特許第6366775号(P6366775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6366775
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】荷台スライド式車両
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/32 20060101AFI20180723BHJP
   B60P 3/07 20060101ALI20180723BHJP
   B62D 33/02 20060101ALI20180723BHJP
   B62D 33/10 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B60P1/32
   B60P3/07 Z
   B62D33/02 B
   B62D33/10
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-98857(P2017-98857)
(22)【出願日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591240928
【氏名又は名称】山田車体工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】石岡 昭一
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−013826(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008032182(DE,A1)
【文献】 特開2015−128917(JP,A)
【文献】 特開平11−099872(JP,A)
【文献】 米国特許第04681371(US,A)
【文献】 特公昭39−022303(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/32
B60P 3/07
B62D 33/02
B62D 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシフレームの前後方向に取り付けられたローラー取付フレームと、
前記ローラー取付フレームに回転自在に取り付けられたローラーと、
荷台に設けられていて、前記ローラーでスライド自在に支持されるスライドレールと、
前記シャーシフレーム側に固定された第1の傾斜部材と、前記荷台側の取付面に固定された第2の傾斜部材とを備え、
前記第1の傾斜部材の上面は前記シャーシフレーム前方に向けて高くなる第1の傾斜面であり、かつ前記第2の傾斜部材の下面は前記取付面を基準とした下向きの高さが前記シャーシフレーム前方に向けて低くなる第2の傾斜面であって、前記第1及び第2の傾斜面は相互に対向しており、
前記荷台が車両走行時の所定位置から前記シャーシフレームの後方に移動した状態では前記第1及び第2の傾斜面に隙間が生じ、前記スライドレールが前記ローラーに接してスライド自在となり、
前記荷台が車両走行時の所定位置にあるときは、前記第1及び第2の傾斜面同士が当接し、前記スライドレールが前記ローラーから浮き上がって非接触状態になることを特徴とする荷台スライド式車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャーシフレームの前後方向に荷台をスライドさせることが可能な荷台スライド式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械等の重機の積み降ろし、搬送のために、シャーシフレームに対して荷台を前後方向にスライドさせることが可能で、重機の積み降ろしの便宜のために荷台が後傾するようにした車両が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、シャーシフレームに所定間隔で設けられたローラー上を荷台がスライドする構造が提案されている。
【0004】
図7は荷台を車両のシャーシフレームの前後方向にスライド自在とする基本的な構造を示す。図7において、シャーシフレーム1上に断面L形のローラー取付フレーム2が固定され、ローラー取付フレーム2の外側面に所定間隔でローラー3が枢着されている(回転自在に取り付けられている)。一方、荷台はシャーシフレーム1に沿った左右の縦根太兼用スライドレール11を横根太13で連結一体化した構造を有し、縦根太兼用スライドレール11にはローラー3が入り込む断面コ字状凹溝12が形成されている。そして、凹溝12の天井面12aにローラー3が当たることで、スライドレール11を有する荷台を、シャーシフレーム1に対して前後方向にスライド可能に支持している。
【0005】
ところで、上記構成であると、荷台をスライドさせるためのローラー3及びこの取付軸に常時荷重が加わるため、車両走行時の振動でローラー取付軸が折損したり、ローラー3自体が損傷するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭39−22303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、特許文献1に示すような従来例であると、荷台をスライドさせるためのローラー及びこの取付軸に荷台自体及び荷台上の貨物の荷重が加わるため、車両走行時の振動でローラー取付軸が折損したり、ローラー自体が損傷するおそれがあった。このため、定期的にローラー及びこの取付軸の交換等の保守が必要となる問題があった。
