(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
精肉、鮮魚類の食品販売の際、樹脂製トレイ内に配置した食品を透明ラップで被覆し販売するが、食品から滲出する赤色の液体がトレイ底部に流出すると、外観上不潔感を与え購買意欲の低下を招く。搬送時には、液体がトレイ外に流出し、衣類、他の物品を汚すおそれがある。赤色液体はドリップと指称され、肉、魚の冷凍時又は非冷凍時に破壊した細胞膜を通じ、細胞から水分と共に漏出するタンパク質(ミオグロビン)成分である。ドリップがトレイ内で腐敗すれば食品に悪影響を与える。
【0003】
ドリップ流出を防止するため、食品の下に吸収シートを敷き、ドリップを常時吸収し外観上の清潔感を維持すると共に、ドリップのトレイ内流出及びトレイ外漏出を防止する。また、吸収シートによりドリップはトレイ内に流出しないため、食品に再付着せず、食品を傷めず鮮度を長期間保持できる。更に、吸収シートは、食品の滑動を抑止しトレイ内に盛り付けた食品の美観を維持する。
【0004】
吸収シートは、単一層の不織布層と、不織布層の上面に配置されかつ食品に接するフィルム層との二層構造を備え、面方向及び/又は厚み方向の通気性を調整し、フィルム層に接する食品の色悪化を防止するドリップ吸収マットが一般に知られる。
【0005】
前記吸収マットは、不織布層によりドリップを吸収保持しドリップの漏出を防止するが、不織布層は単一層からなり、食品から離間した位置にドリップを保持できない。即ち、食品から重力落下したドリップは、フィルム層通過後、食品に最も近い不織布層上部で大部分が進行を停止し保持される。不織布層上部に長時間保持されたドリップが腐敗により細菌繁殖すると、不織布層上部の近位に配置された食品に細菌類が付着し易く、食品安全上、極めて悪影響を与える。また、不織布層上部に保持されたドリップは、食品との距離が短く食品への液戻り(ウエットバック)を生じ易い。
【0006】
特許文献1は、芯鞘型の複合繊維を含み、第1表面と第2表面とにより厚さが規定される不織布で形成され、食品からの滲出液を吸収する吸液性シートを示す。しかし、特許文献1の吸液性シートは、不織布層に液体吸収剤(パルプ)を含まず、ドリップ吸収能力が不十分である。即ち、食品からのドリップ滲出量が多い場合、不織布層全体で保液できず、不織布層から下方にドリップが漏出しトレイ内を流れ、食品衛生上及び美観上好ましくない。
【0007】
これに対し、特許文献2の吸収シートは、樹脂製フィルム層と、熱接着性繊維及びパルプを含む不織布層とを備え、不織布層は、表裏層と内層とが積層一体化された三層構造を有する食品用複合吸水マットを示す。内層は表裏層に比べ、吸水性のパルプを多く含有するため、食品から所定距離だけ離間した内層に多量のドリップを保持でき、ドリップ流出又は逆流による食品への悪影響を回避できる。
【0008】
しかし、前記複合吸水マットの三層構造は、上層と下層とを同一組成とする。即ち、上層と下層とのパルプ含有率が等しい。この場合、上層及び下層によるパルプのサンドイッチ構造により、吸収シートの保水性は高いが、上下方向の通気性が悪化し、中層が高湿度化され、中層に吸収されたドリップが早期に腐敗する。
【0009】
前記複合吸水マットでは、上下層を同一組成とすることが必須のため、上下層両方にパルプを含まない構成も想定される。この場合、中層でドリップを保持しても、上下両方からドリップが漏出するおそれがある。即ち、パルプを含まずドリップを保持停止できない上層及び下層から、ウエットバック及び重力落下をそれぞれ容易に生じる。
【0010】
特許文献2の複合吸水マットでは、上下層両方に同一径の接着性繊維を用いる。比較的大径(約2.2dt以上)の繊維を上下層両方に用いた場合、上層は、空隙が大きく繊維壁面による毛管現象を受け難いためウエットバックを抑制する点で好ましい。しかし、下層は、比較的大径の繊維では、吸湿性の高いパルプと十分に結合できず、吸水能力が低下し、また紙粉が下層からトレイに落下する。他方、比較的小径(約2.2dt未満)の熱接着性繊維を上下層両方に用いた場合、下層では、繊維間にパルプが絡み易くパルプを保持結合して下層の吸湿性を十分に保持できる。しかし、上層の熱接着性繊維が比較的小径の場合、食品重量により上層が潰れて扁平し、中層から食品へ液体がウエットバックし易い。また、上層の熱接着性繊維が比較的小径の場合、繊維間の空隙が小さく繊維壁面の影響により、毛管現象によるウエットバックが生じ易い。従って、上下層を同一組成にせず、各層に適切な機能を付与した吸収シートの開発が望まれる。
