特許第6366824号(P6366824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366824二段階温度プロセスを使用した薄膜強誘電体デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366824
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】二段階温度プロセスを使用した薄膜強誘電体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/1159 20170101AFI20180723BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20180723BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20180723BHJP
   H01L 37/02 20060101ALI20180723BHJP
   H01G 4/33 20060101ALI20180723BHJP
   H01G 4/14 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H01L27/1159
   H01L41/09
   H01L41/113
   H01L37/02
   H01G4/33 102
   H01G4/14
【請求項の数】20
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-513515(P2017-513515)
(86)(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公表番号】特表2017-535065(P2017-535065A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】US2015034126
(87)【国際公開番号】WO2016039831
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2017年3月10日
(31)【優先権主張番号】62/047,787
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジ,ホオン
(72)【発明者】
【氏名】アルシャリーフ,フサム,エヌ
(72)【発明者】
【氏名】オデー,イハブ,エヌ
(72)【発明者】
【氏名】カン,モード,エイ
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/104345(WO,A1)
【文献】 特開2014−152238(JP,A)
【文献】 特開昭56−126912(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/104196(WO,A1)
【文献】 特表2011−508963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/1159
H01G 4/14
H01G 4/33
H01L 37/02
H01L 41/09
H01L 41/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜強誘電体デバイスを製造する方法であって、
(a)有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が第一表面とその反対側の第二表面とを有するように、該有機ポリマー性強誘電体前駆体材料を第一導電性材料の上に被着させるステップであって、該有機ポリマー性強誘電体前駆体材料の該第一表面が、該第一導電性材料に接触する、ステップと
(b)第二導電性材料を該有機ポリマー性強誘電体前駆体材料の該第二表面上に被着させてスタックを形成するステップであって、該有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が、少なくとも部分的に該第一導電性材料と該第二導電性材料の間に配置されるステップと
(c)該スタックを、該有機ポリマー性強誘電体前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことによって、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと
(d)該スタックを、該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって、該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含み、
ステップ(c)における前記第一温度が、167℃から200℃であり、かつステップ(d)における前記第二温度が、100℃から167℃未満である方法。
【請求項2】
薄膜強誘電体デバイスを得るステップが、強誘電体キャパシタ、トランジスタ、ダイオード、圧電デバイス、焦電デバイス、またはそれらの任意の組み合わせを製造するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)における前記第一温度が、175℃から185℃であり、かつステップ(d)における前記第二温度が、145℃から155℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)および(d)が連続しており、それにより、ステップ(c)における前記スタックが前記第一温度から前記第二温度へと冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スタックが、(i)1分から60分において前記第一温度に晒され、かつ(ii)10分から70分において前記第二温度に晒される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が、ステップ(a)において1μm未満の厚さを有するフィルムとして被着され、結果として得られるステップ(d)の前記有機ポリマー性強誘電体材料が、1μm未満の厚さを有するフィルムの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機ポリマー性強誘電体前駆体材料に対して、ステップ(c)の前に、55分を超えない熱処理を施し、又は、ステップ(c)の前にいかなる熱処理も施さない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第一および第二導電性材料が、ステップ(a)から(d)の間に引張応力を受けない、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)および(b)における前記有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が、強誘電体ヒステリシス特性を示さない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
結晶相がステップ(c)において前記有機ポリマー性強誘電体前駆体材料中に形成され、それにより、強誘電体ヒステリシス特性を有する前記有機ポリマー性強誘電体材料が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)において得られた強誘電体ヒステリシス特性を有する前記有機ポリマー性強誘電体材料に存在する界面亀裂が、ステップ(d)において実質的に除去され、それにより、該強誘電体材料におけるリーク電流が、ステップ(c)において得られた該強誘電体材料と比較して減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記製造された薄膜強誘電体デバイスが、1Hzの低さにおいて測定可能である分極対電界(P−E)ヒステリシスループを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が、ステップ(c)を実施する前には結晶形態または半結晶形態ではなく、強誘電体ヒステリシス特性を有する前記ポリマー性強誘電体材料が、ステップ(c)を実施した後に、結晶形態または半結晶形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が、ステップ(c)を実施する前に溶媒に溶解され、該溶媒が、強誘電体ヒステリシス特性を有する該ポリマー性強誘電体材料を作製するためにステップ(c)において実質的に除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(a)における前記有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が強誘電体ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(a)から(d)がロールツーロールプロセスにおいて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
薄膜強誘電体デバイスを製造する方法であって、
(a)第一導電性材料と、第二導電性材料と、少なくとも部分的に該第一および第二導電性材料の間における有機ポリマー性強誘電体前駆体材料とを含むスタックを、該有機ポリマー性強誘電体前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことにより、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと
(b)該スタックを、該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって、該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含み、
ステップ(a)における前記第一温度が、167℃から200℃であり、かつステップ(b)における前記第二温度が、100℃から167℃未満である方法。
【請求項18】
請求項1〜17に記載の方法のいずれか一つによって製造される強誘電体デバイスであって、該強誘電体デバイスが、第一導電性材料および第二導電性材料を含み、該強誘電体材料の少なくとも一部が、該第一導電性材料の少なくとも一部と該第二導電性材料の少なくとも一部との間にある、強誘電体デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の強誘電体デバイスのいずれか一つを使用して、圧電センサー、圧電トランスデューサ、および圧電アクチュエータを作動させる方法。
【請求項20】
請求項18に記載の強誘電体デバイスのいずれか一つを使用して、焦電センサー、焦電トランスデューサ、および焦電アクチュエータを作動させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
A.発明の分野
本発明は、概して、制御された二段階熱アニール処理プロセスにより、強誘電体フィルム膜(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)ベースのフィルム)およびメモリデバイスを製造する方法に関する。
【0002】
B.関連分野の説明
メモリシステムは、データ、プログラムコード、および/または他の情報を多くの電気製品、例えば、パーソナルコンピュータシステム、組み込み式のプロセッサベースのシステム、ビデオ画像処理回路、携帯電話など、に保存するために使用される。電子デバイスのメモリセルにとって重要な特性は、低コスト、不揮発性、高密度、ライタビリティ、低電力、および高速性である。従来のメモリソリューションとしては、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)、電気的プログラマブルメモリ(EPROM)、電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、およびスタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)が挙げられる。
