(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、人の視覚(目)の錯覚を利用して身長を低く見せる靴を提供するという第1の目的を、少なくとも、アウトソール部とアッパー部とにより構成される靴において、少なくとも前記アッパー部は、爪先部FTを覆う爪先部、前記爪先部に連続して大凡土踏まずに相対配置された左中央側壁及び右中央側壁を含む中央部、前記中央部に連続して踵を囲うよう平面視アーチ型に形成された擬似踵部を含み、前記アッパー部の外表面には、擬似アウトソール形態部が表され、前記擬似アウトソール形態部における前記擬似踵部の下方に擬似ヒール形態部が表されると共に、靴内部の踵保持部が前記擬似ヒール形態部に対し、水平方向において並んで配置されてなることにより実現した。
【0015】
本発明の参考例1を
図1〜5を参照しつつ説明する。
参考例1の靴100は、運動靴102の例であって、少なくとも、アウトソール部104、アッパー部106、及び、擬似アウトソール部108によって構成されている。本参考例1においては、更に、タン部110及び、靴紐112によって構成されている。なお
図1乃至
図4は右足用の運動靴102Rであり、
図5は左足用の運動靴102Lであるが、周知のように右足用及び左足用の運動靴は左右対称に同一構造に構成されている。
【0016】
まずアウトソール部104を説明する。
アウトソール部104は、靴底であり、人の足HFの足裏SFを地面上の危険物から保護すると共に、着地時の衝撃を緩和する機能、及び、アッパー部106の下端部が固定される機能を有し、一般的にウレタン樹脂等の弾性を有する合成樹脂やゴムによって、大凡足形に成型される。足形とは、全体的に楕円形であって、土踏まず部104Aが爪先部104Tと踵部104Hに対してくびれて狭幅になったひょうたん型の他、くびれ部が無い楕円形状を含む概念である。アウトソール部104の厚みは、大凡均一である。しかし、踵部104H側から爪先部104T側に向かって徐々に薄くなるように構成しても良い。
【0017】
次にアッパー部106を説明する。
アッパー部106は、足HFの足側面LF、足上面IF、及び、踵FHを覆う機能を有すると共にアウトソール部104と共に靴100全体を足HFに一体化させる機能を有し、その材質は用途に応じ、布、皮革、人工皮革、樹脂、及び、ゴム等によって成形されている。
アッパー部106は、足の足側面LF及び甲IFを覆う機能から、大略、爪先部116、中央部118、及び、擬似踵部120によって錐形楕円型に形成され、その下端部は、アウトソール部104の上面、上側面、又は、側面全周に縫合又は接着等によって強固に固定される。
爪先部116は土踏まずAFに相対する中央部118までを意味し、先端部分122は閉止されると共に爪先部116の左側壁124、右側壁126、及び、天壁128により短手方向断面がドーム型に形成されている。土踏まず部114は、爪先部116に連続して大凡土踏まずAFに相対し、アウトソール部104に対して大凡垂立し、それらは大凡並行する左中央側壁132と右中央側壁134(見えない)とにより形成され、その下端部は、アウトソール部104の上面又は側面に強固に縫合、又は、接着によって固定されている。擬似踵部120は、土踏まず部114に連続して踵FHの上側を囲うように横向きの三次元のドーム状に形成され、外見上、真の踵部と見誤るように形成されている。アッパー部106は、その下端部の全周がアウトソール部104の側面に配置される場合、その下端部も一部は上下方向においてアウトソール部104と重なっているので、その重なり部分は、実質的にアッパー部106ではない。よって、本明細書においては、アウトソール部104と重なり合わない部分を実アッパー部130として説明する。
また、爪先部116から土踏まず部114の稜線部136には所定の間隔で開設された開口138の両側に羽部142(左羽部142L、右羽部142R)が形成され、靴紐112を引き通すための複数の紐孔144がそれぞれに同数穿孔されている。
本参考例1において、爪先部116の稜線部には補強及び外観向上のため、開口138から先端部分122に亘って先広がり状のトウ当て片146が貼付されている。また、擬似踵部120にも補強及び外観向上のため、踵部を包むように踵充て片148が貼付されている。
