【課題を解決するための手段】
【0013】
特定の一態様において、薄膜強誘電体デバイスを製造する方法を開示する。当該方法は、(a)有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が第一表面とその反対側の第二表面とを有するように、当該前駆体材料を第一導電性材料の上に被着させるステップであって、当該前駆体材料の第一表面が、第一導電性材料に接触する、ステップと;(b)第二導電性材料を当該前駆体材料の第二表面上に被着させてスタックを形成するステップであって、当該前駆体材料が、少なくとも部分的に第一導電性材料と第二導電性材料の間に配置されるステップと;(c)当該スタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことによって、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(d)当該スタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含む。いくつかの態様において、当該製造された薄膜強誘電体デバイスは、1Hzの低さにおいて測定可能である分極対電界(P−E)ヒステリシスループを示す。本発明のある特定の態様において、ステップ(c)における第一温度は、167℃から200℃または175℃から185℃であり得、ならびにステップ(d)における第二温度は、100℃から167℃未満または145℃から155℃であり得る。いくつかの態様において、ステップ(c)および(d)は連続しており、それにより、ステップ(c)におけるスタックが第一温度から第二温度へと冷却される。当該スタックは、(i)1分から60分、10分から50分、または20分から30分において第一温度に晒され得て、(ii)10分から70分、20分から60分、または30分から50分において第二温度に晒され得る。一態様において、当該前駆体材料は、ステップ(c)の前に、55分を超えない熱処理、好ましくは30分を超えない熱処理、より好ましくは5分を超えない熱処理を施され、最も好ましくは、それ以前いかなる熱処理も施されていない。当該ポリマー性強誘電体前駆体材料は、ステップ(c)を実施する前に溶媒に溶解させることができ、当該溶媒は、強誘電体ヒステリシス特性を有するポリマー性強誘電体材料を作製するためにステップ(c)において実質的に除去される。いくつかの態様において、ステップ(c)において前駆体材料中に結晶相が形成され、それにより、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料が形成される。別の方法において、当該前駆体材料は、ステップ(c)を実施する前に結晶形態または半結晶形態ではなく、強誘電体ヒステリシス特性を有する当該ポリマー性強誘電体材料は、ステップ(c)を実施した後、結晶形態または半結晶形態である。ステップ(c)において得られた当該強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料に界面亀裂が存在する場合、当該亀裂は、ステップ(d)において実質的に除去することができ、それにより、当該強誘電体材料におけるリーク電流を、ステップ(c)において得られる強誘電体材料と比較して減少させることができる。本発明のいくつかの態様において、ステップ(a)および(b)における前駆体材料は、強誘電体ヒステリシス特性を示さない。ステップ(a)における有機ポリマー性強誘電体前駆体材料は、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ロールツーロールコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、押出コーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット、ロータリースクリーン、フラットスクリーン、インクジェット、レーザーアブレーション、またはそれらの任意の組み合わせによって、第一導電性材料上に被着させることができる。当該前駆体材料は、ステップ(a)において、1μm未満の厚さを有するフィルムとして被着することができ、結果として得られる、ステップ(d)における有機ポリマー性強誘電体材料は、1μm未満の厚さを有するフィルムの形態である。本発明のいくつかの態様において、第一または第二導電性材料あるはその両方は、それぞれ個別に、金属、金属酸化物、または金属合金などの導電体を含み得る。当該金属は、白金、金、アルミニウム、銀、ケイ素、または銅、それらの金属酸化物、またはそれらの任意の組み合わせもしくは合金を含み得る。別の態様において、当該第二導電性材料は、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ロールツーロールコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、または押出コーティングによって、ステップ(b)において前駆体材料上に被着させることができる。本発明の一態様において、当該第一および第二導電性材料は、ステップ(a)から(d)の間に、引張応力を受けない。本発明の別の態様において、ステップ(a)のポリマー性強誘電体前駆体材料において、硬化剤は全く使用されないかまたは含まれない。他の態様において、当該金属は、他の既知の薄膜製造プロセスによって被着させることもできる。強誘電体ヒステリシス特性を有する当該有機ポリマー性強誘電体材料において、架橋は実質的に生じない。