【0011】
また、特許文献2の前記複合吸水マットは、抗菌又は殺菌物質を含有しないため、常温で長時間ドリップを保持すると細菌の繁殖が進行し腐敗が早期に生じる。細菌が増殖したドリップが液戻りすると、上層上の食品に到達して食品の腐敗を助長し衛生上及び食品安全上好ましくない。
【0012】
特許文献3は、単層の不織布層に殺菌物質を付着又は担持させた公知の抗菌性吸水マットである。単層の不織布層で液体保持と共に殺菌できるが、保液時には液体が流動しないため、抗菌物質に直接接触した液体の部分のみ殺菌され、抗菌物質に接触しない部分は細菌が繁殖する。この場合、液体が液戻りすれば食品の腐敗を招く。従って、液体保持と同時に殺菌するだけでなく、保液時に殺菌できない液体が、液戻りの際、流動しながら殺菌物質に効率的に接触できる吸収シートが必要とされる。即ち、吸収シートの適正位置又は層に適量の殺菌剤を含浸させて効率的に殺菌する吸収シートの開発が望まれる。
【0013】
特許文献4では、液体を吸収する吸収体と、貫通孔が複数形成された合成樹脂製フィルムとを備え、貫通孔は、吸収体側の開口径が小さい円錐台状(テーパ状)の空隙であるトレイマットを示す。即ち、貫通孔の大きい上部開口では、食品からドリップが流入し易い構造である。しかしながら、吸収体側の下部開口では開口径が小さくても、単純なテーパ形状では、毛管現象又は食品重量の押圧力により、ドリップがテーパ傾斜面を通じ容易かつ多量に上昇し、ドリップが食品に再付着するおそれがある。
【0014】
図6は、貫通孔(26)の縦断面がテーパ形状の樹脂製フィルム(24)を示す。テーパ状断面の貫通孔(26)は、上部開口(26a)と下部開口(26b)との間にテーパ傾斜面(26c)を備える。しかし、傾斜面(26c)の直線的構造では、ドリップ(27)は、押圧力等により、吸収体(25)からテーパ傾斜面(26c)に沿って大量に上昇可能である(27a)。テーパ傾斜面(26c)では、ドリップの流れ(27a)を妨害する障壁が存在しないため、フィルム(24)上面に配置された食品(図示せず)までドリップが容易に到達し(27b)食品に逆戻り(ウエットバック)する。従って、ドリップが逆戻りしないフィルム貫通孔の新規断面形状を検討する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による吸収シート及びその製法の実施の形態を
図1〜
図4について以下説明する。
図1に示す本発明による吸収シート(10)は、互いに組成が異なる上層(1)、中層(2)及び下層(3)の3層を有する不織布層(5)を備える。即ち、上層(1)は、熱接着性繊維及び有機酸を含み、中層(2)は、熱接着性繊維、パルプ及び有機酸を含み、下層(3)は、熱接着性繊維及びパルプを含む。
【0025】
熱接着性繊維は、芯鞘型又は偏芯サイドバイサイド型の複合繊維を使用でき、本実施の形態では、芯鞘型の熱接着性繊維を用いる。鞘又は繊維外周部の樹脂繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレンを含む。芯又は繊維内層部は、加熱接着処理温度で変化せず鞘より高融点の樹脂繊維が好ましい。複合繊維の組合せは、例えば、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリエステル、又はポリプロピレン/ポリエステルを含む。熱接着性繊維の繊度は、0.2〜50dtであり、好ましくは0.2〜15dtである。
【0026】
有機酸は、フマル酸、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸及びアジピン酸から選択される1又は2以上を含む。特に、食品添加物として安全性が高いフマル酸又はクエン酸が好ましい。パルプは、長さ0.2〜5mmの粉砕パルプが好ましい。パルプは、高い吸水性を有する。パルプ以外に、コットン、麻等の天然繊維、レーヨン等の化学繊維を吸水材として使用できる。
