特許第6366816号(P6366816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366816車載移動スタジオおよび艤装車両の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366816
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】車載移動スタジオおよび艤装車両の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/00 20060101AFI20180723BHJP
   H04N 5/28 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B60P3/00 E
   H04N5/28
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-505007(P2017-505007)
(86)(22)【出願日】2016年3月2日
(86)【国際出願番号】JP2016056413
(87)【国際公開番号】WO2016143632
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2017年8月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-46084(P2015-46084)
(32)【優先日】2015年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】ウステュン アフメット
(72)【発明者】
【氏名】舟田 貴吉
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 信一
【審査官】 白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−3937(JP,U)
【文献】 特開2003−128182(JP,A)
【文献】 特開2000−259073(JP,A)
【文献】 特開2010−105432(JP,A)
【文献】 特開2013−10420(JP,A)
【文献】 実開平4−13431(JP,U)
【文献】 特開2008−110655(JP,A)
【文献】 米国特許第6807735(US,B2)
【文献】 米国特許第5280985(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00−9/00
H04N 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄を基材とする下側骨組みと、アルミを基材とする上側骨組みと、下側骨組と車両とを接続するブラケットと、を備え、直方体の箱型に形成された車載移動スタジオであって、前記下側骨組みは、縦梁と横梁からなる平面状の上層フレームと、縦梁と横梁からなる平面状の下層フレームと、該上層フレームと下層フレームを接続する複数の柱を備え、前記ブラケットは、該下層フレームと干渉することなく該上層フレームと接続されることを特徴とする車載移動スタジオ。
【請求項2】
前記上側骨組みの屋根の4隅に、リフティングポイントを設けたことを特徴とする請求項1の車載移動スタジオ。
【請求項3】
請求項2の車載移動スタジオを、第1のプラットフォームに載せて組み立てる過程と、
該第1のプラットフォーム上で、該車載移動スタジオにスタジオ装置を設置し、スタジオとして機能する状態にする過程と、
該車載移動スタジオを第1のプラットフォームから運搬用の第2のプラットフォームに載せかえる過程と、
該車載移動スタジオを第2のプラットフォームから車両に載せかえる過程と、を有する艤装車両の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外放送(Outside broadcasting)、電子的ニュース取材(Electronic news-gathering)等のテレビ産業で用いられる車載移動スタジオに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外におけるテレビの取材、制作、伝送のために、それらに必要な機器一式を搭載した自動車が知られ、中継車(OB-Van)などと呼ばれている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年のネットワーク技術の進歩やデジタル映像技術の円熟化は、中継車にも大きな変化をもたらしつつある。公演会場やアリーナには、衛星回線とは比較にならないほど広帯域な光ファイバー回線が設けられ、現場の映像を非圧縮且つ低遅延で本社に届けられるようになった。これは、映像技術者が中継車の中で行ってきた業務が、本社で(遠隔から)できることを意味している。
