(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366736
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】波長変換装置、光源システム及び投影システム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20180723BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/08 G
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-567679(P2016-567679)
(86)(22)【出願日】2015年5月6日
(65)【公表番号】特表2017-519240(P2017-519240A)
(43)【公表日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】CN2015078353
(87)【国際公開番号】WO2015172670
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2016年11月11日
(31)【優先権主張番号】201410201900.2
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514090979
【氏名又は名称】深▲せん▼市光峰光電技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】APPOTRONICS CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】呉 希亮
(72)【発明者】
【氏名】田 梓峰
(72)【発明者】
【氏名】戴 達炎
(72)【発明者】
【氏名】陳 雨参
(72)【発明者】
【氏名】許 顔正
【審査官】
中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−052606(JP,A)
【文献】
特開2013−203822(JP,A)
【文献】
米国特許第07196354(US,B1)
【文献】
特開平06−302302(JP,A)
【文献】
特開2011−164173(JP,A)
【文献】
特開2015−121763(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101539270(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長変換材料層(10)と、前記波長変換材料層(10)の第1の側に設置されている第1のフィルタ膜層(30)とを備える波長変換装置であって、
前記波長変換材料層(10)と前記第1のフィルタ膜層(30)との間に設置されている第1の熱伝導媒質層(20)を更に備え、
前記第1の熱伝導媒質層(20)は、熱伝導率が前記波長変換材料層(10)の熱伝導率以上であり、屈折率が前記波長変換材料層(10)の屈折率より小さい、
前記第1の熱伝導媒質層(20)は、熱伝導性粒子を含む多孔質構造層であることを特徴とする、波長変換装置。
【請求項2】
前記第1の熱伝導媒質層(20)は、前記第1のフィルタ膜層(30)の表面を被覆し、前記熱伝導性粒子と前記第1のフィルタ膜層(30)との接触面積は、前記第1のフィルタ膜層(30)の総面積の10%〜50%であることを特徴とする、請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項3】
前記第1の熱伝導媒質層(20)は、厚さが40μmより小さいことを特徴とする、請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項4】
前記第1の熱伝導媒質層(20)は、厚さが20μmより小さいことを特徴とする、請求項3に記載の波長変換装置。
【請求項5】
前記第1の熱伝導媒質層(20)は、前記熱伝導性粒子及びガラス粉を含む熱伝導組成物からなることを特徴とする、請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項6】
前記第1の熱伝導媒質層(20)は、シランカップリング剤によって処理された前記熱伝導性粒子からなることを特徴とする、請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項7】
前記第1の熱伝導媒質層(20)における熱伝導性粒子の表面の前記シランカップリング剤の体積分数は、0.1%〜1%であることを特徴とする、請求項6に記載の波長変換装置。
【請求項8】
前記シランカップリング剤は、KH550、KH560、又はKH570であることを特徴とする、請求項7に記載の波長変換装置。
【請求項9】
前記波長変換材料層(10)は、蛍光体及びシリカゲルからなるシリカゲル蛍光体層であることを特徴とする、請求項1又は6に記載の波長変換装置。
【請求項10】