【0027】
吸収シート(10)の上層(1)は、中層(2)及び下層(3)に比べ熱接着性繊維の繊維径(繊度)が大きいため、空隙が大きく嵩高となり、中層(2)に保持されたドリップと、上層(1)上の食品との離間した距離を維持し、ウエットバックを確実に抑止する。中層(2)及び下層(3)の熱接着性繊維の繊度はそれぞれ、0.2dt以上2.0dt未満及び0.2dt以上2.0dt未満とし、上層(1)の熱接着性繊維の繊度は2.0dt以上15dt以下のように、上層(1)の熱接着性繊維の繊維径を大きくする必要がある。上層(1)に繊度2.0dt未満の熱接着性繊維を使用すると、繊維径が細く繊維間の空隙が小さい分、繊維壁面の影響が大きくなり、中層(2)に保持されたドリップが毛管現象により、上層(1)を通じ上層(1)上の食品にウエットバックが生じる。繊度15dtを超える熱接着性繊維では、繊維径が大きくかつ繊維表面積が小さく、空隙が大きいため、適量の有機酸を上層(1)に保持できず、上層(1)での殺菌作用が低下すると共に、保水量も若干低下する。より好ましくは、上層(1)の熱接着性繊維の繊度は、2.2dt以上11dt以下である。
【0028】
吸収シート(10)の不織布層(5)の有機酸は、上層(1)、中層(2)及び下層(3)にそれぞれ0.3〜6.0mg/g、0.25〜4.0mg/g及び0.2〜2.5mg/g含み、かつ上層(1)は、中層(2)及び下層(3)に比べ有機酸の含有率が高く、中層(2)は、下層(3)に比べ有機酸の含有率が高いことが好ましい。例えば、上層(1)、中層(2)及び下層(3)の有機酸含有率はそれぞれ、2.2mg/g、1.3mg/g及び1.1mg/gである。上層(1)の有機酸含有率は、0.3〜6.0mg/gが好ましい。0.3mg/g未満であると、十分な抗菌効果及び消臭効果が得られない。上層(1)の有機酸含有率が6.0mg/gを超えても抗菌効果及び消臭効果を維持するが、注入量増加により経済的に不利である。また、6.0mg/gを超えると、酸性値が高く食品用の吸収シートとして好ましくない。上層(1)のより好ましい有機酸含有率は、0.5〜5.3mg/gである。
【0029】
吸収シート(10)の中層(2)は、下層(3)に比べパルプの含有率を高くする必要がある。このため、中層(2)により多量の液体を確実に捕捉及び保水し、下層(3)下面(3b)からの液体漏出を防止する。中層(2)は、パルプ含有率が50重量%以上80重量%以下であり、下層(3)は、パルプを含有するが、含有率20重量%以上50重量%未満が好ましい。中層(2)のパルプの含有率が50重量%未満では、液体の引込性が弱く吸水速度が低下し、また、液体保持量も不十分となり易い。中層(2)のパルプが80重量%を超えると、過剰量の液体を中層(2)に保持することとなり、食品重量により中層(2)が押圧され、ドリップがウエットバックし易い。この場合、中層(2)の熱接着性繊維が20重量%以下となるため、中層(2)でシートが分離し易くなる。下層(3)のパルプが20重量%未満では、食品から多量の液体が滲出する場合、中層(2)及び下層(3)で液体を保持しきれず下層(3)から液体が漏出し易くなる。また、食品が載置された吸収シートがトレイ内で滑り移動し易くなる。下層(3)のパルプが50重量%を超えると、パルプ紙粉の落下量が増加し、食品用の吸収シートとして適当でない。下層(3)のパルプ含有率は、20重量%以上45重量%以下がより好ましい。
【0030】
吸収シート(10)の上層(1)は、実質的にパルプを含有しないか又は下層(3)に比べパルプの含有率が低くする必要がある。パルプは保水効果を有るため、上層(1)上の食品から滲出した液体(ドリップ)を食品から近位の上層(1)ではなく、遠位の下層(3)に保持できる。吸収シート(10)の構造では、上下層(1,3)両方にパルプを含有したサンドイッチ構造による弊害、即ち、中層(2)の通気性低下及び高湿度化により生じるドリップ腐敗を確実に抑止できる。他方、上下層(1,3)両方にパルプを含有しない弊害、即ち、中層(2)に保持されたドリップの不織布層(5)上下両面からの漏出を本構造により防止できる。