これらにより、運動靴102には、足HFがすっぽりと入る足形空間150が形成される。
【0018】
足形空間150内のアウトソール部104上には主に衝撃緩和機能を発揮させるため、アウトソール部104と同形状であるがやや小ぶりに形成されたミドルソール部152が配置されている。
【0019】
次に擬似アウトソール部108を説明する。
擬似アウトソール部108は、第三者にアウトソール部104であると錯覚させる機能を有し、アッパー部106の所定位置の外面に形成され、外形がアウトソール部と見誤らせるような形態に形成されている。アッパー部106の所定の位置とは、アッパー部106の下端部における、少なくとも擬似踵部120に対する下方位置であるが、これに限定されず、アッパー部106の下端部の全周であっても良い。
本参考例1における擬似アウトソール部108は第1擬似アウトソール部154であり、アッパー部106の下端部の中央部118から擬似踵部120の下方かけて表されている。
擬似アウトソール部108(第1擬似アウトソール部154)は、少なくとも擬似アウトソール形態部156を含み、更に、擬似アッパー部境界部158を含むことが好ましい。
更にまた、靴100、したがって運動靴102は足形空間150に突出する踵保持部162を含んでいる。
【0020】
最初に擬似踵部120を説明する。
擬似踵部120は、外見上、足HFの踵FHが位置するように見誤る形態に形成されている。具体的には、アッパー部106における足HFの踵FHが擬似踵保持部158に保持されているように見せかける形態に形成されている。具体的には。擬似踵部120は、運動靴102の後端部上部に形成された横向きドーム型をしている。
【0021】
次に擬似アウトソール形態部156を説明する。
擬似アウトソール形態部156は、外見上、アウトソール部104に見誤る形態に形成されている。本参考例1においては、側面視において擬似アウトソール部下縁164は略直線状であり、擬似アウトソール部上縁166は中央部が最も高い山形に形成された擬似アウトソールテープ体168によって形成されている。擬似アウトソールテープ体168の中間部は、アウトソール部104の側面及びアッパー部106の下部側面に相対して配置され、擬似踵部120の下方から爪先部116へ向かって延伸されて中央部118と爪先部116との境目近傍まで延在され、その後一定の幅で先端部分122へ延長されている。
擬似アウトソールテープ体168の外表面はアウトソール部104を印象づける形態、例えば、天然ゴム又は皮革を連想させるキャラメル色、獣皮表面を連想させる微細凹凸、アッパー部106とは全く異なる二次元若しくは三次元模様、又は、アッパー部106に対し突出する段差を形成する厚み等に処理されている。更には、アッパー部106の表面がレザー調、かつ、擬似アウトソール形態部156がエンボス調、若しくは、アッパー部106と異なるレザー調、又は、アッパー部106が布地調、擬似アウトソール形態部156がレザー調に処理することができる。さらに、アッパー部106の下部の外表面に印刷又は描画によって、擬似アウトソール形態部156を表すことができる。靴100を大量生産する場合、アッパー部106の下端部を型によって樹脂成形し、又は、印刷することが適している。同一品を大量生産することで、コストを低減できるからである。
したがって、擬似アウトソールテープ体168の擬似アウトソール部上縁166、とアッパー部106の擬似アッパー部下縁170とは同一部位を表している。擬似アウトソール部上縁166(擬似アッパー部下縁170)と擬似踵部120との位置関係は、足裏SFと踵FHとの関係において自然なレイアウトを印象づける寸法関係に配置されている。
【0022】
次に擬似アッパー部境界部158を説明する。
擬似アッパー部境界部158は、擬似アウトソール部上縁166(擬似アッパー部下縁170)と同一部分を表し、外見上、アウトソール部104とアッパー部106との境界と見間違わせるような形態、例えば、一筋の線、段差、色違い等によって構成されている。本参考例1において、擬似アウトソールテープ体168が所定の厚みを有することから、アッパー部106との境界部においては、擬似アウトソールテープ体168がアッパー部106よりも僅かに外方へ突出し、一本の線状、又は、段差状に見えるように構成されている。
【0023】
次に踵保持部162を説明する。
