサ高さへのその後のプレス鍛造が、ワークピースを「正方形にする(square−up)」ためにBおよびC軸上で適用される。語句「荒打ち
圧下スペーサ高さ・・・にプレス鍛造する」は、そうでなければ、第1の荒打ち
圧下スペーサ高さ((78)、(87)、(96))にプレス鍛造すること、および第2の荒打ち
圧下スペーサ((81)、(90)、(99))にプレス鍛造することとして本明細書にて言及され、主要
圧下スペーサ高さへのプレス鍛造後に任意の面の中心付近に生じる膨張を縮小または「正方形にする」ために使用されるプレス鍛造ステップとして定義される。任意の面の中心またはその付近における膨張は、その面に導入されている3軸応力状態をもたらし、それはワークピースの亀裂をもたらす可能性がある。第1の
圧下スペーサ高さにプレス鍛造するステップおよび第2の荒打ち
圧下スペーサ高さにプレス鍛造するステップは、本明細書において第1の荒打ち
圧下、第2の荒打ち
圧下、または単に荒打ち
圧下とも称され、ワークピースの面が、直交軸に沿った主要
圧下スペーサ高さへの次のプレス鍛造前に平坦または実質的に平坦であるように、膨張した面を変形させるために用いられる。荒打ち
圧下は、主要
圧下スペーサ高さにプレス鍛造する各ステップにおいて使用されるスペーサ高さよりも大きいスペーサ高さにプレス鍛造することを含む。本明細書に開示される全ての第1および第2の荒打ち
圧下のひずみ速度は、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分であり得るが、非限定的な実施形態では、第1および第2の荒打ち
圧下において生じる全ひずみが、ワークピースを著しく断熱的に加熱するのに十分ではない場合があるため、第1の荒打ち
圧下および第2の荒打ち
圧下中の断熱的加熱は、発生しないこともある。荒打ち
圧下は、主要
圧下スペーサ高さへのプレス鍛造において使用されるものより大きいスペーサ高さに実施されるため、荒打ち
圧下においてワークピースに付加されるひずみは、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分ではないことがある。分かる通り、高ひずみ速度MAFプロセスにおける第1および第2の荒打ち
圧下の組み込みは、非限定的な実施形態において、
A−B−C−
B−C−A−
Cから成る少なくとも1つのサイクルの鍛造のシーケンスをもたらし、
A、
B、および
Cは、主要
圧下スペーサ高さにプレス鍛造することを含み、B、C、C、およびAは、第1もしくは第2の荒打ち
圧下スペーサ高さにプレス鍛造することを含み、または別の非限定的な実施形態では、
A−B−C−
B−C−A−
C−A−Bから成る少なくとも1つのサイクルの鍛造のシーケンスをもたらし、
A、
B、および
Cは、主要
圧下スペーサ高さにプレス鍛造することを含み、B、C、C、A、A、およびBは、第1または第2の荒打ち
圧下スペーサ高さにプレス鍛造することを含む。
【0081】
再び
図3および5を参照すると、非限定的な実施形態では、第1の直交軸上での主要
圧下スペーサ高さへのプレス鍛造ステップ(75)(
A圧下)後、また適用される場合、任意的な冷却の許容(76)および加熱(77)ステップ後、上述の通り、ワークピースは、B軸上で第1の荒打ち
圧下スペーサ高さにプレス鍛造される(78)。第1の荒打ち
圧下のひずみ速度は、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分であり得るが、非限定的な実施形態では、第1の荒打ち
圧下において生じるひずみが、ワークピースを著しく断熱的に加熱するのに十分ではない場合があるため、第1の荒打ち
圧下中の断熱的加熱は、発生しないこともある。任意に、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却され(79)、一方ワークピースの外側表面領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱される(80)。上記および本開示の他の実施形態に開示される
A圧下(75)に関する全ての冷却時間および加熱方法は、ステップ(79)および(80)、ならびにワークピースの内部領域を冷却させ、ワークピースの外側表面領域を加熱する全ての任意的な後続ステップに適用可能である。
【0082】
ワークピースは次に、C軸上で、主要
圧下スペーサ高さよりも大きい第2の荒打ち
圧下スペーサ高さにプレス鍛造される(81)。第1および第2の荒打ち
圧下は、ワークピースを、ワークピースの鍛造前の形状に実質的に戻るために適用される。第2の荒打ち
圧下のひずみ速度は、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分であり得るが、非限定的な実施形態では、第2の荒打ち
圧下において生じるひずみが、ワークピースを著しく断熱的に加熱するのに十分ではない場合があるため、第2の荒打ち
圧下中の断熱的加熱は、発生しないこともある。任意に、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却され(82)、一方ワークピースの外側表面領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱される(83)。
【0083】
ワークピースは次に、第2の直交軸、またはB軸の方向に、主要
圧下スペーサ高さにプレス鍛造される(84)。B軸上での主要
圧下スペーサ高さへのプレス鍛造(84)は、本明細書において
B圧下と称される。
B圧下(84)後、任意に、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却され(85)、一方ワークピースの外側表面領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱される(86)。
【0084】
ワークピースは次に、C軸上で、主要
圧下スペーサ高さよりも大きい第1の荒打ち
圧下スペーサ高さにプレス鍛造される(87)。第1の荒打ち
圧下のひずみ速度は、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分であり得るが、非限定的な実施形態では、第1の荒打ち
圧下において生じるひずみが、ワークピースを著しく断熱的に加熱するのに十分ではない場合があるため、第1の荒打ち
圧下中の断熱的加熱は、発生しないこともある。任意に、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却され(88)、一方ワークピースの外側表面領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱される(89)。
【0085】
ワークピースは次に、A軸上で、主要
圧下スペーサ高さよりも大きい第2の荒打ち
圧下スペーサ高さにプレス鍛造される(90)。第1および第2の荒打ち
圧下は、ワークピースを、ワークピースの鍛造前の形状に実質的に戻るために適用される。第2の荒打ち
圧下のひずみ速度は、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分であり得るが、非限定的な実施形態では、第2の荒打ち
圧下において生じるひずみが、ワークピースを著しく断熱的に加熱するのに十分ではない場合があるため、第2の荒打ち
圧下中の断熱的加熱は、発生しないこともある。任意に、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却され(91)、一方ワークピースの外側表面領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱される(92)。
【0086】
ワークピースは次に、第3の直交軸、またはC軸の方向に、主要
圧下スペーサ高さにプレス鍛造される(93)。C軸上での主要
圧下スペーサ高さへのプレス鍛造(93)は、本明細書において、
C圧下と称される。
C圧下(93)後、任意に、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却され(94)、一方ワークピースの外側表面領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱される(95)。
【0087】
ワークピースは次に、A軸上で、主要
圧下スペーサ高さよりも大きい第1の荒打ち
圧下スペーサ高さにプレス鍛造される(96)。第1の荒打ち
圧下のひずみ速度は、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分であり得るが、非限定的な実施形態では、第1の荒打ち
圧下において生じるひずみが、ワークピースを著しく断熱的に加熱するのに十分ではない場合があるため、第1の荒打ち
圧下中の断熱的加熱は、発生しないこともある。任意に、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却され(97)、一方ワークピースの外側表面領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱される(98)。
【0088】
ワークピースは次に、B軸上で、主要
圧下スペーサ高さよりも大きい第2の荒打ち
圧下スペーサ高さにプレス鍛造される(99)。第1および第2の荒打ち
圧下は、ワークピースを、ワークピースの鍛造前の形状に実質的に戻るために適用される。第2の荒打ち
圧下のひずみ速度は、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分であり得るが、非限定的な実施形態では、第2の荒打ち
圧下において生じるひずみが、ワークピースを著しく断熱的に加熱するのに十分ではない場合があるため、第2の荒打ち
圧下中の断熱的加熱は、発生しないこともある。任意に、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却され(100)、一方ワークピースの外側表面領域は、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱される(101)。
