特許第6366651号(P6366651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンス イェンセン ルブリケイターズ アクティーゼルスカブの特許一覧

特許6366651好ましくは2行程ディーゼルエンジン内のシリンダの中に潤滑油を投与する方法及びシステム、及びそのような方法及びシステムの使用
<>
  • 特許6366651-好ましくは2行程ディーゼルエンジン内のシリンダの中に潤滑油を投与する方法及びシステム、及びそのような方法及びシステムの使用 図000005
  • 特許6366651-好ましくは2行程ディーゼルエンジン内のシリンダの中に潤滑油を投与する方法及びシステム、及びそのような方法及びシステムの使用 図000006
  • 特許6366651-好ましくは2行程ディーゼルエンジン内のシリンダの中に潤滑油を投与する方法及びシステム、及びそのような方法及びシステムの使用 図000007
  • 特許6366651-好ましくは2行程ディーゼルエンジン内のシリンダの中に潤滑油を投与する方法及びシステム、及びそのような方法及びシステムの使用 図000008
  • 特許6366651-好ましくは2行程ディーゼルエンジン内のシリンダの中に潤滑油を投与する方法及びシステム、及びそのような方法及びシステムの使用 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366651
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】好ましくは2行程ディーゼルエンジン内のシリンダの中に潤滑油を投与する方法及びシステム、及びそのような方法及びシステムの使用
(51)【国際特許分類】
   F01M 1/06 20060101AFI20180723BHJP
   F01M 5/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   F01M1/06 E
   F01M5/00 D
   F01M5/00 M
   F01M5/00 N
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-154565(P2016-154565)
(22)【出願日】2016年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-172575(P2017-172575A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】PA 2016 70169
(32)【優先日】2016年3月23日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】511081141
【氏名又は名称】ハンス イェンセン ルブリケイターズ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】レイザン ラヴェンドラン
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−163098(JP,A)
【文献】 特開2013−204480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/00−9/12
F02F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油の投与量を各シリンダの中に注入するように各々が適応された幾つかの注入器が使用される時に、強制潤滑システムを通じて潤滑油リザーバからシリンダ壁に設けられた前記注入器まで加圧下で潤滑油を送出する段階と、
前記注入器内の潤滑油、シリンダライナ、又は前記注入器の温度、若しくはそれらの組合せの温度を示すデータを確立する段階と、
この温度データをコンピュータに格納する段階と、
前記シリンダの中に注入する前に前記潤滑油の温度調節を確立するために、前記コンピュータによって制御され、かつ送出された前記潤滑油に連通されている少なくとも1つの温度調節ユニットを確立する段階と、
を含む、好ましくは2行程ディーゼルエンジン、例えば船舶エンジン内のシリンダの中に潤滑油を投与する方法であって、
前記潤滑油リザーバ内の潤滑油の温度を示すデータを確立する段階と、
この温度データをコンピュータに格納する段階と、
前記コンピュータが、均一注入が確立されるように前記潤滑油の粘性に影響を与えるための前記温度調節ユニット内の加熱/冷却を制御する時に、前記注入器内の潤滑油、前記シリンダライナ、又は前記注入器の温度、若しくはそれらの組合せの温度と、前記潤滑油リザーバ内の潤滑油の温度とに応じて、前記潤滑油の温度調節を制御する段階と、
