【実施例】
【0076】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0077】
実施例1
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
(1−1)エンジンバルブの構造
図2(a)に示す構成の吸気用のエンジンバルブ5を作製した。エンジンバルブ5の大きさは、傘部の直径が35.0mmであり、軸部の直径が5.5mmで長さは90.0mmであり、傘部の底面から軸部の頂点まで113.2mmである。
【0078】
エンジンバルブ5の傘部底面11の表面には、
図3に示すように、厚さ1μmのニッケル膜(母材側)と厚さ6μmの鉄膜(多孔質層側)の2層からなる金属質層23を介して、厚さ70μmの多孔質層21が形成されている。多孔質層21は、黒色であり、かつ、材質が結晶質のスピネル型酸化鉄(すなわち、鉄フェライト)であり、その粒子が三次元的に連なって形成されている。
【0079】
(1−2)エンジンバルブの製造
上記エンジンバルブ5は、
図4に示す製造工程に従って作製した。まず、耐熱性ステンレス鋼製材(マルテンサイト系耐熱鋼SUH11:クロム・シリコン含有の炭素鋼)を機械加工し、前記したバルブ5の寸法を有する母材22を用意した(
図4(1))。その母材22の傘部底面のみを残し、その他の部分の表面を樹脂塗料被覆膜24でマスキングした(
図4(2))。
【0080】
傘部底面の表面上に金属質層を電気めっき法によって形成した。まず傘部底面上にニッケルストライク浴を用いて厚さ1μmのニッケルめっき膜を形成した後、直ちに鉄系めっき浴を用いて厚さ6μmの鉄めっき膜をニッケルめっき膜上に形成した。このようにして、ニッケルめっき膜と鉄めっき膜との2層からなる金属質層23を形成した(
図4(3))。
【0081】
続いて、このサンプルの金属質膜23の表面(すなわち、鉄めっき膜表面)に厚さ70μmの多孔質フェライト膜21を形成した(
図4(4))。この場合、多孔質フェライト膜を表面に形成する方法は、以下のようにして実施した。
【0082】
窒素ガス中で蒸留して調製した水800mLに417g(=1.5mol)の硫酸第1鉄(FeSO
4・7H
2O)を溶解した水溶液と、216g(=5.4mol)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液400mLを混合して懸濁液を調製した。この時の懸濁液中において、金属イオン全量に対するアルカリのモル比率は、金属イオン1モルに対して3.6モルであった。
【0083】
次に、内容積2Lのステンレス鋼製の円筒型オートクレーブ反応容器の中に上記懸濁液を注入した。その中に、サンプルを浸漬し、治具を用いて固定した。上記の作業は、窒素ガス雰囲気中で行った。オートクレーブ反応容器中120℃で44時間処理(水熱処理)することによって、サンプルの鉄めっき膜表面と上記懸濁液とを水熱合成反応させた。反応時間経過後、サンプルを治具ごと取り出し、十分に水洗した。このようにして、黒色の多孔質層を形成した。その後、樹脂塗料被覆膜24を除去することによって、本実施例の内燃機関構成部品であるエンジンバルブ5が完成した。なお、処理液組成と水熱合成反応の条件を表1に示す。
【0084】
(2)多孔質層の材料解析
エンジンバルブ5において、所望の多孔質層が形成されているかどうかを確認するため、大きさが長さ50mm×幅20mm×厚さ0.5mmで材質が異なる2種類の長方形状の基板Aと基板Bを用意した。
【0085】
基板Aの材質は、多孔質層に接する金属質層(鉄めっき膜)の組成と同じ純鉄である。基板Aは、組成分析と結晶構造解析のために用いた。ここで、基板としてバルブの母材の材料である耐熱ステンレス鋼(鉄以外にニッケルほか、クロム等の他の金属成分を含む。)を用いなかったのは、多孔質層の下層の材料の影響を受けることなく、材料解析を行うためである。
【0086】
基板Bの材質は、母材22と同じ材質(金属質層としてニッケルめっき膜と鉄めっき膜の複合膜が形成された耐熱性ステンレス鋼)である。基板Bは表面に形成された層の厚みの測定と膜形状の観察に用いた。
【0087】
前記したエンジンバルブ5の場合と同様にして、上記の基板A及び基板Bを同じ反応容器の処理液中に上記のエンジンバルブの母材と一緒に入れ、これらの基板表面にも同時に水熱合成反応に供した。このようにして、エンジンバルブ5とは別途に、2種類の試料を作製した。
【0088】
上記の基板A(純鉄)の上に形成された層を蛍光X線分析装置により組成分析し、さらにCuKα線によるX線回折分析により結晶構造を調べた。組成分析の結果、上記層には鉄のみが検出された。そのX線回折パターンを
図5に示す。
図5の結果から、上記層は、結晶性が高く、格子定数a
0=8.40Åのスピネル型酸化鉄(=鉄フェライト)Fe
3O
4と同定できる結晶相からなる膜であることが確認された。
【0089】
多孔質層の厚さは、多孔質層の成膜前後の基板Bの厚みの差を測定することにより求めた。その結果、形成された多孔質層の厚さは70μmであった。
【0090】