【0089】
図5を参照すると、非限定的な実施形態では、プレス鍛造ステップ(75)、(78)、(81)、(84)、(87)、(90)、(93)、(96)、および(99)のうちの1つ以上は、少なくとも1.0の全ひずみがチタン合金ワークピースにおいて達成されるまで繰り返される(102)。別の非限定的な実施形態では、プレス鍛造ステップ(75)、(78)、(81)、(84)、(87)、(90)、(93)、(96)、および(99)のうちの1つ以上は、少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の全ひずみがチタン合金ワークピースにおいて達成されるまで、繰り返される(102)。プレス鍛造ステップ(75)、(78)、(81)、(84)、(87)、(90)、(93)、(96)、および(99)のいずれかにおいて、少なくとも1.0の所望のひずみ、または別法として、少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の所望のひずみを達成した後、任意的な中間の平衡化ステップ(即ち、ワークピースの内部領域を冷却させること(76)、(79)、(82)、(85)、(88)、(91)、(94)、(97)、または(100)、およびワークピースの外側表面を加熱すること(77)、(80)、(83)、(86)、(89)、(92)、(95)、(98)、または(101))は、必要ではなく、ワークピースは、周囲温度まで冷却され得ることが認識されるであろう。非限定的な実施形態では、冷却は、例えば、水急冷等の液体急冷を含む。別の非限定的な実施形態では、冷却は、空冷またはより速い冷却速度を用いた冷却を含む。
【0090】
上述のプロセスは、主要
圧下スペーサ高さにプレス鍛造した後、第1および第2の荒打ち
圧下スペーサ高さにプレス鍛造する繰り返しのシーケンスを含む。上述の非限定的な実施形態に開示されるような1つの総MAFサイクルを表す鍛造のシーケンスは、
A−B−C−
B−C−A−
C−A−Bと表すことができ、式中、下線付き太字の
圧下(ヒット)は、主要
圧下スペーサ高さへのプレス鍛造であり、下線付きまたは太字ではない
圧下は、第1または第2の荒打ち
圧下である。主要
圧下スペーサ高さならびに第1および第2の荒打ち
圧下へのプレス鍛造を含む、本開示によるMAFプロセスの全てのプレス鍛造
圧下は、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分な高ひずみ速度、例えば、限定するものではないが、0.2秒
−1〜0.8秒
−1の範囲内、または0.2秒
−1〜0.4秒
−1の範囲内のひずみ速度で実施されることが理解されるであろう。断熱的加熱は、第1および第2の荒打ち
圧下中は、主要
圧下と比較して、これらの
圧下におけるより低い変形度合のため、実質的に発生しない場合があることも理解されるであろう。また、任意的なステップとして、中間連続プレス鍛造
圧下は、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域をワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却させ、ワークピースの外側表面は、本明細書に開示される熱管理システムを利用してワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱されることも理解されるであろう。これらの任意的なステップは、本方法がより大きいサイズのワークピースに対して使用されるときに、より有益であり得ると考えられる。さらに、本明細書に説明される
A−B−C−
B−C−A−
C−A−Bの鍛造のシーケンスの実施形態は、少なくとも1.0、または少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の全ひずみがワークピースにおいて達成されるまで、全体的または部分的に繰り返されてもよいことが理解される。
【0091】
ワークピースにおける膨張は、表面ダイロックとワークピースの中心付近のより高温の材料の存在との組み合わせから生じる。膨張が増加するのに伴い、各面の中心は、亀裂を開始し始め得る3軸荷重に次第に供される。
A−B−C−
B−C−A−
C−A−Bのシーケンスにおいて、主要
圧下スペーサ高さへの各プレス鍛造間の荒打ち
圧下の使用は、ワークピースにおける亀裂形成の傾向を低減する。非限定的な実施形態では、ワークピースが立方体の形状である場合、第1の荒打ち
圧下のための第1の荒打ち
圧下スペーサ高さは、主要
圧下スペーサ高さよりも40〜60%大きいスペーサ高さに対するものであってよい。非限定的な実施形態では、ワークピースが立方体の形状である場合、第2の荒打ち
圧下のための第2の荒打ち
圧下スペーサ高さは、主要
圧下スペーサ高さよりも15〜30%大きいスペーサ高さに対するものであってよい。別の非限定的な実施形態では、第1の荒打ち
圧下スペーサ高さは、第2の荒打ち
圧下スペーサ高さに実質的に等しくてもよい。
【0092】
本開示による熱管理された高ひずみ速度多軸鍛造の非限定的な実施形態では、少なくとも1.0、または少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の全ひずみの後、ワークピースは、4μm以下の平均α粒子粒径を有し、これは、超細粒(UFG)径と見なされる。本開示による非限定的な実施形態では、少なくとも1.0、または少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の全ひずみの適用は、等軸の粒を生成する。
【0093】
多軸鍛造および任意的な熱管理システムの使用を含む本開示によるプロセスの非限定的な実施形態では、ワークピースプレスダイの接触面は、当業者に既知である潤滑剤、例えば、限定されないが、グラファイト、ガラス、および/または他の既知の固体潤滑剤等を用いて潤滑される。
【0094】
本開示による方法の特定の非限定的な実施形態では、ワークピースは、α+βチタン合金および準安定βチタン合金から選択されるチタン合金を含む。別の非限定的な実施形態では、ワークピースは、α+βチタン合金を含む。また別の非限定的な実施形態では、ワークピースは、準安定βチタン合金を含む。非限定的な実施形態では、本開示による方法によって処理されるチタン合金は、Ti−6−4合金(UNS R56400)のものよりも遅い有効なα相析出および成長速度を含み、かかる速度は、本明細書において「より遅いα速度」と称されることもある。非限定的な実施形態では、より遅いα速度は、チタン合金中の最も遅い拡散合金化種の拡散率が、βトランザス温度(T
β)におけるTi−6−4合金中のアルミニウムの拡散率よりも遅いときに達成される。例えば、Ti−6−2−4−2合金は、ケイ素等のTi−6−2−4−2合金中の追加の粒ピンニング元素の存在の結果として、Ti−6−4合金よりも遅いα速度を示す。また、Ti−6−2−4−6合金は、T−6−4合金よりも高いモリブデン含有量等の追加のβ安定化合金化添加物の存在の結果として、Ti−6−4合金よりも遅いα速度を有する。これらの合金におけるより遅いα速度の結果は、高ひずみ速度MAF前にTi−6−2−4−6およびTi−6−2−4−2合金をβ焼鈍することは、Ti−6−2−4−6およびTi−6−2−4−2合金よりも速いα相析出および成長速度を示すTi−6−4合金および特定の他のチタン合金と比較して、相対的に微細で安定したαラスサイズおよび微細なβ相構造を生成するということである。語句「より遅いα速度」は、本開示において、さらに詳細に前述されている。本開示による方法の実施形態を使用して処理され得る例示的なチタン合金としては、Ti−6−2−4−2合金、Ti−6−2−4−6合金、ATI 425(登録商標)合金(Ti−4Al−2.5V合金)、Ti−6−6−2合金、およびTi−6Al−7Nb合金が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
本開示による方法の非限定的な実施形態では、β焼鈍は、ワークピースをβ焼鈍温度まで加熱することと、ワークピースを、ワークピース中に100%チタンβ相微細構造を形成するのに十分な焼鈍時間、β焼鈍温度で保持することと、ワークピースを、ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで直接冷却することとを含む。特定の非限定的な実施形態では、β焼鈍温度は、チタン合金のβトランザス温度〜チタン合金のβトランザス温度を最大300°F(
166.7℃)上回る温度の範囲内の温度である。非限定的な実施形態は、5分〜24時間のβ焼鈍時間を含む。当業者は、本説明を読めば、他のβ焼鈍温度およびβ焼鈍時間が、本開示の実施形態の範囲内であり、また例えば、相対的に大きいワークピースは、100%β相チタン微細構造を形成するために相対的により高いβ焼鈍温度および/またはより長いβ焼鈍時間を要し得ることを理解するであろう。
【0096】
ワークピースがβ焼鈍温度に保持されて100%β相微細構造を形成する特定の非限定的な実施形態では、ワークピースはまた、ワークピースを、ワークピース鍛造温度の温度もしくはそれに近い温度または周囲温度まで冷却する前に、チタン合金のβ相領域内で塑性変形温度にて塑性変形されてもよい。ワークピースの塑性変形は、ワークピースを延伸すること、据え込み鍛造すること、および高ひずみ速度で多軸鍛造することのうちの少なくとも1つを含むことができる。非限定的な実施形態では、β相領域における塑性変形は、ワークピースを、0.1〜0.5の範囲内のβ据え込みひずみに据え込み鍛造することを含む。特定の非限定的な実施形態では、塑性変形温度は、チタン合金のβトランザス温度〜チタン合金のβトランザス温度を最大300°F(
166.7℃)上回る温度を含む温度範囲内である。
【0097】
