(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1繊維は、二以上の成分を含む複合繊維であり、最も融点が低い成分(以下、「低融点成分」)が繊維表面の少なくとも一部を構成し、前記低融点成分の融点が、前記撥水性繊維の少なくとも表面を構成する成分の融点よりも低く、前記低融点成分によって構成繊維同士が接着されている、請求項5に記載の吸収性物品用シート。
前記撥水性繊維は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる一種以上の樹脂から成る単一繊維である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
表面シートと、バックシートと、表面シートとバックシートとの間に配置される吸収体とを有する吸収性物品の、前記表面シートと前記吸収体との間に配置される中間シートである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
表面シートと、バックシートと、前記表面シートと前記バックシートとの間に配置される吸収体と、前記表面シートと前記吸収体との間に配置される中間シートとを有する吸収性物品であって、前記中間シートが請求項1〜11のいずれか1項に記載の吸収性物品用シートである、吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本実施形態に至った経緯)
吸収性物品用シートが、表面シートと吸収体との間に配置する中間シート(ADL(Absorption Distribution Layer)、またはセカンドシートとも称される)として用いられる場合、吸液速度、液戻り防止性、および液持ち防止性(以下、これらを総称して「吸液性能」とも呼ぶ)をより良好なバランスで備えた吸収性物品用シートが要求される。また、中間シートには、効率的に液体が吸収体に吸収されるような特性を有することも望まれる。例えば、液体が、尿のように粘度が小さく(例えば、粘度0.6mPa・s〜0.9mPa・s)、かつ一回あたりの排泄量が比較的多い場合には、中間シートには、表面シートを通過した液体を拡散させる性質が要求される。液体が、経血のように粘度が大きく(例えば、粘度7mPa・s〜9mPa・s)、色を有している場合には、吸収体に吸収された後で利用者に認識される着色領域が狭くなるよう、中間シートには、液体の拡がりを抑制して、液体を吸収体に速やかに移行させる性質が要求される。経血用の吸収性物品においては、吸収された液体の隠蔽性(見えにくさ)が求められ、目で認識できる経血の広がりが小さいほど、隠蔽性が高いとされる。
【0011】
本発明者らは、これらの要求を満たす中間シートの構成を検討した。本発明者らは、撥水度合いの異なる繊維を組み合わせることにより、これらの要求を満たすシートが得られると考えた。しかし、単にそれらの繊維を混合するだけでは、所望の吸液性能を達成できず、特に繰り返し液体を吸収させるときに吸液性能が低下しやすいことがわかった。
【0012】
そこで、本発明者らは不織布を二層構成とし、一方の繊維層(第1繊維層)を撥水度合いのより高い繊維をより多く含み、他方の繊維層(第2繊維層)を撥水度合いのより低い繊維をより多く含む構成を検討した。その結果、そのような二層構造の不織布によれば、液戻り量を小さくして、粘度の小さい液体の場合には液体を拡散させながら、また、粘度の大きい液体の場合には液体の拡がりを抑制して、吸収体に速やかに液体を移行させ得ることがわかった。第2繊維層を構成する繊維の繊維径をより小さくすることによって、液体の粘度が小さい場合には、その拡散がより促進され、また、液戻り防止性も向上する。
【0013】
また、本発明者らは、吸液性能をさらに向上させるために、第1繊維層の構成を検討した。その結果、
・第1繊維層を、撥水性繊維処理剤を含有する合成繊維(撥水性繊維)、および前記撥水性繊維よりも低い撥水度合いを有する繊維(第1繊維)を含むように構成すること、
・撥水性繊維の繊維径を所定の範囲内にあるようにすること、
・第1繊維の繊維径を撥水性繊維の繊維径よりも小さくすること
によって、適度に大きい繊維間空隙が撥水性繊維間、および撥水性繊維−第1繊維間に形成され、それにより吸液性能のバランスがより良好となることを見出した。
以下、本実施形態の吸収性物品用シートおよびこれを用いた吸収性物品を説明する。
【0014】
本実施形態の吸収性物品用シートは、第1繊維層と、第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層とを含む不織布であって、
第1繊維層が、撥水性繊維処理剤を含有する合成繊維である撥水性繊維、および撥水性繊維よりも低い撥水度合いを有する繊維である第1繊維を含み、
第2繊維層が、撥水性繊維よりも低い撥水度合いを有する繊維である第2繊維を含み、
撥水性繊維の繊維径が23.5μm以上42μm以下であり、
第1繊維の繊維径が撥水性繊維の繊維径よりも小さく、
第2繊維層に含まれる第2繊維の割合(質量%)が、第1繊維層に含まれる撥水性繊維の割合(質量%)よりも大きい、吸収性物品用シートである。
【0015】
(撥水性繊維)
第1繊維層に含まれる撥水性繊維は、撥水性繊維処理剤を含有する合成繊維であり、後述するとおり、表面に撥水性繊維処理剤が付着した合成繊維、または撥水性繊維処理剤が繊維中に分散した合成繊維である。合成繊維はそれ自体、ある程度撥水性を有するので、これにさらに撥水性繊維処理剤を含有させることにより、撥水度合いをより高くすることができる。
【0016】
撥水性繊維の撥水度合いは、例えば接触角によって知ることができる。ここで、接触角とは、水の自由表面が繊維に接する場所で、水面と繊維表面とのなす角(水の内部にある角をとる)をいう。本実施形態において、撥水性繊維の接触角は、例えば100°以上135°以下であってよく、特に100°以上130°以下であってよく、より特には100°以上125°以下であってよい。接触角が大きいほど撥水度合いはより高い。撥水性繊維の接触角が小さすぎると、不織布の液戻り防止性が低下する。
【0017】
接触角は、以下の方法で測定される。
(株)キーエンス製マイクロスコープVHX−1000にズームレンズ((株)キーエンス製、型番:VH−Z100R)を取り付けた測定部を水平方向に倒した状態で固定する。接触角の測定対象である繊維を含む不織布を縦(MD方向)×横(CD方向)が50mm×10mmの大きさとなるようにカットして、測定サンプルを作製する。測定サンプルの測定面を上向きにした状態で、ズームレンズのレンズ面に対して不織布のCD方向が垂直となる向きにして(すなわち、観察方向がCD方向と平行となるように)測定サンプルを試験台に置いて、両端をテープで固定する。なお、観察方向(ズームレンズを通して対象物を見る方向)は、観察方向と直交する方向に繊維が延びているように選択される限りにおいて、特に限定されない。不織布の種類によっては、不織布のCD方向と例えば45°の角度をなす方向を観察方向としてよい。
【0018】
次に、測定サンプルに、霧の大きさがなるべく一定で細かくなるような霧吹きを使って、イオン交換水(水温約20℃)の水滴を吹き付ける。吹き付け後5秒以内に、繊維表面の上に載った水滴を、ズームレンズを用いて、観察する繊維の繊維径に応じて50〜1000倍で観察して画像を取り込む。吹き付けと画像取り込みを繰り返して、水滴が鮮明に写っている20点の画像を得る。得られた画像の中から、繊維が水平になっている画像を選ぶ。これは、繊維が傾いていると接触角が変化することによる。選んだ画像の数が10点以上である場合には、それらの画像を用いて接触角を求める。繊維が水平になっている画像の数が10点未満であるときは、さらに20点の画像を得て、それらの中から繊維が水平になっている画像を選ぶことを、繊維が水平になっている画像の合計数が10点以上となるまで繰り返す。
【0019】
接触角は、
図3に示すように、水滴の空気と触れる面と繊維とが接する箇所にて水滴に接線を引き、当該接線と繊維とがなす角度とした。接触角は、画像解析処理ソフト(例えば、スカラ株式会社より入手可能な2次元画像解析ソフト『MicroMeasure』)または分度器等によって測定する。選んだ各画像において接触角を測定し、それらの平均値(算術平均値)を求めて、測定対象となる繊維の接触角とする。
接触角は、不織布を用いて測定せずに、測定面から対象となる構成繊維を取り出して、構成繊維に水滴を吹き付ける方法で測定してもよい。
【0020】
接触角の測定は、以下の点に注意する。
(1)繊維の上に載った水滴の接触角を測定する。繊維の下まで垂れ下がった水滴及び2本以上の繊維にまたがった水滴の接触角を測定しない。
(2)繊維が螺旋状等の細かい捲縮を発生している場合は、捲縮が少ないところか、繊維を伸張させて捲縮状態を無くして測定する。
(3)接触角の測定結果は、上記のとおり、測定する箇所又は測定サンプルを変えて、繊維が水平になっている画像を10点以上選んで測定値を平均して求める。繊維の親水化度が高い場合、接触角を測定するときに繊維の上で水滴が移動し得る(すなわち、水滴の形状が変化し得る)。その場合、その移動の状況を考慮して「接触角」を求める。
接触角の測定箇所が20点になるまでに、測定回数の合計(水滴の撮影を試みた測定箇所の合計、撮影中に水滴が移動した場合と移動しなかった場合の合計)の40%未満で水滴が移動した場合、繊維が水平になっている画像を10点以上選んで測定値を平均して接触角とする。
接触角の測定箇所が20点になるまでに、測定回数の合計の40%以上で水滴が移動した場合、接触角は20°以下とする。
【0021】
撥水性繊維処理剤が含有される合成繊維は、熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン−1、プロピレンを主たる成分とするプロピレン共重合体(プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン-1−エチレン共重合体を含む)、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66のようなポリアミド系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレンおよび環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチック、ならびにそれらのエラストマーから任意に選択される。
【0022】