【0031】
図1に示す前記実施の形態では、3層構造の不織布層(5)を備える吸収シート(10)を示したが、
図2に示す通り、不織布層(5)上にフィルム(4)を積層形成できる。
図2の吸収シート(10’)は、不織布層(5)の一方の主面(1a)上に、多数の貫通孔(6)を有するフィルム(4)を備える。不織布層(5)の上面をフィルム(4)で被覆するため、不織布層(5)が赤色のドリップを保持しても、赤色を覆い隠し、購入者に不衛生感及び不快感を与えない。フィルム(4)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂が、耐水性、成形性及び価格の観点から好ましい。フィルム(4)に消臭剤、抗菌剤、着色剤、親水剤等の添加剤を配合してもよい。フィルム(4)の厚さは、0.1〜1mmが好ましい。
【0032】
図2のフィルム(4)の貫通孔(6)は、多角形状又は円形状の横断面と、テーパ状の縦断面とを有する。貫通孔(6)の横断面は、三角形から八角形の多角形状、又は楕円形、長円形等の円形状を含む。多角形状横断面は、多角形の角部を通じて食品からドリップが落下し易く、かつ壁面の表面積増加による抵抗の影響によりドリップ上昇(ウエットバック)を抑止できる点で好ましい。これらの点で五角形から八角形の多角形状が好ましいが、製造上、五角形が最適である。五角形横断面の貫通孔(6)を有するフィルム(4)の表面及び裏面の拡大写真を
図3(a)及び(b)に示す。
【0033】
図2に示す貫通孔(6)のテーパ状縦断面は、一方の主面(4a)に大径開口部(6a)と、他方の主面(4b)に小径開口部(6b)と、大径開口部(6a)と小径開口部(6b)との間にテーパ面(6c)と、テーパ面(6c)から内側に突出して小径開口部(6b)を形成する突出部(6d)とを備える。フィルム(4)の貫通孔(6)は、大径開口部(6a)により食品からのドリップ落下を促進する。一方、小径開口部(6b)は、テーパ面(6c)から内側方向に突出する突出部(6d)により、テーパ面(6c)の延長線上に想定される開口部(
図6の下部開口(26b))に比べ、より縮径して形成される。これにより、不織布層(5)からのドリップ逆流(ウエットバック)を確実に阻止する。
【0034】
突出部(6d)がウエットバックを阻止する機構を
図4に示す。即ち、中層(2)及び上層(1)を通じて上昇するドリップの流れ(7)は、フィルム(4)の貫通孔(6)の小径開口部(6b)に到達するが、大部分が突出部(6d)の底面に衝突し(7a)進路妨害され、小径開口部(6b)から貫通孔(6)内に侵入できない。小径開口部(6b)から侵入した少量のドリップ(7b)は、垂直面(6f)に沿って上昇する必要があるため、傾斜面(26c)(
図6)に比べ上昇が容易ではない。また、突出部(6d)により、ドリップの貫通孔(6)内経路は、直線ではなく複雑形状となるため、進行するドリップ(7c)は、貫通孔(6)の壁面の抵抗を受け上昇が困難となる。このため、テーパ面(6c)を通じフィルム(4)の主面(4a)に達するドリップを最低限に抑止できる。貫通孔(6)の突出部(6d)は、ドリップ上昇の障壁として機能するが、貫通孔(6)の中心方向突出し小径開口部(6b)の開口面積を縮小するため、上層(1)又は中層(2)に保持されたドリップの赤色を覆い隠し、視覚的不快感を与えない作用も具備する。
【0035】
図1及び
図2に示す実施の形態では、上層(1)、中層(2)及び下層(3)の3層を有する不織布層(5)を示したが、不織布層(5)を3層以上に形成してもよい。この場合、各々性質が異なる又は同一の2層以上の層を中層(2)に設けることができる。
【0036】
吸収シート(10)の製法の実施の形態を以下説明する。
【0037】