また、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、基板B上に形成された層の表面をそのまま観察した。基板Bについては、長さ50mmの一端から37.5mmの位置で約25度の角度で曲げ、基板からの層の剥離の有無を調べた。目視では、層剥離は観察されなかった。さらに、曲げ試験前後の折り曲げ部分の多孔質層表面の走査型顕微鏡(SEM)観察を行った。それらの走査型電子顕微鏡(SEM)像を
図6に示す。
【0091】
図6(1)には折り曲げ試験前の多孔質層表面を示し、
図6(2)には折り曲げ試験後の多孔質層表面を示す。
図6(1)の結果からも明らかなように、サイズが様々に異なる相似形の複数の結晶粒子からなる多孔質層が形成されていることがわかる。さらに、
図6(1)と
図6(2)との比較から、基板の折り曲げによっても、その折り曲げられた部分の多孔質層は、基板から剥離することはないが、多孔質層を構成するたくさんのクラスターどうしの多孔質層の面内の接合部分が切れて、多孔質層表面はさらにサイズの小さなクラスターに分離していることがわかる。
【0092】
さらに、多孔質層の断面の形状を観察するために、基板Bをもう一枚準備し、上述したエンジンバルブ5への多孔質層の形成に用いた反応容器を用い、同じ処理液を用いて同じ温度120℃で88時間の水熱合成反応を行い、断面観察用の試料を作製した。ここで、膜形成時間を2倍にしたのは、多孔質層を厚くして、金属質層からの上部への膜成長方向の断面形状を観察しやすくするためである。
【0093】
同じ試料を樹脂製円筒容器(内径22mm)に垂直に立てた状態で、透明エポキシ樹脂を流し込み硬化させて樹脂封止し、長さ50mmの基板の一端から25mmの位置で2つに切断した。その断面を1000番の研磨シートを用いて手研磨した。さらに、観察面全面に導電性確保のために、微量のパラジウム膜をスパッタリングで形成して断面観察用試料を作製した。この試料の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。そのSEM像を
図7に示す。
【0094】
図7の結果より、基板Bの母材22の上に配置された金属質層23の表面から樹木のように上方に粒子が連なった個々のクラスター(
図7中の符号a)からなる多孔質膜であることがわかる。そして、各クラスターどうしの間には大きな空間(
図7中の黒い領域)が形成されていることもわかる。しかも、各クラスターどうしの間に形成されている空間は、上方にいくほど大きくなっていることもわかる。
【0095】
すなわち、金属質層(最上層は金属鉄膜)の表面に鉄酸化物の結晶粒子が生えて上方に向かって成長又は増加しているような状態となっており、それらのサイズが様々に異なる略相似形の複数のフェライトの結晶粒子が積み重なって一つのクラスターを形成し、それぞれのクラスター間にも多くの空隙が存在した状態になっていることがわかる。
【0096】
このような構造を有することによって、良好な耐たわみ性も発現される。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。多孔質層の形成時において、多孔質膜の成長に伴い、互いに隣接し合うクラスター間で弱く接合(凝集)している。この場合、母材に機械的な曲げ応力がかかると、前記のクラスター間の弱い接合部分が切断されて、多孔質層が母材のたわみに追従できるようになるので多孔質層の母材からの剥離が抑制される結果、良好な耐たわみ性が発現されるものと推察される。
【0097】
上記に示した材料解析の結果より、本実施例で得られる層は、フェライトセラミック焼結体(熱伝導率は400℃で約3.5W・m
−1・K
−1で、体積比熱は、530℃で5.6J・cm
−3・K
−1)よりも、密度が低く、熱容量が小さいという性質を備えた多孔質構造であることがわかる。
【0098】
(3)断熱性の評価
エンジンバルブ5の断熱性能について、
図8に示す断熱性評価装置31を用い、多孔質層を備えない同形状のバルブの熱伝導特性と比較することによって、その断熱性能を調べた。
【0099】
断熱性を評価するための装置は、被試験用のバルブ32を保持しながら一定温度に加熱するための試験試料加熱機構36と、加熱ヒーターコントローラ33、及びエアーコンプレッサ34に接続されたエアー流量コントローラ35からなる。
【0100】
試験試料加熱機構36は、被試験用バルブ32の傘部底面を熱風で加熱できる構造になっている。測定のために設置される被試験用のバルブ32の傘部底面の直下には加熱ヒーター37が配置されている。被試験用のバルブ32の傘部底面と加熱ヒーター37の間の位置に、加熱ヒーター制御用熱電対38の測温部分が配置されており、加熱ヒーター制御用熱電対38の温度信号で加熱ヒーターコントローラ33が動作して、加熱ヒーター37への投入電力が制御される。その加熱ヒーター37の下部から流量制御されたエアーを流して、設定された一定温度の熱風に変え、被試験用バルブ32の傘部底面を一定温度に加熱する。本実施例では、エアー流量を毎分25リットルに制御し、バルブ32の傘部底面の加熱温度を400℃に設定して試験を実施した。
【0101】
なお、バルブ32の傘部底面から母材22の肉厚が3.5mmの位置に温度測定用熱電対39の測温部が設置されており、測定された表面温度は温度記録計40により記録される。
【0102】
