(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
血管新生、浸潤、または転移を特徴とする腫瘍またはがんの治療のための医薬組成物であって、薬剤学的に許容される担体中にあってもよい、請求項1に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
抗プログラム死1タンパク質(Programmed Death 1 protein)(PD−1)抗体と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
HER2陰性乳がんまたは頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)の治療のための医薬組成物であって、請求項1に記載の化合物またはその薬剤学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義
本明細書では、用語「塩」は、任意かつすべての塩を意味し、薬剤学的に許容される塩を包含する。用語「薬剤学的に許容される塩」は、適切な医学的判断の射程内であり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴うことなくヒトおよび下等動物の組織と接触させて使用するのに適しており、合理的な利益/リスク比に見合っている塩を意味する。薬剤学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。例えば、Bergeらは、参照により本明細書に取り込まれている非特許文献12において薬剤学的に許容される塩を詳細に説明している。本発明化合物の薬剤学的に許容される塩には、適当な無機および有機酸および塩基に由来するものが含まれる。薬剤学的に許容される無毒性酸付加塩の例は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、過塩素酸等を用いて、または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸等を用いて、あるいはイオン交換等の当技術分野で公知の他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。他の薬剤学的に許容される塩には、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、硫酸水素、ホウ酸、酪酸、カンファー酸、カンファースルホン酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グリセロリン酸、グルコン酸、ヘミ硫酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヨウ化水素酸、2−ヒドロキシ−エタンスルホネート、ラクトビオン酸、乳酸、ラウリン酸、ラウリル硫酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、ペクチン酸、過硫酸、3−フェニルプロピオン酸、リン酸、ピクリン酸、ピバル酸、プロピオン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸、ウンデカン酸、吉草酸の塩等が含まれる。適切な塩基に由来する塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、N
+(C
1〜4アルキル)
4−の塩が含まれる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が含まれる。さらなる薬剤学的に許容される塩には、適切な場合、対イオン、例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸、およびアリールスルホン酸塩等を使用して形成される無毒性アンモニウム、4級アンモニウム、およびアミンカチオンが含まれる。化合物(1)は、遊離塩基としても提供されており、投与することができる。
【0042】
同じ分子式を有するが、その原子の結合の特質もしくは配列、または空間におけるその原子の配置が異なる化合物は、「異性体」と呼ばれることも理解されるべきである。空間におけるその原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。
【0043】
用語「組成物」および「製剤」は、互換的に使用される。
【0044】
投与が企図されている「対象」は、ヒト(すなわち、任意の年齢群の男性または女性、例えば、小児対象(例えば、乳児、子供、もしくは青年)、または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、もしくは高齢成人))、あるいは非ヒト動物を意味する。ある特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、カニクイザルもしくはアカゲザル)、商業的に関連した哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、もしくはイヌ)、またはトリ(例えば、商業的に関連したトリ、例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、もしくはシチメンチョウ等))である。ある特定の実施形態では、非ヒト動物は、魚、爬虫類、または両生類である。非ヒト動物は、発達の任意の段階における雄であっても雌であってもよい。非ヒト動物は、トランスジェニック動物または遺伝子操作された動物であってもよい。用語「患者」は、疾患を治療する必要のあるヒト対象を意味する。
【0045】
用語「投与する」、「投与すること」、または「投与」は、対象中に、または対象上に本明細書に記載の化合物またはその組成物を埋め込み、吸収、経口摂取、注射、吸入、または別段に導入することを意味する。
【0046】
用語「治療」、「治療する」、および「治療すること」は、本明細書に記載の疾患を回復させ、軽減し、その発症を遅延させ、またはその進行を阻害することを意味する。一部の実施形態では、治療は、疾患の1つまたはそれ以上の徴候または症状が発生し、または観察された後に投与されてもよい。他の実施形態では、治療は、疾患の徴候または症状の非存在下で投与されてもよい。例えば、治療は、症状を発症する前に感受性の対象に投与されうる。治療は、例えば、再発を遅延させ、または予防するために、症状が解決した後も継続されることがある。
【0047】
本明細書に記載の化合物の「有効量」は、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な量を意味する。本明細書に記載の化合物の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、治療されている条件、投与モード、対象の年齢および健康等の要因に依存して変動することがある。ある特定の実施形態では、有効量は、治療有効量である。代替として、別個の方法または使用では、本発明は、指摘され、有効である場合、予防的治療として使用されてもよい。ある特定の実施形態では、有効量は、単回用量での本明細書に記載の化合物の量である。ある特定の実施形態では、有効量は、複数回用量での本明細書に記載の化合物の組合せ量である。
【0048】
本明細書に記載の化合物の「治療有効量」は、状態の治療において治療上の利益をもたらし、または状態と関連した1つもしくはそれ以上の症状を遅延させ、もしくは最小にするのに十分な量である。化合物の治療有効量は、状態の治療において治療上の利益をもたらす、単独の、または他の療法と組み合わせた治療剤の量を意味する。用語「治療有効量」は、全体的な療法を改善し、状態の症状、徴候、もしくは原因を低減もしくは回避し、かつ/または別の治療剤の治療有効性を増強する量を包含することができる。ある特定の実施形態では、治療有効量は、記載した任意の疾患または状態を治療するのに十分な量である。
【0049】
本明細書では、「阻害」、「阻害すること」、「阻害する」、および「阻害剤」等は、生物学的過程(例えば、腫瘍増殖)の活性を低減、減速、停止、または予防する化合物の能力を意味する。ある特定の実施形態では、阻害は、約45%〜50%である。ある特定の実施形態では、阻害は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%、または100%である。
【0050】
用語「新生物」および「腫瘍」は、本明細書で互換的に使用され、組織の異常な塊であって、塊の増殖が正常組織の増殖を凌駕し、それと協調しない、塊を意味する。新生物または腫瘍は、以下の特性:細胞分化(形態学および機能性を含む)の程度、増殖の速度、局所的浸潤、転移に応じて、「良性」または「悪性」でありうる。「良性新生物」は一般に、高分化型であり、悪性新生物より増殖が特徴的に遅く、原発部位に局在化したままである。さらに、良性新生物は、遠位部位に浸潤、侵入、または転移する能力を有さない。対照的に、「悪性新生物」は一般に、低分化型(退形成)であり、周囲組織の進行性の浸潤、侵襲、破壊を伴って特徴的に急速に増殖する。さらに、悪性新生物は一般に、遠位部位に転移する能力を有する。用語「転移」、「転移性の」、または「転移する」は、原発性または元の腫瘍から別の臓器または組織へのがん性細胞の蔓延または遊走を意味し、原発性または元の腫瘍の組織型の、かつ続発性(転移性)腫瘍が位置している臓器または組織の組織型でない「続発性腫瘍」または「二次細胞塊」の存在によって典型的には識別可能である。
【0051】
用語「がん」は、制御不能に増殖し、正常な体組織に浸潤し、それを破壊する能力を有する異常細胞の発達によって特徴付けられる疾患のクラスを意味する。
【0052】
用語「まれながん」は、相対的に少数の患者に生じるがんを意味する。まれながんは、これらに限定されないが、肉腫(例えば、軟部肉腫、脂肪肉腫、子宮肉腫、平滑筋肉腫、粘液線維肉腫、骨肉腫、血管肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、横紋筋肉腫)、悪性リンパ腫、胸腺がん(例えば、胸腺腫)、中皮腫、消化管間質腫瘍(GIST)、神経内分泌がん、眼がん、脳腫瘍、骨軟部腫瘍(bone soft tissue tumors)、皮膚がん、および胚細胞腫瘍。含む
【0053】
用語「抗がん剤」は、対象におけるがんを治療する(対象におけるがんまたは腫瘍を阻害する)のに有用な治療剤を意味する。抗がん剤は、バイオ療法抗がん剤(biotherapeutic anti-cancer agents)ならびに化学療法剤(chemotherapeutic agents)を包含する。
【0054】
ある特定の実施形態の詳細な説明
以下に、本発明の実施形態等を参照して本発明を詳細に説明する。本発明は、化合物(例えば、化合物(1))、およびその薬剤学的に許容される塩または同位体標識誘導体、ならびにその医薬組成物を提供する。本発明は、対象における腫瘍増殖を阻害し、かつ/またはがんを治療する方法であって、対象に有効量の本明細書に提供される化合物または組成物を投与することを含む、方法も提供する。化合物または組成物は、本明細書に記載した通り、単剤療法として、または別の療法と組み合わせて投与されてもよい。さらに別の態様では、本発明は、化合物(1)、およびこの目的に有用な合成中間体を合成する方法を提供する。
【0055】
本発明は、薬剤学的に許容される担体または賦形剤中にあってもよい、水和物、溶媒和物、または多形の形態であってもよい、構造:
【化2】
の化合物、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体を含む。
【0056】
化合物(1)は、結晶多形として存在してもよく、本発明化合物は、いずれかの単一の結晶形であっても二以上の結晶形の混合物であってもよい。化合物(1)は、非晶形で存在することができ、または無水物もしくは水和物等の溶媒和物でありうる。
【0057】
本発明には、化合物(1)およびその薬剤学的に許容される塩の同位体標識誘導体が含まれる。同位体標識化合物は、原子の1つまたはそれ以上が自然界に通常見出される原子質量か質量数と異なる原子質量か質量数を有する原子によって置き換えられていること以外、化合物(1)と等価である。本発明化合物中に組み入れることができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、ヨウ素、臭素、および塩素の同位体、例えば、
2H、
3H、
11C、
13C、
14C、
18F、
35S、
123I、および
125I等が含まれる。
【0058】
同位体標識化合物、例えば、
3Hおよび/または
14Cの放射性同位体が組み入れられた化合物等は、医薬および/または基質の組織分布アッセイに有用である。同位体
3Hおよび
14Cは、これらの同位体を容易に調製および検出することができるため有用であると考えられている。同位体
11Cおよび
18Fは、PET(ポジトロン放出断層撮影)(positron emission tomography)で有用である。同位体
125Iは、SPECT(単光子放出コンピュータ断層撮影)(single photon emission computed tomography)で有用と考えられており、脳イメージングで有用可能性がある。
2H等のより重い同位元素による置換は、より高い代謝的安定性による生体内半減期の増加または必要用量の減少等のある種の治療上の利点を生じさせ、それ故に、ある状況下では有用と考えられている。同位体標識化合物は、容易に利用可能な同位体標識試薬を非同位体標識試薬の代わりに用いて、以下の図式および/または例に開示された手順を行うことによって一様に調製することができる。
【0059】
化合物(1)は、生物学的に活性な低分子量化合物の標的タンパク質を捕捉するためのケミカルプローブとして使用することができる。具体的には、本発明化合物は、本化合物の活性発現に必須な構造部分以外の部分に、非特許文献13または特許文献43等に記載の方法で標識基、リンカー等を導入することでアフィニティークロマトグラフィープローブ、フォトアフィニティープローブ等に変換することができる。
【0060】
このようなケミカルプローブに用いる標識基、リンカー等の例として、以下の基(1)〜(5)に属する基が挙げられる。(1)光親和性標識基(例えば、ベンゾイル基、ベンゾフェノン基、アジド基、カルボニルアジド基、ジアジリジン基、エノン基、ジアゾ基、ニトロ基等)および化学親和性基(例えば、アルファー炭素原子がハロゲン原子で置換されたケトン基、カルバモイル基、エステル基、アルキルチオ基、α、β−不飽和ケトン、エステル等のマイケル受容体、オキシラン基等)等のタンパク質標識基、(2)−S−S−、−O−Si−O−、単糖(グルコース基、ガラクトース基等)、二糖(ラクトース等)等の開裂可能なリンカー、および酵素反応で開裂可能なオリゴペプチドリンカー、(3)ビオチン、3−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4H−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン−3−イル)プロピオニル基等のフィッシングタグ基、(4)
125I、
32P、
3H、
14C等の放射性標識基;フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、7−ニトロフラザニル、3−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4H−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン−3−イル)プロピオニル基等の蛍光標識基;ルシフェリン、ルミノール等の化学発光基;ランタノイド金属イオン、ラジウムイオン等の重金属イオンを検出することができるマーカー、ならびに(5)ガラスビーズ、ガラスベッド、マイクロタイタープレート、アガロースビーズ、アガロースベッド、ポリスチレンビーズ、ポリスチレンベッド、ナイロンビーズ、ナイロンベッド等の固相担体と結合させる基。
【0061】
上記の基(1)〜(5)より選択される標識基等を上記文献のいずれかに記載の方法等に準じて本発明化合物に導入して調製されるプローブは、新たな創薬ターゲットの探索に有用なマーカータンパクの同定のためのケミカルプローブとして用いることができる。
【0062】
本明細書において使用する「塩」の例には、無機酸との塩、有機酸との塩、酸性アミノ酸との塩が含まれ、特に、薬剤学的に許容される塩が好ましい。また、本発明化合物の塩には、その薬剤学的に許容される塩の無水物と水和物等の薬剤学的に許容される塩の溶媒和物とが包含される。無機酸との塩の好ましい例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等との塩が挙げられ、有機酸との塩の好ましい例としては、例えば酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ステアリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。酸性アミノ酸との塩の好ましい例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
【0063】
本発明に係る化合物(1)が化合物(1)の塩または化合物(1)の水和物として得られる場合では、塩および水和物は、従来法で化合物(1)の遊離体に変換することができる。
【0064】
医薬組成物、キット、および投与
本発明は、化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体は、医薬組成物中に有効量(例えば、治療有効量)で提供される。
【0065】
本明細書に記載の医薬組成物は、薬理学の技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。一般に、このような準備方法は、化合物(1)(すなわち、「活性成分」)を担体もしくは賦形剤、および/または1種もしくはそれ以上の他の副成分と一緒に、次いで必要な、かつ/または望ましい場合、生成物を成形および/または包装して所望の単回または複数回用量ユニットにすることを含む。
本発明医薬組成物は、日本薬局方、16版、米国薬局方、および欧州薬局方、9版の調製のための一般規則に記載の方法等の公知の方法で調製することができる。本発明医薬組成物は、剤形に応じて適切に患者に投与することができる。
【0066】
医薬組成物は、バルクで、一つの単一単位用量として、かつ/または複数の単一単位用量として調製、包装、および/または販売することができる。「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は一般に、対象に投与される活性成分の投与量に等しく、かつ/またはこのような投与量の2分の1もしくは3分の1等のこのような投与量の好都合な画分である。
【0067】
本明細書に記載の医薬組成物中の活性成分、薬剤学的に許容される賦形剤、および/または任意の追加成分の相対量は、治療される対象の個体差、サイズ、および/または状態に応じて、かつさらに、組成物が投与される経路に応じて変動することになる。組成物は、0.1%から100%(w/w)の間の活性成分を含みうる。
【0068】
提供される医薬組成物の製造において使用される薬剤学的に許容される賦形剤としては、不活性な希釈剤、分散剤および/もしくは顆粒化剤、表面活性剤および/もしくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、潤滑剤、ならびに/または油が挙げられる。カカオバターおよび坐剤ワックス等の賦形剤、着色剤、被覆剤、甘味料、香味料、芳香剤も、組成物中に存在しうる。
【0069】
本明細書に提供される化合物は、典型的には、投与の容易さ、投与量の均一性のために単位剤形で製剤化される。しかし、本明細書に記載の組成物の総一日使用量は、適切な医学的判断の射程内で医師が決定することになることが理解されるであろう。任意の特定の対象または有機体の具体的な治療有効用量レベルは、治療されている疾患、および障害の重症度;使用される具体的な活性成分の活性;使用される具体的な組成物;対象の年齢、体重、全体的な健康、性別、食餌;投与の時間、投与経路、使用される具体的な活性成分の排泄率;治療の継続時間;使用される具体的な活性成分と組み合わせて、または同時に使用される薬物;および医術において周知の同様の要因を含めて様々な要因に依存することになる。
【0070】