また、現在のオーサリングソフトウェアは、一般のパソコン上で動作するようなものでも、業務用途として十分な品質の映像を維持することができる。従来、専用のテープ媒体に記録していた映像素材は、今や極端な例では市販のUSBサムドライブにも保存できる。カメラマンと映像技術者との会話等に用いるインターコムは、WiFi端末のIP電話機能で事足りるかもしれない。インターネットプロトコルテレビ(IPTV)は、コモディティ化したネットワーク技術の典型的な応用例と言える。IPTVは、テレビ産業の団体が考えるような特別なプロトコルにほとんど頼らずに、サービスを実現してきた。
【0004】
イーサーネット(商標)のようなパケット交換ネットワークでは、ベースバンド信号の回線交換方式に比べ、ケーブルの束からの解放やスケーラビリティの恩恵が得られることは確かである。簡単な例では、従来の2台の4x4マトリクススイッチは、8x8スイッチの代用にはならないが、イーサーネットベースのスイッチであれば、それらの間を一本のファイバーで接続するだけで、4x4を8x8にすることができる。
【0005】
イーサーネットを映像音声機器に適用する場合、レイテンシ―やネットワーク接続障害などの問題を克服し、十分な信頼性を維持する必要があるが、それらを考慮したAVB(Audio Video Bridging)がIEEE 802.1標準委員会により策定され、現在ではそれに準拠したAVBスイッチが入手できる。コモディティ化に対抗するかのように各機器メーカによってプロトコルが独自に実装されており、異なるメーカ間での互換性は、システム構築前に確かめる必要があるだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第10/013261号パンフレット
【特許文献2】米国特許7300086号公報
【特許文献3】特開2007−166055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
中継車システムを新たに構築するユーザは、どのような用途(特にライブか否か)や通信環境でそれを運用するかに応じてネットワーク化の比率を選ぶことができ、それは衛星リンクを用いる従来型からクラウド型まで多様である。ユーザは更に、本社側のシステムとの相互運用性や統合、新しい映像フォーマットへのアップグレード、ライブ遠隔編集やファイルベースワークフローのような新機能の追加、或いは将来のための能力の拡張性を希望することもあるであろう。また中継車の基幹ネットワークをどのメーカの機器を用いて構築するか注意深く決める必要がある。このように、中継車システムへのニーズは多様化しており、中継車の生産者には、ニーズに適合するシステム設計を行い短期に納品することが求められているといえる。
【0008】
中継車システムの設計や生産は、基本的に、受注を受けて行われる。生産者は、ユーザから指定された車両(トラックのフレーム)を購入し、荷台(Cargo)部分に箱型のキャビンを組み立てて、そこにさまざまな設備を搭載し、品質検査を行う。完成した中継車は、輸出入業者に依頼して発注者の国へ輸送し、通関手続きなどを経て、発注者のもとに届けられる。ただし自動車として走行できるようにするためには、その国の様々な手続きを行い審査を受け車輌登録する必要があるが、相当の日数をかかるという問題がある。これは、実運用を始める前に必要な、保険やメンテナンス契約についてもしばしば当てはまる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一側面に係る車載移動スタジオは、鉄を基材とする下側骨組みと、アルミを基材とする上側骨組みと、下側骨組と車両とを接続するブラケットと、を備え、直方体の箱型に形成される。車載移動スタジオは貨物として該車両に積載されうる。
【0010】
前記下側骨組みは、縦梁と横梁からなる平面状の上層フレームと、縦梁と横梁からなる平面状の下層フレームと、該上層フレームと下層フレームを接続する複数の柱を備え、前記ブラケットは、該下層フレームと干渉することなく該上層フレームと接続される。また、前記上側骨組みの屋根の4隅に、リフティングポイントを備える。
箱型貨物に形成された車載移動スタジオは、それ自身で自立する。即ち、地面に直接置くことができる。
【0011】
本発明の一側面に係る艤装車両の製造方法は、上記車載移動スタジオを、第1のプラットフォームに載せて組み立てる過程と、
該第1のプラットフォーム上で、該車載移動スタジオにスタジオ装置を設置し、スタジオとして機能する状態にする過程と、
