(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
振り子型衝撃吸収試験機による点衝撃吸収試験(前記発泡体に振り子を直接衝突させる試験であり、23℃、衝撃子の重さ35.76g、振り上げ角度30°の条件による)において、点衝撃吸収率が15%以上(点衝撃吸収率は下式(1)で算出される)であり、かつ、振り子型衝撃吸収試験機による面衝撃吸収試験(前記発泡体に樹脂板を介して振り子を衝突させる試験であり、23℃、衝撃子の重さ35.76g、振り上げ角度160°の条件による)において、面衝撃吸収率が3%以上である(面衝撃吸収率は下式(2)で算出される)請求項1または2のいずれか1項に記載の発泡シート。
点衝撃吸収率(%)={(fp0−fp1)/fp0}×100 式(1)
(上記式(1)において、fp0は、前記発泡体を試料台に設置せずに衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重であり、fp1は、前記発泡体を試料台に設置して衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重である)
面衝撃吸収率(%)={(fa0−fa1)/fa0}×100 式(2)
(上記式(2)において、fa0は、前記発泡体を試料台に設置せず、前記樹脂板のみを設置して衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重であり、fa1は、前記発泡体を試料台に設置し、更に前記発泡体を介して前記樹脂板を試料台に設置して衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重である)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、下記項目を順番に説明する。
1.発泡シート
1−1.構造
2.各部
2−1.発泡体
2−1−1.原料
2−1−1−1.エマルジョンの種類
2−1−1−1−1.アクリル系エマルジョン
2−1−1−1−2.ウレタン系エマルジョン
2−1−1−1−3.スチレン系エマルジョン
2−1−1−1−4.エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン
2−1−1−2.エマルジョンの特性
2−1−1−2−1.粘度(mPa・s)
2−1−1−2−2.ガラス転移温度(℃)
2−1−1−2.分散媒
2−1−1−3.起泡剤(アニオン性界面活性剤)
2−1−1−4.両性界面活性剤
2−1−1−5.架橋剤(硬化剤)
2−1−1−6.水分散性樹脂分散用界面活性剤
2−1−2.組成
2−1−2−1.エマルジョン組成物中の配合比
2−1−3.製造方法
2−1−3−1.原料調製工程
2−1−3−2.発泡・硬化工程
2−1−3−3.発泡用気体
2−1−3−4.発泡方法、発泡条件
2−1−3−5.発泡体の形成
2−1−3−6.硬化
2−1−4.特性
2−2.基材
2−3.粘着剤層
2−4.剥離ライナー
3.発泡シートの用途・使用方法
【0012】
1.発泡シート
1−1.構造
本発明に係る発泡シートは、厚さが0.05mm以上0.5mm以下であり、見かけの密度が0.40g/cm
3以上0.90g/cm
3以下であり、動的粘弾性測定における−80℃〜150℃の温度範囲を5℃/minで昇温し、周波数1Hzの条件で測定した貯蔵弾性率と損失弾性率の比率である損失正接(tanδ;23℃)が0.4以上である発泡体をシート状に形成されていることを特徴とする発泡シートである。なお、本明細書において、「発泡シートの厚さ」と記載した場合は、「シート状に形成された発泡体」の厚さを示し、粘着剤層、基材及び剥離ライナー等を含むその他の層の厚さを含まないものとする。
【0013】
本発明に係る発泡シートの厚さは、0.05mm以上0.5mm以下である。発泡シートの厚さは、用途や設計上の要請により決定することができる。厚さが薄すぎる場合には、気泡が均一に分散できなくなったり、衝撃吸収性能が十分ではなくなる。また厚すぎる場合には、省スペース化された電子・電気機器の限られたスペースに収まらない場合が発生する。従って、本発明の発泡シートの厚さの下限は、好ましくは0.06mm、より好ましくは0.07mm、さらに好ましくは0.08mmであり、上限は、好ましくは0.4mm、より好ましくは0.3mm、さらに好ましくは0.2mmである。
【0014】
本発明に係る発泡シートは、基材上に形成することができる{
図1(b)}。そのようにすることで発泡シートに強度を持たせることが可能となる。基材上に発泡シートを形成する方法は、特に限定されず、例えば基材上に直接発泡体を塗工する方法や粘着剤層を設け貼り合わせる方法等が挙げられる。また、基材、粘着剤層、剥離ライナー、がこの順番に並んでいる積層体を予め形成しておき、基材の、粘着剤層が存在する側の反対側の面上に、発泡体を一体成形してもよい。
【0015】
基材の発泡シート形成側の表面に剥離剤層を設けてもよい。そのようにすることで基材を剥離ライナーとすることができる。
【0016】
さらに、基材の発泡シート形成側と反対側の表面に剥離剤層を設けてもよい。そのようにすることで発泡シートをロール状に巻回したロール体とすることができ、運搬時や保管時の省スペース化や発泡シートをダメージから保護することができる。
【0017】
また、本発明に係る発泡シートは、その表面の片側、または、両側に粘着剤層を設けることができる{
図1(c)}。粘着剤層を設けることで、発泡シートを用いた電子・電機部品の固定が容易となる。
【0018】
前記片側、または、両側の表面に粘着剤層を設けられた発泡シートは、さらに粘着剤層表面に剥離ライナーを設けることができる{
図1(d)}。剥離ライナーを設けることで、運搬中や使用前の粘着剤層へのダメージを防止することができる。
【0019】
ここで、本発明に係る発泡シートは、本発明に係る発泡体を含む限り、その用途に応じて、本発明に係る発泡体以外の発泡体や、基材、粘着剤層、及びその他公知の層を、所望の数、及び、所望の順番で積層させてもよい。更には、発泡体として本発明の発泡体を一層設ける態様が好適であるが、基材/本発明の発泡体/粘着剤層/本発明の発泡体/粘着剤層、等のように、本発明の発泡体を複数有する発泡シートとしてもよい。
【0020】
2.各部
2−1.発泡体
2−1−1.原料