踵保持部162は、靴100内に位置する足HFの踵FHが上方にずり上がらないようにする保持機能を有し、本参考例1においては、擬似踵部120よりも下方の足形空間150において、爪先部116側へ僅かに突出する踵保持凸部172によって構成されている。利用者が靴100、したがって、運動靴102を履いた場合、踵FHにおける上向部HUが踵保持凸部172の下向き斜面173に接触し、容易に踵FHが踵保持部162に対しずり上がらないように構成されている。この踵保持凸部172は、弾性を有するスポンジ等によって構成され、足HFに圧迫感を与えないようになっている。本参考例1において、踵保持部162(踵保持凸部172)は側面から見た場合、水平方向において、擬似アウトソール部上縁166に対し僅か上方に配置されている。しかし、擬似アウトソール部上縁166を更に上方に配置することにより、踵保持部162を擬似アウトソール形態部156に対し水平方向において並んで配置することもできる。
【0024】
参考例1における擬似アウトソール形態部156は、アッパー部106の少なくとも擬似踵部120よりも下方に表した第1擬似アウトソール部154である。すなわち、本参考例1において、アッパー部106はその下端がミドルソール部152及びアウトソール部104の側面に相対する位置まで延在して形成されている。さらに、ミドルソール部152に相対する部分の上方にもアウトソールのイメージを生じさせる形態に第1擬似アウトソール形態154が施されている。換言すれば、擬似アウトソールテープ体168が貼り付けられている。したがって、本参考例1においては、ミドルソール部152よりも上方におけるアッパー部106の外面に表れた第1擬似アウトソール部154の擬似アウトソール部上縁166(擬似アッパー部下縁170)上に足HFの踵FH部の足裏SFが位置しているとの印象を受ける。換言すれば、擬似アウトソール形態部156は、踵保持部162(踵充て片148)の側方に位置することになる。これにより、人Hは外見上、擬似アウトソール形態部156の擬似アッパー部境界部158(擬似アウトソール部上縁166)の上に実際の足HFの踵FHが載っているものと錯覚し、結果的に、その人Hの身長は、擬似アウトソール部上縁166から頭頂HTまでが身長LFであると錯覚する。本
参考例1において、第1擬似アウトソール部154に相対する水平方向には、土踏まずAF、及び、側面LF及び踵FHの左右側面が位置している。しかし、擬似アウトソール形態部156は踝ANFの直下辺りまで表すことができる。しかし、踝ANFの側方まで延在させた場合、足HFと靴100との間の距離感のバランスが不自然で違和感を生じるのであまり好ましくない。
【0025】
次にタン部110を主に
図4を参照して説明する。
タン部110は、靴紐112を締めた場合、運動靴102を足HFにぴったりと適合させる機能を有し、本参考例1においては角部に丸みを付した横長矩形に形成され、そのタン部先端部174は爪先部116の上部内面に固定され、タン部中間部176とタン部後端部178はアッパー部106に固定されておらず、靴紐112を締めていない場合、自由に動くことができる。タン部中間部176は開口138よりも広幅に形成されると共に開口138に相対して配置され、及び、タン部後端部178は、開口138よりも擬似踵部120側に僅かに延在した位置に配置され、足形空間150の上端開口である足挿入口180を形成する。タン部110は、足HFの甲IFと接触するため、適度の弾力(柔軟)性をもった材料、例えば、ウレタンスポンジを内蔵した布袋や外面側にウレタンシートを配置し、内面にウレタンスポンジを配置したシートによって構成されることが好ましい。
本参考例1において、タン部110は、通常のタン部よりも厚く形成されている。後述するように、実際の足HFの踵部FHは、外見上踵部FHが位置すると見誤る擬似踵部120よりも下方、したがって、ミドルソール部152及びアウトソール部104に近い位置にあるため、運動靴102を足HFにぴったりと適合させて一体化するには、タン部110を厚くする必要があるからである。
足挿入口180は、タン部後端部178、左中央側壁132、右中央側壁134、及び、擬似踵部120によってリング状に形成されている。
【0026】
次に靴紐112を説明する。