図6は、ワークピースをβトランザス温度超で塑性変形させ、ワークピース鍛造温度まで直接冷却する非限定的な方法に関する温度−時間熱機械プロセス図である。
図6において、非限定的な方法200は、Ti−6−4合金のものよりも遅いα析出および成長速度を有するチタン合金を含むワークピースを、例えば、チタン合金のβトランザス温度206を超えるβ焼鈍温度204まで加熱すること202と、ワークピースをβ焼鈍温度204で保持または「
均熱」208して、ワークピース内に全βチタン相微細構造を形成することとを含む。本開示による非限定的な実施形態では、
均熱208の後、ワークピースは、塑性変形210されてもよい。非限定的な実施形態では、塑性変形210は、据え込み鍛造を含む。非限定的な実施形態では、塑性変形210は、0.3の真ひずみへの据え込み鍛造を含む。非限定的な実施形態では、塑性変形210は、β焼鈍温度での熱管理された高ひずみ速度多軸鍛造(
図6中に図示無し)を含む。
【0098】
また
図6を参照すると、β相領域における塑性変形210の後、非限定的な実施形態では、ワークピースは、チタン合金のα+β相領域においてワークピース鍛造温度214まで冷却される212。非限定的な実施形態では、冷却212は、空冷、または空冷を通じて達成されるものよりも高速での冷却を含む。別の非限定的な実施形態では、冷却は、液体急冷、例えば、限定されないが水急冷を含む。冷却212後、ワークピースは、本開示の特定の非限定的な実施形態に従って高ひずみ速度で多軸鍛造される214。
図6の非限定的な実施形態では、ワークピースは、12回ヒットまたはプレス鍛造され、即ち、ワークピースの3つの直交軸は、各々合計で4回、非順次的にプレス鍛造される。換言すれば、
図2および6を参照すると、ステップ(a)−(任意的なb)、(c)−(任意的なd)、および(e)−(任意的なf)を含むサイクルは、4回実施される。
図6の非限定的な実施形態では、12回のヒットを含む多軸鍛造のシーケンスの後、全ひずみは、例えば、少なくとも1.0に等しくてもよく、または少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内であってもよい。多軸鍛造214後、ワークピースは、周囲温度まで冷却される216。非限定的な実施形態では、冷却216は、空冷または空冷を通じて達成されるものよりも高速での冷却を含むが、例えば、限定されないが、流体または液体急冷等の他の冷却形態は、本明細書に開示される実施形態の範囲内である。
【0099】
本開示の非限定的態様は、α+β相領域において2つの温度での高ひずみ速度多軸鍛造を含む。
図7は、チタン合金ワークピースを第1のワークピース鍛造温度で多軸鍛造することと、任意に、上述で本明細書に開示される熱管理特徴非限定的な実施形態を利用することと、α+β相において第2のワークピース鍛造温度まで冷却することと、チタン合金ワークピースを第2のワークピース鍛造温度で多軸鍛造することと、任意に、本明細書に開示される熱管理特徴の非限定的な実施形態を利用することとを含む、本開示による非限定的な方法に関する温度−時間熱機械プロセス図である。
【0100】
図7では、本開示による非限定的な方法230は、ワークピースを、合金のβトランザス温度236を超えるβ焼鈍温度234まで加熱すること232と、ワークピースを、チタン合金ワークピース中に全β相微細構造を形成するように、β焼鈍温度234で保持または
均熱すること238とを含む。
均熱238後、ワークピースは、塑性変形され得る240。限定的な実施形態では、塑性変形240は、据え込み鍛造を含む。別の非限定的な実施形態では、塑性変形240は、0.3のひずみへの据え込み鍛造を含む。また別の非限定的な実施形態では、ワークピースの塑性変形240は、β焼鈍温度での高ひずみ多軸鍛造(
図7中に図示無し)を含む。
【0101】
また
図7を参照すると、塑性変形240後、β相領域において、ワークピースは、チタン合金のα+β相領域において第1のワークピース鍛造温度244まで冷却される242。非限定的な実施形態では、冷却242は、空冷または液体急冷のうちの1つを含む。冷却242後、ワークピースは、第1のワークピース鍛造温度において高ひずみ速度で多軸鍛造され246、任意に、本明細書に開示される非限定的な実施形態による熱管理システムが用いられる。
図7の非限定的な実施形態では、ワークピースは、第1のワークピース鍛造温度で、各ヒット間に90°の回転を伴いながら12回ヒットまたはプレス鍛造され、即ち、ワークピースの3つの直交軸は、4回ずつプレス鍛造される。換言すれば、
図2を参照すると、ステップ(a)−(任意的なb)、(c)−(任意的なd)、および(e)−(任意的なf)を含むサイクルは、4回実施される。
図7の非限定的な実施形態では、ワークピースの第1のワークピース鍛造温度での高ひずみ速度多軸鍛造246後、チタン合金ワークピースは、α+β相領域において第2のワークピース鍛造温度250まで冷却される248。冷却248後、ワークピースは、第2のワークピース鍛造温度において高ひずみ速度で多軸鍛造され250、任意に、本明細書に開示される非限定的な実施形態による熱管理システムが用いられる。
図7の非限定的な実施形態では、ワークピースは、第2のワークピース鍛造温度で合計12回ヒットまたはプレス鍛造される。第1および第2のワークピース鍛造温度でチタン合金ワークピースに適用されるヒットの数は、所望の真ひずみおよび所望の最終粒径に応じて変動し得ること、また適切なヒットの数は、本開示を考慮して過度の実験を伴わずに決定され得ることが認識される。第2のワークピース鍛造温度での多軸鍛造250後、ワークピースは、周囲温度まで冷却される252。非限定的な実施形態では、冷却252は、周囲温度への空冷および液体急冷のうちの1つを含む。
【0102】
非限定的な実施形態では、第1のワークピース鍛造温度は、チタン合金のβトランザス温度を100°F(55.6℃)以上下回る温度〜チタン合金のβトランザス温度を500°F(277.8℃)下回る温度の第1のワークピース鍛造温度範囲内であり、即ち、第1のワークピース鍛造温度T
1は、T
β−100°F>T
1≧T
β−500°Fの範囲内である。非限定的な実施形態では、第2のワークピース鍛造温度は、チタン合金のβトランザス温度を200°F(277.8℃)以上下回る温度〜チタン合金のβトランザス温度を700°F(388.9℃)下回る温度の第2のワークピース鍛造温度範囲内であり、即ち、第2のワークピース鍛造温度T
2は、T
β−200°F>T
2≧T
β−700°Fの範囲内である。非限定的な実施形態では、チタン合金ワークピースは、Ti−6−2−4−2合金を含み、第1のワークピース温度は、1650°F(898.9℃)であり、第2のワークピース鍛造温度は、1500°F(815.6℃)である。
【0103】
図8は、チタン合金を含むワークピースをβトランザス温度超で塑性変形させ、ワークピース鍛造温度まで冷却し、同時に、本明細書の非限定的な実施形態に従ってワークピースに熱管理された高ひずみ速度多軸鍛造を用いるための本開示による非限定的な方法の実施形態の、温度−時間熱機械プロセス図である。
図8では、チタン合金の粒微細化のために熱管理された高ひずみ速度多軸鍛造を使用する非限定的な方法260は、ワークピースを、チタン合金のβトランザス温度266を超えるβ焼鈍温度264まで加熱すること262と、ワークピース内に全β相微細構造を形成するように、ワークピースをβ焼鈍温度264で保持または
均熱すること268とを含む。ワークピースをβ焼鈍温度で
均熱268した後、ワークピースは、塑性変形される270。非限定的な実施形態では、塑性変形270は、熱管理された高ひずみ速度多軸鍛造を含むことができる。非限定的な実施形態では、ワークピースは、ワークピースがβトランザス温度を通って冷却する際に、本明細書に開示されるように任意的な熱管理システムを使用して反復的に高ひずみ速度で多軸鍛造される272。
図8は、3つの中間の高ひずみ速度多軸鍛造272ステップを示すが、所望により、より多数またはより少数の中間の高ひずみ速度多軸鍛造272ステップが存在し得ることが理解されるであろう。中間の高ひずみ速度多軸鍛造272ステップは、
均熱温度での初めの高ひずみ速度多軸鍛造ステップ270およびチタン合金のα+β相領域274における最終の高ひずみ速度多軸鍛造ステップの中間である。
図8は、ワークピースの温度が完全にα+β相領域内に留まっている1つの最終高ひずみ速度多軸鍛造ステップを示しているが、本説明を読めば、複数の多軸鍛造ステップが、さらなる粒微細化のためにα+β相領域内で実施され得ることが理解されるであろう。本開示の非限定的な実施形態によれば、少なくとも1つの最終の高ひずみ速度多軸鍛造ステップは、完全にチタン合金ワークピースのα+β相領域内の温度で行われる。
【0104】
多軸鍛造ステップ270、272、274は、ワークピースの温度が、チタン合金のβトランザス温度を通って冷却するのに伴って行われるため、
図8に示されるもの等の方法の実施形態は、本明細書において「βトランザスを通る高ひずみ速度多軸鍛造」と称される。非限定的な実施形態では、熱管理システム(
図3の33)は、各々βトランザス鍛造温度を通って、各ヒットの前にワークピースの温度を均一または実質的に均一な温度に維持するために、また任意に、冷却速度を低下させるために、βトランザスを通る多軸鍛造において使用される。α+β相領域内のワークピース鍛造温度での最終の多軸鍛造274後、ワークピースは、周囲温度まで冷却される276。非限定的な実施形態では、冷却276は、空冷を含む。
【0105】
本明細書において上に開示されるような熱管理システムを使用する多軸鍛造の非限定的な実施形態は、従来の鍛造プレス設備を使用して、4平方インチを超える断面を有するチタン合金ワークピースを処理するために使用することができ、立方体形状のワークピースのサイズは、個々のプレスの能力に適合するように拡大縮小することができる。β焼鈍した構造に由来するαラメラまたはラスは、本明細書の非限定的な実施形態に開示されるワークピース鍛造温度において、均一なα粒へと容易に崩壊することが決定されている。また、ワークピース鍛造温度を減少させることは、α粒子のサイズ(粒径)を減少させることも決定されている。
