【文献】
PIERSMA, S.R. et al.,Proteomics of the TRAP-induced platelet releasate,Journal of Proteomics,2009年,Vol.72,No.1,pp.91-109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被験体が前記良性病変または前記癌腫病変に罹患している可能性が、前記被験体が前記良性病変または卵巣癌もしくは前立腺癌病変に罹患している可能性を含む、請求項1記載の方法。
前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程が、前記生物学的試料において、血小板由来バイオマーカーERP29およびACTN4、および必要に応じて、HPタンパク質、TLN1、SRCおよびTHTMからなる群より選択される少なくとも一つの追加の血小板由来バイオマーカーを測定する工程を含む、請求項1または2記載の方法。
前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程が、ERP29、ACTN4、ACTN1、CRKL、FERM、FIBG、FLNA、GELS、GRP75、HPタンパク質、HSP70、HSP71、ITGA2B、ITB3、RINI、SRC、TBA、TBA4A、THTM、TLN1、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される少なくとも4つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程を含む、請求項1または2記載の方法。
前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程が、前記生物学的試料において、前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定する工程を含み、さらに:
前記のそれぞれの量を、対照被験体由来の生物学的試料における前記のそれぞれの血小板由来バイオマーカーの量を表す、それぞれの対照量と比較する工程を含む、ここで
前記被験体が前記良性病変または前記癌腫病変に罹患している可能性が、前記比較に基づいて示される
請求項1〜4のいずれか記載の方法。
請求項1〜5のいずれか記載の方法であって、前記被験体が前記良性病変または前記癌腫病変に罹患している可能性が、前記被験体が前記良性病変または初期段階癌腫病変に罹患している可能性を含む、前記方法。
前記の良性および/または癌腫病変の存在する可能性が、前記被験体における良性および/または卵巣癌もしくは前立腺癌病変の存在する可能性を含む、請求項7の方法。
前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程が、前記生物学的試料において、前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定する工程を含み、さらに:
前記のそれぞれの量を、対照被験体由来の生物学的試料における前記のそれぞれの血小板由来バイオマーカーの量を表す、それぞれの対照量と比較する工程を含む、ここで
良性および/または癌腫病変の存在する可能性が、前記比較に基づいて示される、
請求項7または8記載の方法。
前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程が、前記生物学的試料において、ACTB、ACTN1、CASP3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、GSTO1、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程を含み;そして
前記結腸直腸癌または膵臓癌の存在する可能性が、前記被験体における前記結腸直腸癌の存在する可能性を含む
請求項10記載の方法。
前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程が、前記生物学的試料において、ACTB、ACTN1、CASP3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、HSP90AB1、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程を含み;そして
前記結腸直腸癌または膵臓癌の存在する可能性が、前記被験体における前記膵臓癌の存在する可能性を含む
請求項10記載の方法。
前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程が、前記生物学的試料において、前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定する工程を含み、さらに:
前記のそれぞれの量を、対照被験体由来の生物学的試料における前記のそれぞれの血小板由来バイオマーカーの量を表す、それぞれの対照量と比較する工程を含む、ここで
前記結腸直腸癌または膵臓癌の存在をする可能性が、前記比較に基づいて示される、請求項10〜12いずれか記載の方法。
前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程が、前記生物学的試料において、前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定する工程を含み、さらに:
前記のそれぞれの量を、対照被験体由来の生物学的試料における前記のそれぞれの血小板由来バイオマーカーの量を表す、それぞれの対照量と比較する工程を含む、ここで
前記癌腫の存在する可能性が、前記比較に基づいて示される、
請求項14〜16いずれか記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本態様は、一般的に、癌診断の分野に関する。より具体的には、態様は、上皮癌予測および診断において用いられる血小板バイオマーカーに関する。
【0035】
本態様は、したがって、選択した血小板由来タンパク質の組み合わせをバイオマーカーとして用いる。態様の血小板由来タンパク質を、効率的に信頼性を持ってそして安全な方式で、被験体、好ましくは哺乳動物被験体、およびより好ましくはヒト被験体の癌診断に用いてもよい。
【0036】
したがって、おそらくすでに疾患の早期段階の、癌および癌状態の、特に癌腫または「上皮」癌に関する、単純で、患者に優しい、そしてリスクがない検出/診断を可能にすることが、態様の範囲内である。癌の早期検出は、患者のより有効な治療、そしてしたがってより高い生存率を可能にするため、望ましい。さらに、早期または進行段階であるか、癌の進行を決定可能であることも好適であり、これは早期、しばしば限局性の腫瘍、または進行性、しばしば散在性の悪性腫瘍は、異なる治療代替法を必要とし、そして異なる予後によって特徴付けられるためである。
【0037】
該態様とは明らかに対照的に、背景セクションで言及した米国特許8,173,433は、癌検出のためのバイオマーカーとして、抗原性血小板タンパク質が使用可能であることを開示する。該文書に開示される抗原性タンパク質は、新規血管が、あらかじめ存在していた血管から形成されるプロセスに関与する。こうした新規血管は、一般的に、十分な栄養および酸素を、成長中の癌細胞に提供するため、腫瘍増殖に重要である。血管新生はまた、転移にも重要であり、すなわち転移性腫瘍が被験体体内の他の部位に伝播することを可能にする経路を提供する。
【0038】
米国特許8,173,433に開示される方法は、典型的には、少なくとも2つの試料が2つの異なる時点で同じ被験体から採取されることを必要とする。2つの試料を分析し、そして血管新生タンパク質パターンを比較して、癌状態を決定するために、1つの時点から別の時点への変化を見る。
【0039】
本態様は、癌診断に使用可能な血小板由来タンパク質の新規パネルに基づく。これらのパネル中に提示されるタンパク質は、驚くほど、そして米国特許8,173,433とは対照的に、抗原性タンパク質に限定されない。
【0040】
本態様の血小板由来バイオマーカーは、血小板由来バイオマーカーの選択した組み合わせに応じて、癌診断の分野内の多様な診断目的に使用可能である。例えば、血小板由来バイオマーカーの選択したパネルを用いて、被験体における病変を、良性または悪性病変、好ましくは癌腫または上皮癌病変と分類してもよい。したがって、血小板由来バイオマーカーの選択したパネルを用いて、被験体が良性病変に罹患しているかまたは癌腫病変に罹患しているかを決定することも可能である。
【0041】
さらに、態様の血小板由来バイオマーカーの別の選択したパネルを用いて、被験体が健康であるか、あるいは良性および/または悪性病変に罹患しているか、好ましくは良性および/または癌腫病変に罹患しているかを分類することも可能である。したがって、血小板由来バイオマーカーのこの選択したパネルを用いて、被験体における良性および/または癌腫病変の存在を予測することも可能である。
【0042】
態様の血小板由来バイオマーカーの選択したパネルを、一般的な癌診断に関して、すなわち被験体が癌に罹患しているか決定する、特に癌腫に罹患しているか、例えば結腸直腸癌または膵臓癌に罹患しているか決定するために用いることも可能である。したがって、血小板由来バイオマーカーの選択したパネルを用いて、被験体における結腸直腸癌または膵臓癌の存在を予測することも可能である。態様の血小板由来バイオマーカーを用いて、被験体における癌腫の存在を予測するだけでなく、早期段階の癌腫の存在を予測することも可能である。
【0043】
態様の血小板由来バイオマーカーの別の選択したパネルを癌診断に用いて、悪性病変が早期段階にあると分類することも可能である。したがって、血小板由来バイオマーカーのこのパネルを用いて、癌進行を監視し、そしておそらく、早期段階および後期段階の悪性病変の間を、そして特に早期または後期癌腫の間を区別することも可能である。したがって、血小板由来バイオマーカーの選択したパネルを用いて、被験体における早期段階の癌腫の存在を予測することも可能である。
【0044】
開示する態様の理解を単純にするため、本明細書で用いる用語のいくつかを、以下に分類する。
【0045】
用語「バイオマーカー」は、本明細書において、被験体由来の生物学的試料において、直接あるいは間接的に、例えば翻訳後修飾、例えばグリコシル化、フコシル化、メチル化および/またはアセチル化を含む、類似体、代謝産物、断片または分解産物を通じた、検出可能な任意のタンパク質を指す。対照被験体、例えば疾患を伴わない被験体または同じ被験体内の非疾患組織で見られる量に比較した際の、バイオマーカーの量の改変、例えば増加または減少は、被験体における癌などの疾患の存在またはリスクの指標である。バイオマーカーの類似体、代謝産物、断片または分解産物は、バイオマーカーの機能的活性を所持してもまたは所持しなくてもよい。本態様のバイオマーカーは、血小板由来バイオマーカーであり、そしてしたがって、被験体由来の生物学的試料における血小板から得られる。
【0046】
用語「相対量」(または単に「量」)は、異なるマーカータンパク質の測定量に比較した、所定のマーカータンパク質の測定量を指す。すなわち、用語、所定のマーカータンパク質に関する「相対量」を用いて、規準化された量(標準の量に関して、または試料中のすべてのタンパク質の総量の割合として)、または多数のマーカータンパク質の所定のパネル内の他のタンパク質の量に比較して、記載する。
【0047】
用語「改変された細胞」または「改変された組織」は、良性であるかまたは悪性であるかいずれかである可能性もある、病変または類似のものの存在または発生を指す。「改変された細胞/改変された組織/病変の発生」は、本明細書において、良性または悪性いずれかである細胞/組織/病変の発生を指す。こうした「改変された細胞/組織/病変」の予測は、したがって、被験体におけるこうした細胞/組織または病変の発生を指す。態様の選択した血小板由来バイオマーカーは、したがって、被験体が健康であるか、または被験体が改変された細胞/組織/病変に罹患しているか、すなわち良性および/または悪性病変に罹患しているかを予測するために使用可能である。血小板由来バイオマーカーは、したがって、健康な個体および何らかの種類の良性または悪性病変の発生を伴う個体の間を区別する。
【0048】
用語「癌状態」は、本明細書において、状態を癌、すなわち悪性腫瘍組織または病変、あるいは状態を癌でない、すなわち良性組織または病変と定義することを指し、ここで、状態はまた、何らかの種類の病変を持つ患者に関して、「疾患状態」と称することも可能である。良性および悪性に分ける際、用語「腫瘍状態」を用いることも可能である。さらに、癌状態はまた、癌が早期であるかまたは進行性であるかにかかわらず、すなわち早期段階かまたは後期段階かに関わらず、癌の進行を指すことも可能である。したがって、態様は、癌を検出する、すなわち癌と癌でないものの間を区別するために使用可能である。癌でないものは、文脈に応じて、良性病変または完全に健康な個体のいずれであることも可能である。態様はまた、またはあるいは、癌が早期段階または後期段階であるか、癌の進行を決定し、したがって癌状態として癌の進行を決定するためにも使用可能である。予測される癌状態は、さらに、被験体の改善された予後および/または治療のために使用可能である。
【0049】
用語「良性病変」または「良性組織」は、浸潤性増殖および転移性蔓延の能力を欠く、非形成異常細胞からなる病変または組織に関する。良性病変および組織はなお、健康への負の影響を生じる。
【0050】
用語「悪性病変」または「癌」は、制御されない細胞分裂、浸潤性増殖、血管新生の活性化、天然細胞死、すなわちアポトーシスの機能不全によって特徴付けられ、未分化細胞から構築され、そして転移と称する遠位悪性腫瘍を形成する。転移性蔓延は、リンパ系、血管を通じて、そして卵巣癌中のように剥離によって、起こる。
【0051】
用語「健康な対照」または「HC」は、本明細書において、進行中の感染または疾患の徴候がない健康な被験体に同等である。健康な対照は、良性または悪性病変を持たない。
【0052】
用語「対照」には、本明細書において、良性病変を有する「良性対照」または「BC」が含まれる。
【0053】
用語「早期段階」の癌は、それほど多くは広がっていないか、または前記の早期癌に罹患した患者にそれほどひどく影響を及ぼしていない癌を指す。癌腫、すなわち例えば卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌および膵臓癌を含む上皮癌に関して、一般的に、4つ(I〜IV)の等級または段階が、癌および癌進行の段階を分類するために用いられる。早期段階の癌腫には、段階または等級IおよびIIの癌腫が含まれ、そして「後期段階」癌腫には、段階または等級IIIおよびIV癌腫が含まれる。
【0054】
用語「進行した」癌または「後期段階」癌は、広がっているか、または前記の進行した癌に罹患した被験体に非常に影響を及ぼす癌を指す。癌腫に関して、後期段階癌腫には、段階または等級IIIおよびIV癌腫が含まれる。後期段階癌は、時にまた、「蔓延」または「播種」とも称される。
【0055】
用語、上皮卵巣癌(EOC)の「局所腫瘍」または「LC」は、しばしば、段階IおよびIIを含むEOCの早期段階に同等に用いられ、そして用語、EOCの「広がった腫瘍」または「SC」は、しばしば、段階IIIおよびIVを含む後期段階EOCに同等に用いられる。局所癌または腫瘍は、本明細書において、一般的に、被験体の体の1つの部位に存在する癌または腫瘍を指す。この腫瘍は、好ましくは、被験体の体の他の部位に広がっていない。広がったまたは散在した癌または腫瘍は、転移の存在によって特徴付けられる。
【0056】
用語「癌腫」、すなわち上皮癌は、特定の組織の表面(上皮)から生じると考えられる癌を指す。こうした癌には、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌および膵臓癌が含まれる。
【0057】
用語「癌診断」、「診断する」または「診断」は、本明細書において、被験体が疾患、例えば癌、例えば卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌または膵臓癌に罹患している可能性もある徴候を提供することを指す。こうした技術はいずれも完全ではなく、そしてこうした診断は、身体検査、画像法、組織試料の組織学的検査などの他の手技によって確認可能であることが認識される。診断は、本病変が良性または悪性であるかを予測することも可能である。診断はまた、癌であるかまたは癌ではない被験体を診断することも可能であり、ここで癌ではない状態は、良性病変または病変なし(健康な被験体)であってもよい。
【0058】
用語「癌予測」は、試験された被験体が癌疾患を有する可能性を予測することを指す。予測は、例えば、癌または癌でない状態のいずれであってもよい。予測は、典型的には、完全には確かではないが、妥当なシナリオまたは徴候を生じる。
【0059】
用語「癌治療レジメン」は、方法および投薬(療法)に関して、存在する疾患または障害に関して、患者をどのように治療するかを指す。この場合、被験体に関して、予測される癌状態が癌である場合、被験体のために抗癌治療レジメンを選択する。こうした抗癌治療レジメンの限定されない例には、化学療法、手術および/または放射線照射が含まれる。被験体に関して予測される癌状態が癌でない状態(健康または良性)を示す場合、一般的に、癌治療レジメンはまったく必要ではない。この態様において、治療レジメンの選択は、癌状態に基づいて、抗癌治療レジメンまたは非抗癌治療レジメンを選択する工程を含む。
【0060】
本明細書において、用語「被験体」および「患者」は、交換可能に用いられる。本明細書において、被験体は動物、好ましくは哺乳動物、例えば非霊長類、例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット等、あるいは霊長類、例えばサル、例えばアカゲザル(rhesus monkey)、カニクイザル(cynomolgus monkey)またはチンパンジー(chimpanzee)、およびヒト、そして最も好ましくはヒトである。
【0061】
本態様のタンパク質パネルは、被験体における良性および/または悪性病変の発生を決定し、被験体における良性および悪性病変の間を区別し、そして/または被験体における悪性病変の癌段階を予測することを含めて、被験体における癌状態を予測するために使用可能である。被験体における良性および/または悪性病変の発生は、存在していてもよく、すなわち被験体が良性および/または悪性病変に罹患していてもよく、あるいは存在していなくてもよく、すなわち健康な個体であってもよい。血小板由来バイオマーカーはしたがって、健康な被験体、ならびに何らかの種類の改変された組織、良性および/または悪性病変(単数または複数)に罹患している被験体の間を区別するために使用可能である。
