(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生鮮品の鮮度を保持するための鮮度保持空間内に交流電場を形成し、前記交流電場が形成されている前記鮮度保持空間内に配置されている前記生鮮品の鮮度を保持する鮮度保持装置において、
前記鮮度保持空間を画定する画定部と、
前記画定部により画定された前記鮮度保持空間内に設けられる電極部と、
前記電極部に第1交流電圧を印加する電圧印加装置と、
を備え、
前記電圧印加装置は、
交流電源により第2交流電圧が印加される一次コイルと、前記一次コイルと磁気的に結合された二次コイルと、を含むトランスと、
前記二次コイルにおける電圧を調整するために前記二次コイルの一方の端子を前記一次コイルの一方の端子に戻すフィードバック制御回路と、
前記二次コイルの出力に低周波振動を加えるために前記二次コイルの他方の端子に接続された出力制御部と、
前記交流電源から入力される第3交流電圧の電圧値を、互いに異なる複数の種類の電圧値に切り替え、電圧値が切り替えられた前記第3交流電圧を前記第2交流電圧として前記一次コイルに印加することにより、前記第1交流電圧の電圧値を調整する電圧調整部と、
を有し、
前記電極部は、前記出力制御部を介して前記二次コイルの他方の端子に接続され、
前記電圧調整部は、
前記一次コイルの一方の端子又は前記一次コイルの他方の端子である第1端子と、前記交流電源と、の間にそれぞれ設けられ、且つ、互いに並列に接続された可変抵抗及びサージアブソーバーと、
前記第1端子を、互いに並列に接続された前記可変抵抗及び前記サージアブソーバーを介して前記交流電源に接続するか、又は、前記第1端子を、互いに並列に接続された前記可変抵抗及び前記サージアブソーバーのいずれも介さずに前記交流電源に接続するかを切り替えるスイッチ素子と、
を含む、鮮度保持装置。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0051】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0052】
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0053】
更に、実施の形態で用いる図面においては、構造物を区別するために付したハッチング(網掛け)を図面に応じて省略する場合もある。
【0054】
なお、以下の実施の形態においてA〜Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
【0055】
(実施の形態1)
初めに、本発明の一実施形態である実施の形態1の鮮度保持装置及び当該鮮度保持装置が有する空間電位発生装置について説明する。
【0056】
<鮮度保持装置>
まず、本実施の形態1の鮮度保持装置について説明する。本実施の形態1の鮮度保持装置は、生鮮品の鮮度を保持するための鮮度保持空間内に交流電場を形成し、交流電場が形成されている鮮度保持空間内に配置されている生鮮品の鮮度を保持する鮮度保持装置である。また、本実施の形態1の鮮度保持装置は、交流電場を形成する電場形成装置としての空間電位発生装置を有する。
【0057】
図1は、実施の形態1の鮮度保持装置の一例を模式的に示す断面図である。
図2は、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられる電極部の一例を模式的に示す平面図である。
【0058】
なお、以下では、本実施の形態1の鮮度保持装置が、鮮度保持空間を画定する画定部として、例えば通常の家庭用冷蔵庫よりなる冷蔵庫を備えている例について説明する。しかし、後述する実施の形態1の第1変形例乃至第3変形例において
図10乃至
図12を用いて説明するように、本実施の形態1の鮮度保持装置は、鮮度保持空間を画定する画定部として、家庭用冷蔵庫以外の画定部を備えていてもよい。或いは、後述する実施の形態1の第4変形例において
図13を用いて説明するように、本実施の形態1の鮮度保持装置は、鮮度保持空間を画定する画定部を備えていなくてもよい。
【0059】
図1に示すように、本実施の形態1の鮮度保持装置は、冷蔵庫1と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。冷蔵庫1は、生鮮品4の鮮度を保持するための鮮度保持空間5を画定する画定部であり、鮮度保持空間5は、冷蔵庫1内に形成されている。冷蔵庫1として、前述したように、例えば通常の家庭用冷蔵庫を用いることができる。電極部2は、画定部により画定された鮮度保持空間5内に設けられている。言い換えれば、電極部2は、冷蔵庫1内に設けられている。電圧印加装置3は、例えば冷蔵庫1の背面に内蔵されており、電極部2に交流電圧VL1(後述する
図3参照)を印加することにより、電極部2の周囲に交流電場を形成する。電極部2と電圧印加装置3とにより、交流電場を形成する電場形成装置としての空間電位発生装置6が形成されている。また、電極部2は、鮮度保持空間5内に静電気を放出する静電気放出部である。即ち、電極部2は、空間電位発生装置6が有する静電気放出部である。
【0060】
本実施の形態1の鮮度保持装置は、電極部2から鮮度保持空間5内に静電気を放出することにより、鮮度保持空間5内、即ち電極部2の周囲に交流電場を形成し、形成された交流電場を生鮮品4に印加しながら生鮮品4の鮮度を保持する。このとき、交流電場の効果により、生鮮品4中の水分子に特定の波長の電磁波を照射することができるので、生鮮品4中の細胞を活性化させ、生鮮品4の鮮度を長期間保持することができる。
【0061】
なお、本願明細書における生鮮品には、野菜、果物及び花きその他の農産物、例えば肉類等の畜産物を含む農産物全般、並びに、魚介類等を含む水産物全般が含まれるものとする。
【0062】
図1に示すように、冷蔵庫1内の空間、即ち鮮度保持空間5は、仕切板11及び12により三つの空間に仕切られており、最上段にチルド室13が、中段に冷蔵室14が、そして最下段に野菜室15が形成されている。従って、
図1に示す例では、チルド室13、冷蔵室14及び野菜室15により、鮮度保持空間5が形成されている。
【0063】
チルド室13と冷蔵室14との間の仕切板11の内部には、空間電位発生装置6が有する静電気放出部としての電極部2が設けられている。このような場合、仕切板11は、電極部2の表面を覆う絶縁部材として機能する。このように、電極部2を仕切板11の内部に設けることにより、外部から電極部2が見えないので見た目の安心感が高まり、また、誤って電極部2に高い電流が流れてしまった場合でも、使用者が電極部2に直接触れることがないので直接接触による感電を防止することができる。
【0064】
また、電極部2を仕切板11の内部に設けることにより、電極部2に近いチルド室13及び冷蔵室14における交流電場の強度は強くなり、電極部2から離れた野菜室15における交流電場の強度は弱くなるため、保存する生鮮品4に適した交流電場の強度が得られる。
【0065】
なお、
図1に示す例では、電極部2は仕切板11の内部に設けられているが、電極部2が設けられる位置は、
図1に示す例に限定されない。即ち、電極部2を任意の位置に設けることができ、例えば、冷蔵庫1の背板、天板又は他の仕切板の内部に電極部2を設けてもよい。
【0066】
図1に示す例では、電極部2は、板状の導電性材料よりなる。また、電極部2は、平板状でも湾曲していてもよい。
【0067】
図2に示すように、好適には、電極部2は、主面21を含む板状部22を有する。これにより、例えば仕切板11の内部に、電極部2を容易に設置することができる。
【0068】
図2に示すように、更に好適には、板状部22は、主面21に形成された、複数の凹部又は孔部、即ち複数の開口部23を含む。板状部22の主面21に垂直な方向から視たときの開口部23の形状を、円形又は六角形などの形状とすることができる。板状部22が、このような円形や六角形などの形状を有する開口部23を含むことにより、例えば開口部23の周縁に交流電場が集中するので、電極部2から生鮮品4の周囲に静電気を放出しやすくなる。なお、電極部2は、板状部22を有する場合に限定されない。例えばアルミホイルでラミネートされたシートでも、電極部2としての放電板を形成することができる。また、高圧線のみで防水効果を有するようにしてシート状にした電極部2としての出力シート、即ち交流電力が出力される出力シートを形成することもでき、同様の効果を有する。アルミホイルや銅やステンレスや鉄やカーボンなどの導電性に限らず、出力部を接続する事で様々な材質で応用できる。
【0069】
電極部2としてシート状の出力シートを用いることにより、電極部2の防水性能を容易に向上させることができるか、電極部2を容易に軽量化することができるか、電極部2を容易に設置することができるか、又は、電極部2の厚さを容易に低減することができる。
【0070】
この出力シートについては、上記したようにアルミホイルを用いて形成することもできるが、カーボンを加工して形成することもできる。カーボンを加工して形成された出力シートについては、例えば縦25cm×25cm×厚さ1mmの形状を有しているものを用いることができる。このようなカーボンを加工して形成された出力シートは、例えば80gの重さを有し、他の材料を用いた出力シートに比べて、電極部2を更に容易に軽量化することができ、電極部2を更に容易に設置することができる。
【0071】
また、カーボンを加工して形成された出力シートについては、電極部2の抵抗を減少させ、電極部2の導電性を向上させることにより、交流電場の効果が及ぶ範囲を、他の材料を用いて形成された出力シートの場合に交流電場の効果が及ぶ範囲に比べて、2倍程度に広げることができる。具体的には、カーボンを加工して形成された出力シートについては、例えば出力シートの抵抗を5〜40Ω程度に減少させることができ、アルミホイルを用いて形成された出力シートの場合に出力シートから3m離れた位置において及ぼされる交流電場の効果と同等の効果を、出力シートから5m離れた位置まで広げることができる。
【0072】
更に、カーボンを加工して形成された出力シートには、いわゆる遠赤外線セラミックと称される遠赤外線を放射しやすいセラミックの粉末が練り込まれていることが好ましい。セラミックとして、例えばトルマリンを用いることができ、粉末の粒径を例えば200μmとすることができる。このようなトルマリン等の遠赤外線セラミックと称されるセラミックについては、マイナスイオンを発生しやすいので、交流電場の効果が及ぶ範囲を広げる効果を更に増加させることができる。或いは、カーボンを加工して形成された出力シートには、例えば酸化チタン等の光触媒か又は酸素触媒が塗布されていてもよく、これにより、鮮度保持効果を更に増加させることができる。
【0073】
或いは、電極部2を、仕切板の内部ではなく、チルド室13、冷蔵室14及び野菜室15の内部に設けることもできる。このような場合であって、且つ、板状部22が、円形や六角形などの形状を有する開口部23を含む場合には、冷蔵庫1内に設けられたファンによって冷蔵庫1内の空気が循環する際に、電極部2が空気循環の妨げになることがなく、チルド室13、冷蔵室14及び野菜室15の各室内の電場の強度を含めた鮮度保持条件を容易に均一化することができる。
【0074】
或いは、電極部2は、板状部22の主面21又は主面21と反対面に絶縁部材を有してもよい。また、板状部22の表面が、絶縁部材で覆われていてもよい。或いは、鮮度保持装置は、電極部2の表面を覆う絶縁部材を備えていてもよい。これにより、板状部22が露出している状態に比べて見た目の安心感が増加し、更に何らかの間違いにより二次コイルに高い値の電流が流れた場合でも直接接触による感電の心配がなく、更に、コロナ放電が発生することを防止することができる。
【0075】
絶縁部材の表面には、開口部23と同様に、凹部又は孔部、即ち開口部が形成されていてもよいが、絶縁部材の表面は平坦で開口部が形成されていなくてもよい。このような場合、電極部2は、板状部22が水と接触することを防止する防水効果を有する。また、その平坦な絶縁部材の表面に、例えば酸化チタン等の光触媒か又は酸素触媒が塗布されていてもよい。このような平坦な表面を有し、且つ、光触媒等が塗布されている絶縁部材を有することにより、チルド室13、冷蔵室14及び野菜室15等、即ち鮮度保持空間5で生鮮品4から発生したエチレンガスを除去することができる。なお、光触媒又は酸素触媒は、電極部2の表面に塗布されていればよいので、絶縁部材の表面に塗布されていてもよく、電極自体の表面に塗布されていてもよい。
【0076】
<空間電位発生装置>
次に、本実施の形態1の空間電位発生装置について説明する。本実施の形態1の空間電位発生装置は、交流電場を形成する電場形成装置である。また、本実施の形態1の空間電位発生装置は、本実施の形態1の鮮度保持装置が有する空間電位発生装置である。
【0077】
図3は、実施の形態1の空間電位発生装置の一例を示す回路図である。
図3に示す例では、電圧印加装置3は、トランス31と、フィードバック制御回路32と、出力制御部33と、出力端子34と、を有する。トランス31は、互いに磁気的に結合された一次コイル35と二次コイル36とを含む。
【0078】
一次コイル35には、交流電源により交流電圧VL2が印加される。
図3に示す例では、交流電源として、AC入力コンセント37に接続された商用電源(図示は省略)が用いられる。
【0079】
なお、AC入力コンセント37と一次コイル35との間には、ブレーカー38が設けられていてもよく、ブレーカー38と一次コイル35との間には、スイッチ素子39が設けられていてもよい。また、交流電源として、例えば電圧印加装置3の内部又は外部に設けられた二次電池その他の各種の直流電源を例えばインバータ回路により変換して得られる交流電源その他の各種の交流電源を用いることができる。
【0080】
二次コイル36の一方の端子36aは、フィードバック制御回路32を介して、一次コイル35の一方の端子35aに接続されている。また、フィードバック制御回路32は、二次コイル36における電圧を調整する。言い換えれば、フィードバック制御回路32は、二次コイル36における電圧を調整するために、二次コイル36の一方の端子36aを、一次コイル35の一方の端子35aに戻す。
【0081】
出力制御部33は、二次コイル36の他方の端子36bと、出力端子34と、の間に設けられている。また、出力制御部33は、二次コイル36の出力電圧に低周波振動を加える。言い換えれば、出力制御部33は、二次コイル36の出力電圧に低周波振動を加えるために、二次コイル36の他方の端子36bに接続されている。
【0082】
電極部2は、導線よりなる給電線24(
図1参照)を介して、出力端子34、即ち、出力制御部33の二次コイル36の他方の端子36b側と反対側の端子に接続される。そのため、電極部2は、給電線24及び出力制御部33を介して二次コイル36の他方の端子36bに接続されることになる。
【0083】
上記した電圧印加装置3によれば、フィードバック制御回路32により二次コイル36側に発生した電流が一次コイル35にフィードバックされるので、少ない巻数で二次コイル36側に高い電圧を得ることができる。また、フィードバック制御回路32及び出力制御部33は回路に遅延を生じさせるように構成されており、その結果、二次コイル36の出力に、例えば20〜100Hzの低周波振動が加えられる。