【0014】
本発明のいくつかの態様において、ステップ(a)および(d)は、ロールツーロールプロセスにおいて実施することができる。ロールツーロール法は、(i)ロールから巻きを解かれた基材を得るステップと;(ii)当該基材の表面の少なくとも一部の上に第一導電性材料を被着させるステップと;(iii)当該第一導電性材料の表面の少なくとも一部の上に前駆体材料を被着させるステップであって、強誘電体前駆体材料が、第一表面と、その反対側の、第一導電性材料に接触する第二表面とを有する、ステップと;(iv)当該前駆体材料の当該反対側の表面の少なくとも一部の上に第二導電性材料を被着させてスタックを形成するステップと;(v)当該スタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことによって、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(vi)当該加熱されたスタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含み得る。一態様において、ステップ(ii)および(vi)は、100m
2/s以下の速度において実施される。
【0015】
本発明の別の態様において、薄膜強誘電体デバイスを製造する方法は、(a)第一導電性材料と、第二導電性材料と、少なくとも部分的に当該第一導電性材料と第二導電性材料との間における有機ポリマー性強誘電体前駆体材料とを含むスタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことによって、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(b)当該スタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体キャパシタまたは薄膜トランジスタを得るステップと、を含む。
【0016】
本発明の他の態様において、本明細書中で説明される方法を用いて、薄い強誘電体デバイスが製造される。当該強誘電体デバイスは、第一導電性材料および第二導電性材料を含み得る。当該強誘電体デバイスの少なくとも一部は、第一導電性材料の少なくとも一部と、第二導電性材料の少なくとも一部との間にある。いくつかの態様において、当該強誘電体デバイスは、柔軟な基材および柔軟でない基材、例えば、シリコン、プラスチック、または紙など、の上に位置することができる。当該薄膜強誘電体デバイスは、薄膜キャパシタ、薄膜トランジスタ、または薄膜ダイオードであり得る。
【0017】
いくつかの態様において、当該ポリマー性強誘電体前駆体材料は、強誘電体ポリマーを含み得る。本発明のいくつかの態様において、当該前駆体材料は、強誘電体ポリマーおよび無機材料を含む。当該強誘電体ポリマーは、PVDFベースのポリマーまたはPVDFベースのポリマーを含むもののブレンドであり得る。当該PVDFベースのポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、またはターポリマー、あるいはそれらのブレンドであり得る。本発明のいくつかの態様において、当該PVDFは、180kg/molから534kg/molまで変わる分子量を有し得る。本発明のいくつかの態様において、当該ポリマー性強誘電体前駆体材料は、ポリウンデカノアミド(ナイロン−11)ベースのポリマーまたはそれらのブレンドを含み得る。当該PVDFベースのポリマーは、非PVDFポリマー、例えば、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリスチレン(PS)、またはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、あるいはそれらのブレンドなど、とブレンドされ得る。PVDFベースのポリマーとしては、PVDF、ポリ(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン)(PVDF−TrFE)、もしくはポリ(ビニリデンフルオリド−co−ヘキサフルオロプロペン)(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロフルオロエチレン)(PVDF−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−CDFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−TrFE−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CDFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−coクロロフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−TFE−HFP)、およびポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CDFE)、またはそれらのポリマー性ブレンド、より好ましくは、PVDF、PVDF−TrFE、またはPVDF−TrFE−CtFEが挙げられる。いくつかの態様において、強誘電体ヒステリシス特性を有する当該強誘電体層は、無機層、例えば、PZT(Pb(Zr
