特許第6366868号(P6366868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6366868
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】医療用ミトン型手袋
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/015 20060101AFI20180723BHJP
   A41D 19/01 20060101ALI20180723BHJP
   A41D 19/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A41D19/015 510
   A41D19/01
   A41D19/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-2280(P2018-2280)
(22)【出願日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年1月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517393385
【氏名又は名称】川島 順次
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【弁理士】
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】川島 和彦
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−073209(JP,A)
【文献】 特開2003−305132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/00−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が物を掴むことができないように患者の手に装着可能な医療用ミトン型手袋であって、
略手掌の形状を有し、患者の手を保護するミトンカバー部と、
前記ミトンカバー部内にあって、患者の手の挿入方向とは略直交する方向に配置された略楕円柱形状の掴み部と、
前記ミトンカバー部の手首側に連続一体に形成され、前記医療用ミトン型手袋を患者の手首に固定するための固定部と、を備え
前記ミトンカバー部は、空気圧によって膨張収縮可能な素材で構成され、空気により膨張して膨張時の厚みが上面視での直径より短くなる略球形状となるクッション部、及び手が蒸れないように所々に円形状の開口を有し、
前記クッション部は透明又は半透明素材であり、その任意の位置に前記クッション部を膨圧するための空気栓を有する、ことを特徴とする医療用ミトン型手袋。
【請求項2】
前記ミトンカバー部は、患者の手の平側を保護する下側カバーと、当該下側カバーと線対称となる形状を有して患者の手の小指側の側面で2つ折りにできるように前記下側カバーと連続一体に形成される上側カバーと、を有し、
前記医療用ミトン型手袋は、
前記下側カバー及び前記上側カバーの小指側の側面以外の外縁部に設けられ、前記下側カバー及び前記上側カバーを縫合するための縫合部をさらに備える、ことを特徴とする請求項1記載の医療用ミトン型手袋。
【請求項3】
さらに、前記ミトンカバー部にはデナトニウムベンゾエイトが含有される、ことを特徴とする請求項又はに記載の医療用ミトン型手袋。
【請求項4】
前記略楕円柱形状の掴み部は、患者が手で握ったときに、患者の親指と他の指とが接触しない程度の大きさを有する、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の医療用ミトン型手袋。
【請求項5】
前記縫合部に備わる留め具は、前記外縁部に沿って、前記医療用ミトン型手袋の親指の付け根位置に向かう方向に移動しながら前記下側カバー及び前記上側カバーを縫合し、且つ当該留め具は前記固定部の内部に収容可能となる、ことを特徴とする請求項2乃至のいずれか一項に記載の医療用ミトン型手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ミトン型手袋に関し、特に、患者が物を掴むことができないように患者の手に装着可能な医療用ミトン型手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院などの医療現場において、点滴や透析などの最中に患者が勝手に点滴チューブを外したり、物を千切ったり、たたいたり、或いは皮膚を掻きむしったりするという問題がある。特に、点滴チューブが患者の意思で勝手に外されると患者にとっても非常に危険である。
【0003】
そこで、患者がいたずらに点滴チューブなどを外したりすることができないように、医療現場では、患者の手に取り付ける医療用保護手袋を用いることがある。この医療用保護手袋は、例えば、ミトンなど比較的大型の手袋の内部空間に手の平の形を模した段ボールやプラスチックのような板状体を入れて、患者が手の握るという動作を物理的にできないようにし、その結果、点滴チューブなどの抜去を防止するものである。