【0084】
また、フィードバック制御回路32により、二次コイル36の一方の端子36aを一次コイル35の一方の端子35aに接続して二次コイル36における電圧を調整するため、結果として、電圧印加装置3を小型化することができる。
【0085】
前述したように、本実施の形態1の鮮度保持装置は、生鮮品4の鮮度を保持するための鮮度保持空間5内に交流電場を形成し、交流電場が形成されている鮮度保持空間5内に配置されている生鮮品4の鮮度を保持する。具体的には、電極部2から鮮度保持空間5内に静電気を放出することにより、鮮度保持空間5内に交流電場を形成し、形成された交流電場を生鮮品4に印加しながら生鮮品4の鮮度を保持する。
【0086】
このとき、交流電場の効果により、生鮮品4中の水分子に特定の波長の電磁波を照射することができるので、生鮮品4中の細胞を活性化させることができる。また、生鮮品4の腐敗が進行する際に生鮮品4が酸化して減少する電子を補うことにより、生鮮品4の酸化を防止し、細菌の活動を抑制することができる。即ち、空間電位発生装置6を有する本実施の形態1の鮮度保持装置によれば、交流電場の効果により、生鮮品4の鮮度を長期間保持することができる。
【0087】
また、生鮮品4中の細胞等に対して、クラスター効果、マイナス電子チャージ及びプラス電子チャージをチャージすることにより細胞等の酸化を抑制することができる。また、生鮮品4中でウィルス等を殺菌し繁殖することを抑制することができる。
【0088】
交流電場が印加される場合、鶏肉は−5℃までは凍結せず、牛肉、豚肉及び魚は−7℃までは凍結しないため、低温で凍結させずに生鮮品を保存することができる。これにより、凍結させたものを解凍する際に組織が破壊等されるおそれがなく、凍結せずに鮮度を保持したまま長期間保存することができる。
【0089】
また、本実施の形態1の鮮度保持装置は、例えば通常の家庭用冷蔵庫よりなる冷蔵庫1と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。また、上記したように、交流電場の効果により、生鮮品4の鮮度を長期間保持することができる。そのため、本実施の形態1の鮮度保持装置によれば、鮮度保持装置の導入コスト及び運転コストを低減することができ、且つ、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により生鮮品4の鮮度を効率良く保持することができる。
【0090】
また、本実施の形態1の鮮度保持装置では、フィードバック制御回路32及び出力制御部33の作用で、二次コイル36の出力に高い電圧が発生し、且つ、二次コイル36の出力に低周波振動が加えられる。そのため、出力が端子36bの一線しかなくても、電極部2から電位の低い部位(例えば、接地部位)に向けて良好に静電気が放出され、電極部2の周囲(具体的には電極部2を中心に半径約1.5mの範囲で360度)に高電圧の交流電場が形成される。これにより、生鮮品4の周囲に交流電場を形成するために、2個の電極を用いる必要がない。そのため、鮮度保持装置の構成を簡素化することができる。
【0091】
即ち、本実施の形態1の鮮度保持装置では、電極部2を第1電極と称する場合、電圧印加装置3は、第1電極以外のいずれの電極とも電気的に接続されなくてもよく、第1電極以外のいずれの電極にも電圧を印加しなくてもよい。これにより、生鮮品4の鮮度を保持する際の鮮度保持効果を向上させつつ、鮮度保持装置の構成を簡素化することができる。
【0092】
冷蔵室、野菜室及び冷凍室のように複数の室に分割された冷蔵庫内に交流電場を形成する場合、従来の空間電位発生装置では各室ごとに電極棚板を設置するか、一対の電極を設ける必要があった。
【0093】
一方、本実施の形態1の鮮度保持装置では、電極部2がアンテナとして動作するので、鮮度保持空間5のうち、電極部2から離隔した部分でも、印加される交流電場の振幅、即ち電圧がそれほど小さくはならない。そのため、電極部2として、1個の電極しか設けられていなくても、生鮮品4中の細胞等に対して、クラスター効果、マイナス電子チャージ及びプラス電子チャージをチャージすることにより細胞等の酸化を抑制する効果、並びに、生鮮品4中でウィルス等を殺菌し繁殖することを抑制する効果、を得ることができる。
【0094】
但し、鮮度保持空間5に形成される交流電場の強度は、電極部2に近づくほど大きく、電極部2から離隔するほど小さい。そのため、鮮度を保持する生鮮品4の種類によって、交流電場の強度が小さくて済むものと、交流電場の強度が大きいことが必要なものがあるので、チルド室13、冷蔵室14及び野菜室15の配置に応じて適切な位置に電極部2を配置することにより、最良の効果が得られる。
【0095】
好適には、一次コイル35には、交流電源により交流電圧VL2が印加される。具体的には、電圧印加装置3は、交流電源から入力される交流電圧を交流電圧VL2として一次コイル35に印加する。
【0096】
或いは、電圧印加装置3の電源として、電池を用いることも可能である。このような場合でも、電圧印加装置3の消費電力は低いため、例えば単一電池を16本並列接続にした状態で、3日間動作させることができる。従って、空間電位発生装置6を、例えば自動車に設けられた空間電位発生装置、即ち、移動可能な空間電位発生装置にも適用することができる。
【0097】
好適には、出力制御部33は、二次コイル36の出力に20〜100Hzの周波数の電圧を印加する。言い換えれば、電圧印加装置3は、電極部2に20〜100Hzの周波数の交流電圧を印加する。出力制御部33が二次コイル36の出力に印加する電圧が20〜100Hzの場合、出力制御部33が二次コイル36の出力に印加する電圧が20Hz未満又は100Hzを超える場合に比べて、生鮮品4中の細胞等に含まれる水分子を効率良く活性化することができるか、生鮮品4中の細胞等の酸化を効率良く防止することができるか、又は、生鮮品4中のウィルス等の活動を効率良く抑制することができる。
【0098】
好適には、空間電位発生装置6は、接地電極を備えていない。言い換えれば、鮮度保持装置は、接地電極を備えていない。これにより、二次コイル36の他方の端子36bに設けられた(接続された)電極部2から静電気を放出しやすくなる。
【0099】
好適には、二次コイル36に流れる電流は、0.002〜0.2Aである。二次コイル36に流れる電流が0.002A以上の場合、二次コイル36に流れる電流が0.002A未満の場合に比べて、生鮮品4中の細胞等に含まれる水分子を効率良く活性化することができるか、生鮮品4中の細胞等の酸化を効率良く防止することができるか、又は、生鮮品4中のウィルス等の活動を効率良く抑制することができる。また、二次コイル36に流れる電流が0.2A以下の場合、二次コイル36に流れる電流が0.2Aを超える場合に比べて、二次コイル36に流れる電流が微弱電流になるので、感電の心配がない。
【0100】
本実施の形態1の空間電位発生装置6によれば、冷凍庫、冷蔵庫、解凍庫、ショーケース、食品保存室、ISO(International Organization for Standardization)コンテナ、輸送トラック、常温倉庫、漁船内冷蔵庫若しくは漁船内冷凍庫、又は、医療用冷蔵庫若しくは医療用冷凍庫等の任意の場所に、1個の電極部2を設置するだけで、電極部2を設置した空間全体(庫内、室内、車内)に高電圧の交流電場を形成することができる。そのため、安価に簡単に好きな場所に、交流電場を利用した鮮度保持機能を追加することができる。
【0101】
また、冷凍庫、冷蔵庫、解凍庫、ショーケース、食品保存室、ISOコンテナ、又は、常温倉庫等の製造時に、壁、天井又は仕切り板等の内部に電極部2を埋め込むことにより、鮮度保持機能を最初から備えた冷凍庫、冷蔵庫、解凍庫、ショーケース、食品保存室、ISOコンテナ、又は、常温倉庫等を実現することができる。このような場合、壁、天井又は仕切り板等の内部に電極部2が埋め込まれているので外観に優れ、また、電極部2が露出した場合に比べて見た目の安心感が高まる。また、埋め込んだ壁、天井又は仕切り板等が絶縁材料の役割を果たすので、専用の絶縁材料を設ける必要がなく、更に、誤って高い値の電流が流れてしまっても感電のおそれがない。
【0102】
大型の倉庫の場合、庫内に長さが8m以上ある棚が複数設置されており、これらの棚は出荷時に棚に載せられたパレットをフォークリフトで取り出しやすくするために左右に移動するように配置される。このような場合には、電極部2が棚板とは別体であるので、棚が可動式であっても、簡単に電極部2を設置することができる。
【0103】
<電圧調整部>
本実施の形態1の空間電位発生装置6に備えられた電圧印加装置3は、更に、電圧調整部41を有する。電圧調整部41は、交流電源から入力される交流電圧VL3の電圧値を、互いに異なる複数の種類の電圧値に切り替え、電圧値が切り替えられた交流電圧VL3を交流電圧VL2として一次コイル35に印加することにより、出力端子34に出力される交流電圧VL1の電圧値を調整する。
【0104】
これにより、交流電圧VL1の電圧値を例えば強弱2種類の電圧値、又は、例えば強中弱の3種類の電圧値に切り替えて容易に調整することができる。従って、鮮度保持空間5において空間電位発生装置6が形成する交流電場の強さを、生鮮品4の種類、数量若しくは梱包状況、又は、鮮度保持空間5内の温度若しくは湿度に応じた最適な強さに容易に調整し、設定することができる。そのため、鮮度保持装置の導入コスト及び運転コストを低減しつつ、鮮度保持装置による鮮度保持処理に及ぼす交流電場の効果を更に向上させることができるか、又は、影響範囲の制御、対象空間の増減の制御をすることができる。
【0105】
好適には、電圧調整部41は、抵抗素子42と、スイッチ素子43と、を含む。抵抗素子42は、一次コイル35の一方の端子35a又は他方の端子35bである端子35cと、交流電源即ちAC入力コンセント37と、の間に設けられている。
図3に示す例では、一次コイル35の他方の端子35bが端子35cであるが、一次コイル35の一方の端子35aが端子35cであってもよい。
【0106】
スイッチ素子43は、端子35cを抵抗素子42を介して交流電源即ちAC入力コンセント37に接続するか、又は、端子35cを抵抗素子42を介さずに交流電源即ちAC入力コンセント37に直接接続するかを切り替える。これにより、一次コイル35に印加される交流電圧VL2の電圧値を、交流電源から入力される交流電圧VL3の電圧値と、交流電圧VL3の電圧値よりも小さい電圧値との間で切り替えることができ、出力端子34に出力される交流電圧VL1の電圧値を、互いに異なる強弱2種類の電圧値に容易に切り替えることができる。
【0107】
また、抵抗素子42として、例えば50Ω程度を中心値とする範囲で変更可能な抵抗値を有する可変抵抗を用いることができる。これにより、一次コイル35に印加される交流電圧VL2の電圧値を、交流電圧VL3の電圧値よりも小さい電圧値に切り替える際のその電圧値を、更に変更することができ、出力端子34に出力される交流電圧VL1の電圧値を、互いに異なる大小2種類の電圧値に容易に切り替える際のその小さい方の電圧値を、更に変更することができる。
【0108】
なお、
図3に示すように、電圧調整部41は、抵抗素子42と並列に接続されたサージアブソーバー44を含んでもよい。このような場合、スイッチ素子43は、端子35cを、互いに並列に接続された抵抗素子42及びサージアブソーバー44を介して、交流電源即ちAC入力コンセント37に接続するか、又は、端子35cを、互いに並列に接続された抵抗素子42及びサージアブソーバー44を介さずに、交流電源即ちAC入力コンセント37に直接接続するか、を切り替えることになる。これにより、例えば落雷等により抵抗素子42に大電圧が急激に印加された場合に、サージアブソーバー44の抵抗値が急減してサージアブソーバー44の方に電流が集中して流れるために、抵抗素子42に流れる電流を低減することができ、抵抗素子42の焼損等を防止することができる。
【0109】
<冷蔵庫以外の画定部を備えた場合の鮮度保持処理に及ぼす交流電場の効果>
ここで、本実施の形態1の鮮度保持装置が、鮮度保持空間を画定する画定部として、冷蔵庫以外の画定部を備えた場合における、当該鮮度保持装置による鮮度保持処理に及ぼす交流電場の効果について説明する。
【0110】
まず、空間電位発生装置を有しない鮮度保持装置を比較例1とし、空間電位発生装置6を有する鮮度保持装置である本実施の形態1の鮮度保持装置を実施例1とした。
【0111】
比較例1及び実施例1の各々の鮮度保持装置に備えられた画定部により画定される鮮度保持空間としての保管庫は、横5m×幅6m×高さ2.5mの形状を有していた。また、鮮度保持空間5としての保管庫の長手方向における側壁の各々の床から1.5mの高さ位置に、横並びに4枚の電極部2をそれぞれ設置した。実施例1の鮮度保持装置に備えられた電極部2は、横40cm×縦25cmの正面形状を有する電極板により形成されていた。そして、電極部2から放出される静電気により、保管庫内の電圧が30Vになり、保管庫内に配置された食材に印加される電圧が40Vになるように、電圧印加装置3により電極部2に交流電圧を印加した。昼間の気温は30℃であり、夜間の気温は10℃であり、食材の総数量は3トンであった。また、保管庫内ではプラスチックボックスに入れて保管し、2mの高さまで荷積みした。
【0112】
以下では、比較例1及び実施例1の各々の鮮度保持装置に備えられた保管庫内に、食材として、トマトを保管した場合について、比較する試験を行った。保管庫内の温度は10〜30℃であり、保存期間は試験開始日を1日目として8日目までの期間であった。
【0113】
その結果、8日目まで保管庫内に保管されたトマトは、比較例1では、重量減少分は30.34%で水分が失われており、腐っていたり、虫が発生したりしていて、食することができない状態になっていたが、実施例1では、重量減少分は11.70%で水分を保っており、新鮮そのものであり、食することができる状態であった。即ち、実施例1では、比較例1に比べて、重量減少分を74%も削減することができた。
【0114】
上記した試験結果から、本実施の形態1の鮮度保持装置によれば、空間電位発生装置6を有し、電極部2を鮮度保持空間5内に設置することにより、電極部2を設置した鮮度保持空間5内に適切な強さの交流電場が形成され、この交流電場が形成された鮮度保持空間5内では、生鮮品4の常温での保存期間を延長できることが明らかになった。
【0115】
<冷蔵庫を備えた場合の鮮度保持処理に及ぼす交流電場の効果>
次に、本実施の形態1の鮮度保持装置が、鮮度保持空間を画定する画定部として、冷蔵庫を備えた場合における、当該鮮度保持装置による鮮度保持処理に及ぼす交流電場の効果について説明する。
【0116】
まず、空間電位発生装置を有しない鮮度保持装置を比較例2とし、空間電位発生装置6を有する鮮度保持装置である本実施の形態1の鮮度保持装置を実施例2とした。
【0117】
比較例2及び実施例2の各々の鮮度保持装置に備えられた冷蔵庫内に形成された鮮度保持空間は、横80cm×高さ150cm×奥行50cmの形状を有していた。また、実施例2の鮮度保持装置に設けられた電極部2は、縦30cm×横15cm×厚さ1mmの形状を有する電極板により形成され、当該電極板の上下両面は、絶縁材料であるプラスチック(アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS樹脂)板)よりなる絶縁部材により覆われていた。電極板の上面を覆う絶縁部材は、縦40cm×横35cm×厚さ4mmの形状を有し、電極板の下面を覆う絶縁部材は、縦40cm×横35cm×厚さ4mmの形状を有していた。