合成繊維は、上記から選択される一または複数の熱可塑性樹脂から成る単一繊維であってよい。単一繊維を使用すると、複合繊維を使用した場合に見られる、成分間の界面剥離に起因するフィブリル化および微粉が生じにくい。より具体的には、合成繊維は、上記ポリオレフィン系樹脂、上記ポリエステル系樹脂、上記ポリアミド系樹脂、および上記アクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種以上の樹脂からなる単一繊維であってよい。特に、ポリプロピレン単一繊維は、それ自体高い撥水性を有することから好ましく用いられ、また、ポリエチレンテレフタレート単一繊維は、(ポリプロピレンと比べて)ヤング率が高く、不織布を嵩高なものとすることから好ましく用いられる。
【0023】
あるいは、合成繊維は、二以上の成分(「セクション」ともいえる)からなる複合繊維であってよい。一般に、二以上の成分は、互いに異なる融点を有する熱可塑性樹脂から構成される。合成繊維において、各成分は、一つの熱可塑性樹脂からなっていてよく、あるいは二以上の熱可塑性樹脂が混合されたものであってよい。複合繊維は、例えば、芯鞘型複合繊維、海島型複合繊維、分割型複合繊維、またはサイドバイサイド型複合繊維であってよい。芯鞘型複合繊維は、繊維断面において芯成分の中心と鞘成分の中心が一致しない偏心芯鞘型複合繊維であってよく、繊維断面において芯成分の中心と鞘成分の中心が一致する同心芯鞘型複合繊維であってよい。
【0024】
合成繊維が複合繊維である場合には、融点の最も低い熱可塑性樹脂が繊維表面の一部を構成するように、二以上の成分を配置してよい。その場合、不織布を生産する工程において、最も融点が低い熱可塑性樹脂からなる成分(以下、「低融点成分」)が溶融または軟化する条件で熱を加えると、低融点成分が接着成分となり、繊維同士の接着または他の部材への接着に寄与する。複合繊維を構成する熱可塑性樹脂の組み合わせは、例えば、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、およびプロピレン共重合体/ポリエチレンテレフタレート等のポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂との組み合わせ、ならびにポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレン共重合体/ポリプロピレン等の二種類のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂の組み合わせ、および融点の異なる二種類のポリエステル系樹脂の組み合わせである。
【0025】
なお、単一繊維または複合繊維の構成成分として例示した熱可塑性樹脂は、具体的に示された熱可塑性樹脂を50質量%以上含む限りにおいて他の成分を含んでよい。具体的に示された熱可塑性樹脂は80質量%以上含まれていてよく、90質量%以上含まれていてよく、あるいは構成成分は具体的に示された熱可塑性樹脂から実質的に成っていてよい。ここで「実質的に」という用語は、通常、熱可塑性樹脂には各種の添加剤等が含まれていることを考慮して使用している。例えば、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの組み合わせにおいて、「ポリエチレン」はポリエチレンを50質量%以上含んでいれば、他の熱可塑性樹脂および添加剤等を含んでいてよい。このことは以下の例示においてもあてはまる。
【0026】
合成繊維が、最も融点が低い熱可塑性樹脂が鞘部を構成する芯鞘型複合繊維である場合、芯/鞘の組み合わせは、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/プロピレン共重合体、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル(例えば、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート)であってよい。鞘がポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、もしくは直鎖状低密度ポリエチレン)または共重合ポリエステルである芯鞘型複合繊維は、前記鞘を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度で熱処理することで鞘が溶融または軟化して、繊維同士を接着する性質を有する。
【0027】
合成繊維が芯鞘型複合繊維である場合、芯と鞘の複合比(質量比、芯/鞘)は、例えば80/20〜20/80であってよく、特に60/40〜40/60であってよい。
【0028】
撥水性繊維は、それを構成する成分が、繊維同士を接着する成分(すなわち、接着成分)として機能しないものであってよい。より具体的には、撥水性繊維は、それを構成する成分が、例えば熱の作用により溶融または軟化して接着成分として機能しないものであってよい。撥水性繊維を構成する成分が接着成分として機能するかしないかは、撥水性繊維を構成する熱可塑性樹脂の種類、および不織布の製造条件による。撥水性繊維を構成する成分が接着成分として機能しない場合には、不織布における接着点の数を減らすことができ、不織布の触感がより良好なものとなる。すなわち、接着点は、硬い触感およびチクチク感をもたらすため、これが少ないほど、不織布の触感を柔らかいものとし得る。また、撥水性繊維は後述するようにより大きな繊維径を有するため、撥水性繊維を構成する成分が接着成分として機能すると、面積ないし体積の大きい接着点が形成され、それにより不織布の触感が低下することがある。
【0029】
例えば、後述するように、第1繊維の成分を接着成分として機能させる場合であって、該接着成分の融点が、100℃以上140℃以下であるときには、撥水性繊維を構成する成分、特に撥水性繊維の表面を構成する成分の融点は、例えば、145℃以上270℃以下であってよく、特に147℃以上250℃以下であってよく、より特には150℃以上220℃以下であってよい。以下の説明を含む本明細書において、熱可塑性樹脂の融点として具体的に示される値はいずれも、特に断りのない限り、紡糸後の融点である。紡糸後の融点は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製)を使用し、繊維の量(サンプル量)を5.0mgとして、10℃/minの昇温スピードで常温から300℃まで昇温して、繊維を融解させて、得られた融解熱量曲線から求めることができる。
【0030】
撥水性繊維処理剤の含有形態は、特に限定されない。例えば、撥水性繊維処理剤は、合成繊維の表面に付着していてよく、あるいは繊維中に分散させられていてよい。撥水性繊維処理剤は、合成繊維の表面にスプレー等で吹き付けることにより、または任意の方法で合成繊維の表面に塗布することにより、合成繊維の表面に付着させることができる。撥水性繊維処理剤を練り込んだ熱可塑性樹脂を溶融紡糸することによって、撥水性繊維処理剤を繊維中に分散させることができる。
【0031】
撥水性繊維処理剤の種類は特に限定されない。撥水性繊維処理剤は公知のものであってよい。撥水性繊維処理剤は、例えば、平均炭素数が14以上、好ましくは炭素数が16〜22のアルキル基を有するアルキルホスフェートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、またはアミン塩を含む繊維処理剤や、分子量が1000〜10000、酸価5〜50のカルボキシ変性ポリエチレンワックスを含む繊維処理剤、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などの水溶性フッ素系界面活性剤、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物などの油溶性フッ素系界面活性剤、フッ素含有ビニルモノマーを重合した撥水撥油加工剤を含むフッ素含有繊維処理剤、ポリジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、第4級アンモニウム塩変性、高級アルキル変性、フッ素変性などの各種変性シリコーンやシリコーンと親水基を結合させたシリコーン系界面活性剤を含むシリコーン含有繊維処理剤、また、公知の疎水化剤、例えば、炭素数8〜40の炭化水素基を有するアルキルケテンダイマー、置換されたコハク酸無水物や置換されたグルタル酸無水物に例示される置換された環式ジカルボン酸無水物を含む繊維処理剤である。
【0032】
撥水性繊維処理剤の含有量は、繊維質量(繊維処理剤を除く繊維の質量)を100質量%としたときに、0.1質量%以上2.0質量%以下であってよい。撥水性繊維処理剤の含有量は、特に0.15質量%以上1.0質量%以下であってよく、より特には0.2質量%以上0.6質量%以下であってよい。
【0033】
撥水性繊維は、23.5μm以上42μm以下の繊維径を有する。撥水性繊維の繊維径がこの範囲内にあると、第1繊維層に比較的広い繊維間空隙を形成することができる。広い繊維間空隙、特に撥水性繊維と他の繊維で形成される広い空隙、および撥水性繊維間で形成される広い空隙では、液体が保持されにくい。したがって、前記所定範囲の繊維径の撥水性繊維を使用することにより、不織布の液持ち防止性を向上させやすくなる。撥水性繊維の繊維径は、特に26.5μm以上37.6μm以下であってよく、より特には28.0μm以上33.6μm以下であってよい。あるいは、撥水性繊維の繊維径は、30.8μm以上41.3μm以下であってよい。
【0034】
繊維の繊維径は、走査電子顕微鏡(SEM、倍率50〜500倍)を使用して、繊維側面を観察して、任意の100本の繊維について繊維径を測定し、その平均値を算出する方法で求める。繊維が円形の断面を有していない、すなわち異形断面を有する場合には、繊維断面を走査電子顕微鏡(倍率50〜500倍)で観察して、繊維の外周の任意の2点を結んだ直線のうち、長さが最大となるものを繊維径とする。他の繊維の繊維径の求め方もここで説明した繊維径の求め方と同じである。
【0035】
撥水性繊維の繊維長は特に限定されず、不織布の製造方法等に応じて適宜選択してよい。例えば、カードウェブを作製して不織布を製造する場合、撥水性繊維は短繊維であってよい。撥水性繊維が短繊維である場合、その繊維長は例えば20mm以上80mm以下としてよく、特に28mm以上75mm以下としてよく、より特には30mm以上65mm以下としてよい。
【0036】
(第1繊維)
第1繊維は、撥水性繊維よりも低い撥水度合いを有する繊維である。撥水度合いの高低は、例えば接触角によって知ることができる。接触角によって撥水度合いを決定する場合、第1繊維は、その接触角が撥水性繊維の接触角よりも小さいものとなる。第1繊維の接触角は、例えば、30°以上75°以下であってよく、特に35°以上70°以下、より特には40°以上65°以下であってよい。また、第1繊維の接触角は、撥水性繊維のそれよりも、35°以上小さいものであってよく、好ましくは40°以上小さいものであってよく、さらに好ましくは45°以上小さいものであってよい。撥水性繊維と第1繊維の接触角において差が小さいと、二種類の繊維を用いることによる効果(吸液性能のバランス向上)が得られにくくなる。