本発明に係る発泡体は、原料として、例えば、エマルジョン、起泡剤(アニオン性界面活性剤)、分散媒として水、架橋剤及びその他の添加剤等を含む(なお、発泡工程において用いられる発泡用の気体に関しては、発泡工程にて述べる)。
【0021】
2−1−1−1.エマルジョンの種類
本発明に係る発泡体を製造する際に使用されるエマルジョン組成物のエマルジョン原料は特に限定されず、公知の方法で発泡体を形成できるエマルジョンであればよい。例えばアクリルエマルジョン、スチレンエマルジョン、ウレタンエマルジョン、及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョン、エポキシ系エマルジョン等が挙げられ、1つ、または、複数のエマルジョンを使用することができる。特にアクリルエマルジョン、スチレンエマルジョン、ウレタンエマルジョン、及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンから選択される1種以上のエマルジョンを用いることが好ましい。さらに、アクリル系エマルジョンを少なくとも用いることがより好ましい。また、ウレタンエマルジョンを用いることで、更に材料強度を付与することができ、被着体が粘着性のあるガラス等である場合には、特に好適である。また、得られるウレタン樹脂発泡体は柔軟性が優れ、圧縮残留歪みが低くなる。
【0022】
2−1−1−1−1.アクリル系エマルジョン
アクリル樹脂の水分散体(アクリル系エマルジョン)の製法としては、重合開始剤、必要に応じて乳化剤及び分散安定剤の存在下に、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を必須の重合性単量体成分とし、更に必要に応じてこれらの単量体と共重合可能なその他の重合性単量体の混合物を共重合させることにより得ることができる。尚、2種以上アクリル系エマルジョンを組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記アクリル系エマルジョンの調製に使用することができる重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アルリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボキシル基を有する不飽和結合含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0024】
なお、アクリル系エマルジョンの調製時に乳化剤を使用する場合には、公知の乳化剤等を使用すればよい。
【0025】
2−1−1−1−2.ウレタン系エマルジョン
ウレタン樹脂の水分散体(ウレタンエマルジョン)の調製方法としては、下記方法(I)〜(III)が例示出来る。
(I)活性水素含有化合物、親水性基を有する化合物、及び、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基を有するウレタン樹脂の有機溶剤溶液または有機溶剤分散液に、必要に応じ、中和剤を含む水溶液を混合し、ウレタン樹脂エマルジョンを得る方法。
(II)活性水素含有化合物、親水性基を有する化合物、及び、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基を有する末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、中和剤を含む水溶液と混合するか、または、予めプレポリマー中に中和剤を加え、水を混合して水に分散させた後、ポリアミンと反応させて、ウレタン樹脂エマルジョンを得る方法。
(III)活性水素含有化合物、親水性基を有する化合物、及び、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基を有する末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、中和剤及びポリアミンを含む水溶液と混合するか、または、予めプレポリマー中に中和剤を加えた後、ポリアミンを含む水溶液を添加混合し、ウレタン樹脂エマルジョンを得る方法。
【0026】
前記ウレタン樹脂の調製において用いるポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が例示できる。また発明の効果を損なわない範囲において、3価以上のポリイソシアネートを併用してもよい。
【0027】
また、前記親水性基を有する化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリブタジエン系等のポリオレフィンポリオール等が例示できる。これら高分子量化合物は、2種以上を併用してもよい。前記ポリエステルポリオールとしては、公知のものを使用してもよい。
【0028】
上記方法(I)〜(III)において、発明の効果を損なわない範囲で、更に乳化剤を使用してもよい。係る乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸塩等のノニオンアニオン系乳化剤、等を例示できる。
【0029】
2−1−1−1−3.スチレン系エマルジョン
スチレン樹脂の水分散体(スチレン系エマルジョン)の製法としては、重合開始剤、必要に応じて乳化剤及び分散安定剤の存在下に、例えば、スチレン系単量体を必須の重合性単量体成分とし、更に必要に応じてこれらの単量体と共重合可能なその他の重合性単量体の混合物を共重合させることにより得ることができる。なお、2種以上スチレン系エマルジョンを組み合わせて用いてもよい。
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの原料樹脂は、特に限定されるものではなく、例えばスチレン単独重合体、あるいはスチレンを50質量%以上含む共重合体が挙げられる。
【0030】
前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、スチレン−無水マレイン酸、スチレン−(メタ)アクリル酸、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル、スチレン−アクリロニトリル等の共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン等の3元共重合樹脂等が挙げられる。