靴紐112は、開口138の左右に配置された左羽部142Lと右羽部142Rとの距離を縮めてタン部110を足HFの甲FIに適度に押しつけて運動靴102を足HFにフィットさせる機能を有し、本参考例1においては、所定長さの靴紐112を最も爪先部116側の紐孔144に通した後、反対側の紐孔144に引き通すことを繰り返して最も擬似踵部120側の紐孔144に通してある。これにより、左羽部142Lと右羽部142Rとを近づけるように靴紐112を締め上げることにより、足HFに運動靴102を一体化することができる。
【0027】
次に本参考例1の運動靴102を人Hが履いた場合の作用・効果を説明する。
参考例1の運動靴102を人Hが履いた場合、
図5に示すように、外見上の身長に影響を与える踵FHの足裏SFは、ミドルソール部152の上面上にあるので、実際の身長は、ミドルソール部152から頭頂HTまでの距離LTである。しかしながら、靴100の外面に表れる第1擬似アウトソール部154における擬似アッパー部境界部158(擬似アウトソール部上縁166、擬似アッパー部下縁170)は、実際に踵FHが載っているミドルソール部152の上面よりも長さLD分上方に位置している。よって、人Hを見た他人は、第1擬似アウトソール部154の擬似アウトソール部上縁166(擬似アッパー部境界部158)から頭頂HT迄の距離LFが人Hの身長であると錯覚する。すなわち、長さLD分、実際の身長よりも低いと錯覚させることができる効果がある。
【実施例1】
【0028】
次に実施例1を
図6及び
図7を参照して説明する。
参考例1と同一機能部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる構成を説明する。
実施例1も運動靴184の例であるが、
参考例1と最も異なる構成は、アッパー部106の下部における外面全周に擬似アウトソール形態部156である第2擬似アウトソール部形態部186を表した例である。すなわち、アッパー部106の下端部全周に第2擬似アウトソール部形態部186が形成されている。第2擬似アウトソール部形態部186も
参考例1と同様に、アウトソール部104を連想させる形態に構成されている。本実施例1においては、
図7に示すように、アウトソール部104及びアッパー部106の下端部の外側面全周に擬似アウトソール形態部156用の所定の厚み及び幅を有する第2擬似アウトソールテープ体188が貼り付けられている。しがたって、ミドルソール部152は第2擬似アウトソールテープ体188の下部側方に位置し、第2擬似アウトソールテープ体188の第2擬似アウトソール部上縁190は擬似アッパー部境界部158であり、本実施例1においては足の親指BTの頂部よりも上方位置において、アッパー部106の外周面全周に位置し、外見的には第2擬似アウトソール部段差192(擬似アッパー部境界部158)が形成される。したがって、外見上は、第2擬似アウトソール部段差192に接して足HFの裏面SFが位置していると錯覚する。また、擬似踵部120よりも下方の第2擬似アウトソールテープ体188に対し、水平方向において相対する位置であって、足形空間150の内面の中間には踵充て片148が設置され、踵FHがミドルソール部152の上面から離れない様に構成されている。換言すれば、踵保持部162が擬似踵部120よりも下方に位置する第2擬似アウトソール部形態部186の側方に配置されている。したがって、外見上の擬似踵部120は当該踵充て片148よりも上方に配置されている。さらに、タン部110は、足HFの足裏SFがミドルソール部152の上面から浮き上がらないように、通常の運動靴よりは大幅に大きい厚み及び弾性を持って構成されている。
【0029】
実施例1の運動靴184を履いた人Hは、参考例1と同様に、ミドルソール部152の上面から頭頂HTまでが実際の身長LTである。しかし、第2擬似アウトソール部上縁190は、ミドルソール部152の上面から頭頂HTまでの距離LFである。これを見た他の人は、第2擬似アウトソール形態部186の第2擬似アウトソール部上縁190から頭頂HTまでの高さを実際の身長であると錯覚する。換言すれば、実際の身長LTよりも長さLD分低い身長LFであると錯覚する。よって、実施例2も第1の目的を達成できる。特に、実施例2は、靴100の全周に第2擬似アウトソール形態部186が表されているので、見る人がどの角度から見ても錯覚する。換言すれば、見る人がどの角度から見ても身長が長さLD分低いと錯覚する利点がある。