【0037】
第1繊維は、例えば、親水性繊維処理剤を含有する合成繊維であってよい。第1繊維が合成繊維である場合には、過度な親水性が示されないので、不織布に液体が保持されにくく、液持ち防止性を向上させやすい。合成繊維を構成する熱可塑性樹脂は、先に撥水性繊維に関連して説明したとおりである。また、親水性繊維処理剤を含有させる合成繊維は、単一繊維であっても複合繊維であってもよく、それらの例は先に撥水性繊維に関連して説明したとおりである。
【0038】
第1繊維を構成する合成繊維が複合繊維である場合、複合繊維は、最も融点が低い成分(低融点成分)が繊維表面の少なくとも一部を構成し、低融点成分の融点が、撥水性繊維の少なくとも表面を構成する成分の融点よりも低いものであってよい。そのような複合繊維を用いる場合には、撥水性繊維を構成する成分を接着成分として機能させることなく、第1繊維の低融点成分を、例えば加熱により溶融または軟化させることにより、第1繊維層に含まれる構成繊維同士を接着することができる。第1繊維の低融点成分を接着成分として機能させる場合には、後述するとおりその繊維径が撥水性繊維のそれよりも小さいために、接着点の面積ないし体積を小さくすることができる。したがって、第1繊維の低融点成分が接着成分である場合には、太い撥水性繊維の構成成分が接着成分である場合と比較して、不織布の触感が硬くなりにくく、また、チクチク感を与えにくいので、不織布の触感をより良好なものとすることができる。
【0039】
例えば、第1繊維の低融点成分の融点は、撥水性繊維の少なくとも表面を構成する成分の融点よりも、5℃以上低くてよく、特に7℃以上低くてよく、より特には10℃以上低くてよく、さらにより特には20℃以上低くてよい。融点差が小さいと、低融点成分を例えば加熱により接着成分として機能させる場合に、撥水性繊維の成分も溶融または軟化して接着成分として機能することがある。また、第1繊維の低融点成分の融点は、例えば、100℃以上150℃以下であってよく、特に100℃以上145℃以下であってよく、より特には100℃以上140℃以下であってよい。
【0040】
第1繊維の低融点成分は、例えば、ポリエチレン、より具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、もしくは直鎖状低密度ポリエチレンであってよい。ポリエチレンは融点が比較的低く、比較的低い温度で加熱することにより接着性を示す。したがって、第1繊維の低融点成分をポリエチレンとすれば、撥水性繊維の少なくとも表面を構成する成分をより多くの熱可塑性樹脂から選択することが可能となる。第1繊維において、ポリエチレンと組み合わせる樹脂は、ポリエチレンよりも融点が高い樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリエチレンが繊維表面の少なくとも一部を構成する繊維としては、具体的には、ポリエチレンが鞘成分である芯鞘型複合繊維、ポリエチレンを海部とする海島型複合繊維、ポリエチレンを一成分とする分割型複合繊維、ポリエチレンを一成分とするサイドバイサイド型複合繊維等が挙げられる。
【0041】
低融点成分が繊維表面の一部を構成する複合繊維において、低融点成分と他の成分の複合比(質量比、低融点成分/他の成分)は、80/20〜65/35、特に60/40〜50/50であってよい。低融点成分の割合が小さいと、繊維同士の接着が不十分となることがある。
【0042】
第1繊維が、親水性繊維処理剤を含有する合成繊維である場合、親水性繊維処理剤の含有形態は特に限定されない。親水性繊維処理剤は、合成繊維の表面に付着していてよく、あるいは繊維中に分散させられていてよい。親水性繊維処理剤は、合成繊維の表面にスプレー等で吹き付けることにより、または任意の方法で合成繊維の表面に塗布することにより、合成繊維の表面に付着させることができる。親水性繊維処理剤を練り込んだ熱可塑性樹脂を溶融紡糸することによって、親水性繊維処理剤を繊維中に分散させることができる。
【0043】
親水性繊維処理剤の種類は特に限定されない。親水性繊維処理剤は公知のものであってよい。親水性繊維処理剤として、例えば、界面活性剤を含む繊維処理剤が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性イオン性及びノニオン性の界面活性剤等を用いることができる。
【0044】
アニオン性の界面活性剤としては、アルキルホスフェートナトリウム塩、アルキルエーテルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホネートナトリウム塩、アルキルスルホネートナトリウム塩、アルキルサルフェートナトリウム塩等を挙げることができる。前記アニオン性の界面活性剤において、いずれのアルキルも炭素数が6〜22であることが好ましい。また、これらのアニオン性の界面活性剤において、ナトリウム塩に代えてカリウム塩等の他のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩)を用いることもできる。
【0045】
カチオン性の界面活性剤としては、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライド、アルキル(又はアルケニル)ピリジニウムハライド等を挙げることができる。前記カチオン性の界面活性剤は炭素数が6〜18のアルキル基またはアルケニル基を有するものが好ましい。上記ハライド化合物におけるハロゲンとしては、塩素、臭素等が挙げられる。
【0046】
両性イオン性の界面活性剤としては、アルキルジメチルベタインなどのベタイン型両性イオン性界面活性剤や、アミノ酸型両性界面活性剤、アミノスルホン酸型両性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性の界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、前記多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
【0047】
親水性繊維処理剤の含有量は、繊維質量(繊維処理剤を除く繊維の質量)を100質量%としたときに、0.1質量%以上2.0質量%以下であってよい。親水性繊維処理剤の含有量は、特に0.15質量%以上1.0質量%以下であってよく、より特には0.2質量%以上0.6質量%以下であってよい。
【0048】
あるいは、第1繊維は、その撥水度合いが撥水性繊維のそれよりも低い限りにおいて、コットン、シルク、ウール、麻、およびパルプなどの天然繊維、ならびにビスコース法で得られるレーヨンおよびポリノジック、銅アンモニア法で得られるキュプラ、溶剤紡糸法で得られるセルロース系繊維(レンツィングリヨセル(登録商標)およびテンセル(登録商標)等)、および溶融紡糸法で得られるセルロース繊維、ならびにアセテート繊維等の半合成繊維等の親水性繊維から選択される、1または複数の繊維であってよい。これらの繊維は、撥水度合いが撥水性繊維のそれよりも低い限りにおいて、親水性繊維処理剤を含有してよく、または撥水性繊維処理剤を含有してよい。
【0049】
第1繊維は、撥水性繊維の繊維径よりも小さい繊維径を有する。撥水度合いがより低い繊維を細い繊維として第1繊維層中に存在させることによって、液体を第1繊維層内により強く引き込むことができ、吸液速度を向上させることができる。第1繊維の繊維径は、例えば、9.5μm以上29.6μm以下であってよく、特に11.1μm以上26μm以下であってよく、より特には12.1μm以上23.5μm以下であってよい。
【0050】
第1繊維の繊維長は特に限定されず、不織布の製造方法等に応じて適宜選択してよい。例えば、カードウェブを作製して不織布を製造する場合、第1繊維は短繊維であってよい。第1繊維が短繊維である場合、その繊維長は例えば20mm以上80mm以下としてよく、特に28mm以上75mm以下としてよく、より特には30mm以上65mm以下としてよい。
【0051】
(第2繊維)
第2繊維層に含まれる第2繊維は、撥水性繊維よりも低い撥水度合いを有する繊維である。その意味において、第2繊維は、第1繊維と同じであるといえる。したがって、第2繊維の接触角は、第1繊維のそれと同様、例えば、30°以上75°以下であってよく、特に35°以上70°以下、より特には40°以上65°以下であってよい。また、第2繊維の接触角は、撥水性繊維のそれよりも、35°以上小さいものであってよく、好ましくは40°以上小さいものであってよく、さらに好ましくは45°以上小さいものであってよい。第2繊維層は、その撥水度合いが低いため、これが第2繊維層に含まれると、第1繊維層に引き込まれた液体を第2繊維層に強く引き込むことができ、第1繊維層から速やかに液体を排出させる。撥水性繊維の接触角と第2繊維の接触角との差が小さいと、第2繊維層において液体を引き込むことが困難となる。
【0052】
第2繊維は、例えば、親水性繊維処理剤を含有する合成繊維であってよい。第2繊維が合成繊維である場合には、過度な親水性が示されないので、不織布に液体が保持されにくく、液持ち防止性を向上させやすい。合成繊維を構成する熱可塑性樹脂は、先に撥水性繊維に関連して説明したとおりである。また、親水性繊維処理剤を含有させる合成繊維は、単一繊維であっても複合繊維であってもよく、それらの例は先に撥水性繊維に関連して説明したとおりである。
【0053】
第2繊維を構成する繊維が複合繊維である場合、最も融点が低い成分(低融点成分)が繊維表面の少なくとも一部を構成し、低融点成分の融点が、撥水性繊維の少なくとも表面を構成する成分の融点よりも低いものであってよい。そのような複合繊維を用いて、後述するように、2つの繊維ウェブを積層して不織布を製造する場合には、撥水性繊維を構成する成分を接着成分として機能させることなく、第2繊維の低融点成分を、例えば加熱により溶融または軟化させることができる。それにより、第2繊維の低融点成分を、第2繊維層に含まれる構成繊維同士を接着する接着成分として機能させることができる。先に説明したとおり、第1繊維層において撥水性繊維の構成成分が接着成分として機能しない場合には、面積ないし体積の大きい接着点が形成されず、また、接着点を少なくすることができるので、不織布の触感がより柔らかなものとなる。
【0054】
低融点成分が繊維表面の少なくとも一部を構成し、低融点成分の融点が、撥水性繊維の少なくとも表面を構成する成分の融点よりも低い複合繊維の具体的な構成は、第1繊維に関連して説明したとおりである。したがって、ここではその詳細な説明を省略する。