【0062】
癌状態は、例えば、存在する改変された組織の状態を癌、すなわち悪性病変と、または状態を癌ではない、すなわち良性病変と定義することを指す。血小板由来バイオマーカーは、したがって、良性病変を伴う被験体および悪性病変(癌)に罹患している被験体の間を区別するために使用可能である。癌状態のこの予測はまた、癌診断と称されることも可能であり、したがって、被験体の病変を良性または悪性と診断する。
【0063】
さらに、癌状態はまた、癌の進行を指し、ここで、ありうる状態は、早期または後期段階癌である。したがって、血小板由来バイオマーカーは、早期段階の癌を有する被験体、および後期段階の癌に罹患している被験体の間を区別するために使用可能である。これはまた、癌進行状態の予測とも称されうる。
【0064】
したがって、態様は、癌を検出する、すなわち癌および良性組織(癌ではない)の間を区別するために使用可能である。該態様はまた、またはあるいは、癌が早期段階または後期段階であるか、癌の進行を決定し、したがって癌状態として癌の進行を決定するためにも使用可能である。予測される癌状態は、さらに、被験体の改善された予後および/または治療のために使用可能である。
【0065】
態様の特定の利点は、非常に悪性である癌を早期に診断する、すなわち、被験体が小さいまたはよく限局された病変を有するか決定し、そしてこれを非侵襲性に行うことが可能であることである。こうした非常に悪性である癌には、卵巣癌、膵臓癌、および結腸直腸癌が含まれる。また、生検の必要性なしに前立腺癌を診断可能であることは、態様の利点である。
【0066】
本態様は、癌診断において有用な、血小板中の特異的プロテオームパターンを提供する。本明細書に提示する態様は、生物学的試料、例えば血液試料または他の血小板含有生物学的試料に基づいて、癌の、患者に優しい検出、予測および診断を可能にする。生物学的試料を用いることによって、疾患に関する情報を得る、この患者に優しくそして容易な方法は、組織生検の必要性を伴わない、癌診断法のための優れたツールである。本態様は、最小限の外傷およびそれと同時に、より正確な診断法を提供するであろう。例えば、生検の代わりに血液試料を使用するとまた、癌細胞を血液系に植え付けるリスクがなく、したがって疾患進行に診断が寄与する危険性を回避し、そして患者が今日の試料収集中に経験しうる外傷を回避するという利点も有するであろう。
【0067】
多様な態様を論じる前に、態様で用いられる多様な血小板由来バイオマーカーの短い考察を以下に続ける。
【0068】
ACTB、ベータ−アクチンは、ヒトにおいて同定されてきている6つの異なるアクチン・アイソフォームの1つである。これは、2つの非筋肉細胞骨格アクチンの1つである。アクチンは、細胞運動、構造および完全性に関与する、非常に保存されたタンパク質である。
【0069】
ACTN1、αアクチニン1は、ヒトにおいて、ACTN1遺伝子にコードされる。アルファ・アクチニンは、異なる細胞タイプで多数の役割を持つ、細胞骨格タンパク質およびアクチン結合タンパク質である。非筋肉細胞において、細胞骨格アイソフォームは、微小繊維束および接着型ジャンクションに沿って見られ、膜に作用する結合に関与する。
【0070】
ACTN4、αアクチニン4、Q96BG6に関しては、ACTN1に関する上記のアルファ・アクチニンの一般的な情報を参照されたい。
【0071】
AP4A、ジアデノシン四リン酸はまた、ビス(5−ヌクレオシル)−テトラホスファターゼ、P50583とも称され、推定上のアラーモンであり、天然に遍在性であり、細菌からヒトまでのすべてに共通である。アデノシンポリリン酸は、多数の生理学的影響を誘導可能である。二次メッセンジャーとしての分子の役割は、最近、LysRS−Ap4A−MITFシグナル伝達経路において発見されてきている。該分子はAp4Aを非対称に加水分解して、AMPおよびATPを生じる。ホメオスタシス維持に主要な役割を果たす(研究1Cに記載される)。
【0072】
CASP3、カスパーゼ3は、システイン−アスパラギン酸プロテアーゼ(カスパーゼ)ファミリーのメンバーである。カスパーゼの連続活性化は、細胞アポトーシスの実行期に中心的な役割を果たす。カスパーゼは不活性プロ酵素として存在し、保存されたアスパラギン酸残基でタンパク質分解的プロセシングを経て、大および小の2つのサブユニットを生じ、これらが二量体化して活性酵素を形成する。このタンパク質は、カスパーゼ6および7を切断し、そして活性化し;そして該タンパク質自体は、カスパーゼ8、9、および10によってプロセシングされ、そして活性化される。
【0073】
CAZA1、F−アクチン・キャッピング・タンパク質サブユニット・アルファ−1、P52907は、Ca
2+独立方式で、アクチンフィラメントの迅速に成長する端(反矢じり端)に結合し、それによってこれらの端でサブユニットの交換を遮断する。他のキャッピング・タンパク質、例えばゲルゾリンおよびセベリンとは異なり、これらのタンパク質は、アクチンフィラメントを切断しない。
【0074】
CLF1、コフィリン1は、広く分布する細胞内アクチン調節タンパク質であり、繊維状F−アクチンに結合し、そしてこれを脱重合させ、そしてpH依存方式で単量体G−アクチンの重合を阻害する。該分子は、細胞質から核へのアクチン−コフィリン複合体の転位置に関与する。
【0075】
CLU、クラスタリンはまた、アポリポタンパク質Jとも称され、細胞破片のクリアランスおよびアポトーシスに関与する、75〜80kDaのジスルフィド連結ヘテロ二量体タンパク質である。このタンパク質はいくつかの同義語を有する:二量体酸性糖タンパク質(DAGタンパク質)、テストステロン抑制前立腺メッセージ−2(TRPM−2)、硫酸化糖タンパク質−2(SGP−2)および補体溶解阻害剤(CLI)。
【0076】
CNDP2、細胞質ゾル非特異的ジペプチダーゼ、Q96KP4は、L−カルノシンを含む多様なジペプチドを加水分解するが、Cys−Glyに強い優先性を有する。アイソフォーム2は、肝細胞癌腫(HCC)細胞における腫瘍抑制剤として役割を果たしうる。
【0077】
CRKL、crk様タンパク質、P46109は、細胞内シグナル伝達を仲介しうる。Crkタンパク質の制御不全が、癌を含むヒト疾患、および病原体感染に対する感受性と関連することを示す証拠が増えてきている。
【0078】
ERP29、小胞体常在タンパク質29、P30040は、おそらく小胞体(ER)中のタンパク質のフォールディングに関与することによって、ER内の分泌性タンパク質のプロセシングに重要な役割を果たす。タンパク質ジスルフィド−イソメラーゼ・ファミリーに対する配列類似性があるが、ジスルフィド・イソメラーゼであるようではない。
【0079】
FERM、フェルミチン(fermitin)・ファミリーメンバー3はまた、FERMT3、キンドリング−3、MIG2様タンパク質またはunc−112関連タンパク質2とも称され、インテグリンに結合し、そして活性化する能力および機能を有する。フェルミチン・ファミリーメンバーは、一般的に、細胞接着、遊走、分化および増殖に役割を有する。FERMは、ホメオスタシスおよび血栓症の制御に重要な役割を有する。このタンパク質はまた、赤血球の膜骨格の維持を補助しうる。
【0080】
FIBG、フィブリノーゲン・ガンマ鎖、またはFGGは、二重の機能を有する:フィブリンに重合する単量体を生じ、そして血小板凝集において補因子として作用する。血液由来糖タンパク質であるフィブリノーゲンのガンマ構成要素は、非同一ポリペプチド鎖の3対の1つである。血管傷害後、フィブリノーゲンは、トロンビンによって切断されて、血餅中で最も豊富な構成要素であるフィブリンを形成する。さらに、フィブリノーゲンおよびフィブリンの多様な切断産物は、細胞接着および蔓延を制御し、血管収縮性または走化性活性を示し、そしていくつかの細胞タイプにとってはマイトジェンである。
【0081】
FLNA、フィラミンAはまた、フィラミン・アルファおよび作用性結合タンパク質280(ABP−280)とも称され、細胞に構造を与え、そして形状および動きを変化させる、タンパク質フィラメントのネットワーク(細胞骨格)を構築するのを補助する。FLNAは、アクチンと呼ばれる別のタンパク質に結合し、そしてアクチンが細胞骨格を構成するフィラメントの分岐ネットワークを形成するのを補助する。FLNAはまた、アクチンを多くの他のタンパク質に連結し、骨格および脳発生制御、血管形成、ならびに血液凝固を含む、細胞内の多様な機能を実行する。細胞骨格のリモデリングは、細胞形状および遊走の調節の中心である。FLNAは、インテグリン、膜貫通受容体複合体および二次メッセンジャーと相互作用することによって、アクチン細胞骨格の再構成を制御する、広く発現されるタンパク質である。態様において、FLNAは、FLNAタンパク質C末端の形である。
【0082】
FPPS、ファルネシルピロリン酸シンターゼは、ジメチルアリルピロリン酸およびイソペンテニルピロリン酸をファルネシルピロリン酸に変換する酵素である。該酵素はまた、ファルネシルピロリン酸シンターゼまたはファルネシル二リン酸シンターゼとも称される。
【0083】
GELS、ゲルゾリンは、アクチン脱重合因子、P06396とも称され、カルシウムに制御され、アクチンを調節するタンパク質であり、アクチン単量体またはフィラメントのプラス(または反矢じり)端に結合し、単量体交換を防止する(末端ブロッキングまたはキャッピング)。該分子はフィラメントへの単量体のアセンブリ(核形成)を促進するとともに、すでに形成されているフィラメントを切断しうる。ゲルゾリンは、繊毛形成において役割を果たす。
【0084】
GPIX、糖タンパク質IX、P14770。GPIb−V−IX複合体は、vWF受容体として機能し、そして血管へのvWF依存性血小板接着を仲介する。動脈循環における、損傷を受けた血管表面への血小板の接着は、止血における非常に重要な開始事象である。GP−IXは、GP−Ibの膜挿入および配向を提供しうる(研究1Cに記載)。
【0085】
GRP75、ミトコンドリア・ストレス−70タンパク質はまた、mtHSP70およびHSPA9とも称され、細胞増殖および細胞加齢の制御に関与する。該分子はまた、シャペロンとしても作用しうる。
【0086】
GSTO1、グルタチオンS−トランスフェラーゼ・オメガ−1は、ヒトにおいてGSTO1遺伝子によってコードされる酵素である。この遺伝子は、シータ・クラスのグルタチオンS−トランスフェラーゼ様(GSTTL)タンパク質ファミリーのメンバーをコードする。マウスにおいて、コードされるタンパク質は、小分子ストレス反応タンパク質として作用し、おそらく細胞レドックス・ホメオスタシスに関与する。このタンパク質は、デヒドロアスコルビン酸レダクターゼ活性を有し、そして酸化防止代謝の一部として、グルタチオン−アスコルビン酸サイクルにおいて機能しうる。
【0087】
HDHD2、ハロ酸脱ハロゲン酵素様加水分解酵素ドメイン含有タンパク質2は、ヒトにおいて、HDHD2遺伝子によってコードされる酵素である。
【0088】
HPタンパク質、Q6NSB4は、ペプチダーゼS1ファミリーに属する。配列長は、281AAであり、そしてHPタンパク質中のAA34〜281は、ハプトグロビン(P00738)中のAA 159〜406に対応する。
【0089】
HSP70、熱ショック70kDaタンパク質、Q53HF2は、ATP結合機能を有する。熱ショックタンパク質(HSP)またはストレスタンパク質は、すべての生物およびすべての生物のすべての細胞において、非常に保存され、そして存在する。選択したHSPはまた、シャペロンとしても知られ、タンパク質のフォールディング/アンフォールディング、多タンパク質複合体のアセンブリ、タンパク質の正しい細胞内区画への輸送/ソーティング、細胞周期調節およびシグナル伝達、ならびにストレス/アポトーシスに対する細胞の保護において、必須の役割を果たす。
【0090】
HSP71、熱ショックタンパク質71kDaタンパク質。
【0091】
HSP90AB1、熱ショックタンパク質HSP90−ベータは、ヒトにおいて、HSP90AB1遺伝子によってコードされるタンパク質である。
【0092】
ILEU、白血球エラスターゼ阻害剤はまた、LEI、P30740とも称され、好中球プロテアーゼ・エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ−3、キマーゼ、キモトリプシン、およびカリクレイン−3の活性を制御する。該分子はまた、グランザイムHの強力な細胞内阻害剤としても機能する。
【0093】
ITGA2B(またはITA2B)、インテグリン・アルファ−IIbはまた、ITGA2B、血小板糖タンパク質IIb(GPIIb)またはCD41、P08514とも称され、ヒトにおいてITGA2B遺伝子によってコードされる。インテグリンは、アルファ鎖およびベータ鎖で構成される、ヘテロ二量体膜内在性タンパク質である。インテグリン・アルファ−IIb/ベータ−3は、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、プラスミノーゲン、プロトロンビン、トロンボスポンジンおよびビトロネクチンの受容体である。活性化後、インテグリン・アルファ−IIb・ベータ−3は、可溶性フィブリノーゲンの結合を通じて、血小板/血小板相互作用を引き起こす。この工程は、迅速な血小板凝集を導き、これは、破裂した内皮細胞表面を物理的に塞ぐ。
【0094】
ITB3、インテグリン・ベータ−3はまた、血小板糖タンパク質IIIa(GPIIIa)またはCD61、P05106とも称される。インテグリンは、アルファ鎖およびベータ鎖で構成されるヘテロ二量体膜内在性タンパク質である。インテグリン・アルファ−V/ベータ−3は、サイトタクチン、フィブロネクチン、ラミニン、マトリックス・メタロプロテイナーゼ−2,オステオポンチン、オステオモジュリン、プロトロンビン、トロンボスポンジン、ビトロネクチンおよびフォン・ウィルブランド因子の受容体である。インテグリン・アルファ−IIb/ベータ−3は、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、プラスミノーゲン、プロトロンビン、トロンボスポンジンおよびビトロネクチンの受容体である。活性化後、インテグリン・アルファ−IIb/ベータ−3は、可溶性フィブリノーゲンの結合を通じて血小板/血小板相互作用を引き起こす。この工程は、迅速な血小板凝集を導き、これは、破裂した内皮表面を物理的に塞ぐ。
【0095】
ITGA6、インテグリン・アルファ−6。インテグリンのさらなる情報に関しては、上記のITGA2BおよびITB3を参照されたい。
【0096】
KAP3、cAMP依存性プロテインキナーゼ・サブユニットRII−ベータ、P31323は、細胞において、cAMPシグナル伝達に関与するcAMP依存性プロテインキナーゼの制御サブユニットである。II型制御鎖は、MAP2キナーゼを含む係留タンパク質に結合することによって、膜会合を仲介する。
【0097】
MLEC、マレクチンは、小胞体の炭水化物結合タンパク質であり、そしてタンパク質N−グリコシル化の初期段階の作用因子候補である。
【0098】
PHB、プロヒビチン、Q6PUJ7は、ヒトにおいて、PHB遺伝子によってコードされるタンパク質である。プロヒビチンは、それぞれ、酵母PHB1およびPHB2に対する類似性に基づいて、I型およびII型プロヒビチンと称される2つのクラスに分けられる。各生物は、プロヒビチン遺伝子の各タイプの少なくとも1コピーを有する。PHBは、細胞増殖の負の制御因子と考えられ、そして腫瘍抑制因子でありうる。
【0099】
RINI、リボヌクレアーゼ阻害剤、P13489は、RNASE1、RNASE2およびANGを阻害する。該分子は、レドックス・ホメオスタシスにおいて役割を果たしうる。
【0100】
SHLB1、エンドフィリン−B1アイソフォーム1、Q9Y371は、正常ミトコンドリア外膜ダイナミクスに必要とされうる。該分子は、特定の細胞において、コートマー仲介逆行性輸送に必要とされる。該分子は、非常に湾曲した膜に他のタンパク質を補充しうる。SHLB1は、膜融合を促進しうる。コードされるタンパク質は、Bcl−2ファミリーのアポトーシス促進性メンバー、Bcl−2会合Xタンパク質(Bax)と相互作用し、そしてアポトーシス・シグナル伝達経路の制御に関与しうる。このタンパク質はまた、ミトコンドリア形態の維持にも関与しうる。
【0101】
SNCA、アルファ−シヌクレインは、リン脂質およびタンパク質と相互作用する。シナプス前終末は、シナプス小胞として知られる区画から、神経伝達物質と呼ばれる化学メッセンジャーを放出する。神経伝達物質の放出は、ニューロン間のシグナルをリレーし、そして正常な脳機能に非常に重要である。該分子は、シナプス前終末におけるシナプス小胞の供給の維持に重要な役割を果たす。該分子はまた、随意および不随意運動の開始および停止の制御に非常に重要であるタイプの神経伝達分子であるドーパミン放出の制御も補助しうる。
【0102】
SPB6、セルピンB6は、ヒトにおいてSERPINB6遺伝子によってコードされるタンパク質である。該分子は、脳に存在するかまたは血液に由来するセリンプロテイナーゼの制御に関与しうる。該分子は、カテプシンG、カリクレイン−8およびトロンビンの阻害剤である。SPB6は、ストレス中のリソソーム内容物の漏洩に対する防御に、内耳中で重要な役割を果たす可能性もあり、そしてこの防御の喪失は、細胞死および感音性難聴を生じる。
【0103】
SRC、癌原遺伝子チロシンプロテインキナーゼSrc、P12931は、遺伝子転写、免疫反応、細胞接着、細胞周期進行、アポトーシス、遊走、および形質転換を含む、多様な範囲の生物学的活性を制御する、シグナル伝達経路に関与する。
【0104】
TBA、チューブリン・アルファ遍在性鎖に非常に類似であるチューブリン、B3KPS3。チューブリンは、球状タンパク質の小さいファミリーのいくつかのメンバーの1つである。チューブリン・スーパーファミリーには、5つの別個のファミリー、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、およびイプシロン−チューブリンが含まれる。チューブリンファミリーの最も一般的なメンバーは、微小管を構成するタンパク質である、α−チューブリンおよびβ−チューブリンである。各々は、およそ55キロダルトンの分子量を有する。微小管は、αおよびβ−チューブリンの二量体から組み立てられる。これらのサブユニットは、わずかに酸性であり、等電点は5.2〜5.8の間である。微小管を形成するため、αおよびβ−チューブリンの二量体は、GTPに結合し、そしてGTP結合状態の間に、微小管の(+)端上で組み立てられる[4]。β−チューブリン・サブユニットは、微小管のプラス端上で曝露される一方、α−チューブリン・サブユニットは、微小管のマイナス端上で曝露される。二量体が微小管内に取り込まれた後、β−チューブリン・サブユニットに結合したGTPの分子は、微小管原繊維に沿った二量体間接触を通じて、最終的にGDPに加水分解される。チューブリン二量体のβ−チューブリン・メンバーがGTPまたはGDPに結合するかどうかは、微小管における二量体の安定性に影響を及ぼす。GTPに結合した二量体は、微小管に組み立てられる傾向がある一方、GDPに結合したGDPはばらばらになる傾向があり;したがって、このGTPサイクルは、微小管の動的不安定性に関して本質的である。