【実施例2】
【0030】
次に実施例2を
図8を参照して説明する。
実施例2は、実施例1と同様の位置での横断面図であり、実施例1と異なる構成を説明すると、第3擬似アウトソールテープ体196は実施例1よりも厚く形成された帯状をしており、アッパー部106は第3擬似アウトソールテープ体196に隣接配置される下部アッパー部106Lと上方に配置される上部アッパー部106Uとにより構成され、上部アッパー部106Uの下端部が大凡直角に折り曲げられた後、第3擬似アウトソールテープ体196の上端面に縫合又は接着等により固定された構成になっている。したがって、上部アッパー部106Uの下端部、実質的には第3擬似アウトソールテープ体196の上面によって、擬似アウトソール形態部156の擬似アウトソール部上縁166たる第3擬似アウトソール部段差196Bが形成される。この第3擬似アウトソール部段差196Bが第3擬似アウトソール部上縁196Eになる。
【0031】
本実施例2において、第3擬似アウトソール部上縁196Eが実施例1における第2擬似アウトソール部上縁190と同一の機能を果たすことから、他の人は、第3擬似アウトソール形態部196の擬似アウトソール部上縁166たる第3擬似アウトソール部上縁196Eから頭頂HTまでの高さを実際の身長であると錯覚し、実施例2も第1の目的を達成できる。さらに、第3擬似アウトソール部段差196Bは実施例1よりも幅広であるから、実際のアウトソール部上縁との印象を強く与え、より一層、錯覚しやすくする効果がある。
【実施例3】
【0032】
次に実施例3を
図9を参照して説明する。
実施例3は、実施例1同様の位置での横断面図であり、実施例1と異なる構成を説明すると、アッパー部106が第2擬似アウトソールテープ体188と同様の第4擬似アウトソールテープ体198の上面の外方に突出されてオーバーハング部106OHを形成した後、垂立する構成になっている。したがって、アッパー部106のオーバーハング部106OHによって、アッパー部106の擬似アッパー部下縁170たる第4擬似アッパー部下縁198Bが形成される。この第4擬似アッパー部下縁198Bが第4擬似アウトソール部上縁198Eになる。
【0033】
本実施例3において、第4擬似アッパー部下縁198Bが実施例2における第2擬似アウトソール部上縁190と同一の機能を果たすことから、他の人は、第4擬似アッパー部下縁198B(第4擬似アウトソール部上縁198E)から頭頂HTまでの高さを実際の身長であると錯覚し、実施例3も第1の目的を達成できる。さらに、第4擬似アウトソール部上縁198Eは実施例1よりも明確であるから、実際のアウトソール部上縁との印象を強く与え、実施例2と同様に、より一層、錯覚しやすくする効果がある。
【実施例4】
【0034】
次に実施例4を
図10〜
図12を参照して説明する。
実施例4は、女性用の靴100であり、ウエッジソールを採用したショートブーツ200に適用した例であり、
図10〜
図12は左足用のショートブーツ200である。
参考例1と同一機能部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる構成を説明する。
ショートブーツ200も参考例1と同様に、アウトソール部104、アッパー部106、及び、擬似アウトソール形態部156を含んでいる。
【0035】
初めに、本実施例4におけるアウトソール部104を説明する。本実施例4におけるアウトソール部104は、一定の厚みを有し、革製、樹脂製又はゴム製であって、平面視足形状をした平板状の第5アウトソール部202である。
【0036】
次に、本実施例4におけるアッパー部106を説明する。
アッパー部106は、第5アウトソール部202の上面の輪郭に沿って固定された末広がり筒状体であり、革、合成皮革、樹脂、又は、ゴム等により形成された第5アッパー部204である。第5アッパー部204は、足HFの足側面LF及び甲IFを覆う機能から、大略、第5爪先部206、第5擬似踵部208、第5擬似ヒール形態部209、第5中央部212、及び、足回部214によって錐形楕円型に形成され、その下端は、第5アウトソール部202の上面に縫合又は接着等によって強固に固定されている。