図9に断熱性の評価結果を示す。温度測定用熱電対39によって記録されたバルブ32の傘部上面において、傘部底面から母材22の肉厚が3.5mmの位置における温度を縦軸に、バルブ32の傘部底面を熱風で加熱しはじめてからの経過時間を横軸に示している。被試験用バルブ32として、本実施例の多孔質層を有するバルブ5(図中に(a)で表示)と、比較のために測定した同形状の通常のバルブ(図中に(b)で表示)を用いた。同じ図中に、加熱ヒーター37を制御するために配置した加熱ヒーター制御用熱電対38が測定するバルブ加熱制御温度を一点鎖線で示した。
【0103】
図9から明らかなように、多孔質層21の外気側の母材22の表面に配置した熱電対の測温部分の温度は、多孔質層のないバルブに比べて低い温度を示した。加熱ヒーター37の加熱が始まると、バルブ加熱制御温度、すなわちバルブ32の傘部底面の加熱温度は急速に400℃まで上昇する。その温度上昇に遅れて追従して、経過時間に対してなだらかな曲線を描きながら、バルブ32の傘部上面の温度は上昇する。このとき、熱風によって傘部底面に与えられた熱エネルギーは、バルブ32の母材内部を通じて、傘部上面に伝導される。傘部上面は、常に外気によって冷却されているので、傘部上面の温度は、傘部底面から伝導してきた熱エネルギーが外気への放熱された際のその時点における傘部上面の平衡温度である。バルブにおいては、多孔質層21によって、母材22に伝わる熱エネルギーの伝達が抑えられるために、傘部上面まで母材内部を伝わってきた熱エネルギー量が少なくなって外気への放出が抑えられる。その結果、多孔質層21の外気側の母材22の表面に配置した熱電対の測温部分の温度は、多孔質層のないバルブに比べて低い温度を示すことになる。
【0104】
このように、本発明部品(エンジンバルブ)は、多孔質層のないバルブに比べて、加熱開始から600秒後のほぼ平衡状態で、約6℃のバルブ傘部上面の温度低下が観測できることから、より優れた断熱性能を発揮できることがわかる。
【0105】
(5)耐久性の評価
高温雰囲気下でのエンジンバルブの機械的駆動の耐久性評価のための加速試験(耐久試験)を行った。使用した耐久試験評価装置41は、
図10に示すように、被試験用のバルブ42を設置するバルブ駆動装置43と燃焼バーナー加熱機構44から構成されている。
【0106】
なお、バルブ駆動装置43には、装置の駆動部分を冷却するために水冷機構48が設けられている。バルブ駆動装置43内では、静止時にバルブ42のフェース面はバルブシート45の面に直接に接する位置関係で配置されている。バルブ42は、バルブ上下機構46とバルブ回転機構47により、エンジン内のバルブ開閉動作と類似の動作をする構造になっており、そのため、バルブ駆動時には、特にバルブ42の傘部の周囲は、バルブシート45と激しく当たって、機械的な歪みが加わる環境になる。同時に、燃焼バーナー加熱機構44から噴き出した火炎49によって、バルブ42の傘部底面は、高温に加熱される。従って、本実施例の場合は、多孔質層が傘部底面の全面に配置されているので、本試験においては、傘部底面の多孔質層は、高温雰囲気で断続的な機械的な歪みが加わることになり、エンジン内で起こる可能性のある多孔質層の剥離現象に対する耐久性の加速評価を試験することができる。
【0107】
被試験用バルブ42として、前記した本実施例の多孔質層を有するエンジンバルブ5を用いた。燃焼バーナー加熱機構44では液化天然ガスの燃焼による火炎を用いて傘部底面を400℃に一定に保ち、バルブ上下速度3000rpm、バルブ回転数20rpmの試験条件で、合計50時間まで耐久試験を行った。
【0108】
評価は、耐久試験の装置運転開始から、1、3、5、10、20、30、40時間のそれぞれの経過時に、耐久試験装置41の運転を一時停止し、バルブ42を取り出して室温まで冷却後、傘部底面からの多孔質層(黒色)の剥離状態を目視にて観察することで行った。その後、再び、バルブ42を耐久試験装置41に設置し、次の観察時間まで運転を続けた。耐久試験は、この運転時間の合計が50時間に達するまで繰り返した。その際は、多孔質層表面の全面積に対する剥離部分の面積の百分率を剥離率とし、耐久試験経過時間毎(10時間ごと)に剥離率を算出した。その結果を表3及び
図11に示す。また、a)試験前の多孔質層の外観、b)試験途中5時間後の外観及びc)最終の50時間経過後の外観を観察した。その結果を
図12に示す。
【0109】
なお、比較例1として、従来の多孔質層材料であるジルコニア溶射膜をもつバルブを準備し、同様の耐久試験を行った。この比較例1のバルブは以下のようにして作製した。すなわち、本実施例1で用いたものと同様な材質と形状及び寸法の母材からなるバルブを準備し、その傘部底面に、大気プラズマ溶射法を用いて、ニッケル・クロム・アルミニウム・イットリウム合金の溶射膜からなる接合層としての金属質層を約30μmの厚さで形成し、さらにその上に、同じ大気プラズマ溶射法によって、ジルコニア膜を平均100μmの厚みで積層して被覆することによって、比較例1のバルブを得た。本実施例の多孔質層は黒色のセラミックス膜であるのに対し、比較例1の多孔質層であるジルコニア溶射膜は白色を呈していた。得られたバルブについて、実施例1と同様にして耐久試験を行った。その結果を表4及び
図11に示す。また、多孔質層の外観の変化も実施例1と同様にして観察した。その結果を
図12に示す。
【0110】