該車載移動スタジオを第1のプラットフォームから運搬用の第2のプラットフォームに載せかえる過程と、
該車載移動スタジオを第2のプラットフォームから車両に載せかえる過程と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モジュラー構造の車載移動スタジオを、顧客の国で調達した車両(シャーシ)に、顧客の国で据え付けるようにしたので、中継車を短期間でユーザに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係るOB-Boxの下側骨組1。
図2】OB-Boxの内部の配置図(上面)。
図3】OB-Boxの内部の配置図(左側面)。
図4】OB-Boxの内部の配置図(全面)。
図5】OB-Boxの後部の外観図。
図6】カスケード接続インタフェースの模式図。
図7】輸送用のプラットフォーム26に積載されたOB-Box。
図8】シャーシとブラケット32との斜視図
図9】ブラケットのシャーシへの固定を示す図。
図10】吊り上げられたOB-Boxを示す図。
図11】OB-Boxの底面の斜視図。
図12】OB-Boxの車両への固定を示す図。
図13】OB-Boxに搭載される主なスタジオ機器の結線図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例に係る車載移動スタジオ(以後OB-Boxと呼ぶ)は、図1に示すように、直方体の基本構造を有し、トラックのシャーシに貨物として容易に搭載できる。
【実施例1】
【0015】
[OB-Boxの構成]
以下、OB-Boxの製造過程に沿って、構成を説明する。
ステップS1では、顧客との打ち合わせにより、デザインを決める。デザインは、外観やOB-Boxの寸法、内装、内部の空間配置、機構的設備に関するものや、搭載するシステムやその規模、個々の電子機器の選択に関するもので、完全にカスタマイズ可能である。最初に、OB-Boxで扱うカメラ台数が決められるべきである。台数が決まると、カメラを収納するスペースやCCU(Camera Control Unit)の設置スペースが決まり、OB-Boxの寸法の目安となる。おおよそのOB-Boxの寸法が決まると、そのOB-Boxを積載可能なベース車が決まる。それから詳細な設計がスタートする。
【0016】
ステップS2では、OB-Boxの下側骨組み1を製作する。図1及び図11に示されるように、下側骨組1は、OB-Boxのキャビンの床や、後方下部のスペースを形成するように、60mm x 40mmの鋼鉄製の複数の角パイプを、上下、左右、および前後方向に格子状に配置したラーメンフレーム(moment resisting frame)であり、OB-Boxの全重量を支える。具体的には、下側骨組み1は、十分なクリアランスで後タイヤより上に位置する上層と、それより100から150mm程度下の下層を有する。
【0017】
上層では、車両の前後方向を貫くような、左右および中央の3本の縦梁2と、3本の縦梁2の間を左右方向に貫くように連結する複数の横梁3とを有する。左右の縦梁2の間隔は、OB-Boxの幅の1/3から1/2程度である。横梁3は、車両側のブラケット(後述)に直接載せられる部分であり、その側面には、ブラケットと接合するためのボルト穴が穿設された鋼板の接続タブ34が、下方に突出するように溶接されている。
【0018】
下層では、OB-Boxの左右両辺で前後方向に貫く2本の縦梁4と、両側の縦梁4の間を左右方向に貫くように連結する複数の横梁5とを有する。横梁3と横梁5は、ほぼ等間隔に交互に配置される。横梁5のいくつかには、エクステンション(後述)の車輪が載るレール(鋼板)5aが並設けられ溶接により一体化している。レール5aは、OB-Boxの側端から中央付近まで達する。上層と下層の間は、梁同士の接続箇所などにおいて、短い柱6で相互に結合される。横梁3の周辺の空間は、下層の部材が配置されないことによって、下方に開かれていることに気づかれたい。
【0019】
上層では更に、エクステンション(後述)以外のエリアにおいて、OB-Boxの左右両辺の短い縦梁7と、OB-Boxの左右両端を貫通する横梁8とが設けられ、エクステンションの箇所には、下層の横梁5の真上に片持ちの短い横梁9が設けられる。横梁8は、車両の前方および後方側にそれぞれ3本狭い間隔で設けられ、それぞれの中央の2本は横梁3と同様に、対応するブラケットと接合する。狭い間隔なのは、カーブを走行するときにOB-Boxが受けるローリングモーメントや、車両から分離している間の自重を支えるための強度を得るためである。後ろ側の横梁8のさらに後方で、下側骨組み1は下方に大きく張り出して後方下部のスペースを形成する。また下側骨組み1の前端にも、複数の柱10が下層の下に設けられ、後方下部のスペースの下端と同じレベルまで延びている。柱10は少なくともOB-Boxの角に2本配置される。OB-Boxは、柱10と後方下部のスペースを直接地面に置いて、自重を支えることができる。