【0106】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本開示による熱管理された高ひずみ速度多軸鍛造の非限定的な実施形態において発生する粒の微細化は、メタ動的再結晶を介して発生すると考えられる。先行技術の低ひずみ速度多軸鍛造プロセスでは、動的再結晶は、材料へのひずみの適用中に瞬時に発生する。本開示による高ひずみ速度多軸鍛造では、メタ動的再結晶は、ワークピースの少なくとも内部領域が断熱的加熱によって高温である間に、各変形または鍛造ヒットの終わりに発生すると考えられる。残留する断熱的な熱、内部領域冷却時間、および外部表面領域加熱は、本開示による熱管理された高ひずみ速度多軸鍛造の非限定的な方法における粒の微細化の範囲に影響を及ぼす。
【0107】
本発明者らはさらに、多軸鍛造ならびに熱管理システムとチタン合金を含む立方体形状のワークピースとの使用を含む、上述のプロセスに関して特定の利益を提供する本開示による代替的な方法を開発した。(1)本明細書に開示される熱管理された多軸鍛造の特定の実施形態において使用される立方体のワークピース形状(geometry)、(2)ダイのチル化(即ち、ダイの温度を、ワークピース鍛造温度を著しく下回って降下させること)、および(3)高ひずみ速度の使用のうちの1つ以上は、ワークピースのコア領域内にひずみを不都合に集中させる可能性があると考えられる。
【0108】
本開示による代替的な方法は、ビレットサイズのチタン合金ワークピース全体に渡って、概して均一な細粒、微細粒、または超微細粒径を達成することができる。換言すれば、かかる代替的な方法によって処理されるワークピースは、ワークピースの中央領域のみでなく、ワークピース全体に渡って、超微細粒微細構造等の所望の粒径を含むことができる。かかる代替的な方法の非限定的な実施形態は、4平方インチよりも大きい断面を有するビレット上で実施される「複数の据え込みおよび延伸」ステップを含む。複数の据え込みおよび延伸ステップは、ワークピースの元の寸法を実質的に保存しながら、ワークピース全体に渡って均一な細粒、微細粒、または超微細粒微細構造を付与することを意図される。これらの代替的な方法は、複数の据え込みおよび延伸ステップ(Multiple Upset and Draw steps)を含むため、本明細書において「MUD」方法の実施形態と称される。MUD方法は、重度の塑性変形を含み、またビレットサイズ(例えば、30インチ(76.2cm)の長さ)のチタン合金ワークピースにおいて均一な超微細粒を生成することができる。本開示によるMUD方法の非限定的な実施形態では、据え込み鍛造および延伸鍛造ステップに使用されるひずみ速度は、0.001秒
−1〜0.02秒
−1の範囲内である。対照的に、従来の自由据え込み鍛造および延伸鍛造に典型的に使用されるひずみ速度は、0.03秒
−1〜0.1秒
−1の範囲内である。MUDのためのひずみ速度は、ワークピースを断熱的に加熱するのを防止して、鍛造温度を制御し続けるのに十分に遅いが、ひずみ速度は、商業的な実践に関して依然許容可能である。
【0109】
MUD方法の非限定的な実施形態の概略図が、
図9に提供され、MUD方法の特定の実施形態の流れ図が、
図10に提供される。
図9および10を参照すると、複数の据え込みおよび延伸鍛造ステップを使用して、チタン合金を含むワークピース内の粒を微細化するための非限定的な方法300は、細長いチタン合金ワークピース302を、チタン合金のα+β相領域内のワークピース鍛造温度まで加熱することを含む。非限定的な実施形態では、細長いワークピースの形状は、円筒または円筒様形状である。別の非限定的な実施形態では、ワークピースの形状は、八角筒または正八角形である。
【0110】
細長いワークピースは、開始断面寸法を有する。例えば、開始ワークピースが円筒である本開示によるMUD方法の非限定的な実施形態では、開始断面寸法は、円筒の直径である。開始ワークピースが八角筒である本開示によるMUD方法の非限定的な実施形態では、開始断面寸法は、八角形の断面の外接円の直径、即ち、八角形の断面の全頂点を通過する円の直径である。
【0111】
細長いワークピースがワークピース鍛造温度にあるときに、ワークピースは、据え込み鍛造される304。据え込み鍛造304後、非限定的な実施形態では、ワークピースは、配向306へ90度回転され、次に多パス延伸鍛造312に供される。ワークピースの実際の回転は任意であり、このステップの目的は、その後の多パス延伸鍛造312ステップのために、ワークピースを鍛造デバイスに関して正しい配向(
図9参照)に配置することである。
【0112】
多パス延伸鍛造は、ワークピースを、回転方向(矢印310の方向によって示される)に増分的に回転させ(矢印310によって描写される)、その後、回転の各増分後にワークピースを延伸鍛造すること312を含む。非限定的な実施形態では、増分的回転310および延伸鍛造312は、ワークピースが開始断面寸法を備えるまで繰り返される。非限定的な実施形態では、据え込み鍛造および多パス延伸鍛造ステップは、少なくとも1.0の全ひずみがワークピースにおいて達成されるまで繰り返される。別の非限定的な実施形態は、加熱、据え込み鍛造、および多パス延伸鍛造ステップを、少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の全ひずみがワークピースにおいて達成されるまで繰り返すことを含む。また別の非限定的な実施形態では、加熱、据え込み鍛造、および多パス延伸鍛造ステップは、少なくとも10の全ひずみがワークピースにおいて達成されるまで繰り返される。10の全ひずみがMUD鍛造に付与されるときに、超微細粒α微細構造が生成されること、またワークピースに付与される全ひずみを増加させることは、より小さい平均粒径をもたらすことが予測される。
【0113】
本開示の態様は、チタン合金ワークピースの重度の塑性変形をもたらすのに十分な据え込みおよび多パス延伸ステップ中のひずみ速度を用いることであり、非限定的な実施形態では、これは、超微細粒径をさらにもたらす。非限定的な実施形態では、据え込み鍛造において使用されるひずみ速度は、0.001秒
−1〜0.003秒
−1の範囲内である。別の非限定的な実施形態では、多パス延伸鍛造ステップにおいて使用されるひずみ速度は、0.01秒
−1〜0.02秒
−1の範囲内である。これらの範囲内のひずみ速度は、ワークピースの断熱的加熱をもたらさず、これはワークピース温度制御を可能にし、また経済的に許容可能な商業的実践のために十分であることが見出されたことが、‘538出願において開示されている。
【0114】
非限定的な実施形態では、MUD方法の完了後、ワークピースは、開始の細長い物品、例えば、円筒314または八角筒316等の元の寸法を実質的に有する。別の非限定的な実施形態では、MUD方法の完了後、ワークピースは、開始ワークピースと同じ断面を実質的に有する。非限定的な実施形態では、単一の据え込みは、ワークピースを、ワークピースの開始断面を含む形状に戻すために、多数の延伸ヒットおよび中間回転を必要とする。
【0115】
ワークピースが円筒の形状であるMUD方法の非限定的な実施形態では、例えば、増分的回転および延伸鍛造は、円筒状ワークピースが360°回転され、各増分にて延伸鍛造されるまで、円筒状ワークピースを15°増分ずつ回転させた後、延伸鍛造する複数のステップをさらに含む。ワークピースが円筒の形状であるMUD方法の非限定的な実施形態では、各据え込み鍛造後に、連続的な延伸鍛造ステップの間に中間の増分的回転を有する24の延伸鍛造ステップが、ワークピースを実質的にその開始断面寸法にするために用いられる。ワークピースが八角筒の形状である別の非限定的な実施形態では、増分的回転および延伸鍛造は、円筒状ワークピースが360°回転され、各増分にて延伸鍛造されるまで、円筒状ワークピースを45°増分ずつ回転させた後、延伸鍛造する複数のステップをさらに含む。ワークピースは八角筒の形状であるMUD方法の非限定的な実施形態では、各据え込み鍛造後に、ワークピースの増分的回転によって分離される8つの鍛造ステップが、ワークピースを実質的にその開始断面寸法にするために用いられる。ハンドリング設備による八角筒の操作は、ハンドリング設備による円筒の操作よりも正確であることが、MUD方法の非限定的な実施形態において観察された。また、MUD方法の非限定的な実施形態におけるハンドリング設備による八角筒の操作は、本明細書に開示される熱管理された高ひずみ速度MAFプロセスの非限定的な実施形態におけるハンドトングを使用した立方体形状ワークピースの操作よりも正確であることも観察された。本説明を考慮すれば、多数の延伸鍛造ステップおよび特定の度数の中間の増分的回転を各々含む、他の延伸鍛造のシーケンスは、延伸鍛造後のワークピースの最終的な形状が据え込み鍛造前のワークピースの開始形状と実質的に同じであるように、他の断面ビレット形状のために使用され得ることが認識されるであろう。かかる他の可能なシーケンスは、過度の実験を伴わずに当業者によって決定されることができ、また本開示の範囲内に含まれる。
【0116】
本開示によるMUD方法の非限定的な実施形態では、ワークピース鍛造温度は、ワークピース鍛造温度範囲内の温度を含む。非限定的な実施形態では、ワークピース鍛造温度は、チタン合金のβトランザス温度(T
β)を100°F(55.6℃)下回る温度〜チタン合金のβトランザス温度を700°F(388.9℃)下回る温度のワークピース鍛造温度範囲内である。また別の非限定的な実施形態では、ワークピース鍛造温度は、チタン合金のβトランザス温度を300°F(166.7℃)下回る温度〜チタン合金のβトランザス温度を625°F(347℃)下回る温度の温度範囲内である。非限定的な実施形態では、ワークピース鍛造温度範囲の下端は、当業者によって過度の実験を伴わずに決定され得るように、鍛造ヒット中に実質的な損傷がワークピースの表面に発生しないα+β相領域内の温度である。
【0117】