第5爪先部206は土踏まずAFに相対する第5中央部212との境までを指し、第5先端部分216は閉止されると共に、第5先端部分216に続く第5左側壁218、第5右側壁220、及び、甲覆222により短手方向断面がドーム型に形成されている。第5中央部212は、第5爪先部206に連続して大凡土踏まずAFに相対し、第5アウトソール部202に対して垂立し、それらは大凡並行する第5左中央側壁224と第5右中央側壁226とにより形成されている。第5擬似踵部208は、第5中央部212に連続して踵FHを囲うように平面視アーチ型であって、半円形樋状に形成され足回部214の後側下部に形成されている。第5アッパー部204は、その下端部の全周が第5アウトソール部202の側面に配置される場合、その一部は上下方向において第5アウトソール部202と重なっているので、その重なり部分は、実質的に第5アッパー部204ではない。よって、本明細書においては、第5アウトソール部202と重なり合わない部分を第5アッパー部204として説明する。第5アウトソール部202の第5爪先部206に相対する部分は所定の厚みを有し、第5アッパー部204の下端部に対し僅かに横方向へ突出するように形成されている。換言すれば、第5アウトソール部202と第5アッパー部204の間には爪先部段差210が形成されている。
【0037】
次に、擬似アウトソール形態部156たる第5擬似アウトソール形態部228を説明する。第5擬似アウトソール形態部228は、第5爪先部206から第5中央部212までは第5アウトソール部202と同一であり、第5中央部212から第5擬似踵部208に対し施されたウエジソール形態230に表されている部分が相当する。ウエジソール形態230は、
図10及び
図11においては、第5中央部212の第5爪先部206側から第5擬似踵部208側へ右肩上がりに急角度で上昇した後、やや緩やかな角度になって第5擬似踵部208に達している。すなわち、第5擬似アウトソール形態部228(ウエジソール形態230)は、
図11における側面視、アウトソール部104における爪先部段差210に続いてウエッジソール部段差232が形成され、当該ウエッジソール部段差232は、足HFの甲IFの側方から踵FHの側方にかけて順次上方に位置するように右肩上がりに形成されている。したがって、実施例
1において、擬似アッパー部境界部158、したがって、擬似アウトソール部上縁166及び擬似アッパー部下縁170はウエッジソール部段差232である。
ウエッジソール部段差232から第5アウトソール部202まで大凡垂下する壁面は、第5アウトソール部202と一体に見間違われるように、下方の第5アウトソール部202と同様の形態に形成されている。具体的には、第5擬似アウトソール形態部228は、第5爪先部206に位置する第5アウトソール部202に接続する第5中間ソール部234、第5擬似ヒール形態部209、及び、第5中間ソール部234と第5擬似ヒール形態部209との間に形成された直角三角形状の暗色部238を含んでいる。第5擬似アウトソール形態部228における第5擬似ヒール形態部209に相対する靴内面に第5踵宛て片240が形成されている。換言すれば、第5踵保持部246が第5擬似アウトソール形態部228に対し、水平方向において並んで配置されている。第5踵宛て片240は、水平位置において、第5擬似アウトソール形態部228の側方の内面に突出形成され、人Hの踵FHが上方にずれようとした際、引っかかって、ずり上がらず、踵FHが第5ミドルソール部242から離れないように保持する機能を有する。
【0038】
次に第5中間ソール部234を説明する。
第5中間ソール部234は、土踏まずAFの下方に恰も空間が存在するかのように錯覚させる機能を有するように構成され、本実施例
1においては大凡直角三角形状を呈し、後述するように暗色部238に構成されている。第5中間ソール部上縁235は、第5アウトソール部202に続いて緩やかな曲線を描いて約30度の角度で上昇した後、約15度の角度に傾斜する傾斜部であり、その上側に隣接して爪先部段差210に続くウエッジソール部段差232が形成され、擬似アウトソール部上縁166たる第5擬似アウトソール部段差244を構成している。この第5擬似アウトソール部段差244は、踝AUFの側方におけるやや下方に位置している。第5擬似アウトソール部段差は、通常段差244とも称される。
【0039】
次に第5擬似ヒール形態部209を説明する。