【0055】
第2繊維が、親水性繊維処理剤を含有する合成繊維である場合、親水性繊維処理剤の含有形態は特に限定されない。親水性繊維処理剤の含有形態の例は、第1繊維に関連して説明したとおりである。したがって、ここではその詳細な説明を省略する。
【0056】
親水性繊維処理剤の種類も特に限定されない。親水性繊維処理剤の例および親水性処理剤の含有量は、第1繊維に関連して説明したとおりである。したがって、ここではその詳細な説明を省略する。
【0057】
あるいは、第2繊維は、その撥水度合いが撥水性繊維のそれよりも低い限りにおいて、合成繊維以外の繊維であってよい。合成繊維以外の繊維の例は、第1繊維に関連して説明したとおりである。したがって、ここではその詳細な説明を省略する。
【0058】
第2繊維の繊維径は特に限定されない。第2繊維の繊維径は、撥水性繊維の繊維径よりも大きくてよく、あるいは小さくてよい。あるいは、第2繊維の繊維径は、撥水性繊維の繊維径と同じであってよい。また、第2繊維の繊維径は、第1繊維の繊維径よりも大きくてよく、あるいは小さくてよい。あるいは、第2繊維の繊維径は、第1繊維の繊維径と同じであってよい。
【0059】
第2繊維の繊維径が撥水性繊維の繊維径よりも小さく、第1繊維の繊維径と同じであるかそれよりも小さい場合には、液戻り防止性がより向上する。また、撥水度合いの小さい第2繊維の繊維径が小さい場合には、第2繊維が形成する細かな空隙が毛管として機能するため、粘度の小さい液体は第2繊維層においてより拡散しやすくなる。第2繊維の繊維径が小さいと、粘度の大きい液体は第2繊維層において拡散しにくくなるが、そのことは経血のような着色した粘性の液体を吸収する物品においてむしろ隠蔽性を向上させる。第2繊維の繊維径は、例えば、9.5μm以上29.6μm以下であってよく、特に11.1μm以上26μm以下であってよく、より特には12.1μm以上23.5μm以下であってよい。本実施形態の不織布が経血のような粘度の大きい液体の吸収性物品に適用される場合、第2繊維の繊維径は21.0μm以下であることが好ましい。第2繊維の繊維径が大きすぎると、繊維間空隙が大きくなって液体が繊維と接触する面積が低下し、液体の粘度が高いことと相俟って、吸収体へ液体が移行しにくくなって不織布に液体が残りやすくなり、隠蔽性が低下する傾向にある。
【0060】
第2繊維の繊維長は特に限定されない。第2繊維は第1繊維と同様、短繊維であってよい。第2繊維が短繊維である場合の具体的な繊維長の例は、第1繊維に関連して説明したとおりである。したがって、ここではその詳細な説明を省略する。
【0061】
(吸収性物品用シート(不織布)の構成)
本実施形態の吸収性物品用シートは、撥水性繊維と第1繊維を含む第1繊維層の一方の主表面に、第2繊維を含む第2繊維層が位置している不織布であり、第2繊維層に含まれる第2繊維の割合(質量%)が、第1繊維層に含まれる撥水性繊維の割合(質量%)よりも大きい不織布である。この不織布の第1繊維層が液体と最初に接するように、この不織布に液体を接触させると、比較的大きな空隙を有し、かつ撥水性繊維とともに撥水度合いの小さい繊維(第1繊維)を含む第1繊維層にまず液体が引き込まれ、次いで第2繊維層が液体を強く引き込む。このとき、液体の粘度が小さい場合には、第2繊維層は液体を拡散させながら引き込み、液体の粘度が大きい場合には、第2繊維層は液体を拡げることなく引き込む。すなわち、この不織布に接した液体には二段階の引き込み力が作用し、該液体は第1繊維層の表面から第1繊維層を通過し、第2繊維層を通過し、さらには第2繊維層の下に位置する別の部材へと移動させられることとなる。
以下、第1繊維層および第2繊維層について、まず説明する。
【0062】
[第1繊維層]
第1繊維層は、撥水性繊維と第1繊維を含む。第1繊維層に占める撥水性繊維の割合は、例えば、5質量%以上50質量%以下であってよく、特に10質量%以上50質量%以下であってよく、より特には20質量%以上45質量%以下であってよい。撥水性繊維の割合が小さすぎると、撥水性繊維を含むことによる効果(特に、液持ち防止性)が得られないことがあり、大きすぎると第1繊維層全体が液体をはじいて、液体を不織布の厚さ方向に沿って通過させることが困難となることがある。
【0063】
第1繊維層に占める第1繊維の割合は、例えば、50質量%以上95質量%以下であってよく、特に50質量%以上90質量%以下であってよく、より特には55質量%以上80質量%以下であってよい。第1繊維の割合が小さすぎると、第1繊維を含むことによる効果(特に液体を引き込んで、吸液速度を向上させる効果)が得られないことがあり、大きすぎると撥水性繊維の割合が小さくなって、撥水性繊維を含むことによる効果を得られないことがある。
【0064】
第1繊維層は、撥水性繊維を2種類以上含んでいてよい。例えば、第1繊維層は、撥水度合い及び/または繊維径が異なる2種類以上の撥水性繊維を含んでいてよい。2種類以上の撥水性繊維の撥水度合い(例えば、接触角)が異なる場合には、第1繊維は、撥水度合いのより低い撥水性繊維よりも低い撥水度合いを有するように選択される。繊維径が異なる2種類以上の撥水性繊維を用いる場合、各撥水性繊維が、その繊維径が上記所定の範囲内にあるように選択される。また、第1繊維層は、撥水度合い及び/または繊維径が異なる2種類以上の第1繊維を含んでいてよい。第1繊維層は、繊維の種類および/または混合割合が互いに異なる二以上の層から成っていてもよい。
【0065】
第1繊維層は、撥水性繊維および第1繊維以外の他の繊維を含んでよい。他の繊維は、例えば、撥水性繊維と撥水度合いが同じであるが、繊維径が上記所定の範囲内にない繊維、および撥水性繊維の撥水度合いよりも低い撥水度合いを有する繊維であって、繊維径が撥水性繊維よりも大きい繊維である。他の繊維が含まれる場合、他の繊維が第1繊維層に占める割合は、例えば30質量%以下であってよく、特に20質量%以下であってよく、より特には10質量%以下であってよい。
【0066】
[第2繊維層]
第2繊維層は、第2繊維を含む。第2繊維は、第1繊維層における撥水性繊維の割合(質量%)よりも大きい割合(%)で、第2繊維層に含まれる。それにより、第2繊維層が液体を引き込みやすく、また、液体の粘度が小さい場合には第2繊維層において液体を拡散させやすくなる。第2繊維の割合は、例えば、50質量%以上であってよく、特に80質量%以上であってよく、より特には95質量%以上であってよい。あるいは、第2繊維層は、第2繊維のみからなっていてよい。第2繊維層は、撥水度合い及び/または繊維径が異なる第2繊維を2種類以上含んでよい。第2繊維層は、撥水度合いおよび/または繊維径が異なる繊維をそれぞれ含む、二以上の層から成っていてもよい。
【0067】
第2繊維は、第1繊維と同一の繊維または同じ熱可塑性樹脂の組み合わせからなる繊維であってよい。例えば、不織布において、繊維同士を第1繊維により接着するとともに、第2繊維によっても接着する場合に、第1繊維と第2繊維が同じ繊維または同じ熱可塑性樹脂の組み合わせからなる繊維であれば、接着成分が共通のものとなる。接着成分が二つの繊維層において共通していると、接着の度合いを第1繊維層と第2繊維層とで同じとすることができ、より均質な不織布を得ることができる。
【0068】
第2繊維層が第2繊維以外の他の繊維を含む場合、当該他の繊維は第1繊維層に関連して説明した撥水性繊維であってよい。第2繊維層に撥水性繊維が含まれる場合、撥水性繊維の割合は、例えば15質量%以下であってよく、特に10質量%以下であってよく、より特には5質量%以下であってよい。第2繊維層に撥水性繊維が含まれる場合、その撥水性繊維は、第1繊維層に含まれるものと同じであってよく、あるいは異なるものであってよい。また、第2繊維層に含まれる他の繊維は、第2繊維よりも撥水度合いが大きく、その繊維径が第1繊維層に含まれる撥水性繊維の繊維径よりも小さい、または大きいものであってもよい。
【0069】
[不織布の積層形態]
本実施形態の不織布は、第1繊維層の一方の主表面に第2繊維層が位置するように積層された積層不織布である。本実施形態の不織布は、第1繊維層と第2繊維層とのみからなる二層構造であってよい。あるいは、本実施形態の不織布は、第1繊維層の一方の主表面に第2繊維層を積層し、さらに第2繊維層の主表面に他の1以上の繊維層を積層した三以上の層を有する積層不織布であってよい。他の繊維層は、例えば、第1繊維のみからなる繊維層であってよく、あるいは第2繊維のみからなる繊維層であってよく、あるいはまた第1および第2繊維層に含まれる第1および第2繊維とは異なる、撥水性繊維の撥水度合いよりも低い撥水度合いを有する繊維を含む繊維層であってよい。
【0070】
[不織布における繊維同士の一体化]
続いて、本実施形態の不織布における、繊維同士の一体化の態様を説明する。
繊維同士の一体化の態様は特に限定されない。繊維同士は、高圧流体流を用いた交絡処理法またはニードルパンチ法により交絡されて一体化していてよく、あるいは繊維同士が接着されることにより一体化していてよい。繊維同士の接着は、不織布を構成する少なくとも1種類の繊維の少なくとも一成分を接着成分として機能させることにより実現してよく、あるいはバインダー(接着剤)を適用することにより実現してよい。
【0071】
例えば、繊維同士は、第1繊維を構成する成分および第2繊維を構成する成分によって接着されていてよい。その場合、接着は、第1繊維を構成する成分および第2繊維を構成する成分を加熱により溶融または軟化させることにより実施できる。あるいは、第1繊維を構成する成分および第2繊維を構成する成分による接着は、電子線等の照射、または超音波溶着により実施してよい。第1繊維および第2繊維を用いて、繊維同士を接着させることにより、比較的簡易な方法で繊維同士を一体化させることができる。
【0072】
本実施形態においては、第1繊維として、二以上の成分を含み、最も融点が低い成分(低融点成分)が繊維表面の一部を構成する繊維を使用して、第1繊維層を構成する繊維同士を低融点成分により接着することが好ましい。同様に、第2繊維として、二以上の成分を含み、最も融点が低い成分(低融点成分)が繊維表面の一部を構成する繊維を使用して、第2繊維層を構成する繊維同士を低融点成分により接着することが好ましい。接着は、例えば、低融点成分を加熱により溶融または軟化させることにより実施できる。
【0073】
加熱により第1および第2繊維の低融点成分を接着成分として機能させる場合、第1および第2繊維の低融点成分の融点が撥水性繊維の少なくとも表面を構成する成分の融点よりも低ければ、撥水性繊維が、繊維同士を接着する成分として機能しない。すなわち、撥水性繊維は、加熱により溶融または軟化することなく、繊維形態を保ったまま第1繊維層中に存在することとなる。撥水性繊維が溶融または軟化しておらず、接着成分として機能しない場合には、不織布における接着点の数を少なくすることができ、また、面積ないし体積の大きな接着点が形成されないので、不織布の触感を良好にすることができる。
