特許第6366704号(P6366704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366704局所的な試料の特性によって制御されるプロービングの適応モードを備えたプロービングを利用したデータ収集システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366704
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】局所的な試料の特性によって制御されるプロービングの適応モードを備えたプロービングを利用したデータ収集システム
(51)【国際特許分類】
   G01Q 10/06 20100101AFI20180723BHJP
   G01Q 10/02 20100101ALI20180723BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G01Q10/06
   G01Q10/02 111
   H01L21/66 B
【請求項の数】18
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-523868(P2016-523868)
(86)(22)【出願日】2014年6月24日
(65)【公表番号】特表2016-530499(P2016-530499A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】US2014043975
(87)【国際公開番号】WO2014210083
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年6月22日
(31)【優先権主張番号】61/838,744
(32)【優先日】2013年6月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512304711
【氏名又は名称】ディーシージー システムズ、 インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DCG SYSTEMS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ユクレインセヴ,ウラジミール エー.
(72)【発明者】
【氏名】ストールカップ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】プレアドキン,セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】バークマイヤー,マイク
(72)【発明者】
【氏名】サンダーズ,ジョン
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−089542(JP,A)
【文献】 特開2003−156326(JP,A)
【文献】 特開2005−233700(JP,A)
【文献】 特開平10−283970(JP,A)
【文献】 特開2001−133381(JP,A)
【文献】 米国特許第05801381(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q 10/00 − 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のプロービングをおこなうための装置であって、
試料を支持するステージと、
前記試料からデータを収集するためにプローバを作動させるアクチュエータと、
前記プローバからデータ信号を収集し、前記アクチュエータに動作信号を送信するコントローラとを含み、
前記コントローラは、前記プローバから受信された前記データ信号に応じて前記動作信号を変化させるようにプログラムされ、
前記コントローラは、少なくとも第1走査モードと第2走査モードとの間で切り替えることによって、前記動作信号の走査の速さとプローブ接触力とを変化させるようにプログラムされ、
前記第2走査モードは、前記第1走査モードよりも遅く且つ力が大きい、装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記試料に対応するCAD設計データを読み取り、且つ前記CAD設計データに応じて前記動作信号を制御するようにさらにプログラムされた、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記データ信号に応じて、前記動作信号の走査の速さ、プローブ振動の振幅、前記プローブと前記試料の表面との間の隔たり、及びプローブ接触力のうちの少なくとも1つを変化させるようにプログラムされた、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記データ信号に応じて、少なくとも前記動作信号の走査の速さとプローブ接触力とを変化させるようにプログラムされた、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第2走査モードは、停止するまで減速することをさらに含む、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記プローバを、走査型電子顕微鏡によって取得された画像に位置合わせするようにさらにプログラムされた、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
