(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366714
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】2チャンバ式のエアドライヤを再生する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20180723BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
B01D53/26 231
B60T17/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-537289(P2016-537289)
(86)(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公表番号】特表2016-534870(P2016-534870A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】EP2014068217
(87)【国際公開番号】WO2015028533
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2016年4月27日
(31)【優先権主張番号】102013109476.7
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503159597
【氏名又は名称】クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア シーネンファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Schienenfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス キップ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ウラ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス メアケル
(72)【発明者】
【氏名】ゲアト アスマン
【審査官】
河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−130118(JP,A)
【文献】
特開2004−003844(JP,A)
【文献】
実公昭55−023621(JP,Y1)
【文献】
特開昭63−088020(JP,A)
【文献】
特開平08−117388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26 − 53/28
B60T 15/00 − 17/22
B01J 20/00 − 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着式エアドライヤ(4)を再生する方法であって、
前記吸着式エアドライヤ(4)を、少なくとも2つの互いに並列に接続し、かつ乾燥剤が充填された乾燥容器(3a,3b)によって動作し、
乾燥サイクルにある少なくとも2つの前記乾燥容器の一方(3a)により、圧縮機(1)によって生成された湿った圧縮空気流を乾燥し、
同時に行われる再生サイクルにある他方の前記乾燥容器(3b)に、前記乾燥剤を除湿するための乾いた圧縮空気流を通流し、
通常動作中には、各前記乾燥容器(3a,3b)を、弁制御によって乾燥サイクルと再生サイクルとで交互に切り替える、
方法において、
後再生のために、前記通常動作の終了後に、車両の停止時に、当該終了時点においてまだ前記再生サイクルにある前記乾燥容器(3b)を、乾いた圧縮空気を通流させ続けることによって完全に再生し、
前記終了時点において前記乾燥サイクルにある他方の前記乾燥容器(3a)も、乾いた圧縮空気の通流に切り替えることによって完全に再生し、
前記車両の次の動作開始を、各前記乾燥容器(3a,3b)が完全に再生された状態で開始する、
ただし、前記通常動作の終了後に、各前記乾燥容器(3a,3b)を後再生するために使用される乾いた圧縮空気を、前記吸着式エアドライヤ(4)に後置接続された貯蔵圧力容器(6)から逆流した主空気流から分岐させる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記通常動作中に、前記再生サイクルにある乾燥容器(3b)を再生させるために使用される乾いた圧縮空気を、前記乾燥サイクルにある他方の前記乾燥容器(3a)の吐出口側から吐出された主空気流から分岐させる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
吸着式エアドライヤ(4)を再生させる装置であって、
前記吸着式エアドライヤ(4)は、少なくとも2つの互いに並列に接続され、かつ乾燥剤が充填された乾燥容器(3a,3b)を有し、
乾燥サイクル中に、前記少なくとも2つの乾燥容器の一方(3a)を、圧縮機(1)によって生成された湿った圧縮空気流が通流し、
同時に行われる再生サイクル中に、他方の前記乾燥容器(3b)を、前記乾燥剤を除湿するための乾いた圧縮空気流が通流し、
通常動作中に各前記乾燥容器(3a,3b)を乾燥サイクルと再生サイクルとで交互に切り替えるための弁装置(2a,2b)が設けられている、
装置において、
後再生サイクルを実施する制御技術的手段が設けられており、
前記制御技術的手段は、後再生のために、前記通常動作の終了後に、車両の停止時に、当該終了時点においてまだ前記再生サイクルにある前記乾燥容器(3b)を、前記乾燥容器(3b)に乾いた圧縮空気を通流させ続けることによって、完全に再生させ、他方の前記乾燥容器(3a)にも乾いた圧縮空気を通流させることによって当該乾燥容器(3a)を完全に再生させ、