【0105】
TBA4A、チューブリン・アルファ−4A鎖、P68336、上記TBAを参照されたい。
【0106】
THTM、3−メルカプトピルビン酸イオウ転移酵素はまた、MPST、TST2、およびロダネーゼ、P5325とも称され、シアニドまたは他のチオール化合物に硫黄イオンをトランスファーする。該分子はまた、弱いロダネーゼ活性も有する。THTMはシアニドを解毒し、そしてチオ硫酸生合成に必要とされる。該分子は酸化防止剤として作用する。システイン・アミノトランスフェラーゼ(CAT)と組み合わせて、システインの異化に寄与し、そして脳、網膜および血管内皮細胞における硫化水素の重要な産生因子である。硫化水素H
2Sは、重要なシナプス調節剤、シグナル伝達分子、平滑筋収縮因子および神経保護因子である。3MST/CAT経路によるその産生は、カルシウムイオンによって制御される。
【0107】
TLN1、タリン1、Q9Y490は、おそらく、形質膜への主要細胞骨格構造の連結に関与する。該分子は、細胞基層接触領域で、そしてリンパ球において細胞−細胞接触部で、濃縮される高分子量細胞骨格タンパク質である。
【0108】
TPM1、トロポミオシン・アルファ−1、F5H7S3。トロポミオシンは、広く分布するアクチン結合タンパク質である。
【0109】
TSG、腫瘍感受性遺伝子101タンパク質は、ユビキチン・コンジュゲート化酵素の見かけ上不活性な相同体の群に属する。該タンパク質は、腫瘍発生に関与する細胞質ゾル・リンタンパク質であるスタスミンと相互作用するコイルドコイル・ドメインを含有する。該タンパク質は、細胞増殖および分化に役割を果たし、そして負の増殖制御因子として作用する可能性もある。
【0110】
TUBB1チューブリン・ベータ1はまた、クラスVIおよびクラスVIベータ−チューブリン、QH4B7とも称され、ヒトにおいてTUBB1遺伝子によってコードされる。β−チューブリンは、ヘテロ二量体化し、そして集合して微小管を形成する2つのコアタンパク質ファミリーの1つである。微小管は、有糸分裂、形態形成、血小板形成、ならびに繊毛および鞭毛の可動性を含む、非常に多様な細胞プロセスに関与する。このタンパク質は、特異的に、血小板および巨核球において発現され、そして血小板前駆細胞産生および血小板放出に関与する可能性もある。
【0111】
VCL、ビンキュリンは、ヒトにおいて、VCL遺伝子によってコードされる。VCLは、細胞−細胞および細胞−マトリックス接合部と会合する細胞骨格タンパク質であり、そして細胞形態および自発運動において、重要な役割を果たしうる。
【0112】
WDR1、WDリピート含有タンパク質1は、ヒトにおいて、WDR1遺伝子によってコードされる。WDR1は、一般的に、9つのWDリピートを含有する。こうしたWDリピートは、いくつかの保存された残基を含有する、およそ30〜40のアミノ酸ドメインである。WDドメインは、一般的に、タンパク質−タンパク質相互作用に関与する。WDR1は、アクチン・フィラメントの分解誘導を補助しうる。
【0113】
態様の側面は、被験体が、良性病変または癌腫病変に罹患しているか決定する方法に関する。該方法は、被験体由来の生物学的試料における少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程を含む。この側面において、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーは、ACTN1、ACTN4、CRKL、ERP29、FERM、FIBG、FLNA、GELS、GRP75、HPタンパク質、HSP70、HSP71、ITGA2B、ITB3、RINI、SRC、TBA、TBA4A、THTM、TLN1、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される。該方法はまた、測定に基づいて、良性病変または癌腫病変に罹患しているか決定する工程も含む。
【0114】
したがって、上記に提示する群またはパネルに列挙する血小板由来バイオマーカーを用いて、被験体が良性病変または癌腫病変に罹患しているか区別することも可能である。これは、病変が良性である、すなわち一般的により有害でないか、または癌腫である、すなわち悪性であるか検証するかまたは少なくとも予測するため、病変、すなわち改変された細胞または組織を有する被験体に関して、これらの血小板由来バイオマーカーを使用可能であることを意味する。
【0115】
1つの態様において、方法は、測定に基づいて、被験体が良性病変あるいは卵巣癌または前立腺癌病変に罹患しているか決定する工程を含む。
【0116】
この態様において、上記に提示する血小板由来バイオマーカーの群またはパネルは、癌腫病変の好ましい例として、卵巣癌または前立腺癌病変を診断する際に使用するために特に適している。
【0117】
本明細書において、さらに開示するように、実験データによって、列挙する血小板由来バイオマーカーのいくつかは、病変タイプ、すなわち良性対癌腫または悪性の決定において、他の血小板由来バイオマーカーよりも重要でありうる。6つの最も重要な、こうした血小板由来バイオマーカーには、ERP29、ACTN4、HPタンパク質、TLN1、SRCおよびTHTMが含まれる。こうした態様において、方法は好ましくは、生物学的試料において、ERP29、ACTN4、HPタンパク質、TLN1、SRCおよびTHTMからなる群より選択される少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程を含む。
【0118】
したがって、特に、病変を良性または癌腫と分類することに関して、最も重要な情報を提供するのが、この限定される群由来の血小板由来バイオマーカーである。
【0119】
別のアプローチにおいて、方法において測定される各血小板由来バイオマーカーは、診断において、その特定の血小板由来バイオマーカーの重要性に基づいて決定され、そしてこうした重要性を示す、関連する加重値を有しうる。こうした加重は、以下にさらに記載するこれらの血小板由来バイオマーカーに関して列挙されるVIP(重要性変数)ランクに基づいて決定可能である。
【0120】
1つの態様において、方法は、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定する工程を含む。該方法はまた、それぞれの量を、対照被験体由来の生物学的試料におけるそれぞれの血小板由来バイオマーカーの量に相当するそれぞれの対照量と比較する工程も含む。該方法は、比較に基づいて、被験体が良性病変または癌腫病変に罹患しているか決定する工程をさらに含む。
【0121】
したがって、この態様において、それぞれの対照量は、好ましくは、測定しようとする各血小板由来バイオマーカーに関して決定される。対照被験体は、良性病変に罹患しているが、いかなる癌腫病変も欠くと診断される被験体であってもよい。あるいは、対照被験体は、癌腫病変に罹患しているが、いかなる良性病変も欠くと診断される被験体であってもよい。次いで、プロファイルが対照プロファイルと一致するか決定するため、被験体由来の生物学的試料において測定される血小板由来バイオマーカーのプロファイルを、対照被験体の対照プロファイルに比較する。次いで、こうした比較を用いて、被験体におけるいかなる病変も分類することも可能である。
【0122】
特定の態様において、方法は、測定に基づいて、被験体が良性病変または早期段階の癌種病変に罹患しているか決定する工程を含む。
【0123】
したがって、好ましい態様において、方法を用いて、相対的に有害でない良性病変および早期段階の癌腫病変の間を区別することも可能である。一般的に、先行技術分野の技術では、良性病変および早期段階の癌腫病変、すなわち何らかの転移の形成または癌腫の少なくとも有意な蔓延の前に、区別を行うことは非常に困難である。したがって、態様は、すでに転移の前に、癌腫病変から比較的無害の良性病変を区別する、早期癌検出における価値あるツールであろう。
【0124】
態様の別の側面は、被験体における良性および/または癌腫病変の存在を予測する方法に関する。該方法は、被験体由来の生物学的試料における少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程を含む。この側面において、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーは、AP4A、CAZA1、CNDP2、GPIX、ILEU、KAP3、PHB、SHLB1、SPB6およびTMP1からなる群より選択される。該方法はまた、測定に基づいて、被験体における良性および/または癌腫病変の存在を予測する工程も含む。
【0125】
この第二の群またはパネルにおいて、血小板由来バイオマーカーは、健康な被験体、すなわちいかなる良性または癌腫、すなわち悪性病変も欠く被験体、および良性病変、癌腫病変または良性および癌腫病変の両方を有する被験体の間を区別するために適している。
【0126】
この方法は、好適には、いかなる病変も検出する最初のスクリーニングとして使用可能であり、そして次いで、任意の検出された病変が良性または癌腫であるか分類する、先に記載する側面によって補完することも可能である。
【0127】
1つの態様において、方法は、測定に基づいて、被験体における良性、および/または卵巣癌または前立腺癌病変の存在を予測する工程を含む。したがって、この方法および列挙する血小板由来バイオマーカーは、癌腫の例として卵巣癌または前立腺癌と関連した使用に特に適している。
【0128】
1つの態様において、方法は、生物学的試料における少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定する工程を含む。該方法はまた、それぞれの量を、対照被験体由来の生物学的試料におけるそれぞれの血小板由来バイオマーカーの量に相当するそれぞれの対照量と比較する工程も含む。該方法は、比較に基づいて、被験体における良性および/または癌腫病変の存在を予測する工程をさらに含む。
【0129】
この態様において、対照被験体は、好ましくは、健康な被験体、すなわちいかなる良性または癌腫病変も欠く被験体である。比較は、好ましくは、血小板由来バイオマーカーのプロファイルの比較を用いる前記に論じているものと同様に行われる。
【0130】
態様のさらなる側面は、被験体における結腸直腸癌または膵臓癌の存在を予測する方法に関する。該方法は、被験体由来の生物学的試料における少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程を含む。この側面において、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーは、CTB、ACTN1、CASP3、CLF1、CLU、FPPS、GELS、GSTO1、HSP90AB1、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される。該方法はまた、前記測定に基づいて、被験体における結腸直腸癌または膵臓癌の存在を予測する方法も含む。
【0131】
したがって、この方法および列挙する血小板由来バイオマーカーを用いて、被験体が、癌腫の好ましい例として結腸直腸癌または膵臓癌に罹患していると診断することも可能である。したがって、血小板由来バイオマーカーを用いて、健康な被験体、すなわち良性または癌腫病変を伴わない被験体、および良性病変を伴う被験体を、結腸直腸癌または膵臓癌に罹患している被験体から区別することも可能である。
【0132】
1つの態様において、方法は、生物学的試料において、ACTB、ACTN1、CAPS3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、GSTO1、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程を含む。該方法はまた、測定に基づいて、被験体における結腸直腸癌の存在を予測する工程も含む。
【0133】
別の態様において、方法は、生物学的試料において、ACTB、ACTN1、CAPS3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、HSP90AB1、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程を含む。該方法はまた、測定に基づいて、被験体における膵臓癌の存在を予測する工程も含む。
【0134】
したがって、血小板由来バイオマーカーの本態様で使用可能な先に列挙する群のうち、22が、結腸直腸癌および膵臓癌の両方に共通である。さらに、血小板由来バイオマーカーHSP90AB1は、膵臓癌にユニークであるようであり、一方、GSTO1は結腸直腸癌にユニークであるようである。
【0135】
1つの態様において、方法は、生物学的試料における少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定する工程を含む。該方法はまた、それぞれの量を、対照被験体由来の生物学的試料におけるそれぞれの血小板由来バイオマーカーの量に相当するそれぞれの対照量と比較する工程も含む。該方法は、比較に基づいて、被験体における結腸直腸癌または膵臓癌の存在を予測する工程をさらに含む。
【0136】
この態様において、対照被験体は、好ましくは健康な被験体、すなわちいかなる良性または癌腫病変も欠く被験体、または良性病変を有するが、いかなる癌腫病変も欠く被験体である。あるいは、対照被験体は、結腸直腸癌または膵臓癌に罹患していると診断される被験体であってもよい。比較は、好ましくは、血小板由来バイオマーカーのプロファイルの比較を用いて、前述に論じているものと同様に行われる。
【0137】
さらに、態様の別の側面は、被験体における癌腫の存在を予測する方法に関する。該方法は、被験体由来の生物学的試料における少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する工程を含む。この側面において、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーは、ACTN1、GELS、ITGA2B、ITB3、PHB、RINI、SPB6、TBA4A、TLN1、TBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される。該方法はまた、測定に基づいて、被験体における癌腫の存在を予測する工程も含む。
【0138】
したがって、上記に列挙する血小板由来バイオマーカーのパネルまたは群は、被験体において、早期段階の癌腫を検出する、すなわち非常に早期の段階(病期IまたはII)で、そして転移前に、いかなるこうした癌腫瘍も検出するために使用可能である。こうした例において、方法は、測定に基づいて、被験体における早期段階の癌腫の存在を予測する工程を含む。
【0139】
癌腫の早期段階のこうした検出は、態様にしたがって特に好適である。したがって、この方法を用いて、広範な転移の前に、そして癌が好ましくは単一の部位になお限定される際に、被験体において癌腫を検出することが可能である。この理由は、後期段階の癌を治療するのに比較して、早期段階の癌に対して治療を開始した際、癌治療がはるかにより成功するためである。
【0140】
特定の態様において、方法は、測定に基づいて、被験体における上皮癌の存在を予測する、好ましくは、測定に基づいて、被験体における早期段階の上皮癌の存在を予測する工程を含む。
【0141】
こうした癌腫および上皮癌の現在好ましい例には、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌および膵臓癌が含まれる。
【0142】
態様において、方法は、生物学的試料における前記の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定する工程を含む。該方法はまた、それぞれの量を、対照被験体由来の生物学的試料におけるそれぞれの血小板由来バイオマーカーの量に相当するそれぞれの対照量と比較する工程も含む。該方法は、比較に基づいて、被験体における癌腫の存在を予測する工程をさらに含む。
【0143】
対照被験体は、好ましくは、健康な被験体または良性病変に罹患している被験体である。比較は、好ましくは、血小板由来バイオマーカープロファイルの比較を用いる前記に論じているものと同様に行われる。
【0144】
少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定する生物学的試料は、血小板を含むいかなる生物学的試料であってもよい。本明細書において、生物学的試料は、本明細書に記載する試験の単数または複数のターゲット化合物を所持しうる被験体の体から採取したいかなる物質も指し、組織試料および生物学的液体の両方、例えば血液試料、唾液試料、尿試料等も含まれる。代表的な態様において、生物学的試料は、血液試料、抽出血小板試料等である。血液試料は、本明細書において、検出可能なレベルの血小板由来バイオマーカーを含有しうる、全血または任意のその分画(例えば血漿、血清)を指し(バイオマーカーが、前記分画を得る全血中に存在する場合)、そして特定の態様において、血漿試料または血小板試料を指す。
【0145】
特定の例の態様において、方法は以下の:
a)被験体の生物学的試料、好ましくは血液試料から血小板を単離し;
b)a)で単離した血小板から血小板タンパク質を抽出し;
c)b)で抽出した血小板タンパク質を、二次元ゲル電気泳動(2−DE)ゲル上で分離し;
d)2−DEゲル上で少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを同定し;そして
e)2−DEゲル上、d)で同定した少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーの量を測定する
工程を含む。
【0146】
特定の態様において、単離工程a)は、1またはそれより多い、典型的には3の遠心分離工程を含む。第一の遠心分離工程において、血液試料を遠心分離して、赤血球のペレットおよび血漿を形成する。生物学的試料が血漿試料である場合、この遠心分離工程は省略可能である。第二の遠心分離において、血漿を遠心分離して、ペレット、および血小板をほとんど含まない血漿を形成する。場合による態様において、血小板が豊富であるペレットを再懸濁し、そして洗浄し、そして第三の遠心分離工程に供して、純粋な血小板が豊富なペレット、および廃棄する上清を形成する。