【0004】
この種の医療用手袋は従来より様々開発されており、例えば、吸水性のある布地で構成され、肌側指先部には親指と人差し指を挿嵌する指分割部が設置された手のひら部、及び手の甲部とで構成されたミトン型手袋が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、クッション性のある布地の中にプラスチック板を挿入した掴み防止部材とメッシュ生地とから構成され、この掴み防止部材とメッシュ生地との間に手を挿入する空間が形成されたいたずら防止用手袋も開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、手の動きを最小限に抑制するように、手首に止定可能な取付部と、手を覆うカバーとから成り、このカバーは指を屈曲したり伸ばしたりできる空間部を有している医療補助用手袋も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3199588号
【特許文献2】実用新案登録第3110374号
【特許文献3】特開平11-4843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の医療用保護手袋のそのほとんどは、上記特許文献1に示すような布製であったり、又は布製手袋の中に手の平の形をした段ボールやプラスチックなどの板状体を入れたものが用いられている。この場合、特に力の強い患者などは時としてその手袋の内部に収容されている板状体を力で折り曲げて、物を掴むことが可能となり、結果として、患者が点滴チューブを掴んで引き抜いてしまい、その手袋本来の目的を成すことができないという問題がある。また、仮に硬度の高い板状体を手袋内部に収容した場合には医療用保護手袋自体の重量が増えてしまい、実用的ではない。
【0007】
さらに、手の平の形を有する板状体を手袋内部に入れた場合、患者は常に手の平を開いた状態を長期間維持する必要があり、患者が医療用手袋装着時のストレスを余計に感じる要因となっている。
【0008】
またさらに、この種の医療用手袋は、布製で手全体を覆うように構成されるため、長期間装着すると手が蒸れ、痒くなったり、内部の手の様子が全く分からないために、患者が不安になるなど余分なストレスを感じる原因となる。
【0009】
そして、上記特許文献3に示す医療用補助手袋は、確かに患者は物は掴むことはできないと解されるが、大型のカバーを備えるなど手袋自体が非常に大掛かりであり実用性が低く、実際の医療現場で使用するには適していない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、患者の手に装着された際に、患者が点滴チューブなどの物を掴むことができないようにすると共に、患者に余分なストレスを与えることをできるだけ軽減した医療用ミトン型手袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、患者が物を掴むことができないように患者の手に装着可能な医療用ミトン型手袋であって、略手掌の形状を有し、患者の手を保護するミトンカバー部と、前記ミトンカバー部内にあって、患者の手の挿入方向とは略直交する方向に配置された略楕円柱形状の掴み部と、前記ミトンカバー部の手首側に連続一体に形成され、前記医療用ミトン型手袋を患者の手首に固定するための固定部と、を備え、前記ミトンカバー部は、空気圧によって膨張収縮可能な素材で構成され、空気により膨張して膨張時の厚みが上面視での直径より短くなる略球形状となるクッション部、及び手が蒸れないように所々に円形状の開口を有し、前記クッション部は透明又は半透明素材であり、その任意の位置に前記クッション部を膨圧するための空気栓を有する、ことを特徴とするものである。
【0012】
この医療用ミトン型手袋において、前記ミトンカバー部は、患者の手の平側を保護する下側カバーと、当該下側カバーと線対称となる形状を有して患者の手の小指側の側面で2つ折りにできるように前記下側カバーと連続一体に形成される上側カバーと、を有し、前記医療用ミトン型手袋は、前記下側カバー及び前記上側カバーの小指側の側面以外の外縁部に設けられ、前記下側カバー及び前記上側カバーを縫合するための縫合部をさらに備えることが好ましい。
【0015】
この医療用ミトン型手袋において、さらに、前記ミトンカバー部にはデナトニウムベンゾエイトが含有されることが好ましい。
【0018】
この医療用ミトン型手袋において、前記略楕円柱形状の掴み部は、患者が手で握ったときに、患者の親指と他の指とが接触しない程度の大きさを有することが好ましい。
【0019】