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記潤滑油の温度と粘性との間の相関に関して前記コンピュータにアルゴリズム又はテーブルを確立する段階、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記注入器内の潤滑油、前記シリンダライナ、又は前記注入器の温度の測定が、前記注入器が前記シリンダ壁に設けられた区域内の温度計によって、又は前記注入器に組み込まれた温度計によって行われる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エンジンの運転状態、例えばエンジン負荷を検出し、そのようなデータを前記潤滑油の温度の指標として使用する段階、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記温度調節ユニットが前記注入器と直列に配置された場合に、前記注入器を通る前記潤滑油の通過前に温度調節が行われ、又は
前記温度調節ユニットが前記注入器に組み込まれた場合に、前記注入器を通る前記潤滑油の通過中に温度調節が行われる、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記潤滑油リザーバ内の温度計を使用して前記潤滑油の実際の温度を検出する段階、
を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記温度調節ユニット内の加熱/冷却が、前記潤滑油と熱交換連通している液体、好ましくは水を循環させることによって行われ、かつ
前記液体の循環の速度が、それによって前記温度調節に影響を与えるように調節される、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記潤滑油の温度調節は、0と250℃の間、好ましくは0と100℃の間の温度範囲内で行われる、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
潤滑油リザーバと、
前記潤滑油リザーバに接続された強制潤滑システムと、
注入器であって、潤滑油の投与量を各シリンダの中に注入するように各々が適応された幾つかの前記注入器が使用される時に、潤滑油が前記強制潤滑システムから前記注入器まで加圧下で送出されるように、前記強制潤滑システムに接続され、かつシリンダ壁に設けられた前記注入器と、
前記注入器内の潤滑油、シリンダライナ、又は前記注入器の温度、若しくはそれらの組合せの温度を示すデータを確立するための測定ユニットと、
この温度データを格納するためのコンピュータと、
前記潤滑油を加熱又は冷却するための加熱/冷却要素を備え、均一注入が確立されるように前記潤滑油の粘性に影響を与えるために前記シリンダの中に注入する前に前記潤滑油の温度調節を確立すべく、前記コンピュータによって制御され、かつ送出された前記潤滑油に連通された少なくとも1つの温度調節ユニットと、
を含む、好ましくは2行程ディーゼルエンジン、例えば船舶エンジン内のシリンダの中に潤滑油を投与するためのシステムであって、
前記潤滑油リザーバ内の前記潤滑油の温度を示すデータを確立ための測定ユニット、
を更に含み、
前記コンピュータが、均一注入が確立されるように前記潤滑油の粘性に影響を与えるための前記温度調節ユニット内の加熱/冷却を制御する時に、前記注入器内の潤滑油、前記シリンダライナ、又は前記注入器の温度、若しくはそれらの組合せの温度と、前記潤滑油リザーバ内の潤滑油の温度とに応じて、前記潤滑油の温度調節を制御する、ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
前記温度調節ユニットは、前記温度調節が前記注入器を通る前記潤滑油の通過前に行われるように前記注入器と直列に設けられ、又は
前記温度調節ユニットは、前記温度調節が前記注入器を通る前記潤滑油の通過中に行われるように前記注入器に組み込まれる、
ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記注入器が前記シリンダ壁に設けられた区域内の温度計であって、この区域内の前記シリンダライナの温度を測定するための前記温度計、又は前記注入器に組み込まれた温度計を含むことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