xTi
1−x)O
3)、BaTiO
3、または組み合わせであり得る。特定の態様において、強誘電体ヒステリシス特性を有する当該強誘電体層は、5nmから1000nmの厚さを有する。
【0018】
本発明の別の態様において、本発明の強誘電体デバイスは、電子デバイス、プリント回路基板、または集積回路において使用することができる。例えば、本発明の強誘電体デバイスは、電子デバイス、プリント回路基板、または集積回路の通信回路、センシング回路、または制御回路の少なくとも一部に含めることができる。当該回路は、圧電センサー、圧電トランスデューサ、圧電アクチュエータ、焦電センサー、焦電トランスデューサ、または焦電アクチュエータであり得る。さらに、本発明の強誘電体材料もしくは強誘電体デバイスを含む電子デバイスも想到される。
【0019】
本発明のさらなる実施形態において、本発明の強誘電体デバイスによって電源供給から回路をデカップリングする方法を開示する。当該方法は、強誘電体デバイスを電源電圧線と接地電圧線との間に配設するステップであって、当該強誘電体デバイスが電源電圧線および接地電圧線にカップリングされ、ならびに電源電圧および接地電圧によって生じる電力ノイズの減少が達成される、ステップを含み得る。
【0020】
さらに、本発明の強誘電体デバイスを含むエネルギー貯蔵回路を作動させるための方法も開示し、これは、一次電源からの電力が利用できない場合に消費デバイスに電力を供給する。当該方法は、(1)当該強誘電体デバイスのための目標エネルギーレベルを定義するステップであって、当該目標エネルギーレベルが、当該強誘電体材料中での第二ポリマーにおける選択された材料重量百分率に基づく、ステップと;(2)当該デバイスを充電するステップと;(3)充電の間に当該強誘電体デバイスに貯蔵されたエネルギーの第一量を測定するステップと;(4)当該強誘電体デバイスに貯蔵されたエネルギーの第一量が目標のエネルギーレベルに達した場合、当該デバイスの充電を停止するステップと;(5)一次電源からの電力が利用できなくなった場合などに、消費デバイスへと当該デバイスを放電させるステップと、を含み得る。
【0021】
本発明の別の態様において、本発明の強誘電体デバイスを使用して圧電センサー、圧電トランスデューサ、または圧電アクチュエータを作動させる方法を開示する。本発明のいくつかの態様において、本発明の強誘電体デバイスを使用して焦電センサー、焦電トランスデューサ、または焦電アクチュエータを作動させる方法を開示する。焦電センサーの例としては、受動型赤外線検出器、赤外線撮像アレイ、指紋センサーが挙げられる。
【0022】
本発明に関連して、実施形態1から48も開示する。実施形態1は、薄膜強誘電体デバイスを製造する方法である。当該方法は、(a)有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が第一表面とその反対側の第二表面とを有するように、当該前駆体材料を第一導電性材料の上に被着させるステップであって、当該前駆体材料の第一表面が、第一導電性材料に接触する、ステップと;(b)第二導電性材料を当該前駆体材料の第二表面上に被着させてスタックを形成するステップであって、当該前駆体材料が、少なくとも部分的に第一導電性材料と第二導電性材料の間に配置されるステップと;(c)当該スタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことによって、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(d)当該スタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含む。実施形態2は、薄膜強誘電体デバイスを得るステップが、強誘電体キャパシタ、トランジスタ、ダイオード、圧電デバイス、焦電デバイス、またはそれらの任意の組み合わせを製造するステップを含む、実施形態1に記載の方法である。実施形態3は、ステップ(c)における第一温度が、167℃から200℃であり、ステップ(d)における第二温度が、100℃から167℃未満である、実施形態1〜2のいずれか一つに記載の方法である。実施形態4は、ステップ(c)における第一温度が、175℃から185℃であり、ステップ(d)における第二温度が、145℃から155℃未満である、実施形態3に記載の方法である。実施形態5は、ステップ(c)および(d)が連続しており、それにより、ステップ(c)におけるスタックが上記第一温度から上記第二温度へと冷却される、実施形態1〜4のいずれか一つに記載の方法である。