【0003】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2014年9月9日に「METHODS FOR PRODUCING A THIN FILM FERROELECTRIC DEVICE USING A TWO−STEP TEMPERATURE PROCESS」の名称で出願された米国特許仮出願第62/047,787号に対する利益を主張するものである。なお、参照された当該特許出願の内容全体は、参照により本出願に組み入れられる。
【背景技術】
【0004】
より最近では、強磁性体RAM(FRAM、登録商標)が試みられている。FRAM(登録商標)は、不揮発性メモリセルを生成するために、強誘電体キャパシタ、薄膜トランジスタ、またはダイオードの強磁性体領域またはフィルムを用いている。そのような電子デバイスは、強誘電体ポリマー層によって離間された二つの平行な導電性プレートを用いて製作される。当該強誘電体ポリマー層は、反対の電界によって繰り返し逆転させることができる永久的電気分極を有する絶縁性フィルムの層である。その結果、当該強誘電体キャパシタ、薄膜トランジスタ、またはダイオードは、二つの可能な不揮発性状態を有し、この二つの不揮発性状態は、電力を用いずに維持することができ、デジタルメモリにおける二つの二値論理レベルに対応する。さらに、強誘電体キャパシタ、トランジスタ、またはダイオードはさらに、エネルギー貯蔵機能も提供する。当該プレート間に電圧が印加されると、強誘電体材料における電界が電荷を移動させ、それによってエネルギーを貯蔵する。貯蔵されるエネルギーの量は、絶縁性材料の比誘電率および当該フィルムの寸法(総面積および厚さ)に依存する。
【0005】
典型的には、その大きな分極値ならびに電気特性および材料特性により、強誘電体材料としてポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)タイプのポリマーまたはコポリマー(例えば、PVDFとトリフルオロエチレン(TrFe)のコポリマー(PVDF−TrFe))が使用される。PVDFタイプのポリマーは、フィルムの形態および様々な形状において製造することができ、高い耐薬品性と、機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する際の高い効率とを有するため、電子デバイスにとって魅力的である。PVDFは、5つの異なる多形体(相とも呼ばれる)であるアルファ(α)、ベータ(β)、ガンマ(γ)、デルタ(δ)、およびイプシロン(ε)を有し、当該多形体のうちで最も一般的なものは、アルファ(α)多形体である。アルファ多形体は、強誘電体特性をほとんどまたは全く示さないが、その一方で、残りの相は、より強い強誘電体特性を示し、ベータ多形体が最も好ましい。
【0006】
様々な技術を用いて、アルファ多形体をより望ましい多形体へと転化させる多くの試みが為されてきた。しかしながら、現在利用可能なプロセスは、依然として二つの問題を抱えている。一つは、溶液プロセス(例えば、スピンコーティング)を用いたPVDFの被着およびアニール処理の後、結果として得られるPVDFフィルムは、多くの場合、望ましい(β)相ではなく、常誘電性の(α)相を示す。二つ目は、アニール処理の後も、決まってナノサイズの亀裂がPVDFフィルムに発生し、これが、電圧印加下でのフィルムの安定な動作に有害である。
【0007】
例えば、KangのApplied Physics Letters, 2008, Vol. 92, pp. 012921−3(非特許文献1)には、150℃での一段階急速アニール処理プロセスについて記載されている。しかしながら、結果として得られるフィルムは、(α)および(β)PVDF結晶の微細パターンを示しており、決して望ましいとは言えない転移プロセスが確認された。
【0008】
中国特許出願公開第103113602号(特許文献1)および米国特許第6,514,835号(特許文献2)ではそれぞれ、アニール処理プロセスの間にPVDF材料に圧力または応力を加えることによって、常誘電性(α)相/(β)相転移を取り扱うことを試みているが、それによって、フィルム形成プロセスが複雑になっている。
【0009】
それに対して、米国特許第8,120,082号(特許文献3)では、加熱および冷却によって相転移問題を解決することを試みている。特に、当該PVDF材料を第一温度に加熱し、続いて連続的に所定の温度まで冷却することにより、強誘電体フィルムの(β)相を実現し、次いで、続いて急速に冷却することにより(60℃から70℃)、当該フィルムを(β)相に固定させている。しかしながら、結果として得られるフィルムにおけるナノサイズの亀裂形成に関連する問題を解決する試みは全く為されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国特許出願公開第103113602号
【特許文献2】米国特許第6,514,835号
【特許文献3】米国特許第8,120,082号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Kang, Applied Physics Letters, 2008, Vol. 92, pp. 012921−3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
メモリデバイスに使用される強誘電体フィルムの乏しい耐久性に関連する問題に対する解決策は特定されている。当該解決策は、結果として得られる材料における界面の空隙または亀裂を減少または除去しつつ、強誘電体前駆体材料(例えば、(α)相PVDF)が、強誘電体ヒステリシス特性を有する材料(例えば、(γ)相PVDFまたは(β)相PVDF)へ転移することを可能にするような、当該前駆体材料の制御された熱アニール処理プロセスの使用に存する。当該プロセスは、第一段階を含み、これは、好ましくは上部導電性材料(例えば、電極)の被着後に実施され、ならびに強誘電体ヒステリシス特性を有する材料への当該前駆体材料の相転移を達成するのに十分な期間において、有機ポリマー性強誘電体前駆体材料をその融点より高い温度に加熱するステップを含む(PVDFベースのフィルムの場合、例えば、167℃から200℃で1分から60分)。当該第一段階の後に第二段階が続き、当該第二段階は、当該材料の高密度化を達成するのに十分な期間において当該材料をその融点より低い温度に冷却するステップを含み、これは、当該製造された材料内における界面空隙を減少または除去する(例えば、100℃から167℃未満で10分から70分)。理論に束縛されることを望むわけではないが、第一アニール処理段階は、強誘電体ヒステリシス特性(例えば、PVDFγモルホロジー)を有する材料への前駆体材料の十分な転移を可能にし、その一方で、第二段階は、強誘電体ヒステリシス特性を維持しつつ、当該材料の表面の界面空隙または亀裂を除去または減少するための当該材料の高密度化を可能にすると考えられる。とりわけ、この熱アニール処理プロセスは、電子デバイスが構築された後であって強誘電体材料の相転移の前に実施することができる(例えば、第一導電層、強誘電体前駆体層、および第二導電層のスタックであって当該前駆体層が導電層の間に配置されているスタックに、本発明のプロセスを施すことができる)。さらに、強誘電体材料の追加の機械的引き伸ばしも、急速冷却などの追加の温度段階も必要なく、したがって、強誘電体電子デバイス(例えば、キャパシタ、トランジスタ、ダイオード、圧電素子、焦電素子など)を作製するための簡潔で効率的なプロセスが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特定の一態様において、薄膜強誘電体デバイスを製造する方法を開示する。当該方法は、(a)有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が第一表面とその反対側の第二表面とを有するように、当該前駆体材料を第一導電性材料の上に被着させるステップであって、当該前駆体材料の第一表面が、第一導電性材料に接触する、ステップと;(b)第二導電性材料を当該前駆体材料の第二表面上に被着させてスタックを形成するステップであって、当該前駆体材料が、少なくとも部分的に第一導電性材料と第二導電性材料の間に配置されるステップと;(c)当該スタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことによって、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(d)当該スタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含む。いくつかの態様において、当該製造された薄膜強誘電体デバイスは、1Hzの低さにおいて測定可能である分極対電界(P−E)ヒステリシスループを示す。本発明のある特定の態様において、ステップ(c)における第一温度は、167℃から200℃または175℃から185℃であり得、ならびにステップ(d)における第二温度は、100℃から167℃未満または145℃から155℃であり得る。いくつかの態様において、ステップ(c)および(d)は連続しており、それにより、ステップ(c)におけるスタックが第一温度から第二温度へと冷却される。当該スタックは、(i)1分から60分、10分から50分、または20分から30分において第一温度に晒され得て、(ii)10分から70分、20分から60分、または30分から50分において第二温度に晒され得る。一態様において、当該前駆体材料は、ステップ(c)の前に、55分を超えない熱処理、好ましくは30分を超えない熱処理、より好ましくは5分を超えない熱処理を施され、最も好ましくは、それ以前いかなる熱処理も施されていない。当該ポリマー性強誘電体前駆体材料は、ステップ(c)を実施する前に溶媒に溶解させることができ、当該溶媒は、強誘電体ヒステリシス特性を有するポリマー性強誘電体材料を作製するためにステップ(c)において実質的に除去される。いくつかの態様において、ステップ(c)において前駆体材料中に結晶相が形成され、それにより、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料が形成される。別の方法において、当該前駆体材料は、ステップ(c)を実施する前に結晶形態または半結晶形態ではなく、強誘電体ヒステリシス特性を有する当該ポリマー性強誘電体材料は、ステップ(c)を実施した後、結晶形態または半結晶形態である。ステップ(c)において得られた当該強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料に界面亀裂が存在する場合、当該亀裂は、ステップ(d)において実質的に除去することができ、それにより、当該強誘電体材料におけるリーク電流を、ステップ(c)において得られる強誘電体材料と比較して減少させることができる。本発明のいくつかの態様において、ステップ(a)および(b)における前駆体材料は、強誘電体ヒステリシス特性を示さない。ステップ(a)における有機ポリマー性強誘電体前駆体材料は、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ロールツーロールコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、押出コーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット、ロータリースクリーン、フラットスクリーン、インクジェット、レーザーアブレーション、またはそれらの任意の組み合わせによって、第一導電性材料上に被着させることができる。当該前駆体材料は、ステップ(a)において、1μm未満の厚さを有するフィルムとして被着することができ、結果として得られる、ステップ(d)における有機ポリマー性強誘電体材料は、1μm未満の厚さを有するフィルムの形態である。本発明のいくつかの態様において、第一または第二導電性材料あるはその両方は、それぞれ個別に、金属、金属酸化物、または金属合金などの導電体を含み得る。当該金属は、白金、金、アルミニウム、銀、ケイ素、または銅、それらの金属酸化物、またはそれらの任意の組み合わせもしくは合金を含み得る。別の態様において、当該第二導電性材料は、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ロールツーロールコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、または押出コーティングによって、ステップ(b)において前駆体材料上に被着させることができる。本発明の一態様において、当該第一および第二導電性材料は、ステップ(a)から(d)の間に、引張応力を受けない。本発明の別の態様において、ステップ(a)のポリマー性強誘電体前駆体材料において、硬化剤は全く使用されないかまたは含まれない。他の態様において、当該金属は、他の既知の薄膜製造プロセスによって被着させることもできる。強誘電体ヒステリシス特性を有する当該有機ポリマー性強誘電体材料において、架橋は実質的に生じない。