この医療用ミトン型手袋において、前記縫合部に備わる留め具は、前記外縁部に沿って、前記医療用ミトン型手袋の親指の付け根位置に向かう方向に移動しながら前記下側カバー及び前記上側カバーを縫合し、且つ当該留め具は前記固定部の内部に収容可能となることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る医療用ミトン型手袋は、患者が物を掴むことができないように患者の手に装着可能な医療用手袋であって、略手掌の形状を有し、患者の手を保護するミトンカバー部と、ミトンカバー部内にあって患者の手の挿入方向とは略直交する方向に配置された略楕円柱形状の掴み部と、ミトンカバー部の手首側に連続一体に形成されて医療用ミトン型手袋を患者の手首に固定するためのテープ部とを備える。この構成により、本願発明では、患者の手に装着された際に、患者が点滴チューブなどの物を掴むことができないようにすると共に、患者に余分なストレスを与えることをできるだけ軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1に係る医療用ミトン型手袋の開状態を示す平面図である。
図2】同上医療用ミトン型手袋の取り付け手順を説明するための平面図である。
図3】(a)同上医療用ミトン型手袋の閉状態を示す平面図、(b)同上医療用ミトン型手袋の閉状態での一部透視平面図である。
図4】同上医療用ミトン型手袋に挿入された手の状態を説明するための図である。
図5】本発明の実施の形態1の変形例に係る医療用ミトン型手袋の平面図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る医療用ミトン型手袋の開状態を示す平面図である。
図7】同上医療用ミトン型手袋の取り付け手順を説明するための平面図である。
図8】同上医療用ミトン型手袋の閉状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る医療用ミトン型手袋について図1乃至図4を参照して説明する。この医療用ミトン型手袋は、主に、医療現場において患者が点滴チューブなどを抜去したり、物を掴んだりするという動作ができないようにするため、患者の手に装着可能な手袋である。また、通常、ミトンとは、指を入れる部分が親指だけ分かれていて、他の指は1つにまとめられている手袋のことを指すが、本実施の形態1に係る医療用ミトン型手袋は、必ずしも親指の部分だけが分かれた二股手袋とする必要性はない。
【0023】
最初に、本実施の形態1に係る医療用ミトン型手袋の構造に関して、図1を参照しながら説明する。図1は、医療用ミトン型手袋1(以下、手袋1と記す)を開いた状態を示す。この手袋1は、ミトンカバー部2、掴み部3、ファスナー部(縫合部)4、テープ部(固定部)5、及び空気栓6を備える。ミトンカバー部2は、下側カバー2Aと上側カバー2Bとから構成される。
【0024】
ミトンカバー部2は、透明強化ビニールなどの空気圧によって膨張収縮可能な透明又は半透明素材で構成され、空気により膨張して平らな略球形状(上面視で略円形状)となるクッション部2c、及び内部に収容される手が蒸れないように所々に円形状の開口2dが形成されている。ミトンカバー部2は、中に入れられた手が透視できるように構成され、また、クッション部2cによって手を守るようになっている。このクッション部2cは、例えば直径20mm及び膨張時の厚みが15mm程度の平らな略球形状、開口2dは、直径5mm程度となる。また、クッション部2cは、手袋1に手を入れた使用状態では潰れたような円形で手と接触するために、手の肌に触れる面を極力少なくすることができる。
【0025】
ミトンカバー部2を構成する下側カバー2Aは、図2に示すように、患者の手の平を載置する側であり、上面視で5本の指を含めた手の平全体の略手掌の形状を有し、患者の手の平を保護する。上側カバー2Bは、本図に示すように、下側カバー2と線対称となる形状を有し、患者の手の小指側の側面で2つ折りにできるように下側カバー2と連続一体に形成されている。
【0026】
これらの下側カバー2A、及び上側カバー2Bの素材には、例えばデナトニウムベンゾエイトが含有される。具体的には、ミトンカバー部2の素材は、例えば、浮輪などで使用されるポリ塩化ビニルなどの透明ビニール製の素材である。この際、ミトンカバー部2には任意の位置にクッション部2cを膨張するための空気栓6が形成され、口などを用いて空気栓6から圧縮空気を入れて、浮輪のようにクッション部2cが膨張するように構成される。なお、通常は空気栓6には弁が備わる。
【0027】
下側カバー2A、及び上側カバー2Bに含有されるデナトニウムベンゾエイト(正式名は安息香酸デナトニウム)は、極めて強い苦みをもつことで知られ、幼児などによる誤飲防止のための添加物として利用されている。このため、患者が医療用ミトン型手袋1を誤って飲み込んだり、又は意図的に噛むという動作を確実に防止できる。
【0028】
掴み部3は、略楕円柱形状(垂直断面が丸長方形状)であり、下側カバー2Aの患者の手の平が載置される側に、患者の手の医療用ミトン型手袋1への挿入方向(図中の矢印Xに示す方向)とは略直交する方向(又は患者の手の付け根に沿った方向)に配置されたクッション性を有する部材である。すなわち、掴み部3は、略楕円柱形状(平べったく角が丸くなっている形状)であり、また、スクィーズの素材で、柔らかく握って遊べるような素材であればよい。また、掴み部3は、その両端位置で下側カバー2Aなどに一体接続されていても良い。