前記波長変換材料層(10)は、蛍光体及びガラス粉からなる蛍光ガラスであることを特徴とする、請求項1、5又は6に記載の波長変換装置。
【請求項11】
前記熱伝導性粒子は、熱伝導率が10W/mKより大きいことを特徴とする、請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項12】
前記熱伝導性粒子は、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、グラフェン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、及び硫酸バリウムからなる一群から選択された任意の1つ又は複数であることを特徴とする、請求項11に記載の波長変換装置。
【請求項13】
前記熱伝導性粒子は、シート状又は繊維状であり、前記熱伝導性粒子は、白色又は透明であることを特徴とする、請求項11に記載の波長変換装置。
【請求項14】
前記熱伝導性粒子は、粒径が0.1μm〜20μmであることを特徴とする、請求項11に記載の波長変換装置。
【請求項15】
前記波長変換材料層(10)の第2の側に設置されている第2のフィルタ膜層(40)を更に備えることを特徴とする、請求項1〜14の何れか1つに記載の波長変換装置。
【請求項16】
前記波長変換材料層(10)と第2のフィルタ膜層(40)との間に設置されている媒質層(50)を更に備え、前記媒質層(50)は、屈折率が前記波長変換材料層(10)の屈折率より小さいことを特徴とする、請求項15に記載の波長変換装置。
【請求項17】
前記波長変換材料層(10)と第2のフィルタ膜層(40)との間に設置されている第2の熱伝導媒質層(60)を更に備え、前記第2の熱伝導媒質層(60)は、熱伝導率が前記波長変換材料層(10)の熱伝導率以上であり、屈折率が前記波長変換材料層(10)の屈折率より小さいことを特徴とする、請求項15に記載の波長変換装置。
【請求項18】
前記第2の熱伝導媒質層(60)は、前記第1の熱伝導媒質層(20)と同じ特性を有することを特徴とする、請求項17に記載の波長変換装置。
【請求項19】
励起光源と、波長変換装置とを備える光源システムであって、
前記波長変換装置は、請求項1〜18の何れか1つに記載の波長変換装置であることを特徴とする、光源システム。
【請求項20】
投影ユニットと、光源システムとを備える投影システムであって、
前記光源システムは、請求項19に記載の光源システムであることを特徴とする、投影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源システムの技術分野に関し、特に、波長変換装置、光源システム、及び投影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業の更なる発展に伴い、光源が様々な場合において応用されている。例えば、リアプロジェクションテレビ又は投影機に用いられる画像投影、又は、車、船又は飛行機の照明灯として用いられる。異なる応用場合においては、光源の色(又は波長)に対する要求がそれぞれ異なる。現在、励起光源(所定の波長を有する励起光)により波長変換装置を照射することで、波長変換装置における波長変換材料を励起することによって特定の色(又は波長)を有する光を取得することができる。よく見られる励起光源は、伝統的な高圧水銀灯光源、新たな半導体光源(LED光源)、及び固体レーザ光源を含む。そのうち、半導体光源は、輝度が足らないため、伝統的な高圧水銀灯光源の代わりに半導体光源を用いることが困難である。固体レーザ光源は、高輝度及び高安定性の特性を有するため、次第に励起光源の主流技術の1つになっている。
【0003】
図1は、従来の波長変換装置の構造を模式図である。
図1に示すように、従来の波長変換装置は、励起光源の一方の側に設置されている波長変換材料層10′と、波長変換材料層10′における励起光源に近い側に設置されているフィルタ膜層30′と、波長変換材料層10′とフィルタ膜層30′との間に設置されている媒質層20′とを備える。
【0004】
上述した波長変換装置の動作プロセスは、以下の通りである。励起光源により発生された励起光は、フィルタ膜層を透過して波長変換材料層に照射し、波長変換材料層を励起して被励起光を発生する。一部の被励起光は、波長変換材料層を透過して出射されるが、残りの被励起光及び波長変換材料に吸収されていない励起光は、波長変換材料層の乱反射作用によって散乱されてフィルタ膜層に入り、フィルタ膜層の反射によって波長変換材料層に戻される。これにより、二次利用されることができ、励起光及び被励起光の利用率を高めることができる。特に、媒質層は、より低い屈折率を有するので、全反射を利用して波長変換材料層からの大きい角度の光(吸収されていない励起光を含む)を反射して波長変換材料層に戻すことによって、波長変換層に吸収されていない励起光が二次利用され、波長変換装置の変換効率を更に高めることができる。
【0005】