実施形態6は、上記スタックが、(i)1分から60分において上記第一温度に晒され、ならびに(ii)10分から70分において上記第二温度に晒される、実施形態1〜5のいずれか一つに記載の方法である。実施形態7は、ステップ(a)における有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ロールツーロールコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、押出コーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット、ロータリースクリーン、フラットスクリーン、インクジェット、レーザーアブレーション、またはそれらの任意の組み合わせによって、第一導電性材料上に被着される、実施形態1〜6のいずれか一つに記載の方法である。実施形態8は、上記第二導電性材料が、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ロールツーロールコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、押出コーティング、またはそれらの任意の組み合わせによって、ステップ(b)において前駆体材料上に被着される、実施形態1〜7のいずれか一つに記載の方法である。実施形態9は、上記前駆体材料が、ステップ(a)において1μm未満の厚さを有するフィルムとして被着され、結果として得られるステップ(d)の有機ポリマー性強誘電体材料が、1μm未満の厚さを有するフィルムの形態である、実施形態1〜8のいずれか一つに記載の方法である。実施形態10は、上記前駆体材料が、ステップ(c)の前に、55分を超えて、好ましくは30分を超えて、より好ましくは5分を超えて熱処理を施されておらず、最も好ましくは、それ以前にいかなる熱処理も施されていない、実施形態1〜9のいずれか一つに記載の方法である。実施形態11は、上記第一および第二導電性材料が、ステップ(a)から(d)の間に引張応力を受けない、実施形態1〜10のいずれか一つに記載の方法である。実施形態12は、ステップ(a)および(b)における前駆体材料が、強誘電体ヒステリシス特性を示さない、実施形態1〜11のいずれか一つに記載の方法である。実施形態13は、結晶相がステップ(c)において上記前駆体材料中に形成され、それにより、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料が形成される、実施形態1〜12のいずれか一つに記載の方法である。実施形態14は、ステップ(c)において得られた強誘電体ヒステリシス特性を有する上記有機ポリマー性強誘電体材料に存在する界面亀裂が、ステップ(d)において実質的に除去され、それにより、当該強誘電体材料におけるリーク電流が、ステップ(c)において得られた上記強誘電体材料と比較して減少する、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の方法である。実施形態15は、上記製造された薄膜強誘電体デバイスが、1Hzの低さにおいて測定可能である分極対電界(P−E)ヒステリシスループを示す、実施形態1〜14のいずれか一つに記載の方法である。実施形態16は、上記前駆体材料が、ステップ(c)を実施する前には結晶形態または半結晶形態ではなく、強誘電体ヒステリシス特性を有する上記ポリマー性強誘電体材料が、ステップ(c)を実施した後に、結晶形態または半結晶形態である、実施形態1〜15のいずれか一つに記載の方法である。実施形態17は、上記ポリマー性強誘電体前駆体材料が、ステップ(c)を実施する前に溶媒に溶解され、当該溶媒が、強誘電体ヒステリシス特性を有する当該ポリマー性強誘電体材料を作製するためにステップ(c)において実質的に除去される、実施形態1〜16のいずれか一つに記載の方法である。実施形態18は、ステップ(a)における上記ポリマー性強誘電体前駆体材料が強誘電体ポリマーを含む、実施形態1〜17のいずれか一つに記載の方法である。実施形態19は、上記強誘電体ポリマーが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ベースのポリマーまたはPVDFベースのポリマーを含むブレンドである、実施形態18に記載の方法である。実施形態20は、上記PVDFベースのポリマーが、ホモポリマー、コポリマー、またはターポリマー、あるいはそれらのブレンドである、実施形態19に記載の方法である。実施形態21は、上記PVDFが、180kg/molから534kg/molまで変わる分子量を有し得る、実施形態19に記載の方法である。実施形態22は、上記PVDFベースのポリマーが非PVDFベースのポリマーとブレンドされる、実施形態19〜20のいずれか一つに記載の方法である。実施形態23は、上記非PVDFポリマーが、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリスチレン(PS)、またはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、あるいはそれらのブレンドである、実施形態22に記載の方法である。