液体、好ましくは水が、それによって前記温度調節ユニットに加熱/冷却を確立するように前記潤滑油と熱交換連通して循環される熱交換器ユニットを含むことを特徴とする請求項9、請求項10、又は請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは2行程ディーゼルエンジン、例えば船舶エンジン内のシリンダの中に潤滑油を投与する方法に関し、本方法は、投与量の潤滑油を各シリンダの中に注入するように各々が適応している幾つかの注入器(injectors)が使用される時に、強制潤滑システムを通じて潤滑油リザーバからシリンダの壁に設けられた注入器まで加圧下で潤滑油を送出する段階と、注入器内の潤滑油、シリンダライナ、又は注入器、又はその組合せの温度を示すデータを確立する段階と、温度データをコンピュータに格納する段階と、シリンダの中に注入する前に潤滑油の温度調節を確立するためにコンピュータによって制御されて送出潤滑油に連通された少なくとも1つの温度調節ユニットを確立する段階と、を含む。
【0002】
本発明は、好ましくは2行程ディーゼルエンジン、例えば船舶エンジン内のシリンダの中に潤滑油を投与するためのシステムを更に含み、システムは、潤滑油リザーバと、潤滑油リザーバに接続された強制潤滑システムと、潤滑油が強制潤滑システムから注入器まで加圧下で送出される時に投与量の潤滑油を各シリンダの中に注入するように各々が適応された幾つかの注入器が使用される時に強制潤滑システムに接続され、かつシリンダの壁に設けられた注入器と、注入器内の潤滑油、シリンダライナ、又は注入器、又はその組合せの温度を示すデータを確立するための測定ユニットと、温度データを格納するためのコンピュータと、均一な注入を確立するために潤滑油の粘性に影響を与えるようにシリンダの中に注入する前に潤滑油の温度調節を確立するために、コンピュータによって制御され、かつ送出潤滑油に連通された少なくとも1つの温度調節ユニットと、を含む。
【0003】
本発明は、本方法又はシステムを注入器が一定供給圧力を有する共通油供給ラインに接続された強制潤滑システムに使用することに更に関する。
【背景技術】
【0004】
主として大きい2行程ディーゼルエンジンのための従来のシリンダ潤滑システムにおいて、1又は2以上の潤滑装置を含むことができる中央強制潤滑システムが使用され、各々は、単一又は複数のシリンダ内の各点で潤滑を提供し、すなわち、それぞれの接続ラインを通して加圧下で油の各部分を関連時間間隔で潤滑すべき様々な点に給送することによって潤滑を提供する。例えば、EP0678152を参照されたい。これらの関連間隔は、典型的には、ピストンが上向きに移動している圧縮行程中に潤滑の関連点の反対側にピストンリングが位置決めされる時であるとすることができる。
【0005】
潤滑装置は、従来、それぞれのシリンダに緊密に関連して装着され、かつ潤滑油のための給送リザーバと、シリンダ壁上の異なる点で油注入器の形態にある潤滑点とに接続されたポンプユニットとして設計される。各ポンプユニットは、様々な潤滑点で油を給送し、かつカムが設けられた共通回転制御シャフトによって駆動される複数の往復ポンプを含む。シャフトの回転により、圧縮ヘッドを有するカムは、シャフトの回転によるピストンが往復ポンプのピストンを起動するための往復移動を行うことになるように、制御シャフトに向けた方向にバネ付勢されたそれぞれの軸線方向に変位しているピストンに作用する。
【0006】
長年にわたって、潤滑装置は、エンジンピストンの上向き戻り行程中に、すなわち、圧縮作用中であるが着火燃焼によるその後の動力行程の前にシリンダの中に油が注入されるということが固定の標準であるので、ピストンポンプからの吐出圧力がそれほど高くないという条件の下で作動されてきた。
【0007】
強制潤滑システムも、幾つかのシリンダのための潤滑システムとして設けることができる。各シリンダは、例えば、30〜100barの大きさの一定供給圧力を有する共通潤滑油供給ラインに接続された幾つかの注入器を備えている。供給圧力は、潤滑油リザーバから供給される油圧ポンプユニットによって提供される。ポンプステーションは、ポンプ、フィルタ、及び潤滑油が静置ポンプを通じて戻るのを防止するチェックバルブを含むことができる。
【0008】
近年、ピストンの上向き移動中にスプレー潤滑を達成するために、加圧式噴霧ノズルを通じて油を注入することによって潤滑の効率を改善することが提案されている。しかし、これにより、油は、噴霧ノズルを通じて望ましい噴霧化を保証するために遥かに高い圧力、例えば、100barまで又はそれよりも大きい圧力で印加される。
【0009】
Hans Jensen Lubricatorsにより作られたシリンダ潤滑のためのSIP注入器を使用するそのような2行程船舶ディーゼルエンジンは公知である。
【0010】