本発明化合物(化合物(1))ならびに本明細書に提供されるその組成物は、経腸(例えば、経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内、直腸、膣内、腹腔内、局部的な(散剤、軟膏、クリーム、および/もしくは点滴剤のような)、粘膜、経鼻、頬側、舌下を含めた任意の経路によって;気管内点滴注入、気管支点滴注入、および/もしくは吸入によって;かつ/または経口スプレー剤、鼻腔用スプレー剤、および/もしくはエアロゾルとして投与することができる。具体的に企図する経路は、経口投与、静脈内投与(例えば、全身静注)、血液および/もしくはリンパ供給を介した局所投与、ならびに/または患部への直接投与である。一般に、最も適切な投与経路は、作用物質の特質(例えば、胃腸管環境内でのその安定性)、および/または対象の状態(例えば、対象が経口投与を許容することができるか)を含めた様々な要因に依存することになる。
【0071】
有効量を実現するのに要求される化合物(1)の正確な量は、例えば、対象の種、年齢、および一般的な条件、副作用または障害の重症度、特定の化合物の素性、投与モード等に応じて対象によって変動することになる。有効量は、単回用量(例えば、単回経口用量)または複数回用量(例えば、複数回経口用量)で含められてもよい。ある特定の実施形態では、複数回用量が対象に投与され、または組織もしくは細胞に施用される場合、複数回用量のうちの任意の2つの用量は、異なる、または実質的に同じ量の本明細書に記載の化合物を含む。ある特定の実施形態では、複数回用量が対象に投与され、または組織もしくは細胞に施用される場合、対象に複数回用量を投与し、または組織もしくは細胞に複数回用量を施用する頻度は、非限定例では、1日3回の用量、1日2回の用量、1日1回の用量、1日おきに1回の用量、3日おきに1回の用量、毎週1回の用量、2週間に1回の用量、3週間に1回の用量、もしくは4週間に1回の用量、または薬物送達デバイスを用いて選択された時間にわたるさらに遅い用量制御送達でありうる。ある特定の実施形態では、対象に複数回用量を投与し、または組織もしくは細胞に複数回用量を施用する頻度は、1日当たり1回の用量である。ある特定の実施形態では、対象に複数回用量を投与し、または組織もしくは細胞に複数回用量を施用する頻度は、1日当たり2回の用量である。ある特定の実施形態では、対象に複数回用量を投与し、または組織もしくは細胞に複数回用量を施用する頻度は、1日当たり3回の用量である。ある特定の実施形態では、複数回用量が対象に投与され、または組織もしくは細胞に施用される場合、複数回用量の最初の用量と最後の用量との間の継続時間は、約または少なくとも1日、2日、4日、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、6カ月、9カ月、1年、2年、3年、4年、5年、7年、10年、15年、20年、または対象、組織、もしくは細胞の寿命である。ある特定の実施形態では、複数回用量の最初の用量と最後の用量との間の継続時間は、約または少なくとも3カ月、6カ月、または1年である。ある特定の実施形態では、複数回用量の最初の用量と最後の用量との間の継続時間は、対象、組織、または細胞の寿命である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の用量(例えば、単回用量、または複数回用量の任意の用量)としては、独立に、0.001mg/kgから0.01mg/kgの間の、または0.01mg/kgから0.1mg/kgの間の、0.1mg/kgから1mg/kgの間(両端を含む)の化合物(1)が挙げられる。例は、剤形中に少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、10、5、20、25、または50mgの活性化合物、またはその塩を有する剤形である。
【0072】
本明細書に記載の用量範囲は、提供される医薬組成物を成人に投与するためのガイダンスを提供する。例えば、子供または青年に投与される量は、医師または当業者が判定することができ、成人に投与される量より低く、またはそれと同じにすることができる。
【0073】
キット(例えば、医薬品パック)も本開示によって包含されている。提供されるキットは、医薬組成物または化合物(1)ならびに容器(例えば、バイアル、アンプル、瓶、シリンジ、および/もしくは取り出し容器、または他の適切な容器)を含んでもよい。一部の実施形態では、提供されるキットは、医薬組成物または化合物(1)を希釈または懸濁させるための薬剤学的賦形剤を含む第2の容器をさらに含んでもよい。一部の実施形態では、第1の容器および第2の容器中に提供される医薬組成物または化合物(1)が組み合わされて1つの単位剤形を形成する。本明細書に記載のキットは、別個の組成物として本明細書に記載の1種またはそれ以上の追加の医薬剤を含んでもよい。
【0074】
治療の方法および使用
本明細書に示した通り、化合物(1)は、著しい腫瘍血管リモデリング効果および抗CAF活性を有し、それ故にこれは、がんの治療および/または腫瘍増殖の阻害のための利用可能性を有する。
【0075】
対象におけるがんを治療する方法であって、対象に有効量の化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその医薬組成物を投与することを含む、方法が本明細書に提供されている。本発明は、対象におけるがんを治療するのに使用するための化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその医薬組成物も提供する。本発明は、がんを治療する医薬を製造するための化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその医薬組成物の使用も提供する。
【0076】
対象における腫瘍増殖を阻害する方法であって、対象に化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその医薬組成物を投与することを含む、方法も本明細書に提供されている。対象における腫瘍増殖を阻害するのに使用するための化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその医薬組成物も本明細書に提供されている。本発明は、腫瘍増殖を阻害する医薬を製造するための化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその医薬組成物の使用も提供する。
【0077】
本明細書に提供する方法および使用のある特定の実施形態では、がんは、頭頸部がん、乳がん、食道がん、子宮がん、卵巣がん、大腸がん、子宮内膜がん、胃がん、小腸がん、膀胱がん、または肉腫である。
【0078】
本明細書に提供する方法および使用のある特定の実施形態では、がんは、頭頸部がん(例えば、頭頸部扁平上皮癌、口腔がん、咽喉がん、唾液腺がん、舌がん、腺様嚢胞癌)である。ある特定の実施形態では、がんは、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)である。ある特定の実施形態では、がんは、腺様嚢胞癌である。ある特定の実施形態では、がんは、乳がん(例えば、HER2陽性乳がん、トリプルネガティブ乳がん)である。ある特定の実施形態では、がんは、HER2陽性乳がんである。ある特定の実施形態では、がんは、トリプルネガティブ乳がんである。ある特定の実施形態では、がんは、大腸がん(例えば、結腸癌(colon carcinoma))である。ある特定の実施形態では、がんは、結腸癌である。ある特定の実施形態では、がんは、食道がん(例えば、食道腺癌)である。ある特定の実施形態では、がんは、食道腺癌である。ある特定の実施形態では、がんは、子宮がん(例えば、子宮肉腫)である。ある特定の実施形態では、がんは、子宮肉腫である。ある特定の実施形態では、がんは、卵巣がんである。ある特定の実施形態では、がんは、肉腫(例えば、子宮肉腫、線維肉腫、血管肉腫、滑膜肉腫、軟部肉腫)である。ある特定の実施形態では、がんは、線維肉腫である。ある特定の実施形態では、がんは、血管肉腫である。ある特定の実施形態では、がんは、滑膜肉腫である。ある特定の実施形態では、がんは、軟部肉腫である。ある特定の実施形態では、がんは、胃がんである。ある特定の実施形態では、がんは、腸がん(bowel cancer)(例えば、小腸がん、小腸腺癌)である。ある特定の実施形態では、がんは、小腸がんである。ある特定の実施形態では、がんは、小腸腺癌である。ある特定の実施形態では、がんは、膀胱がん(例えば、尿路上皮がん)である。ある特定の実施形態では、がんは、尿路上皮がんである。ある特定の実施形態では、がんは、子宮内膜がんである。ある特定の実施形態では、がんは、まれながんである。
【0079】
組合せ療法
単剤療法としての投与に加えて、化合物(1)は、他の治療剤または治療法と組み合わせて投与することができる。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、抗体である。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、モノクローナル抗体である。本発明化合物は、別の治療剤、例えば、抗EGFR療法、抗HER2療法、抗PD−1療法、抗PD−L1療法、または照射療法等と組み合わせて投与することができる。
【0080】
ある特定の実施形態では、化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその医薬組成物は、抗EGFR療法(例えば、セツキシマブ等の抗EGFRモノクローナル抗体(mAb))と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、抗EGFR療法は、抗EGFR抗体である。例えば、対象における頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)を治療する方法であって、前記対象に抗EGFR(上皮成長因子受容体)mAb療法と組み合わせて、化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその医薬組成物を投与することを含む、方法が本明細書に提供されている。ある特定の実施形態では、抗EGFRmAbは、セツキシマブ(CTX)である。
【0081】
ある特定の実施形態では、化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその医薬組成物は、抗HER2療法(例えば、トラスツズマブ等の抗HER2モノクローナル抗体(mAb))と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、抗HER2療法は、抗HER2抗体である。例えば、それを必要とする対象における乳がんを治療する方法であって、前記対象に、HER2(ヒト上皮成長因子受容体)mAb療法と組み合わせて、化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその組成物を投与することを含む、方法が本明細書に提供されている。ある特定の実施形態では、抗HER2mAbは、トラスツズマブである。
【0082】
ある特定の実施形態では、化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその医薬組成物は、抗PD−1または抗PD−L1療法(例えば、抗PD−1または抗PD−L1モノクローナル抗体)と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、抗PD−1または抗PD−L1療法は、抗体である。例えば、それを必要とする対象における大腸がんを治療する方法であって、前記対象に、抗PD−1または抗PD−L1療法(例えば、mAb療法)と組み合わせて、化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその組成物を投与することを含む、方法が本明細書に提供されている。
【0083】
ある特定の実施形態では、化合物(1)、またはその薬剤学的に許容される塩もしくは同位体標識誘導体、あるいはその医薬組成物は、放射線療法(RT)と組み合わせて使用される。ある特定の実施形態では、化合物は、手術と組み合わせて投与される。
【0084】
例
化合物(1)の合成
一般的な手順および方法
本発明に係る化合物は、以下の例に記載の方法で製造することができる。しかし、これらの例は、例示的な目的のためだけであり、本発明に係る化合物は、以下に述べる具体的な例に決して限定されない。
【0085】
例では、別段に具体的に述べられていない限り、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに使用している精製用シリカゲルは、Hi-Flash(商標)カラム(シリカゲル、30μm 60Åまたは40μm 60Å、株式会社山善)であり、NHシリカゲルカラムクロマトグラフィーに使用している精製用シリカゲルは、Chromatorex NHシリカゲル(富士シリシア化学株式会社)であった。分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)(thin layer chromatography)は、TLCシリカゲル60 F
254、層厚0.25mm(メルク社)またはChromatorex TLC NHシリカゲルF
254、層厚0.25mm(富士シリシア化学株式会社)を用いて実施した。TLCプレートは、p−アニスアルデヒド染色液、リンモリブデン酸染色液、またはハネシアン染色液で染色して可視化した。
【0086】
すべての湿気に敏感な反応は、不活性雰囲気下で行った。試薬および溶媒は、市販グレードであり、別段の注記のない限り、供給されたまま用いた。
【0087】
NMRスペクトルは、JEOL ECZ500R(500MHz)、JEOL ECZ400S(400MHz)、Varian Inova 500(500MHz)、Varian Mercury 400(400MHz)、またはBruker Avance(600MHz)分光計で記録した。化学シフトは、パーツ・パー・ミリオン(ppm)で報告する。
1H NMRスペクトル(CDCl
3、C
6D
6、および/またはCD
3OD)について、残留溶媒ピークを内部基準(CDCl
3中7.27ppm;C
6D
6中7.16ppm;CD
3OD中3.31ppm)として用いた。
【0088】
分析用質量スペクトル(mass spectra)(MS)結果は、単一四重極検出器(SQ Detector2)またはLTQ Orbitrap XL(商標)(サーモサイエンティフィック)を備えたWaters Acquity UPLCを用いて得た。
【0089】
高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography)(HPLC)は、UV分光光度検出器(200nm、Shimadzu SPD-10A)のShimadzu LC-10ADを用いて実行した。
【0090】
本明細書で使用する略語は、以下の通りである:AIBN:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル);9−BBN:9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン;Bu
3SnH:水素化トリ−ノルマル−ブチルスズ;(+)−CSA:(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸;DMAP:4−ジメチルアミノピリジン;DCM:ジクロロメタン;DDQ:2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン;DIBAL:水素化ジイソブチルアルミニウム;DMF:N、N−ジメチルホルムアミド;DMSO:ジメチルスルホキシド;Et
3N:トリエチルアミン;EtOAc:酢酸エチル;HF−Py:フッ化水素ピリジン;HPLC:高速液体クロマトグラフィー;IPA:イソプロピルアルコール;MeCN:アセトニトリル;MeOH:メタノール;MPM:パラ−メトキシベンジル;PPh
3:トリフェニルホスフィン;t−BuOH:tert−ブチルアルコール;tBuLi:tert−ブチルリチウム;TBME:メチル−tert−ブチルエーテル;TBAF:フッ化テトラブチルアンモニウム;TBS:tert−ブチルジメチルシリル;THF:テトラヒドロフラン;TMS:トリメチルシリル;Ts:パラ−トルエンスルホニル。
【0091】
本明細書に開示の合成中間体は、本発明の一部と見なされる。
【化3】
例1
(4aR,5aS,6R,8aS,9aR)−2,2−ジ−tert−ブチル−6−メチルオクタヒドロフロ[2’,3’:5,6]ピラノ[3,2−d][1,3,2]ジオキサシリン−7−オール
【化4】
【0092】
窒素雰囲気下、非特許文献14に書かれた方法で得た化合物A−1:(4aR,5aS,6R,8aS,9aR)−2,2−ジ−tert−ブチル−6−メチルヘキサヒドロフロ[2’,3’:5,6]ピラノ[3,2−d][1,3,2]ジオキサシリン−7(8aH)−オン(A−1 18.5g、54.0mmol)(CAS番号;1095280-04-8)の−78℃のトルエン(275mL)溶液に、DIBAL(70.2mL、70.2mmol、1.0Mトルエン溶液)を30分かけて添加した。次いで反応混合物を−78℃で撹拌した。90分後、反応を−78℃にて慎重にMeOH(4.37mL)でクエンチし、次いで冷却浴を取り除いた。飽和酒石酸ナトリウムカリウム四水和物水溶液(300mL)を反応混合物に添加し、室温にて2時間撹拌を継続した。反応混合物を分液漏斗に注ぎ、次いで層を分離した。水層をEtOAc(300mL)で抽出した。合わせた有機抽出液を飽和食塩水(300mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗ラクトールを精製することなく次の反応に使用した。
例2
(4aR,6S,7S,8aR)−6−((S)−ブタ−3−エン−2−イル)−2,2−ジ−tert−ブチルヘキサヒドロピラノ[3,2−d][1,3,2]ジオキサシリン−7−オール(化合物A−2)
【化5】
【0093】
窒素雰囲気下、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(73.30g、205.2mmol)のTHF(200mL)懸濁液に、カリウムtert−ブトキシド(17.27g、153.9mmol)を−5℃にて10分かけて添加し、次いで−5℃で60分間撹拌した。例1に記載の粗ラクトールのTHF(40mL)溶液を−5℃にて10分かけて反応混合物に移送し、次いで−5℃で1時間、室温で1時間撹拌した。反応混合物を氷水(400mL)でクエンチし、次いでTBME(400mL)で希釈し、次いで層を分離した。水層をTBME(400mL)で抽出した。合わせた有機抽出液を飽和食塩水(400mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をヘプタン/EtOAc=1/1(100mL)で懸濁させた。結果として生じる懸濁液を濾過し、ヘプタン/EtOAc=1/1(100mL)で洗いトリフェニルホスフィン由来物質を除去した。次いで濾液を減圧下で濃縮した。残渣を0%〜20% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲル(400g、Silica Gel 60、球状、40〜50μm、関東化学)フラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物A−2、16.7g、90%の収率)を得た。
【0094】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.03 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 1.05 (s, 9 H) 1.07 (s, 9 H) 1.75 (dt, J=14.5, 3.0 Hz, 1 H) 2.37 (dt, J=14.5, 2.9 Hz, 1 H) 2.65 - 2.76 (m, 1 H) 3.03 (dd, J=9.8, 1.0 Hz, 1 H) 3.31 (m, 1 H) 3.69 (d, J=15.0 Hz, 1 H) 3.75 - 3.79 (m, 1 H) 4.16 - 4.31 (m, 2 H) 4.41 (t, J=2.9 Hz, 1 H) 4.95 - 5.09 (m, 2 H) 6.02 (ddd, J=17.3, 10.5, 6.3 Hz, 1 H).