本開示によるMUD方法の非限定的な実施形態では、約1820°F(993.3℃)のβトランザス温度(T
β)を有するTi−6−2−4−2合金に関するワークピース鍛造温度範囲は、例えば、1120°F(604.4C)〜1720°F(937.8℃)であってもよく、または別の実施形態では、1195°F(646.1℃)〜1520°F(826.7℃)であってもよい。
【0118】
MUD方法の非限定的な実施形態は、複数の繰り返しステップを含む。非限定的な実施形態では、チタン合金ワークピースは、チタン合金ワークピースを据え込み鍛造した後、ワークピース鍛造温度まで加熱される。別の非限定的な実施形態では、チタン合金ワークピースは、多パス延伸鍛造の延伸鍛造ステップ前に、ワークピース鍛造温度まで加熱される。別の非限定的な実施形態では、ワークピースは、据え込みまたは延伸鍛造ステップ後に、必要に応じて、実際のワークピース温度をワークピース鍛造温度またはそれに近い温度に戻すために加熱される。
【0119】
MUD方法の実施形態は、チタン合金を含むワークピース内に超微細粒を作成することを目的とする、余剰の作業または重度の塑性変形とも称される極度の変形を付与することが決定された。操作のいかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、円筒状および八角筒状ワークピースのそれぞれ円形または八角形の断面形状は、MUD方法中に、正方形または矩形の断面形状のワークピースよりも均等に、ワークピースの断面積に渡ってひずみを分配すると考えられる。ワークピースと鍛造ダイとの間の摩擦の有害効果もまた、ダイと接触するワークピースの面積を低減することによって低減される。
【0120】
それに加えて、MUD方法中の温度を減少させることは、最終的な粒径を、使用される特定の温度の特性であるサイズまで低減することも決定された。
図10を参照すると、ワークピースの粒径を微細化するための方法400の非限定的な実施形態では、ワークピースを、ワークピース鍛造温度でMUD方法によって処理した後、ワークピースの温度は、第2のワークピース鍛造温度まで冷却され得る416。非限定的な実施形態では、ワークピースを第2のワークピース鍛造温度まで冷却した後、ワークピースは、第2のワークピース鍛造温度で据え込み鍛造される418。ワークピースは、その後の延伸鍛造ステップのために、回転される420か、ないしは別の方法で鍛造プレスに関して配向される。ワークピースは、第2のワークピース鍛造温度で多ステップ延伸鍛造される422。第2のワークピース鍛造温度での多ステップ延伸鍛造422は、ワークピースを回転方向(
図9参照)に増分的に回転させること424と、各回転増分後に第2のワークピース鍛造温度で延伸鍛造すること426とを含む。非限定的な実施形態では、据え込み、増分的回転424、および延伸鍛造のステップは、ワークピースが開始断面寸法を備えるまで繰り返される426。別の非限定的な実施形態では、第2のワークピース温度での据え込み鍛造418、回転420、および多ステップ延伸鍛造422のステップは、少なくとも1.0、または1.0〜最大3.5未満の範囲内、または最大10以上の全ひずみがワークピースにおいて達成されるまで繰り返される。MUD方法は、任意の所望の全ひずみがチタン合金ワークピースに付与されるまで、継続することができることが認識される。
【0121】
多温度MUD方法の実施形態を含む非限定的な実施形態では、ワークピース鍛造温度、または第1のワークピース鍛造温度は、約1600°F(871.1℃)であり、第2のワークピース鍛造温度は、約1500°F(815.6℃)である。第1および第2のワークピース鍛造温度よりも低い後続のワークピース鍛造温度、例えば、第3のワークピース鍛造温度、第4のワークピース鍛造温度等は、本開示の非限定的な実施形態の範囲内である。
【0122】
鍛造の進行に伴い、粒の微細化は、固定温度における流動応力の減少をもたらす。連続的な据え込みおよび延伸ステップに関する鍛造温度を減少させることは、流動応力を一定に維持し、微細構造の微細化の速度を増加させることが決定された。本開示によるMUDの非限定的な実施形態では、少なくとも1.0、少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内、または最大10の全ひずみは、チタン合金ワークピース内に均一な等軸α超微細粒微細構造をもたらすこと、及び2温度(または多温度)MUD方法のより低い温度は、最大10の全ひずみがMUD構造に付与された後、最終粒径の決定的要因であり得ることが予測される。
【0123】
本開示の態様は、ワークピースをMUD方法によって処理した後、ワークピースの温度が、その後チタン合金のβトランザス温度を超えて加熱されない限り、その後の変形ステップは、微細化された粒径を粗大化することなく実施されるという可能性を含む。例えば、非限定的な実施形態では、その後の変形の実践は、MUD方法後、チタン合金のα+β相領域内の温度における、延伸鍛造、複数の延伸鍛造、据え込み鍛造、またはこれらの鍛造技術の2つ以上の任意の組み合わせを含んでもよい。非限定的な実施形態では、その後の変形または鍛造ステップは、円筒様または他の細長いワークピースの開始断面寸法を、チタン合金ワークピース内に均一な細粒、微細粒、または超微細粒構造を依然維持しながら、何分の1かの断面寸法、例えば、限定されないが、断面寸法の2分の1、断面寸法の4分の1等へと低減させるような、多パス延伸鍛造、据え込み鍛造、および延伸鍛造の組み合わせを含む。
【0124】
MUD方法の非限定的な実施形態では、ワークピースは、α+βチタン合金および準安定βチタン合金から成る群から選択されるチタン合金を含む。MUD方法の別の非限定的な実施形態では、ワークピースは、α+βチタン合金を含む。本明細書に開示される複数の据え込みおよび延伸プロセスのまた別の非限定的な実施形態では、ワークピースは、準安定βチタン合金を含む。MUD方法の非限定的な実施形態では、ワークピースは、Ti−6−2−4−2合金、Ti−6−2−4−6合金、ATI 425(登録商標)チタン合金(Ti−4Al−2.5V)、およびTi−6−6−2合金から選択されるチタン合金である。
【0125】
本開示のMUD実施形態に従って、ワークピースをα+β相領域内のワークピース鍛造温度まで加熱する前に、非限定的な実施形態では、ワークピースは、β焼鈍温度まで加熱され、ワークピース内に100%β相チタン微細構造を形成するのに十分なβ焼鈍時間、β焼鈍温度で保持され、周囲温度まで冷却されてもよい。非限定的な実施形態では、β焼鈍温度は、チタン合金のβトランザス温度〜チタン合金のβトランザス温度を最大300°F(
166.7℃)上回る温度を含むβ焼鈍温度範囲内である。非限定的な実施形態では、β焼鈍時間は、5分〜24時間である。
【0126】
非限定的な実施形態では、ワークピースは、ワークピースと鍛造ダイとの間の摩擦を低減する潤滑コーティングを用いて全表面または特定の表面をコーティングされたビレットである。非限定的な実施形態では、潤滑コーティングは、固体潤滑剤、例えば、限定されないが、グラファイトおよびガラス潤滑剤のうちの1つである。現在または将来当業者に既知である他の潤滑コーティングは、本開示の範囲内である。それに加えて、円筒様または他の細長い形状のワークピースを使用するMUD方法の非限定的な実施形態では、ワークピースと鍛造ダイとの間の接触面積は、立方体形状のワークピースの多軸鍛造における接触面積と比較して小さい。例えば、4インチの立方体の場合、立方体の4インチ×4インチの全ての面のうちの2つが、ダイと接触する。5フィート長のビレットの場合、ビレットの長さは、典型的な14インチ長のダイよりも大きく、低減された接触面積は、低減されたダイ摩擦ならびにより均一なチタン合金ワークピース微細構造およびマクロ構造をもたらす。
【0127】
本開示のMUD実施形態に従って、チタン合金を含むワークピースをα+β相領域内のワークピース鍛造温度まで加熱する前に、非限定的な実施形態では、ワークピースは、チタン合金内に100%β相を形成するのに十分なβ焼鈍時間、保持された後、かつ合金を周囲温度まで冷却する前に、チタン合金のβ相領域内の塑性変形温度で塑性変形される。非限定的な実施形態では、塑性変形温度は、β焼鈍温度に等しい。別の非限定的な実施形態では、塑性変形温度は、チタン合金のβトランザス温度〜チタン合金のβトランザス温度を最大300°F(
166.7℃)上回る温度を含む塑性変形温度範囲内である。
【0128】
MUD方法の非限定的な実施形態では、チタン合金のβ相領域におけるワークピースの塑性変形は、チタン合金ワークピースを延伸すること、据え込み鍛造すること、および高ひずみ速度で多軸鍛造することのうちの少なくとも1つを含む。別の非限定的な実施形態では、チタン合金のβ相領域におけるワークピースの塑性変形は、本開示の非限定的な実施形態による複数の据え込みおよび延伸鍛造を含み、ワークピースをワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却することは、空冷を含む。また別の非限定的な実施形態では、チタン合金のβ相領域におけるワークピースの塑性変形は、ワークピースを、高さ、または長さ等の別の寸法において30〜35%
圧下まで据え込み鍛造することを含む。
【0129】
本開示のMUD方法の別の態様は、鍛造中に鍛造ダイを加熱することを含んでもよい。非限定的な実施形態は、ワークピースを鍛造するために使用される鍛造炉のダイを、ワークピース鍛造温度〜ワークピース鍛造温度を100°F(55.6℃)下回る温度によって定められる温度範囲内の温度まで加熱することを含む。
【0130】
本開示によるMUD方法の非限定的な実施形態では、超細粒チタン合金の生成のための方法は、Ti−6−4合金よりも遅いα析出および成長速度を有するチタン合金を選択することと、微細で安定したαラス構造を提供するように合金をβ焼鈍することと、合金を、本開示に従って、少なくとも1.0、または少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の全ひずみまで高ひずみ速度で多軸鍛造することとを含む。チタン合金は、β焼鈍後に微細で安定したαラス構造を提供するα+βチタン合金および準安定βチタン合金から選択されてもよい。