より詳しくは、前記スチレン系モノマーとしては、例えば、α−メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
また、このようなスチレン系モノマーと共重合体を形成するモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、セチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレート、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ブタジエン、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0031】
2−1−1−1−4.エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン
エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンの製法としては、例えばポリビニルアルコール等を保護コロイドとし、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース系誘導体や界面活性剤等を乳化分散剤として併用し、エチレンと酢酸ビニルモノマーとを乳化重合法により共重合して得ることができる。
【0032】
上記エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンは、例えば、カルボキシル基、エポキシ基、スルフォン酸基、水酸基、メチロール基、アルコキシ酸基等の官能基を有するビニルモノマーが更に共重合されたものであってもよい。
【0033】
前記のエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンとしては、後述する2種類のエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンを少なくとも用いることが好適である。それぞれのエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンの配合量を調節することで、その柔軟性や、材料強度を調整することができ、本発明の所望の機能を実現することが可能となる。
【0034】
2−1−1−2.エマルジョンの特性
本発明に用いられるエマルジョンの内、好適な態様であるアクリル系エマルジョン及びエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンの物性について以下説明する。
【0035】
2−1−1−2−1.粘度(mPa・s)
粘度は、ブルックフィールド粘度計(25℃)によって測定する。
【0036】
アクリル系エマルジョンの粘度としては、5,000〜20,000mPa・sであることが好ましい。8,000〜15,000mPa・sであることがより好ましい。粘度が5,000以上であれば、成形時の泡保持力が十分となり、より微細なセルが成形でき、粘着強度がより強くなる傾向にある為である。逆に粘度が20,000以下であれば、成形時に原料へのせん断力を低減できるため、歪な形のセルが成形することを防げるため、より十分な粘着強度が得られるからである。
【0037】
前記のエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンとして使用される2種のエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンは、粘度が相互に異なるものであることが好ましい。この理由としては、2種類のエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンの粘度が異なる事により、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン同士の撹拌効率が著しく増加することが推定される。この撹拌効率の増加により、均一に酢酸ビニル共重合体樹脂が配置され、より強力な粘着強度・材料強度を発揮することができると考えられる。
【0038】
より詳細には、撹拌効率は、メカニカルフロス法で製造する際の泡の形成において、重要なファクターの一つであると考えられる。撹拌効率の増加は、原料中に入り込んだ泡をより微細、かつ、均一に成形することを可能とする。これにより被着体に対しての接着面積が上がることで、被着体に対する粘着強度が向上するものと考えられる。また、このことは微細セルがもたらす強い吸盤効果にも影響していると推定される。
【0039】
この2種のエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンの内、一方のエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンの粘度は2,000〜4,000mPa・sであることが好ましく、2,000〜3,000mPa・sであることがより好ましい。また、他方のエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンの粘度は前記一方のエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンの粘度よりも500〜1,500mPa・s低いことが好ましく、800〜1,300mPa・s低いことがより好ましい。2種のエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンの粘度がこれらの範囲内であることにより、材料強度を発揮できるからである。
【0040】
2−1−1−2−2.ガラス転移温度(℃)
ガラス転移温度は、動的粘弾性装置(Anton Paar社製:型式MCR302)にて、JIS−K7198に準拠した手順で−80℃〜150℃、5℃/minで昇温、周波数1Hzの条件で測定したtanδのピーク値を示す温度をガラス転移温度とする。
【0041】
エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンとして使用される2種のエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンは、ガラス転移温度が相互に異なるものであることが好ましい。この2種のエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンの内、一方のエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンのガラス転移温度は−30℃〜30℃であることが好ましく、−25℃〜25℃であることがより好ましい。また、他方のエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンのガラス転移温度は前記一方のエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンのガラス転移温度よりも5℃以上低いことが好ましく、5〜70℃低いことがより好ましい。
【0042】
また、アクリル系エマルジョンのガラス転移温度とエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンのガラス転移温度が、いずれも−10℃以下であることが好ましい。低温化での使用時にアクリル樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体が高硬度化したり、減粘着化したりする傾向があるためである。
【0043】
2−1−1−2.分散媒
本形態において、エマルジョン組成物の分散媒としては、水を必須成分とするが、水と水溶性溶剤との混合物であってもよい。水溶性溶剤とは、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の極性溶剤等であり、これらの1種または2種以上の混合物等を使用してもよい。
【0044】
2−1−1−3.起泡剤(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤(起泡アニオン性界面活性剤)は、エマルジョン組成物の起泡剤として機能する。
【0045】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム石鹸、ひまし油カリウム石鹸、やし油カリウム石鹸、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、やし油アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等が挙げられるが、特に、アルキルスルホコハク酸ナトリウムが好ましい。
【0046】
ここで、本形態に用いられるアニオン性界面活性剤は、エマルジョン組成物に分散しやすくするため、HLBが、10以上であることが好適であり、20以上であることがより好適であり、30以上であることが特に好適である。
【0047】
2−1−1−4.両性界面活性剤
本形態に係る発泡体は、アニオン性界面活性材に加えて、更に両性界面活性剤を用いることにより、気泡が微細かつ均一化する。
【0048】
特にアニオン系界面活性剤と両性界面活性剤を併用した場合、アニオン系界面活性剤の分子同士の親水基の電荷が反発し、アニオン系界面活性剤の分子同士がある程度の距離を保っている間に、電気的に中性である両面活性剤がアニオン系界面活性剤の分子の間に入り込むことによって、気泡をより安定化し、気泡のサイズを小さくすることができる。このため、層間剥離強度を向上させることができる。よって、アニオン系界面活性剤と両性界面活性剤を併用することが好ましい。
【0049】
本発明において用いることのできる両性界面活性剤としては、特に制限されるものではなく、アミノ酸型、ベタイン型、アミンオキシド型等の両性界面活性剤を使用することができる。ベタイン型の両性界面活性剤は、前述の効果がより高いことから、好適である。更に、アニオン系界面活性剤の分子の間への入り込み易さの点から、C10〜12のものが好ましい。
【0050】
アミノ酸型の両性界面活性剤としては、例えば、N−アルキル若しくはアルケニルアミノ酸またはその塩等が挙げられる。N−アルキル若しくはアルケニルアミノ酸は、チッ素原子にアルキル基またはアルケニル基が結合し、更に1つまたは2つの「−R−COOH」(式中、Rは2価の炭化水素基を示し、好ましくはアルキレン基であり、特に炭素数1〜2であることが好ましい。)で表される基が結合した構造を有する。「−R−COOH」が1つ結合した化合物においては、チッ素原子には更に水素原子が結合している。「−R−COOH」が1つのものをモノ体、2つのものをジ体という。本発明に係る両性界面活性剤としては、これらモノ体、ジ体のいずれも用いることができる。N−アルキル若しくはアルケニルアミノ酸において、アルキル基、アルケニル基は直鎖状でも分岐鎖状であってもよい。具体的には、アミノ酸型の両性界面活性剤として、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、トリメチルグリシンナトリウム、ココイルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルメチル−β−アラニン等が挙げられる。
【0051】
ベタイン型の両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン、カルボベタイン、アミドカルボベタイン、アミドベタイン、アルキルアミドベタイン、スルホベタイン、アミドスルホベタイン、ホスホベタイン等がある。具体的には、ベタイン型の両性界面活性剤として、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジエチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジエチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジエチルアミノヒドロキシスルホベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジエチルアミノヒドロキシスルホベタイン、N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホベタイン、N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホベタイン、N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−1−スルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(2−ラウリル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン2−ステアリル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルヒドロキシスルタイン等が挙げられる。