例3
(4aR,6S,7S,8aR)−6−((S)−ブタ−3−エン−2−イル)−2,2−ジ−tert−ブチル−7−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキサヒドロピラノ[3,2−d][1,3,2]ジオキサシリン(化合物A−3)
【化6】
【0095】
窒素雰囲気下、例2に記載の化合物A−2:(4aR,6S,7S,8aR)−6−((S)−ブタ−3−エン−2−イル)−2,2−ジ−tert−ブチルヘキサヒドロピラノ[3,2−d][1,3,2]ジオキサシリン−7−オール(9.85g、28.8mmol)の0℃のDCM(150mL)溶液に、2,6−ルチジン(6.68mL、57.5mmol)およびtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(9.25mL、40.3mmol)を添加した。反応混合物を0℃で30分間、次いで室温で2時間撹拌した。反応混合物をジエチルエーテルで希釈した。有機層を0.5N 塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、(少量のSiO
2を用いて)濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を0%〜15% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物A−3、12.0g、91%の収率)を得た。
【0096】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.10 (s, 3 H) 0.19 (s, 3 H) 0.91 (s, 9 H) 0.96 (d, J=6.3 Hz, 3 H) 1.02 (s, 9 H) 1.06 (s, 9 H) 1.73 (dt, J=15.0, 4.0 Hz, 1 H) 2.26 (dt, J=15.0, 2.5 Hz, 1 H) 2.66 - 2.74 (m, 1 H) 2.95 (dd, J=9.5, 2.2 Hz, 1 H) 3.17 (m, 1 H) 3.81 - 3.84 (m, 1 H) 4.12 - 4.22 (m, 2 H) 4.24 (t, J=2.7 Hz, 1 H) 4.93 - 5.06 (m, 2 H) 6.08 (ddd, J=17.3, 10.5, 6.3 Hz, 1 H).
例4
(2R,3R,5S,6S)−6−((S)−ブタ−3−エン−2−イル)−5−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−2−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−オール(化合物A−4)
【化7】
【0097】
窒素雰囲気下、例3に記載の化合物A−3:(4aR,6S,7S,8aR)−6−((S)−ブタ−3−エン−2−イル)−2,2−ジ−tert−ブチル−7−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘキサヒドロピラノ[3,2−d][1,3,2]ジオキサシリン(12g、26.3mmol)の−10℃のMeCN(120mL)とDCM(40mL)との溶液に、HF−ピリジン(4.0mL)およびピリジン(20mL)を予めMeCN 20mL中に混合した溶液を添加した。反応混合物を−10℃で15分間、次いで室温で1時間撹拌した。反応混合物を0℃にて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、DCMで希釈し、次いで層を分離した。水層をDCMで抽出した。合わせた有機抽出液を飽和食塩水で洗浄した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を15%〜60% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物A−4、8.4g、定量的収率)を得た。
【0098】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.13 (s, 3 H) 0.19 (s, 3 H) 0.94 (s, 9 H) 0.96 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 1.72 (dt, J=14.6, 2.9 Hz, 1 H) 2.15 (dd, J=9.8, 2.4 Hz, 1 H) 2.23 (dt, J=14.6, 2.9 Hz, 1 H) 2.55 - 2.65 (m, 1 H) 3.03 (d, J=9.8 Hz, 1 H) 3.41 - 3.46 (m, 1 H) 3.49 (d, J=11.7 Hz, 1 H) 3.62 - 3.72 (m, 2 H) 3.92 (ddd, J=11.7, 8.3, 2.4 Hz, 1 H) 4.02 (t, J=2.7 Hz, 1 H) 5.01 - 5.12 (m, 2 H) 5.93 (ddd, J=17.4, 10.4, 7.3 Hz, 1 H).
例5
(((2S,3S,5R,6R)−2−((S)−ブタ−3−エン−2−イル)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3,5−ジイル)ビス(オキシ))ビス(tert−ブチルジメチルシラン)(化合物A−5)
【化8】
【0099】
窒素雰囲気下、例4に記載の化合物A−4:(2R,3R,5S,6S)−6−((S)−ブタ−3−エン−2−イル)−5−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−2−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−オール(997mg、3.15mmol)の5℃のDCM(10mL)溶液に、2,6−ルチジン(1.83mL、15.8mmol)およびtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(2.17mL、9.45mmol)を添加した。反応混合物を室温で5時間撹拌した。反応混合物をジエチルエーテルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、次いで層を分離した。合わせた有機抽出液を0.5N 塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で連続的に洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を0%〜5% EtOAc/ヘプタン(1% Et
3Nを含有する)を用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物A−5、1.69g、98%の収率)を得た。
【0100】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.02 - 0.08 (m, 15 H) 0.11 (s, 3 H) 0.89 (s, 9 H) 0.90 - 0.92 (m, 18 H) 0.94 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 1.82 (dt, J=14.9, 4.8 Hz, 1 H) 2.00 (dt, J=14.9, 2.9 Hz, 1 H) 2.62 - 2.72 (m, 1 H) 2.93 (dd, J=9.3, 2.0 Hz, 1 H) 3.27 - 3.34 (m, 1 H) 3.66 - 3.79 (m, 3 H) 3.83 - 3.87 (m, 1 H) 4.91 - 5.07 (m, 2 H) 6.11 (ddd, J=17.3, 10.7, 6.1Hz, 1 H).
例6
(S)−3−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ブタン−1−オール(化合物A−6)
【化9】
【0101】
例5に記載の化合物A−5:(((2S,3S,5R,6R)−2−((S)−ブタ−3−エン−2−イル)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3,5−ジイル)ビス(オキシ))ビス(tert−ブチルジメチルシラン)(1.32g、2.42mmol)の0℃のTHF(10mL)溶液に、9−BBN(9.69mL、0.5M THF溶液、4.84mmol)を添加した。反応混合物を0℃で1時間、その後室温で1.5時間撹拌した。3.0M 水酸化ナトリウム水溶液(3mL、9.00mmol)および過酸化水素(35%水溶液、3mL)を0℃にて反応混合物に添加した。反応混合物を0℃で30分間、次いで室温で1時間撹拌した。反応混合物を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液でクエンチし、次いで層を分離した。水層をEtOAcで抽出した(3回)。合わせた有機抽出液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を0%〜20% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物A−6、1.36g、100%の収率)を得た。
【0102】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.03 (s, 3 H) 0.05 - 0.08 (m, 12 H) 0.10 (s, 3 H) 0.88 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 0.89 - 0.93 (m, 27 H) 1.55 - 1.65 (m, 1H) 1.82 (dt, J=15.4, 4.4 Hz, 1 H) 1.87 - 1.96 (m, 1 H) 1.97 - 2.03 (m, 1 H) 2.17- 2.26 (m, 1H) 2.67 (dd, J=7.8, 3.9 Hz, 1 H) 2.98 - 3.10 (m, 1 H) 3.34 - 3.40 (m, 1 H) 3.59 - 3.86 (m, 6 H)
ESI-MS (m/z): 563.64 [M+H]
+, 585.62 [M+Na]
+
例7
(S)−3−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ブタナール(化合物A−7)
【化10】
【0103】
窒素雰囲気下、例6に記載の化合物A−6:(S)−3−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ブタン−1−オール(1100mg、1.954mmol)の5℃のDCM(30mL)溶液に、炭酸水素ナトリウム(41.0mg、0.49mmol)およびデス−マーチンペルヨージナン(1077mg、2.54mmol)を添加した。反応混合物を室温で撹拌した。3時間後、反応混合物をDCMで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和亜硫酸ナトリウム水溶液でクエンチし、次いで層を分離した。水層をDCMで抽出した。合わせた有機抽出液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を0%〜25% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物A−7、950mg、87%の収率)を得た。
【0104】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.00 (s, 3 H) 0.03 - 0.08 (m, 12 H) 0.11 (s, 3 H) 0.88 (s, 9 H) 0.91 - 0.92 (m, 21H) 1.82 (dt, J=15.0, 4.5 Hz, 1 H) 2.01 (dt, J=15.0, 2.5 Hz, 1 H) 2.28 (ddd, J=16.0, 7.3, 2.4 Hz, 1 H) 2.53 -2.58 (m, 1 H) 2.74 (ddd, J=16.0, 5.5, 2.0 Hz, 1 H) 2.94 (dd, J=9.0, 1.7 Hz, 1 H) 3.29 (td, J=5.9, 2.0 Hz, 1 H) 3.68 (d, J=5.9 Hz, 2 H) 3.75 - 3.82 (m, 1 H) 3.82 - 3.90 (m, 1 H) 9.73 (t, J=2.4 Hz, 1 H).
【化11】
例8
(2S,3S)−3−((4−メトキシベンジル)オキシ)−2−メチル−5−(トリメチルシリル)ペンタ−4−イン−1−イル4−メチルベンゼンスルホネート(化合物B−2)
【化12】
【0105】
窒素雰囲気下、特許文献44/特許文献45に書かれた方法で得た化合物B−1:(2S,3S)−3−((4−メトキシベンジル)オキシ)−2−メチル−5−(トリメチルシリル)ペンタ−4−イン−1−オール(11.08g、36.15mmol)(CAS番号;157323−41−6)のDCM(330mL)溶液に、Et
3N(12.6mL、90.4mmol)および塩化パラ?トルエンスルホニル(8.27g、43.4mmol)を室温で添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、次いで減圧下で濃縮した。残渣を0%〜10% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲル(Silica Gel 60、球状、40〜50μm、関東化学)フラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、標記化合物(化合物B−2、17.7g、93%の収率)を得た。
【0106】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.17 (s, 9 H) 1.02 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 2.10 - 2.18 (m, 1 H) 2.44 (s, 3 H) 3.82 (s, 3 H) 3.99 (d, J=6.8 Hz, 1 H) 4.04 - 4.07(m, 2 H) 4.33 (d, J=11.2 Hz, 1 H) 4.66 (d, J=11.2 Hz, 1 H) 6.87 (d, J=8.3 Hz, 2 H) 7.21 (d, J=8.3 Hz, 2 H) 7.33 (d, J=8.8 Hz, 2 H) 7.77 (d, J=8.8 Hz, 2 H).
例9
((3S,4R)−5−ヨード−3−((4−メトキシベンジル)オキシ)−4−メチルペント−1−イン−1−イル)トリメチルシラン(化合物B−3)
【化13】
【0107】
窒素雰囲気下、例8に記載の化合物B−2:(2S,3S)−3−((4−メトキシベンジル)オキシ)−2−メチル−5−(トリメチルシリル)ペンタ−4−イン−1−イル4−メチルベンゼンスルホネート(17.7g、38.4mmol)のDMF(360mL)溶液に、ヨウ化ナトリウム(7.49g、50.0mmol)を室温で添加した。反応混合物を80℃で2時間撹拌した。ヨウ化ナトリウム2.0gをさらに反応混合物に添加した。反応物を80℃で1.5時間撹拌し、次いで室温に冷却した。混合物をジエチルエーテルで希釈し、水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。10%〜20% EtOAc/ヘプタンを用いてシリカゲル(Silica Gel 60、球状、40〜50μm、関東化学)上で残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物B−3、14.3g、89%の収率)を得た。
【0108】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.21 (s, 9 H) 1.10 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 1.74 - 1.84 (m, 1 H) 3.30 - 3.37 (m, 2 H) 3.82 (s, 3 H) 3.96 (d, J=7.3 Hz, 1 H) 4.44 (d, J=11.2 Hz, 1 H) 4.73 (d, J=11.2 Hz, 1 H) 6.89 (d, J=8.8 Hz, 2 H) 7.30 (d, J=8.8 Hz, 2 H).
【化14】
例10
(2S,6S,7S)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチル−9−(トリメチルシリル)ノナ−8−イン−4−オール(化合物C−1)
【化15】
【0109】
アルゴン雰囲気下、例9に記載の化合物B−3:((3S,4R)−5−ヨード−3−((4−メトキシベンジル)オキシ)−4−メチルペント−1−イン−1−イル)トリメチルシラン(1408mg、3.382mmol)の−78℃のジエチルエーテル(25mL)溶液に、tert−ブチルリチウム(1.61Mペンタン溶液、4.11mL、6.62mmol)を添加した。反応混合物を−78℃で45分間撹拌した。ジエチルエーテル5.0mL中の例7に記載の化合物A−7:(S)−3−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ブタナール(825mg、1.47mmol)を−78℃で反応混合物に添加した。反応混合物を−78℃で60分間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチした。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで減圧下で濃縮した。残渣を0%〜25% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物C−1、1167mg、93%の収率)を得た。
【0110】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.00 - 0.12 (m, 21 H) 0.15 - 0.24 (m, 6 H) 0.82 - 0.96 (m, 30 H) 1.03 (d, J=6.3 Hz, 3H) 1.38 - 1.55 (m, 1H) 1.68 - 1.99 (m, 4 H) 2.10 - 2.30 (m, 2 H) 2.76 - 2.87 (m, 1 H) 3.15 (d, J=9.75 Hz, 1 H) 3.33 - 3.38 (m, 1 H) 3.56 - 4.02 (m, 9 H) 4.37 - 4.50 (m, 1 H) 4.64 - 4.78 (m, 1 H) 6.83 - 6.88 (m, 2H) 7.23 - 7.35 (m, 2H).