実施形態24は、上記PVDFベースのポリマーが、PVDF、ポリ(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン)(PVDF−TrFE)、もしくはポリ(ビニリデンフルオリド−co−ヘキサフルオロプロペン)(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロフルオロエチレン)(PVDF−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−CDFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−TrFE−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CDFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−クロロフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−TFE−HFP)、およびポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CDFE)、またはそれらのポリマー性ブレンドである、実施形態19〜23のいずれか一つに記載の方法である。実施形態25は、ステップ(a)から(d)がロールツーロールプロセスにおいて実施される、実施形態1〜24のいずれか一つに記載の方法である。実施形態26は、さらに、(i)ロールから巻きを解かれた基材を得るステップと;(ii)当該基材の表面の少なくとも一部の上に第一導電性材料を被着させるステップと;(iii)当該第一導電性材料の表面の少なくとも一部の上に前駆体材料を被着させるステップであって、強誘電体前駆体材料が、第一表面と、その反対側の、第一導電性材料に接触する第二表面とを有する、ステップと;(iv)当該前駆体材料の当該反対側の表面の少なくとも一部の上に第二導電性材料を被着させてスタックを形成するステップと;(v)当該スタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことによって、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(vi)当該スタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含む、実施形態25に記載の方法である。実施形態27は、ステップ(ii)および(vi)が、100m
2/s以下の速度において実施される、実施形態25に記載の方法である。実施形態28は、ステップ(a)における上記ポリマー性強誘電体前駆体材料に、硬化剤が全く使用されないかまたは含まれない、実施形態1〜26のいずれか一つに記載の方法である。実施形態29は、強誘電体ヒステリシス特性を有する当該有機ポリマー性強誘電体材料において、架橋が実質的に生じない、実施形態1〜27のいずれか一つに記載の方法である。実施形態30は、上記前駆体材料が、強誘電体ポリマーおよび無機材料を含む、実施形態1〜28のいずれか一つに記載の方法である。実施形態31は、上記第一または第二導電性材料、あるいはその両方が、それぞれ個別に金属を含む、実施形態1〜29のいずれか一つに記載の方法である。実施形態32は、上記金属が、白金、金、アルミニウム、銀、ケイ素、または銅、それらの金属酸化物、あるいはそれらの任意の組み合わせまたは合金である、実施形態31に記載の方法である。
【0023】
実施形態33は、薄膜強誘電体デバイスを製造する方法である。当該方法は、(a)第一導電性材料と、第二導電性材料と、少なくとも部分的に当該第一および第二導電性材料の間における有機ポリマー性強誘電体前駆体材料とを含むスタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことにより、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(b)当該スタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって、当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含む。
【0024】
実施形態34は、上記強誘電体デバイスが、第一導電性材料および第二導電性材料を含み、上記強誘電体材料の少なくとも一部が、当該第一導電性材料の少なくとも一部と当該第二導電性材料の少なくとも一部との間にある、実施形態1〜32に記載の方法のいずれか一つによって製造された強誘電体デバイスである。実施形態35は、上記強誘電体デバイスが基材上に構成される、実施形態34に記載の強誘電体デバイスである。実施形態36は、上記基材が、シリコン、プラスチック、または紙を含む、実施形態35に記載の強誘電体デバイスである。
【0025】
実施形態37は、実施形態1〜33のいずれか一つに記載の方法によって製造された強誘電体材料または実施形態34〜36のいずれか一つに記載の強誘電体デバイスを含む、プリント回路基板である。
【0026】
実施形態38は、上記強誘電体デバイスが、通信回路、センシング回路、または制御回路の少なくとも一部に構成される、実施形態37に記載のプリント回路基板である。