【0118】
以下では、比較例2及び実施例2の各々の鮮度保持装置に備えられた冷蔵庫内で、食材として、鶏肉を冷蔵した場合について、比較する試験を行った。電極部2に印加される電圧を800Vに設定し、鶏肉に直接印加される電圧を30Vに設定した。冷蔵庫内の温度は5℃であり、保存期間は試験開始日を1日目として4日目までの期間であった。
【0119】
その結果、4日目まで冷蔵庫内に冷蔵されていた鶏肉は、比較例2では、ドリップが流出し、旨味成分が流出しているため、美味しさが失われており、色も変色し始めていたが、実施例2では、ドリップが殆ど流出しておらず、新鮮な状態であり、肉の色も試験開始日と殆ど変わらなかった。
【0120】
また、比較例2及び実施例2の各々の鮮度保持装置に備えられた冷蔵庫内で、食材として、ホウレンソウを冷蔵した場合について、比較する試験を行った。電極部2に印加される電圧を800Vに設定し、ホウレンソウに直接印加される電圧を30Vに設定した。冷蔵庫内の温度は4℃であり、保存期間は試験開始日を1日目として19日目までの期間であった。
【0121】
その結果、19日目まで冷蔵庫内に保管されたホウレンソウは、比較例2では、萎びており、外観において著しく変わっていたが、実施例2では、萎びておらず、外観において殆ど変わっていなかった。
【0122】
上記した試験結果から、本実施の形態1の鮮度保持装置によれば、空間電位発生装置6を有し、電極部2を鮮度保持空間5内に設置することにより、電極部2を設置した冷蔵庫1内に適切な強さの交流電場が形成され、この交流電場が形成された冷蔵庫1内では、生鮮品4の冷蔵による保存期間を延長できることが明らかになった。
【0123】
<鮮度保持装置内で冷凍された生鮮品の保存状態>
次に、本実施の形態1の鮮度保持装置内で冷凍された生鮮品の保存状態について説明する。
【0124】
まず、空間電位発生装置を有しない鮮度保持装置を比較例3とし、空間電位発生装置6を有する鮮度保持装置である本実施の形態1の鮮度保持装置を実施例3とした。
【0125】
比較例3及び実施例3の各々の鮮度保持装置に備えられた冷蔵庫の冷凍室内に形成された鮮度保持空間は、横60cm×高さ80cm×奥行45cmの形状を有していた。また、実施例3の鮮度保持装置に設けられた電極部2は、縦10cm×横5cmの平面形状を有する電極板により形成され、当該電極板の上下両面は、絶縁材料であるプラスチック(PE板)よりなる絶縁部材により覆われていた。電極板の上面を覆う絶縁部材は、縦12cm×横17cm×厚さ7mmの形状を有し、電極板の下面を覆う絶縁部材は、縦12cm×横17cm×厚さ6mmの形状を有していた。
【0126】
以下では、比較例3及び実施例3の各々の鮮度保持装置に備えられた冷蔵庫の冷凍室内で、食材として、牛肉を冷凍保存した場合について、比較する試験を行った。冷凍室内の温度は−24℃であり、冷凍期間は試験開始日を1日目として7日目までの期間であった。また、7日目に冷凍されていた牛肉を取り出して、24時間4℃の温度帯で解凍した。なお、電極部2に印加される電圧を1000Vに設定し、牛肉に直接印加される電圧を20Vに設定した。
【0127】
図4は、比較例3及び実施例3の鮮度保持装置に備えられた冷蔵庫の冷凍室内で冷凍された後解凍された牛肉を示す図である。
図4の左側は、比較例3の冷蔵庫の冷凍室内で冷凍された後解凍された牛肉の写真を示し、
図4の右側は、実施例3の冷蔵庫の冷凍室内で冷凍された後解凍された牛肉の写真を示している。
【0128】
図4の左側に示すように、比較例3では、解凍された牛肉からは、重量比で3.28%ものドリップが流出し、旨味成分が流出していた。一方、
図4の右側に示すように、実施例3では、解凍された牛肉からは、重量比で0.69%しかドリップが流出しておらず、新鮮な状態であった。
【0129】
また、比較例3及び実施例3の各々の鮮度保持装置に備えられた冷蔵庫の冷凍室内で、食材として、伊勢海老を冷凍保存した場合について、比較する試験を行った。冷凍室内の温度は−24℃であり、冷凍期間は試験開始日を1日目として7日目までの期間であった。また、7日目に冷凍されていた伊勢海老を取り出して、常温で解凍した。なお、電極部2に印加される電圧を1800Vに設定し、伊勢海老に直接印加される電圧を30Vに設定した。
【0130】
図5は、比較例3及び実施例3の鮮度保持装置に備えられた冷蔵庫の冷凍室内で冷凍された後解凍された伊勢海老を示す図である。
図5の左側は、比較例3の冷蔵庫の冷凍室内で冷凍された後解凍された伊勢海老の写真を示し、
図5の右側は、実施例3の冷蔵庫の冷凍室内で冷凍された後解凍された伊勢海老の写真を示している。
【0131】
図5の左側に示すように、比較例3では、解凍された伊勢海老については、身が緩んでしまっており、所謂エビミソと称される部分である中腸腺の形が緩んでいた。一方、
図5の右側に示すように、実施例3では、解凍された伊勢海老については、身が締まっており、中腸腺の形が保持されていた。
【0132】
また、比較例3及び実施例3の各々の鮮度保持装置に備えられた冷蔵庫の冷凍室内で、食材として、エゾアワビを冷凍保存した場合について、比較する試験を行った。冷凍室内の温度は−24℃であり、冷凍期間は試験開始日を1日目として7日目までの期間であった。また、7日目に冷凍されていたエゾアワビを取り出して、解凍した。なお、電極部2に印加される電圧を2000Vに設定し、エゾアワビに直接印加される電圧を25Vに設定した。
【0133】
図6は、比較例3及び実施例3の鮮度保持装置に備えられた冷蔵庫の冷凍室内で冷凍された後解凍されたエゾアワビを示す図である。
図6の上側は、比較例3の冷蔵庫の冷凍室内で冷凍された後解凍されたエゾアワビの写真を示し、
図6の下側は、実施例3の冷蔵庫の冷凍室内で冷凍された後解凍されたエゾアワビの写真を示している。
【0134】
図6の上側に示すように、比較例3では、解凍されたエゾアワビについては、ドリップの流出量が多く、身が緩んでおり、肝がつぶれてしまっていた。一方、
図6の下側に示すように、実施例3では、解凍されたエゾアワビについては、ドリップの流出量が少なく、身の緩みが軽減されており、肝の形がしっかり残っていた。また、解凍後のエゾアワビを加熱調理したところ、比較例3では、身の縮みがあり、粒立ち、即ち表面の粒状の形状が、悪く垂れた状態であり、食感は柔らかかったが、実施例3では、身の縮みはあるが、歯ごたえが残っており、しっかりしていた。
【0135】
本実施の形態1の鮮度保持装置によれば、クラスター効果により細胞を破壊することなく水分子を凍結させることができる。また、凍結後の鮮度を維持することもできるため、例えば急速冷凍機を用いる場合と比べて、冷凍された食材を急速冷凍機から冷凍庫に移動する必要がない。よって、急速冷凍機といった高額な設備を導入する必要がなく、既存の冷凍設備に空間電位発生装置6を設けることにより、電気代を削減することができ、二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【0136】
次に、空間電位発生装置を有さず、且つ、冷凍庫を備えた鮮度保持装置を比較例4とし、空間電位発生装置6を有し、且つ、冷凍庫を備えた実施の形態1の鮮度保持装置を実施例4とした。そして、比較例4及び実施例4の各々の鮮度保持装置を用いて、いずれも温度を−18℃に設定して食材を凍結させる試験を行った。その結果、比較例4では、凍結後に食材に付着する氷の結晶が大きく、実施例4では、凍結後に食材に付着する氷の結晶が小さいことが明らかになった。これは、実施例4の鮮度保持装置では、凍結時に水分子のクラスターが細かくなるためと考えられる。よって、既存の冷凍庫に空間電位発生装置6を設けることにより、食材の繊維を壊さずに最良の凍結ができることが明らかになった。
【0137】
また、比較例4の鮮度保持装置では、−18℃の冷凍で1ヶ月経過した後には、冷凍食品でも劣化が起きてしまうため、食材を1ヶ月以上冷凍庫で保管すると、保管された食材は、冷凍焼けし、食べられない状態となっていた。一方、実施例4の鮮度保持装置では、一年間でも鮮度を保つことが可能となった。冷凍した後の鮮度保持で水分を保ち高品質の冷凍保存にもつながった。
【0138】
図7は、比較例4及び実施例4の鮮度保持装置に備えられた冷凍庫内で冷凍された後解凍された猪肉を示す図である。
図7の左側は、比較例4の冷凍庫内で−18℃で3ヶ月冷凍された後、常温で解凍された猪肉の写真を示し、
図7の右側は、実施例4の冷凍庫内で−18℃で3ヶ月冷凍された後、常温で解凍された猪肉の写真を示している。
【0139】
図7の左側に示すように、比較例4では、解凍された猪肉は、色が変化して赤色でなくなり、食べられない状態となっていた。一方、
図7の右側に示すように、実施例4では、解凍された猪肉は、色が赤色からほとんど変化しておらず、新鮮な状態であった。
【0140】
例えばISOコンテナ又は輸送冷凍トラックに関しては、これまで海外から2週間かけて−20℃でISOコンテナで輸送していたが、既存の冷凍庫に空間電位発生装置6を設けることにより、−5℃の設定のチルド環境で鮮度保持した輸送が可能となる。これにより、電気代を削減することができ、二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【0141】
<漁船への設置>
次に、本実施の形態1の鮮度保持装置を、漁船に設けられた保管庫に適用した例について説明する。
【0142】
従来、漁船の保管庫に水揚げされた魚を保管する際に、保管開始から7日間で、30%の重量減少が発生していた。また、夏期においては、保管開始から7日間で、50%もの重量減少が発生していた。重量減少は、魚の鮮度低下と密接に関連しており、重量減少分を削減することが課題となっていた。
【0143】
一方、本実施の形態1の鮮度保持装置を、実施例5の鮮度保持装置として、漁船に設けられた保管庫に適用し、氷が発泡スチロール容器に入った状態で、−1℃の温度で魚を保管し、電極部2に印加する印加電圧を30〜50Vとし、試験開始日を1日目として7日目まで保管した。一方、空間電位発生装置を有しない従来の保管庫を、比較例5の鮮度保持装置とし、実施例5と比較例5との間で、保管された魚の鮮度を比較する試験を行った。
【0144】
比較例5及び実施例5の各々の鮮度保持装置に備えられた保管庫内に形成された鮮度保持空間は、横4m×高さ3m×奥行5mの形状を有していた。また、実施例5の鮮度保持装置に設けられた電極部2は、縦15cm×横25cmの平面形状を有する電極板により形成され、当該電極板の上下両面は、絶縁材料であるプラスチック(PE板)よりなる絶縁部材により覆われていた。電極板の上面を覆う絶縁部材は、縦25cm×横35cm×厚さ6mmの形状を有し、電極板の下面を覆う絶縁部材は、縦25cm×横35cm×厚さ6mmの形状を有していた。そして、電極部2から放出される静電気により、保管庫内の電圧が20Vになり、保管庫内で発泡スチロールの中に氷を詰めた状態で配置された食材に印加される電圧が20Vになるように、電圧印加装置3により電極部2に交流電圧を印加した。
【0145】
図8は、比較例5及び実施例5の鮮度保持装置に備えられた保管庫内で冷凍された後解凍された魚を示す図である。
図8の左側は、比較例5の保管庫内で保管された魚の写真を示し、
図8の右側は、実施例5の保管庫内で保管された魚の写真を示している。
【0146】
図8の左側と
図8の右側とを比べると、比較例5では魚の眼の色が白く、実施例5では魚の眼の色が黒く、比較例5と実施例5との間で、保管された魚の眼の色が全く異なっていた。そのため、本実施の形態1の鮮度保持装置を、漁船に設けられた保管庫に適用することにより、保管庫内で保管される魚の鮮度の向上が可能であることが明らかになった。
【0147】
<栗の鮮度保持効果>
次に、本実施の形態1の鮮度保持装置を用いた場合の栗の鮮度保持効果について説明する。
【0148】
まず、空間電位発生装置を有しない鮮度保持装置を比較例6とし、空間電位発生装置6を有する鮮度保持装置である本実施の形態1の鮮度保持装置を実施例6とした。
【0149】
比較例6及び実施例6の各々の鮮度保持装置に備えられた保管庫内に形成された鮮度保持空間は、横50cm×高さ50cm×奥行45cmの形状を有していた。また、実施例6の鮮度保持装置に設けられた電極部2は、縦15cm×横25cmの平面形状を有する電極板により形成され、当該電極板の上下両面は、絶縁材料であるプラスチック(PE板)よりなる絶縁部材により覆われていた。電極板の上面を覆う絶縁部材は、縦25cm×横35cm×厚さ6mmの形状を有し、電極板の下面を覆う絶縁部材は、縦25cm×横35cm×厚さ6mmの形状を有していた。そして、電極部2から放出される静電気により、保管庫内の電圧が100Vになり、保管庫内に食材として1kgの栗をプラスチックトレイに保管した状態で配置し、印加される電圧が120Vになるように、電圧印加装置3により電極部2に交流電圧を印加した。
【0150】
以下では、比較例6及び実施例6の各々の鮮度保持装置に備えられた常温保存、冷蔵保存、及び、冷凍保存のいずれも可能な保管庫内で、食材として、栗を保管した場合について、外観の変化及び糖度を比較する試験を行った。比較例6については、保管庫内の温度を常温又は5℃とし、保存期間を1ヶ月から2ヶ月の期間とした。実施例6については、保管庫内の温度を常温、0℃又は−2℃とし、保存期間を1ヶ月から2ヶ月の期間とした。また、比較例6及び実施例6のいずれにおいても、同一条件の試験を3検体に対して行った。
【0151】
図9は、比較例6及び実施例6の鮮度保持装置に備えられた保管庫内で保管された栗を示す図である。
図9の左側は、比較例6の保管庫内で常温で1.5ヶ月保存された栗の写真を示し、
図9の右側は、実施例6の保管庫内で−2℃で2ヶ月保管された栗の写真を示している。
【0152】
その結果、比較例6のうち常温で保管したものについては、1ヶ月後には、3検体とも表面にカビが発生しているのが観察され、3検体中の糖度の平均値は、2.5であり、1.5ヶ月後には、3検体ともカビが多く、糖度を測定することができなかった。この1.5ヶ月後の3検体のうちの1検体を、
図9の左側に示す。
【0153】
また、比較例6のうち5℃で保管したものについては、1ヶ月後には、3検体とも外観に目立った変化は無く、3検体中の糖度の平均値は、6.93であり、1.5ヶ月後には、3検体ともカビが多く、糖度を測定することができなかった。
【0154】
一方、実施例6のうち常温で保管したものについては、1ヶ月後には、3検体とも表面にカビが発生しているのが観察され、3検体中の糖度の平均値は、4.46であり、1.5ヶ月後には、3検体ともカビが多く、糖度を測定することができなかった。
【0155】
また、実施例6のうち0℃で保管したものについては、1ヶ月後には、3検体とも外観に目立った変化は無く、3検体中の糖度の平均値は、6.26であり、2ヶ月後にも、3検体とも外観に目立った変化は無く、3検体中の糖度の平均値は、11.26であった。
【0156】
また、実施例6のうち−2℃で保管したものについては、1ヶ月後には、3検体とも外観に目立った変化は無く、3検体中の糖度の平均値は、6.53であり、2ヶ月後にも、3検体とも外観に目立った変化は無く、3検体中の糖度の平均値は、21.43であった。この2ヶ月後の3検体のうちの1検体を、