例11
(2S,6S,7S,E)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチル−9−(トリブチルスタンニル)ノナ−8−エン−4−オール(化合物C−3)
【化16】
【0111】
例10に記載の化合物C−1:(2S,6S,7S)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチル−9−(トリメチルシリル)ノナ−8−イン−4−オール(1165mg、1.37mmol)の20℃のMeOH(20mL)溶液に、炭酸カリウム(189mg、1.37mmol)を添加した。反応混合物を20℃で2時間撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、次いで層を分離した。水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機抽出液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を0%〜15% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、化合物C−2:(2S,6S,7S)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチルノナ−8−イン−4−オール(1050mg、98%の収率)を得た。ESI-MS (m/z): 801.50 [M+Na]
+
【0112】
窒素雰囲気下、上記で得た化合物C−2:(2S,6S,7S)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチルノナ−8−イン−4−オール(780mg、1.00mmol)の20℃のトルエン(15mL)溶液に、水素化トリ−ノルマル−ブチルスズ(2.5mL、9.36mmol)および2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(82mg、0.50mmol)を添加した。反応混合物を90℃で15分間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を0%〜15% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物C−3、970mg、91%の収率)を得た。
【0113】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.02 - 0.13 (m, 18 H) 0.84 - 0.96 (m, 48 H) 1.22 - 1.37 (m, 6 H) 1.47 - 1.56 (m, 7 H) 1.72 - 1.90 (m, 3 H) 1.95-2.03 (m, 1 H) 2.11 - 2.28 (m, 2 H) 2.82 - 2.86 (m, 1 H) 3.08 - 3.15 (m, 1 H) 3.33 - 3.40 (m, 1 H) 3.43 - 3.53 (m, 1 H) 3.58 - 3.87 (m, 8 H) 4.25 - 4.31 (m, 1 H) 4.49 - 4.54 (m, 1 H) 5.83 (dd, J=19.3, 7.6Hz, 1 H) 6.05 - 6.13 (m, 1 H) 6.83 - 6.90 (m, 2 H) 7.24 (d, J=8.8 Hz, 2 H).
例12
(2S,6S,7S,E)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチルノナ−8−エン−4−オン(化合物C−4)
【化17】
【0114】
窒素雰囲気下、例11に記載の化合物C−3:(2S,6S,7S)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチル−9−(トリブチルスタンニル)ノナ−8−エン−4−オール(970mg、0.91mmol)の5℃のDCM 30mLの溶液に、DCM(6mL)中のヨウ素(242mg、0.95mmol)を反応混合物がヨウ素色を維持するまで添加した。反応混合物を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液でクエンチし、層を分離した。水層をDCMで抽出した。合わせた有機抽出液を飽和食塩水で洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を0%〜25% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、(2S,6S,7S,E)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチルノナ−8−エン−4−オール(768mg、93%の収率)を得た。
【0115】
窒素雰囲気下、上記で得た(2S,6S,7S,E)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチルノナ−8−エン−4−オール(768mg、0.85mmol)の室温のDCM(25mL)溶液に、炭酸水素ナトリウム(17.8mg、0.21mmol)およびデス−マーチンペルヨージナン(485mg、1.14mmol)を添加した。反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和亜硫酸ナトリウム水溶液でクエンチし、次いで層を分離した。水層をDCMで抽出した。合わせた有機抽出液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を0%〜20% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物C−4、776mg、定量的収率)を得た。
【0116】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.00 (s, 3 H) 0.03 - 0.07 (m, 12 H) 0.10 (s, 3 H) 0.81 (d, J=6.3 Hz, 3 H) 0.84 (d, J=6.3 Hz, 3 H) 0.89 (s, 9 H) 0.91 (s, 9 H) 0.92 (s, 9 H) 1.80 (dt, J=15.0, 4.5 Hz, 1 H) 1.99 (dt, J=15.0, 2.5 Hz, 1 H) 2.17 (dd, J=16.6, 10.2 Hz, 1 H) 2.20 - 2.29 (m, 2 H) 2.43 - 2.48 (m, 1 H) 2.54 (d, J=12.7 Hz, 1 H) 2.87 (dd, J=9.0, 1.7 Hz, 1 H) 2.99 (dd, J=16.6, 2.9 Hz, 1 H) 3.27 (td, J=5.8, 2.4 Hz, 1 H) 3.50 - 3.56 (m, 1 H) 3.66 - 3.74 (m, 2H) 3.75 - 3.78 (m, 1 H) 3.80 (s, 3 H) 3.81 - 3.85 (m, 1 H) 4.26 (d, J=11.7 Hz, 1 H) 4.50 (d, J=11.7 Hz, 1 H) 6.26 (d, J=14.6 Hz, 1 H) 6.42 (dd, J=14.6, 7.8 Hz, 1 H) 6.87 (d, J=8.3 Hz, 2 H) 7.21 (d, J=8.3 Hz, 2 H). ESI-MS (m/z): 927.39 [M+Na]
+
例13
(2S,6S,7S,E)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチルノナ−8−エン−4−オン(化合物C−5)
【化18】
【0117】
例12に記載の化合物C−4:(2S,6S,7S,E)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチルノナ−8−エン−4−オン(600mg、0.66mmol)の4℃のTHF(5.0mL)、IPA(5.0mL)、t−BuOH(5.0mL)の溶液に、(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸(154mg、0.66mmol)を添加した。反応混合物を4℃で20時間撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、次いで層を分離した。水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機抽出液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を0%〜35% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物C−5、500mg、95%の収率)を得た。
【0118】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.01 (s, 3 H) 0.04 (s, 3 H) 0.07 (s, 3 H) 0.11 (s, 3 H) 0.86 - 0.91 (m, 15 H) 0.93 (s, 9 H) 1.83 (dt, J=14.9, 4.8 Hz, 1 H) 1.93 - 2.00 (dt, J=14.9, 4.8 Hz, 1 H) 2.19 - 2.26 (m, 1 H) 2.29 (dd, J=14.9, 5.6 Hz, 1 H) 2.39 (dd, J=16.6, 8.3 Hz, 1 H) 2.44 - 2.66 (m, 4 H) 2.91 (dd, J=9.5, 1.7 Hz, 1 H) 3.36 - 3.41 (m, 1 H) 3.48 (td, J=11.3, 2.7 Hz, 1 H) 3.59 (t, J=7.1 Hz, 1 H) 3.74 - 3.78 (m, 2 H) 3.80 (s, 3 H) 3.85 (m, 1 H) 4.25 (d, J=11.2 Hz, 1 H) 4.46 (d, J=11.2 Hz, 1 H) 6.28 (d, J=14.6 Hz, 1 H) 6.43 (dd, J=14.6, 7.8 Hz, 1 H) 6.87 (d, J=8.8 Hz, 2 H) 7.21 (d, J=8.8 Hz, 2 H). ESI-MS (m/z): 813.30 [M+Na]
+
例14
((2R,3R,5S,6S)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−((2S,6S,7S,E)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチル−4−オキソノナ−8−エン−2−イル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチル4−メチルベンゼンスルホネート(化合物C−6)
【化19】
【0119】
窒素雰囲気下、例13に記載の化合物C−5:(2S,6S,7S,E)−2−((2S,3S,5R,6R)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチルノナ−8−エン−4−オン(500mg、0.63mmol)の5℃のDCM(10mL)溶液に、ピリジン(2.54mL、31.6mmol)、塩化パラ?トルエンスルホニル(723mg、3.79mmol)、および4−ジメチルアミノピリジン(77mg、0.63mmol)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌した。塩化パラ?トルエンスルホニル(150mg、0.79mmol)を室温で反応混合物に添加した。次いで反応混合物を室温で8時間撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、次いで層を分離した。水層をDCMで抽出した。合わせた有機抽出液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を0%〜25% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物C−6、560mg、94%の収率)を得た。
【0120】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.01 (s, 3 H) 0.04 (s, 3 H) 0.04 (s, 3 H) 0.08 (s, 3 H) 0.81 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 0.83 (s, 9 H) 0.86 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 0.89 (s, 9 H) 1.81 (dt, J=14.9, 4.5 Hz, 1 H) 1.91 - 1.96 (m, 1 H) 2.15 - 2.32 (m, 3 H) 2.36 - 2.42 (m, 1 H) 2.43 (s, 3 H) 2.57 (d, J=12.7 Hz, 1 H) 2.77 (dd, J=16.6, 3.4 Hz, 1 H) 2.87 (dd, J=9.0, 1.7 Hz, 1 H) 3.53 - 3.58 (m, 2 H) 3.70 - 3.75 (m, 1 H) 3.80 - 3.85 (m, 1H) 3.81 (s, 3 H) 4.06 (dd, J=10.0, 5.0 Hz, 1 H) 4.08 - 4.16 (m, 1 H) 4.28 (d, J=11.2 Hz, 1 H) 4.51 (d, J=11.2 Hz, 1 H) 6.30 (d, J=14.6 Hz, 1 H) 6.45 (dd, J=14.6, 7.8 Hz, 1 H) 6.88 (d, J=8.8 Hz, 2 H) 7.24 (d, J=8.8 Hz, 2 H) 7.31 (d, J=8.3 Hz, 2 H) 7.76 (d, J=8.3 Hz, 2 H).
例15
(2S,6S,7S,E)−2−((2S,3S,5R,6R)−6−(アジドメチル)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチルノナ−8−エン−4−オン(化合物C−7)
【化20】
【0121】
窒素雰囲気下、例14に記載の化合物C−6:((2R,3R,5S,6S)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−((2S,6S,7S,E)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチル−4−オキソノナ−8−エン−2−イル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチル4−メチルベンゼンスルホネート(560mg、0.59mmol)の20℃のDMSO(5.6mL)溶液に、アジ化ナトリウム(385mg、5.92mmol)を添加した。反応混合物を85℃で撹拌した。2時間後、アジ化ナトリウム(100mg、1.54mmol)を反応混合物に添加し、次いで反応混合物を85℃で14時間撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、水でクエンチし、次いで層を分離した。有機抽出液を水および飽和食塩水で連続的に洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、粗残渣を得た。残渣を0%〜15% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物C−7、298mg、62%の収率)を得た。
【0122】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.03 (s, 3 H) 0.06 (s, 3 H) 0.07 (s, 3 H) 0.10 (s, 3 H) 0.84 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 0.85 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 0.91 (s, 9 H) 0.92 (s, 9 H) 1.86 (dt, J=15.0, 4.7 Hz, 1 H) 1.98 (dt, J=15.0, 2.9 Hz, 1 H) 2.19 - 2.32 (m, 3 H) 2.41 - 2.49 (m, 1 H) 2.58 (d, J=12.7 Hz, 1 H) 2.94 (dd, J=16.6, 2.9 Hz, 1 H) 2.98 (dd, J=8.8, 2.0 Hz, 1 H) 3.02 (dd, J=12.7, 2.9 Hz, 1 H) 3.47 (dt, J=8.8, 2.7 Hz, 1 H) 3.49 - 3.54 (m, 1 H) 3.63 (dd, J=12.7, 8.8 Hz, 1 H) 3.69 - 3.73 (m, 1 H) 3.81 (s, 3H) 3.83 - 3.88 (m, 1 H) 4.26 (d, J=11.7 Hz, 1 H) 4.50 (d, J=11.7 Hz, 1 H) 6.26 (d, J=14.6 Hz, 1 H) 6.42 (dd, J=14.6, 7.8 Hz, 1 H) 6.87 (d, J=8.8 Hz, 2 H) 7.22 (d, J=8.8 Hz, 2 H).
例16
(((2R,3R,5S,6S)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−((2S,6S,7S,E)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチル−4−オキソノナ−8−エン−2−イル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチル)カルバメート(化合物C−8)
【化21】
【0123】
例15に記載の化合物C−7:(2S,6S,7S,E)−2−((2S,3S,5R,6R)−6−(アジドメチル)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチルノナ−8−エン−4−オン(298mg、0.37mmol)の20℃のTHF(10mL)と水(1.0mL)の溶液に、トリフェニルホスフィン(1437mg、5.478mmol)を添加した。反応混合物を70℃で1.5時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、粗アミンを得た。上記で得た粗アミンの5℃のTHF(10mL)溶液に、Et
3N(0.51mL、3.66mmol)および二炭酸ジアリル(341mg、1.83mmol)を添加した。反応混合物を室温で60分間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を0%〜25% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物C−8、300mg、94%の収率)を得た。
【0124】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.05 - 0.07 (m, 9 H) 0.11 (s, 3 H) 0.85 (d, J=6.3 Hz, 3 H) 0.87 (d, J=6.3 Hz, 3 H) 0.90 (s, 9 H) 0.93 (s, 9 H) 1.80 (dt, J=15.0, 4.4 Hz, 1 H) 1.96 (dt, J=15.0, 2.8 Hz, 1 H) 2.16 - 2.29 (m, 2 H) 2.32 - 2.39 (m, 1 H) 2.53 - 2.60 (m, 3 H) 2.86 (d, J=7.3 Hz, 1 H) 3.04 - 3.11 (m, 1 H) 3.30 - 3.34 (m, 1 H) 3.38 - 3.48 (m, 1 H) 3.58 (t, J=7.1 Hz, 1 H) 3.70 - 3.76 (m, 1 H) 3.80 (s, 3 H) 3.81 - 3.84 (m, 1 H) 4.25 (d, J=11.2 Hz, 1 H) 4.46 (d, J=11.2 Hz, 1 H) 4.53 - 4.63 (m, 2 H) 5.19 (dd, J=10.7, 1.5 Hz, 1 H) 5.32 (d, J=17.1 Hz, 1 H) 5.47 (d, J=6.8 Hz, 1 H) 5.88 - 5.99 (m, 1 H) 6.28 (d, J=14.6 Hz, 1 H) 6.43 (dd, J=14.6, 7.8 Hz, 1 H) 6.87 (d, J=8.8 Hz, 2 H) 7.21 (d, J=8.8 Hz, 2 H). ESI-MS (m/z): 896.34 [M+Na]
+
【化22】
【化23】
例17
化合物D−4
【化24】
【0125】
窒素雰囲気下(グローブボックス中)、非特許文献15に書かれた方法で得た化合物D−2:(S)−N−(2−(4−イソプロピル−4,5−ジヒドロオキサゾール−2−イル)−6−メトキシフェニル)メタンスルホンアミド(155mg、0.497mmol)(CAS番号;546141−34−8)、および1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(107mg、0.497mmol)のMeCN(0.75mL)溶液に、塩化クロム(II)(55.5mg、0.452mmol)を添加し、次いで得られた混合物をグローブボックス中で室温にて1時間撹拌した。得られた緑色溶液を、例16に記載の化合物C−8:アリル(((2R,3R,5S,6S)−3,5−ビス((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−6−((2S,6S,7S,E)−9−ヨード−7−((4−メトキシベンジル)オキシ)−6−メチル−4−オキソノナ−8−エン−2−イル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチル)カルバメート(99.0mg、0.113mmol)、非特許文献16に書かれた方法で得た化合物D−1(80.0mg、0.09mmol)(CAS番号;157322−23−1)、非特許文献17に書かれた方法で得た化合物D−3:ジクロロ(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)ニッケル(0.46mg、1.36μmol)(CAS番号;21361-04-6)と、塩化リチウム(3.83mg、0.09mmol)の混合物に添加した。次いで反応混合物をグローブボックス中で室温にて60分間撹拌した。次いで反応混合物をグローブボックスから取り出し、ジエチルエーテル−EtOAc(5.0mL−5.0mL)で希釈し、次いでフロリジル(登録商標)(1600mg、15.94mmol)(CAS番号;1343-88-0)を混合物に添加した。次いで混合物を室温で30分間撹拌した。混合物を濾過し(セライト(登録商標))、EtOAc/ヘプタン=2/1で洗浄し、次いで濾液を減圧下で濃縮した。残渣を3%〜55% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物D−4、140mg、95%の収率)を得た。
例18
化合物D−5
【化25】
【0126】
窒素雰囲気下、例17に記載の化合物D−4(140mg、0.09mmol)の5℃のDCM(5.0mL)溶液に、炭酸水素ナトリウム(28.8mg、0.34mmol)およびデス−マーチンペルヨージナン(72.7mg、0.17mmol)を添加した。反応混合物を室温で60分間撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和亜硫酸ナトリウム水溶液でクエンチし、次いで層を分離した。水層をDCMで抽出した。合わせた有機抽出液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を2%〜60% EtOAc/ヘプタンを用いたシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、標記化合物(化合物D−5、120mg、86%)を得た。
【0127】
1H NMR (500 MHz, ベンゼン-d6) δ ppm 0.01 - 0.05 (m, 9 H) 0.10 - 0.12 (m, 6 H) 0.15 (s, 3 H) 0.76 (d, J=6.1 Hz, 3 H) 0.96 (s, 9 H) 1.02 (s, 9 H) 1.04 (s, 9 H) 0.95 - 1.10 (m, 7H) 1.20 (d, J=7.3 Hz, 3 H) 1.31 - 1.37 (m, 3 H) 1.41 (dd, J=12.8, 4.9 Hz, 1 H) 1.40 - 1.58 (m, 4 H) 1.59 - 1.64 (m, 1 H) 1.69 - 1.89 (m, 3H) 1.90 - 1.99 (m, 2 H) 2.02 - 2.25 (m, 8 H) 2.26 - 2.48 (m, 6 H) 2.49 - 2.70 (m, 6 H) 2.71 - 2.84 (m, 2 H) 3.00 - 3.07 (m, 1 H) 3.12 - 3.30 (m, 4 H) 3.36 (s, 3 H) 3.40 (br.s, 1 H) 3.44 - 3.53 (m, 2 H) 3.65 (dd, J=6.4, 4.0 Hz, 1 H) 3.69 - 3.84 (m, 4H) 3.86 - 4.03 (m, 4H) 4.07 - 4.17 (m, 3 H) 4.27 - 4.29 (m, 1H) 4.27 (d, J=11.0 Hz, 1H) 4.48 - 4.58 (m, 1 H) 4.49 (d, J=11.0 Hz, 1H) 4.65 - 4.70 (m, 2 H) 4.68 (d, J=5.5 Hz, 1H) 4.74 - 4.86 (m, 2H) 4.78 (s, 1H) 4.93 (s, 1 H) 5.05 (d, J=10.4 Hz, 1 H) 5.09 (br. s., 1 H) 5.19 (br. s., 1 H) 5.30 (dd, J=17.1, 1.2 Hz, 1 H) 5.82 (d, J=8.0 Hz, 1 H) 5.86 - 5.96 (m, 1 H) 6.46 (d, J=15.9 Hz, 1 H) 6.84 - 6.92 (m, 3 H) 7.31 (d, J=8.6 Hz, 2 H).