上述した波長変換装置においては、波長変換材料層による励起光の二次利用によって、波長変換材料層から生成される熱量が増え、媒質層及びフィルタ膜層の熱伝導性が良くないので、波長変換材料層の熱を迅速に発散させることが困難である。その結果、波長変換装置から発生される被励起光の輝度及び波長変換材料層の安定性が低下する。励起光のパワーの増大に伴い、波長変換材料層から生成熱量も増大するため、波長変換材料層の熱の発散が更に困難となり、波長変換装置の変換効率が低下する。上述した問題について、有効な解決方法は、まだ見つけていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術における波長変換材料層から生成される熱を迅速に発散させることが困難である問題を解決することが可能な波長変換装置、光源システム、及び投影システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を実現するために、本発明は、波長変換装置を提供する。当該波長変換装置は、波長変換材料層と、波長変換材料層の第1の側に設置されている第1のフィルタ膜層とを備える波長変換装置であって、当該波長変換装置は、波長変換材料層と第1のフィルタ膜層との間に設置されている第1の熱伝導媒質層を更に備え、第1の熱伝導媒質層は、熱伝導率が波長変換材料層の熱伝導率以上であり、屈折率が波長変換材料層の屈折率より小さい。
【0008】
好ましくは、前記波長変換装置において、第1の熱伝導媒質層は、熱伝導性粒子を含む多孔質構造層である。
【0009】
好ましくは、前記波長変換装置において、第1の熱伝導媒質層は、第1のフィルタ膜層の表面を被覆し、熱伝導性粒子と第1のフィルタ膜層との接触面積は、第1のフィルタ膜層の総面積の10%〜50%である。
【0010】
好ましくは、前記波長変換装置において、第1の熱伝導媒質層は、厚さが40μmより小さく、さらに好ましくは、第1の熱伝導媒質層は、厚さが20μmより小さい。
【0011】
好ましくは、前記波長変換装置において、第1の熱伝導媒質層は、熱伝導性粒子及びガラス粉を含む熱伝導組成物からなる。
【0012】
好ましくは、前記波長変換装置において、第1の熱伝導媒質層は、シランカップリング剤によって処理された熱伝導性粒子からなる。
【0013】
好ましくは、前記波長変換装置において、第1の熱伝導媒質層における熱伝導性粒子の表面のシランカップリング剤の体積分数は、0.1%〜1%であり、好ましくは、シランカップリング剤は、KH550、KH560、又はKH570である。
【0014】
好ましくは、前記波長変換装置において、波長変換材料層は、蛍光体及びシリカゲルからなるシリカゲル蛍光体層である。
【0015】
好ましくは、前記波長変換装置において、波長変換材料層は、蛍光体及びガラス粉からなる蛍光ガラスである。
【0016】
好ましくは、前記波長変換装置において、熱伝導性粒子は、熱伝導率が10W/mKより大きい。
【0017】
好ましくは、前記波長変換装置において、熱伝導性粒子は、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、グラフェン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、及び硫酸バリウムからなる一群から選択された任意の1つ又は複数である。
【0018】
好ましくは、前記波長変換装置において、熱伝導性粒子は、シート状又は繊維状であり、前記熱伝導性粒子は、白色又は透明である。
【0019】
好ましくは、前記波長変換装置において、熱伝導性粒子は、粒径が0.1μm〜20μmである。
【0020】
好ましくは、前記波長変換装置において、波長変換装置は、波長変換材料層の第2の側に設置されている第2のフィルタ膜層を更に備える。
【0021】
好ましくは、前記波長変換装置において、波長変換装置は、波長変換材料層と第2のフィルタ膜層との間に設置されている媒質層を更に備え、媒質層は、屈折率が波長変換材料層の屈折率より小さい。
【0022】
好ましくは、前記波長変換装置において、波長変換装置は、波長変換材料層と第2のフィルタ膜層との間に設置されている第2の熱伝導媒質層を更に備え、第2の熱伝導媒質層は、熱伝導率が波長変換材料層の熱伝導率以上であり、屈折率が波長変換材料層の屈折率より小さい。
【0023】
好ましくは、前記波長変換装置において、第2の熱伝導媒質層は、本出願の前記第1の熱伝導媒質層と同じ特性を有する。
【0024】
本発明は、励起光源と、本発明の前記波長変換装置とを備える光源システムを提供する。
【0025】
本発明は、投影ユニットと、本発明の前記光源システムとを備える投影システムを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の技術案において、波長変換材料層と第1のフィルタ膜層との間に第1の熱伝導媒質層が設置されている。当該第1の熱伝導媒質層は、屈折率が波長変換材料層の屈折率より小さく、熱伝導率が波長変換材料層の熱伝導率以上であるため、大きい角度で出射された光が全反射によって波長変換材料層に戻されるとともに、第1の熱伝導媒質層の優れた熱伝導性によって、波長変換材料層から生成される熱を、迅速に発散でき、波長変換装置の変換効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の一部を構成する図面は、本発明をより深く理解するために提供されたものである。本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を説明するために用いられるものであり、本発明を不当に限定するものではない。