横梁9はその先端がエクステンションを支える視点となるため、横梁5の間に縦に鋼板を溶接してI梁を構成したりトラス構造にして強化する。下側骨組み1は、溶接後に錆止めやペイント塗装が施される。
【0020】
次にステップS3では、OB-Boxの上側骨組み11を製作する。上側骨組み11は、下側骨組み1同様に、角パイプが格子状に組まれて、OB-Boxの側面(壁)や屋根を形成する。ただし、角パイプは、アルミニウム製である。屋根組みは、屋根に載せる重量物を支え、吊り上げ時の圧縮応力に耐えるよう、強固に作られる。また屋根に水がたまらないように、わずかに傾斜させて設けられる。上側骨組み11の屋根の4隅(4隅の柱の上端)には、吊り上げのためのアイ・ボルトを取り付けるねじ穴が設けられる。上側骨組み11は、下側骨組み1とボルトで固定される。
【0021】
次にステップS4では、OB-Boxに2mm厚のアルミニウム板の外郭を取り付けて、OB-Boxのボディ13を形成する。屋根には4mm厚のアルミ合金板を用いる。下側骨組み1の外郭には、アルミ以外の素材(たとえば耐水合板)が使用されてもよい。この時点で、雨水のドレイン管などを一緒に作りこんでもよい。
【0022】
次にステップS5では、左右のエクステンション15、16を組み立てて、OB-Boxに取り付ける。エクステンションは、抄録現場において、移動スタジオの側方や後方に壁と床が水平方向に張り出して、内部の空間を広げる機構であり、力学上は片持ち梁の構造となる。エクステンション15、16は、上側骨組み11同様に、アルミパイプを格子状に溶接した骨格とアルミ板の外郭を有し、さらに底部には、底部を横断してさらに一方向に突き出した鋼製の横梁17、18を複数備える。下側骨組み1の下層に対応する横梁17は、下側骨組み1に設けられたリニアローラーガイドとそれに嵌合するスライダが取り付けられる。リニアローラーガイドは、テクステンションの展開時及び収納時にそれぞれにおける上向き及び下向きの両方の荷重に耐えることができ、横梁17を水平に保ちながらスライドさせる。下側骨組み1の上層に対応する横梁18は、横梁9の先端に設けられる車輪19bに上側から嵌合するような断面形状を有する。エクステンション15,16は、OB-Box本体にはめ込まれた後、下側骨組み1との間にリニアアクチュエータが複数設けられる。
【0023】
次にステップS6では、防音材、一部の床や内装、ラックを設置し、基本的な電気ケーブルやダクト等の設備の敷設を行う。図2図3に、OB-Box内部の配置図が示される。OB-Box内部は、前方のキャビンと後方の機器スペースの2つに分けられる。機器スペースには、4つの19インチラック21が設置され、ほとんどの機器が集約される。ラックは、扉により大きく開放するOB-Boxの後方およびOB-Box内の両側でラックとして使用でき、機器は基本的にはOB-Boxの外側からアクセスするようにし、OB-Boxの内側ではカメラなどの収納に使うことができる。なおキャビンを防音壁で包む必要があるため、ラックにも防音壁が取り付けられる。キャビンには、車両の側方を向いた9人分の席を設けることができる。電源ラインには、購入者の国の法令を満たす保安設備が設けられる。
【0024】
次にステップS7では、電源、空調、照明機器等の設備を設置し、ドア、後部扉(ハッチ)、窓、電動収納階段、収納(ロッカー)22、水圧ジャッキ等の艤装を取り付け、外装および内装の仕上げを行う。電源はバッテリー(Uninterruptible Power Supply)と、外部電源と接続するための40mのケーブルと、配電盤(connection box)23などからなり、図3図5に示されるように、配電盤以外はOB-Box後方下部のスペースに設置され、後方からアクセスできるようになっている。空調の室外機も後方下部のスペースに配置される。室外機はキャビン(貨物)の前方外側の上寄りに、運転席の上に張り出すように設けることが多いが、本例では運搬を考慮し完全に近い箱型にするため、OB-Boxの内部に設置した。後端中央には、トレーラを連結するためのヒッチが取り付けられる。これによりOB-Boxを載せたトラックは、小型の発電機トレーラなどを牽引して走行できる。
【0025】
またOB-Boxの下部の両側には、階段や収納、空気圧縮機等が設けられ、下側骨組み1の下側に強固に固定される。収納22には、OB-Boxの外側から下開きの蓋(flap)を開けて、三脚や照明機材、バッテリ等をしまうことができる。配電盤23も同様にOB-Boxの外側(望ましくは駐車時に歩道のある側)から下開きの蓋(flap)を設けてアクセスする。ドア、扉、蓋は全て、閉じた状態では密封される構造を有する。配電盤23の蓋は、側方に内側への折り返しが設けられ、雨の吹きこみを防ぐ。