【0074】
第1繊維層と第2繊維層は全体において一体化していてよく、あるいは部分的に接合されて一体化していてよい。第1繊維層と第2繊維層を全体的に一体化することは、後述するとおり、第1繊維層となる第1繊維ウェブと第2繊維層となる第2繊維ウェブとを重ね合わせて積層繊維ウェブを作製し、この積層繊維ウェブを交絡処理(例えば、高圧流体流による交絡処理)または接着処理(例えば、熱接着処理)に付すことにより実現できる。第1繊維層と第2繊維層の部分的な接合は、例えば、接着剤、縫製、交絡、または熱圧着等により実現できる。あるいは、第1繊維層と第2繊維層は、本実施形態の不織布が第1繊維層の一方の主表面に第2繊維層が位置した形態で提供される限りにおいて、接合されておらず、単に重ね合わされていてよい。
【0075】
[目付等]
本実施形態の不織布の目付は特に限定されず、その用途等に応じて適宜選択される。本実施形態の不織布の目付は、例えば、10g/m
2以上80g/m
2であってよく、特に12g/m
2〜70g/m
2であってよく、より特には18g/m
2〜60g/m
2であってよい。不織布の目付が小さすぎると、不織布の破れ、ヨレ、または破損などが起こりやすくなることがあり、大きすぎると、液持ち防止性が低下する(より多くの液体を保持する)ことがあり、あるいは通気性が低下することがある。
【0076】
第1繊維層および第2繊維層の目付は、不織布全体の目付が所望のものとなるように、適宜選択される。例えば、不織布が、1つの第1繊維層と1つの第2繊維層とからなる二層構造である場合、2つの繊維層の目付は、第1繊維層:第2繊維層の割合が、80:20〜20:80となるようにしてよく、特に70:30〜30:70となるようにしてよい。第1繊維層の目付の割合が小さすぎると、第1繊維層が液体を引き込む力が低下することがあり、あるいは第2繊維層がより多くの液体を保持して液戻り防止性が低下することがある。また、第2繊維層の目付の割合が小さすぎると、第2繊維層が第1繊維層からの液を引き込む力が低下することがある。
【0077】
本実施形態の不織布が二層構造の不織布からなる場合、具体的には、第1繊維層の目付は、例えば、10g/m
2〜40g/m
2であってよく、特に15g/m
2〜35g/m
2、より特には20g/m
2〜30g/m
2であってよく、第2繊維層の目付は、例えば、10g/m
2〜40g/m
2であってよく、特に15g/m
2〜35g/m
2であってよく、より特には20g/m
2〜30g/m
2であってよい。
【0078】
本実施形態の不織布の比容積は特に限定されず、その用途等に応じて適宜選択される。本実施形態の不織布の比容積は、例えば、8cm
3/g〜80cm
3/gであってよく、特に10cm
3/g〜75cm
3/gであってよく、より特には20cm
3/g〜65cm
3/gであってよい。比容積は、不織布の目付と厚さから求めることができ、ここで、不織布の厚さは試料1cm
2あたり2.94cNの荷重を加えた状態で測定されるものとする。不織布の比容積が大きいほど、不織布の通気性およびクッション性が向上する傾向にあるが、大きすぎると、液持ち防止性が低下し、液戻り防止性が低下することがある。
【0079】
(不織布の製造方法)
本実施形態の不織布は、例えば、
撥水性繊維と第1繊維を混合して、第1繊維ウェブを作製すること、
第2繊維を含む第2繊維ウェブを作製すること、
第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとを重ね合わせて積層繊維ウェブを作製すること、
積層繊維ウェブを、繊維同士を一体化させる処理に付すこと
を含む製造方法によって製造することができる。
【0080】
第1繊維ウェブおよび第2繊維ウェブは、公知の方法で作製することができる。各繊維ウェブの形態は、例えば、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブであってよい。第1繊維ウェブと第2繊維ウェブの形態は互いに異なっていてよい。
【0081】
第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとは重ね合わされて、積層繊維ウェブとなる。積層繊維ウェブは繊維同士を一体化させる処理に付される。繊維同士を一体化させる処理は、例えば、高圧流体を用いた交絡処理、またはニードルパンチ処理のように、繊維同士を交絡により一体化させる処理であってよく、あるいは、熱接着処理または接着剤処理等の接着処理であってよい。
【0082】
上記のとおり、本実施形態の不織布は、第1繊維を構成する成分および第2繊維を構成する成分によって接着されているものであってよい。そのような不織布を得るためには、積層繊維ウェブは、好ましくは熱処理に付される。熱処理によれば、第1繊維を構成する成分(例えば、複合繊維の低融点成分)および第2繊維を構成する成分(例えば、複合繊維の低融点成分)が熱処理の際、加熱によって溶融または軟化して、積層繊維ウェブを構成する繊維同士を接着することができる。熱処理は、例えば、熱風を吹き付ける熱風加工処理、熱ロール加工(熱エンボスロール加工)、または赤外線を使用した熱処理である。熱風加工処理は、所定の温度の熱風を積層繊維ウェブに吹き付ける装置、例えば、熱風貫通式熱処理機、または熱風吹き付け式熱処理機を用いて実施してよい。本実施形態の不織布は、嵩高性が求められる場合には、熱風加工処理を実施して製造することが好ましい。熱風加工処理によれば、比容積の減少を比較的抑制できる。
【0083】
熱処理温度(例えば、熱風の温度)は、第1繊維を構成する成分および第2繊維を構成する成分であって、接着成分として機能させるもののうち、最も融点が高い成分が軟化または溶融する温度としてよい。例えば、熱処理温度は、当該成分の融点以上の温度としてよい。また、熱処理温度は、撥水性繊維の少なくとも表面を構成する成分が溶融または軟化しない温度とすることが好ましい。これは、撥水性繊維の少なくとも表面を構成する成分を接着成分として機能させないためである。例えば、第1繊維および第2繊維がともにポリエチレンを成分として含み、ポリエチレンを接着成分とする場合には、熱処理温度を130℃〜150℃としてよい。
【0084】
[用途]
本実施形態の吸収性物品用シートは、吸収性物品を構成する部材として使用することができる。例えば、本実施形態の吸収性物品用シートは、吸収性物品の表面シート(トップシートとも称される)、中間シート、吸収コアを被覆するシート(SAPシート、コアラップシートとも称される)、バックシート等を構成する部材として用いることができる。本実施形態の吸収性物品用シートは、表面シートから吸収された尿や経血等の排泄体液を、速やかに吸収体に移行させて、吸収体からの液戻りを防止できるという点で、中間シートに用いることが好ましい。吸収性物品には、例えば、使い捨ておむつ(乳幼児用、介護用を含む)、生理用ナプキン、産褥パッド、および失禁パッド等が包含されるが、吸収性物品はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の吸収性物品用シートは、人体から排泄される体液の吸収に用いられる任意の物品に使用できる。
【0085】
本実施形態の吸収性物品用シートが、特に、表面シートまたは中間シートとして用いられる場合には、吸収性物品用シートは、その第1繊維層が使用者の肌に近い側に配置されるように用いられることが好ましい。表面シートまたは中間シートは、速やかに排泄体液(液体)を吸収体へ移行させる必要がある。そのような必要を満たすためには、撥水性繊維を含み、液持ち防止性の向上に寄与する第1繊維層を肌側に配置することが好ましい。
【0086】
(吸収性物品)
本開示の別の実施形態として、吸収性物品を説明する。本実施形態の吸収性物品は、表面シートと、バックシートと、表面シートとバックシートとの間に配置される吸収体と、表面シートと前記吸収体との間に配置される中間シートとを有する吸収性物品であって、中間シートが先に説明した実施形態の吸収性物品用シートである、吸収性物品である。
【0087】
表面シートは液透過性を有する不織布または開孔フィルムであって、排泄体液を捕捉して、捕捉した排泄体液を速やかに吸収体側へ移動させる役割を有する。本実施形態において、先の実施形態の吸収性物品用シートを中間シートとして使用する場合には、表面シートは、中間シートに含まれる撥水性繊維の繊維径よりも小さい繊維径の繊維(便宜的に「小径繊維」と呼ぶ)を含む不織布であってよい。そのような表面シートと組み合わされることにより、表面シートと中間シートとの組み合わせは繊維径の勾配を有するものとなり、表面シートから中間シートへ液を移行させやすくすることができる。
【0088】
小径繊維は、例えば撥水性繊維の繊維径よりも、5.0μm以上小さい繊維径、特に7.0μm以上小さい繊維径、より特には10.0μm以上小さい繊維径を有していてよい。小径繊維と撥水性繊維の繊維径の差は、例えば20.0μm以下であってよく、特に17.0μm以下であってよく、より特には15.0μm以下であってよい。小径繊維として、繊維径の異なるものが二以上含まれていてよい。
【0089】
表面シートは、小径繊維に加えて、中間シートに含まれる第1繊維の繊維径よりも小さい繊維径を有する繊維(便宜的に「細径繊維」と呼ぶ)をさらに含んでよい。表面シートが細径繊維をさらに含む場合には、表面シートから中間シートへ液を移行させやすくすることができ、また、表面シートの触感を良好にすることができる。細径繊維は、例えば第1繊維の繊維径よりも、0.5μm以上小さい繊維径、特に2.0μm以上小さい繊維径、より特には4.0μm以上小さい繊維径を有していてよい。細径繊維と第1繊維の繊維径の差は、例えば12.0μm以下であってよく、特に9.0μm以下であってよく、より特には6.0μm以下であってよい。細径繊維として、繊維径の異なるものが二以上含まれていてよい。
【0090】
小径繊維は、表面シートを構成する不織布に、例えば10質量%以上、特に20質量%以上、より特には30質量%以上含まれていてよい。小径繊維は、表面シートを構成する不織布に、例えば100質量%以下、特に90質量%以下、より特には80質量%以下、さらにより特には70質量%以下含まれていてよい。細径繊維は、表面シートを構成する不織布に、例えば10質量%以上、特に20質量%以上、より特には30質量%以上含まれていてよい。細径繊維は、表面シートを構成する不織布に、例えば90質量%以下、特に80質量%以下、より特には70質量%以下含まれていてよい。表面シートを構成する不織布には、小径繊維よりも大きい繊維径を有する繊維が含まれていてよく、その割合は、例えば20質量%以下としてよい。
