(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366835
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】印刷装置、及び印刷装置を作製する方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20180723BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
B41J2/14 209
B41J2/16 101
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-523275(P2017-523275)
(86)(22)【出願日】2014年10月30日
(65)【公表番号】特表2017-533846(P2017-533846A)
(43)【公表日】2017年11月16日
(86)【国際出願番号】US2014063235
(87)【国際公開番号】WO2016068958
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】コベントリー,ローリー,エイ
(72)【発明者】
【氏名】アレイ,ロドニー,エル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,デイヴィッド,アール
【審査官】
上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−306003(JP,A)
【文献】
特開2007−269011(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0267996(US,A1)
【文献】
特開平10−157112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
B41J 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントヘッドダイであって、
第1のノズル(142、205、305)から流体を噴射させるための第1の抵抗器(404)と、
第2のノズル(142、205、305)から流体を噴射させるための第2の抵抗器(405)と、
前記第1の抵抗器(404)を覆う第1のキャビテーションプレート(408)と、
前記第2の抵抗器(405)を覆う第2のキャビテーションプレート(412)と、
前記第1のキャビテーションプレート(408)及び前記第2のキャビテーションプレート(412)の上に配置された保護層
を備え、
前記第1のキャビテーションプレート(408)は、前記第2のキャビテーションプレート(412)から空隙によって隔置され、
前記保護層は、窒化ケイ素または炭化ケイ素から構成されることからなる、プリントヘッドダイ。
【請求項2】
前記第1のキャビテーションプレート(408)は、第1の層(424)、第2の層(426)、及び第3の層(428)を有し、前記第2の層(426)は、前記第1の層(424)と前記第3の層(428)の間に配置される、請求項1のプリントヘッドダイ。
【請求項3】
前記第1の層(424)は、約500オングストロームの厚さを有し、前記第2の層(426)は、約3000オングストロームの厚さを有し、前記第3の層は、約500オングストロームの厚さを有する、請求項2のプリントヘッドダイ。
【請求項4】
前記第1の抵抗器(404)に近接する前記第1のキャビテーションプレート(408)に結合する第1の接着剤(410)と、前記第2の抵抗器(405)に近接する前記第2のキャビテーションプレート(412)に結合する第2の接着剤(414)をさらに備える、請求項1〜3のいずれかのプリントヘッドダイ。
【請求項5】
前記第1のキャビテーションプレート(408)の第1の外縁は、前記第1の接着剤(410)の第2の外縁に対して相対的な位置に配置される、請求項4のプリントヘッドダイ。
【請求項6】
前記第1のキャビテーションプレート(408)の第1の外縁は、前記第1の接着剤(410)の第2の外縁から約2マイクロメートルだけ離れて配置される、請求項4のプリントヘッドダイ。
【請求項7】
前記第1の抵抗器(404)と前記第1のキャビテーションプレート(408)の間に配置された誘電性パッシベーション層(414)をさらに備える、請求項1〜6のいずれかのプリントヘッドダイ。
【請求項8】
第1の噴射チャンバ(434)及び第2の噴射チャンバ(436)をさらに備え、
前記第1の噴射チャンバ(434)は、前記第1の抵抗器(404)に近接して配置され、前記第2の噴射チャンバ(436)は、前記第2の抵抗器(405)に近接して配置される、請求項1〜7のいずれかのプリントヘッドダイ。