プローブ先端を備えたプローバを用いて、試料のプロービングをおこなう方法であって、
前記プローブ先端を、第1の速さと第1の先端の力とを用いて前記試料の表面上で走査させながら、前記プローバから取得される信号を読み取るステップと、
前記プローブ先端が対象部分を横断することを前記信号が示すときに、前記プローブ先端を前記第1の速さから減速させ、前記第1の先端の力を増大させて、前記プローブ先端を用いて前記試料のテストをおこなうステップと、
前記テストが終了したときに、前記プローブ先端を前記第1の速さまで加速させ、前記力を前記第1の先端の力まで低下させるステップとを含む、方法。
【請求項8】
前記プローブ先端を減速させるステップは、テストをおこなう前に、前記プローブ先端が走査を停止するようにおこなわれる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記プローブ先端を、対象領域(ROI)の外側で前記試料に位置合わせするステップと、
前記プローブ先端を前記対象領域に無検知で(blindly)移動させるステップとをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記プローブ先端を位置合わせするステップは前記第1の速さを用いておこなわれる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記無検知で移動させることは、前記プローブ先端を前記試料と接触することなく移動させることである、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記無検知で移動させることは、前記第1の速さと前記第1の先端の力とを用いておこなわれる、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記プローブ先端を加速させる前に、テストデータ品質を評価することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
ナノプローブを用いて集積回路(IC)をテストするための方法であって、
前記ナノプローブを前記ICの所定の部分に位置合わせするために、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いるステップと、
前記ナノプローブを対象領域にナビゲートするステップと、
前記ナノプローブを前記ICの表面上で走査させながら、前記ナノプローブからのデータを読み取るステップと、
前記ナノプローブが対象部分を横断することを前記ナノプローブからのデータが示すときに、前記ナノプローブの走査の速さを減速させ、前記ICのテストをおこなうステップとを含み、
前記走査の速さを減速させるとき、前記ナノプローブの先端の力は増大される、方法。
【請求項15】
前記走査の速さを減速させるステップは、停止するまで減速することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノプローブからのデータの信号対ノイズ比を検出し、前記信号対ノイズ比が予め設定されたしきい値に達するときに前記ナノプローブの先端の力の増大を停止させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノプローブを対象領域にナビゲートするステップは、前記ナノプローブが前記ICの表面上をホバリングすることを伴う前記ナノプローブの移動を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノプローブを走査させるステップは、規定のナノプローブの先端の力で走査させることを含み、また該方法は、前記走査の速さを減速させるステップ時に前記ナノプローブの先端の力を増大させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2013年6月24日に出願された米国仮特許出願第61/838,744号の優先権を主張し、その開示の全体が参照文献として本願明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、走査プローブ及びナノプロービングシステムを用いた、試料プローピング(電気プローピングを含む)の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
(走査又はポイントプロービングを用いる)ナノプロービングは、ナノサイズの対象についての種々のタイプの電気的、機械的、組成的、及び化学的・物理的特性評価に及ぶ、解析科学の非常に広範な分野である。ナノ電子デバイス及びその構成要素はそのような対象の例である。集積回路(IC)における単独のトランジスタ、メモリビットセル、及び重要な部分の電気プロービングは、新たに設計されたICの性能をテストし、特定のICの設計及び/又は全体的な技術の潜在的な問題を是正するために広く用いられている。
【0004】