【0052】
アミンオキシド型の両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミン−N−オキシド、オレイルジメチルアミン−N−オキシド等が挙げられる。
【0053】
上述した両性界面活性剤のうち、本発明に係る発泡体の製造方法には、ベタイン型の両性界面活性剤を使用することが好ましく、ベタイン型の中でも、アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン、カルボベタインが特に好ましい。本発明で使用可能なアルキルベタインとしては、ステアリルベタイン、ラウリルベタイン等が例示され、イミダゾリニウムベタインとしては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が例示される。
【0054】
2−1−1−5.架橋剤(硬化剤)
架橋剤(硬化剤)を用いることで、本形態に係る発泡体の強度を向上させることが可能となる。
【0055】
このような架橋剤としては特に限定されず、用途等に応じて、必要量添加すればよい。架橋剤による架橋手法としては、例えば、物理架橋、イオン架橋、化学架橋があり、架橋方法は、水分散性樹脂の種類に応じて選択することができる。架橋剤としては、公知の架橋剤を使用可能でありエポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤等を、使用する樹脂配合系が含有する官能基の種類及び、官能基量に応じて適量使用することができる。粘着強度、タック強度及び層間剥離強度を向上させるため、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤が好ましい。イソシアネート系及びエポキシ系架橋剤は、材料強度を上げることにより、被着体及び多孔質フォームの材料破壊を防ぐことができる。中でも脂肪族イソシアネートがより好ましい。これら架橋剤は、2種以上併用してもよい。
【0056】
2−1−1−6.水分散性樹脂分散用界面活性剤
本形態に係る水分散性樹脂分散用界面活性剤とは、水分散性樹脂を分散させるための界面活性剤である(アニオン性界面活性剤と異なり、起泡剤としての効果を有さずともよい)。このような界面活性剤は、選択する水分散性樹脂に応じて適宜選択すればよい。
【0057】
2−1−2.組成
液体媒体に対する、水分散性樹脂(固形分)の配合量としては、液体媒体100重量部に対して、30〜80重量部が好ましい。このような範囲とすることで、安定な発泡体を成形することができるという効果が得られる。なお、以下では本発明に係る発泡体の好適配合比について説明する。なお、以下の記載における配合量や配合比は、特記しない限り、固形分を基準とする。
【0058】
2−1−2−1.エマルジョン組成物中の配合比
なお、本明細書及び特許請求の範囲にいうエマルジョンの「固形分」を構成する成分は、エマルジョンから分散媒を除いた成分である。具体的には、樹脂の他、界面活性剤やフィラー等を含有したものである。
【0059】
エマルジョンの全量を基準(固形分量及び非固形分量の合計を100重量部とする。)として、10重量部を超えて90重量部以下のエマルジョンを含有することが好ましい。20重量部以上80重量部以下であることがより好ましく、30重量部以上75重量部以下であることが更に好ましい。一般的に、エマルジョンの固形分は、30〜80重量部であり、40〜70重量部が好ましく、50〜60重量部が更に好ましい。
【0060】
アニオン性界面活性剤の配合量としては、エマルジョン組成物中において、エマルジョンの全量を基準(固形分量及び非固形分量の合計を100重量部とする。)として、1.0〜10重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。このような範囲とすることで、適切な発泡とし易く、微細なセル構造を成形できるという効果が得られる。
【0061】
両性界面活性剤の配合量としては、エマルジョン組成物中において、エマルジョンの全量を基準(固形分量及び非固形分量の合計を100重量部とする。)として、0.5〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。このような範囲とすることで、適切な発泡とし易く、微細なセル構造を成形できるという効果が得られる。
【0062】
架橋剤(硬化剤)の配合量としては、エマルジョン組成物における、アクリル系エマルジョン(固形分)に対する架橋剤の重量比(前記架橋剤/前記アクリル系エマルジョン)が、0.01〜0.12である。0.025〜0.05であることが好ましい。このような範囲とすることで、圧縮残留歪みの小さい発泡体を成形できる。
【0063】
2−1−3.製造方法
本発明に係る発泡体の製造方法は、原料調製工程と、発泡・硬化工程(エマルジョンと起泡剤とを少なくとも含有するエマルジョン組成物を、メカニカルフロス法を用いて発泡させて発泡体を形成し、当該発泡体を硬化させる工程)と、を含む。前記エマルジョン組成物が、架橋剤を更に含有し、前記工程において、エネルギーを印加して前記エマルジョンを構成する樹脂を前記架橋剤を介して架橋させることにより、前記発泡体を硬化させてもよい。以下、それぞれの工程に関して詳述する。
【0064】
2−1−3−1.原料調製工程
原料調製工程では、以上説明したような各原料を混合することで、発泡体の原料混合物であるエマルジョン組成物を調製する。この際の混合方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、各成分を混合する混合タンク等の容器内で撹拌しながら混合すればよい。
【0065】
2−1−3−2.発泡・硬化工程
発泡・硬化工程では、上記原料調製工程で得られたエマルジョン組成物に所定の発泡用気体を添加し、これらを充分に混合させてエマルジョン組成物中に気泡が多数存在する状態(発泡エマルジョン組成物)にする。この発泡・硬化工程は、通常は、原料調製工程で得られた液状の多孔質フォームの原料混合物と、発泡用気体とをミキシングヘッド等の混合装置により充分に混合することで実施される。
【0066】
2−1−3−3.発泡用気体