最初に、熱接着性繊維及びパルプを含む下層ウエブと、熱接着性繊維及びパルプを含む中層ウエブと、熱接着性繊維を含む上層ウエブとを順次積層し、エアレイド法により不織布積層体を製造する。具体的には、所定量の解繊された熱接着性繊維とパルプとの混合物を空気流に均一分散させ、吐出部に設けたスクリーンから金属又はプラスチックのネット上に吹き出す。ネット下方から吸引しながら混合物を堆積して下層ウエブを形成する。次に、所定量の熱接着性繊維とパルプとの混合物を下層上に堆積して中層ウエブを積層形成する。更に、所定量の熱接着性繊維を中層ウエブ上に堆積して上層のウエブを積層形成して3層構造の不織布積層体が得られる。
【0038】
熱接着性繊維が十分に接着効果を発揮する温度に不織布積層体全体を加熱し、不織布積層体の熱接着性繊維を加熱溶融して繊維間及び層間を結合する。接着効果を十分発揮させるには、熱接着性繊維の接着成分の融点より15〜40℃高い温度での加熱処理が必要である。熱接着性繊維を加熱溶融しながら又は加熱溶融した後に、不織布積層体に有機酸を含浸させる。具体的には、複数の加熱装置(オーブン)により分割して加熱工程を行い、最終加熱工程の直前で、不織布積層体の上方から有機酸水溶液を噴霧し不織布積層体の内部に浸透させる。このとき、不織布積層体は予備加熱された状態であるため、噴霧された有機酸は、加熱状態の上層ウエブの繊維と交絡かつ結合し易く、中層及び下層ウエブに到達する前に大部分が上層ウエブに残留する。このため、中下層(2,3)に比べ上層(1)に多量の有機酸を含浸保持でき、pH値が低下し過ぎない少量の有機酸により、優れた抗菌効果を発揮できる。
【0039】
不織布積層体を加熱又は常温により乾燥し水分を蒸発させると、上層(1)、中層(2)及び下層(3)の3層を有するエアレイド不織布層(5)を備える本発明の吸収シート(10)が得られる。吸収シート(10)は、上層(1)は、中層(2)及び下層(3)に比べ熱接着性繊維の繊維径が大きくかつ中層(2)に比べ有機酸の含有率が高い。また、中層(2)は、下層(3)に比べパルプの含有率が高い。
【0040】
エアレイド不織布層(5)の一方の主面(1a)上に、多数の貫通孔(6)を有するフィルム(4)を積層し一体化することにより、
図2に示す吸収シート(10’)が得られる。具体的には、公知のホットメルト法、熱圧エンボス法、熱接着性樹脂パウダによる方法を適用できる。本実施の形態では、吸収シートの性能を阻害しないために、樹脂を加熱溶融するホットメルト法により、エアレイド不織布層(5)とフィルム(4)とを接着することが好ましい。ホットメルト樹脂は、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、合成ゴムから選択される。ホットメルト樹脂の塗布量は、1〜20g/m
2であり、特に2〜15g/m
2が好ましい。
【0041】
前記吸収シート(10)のエアレイド不織布層(5)の一方の主面(1a)上に、多数の貫通孔(6)を有するフィルム(4)を積層し一体化する工程により吸収シート(10’)が製造される。
【0042】
[実施例]
本発明による吸収シート(10,10’)の実施例を比較例と対比しながら説明する。
【0043】
[1]吸収シート(10)(フィルム無し)の製造(実施例1、3〜5及び7〜10並びに参考例2、6、11及び12)
ポリエチレンテレフタレート(PET)の芯及びポリエチレン(PE)の鞘を有する繊度1.7dt、長さ3mmの複合繊維(熱接着性繊維)(1.7dt×3mm)67重量%及び木材粉砕パルプ33重量%を含む下層ウエブと、繊度1.7dt、長さ3mmの複合繊維(1.7dt×3mm)25重量%及び木材粉砕パルプ75重量%を含む中層ウエブと、繊度4.2dt、長さ5mmの複合繊維(4.2dt×5mm)100重量%を含む上層ウエブとを順次積層し、エアレイド法により3層の不織布積層体を形成した。次に、不織布積層体をオーブンにより約140℃で約10秒間加熱処理し、繊維を加熱溶融し繊維間を結合した。
【0044】
前記加熱溶融の工程を複数のオーブンを使用し分割して行い、その加熱の最終オーブン加熱工程の直前で、上方から3%フマル酸水溶液を不織布積層体に噴霧し含浸させた。更に、加熱し水分を蒸発させ、目付がそれぞれ8g/m
2、40g/m
2及び12g/m
2の上層(1)、中層(2)及び下層(3)を有し、かつフマル酸含有率が2mg/g(0.12g/m