ナノプローブは、ICの素子をテストするために、ICの表面と物理的に接触し、ICの表面を走査するように構成される。走査は、トポグラフィ画像、静電容量画像(dC/dV)などを生成するために用いられることができる。これらの画像を生成するため、プローブに適用される同じ速さ、同じ力でプローブが表面を走査する場合、画像のすべての画素が生成される。しかしながら、走査の所定の領域が特定のテストの対象ではなく、高解像度で遅い走査を必要としない場合がある。その他の場合には、対象領域(ROI)における所定の領域が軟らかいか又はより感応的な層で構成され、より弱い力が適用される必要がある。さらに他の場合には、走査の必要はなく、例えばポイントプロービングモードにおいて電気的信号を読み出すために、プローブは所定の素子に単に接触する必要がある。即ち、上述のような場合が考慮される、ナノプローブを操作するためのナノプロービング装置及び方法の向上が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示における以下の発明の概要は、本発明の一部の態様及び特徴に対して基本的な理解をするために含まれる。この発明の概要は、本発明の広範な概要ではなく、また本発明のキーになる若しくは重要な要素を具体的に特定すること、又は本発明の範囲を示すこと、を意図するものではない。その唯一の目的は、以下に示されるより詳細な説明の前置きとして、本発明のいくつかのコンセプトを単純化した形態で示すことである。
【0006】
開示される種々の実施形態では、プローブ走査の速さ及び力が試料の走査中に変化するシステム及び方法が用いられる。プローブが対象ではない領域を走査しているとき、新しい対象領域に達するまで速さが増加され、そして速さが低下されることが可能である。同様に、プローブが感応領域又は対象ではない領域をスキャンしているとき、感応領域の損傷を防いでプローブの摩耗を低減するために、力が低下されることが可能である。例えば、プローブが層間絶縁物上を走査するとき、絶縁領域は電気的テストには関わらないという理由から、(試料の損傷及びプローブ先端の摩耗を少なくするために)力は低減される必要があり、(低解像度であってもより高いスループットを得るために)速さは増加される必要がある。
【0007】
他の実施形態において、プローブは電気的データを収集するために用いられ、故に試料を走査する必要ないが、デバイス上の所定のポイントとは接触する。このような場合、プローブの位置は対象領域外の試料に位置合わせされる。そして、プローブは、(例としてCADファイルからの)回路レイアウトのアプリオリの情報を用いて、何も検知せずに(blindly)、即ち試料と物理的に接触することなく、試料上を対象領域へと移動される。プローブが所定のポイント上の適切な位置にあるとき、プローブは適切なポイント上に「着地」するために降下される。
【0008】
開示される実施形態では、試料のプロービング時に、プローブ動作の適応型(即ち、変化型)モードが実行される。適応型モードでは、ホッピング、コンタクト走査、ノンコンタクト走査、タッピング、可変フィードバック型走査、異なる速さの走査、異なる力の走査、異なる振動の振幅の走査など、のいずれかの動作モードの組合せを用いて、プローブが試料をテストするように動作される。特定の動作モードは、試料の局所的特性次第で選択され、これは(例えばCAD情報から)アプリオリに知られるか、又は/及び(例えば、強く高い信号対ノイズ比の電気的又は機械的プローブ信号から)リアルタイムで評価される。
【0009】
本実施形態は、(1)試料の局所的特性と(2)特定の位置でおこなわれる測定のタイプとに適合し依存する、最適化されたプローブと試料との相互作用を用いて得られるデータの品質向上に有益である。また本実施形態は、安定的な試料とプローブとのシステムにおける反復可能で正確な測定のために、プローブ先端の不必要な摩耗を避けることで、試料とプローブとを保護するのに有益である。
【0010】
本発明のその他の態様及び特徴は、以下の図面を参照して記載される発明の詳細な説明から明白になる。発明の詳細な説明及び図面は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の、種々の実施形態の非限定的な種々の実施例を表すということが言及される必要がある。
【0011】
本明細書に包含され、その一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を例示し、発明の詳細な説明と共に本発明の原理を説明し描出する役割を担う。図面は模式的に例示の実施形態の主要な特徴を示すことが意図されている。また、図面では、実際の実施形態のすべての特徴や、描かれる要素の相対的なサイズが提示されることは意図されていない。そして、図面は正確な縮尺率ではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態におけるプロービングシステムを示す。
図2図2は、一実施形態における様々なプロービングモードを示す。
図3図3は、一実施形態における位置合わせ及び無検知(blind)移動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の有利性を示すため、種々の実施形態が以下に記載される。その有利性の一部として以下のことを含む。
【0014】