【0014】
本発明のいくつかの態様において、ステップ(a)および(d)は、ロールツーロールプロセスにおいて実施することができる。ロールツーロール法は、(i)ロールから巻きを解かれた基材を得るステップと;(ii)当該基材の表面の少なくとも一部の上に第一導電性材料を被着させるステップと;(iii)当該第一導電性材料の表面の少なくとも一部の上に前駆体材料を被着させるステップであって、強誘電体前駆体材料が、第一表面と、その反対側の、第一導電性材料に接触する第二表面とを有する、ステップと;(iv)当該前駆体材料の当該反対側の表面の少なくとも一部の上に第二導電性材料を被着させてスタックを形成するステップと;(v)当該スタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことによって、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(vi)当該加熱されたスタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含み得る。一態様において、ステップ(ii)および(vi)は、100m/s以下の速度において実施される。
【0015】
本発明の別の態様において、薄膜強誘電体デバイスを製造する方法は、(a)第一導電性材料と、第二導電性材料と、少なくとも部分的に当該第一導電性材料と第二導電性材料との間における有機ポリマー性強誘電体前駆体材料とを含むスタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことによって、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(b)当該スタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体キャパシタまたは薄膜トランジスタを得るステップと、を含む。
【0016】
本発明の他の態様において、本明細書中で説明される方法を用いて、薄い強誘電体デバイスが製造される。当該強誘電体デバイスは、第一導電性材料および第二導電性材料を含み得る。当該強誘電体デバイスの少なくとも一部は、第一導電性材料の少なくとも一部と、第二導電性材料の少なくとも一部との間にある。いくつかの態様において、当該強誘電体デバイスは、柔軟な基材および柔軟でない基材、例えば、シリコン、プラスチック、または紙など、の上に位置することができる。当該薄膜強誘電体デバイスは、薄膜キャパシタ、薄膜トランジスタ、または薄膜ダイオードであり得る。
【0017】
いくつかの態様において、当該ポリマー性強誘電体前駆体材料は、強誘電体ポリマーを含み得る。本発明のいくつかの態様において、当該前駆体材料は、強誘電体ポリマーおよび無機材料を含む。当該強誘電体ポリマーは、PVDFベースのポリマーまたはPVDFベースのポリマーを含むもののブレンドであり得る。当該PVDFベースのポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、またはターポリマー、あるいはそれらのブレンドであり得る。本発明のいくつかの態様において、当該PVDFは、180kg/molから534kg/molまで変わる分子量を有し得る。本発明のいくつかの態様において、当該ポリマー性強誘電体前駆体材料は、ポリウンデカノアミド(ナイロン−11)ベースのポリマーまたはそれらのブレンドを含み得る。当該PVDFベースのポリマーは、非PVDFポリマー、例えば、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリスチレン(PS)、またはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、あるいはそれらのブレンドなど、とブレンドされ得る。PVDFベースのポリマーとしては、PVDF、ポリ(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン)(PVDF−TrFE)、もしくはポリ(ビニリデンフルオリド−co−ヘキサフルオロプロペン)(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロフルオロエチレン)(PVDF−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−CDFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−TrFE−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CDFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−coクロロフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−TFE−HFP)、およびポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CDFE)、またはそれらのポリマー性ブレンド、より好ましくは、PVDF、PVDF−TrFE、またはPVDF−TrFE−CtFEが挙げられる。いくつかの態様において、強誘電体ヒステリシス特性を有する当該強誘電体層は、無機層、例えば、PZT(Pb(ZrTi1−x)O)、BaTiO、または組み合わせであり得る。特定の態様において、強誘電体ヒステリシス特性を有する当該強誘電体層は、5nmから1000nmの厚さを有する。
【0018】
本発明の別の態様において、本発明の強誘電体デバイスは、電子デバイス、プリント回路基板、または集積回路において使用することができる。例えば、本発明の強誘電体デバイスは、電子デバイス、プリント回路基板、または集積回路の通信回路、センシング回路、または制御回路の少なくとも一部に含めることができる。当該回路は、圧電センサー、圧電トランスデューサ、圧電アクチュエータ、焦電センサー、焦電トランスデューサ、または焦電アクチュエータであり得る。さらに、本発明の強誘電体材料もしくは強誘電体デバイスを含む電子デバイスも想到される。
【0019】
本発明のさらなる実施形態において、本発明の強誘電体デバイスによって電源供給から回路をデカップリングする方法を開示する。当該方法は、強誘電体デバイスを電源電圧線と接地電圧線との間に配設するステップであって、当該強誘電体デバイスが電源電圧線および接地電圧線にカップリングされ、ならびに電源電圧および接地電圧によって生じる電力ノイズの減少が達成される、ステップを含み得る。
【0020】
さらに、本発明の強誘電体デバイスを含むエネルギー貯蔵回路を作動させるための方法も開示し、これは、一次電源からの電力が利用できない場合に消費デバイスに電力を供給する。当該方法は、(1)当該強誘電体デバイスのための目標エネルギーレベルを定義するステップであって、当該目標エネルギーレベルが、当該強誘電体材料中での第二ポリマーにおける選択された材料重量百分率に基づく、ステップと;(2)当該デバイスを充電するステップと;(3)充電の間に当該強誘電体デバイスに貯蔵されたエネルギーの第一量を測定するステップと;(4)当該強誘電体デバイスに貯蔵されたエネルギーの第一量が目標のエネルギーレベルに達した場合、当該デバイスの充電を停止するステップと;(5)一次電源からの電力が利用できなくなった場合などに、消費デバイスへと当該デバイスを放電させるステップと、を含み得る。
【0021】
本発明の別の態様において、本発明の強誘電体デバイスを使用して圧電センサー、圧電トランスデューサ、または圧電アクチュエータを作動させる方法を開示する。本発明のいくつかの態様において、本発明の強誘電体デバイスを使用して焦電センサー、焦電トランスデューサ、または焦電アクチュエータを作動させる方法を開示する。焦電センサーの例としては、受動型赤外線検出器、赤外線撮像アレイ、指紋センサーが挙げられる。
【0022】
本発明に関連して、実施形態1から48も開示する。実施形態1は、薄膜強誘電体デバイスを製造する方法である。当該方法は、(a)有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が第一表面とその反対側の第二表面とを有するように、当該前駆体材料を第一導電性材料の上に被着させるステップであって、当該前駆体材料の第一表面が、第一導電性材料に接触する、ステップと;(b)第二導電性材料を当該前駆体材料の第二表面上に被着させてスタックを形成するステップであって、当該前駆体材料が、少なくとも部分的に第一導電性材料と第二導電性材料の間に配置されるステップと;(c)当該スタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことによって、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(d)当該スタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含む。実施形態2は、薄膜強誘電体デバイスを得るステップが、強誘電体キャパシタ、トランジスタ、ダイオード、圧電デバイス、焦電デバイス、またはそれらの任意の組み合わせを製造するステップを含む、実施形態1に記載の方法である。実施形態3は、ステップ(c)における第一温度が、167℃から200℃であり、ステップ(d)における第二温度が、100℃から167℃未満である、実施形態1〜2のいずれか一つに記載の方法である。実施形態4は、ステップ(c)における第一温度が、175℃から185℃であり、ステップ(d)における第二温度が、145℃から155℃未満である、実施形態3に記載の方法である。実施形態5は、ステップ(c)および(d)が連続しており、それにより、ステップ(c)におけるスタックが上記第一温度から上記第二温度へと冷却される、実施形態1〜4のいずれか一つに記載の方法である。実施形態6は、上記スタックが、(i)1分から60分において上記第一温度に晒され、ならびに(ii)10分から70分において上記第二温度に晒される、実施形態1〜5のいずれか一つに記載の方法である。