【0027】
実施形態39は、実施形態34〜36のいずれか一つに記載の強誘電体デバイスを含む集積回路である。実施形態40は、上記強誘電体デバイスが、通信回路、センシング回路、または制御回路の少なくとも一部に構成される、実施形態39に記載の集積回路である。
【0028】
実施形態41は、実施形態34〜36のいずれか一つに記載の強誘電体デバイスを含む電子デバイスである。
【0029】
実施形態42は、実施形態34〜36のいずれか一つに記載の薄膜強誘電体デバイスを含む不揮発性メモリセルに対してデータの読み込みおよび復元を行う方法である。当該方法は、(i)上記強誘電体デバイスに電圧を印加するステップと;(ii)所定の量まで当該電圧を増加させるステップと;(iii)当該電圧を増加させた結果として生じた電荷信号を検出するステップであって、少なくともある特定の最小振幅を有する電荷信号が、第一二値論理レベルを表す、以前に設定された分極状態での変化を示す、ステップと;(iv)分極状態が変わった場合に、当該強誘電体デバイスに印加される電圧の極性を変えることによって、当該強誘電体デバイスにおける当該以前に設定された分極状態を復元するステップと、を含む。
【0030】
実施形態43は、実施形態34〜36のいずれか一つに記載の強誘電体デバイスを含む不揮発性メモリセルに書き込みを行う方法である。当該方法は、(i)上記強誘電体デバイスに電圧を印加するステップと;(ii)所定の量まで当該電圧を増加させるステップと;(iii)当該電圧を増加させた結果として生じた電荷信号を検出するステップであって、少なくともある特定の最小振幅を有する電荷信号が、第二二値論理レベルを表す第二分極状態の変化を示す、ステップと;(iv)当該メモリセルが当該第二二値論理レベルを表す場合に、当該第二分極状態を維持するステップと;(v)メモリセルが第一二値論理レベルを表す場合に、当該強誘電体デバイスに印加する電圧の極性を変えることによって、第一二値論理レベルを表す第一分極状態を復元するステップと、を含む。
【0031】
実施携帯44は、実施形態34〜36に記載の強誘電体デバイスのいずれか一つによって、電力供給から回路をデカップリングする方法である。当該方法は、当該強誘電体デバイスを電源電圧線と接地電圧線との間に配設するステップであって、当該強誘電体デバイスが、電源電圧線および接地電圧線にカップリングされ、ならびに電源電圧および接地電圧によって生じる電力ノイズの減少が達成される、ステップを含む。
【0032】
実施形態45は、一次電源からの電力が利用できない場合に消費デバイスに電力を供給する、実施形態34〜36に記載の強誘電体デバイスのいずれか一つを含むエネルギー貯蔵回路を作動させる方法である。当該方法は、(i)強誘電体デバイスに対する目標エネルギーレベルを定義するステップと;(ii)当該強誘電体デバイスを充電するステップと;(iii)充電の間に当該強誘電体デバイスに貯蔵されたエネルギーの第一量を測定するステップと;(iv)当該デバイスまたは薄膜トランジスタに貯蔵されたエネルギーの第一量が目標のエネルギーレベルに達した場合、当該強誘電体デバイスの充電を停止するステップと;(v)一次電源からの電力が利用できない場合に、消費デバイスへと当該強誘電体デバイスを放電させるステップと、を含む。
【0033】
実施形態46は、実施形態34〜36に記載の強誘電体デバイスのいずれか一つを使用して、圧電センサー、圧電トランスデューサ、および圧電アクチュエータを作動させる方法である。
【0034】
実施形態47は、実施形態34〜36に記載の強誘電体デバイスのいずれか一つを使用して、焦電センサー、焦電トランスデューサ、および焦電アクチュエータを作動させる方法である。実施形態48は、上記焦電センサーが、受動型赤外線検出器、赤外線撮像アレイ、指紋センサーを含む、実施形態47に記載の方法である。
【0035】
用語「電極」は、本発明に関連して使用される場合、ある構成要素に電気接触点を提供するために当該構成要素にカップリングされた導電性材料を意味する。例えば、ある特定の実施形態において、デバイスは、絶縁体材料、例えば強誘電体層など、の両側に二つの電極を有し得る。
【0036】
用語「下側」または「下部」電極は、本発明との関連において使用される場合、支持基材に最も近い構成要素の側に配置された電極を意味する。
【0037】
用語「上側」または「上部」電極は、本発明との関連において使用される場合、支持基材から最も遠い構成要素の側に配置された電極を意味する。「下部電極」および「上部電極」は、ここで定義されて本開示中において説明されるが、当該用語は、デバイスが支持基材から分離している場合などにおいて相互交換可能である。
【0038】
用語「強誘電体前駆体材料」は、ゼロ印加電界において残留電界分極を維持するなど、強誘電体ヒステリシス特性を示す可能性を有する有機および無機の両方の全ての材料を包含する。一例として、(α)相PVDFは、(α)相から(β)相、(γ)相、または(δ)相への相転移によって強誘電体ヒステリシス特性を示す可能性を有する。
【0039】
語句「低い比誘電率」は、ポリマーについて言及する場合、4以下の相対誘電率を有するポリマーを包含する。