【請求項9】
前記第1の抵抗器(404)及び前記第2の抵抗器(405)は、基板(402)上に配置される、請求項1〜8のいずれかのプリントヘッドダイ。
【請求項10】
前記第1のキャビテーションプレート(408)は、前記第2のキャビテーションプレート(412)から約10マイクロメートルだけ離れて配置される、請求項1〜9のいずれかのプリントヘッドダイ。
【請求項11】
第1の抵抗器(404)及び第2の抵抗器(405)を、ダイ(220、315、400、500、600)の基板(402)上に形成するステップと、
前記第1の抵抗器(404)を覆う第1のキャビテーションプレート(408)を形成するステップと、
前記第2の抵抗器(405)を覆う第2のキャビテーションプレート(412)を形成するステップであって、前記第1のキャビテーションプレート(408)は、前記第2のキャビテーションプレート(412)から空隙によって電気的に絶縁されることからなる、ステップと、
前記第1のキャビテーションプレート(408)及び前記第2のキャビテーションプレート(412)の上に保護層を配置するステップ
を含み、
前記保護層は、窒化ケイ素または炭化ケイ素から構成されることからなる、方法。
【請求項12】
前記第1の抵抗器(404)と前記第1のキャビテーションプレート(408)の間に誘電性パッシベーション層(414)を形成するステップをさらに含む、請求項11の方法。
【請求項13】
前記第1のキャビテーションプレート(408)を形成する前記ステップが、第1の層(424)、第2の層(426)、及び第3の層(428)を形成することを含むことからなる、請求項11または12の方法。
【請求項14】
前記第1の層(424)はタンタルから構成され、前記第2の層(426)は白金から構成され、前記第3の層(428)はタンタルから構成される、請求項13の方法。
【請求項15】
第1のノズル(142、205、305)から流体を噴射させるための第1の抵抗器(404)と、
第2のノズル(142、205、305)から流体を噴射させるための第2の抵抗器(405)と、
前記第1の抵抗器(404)を覆うための第1のキャビテーションプレート(408)と、
前記第2の抵抗器(405)を覆うための第2のキャビテーションプレート(412)と、
前記第1のキャビテーションプレート(408)及び前記第2のキャビテーションプレート(412)の上に配置された保護層
を備えるプリントヘッドダイであって、
前記第1のキャビテーションプレート(408)は、前記第2のキャビテーションプレート(412)から空隙によって電気的に絶縁され、
前記保護層は、窒化ケイ素または炭化ケイ素から構成されることからなる、プリントヘッドダイ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
いくつかのインクジェット印刷システムでは、印刷媒体に画像を印刷するために、インクジェットプリントヘッドが、流体(たとえばインク)の滴を、印刷媒体(たとえば用紙)に向けてノズルを通して噴射する。いくつかの例では、それらのノズルからインクを順次噴射して文字や他の画像を印刷媒体に印刷できるように、それらのノズルは1または複数のアレイ(配列)をなすように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】(補充可能性あり)
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】本明細書に開示されている例を実施するために使用することができる例示的な印刷装置のブロック図である。
【
図2】本明細書に開示されている例を実施するために使用することができる印刷装置で使用するための例示的な印刷カートリッジを示す。
【
図3】本明細書に開示されている例を実施するために使用することができる印刷装置で使用するための例示的なインクジェットアレイを示す。
【
図4】本明細書に開示されている例を実施するために使用することができる印刷装置で使用するための例示的なダイの一部を示す。
【
図5】本明細書に開示されている例を実施するために使用することができる印刷装置で使用するための例示的なダイの一部を示す。
【
図6】本明細書に開示されている例を実施するために使用することができる印刷装置で使用するための例示的なダイの一部を示す。
【
図7】本明細書に開示されている例示的なダイの作製方法の1例を示す。 図面は一定のスケールでは描かれてない。同じもしくは同様の部分を参照するために、図面及び関連する説明を通して可能な限り、同じ参照番号が使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0004】