実施形態7は、ステップ(a)における有機ポリマー性強誘電体前駆体材料が、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ロールツーロールコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、押出コーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット、ロータリースクリーン、フラットスクリーン、インクジェット、レーザーアブレーション、またはそれらの任意の組み合わせによって、第一導電性材料上に被着される、実施形態1〜6のいずれか一つに記載の方法である。実施形態8は、上記第二導電性材料が、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ロールツーロールコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、押出コーティング、またはそれらの任意の組み合わせによって、ステップ(b)において前駆体材料上に被着される、実施形態1〜7のいずれか一つに記載の方法である。実施形態9は、上記前駆体材料が、ステップ(a)において1μm未満の厚さを有するフィルムとして被着され、結果として得られるステップ(d)の有機ポリマー性強誘電体材料が、1μm未満の厚さを有するフィルムの形態である、実施形態1〜8のいずれか一つに記載の方法である。実施形態10は、上記前駆体材料が、ステップ(c)の前に、55分を超えて、好ましくは30分を超えて、より好ましくは5分を超えて熱処理を施されておらず、最も好ましくは、それ以前にいかなる熱処理も施されていない、実施形態1〜9のいずれか一つに記載の方法である。実施形態11は、上記第一および第二導電性材料が、ステップ(a)から(d)の間に引張応力を受けない、実施形態1〜10のいずれか一つに記載の方法である。実施形態12は、ステップ(a)および(b)における前駆体材料が、強誘電体ヒステリシス特性を示さない、実施形態1〜11のいずれか一つに記載の方法である。実施形態13は、結晶相がステップ(c)において上記前駆体材料中に形成され、それにより、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料が形成される、実施形態1〜12のいずれか一つに記載の方法である。実施形態14は、ステップ(c)において得られた強誘電体ヒステリシス特性を有する上記有機ポリマー性強誘電体材料に存在する界面亀裂が、ステップ(d)において実質的に除去され、それにより、当該強誘電体材料におけるリーク電流が、ステップ(c)において得られた上記強誘電体材料と比較して減少する、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の方法である。実施形態15は、上記製造された薄膜強誘電体デバイスが、1Hzの低さにおいて測定可能である分極対電界(P−E)ヒステリシスループを示す、実施形態1〜14のいずれか一つに記載の方法である。実施形態16は、上記前駆体材料が、ステップ(c)を実施する前には結晶形態または半結晶形態ではなく、強誘電体ヒステリシス特性を有する上記ポリマー性強誘電体材料が、ステップ(c)を実施した後に、結晶形態または半結晶形態である、実施形態1〜15のいずれか一つに記載の方法である。実施形態17は、上記ポリマー性強誘電体前駆体材料が、ステップ(c)を実施する前に溶媒に溶解され、当該溶媒が、強誘電体ヒステリシス特性を有する当該ポリマー性強誘電体材料を作製するためにステップ(c)において実質的に除去される、実施形態1〜16のいずれか一つに記載の方法である。実施形態18は、ステップ(a)における上記ポリマー性強誘電体前駆体材料が強誘電体ポリマーを含む、実施形態1〜17のいずれか一つに記載の方法である。実施形態19は、上記強誘電体ポリマーが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ベースのポリマーまたはPVDFベースのポリマーを含むブレンドである、実施形態18に記載の方法である。実施形態20は、上記PVDFベースのポリマーが、ホモポリマー、コポリマー、またはターポリマー、あるいはそれらのブレンドである、実施形態19に記載の方法である。実施形態21は、上記PVDFが、180kg/molから534kg/molまで変わる分子量を有し得る、実施形態19に記載の方法である。実施形態22は、上記PVDFベースのポリマーが非PVDFベースのポリマーとブレンドされる、実施形態19〜20のいずれか一つに記載の方法である。実施形態23は、上記非PVDFポリマーが、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリスチレン(PS)、またはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、あるいはそれらのブレンドである、実施形態22に記載の方法である。実施形態24は、上記PVDFベースのポリマーが、PVDF、ポリ(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン)(PVDF−TrFE)、もしくはポリ(ビニリデンフルオリド−co−ヘキサフルオロプロペン)(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロフルオロエチレン)(PVDF−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−CDFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−TrFE−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−トリフルオロエチレン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CDFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−クロロフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−TFE−HFP)、およびポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン−co−クロロジフルオロエチレン)(PVDF−TFE−CDFE)、またはそれらのポリマー性ブレンドである、実施形態19〜23のいずれか一つに記載の方法である。実施形態25は、ステップ(a)から(d)がロールツーロールプロセスにおいて実施される、実施形態1〜24のいずれか一つに記載の方法である。実施形態26は、さらに、(i)ロールから巻きを解かれた基材を得るステップと;(ii)当該基材の表面の少なくとも一部の上に第一導電性材料を被着させるステップと;(iii)当該第一導電性材料の表面の少なくとも一部の上に前駆体材料を被着させるステップであって、強誘電体前駆体材料が、第一表面と、その反対側の、第一導電性材料に接触する第二表面とを有する、ステップと;(iv)当該前駆体材料の当該反対側の表面の少なくとも一部の上に第二導電性材料を被着させてスタックを形成するステップと;(v)当該スタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことによって、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(vi)当該スタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含む、実施形態25に記載の方法である。実施形態27は、ステップ(ii)および(vi)が、100m/s以下の速度において実施される、実施形態25に記載の方法である。実施形態28は、ステップ(a)における上記ポリマー性強誘電体前駆体材料に、硬化剤が全く使用されないかまたは含まれない、実施形態1〜26のいずれか一つに記載の方法である。実施形態29は、強誘電体ヒステリシス特性を有する当該有機ポリマー性強誘電体材料において、架橋が実質的に生じない、実施形態1〜27のいずれか一つに記載の方法である。実施形態30は、上記前駆体材料が、強誘電体ポリマーおよび無機材料を含む、実施形態1〜28のいずれか一つに記載の方法である。実施形態31は、上記第一または第二導電性材料、あるいはその両方が、それぞれ個別に金属を含む、実施形態1〜29のいずれか一つに記載の方法である。実施形態32は、上記金属が、白金、金、アルミニウム、銀、ケイ素、または銅、それらの金属酸化物、あるいはそれらの任意の組み合わせまたは合金である、実施形態31に記載の方法である。
【0023】
実施形態33は、薄膜強誘電体デバイスを製造する方法である。当該方法は、(a)第一導電性材料と、第二導電性材料と、少なくとも部分的に当該第一および第二導電性材料の間における有機ポリマー性強誘電体前駆体材料とを含むスタックを、当該前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に晒すことにより、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成するステップと;(b)当該スタックを、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に晒すことによって、当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化して薄膜強誘電体デバイスを得るステップと、を含む。
【0024】
実施形態34は、上記強誘電体デバイスが、第一導電性材料および第二導電性材料を含み、上記強誘電体材料の少なくとも一部が、当該第一導電性材料の少なくとも一部と当該第二導電性材料の少なくとも一部との間にある、実施形態1〜32に記載の方法のいずれか一つによって製造された強誘電体デバイスである。実施形態35は、上記強誘電体デバイスが基材上に構成される、実施形態34に記載の強誘電体デバイスである。実施形態36は、上記基材が、シリコン、プラスチック、または紙を含む、実施形態35に記載の強誘電体デバイスである。
【0025】
実施形態37は、実施形態1〜33のいずれか一つに記載の方法によって製造された強誘電体材料または実施形態34〜36のいずれか一つに記載の強誘電体デバイスを含む、プリント回路基板である。
【0026】
実施形態38は、上記強誘電体デバイスが、通信回路、センシング回路、または制御回路の少なくとも一部に構成される、実施形態37に記載のプリント回路基板である。
【0027】
実施形態39は、実施形態34〜36のいずれか一つに記載の強誘電体デバイスを含む集積回路である。実施形態40は、上記強誘電体デバイスが、通信回路、センシング回路、または制御回路の少なくとも一部に構成される、実施形態39に記載の集積回路である。
【0028】
実施形態41は、実施形態34〜36のいずれか一つに記載の強誘電体デバイスを含む電子デバイスである。
【0029】
実施形態42は、実施形態34〜36のいずれか一つに記載の薄膜強誘電体デバイスを含む不揮発性メモリセルに対してデータの読み込みおよび復元を行う方法である。当該方法は、(i)上記強誘電体デバイスに電圧を印加するステップと;(ii)所定の量まで当該電圧を増加させるステップと;(iii)当該電圧を増加させた結果として生じた電荷信号を検出するステップであって、少なくともある特定の最小振幅を有する電荷信号が、第一二値論理レベルを表す、以前に設定された分極状態での変化を示す、ステップと;(iv)分極状態が変わった場合に、当該強誘電体デバイスに印加される電圧の極性を変えることによって、当該強誘電体デバイスにおける当該以前に設定された分極状態を復元するステップと、を含む。
【0030】