【0040】
用語「引張強度」は、破壊するまでに材料が耐えることができる応力および/または変形の量を意味する。例えば、導電性材料がそれらが壊れるまで耐えることができる圧力または屈曲の量。
【0041】
語句「ポリマーブレンド」は、ポリマーブレンドを製造するためのいずれかの既知の技術によって一緒にブレンドされている少なくとも二種のポリマーを含む。そのような技術としては、共通の溶媒を使用する溶液ブレンド法、あるいは、成分がポリマーの融点を超える温度においてブレンドされ、それに続いて、当該得られた混合物が、粒状物へと、または直接シート状へと、または任意の他の好適な形状へと押し出される溶融ブレンド押出が挙げられる。ポリマーを溶融ブレンドするために、一般的に、スクリュー式押出機または粉砕機が使用される。当該ポリマーのブレンドが、本発明の強誘電体材料を製作するプロセスの前またはプロセス中にホモジナイズプロセスを受けるのであれば、当該ブレンドは、単純な粉末ブレンドであってもよいことも理解されるであろう。したがって、例えば、強誘電体材料が、スクリュー供給型射出成形機において少なくとも二種のポリマーから形成される場合、ブレンドは当該射出成型機のスクリュー部分において達成され得るので、スクリューのホッパーへの供給材料は、当該二種のポリマーの単純混合物であってもよい。
【0042】
用語「ポリマー」は、オリゴマー(例えば、2から10のモノマー性ユニットまたは2から5のモノマー性ユニットを有するポリマー)およびポリマー(例えば、10を超えるモノマー性ユニットを有するポリマー)を包含する。
【0043】
用語「約」または「およそ」は、当業者によって理解されているように、〜に近い、として定義され、非限定的な一実施形態において、当該用語は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0044】
用語「実質的に」およびその変形は、当業者によって理解されているように、ほとんど指定されているものであるが必ずしも完全にそうであるわけではない、として定義され、非限定的な一実施形態において、実質的には、10%以内、5%以内、1%以内、または0.5%以内の範囲を意味する。
【0045】
用語「抑制すること」または「減じること」または「防ぐこと」または「避けること」またはそれらの用語の変形は、本請求項および/または本明細書において使用される場合、所望の結果を達成するための任意の測定可能な減少または完全な抑制を包含する。
【0046】
用語「効果的な」は、本明細書および/または本請求項において使用される場合、所望の結果、期待される結果、または意図される結果を達成するために適切であることを意味する。
【0047】
単語「一つの(「a」または「an」)」の使用は、本請求項または本明細書において「含む(「comprising」)」なる用語と共に使用される場合、「一つ(「one」)」を意味し得るが、「一つまたは複数(「one or more」)」、「少なくとも一つ(「at least one」)」、および「一つまたはそれ以上(「one or more than one」)」の意味とも一致する。
【0048】
単語「を含むこと(「comprising」)」(およびその任意の形態、例えば、「comprise」および「comprises」)、「を有すること(「having」)」(およびその任意の形態、例えば、「have」および「has」)、「を含むこと(including)」(およびその任意の形態、例えば、「includes」および「include」)、あるいは「を含有すること(「containing」)」(およびその任意の形態、例えば、「contains」および「contain」)は、包括的またはオープンエンド形式であり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを排除しない。
【0049】
本発明の強誘電体デバイスは、本明細書中において開示される特定の原料成分、構成要素、組成物など「を含む」、「から実質的になる」、または「からなる」ことができる。移行部「から実質的になる」に関して、非限定的な一態様において、当該強誘電体デバイスの基本的で新規の特徴は、当該強誘電体デバイスが、温度サイクルを受けている強誘電体層を有し、当該温度サイクルにより、強誘電体材料が強誘電体ヒステリシス特性を有し、ならびに高密度化され、それにより印加電圧下での安定した作動が促進されることである。
【0050】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の図、詳細な説明、および実施例から明かとなるであろう。しかしながら、当該図、詳細な説明、および実施例は、本発明の特定の実施形態を示しつつも、例示のためだけに与えられているに過ぎず、限定することを意図するのではないことは理解されるべきである。さらに、本発明の趣旨および範囲内での変化および変更は、この詳細な説明から当業者には明かとなるであろうことも想到される。さらなる態様において、特定の態様からの特徴は、他の態様からの特徴と組み合わせることができる。例えば、一態様からの特徴は、いずれかの他の態様からの特徴と組み合わせることができる。