いくつかのサーマルバブルタイプインクジェットプリントヘッドは、発熱体(たとえば抵抗器)に電流を流すことによって熱を発生させることにより、流体滴をノズルから噴射する。いくつかの例では、該電流は、熱を発生して、噴射チャンバからノズルを通して流体の小滴を押し出す急速に膨張する流体(たとえばインク)の蒸気泡を生成するパルスとして供給される。発熱体が冷えると、蒸気泡は急速に崩壊して、リザーバ(流体容器)から噴射チャンバ内へとより多くの流体が引き込まれて、ノズルから別の流体滴を噴射する準備ができる。
【0005】
インクジェット噴射プロセスは、印刷中に1秒当たり非常に多くの回数繰り返されるので、蒸気泡が崩壊することによって引き起こされる発熱体に与える衝撃は、該発熱体に損傷を与えうる。いくつかの例では、蒸気泡の繰り返される崩壊は、発熱体(の表面)を覆っている表面材料のキャビテーション損傷をもたらす。発熱体の表面が損傷すると、インクは、発熱体(の表面)を覆っている表面材料を貫通して、高温で高電圧の発熱体表面と接触し、これによって、発熱体が流体(たとえばインク)を噴射するのを妨げる発熱体の急速な腐食及び物理的な破壊を生じる。
【0006】
いくつかの例では、キャビテーション損傷の可能性を低減するために、(1つの)キャビテーションプレートが、プリントヘッドアレイの複数の発熱体(たとえば抵抗器)の上に形成される。いくつかの例では、該キャビテーションプレートは、タンタルから作られた第1の層、白金(プラチナ)から作られた第2の層、及びタンタルから作られた第3の層を備える。かかる例では、第1の発熱体を覆う第1の層(たとえばタンタル)の一部が損傷すると、該第2の層(たとえば白金)への流体の侵入並びに電気化学的なもしくは他のタイプの浸食ないし攻撃が、該キャビテーションプレート及び/又は抵抗器をショート(短絡)させて、 他の発熱体を覆っているキャビテーションプレートの他の部分に損傷を与えるカスケード効果を引き起こす場合がある。
【0007】
本明細書に開示されている例では、別個の(互いに分離した)キャビテーションプレートが発熱体を覆うように形成され、これによって、単一のキャビテーションプレートが複数の発熱体を覆っている例で起こる連鎖的な損傷の可能性が大幅に低減される。いくつかのそのような例では、第1のキャビテーションプレートが、第1の発熱体(たとえば抵抗器)を覆い、第1のキャビテーションプレートから隔置された(すなわちある間隔を置いて配置された)第2のキャビテーションプレートが、第2の発熱体(たとえば抵抗器)を覆う。該間隔及び/又は空隙は、該第1のキャビテーションプレートを該第2のキャビテーションプレートから電気的(または電子的)に絶縁(または分離)する。したがって、第1のキャビテーションプレートが損傷を受け及び/又はショートした場合に、該第1のキャビテーションプレートの近傍にある(またはそれに隣接する)第2のキャビテーションプレートは、第1のキャビテーションプレートの(破損等の)障害によって損傷を受けない。他の例では、それらのキャビテーションプレートを電気的(または電子的に)絶縁(または分離)するために、それらのキャビテーションプレートの間に非導電性材料が配置される。いくつかの例では、該別個のキャビテーションプレートは、タンタルから作られた第1の層、白金から作られた第2の層、及びタンタルから作られた第3の層を含む。
【0008】
図1は、本開示の教示を実施するために使用することができる例示的な印刷装置100のブロック図である。
図1の例示的な印刷装置100は、例示的なプリンター105、例示的なイメージソース(画像ソース)110、及び例示的な被印刷物115(たとえば紙)を備えている。イメージソース110をコンピューティング装置とすることができ、プリンター105は、該コンピューティング装置から、プリンター105の例示的なコントローラ120によって実行される印刷ジョブを記述するデータを受け取って、被印刷物115に画像を印刷する。
【0009】
図1の例では、印刷装置100はまた、プリントヘッド運動機構125及び被印刷物運動機構130を備えている。例示的なプリントヘッド運動機構125及び被印刷物運動機構130は、被印刷物115に画像を印刷するときに、複数のノズル142を有するプリントヘッド140及び/又は被印刷物115をそれぞれ移動させる機械装置を備える。図示の例によれば、プリントヘッド140及び/又は被印刷物115を移動させるための(たとえばイメージソース110からの)命令は、例示的なコントローラ120によって受け取られて処理される。いくつかの例では、プリントヘッド140及び/又は被印刷物運動機構130にコントローラ120から信号を送ることができる。印刷装置100がページワイドアレイプリンタとして実施される例では、プリントヘッド140を動かす必要はなく、したがって、印刷装置100は、被印刷物運動機構130を備えていなくてもよく、または被印刷物運動機構130を利用しなくてもよい。