【0028】
【
図1】従来の波長変換装置の構造を示す模式図である。
【
図2a】本発明の好ましい実施例に係る波長変換装置の構造を示す模式図である。
【
図2b】本発明の他の好ましい実施例に係る波長変換装置の構造を示す模式図である。
【
図2c】本発明の他の好ましい実施例に係る波長変換装置の構造を示す模式図である。
【
図2d】本発明の他の好ましい実施例に係る波長変換装置の構造を示す模式図である。
【
図3】実施例1及び比較例1に係る波長変換装置の発光強度と励起光のパワーとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
なお、矛盾しない限り、本発明の実施例及び実施例における特徴を、互いに組み合わせても良い。以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0030】
ここで用いられる用語は、具体的な実施例を説明するためのものであり、本発明の例示的な実施例を限定する意図ではないことに注意すべきである。例えば、ここで用いられる単数形式は、本文中に別途の明確な説明がない限り、複数形式も含まれる。また、明細書において「含む」及び/又は「備える」が用いられる場合は、特徴、ステップ、操作、デバイス、ユニット、及び/又はそれらの組み合わせが含まれることを意味する。
【0031】
説明の便宜上、ここでは、空間的な相対位置関係を表す用語を使ってもよい。例えば、「…の上」、「…の上方」、「…の上面」「上方の」等の用語は、図面における1つのデバイス又は特徴と、他のデバイス又は特徴との空間的な位置関係を説明するために用いられる。空間的な相対位置関係を表す用語が、図面におけるデバイスの方位の他、使用中又は操作中における異なる方位も含むことは、理解されるべきである。例えば、図面におけるデバイスが逆転された場合は、「他のデバイス又は構造の上方」又は「他のデバイス又は構造の上」と記載されたデバイスは、「他のデバイス又は構造の下方」又は「他のデバイス又は構造の下」のように位置決められる。したがって、例示的な用語「…の上方」は、「…の上方」及び「…の下方」両方の方位を含むことができる。また、一デバイスは、異なる方法で位置決められても良く(90度回転又は他の方位に位置する)、ここで使用される空間的な相対位置関係を表す用語は、対応して解釈されるべきである。
【0032】
背景技術に記載されているように、波長変換材料層から生成される熱を、発散させることが困難であるため、波長変換装置により発生される被励起光の輝度及び安定性が低下してしまう。本発明の発明者は、上述した問題を検討した結果、以下の波長変換装置を提案する。
図2aに示すように、当該波長変換装置は、波長変換材料層10と、波長変換材料層10の第1の側に設置されている第1のフィルタ膜層30と、波長変換材料層10と第1のフィルタ膜層30との間に設置されている第1の熱伝導媒質層20とを備え、第1の熱伝導媒質層20は、熱伝導率が波長変換材料層10の熱伝導率以上であり、屈折率が波長変換材料層10の屈折率より小さい。ここでの第1の側とは、波長変換材料層における光が入射される側を指す。
【0033】
前記波長変換装置において、波長変換材料層10から生成される熱が、第1の熱伝導媒質層20を通して波長変換材料層10の第1の側に伝導されることによって、波長変換材料層10から生成される熱を迅速に発散させることができるため、波長変換装置から発生される被励起光の輝度及び安定性をさらに向上させることができる。また、第1の熱伝導媒質層20は、屈折率が波長変換材料層10の熱伝導率より小さいので、波長変換材料層10からの大きい角度の光(励起光を含む)が反射によって波長変換材料層10に戻され、波長変換材料層10に吸収されていない励起光が二次利用されることによって、波長変換装置による励起光の変換効率を高めることができる。
【0034】