実施例1のバルブ(本発明のバルブ)は、耐久試験50時間経過後においても多孔質層の剥離は発生しなかった。これに対し、比較例1のバルブ(比較例のバルブ)は、耐久試験5時間経過後で、
図12に示すように、耐久試験でバルブに最も機械的歪が加わりやすいバルブ傘部周辺の端部にわずかながら剥離が発生し始めていた。耐久試験の時間経過とともに、
図12に示すように、徐々に傘部周辺の端部から内部に向かって剥離が進行していくことがわかる。50時間経過後では、剥離率は20%に達した。以上の結果から、実施例1のエンジンバルブは耐久性に優れていることがわかる。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
実施例2
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
本実施例の多孔質層を有する内燃機関構成部品は、
図2(b)に示す構成の排気用のエンジンバルブ6である。大きさは傘部の直径が29.0mmであり、軸部の直径が5,5mmで長さは80.0mmであり、傘部の底面から軸部の頂点まで105.8mmである。このバルブ6を構成する母材22は、窒化処理によって表面全面に黒灰色の窒化皮膜が形成された耐熱ステンレス鋼(オーステナイト系耐熱鋼SUH35:クロム・ニッケル・マンガン含有の炭素鋼)である。
【0116】
本実施例2のバルブ6については、
図2(b)に示すとおり、傘部底面12、フェース面14を除いた傘部上面16、及び上記の傘部上面16に繋がった切上りR部18のそれぞれの窒化処理された母材22の表面には、実施例1と同様に、厚さ1μmのニッケル膜(母材側)と厚さ4μmの鉄膜(多孔質層側)との2層からなる金属質膜23を介して、厚さ70μmの鉄フェライトの多孔質膜からなる多孔質層21が形成されている。
【0117】
図4に示すように、実施例1と同様にしてバルブを作製した。この際、
図4(2)の工程において、樹脂塗料被覆膜24で被覆した部分のみが異なる。具体的には、フェース部には樹脂塗料被覆膜24で被覆せずに多孔質層を形成し、後に機械加工で多孔質層を除去することにより、フェース面14を作製した。
【0118】
まず、母材22として窒化皮膜を有する耐熱ステンレス鋼を用い、その表面をアルカリ洗浄液で洗浄した後、十分に水洗した。その後、窒化皮膜に剥離部分が無いことを確認し、同時に導電性があることも確認した。次に、上述した部分を樹脂塗料被覆膜24で被覆した。その後、実施例1と同様にして、母材22の表面に、電気めっき法によって、厚さ1μmのニッケルめっき膜を形成し、直ちに厚さ4μmの鉄めっき膜を形成することにより、ニッケルめっき膜と鉄めっき膜の2層からなる金属質層23を形成した。続いて、実施例1と同様にして、膜厚70μmの多孔質層21を形成した。本実施例の処理液組成と水熱合成条件を表1に示す。
【0119】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層21の材料解析を行った。その結果、本実施例の多孔質層21は、実施例1と同様な多孔質膜であり、結晶性が高く、かつ、格子定数a
0=8.40Åのスピネル型結晶構造を有する鉄フェライトに同定できる結晶相からなる膜であることを確認した。また、本実施例の多孔質層21の表面のSEM像を
図16に示す。
【0120】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表3に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0121】
実施例3
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
多孔質層の厚みを230μmとなる条件に設定したほかは、実施例1と同様にしてエンジンバルブを作製した。処理液は、実施例1と同じ組成の懸濁液を用い、120℃で68時間の水熱合成反応を行った。反応時間経過後、母材を治具ごと取り出し、同時に生成した反応残渣の粉体化合物と分離するため、十分に水洗した。このようにして、膜厚110μmの黒色の多孔質フェライト膜を形成した。容器も、同様に生成した反応残渣を取り除くために内部を水洗した。その後、再度、上記と同量の処理液を調合し、再び母材を治具ごと取り付け、120℃で68時間の水熱合成反応を行い(水熱合成反応時間は合計136時間)、最終的に膜厚230μmの多孔質層を形成した。本実施例の処理液組成と水熱合成条件を表1に示す。
【0122】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層の材料解析を行った。その結果、本実施例の多孔質層が実施例1と同様な多孔質膜であり、結晶性が高く、かつ、格子定数a
0=8.40Åのスピネル型結晶構造を有する鉄フェライトからなる膜であることが確認された。本実施例の多孔質層21の表面のSEM像を
図16に示す。
【0123】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表2に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0124】
実施例4
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