【0091】
表面シートが繊維径の異なる二種類以上の小径繊維を含む、または小径繊維と細径繊維とを含む場合、それらの混合割合は特に限定されない。例えば、繊維径が大きいほど、その含有量がより大きくなるように、各繊維の割合を選択してよい。あるいはすべての繊維を同じ割合で混合してよい。例えば、表面シートが小径繊維と細径繊維とを含む場合、その混合割合は、中間シートへの液の良好な移行性と表面シートの良好な触感の両方を確保する観点から、質量比(小径繊維:細径繊維)で、例えば20:80〜80:20であってよく、特に30:70〜70:30であってよい。
【0092】
小径繊維および細径繊維は、撥水性繊維よりも低い撥水度合いを有するものであってよい。そのような繊維の例は、中間シートに含まれる第1繊維に関連して説明したとおりである。
【0093】
表面シートに含まれる繊維が親水性繊維処理剤を含有する合成繊維である場合、耐水性が異なる親水性繊維処理剤を含有する繊維が混合されていてよい。耐水性が異なる親水性繊維処理剤を含有する繊維が混合されることで、表面シートにおける液持ちまたは液戻りを低減しつつ、繰り返しの吸液時の吸液速度の低下を抑制することができる
【0094】
表面シートが繊維径の異なる繊維を二以上含み、これらの繊維が親水性繊維処理剤を含有する合成繊維である場合、繊維径のより大きい繊維に含まれる親水性繊維処理剤は、繊維径のより小さい繊維に含まれるそれよりも、より高い耐水性を示すものであってよい。繊維径のより小さい繊維は、比表面積のより大きい繊維であるため、繊維径のより大きい繊維と比較して、より多くの繊維処理剤を含有する傾向にある。したがって、繊維径のより小さい繊維の混合量の変動により、これが含有する繊維処理剤の含有量の変動が大きくなる。また、耐水性のより低い親水性繊維処理剤は脱落しやすいものであるから、二つの繊維の間で親水性繊維処理剤の耐水性にこのような差を設けると、繊維径のより小さい繊維から親水性繊維処理剤が優先的に脱落する。したがって、二つの繊維の間で親水性繊維処理剤の耐水性にこのような差を設けると、表面シートを液体が通過している間の親水性繊維処理剤の脱落量を調整して、通液後の表面シートの撥水性をより高くすることも可能である。これにより、表面シートにおける液持ちまたは液戻りをより低減させることができる。
【0095】
中間シートは、前記のとおり、表面シートから吸収された排泄体液を、速やかに吸収体に移行させて、吸収体に排泄体液が吸収されるようにするために、表面シートと吸収体との間に設けられる。排泄体液が粘度の低いもの(例えば、尿)である場合、中間シートは排泄体液を拡散させながら吸収体に移行させることが好ましい。特に排泄体液が尿である場合には、1回あたりの排泄量が多いため、これを中間シートで拡散させることにより吸収体のゲルブロックを防止できる。排泄体液が経血のように着色した粘度の高いものである場合、吸収性物品の隠蔽性を高めるために、中間シートは排泄体液を拡げずに吸収体を移行させることが好ましい。本実施形態において、中間シートは、先に説明した実施形態の吸収性物品用シートである。バックシートは、液不透過性材料からなるシートであってよい。バックシートは通気性を有していてよく、あるいは有していなくてよい。
【0096】
吸収体は、例えば、高分子吸収体(SAPとも称される。一般に粉状物である)、粉砕パルプ、繊維集合物、およびフィルムから選択される1または複数の部材で構成される吸収コアが、不織布およびフィルムから選択されるコアラップシートにより被覆されたものであってよい。あるいは、吸収体は、コアラップシートにより被覆されず、吸収コアのみから成るものであってよい。
【0097】
前記のとおり、吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、産褥パッド、および失禁パッド等が包含されるが、本実施形態の吸収性物品はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0098】
以下、本実施形態を実施例により説明する。
本実施例で用いる繊維として、以下のものを用意した。
撥水性繊維1:繊維径31.2μm、繊維長51mmの、ポリプロピレン(融点158℃)からなる単一繊維であって、繊維表面に撥水性繊維処理剤として、C16アルキルリン酸エステルカリウム塩を有する繊維処理剤が繊維質量に対して0.4質量%付着している繊維。接触角は112.3°であった。
撥水性繊維2:繊維径15.7μm、繊維長38mmの、ポリプロピレン(融点159℃)からなる単一繊維であって、繊維表面に撥水性繊維処理剤として、C16アルキルリン酸エステルカリウム塩を有する繊維処理剤が繊維質量に対して0.4質量%付着している繊維。接触角は116.3°であった。
【0099】
撥水性繊維3:繊維径30.8μm、繊維長64mmの、芯成分が結晶性ポリプロピレン(融点160℃)、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点132℃)であり、繊維断面において芯成分と鞘成分が同心に配置された芯鞘型複合繊維(複合比(芯/鞘、質量比)60/40)であって、繊維表面に撥水性繊維処理剤として、C16アルキルリン酸エステルカリウム塩を有する繊維処理剤が繊維質量に対して0.4質量%付着している繊維(ダイワボウポリテック(株)製、商品名NBF(H))。接触角は109.6°であった。
撥水性繊維4:繊維径12.1μm、繊維長38mmの溶剤紡糸セルロース繊維であって、繊維表面に撥水性繊維処理剤が付着している繊維(レンツィング社製、商品名テンセル(登録商標)バイオソフト)。
【0100】
撥水性繊維5:繊維径30.8μm、繊維長64mmの、ポリプロピレン(融点160℃)からなる単一繊維であって、C16アルキルリン酸エステルカリウム塩を有する繊維処理剤が繊維質量に対して0.4質量%付着している繊維。接触角は113.2°であった。
【0101】
繊維1:繊維径19.4μm、繊維長51mmの、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点260℃)、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点132℃)であり、繊維断面において芯成分と鞘成分が同心に配置された芯鞘型複合繊維(複合比(芯/鞘、質量比)60/40)であって、繊維表面に親水性繊維処理剤として、C12アルキルリン酸エステルカリウム塩を含む、耐水親水性繊維処理剤が繊維質量に対して0.35質量%付着している繊維(ダイワボウポリテック(株)製、商品名NBF(SH))。接触角は53.3°であった。
繊維2:繊維径21.6μm、繊維長51mmの、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点260℃)、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点132℃)であり、繊維断面において芯成分と鞘成分が同心に配置された芯鞘型複合繊維(複合比(芯/鞘、質量比)60/40)であって、繊維表面に親水性繊維処理剤として、C12アルキルリン酸エステルカリウム塩を含む、耐水親水性繊維処理剤が繊維質量に対して0.34質量%付着している繊維(ダイワボウポリテック(株)製、商品名NBF(SH))。接触角は52.9°であった。
【0102】
繊維3:繊維径15.6μm、繊維長45mmの、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点260℃)、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点132℃)であり、繊維断面において芯成分と鞘成分が同心に配置された芯鞘型複合繊維(複合比(芯/鞘、質量比)60/40)であって、繊維表面に親水性繊維処理剤として、C12アルキルリン酸エステルカリウム塩を含む、非耐水親水性繊維処理剤が繊維質量に対して0.35質量%付着している繊維(ダイワボウポリテック(株)製、商品名NBF(SH))。接触角は60.2°であった。
繊維4:繊維径19.4μm、繊維長51mmの、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点260℃)、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点132℃)であり、繊維断面において芯成分と鞘成分が同心に配置された芯鞘型複合繊維(複合比(芯/鞘、質量比)60/40)であって、繊維表面に親水性繊維処理剤として、C12アルキルリン酸エステルカリウム塩を含む、非耐水親水性繊維処理剤が繊維質量に対して0.35質量%付着している繊維(ダイワボウポリテック(株)製、商品名NBF(SH))。接触角は60.5°であった。
【0103】
なお、各繊維の繊維径は、走査電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、商品名“S−3500N”、倍率50〜500倍)を使用して、繊維側面を観察して、任意の100本の繊維について繊維径を測定し、その平均値を算出する方法で求めた。
【0104】
(実施例1〜8、比較例2〜4)
表1〜3に示す繊維を、撥水性繊維、第1繊維、第2繊維、および他の繊維として用いて、パラレルカード機を用いて、第1繊維層となる第1繊維ウェブおよび第2繊維層となる第2繊維ウェブを作製した。繊維ウェブの狙い目付はそれぞれ表1および2に示すとおりであった。得られた第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとを重ね合わせて積層繊維ウェブを作製し、この積層繊維ウェブを、温度135℃に設定した熱風貫通式熱処理機にて、12秒間熱処理し、第1繊維ウェブおよび第2繊維ウェブそれぞれに含まれる繊維1および/または繊維2のポリエチレン樹脂成分により繊維同士を接着させて、第1繊維層と第2繊維層とからなる不織布を得た。なお、実際に製造される不織布の目付は、必ずしも狙い目付けどおりとはならず誤差を有するため、幾つかの実施例および比較例については、表1〜3において、実際に得られた不織布の目付(実測目付)も記載している。
【0105】
(比較例1)
繊維1のみを用いて、パラレルカード機を用いて繊維ウェブを作製した。繊維ウェブの狙い目付は50g/m
