(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6366802
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】二酸化塩素ガスの発生方法、液性組成物、ゲル状組成物、及び二酸化塩素ガス発生キット
(51)【国際特許分類】
C01B 11/02 20060101AFI20180723BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20180723BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
C01B11/02 FZAB
A61L9/01 F
A61L9/015
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-180688(P2017-180688)
(22)【出願日】2017年9月20日
【審査請求日】2017年12月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517272725
【氏名又は名称】株式会社CLO2 Lab
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】安部 幸治
(72)【発明者】
【氏名】安部 都兼
【審査官】
岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−088797(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/201178(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/111357(WO,A1)
【文献】
特開2015−227320(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/208758(WO,A1)
【文献】
特開昭57−168977(JP,A)
【文献】
化学便覧 基礎編,丸善株式会社,1993年 9月30日,改訂4版,第II-317〜II-318頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 7/00−11/04
A61L 9/01−9/014
DWPI(Derwent Innovation)
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜塩素酸塩水溶液と、前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤と、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤とを混合して、得られる液性組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させる二酸化塩素ガスの発生方法(ただし、活性化抑制剤がケイ酸ナトリウムの5水和物であってその混合量が活性化剤を除く液性組成物に対して2重量%以上の場合に、活性化剤の混合後1分以内における二酸化塩素ガスの発生を促進するための同0.5重量%以上の触媒をさらに混合する場合を除く)。
【請求項2】
亜塩素酸塩水溶液と、前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤と、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤と、吸水性樹脂とを混合して、得られるゲル状組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させる二酸化塩素ガスの発生方法。
【請求項3】
亜塩素酸塩水溶液と、前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤と、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤とを含み、二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させる液性組成物(ただし、活性化抑制剤がケイ酸ナトリウムの5水和物であってその含有量が活性化剤を除く液性組成物に対して2重量%以上の場合に、活性化剤の混合後1分以内における二酸化塩素ガスの発生を促進するための同0.5重量%以上の触媒をさらに含むものを除く)。
【請求項4】
亜塩素酸塩水溶液と、前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤と、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤と、吸水性樹脂とを含み、二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させるゲル状組成物。
【請求項5】
亜塩素酸塩水溶液を含む第一薬剤と、
前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤、及び前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤を含む第二薬剤と、を備え、