【0010】
図1の例示的なプリンター105は、イメージソース110とインターフェースするためのインターフェース135を備えている。インターフェース135を、プリンター105とイメージソース110を有線または無線によって接続するものとすることができる。イメージソース110をコンピューティング装置とすることができ、プリンター105は、該コンピューティング装置から、コントローラ120によって実行されることになる印刷ジョブを記述するデータを受け取る。いくつかの例では、インターフェース135は、プリンター105及び/又はプロセッサ145が、プリンター105の外部及び/もしくは内部にあるイメージソース110及び/又はハードウェア要素などの、種々のハードウェア要素とインターフェースすることができるようにする。いくつかの例では、インターフェース135は、たとえば、表示装置やマウスやキーボードなどの入力装置もしくは出力装置とインターフェースする。インターフェース135はまた、外部記憶装置などの他の外部装置、及び/又は、たとえばサーバーやスイッチやルーターやクライアント装置などのネットワーク装置、及び/又は、他のタイプのコンピューティング装置、及び/又は、それらの組み合わせに対するアクセスを提供することもできる。
【0011】
例示的なコントローラ120は、例示的なデータ記憶装置150から実行可能コードを取り出して実行するための、ハードウェアアーキテクチャを含む例示的なプロセッサ145を備えている。該実行可能コードは、例示的なプロセッサ145によって実行されると、プロセッサ145に、少なくとも、例示的な被印刷物115に印刷するようにプリントヘッド140を制御し、及び/又は、プリントヘッド運動機構125及び/もしくは被印刷物運動機構130を作動させる機能を実行させることができる。該実行可能コードは、例示的なプロセッサ145によって実行されると、例示的な(1以上の)ノズル142から流体を噴射するために、電源ユニット175が例示的なプリントヘッド140に電力を供給するようにするための命令を、プロセッサ145が電源ユニット175に与えるようにすることができる。
【0012】
図1のデータ記憶装置150は、例示的なプロセッサ145または他の処理装置によって実行される命令を格納している。例示的なデータ記憶装置150は、例示的なプロセッサ145が、本明細書に開示されている例を実施するために実行する複数のアプリケーション、ファームウェア、機械可読命令などを表すコンピューターコードを格納することができる。
【0013】
図2は、
図1の例示的な印刷装置100で使用することができる例示的な印刷カートリッジ200のブロック図である。この例では、印刷カートリッジ200は、例示的なノズル205、例示的な流体容器210、例示的なダイ及び/又はプリントヘッド220、例示的なフレキシブルケーブル230、例示的な導電性パッド240、及び例示的なメモリーチップ250を備えている。例示的なフレキシブルケーブル230は、カートリッジ200の側部に結合されており、例示的なメモリ250、例示的なダイ220、及び例示的な導電性パッド240を結合するトレース(配線)を有している。
【0014】
動作時、例示的なカートリッジ200を、たとえば、
図1の例示的なプリンター105のキャリッジクレードルに設置することができる。例示的なカートリッジ200がキャリッジクレードルに設置されると、例示的な導電性パッド240が該クレードル内の対応する電気接点に押し付けられて、例示的なプリンター105が、カートリッジ200と通信すること及び/又はカートリッジ200の電気的機能を制御することが可能になる。たとえば、例示的な導電性パッド240は、プリンター105が、例示的なメモリーチップ250にアクセスすること及び/又は該メモリーチップに書き込むことを可能にする。
【0015】
図示の例のメモリーチップ250は、流体カートリッジのタイプ(種類ないし型)の識別、カートリッジに含まれている流体の種類の識別、流体容器210に残っている流体の量の推定値、キャリブレーション(較正)データ、エラー情報、及び/又は他のデータなどの種々の情報を含むことができる。いくつかの例では、メモリーチップ250は、カートリッジ200がいつメンテナンス(保守)を受けるべきかを示す情報を含む。いくつかの例では、プリンター105は、メモリーチップ250に含まれている情報に基づいて、流体供給量が少ないことをユーザーに知らせたり画像品質を維持するために印刷ルーチンを変更したりするなどの適切なアクションを取ることができる。
【0016】