2)である本発明による吸収シート(10)(実施例1)を製造した。ここでフマル酸含有率とは、不織布層(5)の単位質量[g]当たりのフマル酸質量[mg]である。上層(1)、中層(2)及び下層(3)の厚さは、それぞれ約0.3mm、0.7mm及び0.2mmであった。
【0045】
中層(2)及び下層(3)は実施例1と同一であるが、上層(1)の繊度及び長さ変化させて、参考例2(1.7dt×3mm)、実施例3(2.2dt×5mm)、実施例4(11dt×5mm)及び実施例5(20dt×5mm)の吸収シート(10)を前記同様の方法により製造した。
【0046】
上層(1)及び下層(3)は実施例1と同一であるが、中層(2)のパルプ含有率を変化させて、参考例6(25重量%)、実施例7(50重量%)及び実施例8(80重量%)の吸収シート(10)を実施例1と同様の方法により製造した。更に、上層(1)及び中層(2)は実施例1と同一であるが、下層(3)のパルプ含有率を変化させて、実施例9(20重量%)、実施例10(45重量%)及び参考例11(80重量%)の吸収シート(10)を実施例1と同様の方法により製造した。更に、上層(1)は実施例1と同一であるが、中層(2)及び下層(3)のパルプ含有率をそれぞれ33重量%及び75重量%とした参考例12の吸収シート(10)を実施例1と同様の方法により製造した。
【0047】
[2]従来の吸収シート(フィルム無し)の製造(比較例A及びB)
上層及び中層は実施例1の組成と同一であるが、下層に繊度4.2dt、長さ5mmの複合繊維(4.2dt×5mm)を100重量%含む比較例Aを実施例1と同様の方法により製造した。更に、中層及び下層は実施例1の組成と同一であるが、上層に繊度1.7dt、長さ3mmの複合繊維(1.7dt×3mm)67重量%及び木材粉砕パルプ33重量%を含む比較例Bを実施例1と同様の方法により製造した。即ち、比較例A及びBは共に、上層と下層とが同一組成の従来技術の吸収シートである。フマル酸含有率は2mg/gである。
【0048】
[3]吸収シート(10’)(フィルム有)の製造(実施例1’〜5’)
前記実施例1の吸収シート(10)の一方の主面(1a)上に、
図3(b)を下面として厚さ約0.45mmのポリエチレン製フィルム(4)を、ホットメルト法によりポリオレフィン樹脂(接着剤)2g/m
2を塗布して接着積層し、本発明の吸収シート(10’)(実施例1’)を製造した。実施例1’は、前記実施例1を使用するためフマル酸含有率は2mg/g(0.12g/m
2)であるが、更に、フマル酸含有率を変更した実施例2’:0.5mg/g(0.03g/m
2)、実施例3’:2.5mg/g(0.15g/m
2)、実施例4’:5mg/g(0.3g/m
2)及び実施例5’:7.5mg/g(0.45g/m
2)の吸収シート(10’)を前記実施例1’と同様の方法により製造した。
【0049】
[4]従来の吸収シート(フィルム有)の製造(比較例A’〜C’)
前記比較例A及び比較例Bの吸収シートのそれぞれの一方の主面上に、前記実施例1’と同一のフィルムを積層し吸収シート(比較例A’及び比較例B’)を製造した。前記比較例A’及び比較例B’では、フマル酸を2mg/g含有するが、フマル酸を含有しない比較例C’の吸収シートを前記比較例A’及びB’と同様の方法により製造した。
【0050】
[5]試験方法
実施例又は参考例1〜12及び実施例1’〜5’並びに比較例A、B及びA’〜C’の吸収シートについて、下記方法により試験した。
【0051】
[5−1]吸水試験
65×160mm吸収シート上に、
図5に示す試験装置(30)を配置し、フィルムの無い吸収シートでは水2ml、フィルムを有する吸収シートでは水1mlをそれぞれ、口径約10mmの滴下口(31)から滴下し、完全に吸水する時間[秒]を測定し3回の平均値を求めた。
【0052】
[5−2]液戻り(ウエットバック)試験
水2mlを65×160mm吸収シート上に滴下し完全吸水後、直径90mm濾紙(アドバンテック東洋(株) 円形定性濾紙No.2)を配置し、その上にアクリル板の重り275gを30秒間載せ、重りを外し濾紙質量を測定した。試験前後の濾紙質量の差を測定し3回の平均値を液戻量(ウエットバック重量)[g/枚]とした。
【0053】
[5−3]保水試験