第1の熱伝導媒質層20は、熱伝導率が波長変換材料層10の熱伝導率以上であり、屈折率が波長変換材料層10の屈折率より小さいという条件を満たせば、波長変換材料層10による熱は迅速に発散させることができ、波長変換装置から発生される被励起光の輝度及び波長変換装置の安定性を高めることができる。1つの好ましい実施例において、上述した第1の熱伝導媒質層20は、熱伝導性粒子を含む多孔質構造層である。また、熱伝導性粒子は、互いに積み重ねて連結したメッシュ構造を形成し、熱伝導性粒子の間に隙間構造が形成される。第1の熱伝導媒質層20のメッシュ構造により、波長変換装置材料層10から生成される熱を迅速に発散させることができ、波長変換材料が高温によって劣化することを避けることができ、波長変換装置から発生される被励起光の輝度及び波長変換材料層の熱安定性を高めることができる。また、隙間構造により、励起光及び被励起光が当該第1の熱伝導媒質層20を透過して波長変換材料層10に照射することができ、更に波長変換材料層10の乱反射作用によって散乱され第1のフィルタ膜層30に入り、第1のフィルタ膜層30の反射によって波長変換材料層10に戻されることによって、被励起光が二次利用されることができ、励起光の変換効率を高めることができる。第1の熱伝導媒質層20の孔隙間には、空気を充填しても良い。これにより、第1の熱伝導媒質層20と波長変換材料層10との接触面における波長変換材料層10からの大きい角度の光に対する反射作用を高めることができる。
【0035】
前記波長変換材料層10から生成される熱は、主に第1の熱伝導媒質層20の熱伝導性粒子と第1のフィルタ膜層30との接触面によって伝導される。この接触面が大きければ大きいほど、第1の熱伝導媒質層20は、熱伝導(放熱)の効果が良いが、被励起光に対する第1のフィルタ膜層30の反射効果が悪くなり、光が第1の熱伝導媒質層20を通過するのに不利である。波長変換装置における最も優れた熱伝導(放熱)効果と被励起光の反射効果とを両立させるために、1つの好ましい実施例において、第1の熱伝導媒質層20における熱伝導性粒子と第1のフィルタ膜層30との接触面積は、第1のフィルタ膜層30の総面積の10%〜50%である。
【0036】
第1の熱伝導媒質層20は、厚さが大きければ大きいほど、第1の熱伝導媒質層20の熱抵抗値(第1の熱伝導媒質層20の厚さと熱伝導率との比率)が大きく、第1の熱伝導媒質層20の熱伝導(放熱)効果が悪くなる。当業者は、本発明の開示に基づいて第1の熱伝導媒質層20の厚さを設定することができる。1つの好ましい実施例において、第1の熱伝導媒質層20は、厚さが40μmより小さく、さらに好ましくは、第1の熱伝導媒質層20は、厚さが20μmより小さい。前記厚さを有する第1の熱伝導媒質層20は、より優れた熱伝導(放熱)効果を有する。
【0037】
1つの好ましい実施例において、第1の熱伝導媒質層20は、熱伝導性粒子を含む熱伝導組成物、又は熱伝導性粒子とガラス粉とを含む熱伝導組成物からなる。さらに好ましくは、第1の熱伝導媒質層20は、シランカップリング剤で処理された熱伝導性粒子からなる。シランカップリング剤で熱伝導性粒子の表面を処理するには、以下の方法を採用することができる。熱伝導性粒子を含む熱伝導組成物に加圧して形成された熱伝導媒質の予備層に対し、シランカップリング剤を用いて浸漬処理を行うことによって、熱伝導媒質の予備層における熱伝導性粒子の表面にシランカップリング剤を付着させ、さらに第1の熱伝導材料層を形成する。または、シランカップリング剤を用いて熱伝導性粒子の表面を被覆し、その後、シランカップリング剤に被覆された熱伝導性粒子を塗布することによって第1の熱伝導材料層を作製する。
【0038】
シランカップリング剤は、一種の特殊な有機官能性化合物であり、その分子鎖の一端が有機反応基であり、他端が無機反応基である。よって、シランカップリング剤で熱伝導媒質の予備層における熱伝導性粒子を処理することは、第1の熱伝導媒質層20における熱伝導性粒子間の粘着力を高めることができると共に、第1の熱伝導媒質層20における熱伝導性粒子と第1のフィルタ膜層30との粘着力を高めることもできる。これにより、第1の熱伝導媒質層20の熱伝導(散乱)効果が更に高まる。1つの好ましい実施例において、第1の熱伝導媒質層20における熱伝導性粒子の表面のシランカップリング剤の体積分数は、0.1%〜1%であり、好ましくは、シランカップリング剤は、KH550、KH560又はKH570である。前記シランカップリング剤は、優れた粘着性能を有するだけでなく、より優れた耐熱性も有している。
【0039】
第1の熱伝導媒質層20の種類及び作製プロセスは、用いられた波長変換材料層10の種類に関連する。1つの好ましい実施例において、波長変換材料層10が蛍光体及びシリカゲルからなるシリカゲル蛍光体層である場合は、第1の熱伝導媒質層20は、熱伝導性粒子を含む熱伝導組成物からなる。波長変換材料層10が蛍光体及びガラス粉からなる蛍光ガラスである場合は、第1の熱伝導媒質層20は、熱伝導性粒子を含む熱伝導組成物、又は熱伝導性粒子及びガラス粉を含む熱伝導組成物からなる。ここで、シリカゲル蛍光体層は、蛍光体とシリカゲルとを硬化させることによって形成され、蛍光ガラスは、蛍光体とガラス粉とを焼結することによって形成され、熱伝導組成物は、スプレー塗布、コーティング、又はスクリーン印刷等のプロセスによって波長変換材料層10の上に形成される。前記プロセスの具体的なパラメータは、従来の技術に基づいて設定されても良いので、ここで繰り返して説明しない。
【0040】