【0008】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、車両走行時には荷台をスライドさせるためのローラー及びこの取付軸に荷重が加わらないようにして、車両の長寿命化、保守費用の低減を図ることのできる荷台スライド式車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は荷台スライド式車両であり、シャーシフレームの前後方向に取り付けられたローラー取付フレームと、
前記ローラー取付フレームに回転自在に取り付けられたローラーと、
荷台に設けられていて、前記ローラーでスライド自在に支持されるスライドレールと、
前記シャーシフレーム側に固定された第1の傾斜部材と、前記荷台側の取付面に固定された第2の傾斜部材とを備え、
前記第1の傾斜部材の上面は前記シャーシフレーム前方に向けて高くなる第1の傾斜面であり、かつ前記第2の傾斜部材の下面は前記取付面を基準とした下向きの高さが前記シャーシフレーム前方に向けて低くなる第2の傾斜面であって、前記第1及び第2の傾斜面は相互に対向しており、
前記荷台が車両走行時の所定位置から前記シャーシフレームの後方に移動した状態では前記第1及び第2の傾斜面に隙間が生じ、前記スライドレールが前記ローラーに接してスライド自在となり、
前記荷台が車両走行時の所定位置にあるときは、前記第1及び第2の傾斜面同士が当接し、前記スライドレールが前記ローラーから浮き上がって非接触状態になることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る荷台スライド式車両によれば、車両走行時には荷台をスライドさせるためのローラー及びこの取付軸に荷台側の荷重が加わらない構造であるため、車両の長寿命化、保守費用の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る荷台スライド式車両の実施の形態の全体概略構成であって、(A)は車両走行時(荷台格納時)、(B)は車両の荷台傾斜時、(C)は荷台スライド時をそれぞれ示す概略側面図。
図2】実施の形態の主要部であって、(A)は車両走行時(荷台格納時)、(B)は荷台スライド時をそれぞれ示す横断面図。
図3】実施の形態の主要部であって、(A)は車両走行時(荷台格納時)、(B)は荷台スライド時をそれぞれ示す部分側面図。
図4】実施の形態の主要部であって、分かり易いように傾斜部材の傾斜を大きく表示した模式的分解斜視図。
図5】実施の形態において、シャーシフレームを上方よりみた平面図。
図6】本発明が適用可能な他の車両を示す側面図。
図7】従来の荷台スライド構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1乃至図5において、車両(貨物自動車)20のシャーシフレーム1上に断面L形のローラー取付フレーム2が前後方向に固定され、ローラー取付フレーム2の外側面に所定間隔でローラー3が取付軸4で枢着されている(回転自在に取り付けられている)。
【0014】
一方、荷台30はシャーシフレーム1に沿った左右の縦根太兼用スライドレール11を横根太13で連結一体化した構造を有し、縦根太兼用スライドレール11にはローラー3が入り込む断面コ字状凹溝12が形成されている。そして、凹溝12の天井面12aにローラー3が当たることで、スライドレール11を一体に有する荷台を、シャーシフレーム1に対して前後方向にスライド自在に支持している。
【0015】
シャーシフレーム1側、つまりローラー取付フレーム2の内側に断面逆L字状の第1の傾斜部材5が固定されている。図3(A),(B)及び図4に示すように、第1の傾斜部材5の上面は車両前方(車両進行方向)に向けて高くなる第1の傾斜面5aとなっている。すなわち、第1の傾斜面5aのシャーシフレーム1の上面1aを基準とした上向きの高さh1がシャーシフレーム前方に向けて増大している。
【0016】
一方、縦根太兼用スライドレール11に沿って平行な傾斜部材取付フレーム(Lアングル)14が配置され、傾斜部材取付フレーム14の下面に第2の傾斜部材15が固定されている。傾斜部材取付フレーム14と縦根太兼用スライドレール11とは横根太13で連結固定され、相互に一体化されている。つまり、第2の傾斜部材15は荷台30側に固定されている。第2の傾斜部材15の下面は荷台30側の取付面30aを基準とした下向きの高さh2が前記車両(シャーシフレーム)前方に向けて低くなる第2の傾斜面15aであり、第1及び第2の傾斜面5a,15aは相互に対向する。
【0017】
図1(A)から(C)に示すように、車両20のキャビン21の後方に位置するアウトリガー(昇降油圧シリンダ)22がシャーシフレーム1の左右にそれぞれ固定されいる。シャーシフレーム1の後端側には補助脚23が固定されている。図1(B),(C)のように、補助脚23はシャーシフレーム1の後傾時に接地できる長さを有する。
【0018】
また、図5に示すように、シャーシフレーム1の前後方向にスライド駆動油圧シリンダ25が配置される。すなわち、スライド駆動油圧シリンダ25の一端(本体側)は取付部材26,27でシャーシフレーム1に取り付け、固定され、他端(ピストンロッド先端部)は荷台30の横根太13に固定の取付部材28に連結されている。従って、スライド駆動油圧シリンダ25の伸長状態では荷台30は図1(A)の車両走行時(荷台格納時)の位置となり、スライド駆動油圧シリンダ25の縮動状態では荷台30は図1(C)のシャーシフレーム1に対して後方にスライドした位置となる。図1(A)の車両走行時(荷台格納時)のように、荷台30がシャーシフレーム1に対して前進位置した所定の格納位置にあるときは、図2(A)及び図3(A)のように第1及び第2の傾斜面5a,15a同士が当接し(第1の傾斜面5a上に第2の傾斜面15aが乗り上げ)、スライドレール11がローラー3から浮き上がった非接触状態となる。シャーシフレーム1と荷台30間には、走行時に荷台30が移動しないように、ロック機構が設けられている(図示省略)。なお、スライド駆動油圧シリンダは、縮動状態で荷台30を車両走行時(荷台格納時)の位置とし、伸長状態ではシャーシフレーム1に対して荷台30を後方にスライドした位置に駆動する構成であってもよい。