前記第一薬剤と前記第二薬剤とを混合して得られる液性組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させる二酸化塩素ガス発生キット。
【請求項6】
亜塩素酸塩水溶液及び活性化抑制剤を含む第一薬剤と、
前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤を含む第二薬剤と、を備え、
前記活性化抑制剤は、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させるものであり、
前記第一薬剤と前記第二薬剤とを混合して得られる液性組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させる二酸化塩素ガス発生キット(ただし、活性化抑制剤がケイ酸ナトリウムの5水和物であってその含有量が活性化剤を除く液性組成物に対して2重量%以上の場合に、前記第一薬剤及び前記第二薬剤の少なくとも一方が、両薬剤の混合後1分以内における二酸化塩素ガスの発生を促進するための同0.5重量%以上の触媒をさらに含むものを除く)。
【請求項7】
亜塩素酸塩水溶液を含む第一薬剤と、
前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤、及び吸水性樹脂を含む第二薬剤と、を備え、
前記第一薬剤と前記第二薬剤とを混合して得られるゲル状組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させる二酸化塩素ガス発生キット。
【請求項8】
亜塩素酸塩水溶液及び活性化抑制剤を含む第一薬剤と、
前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤、及び吸水性樹脂を含む第二薬剤と、を備え、
前記活性化抑制剤は、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させるものであり、
前記第一薬剤と前記第二薬剤とを混合して得られるゲル状組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させる二酸化塩素ガス発生キット。
【請求項9】
前記活性化抑制剤が、ケイ酸アルカリ金属塩又はケイ酸アルカリ土類金属塩である請求項5から8のいずれか一項に記載の二酸化塩素ガス発生キット。
【請求項10】
前記活性化抑制剤が、ケイ酸ナトリウムである請求項9に記載の二酸化塩素ガス発生キット。
【請求項11】
前記活性化剤が、無機酸若しくは有機酸、又はそれらの塩である請求項5から10のいずれか一項に記載の二酸化塩素ガス発生キット。
【請求項12】
前記活性化剤が、1%水溶液のpHが1.7以上2.4以下を示す無機酸又はその塩である請求項11に記載の二酸化塩素ガス発生キット。
【請求項13】
前記活性化剤が、メタリン酸ナトリウムである請求項11に記載の二酸化塩素ガス発生キット。
【請求項14】
前記活性化剤が、1%水溶液のpHが3.8以上4.5以下を示す無機酸又はその塩である請求項11に記載の二酸化塩素ガス発生キット。
【請求項15】
前記活性化剤が、ピロリン酸二水素ナトリウムである請求項11に記載の二酸化塩素ガス発生キット。
【請求項16】
前記活性化剤が、1%水溶液のpHが1.7以上2.4以下を示す無機酸又はその塩と、1%水溶液のpHが3.8以上4.5以下を示す無機酸又はその塩と、の混合物である請求項11に記載の二酸化塩素ガス発生キット。
【請求項17】
前記第一薬剤及び前記第二薬剤が、それぞれ密封性容器に封入されている請求項5から16のいずれか一項に記載の二酸化塩素ガス発生キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化塩素ガスを徐放的に発生させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素は強い酸化力を有しており、その酸化作用によって除菌したり悪臭成分を分解したりすることが知られている。このため、二酸化塩素は、除菌剤、脱臭剤、防カビ剤、又は漂白剤等として広く使用されている。これらの用途では、二酸化塩素は二酸化塩素ガスの形態で用いられる場合が多い。
【0003】
二酸化塩素ガスの発生方法の一例として、亜塩素酸塩水溶液に有機酸又は無機酸等の活性化剤を添加する方法が、例えば特開2005−29430号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1の方法では、セオピライトやゼオライト等のガス発生調節剤を用いて、二酸化塩素ガスの発生量を調整している。特許文献1には具体的な記載はないが、セオピライトやゼオライトは多孔質であるため、ガス発生量が多い場合に過剰なガスをガス発生調節剤の内部に保持し、ガス発生量が少ない場合に保持していたガスを放出することによってガス発生量を調整していると推察される。
【0004】