実施形態43は、実施形態34〜36のいずれか一つに記載の強誘電体デバイスを含む不揮発性メモリセルに書き込みを行う方法である。当該方法は、(i)上記強誘電体デバイスに電圧を印加するステップと;(ii)所定の量まで当該電圧を増加させるステップと;(iii)当該電圧を増加させた結果として生じた電荷信号を検出するステップであって、少なくともある特定の最小振幅を有する電荷信号が、第二二値論理レベルを表す第二分極状態の変化を示す、ステップと;(iv)当該メモリセルが当該第二二値論理レベルを表す場合に、当該第二分極状態を維持するステップと;(v)メモリセルが第一二値論理レベルを表す場合に、当該強誘電体デバイスに印加する電圧の極性を変えることによって、第一二値論理レベルを表す第一分極状態を復元するステップと、を含む。
【0031】
実施携帯44は、実施形態34〜36に記載の強誘電体デバイスのいずれか一つによって、電力供給から回路をデカップリングする方法である。当該方法は、当該強誘電体デバイスを電源電圧線と接地電圧線との間に配設するステップであって、当該強誘電体デバイスが、電源電圧線および接地電圧線にカップリングされ、ならびに電源電圧および接地電圧によって生じる電力ノイズの減少が達成される、ステップを含む。
【0032】
実施形態45は、一次電源からの電力が利用できない場合に消費デバイスに電力を供給する、実施形態34〜36に記載の強誘電体デバイスのいずれか一つを含むエネルギー貯蔵回路を作動させる方法である。当該方法は、(i)強誘電体デバイスに対する目標エネルギーレベルを定義するステップと;(ii)当該強誘電体デバイスを充電するステップと;(iii)充電の間に当該強誘電体デバイスに貯蔵されたエネルギーの第一量を測定するステップと;(iv)当該デバイスまたは薄膜トランジスタに貯蔵されたエネルギーの第一量が目標のエネルギーレベルに達した場合、当該強誘電体デバイスの充電を停止するステップと;(v)一次電源からの電力が利用できない場合に、消費デバイスへと当該強誘電体デバイスを放電させるステップと、を含む。
【0033】
実施形態46は、実施形態34〜36に記載の強誘電体デバイスのいずれか一つを使用して、圧電センサー、圧電トランスデューサ、および圧電アクチュエータを作動させる方法である。
【0034】
実施形態47は、実施形態34〜36に記載の強誘電体デバイスのいずれか一つを使用して、焦電センサー、焦電トランスデューサ、および焦電アクチュエータを作動させる方法である。実施形態48は、上記焦電センサーが、受動型赤外線検出器、赤外線撮像アレイ、指紋センサーを含む、実施形態47に記載の方法である。
【0035】
用語「電極」は、本発明に関連して使用される場合、ある構成要素に電気接触点を提供するために当該構成要素にカップリングされた導電性材料を意味する。例えば、ある特定の実施形態において、デバイスは、絶縁体材料、例えば強誘電体層など、の両側に二つの電極を有し得る。
【0036】
用語「下側」または「下部」電極は、本発明との関連において使用される場合、支持基材に最も近い構成要素の側に配置された電極を意味する。
【0037】
用語「上側」または「上部」電極は、本発明との関連において使用される場合、支持基材から最も遠い構成要素の側に配置された電極を意味する。「下部電極」および「上部電極」は、ここで定義されて本開示中において説明されるが、当該用語は、デバイスが支持基材から分離している場合などにおいて相互交換可能である。
【0038】
用語「強誘電体前駆体材料」は、ゼロ印加電界において残留電界分極を維持するなど、強誘電体ヒステリシス特性を示す可能性を有する有機および無機の両方の全ての材料を包含する。一例として、(α)相PVDFは、(α)相から(β)相、(γ)相、または(δ)相への相転移によって強誘電体ヒステリシス特性を示す可能性を有する。
【0039】
語句「低い比誘電率」は、ポリマーについて言及する場合、4以下の相対誘電率を有するポリマーを包含する。
【0040】
用語「引張強度」は、破壊するまでに材料が耐えることができる応力および/または変形の量を意味する。例えば、導電性材料がそれらが壊れるまで耐えることができる圧力または屈曲の量。
【0041】
語句「ポリマーブレンド」は、ポリマーブレンドを製造するためのいずれかの既知の技術によって一緒にブレンドされている少なくとも二種のポリマーを含む。そのような技術としては、共通の溶媒を使用する溶液ブレンド法、あるいは、成分がポリマーの融点を超える温度においてブレンドされ、それに続いて、当該得られた混合物が、粒状物へと、または直接シート状へと、または任意の他の好適な形状へと押し出される溶融ブレンド押出が挙げられる。ポリマーを溶融ブレンドするために、一般的に、スクリュー式押出機または粉砕機が使用される。当該ポリマーのブレンドが、本発明の強誘電体材料を製作するプロセスの前またはプロセス中にホモジナイズプロセスを受けるのであれば、当該ブレンドは、単純な粉末ブレンドであってもよいことも理解されるであろう。したがって、例えば、強誘電体材料が、スクリュー供給型射出成形機において少なくとも二種のポリマーから形成される場合、ブレンドは当該射出成型機のスクリュー部分において達成され得るので、スクリューのホッパーへの供給材料は、当該二種のポリマーの単純混合物であってもよい。
【0042】
用語「ポリマー」は、オリゴマー(例えば、2から10のモノマー性ユニットまたは2から5のモノマー性ユニットを有するポリマー)およびポリマー(例えば、10を超えるモノマー性ユニットを有するポリマー)を包含する。
【0043】
用語「約」または「およそ」は、当業者によって理解されているように、〜に近い、として定義され、非限定的な一実施形態において、当該用語は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0044】
用語「実質的に」およびその変形は、当業者によって理解されているように、ほとんど指定されているものであるが必ずしも完全にそうであるわけではない、として定義され、非限定的な一実施形態において、実質的には、10%以内、5%以内、1%以内、または0.5%以内の範囲を意味する。
【0045】
用語「抑制すること」または「減じること」または「防ぐこと」または「避けること」またはそれらの用語の変形は、本請求項および/または本明細書において使用される場合、所望の結果を達成するための任意の測定可能な減少または完全な抑制を包含する。
【0046】
用語「効果的な」は、本明細書および/または本請求項において使用される場合、所望の結果、期待される結果、または意図される結果を達成するために適切であることを意味する。
【0047】
単語「一つの(「a」または「an」)」の使用は、本請求項または本明細書において「含む(「comprising」)」なる用語と共に使用される場合、「一つ(「one」)」を意味し得るが、「一つまたは複数(「one or more」)」、「少なくとも一つ(「at least one」)」、および「一つまたはそれ以上(「one or more than one」)」の意味とも一致する。
【0048】
単語「を含むこと(「comprising」)」(およびその任意の形態、例えば、「comprise」および「comprises」)、「を有すること(「having」)」(およびその任意の形態、例えば、「have」および「has」)、「を含むこと(including)」(およびその任意の形態、例えば、「includes」および「include」)、あるいは「を含有すること(「containing」)」(およびその任意の形態、例えば、「contains」および「contain」)は、包括的またはオープンエンド形式であり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを排除しない。
【0049】
本発明の強誘電体デバイスは、本明細書中において開示される特定の原料成分、構成要素、組成物など「を含む」、「から実質的になる」、または「からなる」ことができる。移行部「から実質的になる」に関して、非限定的な一態様において、当該強誘電体デバイスの基本的で新規の特徴は、当該強誘電体デバイスが、温度サイクルを受けている強誘電体層を有し、当該温度サイクルにより、強誘電体材料が強誘電体ヒステリシス特性を有し、ならびに高密度化され、それにより印加電圧下での安定した作動が促進されることである。
【0050】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の図、詳細な説明、および実施例から明かとなるであろう。しかしながら、当該図、詳細な説明、および実施例は、本発明の特定の実施形態を示しつつも、例示のためだけに与えられているに過ぎず、限定することを意図するのではないことは理解されるべきである。さらに、本発明の趣旨および範囲内での変化および変更は、この詳細な説明から当業者には明かとなるであろうことも想到される。さらなる態様において、特定の態様からの特徴は、他の態様からの特徴と組み合わせることができる。例えば、一態様からの特徴は、いずれかの他の態様からの特徴と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1A】本発明のプロセスおよび機器によって制御することができる強誘電体デバイスの二次元断面図である。
図1B】本発明のプロセスおよび機器により、情報を保存するために使用することができる強誘電体デバイスのアレイの斜視図である。
図2A】本発明のプロセスおよび機器よって制御することができる様々な強誘電体薄膜トランジスタのための四つの構成の概略図である。
図2B】本発明のプロセスおよび機器よって制御することができる様々な強誘電体薄膜トランジスタのための四つの構成の概略図である。
図2C】本発明のプロセスおよび機器よって制御することができる様々な強誘電体薄膜トランジスタのための四つの構成の概略図である。
図2D】本発明のプロセスおよび機器よって制御することができる様々な強誘電体薄膜トランジスタのための四つの構成の概略図である。
図3A】二段階アニール処理プロセスを使用して本発明の強誘電体デバイスを作製するプロセスの概略図である。
図3B】二段階アニール処理プロセスの第一段階の後の強誘電体デバイスの斜視図である。
図3C】二段階アニール処理プロセスの第二段階の後の本発明の強誘電体デバイスの斜視図である。
図4】本発明の強誘電体デバイスのアニール処理プロセスのための時間対温度のグラフ描写である。
図5】本発明の強誘電体デバイスを使用した半導体ウェハまたは電子デバイスにおける回路の実装の概略図である。
図6】本発明の強誘電体デバイスを有利に用いることができる例示的無線通信システムの実装の概略図である。
図7】本発明の強誘電体デバイスを含む電子回路の概略図である。
図8】本発明の強誘電体デバイスを含むエネルギー貯蔵回路を作動させる方法のフローチャートである。
図9】本発明の強誘電体デバイスを使用した圧電センサー回路の概略図である。
図10】圧電層を備える本発明の強誘電体デバイスの二次元断面表現である。
図11】焦電材料を伴う本発明の強誘電体デバイスの二次元断面表現である。
図12A】二段階温度プロセスの前の本発明の強誘電体デバイスにおける、100Hzでの分極(μC/cm)対電界(MV/m)のグラフである。
図12B】二段階温度プロセスの後の本発明の強誘電体デバイスにおける、100Hzでの分極(μC/cm)対電界(MV/m)のグラフである。
図13A】本発明の二段階温度プロセスの前に取得した走査電子顕微鏡画像およびFTIR−スペクトルである。
図13B】本発明の二段階温度プロセスの後に取得した走査電子顕微鏡画像およびFTIR−スペクトルである。
図14A】1kHzにおいて測定した、本発明のプロセスを使用して作製した強誘電体デバイスの分極対電場曲線を表す。
図14B】10Hzにおいて測定した、本発明のプロセスを使用して作製した強誘電体デバイスの分極対電場曲線を表す。
図14C】100Hzにおいて測定した、本発明のプロセスを使用して作製した強誘電体デバイスの分極対電場曲線を表す。
図14D】1Hzにおいて測定した、本発明のプロセスを使用して作製した強誘電体デバイスの分極対電場曲線を表す。