(1)プローブ先端の物理的接触を伴う試料の走査は、試料に損傷を与え得る。試料の所定の位置又は部分において、規定の力又は圧力での物理的接触は、必要なデータを取得するために必要とされる。しかし、試料のいくつかの部分がテストには重要ではない場合がある。そのような場合に、開示の実施形態では、走査のコンタクトモードによって引き起こされる損傷が回避される。
【0015】
(2)プローバのスループット及びデータ品質は、高速と低圧又は非対象領域上における非接触の移動を用いて、並びに、(最適化された)漸増圧力接触移動又はさらに(所望のデータ品質を得るために必要とされる時間)対象部分に十分に停止することを用いて、最適化されることが可能である。
【0016】
(3)プローブ先端の寿命は、高圧、及び/又は必要のないときの試料との接触を回避することによって延長されることができる。プローブ先端は、試料の表面上の安全な高さで、非対象領域上を「飛行」するように構成され得る。
【0017】
(4)信頼性の高い電気的データを試料から収集する必要がある場合、データ取得時にプローブを完全に停止させ十分に接触させて配置することで、データ品質が向上されることができる。
【0018】
上述の有利性は、以下に記載される実施形態において獲得される。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態のナノプローバシステムを表す。マイクロチップなどの試料105はxyzステージ110に配置される。ステージ110は、コントローラ130によって、又は個別のステージコントローラによって制御されてもよい。ナノプローバ115は、例えば圧電アクチュエータなどのアクチュエータ113と、プローブ先端117とを含む。プローブ先端117は、アクチュエータ113の動作により、試料105の表面に配置されるか及び/又は試料105の表面にわたって移動されてもよい。アクチュエータ113はコントローラ130によって制御される。また、プローブ先端117からデータが収集されるとき、該データはコントローラ130に送信される。追加として、先端117の動作は、レーザ120を使用して先端を照射し、光学センサ125を使用して反射を感知することで検知されることができる。照射及び光学検知は同じコントローラ130を用いて制御されることが可能である。光学検知は、トポグラフィマップ、表面電位マップ、静電容量マップなどを作成するために、プローブ先端117のZ動作、即ち高さの変化や、プローブ先端117の振動の振幅及び周波数の検知に特に有用である。この技術についてのさらなる情報は、米国特許第5,267,471に見受けられ、その開示は全体が参照文献として本願明細書に組み込まれる。図1では単に1つのナノプローバ115が示されているが、記載される種々の実施形態において試料を共にテストするために複数のナノプローバが用いられる。一実施例では、8つのナノプローバ先端がコントローラ130によって共に制御される。
【0020】
図2は、図1に示されるようなプローブ先端117を適応的に走査するための方法の実施形態を示す。図2の下部において、試料105の部分の断面が示される。この実施例では、試料105は金属の領域102と層間絶縁物104の領域とを有する。走査及び時間は左から右に進行し、図2の上部において、プロットのx軸に表される。走査の速さ(1点鎖線で表される)及び力(2点鎖線で表される)は、プローブから読み出されるプロービング信号(実線で表される)に従ってコントローラで制御される。速さ、力、及びプローブ信号はY軸上にプロットされる。例として、導電性又は容量性信号(dC/dV)のためにプローブ信号を確認する場合、プローブ先端が絶縁領域104上にある、即ち試料105の左側にあると、プローバからは信号が読み出されないか、又は低レベルの信号が読み出される。この期間、プローバは高速及び低圧モードで操作される。高レベル信号の検出は(実線のプロット)、プローブ先端が導電領域102上を横断していることを示す。そして、プローバが十分に停止するまで速さが低下される。その間、力は増大され、データ取得が開始される。力は、例えば、プローブ先端の屈曲を測定し信号をコントローラ130に送出する、応力センサ又は歪みセンサによって測定されることが可能である。適切な信号対ノイズ比が得られると、データ取得は停止されて、走査は高速及び低接触力(又は接触力なし)で続けられる。走査は、次に金属又は高信号領域に達するまでこのモードで続行され、処理は反復される。
【0021】
他の実施例では、プローブと試料との相互作用における走査の速さ及び力の変更は、CADファイル140(図1)からのCAD情報が起因となる。さらに、CADデータファイルは静電容量(dC/dV)又は任意の他の信号と共に用いられることが可能である。例えば、プローブ先端が層間絶縁物を示す領域上にあることをCADデータが表すとき、これらの領域が一度にスキップされる(ホッピング)か、又は最高速度及び最低接触力で走査されてもよい。そして、導電性(又は対象の他の特性)に対応するCADデータが示す領域に達する前に、速さが低下され、力が増大されるか又は増大されず、走査は、プローバから静電容量又はその他のデータを読み取っている間継続される。静電容量dC/dV信号の予め設定されたしきい値が検出されるとき、プローブ走査は、図2に示される速さ・力の信号に従って制御される。データの取得は適切な信号対ノイズ比が得られるまで継続され、そして高速及び低力(ホッピングのためおそらくはゼロ)での走査が、CADデータによって示される次の部分に向かって継続される。こうしてこの実施形態において、最大設定点まで力を増大させる間に、ホッピング(接触なし、力はゼロ、及び高速)、高速・低力、並びに減速から停止、の3つのモードが用いられることが可能である。