しかしながら、物理的吸着作用によってだけではガス発生量を十分に調整することができず、亜塩素酸塩水溶液への活性化剤の添加後の二酸化塩素ガス濃度が急激な上昇を十分に抑えることができない。このため、特許文献1では二酸化塩素ガスを持続的に発生させることを謳っているものの、その効果は限定的であると言わざるを得なかった。また、発生する二酸化塩素ガスの濃度は亜塩素酸塩の濃度のみに依存し、最大濃度を制御することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−29430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発生する二酸化塩素ガスの濃度を自在に制御可能とし、かつ、長期に亘って二酸化塩素ガスを安定的に発生させることができるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の二酸化塩素ガスの発生方法は、
亜塩素酸塩水溶液と、前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤と、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤とを混合して、得られる液性組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第2の二酸化塩素ガスの発生方法は、
亜塩素酸塩水溶液と、前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤と、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤と、吸水性樹脂とを混合して、得られるゲル状組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る液性組成物は、
亜塩素酸塩水溶液と、前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤と、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤とを含み、二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るゲル状組成物は、
亜塩素酸塩水溶液と、前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤と、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤と、吸水性樹脂とを含み、二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る第1の二酸化塩素ガス発生キットは、
亜塩素酸塩水溶液を含む第一薬剤と、
前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤、及び前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤を含む第二薬剤と、を備え、
前記第一薬剤と前記第二薬剤とを混合して得られる液性組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る第2の二酸化塩素ガス発生キットは、
亜塩素酸塩水溶液及び活性化抑制剤を含む第一薬剤と、
前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤を含む第二薬剤と、を備え、
前記活性化抑制剤は、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させるものであり、
前記第一薬剤と前記第二薬剤とを混合して得られる液性組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る第3の二酸化塩素ガス発生キットは、
亜塩素酸塩水溶液を含む第一薬剤と、
前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤、及び吸水性樹脂を含む第二薬剤と、を備え、
前記第一薬剤と前記第二薬剤とを混合して得られるゲル状組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る第4の二酸化塩素ガス発生キットは、
亜塩素酸塩水溶液及び活性化抑制剤を含む第一薬剤と、
前記亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤、及び吸水性樹脂を含む第二薬剤と、を備え、
前記活性化抑制剤は、前記活性化剤の作用を遅効的に低減させるものであり、
前記第一薬剤と前記第二薬剤とを混合して得られるゲル状組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることを特徴とする。
【0015】
これらの構成によれば、各成分を混合させたとき、活性化剤が速効的に働くことによって二酸化塩素ガスが速やかに発生する。その後、活性化抑制剤が遅効的に働くことによって活性化剤の作用を低減させることで、二酸化塩素ガスの発生が緩慢となる。これにより、混合後初期段階での二酸化塩素ガスの急激な濃度上昇が抑制され、初期段階から二酸化塩素ガスが徐放される。従って、長期に亘って二酸化塩素ガスを安定的に発生させることができる。また、活性化抑制剤の添加量を調整することで、発生する二酸化塩素ガスの濃度を自在に制御することができる。
【0016】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0017】