2であった。得られた繊維ウェブを温度135℃に設定した熱風貫通式熱処理機にて、12秒間熱処理し、繊維1のポリエチレン樹脂成分により繊維同士を接着させて、単層構造の不織布を得た。表2においては、便宜的に第2繊維層の欄に、比較例1で使用した繊維の種類、割合および目付を示している。
【0106】
実施例1〜8、比較例1〜4で得た不織布について、厚さ、比容積、不織布の縦方向(機械方向、MD方向とも称される)の引張強度および10%伸長時応力を測定し、吸液性能および触感を評価した。それらの結果を表1および2に示す。なお、これらの測定および評価は以下の方法に従って実施した。
【0107】
(厚さ、比容積)
厚さは、厚み測定機(商品名 THICKNESS GAUGE モデル CR−60A (株)大栄科学精器製作所製)を用い、試料1cm
2あたり2.94cNの荷重を加えた状態で測定した。比容積は、目付と厚さから計算して求めた。
【0108】
(引張強度、10%伸長時応力)
JIS L 1096 6.12.1 A法(ストリップ法)に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で引張試験に付し、10%伸長させたときの伸長応力、および破断時の強度を測定した。引張試験は、不織布の縦方向を引張方向として実施した。
【0109】
(吸液性能:第1評価法)
<表面シートの作製>
尿のような粘度の小さい液体を吸収するための吸収性物品(例:使い捨ておむつ等)において、中間シートとして用いる場合の吸液性能を評価するために、表面シートの下に試料を配置した状態で吸液性能を評価した。吸液性能を評価するのに用いる表面シートを、以下の手順で作製した。
以下の2種類の繊維を用意した。
繊維A:繊維径15μm、繊維長45mmの、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点260℃)、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点132℃)であり、繊維断面において芯成分と鞘成分が同心に配置された芯鞘型複合繊維(複合比(芯/鞘、質量比)60/40)であって、繊維表面に、C12アルキルリン酸エステルカリウム塩を含む耐水親水性繊維処理剤が繊維質量に対して0.40質量%付着している繊維(ダイワボウポリテック(株)製、商品名NBF(SH))。
繊維B:繊維径19.2μm、繊維長51mmの、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点260℃)、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点132℃)であり、繊維断面において芯成分と鞘成分が同心に配置された芯鞘型複合繊維(複合比(芯/鞘、質量比)60/40)であって、繊維表面に、C12アルキルリン酸エステルカリウム塩を含む耐水親水性繊維処理剤が繊維質量に対して0.40質量%付着している繊維(ダイワボウポリテック(株)製、商品名NBF(SH))。
【0110】
繊維Aを用い、パラレルカード機を使用して、約8g/m
2の目付を有する繊維ウェブAを作製した。繊維Bを用い、パラレルカード機を使用して、約12g/m
2の目付を有する繊維ウェブBを作製した。繊維ウェブAと繊維ウェブBとを重ね合わせて積層繊維ウェブを作製し、この積層繊維ウェブを135℃に設定した熱風貫通式熱処理機にて、12秒間熱処理して、目付18.2g/m
2であり、厚さ1.32mmの不織布を得た。この不織布を表面シートとして用いた。
【0111】
<吸液速度、液戻り防止性の評価>
(1)吸液時間、液戻り量を測定するために、下記の物品を用意した。
吸収体:MEZGERinc.製の商品名ListerPaper(Grade989、10cm×10cm)を3枚重ねたものを吸収体として使用した。
生理食塩水:塩化ナトリウムの濃度が0.9wt%となるように調製した塩化ナトリウム水溶液を生理食塩水として使用した。粘度は、0.7mPa・sであった。
ろ紙:東洋濾紙株式会社製、商品名ADVANTEC(登録商標)No.2、10cm×10cm
重り:5kg
プレート:アクリル樹脂製、125mm×125mm、厚み5mm
測定機器:LenzingInstruments社製の商品名Lister(以下、単にLister試験器とも称す。)
【0112】
(2)方法
吸液時間、液戻り量を下記の手順に従って測定した。
(i)前記吸収体の上に、上記表面シートと、10cm×10cm(縦方向×横方向)に切断した不織布(実施例または比較例の不織布)を載せ、この状態で前記測定機器にセットした。不織布は第2繊維層が吸収体と接するように配置した。
(ii)セットした不織布に対し生理食塩水5mlをLister試験器を用いて滴下した。この時、生理食塩水が不織布表面から見えなくなる(生理食塩水が、不織布から、不織布の下に位置する吸収体に移行し、不織布表面に液体として生理食塩水が確認されなくなる)までの時間(吸液時間)をLister試験器にて測定した。吸液時間が短いほど、吸液速度が高いといえる。
(iii)吸液時間を測定した後、Lister試験器のストライクスループレートを外し、ろ紙を3枚置き、その上に重りを20秒間載せた。
(iv)2分後にろ紙を取り出し、生理食塩水を吸収したろ紙の質量を測定し、不織布の上に載せる前のろ紙の質量を差し引き、液戻り量を算出した。液戻り量が小さいほど、液戻り防止性が高いといえる。
【0113】
<液持ち防止性>
(1)不織布(実施例または比較例の不織布)を10cm×10cm(縦方向×横方向)に切断し、容器(30cm×25cm×8cm)に入れられた生理食塩水中に15分間完全に浸漬させた。
(2)不織布を取り出し、5分間空中で風乾させた。
(3)風乾後の不織布の質量と浸漬前の不織布質量から、不織布の液保持量を算出した。
(4)液保持量を目付で割り、目付あたりの液保持量を算出し、これの大小で液持ち防止性を評価した。目付あたりの液保持量が小さいほど、液持ち防止性が高いといえる。
【0114】
(吸液性能:第2評価法)
実際に販売されているおむつを用いて吸液性能を評価した。
(1)おむつ(花王(株)製、商品名メリーズ)の表面シート、および表面シートの下に位置する2枚のシートを剥がして吸収体を露出させ、吸収体の上に240mm×72mm(縦方向×横方向)に切断した不織布(実施例または比較例の不織布)を設置した。不織布は第2繊維層が吸収体と接するように配置した。その上に表面シートとして、第1評価方法で用いたものと同じ表面シートを設置し、実施例または比較例の不織布が中間シートとして機能するようにした。表面シートの上に通液用ガラス器具(高さ75mm、内径25mm、肉厚5mmの円筒状のもの)を置き、通液用ガラス器具内に50mlのイオン交換水を注入した。不織布表面から液が見えなくなるまでに要した時間(吸液時間)を測定した。吸液時間が短いほど、吸液速度は高いといえる。
【0115】
(2)吸液時間を測定した後、ろ紙(東洋濾紙株式会社製、商品名ADVANTEC(登録商標)No.2、10cm×10cm)を30枚置き、ろ紙の上に質量5kgの重りを載せた。重りを載せてから20秒後にろ紙を取り出して、生理食塩水を吸収したろ紙の質量を測定し、不織布の上に載せる前のろ紙の質量を差し引き、液戻り量を算出した。液戻り量が小さいほど、液戻り防止性が高いといえる。
【0116】
(3)(1)にて吸液時間を測定してから30分経過後に上記(1)および(2)をさらに2回繰り返し、2回目および3回目の吸液時間および液戻り量を求めた。2回目と3回目の吸液時間の測定間隔も30分間とした。
【0117】
(触感)
不織布の触感を評価するために、官能評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
+++:柔らかくチクチクしない。
++:柔らかいがチクチクする。
+:硬くてチクチクする。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
表1〜3に示すように、第1評価法で評価した吸液性能を見ると、実施例1〜6はいずれも、比較例1と比較して、吸液速度においてほとんど差がないものの、液戻り量が少なく、より良好な液戻り防止性を示している。また、実施例1〜6はいずれも、比較例1と比較して、目付あたりの液保持量が小さく、より良好な液持ち防止性を示している。実施例7および8は、比較例1と比較して、液戻り量が少なく、より良好な液戻り防止性を示した。これらの結果は、実施例1〜8が、撥水性繊維と第1繊維を含む第1繊維層を有することによると推察される。
【0122】
実施例1〜5の結果より、第1繊維層中の撥水性繊維の割合が大きいほど、液戻り量が小さくなる傾向にあること、および目付あたりの液保持量がより小さくなり、より良好な液持ち防止性を示すことがわかった。ただし、第1繊維層中の撥水性繊維の割合が大きいほど、引張強度および10%伸長時応力が低下する傾向にある。これは、繊維同士を接着させる役割をする第1繊維の割合がその分だけ小さくなって、接着点の数が減少したことによると推察される。
【0123】
第2評価法で評価した吸液性能を見ると、実施例2および4はそれぞれ、比較例2および3と比較して、吸液速度がより高く、また、液戻り量がより少なく、より良好な液戻り防止性を示している。実施例2と比較例2の組み合わせ、および実施例4と比較例3の組み合わせにおいては、使用した撥水性繊維の繊維径が異なるだけであり、その他の構成は同じである。このことは、撥水性繊維の繊維径が吸液性能に影響を及ぼし、より大きい繊維径の撥水性繊維の使用が吸液性能の向上に寄与することを示している。撥水性繊維の繊維径が小さい場合に液戻り量が大きくなるのは、細い撥水性繊維により形成された細かな繊維間空隙に液体が保持され、保持された液体が加圧により表面に滲出したためであると推察される。また、実施例2および3の結果より、第1繊維層中の撥水性繊維の割合が大きいほど、液戻り量が小さくなる傾向にあることがわかった。
【0124】
実施例6においては、第1繊維の繊維径が、他の実施例で使用した第1繊維の繊維径よりも大きい。しかしながら、その液戻り量は他の実施例と同様、比較例1と比較して小さく、実施例6も良好な液戻り防止性を示している。
【0125】
実施例7においては、芯/鞘の組み合わせが結晶性ポリプロピレン/高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を撥水性繊維として用いているために、当該撥水性繊維の鞘成分も接着成分として機能した。そのため、撥水性繊維および第1繊維の割合が同じである実施例4と比較して、実施例7においては接着点がより多い。このことは、不織布表面を電子顕微鏡で観察することにより確認される。実施例4および実施例7の不織布表面の電子顕微鏡写真(60倍)をそれぞれ
図1および
図2に示す。接着点の数の差は触感に現れ、実施例7は実施例4と比較して、触感において劣っている。