【0147】
工程b)における血小板からの血小板タンパク質の抽出を、周知の溶解および抽出法にしたがって、典型的には溶解緩衝液を用いて、実行することも可能である。生じた血小板タンパク質溶解物を、好ましくは遠心分離工程に供して、血小板タンパク質を含む上清および廃棄物ペレットを形成する。
【0148】
工程c)は、好ましくは等電点および質量に基づいて血小板タンパク質を分離する2−DEを行う。したがって、第一の分離工程は、等電点電気泳動であり、ここで血小板タンパク質は等電点に基づいて分離される。第二の分離工程は、SDS−PAGEを用いて分子量または質量に基づいて、血小板タンパク質を分離する。
【0149】
2−DEゲル上の血小板タンパク質は、工程d)において、適切な血小板由来バイオマーカー(単数または複数)の同定を可能にするようマークされ、そして続いて、工程e)において血小板由来バイオマーカー(単数または複数)の量が測定される。多様なタンパク質マーキングプロトコルおよび方法、例えば銀染色が使用可能である。こうした場合、銀染色は、好ましくは、質量分析適合染色プロトコルを用いて行われる。次いで、染色された血小板由来バイオマーカーをスキャンして、そして少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を、工程e)において染色された2−DEゲルの画像から決定してもよい。
【0150】
方法工程a)からe)の変形が可能であり、そして態様の範囲内である。例えば、適切なバイオマーカー(単数または複数)を同定し、そして定量化するために、それぞれの少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーに特異的に結合する抗体を使用してもよい。酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、質量分析、パネル試験(例えば多重化Luminex(登録商標)微小球体試験)および多重反応監視(MRM)が、2−DEの代わりにまたは2−DEを補完するものとして使用可能な別のまたはさらなる技術の例である。1つのこうした代替態様を以下に記載する。
【0151】
特定の例の態様において、方法は、以下の:
a)被験体の生物学的試料、好ましくは血液試料から血小板を単離し;
b)a)で単離した血小板から血小板タンパク質を抽出し;
c)b)由来の抽出血小板タンパク質を、抗体に基づくアッセイプラットフォームに適用し、前記アッセイプラットホームには、少なくとも2つのバイオマーカーに対して向けられる抗体が含まれ;
d)c)由来のアッセイからシグナルを測定し;診断装置において、アルゴリズムを用いて測定されたシグナルを分析し、そして診断評価に関する転帰を提示する
工程を含む。
【0152】
特定の態様において、単離工程a)は、1またはそれより多い、典型的には3の遠心分離工程を含む。第一の遠心分離工程において、血液試料を遠心分離して、赤血球のペレットおよび血漿を形成する。生物学的試料が血漿試料である場合、この遠心分離工程は省略可能である。第二の遠心分離において、血漿を遠心分離して、ペレット、および血小板をほとんど含まない血漿を形成する。場合による態様において、血小板が豊富であるペレットを再懸濁し、そして洗浄し、そして第三の遠心分離工程に供して、純粋な血小板が豊富なペレット、および廃棄する上清を形成する。
【0153】
工程b)における血小板からの血小板タンパク質の抽出を、周知の溶解および抽出法にしたがって、典型的には溶解緩衝液を用いて、実行することも可能である。生じた血小板タンパク質溶解物を、好ましくは遠心分離工程に供して、血小板タンパク質を含む上清および廃棄物ペレットを形成する。
【0154】
工程c)は、好ましくは、選択したアッセイタイプに適合した特異的パネルにおいて用いられるバイオマーカーに対して特異的に作製されている抗体に基づいて、多重化アッセイ型ELISA(またはLuminex)を実行する。パネルは、選択した少なくとも2つのバイオマーカーに向けられる抗体からならなければならない。
【0155】
工程d)において、抗体およびb)由来の血小板タンパク質内のバイオマーカーの間の結合相互作用からのシグナルの定量的読み取りが、装置中で行われる。シグナルは、生じた蛍光シグナル、酵素反応に基づく発色、または他の生物学的リポート系由来であってもよい。次いで、シグナルを装置中でプロセシングして、そしてより具体的には、これは、選択したバイオマーカーパネルに関して特定されるようなアルゴリズムを用いたソフトウェアである。次いで、プロセシングしたシグナルの結果を、0〜1の間の値として示す。次いで、値を、特定の癌診断および癌の特定のタイプの診断で用いられる各バイオマーカーパネルに関して決定される値レベルに基づいて、判断する。所定のPLSモデルによってアルゴリズムを生成し(適切な多変量ソフトウェア、例えばSIMCA P v13、Umetrics ABを用いる)、そして該アルゴリズムは、PLSモデリングの技術分野における科学者に周知である方法にしたがって、0〜1の予測スコアを提供するであろう(例えば:Ottervald J.ら, 多発性硬化症:新規CSFバイオマーカーの同定および臨床的評価 J Proteomics. 2010. April 18:73(6):1117−1132を参照されたい)。予測モデルは、各新規試料に関して、0〜1の間の値を提供し、ここで、>0.5の値は癌を示し、そして、<0.5の値は良性病変を示す。
【0156】
パネル試験または多変量アッセイは、何らかの方式で関連する個々の実験室試験の群を指し、何らかの方式には、限定されるわけではないが、検出しようと設計される医学的状態(例えば癌)、標本タイプ(例えば血液)、および試験が使用する方法論(例えば、単数または複数のバイオマーカータンパク質の改変されたレベル)が含まれる。
特定の例において、方法の態様は、以下の:
a)被験体の生物学的試料、好ましくは血液試料から血小板を単離し;
b)a)で単離した血小板から血小板タンパク質を抽出し;
c)少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの血小板由来バイオマーカーに特異的に結合するそれぞれの抗体を用いて、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーの量を測定する
工程を含む。
【0157】
本態様は、非侵襲性癌診断に、推測される癌および遺伝性徴候の臨床診断に、癌治療の経過観察に、そして潜在的な再発の監視に、そしてスクリーニングに使用する、客観的ツールとして使用可能である。診断法はまた、現在および将来の治療レジメンとともに、コンパニオン診断法として、そして早期スクリーニングのためにも、潜在的に使用可能である。ツールは、癌状態の予測/決定/評価、および/または癌進行状態の予測/決定/評価のため、悪性でありうる病変の検出に使用可能である(健康な被験体および良性または悪性病変を持つ被験体の間を区別する)。
【0158】
被験体において、癌状態を予測可能である、すなわち転移が測定可能である前に、癌の早期診断が可能であり、そして良性病変を排除することが、態様の特定の利点である。
【0159】
態様のさらなる利点は、被験体において、ありうる悪性病変の発生を検出するかまたは予測することである。別の利点は、ありうる悪性病変が発生した被験体において、癌(腫瘍)状態/疾患状態(良性または悪性病変)を予測することである。さらにさらなる利点は、癌進行の形で、癌状態を予測して、悪性癌を持つ被験体が疾患の早期段階または後期段階であるかを決定することである。特定の態様において、病変は被験体に存在するが、非常に小さいかまたはよく限局されているため、良性病変または早期悪性病変(腫瘍)として区別することが困難である。生検を採取する有害な方法の代わりに、態様の非侵襲性の方法を用いて、良性病変および早期悪性病変(腫瘍)の間の区別を可能にし、したがって、早期段階で悪性癌の診断を実行することも可能である。
【0160】
態様の特定の利点は、診断がより後期の段階であれば、多かれ少なかれ治療不能である、非常に悪性である癌、例えば卵巣癌、膵臓癌および結腸直腸癌を早期段階で診断することが可能であることである。さらなる利点は、こうした診断を、侵襲性の方法、例えば生検採取の必要を伴わずに実行することである。特に、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌および膵臓癌を含む上皮癌が診断される。血小板由来バイオマーカーのパネルがその代わりに用いられ、そしてこれらのマーカーの2つまたはそれより多くの発現を分析することによって、病変の悪性度を予測する/診断することも可能である。
【0161】
特定の利点は、早期に、非常に悪性である癌を診断する、すなわち小さいまたはよく限局された病変を有する被験体が、良性病変または早期悪性病変を有するか決定し、そしてこれを非侵襲性に行うことが可能であることである。こうした非常に悪性である癌には、卵巣癌、膵臓癌および結腸直腸癌が含まれる。また、生検の必要なしに前立腺癌を診断可能であることは、本態様の利点である。
【0162】
本態様は、良性または悪性細胞/組織/病変の発生の検出、癌状態予測、癌の診断、ならびに早期癌および進行した癌の間の区別に有用な、血小板における特定のプロテオームパターンを提供する。本明細書に提示する態様は、血液試料または他の血小板含有生物学的試料に基づいて、癌の、患者に優しい検出、予測および診断を可能にする。生物学的試料、例えば血液試料を用いることによって、疾患に関する情報を得る、この患者に優しくそして容易な方法は、組織生検の必要性を伴わない、癌診断法のための優れたツールである。本態様は、最小限の外傷およびそれと同時に、より正確な診断法を提供するであろう。例えば、生検の代わりに血液試料を使用するとまた、癌細胞を血液系に植え付けるリスクがなく、したがって疾患進行に診断が寄与する危険性を回避し、そして患者が今日の試料収集中に経験しうる外傷を回避するという利点も有するであろう。
【0163】
態様の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーは、好ましくは、生物学的試料中に存在する血小板から得られる少なくとも2つのタンパク質である。特定の態様において、少なくとも2つのタンパク質は、血小板に由来する、すなわち血小板から得られうる、非血管新生性タンパク質である。特定の態様において、血小板由来バイオマーカーは、以下のタンパク質、ACTB、ACTN1、ACTN4、AP4A、CASP3、CAZA1、CFL1、CLU、CNDP2、CRKL、ERP29、FERM、FIBG、FLNA、FPPS、GELS、GPIX、GRP75、GSTO1、HDHD2、HPタンパク質、HSP70、HSP71、HSP90AB1、ILEU、ITGA2B、ITB3、ITGA6、KAP3、MLEC、PHB、RINI、SHLB1、SNCA、SPB6、SRC、TBA、TBA4A、THTM、TLN1、TMP1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなるパネルまたは群より選択される。
【0164】
卵巣癌および前立腺癌において潜在的に悪性でありうる、改変された細胞/組織/病変、すなわち良性および/または悪性、特に癌腫、病変の発生を予測する際、少なくとも2つのバイオマーカーは、AP4A、CAZA1、CNDP2、GPIX、ILEU、KAP3、PHB、SHLB1、SPB6およびTMP1からなる群より選択されるべきである。
【0165】
癌発生に関連する癌状態を予測する際、すなわち、現在の病変が良性または悪性であるか決定する際、あるいは癌進行に関連する癌状態を予測する(癌腫が早期または進行した段階であるか決定する)際、すなわち卵巣癌または前立腺癌を診断する際、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーは、以下のタンパク質からなる群より選択される:ACTN1、ACTN4、CRKL、ERP29、FERM、FIBG、FLNA、GELS、GRP75、HPタンパク質、HSP70、HSP71、ITGA2B、ITB3、RINI、SRC、TBA、TBA4A、THTM、TLN1、TUBB1、VCLおよびWDR1。
【0166】
膵臓癌、癌または癌でない状態(健康)を診断する際、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーは、以下のタンパク質、ACTB、ACTN1、CASP3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、HSP90AB1、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される。
【0167】
結腸直腸癌、癌または癌でない状態(健康)を診断する際、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーは、以下のタンパク質、ACTB、ACTN1、CASP3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、GSTO1、HDHD2、ITA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される。
【0168】
また、診断しようとする癌に関係なく使用可能な、12の血小板由来バイオマーカーのパネルがある。したがって、ACTN1、GELS、ITGA2B、ITB3、PHB、RINI、SPB6、TBA4A、TLN1、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる前記パネルを用いて、結腸直腸癌、卵巣癌、膵臓癌、および前立腺癌を診断可能である。膵臓癌および/または結腸直腸癌を診断する際、22のマーカーのパネルが同一であることが見出されてきており、一方、2つの膵臓特異的マーカーおよび2つの結腸直腸特異的マーカーもまた見出されてきている。結腸直腸癌および膵臓癌両方を診断するのに適したマーカーのパネルは、ACTB、ACTN1、CASP3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1である。膵臓癌のみを診断する場合、ACTB、ACTN1、CASP3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、HSP90AB1、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる23のバイオマーカーのパネルを用いてもよい。結腸直腸癌のみを診断する場合、ACTB、ACTN1、CASP3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、GSTO1、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる23のバイオマーカーのパネルを用いてもよい。
【0169】
したがって、態様の範囲において、いくつかのバイオマーカーパネルがある。12のバイオマーカーの1つのバイオマーカーパネルが、癌のタイプに関わらず、癌状態を決定するために適用可能である。このパネルは、ACTN1、GELS、ITGA2B、ITB3、PHB、RINI、SPB6、TBA4A、TLN1、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる。10のバイオマーカーの別のバイオマーカーパネルは、健康な被験体、ならびに卵巣癌および/または前立腺癌における病変(良性または悪性)を持つ被験体の間を区別し、そしてAP4A、CAZA1、CNDP2、GPIX、ILEU、KAP3、PHB、SHLB1、SPB6およびTMP1からなる。卵巣癌または前立腺癌における癌状態(良性対悪性、または早期対進行)を予測するための23のバイオマーカーのさらなるバイオマーカーパネルは、ACTN1、ACTN4、CRKL、ERP29、FERM、FIBG、FLNA、GELS、GRP75、HPタンパク質、HSP70、HSP71、ITGA2B、ITB3、RINI、SRC、TBA、TBA4A、THTM、TLN1、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる。22のバイオマーカーのさらなるパネルは、結腸直腸癌および/または膵臓癌状態を予測するために使用可能であり、そしてACTB、ACTN1、CASP3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる。結腸直腸癌状態のみを予測するため、上述の22のバイオマーカーに、バイオマーカーGSTO1を補ったパネルである、23のバイオマーカーのパネルが使用可能であり、そして膵臓癌状態のみを予測するため、上述の22のバイオマーカーに、バイオマーカーHSP90AB1を補ったパネルである、23のバイオマーカーのパネルが使用可能である。
【0170】
1つの態様において、それぞれの群またはパネルの2つの血小板由来バイオマーカーが、それぞれの方法において測定される。他の態様において、それぞれの群の血小板由来バイオマーカーのすべてまたは少なくとも大部分を含む、2より多い血小板由来バイオマーカー、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または23(それぞれの群中の血小板由来バイオマーカーの数に応じる)の血小板由来バイオマーカーを測定する。
【0171】
被験体における、良性および/または癌腫、例えば卵巣癌または前立腺癌病変の発生を予測するため、測定する血小板由来バイオマーカーの数は、AP4A、CAZA1、CNDP2、GPIX、ILEU、KAP3、PHB、SHLB1、SPB6およびTMP1のうちの少なくとも2から少なくとも10バイオマーカーの範囲の任意の数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10バイオマーカーであってもよい。
【0172】
卵巣癌または前立腺癌に罹患している被験体における癌状態を予測するため、測定する血小板由来バイオマーカーの数は、ACTN1、ACTN4、CRKL、ERP29、FERM、FIBG、FLNA、GELS、GRP75、HPタンパク質、HSP70、HSP71、ITGA2B、ITB3、RINI、SRC、TBA、TBA4A、THTM、TLN1、TUBB1、VCLおよびWDR1のうちの少なくとも2から少なくとも23バイオマーカーの範囲の任意の数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23バイオマーカーであってもよい。
【0173】