例19
化合物D−6
【化26】
【0128】
イミダゾール塩酸塩(155mg、1.48mmol)をDMF(2.9mL)に溶解してDMFの0.5Mイミダゾール塩酸塩溶液を得た。この溶液1.0mLをTBAF(1.0M、THF溶液)1.0mLと混合して、THF−DMF(1:1)中の0.5M TBAFと0.25Mイミダゾール塩酸塩の予め混合した溶液を得た。窒素雰囲気下、例18に記載の化合物D−5(80.0mg、0.05mmol)の20℃のDMF(7.0mL)溶液に、上記で調製したTHF−DMF(1:1)中のTBAF(0.5M)とイミダゾール塩酸塩(0.25M)の予め混合した溶液0.588mLを添加した。反応混合物を室温で14時間撹拌した。炭酸カルシウム1.6gとDowex(登録商標)50WX8(水素型、200〜400メッシュ、SIGMA−ALDRICH)4.0gを反応混合物に添加した。混合物を室温で2時間撹拌した。次いで混合物をEtOAcで希釈し、次いで濾過し(Celite(登録商標))、EtOAcで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して粗残渣を得た。1000mgの炭酸カルシウムと2.25gのDowex(登録商標)50WX8を粗残渣のEtOAc(6.0mL)溶液に添加した。混合物を室温で2.5時間撹拌した。次いで混合物をEtOAcで希釈し、濾過し(Celite(登録商標))、EtOAcで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して粗残渣(63.0mg)を得た。上記で得た粗残渣(63.0mg)の室温のDCM(6.0mL)、t−BuOH(0.6mL)、とpH7 リン酸塩バッファー(0.6mL、1/15M)との溶液に、DDQ(111mg、0.49mmol)を添加した。反応混合物を室温で45分間撹拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、次いでDCMで希釈し、層を分離した。水層をDCMで抽出した(3回)。合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を10%〜100% EtOAc/ヘプタン、次いで10% MeOH/EtOAcを用いたNHシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、粗精製された標記化合物(化合物D−6、15.0mg、27%)を得た。
【0129】
1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ ppm 0.97 (d, J=7.0 Hz, 3 H) 0.97 (d, J=7.0 Hz, 3 H) 1.00 - 1.02 (m, 1 H) 1.05 (d, J=7.3 Hz, 3 H) 1.09 (d, J=6.3 Hz, 3 H) 1.31 - 1.45 (m, 6H) 1.46 - 1.63 (m, 5H) 1.64 - 1.75 (m, 3 H) 1.80 - 1.86 (m, 2 H) 1.87 - 1.93 (m, 2 H) 1.94 - 2.11 (m, 9H) 2.13 - 2.27 (m, 8H) 2.33 (d, J=2.4 Hz, 2 H) 2.39 (dd, J=13.4, 6.1 Hz, 1 H) 2.44 (dd, J=17.6, 2.0 Hz, 1 H) 2.55 (dd, J=17.6, 9.3 Hz, 1 H) 2.75 - 2.84 (m, 1 H) 2.97 (dd, J=9.3, 2.0 Hz, 1 H) 3.21 (dd, J=6.6, 4.6 Hz, 1 H) 3.32 (m, 1 H) 3.41 - 3.46 (m, 1 H) 3.57 (br. s., 1 H) 3.60 (d, J=11.7 Hz, 1 H) 3.67 - 3.74 (m, 2 H) 3.78 (br. s., 1 H) 3.86 - 3.90 (m, 2 H) 3.97 (d, J=2.4 Hz, 1 H) 4.02 - 4.11 (m, 4 H) 4.17 (dd, J=6.6, 4.6 Hz, 1 H) 4.23 (dd, J=11.5, 2.2 Hz, 1 H) 4.29 (br.s, 1 H) 4.31 (td, J=9.3, 3.9 Hz, 1 H) 4.44 (d, J=10.2 Hz, 1 H) 4.51 (d, J=5.4 Hz, 2 H) 4.59 (t, J=4.9 Hz, 1 H) 4.61 (dd, J=7.3, 4.9 Hz, 1 H) 4.69 (t, J=4.6 Hz, 1 H) 4.80 (s, 1 H) 4.85 - 4.87 (m, 1 H) 5.01 (s, 1 H) 5.05 (s, 1 H) 5.16 (dd, J=10.7, 1.0 Hz, 1 H) 5.28 (dd, J=17.1, 2.0 Hz, 1 H) 5.92 (m, 1 H). ESI-MS (m/z): 1172.57 [M+Na]
+
例20
化合物D−7
【化27】
【0130】
窒素雰囲気下、例19に記載の化合物D−6(15.0mg、0.013mmol)、ピロリジン(10.8μL、0.13mmol)の室温のDCM(2.0mL)溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(7.53mg、6.52μmol)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を50% EtOAc/ヘプタン、次いで0%〜20% MeOH/EtOAcを用いたNHシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて、粗精製された生成物を得た。得られた粗精製された生成物をHPLCで精製して標記化合物(D−7、7.0mg、47%、保持時間=13.8分)を得た。
【0131】
HPLC条件:
カラム:YMC Pack Pro C18(20mm×250mm)
検出波長:200nm
カラム温度:室温
移動相:MeCN−水(0.05% AcOH)
流量:8mL/分
溶出液:
MeCN/水 25%(アイソクラティック、2分)、次いで
MeCN/水 25%〜60%(勾配、20分)
【0132】
1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ ppm 0.99 (d, J=6.7 Hz, 3 H) 1.00 - 1.03 (m, 1 H) 1.04 (d, J=7.3 Hz, 3 H) 1.06 (d, J=7.3 Hz, 3 H) 1.10 (d, J=6.1 Hz, 3 H) 1.29 - 1.63 (m, 10 H) 1.65 - 1.78 (m, 3 H) 1.79 - 1.89 (m, 2 H) 1.92 - 2.12 (m, 10 H) 1.93 (s, 3 H) 2.13 - 2.36 (m, 9 H) 2.41 (dd, J=13.5, 6.1 Hz, 1 H) 2.45 (dd, J=17.6, 2.2 Hz, 1 H) 2.56 (dd, J=17.6, 9.8 Hz, 1 H) 2.75 - 2.84 (m, 1 H) 2.98 (dd, J=9.8, 1.8 Hz, 1 H) 3.12 (dd, J=12.8, 3.7 Hz, 1 H) 3.22 (dd, J=6.4, 4.6 Hz, 1 H) 3.26 (dd, J=13.2, 7.8 Hz, 1 H) 3.39 (d, J=1.8 Hz, 1 H) 3.61 (d, J=12.8 Hz, 1 H) 3.63 - 3.68 (m, 2 H) 3.68 - 3.76 (m, 2 H) 3.81 - 3.94 (m, 3 H) 4.00 (d, J=2.5 Hz, 1 H) 4.03 - 4.15 (m, 4 H) 4.18 (dd, J=6.4, 4.6 Hz, 1 H) 4.25 (ddd, J=11.0, 4.3, 1.8 Hz, 1 H) 4.27 - 4.36 (m, 2 H) 4.46 (d, J=11.0 Hz, 1 H) 4.57 - 4.65 (m, 2 H) 4.70 (t, J=4.6 Hz, 1 H) 4.81 (d, J=1.2 Hz, 1 H) 5.02 (br. s, 1 H) 5.06 (d, J=1.8 Hz, 1 H). ESI-MS (m/z): 1066.96 [M+H]
+ , 1090.19 [M+Na]
+
【0133】
化合物(1)(化合物D−7のフリー体):
1H NMR (600 MHz, メタノール-d4) δ ppm 0.98 (d, J=7.2 Hz, 3 H) 1.00 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 1.02 (m, 1 H) 1.05 (d, J=6.8 Hz, 3 H) 1.09 (d, J=6.4 Hz, 3 H) 1.28 - 1.45 (m, 5 H) 1.46 - 1.59 (m, 4 H) 1.57 - 1.63 (m, 1 H) 1.65 - 1.71 (m, 1 H) 1.70 - 1.75 (m, 2 H) 1.79 - 1.86 (m, 2 H) 1.91 (dt, J=14.9, 3.1 Hz, 1 H) 1.94 - 2.11 (m, 8 H) 2.14 - 2.34 (m, 9 H) 2.39 (dd, J=13.2, 6.0 Hz, 1 H) 2.44 (dd, J=17.4, 1.9 Hz, 1 H) 2.56 (dd, J=17.6, 9.6 Hz, 1 H) 2.69 (dd, J=13.2, 4.2 Hz, 1 H) 2.79 (ddq, J=15.9, 7.6, 2.0 Hz, 1 H) 2.92 (dd, J=13.2, 8.3 Hz, 1 H) 2.97 (dd, J=9.6, 1.7 Hz, 1 H) 3.21 (dd, J=6.4, 4.9 Hz, 1 H) 3.29 (m, 1 H) 3.34 (dd, J=8.3, 4.15 Hz, 1 H) 3.58 (br. s., 1 H) 3.60 (br.d, J=11.3 Hz, 1 H) 3.68 - 3.73 (m, 2 H) 3.80 (br. s., 1 H) 3.84 - 3.90 (m, 2 H) 3.98 (d, J=2.3 Hz, 1 H) 4.03 - 4.13 (m, 4 H) 4.17 (dd, J=6.4, 4.9 Hz, 1 H) 4.24 (ddd, J=11.3, 4.5, 1.5 Hz, 1 H) 4.29 (dd, J=4.0, 1.9 Hz, 1 H) 4.32 (td, J=10.2, 4.2 Hz, 1 H) 4.44 (br. d, J=11.0 Hz, 1 H) 4.59 (t, J=4.5 Hz, 1 H) 4.62 (dd, J=7.4, 4.7 Hz, 1 H) 4.69 (t, J=4.7 Hz, 1 H) 4.80 (br. s., 1 H) 4.87 (s, 1 H) 5.00 (br. s., 1 H) 5.05 (br.d, J=1.1 Hz, 1 H)
【0134】
ESI-MS (m/z): 1066.57 [M+H]
+ , 1088.55 [M+Na]
+
【0135】
薬理試験例
一般的な情報
天然ハリコンドリン化合物およびこれらの修飾化合物は、文献において公知である(例えば、非特許文献1;非特許文献18を参照)。しかし、これらのほとんどは、容易に入手可能でない。例えば、上村博士らは、600kgものHalichondria okadai KadotaからハリコンドリンB 12.5mg、ノルハリコンドリンA 35.0mgおよびホモハリコンドリンA 17.2mgを単離した(例えば、非特許文献1を参照)。天然ハリコンドリン化合物の中で、ハリコンドリンBは、インビトロでB−16黒色腫細胞に対して最も強い抗腫瘍活性を示し、インビボでL−1210白血病に対して非常に活性である(例えば、非特許文献1を参照)。ハリコンドリンCも、様々なインビボモデルで活性ではあるが、ハリコンドリンBと比較すると水溶液中で不安定である。ノルハリコンドリンBは、インビトロだけでなくインビボでもハリコンドリンBよりはるかに弱い(例えば、非特許文献1を参照)。以下の薬理試験では、必要に応じ、対照化合物としてハリコンドリンB(Hali−B)を使用する。
【0136】
薬理試験例1. FaDu増殖阻害アッセイ
本アッセイでは、ヒト頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)細胞株FaDuにおける被験化合物の増殖阻害活性を測定した。FaDu細胞は、5%CO
2インキュベーター中(37℃)で10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum)(FBS:ニチレイ、12D168)、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640(和光純薬工業株式会社、187-02021)培地中で培養した。96ウェルプレート(ベクトンディッキンソン社、353219)の各ウェルに、培地にて4×10
4細胞/mLの濃度に調整したFaDu細胞懸濁液75μLを添加し、細胞を5%CO
2インキュベーター中(37℃)で一晩培養した。翌日、培地に懸濁させた3倍希釈系列中の化合物(1)またはハリコンドリンB 25μLを各ウェルに添加し、5%CO
2インキュベーター中(37℃)で3日間培養した。次いで細胞生存能を、EnVision 2103マルチラベルリーダー(パーキンエルマー、Wellesley、MA)を用いてCellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ)で判定した。被験化合物を添加しなかった細胞のウェルの値を100%と定義し、細胞のいないウェルの値を0%と定義した。細胞増殖を50%阻害するのに必要な被験化合物の濃度(IC
50値)を算出し、表1に示した。
【表1】
【0137】
薬理試験例2. MDA−MB231増殖阻害アッセイ
本アッセイでは、ヒト乳がん細胞株MDA−MB231における被験化合物の増殖阻害活性を測定した。MDA−MB231細胞は、5%CO
2インキュベーター中(37℃)で10%ウシ胎児血清(FBS:ニチレイ、12D168)、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、和光純薬工業株式会社、044-29765)培地中で培養した。96ウェルプレート(ベクトンディッキンソン社、353219)の各ウェルに、培地にて4×10
4細胞/mLの濃度に調整したMDA−MB231細胞懸濁液75μLを添加し、細胞を5%CO
2インキュベーター中(37℃)で一晩培養した。翌日、培地に懸濁させた3倍希釈系列中の化合物(1)またはハリコンドリンB 25μLを各ウェルに添加し、5%CO
2インキュベーター中(37℃)で3日間培養した。次いで細胞生存能を、EnVision 2103マルチラベルリーダー(パーキンエルマー、Wellesley、MA)を用いてCellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ)で判定した。被験化合物を添加しなかった細胞のウェルの値を100%と定義し、細胞のいないウェルの値を0%と定義した。細胞増殖を50%阻害するのに必要な被験化合物の濃度(IC
50値)を算出し、表2に示した。
【表2】
【0138】
薬理試験例3. HCC1954増殖阻害アッセイ
本アッセイでは、ヒト乳がん細胞株HCC1954における被験化合物の増殖阻害活性を測定した。HCC1954細胞は、5%CO
2インキュベーター中(37℃)で10%ウシ胎児血清(FBS:ニチレイ、12D168)、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する、2mM L−グルタミン、10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、4500mg/Lグルコース、および1500mg/L炭酸水素ナトリウムを含有するようにしたRPMI−1640培地(ATCC30-2001)中で培養した。96ウェルプレート(ベクトンディッキンソン社、353219)の各ウェルに、培地にて4×10
4細胞/mLの濃度に調整したHCC1954細胞懸濁液75μLを添加し、細胞を5%CO
2インキュベーター中(37℃)で一晩培養した。翌日、培地に懸濁させた3倍希釈系列中の化合物(1)またはハリコンドリンB 25μLを各ウェルに添加し、結果として生じるものを5%CO
2インキュベーター中(37℃)で3日間培養した。次いで細胞生存能を、EnVision 2103マルチラベルリーダー(パーキンエルマー、Wellesley、MA)を用いてCellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ)で判定した。被験化合物を添加しなかった細胞のウェルの値を100%と定義し、細胞のいないウェルの値を0%と定義した。細胞増殖を50%阻害するのに必要な被験化合物の濃度(IC
50値)を算出し、表3に示した。
【表3】
【0139】
薬理試験例4. 単剤療法としてのFaDu皮下移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果
10% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したヒト頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)細胞株FaDuを、ハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt Solution)にて4.8×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、7週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から9日後に、電子デジタルノギス(Digimatic(商標)キャリパ、株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の短径、長径を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
腫瘍退縮(%)=(1−最小RTV)×100
【0140】
投与初日に得た腫瘍体積をもとに腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。各被験化合物をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで冷凍保存した。投与直前に、保存溶液を、100μMのヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含む食塩水で希釈した。各評価試料を最大耐量(maximum tolerable dose)(MTD)で静脈内投与した。なお、実験は、1群4匹のマウスで行った。各被験化合物の腫瘍退縮(%)を表4に示した。
【表4】
【0141】
薬理試験例5. 単剤療法としてのマウス皮下移植モデルにおけるOSC−19に対する抗腫瘍活性
10% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/Ham’s F−12(1:1)培地で培養したヒト頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)細胞株OSC−19を、PBSにて1×10
8細胞/mlの濃度に調整して細胞懸濁液を調製し、懸濁液をMatrigel(商標)(BDバイオサイエンス、#366237)と1:1の比で混合して5×10