攪拌・発泡工程でエマルジョン組成物に混合される発泡用気体は、発泡体中の気泡(セル)を形成するものであり、この発泡用気体の混入量によって、得られる発泡体の発泡倍率及び密度が決まる。多孔質フォームの密度を調整するためには、所望の多孔質フォームの密度と、多孔質フォームの原料の体積(例えば、多孔質フォームの原料が注入される成形型の内容積)とから、必要な多孔質フォームの原料の重量を算出し、この重量において所望の体積となるように発泡用気体の量を決定すればよい。また、発泡用気体の種類としては、主に空気が使用されるが、その他にも、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを使用することもできる。
【0067】
2−1−3−4.発泡方法、発泡条件
本発明に係る発泡体の調製方法で使用される発泡方法としては、メカニカルフロス(機械発泡)法を使用する。メカニカルフロス法は、エマルジョン組成物を攪拌羽根等で攪拌することにより、大気中の空気をエマルジョン組成物に混入させて発泡させる方法である。撹拌装置としては、メカニカルフロス法に一般に用いられる撹拌装置を特に制限なく使用可能であるが、例えば、ホモジナイザー、ディゾルバー、メカニカルフロス発泡機等を使用することができる。このメカニカルフロス法によれば、エマルジョン組成物と空気との混合割合を調節することによって、種々の用途に適した密度の多孔質フォームを得ることができる。その他の発泡方法を併用することも可能であるが、化学発泡剤を用いた発泡方法を併用すると、独立泡の割合が高くなることで、密度が大きくなり、多孔質フォームの柔軟性が失われるため、好ましくない。
【0068】
エマルジョン組成物と空気との混合時間は特に制限されないが、通常は1〜10分、好ましくは2〜6分である。混合温度も特に制限されないが、通常は常温である。また、上記の混合における攪拌速度は、気泡を細かくするために200rpm以上が好ましく(500rpm以上がより好ましく)、発泡機からの発泡物の吐出をスムーズにするために2000rpm以下が好ましい(800rpm以下がより好ましい)。
【0069】
2−1−3−5.発泡体の形成
以上のようにして発泡したエマルジョン組成物(発泡エマルジョン組成物)は、例えば、ドクターナイフ、ドクターロール等の公知の手段により、所望の厚みに合わせたシート状等の発泡体に形成される。
【0070】
2−1−3−6.硬化
発泡体の硬化方法としては、公知の方法を用いることができる。本形態に係る発泡体は自己架橋をさせることもできるが、エネルギーを印加してエマルジョンを構成する樹脂を架橋剤を介して架橋させることにより、発泡体を硬化させてもよい。エネルギーを印加する工程としては特に限定されないが、例えば、加熱工程(熱架橋)が挙げられる。
【0071】
加熱工程では、成形された発泡エマルジョン組成物中の分散媒を蒸発させる。この際の乾燥方法としては特に制限されるものではないが、例えば、熱風乾燥等を用いればよい。また、乾燥温度及び乾燥時間についても特に制限されるものではないが、例えば、80℃程度で1〜3時間程度とすればよい。
【0072】
また、この加熱工程において、分散媒が発泡エマルジョン組成物中から蒸発するが、この蒸気が抜ける際の通り道が、多孔質フォームの内部から外部まで連通されることとなる。従って、本形態に係る発泡体では、この水蒸気が抜ける際の通り道が連続気泡として残るため、多孔質フォーム中に存在する気泡の少なくとも一部が連続気泡となる。ここで、攪拌・発泡工程で混入された発泡用気体がそのまま残存している場合には、得られた多孔質フォーム中では独立気泡となり、混入された発泡用気体が、本工程において蒸気が抜ける際に連通された場合には、得られた多孔質フォーム中では連続気泡となる。すなわち、本発明においては、多孔質フォーム中の気泡の一部が連続気泡であり、残りの気泡が独立気泡であるという構造となり、連続気泡と独立気泡が混在する半連続気泡構造となる。
【0073】
架橋剤を添加した場合には、加熱工程では、原料の架橋(硬化)反応を進行及び完了させる。具体的には、上述した架橋剤により原料同士が架橋され、硬化した多孔質フォームが形成される。この際の加熱手段としては、原料に充分な加熱を施し、原料を架橋(硬化)させ得るものであれば特に制限はされないが、例えば、トンネル式加熱炉等を使用することができる。また、加熱温度及び加熱時間も、原料を架橋(硬化)させることができる温度及び時間であればよく、例えば、80〜150℃(特に、120℃程度が好適)で1時間程度とすればよい。
【0074】
2−1−4.特性
前記発泡体の見かけの密度は、0.40g/cm
3以上0.90g/cm
3以下である。前記見かけの密度はJIS K7222に準じて測定できる。見かけの密度は発泡体の気泡の包含率の目安であり、見かけの密度が小さすぎると、気泡が多すぎるため衝撃吸収性能が低くなる。特に点衝撃吸収性能は著しく低下する。また見かけの密度が大きすぎると、気泡が少なすぎるため衝撃吸収性能が低下する。見かけの密度の下限値は、好ましくは0.41g/cm
3、より好ましくは0.42g/cm
3、さらに好ましくは0.43g/cm
3であり、上限値は、好ましくは0.89g/cm
3、より好ましくは0.88g/cm
3、さらに好ましくは0.87g/cm
3である。
【0075】
前記発泡体は、動的粘弾性測定における−80℃〜150℃の温度範囲を5℃/minで昇温し、周波数1Hzの条件で測定した貯蔵弾性率と損失弾性率の比率である損失正接(tanδ;23℃)が0.4以上であることを特徴とする。動的粘弾性測定方法は、例えばJIS K7244−10:2005に従って測定することができる。
また貯蔵弾性率は、粘弾性体である発泡体の弾性項を表すパラメータであり、加えられた変形エネルギー等を弾性エネルギーとして蓄えることができる能力を表す。一方、損失弾性率は、粘弾性体である発泡体の粘性項を表すパラメータであり、加えられた変形エネルギー等を発泡体内部の内部摩擦等によって散逸エネルギーとする能力を表す。また、損失正接は、損失弾性率/貯蔵弾性率で表され、発泡体が相対的に粘性的であるかという指標である。従って損失正接が大きい発泡体は相対的に粘性的であり、損失正接が小さい発泡体は相対的に粘性的ではなく、即ち弾性的となる。
【0076】