膵臓癌に罹患している被験体における癌状態を予測するため、測定する血小板由来バイオマーカーの数は、ACTB、ACTN1、CASP3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、HSP90AB1、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1のうちの少なくとも2から少なくとも23バイオマーカーの範囲の任意の数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23バイオマーカーであってもよい。
【0174】
結腸直腸癌に罹患している被験体における癌状態を予測するため、測定する血小板由来バイオマーカーの数は、ACTB、ACTN1、CASP3、CFL1、CLU、FPPS、GELS、GSTO1、HDHD2、ITGA2B、ITB3、ITGA6、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、TBA4A、TLN1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1のうちの少なくとも2から少なくとも23バイオマーカーの範囲の任意の数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23バイオマーカーであってもよい。
【0175】
膵臓癌、卵巣癌、結腸直腸癌または前立腺癌に罹患している被験体における癌状態を予測するため、測定する血小板由来バイオマーカーの数は、ACTN1、GELS、ITGA2B、ITB3、PHB、RINI、SPB6、TBA4A、TLN1、TUBB1、VCLおよびWDR1のうちの少なくとも2から少なくとも12バイオマーカーの範囲の任意の数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12バイオマーカーであってもよい。
【0176】
これらの態様のいずれを、少なくとも1つの他のバイオマーカー、好ましくは少なくとも1つの他の血小板由来バイオマーカーの測定と組み合わせてもよい。次いで、癌状態の予測は、好ましくは、態様の少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーの測定した量、および少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定した量(単数または複数)に基づく。
【0177】
本態様は、特に癌腫に適用可能である。したがって、癌は、好適には、癌腫または上皮癌である。態様を適用可能な癌タイプの好ましい例には、卵巣癌および/または前立腺癌が含まれる。こうした場合、癌状態は、卵巣癌(または前立腺癌)の存在対卵巣癌の非存在(または前立腺癌の非存在)、すなわち良性病変のみ、あるいは進行した卵巣癌(または進行した前立腺癌)対早期卵巣癌(または早期前立腺癌)であってもよい。また、被験体における改変された細胞/組織(病変)の存在が予測可能であり、被験体を健康な個体または改変された細胞/組織(良性または悪性病変)と分類する。態様はまた、膵臓癌または結腸直腸癌にも適用可能であり、癌および非癌、良性または悪性病変/腫瘍の間を区別する。
【0178】
本発明の方法は、本発明記載のバイオマーカーパネルから、1またはいくつかのバイオマーカーを測定する工程を含む。好ましくは、少なくとも2つ、またはそれより多いバイオマーカーを測定する。バイオマーカーは、示差的に貢献する可能性もあり、そして列挙する際、VIP値を用いてもよい。最高のVIPランキングを持つものは、最大に貢献し、そして次いで下降する。予測に用いられる量に応じて、予測の信頼性は増大する。したがって、用いるマーカーの数は、予測の望ましい信頼性に基づいて選択可能である。
【0179】
態様の別の側面は、被験体または患者、好ましくは哺乳動物被験体、そしてより好ましくはヒト被験体のための癌治療レジメンを選択する方法に関する。該方法は、上記にしたがって、被験体が良性病変または癌腫病変に罹患しているか決定するか;上記にしたがって、前記被験体における良性および/または癌腫病変の存在を予測するか;上記にしたがって、前記被験体における結腸直腸癌または膵臓癌の存在を予測するか;あるいは上記にしたがって、前記被験体における癌腫の存在を予測する工程を含む。該方法はまた、被験体が良性病変または癌腫病変に罹患しているかに基づいて;被験体における良性および/または癌腫病変の予測される存在に基づいて;被験体における前記結腸直腸癌または膵臓癌の予測される存在に基づいて;あるいは被験体における癌腫の予測される存在に基づいて、被験体のための治療レジメンを選択する工程も含む。
【0180】
したがって、態様にしたがって、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーに基づいて決定されるかまたは予測される癌状態/疾患状態を用いて、被験体に適した治療レジメンを同定することも可能である。
【0181】
例えば、被験体に関して予測される癌状態/疾患状態は、癌または癌ではない(悪性または良性)のいずれかである。被験体に関して予測される癌状態が癌である場合、被験体のために抗癌治療レジメンを選択する。こうした抗癌治療レジメンの限定されない例には、化学療法、手術および/または放射線照射が含まれる。被験体に関して予測される癌状態/疾患状態が癌でないことを示す場合、一般的には癌治療レジメンは必要ではない。
【0182】
この態様において、治療レジメンの選択は、癌状態/疾患状態に基づいて、抗癌治療レジメンまたは非抗癌治療レジメンを選択する工程を含む。
【0183】
別の例において、被験体に関して予測される癌状態は、早期癌または進行性癌のいずれかである。こうした場合、抗癌治療レジメンを、特定の癌状態に関して、すなわち早期または進行性に関して、最も効率的であるように選択してもよい。例えば、早期癌には、場合によってホルモン療法などの穏やかな薬剤療法で補った、手術が、適切な治療レジメンでありうる。進行した癌に適した治療レジメンは、場合によって手術およびアジュバント療法で補った、典型的には全身療法、例えば化学療法および/または放射線照射である。
【0184】
この態様において、治療レジメンの選択は、癌状態に基づいて、早期癌または進行性癌のいずれかのための治療レジメンを選択する工程を含む。
【0185】
さらなる例において、被験体に関して予測される癌状態/疾患状態は、良性病変または悪性腫瘍のいずれかである。こうした場合、抗癌治療レジメンを、特定の癌状態/疾患状態、すなわち良性または悪性に関して、最も効率的であるように選択してもよい。例えば、手術または実際に治療をまったく行わないことが、良性病変に適した治療レジメンでありうる。悪性腫瘍に適した治療レジメンは、場合によって手術およびアジュバント療法で補った、典型的には全身療法、例えば化学療法および/または放射線照射である。
【0186】
この態様において、治療レジメンの選択は、癌状態/疾患状態に基づいて、良性病変または悪性腫瘍のいずれかのための治療レジメンを選択する工程を含む。
【0187】
態様のさらなる側面は、癌に罹患している被験体を治療する方法に関する。態様において、該方法は、被験体由来の生物学的試料における、ITGA2B、WDR1、ACTN1、FLNA、FERMT3、TUBB1およびVCL、または上記に定義される任意の他のバイオマーカーパネルからなる群より選択される各血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定する工程を含む。FERMT3がまた、本明細書において、FERMとも示されることに注目されたい。方法はまた、量に基づく状態値を計算する工程も含む。該方法はさらに、状態値が定義するカットオフ値を超す場合、抗癌治療レジメンで被験体を治療する工程を含む。
【0188】
研究1Aにしたがった特定の態様において、状態値を計算する工程は、上記の等式(1)にしたがって、状態値を計算する工程を含む。被験体の治療は、次いで、好ましくは、状態値が0.25〜0.30の範囲内、好ましくは0.29のカットオフ値を超える場合、抗癌治療レジメンで被験体を治療する工程を含む。
【0189】
研究1Aにしたがった別の態様において、癌に罹患している被験体を治療する方法は、被験体由来の生物学的試料において、ITGA2B、WDR1、ACTN1、FLNA、FERMT3、TUBB1およびVCL、または上に定義するバイオマーカーパネルの任意の他のものからなる群より選択される少なくとも2つ、好ましくは各々の血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定する工程を含む。該方法はまた、それぞれの参照量と、少なくとも2つ、好ましくは各々の血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を比較する工程も含む。該方法は、FERMT3、TUBB1、VCLおよび塩基性ITGA2Bのそれぞれの量の少なくとも1つが、FERMT3、TUBB1、VCLおよび塩基性ITGA2Bのそれぞれの参照量を超えている、そして/またはWDR1、FLNA、ACTN1および酸性ITGA2Bのそれぞれの量の少なくとも1つが、WDR1、FLNA、ACTN1および酸性ITGA2Bのそれぞれの参照量未満である場合、被験体を抗癌治療レジメンで治療する工程をさらに含む。
【0190】
研究1Aにしたがった特定の態様において、被験体の治療は、FERMT3、TUBB1、VCLおよび塩基性ITGA2Bのそれぞれの量が、FERMT3、TUBB1、VCLおよび塩基性ITGA2Bのそれぞれの参照量を超える場合、そしてWDR1、FLNA、ACTN1および酸性ITGA2Bのそれぞれの量が、WDR1、FLNA、ACTN1および酸性ITGA2Bのそれぞれの参照量未満である場合、抗癌治療レジメンで被験体を治療する工程を含む。
【0191】
本明細書に先に論じるように、対照群から、または被験体自体からあらかじめ、それぞれの参照量を決定することも可能である。
【0192】
態様のさらなる側面は、上に提示する群のいずれかから選択した少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを支持するよう設定された固体支持体を含むキットである。キットはまた、被験体由来の生物学的試料から得られる少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定するため、固体支持体を用いるための使用説明書も含む。キットは、被験体が良性病変または癌種病変に罹患しているか決定するため;被験体における良性および/または癌腫病変の存在を予測するため;被験体における結腸直腸癌または膵臓癌の存在を予測するため;または用いる血小板由来バイオマーカーの特定の群に応じて、被験体における癌腫の存在を予測するための使用説明書をさらに含む。
【0193】
特定の態様において、キットの固体支持体は、2−DEゲルである。固体支持体を用いるための使用説明書は、好ましくは、2Dゲル電気泳動を行って、等電点および質量に基づいて、生物学的試料から血小板タンパク質を分離するための使用説明書を含む。
【0194】
固体支持体を用いるための使用説明書は、好ましくは、固体支持体を用いて、生物学的試料由来の群における各血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定するための使用説明書を含む。
【0195】
態様において、癌状態/疾患状態を予測するための使用説明書は、上記の等式(1)に基づく状態値を計算するための使用説明書を含んでもよい。癌状態/疾患状態を予測するための使用説明書はまた、好ましくは、状態値および定義するカットオフ値の比較に基づいて、癌状態/疾患状態を予測するための使用説明書も含む。定義するカットオフ値は、好ましくは、0.25〜0.30の範囲内、より好ましくは0.29に等しい。
【0196】
上に定義するキットを適応させて、前述で論じた方法側面のいずれにしたがって用いてもよい。こうした場合、癌状態/疾患状態を予測するための使用説明書は、典型的には、測定に基づいて、被験体における良性または悪性病変/腫瘍の存在を検出するかまたは予測するための使用説明書、被験体における癌状態/疾患状態と測定を相関させるための使用説明書、測定に基づいて、被験体を診断するための使用説明書、測定に基づいて、被験体における癌の存在を検出するための使用説明書、測定に基づいて、被験体の癌が早期であるかまたは進行しているか決定するための使用説明書、あるいは測定に基づいて、被験体の病変/腫瘍が良性または悪性であるか決定するための使用説明書によって置き換えられる。あるいは、キットは、癌状態/疾患状態を予測するための使用説明書に加えて、癌状態/疾患状態に基づいて、被験体のための治療レジメンを選択するための使用説明書もまた含む。
【0197】
態様の関連する側面は、ACTB、ACTN1、ACTN4、AP4A、CASP3、CAZA1、CFL1、CLU、CNDP2、CRKL、ERP29、FERM、FIBG、FLNA、FPPS、GELS、GPIX、GRP75、GSTO1、HDHD2、HPタンパク質、HSP70、HSP71、HSP90AB1、ILEU,ITGA2B、ITB3、ITGA6、KAP3、MLEC、PHB、RINI、SHLB1、SNCA、SPB6、SRC、TBA、TBA4A、THTM、TLN1、TMP1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される血小板由来バイオマーカーを支持するよう設定された固体支持体を含むキットを定義する。
【0198】
該キットはまた、固体支持体を用いて被験体由来の生物学的試料における群中の各血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定するための使用説明書も含む。該キットはまた、量に基づいて状態値を計算するための使用説明書、および状態値が例えば定義するカットオフ値を超える場合、抗癌治療レジメンで被験体を治療するための使用説明書も含む。
【0199】
別の態様において、キットは、被験体由来の生物学的試料において、ACTB、ACTN1、ACTN4、AP4A、CASP3、CAZA1、CFL1、CLU、CNDP2、CRKL、ERP29、FERM、FIBG、FLNA、FPPS、GELS GPIX、GRP75、GSTO1、HDHD2、HPタンパク質、HSP70、HSP71、HSP90AB1、ILEU、ITGA2B、ITB3、ITGA6、KAP3、MLEC、PHB、RINI、SNCA、SPB6、SRC、SHLB1、TBA、TBA4A、THTM、TLN1、TMP1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される血小板由来バイオマーカーを支持するよう設定された固体支持体を含む。該キットはまた、少なくとも2つ、好ましくは各々の血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を、それぞれの参照量と比較するための使用説明書も含む。
【0200】
特定の態様において、被験体を治療するための使用説明書は、FERMT3、TUBB1、VCLおよび塩基性ITGA2Bのそれぞれの量が、FERMT3、TUBB1、VCLおよび塩基性ITGA2Bのそれぞれの参照量を超えており、そしてWDR1、FLNA、ACTN1および酸性ITGA2Bのそれぞれの量が、WDR1、FLNA、ACTN1および酸性ITGA2Bのそれぞれの参照量未満である場合、被験体を抗癌治療レジメンで治療するための使用説明書を含む。
【0201】
態様のさらなる側面は、診断系1を定義する。
図4を参照されたい。診断系1は、ACTB、ACTN1、ACTN4、AP4A、CASP3、CAZA1、CFL1、CLU、CNDP2、CRKL、ERP29、FERM、FIBG、FLNA、FPPS、GELS、GPIX、GRP75、GSTO1、HDHD2、HPタンパク質、HSP70、HSP71、HSP90AB1、ILEU、ITGA2B、ITB3、ITGA6、KAP3、MLEC、PHB、RINI、SHLB1、SNCA、SPB6、SRC、TBA、TBA4A、THTM,TLN1、TMP1、TSG、TUBB1、VCLおよびWDR1からなる群より選択される少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを支持するよう設定された固体支持体2を含む。診断系1はまた、固体支持体2上で、被験体由来の生物学的試料から少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを検出するよう設定された検出装置3も含む。検出装置3はまた、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーの量のそれぞれの推定を生じるように設定されている。検出装置3は、好ましくは、診断系1のプロセッサ4に連結されている。プロセッサ4は、量のそれぞれの推定をプロセシングするように設定される。プロセッサ4はまた、被験体が良性病変または癌腫病変に罹患しているかの推定;被験体における良性および/または癌腫病変の存在の予測;被験体における結腸直腸癌または膵臓癌の存在の予測;あるいは用いる血小板由来バイオマーカーの特定の群に応じて、被験体における癌腫の存在の予測を生じるように設定される。
【0202】
特定の態様において、固体支持体2は、等電点(等電点電気泳動)および質量(SDS−PAGE)に基づいて、生物学的試料から血小板タンパク質を分離するように設定された2−DEゲル2である。
【0203】
特定の態様において、検出装置3は、固体支持体2上で、生物学的試料から、群中の各血小板由来バイオマーカーを検出し、そして各血小板由来バイオマーカーの量のそれぞれの推定を生じるよう設定される。
【0204】
検出装置3は、固体支持体2の画像を採取するよう設定された任意の検出装置であってもよい。態様にしたがって使用可能である検出装置3の限定されない例は、16ビット解像度を持つEpson画像スキャナである。目的に適した任意の高解像度画像スキャナが、本発明で使用するために適用可能でありうる。
【0205】
参照量は、プロセッサ4に連結されたメモリ5に保存されていてもよい。これらの参照量は、特定の被験体に関してあらかじめ決定され、そして次いでメモリ5に入力されていてもよい。あるいは、参照量は、あらかじめ、診断系1を用いて、対照群に関して決定されていてもよい。さらなる代替法は、参照量が適切なユーザー入力、例えばキーボード(未提示)またはタッチセンサー式ディスプレイ6を用いて、診断系1およびメモリ5に入力されているものである。
【0206】
代替態様において、プロセッサ4は、血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量に基づいて、上記等式(1)にしたがって、状態値を計算するよう設定されている。上述のメモリ5は、次いで、定義したカットオフ値を保存するよう設定されている。次いで、プロセッサ4は、定義したカットオフ値と状態値を比較して、そして比較に基づいて、被験体における癌状態の予測を生じるように設定されている。