図15A】本発明の温度プロセスの第一段階および第二段階の後に撮影された強誘電体デバイスの走査電子顕微鏡画像(拡大図の差し込みを伴う)である。
図15B】本発明の温度プロセスの第一段階および第二段階の後に撮影された強誘電体デバイスの走査電子顕微鏡画像(拡大図の差し込みを伴う)である。
図15C】本発明の温度プロセスの第一段階および第二段階の後に撮影された強誘電体デバイスの走査電子顕微鏡画像(拡大図の差し込みを伴う)である。
図16】アニール処理プロセスの1分および70分の第二段階において測定したPVDFフィルムのFTIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明は、強誘電体デバイスの効率的な製造を可能にするプロセスに関する。特に、当該プロセスは、当該強誘電体デバイスが組み立てられた後だが強誘電体層のアニール処理の前に、特定の温度サイクルを用いる。当該温度サイクルの一つは、強誘電体ヒステリシス特性を示さない強誘電体材料(例えば、有機PVDFベースのポリマー)を、強誘電体ヒステリシス特性を示す強誘電体材料へと転化させる。続く温度サイクルは、当該強誘電体材料を高密度化し、それにより、当該材料の表面における界面亀裂または空隙を除去または減少させる。製造された強誘電体デバイスは、1Hzの低さまで測定可能である分極対電場を示す。
【0053】
本発明のこれらおよび他の非限定的な態様は、以下においてさらに詳細に説明される。
【0054】
A.強誘電体デバイス
図1A、1B、および2A〜2Dはそれぞれ、強誘電体デバイスの強誘電体構成要素の構図を提供する。これらのデバイスは、メモリデバイスに統合することができ、本発明の方法によりメモリコントローラまたは他のデバイスによって作動させることができる。本発明の強誘電体デバイス100の二次元断面図が、図1Aに表されている。強誘電体デバイス100は、薄膜キャパシタ、薄膜トランジスタ、または薄膜ダイオードであり得る。本発明のいくつかの態様において、当該強誘電体デバイスは、焦電用途および圧電用途において使用される。強誘電体デバイス100は、基材102、下部電極104、強誘電体材料106、および上部電極108を含み得る。強誘電体材料106および下部電極104を共有するように示されているが、当該強誘電体層106および下部電極104は、完全に別々の構造を形成するようにパターン形成してもよい。強誘電体デバイス100は、導電性電極104および108の間に強誘電体材料106を形成することによって、基材102上に製作することができる。図1A及び図1Bの目的のために、強誘電体材料106は、フィルムまたは層の形態である。当業者に既知の追加の材料、層、およびコーティング(図示されず)を、強誘電体デバイス100と共に使用することができ、それらのいくつかについて以下において説明する。強誘電体構成要素のアレイは、例えば、図1Bに示されるような上部電極108などをパターン形成することによって製造され得る。メモリアレイを形成するために使用され得る他の強誘電体構成要素は、図2A図2Dに示されるような、強誘電体トランジスタ(FeFET)であり得る。図2A〜2Dは、メモリデバイスに統合することができる薄膜トランジスタ200について描かれた異なる構成の様々な電界効果トランジスタを表している。
【0055】
本発明の強誘電体デバイス、例えば、図1A図Bおよび図2A図2Dに表されているものなどは、ゼロ印加電圧においてゼロへと減衰することのない二つの残留分極状態を有するために、「メモリ」を有すると言われる。これらの分極状態は、保存された値、例えばバイナリ0または1など、を表すために使用することができ、電極104と108の間にセンス電圧を印加して電極104と108の間に流れる電流を測定することによって読み取られる。分極状態を反対の状態へと反転させるために必要な電荷の量を測定することができ、それにより前の分極状態が明らかにされる。このことは、読み取り操作は、分極状態を変え、その後に、対応する書き込み操作を行うことにより、分極状態を再び変えることによって当該保存されていた値を再び書き込むことができることを意味する。
【0056】
1.基材
基材102は、支持体としても使用することができる。当該基材102は、熱または有機溶媒によって容易には変化しないかまたは劣化しない材料から作製することができる。そのような材料の非限定的な例としては、シリコンなどの無機材料、プラスチック、紙、紙幣基材が挙げられ、それには、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエーテルイミド、またはそのようなポリマーを含むポリマー性ブレンドが含まれる。当該基材は、柔軟であってもまたは柔軟でなくてもよい。本明細書において説明される強誘電体デバイスは、低いガラス転移温度(T)を有するもの(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、またはポリプロピレン(PP)など)を含む、全てのタイプの基材上に製造することができる。
【0057】
2.上部電極および下部電極
下部電極104は、導電性材料で作製することができる。典型的には、下部電極104は、そのような材料を使用してフィルムを形成することによって得ることができる(例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンメッキ、メッキ、コーティングなど)。フィルムを形成するために使用することができる導電性材料の非限定的な例としては、金、白金、銀、アルミニウムおよび銅、イリジウム、酸化イリジウムなどが挙げられる。さらに、導電性ポリマー材料の非限定的な例としては、導電性ポリマー(例えば、PEDOT:PSS、ポリアニリン、グラフェンなど)、ならびに導電性のマイクロもしくはナノ構造体(例えば、銀のナノワイヤなど)の封入によって導電化されたポリマーが挙げられる。下部電極104のためのフィルムの厚さは、典型的には、20nmから500nmの間であるが、本発明との関連における使用のために、他のサイズおよび範囲も想到される。
【0058】
上部電極108に使用される材料は、導電性であり得る。そのような材料の非限定的な例としては、金属、金属酸化物、および導電性ポリマー(例えば、ポリアニリン、ポリチオフェンなど)、ならびに導電性のマイクロもしくはナノ構造体の封入によって導電化されたポリマーが挙げられる。さらに、導電性ポリマー材料の非限定的な例としては、導電性ポリマー(例えば、PEDOT:PSS、ポリアニリン、グラフェンなど)、ならびに導電性マイクロもしくはナノ構造体(例えば、金のナノワイヤなど)の封入によって導電化されたポリマーが挙げられる。上部電極108は、単層またはそれぞれが異なる仕事関数を有する材料で形成された積層であり得る。さらに、低い仕事関数を有する一種または複数種の材料と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、およびスズからなる群より選択された少なくとも一つとの合金であってもよい。当該合金の例としては、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウムアルミニウム合金、インジウム−銀合金、およびカルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。当該上部電極108のフィルム厚は、典型的には、20nmから500nmまたは50nmから100nmの間である。いくつかの実施形態において、当該上部電極108は、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ロールツーロールコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、押出コーティング、またはそれらの任意の組み合わせによって、強誘電体材料106上に被着される。
【0059】
3.強誘電体材料
強誘電体材料106は、下部電極104と上部電極108との間に介挿することができる。一例において、当該強誘電体材料106は、強誘電体ポリマーと、低い比誘電率を有するポリマーとのブレンドから得ることができ、この場合、当該ポリマーは、同じ溶媒または溶媒系に溶解されている。一例において、当該強誘電体材料106は、強誘電体前駆体材料(図3Aの要素302を参照されたい)から得ることができ、これは、強誘電体ポリマー、コポリマー、ターポリマー、または強誘電体ポリマー、コポリマー、もしくはターポリマーを含むポリマーブレンド、あるいはそれらの組み合わせを含み得る。好ましい態様において、前駆体材料302におけるポリマーは、溶媒に溶解されるかまたは溶融され、それらは、強誘電体ヒステリシス特性を示さないが、例えば、二段階温度処理などによるアニール処理によって、強誘電体ヒステリシス特性を示すように転化させることができる。このプロセスについての説明を以下において提供する。強誘電体ポリマーの非限定的な例としては、PVDFベースのポリマー、ポリウンデカノアミド(ナイロン11)ベースのポリマー、あるいはPVDFベースのポリマーまたはポリウンデカノアミド(ナイロン11)ベースのポリマーのブレンドが挙げられる。当該PVDFベースのポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、またはターポリマー、あるいはそれらのブレンドであり得る。PVDFベースのホモポリマーの非限定的な例は、PVDFである。PVDFベースのコポリマーの非限定的な例は、ポリ(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン)(PVDF−TrFE)、ポリ(ビニリデンフルオリド−co−ヘキサフルオロプロペン)(PVDF−HFP)、ポリ(ビニリデンフルオリド−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−CTFE)、またはポリ(ビニリデンフルオリド−クロロフルオロエチレン)(PVDF−CFE)である。PVDFベースのターポリマーの非限定的な例としては、ポリ(ビニリデンフルオリド−トリフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CTFE)またはポリ(ビニリデンフルオリド−トリフルオロエチレン−クロロフルオロエチレン)(PVDF−TrFE−CFE)が挙げられる。当該強誘電体ポリマーは、非強誘電体ポリマーとブレンドすることができる。非強誘電体ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリスチレン(PS)、またはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、あるいはそれらのブレンドが挙げられる。好ましい態様において、当該前駆体材料におけるポリマーは、溶媒に溶解されるかまたは溶融され、それらは、強誘電体ヒステリシス特性を示さないが、下部102上に被着させて、次いで、例えば、本明細書中において説明される二段階熱処理などによるアニール処理によって強誘電体ヒステリシス特性を示すように転化させることができる。
【0060】
B.強誘電体デバイスの製造方法
図3Aを参照すると、強誘電体前駆体材料302は、スピンコーティング、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ロールツーロールコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、押出コーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット、ロータリースクリーン、フラットスクリーン、インクジェット、レーザーアブレーション、またはそれらの任意の組み合わせによって、下部電極104上に被着させることができる。非限定的な例としては、薄膜を形成するために強誘電体前駆体材料を極性溶媒に溶解させることが挙げられる。当該薄膜は、スタック304(基材102および下部電極104)上の下部電極104の中央に適用することができ、それにより、当該前駆体材料302は、当該下部電極104上に薄く広げられてスタック306を形成する。スタック306は、基材102、下部電極104、および前駆体材料302を含む。