図9の右側に示す。
【0157】
上記したカビの発生の差異から分かるように、また、
図9の右側を、
図9の左側と比べて分かるように、本実施の形態1の鮮度保持装置を用いて栗を保管した場合に、栗の鮮度を保持する鮮度保持効果を著しく向上できることが明らかになった。また、上記した糖度の数値の差異から分かるように、本実施の形態1の鮮度保持装置を用いて栗を保管した場合に、栗の糖度を著しく増加できることが明らかになった。これは、栗の鮮度を保持した状態で栗を長期間保存できたことによると考えられる。
【0158】
<電圧調整部の効果>
内部に鮮度保持空間が形成された冷蔵庫が更に仕切板により複数の空間に仕切られた場合には、電極部2としての放電板を追加することになるが、電圧が足りないことがある。例えば鮮度保持空間5が大型倉庫内に形成されている場合、電圧印加装置3と電極部2とを接続する配線を伸ばすことになるが、配線長が10m、20m又は30mとなった場合に、電圧が足りないことがある。
【0159】
一方、本実施の形態1の鮮度保持装置における電圧調整部41によれば、電圧を調整し、調整された電圧を電極部2としての放電板に印加して交流電場を形成することにより、安定的な鮮度保持効果をもたらす鮮度保持空間5を形成することができる。即ち、電極部2としての放電板を追加した場合に電圧が減少することが従来の課題であったが、本実施の形態1の鮮度保持装置における電圧調整部41によれば、電極部2に印加される電圧を調整することにより、鮮度保持空間5が広くなった場合でも、電極部2に印加される電圧を増加させることにより、鮮度保持空間5全体で十分に鮮度保持効果を得ることができる。また反対に、鮮度保持空間5が狭くなった場合でも、漏電を防ぐことができ、鮮度保持空間5の体積に応じた電圧を電極部2としての放電板に印加して交流電場を形成することができる。
【0160】
<実施の形態1の第1変形例>
図10は、実施の形態1の第1変形例の鮮度保持装置を模式的に示す一部断面を含む正面図である。
図10に示すように、本第1変形例の鮮度保持装置は、家庭用冷蔵庫としての冷蔵庫1(
図1参照)に代え、鮮度保持空間5を画定する画定部としてのプレハブ式冷蔵庫51を備えている。
【0161】
また、本第1変形例の鮮度保持装置は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電極部2と、電圧印加装置3と、を備え、電極部2と電圧印加装置3とにより、空間電位発生装置6が形成されている。本第1変形例の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0162】
本第1変形例では、プレハブ式冷蔵庫51の天井51aから垂れ下がるように、電極部2が設けられている。これにより、プレハブ式冷蔵庫51に保存されている食品等の生鮮品4の鮮度を長期間保持することができる。そして、鮮度保持装置の導入コスト及び運転コストを低減することができ、且つ、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により鮮度保持空間5内で生鮮品4の鮮度を長期間保持することができる。なお、
図10では図示は省略するが、電極部2は、絶縁部材で覆われている。
【0163】
好適には、プレハブ式冷蔵庫51内に形成された鮮度保持空間5の略中心に電極部2を設けることができる。これにより、プレハブ式冷蔵庫51内、即ち鮮度保持空間5内に均一な交流電場を形成することができる。
【0164】
また、本第1変形例でも、実施の形態1と同様に、電圧印加装置3は、電圧調整部41(
図3参照)を有する。これにより、本第1変形例でも、実施の形態1と同様に、交流電圧VL1(
図3参照)の電圧値を例えば強弱2種類の電圧値、又は、例えば強中弱の3種類の電圧値に切り替えることができるので、プレハブ式冷蔵庫51に保存されている食品等の生鮮品4の種類、数量若しくは梱包状況、又は、鮮度保持空間5内の温度若しくは湿度に応じて最適な条件を調整し、設定することができる。そのため、鮮度保持装置の導入コスト及び運転コストを低減しつつ、鮮度保持装置による鮮度保持処理に及ぼす交流電場の効果を更に向上させることができるか、又は、対象空間を制御することができる。
【0165】
<実施の形態1の第2変形例>
図11は、実施の形態1の第2変形例の鮮度保持装置を模式的に示す一部断面を含む側面図である。
図11に示すように、本第2変形例の鮮度保持装置は、家庭用冷蔵庫としての冷蔵庫1(
図1参照)に代え、冷蔵車52に搭載され、鮮度保持空間5を画定する画定部としての車載冷蔵庫53を備えている。冷蔵車52は、冷却器52aと、冷風口52bと、を有する。
【0166】
また、本第2変形例の鮮度保持装置は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電極部2と、電圧印加装置3と、を備え、電極部2と電圧印加装置3とにより、空間電位発生装置6が形成されている。本第2変形例の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0167】
本第2変形例では、冷蔵車52は、例えば冷却器52aから冷風口52bを介して車載冷蔵庫53内に形成された鮮度保持空間5に冷風を送り込むことにより、車載冷蔵庫53内を冷却する。
【0168】
本第2変形例では、車載冷蔵庫53の天井53aに、空間電位発生装置6の静電気放出部としての電極部2が設けられている。これにより、車載冷蔵庫53に保存されている食品等の生鮮品4の保存期間を延長することができる。そして、鮮度保持装置の導入コスト及び運転コストを低減することができ、且つ、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により鮮度保持空間5内で生鮮品4の鮮度を長期間保持することができる。なお、
図11では図示は省略するが、電極部2は、絶縁部材で覆われている。また、電圧印加装置3は、冷蔵車52のバッテリー(図示は省略)に接続される。
【0169】
好適には、車載冷蔵庫53内に形成された鮮度保持空間5の略中心に電極部2を設けることができる。これにより、車載冷蔵庫53内、即ち鮮度保持空間5内に均一な交流電場を形成することができる。
【0170】
また、本第2変形例でも、実施の形態1と同様に、電圧印加装置3は、電圧調整部41(
図3参照)を有する。これにより、本第2変形例でも、実施の形態1と同様に、交流電圧VL1(
図3参照)の電圧値を例えば強弱2種類の電圧値、又は、例えば強中弱の3種類の電圧値に切り替えることができるので、車載冷蔵庫53に保存されている食品等の生鮮品4の種類、数量若しくは梱包状況、又は、鮮度保持空間5内の温度若しくは湿度に応じて最適な条件を調整し、設定することができる。そのため、鮮度保持装置の導入コスト及び運転コストを低減しつつ、鮮度保持装置による鮮度保持処理に及ぼす交流電場の効果を更に向上させることができるか、又は、対象空間を制御することができる。
【0171】
<実施の形態1の第3変形例>
図12は、実施の形態1の第3変形例の鮮度保持装置を模式的に示す平面図である。
図12に示すように、本第3変形例の鮮度保持装置は、家庭用冷蔵庫としての冷蔵庫1(
図1参照)に代え、店舗54に設けられ、鮮度保持空間5を画定する画定部としてのオープン形式の食品陳列棚55を、複数台備えている。複数台の食品陳列棚55を、食品陳列棚55a、55b、55c及び55dとすることができる。
【0172】
また、本第3変形例の鮮度保持装置は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電極部2と、電圧印加装置3と、を備え、電極部2と電圧印加装置3とにより、空間電位発生装置6が形成されている。本第3変形例の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0173】
本第3変形例では、店舗54の壁部であって、食品陳列棚55a、55b、55c及び55dに近い部分に、空間電位発生装置6の静電気放出部としての電極部2が設けられている。なお、
図12では図示は省略するが、電極部2は、絶縁部材で覆われている。
【0174】
本第3変形例では、空間電位発生装置6は、例えば、店舗54が閉まっている夜間に作動し、食品陳列棚55a、55b、55c及び55dの周囲に交流電場を形成する。これにより、食品陳列棚55a、55b、55c及び55dの各々の鮮度保持空間5内に陳列されている食品等の生鮮品の保存期間を延長することができる。そして、鮮度保持装置の導入コスト及び運転コストを低減することができ、且つ、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により生鮮品4の鮮度を長期間保持することができる。
【0175】
また、本第3変形例でも、実施の形態1と同様に、電圧印加装置3は、電圧調整部41(
図3参照)を有する。これにより、本第3変形例でも、実施の形態1と同様に、交流電圧VL1(
図3参照)の電圧値を例えば強弱2種類の電圧値、又は、例えば強中弱の3種類の電圧値に切り替えることができるので、食品陳列棚55a、55b、55c及び55dの各々の鮮度保持空間5内に陳列されている食品等の生鮮品の種類、数量若しくは梱包状況、又は、鮮度保持空間5内の温度若しくは湿度に応じて最適な条件を調整し、設定することができる。そのため、鮮度保持装置の導入コスト及び運転コストを低減しつつ、鮮度保持装置による鮮度保持処理に及ぼす交流電場の効果を更に向上させることができるか、又は、対象空間を制御することができる。
【0176】
<実施の形態1の第4変形例>
図13は、実施の形態1の第4変形例の鮮度保持装置を模式的に示す側面図である。
図13に示すように、本第4変形例の鮮度保持装置は、鮮度保持空間5(
図1参照)を画定する画定部を備えていない。
【0177】
また、本第4変形例の鮮度保持装置は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電極部2と、電圧印加装置3と、を備え、電極部2と電圧印加装置3とにより、空間電位発生装置6が形成されている。本第4変形例の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0178】
一方、本第4変形例の鮮度保持装置は、空間電位発生装置6の静電気放出部としての電極部2を支持する支持部材56を備えている。
【0179】
図13の左側に図示されているように、支持部材56は、電極部2を床57上に立てて設置する支持部材56aであってもよい。このような支持部材56aを用いることにより、電極部2の設置場所の選択範囲が広がり、より最適な場所に電極部2を設置することができる。
【0180】
また、
図13の右側に図示されているように、支持部材56は、電極部2を天井58から吊り下げて設置する支持部材56bであってもよい。このような場合、支持部材56bは、固定部56cにより天井58に固定される。このような支持部材56bを用いることにより、電極部2の設置場所の選択範囲が広がり、より最適な場所に電極部2を設置することができる。
【0181】
(実施の形態2)
<フライヤー>
次に、実施の形態2のフライヤーについて説明する。本実施の形態2のフライヤーは、交流電場を形成する電場形成装置としての空間電位発生装置を有する。
【0182】
図14は、実施の形態2のフライヤーの一例を模式的に示す断面図である。
図14に示すように、本実施の形態2のフライヤーは、油槽61と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。油槽61内には、油61aが貯留される。電極部2は、油槽61内に設けられ、好適には、油槽61内に貯留された油61aに浸漬される。電圧印加装置3は、電極部2に交流電圧VL1(
図3参照)を印加することにより、油槽61内に交流電場を形成する。電極部2と電圧印加装置3とにより、油槽61内に交流電場を形成する空間電位発生装置6が形成されている。
【0183】
なお、本実施の形態2のフライヤーが、油槽61を備えていなくてもよい。このような場合、電極部2と、電圧印加装置3と、のみを備えたフライヤーが、油槽と組み合わされて用いられることになる。
【0184】
本実施の形態2のフライヤーに備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0185】
本実施の形態2のフライヤーでは、油槽61と空間電位発生装置6とを組み合わせて設け、電極部2から油槽61内に静電気を放出することにより、油槽61内に交流電場を形成し、形成された交流電場を油槽61内に貯留された油61aに印加しながら食材61bを揚げる。これにより、フライヤーの導入コスト及び運転コストを低減することができ、且つ、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により油槽61内に貯留された油61a中で食材61bを揚げる際の油61aの鮮度を効率良く保持することができる。
【0186】
また、本実施の形態2のフライヤーは、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電極部2と電圧印加装置3とを備えた空間電位発生装置6を有し、電圧印加装置3は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電圧調整部41(
図3参照)を有する。これにより、油槽61内における交流電場の強さを、油61aの種類、又は、油槽61内に貯留された油61a中で揚げる食材61bの種類又は数量に応じて最適な強さに容易に調整し、設定することができる。そのため、フライヤーの導入コスト及び運転コストを低減しつつ、フライヤーによる揚げ物処理に及ぼす交流電場の効果を更に向上させることができる。
【0187】
<揚げ物処理に及ぼす交流電場の効果>
次に、本実施の形態2のフライヤーによる揚げ物処理に及ぼす交流電場の効果について説明する。
【0188】
まず、空間電位発生装置を有しないフライヤーを比較例7とし、空間電位発生装置6を有するフライヤーである本実施の形態2のフライヤーを実施例7とした。また、実施例7のフライヤーに備えられた電極部2として、上下両面が絶縁部材で覆われた電極部を用いた。このような比較例7及び実施例7の各々のフライヤーに備えられた油槽内で同量の検体として食材を継続して揚げた後、油槽内の色調及び臭気を比較する試験を行った。
【0189】
比較例7及び実施例7の各々のフライヤーに備えられた油槽には、6リットルの油が貯留されていた。また、実施例7のフライヤーに設けられた電極部2は、縦5cm×横10cm×厚さ1mmの形状を有する電極板により形成され、当該電極板の上下両面は、絶縁材料であるテフロン(登録商標)PTFE(Polytetrafluoroethylene)素材よりなる絶縁部材により絶縁足としていた。当該PTFE素材については、260℃まで対応できる耐熱性を有するものを用いた。電極板の両面を覆う絶縁部材は、いずれも縦1cm×横1cm×厚さ5mmの形状を上下若しくは片面で有していた。なお、電極部2をフライヤーに内蔵し、絶縁設置面を覆い、漏電を防ぐこともできる。
【0190】
電圧印加装置3の出力端子34(