質量を測定した65×160mm吸収シートを20℃の水に1分間浸漬し、45度の傾斜樹脂板上に1分間配置後、吸収シート質量を測定し吸収した水の重量を算出し保水量[g/枚]とした。試験3回の平均値を求めた。
【0054】
[5−4]平均動摩擦係数試験
摩擦感テスタ(カトーテック(株) 機種:KES-SE)にて、摩擦子取付用アーム及び分銅の質量を50gに設定し、シリコン摩擦子の端子を用い、10×10mm吸収シートに水8mlを含浸し、下層の平均動摩擦係数を測定し2回の平均値を求めた。
【0055】
[5−5]紙粉落下試験
黒色台紙上で65×160mm吸収シートを5秒間振動させ、落下した紙粉を目視した。殆ど落下せず実使用上問題無い場合を「○」と評価し、多量の紙粉が落下し実使用上適さない場合を「×」と評価した。
【0056】
[5−6]有機酸分布試験
吸収シートを上層、中層及び下層に分離し、各層の試験片10gを3Lビーカーに敷き200ml精製水を加え湿潤後3日間放置した。次に、超音波洗浄機により30分間超音波(45kHz)を加え、その後、濾液を絞り回収した。各濾液を有機酸分析してフマル酸の含有量を測定した(日本ウオーターズ(株) 機能性成分高速分析システムACQUITY UltraPerformanceLC)。フマル酸を30%含有する水溶液を検量線作成に使用した。
【0057】
[5−7]抗菌試験
滅菌シャーレに配置した40×40mm吸収シート試験片に大腸菌E.coliNBRC3972を接種し、カバー用フィルムで覆い、35℃、湿度90%以上で24時間培養した。大腸菌接種24時間後の生菌数をブイヨン培地で測定した。
【0058】
[5−8]pH試験
精製水50mlを含むビーカーに65×160mm吸収シート試験片を浸漬し、1時間後のpH値をpHメータ(東亜ディーケーケー(株) HM-25G)により測定した。
【0059】
[5−9]消臭試験
20Lのテドラー(登録商標)バッグに9%アンモニア水溶液30μlを滴下し空気を封入し密閉した。24時間放置気化後、3Lのテドラーバッグに65mm×160mm吸収シートを配置しアンモニア気体を封入し、初期アンモニア濃度を測定した。室温で2時間放置後、バッグから気体を採取し、ガス検知管((株)ガステック No.3L又はNo.3La)により、残存アンモニア濃度を測定した。3回の平均値から消臭率[%](={1−(残存アンモニア濃度)/(初期アンモニア濃度)}×100)を求めた。
【0060】
[6]試験結果及び考察
各吸収シートの組成及び試験結果を表1〜表3に示し以下考察する。
【0064】
[6−1]吸水性
表1より、中層(2)及び下層(3)の組成を維持しかつ上層(1)の熱可塑性繊維の繊度を変更した実施例又は参考例1〜5では、繊度2.2〜20dt(実施例1及び3〜5)の範囲で吸水時間13秒及び14秒代の良好な結果が得られた。実施例1に対し、上層(1)の組成を維持しかつ中層(2)及び下層(3)の組成を変更した実施例又は参考例6〜12(表1)では、中層(2)のパルプ含有率50重量%(実施例7)及び80重量%(実施例8)場合並びに下層(3)のパルプ含有率20重量%(実施例9)及び45重量%(実施例10)場合、何れも吸水時間13秒及び14秒代の吸水性に優れた結果が得られた。
【0065】
表2より、上下層が同一組成を有する従来技術の比較例A及びBの吸水時間(17.3秒及び16.7秒)は、本発明の実施例1(13.3秒)に比べ明らかに劣る。フィルムを積層した従来技術の比較例A’及びB’の吸水時間(17.7秒及び16.3秒)もまた、フィルムを積層した本発明の実施例1’(15.7秒)に比べ、吸水性が劣る結果が得られた。
【0066】
[6−2]液戻り(ウエットバック)性
表1より、上層(1)の熱可塑性繊維の繊度を2.2〜11dtの範囲で変更した実施例1、3及び4は、液戻量(0.63〜0.71g/枚)が少なく最良の結果が得られた。実施例1の上層(1)の組成を維持しかつ中層(2)及び下層(3)の組成を変化させた実施例又は参考例6〜12(表1)では、何れも液戻量を抑止できた(0.62〜0.71g/枚)。上層(1)に高繊度(4.2dt)の熱可塑性繊維を使用するため、液戻りを最小限に抑止できたと考える。