【0207】
予測される癌状態/疾患状態は、好ましくは、診断系1に連結されたディスプレイ6上でユーザーにディスプレイされる。ディスプレイされる癌状態/疾患状態は、癌対癌でない状態、早期癌対進行性癌または良性腫瘍対悪性腫瘍であることも可能である。
【0208】
プロセッサ4は、前述に開示するプロセッサ操作を実行するよう設定されたハードウェアおよび/またはソフトウェア手段を有する、任意のコンピュータまたは処理端末であってもよい。プロセッサ4の限定されない例には、ソフトウェアSameSpotsを含むコンピュータが含まれる。
【0209】
態様のさらなる側面は、被験体における癌状態/疾患状態を予測するよう設定されたコンピュータプログラム製品に関する。コンピュータプログラム製品は、コンピュータにおいて具現化するコンピュータ読み取り可能プログラムコードを有するコンピュータ読み取り可能媒体を含む。コンピュータ読み取り可能プログラムコードは、被験体由来の生物学的試料において、態様にしたがった少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーを測定するよう設定されるコンピュータ読み取り可能プログラムコードを含む。コンピュータ読み取り可能プログラムコードはまた、被験体が良性病変または癌腫病変に罹患しているかの推定;被験体における良性および/または癌腫病変の存在の予測;被験体における結腸直腸癌または膵臓癌の存在の予測;あるいは用いた血小板由来バイオマーカーの特定の群に応じて、被験体における癌腫の存在の予測を生じるよう設定されたコンピュータ読み取り可能プログラムコードも含む。
【0210】
本明細書において、診断するまたは診断は、被験体が疾患、例えば癌、例えば卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌または膵臓癌に影響を受けている可能性がある指標を提供することを意味する。こうした技術はいずれも完全ではなく、そしてこうした診断は、他の方法、例えば身体検査、画像法、組織試料の組織学的検査等の他の方法によって確認されうることが認識されるであろう。
【0211】
個別化癌治療に関するブレークスルーは、(1)完全に健康であるかまたは何らかの細胞/組織改変がある(良性または悪性病変が存在する)ならびに/あるいは(2)癌でない状態(良性)および癌(悪性)、ならびに/あるいは(2)早期(しばしば局所)および進行性(しばしば散在または転移)腫瘍疾患の間を区別することを可能にする、血液試験であろう。試験は、正常な健康な個体、および改変された細胞/組織(例えば病変/腫瘍)を有する個体の間を区別する、すなわち健康な被験体および何らかの種類の細胞または組織改変、例えば良性または悪性病変を有する被験体の間を区別する可能性を持たなければならない。試験はさらに、改変された細胞/組織(病変/腫瘍)を有する被験体が、良性病変または悪性腫瘍(癌)を有するかどうかを決定する、すなわち良性病変および悪性腫瘍の間を区別することが可能でなければならない。試験はまた、悪性新生物疾患(癌、悪性腫瘍)を有する被験体が、疾患の早期または進行段階にあるか決定する/区別する、すなわち、早期および進行性癌の間を区別することも可能でなければならない。
【0212】
また、限定されるわけではないが、生検を実行し、スキャンを実行し(X線、MRI、PET、CT等)、そして疾患の可能性の他のバイオマーカーまたは他の指標に関してスクリーニングする工程を含む、他の診断法と組み合わせて、診断または治療レジメンの発展のために、癌を検出する開示する方法を使用することもまた可能である。当業者は、診断またはスクリーニングのため、疾患を検出する他の方法のこの列挙が、いかなる意味でも包括的ではなく、そして卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌および/または膵臓癌などの癌の診断目的のため、開示する方法と容易に組み合わせ可能である他の可能な診断法の小規模なサンプリングであることを認識するであろう。
【0213】
本明細書に記載するような被験体には、ヒト被験体および患者、ならびに獣医または研究設定の他の哺乳動物が含まれ、マウスが含まれる。被験体は、男性または女性であってもよく、そしていかなる人種または民族であってもよく、限定されるわけではないが、コーカソイド、アフリカ系アメリカ人、アフリカ人、アジア人、ラテンアメリカ系、インド人等が含まれる。被験体は、いかなる年齢であってもよく、新生児、乳児、幼児、小児、青年、成人、および老人が含まれる。被験体にはまた、獣医学的薬剤または薬学的剤の開発目的のためにスクリーニングされる、動物被験体、特に哺乳動物被験体、例えばイヌ、ネコ、ウマ、マウス、ラット等も含まれうる。被験体には、限定されるわけではないが、癌に関する1またはそれより多いリスク要因を有するか、所持するか、これらに曝露されているか、またはこれらに罹患していると以前診断されている可能性があるものが含まれる。リスク要因には、年齢、性別、人種、喫煙、食餌、肥満、糖尿病、職業上の曝露、家族歴、アルコールおよび薬剤使用等が含まれる。これらのリスク要因を、診断またはスクリーニングのため、癌を検出する開示する方法と組み合わせて考慮してもよい。
【0214】
本発明者らは、いくつかの実験研究を行ってきており、これによって、癌予測および診断に有用な血小板由来バイオマーカーパネルが明らかになってきている。研究1は、卵巣癌に関するマーカーを明らかにした。研究1Aは、癌状態および進行を決定するために有用な7マーカーを明らかにした。研究1Bは、21マーカー、さらなる16マーカー(5つが重複)を明らかにし、卵巣癌を予測するかまたは診断するために有用な総数23のマーカーを明らかにし、そして研究1Cは、健康な被験体および何らかの種類の病変(良性または悪性病変)を有する被験体の間を区別するために有用な10マーカーを明らかにした。前立腺癌に関する研究2は、研究1由来の23マーカーがまた、前立腺癌にも適用されることを示した。研究3および4は、膵臓癌および/または結腸直腸癌に関する23マーカーを同定し、ここで、22が両方の癌に適用可能であり、そして1つが膵臓癌特異的であり、そして1つが結腸直腸癌特異的であった。すべての癌において同一であることが示されている12マーカーのパネルは、したがって、どの癌が診断されているかに関わらず、診断に用いることが可能である。総合して、すべての研究は、癌および癌状態を診断し、そして予測するために有用な45のユニークなバイオマーカーを明らかにした。上方制御されていることが示されるマーカーもあり、そして下方制御されていることが示されているマーカーもあった。しかし、バイオマーカーを評価するために用いた方法に応じて、これは変化する可能性もあった。したがって、特定の閾値を超える、バイオマーカープロファイル(所定のパネルに関するもの)の相対量の改変は、以下により詳細に定義するように、これが増加または減少であるかに関わらず、本発明に記載するような、癌および/または癌状態および/または病変(改変された組織)の発生を予測する/診断する際に、等しく興味深いと見なされる。
【0215】
研究1A
研究1Aからの実験データは、本明細書にさらに提示するように、本明細書に開示する7つの血小板由来バイオマーカーが、1つの態様において、癌でない被験体(良性)に対して癌を有する被験体由来の血小板によって発現されるまたは血小板に少なくとも存在するバイオマーカーの量の変化または改変に関して、2つの群に分割可能であり、そして早期癌を有する被験体の診断を可能にすることを示してきている。
【0216】
マーカーは、用いる検出法および分析法に応じて、増加するかまたは減少することも可能であることに注目することが重要である。にもかかわらず、研究1Aにおける血小板由来バイオマーカーの第一の群は、重度の癌状態に関するバイオマーカーの相対量の増加を示した。したがって、癌を有する被験体あるいは進行した癌または早期癌を有する被験体は、一般的に、癌でない被験体または良性病変を有する被験体に比較した際、これらのバイオマーカーのより高く改変された(より高い)相対量を有する。この第一の群は、FERMT3、TUBB1、VCLおよび塩基性ITGA2Bからなる。塩基性ITGA2Bは、二次元電気泳動ゲルの塩基性部分上に見られる、すなわち6より高いpHで等電点を有し、そしてしたがって中性pHで負に荷電している、ITGA2Bアイソフォームを示す。
【0217】
研究1Aにおける血小板由来バイオマーカーの第二の群は、重症癌状態に関するバイオマーカーの相対量の減少を示した。したがって、癌を有する被験体または進行した癌を有する被験体は、一般的に、癌を持たない被験体または良性病変を有する被験体と比較した際、これらのバイオマーカーのより低い相対量を有する。この第二の群は、WDR1、FLNA、ACTN1および酸性ITGA2Bからなる。酸性ITGA2Bは、二次元電気泳動ゲルの酸性部分上に見られる、すなわち6より低いpHで等電点を有し、そしてしたがって中性pHで正に荷電している、ITGA2Bアイソフォームを示す。
【0218】
1つの態様において、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーは、上述の第一の群から選択される。こうした場合、被験体における癌状態の予測は、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーの量が増加する、好ましくは参照量より高く増加するかに基づくことも可能である。
【0219】
別の態様において、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーは、第二の群より選択される。こうした場合、被験体における癌状態の予測は、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーの量が減少する、好ましくは参照量より低く減少するかに基づくことも可能である。
【0220】
少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を(個々に)比較するそれぞれの参照量は、対照群の相当する血小板由来バイオマーカーに関して決定された参照量であることも可能である。例えば、予測が、改変された組織の存在または改変されていない組織(病変)の存在のいずれかである場合、対照群は、検出可能な改変された組織(病変)を持たない健康な被験体の群であることも可能である。次いで、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーの量を対照群に関して測定し、そして参照量をこの対照群から決定し、例えば対照群中の健康な被験体に関して決定される量の平均または中央値を決定する。卵巣癌および前立腺癌に関して、病変を有する被験体から健康な被験体を区別するため、測定/検出する少なくとも2つのバイオマーカーを、AP4A、CAZA1、CNDP2、GPIX、ILEU、KAP3、PHB、SHLB1、SPB6およびTMP1からなる特異的血小板バイオマーカーから選択しなければならない。
【0221】
同様に、改変された組織(病変)が被験体に存在し、そして予測が癌の存在または癌の非存在(良性)いずれかの癌状態である場合、対照群は、良性対象の群、すなわち良性病変のみが存在すると診断される被験体の群であることも可能である。同様に、少なくとも2つの血小板由来バイオマーカーの量を、次いで、対照群に関して測定し、そしてこの対照群から参照量を決定し、例えば対照群中の健康な被験体に関して決定される量の平均または中央値を決定する。この方法はまた、癌状態が、早期癌または腫瘍に対して、進行性癌または腫瘍である場合にも適用可能である。次いで、対照群は、好適に早期癌と診断される被験体であってもよい。
【0222】
代替アプローチにおいて、疾患発展前に、すなわちいかなる癌よりも前に、あるいは被験体が早期癌または良性病変(単数または複数)のみを有する期間中に、被験体自身から参照量を決定してもよい。
【0223】
生物学的試料におけるバイオマーカーの量は、生物学的試料におけるバイオマーカーの量または濃度、生物学的試料におけるバイオマーカーの検出された量に基づくスコア、患者集団に基づくパーセンタイル、生物学的試料におけるバイオマーカーの定量的量または半定量的量、あるいは検出されたバイオマーカーに基づく他の適切な量であってもよい。
【0224】
本明細書において、血小板由来バイオマーカーの量における増加または減少は、対照における血小板タンパク質の相対参照量に比較した際、被験体から除去されたかまたは得られた生物学的試料中で、またはこうした試料を通じて検出可能な血小板タンパク質の相対量における増加した相対量または減少した相対量を指す。対照試料には、癌(例えば卵巣癌、前立腺癌)に罹患していない対応する被験体由来の生物学的試料、あるいは同じ被験体由来の非疾患組織または組織の非疾患部分由来の生物学的試料、あるいは疾患発展前の、同じ被験体由来の生物学的試料が含まれる。血小板由来バイオマーカーの検出可能量の存在または非存在はまた、増加または減少と見なすことも可能である。
【0225】
本明細書において、血小板由来バイオマーカーの量の増加または減少は、例えば、対照の血小板タンパク質の参照量に比較した際、被験体から除去したまたは得た生物学的試料中で、または該試料を介して検出可能である、血小板タンパク質の量における増加した量(例えば10%、20%、30%、40%、50%、100%の増加、またはそれより多い増加)または減少した量(例えば10%、20%、30%、40%、50%、100%の減少、またはそれより多い減少)を指すことも可能である。
【0226】
卵巣癌に関して、卵巣癌の病期決定の国際的システムは、診断時点での蔓延を同定する。初期診断の瞬間での正しい病期決定は、治療決定に影響を及ぼす。病期決定システムは、FIGOシステムと称され、これは、著者ら、世界婦人科癌専門医連盟にちなむ。2013 FIGO病期決定システムにしたがって、卵巣癌に関して、
病期1は、単数または複数の卵巣または卵管(単数または複数)に限定された腫瘍によって特徴付けられ、
病期2−腫瘍は一方または両方の卵巣または卵管に影響を及ぼし、骨盤への拡大(骨盤上口の下)または原発性腹腔癌を伴い、
病期3−腫瘍は一方または両方の卵巣または卵管に影響を及ぼし、あるいは骨盤および腹腔の両方を含む腹膜面への確証された(細胞学的にまたは組織学的に)蔓延および/または腹膜後リンパ節への転移を伴う、原発性腹腔癌であり、
病期4−腹腔を超えた遠位転移(実質肝/脾臓転移および腹部外転移を伴う)。
【0227】
さらなる態様において、方法は、生物学的試料において、研究1A由来の第一の群由来の少なくとも1つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定し、そして生物学的試料において、第二の群由来の少なくとも1つの血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量を測定する工程を含む。したがって、この態様において、測定される血小板由来バイオマーカーの少なくとも1つは、重度の癌状態に関して増加することが予期され、一方、測定される血小板由来バイオマーカーの少なくとも別の1つは、重度の癌状態に関して減少することが予期される。
【0228】
こうした場合において、状態値を、2つの決定される量に基づいて、好ましくは2つの決定される量の間の商として、被験体に関して計算してもよい。こうした商は、第一の群由来の血小板由来バイオマーカーの量を第二の群由来の血小板由来バイオマーカーの量で割ったものであってもよい。こうした商は、次いで、癌を持たない被験体に比較した際、癌に罹患している被験体に関して有意により高く、局所癌を有する被験体に比較した際、広がった癌を有する被験体に関して有意により高く、そして良性腫瘍を有する被験体に比較した際、悪性腫瘍を有する被験体に関して有意により高いであろう。代替法は、第二の群由来の血小板由来バイオマーカーの量を、第一の群由来の血小板由来バイオマーカーの量によって割った商を計算することである。こうした場合、商は、癌を持たない被験体に比較した際、癌に罹患している被験体に関して有意により低く、局所癌を有する被験体に比較した際、広がった癌を有する被験体に関して有意により低く、そして良性腫瘍を有する被験体に比較した際、悪性腫瘍を有する被験体に関して有意により低いであろう。
【0229】
1より多い血小板由来バイオマーカーが第一の群および/または第二の群に関して測定される場合、好ましくは、第一の群由来の血小板由来バイオマーカーの量の合計を、第二の群由来の血小板由来バイオマーカーの量の合計で割るか、またはその逆を行う。
【0230】
本発明の方法論は、示す多様な癌の診断に関するアッセイとして使用可能であることに加えて、組み合わせて用いてもよい。多重化プラットフォーム(すなわちLuminexまたはその他)で実行する場合、徴候に関するすべてのバイオマーカーおよび共通の群を1つの分析において実行する。このアッセイから、多様な異なる診断結果を、別個にフィルタリングすることも可能である。卵巣、前立腺、膵臓、結腸直腸および共通群の任意の組み合わせを、対で、またはより大きな群でともに組み合わせ可能であるように、アッセイの組み合わせを設計することも可能である。これは、癌の分析を可能にし、または特定の癌との組み合わせではない。
【0231】
研究1A由来の態様
特定の態様において、好ましくは、態様の各血小板由来バイオマーカー、すなわち、ITGA2B、WDR1、ACTN1、FLNA、FERMT3、TUBB1およびVCLのそれぞれの量を、生物学的試料において測定する。
【0232】
こうした場合、被験体における癌状態の予測は、好ましくはそれぞれの参照量に比較して、FERMT3、TUBB1、VCLおよび塩基性ITGA2Bのそれぞれの量のいかなる増加、ならびにWDR1、FLNA、ACTN1および酸性ITGA2Bのそれぞれの量のいかなる減少に基づいてもよい。
【0233】
特定の態様において、態様の血小板由来バイオマーカーの測定された量に基づいて、状態値を計算する。1つの態様において、第一の群、すなわちFERMT3、TUBB1、VCLおよび塩基性ITGA2B由来の血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量の第一の合計に基づいて、そして第二の群、すなわちWDR1、FLNA、ACTN1および酸性ITGA2B由来の血小板由来バイオマーカーのそれぞれの量の第二の合計に基づいて、状態値を計算する。
【0234】
態様において、第一の合計および第二の合計の間の商に基づいて、状態値を計算する。したがって、特定の態様において、状態値を:
([FERMT3]+[TUBB1]+[VCL]+[ITGA2B]