潤滑油は、エンジンの掃気空気の中に噴霧され、それによって油は、シリンダ壁上の薄くて均等な層に分配される。市場の他の潤滑油注入器とは対照的に、SIP注入器は、シリンダ潤滑の必要性が最大であるシリンダ壁の上部のより最適なカバレージを達成する利点を有する。
【0011】
従来の注入システムに関しては、注入パターンは、注入ノズルの設計、液体の慣性、及び液体の性質によって大きく制御される。
【0012】
図4に示すオーネゾルゲ(Ohnesorge)ダイアグラムは、レイノルズ数(Re)及びオーネゾルゲ数(Z)を使用して表されるそれらのファクタの間の実験的相関を視覚化する。

ここで、uは、液体の速度であり、Dは、ノズル開口のサイズであり、ρは、液体の密度であり、μは、液体の粘性であり、σは、液体の表面張力である。
【0013】
ノズルの設計を変更すること又はシリンダ油の送出圧力を変更することによるSIPバルブの注入パターンを変更することができる2つの機械的方法がある。
【0014】
送出圧力は、SIPバルブのバネの特性を変更することによって調節される。それらのパラメータが確立されると、もはや手動干渉なしには注入パターンを変更することはできない。
【0015】
表面張力、密度、及び粘性は、大部分は市販シリンダ油に対して同一である。しかし、表面張力及び密度とは対照的に、粘性は、部分的に油の温度に依存する。
【0016】
広範囲の市販シリンダ油の粘性は、実験的に測定されており、粘性は、Arrheniusの式を使用して、すなわち、式3を使用して温度(T)の関数として説明することができると決められている。

【0017】
この式は、シリンダ油の粘性が昇温によって指数関数的に減少することを示している。従って、シリンダ油の温度は、オーネゾルゲダイアグラムを参照すると、注入パターンに有意な影響を有することになる。
【0018】
図5は、様々な潤滑油の粘性に対する温度の影響を示している。40〜300℃の間隔で粘性の劇的な低下がある。100℃を超える温度により、曲線は、水平になり、温度変化のみが非常に限られた粘性の変化を引き起こすように見える。
【0019】
注入パターンを変更することができる2つの以前の方法と比較して、温度制御は、遥かに柔軟な解決法であることになる。
【0020】
Sigurdsson,E.他、2014年、「大きい2行程船舶ディーゼルエンジンにおける掃気流及び対流熱伝達の数値解析」、Applied Energy,123,pp.37−46において、シリンダヘッドでのシリンダライナ温度は約50℃であり、シリンダライナの底部での掃気ポートでは約50℃があると示されている。温度は、2次多項式に従ってシリンダヘッドから掃気ポートまで低下する。
【0021】
シリンダ壁内の注入器は、注入器が位置決めされたライナ上の点と同じ温度を有することになる。
【0022】
従って、注入器の温度及びそれによって同じく注入器によって注入される潤滑油温度の大きい変動がある。それらの温度偏差は、潤滑油の粘性及びそれによって確立された注入パターンに影響を与える。
【0023】
EP2484875A1は、序論に示すタイプのシステム及び方法を開示している。この文書は、潤滑油リザーバ内の油に対する温度データの記録を説明していない。
【0024】
可能な限り少ない量の潤滑油を使用しながら均一かつ適正な潤滑を保証するために注入パターンの制御が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】EP0678152
【特許文献2】EP2484875 A1
【特許文献3】WO96/09492
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Sigurdsson,E.他、2014年、「大きい2行程船舶ディーゼルエンジンにおける掃気流及び対流熱伝達の数値解析」、Applied Energy,123,pp.37−46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
注入された潤滑油の不均等かつ変化する温度の欠点を回避し、それによって均一な注入を提供することができる方法及びシステムを示すことが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
このことは、序論に示すような種類の方法による本発明によって達成され、それは、本方法が、潤滑油リザーバ内の潤滑油温度を示すデータを確立する段階と、温度データをコンピュータに格納する段階と、均一な注入を確立するように潤滑油の粘性に影響を与えるための温度調節ユニットにおいてコンピュータが加熱/冷却を制御する時に、注入器内の潤滑油、シリンダライナ、又は注入器、又はその組合せの温度と潤滑油リザーバ内の潤滑油温度とに依存して潤滑油の温度調節を制御する段階とを更に含むという点で独特である。