【0019】
次に、上記実施の形態の全体的動作説明を行う。重機等を荷台30上に搬入する場合で説明すると、まず図1(A)の荷台格納状態では、図2(A)及び図3(A)のように第1及び第2の傾斜面5a,15a同士が当接し(第1の傾斜面5a上に第2の傾斜面15aが乗り上げ)、スライドレール11がローラー3から浮き上がった非接触状態となっている。図1(B)のようにシャーシフレーム1及び荷台30を後傾させる。この後傾状態ではアウトリガー22の下端及び補助脚23の下端が接地している。
【0020】
それから、図5のスライド駆動油圧シリンダ25を縮動させていくと、荷台30はシャーシフレーム1に対して後方にスライドして行くが、第1の傾斜面5aの上向きの高さh1がシャーシフレーム1後方に向かって減少するため、荷台30の僅かな後方へのスライド動作で図2(B)及び図3(B)のように第1及び第2の傾斜面5a,15a間に隙間ができ、スライドレール11(凹溝12の天井面12a)がローラー3に接触して支持された状態になる。その後は、ローラー3が回転することでスライドレール11を有する荷台30は円滑に図1(C)の後方位置にまて移動する。図1(C)の状態で積載物(重機等)を容易に荷台30上に搬入することができる。
【0021】
積載物を荷台30上に搬入後、車両を走行させる場合には、アウトリガー22を縮動させてシャーシフレーム1及び荷台30を水平に戻した後、スライド駆動油圧シリンダ25を伸長させて行き、図2(A)及び図3(A)のように第1及び第2の傾斜面5a,15a同士が当接して第1の傾斜面5a上に第2の傾斜面15aが乗り上げるまでは、ローラー3が回転することでスライドレール11を有する荷台30は円滑に前方位置に移動する。そして、荷台30が所定の走行位置となる手前で図2(A)及び図3(A)のように第1及び第2の傾斜面5a,15a同士が当接し(第1の傾斜面5a上に第2の傾斜面15aが乗り上げ)、さらにスライド駆動油圧シリンダ25が伸長することで第1の傾斜面5a上に第2の傾斜面15aが乗り上げた状態で荷台30は所定の走行位置となって停止される。同時に図示しないロック機構により荷台30はシャーシフレーム1に対して走行位置にロックされる。
【0022】
なお、スライド駆動油圧シリンダの縮動によって荷台30を車両走行時(荷台格納時)の位置にまで駆動する構成とすることも可能である。
【0023】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0024】
(1) シャーシフレーム1側のローラー3で、荷台30側のスライドレール11をスライド自在に支持する構成において、記荷台30が車両走行時の所定位置からシャーシフレーム1の後方に移動した状態ではシャーシフレーム1側の第1の傾斜面5aと荷台30側の第2の傾斜面15a間に隙間が生じ、スライドレール11がローラー3に接して円滑にスライド自在となり、荷台30が車両走行時の所定位置にあるときは、第1及び第2の傾斜面5a,15a同士が当接し、スライドレール11がローラー3から浮き上がった非接触状態となるようにしている。このため、車両走行時には荷台30の荷重がローラー3及びその取付軸4に加わることがない。このため、車両走行時の振動等によってローラー3や取付軸4が損傷するおそれが無くなり、車両の長寿命化や保守作業の低減を図ることができる。
【0025】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について述べる。
【0026】
上記実施の形態では、アウトリガー22を用いてシャーシフレーム1及び荷台30の両方を傾斜させたが、図6の車両20Aのように、シャーシフレーム1は傾斜させずに、シャーシフレーム1に対して傾斜(後傾)可能に連結されたローラー取付フレーム2にローラー3を設け、荷台30に固定されたガイドレール11がローラー3でスライド自在に支持される構造にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 シャーシフレーム
2 ローラー取付フレーム
3 ローラー
4 取付軸
5,15 傾斜部材
5a,15a 傾斜面
11 縦根太兼用スライドレール
12 凹溝
13 横根太
14 傾斜部材取付フレーム
20,20A 車両
21 キャビン
22 アウトリガー
23 補助脚
25 スライド駆動油圧シリンダ
30 荷台
【要約】
【課題】車両走行時には荷台をスライドさせるローラー及び取付軸に荷重が加わらないようにして、車両の長寿命化、保守費用の低減を図る。
【解決手段】シャーシフレーム1前後方向のローラー取付フレーム2に回転自在に取り付けられたローラー3と、ローラー3でスライド自在に支持される荷台30側スライドレール11と、シャーシフレーム側に固定の第1傾斜部材5と、荷台側に固定された第2傾斜部材15とを備え、荷台が車両走行時の所定位置からシャーシフレームの後方に移動した状態では第1及び第2傾斜面5a,15a間に隙間が生じ、スライドレール11がローラー3に接してスライド自在となり、荷台が車両走行時の所定位置にあるときは、第1及び第2傾斜面同士が当接し、スライドレール11がローラー3から浮き上がった非接触状態となる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7