7細胞/mLの濃度の細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、5週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から6日後に、電子デジタルノギス(Digimatic(商標)キャリパ、株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の短径、長径を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
腫瘍退縮(%)=(1−最小RTV)×100
【0142】
投与初日に得た腫瘍体積をもとに腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。実験は、1群6匹のマウスで行った。被験化合物を生理食塩水に溶解し、2週間にわたって週1回(Q7D×2スケジュール)0.06mg/kg〜0.18mg/kgの用量で静脈内投与した。各試験用量の腫瘍退縮(%)を表5に示す。
【表5】
【0143】
薬理試験例6. 単剤療法としてのマウス皮下移植モデルにおけるHCC1806に対する抗腫瘍活性
10% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したヒト乳がん細胞株HCC1806を、PBSにて1×10
8細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製し、懸濁液をMatrigel(商標)(BDバイオサイエンス、#366237)と1:1の比で混合して5×10
7細胞/mLの濃度の細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、5週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から12日後に、電子デジタルノギス(Digimatic(商標)キャリパ、株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の短径、長径を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
腫瘍退縮(%)=(1−最小RTV)×100
【0144】
投与初日に得た腫瘍体積をもとに腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。実験は、1群6匹のマウスで行った。被験化合物を生理食塩水に溶解し、2週間にわたって週1回(Q7D×2スケジュール)0.18mg/kgで静脈内投与した。化合物(1)の腫瘍退縮(%)を表6に示す。
【表6】
【0145】
薬理試験例7. セツキシマブと組み合わせたFaDu皮下移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果
10% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したヒト頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)細胞株FaDuを、ハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt Solution)にて5×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、7週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から10日後に、電子デジタルノギス(Digimatic(商標)キャリパ、株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の短径、長径を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
35日目の腫瘍退縮(%)=(1−35日目のRTV)×100
【0146】
投与初日に得た腫瘍体積をもとに腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。各被験化合物はDMSOに溶解し、溶液を使用前まで冷凍保存した。投与直前に、保存溶液を、100μMのヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含む生理食塩水で希釈した。各被験化合物をセツキシマブ(アービタックス、メルクセローノ社)と組み合わせて1/4MTD〜1/2MTDの用量で静脈内投与した。なお、実験は、1群4匹のマウスで行った。各被験化合物の35日目の腫瘍退縮(%)を表7に示す。
【表7】
【0147】
薬理試験例8. トラスツズマブと組み合わせたKPL−4皮下移植マウスモデルにおける抗腫瘍活性
10% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したヒトHER−2陽性乳がん細胞株KPL−4を、ハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt Solution)にて1×10
8細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、7週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から16日後に、電子デジタルノギス(Digimatic(商標)キャリパ、株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の短径、長径を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
腫瘍退縮(%)=(1−最小RTV)×100
【0148】
投与初日に得た腫瘍体積をもとに腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。実験は、1群6匹のマウスで行った。各被験化合物はDMSOに溶解し、溶液を使用前まで冷凍保存した。投与直前に、保存溶液を生理食塩水で希釈した。被験化合物をトラスツズマブ(ハーセプチン、ジェネンテック社)と組み合わせて0.09mg/kgまたは0.18mg/kgで静脈内投与した。化合物(1)についての腫瘍退縮を表8に示す。
【表8】
【0149】
薬理試験例9. FaDu皮下マウスモデルにおけるCD31陽性血管に対する効果
10% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したヒト頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)細胞株FaDuを、PBSにて5×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、7週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から10日後に、100μMのヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含む食塩水中の被験化合物を、1/2MTD〜MTDの用量で静脈内投与した。実験は、1群3匹のマウスで行った。投与から5日後に、腫瘍試料を収集し、IHC亜鉛固定液(BDファーミンジェン(BD Pharmingen))で4℃にて24時間固定した。パラフィン包埋組織を切断し(3μm)、正に荷電したスライドガラスに載せ、風乾した。CD31の免疫組織化学的染色を、製造者のプロトコールに従ってVentanaオートステイナーモデルDiscover XT(ロッシュダイアグノスティックス)を用いて行った。切片を脱パラフィンし、再水和し、CC1(ベンタナメディカルシステムズ)にて抗原賦活化を行った。スライドをブロッカーAおよびブロッカーB(内因性ビオチンブロッキングキット、ロッシュダイアグノスティックス)にてブロックした。切片をラット抗マウスIgG CD31抗体(ディアノバ(Dianova))2μg/mLとともに6時間インキュベートし、その後2.2μg/mLのビオチン化抗ラットIgG抗体(ジャクソンイムノリサーチラボラトリーズ)とともに32分インキュベートした。検出は、ストレプトアビジン−HRP Dで16分間実施し、その後DAB DおよびDAB H
2O
2 D(DABMapキット、ベンタナメディカルシステムズ社)とともに8分間インキュベートした。スライドをヘマトキシリンII(ロッシュダイアグノスティックス)で16分間対比染色し、その後ブルーイング試薬とともに4分間インキュベートした。切片を段階的エタノールで脱水し、キシレン交換で脱脂し、DPX(メルク社)で覆った。
【0150】
免疫染色したスライドを、Vectra(商標)2 Automated Slide Imaging System(パーキンエルマー社)を用いてスキャンした。腫瘍全体中の血管数を、inForm2ソフトウェア(パーキンエルマー社)を用いてCD31陽性物体をカウントして定量化した。また、inForm2ソフトウェア(パーキンエルマー社)を用いてヘマトキシリン染色面積を計測し、腫瘍領域面積とした。血管数を腫瘍領域面積で正規化した。被験化合物投薬群の血管数の増加率を、以下の式で算出したので表9に示す。
血管数の増加率(%)=((被験化合物投薬群の血管数−コントロール群の血管数)/コントロール群の血管数)×100
【表9】
【0151】
薬理試験例10. FaDu皮下モデルにおけるα−SMA陽性CAFに対する効果
10% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したヒト頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)細胞株FaDuを、PBSにて5×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、5〜6週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から10日後に、100μMのヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含む生理食塩水中の被験化合物を、1/2MTDおよびMTDで静脈内投与した。実験は、1群3匹のマウスで行った。投与から2日後に、腫瘍試料を収集し、IHC亜鉛固定液(BDファーミンジェン(BD Pharmingen))で4℃にて24時間固定した。パラフィン包埋組織を切断し(3μm)、正に荷電したスライドガラスに載せ、6時間風乾した。α−SMAの免疫組織化学的染色を、VentanaオートステイナーモデルDiscover XT(ロッシュダイアグノスティックス)を用いて行った。切片を脱パラフィン化、再水和し、独自のバッファー、EZPrep、およびCC1(ベンタナメディカルシステムズ)にて抗原賦活化を行った。切片をアルカリホスファターゼとコンジュゲートしたマウス抗α−SMAモノクローナル抗体(クローン1A4、シグマ)5μg/mLとともに6時間インキュベートした。検出は、RedMapキット(ベンタナメディカルシステムズ社)にて実施した。切片を段階的エタノールで脱水し、キシレン交換で脱脂し、DPX(メルク社)で覆った。連続した腫瘍スライスを脱パラフィン化し、マイヤーヘマトキシリン(武藤化学)で1分間染色した。切片を段階的エタノールで脱水し、キシレン交換で脱脂し、DPX(メルク社)で覆った。
【0152】
免疫染色したスライドを、Vectra(商標)2 Automated Slide Imaging System(パーキンエルマー社)を用いてスキャンした。inForm2ソフトウェア(パーキンエルマー社)を用いてα−SMA陽性物体をカウントすることで、腫瘍全体中のα−SMA陽性領域面積を定量化した。また、inForm2ソフトウェア(パーキンエルマー社)を用いてヘマトキシリン染色面積を計測し、腫瘍領域面積とした。α−SMA陽性領域面積を腫瘍領域面積で正規化した。被験化合物投薬群のα−SMA陽性面積の抑制率を、以下の式で算出したので表10に示す。
【表10】
【0153】
薬理試験例11. HSC−2同所性移植マウスモデル
レトロウイルスを用いた遺伝子導入により、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したHSC−2−Luc細胞を樹立した。最初に、ホタルルシフェラーゼをコードするDNA断片をpGL3−エンハンサープラスミド(GenBank#:U47297)から得、レトロウイルスベクターpCX4pur(GenBank#:AB086386)にサブクローニングした。次いで、上記レトロウイルス発現ベクターを、pGPおよびpE−Amphoプラスミド(タカラバイオ;滋賀、日本)と一緒に293T細胞(ATCC;Manassas、USA)にトランスフェクトして、ヘルパーフリー組換えレトロウイルスを生成した。次に、HSC−2細胞に組換えレトロウイルスを感染させた。ピューロマイシン(2μg/mL)の存在下で2週間培養することで、ポリクローナル増殖性集団から感染細胞を選別した。
【0154】
麻酔下で、ヒトSCCHN細胞株、HSC−2−Lucを、雌ヌードマウス、6週齢(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrljマウス;チャールスリバー社;静岡、日本)の舌に移植した(PBS 50μL中1×10
6細胞)。移植から7日後に、腫瘍体積をHSC−2−Luc細胞からの生物発光シグナルを用いて分析した。生物発光イメージングに関して、15mg/mL D−ルシフェリン(プロメガ、Madison、WI)0.1mLを1%〜2%吸入イソフルラン麻酔下でヌードマウスの腹腔内に注射した。生物発光シグナルは、高感度冷却電荷結合素子カメラからなるIVIS SPECTRUMシリーズ(パーキンエルマー、Waltham、MA)を用いてモニターした。Living Imageソフトウェア(パーキンエルマー、Waltham、MA)を用いてイメージングデータをグリッド配置し、各関心領域(ROI)中の全生物発光シグナルを積分した。すべての生物発光画像は、1秒間の露光で取得した。データは、ROI中の全放出フォトン数(光子/秒)を用いて分析した。
【0155】
投与初日に得た全放出フォトン数をもとに全放出フォトン数の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。化合物(1)またはシスプラチンを、3週間にわたって週1回(Q7D×3スケジュール)、セツキシマブ(アービタックス、メルクセローノ社)とともに、またはそれを伴わないで静脈内投与した。2つの実験を、同一手順を用いて行い、すべてのデータを実験から収集した。各群は、16匹のマウスからなっていた。
【0156】
イメージングデータは、セツキシマブを伴った化合物(1)の治療のみが、14日目の後すべてのマウスにおいて生物発光シグナルを明確に低減することを示した(
図6A〜6B)。中央値生存時間(MST)を、死亡日の中央値として治療の各群について算出した。延命率(Increase Life Span)(ILS)は、以下の式:ILS(%)=(被験化合物で治療された動物のMST−コントロール動物のMST)/コントロール動物のMST×100で算出した。各被験化合物のILS(%)を表11に示す。
【表11】
【0157】
薬理試験例12. 放射線と組み合わせたFaDu皮下移植モデル
レトロウイルスを用いた遺伝子導入により、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したFaDu−Luc細胞を樹立した。最初に、ホタルルシフェラーゼをコードするDNA断片をpGL3−エンハンサープラスミド(GenBank#:U47297)から得、レトロウイルスベクターpCX4pur(GenBank#:AB086386)にサブクローニングした。次いで、上記レトロウイルス発現ベクターを、pGPおよびpE−Amphoプラスミド(タカラバイオ;滋賀、日本)と一緒に293T細胞(ATCC;Manassas、USA)にトランスフェクトして、ヘルパーフリー組換えレトロウイルスを生成した。次に、FaDu細胞に組換えレトロウイルスを感染させた。ピューロマイシン(2μg/mL)の存在下で2週間培養することで、ポリクローナル増殖性集団から感染細胞を選別した。
【0158】
10% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したルシフェラーゼ遺伝子を導入したヒトSCCHN細胞株FaDu−Lucを、ハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt Solution)にて5×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、6週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右大腿皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から13日後に、腫瘍体積をFaDu−Luc細胞からの生物発光シグナルを用いて分析した。生物発光イメージングに関して、15mg/mL D−ルシフェリン(プロメガ、Madison、WI)0.1mLを1%〜2%吸入イソフルラン麻酔下でヌードマウスの腹腔内に注射した。生物発光シグナルは、高感度冷却電荷結合素子カメラからなるIVIS SPECTRUMシリーズ(パーキンエルマー、Waltham、MA)を用いてモニターした。Living Imageソフトウェア(パーキンエルマー、Waltham、MA)を用いてイメージングデータをグリッド配置し、各関心領域(ROI)中の全生物発光シグナルを積分した。すべての生物発光画像は、1秒間の露光で取得した。データは、ROI中の全放出フォトン数(光子/秒)を用いて分析した。全放出フォトン数は、以下の計算式で算出した:
相対的な生物発光レベル=全放出フォトン数(X日目)/全放出フォトン数(初日)
腫瘍退縮(%)=(1−最小の相対的な生物発光レベル)×100
【0159】
投与初日に得た全放出フォトン数をもとに全放出フォトン数の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。実験は、1群6匹のマウスで行った。化合物(1)は、1日目と8日目に尾静脈注射にて投与した。照射は、4日目と11日目に18Gyで実施した。化合物(1)についての腫瘍退縮を表12に示す。
【表12】
【0160】
薬理試験例13. 抗mPD−1抗体と組み合わせたCT26皮下移植マウスモデルにおける抗腫瘍活性
10% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したマウス未分化大腸癌細胞株CT26を、ハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt Solution)にて2×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。1日目に、細胞懸濁液を、6週齢のBALB/cマウス(BALB/cAnNCrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から2日後に、マウスを4つの群にランダムに分割した。各群は、8匹のマウスからなる。電子デジタルノギス(Digimatic(商標)キャリパ、株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の短径、長径を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
T/C=(治療群の平均腫瘍体積)/(コントロール群の平均腫瘍体積)
腫瘍増殖の阻害(%)=(1−T/C)×100
【0161】