【0131】
本明細書に開示される特定の方法はまた、チタン合金以外の金属および金属合金に対して、これらの合金のワークピースの粒径を低減するために適用することもできると考えられる。本開示の別の態様は、金属および金属合金の高ひずみ速度多ステップ鍛造のための方法の非限定的な実施形態を含む。本方法の非限定的な実施形態は、金属または金属合金を含むワークピースをワークピース鍛造温度まで加熱することを含む。加熱後、ワークピースは、ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分なひずみ速度で、ワークピース鍛造温度で鍛造される。鍛造後、次の鍛造ステップ前に、待機期間が用いられる。待機期間中、金属合金ワークピースの断熱的に加熱された内部領域の温度は、ワークピース鍛造温度まで冷却され、一方ワークピースの少なくとも1つの表面領域は、ワークピース鍛造温度まで加熱される。ワークピースを鍛造し、次に金属合金ワークピースの少なくとも1つの表面領域をワークピース鍛造温度まで加熱しながら、ワークピースの断熱的に加熱された内部領域をワークピース鍛造温度に平衡化させるステップは、所望の特性が獲得されるまで繰り返される。非限定的な実施形態では、鍛造は、プレス鍛造、据え込み鍛造、延伸鍛造、およびロール鍛造のうちの1つ以上を含む。別の非限定的な実施形態では、金属合金は、チタン合金、ジルコニウムおよびジルコニウム合金、アルミニウム合金、鉄合金、ならびに超合金から成る群から選択される。また別の非限定的な実施形態では、所望の特性は、付与されるひずみ、平均粒径、形状、および機械的特性のうちの1つ以上である。機械的特性としては、強度、延性、破壊靭性、および硬度が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0132】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、特定の非限定的な実施形態をさらに説明するように意図される。当業者は、以下の実施例の変形は、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲内で可能であることを理解するであろう。
【0133】
実施例1 Ti−6−2−4−2合金のバーを、Ti−6−2−4−2合金を処理するために典型的に使用される、仕様書番号AMS4976によって業界にて同定される商業用鍛造プロセスに従って処理した。AMS4976の仕様書を参照することによって、当業者は、仕様書に記載される機械的特性および微細構造を達成するための処理の詳細を理解する。処理後、合金を金属組織学的に調製し、微細構造を顕微鏡学的に評価した。
図11(a)に含まれる調製した合金の顕微鏡写真に示される通り、微細構造は、約20μm以上のα粒(画像中、薄い色の領域)を含む。
【0134】
本開示内の非限定的な実施形態に従って、4.0インチの立方体形状のTi−6−2−4−2合金のワークピースを、1950°F(1066℃)で1時間β焼鈍し、次に周囲温度まで空冷した。冷却後、β焼鈍した立方体形状のワークピースを、1600°F(871.1℃)のワークピース鍛造温度まで加熱し、4ヒットの高ひずみ速度MAFを使用して鍛造した。ヒットは、次の直交軸に対して次のシーケンスであった:A−B−C−A。ヒットは、3.25インチのスペーサ高さに対し、またラム速度は、毎秒1インチであった。プレスにおけるひずみ速度の制御はなかったが、4.0インチの立方体に関して、このラム速度は、0.25秒
−1のプレス中に最少のひずみ速度をもたらす。連続する直交ヒット間の時間は、約15秒であった。ワークピースに適用される全ひずみは、1.37であった。このようにして処理したTi−6−2−4−2合金の微細構造は、
図11(b)の顕微鏡写真に示される。α粒子(薄い色の領域)の大部分は、約4μm以下であり、これは、
図11(a)の顕微鏡写真によって表される上述の商業用鍛造プロセスによって生成されたα粒よりも実質的に微細である。
【0135】
実施例2 Ti−6−2−4−6合金のバーを、T−6−2−4−6合金に関して典型的に使用される商業用鍛造プロセスに従って、即ち、仕様AMS4981に従って処理した。AMS4981の仕様書を参照することによって、当業者は、仕様書に記載される機械的特性および微細構造を達成するための処理の詳細を理解する。処理後、合金を、金属組織学的に調製し、微細構造を顕微鏡学的に評価した。
図12(a)に示される調製した合金の顕微鏡写真に示される通り、微細構造は、約10μm以上のα粒(薄い色の領域)を示す。
【0136】
本開示による非限定的な実施形態において、4.0インチの立方体形状のTi−6−2−4−6合金のワークピースを、1870°F(1066℃)で1時間β焼鈍し、次に周囲温度まで空冷した。冷却後、β焼鈍した立方体形状のワークピースを、1500°F(815.6℃)のワークピース鍛造温度まで加熱し、4ヒットの高ひずみ速度MAFを使用して鍛造した。ヒットは、次の直交軸に対して次のシーケンスであった:A−B−C−A。ヒットは、3.25インチのスペーサ高さに対し、またラム速度は、毎秒1インチであった。プレスにおけるひずみ速度の制御はなかったが、4.0インチの立方体に関して、このラム速度は、0.25秒
−1のプレス中に最少のひずみ速度をもたらす。連続する直交ヒット間の時間は、約15秒であった。ワークピースに適用される全ひずみは、1.37であった。このようにして処理した合金の微細構造は、
図12(b)の顕微鏡写真に示される。α粒子(薄い色の領域)の大部分は、約4μm以下であり、いずれの場合においても、
図12(a)の顕微鏡写真によって表される上述の商業用鍛造プロセスによって生成されたα粒よりも、遥かに微細であることが分かる。
【0137】
実施例3 本開示による非限定的な実施形態において、4.0インチの立方体形状のTi−6−2−4−6合金のワークピースを、1870°F(1066℃)で1時間β焼鈍し、次に空冷した。冷却後、β焼鈍した立方体形状のワークピースを、1500°F(815.6℃)のワークピース鍛造温度まで加熱し、A、B、およびC軸上に1ずつの3ヒットの高ひずみ速度MAFを使用して鍛造した(即ち、ヒットは、次の直交軸に対して次のシーケンスであった:A−B−C)。ヒットは、3.25インチのスペーサ高さに対し、またラム速度は、毎秒1インチであった。プレスにおけるひずみ速度の制御はなかったが、4.0インチの立方体に関して、このラム速度は、0.25秒
−1のプレス中に最少のひずみ速度をもたらす。連続する直交ヒット間の時間は、約15秒であった。A−B−Cのヒットサイクルの後、ワークピースを、1500°F(815.6℃)まで30分間再加熱した。立方体を次に、A、B、およびC軸上に1ヒットずつ用いて高ひずみ速度MAFし、即ち、ヒットは、次の直交軸に対して次のシーケンスであった:A−B−C。ヒットは、第1のA−B−Cのヒットのシーケンスにおいて使用したものと同じスペーサ高さに対するものであり、また同じラム速度を使用した。第2のA−B−Cヒットのシーケンスの後、ワークピースを、1500°F(815.6℃)まで30分間再加熱した。立方体を次に、A、B、およびC軸の各々に1ヒットを用いて、即ち、A−B−Cのシーケンスで高ひずみ速度MAFした。ヒットは、第1のA−B−Cのヒットのシーケンスにおけるものと同じスペーサ高さに対するものであり、また同じラム速度およびヒット間の時間を使用した。高ひずみ速度多軸鍛造プロセスのこの実施形態は、3.46のひずみを付与した。このようにして処理した合金の微細構造は、
図13の顕微鏡写真に示される。α粒子(薄い色の領域)の大部分は、約4μm以下であることが分かる。α粒子は、個々のα粒で構成され、またα粒の各々は、4μm以下の粒径を有し、等軸形状である可能性が高いと考えられる。
【0138】
実施例4 本開示による非限定的な実施形態において、4.0インチの立方体形状のTi−6−2−4−2合金のワークピースを、1950°F(1066℃)で1時間β焼鈍し、次に空冷した。冷却後、β焼鈍した立方体形状のワークピースを、1700°F(926.7℃)のワークピース鍛造温度まで加熱し、1時間保持した。2つの高ひずみ速度MAFサイクル(3つのA−B−Cヒットの2つのシーケンス、合計で6ヒット)を、1700°F(926.7℃)で用いた。連続するヒット間の時間は、約15秒であった。鍛造のシーケンスは、3インチの止め具へのAヒット;3.5インチの止め具へのBヒット;および4.0インチの止め具へのCヒットであった。この鍛造のシーケンスは、3ヒットのMAFのシーケンス毎に3つの直交軸全てに等しいひずみを提供する。ラム速度は、毎秒1インチであった。プレスにおけるひずみ速度の制御はなかったが、4.0インチの立方体に関して、このラム速度は、0.25秒
−1のプレス中に最少のひずみ速度をもたらす。サイクルあたりの全ひずみは、先行実施例の通り、各方向において3.25インチ
圧下への鍛造より少ない。
【0139】
ワークピースを、1650°F(898.9℃)まで再加熱し、3つの追加のヒットのために高強度MAFに供した(即ち、1つの追加のA−B−C高ひずみ速度MAFサイクル)。鍛造のシーケンスは、3インチの止め具へのAヒット;3.5インチの止め具へのBヒット;および4.0インチの止め具へのCヒットであった。鍛造後、ワークピースに付与された全ひずみは、2.59であった。
【0140】
実施例4の鍛造したワークピースの微細構造は、
図14の顕微鏡写真に示される。α粒子(薄い色の領域)の大部分は、ネットワーク化された構造であることが分かる。α粒子は、個々のα粒で構成され、またα粒の各々は、4μm以下の粒径を有し、等軸形状である可能性が高いと考えられる。
【0141】