一態様として、
前記活性化抑制剤が、ケイ酸アルカリ金属塩又はケイ酸アルカリ土類金属塩であることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、ケイ酸アルカリ金属塩又はケイ酸アルカリ土類金属塩が水溶液に溶解したときに、加水分解によって水酸化物イオンを生成することができる。よって、一般に酸が用いられる場合が多い活性化剤の作用を中和反応によって遅効的に低減することができ、二酸化塩素ガスの濃度を自在に制御することができる。
【0019】
一態様として、
前記活性化抑制剤が、ケイ酸ナトリウムであることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、入手容易でかつ比較的安価なケイ酸ナトリウムを用いて、低コストに、二酸化塩素ガスの濃度を自在に制御することができる。
【0021】
一態様として、
前記活性化剤が、無機酸若しくは有機酸、又はそれらの塩であることが好ましく、
前記活性化剤が、1%水溶液のpHが1.7以上2.4以下を示す無機酸又はその塩であること、又は、
前記活性化剤が、1%水溶液のpHが3.8以上4.5以下を示す無機酸又はその塩であること、又は、
前記活性化剤が、1%水溶液のpHが1.7以上2.4以下を示す無機酸又はその塩と、1%水溶液のpHが3.8以上4.5以下を示す無機酸又はその塩と、の混合物であることがさらに好ましい。
【0022】
この構成によれば、各成分を混合した後の初期段階で、迅速かつ適切に二酸化塩素ガスを発生させることができる。
【0023】
一態様として、
前記活性化剤が、メタリン酸ナトリウムであること、又は、
前記活性化剤が、ピロリン酸二水素ナトリウムであることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、入手容易でかつ安定性も良いメタリン酸ナトリウム又はピロリン酸二水素ナトリウムを用いて、低コストに、迅速かつ適切に二酸化塩素ガスを発生させることができる。
【0025】
一態様として、
前記第一薬剤及び前記第二薬剤が、それぞれ密封性容器に封入されていることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、大気中からの酸素や水分の混入を防止することができ、第一薬剤や第二薬剤の劣化を防止することができる。よって、第一薬剤や第二薬剤を、その使用前において長期に亘って安定的に保存することができる。
【0027】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】二酸化塩素ガスを徐放させる発生方法の原理説明図
【
図4】二酸化塩素ガスの発生方法の一局面を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0029】
二酸化塩素ガスの発生方法、液性組成物、ゲル状組成物、及び二酸化塩素ガス発生キットの実施形態について説明する。本実施形態の二酸化塩素ガスの発生方法は、亜塩素酸塩水溶液と、速効性の活性化剤と、遅効性の活性化抑制剤と、任意的に吸水性樹脂とを混合して、二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させる方法である。この方法を、本実施形態では、亜塩素酸塩水溶液を含む第一薬剤1と、速効性の活性化剤、遅効性の活性化抑制剤、及び任意的に吸水性樹脂を含む第二薬剤2とを備える二酸化塩素ガス発生キットK(
図3を参照)を用いて実行する。二酸化塩素ガス発生キットKの第一薬剤1と第二薬剤2とを混合して得られる液状組成物又はゲル状組成物3(
図5を参照)から、二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることができる。
【0030】
なお、以下では、任意的成分である吸水性樹脂をも混合して、ゲル状組成物3から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させる場合を例として説明する。
【0031】
亜塩素酸塩水溶液は、亜塩素酸塩を含む水溶液である。亜塩素酸塩水溶液に含まれる亜塩素酸塩は、それ自体は安定であり、かつ、活性化剤との混合によって活性化されて二酸化塩素ガスを生成するものであれば特に制限されない。亜塩素酸塩としては、例えば亜塩素酸アルカリ金属塩又は亜塩素酸アルカリ土類金属塩を例示することができる。亜塩素酸アルカリ金属塩としては、例えば亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)、亜塩素酸カリウム(KClO
2)、又は亜塩素酸リチウム(LiClO
2)が例示される。亜塩素酸アルカリ土類金属塩としては、例えば亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO
2)
2)、亜塩素酸マグネシウム(Mg(ClO
2)
2)、亜塩素酸バリウム(Ba(ClO
2)
2)が例示される。これらの中では、亜塩素酸ナトリウムを好適に使用することができる。
【0032】