波長変換材料層10は、シリカゲル蛍光体層又は蛍光ガラスであり、第1の熱伝導媒質層20は、熱伝導性粒子を含む熱伝導組成物に加圧し、その後シランカップリング剤で熱伝導性粒子の表面を処理することによって形成されても良い。1つの好ましい実施例において、第1の熱伝導媒質層20における熱伝導性粒子の熱伝導率は、10W/mKより大きい。さらに好ましくは、前記熱伝導性粒子は、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、グラフェン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、及び硫酸バリウムからなる一群から選択された任意の1つ又は複数である。前記熱伝導性粒子は、互いに積み重ねて連結したメッシュ構造を形成する。当該メッシュ構造によって、波長変換材料層10から生成される熱を迅速に発散させることができる。
【0041】
前記メッシュ構造の熱伝導効果は、熱伝導性粒子の形状及びサイズに関連する。好ましくは、前記熱伝導性粒子は、シート状又は繊維状であり、シート状又は繊維状の形状を有する熱伝導性粒子は、互いに積み重ねて連結したメッシュ構造を形成することに有利である。さらに好ましくは、熱伝導性粒子は、粒径が0.1μm〜20μmである。ここで、熱伝導性粒子の粒径とは、三次元空間における熱伝導性粒子が有する最大の長さを指し、例えば、繊維状の熱伝導性粒子の粒径は、繊維状の熱伝導性粒子の長さを指す。熱伝導性粒子は、粒径が大きければ大きいほど、熱伝導性粒子が互いに積み重ねてメッシュ構造を形成しやすくなる。被励起光に対する熱伝導性粒子の吸収を減らすために、熱伝導性粒子は、白色又は透明であることが好ましい。
【0042】
前記波長変換装置は、波長変換材料層10、第1のフィルタ膜層30、及び第1の熱伝導媒質層20を含むには限らず、他の構造を更に備えても良い。1つの好ましい実施例において、前記波長変換装置は、波長変換材料層10の第2の側に設置されている第2のフィルタ膜層40を更に備え、その構造は
図2bに示される。この場合は、前記波長変換装置の動作プロセスは、以下の通りである。励起光源から発生された励起光は、第1のフィルタ膜層30を透過して波長変換材料層10に照射し、波長変換材料層10を励起して被励起光を発生する。その後、被励起光が第2のフィルタ膜層40に照射される。このとき、小さい角度の被励起光は、第2のフィルタ膜層40を透過することができるが、大きい角度の被励起光は、第2のフィルタ膜層40の反射によって波長変換材料層10に戻され、更に、波長変換材料層10において乱反射によって散乱され、大きい角度の被励起光が反射によって第2のフィルタ膜層40に戻される。このプロセスを数回繰り返すと、被励起光は、全て小さい角度で出射され、出射光の光利用率を向上させることができる。ここでの第2の側とは、波長変換材料層における光の出射側を指す。
【0043】
第1のフィルタ膜層30及び第2のフィルタ膜層40は、本分野において通常のフィルタ膜であっても良い。第1のフィルタ膜層30及び第2のフィルタ膜層40は、光学屈折率が異なる材料からなる二層以上の媒質膜であっても良く、例えば、中空の光学シートである。第1のフィルタ膜層30及び第2のフィルタ膜層40は、規則的に配列された光量子結晶体を含む光学シート、又は当該光学シートと前記光学屈折率が異なる材料の媒質膜とを組み合わせた膜であっても良い。
【0044】
もう1つの好ましい実施例において、前記波長変換装置は、波長変換材料層10と第2のフィルタ膜層40との間に設置されている媒質層50を更に備え(媒質層50の構造は、
図2cに示す)、媒質層50の屈折率は、波長変換材料層10の屈折率より小さい。媒質層50は、より低い屈折率を有し、全反射で波長変換材料層10からの大きい角度の光を反射して波長変換材料層10に戻すことができる。これにより、波長変換材料層10に吸収されていない励起光が二次利用されるとともに、大きい角度の被励起光は、波長変換材料によって散乱され、小さい角度の光になって出射される。従って、励起光の変換効率及び光利用率をさらに向上させることができる。媒質層50は、本分野において通常の低い屈折率を有する媒質材料であっても良い。また、媒質層50は、波長変換材料層10と第2のフィルタ膜層40との間に形成されている空気媒質層であってもよい。
【0045】
もう1つの好ましい実施例において、前記波長変換装置は、波長変換材料層10と第2のフィルタ膜層40との間に設置されている第2の熱伝導媒質層60を更に備え(第2の熱伝導媒質層60の構造は
図2dに示す)、第2の熱伝導媒質層60は、熱伝導率が波長変換材料層10の熱伝導率以上であり、屈折率が波長変換材料層10の屈折率より小さい。第2の熱伝導媒質層60は、本願の第1の熱伝導媒質層20と同じ特性を有する。波長変換材料層10から生成される熱は、第2の熱伝導媒質層60を通して波長変換材料層10の第2の側に伝導され、波長変換材料層10から生成される熱を迅速に発散させることができ、波長変換装置から発生された被励起光の輝度及び安定性をさらに向上させることができる。また、第2の熱伝導媒質層60の屈折率は、波長変換材料層10の屈折率より小さく、波長変換材料層10からの大きい角度の光を反射して波長変換材料層10に戻すことができ、波長変換材料層10に吸収されていない励起光が二次利用されるとともに、大きい角度の被励起光が波長変換材料によって散乱され小さい角度の光になって出射される。従って、波長変換装置から発生された励起光の変換効率及び光利用率をさらに向上させることができる。