【0029】
本発明によるシステムは、それが、潤滑油リザーバ内の潤滑油温度を示すデータを確立するための測定ユニットを更に含むという点で独特である。
【0030】
シリンダライナ、又は注入器、又はその組合せの温度を示すデータは、注入された潤滑油温度の表現として使用される。これは、注入器を通した注入時に直接に潤滑油温度を測定できない状況において使用される。これに代えて、潤滑油温度は、注入器を通して流れる潤滑油において直接に測定することができる。これに代えて、それらの温度測定の組合せを使用することができる。
【0031】
注入器内の潤滑油温度を調節することにより、簡単な方法で油の粘性を調節することができる。従って、温度を制御することにより、均一な注入を生成することができる。
【0032】
これが完全な噴霧化だけを含まないことに注意することは重要である。本発明により、温度制御により噴霧化の程度を制御することが可能であることになる。低い粘性は、低度の噴霧化をもたらすことになり、高い粘性は、高度の噴霧化をもたらすことになる。
【0033】
温度を制御することにより、潤滑油の不均等かつ変化する温度に対する補償が、温度調節を行うことによって行われ、それによって潤滑油の粘性に影響を与え、かつそれによって各潤滑油送出による均一注入を提供することができる。
【0034】
本説明において、潤滑油をシリンダの中に給送する方法に対する用語として表現「注入」が使用される。これは、潤滑油が噴霧スプレーとして又は完全又は部分的な小型ジェットとして現れるようにより多いか又はより少ない圧力を印加することによって達成することができる。同じく、給送は、油がシリンダの中に噴霧されているというよりもほとんどシリンダの中に流れ込むと言えるような方法で達成することができる。
【0035】
一定供給圧力を有する共通油供給ラインに注入器が接続された強制潤滑システムにおける本発明による方法又は本発明によるシステムの使用は、特定の利点を提供する。
【0036】
利点は、潤滑油リザーバから潤滑油が供給されるポンプユニットによって供給圧力が提供される強制潤滑システムにおいて更に達成される。粘性は、液体の内部摩擦を表す用語であるので、温度の変化は、注入器が一定供給圧力を有する共通油供給ラインに接続される与えられた時間間隔内に強制潤滑システムによって送出される潤滑油の量の調節を行うことを簡単な方法で可能にするということを提供することになる。
【0037】
注入された潤滑油のより高い温度は、こうしてより低い粘性をもたらすことになる。これは、より少ない摩擦が潤滑油に現れ、従って、大量の潤滑油を与えられた時間間隔内に注入することができることを意味する。
【0038】
注入時間が制御される強制潤滑システムにおいて、与えられた時間間隔内に注入される潤滑油の量を調節するために本発明を適用することが従って可能である。
【0039】
更に別の実施形態により、本発明による本方法は、本方法が、潤滑油温度と粘性の間の相関に関してコンピュータにアルゴリズム又はテーブルを確立する段階を更に含むという点で独特である。
【0040】
コンピュータにアルゴリズムを提供することにより、制御は、公式及び実測値に基づいて行うことができる。
【0041】
これに代えて、調節は、テーブルに表された予め決められた実験的相関数によっても達成することができる。アルゴリズム又はテーブルに基づく両状況において、潤滑油の望ましい粘性を得るように温度の調節を行うことができ、均一な注入パターンがシリンダライナ及び注入器内の温度変化とは無関係に達成されることを保証する。
【0042】
更に別の実施形態により、本発明による本方法は、注入器内の潤滑油、シリンダライナ、又は注入器の温度の測定が、注入器がシリンダ壁に設けられた区域の温度計により又は注入器に組み込まれた温度計によって行われることによって独特である。
【0043】
注入器でのシリンダライナ又は注入器自体の温度の直接測定を行うことにより、注入された潤滑油温度の間接的測定が達成される。注入器に組み込まれた温度が直接に潤滑油温度を測定する場合に、注入された潤滑油に存在する温度の測定が達成される。補償は、次に、潤滑油を加熱又は冷却することによって提供することができる。
【0044】
更に別の実施形態により、本発明による本方法は、エンジンの作動条件、例えば、エンジンに対する負荷を検出し、そのようなデータを潤滑油温度の指示として使用することによって独特である。
【0045】