本実施例の多孔質層を有する内燃機関構成部品は、実施例1と全く同じ形状のエンジンバルブ5であるが、多孔質層の厚みが350μmである点が異なる。本実施例の多孔質層21は、実施例2で行った120℃で68時間の水熱合成反応の2回繰返した後、さらに同じ組成の処理液を用いて120℃で68時間の反応の1回繰返しを実施することにより形成した(水熱合成反応時間は合計204時間)。処理液組成と水熱合成条件を表1に示す。
【0125】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層21の材料解析を行った。その結果、本実施例の多孔質層が実施例1と同様な多孔質膜であり、結晶性に優れ、かつ、格子定数a
0=8.40Åのスピネル型結晶構造を有する鉄フェライトに同定できる結晶相からなる膜であることが確認された。本実施例の多孔質層21の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を
図16に示す。
【0126】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表3に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0127】
実施例5
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
フェライトセラミックス材料は、鉄成分の一部が別の金属成分で置換された組成の場合、熱伝導率はその置換イオンの種類に依存しないが、高温酸化雰囲気での結晶構造変化が原因で起こる膜剥離を防止できるほか、熱膨張率等の材料的性質を変えることができる。このため、内燃機関構成部品の多孔質層としての複合組成の置換フェライト膜の形成は重要な意義がある。そこで、多孔質層の材質が複合組成のフェライトからなる多孔質層、すなわちスピネル型酸化鉄Fe
3O
4を形成する鉄イオンの一部を各種の金属イオンで置換した置換フェライトの多孔質層を作製した。
【0128】
本実施例では、置換イオンがアルミニウムイオンであるアルミニウムフェライトの多孔質層をもつエンジンバルブを作製した。実施例1と全く同じ形状のエンジンバルブ5である。実施例1とは、多孔質層が厚さ40μmのアルミニウムフェライトの多孔質膜である点が異なる。
【0129】
作製方法は、処理液の組成が異なるほかは実施例1と同様にした。処理液としては、水800mlに334g(=1.2mol)の硫酸第1鉄(FeSO
4・7H
2O)と95g(=0.15mol)の硫酸アルミニウム(Al
2(SO
4)
3・16H
2O)の両方を溶解した水溶液と、216gの水酸化ナトリウム(NaOH)を水400mlに溶解したアルカリ水溶液を混合して得られた懸濁液を用いた。この時、処理液中の金属イオン全量に対するアルカリのモル比率は3.6であった。実施例1と同様の反応容器を用い、予め傘部底面に厚さ1μmのニッケル膜(母材側)と厚さ6μmの鉄膜(多孔質層側)の複合膜からなる金属質層23を形成したサンプルを処理液に浸漬し、120℃で60時間の水熱合成反応を行うことによって、母材表面に膜厚40μmの黒色の多孔質層を形成した。処理液組成と水熱合成条件を表1に示す。
【0130】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層の材料解析を行った。但し、下地の基材が純鉄材であることに起因して、蛍光X線組成分析の際に、基材の成分(鉄)も組成分析値として加算されてしまうため、フェライト膜の正確な組成の定量は困難であった。置換金属イオンがフェライト組成に含まれているか否かの組成の定性分析のみを行った。
【0131】
その結果、鉄とアルミニウムの化合物であることが確認できた。また、X線回折分析により結晶構造を調べた。そのX線回折パターンを
図13に示す。その結果、膜は非常に結晶性が高く、かつ、格子定数a
0=8.35Åのスピネル型結晶構造を有するフェライトのみからなることが確認された。すなわち、形成した多孔質層は、アルミニウムフェライトであることが確認できた。
【0132】
得られた多孔質層の表面のSEM像を
図14に示す。実施例1に比べて、結晶の粒子サイズは約一桁以上小さいが、実施例1と同様の形態の多孔質体になっていて、サイズが異なる相似形の複数の結晶粒子が積み重なって接合して三次元的に繋がって形成された構造を有することがわかる。
【0133】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表3に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0134】
実施例6
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
本実施例では、置換イオンがマグネシウムイオンであるマグネシウムフェライトの多孔質層をもつエンジンバルブを作製した。
【0135】
作製方法は、以下の点を除き、実施例5と同様とした。処理液は、水800mlに334g(=1.2mol)の硫酸第1鉄(FeSO
4・7H
2O)と74g(=0.3mol)の硫酸マグネシウム(MgSO
4・7H