塩基性)/([WDR1]+[FLNA]+[ACTN1]+[ITGA2B]
酸性)(1)
式中、[ITGA2B]
塩基性は、負に荷電したITGA2Bの量に相当し、[ITGA2B]
酸性は、正に荷電したITGA2Bの量に相当し、そして[X]は、相当する血小板由来バイオマーカーの量に相当し、X=FERMT3、TUBB1、VCL、WDR1、FLNAまたはACTN1である
として計算する。
【0235】
測定した血小板由来バイオマーカーの量に基づいて状態値を計算する、上に開示する態様において、この状態値を、好ましくは、定義したカットオフ値に比較する。したがって、こうした態様において、癌状態の予測は、好ましくは、状態値を、定義したカットオフ値に比較し、そして該比較に基づいて、すなわち状態値がカットオフ値より高いかまたは低いかに基づいて、被験体における癌状態を予測する工程を含む。
【0236】
等式(1)に定義するアルゴリズムは、非癌性または良性生物学的試料に関して低い値を生じ、局所癌に関して中間の値を生じ、そして悪性または散在/進行性癌に関して高い値を生じる。
【0237】
癌被験体群および健康な被験体の対照群に関し、広がった癌を有する被験体群および早期癌を有する対照群に関し、または悪性腫瘍を有する被験体群および良性病変を有する被験体の対照群に関し、状態値を計算することによって、カットオフ値を決定してもよい。こうした場合、カットオフ値は、2つの群由来の状態値の比較に基づいて定義されてもよい。特定の態様において、カットオフ値は:
[(癌平均値−1 SDEV)+(対照平均値+1 SDEV)]×1/2 (2)
式中、癌平均値は、進行した癌を有する被験体群に関して、または悪性腫瘍を有する被験体群に関して、癌被験体群から得られる平均状態値に相当し、SDEVは、標準偏差に相当し、そして対照平均値は、対照群から得られる平均状態値に相当する
として計算される。
【0238】
カットオフ値の適切な値は、典型的には、癌状態、すなわち癌対癌でない状態、進行した癌対早期癌、または悪性腫瘍対良性病変に応じる。適切な癌タイプおよび癌状態に関して、等式(1)および(2)を用いて上に明記するように、カットオフ値を決定してもよい。
【0239】
1つの態様において、カットオフ値は、好適に、0.25〜0.30の範囲内であり、そして好ましくは0.29に等しい。このカットオフ値は、以下にさらに開示するように、悪性卵巣癌に罹患している被験体群および良性病変、例えば子宮筋腫または良性嚢腺腫を有する対照群に関して決定されてきている。
【0240】
特定の態様において、0.25〜0.30の範囲内、好ましくは0.29に等しいカットオフ値が、癌および癌でない状態の間を区別するために用いられる。いかなる癌にも罹患していない被験体は、典型的には、0.05〜0.25の範囲内の、等式(1)を用いて計算されるような状態値を有する。それに応じて、癌に罹患している被験体は、典型的には、0.30〜0.60の範囲内の、等式(1)を用いて計算されるような状態値を有する。
【0241】
進行した癌および早期癌の間を区別するために適したカットオフ値は、少なくとも卵巣癌に関して、典型的には、0.25〜0.60の範囲内、例えば0.30〜0.60の範囲内であろう。それに応じて、悪性腫瘍および良性腫瘍の間を区別するのに適したカットオフ値は、0.25〜0.60の範囲内、例えば0.30〜0.60の範囲内であってもよい。
【0242】
研究1B
研究1Aおよびその一般的に正の転帰にしたがって、バイオマーカーをさらに検証するため、より広い研究を開始した。本研究において、通常の生物学的可変性ならびに癌自体の生物学的蔓延をカバーするために十分な患者を得るため、患者のより大きいコホートを用いた。結果の統計分析に基づき、PLSを伴う、より進歩した評価戦略もまた用いた。研究1Bには、16人の良性対照(BC)および腹部まで広がった定義される進行性卵巣癌(SC)を有する20人の女性が含まれた。対照は、良性病変、例えば子宮筋腫または良性嚢腺腫を有する女性であった。すべての患者は、ソールナにあるカロリンスカ大学病院産婦人科で診断され、そして治療された。患者は、地域倫理委員会Dnr.2010/504−31の認可にしたがって、研究のために血液を提供した。記載する標準化法(実施例1および2)にしたがって、血小板を調製しそして分析した。2Dゲル分離したタンパク質を画像分析した後、すべての試料に相当するデータを、多変量統計(部分的最小二乗判別分析、PLS)によってさらに分析した。2つの成分を含むPLSモデルは、最適の結果を示した(
図5を参照されたい)。最適化および交差検証モデルに関して、90%の感度および94%の特異性を得た。VIP(重要性変数)パラメータを用いて、予測への寄与にしたがって変数をランク付けした。次いで、上位にランキングされた変数(最高VIP値に相当するタンパク質スポット)を質量分析による同定のために選択した。総合して、上位16にランキングされるタンパク質の>75%、そして上位50にランキングされるタンパク質の>50%を同定した。成功した同定を表4に列挙し、検証がより実行不能と見なされたため、いくつかの同定を排除した。以下のバイオマーカー候補を選択し、VIPランクにしたがってソーティングした(括弧内に[VIPランク]を示す):ERP29[1]、ACTN4[3]、HP[4、8]、TLN1[6、10、11、12、27、50]、SRC[6]、ITB3[13]、HSP71[16]、TBA4A[19]、ITA2B[24]、TBA[25]、CRKL[26]、GRP75[32]、GELS[34、79]、TUBB1[37]、HSP70[39]、FIBG[40]、およびITA2B[45]。1つのさらなるバイオマーカー候補(RINI)を、データセットのANOVA分析によって見出した(p<0.05)。詳細に関しては、表4および表(要約)を参照されたい。
【0243】
モデルを評価するため、11のSCおよび8つのLC試料の独立の試験セットを用いた。モデル最適化法から選択したモデルパラメータを含むトレーニングセットを用いて、予測モデルを構築した。結果は、11のSC試料のうち9つ、および8つのLC試料すべてが、正しく分類されたことを示し、これは、分類モデルに関する89%感度に相当する。
【0244】
したがって、本発明者らは、卵巣癌、結腸直腸癌または膵臓癌、または前立腺癌などの非常に悪性の癌に罹患している被験体における癌状態の非侵襲性診断または予測のために使用可能な、新規血小板由来バイオマーカーパネルを初めて示したと考える。今日、癌状態を決定するためには、病理学者による顕微鏡検査が必要であり、これは病理学者に依存して多様な結果を生じる可能性もある。本態様は、今日用いられているよりも、癌のより客観的な診断および予後を提供する。本態様によって、生検の必要を伴わない癌の診断、治療および予後が可能になる。健康な被験体(癌不含、病変不含)、良性対照(癌不含、良性病変)および癌試料の間の分離のため、ならびに、これらの2つの群からの早期、しばしば局所、非散在癌、および進行癌の分離のために、血小板由来バイオマーカーの組み合わせを設計し、これは続いて、治療戦略の選択に有意な影響を有するであろう。
【実施例】
【0245】
実施例1−研究1A
患者および試料調製
研究には11人の対照および腹部に広がった定義された卵巣癌を有する6人の女性が含まれた。対照は、42〜70歳の間(平均年齢65歳)であった。対照は、良性病変、例えば子宮筋腫または良性嚢腺腫を有する女性であった。癌患者は、49〜74歳(平均年齢67歳)であった。すべての患者は、スウェーデン・ソールナにあるカロリンスカ大学病院産婦人科で診断され、そして治療された。以下の表1を参照されたい。
【0246】
表1、対照および癌患者
【0247】
【表1】
【0248】
単離法(研究1Bおよび1Cにおいて同じ方法を用いる)
3つの遠心分離工程によって、血小板単離を行った。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有するバキュテナー試験管中に血液を得て、凝血を防止し、30分以内にプロセシングして、そして室温に維持した。患者情報を収集し、そして各試料にユニークな同定コードを与えた。
【0249】
第一の遠心分離を1500g、+4℃で10分間行った。血漿を収集し、そして赤血球を廃棄した。次いで、収集した血漿を3700g、+4℃で10分間遠心分離した。血小板をほとんど含まない血漿(PPP)をエッペンドルフ試験管5x1mLに収集し、そしてさらなる分析のため、−70℃で保存した。残りのペレット(単離血小板分画)を再懸濁し、そして500μLの0.9%NaCl中で洗浄し、エッペンドルフ遠心管中、5600g、+6℃で10分間遠心分離した。上清を廃棄し、そしてペレット重量を記録した。血小板ペレットの代表的な試料を調製し、そして血小板単離物の品質および純度を顕微鏡によって確認した。
【0250】
血小板分画を抽出し、そしてさらに完全に乾燥するまで凍結乾燥して、そして9M尿素、2Mチオ尿素、1M EDTA、25mM 3−8(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、プロテアーゼ阻害剤およびキャリアー両性電解質を含有する溶解緩衝液中に再懸濁した。
【0251】
血小板タンパク質溶解物を、室温で3時間振盪した後、12000RPMで15分間遠心分離した。上清を収集し、そしてBradfordタンパク質分析プロトコル(Bio−Rad LaboratoriesのQuick StartTM)を用いて、タンパク質濃度を測定した。
【0252】
タンパク質分離
二次元ゲル電気泳動(2−DE)分析前に、タンパク質溶解物を、各試料に関して、7M尿素、2Mチオ尿素、65mM CHAPS、0.5%TritonX100、0.5%v/v固定pH勾配(IPG)緩衝液pH4〜7および18mMジチオスレイトールを含有する300μLの再水和緩衝液中、75.0μg総タンパク質の濃度に希釈した。
【0253】
第一の分離工程は、等電点電気泳動(IEF)であり、等電点に関してタンパク質を分離し、そして22.5時間、泳動した。長さ17cm、pH4〜7のIPGストリップ(BioRad)を用いた。
【0254】
第二の次元、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)は、分子量に関して、タンパク質を分離する。2−DEゲルは、架橋剤としてピペラジンジアクリルアミド(PDA)を用い、10〜13%アクリルアミド勾配であり、200x250x1.5mmのサイズであった。試料タンパク質を、100ボルト、12℃でおよそ20時間分離した。
【0255】
質量分析適合染色プロトコルを用いて、SDSゲルを銀染色し、そしてEpson画像スキャナIII、16ビット解像度でスキャンした。ソフトウェアProgenesis SameSpots(Nonlinerar Dynamics Limited)を用いて、画像をさらに分析した。
【0256】
質量分析によるタンパク質の同定
銀染色バンドをゲルから切り出し、ゲル内消化のため処理し、そして本質的に先に記載されるように、Ludwig Institute、ウプサラで分析した(Hellman, U.(2000)Sample preparation by SDS/PAGE and in−gel digestion. EXS 88,43−54.)。簡潔には、Farmer試薬を用いて、銀を脱染色し、そしてトリプシン(ブタ、修飾、配列等級、Promega、ウィスコンシン州マディソン)を乾燥ゲル片に導入した。一晩トリプシン消化した後、ペプチドをC18 Zip Tipカラムに結合させ、洗浄し、そして次いで、直接、ターゲットプレート上にあるマトリックス(アルファ−シアノ4−ヒドロキシ桂皮酸)を含有するアセトニトリルで溶出した。Bruker Daltonics、ドイツ・ブレーメンのUltraflex III TOF/TOF上のMALDI−TOF質量分析によって、質量リストを生成した。検索エンジンMASCOT(Matrix Science、英国ロンドン)を用いて、NCBI nr配列データベースの現在のバージョンをスキャンすることによって、同一性に関する検索を行った。自己分解トリプシンペプチドを用いて、スペクトルを内部較正し、そして許容性を0.02Daに設定した。メチオニン酸化を可能にした。検索エンジンのスコアリングシステムから、同一性の有意性を判定した。
【0257】
結果および考察
対照および広がった卵巣癌を有する患者を比較した際、35の増加したまたは減少したタンパク質スポットが見出された(
図1)。広がった卵巣癌において、全体で、19のスポットが減少し、そして17のスポットが増加した。
【0258】
タンパク質の同定
総合すると、35のタンパク質スポットを切り出し、そして質量分析によって分析した。本発明者らは15の成功した同定を得て;対照に比較して、8つのタンパク質スポットは癌群において減少し、そして7のタンパク質スポットは増加した(表2)。
【0259】
表2、バイオマーカーの同定
【0260】
【表2】
【0261】
1−スポット番号
2−観察された等電点(pI)および分子量(Mr)
3−矢印は増加または減少を示す
4−インテグリン・アルファ2bは、7つの異なるタンパク質スポットによって示され、4つのタンパク質スポットは癌において減少し、そして残りの3つのタンパク質スポットは増加した。
【0262】
インテグリン、アルファ2bは、同定する15タンパク質スポットのうち7つによって示された。本発明者らは、位置を見て、このうち4つがゲルの酸性部分および100kDaより上に位置し、そして減少することを観察した(
図2)。インテグリン、アルファ2bのリン酸化アイソフォームの減少したレベルは、癌における機能喪失と関連した。他の2つの同定されたインテグリンは、2−DEゲルの右、100kDaより上に位置し、そしてこれらは増加する。インテグリンは、少なくとも13のリン酸化部位を有し、これはおそらく、タンパク質スポットの「列構造(train formation)」を生じ、そして多くの異なる翻訳後修飾を生じうる。
【0263】
診断アルゴリズム
バイオマーカーの相対量を、以下の診断アルゴリズムにしたがって計算した:
([FERMT3+TUBB1+VCL]+[ITGA2B(塩基性)])/([WDR1+FLNA+ACTN1]+[ITGA2B(酸性)])(3)
癌を癌でない状態から区別するカットオフ値を、以下のように定義した:
[(癌平均値−1 SDEV)+(対照平均値+1 SDEV)]×1/2 (4)
ここで、癌平均値は、6人の癌患者に適用した上記診断アルゴリズム(3)を用いて得た平均値に相当し、SDEVは標準偏差に相当し、そして対照平均値は、11人の対照に適用した上記診断アルゴリズム(3)を用いて得た平均値に相当する。
【0264】
図3は、17の試料に関して、上記診断アルゴリズム(3)の出力値を例示する。上記等式(4)から得たカットオフ値は0.29であった。
【0265】
実施例2−研究1B
研究2には、16人の良性対照(BC)および腹部まで広がった定義される進行性卵巣癌(SC)を有する20人の女性が含まれた。対照は、良性病変、例えば子宮筋腫または良性嚢腺腫を有する女性であった。すべての癌患者はカロリンスカ大学病院婦人科超音波部で診断された。記載する標準化法(実施例1および2)にしたがって、血小板を調製しそして分析した。2Dゲル分離したタンパク質を画像分析した後、すべての試料に相当するデータを、多変量統計(部分的最小二乗判別分析、PLS)によってさらに分析した。2つの成分を含むPLSモデルは、最適の結果を示した(
図5を参照されたい)。最適化および交差検証モデルに関して、90%の感度および94%の特異性を得た。
【0266】
VIP(重要性変数)パラメータを用いて、予測への寄与にしたがって変数をランク付けした。次いで、上位にランキングされた変数(最高VIP値に相当するタンパク質スポット)を質量分析による同定のために選択した。総合して、上位16にランキングされるタンパク質の>75%、そして上位50にランキングされるタンパク質の>50%を同定した。成功した同定を表4に列挙し、検証がより実行不能と見なされたため、いくつかの同定を排除した。以下のバイオマーカー候補を選択し、VIPランクにしたがってソーティングした(括弧内に[VIPランク]を示す):ERP29[1]、ACTN4[3]、HP[4、8]、TLN1[6、10、11、12、27、50]、SRC[6]、ITB3[13]、HSP71[16]、TBA4A[19]、ITA2B[24]、TBA[25]、CRKL[26]、GRP75[32]、GELS[34、79]、TUBB1[37]、HSP70[39]、FIBG[40]、およびITA2B[45]。1つのさらなるバイオマーカー候補(RINI)を、データセットのANOVA分析によって見出した(p<0.05)。詳細に関しては、表4および表(要約)を参照されたい。
【0267】
モデルを評価するため、11のSCおよび8のLC試料の独立の試験セットを用いた。モデル最適化法から選択したモデルパラメータを含むトレーニングセットを用いて、予測モデルを構築した。結果は、11のSC試料のうち9つおよび8つのLC試料すべてが、正しく分類されたことを示し、これは、分類モデルに関する89%感度に相当する。
【0268】
患者および試料調製
研究には16人の対照および腹部に広がった定義された卵巣癌を有する31人の女性が含まれた。対照は、62±14(sdev)歳の平均年齢を有し、そしてこれらはソールナにあるカロリンスカ大学病院産婦人科で収集された。対照は、良性病変、例えば子宮筋腫または良性嚢腺腫を有する女性であった。癌患者は、65±12(sdev)歳の平均年齢を有した。癌患者は、カロリンスカ大学病院婦人科超音波部で診断された。以下の表3を参照されたい。
【0269】
表3、対照および癌患者−研究1B
【0270】
【表3】
【0271】
試料単離および調製のため、上記実施例1Aにおけるものと同じ方法を用いた。
【0272】
データ分析
部分的最小二乗(PLS)を用いて、データをモデリングした(PLS回帰:計量化学の基本的ツール Chemometrics and Intelligent laboratory systems Wold S, Sjoestroem M, Eriksson, L, 2001, 58, 109−130)。該方法は、予測因子マトリックス(X)と応答マトリックス(Y)の共分散を最大化し、対応する次元(PLS成分/潜在性変数)を維持することを通じて、データ中の次元を還元させる回帰法である。XおよびYの間の関係に重要である変数を同定することが可能である。1つのこうした変数重要性測定値が、射影における変数重要性(VIP)パラメータである。VIPは、PLS加重の平方の加重合計であり、モデル中の各PLS成分のY変数の量から、加重を計算する。ここで、予測因子マトリックスは2DEデータであり、そして反応はクラスメンバーシップを示す二値ベクトルであり、この場合、ゼロは対照(BC)クラスに相当し、そして1は癌(SC)クラスに相当する(表3)。モデルで予測される新規試料に関するクラスメンバーシップを決定するため、予測されるy値がカットオフ未満である場合、予測されるクラスメンバーシップがこの場合のBCであるように、そして予測されるy値がカットオフより上である場合、予測されるクラスメンバーシップがSCであるように、yに関するカットオフを設定する。本発明者らは、カットオフ=0.5を選択した。PLSモデル形成をSIMCA P v13.0(Umetrics AB、スウェーデン)で行った。