混合前における亜塩素酸塩水溶液のpHは、特に制限されるものではないが、9以上13以下であることが好ましい。亜塩素酸塩水溶液のpHは、10以上12.5以下であることがより好ましく、11以上12以下であることがさらに好ましい。このようなpHとすることで、亜塩素酸塩水溶液中の亜塩素酸塩を安定化させて長期に亘って安定的に保存することができる。亜塩素酸塩水溶液のpHは、アリカリ剤によって調整することができる。アリカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)等が例示される。
【0033】
活性化剤は、亜塩素酸塩水溶液と混合された際に溶液中の亜塩素酸塩を活性化して二酸化塩素ガスを発生させるものである。活性化剤としては、例えば無機酸若しくは有機酸、又はそれらの塩を例示することができる。無機酸としては、例えば塩酸(HCl)、炭酸(H
2CO
3)、硫酸(H
2SO
4)、リン酸(H
3PO
4)、又はホウ酸(H
3BO
3)等が例示される。無機酸の塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)、リン酸二水素ナトリウム(NaH
2PO
4)、又はリン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)等が例示される。無機酸及びその塩としては、無水物(例えば、無水硫酸やピロリン酸等)を用いることもでき、例えばピロリン酸二水素ナトリウム等を好適に用いることができる。
【0034】
有機酸としては、例えば酢酸(CH
3COOH)、クエン酸(H
3(C
3H
5O(COO)
3))、又はリンゴ酸(COOH(CHOH)CH
2COOH)等が例示される。有機酸の塩としては、例えば酢酸ナトリウム(CH
3COONa)、クエン酸二ナトリウム(Na
2H(C
3H
5O(COO)
3))、クエン酸三ナトリウム(Na
3(C
3H
5O(COO)
3))、リンゴ酸二ナトリウム(COONa(CHOH)CH
2COONa)等が例示される。
【0035】
活性化剤は、亜塩素酸塩水溶液と混合された際に、亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整する。より具体的には、活性化剤は、亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に低下させて酸性雰囲気とする。この意味で、活性化剤は、“速効的に酸性を示すpH調整剤”と言うことができる。亜塩素酸塩水溶液のpHを、2.5以上6.8以下とすることが好ましい。活性化剤は、亜塩素酸塩水溶液のpHを、3.5以上6.5以下とすることがより好ましく、4.5以上6.0以下とすることがさらに好ましい。好ましい活性化剤の一例としては、1%水溶液のpHが1.7以上2.4以下を示すメタリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0036】
例えば亜塩素酸塩水溶液に含まれる亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムである場合、水溶液のpHを上記のように調整して酸性雰囲気とすると、下記の式(1)に従い、亜塩素酸が生成する。
NaClO
2 + H
+ → Na
+ + HClO
2 ・・(1)
一方、二酸化塩素ガスを水に溶解させた場合の平衡反応は下記の式(2)で示される。
2ClO
2 + H
2O ⇔ HClO
2 + HClO
3 ・・(2)
その際、以下の式(3)が成立する。
[HClO
2][HClO
3]/[ClO
2]=1.2×10
−7・・(3)
【0037】
亜塩素酸塩水溶液と活性化剤とを混合することによって亜塩素酸塩水溶液を酸性雰囲気とし、式(1)に従って亜塩素酸を生成させることで、式(3)の公理により、式(2)において平衡反応が左方向に進行するため、圧倒的な確率で水溶液中に二酸化塩素ガスを発生させることができる。
【0038】
本実施形態の二酸化塩素ガスの発生方法においては、亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整する活性化剤(ここでは、これを「第1の活性化剤」と称する。)とは別に、亜塩素酸塩水溶液のpHを遅効的に調整する第2の活性化剤を合わせて混合しても良い。この意味で、第2の活性化剤は、“遅効的に酸性を示すpH調整剤”と言うことができる。
第2の活性化剤は、第1の活性化剤よりも酸性度の低い無機酸若しくは有機酸、又はそれらの塩であって良い。好ましい第2の活性化剤の一例としては、1%水溶液のpHが3.8以上4.5以下を示すピロリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0039】
活性化抑制剤は、活性化剤と共に亜塩素酸塩水溶液と混合された際に、活性化剤の作用を遅効的に低減させるものである。活性化抑制剤は、亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に低下させるとの活性化剤の作用を、遅効的に低減させる。活性化抑制剤は、それ自体は、亜塩素酸塩水溶液のpHを遅効的に上昇させるものであって良い。この意味で、活性化抑制剤は、“遅効的にアルカリ性を示すpH調整剤”と言うことができる。活性化抑制剤としては、例えばケイ酸アルカリ金属塩又はケイ酸アルカリ土類金属塩を例示することができる。ケイ酸アルカリ金属塩としては、例えばケイ酸リチウム(mLi