図3参照)と電極部2とを接続する給電線24として、テフロン(登録商標)PTFE素材よりなる絶縁部材により覆われたものを使用した。このPTFE素材についても、260℃まで対応できる耐熱性を有するものを用いた。なお、互いに影響を及ぼさないように、比較例7のフライヤーと実施例7のフライヤーとは、4m離隔して設置された。
【0191】
また、電極部2に印加される電圧を800Vに設定し、油槽61内に貯留されている油61aに直接印加される電圧を800Vに設定した。
【0192】
具体的には、28kgの鶏肉(でんぷん粉付着)を、1回300gずつ継続して揚げた後の油61aの、色調、臭気、酸価値(AV(Acid Value)値)、過酸化物価値(POV(Peroxide Value)値)及びアクリルアミド(Acrylamide)生成量を比較した。色調は目視で判断し、臭気は、環境省認定国家資格である臭気判定士が官能評価により判断した。酸価値は日本国内で一般的な劣化基準値である。過酸化物価値は一般的な劣化基準値ではないが、多角的に検証するために計測した。
【0193】
アクリルアミドについては、食品に含まれる化学物質としてのアクリルアミドについてのリスクを検討している日本国内閣府食品安全委員会が「遺伝毒性を有する発がん物質」との評価案を示している。また、FDA(アメリカ食品医薬品局:Food and Drug Administration)が「FDA Draft Action Plan for Acrylamide in Food」(食品中のアクリルアミドについての行動計画−FDA草案)にて、発ガン性や遺伝子損傷のリスクを含むアクリルアミド物質が加工食品中に生成されることがあるという報告をしている。更に、2002年4月24日にスウェーデン国立食品庁とストックホルム大学の共同研究グループにより、炭水化物を多く含む原材料を120℃以上の高温で揚げるか又は焼くことにより調理された食品には、アクリルアミドが含有されていることが発表されている。このようにアクリルアミドは、発がん性物質となるリスクがあるため、アクリルアミドの生成量についても検証した。
【0194】
上記した条件で、同等の揚げ具合を実現できるように、同量の食材を、比較例7及び実施例7の各々のフライヤーで3日間継続して揚げた後、フライヤーから使用した油を採取して、各項目について比較を行った。なお、揚げられた直後の芯温が75℃になるように、温度計で測定した。
【0195】
その結果、色調、臭気官能、酸価値及び酸化物価値の全てにおいて、実施例7では、比較例7に比べて、油の劣化が抑制される劣化抑制効果が大きかった。また、実施例7では、比較例7に比べて、アクリルアミドの生成量が4分の1に減少していることが明らかになった。
【0196】
このうち色調については、比較例7と実施例7との間で、試験開始から2日目の油の色差を比較した。ここで、色差とは、総合的に調理前の油と、調理後の油との差をL×a×b表色系で比較したものであり、Lは明度、+aは赤、−aは緑、+bは黄、−bは青方向を示す。色差値(dE)は、NBS(米国国立標準局:National Bureau of Standards)単位によれば、6.0以上で大きいと判断される。
【0197】
その結果、実施例7のフライヤーの油の色は、比較例7のフライヤーの油の色よりも明るく、色差は6.43であり、比較例7のフライヤーの油の方が汚れていることが明らかになった。
【0198】
また、比較例7のフライヤーの油と、実施例7のフライヤーの油との間で、油の臭いについて、臭気判定士を含む複数の検査員が評価を行った。その結果、「実施例7のフライヤーの油は、比較例7のフライヤーの油に比べて、から揚げを連想させる香りや、香ばしいと評価される臭いが、弱く感じられる」との結果が得られ、から揚げ等の臭いが油に残りにくいことが明らかになった。
【0199】
更に、実施例7のフライヤーの油、及び、比較例7のフライヤーの油について、目視による比較を行った。その結果、比較例7では、黒ずみに加え、カニ泡が発生し、試験後更に200gのフライドポテトを揚げたところ、最後の100gを揚げた時の油煙は、風呂の湯気のような状態であったため、作業環境が悪化し、且つ、粘り及び臭いが発生した。一方、実施例7では、カニ泡は発生せず、油面は落ち着いていた。
【0200】
また、過酸化物価値については、実施例7のフライヤーと比較例7のフライヤーとの間で、200gのポテトを揚げる試験を3日間行った後の油の状態を比較した。その結果、実施例7のフライヤーの油の過酸化物価値が1.89であるのに対して、比較例7のフライヤーの油の過酸化物価値は2.77であり、実施例7のフライヤーは、比較例7のフライヤーに比べて、油の劣化を32%抑制していることが明らかになった。
【0201】
また、アクリルアミドについては、実施例7のフライヤーと比較例7のフライヤーとの間で、上記した試験後、更にポテト100gを揚げ、そのフライドポテトに含有されているアクリルアミドの含有量を比較する試験を行った。その結果、比較例7のフライヤーで揚げたフライドポテト中のアクリルアミドの含有量は、425μg/kgであり、実施例7のフライヤーで揚げたフライドポテト中のアクリルアミドの含有量は、113μg/kgであり、実施例7のフライヤーは、比較例7のフライヤーに比べ、アクリルアミドの含有量を4分の1に低減できることが明らかになった。アクリルアミドは発がん性物質となる可能性があり、劣化した油によるアクリルアミドの生成は国際的にも問題視されている。そのため、空間電位発生装置6がアクリルアミドの含有量を低減できることは、極めて大きな意味を有する。
【0202】
次に、比較例7及び実施例7の各々のフライヤーを用いて、それぞれ油槽に貯留されている油の中にフライドポテトを80g混入させ、温度を170℃としてフライドポテトを揚げた時の油の変化を比較する試験を行った。
【0203】
その結果、比較例7のフライヤーでは、食材の水分が油と結合して乳化し、油の中に混入したが、実施例7のフライヤーでは、油が電子と結合することにより、油が水分とは結合しないため、食材の水分は即時蒸発して油に混入しなかった。そのため、油の温度が常に一定に保たれるので、揚げ時間を短縮することができた。また、実施例7のフライヤーでは、水分だけが水蒸気となって蒸発した。そのため、フライヤーの周囲のオイルミストを削減することができ、厨房や店舗内に油が付着することがなく衛生的である。また、実施例7のフライヤーでは、油の蒸発を抑えることができる。そのため、揚げている時に発生する油の匂いも抑えることができ、例えば店舗であれば、顧客の衣類に油の匂いがつくことを防止することもできる。
【0204】
また、比較例7及び実施例7の各々のフライヤーを用いて、冷凍唐揚げを用いた揚げ時間を比較する試験を行った。
【0205】
比較例7及び実施例7の各々のフライヤーに備えられた油槽には、6リットルの油が貯留されていた。また、比較例7及び実施例7のいずれのフライヤーにおいても、温度を165℃に設定し、2分30秒及び3分経過した時の唐揚げの中心温度を測定して比較する試験を行った。
【0206】
その結果、実施例7のフライヤーでは、2分30秒及び3分経過した時の唐揚げの中心温度は、83.6℃及び95℃であったのに対して、比較例7のフライヤーでは、2分30秒及び3分経過した時の唐揚げの中心温度は、34.6℃及び80℃であり、実施例7のフライヤーの方が、油の熱伝導率が高くなり、揚げ時間が短縮できることが明らかになった。
【0207】
また、実際の店舗で使用され、油の月間油使用量が405リットル(22.5缶)であるフライヤーに、空間電位発生装置6を設置したところ、揚げ温度を、空間電位発生装置6を設置する前の180℃から、170℃に下げることができた。これにより、当該店舗における月間油使用量は、108リットル(6缶)となり、月間油使用量を73%削減することができた。また、揚げ時間も10%以上短縮することができ、作業効率も向上した。
【0208】
このように、油槽61に設けられた空間電位発生装置6を有する本実施の形態2のフライヤーによれば、空間電位発生装置6により油槽61内に交流電場を形成することにより、油の熱伝導率が高くなり、食材の揚げ上がりの状態も、食材がカラッと揚がり、最良な効果が得られた。また、水蒸気の蒸発により、油煙の現象が無くなり、厨房内の作業者の目に痛みを感じることが無くなった。
【0209】
(実施の形態3)
<水活性化装置>
次に、実施の形態3の水活性化装置について説明する。本実施の形態3の水活性化装置は、水槽内に交流電場を形成し、交流電場が形成されている水槽内に貯留されている水を電解処理し、活性化する。また、本実施の形態3の水活性化装置は、交流電場を形成する電場形成装置としての空間電位発生装置を有する。
【0210】
図15は、実施の形態3の水活性化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図15に示すように、本実施の形態3の水活性化装置は、水槽62と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。水槽62内には、水62aが貯留される。電極部2は、水槽62内に設けられ、好適には、水槽62内に貯留された水62aに浸漬される。電圧印加装置3は、電極部2に交流電圧VL1(
図3参照)を印加することにより、水槽62内に交流電場を形成する。電極部2と電圧印加装置3とにより、水槽62内に交流電場を形成する空間電位発生装置6が形成されている。
【0211】
なお、本実施の形態3の水活性化装置が、水槽62を備えていなくてもよい。このような場合、電極部2と、電圧印加装置3と、のみを備えた水活性化装置が、水槽と組み合わされて電解処理し、水の活性化に用いられることになる。また、電極部2が水62aに浸漬されない場合でも、電極部2が水62aに浸漬された場合と同様の効果を得ることができる。
【0212】
本実施の形態3の水活性化装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0213】
本実施の形態3の水活性化装置は、水槽62と空間電位発生装置6とを組み合わせて設けられ、電極部2から水槽62内に静電気を放出することにより、水槽62内に交流電場を形成し、形成された交流電場を水槽62内に貯留された水62aに印加しながら水62aを活性化する。これにより、水活性化装置の導入コスト及び運転コストを低減することができ、且つ、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により水槽62内に貯留された水62aを効率良く活性化することができる。
【0214】
2つの電極の間に直流電圧を印加して水を電気分解する場合には、陽極においては、活性酸素(OH等)が生成され、生成された活性酸素によって種々の有機物が酸化され、陰極においては、水素(H
+)が生成され、生成された水素によって種々の有機物が還元される。或いは、2つの電極の間に直流電圧を印加して海水等の塩化物イオン(Cl
−)を含有する水を電気分解する場合には、陽極においては、次亜塩素酸(HClO)が生成され、生成された次亜塩素酸により細菌などが酸化分解される。或いは、2つの電極の間に直流電圧を印加して塩化物イオンとアンモニア性窒素(NH
3)とを含有する水を電気分解する場合には、アンモニア性窒素が反応して無害な窒素(N
2)に転化される。
【0215】
一方、本実施の形態3の水活性化装置には、電極部2が1個のみ設けられている。このような場合でも、電極部2に交流電圧が印加されることにより、当該電極部2が陽極になる期間と、陰極になる期間とが、互いに繰り返されることになる。従って、水を電気分解する場合には、電極部2から水素と活性酸素とが生成され、塩化物イオンを含有する水を電気分解する場合には、次亜塩素酸が生成され、塩化物イオンとアンモニア性窒素(NH
3)とを含有する水を電気分解する場合には、窒素が生成される。
【0216】
これにより、水槽62内に貯留された水62a中に種々の有機物が存在する場合には、その有機物を酸化して除去することができ、水62a中に細菌などが存在する場合には、その細菌などを酸化分解して滅菌することができ、水62aがアンモニア性窒素を含有する場合には、そのアンモニア性窒素を窒素に転化して除去することができる。即ち、水槽62内に貯留されている水62aを活性化することができる。
【0217】
また、本実施の形態3の水活性化装置は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電極部2と電圧印加装置3とを備えた空間電位発生装置6を有し、電圧印加装置3は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電圧調整部41(
図3参照)を有する。これにより、水槽62内における交流電場の強さを、水62a中に存在する有機物若しくは細菌などの種類若しくは数量、又は、水62a中に含有されているアンモニア性窒素の含有量に応じて最適な強さに容易に調整し、設定することができる。そのため、水活性化装置の導入コスト及び運転コストを低減しつつ、水活性化装置による活性化処理に及ぼす交流電場の効果を更に向上させることができる。
【0218】
<活性化処理に及ぼす交流電場の効果>
いずれも縦15cm×横2cm×高さ10cmの大きさを有する金魚15匹を、縦80cm×横2m×高さ50cmの大きさを有する水槽62で、6ヶ月間育成する試験を行った。
【0219】
水槽62内に設けられた電極部2は、縦5cm×横10cm×厚さ1mmの形状を有する電極板により形成され、当該電極板の上下両面は、絶縁材料であるテフロン(登録商標)PTFE(Polytetrafluoroethylene)素材よりなる絶縁部材により絶縁足としていた。電極板の両面を覆う絶縁部材は、いずれも縦1cm×横1cm×厚さ5mmの形状を、上下若しくは片面で、有していた。なお、電極板は、その他の形状を有していてもよい。また、電極板を、水槽の壁に内蔵し、絶縁設置面を覆い、漏電を防ぐこともできる。
【0220】
電極板には、2200Vの交流電場を印加し、上記したように、15匹の金魚を6ヶ月間育成する試験を行った。6ヶ月間一度も清掃を行わず、濾過部分も同様に清掃を一切行わなかった。また、濾過部分には光を当てず、日光を避け暗い環境を整えた。餌は1日1度〜2度与え、通常通りの育成方法により育成した。
【0221】
その結果、6ヶ月後、水槽の内部の表面には一切汚れの付着もなく、綺麗な状態を保つことができた。また、水槽と濾過部分とのいずれにおいても、同様に水の濁りがなく、匂いも一切発生しておらず、最良の結果となった。このように、水槽の大きさ又は水の量に応じて電圧を調整することで、対象となる水生生物に対して適切な環境を形成することができた。また、水槽62内に電極板を設置することができるため、魚の細胞を活性化し、魚自体の健康にも繋がった。なお、2極の電極板を設けて交流電場を形成する場合は、水槽内部に魚が入った状態では使用できないが、上記したように、1極の電極板のみを設けて交流電場を形成する場合には、水槽62内に魚が入った状態で使用することができる。即ち、本実施の形態3の水活性化装置によれば、水の活性化を行うことで、電気分解によって水質浄化につながっていると考えられる。
【0222】
<電圧調整部の効果>