【0046】
本発明は、さらに、励起光源と、本発明の上述した波長変換装置とを備える光源システムを提供する。当該光源システムにおける波長変換材料層による熱は、迅速に発散でき、波長変換装置から発生される被励起光の輝度及び安定性が高まり、さらに光源システムにおける光の輝度及び安定性を高めることができる。
【0047】
また、本発明は、投影ユニットと、本発明の上述した光源システムとを備える投影システムを提供する。当該投影システムにおける光源システムの光の輝度及び安定性を高めることができるため、使用中に投影システムにおける光の輝度に対する要求を満たすことができる。
【0048】
以下、本発明の例示的な実施例についてより詳細に説明する。なお、これらの例示的な実施例は、複数の異なる形態で実施されることが可能であり、ここで記載される実施例に限ると解釈されるべきではない。これらの実施形態の提供が、本発明を十分且つ全面的に公開し、これらの例示的な実施形態の思想を十分に当業者に伝えるためであることは、理解されるべきである。
【0049】
実施例を参照しながら、本発明に係る波長変換装置を更に説明する。
【0050】
実施例1
当該波長変換装置は、波長変換材料層と、波長変換材料層の第1の側に設置されている第1のフィルタ膜層と、波長変換材料層と第1のフィルタ膜層との間に設置されている第1の熱伝導媒質層と、波長変換材料層の第2の側に設置されている第2のフィルタ膜層と、波長変換材料層と第2のフィルタ膜層との間に設置されている第2の熱伝導媒質層とを備える。ここで、波長変換材料層は、蛍光体とガラス粉とを焼結することによって形成された蛍光ガラスであり、波長変換材料層は、熱伝導率が5.0W/mKであり、屈折率が2.2である。第1の熱伝導媒質層は、波長変換材料の第1の側の表面にスクリーン印刷したダイヤモンド粒子(粒子の平均粒径が5μmである)に加圧した後、シランカップリング剤(KH560)でダイヤモンド粒子の表面を処理することによって形成される。第2の熱伝導媒質層は、波長変換材料の第2の側の表面にスクリーン印刷したダイヤモンド粒子(粒子の平均粒径が5μmである)に加圧した後、シランカップリング剤(KH560)でダイヤモンド粒子の表面を処理することによって形成される。
【0051】
前記第1の熱伝導媒質層は、以下の特徴を有する。第1の熱伝導媒質層におけるダイヤモンド粒子と第1のフィルタ膜層との接触面積は、第1のフィルタ膜層の総面積の30%である。第1の熱伝導媒質層は、厚さが3μmであり、熱伝導率が12.8W/mKであり、屈折率が1.4である。第1の熱伝導媒質層におけるダイヤモンド粒子の表面のシランカップリング剤(KH560)の体積分数は、1%である。
【0052】
前記第2の熱伝導媒質層は、以下の特徴を有する。第2の熱伝導媒質層におけるダイヤモンド粒子と第2のフィルタ膜層との接触面積は、第2のフィルタ膜層の総面積の30%である。第2の熱伝導媒質層は、厚さが3μmであり、熱伝導率が12.8W/mKであり、屈折率が1.4である。第2の熱伝導媒質層におけるダイヤモンド粒子の表面のシランカップリング剤(KH560)の体積分数は、1%である。
【0053】
実施例2
前記波長変換装置は、波長変換材料層と、波長変換材料層の第1の側に設置されている第1のフィルタ膜層と、波長変換材料層と第1のフィルタ膜層との間に設置されている第1の熱伝導媒質層と、波長変換材料層の第2の側に設置されている第2のフィルタ膜層と、波長変換材料層と第2のフィルタ膜層との間に設置されている媒質層とを備える。ここで、波長変換材料層は、蛍光体とシリカゲルとを硬化させることによって形成されたシリカゲル蛍光体層である。第1の熱伝導媒質層は、波長変換材料層に繊維状のカーボンナノチューブ(粒子の平均粒径が20μmである)を塗布して加圧した後、シランカップリング剤(KH560)でカーボンナノチューブの表面を処理することによって形成される。波長変換材料層は、熱伝導率が5.0W/mKであり、屈折率が2.2であり、媒質層が空気媒質層である。
【0054】
前記第1の熱伝導媒質層は、以下の特徴を有する。第1の熱伝導媒質層におけるカーボンナノチューブと第1のフィルタ膜層との接触面積は、第1のフィルタ膜層の総面積の20%であり、第1の熱伝導媒質層は、厚さが6μmであり、熱伝導率が12.5W/mKであり、屈折率が1.5である。第1の熱伝導媒質層におけるカーボンナノチューブの表面のシランカップリング剤(KH560)の体積分数は、0.1%である。
【0055】
実施例3
当該波長変換装置は、波長変換材料層と、波長変換材料層の第1の側に設置されている第1のフィルタ膜層と、波長変換材料層と第1のフィルタ膜層との間に設置されている第1の熱伝導媒質層と、波長変換材料層の第2の側に設置されている第2のフィルタ膜層とを備える。ここで、波長変換材料層は、蛍光体とシリカゲルとを硬化させることによって形成されたシリカゲル蛍光体層である。波長変換材料層は、熱伝導率が5.0W/mKであり、屈折率が2.2である。第1の熱伝導媒質層は、波長変換材料にスプレー塗布したダイヤモンド粒子(粒子の平均粒径が2μmである)に加圧することによって形成される。