2O)の両方を溶解した水溶液と、216gの水酸化ナトリウム(NaOH)を水400mlに溶解したアルカリ水溶液を混合して得られた懸濁液を用いた。この時、処理液中の金属イオン全量に対するアルカリのモル比率は3.6であった。また、水熱合成反応は、150℃にて72時間で実施した。このようにして多孔質層として膜厚75μmの黒色膜が形成できた。処理液組成と水熱合成条件を表1に示す。
【0136】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層21の材料解析を行った。その結果、得られた黒色膜は、鉄とマグネシウムからなる化合物であって、非常に結晶性が高く、かつ、格子定数a
0=8.36Åのスピネル型結晶構造を有する化合物のみからなることがわかった。すなわち、形成した多孔質層はマグネシウムフェライトであることが確認できた。実施例1に比べ平均の粒子サイズは小さいが、実施例1と類似の形態をしており、サイズが様々に異なる相似形の複数の結晶粒子が積層した状態で接合してクラスターになり、それらが三次元的に繋がって形成される多孔質体であることがわかった。本実施例の多孔質層21の表面のSEM像を
図16に示す。
【0137】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表3に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0138】
実施例7
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
本実施例では、実施例5と同様にして、置換イオンがマンガンイオンであるマンガンフェライトの多孔質層をもつエンジンバルブを作製した。
【0139】
作製方法は、以下の点を変更したほかは、実施例5と同様にした。処理液としては、水800mlに334g(=1.2mol)の硫酸第1鉄(FeSO
4・7H
2O)と72gの硫酸マンガン(MnSO
4・5H
2O)(=0.32mol)の両方を溶解した水溶液と、216gの水酸化ナトリウム(NaOH)を水400mlに溶解したアルカリ水溶液を混合して得られた懸濁液を用いた。この時、懸濁液中の金属イオン全量に対するアルカリのモル比率は3.55であった。水熱合成反応は、135℃にて95時間実施した。このようにして厚み75μmの黒色の多孔質層が形成できた。処理液組成と水熱合成条件を表1に示す。
【0140】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層21の材料解析を行った。その結果、得られた黒色膜は、非常に結晶性が高く、かつ、格子定数a
0=8.41Åのスピネル型結晶構造を有するマンガンフェライトのみからなることが確認された。また、実施例6と同様に平均の粒子サイズは小さいが、実施例1と類似の形態をしており、サイズが様々に異なる相似形の複数の結晶粒子が積層した状態で接合してクラスターになり、それらが三次元的に繋がって形成される多孔質膜であることがわかった。本実施例の多孔質層21の表面のSEM像を
図16に示す。
【0141】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表3に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0142】
実施例8
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
本実施例では、実施例5と同様にして、置換イオンが亜鉛イオンである亜鉛フェライトの多孔質層をもつエンジンバルブを作製した。
【0143】
作製方法は、実施例5と同様であるが、以下の点が異なる。処理液としては、水800mlに334g(=1.2mol)の硫酸第1鉄(FeSO
4・7H
2O)と86g(=0.3mol)の硫酸亜鉛(ZnSO
4・7H
2O)の両方を溶解した水溶液と、216gの水酸化ナトリウム(NaOH)を水400mlの溶解したアルカリ水溶液を混合して得られた懸濁液を用いた。この時、処理液中の金属イオン全量に対するアルカリのモル比率は3.6であった。また、水熱合成反応は、150℃で16時間とした。このようにして厚み65μmの黒色の多孔質層を形成した。処理液組成と水熱合成条件を表2に示す。
【0144】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層21の材料解析を行った。その結果、得られた黒色膜は、非常に結晶性が高く、かつ、格子定数a
0=8.39Åのスピネル型結晶構造を有する亜鉛フェライトのみからなることが確認された。また、多孔質層は実施例1と類似の形態をしており、サイズが様々に異なる相似形の複数の結晶粒子が積層した状態で接合してクラスターになり、それらが三次元的に繋がって形成される多孔質膜であることがわかった。本実施例の多孔質層21の表面のSEM像を
図16に示す。
【0145】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表4に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0146】
実施例9
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