2O・nSiO
2)、ケイ酸ナトリウム(mNa
2O・nSiO
2)、又はケイ酸カリウム(mK
2O・nSiO
2)等が例示される。ケイ酸アルカリ土類金属塩としては、例えばケイ酸マグネシウム(mMgO・nSiO
2)、ケイ酸カルシウム(mCaO・nSiO
2)、又はケイ酸ストロンチウム(mSrO・nSiO
2)等が例示される。これらの中では、ケイ酸ナトリウム(特に、メタケイ酸ナトリウム)を好適に使用することができる。
【0040】
アルカリ金属又はケイ酸アルカリ土類金属の酸化物と二酸化ケイ素とのモル比(上記のn/m)は、特に制限されるものではないが、0.9以上1.2以下であることが好ましい。
【0041】
例えば活性化抑制剤がメタケイ酸ナトリウムである場合、当該メタケイ酸ナトリウムは水溶液中で以下の式(4)のように解離(加水分解)する。
Na
2O・SiO
2 + 2H
2O → 2NaOH + H
2SiO
3 ・・(4)
このようにして、亜塩素酸塩水溶液との混合後に少し時間が経ってから生成する水酸化ナトリウム(NaOH)が、速効性の活性化剤(本例では酸)を部分的に中和するように作用することにより、活性化剤の作用を遅効的に低減させる。その結果、混合後初期段階での二酸化塩素ガスの急激な濃度上昇が抑制され、初期段階から二酸化塩素ガスを徐放させることができる。
【0042】
一方、式(4)に示されるように、水酸化ナトリウムとは別にメタケイ酸(H
2SiO
3)も生成する。メタケイ酸は、亜塩素酸塩水溶液との混合後に少し時間が経ってから生成して酸として作用するものであり、この意味で、その元となる二酸化ケイ素(SiO
2)は、“遅効的に酸性を示すpH調整剤”の一例である。遅れて生成した水酸化ナトリウムとメタケイ酸とは、さらに、以下の式(5)のように反応する。
2NaOH + H
2SiO
3 → Na
2O・SiO
2 + 2H
2O ・・(5)
【0043】
こうして、活性化抑制剤としてのメタケイ酸ナトリウムは、水溶液中で水酸化ナトリウムとメタケイ酸とに解離した状態と、再結合した状態との間で変態する(
図1を参照)。そして、水酸化ナトリウムとメタケイ酸とに解離した状態で、亜塩素酸塩水溶液のpHを遅効的に調整する。すなわち、水酸化ナトリウムとメタケイ酸とに解離した状態で、メタケイ酸が水素イオン(H
+)の供給源として作用するとともに、水酸化ナトリウムが水酸化物イオン(OH
−)の供給源として作用して、亜塩素酸塩水溶液のpHを遅効的に調整する。その結果、二酸化塩素ガスを緩慢に発生させることができ、長期に亘って二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることができる。
【0044】
なお、「安定的濃度で発生」とは、閉鎖系において、発生する二酸化塩素ガスの濃度が混合後初期段階でピークを有さずにゆっくりと上昇して一定となること(
図2を参照)、又は、ピークを有する場合でも最終濃度に対するピーク濃度の比が十分に低く抑えられることを意味する。後者の場合には、最終濃度に対するピーク濃度の比は、例えば1.3以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.1以下であることがさらに好ましい。なお、
図2では、閉鎖系において、亜塩素酸塩水溶液に活性化剤と共に活性化抑制剤を混合させた場合の二酸化塩素ガスの濃度変化を実線で示し、活性化抑制剤を混合せずに活性化剤だけを混合させた場合の濃度変化を、比較のために破線で示している。
【0045】
また、本実施形態の方法によれば、発生する二酸化塩素ガスの濃度を自在に制御することができる。従来は、発生する二酸化塩素ガスの濃度は亜塩素酸塩の濃度に依存し、最大濃度を制御することはできなかったが、本方法では活性化抑制剤の添加量を調整することで、二酸化塩素ガスの最大濃度(好適には最終濃度)を自在に制御することができる。よって、使用目的に応じた濃度の二酸化塩素ガスを容易に発生させることができる。
【0046】
吸水性樹脂は、水分を吸収してゲル状組成物を形成するものである。吸水性樹脂としては、例えばデンプン系吸水性樹脂、セルロース系吸水性樹脂、又は合成ポリマー系吸水性樹脂等を例示することができる。デンプン系吸水性樹脂としては、例えばデンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体又はデンプン−アクリル酸グラフト共重合体等が例示される。セルロース系吸水性樹脂としては、例えばセルロース−アクリロニトリルグラフト共重合体又は架橋カルボキシメチルセルロース等が例示される。合成ポリマー系吸水性樹脂としては、例えばポリビニルアルコール系吸水性樹脂又はアクリル系吸水性樹脂等が例示される。
【0047】
活性化剤、活性化抑制剤、及び吸水性樹脂は、亜塩素酸塩水溶液との混合前は、固体(例えば粉末状又は顆粒状)であって良い。
【0048】
亜塩素酸塩水溶液の亜塩素酸塩濃度は、0.01質量%以上25質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。また、活性化剤及び活性化抑制剤は、1質量%の亜塩素酸塩水溶液1L当たり、例えば以下の割合で含有することができる。活性化剤は、0.1質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。活性化抑制剤は、活性化剤の質量を基準として、0.05質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