【0026】
配電盤23には、電源以外にも、外部との接続(OB-Box同士のカスケード接続を含む)のための端子が集約されうる。図6に、カスケード接続インタフェース24の模式図が示される。互換性を重視した例では、これらはSDI(Serial Digital Interface)、AES/EBU(同軸またはXLR)、Genlock信号(同軸)、RS−422(RJ-45)をサポートし、カメラ映像、音声、RCP(リモートコントロールパネル)、タリー信号、インターコム、およびその他のコントロールを接続できる。映像や音声などは入力(マスター)と出力(スレーブ)が自動で切り替えられる。SDIやAESは、同じ物理I/F(BNCコネクタ)のままでより上位の伝送(6G−SDIや多チャンネル音声多重)もサポートすることができる。
【0027】
より先進的な例では、これらは全てイーサーネットベースのネットワークで置き換わる。それぞれのプロトコルの間のトラフィックの競合による遅延を防ぐために、基幹ネットワーク自体が映像、音声、およびその他に分けられることが多い。映像は40GBASE-SR4(LCコネクタ)等を使い、AVB(Audio Video Bridging)ネットワーク同士を接続する。40Gbpsの帯域では、4K映像を4チャンネル以上伝送することができる。AVBにはデバイス発見やアドミッション制御の機能があるため、プラグアンドプレイが実現可能である。音声、RCP等の機器制御、インターコムは、それぞれ10GBASEや1000BASEで接続する。或いは波長分割多重を用いて、一本のファイバで接続することもできる。図6に示した例では、3個のopticalCON(商標)コネクタと、1個のXLRコネクタ、2個のSDI同軸コネクタ、1個のシリアル伝送用コネクタ、及び1個のイーサネット用のRJ-45コネクタを備える。
【0028】
エクステンション15、16には、収納状態及び展開状態のそれぞれの位置でOB-Box本体の部材と密着して、雨水の侵入を防ぐ2つのエラストマー製のパッキン(seal ring)が設けられる。水圧ジャッキは、OB-Box下方に設けられ、現地での運用中にOB-Boxを水平に固定するために用いられる。内装としては、ケーブル類を隠すパネルや装飾の取付を行う。
【0029】
次にステップS8では、スタジオ装置(映像音声機器、伝送機器)の設置を行い、所定の動作確認を行う。図2乃至図4に示されるように、右側のエクステンション15は、4人の映像技術者に対面するコンソールになっており、コンソール上にカメラ制御のためのリモコンパネルや、スローモーションを操作する専用のパネルが設けられ、前面の壁には各カメラの映像を個別に表示するための8台のモニタディスプレイが設けられる。左側のエクステンション16は、音声技術者、スイッチャー、ディレクタ、伝送技術者に対面するコンソールになっており、コンソール上に音声ミキシングパネル、スイッチングパネル、編集用PC(パソコン)、管理用PC等が設けられ、前面の壁には編集に必要な情報などを表示する2台のモニタやスピーカが設けられる。
【0030】
図13に示されるように、本例のOB-Boxに搭載される主なスタジオ機器は、電気的に接続される。図13の例では、AVBネットワークを採用しており、大容量のAVBスイッチ108により、キャッシュ&ストレージ110からAVBルータ115までの機器がスター状に接続される。実際には、局所的なトラフィックを処理する小さなAVBスイッチ等が併用され得る。メディアコンバータ107、109は、従来のSDI等の信号を入力され、必要であればJPEG 2000等により圧縮し、AVBに準じたIPパケットとしてネットワークに送り出したり、或いはその逆を行う。ビデオエフェクタ111は、GPU等のプロセッサを搭載し、遷移やレイアウト等の映像効果処理を行う。AVBルータは、他のAVBネットワークと相互接続するための機器である。
【0031】
ステップS9では、電子機器を設定し、完全な動作確認や性能評価を行う。性能評価には、エクステンションの収納状態及び展開状態における防水性や排水機能の試験が含まれうる。
【0032】
ステップS10では、OB-Boxを、シャーシ又はプラットフォームから、輸送用のプラットフォームに乗せ換えて、梱包する。図7に、輸送用のプラットフォーム26に積載されたOB-Boxが示される。輸送用のプラットフォーム26は、OB-Boxとほぼ同じ或いはわずかに大きい幅を有し、望ましくはフォークリフト運搬に対応したパレットである。OB-Boxは、自重をその底面の4隅付近(Box後部に関しては、後方下部スペースの最も前寄りの箇所)支えるので、少なくともその4隅が載ればよい。プラットフォーム26は、そのOB-Box専用に角パイプを格子状に組んで製作されうる。なお、エクステンションなどの可動部や椅子などの家具類、搭載設備の一部は、安全のために固定されるか或いは別々に梱包される。OB-Boxは、プラットフォーム26にベルトで固定され、更にプラットフォーム26は、輸送業者によって、海上輸送可能な20フィートのフラットラックコンテナに載せられて、購入者へ届けられる。