例示的なプリンター105は、画像を被印刷物115に印刷するために、カートリッジ200を収容しているキャリッジクレードルを被印刷物115の上で動かす。例示的なプリンター105は、被印刷物115に画像を印刷するために、キャリッジクレードル内の電気接点を介してカートリッジ200に電気信号を送る。該電気信号は、カートリッジ200の導電性パッド240を通過し、フレキシブルケーブル230を経由してダイ220に送られて、ダイ220内の個々の発熱体(たとえば抵抗器)にエネルギーを与える。該電気信号は、複数の発熱体のうちの1つを通って急速に膨張する流体の蒸気泡を生成し、該蒸気泡は、流体の小滴をダイ220内の噴射チャンバから被印刷物115の表面へと対応するノズル142を通って押し出し、これによって、被印刷物115の表面に画像が形成されるようにする。
【0017】
蒸気泡が崩壊することによって生じる衝撃から発熱体を保護するために、いくつかの例では、ダイ220に、直近の隣接するキャビテーションプレートから隔置された及び/又は電気的(または電子的に)絶縁(または分離)されたキャビテーションプレートが設けられる。キャビテーションプレートを電気的(または電子的)に絶縁(または分離)することによって、単一のキャビテーションプレートが複数の発熱体を覆っている例で起こる連鎖的な損傷の可能性が大幅に小さくなる。いくつかの例では、キャビテーションプレートは、タンタル(たとえば500オングストロームのタンタル)でできている第1の層、白金(プラチナ)(3000オングストロームの白金)でできている第2の層、及び、タンタル(500オングストロームのタンタル)でできている第3の層を含む。
【0018】
図3は、
図1の例示的な印刷装置100を実施するために使用することができる例示的なインクジェットアレイ及び/又はプリントバー300(たとえば輪転印刷機のプリントバー)のブロック図である。例示的なプリントバー300は、複数のノズル305、キャリヤ(台)310、及び複数のダイ315を備えている。個々のノズル305及び/又はダイ315を、コントローラ120に通信可能に結合して、それぞれのノズルを、被印刷物115に流体を噴射するために選択的に活性化できるようにすることができる。たとえば、被印刷物115に画像を印刷するために、被印刷物115をプリントバー300を通り過ぎるように動かすことができ、及び、ノズル305(または他の流体噴射要素)の発熱体(たとえば抵抗器)を制御して被印刷物115上にインクを噴射することができる。蒸気泡が崩壊することによって生じる衝撃から発熱体を保護するために、いくつかの例では、例示的なダイ315内の発熱体は、連鎖的な損傷の可能性を大幅に低減する電気的(または電子的)に絶縁(または分離)されたキャビテーションプレートを有している。
【0019】
図4は、
図1の印刷装置100及び/又は
図2の例示的な印刷カートリッジ200及び/又は
図3の例示的なプリントバー300に使用することができる例示的なダイ及び/もしくはプリントヘッド400のブロック図である。図示の例では、ダイ400は基板402を備えており、該基板上に、第1の発熱体及び/もしくは抵抗器404、及び、第2の発熱体及び/もしくは抵抗器405が配置されている。それぞれの抵抗器404、405に電荷を与えるために、導電性材料及び/もしくは導電性接点406(たとえばアルミニウム)が、抵抗器404、405のそれぞれに隣接して設けられている。抵抗器404、405及び/又は導電性材料406を環境から保護するために、例示的なパッシベーション層407が、抵抗器404、405及び導電性材料406の上に配置されている。
【0020】
それぞれの抵抗器404、405のキャビテーション損傷の可能性を低減するために、第1のキャビテーションプレート408が第1の抵抗器404の上に配置され、第1の接着剤410が第1のキャビテーションプレート408の上に配置され、第2のキャビテーションプレート412が第2の抵抗器405の上に配置され、第2の接着剤414が第2のキャビテーションプレート412の上に配置される。しかしながら、他の例では、接着剤410、414は、設けられず、及び/又は、(設けられたとしても)異なる位置(たとえば、抵抗器404、405とキャビテーションプレート408、412の間)に設けられる。この例では、第1のキャビテーションプレート408及び第2のキャビテーションプレート412は、第1の層424、第2の層426、及び第3の層428を備えている。いくつかの例では、第1の層424はタンタル層であり、第2の層426は白金層であり、第3の層428はタンタル層である。白金が化学的浸食に対して耐性を有することから、第2の層426を白金から形成することができ、タンタルがコゲーション(たとえば集積した残留物)に対する耐性を有することから、第3の層428をタンタルから形成することができる。
【0021】