本実施形態の二酸化塩素ガスの発生方法は、
図3に示す二酸化塩素ガス発生キットKを用いて実行することができる。二酸化塩素ガス発生キットKは、亜塩素酸塩水溶液を含む第一薬剤1と、速効性の活性化剤、遅効性の活性化抑制剤、及び吸水性樹脂を含む第二薬剤2とを備える。二酸化塩素ガス発生キットKにおいて、第一薬剤1及び第二薬剤2は、それぞれ密封性容器に封入されている。本実施形態では、液体(亜塩素酸塩水溶液)で構成される第一薬剤1は、プラスチック製の容器本体11を主体とする第一容器10に収容されている。第一容器10は密封蓋12を有しており、この密封蓋12が容器本体11に対して液密に装着されることにより、第一薬剤1が密封性の第一容器10に封入されている。
【0050】
また、固体で構成される第二薬剤2は、プラスチックフィルムを貼り合わせてなる第二容器20に収容されている。第二容器20は、2枚のプラスチックフィルムを重ね合わせてその周縁部全体を溶着させたものであっても良いし、1枚のプラスチックフィルムを半分に折り畳んだ上で折返部以外の周縁部を溶着させたものであっても良い。こうして、第二薬剤2が密封性の第二容器20に封入されている。
【0051】
なお、第一容器10及び第二容器20は、密封性の容器であればその材質や形状等は制限されない。第一容器10及び第二容器20は、プラスチック製に限らず例えば金属製であっても良い。また、第一容器10は、定形性を有するものに限らず、可撓性を有するものであっても良く、第二容器20は、可撓性を有するものに限らず、定形性を有するものであっても良い。さらに、第一薬剤1と第二薬剤2とが、2つの収容室を有する一体化容器に収容され、使用時に2つの収容室が連通されることによって混合できるように構成されても良い。
【0052】
本実施形態の二酸化塩素ガス発生キットKでは、第一薬剤1が亜塩素酸塩水溶液の状態で流通するので、保存安全性に優れる。例えば二酸化塩素ガスが溶存する亜塩素酸塩水溶液をpHを酸性に保ちながら流通させる場合に比べて、保存安全性が高い。
【0053】
二酸化塩素ガス発生キットKを用いて二酸化塩素ガスを実際に発生させるには、以下のようにすれば良い。すなわち、
図4に示すように、第一薬剤1を収容している第一容器10において、容器本体11から密封蓋12を取り外す。また、第二薬剤2を収容している第二容器20において、プラスチックフィルムを切断して開封する。そして、第二容器20内の第二薬剤2を第一容器10(容器本体11)内に混入させることで、第一薬剤1と第二薬剤2とを混合する。こうして、第一容器10(容器本体11)内で、亜塩素酸塩水溶液と、速効性の活性化剤と、遅効性の活性化抑制剤と、吸水性樹脂とを混合する。
【0054】
すると、第一容器10(容器本体11)内で内容物がゲル化し、得られるゲル状組成物3(
図5を参照)から、二酸化塩素ガスが安定的濃度で発生する。容器本体11には、複数の開口部15を有する開放蓋14を装着しておけば、安定的濃度で発生した二酸化塩素ガスが開口部15を通過して室内に放出されることになる。よって、安定的濃度で徐放される二酸化塩素ガスの強い酸化力により、長期に亘って安定的に、殺菌効果や消臭効果等をもたらすことができる。
【0055】
上記の説明において、第二薬剤2に吸水性樹脂を含めず、亜塩素酸塩水溶液と速効性の活性化剤と遅効性の活性化抑制剤とだけを混合しても良く、この場合には、得られる液性組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることができる。この場合であっても、安定的濃度で徐放される二酸化塩素ガスの強い酸化力により、長期に亘って安定的に、殺菌効果や消臭効果等をもたらすことができる。
【0056】
また、上記の説明において、遅効性の活性化抑制剤を第二薬剤2にではなく第一薬剤1に含め、亜塩素酸塩水溶液と遅効性の活性化抑制剤とを第一容器10で保管し、使用時に速効性の活性化剤(及び吸水性樹脂)と混合するようにしても良い。この場合であっても、二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させることができ、安定的濃度で徐放される二酸化塩素ガスの強い酸化力により、長期に亘って安定的に、殺菌効果や消臭効果等をもたらすことができる。
【0057】
以下に実施例を示し、本発明についてより具体的に説明する。
【0058】
[実施例1]
亜塩素酸ナトリウム7gを400mLの純水に溶解し、17500ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。この亜塩素酸ナトリウム水溶液に、活性化剤として3%の塩酸10g及びリン酸二水素ナトリウム0.56gと、活性化抑制剤としてケイ酸ナトリウム(Na
2O・
0.95SiO
2)0.23gとを混合した。その後、混合液を常温にて密栓状態で保管し、閉鎖系において、混合液のpH及び発生した二酸化塩素ガスの濃度を測定した。
【0059】
[実施例2]
活性化剤としてのリン酸二水素ナトリウムの添加量を1.17gとしたこと、及び活性化抑制剤としてケイ酸ナトリウムの添加量を0.33gとしたことを除いては、実施例1と同様にして、混合液のpHと二酸化塩素ガスの濃度を測定した。