前記車両の次の動作開始を、各前記乾燥容器(3a,3b)が完全に再生された状態で開始させる、
ただし、前記通常動作の終了後に、各前記乾燥容器(3a,3b)を後再生するために使用される乾いた圧縮空気を、前記吸着式エアドライヤ(4)に後置接続された貯蔵圧力容器(6)から逆流した主空気流から分岐させる、
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
2つの前記乾燥容器(3a,3b)の吐出口側から吐出された乾いた圧縮空気は、主空気流を貯蔵圧力容器(6)に案内する1つの共通の圧縮空気通路(5)に合流している、
請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記圧縮空気通路(5)内に逆止弁(7)が配置されており、
乾いた圧縮空気が前記再生サイクル中に、前記主空気流が通流する前記圧縮空気通路(5)を通って各前記乾燥容器(3a,3b)に逆流することが防止される、
請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記主空気流が通流する前記圧縮空気通路(5)における前記逆止弁(7)と前記貯蔵圧力容器(6)との間の領域から分岐路(8)が分岐しており、前記分岐路(8)は、再生のために各前記乾燥容器(3a,3b)に合流している、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
各前記乾燥容器(3a,3b)を乾燥サイクルと再生サイクルとで交互に切り替えるための弁装置(2a,2b)が設けられており、
前記弁装置(2a,2b)は、前記圧縮機(1)に後置接続されており、各前記乾燥容器(3a,3b)の導入口側に配置されている、
請求項3記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着式エアドライヤを再生する方法及び装置であって、前記吸着式エアドライヤを、少なくとも2つの互いに並列に接続され、かつ乾燥剤が充填された乾燥容器によって動作させ、乾燥サイクルにある前記少なくとも2つの乾燥容器のうちの一方により、圧縮機によって生成された湿った圧縮空気流を乾燥させ、同時に行われる再生サイクルにある他方の乾燥容器に、前記乾燥剤を除湿するための乾いた圧縮空気流を通流させ、前記吸着式エアドライヤの通常動作中には、各前記乾燥容器は、弁制御によって乾燥サイクルと再生サイクルとで交互に切り替えられる、方法及び装置に関する。
【0002】
本発明の適用分野は、主に鉄道車両用の圧縮空気システムを対象としている。ここでは、一般的に牽引車に搭載されている圧縮機によって、空気圧ブレーキ装置と、場合によっては別のユニットとを駆動するための圧縮空気が生成される。本発明に係る解決方法はさらに、乾燥サイクルと再生サイクルとで切り替え動作を実施する他の車両の吸着式エアドライヤにも適用することができる。
【背景技術】
【0003】
独国特許出願公開第3533893号明細書から、とりわけ車両のブレーキ装置に圧縮空気を供給するための吸着式エアドライヤが開示されており、この吸着式エアドライヤは2チャンバ式の形態で構成されており、互いに並列に接続され、かつ乾燥剤を備える2つの乾燥容器を有する。これら2つの乾燥容器は、乾いた圧縮空気の連続的な供給を保証するために、乾燥サイクルと再生サイクルとで交互に並列に動作される。乾燥サイクルと再生サイクルとの切り替えは、タイムクロックに即して切り替え可能な弁機構によって実施される。この弁機構は交互に、圧縮機から吐出された湿った圧縮空気を乾燥容器の一方に導入し、それぞれ他方の乾燥容器から、再生時に使用された部分空気量を誘導する。弁機構は、ただ1つの電磁弁によって制御可能な2つのプッシュプル型で動作する個々の弁を備える切替弁からなる。
【0004】
実際には、鉄道車両の停止後における吸着式エアドライヤの通常動作は、乾燥剤中の水分の不定の蓄積によって中断されるという問題が生じる。湿気の蓄積によって乾燥剤の寿命はより短くなる。従って、凝固点を下回る温度における鉄道車両、ひいては圧縮機駆動部の動作再開時には、吸着式エアドライヤを面倒にも予熱する必要がある。この厄介な始動条件に基づき、例えば氷形成のような動作障害に対する脆弱性が高まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、吸着式エアドライヤを再生する方法及び装置を改良して、動作開始時における動作障害を技術的に簡単な手段によって回避し、乾燥剤をより長期間使用可能となるような方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、方法技術に関しては請求項1によって解決される。上記の課題は、方法技術に対応する装置に関しては請求項4によって解決される。それぞれの従属請求項は、本発明の有利な発展形態を示している。
【0007】
本発明の技術的教示によれば、前記吸着式エアドライヤの通常動作の終了後に、当該終了時点においてまだ前記再生サイクルにある前記乾燥容器に、乾いた圧縮空気を通流させ続けることによって当該乾燥容器を完全に再生させ、前記終了時点において前記乾燥サイクルにある他方の乾燥容器も、乾いた圧縮空気の通流に切り替えることによって完全に再生させ、前記吸着式エアドライヤの次の動作開始を、各前記乾燥容器が完全に再生された状態で開始させる。
【0008】
換言すると、車両の停止時に吸着式エアドライヤの両乾燥容器が完全に再生され、このために好ましくは、貯蔵圧力容器からの乾いた空気が利用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る解決方法の利点は、とりわけ車両の次の動作開始時に吸着式エアドライヤの予熱がもはや不要となることである。通常動作の終了直後に実施される乾燥剤の除湿によって、乾燥剤の吸水能力が改善され、このことは寿命を延長させる効果をもたらす。さらには、動作開始段階における圧縮空気の消費量が低減され、走行準備が完了するまでの期間が短縮される。