第5擬似ヒール形態部209は、第5アウトソール部202から垂立し、所定高さを有するヒール形態が表されている。例えば、第5擬似ヒール形態部209は、革製又は木製である印象を与えるため、茶褐色(キャラメル色)に着色され、同様に第5アウトソール部202及び第5擬似アウトソール部段差244も同色に表される。着色に変えて、着色シールを貼付することもできる。第5擬似ヒール形態部209は、第5擬似アウトソール部段差244の端部の下方に位置し、さらに、その上方に第5擬似踵部208が配置され、踵FHがその上に乗っているような錯覚を与えるように構成されている。
したがって、側面から見た人は、爪先部段差210、第5擬似アウトソール部段差244を真の第5アウトソール部202の上端であると錯覚し、結果として、第5擬似踵部208に真の踵FHが位置すると錯覚させられる。
【0040】
次に暗色部238を説明する。
暗色部238は、土踏まずAFの真下に形成される空間を想起させる機能、換言すれば、第5擬似踵部208を、より一層、真の踵保持部であると錯覚させる機能を有する。第5中間ソール部234は、第5爪先部206、第5擬似アウトソール部段差244、及び、第5擬似ヒール形態部209よりも暗く見せる処理が施された部分である。換言すれば、第5中間ソール部234は、土踏まずAFの下方に空間が存在するように錯覚させることで第5擬似踵部208が真の踵保持部であると錯覚させる形態に形成された領域をいう。本実施例4においては、第5爪先部206、第5擬似アウトソール部段差244、及び、第5擬似ヒール形態部209よりも暗く見えるようにするため、それらよりも暗色、例えば、黒色、若しくは、相対的に暗色に着色され、周囲よりも暗い印象を与えることで、土踏まずAFの下方に空間領域があるように錯覚させるように構成されている。
【0041】
次に足回部214を説明する。
足回部214は、踝FHよりも上位の下肢Lが位置し、第5アッパー部204の上端に続く垂立筒状の部位である。第5爪先部206における甲IFから下肢Lに相対する足回部214の内側には、足HFが第5アウトソール部202(ミドルソール)から浮き上がって上方へ移動しないように第5爪先宛て片248、及び、足回部214の内側には足首宛て片250が配置されている。第5爪先宛て片248、及び、足首宛て片250は、足HF及び足首に圧迫感を与えないように、弾力性を有する材料で形成されるが、柔らかすぎる場合、足HFの保持性に影響を与えるので、適度な堅さに設定されている。
【0042】
次に実施例4の作用を説明する。
まず、ショートブーツ200を履く場合、爪先部FTを足回部214の上端開口から挿入し、第5爪先部206まで進入させる。この状態において、足裏SFは第5ミドルソール部242に密着し、踵FHは第5踵宛て片240の突出部よりも下方に位置している。よって、甲IFは第5爪先宛て片248に密着し、足HFとショートブーツ200は一体化され、人Hが歩行・走行する際に支障となることは無い。
この状態において、踵FHは第5ミドルソール部242上に位置している。しかし、外見的には第5擬似アウトソール部段差244上に踵FHが位置するように見えるので、第5擬似アウトソール部段差244から頭頂HTまでが真の身長であると錯覚し、実際の身長よりも低く錯覚させる効果がある。
【実施例5】
【0043】
次に実施例5の靴100を
図13乃至
図16を参照して説明する。
本実施例5は、実施例4と同様にショートブーツ200(左足)の例であるが、第6中間ソール部256が実施例5の第5中間ソール部234の形態と異なる以外は実施例4と同様に、第6アウトソール部252、第6アッパー部254、第6擬似ヒール形態部258及び第6擬似踵部260を備えている。
本実施例5における第6中間ソール部256は、第6擬似ヒール形態部258との間に第6段差部262を形成することにより、第6中間ソール部256が第6擬似ヒール形態部258よりも凹んだように見せるように形成されている。具体的には、第6アウトソール部252の第6踵部264から所定の幅で垂立する第6擬似ヒール形態部258と第6中間ソール部256との間にほぼ垂立する第6段差部262が形成されている。第6中間ソール部256、及び、第6段差部262はショートブーツ200の左右に形成されているので、左側部分に同一数字に対しL、右側部分には同一数字にRを付することにより説明を省略する。具体的には、第6段差部262は、第6擬似ヒール形態部258を第6中間ソール部256よりも横方向に突出させて形成してある。その理由は、第6中間ソール部256、及び、第6擬似ヒール形態部258は第6擬似アウトソール部266であり、その位置には足HFが位置するので、第6段差部262を形成する場合、第6擬似ヒール形態部258を外方へ突出させる必要があるからである。