被験化合物を3日目と11日目に0.09mg/kgで静脈内投与した。抗mPD−1抗体(BE0146、Bio X Cell)を、3、7、11、15日目に10mg/kgで静脈内投与した。各被験化合物の15日目の腫瘍増殖阻害(%)を、表13に示す。
【表13】
【0162】
薬理試験例14. インビトロでのチューブリン重合に対する効果(図10A)
チューブリン重合アッセイキットをサイトスケルトン(Cytoskeleton)社から購入した(カタログ番号BK011P)。キットは、1瓶のブタの脳から精製した凍結乾燥したチューブリンタンパク質、3チューブの凍結乾燥したGTP、2瓶の凍結乾燥したアッセイバッファー、および1瓶のチューブリングリセロールバッファーを含有していた。アッセイバッファーは、滅菌脱イオン水10mLに内容物を溶解して調製した。この溶液は、80mmol/Lピペラジン−N,N’−ビス[2−エタンスルホン酸]セスキナトリウム塩、2.0mmol/L塩化マグネシウム、0.5mmol/Lエチレングリコール−ビス(2−アミノ−エチルエーテル)N,N,N’,N’−テトラ−酢酸、pH6.9、10μmol/L蛍光レポーターを含有していた。バッファーは、使用するまで−70℃で保存した。チューブリングリセロールバッファーは、80mmol/Lピペラジン−N,N’−ビス[2−エタンスルホン酸]セスキナトリウム塩、2.0mmol/L塩化マグネシウム、0.5mmol/Lエチレングリコール−ビス(2−アミノ−エチルエーテル)N,N,N’,N’−テトラ−酢酸、60%v/vグリセロール、pH6.9からなっていた。これを、使用するまで4℃で保存した。GTP保存溶液は、滅菌脱イオン水100μLに各チューブの内容物を溶解して100mmol/L GTPの濃度に調製した。この溶液は分注し、使用するまで−70℃で保存した。チューブリン保存溶液(10mg/mL)は、アッセイバッファーとGTP保存溶液(100:1、v/v)の混合物1.1mLを添加してチューブリン粉末を溶解することにより調製した。この溶液は分注し、液体窒素で凍結させたのち、使用するまで−70℃で保存した。
【0163】
チューブリン重合アッセイでは、アッセイバッファー820μL、GTP保存溶液17.6μL、チューブリングリセロールバッファー600μLを混合して反応混合物を調製した。この反応混合物(1015μL)を、チューブリン保存溶液240μLと混合した。この溶液をチューブリン反応混合物と呼び、試験およびコントロールウェルの測定に用いた。チューブリンを含まない反応混合物を、反応混合物89.85μLとアッセイバッファー21.25μLを混合して調製し、ブランクウェルを測定した。化合物(1)溶液(6.25〜100μmol/L;最終濃度0.625〜10μmol/L)または媒体を、96ウェルハーフエリアマイクロタイタープレートの個々のウェルに5μLで添加した。チューブリン反応混合物またはチューブリンを含まない反応混合物を、プレートの各ウェルに45μLで添加した。460nmの蛍光発光(360nmの励起波長)を、SpectraMax(登録商標) M5eマイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス)を用いて90分にわたって2分毎に計測した。チューブリン重合により蛍光レポーターが微小管内に取り込まれるため、チューブリン重合の後に蛍光増強が起こる。アッセイは2点測定で実施した。アッセイにより、化合物(1)が濃度依存的にチューブリン重合を阻害することが実証された。各時点における蛍光強度を以下の式で算出した:
蛍光強度=試験ウェルまたはコントロールウェルの平均蛍光測定値−ブランクウェルの平均蛍光測定値;ブランクウェル:チューブリンを含まない媒体を含む;コントロールウェル:媒体とチューブリンを含む;試験ウェル:化合物とチューブリンを含む。
【0164】
薬理試験例15. 細胞に基づく微小管動態アッセイ(図10B)
細胞における微小管動態アッセイを、EB3(微小管プラス端結合タンパク質)とAzami−Greenとの融合タンパク質(EB3−AG)を安定に発現するU2OS−EB3−AG骨肉腫細胞株を用いて行った。U2OS−EB3−AG細胞は、加湿した5%CO
2、37℃にて、10% FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養した。生細胞内の微小管動態は、EB3−AGのコメット様構造の運動として可視化することができる。ガラスベース培養プレート(EZVIEWプレート、AGCテクノグラス、日本)上のU2OS−EB3−AG細胞を、図に示された濃度の化合物(1)にて処置し、60倍油浸対物レンズ(BZ-X710、キーエンス、日本)を設置した蛍光顕微鏡を用いて、タイムラプスイメージングにより微小管動態をモニターした。各時点における静止画を
図10Bに提示した。四角で囲んだ部分の高倍率画像は差し込み図に示した。化合物(1)を0.5nM(U2OS−EB3−AG細胞における50%増殖阻害濃度)で処置したとき、コメット様構造は、化合物を添加して約60分後に観察することが困難になった。これらの結果は、化合物(1)が微小管動態を抑制する能力を有することを明確に実証した。
【0165】
薬理試験例16. インビトロ増殖阻害活性(図11)
化合物(1)のインビトロ増殖阻害アッセイを、ヒト食道扁平上皮癌(OE21、TE−8)、ヒト食道腺癌(OE33)、ヒト子宮肉腫(MES−SA、MES−SA−Dx5−Rx1)を含めたがん細胞株の小パネルを用いて行った。すべての細胞株は、5%CO
2インキュベーター中(37℃)で、10%FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養した。96ウェルプレート(ベクトンディッキンソン社、353219)の各ウェルに、培地にて4×10
4細胞/mLの濃度に調整した細胞懸濁液75μLを添加し、細胞を5%CO
2インキュベーター中(37℃)で一晩インキュベートした。翌日、培地に懸濁させた3倍希釈系列中の化合物(1)25μLを各ウェルに添加し、5%CO
2インキュベーター中(37℃)で72時間インキュベートした。次いで細胞生存能を、2013 EnVision(商標)マルチラベルリーダー(パーキンエルマー、Wellesley、MA)を用いてCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ)で判定した。被験化合物を添加しなかった細胞のウェルの値を100%と定義し、細胞のいないウェルの値を0%と定義した。細胞増殖を50%阻害するのに必要な化合物(1)の濃度(IC
50値)を算出したので
図11に示す。P−gp感受性を、P−gpを過剰発現するMES−SA−Dx5−Rx1細胞におけるIC
50値とMES−SA細胞におけるIC
50値との比として算出した。
【0166】
薬理試験例17. 単剤療法としてのKPL−4移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果;単剤療法としてのマウスCOLO−704移植モデルにおける抗腫瘍効果(図12)
10% FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養したヒトHER−2陽性乳がん細胞株KPL−4を、ハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt Solution)にて1×10
8細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、8週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から11日後(1日目)、電子デジタルノギス(Digimatic(商標)キャリパ、株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の短径、長径を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
体重比(RBW)=体重(X日目)/体重(初日)
【0167】
1日目に得た腫瘍体積をもとに腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。実験は、1群6匹のマウスで行った。被験化合物をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで冷凍保存した。投与直前に、保存溶液を生理食塩水で希釈した。生理食塩水中の被験化合物を、2週間にわたって(1日目と8日目に)20μg/kg、60μg/kg、または180μg/kgで週1回静脈内投与した。腫瘍退縮が60μg/kgと180μg/kgの治療群で観察され、180μg/kgでの投与は、15日目にすべてのマウスにおいて移植腫瘍を完全に根絶した。
【0168】
10% FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640で培養したヒト卵巣がん細胞株COLO−704を、ハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt Solution)にて1×10
8細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、5週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から9日後(1日目)、電子デジタルノギス(Digimatic(商標)キャリパ、株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の短径、長径を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
体重比(RBW)=体重(X日目)/体重(初日)
【0169】
1日目に得た腫瘍体積をもとに腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。実験は、1群6匹のマウスで行った。被験化合物をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで冷凍保存した。投与直前に、保存溶液を生理食塩水で希釈した。生理食塩水中の被験化合物を、2週間にわたって(1日目と8日目に)20μg/kg、60μg/kg、または180μg/kgで週1回静脈内投与した。化合物での処置は、180μg/kgで腫瘍退縮、60μg/kgで腫瘍増殖遅延を誘導した。180μg/kgでの投与は、22日目にすべてのマウスにおいて移植腫瘍を完全に根絶した。
【0170】
薬理試験例18. FaDu皮下移植マウスモデルにおけるCD31陽性血管に対する効果(図13)
10% FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したヒト頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)細胞株FaDuを、培地にて5×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、6週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から10日後に、腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。実験は、1群6匹のマウスで行った。各被験化合物をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで冷凍保存した。投与直前に、保存溶液を生理食塩水で希釈した。生理食塩水中の被験化合物を、20μg/kg、60μg/kg、または180μg/kgで静脈内投与した。単回投与から5日後に、腫瘍試料を収集し、IHC亜鉛固定液(BDファーミンジェン(BD Pharmingen))で4℃にて24時間固定した。パラフィン包埋組織を切断し(3μm)、正に荷電したスライドガラスに載せ、風乾した。CD31の免疫組織化学的染色を、製造者のプロトコールに従ってVentanaオートステイナーモデルDiscover XT(ロッシュダイアグノスティックス)を用いて行った。切片を脱パラフィン化、再水和し、CC1(ベンタナメディカルシステムズ)にて抗原賦活化を行った。スライドをブロッカーAおよびブロッカーB(内因性ビオチンブロッキングキット、ロッシュダイアグノスティックス)にてブロックした。切片をラット抗マウスIgG CD31抗体(ディアノバ(dianova))2μg/mLとともに6時間インキュベートし、その後2.2μg/mLのビオチン化抗ラットIgG抗体(ジャクソンイムノリサーチラボラトリーズ)とともに32分インキュベートした。検出は、ストレプトアビジン−HRPDで16分間実施し、その後DAB DおよびDAB H
2O
2 D(DABMapキット、ベンタナメディカルシステムズ社)とともに8分間インキュベートした。スライドをヘマトキシリンII(ロッシュダイアグノスティックス)で16分間対比染色し、その後ブルーイング試薬とともに4分間インキュベートした。切片を段階的エタノールで脱水し、キシレン交換で脱脂し、DPX(登録商標)(メルク社)で覆った。免疫染色したスライドを、Vectra(登録商標)2 Automated Slide Imaging System(パーキンエルマー社)を用いてスキャンした。腫瘍全体中の血管数を、inForm2ソフトウェア(パーキンエルマー社)を用いてCD31陽性物体をカウントして定量化した。また、inForm2ソフトウェア(パーキンエルマー社)を用いてヘマトキシリン染色面積を計測し、腫瘍領域面積とした。血管数を腫瘍領域面積で正規化した。20、60、180μg/kgの用量で被験化合物を単回投与すると、腫瘍血管数が増加した。無処置群と比較した被験化合物投薬群における血管数の比を以下に式で算出した:
腫瘍血管比=被験化合物投薬群の血管数/無処置群の血管数
【0171】
薬理試験例19. FaDu皮下移植マウスモデルにおけるα−SMA陽性CAFに対する効果(図14)
10% FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したヒト頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)細胞株FaDuを、培地にて5×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、6週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から10日後に、腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。実験は、1群5匹のマウスで行った。各被験化合物をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで冷凍保存した。投与直前に、保存溶液を生理食塩水で希釈した。生理食塩水中の被験化合物を20μg/kg、60μg/kg、または180μg/kgで静脈内投与した。単回投与から2日後または5日後に、腫瘍試料を収集し、IHC亜鉛固定液(BDファーミンジェン(BD Pharmingen))で4℃にて24時間固定した。パラフィン包埋組織を切断し(3μm)、正に荷電したスライドガラスに載せ、風乾した。切片を脱パラフィン化、再水和し、pH6.0の1mM EDTAとともにマイクロ波を用いて抗原賦活化を行った。切片を、TBS中の1%のBSAでブロックした。切片をアルカリホスファターゼとコンジュゲートしたマウス抗α−SMAモノクローナル抗体(クローン1A4、シグマ)5μg/mLとともに2.5時間インキュベートした。検出は、ファーストレッドII基質キット(ニチレイバイオサイエンス社)で実施した。切片をマイヤーヘマトキシリン(武藤化学)で50秒間対比染色した。切片を段階的エタノールで脱水し、キシレン交換で脱脂し、DPX(メルク社)で覆った。免疫染色したスライドを、Vectra(登録商標)2 Automated Slide Imaging System(パーキンエルマー社)を用いてスキャンした。inForm2ソフトウェア(パーキンエルマー社)を用いてα−SMA陽性物体をカウントすることで腫瘍全体中のα−SMA陽性領域面積を定量化した。また、inForm2ソフトウェア(パーキンエルマー社)を用いてヘマトキシリン染色面積を計測し、腫瘍領域面積とした。α−SMA陽性領域面積を腫瘍領域面積で正規化した。被験化合物を単回投与すると、3日目に60と180μg/kgの用量で、6日目に180μg/kgの用量でα−SMA陽性面積が有意に低減された。被験化合物投薬群のα−SMA陽性面積の抑制率を以下の式で算出した:
α−SMA比=被験化合物投薬群のα−SMA面積/無処置群のα−SMA面積
【0172】
薬理試験例20. FaDu皮下移植マウスモデルにおけるテネイシン−C(Tenascin-C)およびEDA−フィブロネクチン(EDA-fibronectin)に対する効果(図15)
10% FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したヒト頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)細胞株FaDuを、培地にて5×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、6週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から10日後に、腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。実験は、1群5匹のマウスで行った。化合物(1)をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで冷凍保存した。化合物(1)(180μg/kg)およびセツキシマブ(CTX、Erbitux(登録商標)、メルクセローノ社)(10mg/kg)を1日目に生理食塩水で希釈し、静脈注射した。単回投与から5日後に、腫瘍試料を収集し、IHC亜鉛固定液(BDファーミンジェン(BD Pharmingen))で4℃にて24時間固定した。パラフィン包埋組織を切断し(3μm)、正に荷電したスライドガラスに載せ、風乾した。切片を脱パラフィン化、再水和し、テネイシン−Cについては、pH6.0の1mM EDTAとともにマイクロ波を用いて抗原賦活化を行った抗原を回収した。EDA−フィブロネクチンについては、抗原賦活化抗原回収手順は必要でなかった。切片を、内因性ペルオキシダーゼをブロックするためにBLOXALLブロッキング溶液(ベクターラボラトリーズ)とともに10分間、マウスオンマウスIgブロッキング試薬(ベクターラボラトリーズ)とともに1時間、次いで2.5%正常ウマ血清とともに30分間インキュベートした。テネイシン−Cの免疫組織化学的染色については、切片をマウス抗テネイシン−Cモノクローナル抗体(クローン4C8MS、IBL)5μg/mLとともに4℃で一晩インキュベートした。EDA−フィブロネクチンの免疫組織化学的染色については、切片をマウス抗EDA−フィブロネクチンモノクローナル抗体(クローンIST−9、Abcam)1.5μg/mLとともに室温で1時間インキュベートした。検出は、マウスオンマウスImmPRESS(商標)ペルオキシダーゼポリマーキット(ベクターラボラトリーズ)で実施した。切片をマイヤーヘマトキシリン(武藤化学)で50秒間対比染色した。切片を段階的エタノールで脱水し、キシレン交換で脱脂し、DPX(メルク社)で覆った。免疫染色したスライドを、Vectra(商標)2 Automated Slide Imaging System(パーキンエルマー社)を用いてスキャンした。テネイシン−CとEDA−フィブロネクチンの両方の発現レベルは、コントロール腫瘍と比較して化合物(1)とCTXで処置された腫瘍において低減された。