【0022】
一実施形態では、試料を位置合わせするためのプローブは対象領域の外側でおこなわれる。プローブは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)イメージングなどのイメージングを用いて試料に位置合わせされることができる。試料は、ホッピング・走査モード用に使用される場合に、CADパターンに位置合わせされてもよい。プローブがSEMイメージ及びCADパターンに位置合わせされると、対象点までの「無検知(blind)移動」とその後のデータ取得がおこなわれることが可能である。無検知移動は、GPS(グローバルポジショニングシステム)と同様に、ナビゲーション用のCADデータを用いて支援されることが可能である。プローブ対ステージのドリフト量次第で、試料を再位置合わせし訂正するための定期的なプローブが必要となり得る。
【0023】
図3では、位置合わせのためのSEMの使用と、例えばCADデータを用いて対象領域への無検知移動をおこなうことが示される。図3において、試料105の部分が表され、(感応装置であり得る)対象領域及び(アライメントの標的又は対象ではない部分であり得る)非対象領域である2つの特定の部分が示されている。示される領域内で、表面は部分的に絶縁物104であり、部分的には例えば金属端子、金属線などの対象である部分102である。非対象領域はまずSEMを用いて撮像され、プローブ先端117は試料上に降下される。各プローブの先端の位置は、試料のSEMイメージ及び対応するCADパターンに位置合わせされる。この示される領域は対象ではないので、SEMのeビームに曝露されることが可能である。しかしながら、対象領域を妨害又は損傷しないために、対象領域はeビームによって走査されず、対象領域のSEMイメージは生成されない。そのかわりに、システムはCAD設計又はその他のナビゲーション支援からの情報を用いて、各先端を、対象領域における選択された対象部分へと無検知で移動させ、対象部分において選択された対象機構上に降下させる。一実施例では、該移動の後に、プローブの速さがゼロ且つ最適な接触力でデータ取得がおこなわれ、その後に、次の対象領域への無検知移動がおこなわれるか、又は非対象領域の位置合わせに戻る。移動はCAD又は/及びその他のナビゲーションデータを用いておこなわれる。位置合わせ点に戻るごとに、試料の位置へのプローブは再調整される。再調整により、この2つの遅く相関的なドリフトによって(例として熱ドリフトによって)起きる試料の位置合わせの不正確性が低減される。
【0024】
電気的ナノプロービングは適応型プロービングの一例として提示されるが、同様の方法がその他のタイプのプロービングに用いられ得る。一実施例によると、先端増強型光回路分析(TEOCA)が、いわゆる裏側方法を用いておこなわれてもよい。この方法では、Siウエハは約100nm厚に薄化される。ICテスタは、通常の方法では前側からICに接続される。標準的なICテストは薄化されたチップにおこなわれる。動作するFETp/n接合からの電子光学的放出は、高解像度・高開口数の光学系を用いて通常は検出される(www.dcg.systems.com)。この実施例では、ナノプローバ先端は、ウエハの裏側から対象領域に対して用いられる。
【0025】
金属プローブは、プローブ頂点付近の電磁(EM)場を増幅するアンテナとして作用する(この効果は先端増強型ラマン分光法又はTERSと類似する)。結果的に、(ウエハの裏側に配置される)低解像度の光学系は、任意の時点で、大部分は(電磁場が増幅される)プローブ頂点付近から光子を収集する。収集された信号がプローブの位置と同期されると、高解像度の電子光学的放出マップが構成される。
【0026】
この実施例のその他の実施形態によると、ナノプローバ先端は、可変速度且つ試料表面とプローブとの間を可変距離で、ウエハの裏側と平行に移動される。このような適応型プローブ動作(速さと距離)により、スループット、信号対ノイズ、及びTEOCA方法の横方向の解像度が向上される。
【0027】
他の実施例において、高解像度且つ高スループットの欠陥解析のために、前側TE光学分光法(ラマン又は蛍光)が用いられることが可能である。試料を照射するために大きいレーザスポットが用いられる。プローブは低倍率(ナノメータ)のトポグラフィで対象領域上を走査される。低解像度の光学系は、散乱された(ラマン又は/及び蛍光)光子の収集に用いられる。空間解像度の方法は、光子を収集する光学系の解像度ではなく、プローブ頂点のサイズによって規定される。画素ごとの長い時間が、十分な数の散乱光子を収集するために使われるので、該方法のスループットは通常は非常に低い。散乱光子のスペクトルマップを収集しようとする場合、データ収集時間はおよそ現実的ではなくなる。適応型走査はデータ獲得時間の削減を支援する。先端は高速で走査され、比較的貧弱な信号対ノイズを有する単色の信号を収集する。疑わしい(単色の)信号が所定の位置で検出されると、プローブはその位置で停止し、高い信号対ノイズのスペクトルデータを装置が収集する。
図1
図2
図3