【0033】
[OB-Boxの取り付けの流れ]
ステップS11では、シャーシに設けられた取り付け箇所を確認する。本例のシャーシは、溶接された複数の鋼鉄製の角パイプによりはしご状に形成され、シャーシの左右にそれぞれ6箇所の取り付けポイント1(図9)を有する。各取り付けポイント31は、水平な板状をなし、2つ以上のボルト穴が設けられている。
【0034】
ステップS12では、シャーシの取り付け箇所に基づいて、連結ブラケットを製作する。図8にシャーシとブラケットとの斜視図が示される。6本のブラケット32ー1〜32−6は、レーザーカットされ曲げ加工された一般構造用鋼板(St 37)を溶接して、略C字状の断面を有するチャネルに成形され、側面には、2乃至3点のOB-Boxとの接続面33を有する。なお各ブラケット32の上面、側面、底面は、平面である。車両の最前方と最後方に位置するブラケット32ー1、32−6は、他のブラケットよりも長く、3点の接続面を有する。各接続面33には2つ以上のボルト穴が設けられる。
【0035】
ステップS13では、ブラケット32ー1〜32−6を、顧客のシャーシに載せ、取り付ける。取り付ける前に、シャーシにバリやそのたの障害物がないこと、取り付け面が汚れていないことを確認する。図9に示されるように、取り付けには、M12六角ボルトとナットを用いる。
【0036】
ステップS14では、OB-Boxをクレーンで吊り上げて、ブラケットが取り付けられたシャーシに載せる。まず、車両総重量(gross vehicle mass)を確認し、それにふさわしい空気圧をタイヤが保っているか確認する。次に、図10に示されるように、OB-Boxの上端の4隅に設けられたリフティングポイント(アイ・ボルト)にワイヤーロープを接続し、そのロープをウインチで地上から最低1mの高さに上昇させ、その下に車両を移動させる。なお、OB-Boxにロッカー22が取り付けられている場合、一時的にそれらを取り外した方が作業性がよい場合がある。また車種によっては柱10が最も前よりのブラケットに近接し、車両に載せることが難しい場合があるが、柱10はもう不要な部材であるので切断してもよい。その後OB-Boxを下ろし、接続タブ34と接続面33が合致するように、OB-Boxの下側骨組をブラケット32の上面に載せる。
【0037】
ステップS15では、接続タブ34と接続面をボルト固定する。図11に示されるように、本例では接続タブ34は14箇所あり、図12のようにそれぞれの箇所で複数のM16六角ボルトとナットで固定される。車両の下で横たわった技術者は、全ての接続タブ34にアクセスすることができる。固定後に、ステップS14で取り外したロッカー22を再び取り付ける。
【0038】
最後にステップS16では、固定具やリフティングポイント等の不要となった器具を取り外し、輸送のために取り外されていた衛星リンク等の設備を取り付け、車両との電気配線を行い、動作確認を行う。電気配線は、ブレーキランプや、走行中にエクステンダや水圧ジャッキの動作を制限するための信号、電動収納式階段やベンチレータ用の電源などであり、わずかである。
【0039】
柱10は、当初から備えられなくてもよい。輸送用のプラットフォームに載せる際は、柱10の代わりに、OB-Boxの前側に木製或いは鋼製の臨時の台を配置すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、テレビなどのメディア産業や、コンテンツ制作の分野で用いられる中継車に好適であるが、それに限られず、ドローンやロボットの遠隔操縦のための車両など、様々な特殊用途の艤装車両にも利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1:下側骨組み、 2,4,7:縦梁、 3,5,8,9:横梁、 6,10:柱、
11:上側骨組み、 13:ボディ、
15,16:エクステンション、 17,18:横梁、 19:リニアローラーガイド、 20:車輪、
21、19インチラック、 22:収納、 23:配電盤、
24:カスケード接続インタフェース、
31:取り付けポイント、 32:ブラケット、 33:接続面、 34:接続タブ。
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図13