いくつかの例では、第1のキャビテーションプレート408及び/又は第2のキャビテーションプレート412の寸法は、約27.5マイクロメートル×約45マイクロメートルである。他の例では、第1のキャビテーションプレート408及び/又は第2のキャビテーションプレート412の寸法は、約32.5マイクロメートル×約125マイクロメートルである。いくつかの例では、第1の接着剤410の幅416は、第1のキャビテーションプレート408の幅418よりも約4マイクロメートル〜約20マイクロメートルの範囲内の値だけ広い。いくつかの例では、第1のキャビテーションプレート408は、第2のキャビテーションプレート412から約10マイクロメートル〜約15マイクロメートルの範囲内の距離だけ離れている(たとえば、空隙または他の非導電性材料が、第1のキャビテーションプレート408と第2のキャビテーションプレート412との間に配置される)。いくつかの例では、第2の接着剤414の幅420は、第2のキャビテーションプレート412の幅422よりも約4マイクロメートル〜約20マイクロメートルの範囲内の値だけ広い。
【0022】
この例では、キャビテーションプレート408、412及び/又は接着剤410、414を保護するために、第1の保護層430及び第2の保護層432が、キャビテーションプレート408、412の一部の上に付加される。いくつかの例では、第1の保護層430は、窒化ケイ素であり、第2の保護層432は炭化ケイ素である。いくつかの例では、第1の保護層430は炭化ケイ素であり、第2の保護層432は窒化ケイ素である。
【0023】
被印刷物115に画像を印刷するために、例示的なプリンター105は、ダイ400に電気信号を送って、ダイ220内のそれぞれの抵抗器404、405にエネルギーを供給する。該電気信号は、発熱体404のうちの1つを通って、急速に膨張する流体の蒸気泡を生成する。この膨張する蒸気泡は、ダイ220及び/又は該ダイの(1以上の)層によって画定されるそれぞれの噴射チャンバ434、436から被印刷物115の表面へと対応するノズル438、440を通して流体の小滴を押し出し、これによって、被印刷物115の表面に画像が形成される。
【0024】
図5は、
図1の印刷装置100及び/又は
図2の例示的な印刷カートリッジ200及び/又は
図3の例示的なプリントバー300に使用することができる例示的なダイ及び/もしくはプリントヘッド500のブロック図である。図示の例では、ダイ500は基板502を備えており、該基板上に、発熱体及び/もしくは抵抗器504、506が配置されている。ダイ500は2つの抵抗器504、506を有するものとして図示されているが、これに代えて、ダイ500は、任意の数(たとえば、3、4、5、8、9個など)の抵抗器を含むことができる。いくつかの例では、抵抗器504、506に電荷を与えるために、導電性材料513が、それぞれの抵抗器504、506に隣接して配置される。いくつかの例では、抵抗器504、506及び/又は導電性材料513を環境から保護するために、誘電性のパッシベーション層(誘電性パッシベーション層)が、抵抗器504、506及び/又は導電性材料513の上に配置される。いくつかの例では、隣接する導電性材料513は約3.2マイクロメートルだけ隔置される。
【0025】
抵抗器404、405のキャビテーション損傷の可能性を低減するために、キャビテーションプレート514、516が抵抗器504、506のそれぞれの上に配置されかつ該それぞれに結合される。いくつかの例では、接着剤524、526がキャビテーションプレート504、506の上にそれらを覆うように配置される。しかしながら、他の例では、接着剤524、526を設けなくてもよい。いくつかの例では、接着剤524、526の外縁は、キャビテーションプレート514、516の各々の外縁よりも約2マイクロメートルだけ外側に広がっている(該接着剤のそれぞれの外縁が、該キャビテーションプレートの対応するそれぞれの直近の外縁から約2マイクロメートルだけ外側にはみ出している)。しかしながら、接着剤524、526の外縁を、キャビテーションプレート514、516の各々の外縁に対して任意の位置に配置することができる。いくつかの例では、接着剤524、526は、約10マイクロメートル〜約15マイクロメートルの範囲内の距離だけ互いから離れている。
【0026】
図示の例では、キャビテーションプレート514、516(のサイズ)は、約32.5マイクロメートル×約125マイクロメートルである。しかしながら、キャビテーションプレート514、516を、特定の用途に適合するように任意の適切なサイズとすることができる。たとえば、いくつかの例では、いくつかのキャビテーションプレート514、516のサイズは第1のサイズであり、いくつかのキャビテーションプレート514、516のサイズは該第1のサイズとは異なる第2のサイズである。キャビテーションプレート514、516は、任意の数の層(たとえば、第1、第2及び第3の層からなる3つの層。この場合、第1の層はタンタルを含み、第2の層は白金を含み、第3の層はタンタルを含む)を含むことができる。