本実施例では、実施例1と比べて、処理液の硫酸鉄濃度が低い合成条件における鉄フェライトの多孔質層をもつエンジンバルブを作製した。なお、母材22として、予め窒化処理によって表面全面に黒灰色の窒化皮膜が形成された耐熱ステンレス鋼を用いた点が異なる。
【0147】
作製方法は、実施例1と同様であるが、以下の点が異なる。二層複合膜の金属質層において、多孔質層側の金属質層が膜厚10μmの鉄めっき膜であることと用いる処理液の組成が異なる。処理液は、水800mlに42g(=0.15mol)の硫酸第1鉄(FeSO
4・7H
2O)と2gのアスコルビン酸の三種を溶解した水溶液と、216gの水酸化ナトリウム(NaOH)を水400mlの溶解したアルカリ水溶液を混合して得られた懸濁液を用いた。本実施例の処理液の金属イオン全量に対するアルカリのモル比率は36であった。実施例1と同様にして水熱合成反応を実施したところ、膜厚65μmの黒色の多孔質膜が得られた。処理液組成と水熱合成条件を表2に示す。
【0148】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層21の材料解析を行った。その結果、膜は非常に結晶性が高く、かつ、格子定数a
0=8.40Åのスピネル型結晶構造を有する鉄フェライトであり、実施例1と同様の形態の多孔質膜であった。本実施例の多孔質層21の表面のSEM像を
図16に示す。
【0149】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表4に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0150】
実施例10
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
多孔質層の厚みが40μmであることが異なるほかは、実施例1と同様にしてエンジンバルブ5を作製した。
【0151】
本実施例の多孔質層21の形成は、水熱合成反応の条件を105℃で68時間としたほかは、実施例1と同様にして実施した。このようにして、厚み40μmの黒色の多孔質層を形成した。処理液組成と水熱合成条件を表2に示す。
【0152】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層21の材料解析を行った。その結果、得られた黒色膜は、非常に結晶性が高く、かつ、格子定数a
0=8.40Åのスピネル型結晶構造を有する鉄フェライトのみからなることが確認された。本実施例の多孔質層は、実施例1と類似の形態の多孔質膜であることがわかった。本実施例の多孔質層21の表面のSEM像を
図16に示す。
【0153】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表4に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0154】
実施例11
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
多孔質層を有するエンジンバルブを作製した。作製方法は、以下の点を除いて実施例1と同様とした。まず、サンプルの二層複合膜の金属質層において、母材側の金属質層が膜厚0.5μmのニッケルめっき膜であることが実施例1と異なる。このようなサンプルを水熱合成反応に供した。この場合の処理液としては、水800mlに298g(=1.5mol)の塩化第1鉄(FeCl
2・4H
2O)を溶解した水溶液と、216gの水酸化ナトリウム(NaOH)を水400mlに溶解した水溶液を混合して得られた懸濁液を用いた。本実施例の金属イオン全量に対するアルカリのモル比率は3.6であった。水熱合成反応の条件を120℃で68時間とした。このようにして、膜厚115μmの黒色の多孔質膜が得られた。処理液組成と水熱合成条件を表2に示す。
【0155】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層21の材料解析を行った。その結果、黒色膜は、非常に結晶性が高く、かつ、格子定数a
0=8.40Åのスピネル型結晶構造を有する鉄フェライトであり、実施例1と同様の形態の多孔質膜であった。本実施例の多孔質層21の表面のSEM像を
図16に示す。
【0156】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表4に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0157】
実施例12
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
金属質層23が厚さ4μmの単層の鉄膜であり、かつ、スパッタリングで形成したこと、多孔質層の厚みが80μmであることが異なるほかは、実施例1と同様のエンジンバルブを作製した。
【0158】