【0173】
薬理試験例21. セツキシマブと組み合わせたFaDu皮下移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果(図16)
10% FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地で培養したヒト頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)細胞株FaDuを、ハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt Solution)にて5×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、胸腺欠損マウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、7週齢、日本チャールスリバー社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から10日後(1日目)、電子デジタルノギス(株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の長さと幅を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
【0174】
TVをもとにマウスをランダムに群分けした(1日目)。各群は、6匹のマウスからなっていた。化合物(1)をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで冷凍保存した。化合物(1)(20、60、または180μg/kg)とセツキシマブ(CTX、Erbitux(登録商標)、メルクセローノ社)(10mg/kg)を、1日目に生理食塩水で希釈し、静脈注射した。各群のRTVの変化を
図16に示した。180μg/kgと60μg/kgの用量で、CTXと併用した化合物(1)の抗腫瘍効力は、CTX単剤療法の抗腫瘍効力より強く、腫瘍退縮があった。CTXと併用した20μg/kgの用量での化合物(1)の抗腫瘍効力は、CTX単剤療法の抗腫瘍効力より強くなる傾向があった。
【0175】
薬理試験例22. 単剤療法としての軟部肉腫移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果(図17)
MES−SA
10% FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640で培養したヒト子宮肉腫細胞株MES−SAを、ハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt Solution)にて2×10
8細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製し、懸濁液をGeltrex(商標)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、#A1413202)と1:1の比で混合して1×10
8細胞/mLの濃度の細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、6週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から6日後(1日目)、電子デジタルノギス(Digimatic(商標)キャリパ、株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の短径、長径を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
【0176】
1日目に得た腫瘍体積をもとに腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。実験は、1群6匹のマウスで行った。被験化合物をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで凍結保存した。投与直前に、保存溶液を生理食塩水で希釈した。生理食塩水中の被験化合物を、2週間にわたって(1日目と8日目に)180μg/kgで週1回静脈内投与した。抗腫瘍活性が、治療群において腫瘍増殖遅延を伴って観察された。
【0177】
HT−1080
10% FBS、NEAA、抗生物質を含有するE−MEMで培養したヒト線維肉腫細胞株HT−1080を、培地にて3×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、胸腺欠損マウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、6週齢、日本チャールスリバー社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から6日後(1日目)、電子デジタルノギス(株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の長さ、幅を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
【0178】
TVをもとにマウスをランダムに群分けした(1日目)。各群は、6匹のマウスからなっていた。化合物(1)をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで凍結保存した。化合物(1)(180μg/kg)を生理食塩水で希釈し、1日目と8日目に静脈注射した。各群のRTVの変化を
図17に示した。抗腫瘍活性が、治療群において腫瘍退縮を伴って観察された。
【0179】
CTG−2041
ヒト血管肉腫CTG−2041の腫瘍断片を雌マウスの左側腹部に皮下移植した。腫瘍増殖を、デジタルノギスを用いて週2回モニターし、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
【0180】
腫瘍体積がおよそ200mm
3に到達したとき、腫瘍体積を基に動物を治療群またはコントロール群に群分けし、1日目に投薬を開始した。各群を5匹のマウスで構成した。化合物(1)をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで凍結保存した。化合物(1)(100μg/kg)を生理食塩水で希釈し、1日目と8日目に静脈注射した。各群のRTVの変化を
図17に示した。抗腫瘍活性が、治療群において腫瘍退縮を伴って観察された。
【0181】
薬理試験例23. 単剤療法としての子宮内膜がん移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果(図18)
HEC−108
15% FBS、抗生物質を含有するE−MEMで培養したヒト子宮内膜がん細胞株HEC−108を、培地にて7.14×10
7細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、胸腺欠損マウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、6週齢、日本チャールスリバー社)の右側腹皮下部に150μLの容量で移植した。細胞移植から13日後(1日目)、電子デジタルノギス(株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の長さ、幅を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
【0182】
TVをもとにマウスをランダムに群分けした(1日目)。各群は、6匹のマウスからなっていた。化合物(1)をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで凍結保存した。化合物(1)(180μg/kg)を生理食塩水で希釈し、1日目と8日目に静脈注射した。各群のRTVの変化を
図18に示した。抗腫瘍活性が、治療群において腫瘍増殖遅延を伴って観察された。
【0183】
AN3CA
10% FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するE−MEMで培養したヒト子宮内膜がん細胞株AN3CAを、ハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt Solution)にて1.4×10
8細胞/mLの濃度に調整して細胞懸濁液を調製し、懸濁液をGeltrex(商標)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、#A1413202)と1:1の比で混合して7×10
7細胞/mLの濃度の細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、6週齢のヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌、日本チャールスリバー株式会社)の右側腹皮下部に100μLの容量で移植した。細胞移植から12日後(1日目)、電子デジタルノギス(Digimatic(商標)キャリパ、株式会社ミツトヨ)を用いて各マウスの腫瘍の短径、長径を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した:
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
相対腫瘍体積(RTV)=腫瘍体積(X日目)/腫瘍体積(初日)
【0184】
1日目に得た腫瘍体積をもとに腫瘍体積の平均値が群間で等しくなるようにマウスを群分けした。実験は、1群5匹のマウスで行った。被験化合物をDMSOに溶解し、溶液を使用前まで冷凍保存した。投与直前に、保存溶液を生理食塩水で希釈した。生理食塩水中の被験化合物を、2週間にわたって(1日目と8日目に)180μg/kgで週1回静脈内投与した。抗腫瘍活性が、治療群において腫瘍退縮を伴って観察された。
【0185】
薬理試験例24. NCI−N87およびMKN−28の増殖阻害アッセイ
このアッセイでは、ヒト胃がん細胞株NCI−N87およびMKN−28における被験化合物の増殖阻害活性をそれぞれ測定した。NCI−N87細胞およびMKN−28細胞を、5%CO
2インキュベーター(37℃)中、10% FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地中で維持した。96ウェルプレート(Becton, Dickinson and Company、353219)の各ウェルへ、培地で3×10
4細胞/mLの濃度に調整されたNCI−N87またはMKN−28の100μLの細胞懸濁液を加え、その細胞を5%CO
2インキュベーター(37℃)中、終夜インキュベートした。翌日、100μLの、培地中に懸濁された3倍希釈系列中の化合物(1)またはハリコンドリンBを各ウェルへ加え、その結果物を、5%CO
2インキュベーター(37℃)中、3日間インキュベートした。次いで、細胞生存能を、EnVision 2103 Multilabel Reader(Perkin?Elmer, Wellesley, MA)で、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)によって決定した。被験化合物を加えなかった細胞含有ウェルの値を100%として定義し、細胞を含有しないウェルの値を0%として定義した。細胞増殖を50%まで阻害するのに必要な被験化合物の濃度(すなわち、IC
50値)を算出して表14に示す。
【表14】
【0186】
薬理試験例25. HuTu80の増殖阻害アッセイ
このアッセイでは、十二指腸組織から単離されたヒト小腸がん細胞株HuTu80における被験化合物の増殖阻害活性を測定した。HuTu80細胞を、5%CO
2インキュベーター(37℃)中、10% FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有するEMEM培地中で維持した。96ウェルプレート(Becton, Dickinson and Company、353219)の各ウェルへ、培地で3×10
4細胞/mLの濃度に調整された100μLのHuTu80細胞懸濁液を加え、その細胞を5%CO
2インキュベーター(37℃)中、終夜インキュベートした。翌日、100μLの、培地中に懸濁された3倍希釈系列中の化合物(1)またはハリコンドリンBを各ウェルへ加え、その結果物を、5%CO
2インキュベーター(37℃)中、3日間インキュベートした。次いで、細胞生存能を、EnVision 2103 Multilabel Reader(Perkin?Elmer, Wellesley, MA)で、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)によって決定した。被験化合物を加えなかった細胞含有ウェルの値を100%として定義し、細胞を含有しないウェルの値を0%として定義した。細胞増殖を50%まで阻害するのに必要な被験化合物の濃度(すなわち、IC
50値)を算出して表15に示す。
【表15】
【0187】
薬理試験例26. SW780の増殖阻害アッセイ
このアッセイでは、ヒト尿路上皮がん細胞株SW780における被験化合物の増殖阻害活性を測定した。SW780細胞を、5%CO
2インキュベーター(37℃)中、10% FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有するRPMI−1640培地中で維持した。96ウェルプレート(Becton, Dickinson and Company、353219)の各ウェルへ、培地で3×10
4細胞/mLの濃度に調整された100μLのSW780細胞懸濁液を加え、その細胞を5%CO
2インキュベーター(37℃)中、終夜インキュベートした。翌日、100μLの、培地中に懸濁された3倍希釈系列中の化合物(1)またはハリコンドリンBを各ウェルへ加え、その結果物を、5%CO
2インキュベーター(37℃)中、3日間インキュベートした。次いで、細胞生存能を、EnVision 2103 Multilabel Reader(Perkin?Elmer, Wellesley, MA)で、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)によって決定した。被験化合物を加えなかった細胞含有ウェルの値を100%として定義し、細胞を含有しないウェルの値を0%として定義した。細胞増殖を50%まで阻害するのに必要な被験化合物の濃度(すなわち、IC
50値)を算出して表16に示す。
【表16】
【0188】
薬理試験例27. HS−SY−IIの増殖阻害アッセイ
このアッセイでは、ヒト滑膜肉腫細胞株HS−SY−IIにおける被験化合物の増殖阻害活性を測定した。HS−SY−II細胞を、5%CO
2インキュベーター(37℃)中、10% FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有するDMEM培地中で維持した。96ウェルプレート(Becton, Dickinson and Company、353219)の各ウェルへ、培地で3×10
4細胞/mLの濃度に調整された100μLのHS−SY−II細胞懸濁液を加え、その細胞を5%CO
2インキュベーター(37℃)中、終夜インキュベートした。翌日、100μLの、培地中に懸濁された3倍希釈系列中の化合物(1)またはハリコンドリンBを各ウェルへ加え、その結果物を、5%CO
2インキュベーター(37℃)中、3日間インキュベートした。次いで、細胞生存能を、EnVision 2103 Multilabel Reader(Perkin?Elmer, Wellesley, MA)で、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)によって決定した。被験化合物を加えなかった細胞含有ウェルの値を100%として定義し、細胞を含有しないウェルの値を0%として定義した。細胞増殖を50%まで阻害するのに必要な被験化合物の濃度(すなわち、IC
50値)を算出して表17に示す。
【表17】
【0189】
均等物および射程
特許請求の範囲において、「a」、「an」、「the」等の冠詞は、それとは反対に示されていない限り、または脈絡から別段に明白でない限り、1つまたは1つを超える、を意味しうる。群の1つまたはそれ以上の要素間に「または」を含む請求項または明細書は、それとは反対に示されていない限り、または脈絡から別段に明白でない限り、1つ、1つを超える、またはすべての群の要素が一定の生成物または工程に存在し、使用され、または別段に関連している場合、満たされていると見なされる。本発明は、群のうちの正確に1つの要素が一定の生成物または工程に存在し、使用され、または別段に関連している実施形態を含む。本発明は、1つを超える、またはすべての群要素が一定の生成物または工程に存在し、使用され、または別段に関連している実施形態を含む。
【0190】
さらに、本発明は、列挙された請求項の1つまたはそれ以上からの1つまたはそれ以上の制限事項、要素、条項、記述用語が別の請求項に導入されるすべての変形、組合せ、順列を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項を、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項に見出される1つまたはそれ以上の制限事項を含むように改変することができる。要素が、例えば、マーカッシュ群形式でリストとして提示されている場合、その要素の各亜群も開示されており、任意の要素を群から除去することができる。一般に、本発明または本発明の態様が、特定の要素および/または特徴を含むと言及されている場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様は、このような要素および/または特徴からなり、または本質的になることが理解されるべきである。簡単のために、このような実施形態は、本明細書にこの通りの言葉で具体的に示されていない。用語「〜を含む」および「〜を含有する」は、オープンであるように意図されており、追加の要素またはステップを含めることを許容することも留意される。範囲が与えられている場合、終点は含まれる。さらに、別段に示されていない限り、または脈絡および当業者の理解から別段に明白でない限り、範囲として表現されている値は、脈絡による別段の明らかな要求のない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、本発明の異なる実施形態における述べられた範囲内の任意の具体的な値またはサブ範囲を仮定することができる。
【0191】
当業者は、本明細書に記載の具体的な実施形態の多くの均等物を認識することになり、これらをせいぜい日常の実験を用いて確認することができる。本明細書に記載の本実施形態の射程は、上記記載に限定されるように意図されておらず、むしろ添付の特許請求の範囲に示された通りである。当業者は、本記載の様々な変更および改変が、以下の特許請求の範囲で規定される本発明の趣旨または射程から逸脱することなく行われうることを察知するであろう。
【課題】腫瘍血管リモデリング効果および抗CAF(Cancer Associated Fibroblasts)(がん関連線維芽細胞)活性を有する新規大環状化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、薬剤学的に許容される担体中にあってもよい、腫瘍血管リモデリング効果および/または抗CAF(Cancer Associated Fibroblasts)(がん関連線維芽細胞)活性を有する新規化合物(1)またはその薬剤学的に許容される塩、ならびにこれらの医療上の使用を提供する。