【0027】
図6は、
図1の印刷装置100及び/又は
図2の例示的な印刷カートリッジ200及び/又は
図3の例示的なプリントバー300に使用することができる例示的なダイ及び/もしくはプリントヘッド600のブロック図である。図示の例によれば、例示的なダイ600は、抵抗器504、506のそれぞれの上に配置されかつ該それぞれに結合された所定のサイズのキャビテーションプレート602、604を備えている。いくつかの例では、接着剤612、614がキャビテーションプレート602、604の上にそれらを覆うように配置される。他の例では、接着剤612、614を設けなくてもよい。図示の例では、接着剤612、614の各々の外縁は、キャビテーションプレート602、604の各々の外縁よりも約2マイクロメートルだけ外側に広がっている(該接着剤のそれぞれの外縁が、該キャビテーションプレートの対応するそれぞれの直近の外縁から約2マイクロメートルだけ外側にはみ出している)。しかしながら、接着剤612、614の外縁を、キャビテーションプレート602、604の各々の外縁に対して任意の位置に配置することができる。いくつかの例では、隣接する接着剤612、614の(隣接する)外縁は、約10マイクロメートル〜約15マイクロメートルの範囲内の距離だけ互いから離れている。
【0028】
図6のキャビテーションプレート602、604(のサイズ)は、約27.5マイクロメートル×約45マイクロメートルである。しかしながら、キャビテーションプレート602、604を、特定の用途に適合するように任意の適切なサイズとすることができる。たとえば、いくつかの例では、いくつかのキャビテーションプレート602、604のサイズは第1のサイズであり、いくつかのキャビテーションプレート602、604のサイズは該第1のサイズとは異なる第2のサイズである。キャビテーションプレート602、604は、任意の数の層(たとえば、第1、第2及び第3の層からなる3つの層。この場合、第1の層はタンタルを含み、第2の層は白金を含み、第3の層はタンタルを含む)を含むことができる。
【0029】
図7は、
図2の例示的な印刷カートリッジ200及び/又は
図3の例示的なプリントバー300及び/又は
図5の例示的なダイ500及び/又は
図6の例示的なダイ600を製造する例示的な方法700を示している。例示的な方法700は
図7のフローチャートを参照して説明されるが、方法700を実施する他の方法を使用することもできる。たとえば、該方法のブロックの実行順序を変更することができ、及び/又は、説明されているブロックのいくつかを変更し及び/又は削除し及び/又はさらに分割し及び/又は結合することができる。
【0030】
図7の例示的な方法700は、基板402、502上に抵抗器404、405、504、506を配置(ないし堆積)及び/又は形成するステップから開始する(ブロック702)。抵抗器404、405、504、506に電流を供給できるようにするために、導電性材料406、503が、抵抗器404、405、504、506の各々に隣接して形成され及び/又は設けられる(ブロック704)。抵抗器404、405及び/又は導電性材料406を環境から保護するために、パッシベーション層407が、抵抗器404、405、504、506の各々及び導電性材料406の上に配置(ないし堆積)され及び/又は形成される(ブロック706)。
【0031】
それぞれのキャビテーションプレート408、412、514、516、602、604の第1の層424が、それぞれの抵抗器404、405、504、506の上のパッシベーション層408上に付加され、及び/又は配置(ないし堆積)され、及び/又は形成される(ブロック710)。第2の層426が、第1の層424の上に付加され及び/又は配置(ないし堆積)される(ブロック712)。第3の層428が、第2の層426の上に付加され及び/又は配置(ないし堆積)される(ブロック714)。その後、接着剤410、524、526、612、614が、それぞれのキャビテーションプレート408、412、514、516、602、604の上に配置(ないし堆積)され及び/又は形成される(ブロック715)。いくつかの例では、キャビテーションプレート408、412、514、516、602、604のそれぞれのサイズは、それぞれのキャビテーションプレート408、412、514、516、602、604の上にそれらを覆うように配置されている接着剤410、524、526、612、614のサイズよりも小さく及び/又は該接着剤のサイズとは異なる。しかしながら、他の例では、接着剤410、524、526、612、614を設けなくてもよい。
【0032】