【0273】
あるいは、画像分析ソフトウェアSameSpots(Nonlinerar Dynamics)によって、提供される統計ツール(ANOVA)を用いて、変数(タンパク質スポット)を選択した。
【0274】
質量分析によるタンパク質の同定
銀染色タンパク質スポットをゲルから切り出し、ゲル内消化のため処理し、そして本質的に先に記載されるように、Ludwig Institute、ウプサラで分析した(Hellman, U.(2000)Sample preparation by SDS/PAGE and in−gel digestion. EXS 88,43−54.)。簡潔には、Farmer試薬を用いて、銀を脱染色し、そしてトリプシン(ブタ、修飾、配列等級、Promega、ウィスコンシン州マディソン)を乾燥ゲル片に導入した。一晩トリプシン消化した後、ペプチドをC18 Zip Tipカラムに結合させ、洗浄し、そして次いで、直接、ターゲットプレート上にあるマトリックス(アルファ−シアノ4−ヒドロキシ桂皮酸)を含有するアセトニトリルで溶出した。Bruker Daltonics、ドイツ・ブレーメンのUltraflex III TOF/TOF上のMALDI−TOF質量分析によって、質量リストを生成した。検索エンジンMASCOT(Matrix Science、英国ロンドン)を用いて、NCBI nr配列データベースの現在のバージョンをスキャンすることによって、同一性に関する検索を行った。自己分解トリプシンペプチドを用いて、スペクトルを内部較正し、そして許容性を0.02Daに設定した。メチオニン酸化を可能にした。検索エンジンのスコアリングシステムから、同一性の有意性を判定した。
【0275】
結果
2Dゲルの画像分析は、完全データセットに相当する、1283の検出され、マッチし、選択され、そして分析されるタンパク質スポット(変数)を生じた(患者群を表3に記載する)。
【0276】
2Dゲル分離タンパク質の画像分析後、多変量統計(部分的最小二乗判別分析、PLS)によって、すべての試料に相当するデータをさらに分析した。すべてのデータを分析前に規準化し、そして多変量モデル形成前に、データをまた、プレプロセシングした(log2変換)。2つの成分を持つPLSモデルは最適な結果を示した(
図5)。最適化および交差検証モデルに関して、90%の感度および94%の特異性を得た。
【0277】
VIPパラメータを用いて、予測への寄与にしたがって変数をランク付けした。次いで、上位にランキングされた変数(タンパク質スポット)を質量分析による同定のために選択した。成功した同定を以下の表4に列挙する。
【0278】
表4、研究1Bにおけるバイオマーカーの同定−PLSモデルに基づく
【0279】
【表4】
【0280】
(1)−質量分析データに基づく一次EMBL寄託番号
(2)−対応するUNIPROT寄託番号
(3)−SameSpotソフトウェアによって提供されるスポット番号、2D参照マップ上の位置に関しては、
図6を参照されたい
(
*)−これらのバイオマーカー候補はまた、ANOVA検定にしたがって、有意に改変された(P<0.05)
($)−これらのバイオマーカー候補はまた、研究1にも記載された(実施例1)
(□)−これらのバイオマーカー候補はまた、研究1にも見られた
ANOVAによって分析される完全データセット(選択基準:p<0.05、q<0.05、倍変化>1.5x)は、相補的結果を生じた。
【0281】
モデルを評価するため、11のSCおよび8のLC試料の独立の試験セットを用いた。モデル最適化法から選択したモデルパラメータを用いて、トレーニングセット上でモデルを構築した。本発明者らは、カットオフ=0.5を選択した。11のSC試料のうち9つおよび8つのLC試料すべてが正しく分類され、これは分類モデルに関する89%の感受性に相当する。
【0282】
実施例3−研究1C
研究1aおよび1Bにおける主な目的は、早期段階で骨盤内腫瘤を悪性と診断するために使用可能なバイオマーカーパネルを記載することであった。しかし、ここで、研究1Cにおいて、本発明者らは、正常な健康状態からの逸脱を示すさらなるパネルを記載する。次いで、この逸脱は、良性の性質または癌であってもよく、そして研究1Aおよび1Bに記載するパネルは、したがって、以下の癌診断に必要であろう。
【0283】
すべての材料および方法は、研究1Aおよび1Bにおいて記載されるものと同じであった。健康な対照(HC)に対応する患者試料を表3に記載する。10のマーカーは、HCおよびBCおよび/または癌(SC/LC)由来の試料間で有意に(P<0.01)異なるレベルを示した:KAP3、CNDP2、ILEU、SPB6、SHLB1、CAZA1、PHB、TMP1、GPIXおよびAP4A。すべてのマーカーを以下の表5に記載する。
【0284】
バイオマーカー候補のこのパネルは、健康な被験体、ならびにありうる卵巣起源の良性および/または悪性骨盤内腫瘤を患う被験体の間の発現に有意な(p<0.01)相違を示す。
【0285】
表5、健康な被験体由来の病変を区別する研究1C由来のバイオマーカー
【0286】
【表5】
【0287】
実施例4−研究2
前立腺癌の診断は、今日、患者に非常に厳しい。一般的に用いられるバイオマーカーPSAは、唯一の指標測定値である。これは、PSAの増加したレベルが、生検の必要性を生じるという事実を導く。これは非常に厄介であり、そして副作用は非常に大きい。第一に、最大5%の患者が敗血症の治療を受けるために、1日以内に救急治療室に行く必要がある。次いでまた、性機能の喪失に伴う問題がある。最悪の副作用は、生検処置の結果として、生存癌細胞を蔓延させる潜在的なリスクがあることである。これらの事実に基づいて、前立腺癌の診断のための改善された、そしてより信頼性があるツールの緊急の必要性がある。
【0288】
本発明者らは、卵巣癌プロジェクトに関するのと同じプロトコルを用いて、血液試料を収集した(研究1)。総合すると、49人の男性患者由来の試料を、カロリンスカ大学病院泌尿器外来から収集した。すべての患者は、高いPSA(前立腺特異的抗原)スコアを示し、そして診断は、TNM分類にしたがって、T1〜T3に等級付けされた。最も高齢の患者は1936年に生まれ、そして癌診断時に76歳であった。最も若い患者は1960年に生まれ、そして診断時に53歳であった。
【0289】
健康な対照から試料を収集した(10人の男性志願者)。すべての被験体は「ストックホルム2研究」(ダンデリード病院)に含まれ、ここで、患者は前立腺バイオバンキングおよびスクリーニングプロジェクトのため、生検材料を提供した。すべての対照は、低いPSAレベルを示し、そして健康であると宣言された。この群の最高齢は1942年に生まれ、そして最年少は1957年に生まれ;それぞれ、血液収集時に70歳および56歳であった。
【0290】
研究2に関して、本発明者らは、10人の健康な被験体、病期T3(進行した癌に対応する)の10人の患者、病期T2の9人の患者、および病期1の2人の患者を含めた。T1およびT2群は、早期癌と見なされた。先に記載するように、すべての試料を調製し、そして分析した(研究1)。
【0291】
予備的データによって、バイオマーカープロファイルが研究1(卵巣癌)由来の結果に非常に類似であることが示される。PCA分析は、健康な対照および進行した癌の間の分離を示す。本研究で同定されるタンパク質バイオマーカー候補は、卵巣癌から同定されるマーカーとの有意な重複を示す。しかし、まだ同定されていない多くのバイオマーカー候補は、前立腺癌および卵巣癌の間の示差的発現を示す。
【0292】
卵巣癌および前立腺癌に関して、研究1および研究2で同定されるバイオマーカーを、以下の表6に要約する。
【0293】
表6、研究1−2に記載するバイオマーカー候補、卵巣癌および前立腺癌
【0294】
【表6】
【0295】
実施例5−研究3および4
膵臓癌および結腸直腸癌は、世界中で最も致死性の悪性腫瘍のうちのいくつかであり、そしてしたがって、早期検出のための改善されたスクリーニングツールに対する緊急の必要性がある。さらに、現在のスクリーニングプログラムの実行にも関わらず、これらの悪性腫瘍のうちの約50%は進行した腫瘍段階で検出される。
【0296】
臨床的および前臨床的研究に基づいて、顕著な進歩が達成されてきているが、これらは、臨床で等しく価値ある改善であるとは解釈されてこなかった。現在の臨床実施において、膵臓癌および結腸直腸癌のスクリーニングは、最新技術の画像撮影、またはさらに侵襲性診断法に基づく。診断様式は、超音波内視鏡検査(EUS)、試験腹腔鏡検査/開腹、コンピュータ断層撮影(CT)、および磁気共鳴画像法(MRI)を含む。
【0297】
健康なドナー由来の血小板のプロテオームが、結腸および膵臓の癌腫を有する患者由来のものとは異なる可能性があることに基づいて、本研究の目的は、血小板が、別個の群におけるタンパク質発現に関して異なる可能性があるか、二次元ゲル電気泳動(2−DE)を用いて分析することであった。総合すると、本発明者らは、膵臓癌患者由来の12の試料、結腸直腸癌患者由来の12の試料、および12の健康な被験体を、2−DEおよび質量分析によってスクリーニングして、血小板の癌関連タンパク質レパートリーおよび対応する腫瘍関連タンパク質を同定した。
【0298】
材料および方法
患者
研究は地域倫理委員会によって認可された。研究に含まれるすべての患者は、書面のインフォームドコンセントにサインした。患者は健康な対照(n=12)、ならびに膵臓癌腫(n=12)および結腸直腸癌腫(n=12)を有する患者に分けられた。血小板単離のための試料試験管に血液試料を得て、そして収集した。
【0299】
血小板単離
EDTAを含有する9mlモノベットにヒト血液を収集し、そして200xg、室温で20分間、標準的実験室遠心分離装置中で遠心分離した。続いて、バフィーコートを含まない血漿を、注意深く、新規2.0ml反応試験管内に移し、そして1,300μl PBS緩衝液で希釈した。800xg、室温で10分間の第二の遠心分離工程後、上清を取り除き、そして−80℃で保存するため、溶解緩衝液中に血小板を再懸濁した。
【0300】
二次元ゲル電気泳動(2−DE)
EZQタンパク質定量化キット(Invitrogen)を用いて、タンパク質定量化を行った。各試料のタンパク質および内部標準を蛍光色素(NH DyeAGNOSTIC)で標識した後、ゲルあたり150μgタンパク質(2x50μg試料に加えて50μg内部標準)を、450μL再水和試料緩衝液(7M尿素、2Mチオ尿素、2%CHAPS、2%両性電解質(pH4〜7、Serva)、0.3%DTT、および少量のブロモフェノールブルー)に溶解した。最初の次元は、固定pH勾配(IPG)ストリップ4〜7、24cm(GE Healthcare)上で達成され、そして第二の次元は、12.5%プレキャストゲル(Serva)上でSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって達成された。SDS−PAGE後にTyphoon FLA 9000(GE Healthcare)を用いることによって、ゲル画像をスキャンした。ソフトウェアProgenesis SameSpots(v4.1、Nonlinear Dynamics)を用いることによるゲル内分析から、群間のタンパク質発現レベルの倍変化を得た。
【0301】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)
マトリックス支援レーザー脱離イオン化時間飛行(MALDI−TOF)質量分析のため、有意なスポットを自動的に切り取り、そして複数回洗浄して、染色色素および他の阻害性化学薬品を除去した。乾燥ゲルスポットを、10mM NH
4HCO
3中、12.5ng/μL配列決定等級トリプシン(Promega)の氷冷溶液中で再水和した。タンパク質をゲル内で、37℃で4時間消化した。10μLの0.1%TFAでペプチドを30分間抽出し、そして製造者の指示にしたがって、MALDI−プレスポットAnchorChipターゲット(Bruker Daltoniks)に直接適用した。
【0302】
続いて、試料を時間飛行Ultraflex−Tof/Tof質量分析(Bruker Daltoniks)で分析した。獲得した質量スペクトルを自動的に較正し、Compass 1.3ソフトウェア(Bruker Daltoniks)を用いて注釈を付けて、そして各個々のスポットからの結果を用いて、以下の設定:酵素「トリプシン」、種「ヒト」、固定修飾「カルバミドメチル」、場合による修飾「メチオニン酸化」および切断見逃し(missed cleavage)「1」を考慮して、Mascot検索エンジン(バージョン2.2、Matrix Science Ltd)を用いたSwiss−Prot(Sprot_57.8、20401タンパク質エントリー)非冗長データベースのヒトサブセットを検索した。質量許容を50ppmに設定した。これらの設定を用いて、70より大きいマスコットスコアを有意と解釈した(p<0.01)。
【0303】
結果
研究に含まれる36人の患者すべてのタンパク質抽出物を含有する混合内部標準とともに、腫瘍(膵臓および結腸)の血小板および正常試料の間で、2−DE多重化蛍光技術(NH DyeAGNOSTIC)を用いて、タンパク質発現を比較した。2−DE後、SameSpotsソフトウェアを用いたCy2、Cy3、およびCy5ゲル画像の分析によって、膵臓腫瘍および正常スポット体積比の間に統計的有意性を持つ35のタンパク質、ならびに結腸腫瘍および正常スポット体積比の間に統計的有意性を持つ36のタンパク質の存在量の変化が明らかになった(p<0.05)。すべてのタンパク質をゲルから切り出し、そして質量分析によってさらに分析した。
【0304】
要約すると、これらの研究によって、先に報告された血清バイオマーカーよりも高い特異性および感受性の癌腫を診断する潜在能力を持つユニークなタンパク質の新規の個々のパターンが明らかになった。
図8〜10、およ表7〜8を参照されたい。
【0305】
表7、研究3に記載するバイオマーカー候補、結腸直腸癌
【0306】
【表7】
【0307】
表8、研究4に記載するバイオマーカー候補、膵臓癌
【0308】
【表8】
【0309】
実施例6
卵巣癌の早期検出は非常に困難であるが、療法の早期開始および生存には非常に重要である。
【0310】
臨床的標準法によって患者から血液試料を得て、そして実施例1に記載する方法にしたがって血小板分画を調製する。血小板溶解物を調製し、そしてタンパク質を分離し、バイオマーカー(表2および
図2に明記する)を検出し、そして実施例1に記載する方法にしたがって定量化する。
【0311】
診断アルゴリズム(3)にしたがって、マーカーの相対量を計算する。次いで、診断アルゴリズムからの出力値を、定義したカットオフ値、好ましくは0.29に比較する。次いで、0.29を超える出力値は、卵巣癌に関する高リスクを示し、そしてしたがって、さらなる検査およびそれに続く療法を可能な限り早く開始すべきであることを示す。
【0312】
実施例7
実施例1〜2、または4〜5に記載する、患者に関して得られる結果を用いて、患者の予後改善のため、適切な治療レジメンを選択する。癌と同定された患者に関して、推奨されるケアプログラムにしたがって、遅延なしに治療を開始する。
【0313】
実施例8
抗体に基づく定量的技術を用いた、卵巣癌の血小板に基づく診断
実際的な臨床的設定において、上述のバイオマーカーを測定する方法を用いて、そして抗体に基づく技術を用いて、診断を行う必要がある場合、以下のシナリオが適用可能である:
(1)20人の良性対照および20人の進行した卵巣癌を有する患者由来の血小板の調製物を用いて、定量的ウェスタンブロット(あるいはELISAまたはLuminexに基づく技術)によって、上述のバイオマーカーパネルを分析する。次いで、各バイオマーカーの定量的シグナルを、適切な選択した内部標準の定量的シグナルに対して規準化する(例えばGAPDHまたはガンマ14−3−3、Baumgartner Rら Identification and validation of platelet low biological variation proteins, superior to GAPDH, actin and tubulin, as tools in clinical proteomics. J. Proteomics, 2013(94)540−51)。
【0314】
(2)次いで、実施例2に記載するように、適切な多変量ソフトウェア(例えばSIMCA P v13、Umetrics AB)によって、データを分析する。この方法は、新規の未知の試料の診断のための予測ツールとして用いられる予測モデルを生じる。予測モデルは、各新規試料に関して、0〜1の間の値を提供し、ここで>0.5の値は癌を示し、そして<0.5の値は良性病変を示す。この方法を用いて、標準化法を用いた局所予測データベースを構築し、そしてさらに、結果を他の認定された分析実験室からの対応するデータベースに比較してもよい
(3)以前には未知であった試料に対応する外科的組織試料の組織病理学的検査に基づいて得た最終診断後、情報(診断およびバイオマーカーレベル)を局所予測データベース(上記1を参照されたい)に加えた。この相互作用プロセスを通じて、感度および特異性増加を達成するため、予測モデルは次第にアップグレードされる。
【0315】
要約すると、本発明に記載するような早期非侵襲性癌診断で使用するため、個々の研究は、併せて、45のユニークなタンパク質マーカーを検出した。すべてのこれらのマーカー、および同定された研究を以下の表9に記載する。
【0316】
表9、要約表、研究1〜4のいずれかに記載するバイオマーカー候補(n=45)
【0317】
【表9-1】
【0318】
【表9-2】
【0319】
研究によって、記載する4種類の癌すべての診断に適用可能な、12バイオマーカーのパネルが明らかになった。表10を参照されたい。
【0320】
表10、研究1〜4すべてに共通のバイオマーカー候補
【0321】
【表10】
【0322】
上述の態様は、本発明のいくつかの例示的実施例と理解されるものとする。当業者には、多様な修飾、組み合わせおよび変化を行って、本発明の範囲から逸脱することなく、態様を作製することも可能であることが理解されるであろう。特に、異なる態様における異なる部分的解決を、技術的に可能である場合、他の配置と組み合わせてもよい。しかし、本発明の範囲は、付随する請求項によって定義される。