【0060】
[実施例3]
活性化剤としてのリン酸二水素ナトリウムの添加量を1.52gとしたこと、及び活性化抑制剤としてケイ酸ナトリウムの添加量を0.45gとしたことを除いては、実施例1と同様にして、混合液のpHと二酸化塩素ガスの濃度を測定した。
【0061】
[比較例1]
活性化剤としてのリン酸二水素ナトリウムの添加量を0.09gとしたこと、及び活性化抑制剤を添加しなかったことを除いては、実施例1と同様にして、混合液のpHと二酸化塩素ガスの濃度を測定した。
【0064】
比較例1では、混合後の初期段階で二酸化塩素ガスの濃度が急激に増加し、ピークを迎えた後に次第に減少しているのに対して、実施例1〜3では、活性化剤として強酸を用いながらも、二酸化塩素ガスが徐放されることが確認された。
【0065】
[実施例4]
亜塩素酸ナトリウム4.75gを400mLの純水に溶解し、11875ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。この亜塩素酸ナトリウム水溶液に、活性化剤として3%の塩酸9.3g及びリン酸二水素ナトリウム0.82gと、活性化抑制剤としてケイ酸ナトリウム(Na
2O・
0.95SiO
2)0.3gとを混合した。その後、混合液を常温にて密栓状態で保管し、閉鎖系において、混合液のpH及び発生した二酸化塩素ガスの濃度を測定した。また、混合後、9日経過後に系を加速環境とし、その加速環境を2日間維持した。加速環境は、系内の温度を54℃まで上昇させて保温することによって実現した。その後、系を通常環境として(すなわち、常温に戻して)、引き続き、混合液のpH及び発生した二酸化塩素ガスの濃度を測定した。なお、2日間の加速環境を経たことで、18日経過後の状態は、通常環境での68日経過後の状態にほぼ相当する(中国消毒技術規範を参照)。
【0066】
[比較例2]
活性化抑制剤を添加しなかったことを除いては、実施例4と同様にして、混合液のpHと二酸化塩素ガスの濃度を測定した。
【0069】
比較例1では、長期保存後に二酸化塩素ガスの濃度が顕著に減少しているのに対して、実施例4では、二酸化塩素ガスが徐放され、その濃度が長期間に亘って維持されることが確認された。
【0070】
[実施例5]
ゲル状組成物(ゲル剤)を想定し、亜塩素酸ナトリウム45.44gを400mLの純水に溶解し、113600ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。この亜塩素酸ナトリウム水溶液に、活性化剤としてリン酸二水素ナトリウム25gと、活性化抑制剤としてケイ酸ナトリウム(Na
2O・
0.95SiO
2)1.33gとを混合した。本試験では、pH測定及びガス濃度測定を容易化するため、吸水性樹脂を混合せずに実験を行った。その後、ゲル状組成物を想定した上記混合液を常温にて非密栓状態で保管し、開放系において、混合液のpH及び発生した二酸化塩素ガスの濃度を測定した。
【0071】
[実施例6]
活性化剤としてのリン酸二水素ナトリウムの添加量を31gとしたこと、及び活性化抑制剤としてケイ酸ナトリウムの添加量を2.67gとしたことを除いては、実施例5と同様にして、混合液のpHと二酸化塩素ガスの濃度を測定した。
【0072】
[実施例7]
活性化剤としてのリン酸二水素ナトリウムの添加量を33gとしたこと、及び活性化抑制剤としてケイ酸ナトリウムの添加量を4gとしたことを除いては、実施例5と同様にして、混合液のpHと二酸化塩素ガスの濃度を測定した。
【0073】
[実施例8]
活性化剤としてのリン酸二水素ナトリウムの添加量を45gとしたこと、及び活性化抑制剤としてケイ酸ナトリウムの添加量を5.34gとしたことを除いては、実施例5と同様にして、混合液のpHと二酸化塩素ガスの濃度を測定した。
【0074】
[比較例3]
活性化剤としてのリン酸二水素ナトリウムの添加量を20gとしたこと、及び活性化抑制剤を添加しなかったことを除いては、実施例5と同様にして、混合液のpHと二酸化塩素ガスの濃度を測定した。
【0077】
開放系では二酸化塩素ガスの濃度は全体的に経時とともに減少しているものの、実施例5〜8では、比較例3に比べて二酸化塩素ガスの濃度の減少度合いが小さく抑えられていることが確認された。
【0078】
以上、二酸化塩素ガスの発生方法、液性組成物、ゲル状組成物、及び二酸化塩素ガス発生キットKの実施形態(実施例を含む)について具体例を示して詳細に説明したが、本発明の範囲は、上述した具体的な実施例及び実施形態に限定される訳ではない。本明細書において開示された実施例及び実施形態は全ての点で例示であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 第一薬剤
2 第二薬剤
3 ゲル状組成物
10 第一容器(密封性容器)
20 第二容器(密封性容器)
K 二酸化塩素ガス発生キット
【要約】
【課題】発生する二酸化塩素ガスの濃度を自在に制御可能とし、かつ、長期に亘って二酸化塩素ガスを安定的に発生させることができるようにする。
【解決手段】亜塩素酸塩水溶液と、亜塩素酸塩水溶液のpHを速効的に調整して二酸化塩素ガスを発生させる活性化剤と、活性化剤の作用を遅効的に低減させる活性化抑制剤とを混合して、得られる液性組成物から二酸化塩素ガスを安定的濃度で発生させる。
【選択図】なし