本実施例5における第6段差部262は、下方から上方に位置するにしたがって突出量が小さくなる三角形に形成されている。また、第6段差部262と第6中間ソール部256とは同一色にて着色することができるが、第6擬似ヒール形態部258が革製又は木製であること醸し出すため、第6擬似ヒール形態部258を茶褐色、第6中間ソール部256を黒色に着色することができる。着色する場合、第6中間ソール部256の色は、第6擬似ヒール形態部258よりも暗色にすることが好ましい。暗色である場合、第6中間ソール部256が空間であると錯覚させる確率が高まるからである。第6擬似踵部260は、踵FHを包み込んで保持するように、三次元的な横向きドーム型に形成され、外見上、真の踵保持部であると見間違う形状に形成されており、第6擬似ヒール形態部258に対し上側に形成されている。なお、第6段差部262は、他人の目に曝す機会が多い外側部、本実施例5では左側の第6段差部262Lにのみ形成し、右側の第6段差部262Rは暗色に表すことでもよい。
【0044】
次に、本実施例5の作用を説明する。
まず、ショートブーツ200を履く場合、爪先部FTを足回部214の上端開口から挿入し、第5爪先部206まで進入させる。この状態において、足裏SFは第5ミドルソール部242に密着し、踵FHは第5踵宛て片240の最突出部よりも下方に位置している。甲IFは第5爪先宛て片248に密着し、足HFとショートブーツ200は一体化され、人Hが歩行・走行する際に支障となることは無い。
この状態において、踵FHは第5ミドルソール部242上に位置している。しかし、外見的には第6擬似ヒール形態部258上に踵FHが位置すると共に第6擬似踵部260に踵FHが保持されるように見えるので、身長は第6擬似ヒール形態部258上端(擬似アッパー部境界部158)から頭頂HTまでであると錯覚し、実際の身長よりも低身長であると錯覚させる効果がある。
【実施例6】
【0045】
次に本実施例6を
図17及び
図18を参照して説明する。
実施例3は、靴100として婦人用のウエッジソール型のパンプス268に本発明を適用した例である。
パンプス268は、アウトソール部104たる第7アウトソール部272、アッパー部106たる第7アッパー部274、爪先部116たる第7爪先部276、擬似踵部120たる第7擬似踵部278、及び、第7擬似ヒール形態部284、ミドルソール部152たる第7ミドルソール部286、及び、擬似アウトソール形態部156たる第7擬似アウトソール形態部288を含んでいる。他の実施例又は参考例1と異なる実施例6の構成を説明し、他の実施例又は参考例1と同一又は同様の構成については同一符号を付し、説明を省略する。第7アッパー部274の第7中間ソール部290から第7擬似ヒール形態部284にかけて、
図18においては右肩上がりに第7擬似アウトソール形態部288が形成されている。この第7擬似アウトソール形態部288は、印刷又は表面形態によって、第7アッパー部274の下部の表面をアウトソール状に見えるように構成されている。なお、第7中間ソール部290は、実施例6と同様に第7暗色部292にすることが好ましい。踵保持部162としての第7踵宛て片282が足形空間150に突出され、第7擬似アウトソール形態部288の水平方向に相対して形成されている。
【0046】
次に実施例6のパンプス268の作用・効果を説明する。
よって、人Hがパンプス268を履いた場合、踵FHは第7擬似ヒール形態部284に相対して設けられた第7踵宛て片282に保持され、踵FHが第7ミドルソール286から浮き上がること無く一体的に歩行することができる。しかし、外見的には、第7擬似踵部278に踵FHが保持され、かつ、第7擬似ヒール形態部284上に踵FHが位置するように錯覚し、当該人Hの身長は、擬似アッパー部境界部158上から頭頂HT迄であると錯覚し、人Hの身長を実際の身長よりも低いと錯覚する利点がある。