一部の場合には、制御するための例えばエンジン負荷のような作動パラメータを使用することが得策である場合がある。エンジンの作動条件は、シリンダ壁における温度条件に影響を与えることになる。これに代えて、負荷のような作動条件は、潤滑油温度以外のパラメータを調節するための制御に使用することができる。エンジンに対する負荷に関するパラメータも、シリンダ壁の高さにわたる潤滑油の分布を調節するために使用することができる。同じく、温度条件を例えばシリンダ温度又は排気ガス温度のような他の作動パラメータと共に使用することができる。
【0046】
更に別の実施形態により、本発明による本方法は、温度調節ユニットが注入器と直列に配置される時に注入器を通る潤滑油の通過前に温度調節が行われ、又は温度調節ユニットが注入器に組み込まれる時に注入器を通る潤滑油の通過中に温度調節が行われるという点で独特である。
【0047】
一部の場合には、注入器と直列に温度調節ユニットを提供することが好ましい。これは、例えば、空間を節約するのに必要である場合がある。他の状況において、温度調節ユニットは、注入器に組み込まれることが好ましい。それによって注入器によって注入される直前に潤滑油の最も正確な温度調節が達成される。
【0048】
更に別の実施形態により、本発明による本方法は、本方法が、潤滑油リザーバ内の温度計を使用して潤滑油の実際の温度を検出する段階を更に含むという点で独特である。
【0049】
潤滑油リザーバ内の潤滑油温度を検出することにより、注入器内だけでなく潤滑油リザーバ内でも潤滑性の調節を行うことができる。潤滑油リザーバ内の油には、できるだけ注入器内の望ましい潤滑油温度の近くになる温度をこうして与えることができる。注入器に関連して設けられる温度調節ユニット内の加熱/冷却の必要性は、これにより低減される。これは、潤滑油リザーバに関連して配置される温度調節ユニットによって提供される。潤滑油リザーバでのそのような温度調節ユニットは、こうして注入器での温度調節ユニットと組み合わせて使用することができる。
【0050】
更に別の実施形態により、本発明による本方法は、温度調節ユニット内の加熱/冷却が、潤滑油と熱交換連通した液体、好ましくは水を循環させることによって行われ、液体循環の速度が、それによって温度調節に影響を与えるように調節されることによって独特である。
【0051】
ほとんどの大きいエンジンでは、冷却液体システムが設けられる。従って、加熱/冷却が循環冷却液体と潤滑油の間の熱交換によって行われる場合は特に得策であろう。水循環の速度を調節することによる簡単な方法で調節を行うことができる。
【0052】
水による加熱/冷却の代替として、他の液体を適用することができ、並びにガス又は電気を温度調節ユニットに使用することができる。
【0053】
更に別の実施形態により、本発明による本方法は、0〜250℃、好ましくは0〜100℃の温度範囲内で潤滑油の温度調節が行われるという点で独特である。
【0054】
上述のように、シリンダライナの温度は、約50〜250℃の間で変化する可能性がある。従って、0〜250℃の温度範囲は、温度調節に適切な範囲であることになる。更に、温度範囲100〜250℃では大きい粘性の差がないように見えるので、一部の場合には温度範囲0〜100℃でのみ調節を行うことが有利である場合がある。そのような状況において、100℃を超える温度での粘性は、100℃での粘性に同等であると仮定されることになる。
【0055】
潤滑油の温度は、それが注入器又は注入器に組み込まれたユニットを通過する前に油を加熱するユニットによって調節することができる。
【0056】
更に別の実施形態により、本発明によるシステムは、温度調節ユニットが、注入器を通る潤滑油の通過前に温度調節が行われるように注入器と直列に提供され、又は温度調節ユニットが、注入器を通る潤滑油の通過中に温度調節が行われるように注入器に組み込まれるという点で独特である。
【0057】
本方法に関連して上述したように、空間の考慮は、注入器と直列に又は注入器に組み込んで温度調節を配置することを得策にすることができる。
【0058】
更に別の実施形態により、本発明によるシステムは、区域内のシリンダライナの温度を測定するために注入器がシリンダ壁に設けられたその区域内の温度計又は注入器に組み込まれた温度計を含むことによって独特である。
【0059】
温度計は、単にシリンダの壁に位置付けるか又は注入器に組み込むことができる。注入器でのシリンダライナの温度又は注入器の温度を測定することにより、又は注入器内の潤滑油温度を測定することにより、注入された潤滑油の温度の非常に正確な指示が、温度調節を行って均一注入をそれによって確立することができるようにこうして達成される。
【0060】