【0061】
上部電極108を、例えば、シャドウマスクを通して熱蒸発させることによって前駆体材料302上に配設することにより、スタック308を形成することができる。スタック308は、基材102、下部電極104、および前駆体材料302、ならびに上部電極108を含む。当該上部電極108のフィルム厚は、典型的には、20nmから500nmまたは50nmから100nmの間である。いくつかの実施形態において、当該上部電極108は、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ロールツーロールコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、押出コーティング、またはそれらの任意の組み合わせによって、前駆体材料302上に被着される。
【0062】
スタック308は、約1分から60分、10分から50分、または20分から30分において、167℃から200℃または175℃、180℃、もしくは185℃、あるいはそれらの間の任意の範囲の温度で熱処理することができる。スタック308を167℃を超えるが200℃未満で熱処理することにより、強誘電体前駆体材料302が、強誘電体ヒステリシス特性を有する強誘電体材料106へと転化されて、スタック310を形成する。いくつかの実施形態において、当該スタックは、167℃、168℃、169℃、170℃、171℃、172℃、173℃、174℃、175℃、176℃、178℃、179℃、180℃、181℃、182℃、183℃、184℃、185℃、186℃、188℃、189℃、180℃、191℃、192℃、193℃、194℃、195℃、196℃、198℃、または199℃に加熱することができる。理論に束縛されることを望むわけではないが、界面亀裂312(図3Bに示される)は、アニール処理プロセスにおける第一段階の後の強誘電体材料106と下部電極104との間に存在すると考えられる。界面亀裂312の存在は、印加電圧下での強誘電体デバイスの作動性能に有害であり得る(例えば、強誘電体デバイスが大きなリーク電流を示す場合がある)。スタック310を、167℃未満かつ約100℃を上回る温度、例えば145℃から155℃の温度に晒して(例えば、冷却して)、約10分〜70分、または20分〜60分、または30分〜50分維持することにより、強誘電体材料106を高密度化して強誘電体デバイス100を形成することができる。理論に束縛されることを望むわけではないが、スタック310をある期間にわたって100℃と167℃の間の第二温度に晒すことにより、当該強誘電体材料が高密度化されてクラック312が封止または実質的に封止されると考えられる。図3Cは、界面の割れ312が存在しないことを表す、アニール処理プロセスの第二段階後の強誘電体デバイス100の斜視図である。図3Cに示されるように、層106には、割れが存在しないかまたは実質的に存在しない。図4は、二段階加熱処理プロセスの時間対温度のグラフ描写である。線402は、α相から強誘電体ヒステリシス特性を有する強誘電体ポリマーのγ相へのPVDFポリマーの転移の相転移曲線を表している。線404は、γ相への相転移後の強誘電体ポリマーに対する高密度化温度プロファイルを表している。PVDFポリマーのγ相が加熱プロセスの第二段階に維持される間に、PVDFポリマーフィルムが高密度化される。
【0063】
本発明のいくつかの態様において、強誘電体デバイス100は、ロールツーロールプロセスを用いて作製することができる。基材102は、コイル状ロールから得ることができる。基材102は、ロールから外して第一ローラー上に位置して、次いで第二ローラーに取り付けることにより、第一ローラーから第二ローラーへと移動させることができる。経路に沿って、様々な材料の被着のための様々な機器が備えられ得る。例えば、下部電極104は、上記において説明した被着方法の任意の形態によって、基材102上に配設することができる。必要であれば、当該下部電極104は、さらに処理することもできる(例えば、被着された下部電極104を硬化させるなど)。下部電極104を基板102上に被着して処理した後に、前駆体材料302を、当該下部電極104の表面の少なくとも一部の上に配設することができる(スタック306)。上部正面電極108は、スタック306が所望の速度で移動されるような別の被着装置によって、当該前駆体材料302の少なくとも表面上に被着することができる。スタック306を、熱を生じる装置、例えば、標準的急速熱アニール処理オーブンなど、に直接巻き付けた。当該加熱装置は、特に加熱時間および加熱温度を制御するためにソフトウェアと組み合わせて使用することができる。スタック306を、前駆体材料の溶融温度より高い第一温度に加熱することにより、強誘電体ヒステリシス特性を有する有機ポリマー性強誘電体材料を形成することができ、それによりスタック308を形成することができる。スタック308を、第二加熱装置に巻き付け、当該有機ポリマー性強誘電体材料の溶融温度より低い第二温度に加熱することにより、当該有機ポリマー性強誘電体材料を高密度化することができ、それにより薄膜強誘電体デバイスを得ることができる。ロールツーロールプロセスは、100m/s以下、または90m/s以下、80m/s以下、または50m/s以下の速度において実施することができる。
【0064】
C.強誘電体デバイスの用途
本発明の強誘電体デバイスのいずれか一つは、広範な技術およびデバイス、例えば、これらに限定されるわけではないが、スマートカード、RFIDカード/タグ、圧電センサー、圧電トランスデューサ、圧電アクチュエータ、焦電センサー、メモリデバイス、不揮発性メモリ、スタンドアロンメモリ、ファームウェア、マイクロコントローラ、ジャイロスコープ、音響センサー、アクチュエータ、マイクロ発電機、電源回路、回路カップリングおよびデカップリング、無線周波数フィルタリング、遅延回路、無線周波数チューナー、受動型赤外線センサー(「人感検出器」)、赤外線撮像アレイ、および指紋センサーなど、において使用することができる。ファームウェアなど、機能がメモリに実装される場合、当該機能は、コンピュータ可読媒体上の一つまたは複数の命令またはコードとして当該強誘電体デバイスに保存され得る。例としては、データ構造によってコード化されたコンピュータ可読媒体およびコンピュータプログラムによってコード化されたコンピュータ可読媒体が挙げられる。コンピュータ可読媒体は、物理的コンピュータ記憶媒体を含む。上記のものの組み合わせも、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0065】
これらの用途の多くにおいて、典型的には、強誘電体材料の薄膜が使用されるが、それは、そのような薄膜を使用することにより、分極を切り替えなければならない分野を中程度の電圧によって実現することが可能となるためである。いくつかの特定の回路部品について説明してきたが、開示される回路部品のすべてが本開示を実施するために必要であるわけではないことは、当業者は理解するであろう。さらに、ある特定の周知の回路については、本開示の焦点を維持するために、説明していない。
【0066】
図5は、一実施形態による、半導体ウェハまたは電子デバイスにおける集積回路の実践形態を表す概略図である。一例において、強誘電体デバイス100(例えば、キャパシタ、トランジスタ、またはダイオード)が、ウェハ502に見出され得る。当該ウェハ502は、強誘電体デバイス100を含み得る一つまたは複数のダイス中へと単体化することができる。さらに、当該ウェハ502は、単体化の前にさらなる半導体製造工程を施してもよい。例えば、当該ウェハ502は、担体ウェハ、パッケージングバルク領域、第二ウェハに接着され得るか、または別の加工施設に移され得る。あるいは、電子デバイス504、例えば、パーソナルコンピュータなど、は、当該強誘電体デバイス100を含むメモリデバイス506を含み得る。さらに、中央演算処理装置(CPU)、デジタル−アナログ変換器(DAC)、アナログ−デジタル変換器(ADC)、グラフィック処理装置(GPU)、マイクロコントローラ、または通信コントローラなどの電子デバイス504の他の部品も、強誘電体デバイス100を含み得る。
【0067】
図6は、本開示の実施形態を有利に用いることができる例示的無線通信システム600を示すブロックダイアグラムである。例示目的のために、図6には、三つのリモートユニット602、604、および606、ならびに二つの基地局608が示されている。無線通信システムは、より多くのリモートユニットおよび基地局を有し得ることは認識されるであろう。リモートユニット602、604、および606は、回路装置603A、603C、および603Bを含み、これは、開示された強誘電体デバイス、例えば、本発明のプロセスによって作製された強誘電体デバイスなど、を含む集積回路または印刷可能な回路基板を含み得る。集積回路または印刷可能な回路基板を含む任意の装置も、基地局、スイッチングデバイス、およびネットワーク設備など、本明細書において開示された強誘電体デバイスを含み得ることは認識されるであろう。図6には、基地局608からリモートユニット602、604、および606への順方向リンク信号610ならびにリモートユニット602、604、および606から基地局608への逆方向リンク信号612が示されている。
【0068】
リモートユニット602は、携帯電話として示されており、リモートユニット606は、ポータブルコンピュータとして示されており、リモートユニット604は、無線ローカルループシステムにおける定置リモートユニットとして示されている。例えば、当該リモートユニットは、携帯電話、携帯式パーソナル通信システム(PCS)ユニット、パーソナルデータアシスタントなどの携帯式データユニット、GPS可能デバイス、ナビゲーションデバイス、セットアッパーボックス、ミュージックプレーヤー、ビデオプレーヤー、エンターテイメントユニット、検針設備などの定置データユニット、タブレット、またはデータもしくはコンピュータ命令を保存もしくは取得する任意の他のデバイス、あるいはそれらの任意の組み合わせであり得る。図6には、本開示の教示によるリモートユニットが例示されているが、本開示は、これらの例示に示されたユニットに限定されるものではない。本開示の実施形態は、本発明によって開示されるプロセスによって作製された強誘電体デバイス100を含む任意のデバイスにおいて好適に用いることができる。
【0069】
強誘電体構成要素、例えば、本出願中において説明される強誘電体デバイスなど、は、データ、例えば、情報、コード、または命令など、を保存するためのメモリセルとして作動させることができる。例えば、単一の強誘電体キャパシタは、情報の単一のビット、例えば、「1」または「0」を保存することができる。この「1」または「0」の値は、強誘電体構成要素における強誘電体層の双対の分極方向として保存され得る。例えば、強誘電体層が、上から下へと分極している場合には強誘電体構成要素は「1」を保存し、強誘電体層が下から上へと分極されている場合には強誘電体構成要素は「0」を保存する。この分極状態のマッピングは、一例にすぎない。本発明の様々な実施形態において、「1」および「0」データビットを表すために様々な分極レベルを使用することができる。
【0070】
D.強誘電体メモリデバイスのメモリセルに情報の多重ビットを保存するための強誘電体メモリデバイスのためのコントローラの作動