実施例5 本開示による非限定的な実施形態において、4.0インチの立方体形状のTi−6−2−4−2合金のワークピースを、1950°F(1066℃)で1時間β焼鈍し、次に空冷した。冷却後、β焼鈍した立方体形状のワークピースを、1700°F(926.7℃)のワークピース鍛造温度まで加熱し、1時間保持した。本開示によるMAFを用いて、立方体形状のワークピースに、主要
圧下スペーサ高さへの6つのプレス鍛造(
A、
B、
C、
A、
B、
C)を適用した。それに加えて、3.25インチの主要
圧下スペーサ高さへの各プレス鍛造間に、第1および第2の荒打ち
圧下を、他の軸上で実施して、ワークピースを「正方形に」した。使用される全体の鍛造のシーケンスは、次の通りであり、下線付き太字のヒットは、主要
圧下スペーサ高さへのプレス鍛造である:
A−B−C−
B−C−A−
C−A−B−
A−B−C−
B−C−A−
C。
【0142】
利用した主要、第1の荒打ち、および第2の荒打ちスペーサ高さ(インチ)を含む鍛造のシーケンスを、下の表に概説する。ラム速度は、毎秒1インチであった。プレスにおけるひずみ速度の制御はなかったが、4.0インチの立方体に関して、このラム速度は、0.25秒
−1のプレス中に最少のひずみ速度をもたらす。ヒット間の経過時間は、約15秒であった。この非限定的な実施形態による熱管理されたMAF後の全ひずみは、2.37であった。
【表1】
【0143】
この実施例5に説明されるプロセスによって鍛造したワークピースの微細構造は、
図15の顕微鏡写真に示される。α粒子(薄い色の領域)の大部分は、細長いことが分かる。α粒子は、個々のα粒で構成され、またα粒の各々は、4μm以下の粒径を有し、等軸形状である可能性が高いと考えられる。
【0144】
実施例6 本開示による非限定的な実施形態において、4.0インチの立方体形状のTi−6−2−4−2合金のワークピースを、1950°F(1066℃)で1時間β焼鈍し、次に空冷した。本開示の実施形態に従って、1900℃で6ヒット(2つのA−B−CのMAFサイクル)を含む熱管理された高ひずみ速度MAFを、各ヒット間に30秒の保持を伴ってワークピース上で実施した。ラム速度は、毎秒1インチであった。プレスにおけるひずみ速度の制御はなかったが、4.0インチの立方体に関して、このラム速度は、0.25秒
−1のプレス中に最少のひずみ速度をもたらす。中間の保持を伴う6つのヒットのシーケンスは、MAF中にβトランザス温度を通してピースの表面を加熱するために設計され、これはしたがって、トランザスを通した高ひずみ速度MAFと称され得る。このプロセスは、その後の鍛造中に、表面構造の微細化および亀裂の最小化をもたらす。ワークピースを次に、1650°F(898.9℃)で、即ち、βトランザス温度未満で1時間加熱した。6ヒット(2つのA−B−CのMAFサイクル)を含む本開示の実施形態によるMAFを、ヒット間に約15秒を伴って、ワークピースに適用した。第1の3ヒット(第1のA−B−CのMAFサイクル中のヒット)は、3.5インチのスペーサ高さを用いて実施し、第2の3ヒット(第2のA−B−CのMAFサイクル中のヒット)は、3.25インチのスペーサ高さを用いて実施した。ワークピースを、3.5インチのスペーサによるヒットと3.25インチのスペーサによるヒットとの間に、1650°Fまで加熱し、30分間保持した。より小さい
圧下は、境界構造を崩壊させ、これは亀裂につながり得るため、第1の3ヒットに関して使用したより小さい
圧下(即ち、より大きいスペーサ高さ)は、亀裂を阻止するために設計された。ワークピースを、1500°F(815.6℃)まで1時間再加熱した。次に、本開示の実施形態によるMAFを、各ヒット間に15秒間を有して、3.25インチ
圧下への3つのA−B−Cヒット(1つのMAFサイクル)を使用して適用した。より重い
圧下のこのシーケンスは、非境界構造に追加の作業を加えるために設計される。実施例6に説明される全ヒットに関するラム速度は、毎秒1インチであった。
【0145】
3.01の全ひずみが、実施例6のワークピースに付与された。実施例6の熱管理されたMAFワークピースの中心の代表的な顕微鏡写真が、
図16(a)に示される。実施例6の熱管理されたMAFワークピースの表面の代表的な顕微鏡写真が、
図16(b)に提示される。表面微細構造(
図16(b))は、実質的に微細化され、粒子および/または粒の大部分は、約4μm以下のサイズを有し、これは超微細粒微細構造である。
図16(a)に示される中心の微細構造は、高度に微細化された粒を示し、α粒子は、個々のα粒で構成され、α粒の各々は、4μm以下の粒径を有し、等軸形状である可能性が高いと考えられる。
【0146】
本説明は、本発明の明確な理解に関連する本発明の態様を例証することが理解されるであろう。当業者にとって明らかであり、したがって本発明のより良い理解を促進するものではない特定の態様は、本説明を簡略化するために提示されていない。本発明の限られた数の実施形態のみが本明細書に必然的に説明されるが、当業者は、前述の説明を考慮すれば、本発明の多くの修正または変形が採用され得ることを認識するであろう。かかる本発明の変形および修正は、前述の説明および以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
[発明の態様]
[1]チタン合金を含むワークピースの粒径を微細化する方法であって、
前記ワークピースをβ焼鈍することと、
前記β焼鈍されたワークピースを、前記チタン合金のβトランザス温度未満の温度まで冷却することと、
前記ワークピースを多軸鍛造することを含み、前記多軸鍛造することは、
前記ワークピースを、前記ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの第1の直交軸の方向に、ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度でプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記内部領域を断熱的に加熱するのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの第2の直交軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度でプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記内部領域を断熱的に加熱するのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの第3の直交軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度でプレス鍛造することと、
少なくとも1.0の全ひずみが前記ワークピースにおいて達成されるまで、前記プレス鍛造ステップのうちの少なくとも1つを繰り返すことと、を含む、前記方法。
[2]前記プレス鍛造ステップのうちの少なくとも1つは、少なくとも1.0〜最大3.5未満の範囲内の全ひずみが前記ワークピースにおいて達成されるまで繰り返される、[1]の方法。
[3]プレス鍛造中に使用されるひずみ速度は、0.2秒−1〜0.8秒−1の範囲内である、[1]の方法。
[4]前記ワークピースは、α+βチタン合金および準安定βチタン合金のうちの1つを含む、[1]の方法。
[5]前記ワークピースは、α+βチタン合金を含む、[1]の方法。
[6]前記チタン合金は、α相析出および成長速度を減少させるのに有効な粒ピンニング合金化添加物およびβ安定化内容物のうちの少なくとも1つを含む、[4]または[5]の方法。
[7]前記ワークピースは、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo合金(UNS R56260)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo−0.08Si合金(UNS R54620)、Ti−4Al−2.5V合金(UNS R54250)、Ti−6Al−7Nb合金(UNS R56700)、およびTi−6Al−6V−2Sn合金(UNS R56620)から選択されるチタン合金を含む、[1]の方法。
[8]前記β焼鈍されたワークピースを冷却することは、前記ワークピースを周囲温度まで冷却することを含む、[1]の方法。
[9]前記β焼鈍されたワークピースを冷却することは、前記ワークピースを前記ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却することを含む、[1]の方法。
[10]前記ワークピースをβ焼鈍することは、前記ワークピースを、前記チタン合金の前記βトランザス温度〜前記チタン合金の前記βトランザス温度を最大300°F(111℃)上回る温度の範囲内のβ焼鈍温度で加熱することを含む、[1]の方法。
[11]前記ワークピースをβ焼鈍することは、前記ワークピースを、5分〜24時間の範囲内の時間、β焼鈍温度で加熱することを含む、[1]の方法。
[12]前記β焼鈍されたワークピースを冷却する前に、前記ワークピースを、前記チタン合金のβ相領域において塑性変形温度で塑性変形させることをさらに含む、[1]の方法。
[13]前記ワークピースを前記チタン合金の前記β相領域において塑性変形温度で塑性変形させることは、前記ワークピースを延伸すること、据え込み鍛造すること、および高ひずみ速度で多軸鍛造することのうちの少なくとも1つを含む、[12]の方法。
[14]前記塑性変形温度は、前記チタン合金の前記βトランザス温度〜前記チタン合金の前記βトランザス温度を最大300°F(111℃)上回る温度の範囲内である、[12]の方法。
[15]前記ワークピースを塑性変形させることは、高ひずみ速度で多軸鍛造することを含み、前記ワークピースを冷却することは、前記ワークピースが前記チタン合金のα+β相領域において前記ワークピース鍛造温度まで冷却するときに、前記ワークピースを高ひずみ速度で多軸鍛造することを含む、[12]の方法。
[16]前記ワークピースを塑性変形させることは、前記ワークピースを、0.1〜0.5の範囲内のβ据え込みひずみに据え込み鍛造することを含む、[12]の方法。