【0029】
ファスナー部4は、図1図2に示すように、上側カバー2B及び下側カバー2Aの小指側の側面以外の外縁部に設けられ、上側カバー2B及び下側カバー2Aを縫合するためのファスナーである。このファスナー部4は、金属製やプラスチック製の留め具4aを有する。留め具4aは、例えば外縁部に沿って、医療用ミトン型手袋1の親指の付け根位置に向かう方向に移動しながら下側カバー2A及び上側カバー2Bを縫合する。また、図3に示すように、患者が怪我などをすることがないように留め具4aはテープ部5の内部に収容可能となる。この構成により、患者はファスナー部4を容易に外したり壊すことができず、また、留め具4aを利用して物を叩くなどの危険な行為を抑止できる。
【0030】
テープ部5は、例えば帯状体のマジックテープ(登録商標)など、その両端側においてワンタッチで係合できるような係合部5aを有し、手袋1が患者の手から安易に外れないように固定する。なお、テープ部5はマジックテープに限定されるものではなく、紐やバックルなど、患者の手袋1を手首に固定できる構成であれば良い。
【0031】
次に、本実施の形態2に係る医療用ミトン型手袋1の患者の手への装着手順に関して、図3を参照しながら説明する。
【0032】
最初に、医療用ミトン型手袋1の空気栓6からミトンカバー部2に空気が充填される。次に、患者の手の平側を下側カバー2Aに置き、患者に略楕円柱形状の掴み部3を握らせ、さらに、矢印Yに示す方向で上側カバー2Bを患者の手の甲に被せて手袋1を2つ折りにする。その後、矢印Zに示す方向にファスナー部4を移動させてファスナー部4で上側カバー2B及び下側カバー2Aを縫合する。最後に、ファスナー部4の留め具4aをテープ部5の帯状体の内部に収容するようにテープ部5を係合して、手袋1を患者の手に確実に装着・固定する。このように、親指の付け根に掴み部3をしっかり当てて、手首をテープ部5のベルトで固定することで手袋1が前にズレることを防止する。
【0033】
次に、本実施の形態2に係る医療用ミトン型手袋1の装着時の、患者の手の状態を、図4を参照しながら説明する。
【0034】
手袋1のミトンカバー部2は側面から見ると外方にある程度膨圧されている。この手袋1のミトンカバー部2はビニール製であり柔軟性を有しているため、図4に示すように、患者は力で手袋1をある程度までは折ることができる。しかしながら、手袋1の内部には患者が手で握ったときに、患者の親指と他の指とが接触しない程度の大きさの略楕円柱形状のスクィーズ可能な掴み部3が配置されているために、患者は手袋1を折り曲げることができず、その結果、物を掴むことができない。すなわち、本実施の形態1に係る手袋1では、患者は手をある程度までは握ることができるが物を掴むことができない。
【0035】
また、手袋1がテープ部5で患者の手首に固定されるため、患者は手袋1を自らの意思では取り外すことができない。仮に、患者が手袋を口で噛んで取り外そうとしても、ミトンカバー部2の素材にはデナトニウムベンゾエイトが含有されているために、非常に苦く、口で噛んで取り外すようなことも確実に防止できる。
【0036】
以上の説明のように、本実施の形態1に係る医療用ミトン型手袋1は、患者が物を掴むことができないように患者の手に装着可能な医療用手袋であって、略手掌の形状を有し、患者の手を保護するミトンカバー部2と、ミトンカバー部2内にあって患者の手の挿入方向とは略直交する方向に配置された略楕円柱形状の掴み部3と、ミトンカバー部2の手首側に連続一体に形成されて医療用ミトン型手袋1を患者の手首に固定するためのテープ部5とを備える。この構成により、手袋1は、患者の手に装着された際に、患者が点滴チューブなどの物を掴むことができないようにすると共に、患者に余分なストレスを与えることをできるだけ軽減できる。
【0037】
具体的には、手袋1の内部には略楕円柱形状の掴み部3が配置されるために、患者は、力で手袋1を折ることはできるが親指と他の指とが接触できないため物を掴むことができない。その結果、患者が勝手に点滴チューブなどを抜いたり、千切ったりという行為を確実に防止できる。また、患者は手を握ることができるために、長時間にわたって手袋1を装着したとしても感じるストレスを軽減できる。
【0038】
そして、ミトンカバー部2は、空気圧によって膨張収縮可能な素材で構成され、空気により膨張する平らな略球形状のクッション部2c、及び手が蒸れないように所々に円形状の開口2dを有するために、通気性が良く、手袋1の内部が蒸れることがない。また、クッション部2cにより手を守ることができる。さらに、ミトンカバー部2は、圧縮膨張可能なビニール製のため手袋1は非常に軽量となり、不使用時においては空気を抜いた状態で非常にコンパクトにできる。
【0039】