本実施の形態3の水活性化装置における電圧調整部41によれば、電極部2に印加される電圧を、水槽の大きさ又は魚の数に応じて調整することが可能になる。魚等の水生生物に印加される交流電場の強さが強すぎると、水生生物に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施の形態3の水活性化装置における電圧調整部41によれば、水生生物に悪影響を及ぼすことなく、水を活性化処理することができる。
【0223】
(実施の形態4)
<養殖装置>
次に、実施の形態4の養殖装置について説明する。本実施の形態4の養殖装置は、水槽内に交流電場を形成し、交流電場が形成されている水槽内で水生生物を養殖する。また、本実施の形態4の養殖装置は、交流電場を形成する電場形成装置としての空間電位発生装置を有する。
【0224】
図16は、実施の形態4の養殖装置の一例を模式的に示す断面図である。
図16に示すように、本実施の形態4の養殖装置は、水槽63と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。水槽63内には、例えば海水等の水63aが貯留される。電極部2は、水槽63内に設けられ、好適には、水槽63内に貯留された水63aに浸漬される。電圧印加装置3は、電極部2に交流電圧VL1(
図3参照)を印加することにより、水槽63内に交流電場を形成する。電極部2と電圧印加装置3とにより、水槽63内に交流電場を形成する空間電位発生装置6が形成されている。
【0225】
なお、本実施の形態4の養殖装置が、水槽63を備えていなくてもよい。このような場合、電極部2と、電圧印加装置3と、のみを備えた養殖装置が、水槽と組み合わされて水生生物の養殖に用いられることになる。
【0226】
本実施の形態4の養殖装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0227】
本実施の形態4の養殖装置は、電極部2から水槽63内に静電気を放出することにより、水槽63内に交流電場を形成し、形成された交流電場を魚等の水生生物63bに印加しながら水生生物63bを養殖する。このとき、交流電場の効果により、水生生物63b中の水分子に特定の波長の電磁波を照射することができるので、水生生物63b中の細胞を活性化させ、水生生物63bの生命力を活性化させつつ、水生生物63bを養殖することができる。
【0228】
また、本実施の形態4の養殖装置は、通常の水槽63と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。また、上記したように、交流電場の効果により、水生生物63bの生命力を活性化させつつ、水生生物63bを養殖することができる。そのため、本実施の形態4の養殖装置によれば、養殖装置の導入コスト及び運転コストを低減することができ、且つ、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により水生生物63bを効率良く養殖することができる。
【0229】
また、電圧印加装置3は、接地電極を有しておらず、且つ、静電気放出手段としての電極部2が絶縁材料で覆われる場合には、コロナ放電が発生することがなく、電極部2の周囲に放出された静電気が絶縁破壊を起こして放電することがない。また、電極部2が物理的に低周波で振動するが、この低周波での振動に伴って交流電場も電極部2の周囲に伝搬して広がり、広い範囲に電場を形成することができる。
【0230】
従来の2個の電極を有する交流式電気処理方法の場合は、電流値が10〜20Aであって高く、魚等の水生生物又は養殖の作業者である人間が感電するおそれがあるため、水槽の中に電極を入れることができなかった。そのため、水槽とは別に設置された2個の電極の間に、水槽から取り出した海水又は淡水を通した状態で高電圧を印加することにより、殺菌処理を行っていたが、水槽の外部に水を循環させた時にしか殺菌処理することができず、安定性に欠けていた。
【0231】
一方、本実施の形態4の養殖装置によれば、電極部2には、低電圧且つ低周波数の交流電圧が印加されるので、魚等の水生生物63b又は人間が感電するおそれがなく、安全に使用することができる。また、細胞を活性化するため、水槽63内で養殖されている魚等の水生生物63bの生命力を活性化することができる。具体的には、表皮が黒く変色し、活動的でなく、元気がない状態の魚を水槽63内で養殖したところ、養殖開始日を1日目として5日目には魚が活動的になり、黒く変色した表皮が無くなり、元気な状態に戻った。
【0232】
また、本実施の形態4の養殖装置は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電極部2と電圧印加装置3とを備えた空間電位発生装置6を有し、電圧印加装置3は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電圧調整部41(
図3参照)を有する。これにより、水槽63内における交流電場の強さを、養殖される水生生物63bの種類又は数量に応じて最適な強さに容易に調整し、設定することができる。そのため、養殖装置の導入コスト及び運転コストを低減しつつ、養殖装置による養殖処理に及ぼす交流電場の効果を更に向上させることができる。
【0233】
<電圧調整部の効果>
本実施の形態4の養殖装置における電圧調整部41によれば、電極部2に印加される電圧を、水槽の大きさ又は魚の数に合わせて調整することが可能になる。魚等の水生生物に印加される交流電場の強さが強すぎると、水生生物に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施の形態4の養殖装置における電圧調整部41によれば、水生生物に悪影響を及ぼすことなく、水生生物を養殖処理することができる。
【0234】
(実施の形態5)
<保管装置>
次に、実施の形態5の保管装置について説明する。本実施の形態5の保管装置は、被保管品を保管する保管空間内に交流電場を形成し、交流電場が形成されている保管空間内で被保管物の鮮度を保持した状態で被保管物を保管する。
【0235】
図17は、実施の形態5の保管装置の一例を模式的に示す断面図である。
図18は、実施の形態5の保管装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、
図18では、給電線24の図示を省略している。
【0236】
図17及び
図18に示すように、本実施の形態5の常温保管庫は、常温保管庫64を備えている。常温保管庫64は、被保管物64aを保管するための保管空間64bを画定する画定部であり、保管空間64bは、常温保管庫64内に形成されている。常温保管庫64として、例えば棚板64cを有する常温保管庫を用いることができる。
【0237】
また、本実施の形態5の保管装置は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電極部2と、電圧印加装置3と、を備え、電極部2と電圧印加装置3とにより、空間電位発生装置6が形成されている。本実施の形態5の保管装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0238】
本実施の形態5では、常温保管庫64の天井64dから垂れ下がるように、電極部2が設けられている。電極部2は、柔らかく折り曲げ可能な出力シート(放電シート又は放出シート)としてのシート状電極2aを有する。シート状電極2aは、巻き取り部64eにより巻き取り可能に設けられたスクリーン64fに貼り付けられている。空間電位発生装置6を使用するときは、シート状電極2aは、巻き取り部64eから引き出されたスクリーン64fと一体的に垂れ下げられ、空間電位発生装置6を使用しないときは、シート状電極2aは、巻き取り部64eによりスクリーン64fと一体的に巻き上げられる。シート状電極2aは、シート状電極2aの表面側及び裏面側の両面側で、交流電場の効果を発揮する。スクリーン64fの垂れ下げ及び巻き上げは、例えばリモートコントローラ64gを用いて手動操作されてもよく、例えば温度や時間帯により自動操作されてもよい。
【0239】
これにより、常温保管庫64に保管されている被保管物64aの鮮度を長期間保持することができる。そして、保管装置の導入コスト及び運転コストを低減することができ、且つ、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により保管空間64b内で被保管物64aの鮮度を長期間保持することができる。なお、
図17及び
図18では図示は省略するが、電極部2は、絶縁部材で覆われている。また、常温保管庫64については、家庭用冷蔵庫と同程度に小さい保管庫であってもよい。
【0240】
好適には、常温保管庫64内に形成された保管空間64bの平面視における略中心に電極部2を設けることができる。これにより、常温保管庫64内、即ち保管空間64b内に均一な交流電場を形成することができる。
【0241】
また、本実施の形態5の保管装置は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電極部2と電圧印加装置3とを備えた空間電位発生装置6を有し、電圧印加装置3は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電圧調整部41(
図3参照)を有する。これにより、常温保管庫64内における交流電場の強さを、被保管物64aの種類、数量若しくは梱包状況、又は、保管空間64b内の温度若しくは湿度に応じて最適な強さに容易に調整し、設定することができる。そのため、保管装置の導入コスト及び運転コストを低減しつつ、保管装置による保管処理に及ぼす交流電場の効果を更に向上させることができるか、又は、影響範囲の制御、対象空間の増減の制御をすることができる。
【0242】
<保管処理に及ぼす交流電場の効果>
次に、本実施の形態5の保管装置による保管処理に及ぼす交流電場の効果について説明する。
【0243】
まず、空間電位発生装置を有しない保管装置を比較例8とし、空間電位発生装置6を有する保管装置である本実施の形態5の保管装置を実施例8とした。また、空間電位発生装置により形成される交流電場の正味の効果を調べるため、実施例8の鮮度保持装置に備えられた電極部2として、上下両面が絶縁部材で覆われていない電極部2を用いた。
【0244】
このような比較例8及び実施例8の各々の保管装置に備えられた常温保管庫64に、水が半分程度貯留された花瓶に挿された植物をそれぞれ入れ、試験開始日を1日目として試験開始日から8日目まで常温保管庫64内で保管した後の、8日目における植物の保存状態を比較する試験を行った。ここで、比較例8及び実施例8の各々の保管装置に備えられた常温保管庫内の温度は、20〜30℃であった。また、電極部2に印加される電圧を2000Vに設定し、植物に直接印加される電圧を50Vに設定した。
【0245】
図19及び
図20は、比較例8及び実施例8の保管装置で保管された植物を示す図である。
図19の左側は、比較例8の保管装置で保管された植物の8日目の写真を示し、
図19の右側は、実施例8の保管装置で保管された植物の8日目の写真を示している。また、
図20の左側は、比較例8の保管装置で保管された植物の8日目の写真を示し、
図20の右側は、実施例8の保管装置で保管された植物の8日目の写真を示している。
【0246】
図19の左側及び
図20の左側に示すように、比較例8の保管装置で保管された植物においては、試験開始時に比べ、花が変色し、茎の上部が萎びて曲がり、茎の下部も変色していた。一方、
図19の右側及び
図20の右側に示すように、実施例8の保管装置で保管された植物においては、試験開始時から殆ど変化していなかった。そのため、保管装置が空間電位発生装置6を有することにより、被保管物64aの保存期間を延長する効果が得られることが明らかになった。
【0247】
<電圧調整部の効果>
本実施の形態5の保管装置における電圧調整部41によれば、電極部2に印加される電圧を、対象とする生花等の被保管物の数量又は保管空間64bの大きさに合わせて調整することが可能になる。即ち、交流電場の影響を及ぼす範囲である保管空間64bの大きさを調整することが可能になる。
【0248】
<実施の形態5の変形例>
実施の形態5の保管装置が、常温保管庫に代えて、棺桶を備えてもよく、電極部が棺桶内に設けられ、内部に電極部が設けられた棺桶内に人間の遺体を保管するようにしてもよい。このような場合を実施の形態5の変形例として、簡単に説明する。本変形例の保管装置は、遺体を保管する棺桶内に交流電場を形成し、交流電場が形成されている棺桶内で遺体を保管することになる。
【0249】
本変形例の保管装置が、棺桶を備える場合、電極部から棺桶内に静電気を放出することにより、棺桶内に交流電場を形成し、形成された交流電場を遺体に印加しながら遺体を保管する。これにより、遺体中の水分子に特定の波長の電磁波を照射することができるので、遺体中の細胞を活性化させ遺体の状態変化を抑制することができる。また氷点下の−1℃から−5℃の温度帯で保管することにより、細菌の抑制をしながら良い状態で管理が可能となる。また電圧調整部41(
図3参照)を備えることで、数体の遺体を保管することが可能となる。棺桶の数によって接続される電極部2の数を増やすことができ、棺桶を増設することができる。
【0250】
(実施の形態6)
<乾燥装置>
次に、実施の形態6の乾燥装置について説明する。本実施の形態6の乾燥装置は、乾燥庫内に交流電場を形成し、交流電場が形成されている乾燥庫内で被乾燥物を乾燥させる。また、本実施の形態6の乾燥装置は、交流電場を形成する電場形成装置としての空間電位発生装置を有する。
【0251】
図21は、実施の形態6の乾燥装置の一例を模式的に示す断面図である。
図21に示すように、本実施の形態6の乾燥装置は、乾燥庫65と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。乾燥庫65は、被乾燥物65aを乾燥させるための乾燥空間65bを画定する画定部であり、乾燥空間65bは、乾燥庫65内に形成されている。乾燥庫65として、例えば棚板65cを有する乾燥庫を用いることができる。電極部2は、乾燥庫65内に設けられている。電圧印加装置3は、電極部2に交流電圧VL1(
図3参照)を印加することにより、乾燥庫65内に交流電場を形成する。電極部2と電圧印加装置3とにより、乾燥庫65内に交流電場を形成する空間電位発生装置6が形成されている。
【0252】
なお、本実施の形態6の乾燥装置が、乾燥庫65を備えていなくてもよい。このような場合、電極部2と、電圧印加装置3と、のみを備えた乾燥装置が、乾燥庫と組み合わされて被乾燥物の乾燥に用いられることになる。
【0253】
本実施の形態6の乾燥装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0254】
被乾燥物を乾燥させる方法として、熱風を強制的に被乾燥物に吹き付けて乾燥させる方法がある。しかし、このような方法には、消費電力が大きく、電気料金が高く、乾燥装置の運転コストが高い、という問題、又は、高温で乾燥させることによって色が変色する、という問題がある。
【0255】
また、被乾燥物を乾燥させる方法として、水分を含有するものを急速に冷却して1次の冷凍凍結をさせた後、氷を昇華させて乾燥させる方法がある。しかし、このような方法には、乾燥させた後の被乾燥物の品質は向上するが、凍結乾燥機の価格が非常に高く、乾燥装置の導入コストが高い、という問題がある。
【0256】