[17]前記ワークピース鍛造温度は、前記チタン合金の前記βトランザス温度を100°F(55.6℃)下回る温度〜前記チタン合金の前記βトランザス温度を700°F(388.9℃)下回る温度の範囲内である、[1]の方法。
[18]逐次の複数回のプレス鍛造の間に、前記ワークピースの前記断熱的に加熱された内部領域を、前記ワークピース鍛造温度範囲内の前記ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却させ、前記ワークピースの外側表面を、前記ワークピース鍛造温度範囲内の前記ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱する、中間連続プレス鍛造ステップをさらに含む、[1]の方法。
[19]前記ワークピースの前記断熱的に加熱された内部領域は、5秒〜120秒の範囲内の内部領域冷却時間、冷却される、[18]の方法。
[20]前記ワークピースの前記外側表面を加熱することは、火炎加熱、箱形炉加熱、誘導加熱、および放射加熱のうちの1つ以上を用いて加熱することを含む、[18]の方法。
[21]前記ワークピースをプレス鍛造するために使用される鍛造炉のダイは、前記ワークピース鍛造温度〜前記ワークピース鍛造温度を100°F(55.6℃)下回る温度の範囲内の温度まで加熱される、[18]の方法。
[22]少なくとも1.0の全ひずみが達成された後、前記ワークピースは、4μm以下の範囲内の平均α粒子粒径を有する、[1]の方法。
[23]少なくとも1.0の全ひずみが前記ワークピースにおいて達成されるまで、前記プレス鍛造ステップのうちの少なくとも1つを繰り返すことは、前記ワークピースを第2のワークピース鍛造温度でプレス鍛造することを含み、前記第2のワークピース鍛造温度は、前記ワークピースの前記チタン合金のα−β相領域内であり、前記第2のワークピース鍛造温度は、前記ワークピース鍛造温度よりも低い、[1]の方法。
[24]チタン合金を含むワークピースの粒径を微細化する方法であって、
前記ワークピースをβ焼鈍することと、
前記β焼鈍されたワークピースを、前記チタン合金のβトランザス温度未満の温度まで冷却することと、
前記ワークピースを多軸鍛造することを含み、前記多軸鍛造することは、
前記ワークピースを、前記ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの第1の直交A軸の方向に、ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度で主要圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの第2の直交B軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で第1の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの第3の直交C軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で第2の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの前記第2の直交B軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記主要圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記第3の直交C軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記第1の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記第1の直交A軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記第2の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの内部領域を断熱的に加熱するのに十分なひずみ速度で、前記ワークピースの前記第3の直交C軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記主要圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記第1の直交A軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記第1の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
前記ワークピースを、前記ワークピースの前記第2の直交B軸の方向に、前記ワークピース鍛造温度で前記第2の荒打ち圧下スペーサ高さにプレス鍛造することと、
少なくとも1.0の全ひずみが前記ワークピースにおいて達成されるまで、先行するプレス鍛造ステップのうちの少なくとも1つを繰り返すことと、を含む、前記方法。
[25]前記プレス鍛造ステップのうちの少なくとも1つは、少なくとも1.0〜最大3.5未満の全ひずみが前記ワークピースにおいて達成されるまで繰り返される、[24]の方法。
[26]プレス鍛造中に使用されるひずみ速度は、0.2秒−1〜0.8秒−1の範囲内である、[24]の方法。
[27]前記ワークピースは、α+βチタン合金および準安定βチタン合金のうちの1つを含む、[24]の方法。
[28]前記ワークピースは、α+βチタン合金を含む、[24]の方法。
[29]前記チタン合金は、α相析出およびα相成長速度を減少させる粒ピンニング合金化添加物およびβ安定化内容物のうちの少なくとも1つを含む、[27]または[28]の方法。
[30]前記ワークピースは、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo合金(UNS R56260)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo−0.08Si合金(UNS R54620)、Ti−4Al−2.5V合金(UNS R54250)、Ti−6Al−7Nb合金(UNS R56700)、およびTi−6Al−6V−2Sn合金(UNS R56620)から選択されるチタン合金を含む、[24]の方法。
[31]前記β焼鈍されたワークピースを冷却することは、前記ワークピースを周囲温度まで冷却することを含む、[24]の方法。
[32]前記β焼鈍されたワークピースを冷却することは、前記ワークピースを前記ワークピース鍛造温度まで冷却することを含む、[24]の方法。
[33]前記ワークピースをβ焼鈍することは、前記ワークピースを、前記チタン合金の前記βトランザス温度〜前記チタン合金の前記βトランザス温度を最大300°F(111℃)上回る温度の範囲内のβ焼鈍温度で加熱することを含む、[24]の方法。
[34]前記ワークピースをβ焼鈍することは、前記ワークピースを、5分〜24時間の範囲内の時間、β焼鈍温度で加熱することを含む、[24]の方法。
[35]前記β焼鈍されたワークピースを、前記チタン合金の前記βトランザス温度未満の温度まで冷却する前に、前記ワークピースを、前記チタン合金のβ相領域において塑性変形温度で塑性変形させることをさらに含む、[24]の方法。
[36]前記ワークピースを前記チタン合金の前記β相領域において塑性変形温度で塑性変形させることは、前記ワークピースを、延伸すること、据え込み鍛造すること、および高ひずみ速度で多軸鍛造することのうちの少なくとも1つを含む、[35]の方法。
[37]前記塑性変形温度は、前記ワークピースの前記チタン合金の前記βトランザス温度〜前記ワークピースの前記チタン合金の前記βトランザス温度を最大300°F(111℃)上回る温度の範囲内である、[35]の方法。
[38]前記ワークピースを塑性変形させることは、高ひずみ速度で多軸鍛造することを含み、前記β焼鈍されたワークピースを冷却することは、前記ワークピースが、前記チタン合金の前記α+β相領域において前記ワークピース鍛造温度まで冷却するときに、前記ワークピースを高ひずみ速度で多軸鍛造することを含む、[35]の方法。
[39]前記ワークピースを塑性変形させることは、前記ワークピースを、0.1〜0.5の範囲内のβ据え込みひずみに据え込み鍛造することを含む、[35]の方法。
[40]前記ワークピース鍛造温度は、前記チタン合金の前記βトランザス温度を100°F(55.6℃)下回る温度〜前記チタン合金の前記βトランザス温度を700°F(388C)下回る温度の範囲内である、[24]の方法。
[41]逐次の複数回のプレス鍛造の間において、前記ワークピースの前記断熱的に加熱された内部領域は、前記ワークピース鍛造温度範囲内のワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで冷却され、前記ワークピースの外側表面領域は、前記ワークピース鍛造温度内の前記ワークピース鍛造温度の温度またはそれに近い温度まで加熱される、[24]の方法。
[42]前記ワークピースの前記断熱的に加熱された内部領域は、5秒〜120秒の範囲内の時間、冷却される、[41]の方法。
[43]前記ワークピースの前記外側表面を加熱することは、火炎加熱、箱形炉加熱、誘導加熱、および放射加熱のうちの1つ以上を用いて加熱することを含む、[41]の方法。
[44]前記ワークピースをプレス鍛造するために使用される鍛造炉のダイは、前記ワークピース鍛造温度〜前記ワークピース鍛造温度を100°F(55.6℃)下回る温度の範囲内の温度まで加熱される、[41]の方法。
[45]少なくとも1.0の全ひずみが達成された後、前記ワークピースは、4μm以下の平均α粒子粒径を有する、[24]の方法。
[46]少なくとも1.0の全ひずみが前記ワークピースにおいて達成されるまで、前記プレス鍛造ステップのうちの少なくとも1つを繰り返すことは、前記ワークピースを第2のワークピース鍛造温度でプレス鍛造することを含み、前記第2のワークピース鍛造温度は、前記チタン合金ワークピースのα−β相領域内であり、前記第2のワークピース鍛造温度は、前記ワークピース鍛造温度よりも低い、[24]の方法。