更に別の実施形態により、本発明によるシステムは、液体、好ましくは水がそれによって温度調節ユニットに加熱/冷却を確立するように潤滑油と熱交換連通で循環される熱交換器ユニットを含むことによって独特である。
【0061】
上述のように、循環する水が使用される熱交換ユニットは、大きい2行程エンジンに関連して後者が多くの場合に冷却水システムを備えているので得策である。
【0062】
説明したシステムは、本発明によるシステムの例に過ぎない。従って、システムは、例えば、ノズル開口のすぐ近くにバルブが配置されるように変位可能バルブ本体が設けられたノズルロッドを含む注入ノズルの形態にある注入器のような他の方法で構成することができる。
【0063】
実際の作動に対して、追加の要素を必要とする。本発明を説明するのに必須の要素だけを説明する。
【0064】
注入器には、噴霧器バルブ又は1又は2以上のジェット/小型ジェットを有するバルブのいずれかを備えることができる。
【0065】
実施形態において、注入器は、加圧潤滑油のみが供給され、戻りラインなしで作ることができる。典型的な供給圧力は、30〜100barである。
【0066】
添付図面を参照して本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】従来技術システムの実施形態を示す図である。
図2】本発明によるシステムの第1の実施形態を示す図である。
図3】本発明によるシステムの第2の実施形態を示す図である。
図4】レイノルズ数(Re)とオーネゾルゲ数(Z)の間の実験的相関を視覚化するオーネゾルゲダイアグラムを示す図である。
図5】様々な潤滑油に対する温度と粘性の間の相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1、2、及び3に示されているのは、シリンダライナ5に適切な間隔で配置された幾つかの注入器3である。それらの注入器は、潤滑装置1から個々の注入器3に延びる油ライン2内のある一定の圧力で開くように提供される。
【0069】
内側シリンダ面のすぐ内部の注入器3の端部では、油ライン2の圧力が事前設定値に達すると油を噴霧するノズル開口を備えたノズル4が装着される。これに代えて、油は、噴霧なしに注入することができる。
【0070】
油は、油リザーバ7から油を受け入れる各油ライン2につき1つの幾つかの小さいポンプから構成される潤滑装置1から各油ライン2に供給される。
【0071】
油ポンプは、与えられた時間間隔で油の測定された部分を送出することができ、例えば、国際特許出願WO96/09492に開示するような従来の時限式シリンダ潤滑装置である場合がある。これらの注入器3は、油漏れが起こった場合に、漏れた油を油リザーバ7に誘導して戻すための戻りライン6が設けられるように設計される。注入器は、注入時間の機械的又は電子的決定に適応させることができる。
【0072】
Jは、注入器3からの油注入の流れを示し、Aは、このジェットが向けられるシリンダ壁の区域の周囲延長を示す。
【0073】
図2は、温度調節ユニット8が注入器3のための油供給に結合される図1に示すものに対応するシステムの第1の実施形態を示す。
【0074】
図3は、温度調節ユニット9が注入器3に組み込まれる図1に示すものに対応するシステムの第2の実施形態を示す。
【0075】
潤滑油は、渦流12を形成するエンジンの掃気空気の中に噴霧され、それによって油は、シリンダ壁5の内側で薄くて均等な層に分配される。
【0076】
掃気空気が存在しないピストンの上又はピストンの下に潤滑油を噴霧することも可能である。これは、ピストンの上方の注入に代えて又はそれと共に行うことができる。
【0077】
1又は2以上の温度計13(1つだけを示す)は、注入器3の区域内のシリンダ壁5に装着される。温度計14(図3のみに示す)は、注入器に組み込まれている。温度計14は、注入器の温度、又は注入器を通して注入される潤滑油の温度、又はこれらの温度の組合せを測定することができる。
【0078】
これらの温度計13、14は、有線(ワイヤは示さず)を通じて又は無線通信を通じてコンピュータ10に接続される。
【0079】
温度計11は、油リザーバ7に設けられ、かつ有線(ワイヤは示さず)を通じて又は無線通信を通じてコンピュータ10に接続される。
【0080】
コンピュータ10は、有線(ワイヤは示さず)を通じて又は無線通信を通じて温度調節ユニット8/9に接続される。
【0081】
温度調節ユニット8/9は、温度調節ユニット8/9内の加熱/冷却が電子又は媒体熱交換連通によって確立されるように、ワイヤ15を通じて加熱/冷却要素16に接続される。
【符号の説明】
【0082】
1 潤滑装置
3 注入器
4 ノズル
12 渦流
16 加熱/冷却要素
図1
図2
図3
図4
図5