また、被乾燥物を乾燥させる方法として、乾燥室を除湿して室内の空気中の水分を除去し、相対湿度を調整して乾燥させる方法がある。このような方法には、熱風を吹き付けて乾燥させる方法に比べ、消費エネルギーを50%程度に低減することができ、被乾燥物中の細胞が破壊されにくいという特長がある。しかし、このような方法には、乾燥速度が遅く、被乾燥物を効率良く乾燥させることができない、という問題がある。
【0257】
即ち、従来の被乾燥物を乾燥させる方法においては、乾燥装置の導入コスト及び運転コストを低減しつつ、被乾燥物を効率良く乾燥させることが困難であった。
【0258】
一方、本実施の形態6の乾燥装置では、電極部2から乾燥庫65内に静電気を放出することにより、乾燥庫65内に交流電場を形成し、形成された交流電場を被乾燥物65aに印加しながら被乾燥物65aを乾燥させる。このとき、交流電場の効果により、被乾燥物65a中の水分子に特定の波長の電磁波を照射することができるので、被乾燥物65a中の水分子が振動しやすくなって蒸発しやすくなり、乾燥速度が速くなる。このような場合、電極部2及び電圧印加装置3を低コストで導入及び運転することができ、且つ、乾燥庫65内で被乾燥物65aを効率良く乾燥させることができる。
【0259】
また、本実施の形態6の乾燥装置は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電極部2と電圧印加装置3とを備えた空間電位発生装置6を有し、電圧印加装置3は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電圧調整部41(
図3参照)を有する。これにより、乾燥庫65内における交流電場の強さを、被乾燥物65aの種類、数量若しくは梱包状況、又は、乾燥空間65b内の温度若しくは湿度に応じて最適な強さに容易に調整し、設定することができる。そのため、乾燥装置の導入コスト及び運転コストを低減しつつ、乾燥装置による乾燥処理に及ぼす交流電場の効果を更に向上させることができるか、又は、対象空間を制御することができる。
【0260】
なお、被乾燥物としては、特に限定されない。従って、本実施の形態6の乾燥装置を用いて、唐辛子、大根、南瓜、ジャガイモ、桔梗、紅人参、蜜柑、椎茸、ビーフジャーキー、干し柿、ニンニク、コーヒー、タバコ、煮干、イシモチ、エビ、干魚、スケトウダラ又はナマコ等の各種の被乾燥物を乾燥させることができる。
【0261】
<実施の形態6の変形例>
図22は、実施の形態6の変形例の乾燥装置を模式的に示す一部断面を含む側面図である。
図22に示すように、本変形例の乾燥装置は、乾燥庫65(
図21参照)に代え、大型の乾燥室66を備えている。乾燥室66は、被乾燥物66aを乾燥させるための乾燥空間66bを画定する画定部であり、乾燥空間66bは、乾燥室66内に形成されている。乾燥室66として、例えば棚板66cを有する乾燥室を用いることができる。
【0262】
また、本変形例の乾燥装置は、実施の形態6の乾燥装置と同様に、電極部2と、電圧印加装置3と、を備え、電極部2と電圧印加装置3とにより、空間電位発生装置6が形成されている。本変形例の乾燥装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0263】
本変形例では、乾燥室66の天井66d下に、電極部2が設けられている。これにより、乾燥室66内で乾燥される被乾燥物66aの乾燥時間を短縮することができる。なお、
図22では図示は省略するが、電極部2は、絶縁部材で覆われている。
【0264】
好適には、乾燥室66内に形成された乾燥空間66bの平面視における略中心に電極部2を設けることができる。これにより、乾燥室66内、即ち乾燥空間66b内に均一な交流電場を形成することができる。
【0265】
<乾燥処理に及ぼす交流電場の効果>
次に、本実施の形態6の乾燥装置による乾燥処理に及ぼす交流電場の効果について説明する。
【0266】
まず、空間電位発生装置を有しない乾燥装置を比較例9とし、空間電位発生装置6を有する乾燥装置である本実施の形態6の乾燥装置を実施例9とした。比較例9及び実施例9の各々の乾燥装置に備えられた乾燥庫内にそれぞれ中国冷凍唐辛子、即ちイクド唐辛子を入れ、58℃の温度で除湿乾燥方式により乾燥させる際の、乾燥時間を比較する試験を行った。
【0267】
比較例9及び実施例9の各々の乾燥装置に備えられた乾燥庫内に形成された乾燥空間は、2.3m
2の平面積を有し、最大300kgの被乾燥物を収容できる体積を有していた。また、実施例9の乾燥装置に設けられた電極部2は、縦20cm×横30cmの平面形状を有する電極板により形成され、当該電極板の上下両面は、絶縁材料であるプラスチック(ABS樹脂板)よりなる絶縁部材により覆われていた。電極板の上下両面を覆う絶縁部材は、いずれも縦30cm×横40cm×厚さ150mmの形状を有していた。
【0268】
また、電極部2に印加される電圧を2200Vに設定し、乾燥庫内に配置された中国冷凍唐辛子に直接印加される電圧を30Vに設定した。
【0269】
その結果、実施例9の乾燥装置における乾燥時間は28時間であり、比較例9の乾燥装置における乾燥時間は38時間であり、実施例9の場合、比較例9に比べて、乾燥時間を10時間程度短縮することができた。これは、実施例9における乾燥時間が、比較例9における乾燥時間に比べて26%程度短縮できたことを意味する。また、実施例9における消費電力は、比較例9における消費電力に比べて16%程度削減することができたため、実施例9における消費電力量は、比較例9における消費電力量に比べて、40%程度削減することができた。
【0270】
なお、乾燥温度を58℃から52℃に変更した場合には、実施例9の乾燥装置における乾燥時間は38時間であり、比較例9の乾燥装置における乾燥時間は48時間であり、実施例9の場合、比較例9に比べて、乾燥時間を10時間程度短縮することができた。通常よりも温度を下げて乾燥させることで、天日干しと同様な高品質の赤色の発色が可能となった。
【0271】
次に、空間電位発生装置を有しない乾燥装置を比較例10とし、空間電位発生装置6を有する乾燥装置である本実施の形態6の乾燥装置を実施例10とした。比較例10及び実施例10の各々の乾燥装置に備えられた乾燥庫内にそれぞれ一般冷凍唐辛子を入れ、58℃の温度で除湿乾燥方式により乾燥させる際の、乾燥時間を比較する試験を行った。
【0272】
比較例10及び実施例10の各々の乾燥装置に備えられた乾燥庫内に形成された乾燥空間は、6.6m
2の平面積を有し、最大1.2トンの被乾燥物を収容できる体積を有していた。また、実施例10の乾燥装置に設けられた電極部2は、縦20cm×横30cmの平面形状を有する電極板により形成され、当該電極板の上下両面は、絶縁材料であるプラスチック(ABS樹脂板)よりなる絶縁部材により覆われていた。電極板の上下両面を覆う絶縁部材は、いずれも縦30cm×横40cm×厚さ8mmの形状を有していた。
【0273】
また、電極部2に印加される電圧を1800Vに設定し、乾燥庫内に配置された中国冷凍唐辛子に直接印加される電圧を20Vに設定した。
【0274】
その結果、実施例10の乾燥装置における乾燥時間は42時間であり、比較例10の乾燥装置における乾燥時間は56時間であり、実施例10の場合、比較例10に比べて、乾燥時間を14時間程度短縮することができた。これは、実施例10における乾燥時間が、比較例10における乾燥時間に比べて24%程度短縮できたことを意味する。また、実施例10における消費電力は、比較例10における消費電力に比べて17%程度削減することができたため、実施例10における消費電力量は、比較例10における消費電力量に比べて、41%程度削減することができた。
【0275】
次に、空間電位発生装置を有しない乾燥装置を比較例11とし、空間電位発生装置6を有する乾燥装置である本実施の形態6の変形例の乾燥装置を実施例11とした。比較例11及び実施例11の各々の乾燥装置に備えられた乾燥室内にそれぞれ一般冷凍唐辛子を入れ、58℃の温度で除湿乾燥方式により乾燥させる際の、乾燥時間を比較する試験を行った。
【0276】
比較例11及び実施例11の各々の乾燥装置に備えられた乾燥室内に形成された乾燥空間は、83m
2の平面積を有し、最大12トンの被乾燥物を収容できる体積を有していた。また、実施例11の乾燥装置に設けられた電極部2は、縦20cm×横30cmの平面形状を有する電極板により形成され、当該電極板の上下両面は、絶縁材料であるプラスチック(PE板)よりなる絶縁部材により覆われていた。電極板の上下両面を覆う絶縁部材は、いずれも縦30cm×横40cm×厚さ8mmの形状を有していた。
【0277】
また、電極部2に印加される電圧を2200Vに設定し、乾燥室内に配置された中国冷凍唐辛子に直接印加される電圧を20Vに設定した。
【0278】
その結果、実施例11の乾燥装置における乾燥時間は41時間であり、比較例11の乾燥装置における乾燥時間は54時間であり、実施例11の場合、比較例11に比べて、乾燥時間を13時間程度短縮することができた。これは、実施例11における乾燥時間が、比較例11における乾燥時間に比べて24%程度短縮できたことを意味する。また、実施例11における消費電力は、比較例11における消費電力に比べて16%程度削減することができたため、実施例11における消費電力量は、比較例11における消費電力量に比べて、40%程度削減することができた。
【0279】
<電圧調整部の効果>
本実施の形態6の乾燥装置における電圧調整部41によれば、電極部2に印加される電圧を、対象物の数量や部屋の大きさに合わせて調整することが可能になる。即ち、交流電場の影響を及ぼす範囲である乾燥空間66bの大きさを調整することが可能になる。
【0280】
(実施の形態7)
<熟成装置>
次に、実施の形態7の熟成装置について説明する。本実施の形態7の熟成装置は、熟成空間内に交流電場を形成し、交流電場が形成されている熟成空間内で被熟成物を熟成させる。また、本実施の形態7の熟成装置は、交流電場を形成する電場形成装置としての空間電位発生装置を有する。
【0281】
図23は、実施の形態7の熟成装置の一例を模式的に示す断面図である。
図23に示すように、本実施の形態7の熟成装置は、冷蔵庫67と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。冷蔵庫67は、被熟成物67aを熟成させるための熟成空間67bを画定する画定部であり、熟成空間67bは、冷蔵庫67内に形成されている。冷蔵庫67として、例えば棚板67cを有する業務用縦型冷蔵庫を用いることができる。電極部2は、冷蔵庫67内に、即ち熟成空間67bに設けられている。電圧印加装置3は、電極部2に交流電圧VL1(
図3参照)を印加することにより、冷蔵庫67内に交流電場を形成する。電極部2と電圧印加装置3とにより、冷蔵庫67内に交流電場を形成する空間電位発生装置6が形成されている。
【0282】
なお、本実施の形態7の熟成装置が、冷蔵庫67を備えていなくてもよい。このような場合、電極部2と、電圧印加装置3と、のみを備えた熟成装置が、冷蔵庫と組み合わされて被熟成物の熟成に用いられることになる。
【0283】
本実施の形態7の熟成装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0284】
本実施の形態7の熟成装置は、電極部2から熟成空間67b内に静電気を放出することにより、熟成空間67b内に交流電場を形成し、形成された交流電場を被熟成物67aに印加しながら被熟成物67aを熟成させる。このとき、交流電場の効果により、被熟成物67a中の水分子に特定の波長の電磁波を照射することができるので、被熟成物67a中の細胞を活性化させ、被熟成物67aの鮮度を保持しつつ、被熟成物67aの熟成を促進することができる。
【0285】
肉等の食材は、温度調整によりアミノ酸の含有率を増加させることにより、早く熟成させることができる。肉の場合、通常は15日以上かけて熟成させるため、その間の細菌の繁殖の抑制又は温度管理のために特別な設備を必要とし、且つ、専門家による厳密な管理が必要である。
【0286】
一方、空間電位発生装置を有する本実施の形態7の熟成装置を用いることにより、細菌が繁殖することを抑制することができ、短期間で最良の熟成効果を得ることができる。そして、既存の冷蔵庫に空間電位発生装置6を設置することにより、短時間で低コストに、数トン以上の重量単位での牛肉、豚肉又は鶏肉を熟成保存することができる。
【0287】
また、本実施の形態7の熟成装置は、通常の冷蔵庫67と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。また、上記したように、交流電場の効果により、熟成空間67b内に配置されている被熟成物67aの熟成を促進することができる。そのため、本実施の形態7の熟成装置によれば、熟成装置の導入コスト及び運転コストを低減することができ、且つ、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により熟成空間67b内で被熟成物67aを効率良く熟成させることができる。
【0288】
また、本実施の形態7の熟成装置では、電圧印加装置3は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電圧調整部41(
図3参照)を有する。これにより、冷蔵庫67内において空間電位発生装置6が形成する交流電場の強さを、被熟成物67aの種類、数量若しくは梱包状況、又は、熟成空間67b内の温度若しくは湿度に応じて最適な強さに容易に調整し、設定することができる。そのため、熟成装置の導入コスト及び運転コストを低減しつつ、熟成装置による熟成処理に及ぼす交流電場の効果を更に向上させることができるか、又は、対象空間を制御することができる。
【0289】
<熟成処理に及ぼす交流電場の効果>
次に、本実施の形態7の熟成装置による熟成処理に及ぼす交流電場の効果について説明する。
【0290】
まず、空間電位発生装置を有しない熟成装置を比較例12とし、空間電位発生装置6を有する熟成装置である本実施の形態7の熟成装置を実施例12とした。比較例12及び実施例12の各々の熟成装置に備えられた冷蔵庫内にそれぞれ1kgの牛肉の肩ロースブロックを入れ、試験開始日を1日目として試験開始日から30日目まで牛肉を熟成させた際に、15日目及び30日目における牛肉100g当たりのグルタミン酸の含有量を測定する試験を行った。ここで、比較例12及び実施例12の各々の熟成装置に備えられた冷蔵庫内の温度は、2℃であった。
【0291】
比較例12及び実施例12の各々の熟成装置に備えられた冷蔵庫内に形成された熟成空間は、4m
2の平面積を有し、最大150kgの被熟成物を収容できる体積を有していた。また、実施例12の熟成装置に設けられた電極部2は、縦20cm×横30cmの平面形状を有する電極板により形成され、当該電極板の上下両面は、絶縁材料であるプラスチック(ABS樹脂板)よりなる絶縁部材により覆われていた。電極板の上下両面を覆う絶縁部材は、いずれも縦30cm×横40cm×厚さ8mmの形状を有していた。
【0292】
また、電極部2に印加される電圧を1800Vに設定し、冷蔵庫67内に配置された牛肉に直接印加される電圧を50Vに設定した。
【0293】