【0056】
前記第1の熱伝導媒質層は、以下の特徴を有する。第1の熱伝導媒質層におけるダイヤモンド粒子と第1のフィルタ膜層との接触面積は、第1のフィルタ膜層の総面積の10%である。第1の熱伝導媒質層は、厚さが20μmであり、熱伝導率が12.4W/mKであり、屈折率が1.6である。
【0057】
実施例4
当該波長変換装置は、波長変換材料層と、波長変換材料層の第1の側に設置されている第1のフィルタ膜層と、波長変換材料層と第1のフィルタ膜層との間に設置されている第1の熱伝導媒質層とを備える。ここで、波長変換材料層は、蛍光体とガラス粉を焼結することによって形成された蛍光ガラスである。波長変換材料層は、熱伝導率が5.2W/mKであり、屈折率が2.3である。第1の熱伝導媒質層は、波長変換材料にダイヤモンド粒子(粒子の平均粒径が2μmである)とガラス粉とをスクリーン印刷し、焼結することによって形成される。
【0058】
前記第1の熱伝導媒質層は、以下の特徴を有する。第1の熱伝導媒質層におけるダイヤモンド粒子と第1のフィルタ膜層との接触面積は、第1のフィルタ膜層の総面積の50%である。第1の熱伝導媒質層は、厚さが15μmであり、熱伝導率が13W/mKであり、屈折率が1.3である。
【0059】
実施例5
当該波長変換装置は、波長変換材料層と、波長変換材料層の第1の側に設置されている第1のフィルタ膜層と、波長変換材料層と第1のフィルタ膜層との間に設置されている第1の熱伝導媒質層とを備える。ここで、波長変換材料層は、蛍光体とシリカゲルとを硬化させることによって形成されたシリカゲル蛍光体層である。波長変換材料層は、熱伝導率が4.8W/mKであり、屈折率が2.2である。第1の熱伝導媒質層は、波長変換材料にシート状の窒化ケイ素粒子(粒子の平均粒径が0.1μmである)をスプレー塗布し、加圧することによって形成される。
【0060】
前記第1の熱伝導媒質層は、以下の特徴を有する。第1の熱伝導媒質層における窒化ケイ素粒子と第1のフィルタ膜層との接触面積は、第1のフィルタ膜層の総面積の8%である。第1の熱伝導媒質層は、厚さが40μmであり、熱伝導率が12W/mKであり、屈折率が1.6である。
【0061】
比較例1
当該波長変換装置は、波長変換材料層と、波長変換材料層の一方側に順次に設置されている媒質層及び第1のフィルタ膜層と、波長変換材料層の他方側に順次に設置されている媒質層及び第1のフィルタ膜層とを備える。ここで、波長変換材料は、蛍光体とシリカゲルとを硬化させることによって形成されたシリカゲル蛍光体層であり、媒質層は、空気媒質層である。
【0062】
測定:実施例1〜5及び比較例1に係る波長変換装置において、発光強度と励起光のパワーとの変化関係をそれぞれ測定する。測定結果は、
図3に示す。
【0063】
図3に示されているように、実施例1〜5及び比較例1に係る波長変換装置は、発光強度が励起光源のパワーの上昇に伴って上昇する。励起光源のパワーが変化しない場合は、実施例1〜5に係る波長変換装置の発光強度は、比較例1に係る波長変換装置の発光強度より遥かに高い。また、励起光源のパワーの上昇に伴い、実施例1〜5に係る波長変換装置の発光強度は、線形的に増加する。一方、比較例1に係る波長変換装置の発光強度は、初めに上昇し、その後低下する。上述した分析から判断できるように、実施例1〜5に係る波長変換装置における熱伝導媒質層は、波長変換材料層から生成される熱を迅速に発散させることができる。これにより、波長変換装置から発生される被励起光の輝度及び安定性が高まり、さらに波長変換装置の変換効率を向上させることができる。
【0064】
上述した記載から分かるように、本発明の前記実施例は以下の技術効果を奏するようにすることができる。
【0065】
(1)波長変換材料層と第1のフィルタ膜層との間に熱伝導媒質層が設置される。当該熱伝導媒質層は、熱伝導率が波長変換材料層の熱伝導率以上であり、波長変換材料層から生成される熱を迅速に発散させることができる。これにより、波長変換装置から発生される被励起光の輝度及び安定性を高めることができる。
【0066】
(2)また、前記熱伝導媒質層は、屈折率が波長変換材料層の屈折率より小さく、波長変換材料層からの大きい角度の光(励起光を含む)を反射して波長変換材料層に戻し、これにより、波長変換材料層に吸収されていない励起光が二次利用され、波長変換装置から発生される励起光の変換効率を高めることができる。
【0067】
上述した内容は、本発明の好ましい実施例であり、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。当業者は、本発明に対して様々な変更及び変化を行うことができるが、本発明の精神から逸脱しなければ、行われた任意の変更、等価の置換え、改良等は、全て本発明の保護範囲に含まれる。