前記23℃における損失正接(tanδ)が0.4未満であれば、相対的に弾性的となり、後述する点衝撃吸収性が低下する。例えば電子・電気機器類を落下させた場合のように衝撃の印加速度が速い場合には、前記発泡体の粘弾性特性は、粘弾性体の温度時間換算測(T−T換算測)に基づき、より低温側の温度範囲の特性を示す。即ち相対的に弾性的な挙動が強くなり、点衝撃吸収性能は低下する。このため前記23℃における損失正接(tanδ)は大きい方が点衝撃吸収性能は高くなり、23℃における損失正接(tanδ)は例えば0.4以上、より好ましくは0.5以上である。
【0077】
本発明に係る発泡体のガラス転移温度は、5℃以上40℃以下とすることができる。ガラス転移温度が前記範囲に存在する場合に、後述する点衝撃吸収性が良好となる。ガラス転移温度が5℃よりも低くなると相対的に粘性的になりすぎるため点衝撃性吸収性のみならず面衝撃吸収性も低下する。ガラス転移温度が40℃よりも高くなると相対的に、弾性的になりすぎるため点衝撃吸収性が著しく低下する。ガラス転移温度の測定は公知の方法(JIS K7244−10:2005に準拠した方法等)で測定することができる。本発明におけるガラス転移温度は、動的粘弾性装置(Anton Paar社製:型式MCR302)を用いて、−80℃〜150℃の温度範囲を、5℃/minで昇温、周波数1Hzの条件で測定したtanδのピーク値を示す温度をガラス転移温度とする。
【0078】
また、ガラス転移温度を制御するために、複数のエマルションを混合する。この時、混合された複数のエマルションのガラス転移温度は、種々の共重合モノマーのホモポリマーのガラス転移温度を測定し、これらホモポリマーのガラス転移温度で、混合する個々の共重合モノマーの重量分率を除して、混合する個々の共重合モノマーの除数を合算することで、ガラス転移温度の逆数が求められる。ここで、上記種々の共重合モノマーとは、具体的には、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸等をいう。
【0079】
本発明に係る発泡体は、点衝撃吸収性を15%以上、かつ面衝撃吸収性を3%以上とすることができる。このような範囲の発泡体とすることで、機器内部の精密化した電子・電気部品を衝撃から十分に保護することができる。点衝撃は面衝撃に比べ、狭い面積に衝撃が集中するため局所的に強い衝撃となる。このため面衝撃を吸収するだけでは、精密化した電子・電気部品の保護が不十分である。特に、表示パネルのような薄く広い面積を有するような電子・電気部品は非常に壊れやすく、保護が不十分となる。
点衝撃吸収性とは、振り子型衝撃吸収試験機による点衝撃吸収試験(前記発泡体に振り子を直接衝突させる試験であり、23℃、衝撃子の重さ35.76g、振り上げ角度30°の条件による)において、下式(1)により算出される値とする。
また、面衝撃吸収性とは、振り子型衝撃吸収試験機による面衝撃吸収試験(前記発泡体に樹脂板を介して振り子を衝突させる試験であり、23℃、衝撃子の重さ35.76g、振り上げ角度160°の条件による)において下式(2)により算出される値とする。
点衝撃吸収率(%)={(f
p0−f
p1)/f
p0}×100 式(1)
(上記式(1)において、f
p0は、前記発泡体を試料台に設置せずに衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重であり、f
p1は、前記発泡体を試料台に設置して衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重である)
面衝撃吸収率(%)={(f
a0−f
a1)/f
a0}×100 式(2)
(上記式(2)において、f
a0は、前記発泡体を試料台に設置せず、前記樹脂板のみを設置して衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重であり、f
a1は、前記発泡体を試料台に設置し、更に前記発泡体を介して前記樹脂板を試料台に設置して衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重である)
【0080】
2−2.基材
基材の材質は、特に限定されず、公知の基材を用いることができる。例えば、樹脂フィルムや紙等を用いることができる。基材の厚さは、用途や設計要求等に合わせて選択することができ、例えば10μm以上100μm以下とすることができる。
【0081】
基材表面に剥離剤層を設けることができる。剥離剤層の材質も公知のものを用いることができ、例えばジメチルシロキサン等を用いることができる。
【0082】
2−3.粘着剤層
前記粘着剤層の材質は、特に限定されず、公知の粘着剤を用いることができる。例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等から、被着体の種類、用途及び設計要求等に合わせて選択することができる。
【0083】
前記粘着層の厚さは特に限定されず、例えば1μm以上100μm以下とすることができる。粘着剤の種類、用途や設計要求等に合わせて選択することができる。
【0084】
また、前記粘着剤層は、一様なフィルム状の他にも、溝や貫通孔を有するフィルム状、ドット状、繊維状、格子状等の構造とすることができる。
【0085】
2−4.剥離ライナー
本発明に係る発泡シートに前記粘着剤層を設けた場合には、粘着剤層の表面に、使用時まで粘着剤層を保護する剥離ライナーを、さらに設けることができる。剥離ライナーの材質や表面に塗布される剥離剤は特に限定されず、公知のものから選択できる。例えば材質としては樹脂フィルムや紙等が挙げられ、剥離剤としては、ジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0086】
また剥離ライナーの厚さは、特に限定されず、例えば10μm以上100μm以下とすることができる。
【0087】
3.発泡シートの用途・使用方法
本発明に係る発泡シートは、厚さが薄く、衝撃吸収性能が高いため、電子・電気機器内部の精密な電子・電気部品等を保護するための衝撃吸収シートとして用いることができる。特に、液晶パネル、有機ELパネルやタッチパネル等の薄く、面積の広い表示部品の保護に有用である。
また、本発明に係る発泡シートは、予め保護対象である電子・電気部品に貼り付けて用いることができる。そのようにすることで、前記電子・電気部品を組み立てる際に、作業性が向上する。
【実施例】
【0088】
次に、本発明を実施例により、更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。なお、特別な記載がない限り、含有量を表す「%」は質量%を意味する。
【0089】