まず、15日目においては、実施例12の熟成装置で熟成された牛肉については、表面にカビが発生しておらず、変色もほとんどしていなかった。一方、比較例12の熟成装置で熟成された牛肉については、表面にカビが発生しており、肉の表面と中央部との間に層境界が形成されるなど牛肉の内部に層構造が形成されつつあった。
【0294】
一方、30日目においては、実施例12及び比較例12のいずれの熟成装置で熟成された牛肉についても、表面がカビで覆われており、牛肉の内部に層構造が形成されていた。
【0295】
図24は、比較例12及び実施例12の熟成装置で熟成された牛肉中のグルタミン酸の含有量の測定結果を示すグラフである。
図24に示すように、牛肉100g当たりのグルタミン酸の含有量は、試験開始日には、実施例12及び比較例12のいずれも21mgであり、15日目には、実施例12では38mg、比較例12では41mgであり、30日目には、実施例12では51mg、比較例12では41mgであった。即ち、比較例12では、15日目以後、グルタミン酸の含有量が増加しておらず、熟成が促進されていないが、実施例12では、15日目以後もグルタミン酸の含有量が増加しており、熟成が促進されたことが明らかになった。
【0296】
このような結果は、実施例12において、比較例12に比べて、被熟成物の熟成が促進されたことを意味している。そのため、本実施の形態7の熟成装置によれば、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により被熟成物67aを効率良く熟成させることができ、熟成装置による熟成処理に及ぼす交流電場の効果が向上することが明らかになった。
【0297】
<電圧調整部の効果>
本実施の形態7の熟成装置における電圧調整部41によれば、電極部2に印加される電圧を、対象物の数量や部屋の大きさに合わせて調整することが可能になる。即ち、交流電場の影響を及ぼす範囲である熟成空間67bの大きさを調整することが可能になる。
【0298】
(実施の形態8)
<育成装置>
次に、実施の形態8の育成装置について説明する。本実施の形態8の育成装置は、被育成物の周囲に交流電場を形成し、周囲に交流電場が形成されている被育成物を育成する。また、本実施の形態8の育成装置は、交流電場を形成する電場形成装置としての空間電位発生装置を有する。
【0299】
図25は、実施の形態8の育成装置の一例を模式的に示す断面図である。
図25に示すように、本実施の形態8の育成装置は、育成部68と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。育成部68は、例えば、収容部68aと、収容部68a内に収容され、例えば葉物野菜等の被育成物68bがそれぞれ植えられる複数の鉢部68cと、例えば収容部68aの上方等、収容部68a付近に設けられ、被育成物68bに向けて光を照射する照射部68dと、を有する。電極部2は、被育成物68bの周囲、例えば収容部68aの上方等、収容部68a付近に、設けられている。電圧印加装置3は、電極部2に交流電圧VL1(
図3参照)を印加することにより、被育成物68bの周囲に交流電場を形成する。電極部2と電圧印加装置3とにより、被育成物68bの周囲に交流電場を形成する空間電位発生装置6が形成されている。
【0300】
なお、本実施の形態8の育成装置が、育成部68を備えていなくてもよい。このような場合、電極部2と、電圧印加装置3と、のみを備えた育成装置が、育成部68に相当する育成部と組み合わされて被育成物68bの育成に用いられることになる。
【0301】
本実施の形態8の育成装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0302】
本実施の形態8の育成装置は、電極部2から被育成物68bの周囲に静電気を放出することにより、被育成物68bの周囲に交流電場を形成し、形成された交流電場を被育成物68bに印加しながら被育成物68bを育成する。このとき、交流電場の効果により、被育成物68b中の水分子に特定の波長の電磁波を照射することができるので、被育成物68b中の細胞を活性化させ、被育成物68bの生命力を活性化させつつ、被育成物68bの育成を促進することができる。
【0303】
また、本実施の形態8の育成装置は、通常の育成部68と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。また、上記したように、交流電場の効果により、被育成物68bの育成を促進することができる。そのため、本実施の形態8の育成装置によれば、育成装置の導入コスト及び運転コストを低減することができ、且つ、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により被育成物68bを効率良く育成することができる。
【0304】
また、本実施の形態8の育成装置では、電圧印加装置3は、実施の形態1の鮮度保持装置と同様に、電圧調整部41(
図3参照)を有する。これにより、被育成物68bの周囲に空間電位発生装置6が形成する交流電場の強さを、被育成物68bの種類、数量若しくは梱包状況、又は、被育成物68bの周囲の温度若しくは湿度に応じて最適な強さに容易に調整し、設定することができる。そのため、育成装置の導入コスト及び運転コストを低減しつつ、育成装置による育成処理に及ぼす交流電場の効果を更に向上させることができるか、又は、対象空間を制御することができる。
【0305】
<育成処理に及ぼす交流電場の効果>
次に、本実施の形態8の育成装置による育成処理に及ぼす交流電場の効果について説明する。
【0306】
まず、空間電位発生装置を有しない育成装置を比較例13とし、空間電位発生装置6を有する育成装置である本実施の形態8の育成装置を実施例13とした。比較例13及び実施例13の各々の育成装置において、芝の種を播いた後、発芽し、培地よりも上方に10cm程度伸びるまでの、芝の育成速度を比較する試験を行った。
【0307】
比較例13及び実施例13の各々の育成装置に備えられた育成部68の収容部68aは、縦4m×横3m×高さ2.4mの形状を有していた。照射部68dとして、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を用いた。収容部68aに収容された鉢部68cの各々の内部に収容された培地から照射部68dまでの距離は、20cmであった。照射部68dにより、光を24時間連続的に照射した。また、比較例13及び実施例13のいずれにおいても、同様の条件で散水方式により水を供給した。
【0308】
また、実施例13の育成装置に設けられた電極部2は、横5cm×縦10cm×厚さ1mmの形状を有する電極板により形成されていた。また、電極部2に印加される電圧を3000Vに設定した。
【0309】
その結果、種を播いてから発芽するまでの芝の育成速度については、比較例13と実施例13との間で、差異は観測されなかった。また、発芽してから培地よりも上方に10cm程度伸びるまでの芝の育成速度についても、比較例13と実施例13との間で、差異は観測されなかった。また、一部について、培地よりも上方に3cm程度伸びた時点で芝を刈り込み、その後、刈り込まれた芝を育成した場合、比較例13と実施例13との間で、差異は観測されなかった。
【0310】
一方、比較例13及び実施例13の各々の育成装置で育成された芝を抜き取り、水で培養土を洗浄して除去し、根を露出させ、外観を比較する試験を行った。その結果、実施例13では、比較例13に比べ、洗浄前の状態で、根が培養土と強く絡み合っており、洗浄後、根が露出した状態でも、根と根が強く絡み合っており、根が太く、根全体のボリューム感に富んでいた。
【0311】
次に、空間電位発生装置を有しない育成装置を比較例14とし、空間電位発生装置6を有する育成装置である本実施の形態8の育成装置を実施例14とした。比較例14及び実施例14の各々の育成装置において、水菜及びビタミン菜の葉物野菜を育成した後、食し、味について官能評価して比較する試験を行った。
【0312】
比較例14及び実施例14の各々の育成装置に備えられた育成部68の収容部68aは、縦4m×横3m×高さ2.4mの形状を有していた。照射部68dとして、発光ダイオードを用いた。収容部68aに収容された鉢部68cの各々の内部に収容された培地から照射部68dまでの距離は、20cmであった。照射部68dにより、光を24時間連続的に照射した。また、比較例14及び実施例14のいずれにおいても、同様の条件で散水方式により水を供給した。
【0313】
また、実施例14の育成装置に設けられた電極部2は、横5cm×縦10cm×厚さ1mmの形状を有する電極板により形成されていた。また、電極部2に印加される電圧を3000Vに設定し、培地よりもそれぞれ20cm、15cm、10cm、5cm、2cm上方の電圧を、2800V、500V、120V、60V及び10Vに設定した。
【0314】
その結果、水菜については、比較例14では、「淡白で水分が多い味がする。」との評価であったが、実施例14では、「水菜の味がしっかりしている。」との評価が得られた。また、ビタミン菜については、比較例14では、「みずみずしい味がする。」との評価が得られ、実施例14では、「野菜の甘味がある、緑という感じ。」との評価が得られた。
【0315】
このような結果は、実施例13及び実施例14において、比較例13及び比較例14に比べて、被育成物68bの育成速度が向上したことを意味している。そのため、本実施の形態8の育成装置によれば、空間電位発生装置6が形成する交流電場の効果により被育成物68bを効率良く育成することができ、育成装置による育成処理に及ぼす交流電場の効果が向上することが明らかになった。
【0316】
<電圧調整部の効果>
本実施の形態8の育成装置における電圧調整部41によれば、電極部2に印加される電圧を、対象物の数量や部屋の大きさに合わせて調整することが可能になる。即ち、交流電場の影響を及ぼす範囲である空間の大きさを調整することが可能になる。
【0317】
(実施の形態9)
実施の形態1の空間電位発生装置を、空調装置(エアコンディショナー、エアコン)及び空気清浄機に適用し、実施の形態9の空調装置及び実施の形態9の変形例の空気清浄機を実現することができる。
【0318】
図26は、実施の形態9の空調装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図26に示すように、実施の形態9の空調装置は、空調装置本体部としての空調部69と、電極部2と、電圧印加装置3と、を備えている。また、図示は省略するが、実施の形態9の変形例の空気清浄機は、空気清浄機本体部(図示は省略)と、電極部2(
図1参照)と、電圧印加装置3(
図1参照)と、を備えている。
【0319】
本実施の形態9の空調装置は、空調部69が空調を行う空調空間69b内に交流電場を形成し、交流電場が形成されている空調空間69b内の空気の温度を調節する。具体的には、空調空間69b内に設けられた電極部2から空調空間69b内に静電気を放出することにより、空調空間69b内に交流電場を形成し、形成された交流電場を空調空間69b内の空気又は空調空間69b内に配置されている例えば生体に印加しながら空調空間69b内の空気の温度を調節する。
【0320】
空調部69は、壁部69cに取り付けられており、壁部69cは、空調空間69bを画定する。電極部2は、空調空間69b内に設けられていればよいが、空調装置本体部としての空調部69の前面パネル69d及び吹き出し口69eのいずれかよりも空調部69の背面側に格納されてもよく、このとき、電圧印加装置3は、空調部69の内部に格納されてもよい。このような場合、電極部2と電圧印加装置3を、空調部69に内蔵して一体化することができるので、装置コストを低減することができ、設置場所の選択の自由度を高めることができる。
【0321】
本実施の形態9の空調装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3、即ち空間電位発生装置6については、実施の形態1の鮮度保持装置に備えられた電極部2及び電圧印加装置3、即ち空間電位発生装置6と同様にすることができ、その詳細については、説明を省略する。
【0322】
また、本変形例の空気清浄機は、空気の清浄を行う清浄空間内に交流電場を形成し、交流電場が形成されている清浄空間内の空気を清浄化する。具体的には、電極部2から清浄空間内に静電気を放出することにより、清浄空間内に交流電場を形成し、形成された交流電場を清浄空間内の空気又は清浄空間内に配置されている例えば生体に印加しながら清浄空間内の空気を清浄化する。
【0323】
これにより、空調空間又は清浄空間の内部に配置された生体中の水分子に特定の波長の電磁波を照射することができるので、生体中の細胞を活性化させることができる。また、生体の劣化が進行する際に生体が酸化して減少する電子を補うことにより、生体の酸化を防止し、細菌の活動を抑制することができる。なお、
図26に示す電極部2及び電圧印加装置3を空調部69に代えて空気清浄機本体部の内部に格納することにより、実施の形態9の空調装置が有する空間電位発生装置を、本変形例の空気清浄機に応用することができる。
【0324】
即ち、空間電位発生装置を有する本実施の形態9の空調装置及び本変形例の空気清浄機によれば、空調空間又は清浄空間の内部に配置されている例えば生体の鮮度保持効果及びアンチエイジング効果、並びに、空調空間又は清浄空間の内部の消臭効果が長期間持続する。
【0325】
(実施の形態10)
実施の形態1の空間電位発生装置を、炊飯器に適用し、実施の形態10の炊飯器を実現することができる。このような場合、実施の形態10の炊飯器は、炊飯器本体部(図示は省略)と、電極部2(
図1参照)と、電圧印加装置3(
図1参照)と、を備えている。
【0326】
本実施の形態10の炊飯器では、炊飯器本体部が有する炊飯釜部(図示は省略)内に交流電場を形成し、交流電場が形成されている炊飯釜部内で炊飯を行う。具体的には、電極部2から炊飯釜部内に静電気を放出することにより、炊飯釜部内に交流電場を形成し、形成された交流電場を炊飯釜部内に配置されている米に印加しながら炊飯を行う。
【0327】
これにより、米中の水分子に特定の波長の電磁波を照射することができるので、米中の細胞を活性化させることができる。また、米の劣化が進行する際に米が酸化して減少する電子を補うことにより、米の酸化を防止し、細菌の活動を抑制することができる。即ち、空間電位発生装置を有する本実施の形態10の炊飯器によれば、炊飯釜部内に配置されている米をふっくらおいしく炊くことができる。
【0328】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0329】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0330】
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
鮮度保持装置に備えられた電圧印加装置(3)は、トランス(31)の二次コイル(36)の一方の端子(36a)をトランス(31)の一次コイル(35)の一方の端子(35a)に戻すフィードバック制御回路(32)と、二次コイル(36)の他方の端子(36b)に接続された出力制御部(33)と、交流電源から入力される交流電圧(VL3)の電圧値を複数の電圧値に切り替えて一次コイル(35)に印加することにより交流電圧(VL1)の電圧値を調整する電圧調整部(41)と、を有する。