金属質層23として、母材22表面にスパッタ法を用いて金属鉄膜を形成した。スパッタ法に用いた装置は、6インチ径ターゲットを設置できる逆スパッタ機能付の高周波マグネトロンスパッタ装置である。金属鉄のターゲットを設置したスパッタ装置中で、予め鉄膜の形成箇所以外を樹脂マスキングした母材22を基板ホルダに取り付け、真空排気しながら、100℃で1時間加熱した後、さらにスパッタ膜を形成すべき表面に対して、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを用いて、真空度8Paで逆スパッタを行い、表面クリーニングを行った。続いて、金属鉄のターゲットを用いて、真空度0.6Pa、かつスパッタ投入電力2kWで20分間スパッタリングすることにより金属質層23を4μmの厚さで形成した。その後、マスキングを剥離した。さらに、実施例1の
図4(2)の工程で用いた樹脂塗料被覆膜24で金属質層23を除いた部分の表面を被覆した。
【0159】
なお、厚さ4μmの鉄膜である金属質層23を作製するためのスパッタ形成時間については、同じ装置を用い、基板ホルダに取り付けたガラス基板上に成膜時間を変えて形成したそれぞれの膜の厚みと成膜時間の関係の検量線を作成し、その検量線を用いてスパッタ形成時間を決めた。
【0160】
多孔質層21は、実施例1と同様にして作製した。処理液として、窒素ガス中で蒸留して調製した水800mlに487g(=1.75mol)の硫酸第1鉄(FeSO
4・7H
2O)と5gのアスコルビン酸の両方を溶解した水溶液と、216gの水酸化ナトリウム(NaOH)を水400mlに溶解したアルカリ水溶液を混合して得られた懸濁液を用いた。この時、処理液中の金属イオン全量に対するアルカリのモル比率は3.1であった。120℃で48時間の水熱合成反応を行うことによって、膜厚80μmの黒色の多孔質層を形成した。処理液組成と水熱合成条件を表2に示す。
【0161】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層21の材料解析を行った。その結果、本実施例の多孔質層は、実施例1と同様な多孔質膜であり、高い結晶性を有し、格子定数a
0=8.40Åのスピネル型結晶構造を有する鉄フェライトの結晶相のみからなる膜であることが確認された。本実施例の多孔質層21の表面のSEM像を
図16に示す。
【0162】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表4に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0163】
実施例13
(1)多孔質層を有するエンジンバルブ及びその作製
本実施例において、多孔質層を有する内燃機関構成部品は、実施例1に示すものと同寸法のエンジンバルブ5である。但し、実施例1とは、次の点において異なる。第1には、その母材22の組成は炭素鋼であるところが異なる。第2には、金属質層22が存在せずに、多孔質層23が母材22の表面に接して直接に厚さ80μmの多孔質層21が形成されていることが異なる。
【0164】
実施例1と同じ処理液を用い、120℃で48時間の水熱合成反応を実施することにより、実施例1と同様にして黒色の多孔質層22を形成した。処理液組成と水熱合成条件を表2に示す。
【0165】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層21の材料解析を行った。その結果、本実施例の多孔質層は、実施例1と同様な多孔質膜であり、高い結晶性を有し、かつ、格子定数a
0=8.40Åのスピネル型結晶構造の鉄フェライトのみからなることが確認された。本実施例の多孔質層21の表面のSEM像を
図16に示す。
【0166】
(3)耐久性の評価
実施例1の「(5)耐久性の評価」と同様にして、耐久試験を実施した。その結果を表4に示す。この結果からも明らかなように、耐久試験50時間経過後においても実施例1と同様に多孔質層の剥離は認められなかった。
【0167】
実施例14
(1)多孔質層を有するエンジンピストン及びその作製
本実施例において、本発明の多孔質層を有する内燃機関構成部品は、
図15に示す構成のピストン7である。大きさは、直径79mm×高さ35mmであり、このピストン7を構成する母材22の材料は鋳鉄である。
【0168】
本実施例のピストン7の頂面には、
図15に示すとおり、直接に厚さ80μmの多孔質層21が配置されている。上記の多孔質層21は、実施例1と同様のフェライトの多孔質膜である。
【0169】
多孔質層の形成は次のようにして実施した。まずピストンの母材を準備し、ピストン頂面のみを残し、その他の部分の表面を樹脂塗料被覆膜で被覆した。続いて、実施例1に示したものと同じ処理液を用い、120℃で48時間の水熱合成反応を行うことによって、前記頂面部に黒色膜からなる多孔質層22を実施例1と同様にして形成した。処理液組成と水熱合成条件を表2に示す。最後に樹脂塗料被覆膜を剥離し、頂面に膜厚80μmの多孔質層を設けたピストン7を作製した。
【0170】
(2)多孔質層の材料解析
実施例1の「(2)多孔質層の材料解析」と同様にして、得られた多孔質層21の材料解析を行った。その結果、本実施例の多孔質層は、実施例13と同様、格子定数a
0=8.40Åの高い結晶性を有するスピネル型結晶構造の鉄フェライトのみからなる多孔質膜であった。すなわち、結晶質の鉄フェライトであり、その結晶粒子が樹枝状に三次元的に連なって形成されている多孔質膜であった。本実施例の多孔質層21の表面のSEM像を
図16に示す。