キャビテーションプレート408、412、514、516、602、604を保護するために、第1の保護層430及び第2の保護層432が、キャビテーションプレート408、412、514、516、602、604及び/又は接着剤410、524、526、612、614の各々の一部の上に付加される(ブロック716)。ブロック718において、噴射チャンバ434、436が、ハウジング及び/又はダイ220によって囲まれ及び/又は画定され、それぞれのノズル438、440に流体結合される(すなわち該チャンバと該ノズル間で流体が流れることができるように結合される)(ブロック718)。その後、方法700は、終了するかまたはブロック702に戻る。
【0033】
開示されている例は、第1のキャビテーションプレートの障害によって該第1のキャビテーションプレートに隣接する第2のキャビテーションプレートが損傷するのを防止するために、電気的(または電子的)に絶縁(または分離)されたキャビテーションプレートを含むプリンドダイに関連する。いくつかの例では、それらのキャビテーションプレートは空隙によって分離される。他の例では、それらのキャビテーションプレートは、該キャビテーションプレート間に非導電性材料を配置することによって電気的(または電子的)に絶縁(または分離)される。該キャビテーションプレートは、第1の層、第2の層、及び第3の層などの複数の層を含むことができる。
【0034】
本明細書に記載されているように、例示的なプリントヘッドダイは、第1のノズルから流体を噴射させるための第1の抵抗器、第2のノズルから流体を噴射させるための第2の抵抗器、第1の抵抗器を覆う第1のキャビテーションプレート、及び第2の抵抗器を覆う第2のキャビテーションプレートを備え、該第1のキャビテーションプレートは、該第2のキャビテーションプレートから隔置されている。いくつかの例では、第1のキャビテーションプレートは、第1の層、第2の層、及び第3の層を有し、該第2の層は、該第1の層と該第3の層の間に配置される。いくつかの例では、第1の層は約500オングストロームの厚さを有し、第2の層は約3000オングストロームの厚さを有し、第3の層は約500オングストロームの厚さを有する。
【0035】
いくつかの例では、例示的なプリントヘッドダイは、第1の抵抗器に近接する第1のキャビテーションプレートに結合する第1の接着剤と、第2の抵抗器に近接する第2のキャビテーションプレートに結合する第2の接着剤を備える。いくつかの例では、第1のキャビテーションプレートの第1の外縁は、第1の接着剤の第2の外縁に対して(所定の相対的な位置関係で)挿入されないし配置されている。いくつかの例では、第1のキャビテーションプレートの第1の外縁は、第1の接着剤の第2の外縁に対して約2マイクロメートルだけ離れて挿入されないし配置されている。いくつかの例では、例示的なプリントヘッドダイは、第1の抵抗器と第1のキャビテーションプレートとの間に配置された誘電性(の)パッシベーション層を備えている。いくつかの例では、プリントヘッドダイは、第1の噴射チャンバ及び第2の噴射チャンバを備え、第1の噴射チャンバは第1の抵抗器に隣接して配置され、第2の噴射チャンバは第2の抵抗器に隣接して配置される。いくつかの例では、該第1の抵抗器及び該第2の抵抗器は基板上に配置される。いくつかの例では、第1のキャビテーションプレートは、第2のキャビテーションプレートから約10マイクロメートルだけ離れている。
【0036】
例示的な方法は、第1の抵抗器及び第2の抵抗器をダイの基板上に形成すること、第1の抵抗器を覆う第1のキャビテーションプレートを形成すること、及び、第2の抵抗器を覆う第2のキャビテーションプレートを形成することを含み、第1のキャビテーションプレートは、第2のキャビテーションプレートから電気的(または電子的)に絶縁(または分離)される。いくつかの例では、該方法は、第1の抵抗器と第1のキャビテーションプレートとの間に誘電性(の)パッシベーション層を形成することを含む。いくつかの例では、第1のキャビテーションプレートを形成することは、第1の層、第2の層、及び第3の層を形成することを含む。いくつかの例では、該第1の層はタンタルを含み、該第2の層は白金(プラチナ)を含み、該第3の層はタンタルを含む。
【0037】
例示的なプリントヘッドダイは、第1のノズルから流体を噴射させるための第1の抵抗器、第2のノズルから流体を噴射させるための第2の抵抗器、第1の抵抗器を覆う第1のキャビテーションプレート、及び第2の抵抗器を覆う第2のキャビテーションプレートを備え、第1のキャビテーションプレートは、第2のキャビテーションプレートから電気的(または電子的)に絶縁(または分離)される。
【0038】
本明細書及び/又は図面において、いくつかの例示的な方法、装置、及び製造品を開示したが、本発明の範囲はそれらに限定されない。本発明は、本願の特許請求の範囲内に公正に含まれる全ての方法、装置及び製造品をカバーする。