強誘電体メモリデバイスは、上記において説明した強誘電体メモリデバイスのアレイによって構成され得、この場合、各デバイスは、強誘電体メモリセルを含む。当該強誘電体メモリデバイスに対する読み取りおよび書き込み操作は、多重レベルの強誘電体メモリセルのアレイにカップリングされたメモリコントローラによって制御され得る。単一の強誘電体メモリセルに情報を保存するためにコントローラによって実施される書き込み操作の一例を、以下において説明する。方法は、アドレスされた強誘電体メモリセルに書き込むためにビットおよびアドレスを受け取るステップを含み得る。当該ビットは、例えば、「0」または「1」であり得る。次いで、所定の電圧の書き込みパルスが、当該メモリセルの上部電極と下部電極との間に印加され得る。当該書き込みパルスは、当該強誘電体メモリセルの強誘電体層に、ある特定のレベルの残留分極を生じさせ得る。その残留分極は、当該強誘電体メモリセルの特徴に影響を及ぼし、当該特徴は、当該強誘電体メモリセルに保存されたビットを取得するために後で測定され得る。当該セルプログラミングは、書き込みパルスにおける他の変法も含み得る。例えば、当該コントローラは、強誘電体層における所望の残留分極を得るために、当該メモリセルに適用すべき多重書き込みパルスを発生させることができる。いくつかの実施形態において、当該コントローラは、書き込み操作の後に検証操作を行うように構成してもよい。当該検証操作は、選択された書き込み操作に対して、全ての書き込み操作に対して、または書き込み操作を行わずに、実施することができる。当該コントローラは、当該強誘電体メモリセルに保存されたビットを得るための読み取り操作も実行し得る。
【0071】
強誘電体メモリセルのアレイにおいて、当該アレイは、メモリセルの行にわたって延びるワード線およびメモリセルの列にわたって延びるビット線によって相互接続され得る。メモリコントローラは、メモリアレイからデータを要求するプロセッサまたは他のコンポーネントから取得したアドレスに従って読み取りおよび/または書き込み操作を実施するために、当該アレイから特定のメモリセルを選択するためにワード線およびビット線を操作し得る。次いで、所望の読み取りおよび/または書き込み操作を実施するために、適切な信号がワード線およびビット線に適用され得る。
【0072】
E.デカップリングキャパシタとしておよびエネルギー貯蔵デバイスとしての作動
本発明の強誘電体デバイス、例えば、強誘電体キャパシタなど、は、電気ネットワーク(回路)の一部を別の電気ネットワークからデカップリングするために使用することができる。図7は、強誘電体キャパシタとして強誘電体デバイス100を含む回路700の概略図である。強誘電体キャパシタ100は、電源電圧線702および接地電圧線704に連結されている。電源電圧および接地電圧によって生じる電源ノイズは、キャパシタによって遮断され、したがって、回路706における電源ノイズ全体を減少させる。強誘電体キャパシタ100は、当該線における電圧が低下する場合に当該回路に放充電を提供することによって、デバイスに対して局所エネルギー貯蔵を提供し得る。図8は、強誘電体デバイス100を含むエネルギー貯蔵回路を作動させる方法のフローチャートである。強誘電体デバイス100は、一次電源からの電力が利用できない場合に消費デバイスに電力を提供することができる。図8の方法800は、強誘電体デバイスに対して目標エネルギーレベルを定義するブロック802において始まる。当該目標エネルギーレベルは、本発明の強誘電体キャパシタの場合、例えば0.1μFから10μFであり得る。当該目標エネルギーレベルが定義された後、ブロック804において当該強誘電体デバイス100は、定義されたエネルギーレベルまで充電される。ブロック806において、当該強誘電体デバイス100に貯蔵されたエネルギーの第一量が測定される。当該強誘電体デバイス100に貯蔵されたエネルギーの第一量が目標エネルギーレベルに達した場合、ブロック808において充電が停止される。ブロック810において、電力が一次電源(例えば、電圧源)から利用できなくなった場合に、当該強誘電体デバイス100は、消費デバイス(例えば、スマートフォン、コンピュータ、またはタブレット)へとエネルギーを放出するであろう。
【0073】
図9は、回路において圧電デバイスとして強誘電体デバイス100を使用した圧電センサー回路の概略図である。圧電センサーが作動していない場合、陽イオンおよび陰イオンによって形成された双極子は、ポリマー構造の対称性により、お互いに打ち消し合い、電界は観察されない。応力が加えられると、当該ポリマーが変形して対称性が失われ、正味双極子モーメントが生じる。当該双極子モーメントは、当該ポリマーに電界を作り出す。当該材料は、加えられた圧力に比例した電荷を発生させる。図9に示されているように、圧電センサー900は、センサーの圧電構成要素として強誘電体デバイス100を含む。本発明の強誘電体デバイス100は、同じ回路においてデカップリングデバイス(例えば、キャパシタ)として使用することができることも想到される。図10は、圧電材料として使用される強誘電体材料と組み合わせた、強誘電体デバイス100の二次元断面表現である。図10に示されているように、強誘電体デバイス1000は、本明細書中において説明されるプロセスを使用して作製された圧電材料1002を含み、これは、圧電デバイスの下部電極104と上部電極108との間に配設することができ、応力が加えられた場合に正味双極子モーメントを発生させる。圧電デバイスとして本発明の強誘電体デバイスを使用する方法は、振動パルスを当該圧電デバイスに送るステップ、当該デバイスの電圧を参照電圧と比較するステップ、および当該比較に応じて振動パルスを調節するステップを含む。図11は、焦電材料と組み合わせた、強誘電体デバイス100の二次元断面表現である。図11に示されているように、強誘電体デバイス1100は、本明細書中において説明されるプロセスを使用して作製されるような強誘電体ヒステリシス特性を有する焦電材料1102を含み、これは、焦電デバイスの下部電極102と上部電極108との間に配設することができ、赤外光に晒された場合に電荷を発生させるであろう。焦電デバイスとして本発明の強誘電体デバイスを使用する方法は、熱パルスを当該焦電デバイスに送るステップ、当該デバイスの電圧を参照電圧と比較するステップ、および当該比較に応じて熱パルスを調節するステップを含む。
【実施例】
【0074】
本発明を特定の実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、例示目的だけのために提供されるのであって、いかなる方法においても本発明を制限することを意図するものではない。当業者は、実質的に同じ結果を得るために変更または修正することができる様々な非臨界パラメータを容易に認識するであろう。
【0075】
実施例1(二段階温度プロセスによる強誘電体デバイスの製作)
本発明の強誘電体キャパシタは、以下の方法を用いた二段階温度プロセスを使用して製作した。
【0076】
ポリマー溶液。ジメチルホルムアミド溶媒(Sigma Aldrich(登録商標))にPVDF粉末(Sigma Aldrich(登録商標)、MW=534,000g/mol)を加えることによって、溶媒中におけるPVDFの溶液を調製した。当該溶液をポリテトラフルオロエチレンフィルター(1μmの孔径)を使用してろ過した。当該PVDF溶液を撹拌し、従来のホットプレートを使用して110℃で約20分加熱して、当該PVDFを完全に溶解させた。当該PVDF溶液のこの加熱ステップは、スピンコーティングしたPVDF薄膜を確実に均一にした。
【0077】
強誘電体キャパシタ。下部電極(25nm厚のPt(25nm)/Ti(5nm))を、SiO(100nmのシリコン)上にスパッタ被着した。当該下部電極および基材を、スピンコーティング機器に取り付けた。グローブボックス内において窒素雰囲気下で、熱ポリマー溶液を60秒間において4000rpmの速度で下部電極上に被着させることにより、当該電極上に200nmから250nmの均一なPVDF薄膜を提供した。スピンコーティングの後、当該PVDF薄膜/電極/基材スタックを、ホットプレート上において(グローブボックス内において、150℃で)ベーク処理することにより、当該薄膜の溶媒を除去した。シャドウマスクを通しての熱蒸発によって、当該PVDF薄膜上に90nmのAu上部電極を被着させた。初期の10nmでは、Auを0.1Å/秒の被着速度において被着させ、その後に1Å/秒の速度において残りの80nmを被着させた。次いで、当該Au/PVDF/Ptスタックを、従来のホットプレート上において180℃で約10分から60分アニール処理した(以下において、第一段階と呼ぶ)。次に、当該温度を、PVDFの融点(177℃)より低い150℃に約10分から70分維持することにより(以下において、第二段階と呼ぶ)、本発明の強誘電体キャパシタを形成した。
【0078】
実施例2(実施例1の強誘電体デバイスの試験)
アニール処理プロセスの間の強誘電体ヒステリシス特性。実施例1において作製した本発明の強誘電体デバイスにおけるヒステリシスループを、二段階温度プロセスの前後に100Hzの周波数において測定し、それを図12Aおよび12Bに示す。図12Aは、二段階温度プロセスを開始する前の本発明の強誘電体デバイスの、100Hzでの分極(μC/cm)対電場(MV/m)のグラフ描写である。図12Bは、二段階温度プロセス後の本発明の強誘電体キャパシタの、100Hzでの分極(μC/cm)対電場(MV/m)のグラフ描写である。図12A図12Bを比較すると、図12Bのヒステリシスループは、図12Aの強誘電体材料のヒステリシスより明確であり、したがって、二段階温度プロセスによる当該強誘電体材料のヒステリシス特性の向上を実証している。
【0079】
走査電子顕微鏡特性。図13Aおよび13Bは、二段階温度プロセスの前後に取得した走査電子顕微鏡画像およびFTIRスペクトルである。図13Aに示されているデータは、二段階温度プロセスの前に得た。図13Bに示されているデータは、二段階温度プロセス後に得た。図13AのSEMデータと図13BのSEMデータを比較すると、図13Bのデバイスは、転化されたPVDFポリマーを有し、ならびにより均質な、したがってより高密度化された強誘電体層を有する。
【0080】
様々な周波数での強誘電体ヒステリシス特性。図14A〜Dは、それぞれ1kHz、100Hz、10Hz、および1Hzにおいて測定した、本発明のプロセスを使用して作製した強誘電体キャパシタの分極対電場曲線を表している。示されているように、当該ヒステリシスデータにおいて、当該強誘電体キャパシタは、低周波数(100Hz未満)において安定な作動を実証している。
【0081】
アニール処理プロセスの間の表面モルホロジー。図15A〜15Cは、温度プロセスの第一段階後(図15A)および図15Aの強誘電体キャパシタを30分加熱した後(図15B)および二段階温度プロセスにおいてより低い温度で強誘電体キャパシタを70分加熱した後(図15C)に撮影した本発明の強誘電体キャパシタの走査電子顕微鏡画像(拡大図の差し込みを伴う)である。画像に示されているように、図15Cの表面欠陥は図15Aと比較して減少している。図16は、アニール処理プロセスの間に測定した当該デバイスのFTIRスペクトルである。データ1502は、150℃で1分加熱した後に測定したFTIRスペクトルであり、データ1504は、150℃で70分加熱した後に測定したFTIRスペクトルである。図16に示されているように、PVDFフィルムの相は、アニール処理プロセスの第二段階の間に変化しなかった。
【0082】
まとめると、組み立てられた強誘電体デバイスに二段階温度プロセスを施すことによって、従来のデバイスと比較して安定で低い周波数である耐久性デバイスが製造される(例えば、Kangら、Applied Physics Letters, 2008において、150℃での一段階の急速なアニール処理プロセスを用いて作製された比較のデバイスを参照されたい)。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図16