[原料]
≪発泡体原料≫
まず、本実施例においては、発泡体の原料として下記の原料を使用した。
<水分散性樹脂>
アクリルエマルジョン1 :アクリル−シリコーン共重合体 固形分53%(サイデン化学社製:サイノビール)
アクリルエマルジョン2 :アクリル共重合体 固形分55%(ダウ・ケミカル社製:Acousticryl AV1331)
アクリルエマルジョン3 :アクリル共重合体 固形分45%(DIC社製:ボンコートED−85−E)
アクリルエマルジョン4 :アクリル共重合体 固形分60%(DIC社製:ボンコートAC−501)
アクリルエマルジョン5 :アクリル共重合体 固形分48%(日本カーバイド社製:ニカゾールRX−1033)
ウレタンエマルジョン1 :ポリエーテルカーボネート系ウレタンエマルジョン 固形分60%(住化コベストロ社製インプラニール)
アニオン系界面活性剤1 :ステアリン酸アンモニウム 固形分30%
アニオン系界面活性剤2 :アルキルスルコハク酸ナトリウム 固形分35%
ベタイン系両性界面活性剤:アルキルベタイン 固形分30%
架橋剤 :疎水系HDIイソシアヌレート(官能基数3.5) 固形分100%
【0090】
[発泡体原料]
参考例1の発泡体原料として、アクリル系エマルジョン1とアクリル系エマルジョン3を主剤として使用し、エマルジョンの全量を基準(固形分量及び非固形分量の合計を100重量部とする。)として、各75:25重量部に対し、3重量部のアニオン系界面活性剤1、3重量部のアニオン系界面活性剤2、1重量部のベタイン系両性界面活性剤、2重量部の架橋剤を混合して発泡体原料とした。
実施例2〜3
5、比較例1〜16
及び参考例2〜9の発泡体原料として、表1〜表6に示す割合で原料を配合した以外は、
参考例1の発泡体原料と同様にして各発泡体原料を調製した。
【0091】
[シートの形成]
各実施例
、各比較例
及び各参考例の発泡体原料にエアーまたは窒素ガス等の不活性ガスを加えて、メカニカルフロス法により(発泡条件100〜1000rpmにて)発泡させ、PET製剥離ライナー上にキャスティングした後、加熱処理(オーブンまたは乾燥炉)して各実施例
、各比較例
及び各参考例の発泡シートを得た。各実施例
、各比較例
及び各参考例の密度は、エアーまたは窒素ガス等の不活性ガスの注入量やミキサーの回転数、乾燥条件を変更することで調整した。
【0092】
[評価試験]
次に、実施例
2〜3
5、比較例1〜16
及び参考例1〜9の測定及び評価を表1〜6に示す。
【0093】
・密度
単位体積当たりの重さを計算することによって測定した。
【0094】
・厚さ
厚さをシックネスゲージによって測定した。
【0095】
・ガラス転移温度Tg(℃)
ガラス転移温度は、動的粘弾性装置(Anton Paar社製:型式MCR302)を用い、JIS−K7198に準拠した手順で−80℃〜150℃の温度範囲を、5℃/minで昇温、周波数1Hzの条件で測定したtanδのピーク値を示す温度とした。
【0096】
・損失正接(tanδ)
損失正接は、動的粘弾性装置(Anton Paar社製:型式MCR302)にて、JIS−K7198に準拠した手順で−80℃〜150℃、5℃/minで昇温、周波数1Hzの条件で測定した際の23℃における貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定し、損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値とした。
【0097】
・点衝撃吸収率
点衝撃吸収率は、振り子型衝撃吸収試験機(テスター産業社製:IM−501)を用いて、点衝撃吸収試験を行い、下式(1)により算出した。試料をφ50mmのサイズに加工したものを試料台に設置し、気温23℃、衝撃子の重さ35.76g、振り上げ角度30°の測定条件で衝撃試験を行った。
点衝撃吸収率(%)={(f
p0−f
p1)/f
p0}×100 式(1)
上記式(1)において、f
p0は、前記発泡体を試料台に設置せずに衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重であり、f
p1は、前記発泡体を試料台に設置して衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重である。
【0098】
・面衝撃吸収率
面衝撃吸収率は、振り子型衝撃吸収試験機(テスター産業社製:IM−501)を用いて、面衝撃吸収試験を行い、下式(2)により算出した。測定は試料をφ50mmmのサイズに加工したものを試料台に設置し、さらに試料の衝撃子が接触する位置に厚さ5mmのアクリル板を設けて行った。測定条件は、気温23℃、衝撃子の重さ35.76g、振り上げ角度160°とした。
面衝撃吸収率(%)={(f
a0−f
a1)/f
a0}×100 式(2)
上記式(2)において、f
a0は、試料を試料台に設置せず、アクリル板のみを設置して衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重であり、f
a1は、試料を試料台に設置し、更に試料の衝撃子が接触する位置に厚さ5mmのアクリル板を設けて衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重である。
【0099】
・総合判定
点衝撃吸収率が15%以上であり、かつ面衝撃吸収率が3%以上のものを〇、その他を×とした。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
【表6】
【0106】
表1〜5に示すように、全ての実施例は、密度、厚み、損失正接(Tanδ)が所定の範囲にあり、総合判定が〇の評価であり、本発明の目的を達成するものである。
であり、動的粘弾性測定における周波数1Hzでの貯蔵弾性率と損失弾性率の比率である損失正接(tanδ;23℃)が0.4以上である、発泡体で構成されている発泡シート1。前記発泡体のガラス転移温度が5〜40℃であることが好ましい、発泡シート1。前記発泡体が、エマルジョン樹脂組成物を発泡及び硬化させることにより、形成されたものが好ましく、前記エマルジョン樹脂組成物が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、又はEVA系樹脂の1つ以上の樹脂材料を含むことが好ましい、発泡シート1。好ましくは発泡体が基材2上にシート状に形成された発泡シート1。