【0010】
好ましくは、前記吸着式エアドライヤの通常動作中に、前記再生サイクルにある乾燥容器を再生させるために使用される乾いた圧縮空気は、前記乾燥サイクルにある他方の前記乾燥容器の吐出口側から吐出された主空気流から分岐される。これによって通常動作中の再生を、乾いた圧縮空気を追加的に貯蔵することなく実施することが可能となる。
【0011】
これに対して通常動作の終了後には、各前記乾燥容器を後再生するために使用される乾いた圧縮空気は、好ましくは前記吸着式エアドライヤに後置接続された貯蔵圧力容器から逆流した主空気流から分岐される。従って、通常動作の終了後における各乾燥容器の本発明に係る後再生のために、貯蔵圧力容器内に貯蔵されているいずれにせよこれ以上は必要ない乾いた圧縮空気を利用することができる。このようにして、貯蔵された圧力エネルギが効率的に後利用される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、2つの前記乾燥容器の吐出口側から吐出された乾いた圧縮空気は、主空気流を貯蔵圧力容器に案内する1つの共通の圧縮空気通路に合流している。すなわち、乾いた圧縮空気はこの圧縮空気通路に統合され、乾燥容器に近いこの場所において再生用に取り出すことができる。乾いた空気が再生中に、前記主空気流が通流する前記圧縮空気通路を通って各前記乾燥容器に逆流することを防止するために、前記圧縮空気通路内に逆止弁を使用することが提案される。この場合には逆止作用は、乾燥容器の方向に生じる。
【0013】
好ましくは、前記主空気流が通流する前記圧縮空気通路における前記逆止弁と前記貯蔵圧力容器との間の領域から分岐路が分岐しており、前記分岐路は、前記乾燥剤を再生させるために各前記乾燥容器に合流している。
【0014】
好ましい実施形態によれば、各前記乾燥容器の導入口側に、各前記乾燥容器を乾燥サイクルと再生サイクルとで交互に切り替えるための弁装置が配置されている。この弁装置は、1つの共通のバルブブロックとして纏めてよく、又は、各乾燥容器毎の個別のバルブとして構成してもよい。好ましくは、中央電子制御ユニットによって乾燥サイクルと再生サイクルとで交互に動作される電空弁が使用される。後再生中にはこの弁装置を閉弁位置にすべきである。
【0015】
本発明を改善するさらなる手段は、以下に、図面に基づく本発明の好ましい実施形態についての説明と共により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】通常動作中における吸着式エアドライヤの概略図である。
【
図2】後再生サイクル中における吸着式エアドライヤの概略図である。
【
図3】乾燥容器の後再生の終了後における吸着式エアドライヤの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1によれば、圧縮機1が、鉄道車両の通常動作中に、吸着式エアドライヤ4の構成要素である2つの乾燥容器3a及び3bの一方に弁装置2a,2bを介して交互に圧縮空気を圧送する。
図1では、弁装置の弁2aは、圧縮機1と乾燥チャンバ3aとの間で接続された状態にあり、その一方で、他方の乾燥チャンバ3bは、弁装置の弁2bが閉弁されているため圧縮機1には接続されておらず、乾燥チャンバ3bの排気のために大気に接続されている。
【0018】
2つの乾燥容器3a,3bの2つの部分空気流は、乾燥容器3a,3bの吐出口側において、圧縮空気通路5によって統合されて1つの乾いた圧縮空気の主空気流となり、そしてこの乾いた圧縮空気は、貯蔵圧力容器6へと導かれる。
【0019】
圧縮空気通路5内には、乾燥容器3a,3bの方向への阻止作用を有する逆止弁7が配置されており、乾いた圧縮空気が再生サイクル中に、主空気流が通流する圧縮空気通路5を通って乾燥容器3a又は3bに逆流することを防止している。圧縮空気通路5における逆止弁7と貯蔵圧力容器6との間の領域から分岐路8が分岐しており、この分岐路8は、再生用に乾いた圧縮空気を案内するために乾燥容器3a及び3bに合流している。
【0020】
図示されていない電子制御装置により、時間又は需要に基づく制御によって弁装置2a及び2bが切り替えられ、そうして水分が飽和した乾燥剤を備えている乾燥容器3aが、乾燥サイクルから再生サイクルへと切り替えられる。これと同時に、再生サイクルにある他方の乾燥容器3bが、乾燥サイクルへと切り替えられ、乾いた圧縮空気の継続的な圧送が保証される。この切り替えは、吸着式エアドライヤ及び吸着式エアドライヤが含まれた車両の通常動作中にわたって繰り返される。
【0021】
図2によれば、車両の停止後に、すなわち通常動作の終了後に、2つの乾燥容器3a及び3bの後再生が実施される。従って、当該終了時点においてまだ再生サイクルにある乾燥容器3bは、充填された貯蔵圧力容器6から通常動作の終了後に取り出された乾いた圧縮空気によって、完全に再生が完了される。この場合には逆止弁7は、貯蔵圧力容器6からの圧縮空気が主空気通路5を逆流して乾燥容器3a及び3bに到達するのを阻止することによって、これ以上の圧力損失が生じないことを保証している。
【0022】
通常動作が終了するまで乾燥サイクル中にあった他方の乾燥容器3aもまた、後再生サイクル中に、乾いた圧縮空気の通流に切り替えられることによって完全に再生される。このようにして
図3によれば、車両及び車両内に配置された吸着式エアドライヤの次の動作開始時には、2つの乾燥容器3a及び3bが完全に再生された状態で開始可能であることが保証される。
【符号の説明】
【0023】
1 圧縮機
2 弁装置
3 乾燥容器
4 吸着式エアドライヤ
5 主空気通路
6 貯蔵圧力容器
7 逆止弁
8 分岐路