【0067】
表2より、上下層が同一組成を有する比較例A及びBの液戻量(0.96g/枚及び0.94g/枚)は、本発明の実施例1(0.63g/枚)に比べ明らかに多量であった。
【0068】
[6−3]保水性
表1より、繊度2.2〜11dtの範囲の実施例1、3及び4では、保水量(9.2〜10.2[g/枚])が多い最良の結果が得られた。中層(2)及び下層(3)の組成を変化させた実施例又は参考例6〜12(表1)では、中層(2)のパルプ含有率50重量%(実施例7)及び80重量%(実施例8)場合並びに下層(3)のパルプ含有率20重量%(実施例9)、45重量%(実施例10)及び80重量%(参考例11)場合、何れも保水量8.9〜10.6g/枚の良好な結果が得られた。
【0069】
表2より、上下層が同一組成を有する比較例A及びBの保水量(7.6g/枚及び8.6g/枚)は、本発明の実施例1(10.2g/枚)に比べ明らかに少量であった。
【0070】
[6−4]滑り性
下層にパルプを含まない比較例A及びA’を除き、他の吸収シートは、平均動摩擦係数が高く好適な値を示し、トレイ上の滑動を防止できることを確認できた。
【0071】
[6−5]紙粉落下性
下層にパルプ含有率がそれぞれ80重量%及び75重量%の参考例11及び参考例12では、紙粉が落下し、食品トレイの使用には適さない。
【0072】
[6−6]有機酸(フマル酸)分布
表3より、フマル酸含有率0.5〜7.5mg/g(0.03〜0.45g/m
2)の実施例1’〜5’では、上層(1)、中層(2)及び下層(3)のフマル酸含有率はそれぞれ、46〜49重量%、28〜33重量%及び17〜25重量%であった。3層中最もフマル酸含有率が高い上層(1)の実施例1’〜5’のフマル酸含有率は、それぞれ2.15mg/g、0.51mg/g、2.85mg/g、5.34mg/g及び7.74mg/gであった。
【0073】
[6−7]抗菌性
表3より、フマル酸含有率0.5〜7.5mg/gの全実施例1’〜5’では、フマル酸を含まない比較例C’(3.0×10
6個/cm
2)に比べ、菌数が低い数値を示し(1.3〜12個/cm
2)抗菌性を確認できた。
【0074】
[6−8]pH
表3より、フマル酸含有率7.5mg/gの実施例5’では、酸性が強く(pH4.02)、食品用途には不向きである。他の実施例1’〜4’では、食品用途に使用可能な良好なpH値5.83〜6.79であった。
【0075】
[6−9]消臭性能
表3の消臭率について、フマル酸含有率0.5〜7.5mg/gの全実施例1’〜5’では、フマル酸を含まない比較例C’(36.4%)に比べ、高い数値を示し(60.6〜99.2%)消臭効果を確認できた。
【0076】
[7]結論
液戻り性及び保水性試験より、上層(1)は、繊度2.2〜11dt(実施例1、3及び4)が最適である(表1)。本発明の吸水シートは、上下層が同一構成の従来の吸水シート(比較例A及びB並びにA’及びB’)に比べ、高吸水性能を有しかつ液戻量が少ない(表1及び表2)。保水性試験より、中層(2)のパルプ含有率は、50〜80重量%(実施例1、7及び8)が最適である(表1)。紙粉落下試験より、下層(3)のパルプ含有率は、20〜45重量%(実施例1、9及び10)が最適である(表1)。フマル酸含有率0.51〜5.34mg/g(実施例1’〜4’)が、食品用途に良好なpH値(5.83〜6.79)である(表3)。
【課題】上層、中層及び下層の何れかの適正な層に、適量の有機酸及びパルプを含みかつ適正径の熱接着性繊維を配置して、抗菌性、強度、保水性及び滑り防止性を付与する吸収シートを提供する。
【解決手段】 吸収シート(10)は、上層(1)、中層(2)及び下層(3)の少なくとも3層を有する不織布層(5)を備え、上層(1)は、熱接着性繊維及び有機酸を含み、中層(2)は、熱接着性繊維、パルプ及び有機酸を含み、下層(3)は、熱接着性繊維及びパルプを含む。上層(1)は、中層(2)及び下層(3)に比べ熱接着性繊維の繊維径が大きくかつ中層(2)に比べ有機酸の含有率が高く、中層(2)は、下層(3)に比べパルプの含有率が高い。これにより、食品から滲出するドリップを吸収し、ウエットバックを防止する。