さらに、ミトンカバー部2は透明又は半透明であるために、手袋1の内部が見え、患者も自身の手が見えるために安心できる。またさらに、手袋1のミトンカバー部2の素材にはデナトニウムベンゾエイトが含有されているために、患者が口で手袋1を噛んで取り外すようなことができない。そして、手袋1はテープ部5を備えるため、手袋1を患者の手首に簡単に装着でき、且つ手袋1がしっかりと患者の手首に固定されているので、患者は手袋1を自分の意志で勝手に取り外すことができない。
【0040】
(変形例)
本実施の形態1の変形例について図5を参照して説明する。本変形例において、手袋1のミトンカバー部2は、下側カバーと上側カバーとは最初から縫合されている。従って、使用者は手を手袋1に挿入して、掴み部3を掴み、テープ部5で患者の手首に固定するのみで、上記実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0041】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る医療用ミトン型手袋について図6乃至図8を参照して説明する。なお、上記実施の形態1と同様な構成に関しては同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0042】
最初に、本実施の形態2に係る医療用ミトン型手袋10の構造に関して、図6を参照しながら説明する。図6は、医療用ミトン型手袋10(以下、手袋10と記す)において、下側カバー2A及び上側カバー2Bは、空気圧によって膨張収縮可能な線材2eを、メッシュ状(格子状)に組み込んで形成されている。この際、空気栓6からの圧縮空気を受けてこの線材2eが膨張するように構成され、例えば膨圧された状態で5mm角程度の指が外部に突出しないように格子状に形成される。
【0043】
また、掴み部3は、例えば、任意の位置に空気挿入口(図示せず)を有し、患者の様々な大きさの手に対応可能となるように、空気圧によって膨張収縮可能な素材(ビニール製など)がその両端位置で下側カバー2Aに一体接続されている。または、SLMのように予めサイズが決まった略楕円柱形状の掴み部3が膨圧された状態で、その両端位置で下側カバー2に一体接続されていても良い。
【0044】
次に、本実施の形態2に係る医療用ミトン型手袋1の患者の手への装着手順に関して、図7及び図8を参照しながら説明する。
【0045】
最初に、医療用ミトン型手袋1のメッシュ状の下側カバー2A、及び上側カバー2Bの空気栓6から空気が充填され、また、略楕円柱形状の掴み部3も同様に空気挿入口から空気が充填される。この際、掴み部3の空気の充填率は患者の手の大きさに応じて変更可能であり、患者が手で握ったときに、患者の親指と他の指とが接触しない程度の大きさに掴み部3を膨張させる。
【0046】
次に、患者の手の平側を下側カバー2Aに置き、患者に略楕円柱形状の掴み部3を握らせ、さらに、矢印Yに示す方向で上側カバー2Bを患者の手の甲に被せて手袋1を2つ折りにする。その後、矢印Zに示す方向にファスナー部4を移動させてファスナー部4で上側カバー2B及び下側カバー2Aを縫合する。最後に、ファスナー部4の留め具4aをテープ部5の帯状体の内部に収容するようにテープ部5を係合して、手袋10を患者の手に確実に装着・固定する。
【0047】
以上の説明のように、本実施の形態2に係る医療用ミトン型手袋10においてミトンカバー部2は、空気圧によって膨張収縮可能な線材2eを、メッシュ状(格子状)に組み込んで形成されている。そして、この構成においても、上記実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、手袋1の掴み部3は略楕円柱形状以外にも親指と他の指とが接触しない形状であれば良い。また、手袋1のミトンカバー部2の素材はビニール製に限定されるものではなく、また、透明素材や半透明素材に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1,10 医療用ミトン型手袋
2 ミトンカバー部
2A 下側カバー
2B 上側カバー
2c クッション部
2d 開口
2e 線材
3 略楕円柱形状の掴み部
4 ファスナー部(縫合部)
4a 留め具
5 テープ部(固定部)
6 空気栓
【要約】
【課題】患者の手に装着された際に、患者が点滴チューブなどの物を掴むことができないようにすると共に、患者に余分なストレスを与えることをできるだけ軽減した医療用ミトン型手袋を提供する。
【解決手段】医療用ミトン型手袋1は、患者が物を掴むことができないように患者の手に装着可能な医療用手袋であって、略手掌の形状を有し、患者の手を保護するミトンカバー部2と、ミトンカバー部2内にあって患者の手の挿入方向とは略直交する方向に配置された略楕円柱形状の掴み部3と、ミトンカバー部2の手首側に連続一体に形成されて医療用ミトン型手袋1を患者の手首に固定するためのテープ部5とを備える。この構成により、医療用ミトン型手袋1では、装着時には患者が点滴チューブなどの物を掴むことができないようにすると共に、患者に余分なストレスを与えることをできるだけ軽減できる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8