【0126】
比較例4は、撥水性繊維として、撥水性繊維処理剤が付着した溶剤紡糸セルロース繊維を使用したものである。比較例4は、第1評価法で評価した液戻り量が各実施例と比較して大きかった。これは、比較例4で使用したセルロース繊維は、撥水性繊維処理剤が付着していなければ本来的に親水性を示すものであることによると推察される。
【0127】
(実施例9〜14)
表4および5に示す繊維を、撥水性繊維、第1繊維、および第2繊維として用いて、パラレルカード機を用いて、第1繊維層となる第1繊維ウェブおよび第2繊維層となる第2繊維ウェブを作製した。繊維ウェブの狙い目付はそれぞれ表4および5に示すとおりであった。得られた第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとを重ね合わせて積層繊維ウェブを作製し、この積層繊維ウェブを、温度135℃に設定した熱風貫通式熱処理機にて、12秒間熱処理し、第1繊維ウェブおよび第2繊維ウェブそれぞれに含まれる繊維3または繊維4のポリエチレン樹脂成分により繊維同士を接着させて、第1繊維層と第2繊維層とからなる不織布を得た。なお、実際に製造される不織布の目付は、必ずしも狙い目付けどおりとはならず誤差を有するため、表4および5には、各実施例および各比較例で実際に得られた不織布の目付(実測目付)も記載している。
【0128】
(比較例5〜8)
繊維3および繊維4のみをそれぞれ用いて、パラレルカード機を用いて繊維ウェブを作製した。繊維ウェブの狙い目付は30g/m
2であった。得られた繊維ウェブを温度135℃に設定した熱風貫通式熱処理機にて、12秒間熱処理し、繊維3および繊維4のポリエチレン樹脂成分により繊維同士を接着させて、単層構造の不織布を得た。表5においては、便宜的に第2繊維層の欄に、比較例5〜8で使用した繊維の種類、割合および目付を示している。
【0129】
実施例9〜14、比較例5〜8で得た不織布について、厚さおよび比容積を測定し、吸液性能を評価した。それらの結果を表4および5に示す。なお、厚さおよび比容積は、実施例1〜8および比較例1〜4に関連して説明した方法で評価した。吸液性能は以下の方法に従って評価した。
【0130】
(吸液性能:第3評価法)
経血のような粘度の大きい液体を吸収するための吸収性物品(例:生理用ナプキン等)において、中間シートとして用いる場合の吸液性能を評価するために、表面シートの下に試料を配置した状態で吸液性能を評価した。吸液性能を評価するのに用いる、2種類の表面シートを、以下の手順で作製した。
【0131】
[表面シートA]
以下の2種類の繊維を用意した。
繊維α:繊維径16.0μm、繊維長45mmの、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点260℃)、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点132℃)であり、繊維断面において芯成分と鞘成分が同心に配置された芯鞘型複合繊維(複合比(芯/鞘、質量比)60/40)であって、繊維表面に、C12アルキルリン酸エステルカリウム塩を含む非耐水親水性繊維処理剤が繊維質量に対して0.40質量%付着している繊維(ダイワボウポリテック(株)製、商品名NBF(SH))。
繊維β:繊維径19.1μm、繊維長38mmの、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点260℃)、鞘成分が直鎖状低密度ポリエチレン(融点120℃)と低密度ポリエチレン(融点106℃)(質量比(直鎖状低密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)が85/15)の混合物であり、繊維断面において芯成分と鞘成分が偏心に配置された偏心率25%の偏心芯鞘型複合繊維(複合比(芯/鞘、容積比)50/50)であって、繊維表面に、C12アルキルリン酸エステルカリウム塩を含む耐水親水性繊維処理剤が繊維質量に対して0.40質量%付着している繊維(ダイワボウポリテック(株)製、商品名NBF(SL)V)。
【0132】
繊維αを60質量%と、繊維βを40質量%とを混綿し、パラレルカード機を使用して、狙い目付25g/m
2でパラレルカードウェブを製造した。
このパラレルカードウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて132℃で約15秒間熱処理して繊維α及び繊維βの鞘成分を熱融着させて、不織布を得た。
この不織布に、1m
2あたり2400kgの荷重を10日間かけて厚み加工を行い、評価用表面シートAを得た。表面シートAの目付は23.0g/m
2であり、厚さは0.53mmであった。
【0133】
[表面シートB]
以下の繊維γを用意した。
繊維γ:繊維径14.8μm、繊維長38mmの、芯成分がポリプロピレン(融点160℃)、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点132℃)であり、繊維断面において芯成分と鞘成分が同心に配置された芯鞘型複合繊維(複合比(芯/鞘、質量比)60/40)であって、繊維表面に、C12アルキルリン酸エステルカリウム塩を含む非耐水親水性繊維処理剤が繊維質量に対して0.40質量%付着している繊維(ダイワボウポリテック(株)製、商品名NBF(H))。
【0134】
繊維γを40質量%と、表面シートAの製造で用いた繊維βを60質量%とを混綿したこと以外は、評価用表面シートAの作製手順と同じ手順で、評価用表面シートBを得た。表面シートBの目付は22.3g/m
2であり、厚さは0.53mmであった。
【0135】
(吸液性能:第3評価法)
実際に販売されている生理用ナプキンを用いて吸液性能を評価した。
(1)生理用ナプキン(キンバリー・クラーク製、商品名「超大吸」)の表面シート、および表面シートの下に位置する2枚のシートを剥がして吸収体を露出させ、吸収体の上に240mm×72mm(縦方向×横方向)に切断した不織布(実施例または比較例の不織布)を設置した。不織布は第2繊維層が吸収体と接するように配置した。その上に表面シートとして、実施例9〜11、比較例5〜6については評価用表面シートAを、実施例12〜14、比較例7〜8については評価用表面シートBを設置し、実施例の不織布が中間シートとして機能するようにした。表面シートの上に注入筒付きプレート(高さ75mm、筒上部の内径25mm、筒下部の内径10mmの二段円筒状のもの)を置き、注入筒付きプレートの注入筒内に6.0ccの人工経血(粘度8mPa・s、温度37℃)を注入した。不織布表面から液が見えなくなるまでに要した時間(吸液時間)を測定した。吸液時間が短いほど、吸液速度は高いといえる。なお、人工経血の組成は、グリセリン12.30質量%、イオン交換水85.18質量%、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)0.45質量%、NaCl(塩化ナトリウム)0.97質量%、Na
2CO
3(炭酸ナトリウム)1.04質量%、青粉0.06質量%とした。
【0136】
(2)上記吸液時間の測定の際に、人工経血の注入から5分後に、実施例の不織布の縦方向における人工経血を吸収した長さを計測し、拡散長とした。拡散長の値が小さいほど、生理用ナプキンにおいて経血の色が目立たず、隠蔽性が高いといえる。
【0137】
(3)上記吸液時間の測定の際、人工経血の注入から10分後に、実施例の不織布の上にろ紙(東洋濾紙株式会社製、商品名ADVANTEC(登録商標)No.2、10cm×10cm)を10枚置き、ろ紙の上に質量1kg(形状:正方形、10cm×10cm)の重りを載せた。重りを載せてから20秒後にろ紙を取り出して、人工経血を吸収したろ紙の質量を測定し、不織布の上に載せる前のろ紙の質量を差し引き、液戻り量を算出した。液戻り量が小さいほど、液戻り防止性が高く、また、液持ち防止性も高いといえる。
【0138】
(4)上記液戻り量の測定の直前に評価用表面シートAまたはシートBの表面を観察し、下記の基準によりマスキング性(隠蔽性)を評価した。
トップシートから吸収性物品を観察したときの「経血の広がり」および「経血の濃さ」について、以下の点数をつける。
「経血の広がり」
2点:拡散長が4.0cm未満である
1点:拡散長が4.0cm以上6.0cm未満である
0点:拡散長が6.0cm以上である
「経血の濃さ」
2点:全体的に色が薄い
1点:中央の色が濃く、周囲の色が薄い
0点:全体的に色が濃い
【0139】
実施例1つあたり2点のサンプルについて観察を行い、経血の面積及び経血の濃さの点数を合計し、合計点(最高点8点、最低点0点)に応じて、マスキング性を以下のとおり評価した。Aと評価されたもののマスキング性が最も高く、Cと評価されたもののマスキング性が最も低い。
A:8〜7点
B:6〜5点
C:4〜0点
【0140】
【表4】
【0141】
【表5】
【0142】
表4および5に示すように、実施例9と比較例5、実施例10〜11と比較例6、実施例12と比較例7、実施例13〜14と比較例8との比較において、実施例はいずれも、液戻り量が少なく、より良好な液戻り防止性を示している。また、実施例はいずれも、比較例よりも優れたマスキング性を示した。これは、実施例の不織布は、繊度の大きい撥水性繊維と、それよりも低い撥水度合いの繊維を含む第1繊維層を有しているために、液体が不織布の表面付近にとどまりにくかったことによると考えられる。
【0143】
実施例9および10は、実施例11よりも小さい拡散長を示し、実施例12および13は、実施例14よりも小さい拡散長を示した。実施例9、10、12および13は撥水性繊維の含有量が比較的小さいために、第2繊維層へ液が強く引き込まれ、その結果、第1繊維層での液の広がりが抑制されたと考えられる。実施例11と比較例6、実施例14と比較例8とを比較すると実施例11と実施例14とがそれぞれより小さい拡散長を示しており、これは、第1繊維層が撥水性繊維を含むことにより、より高い液持ち防止性を発揮したことによると考えられる。
【0144】
本実施形態の不織布は以下の態様のものを含む。
(態様1)
第1繊維層と、前記第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層とを含む不織布であって、
前記第1繊維層が、撥水性繊維処理剤を含有する合成繊維(以下、「撥水性繊維」)、および前記撥水性繊維よりも低い撥水度合いを有する繊維(以下、「第1繊維」)を含み、
前記第2繊維層が、前記撥水性繊維よりも低い撥水度合いを有する繊維(以下、「第2繊維」)を含み、
前記撥水性繊維の繊維径が23.5μm以上42μm以下であり、
前記第1繊維の繊維径が前記撥水性繊維の繊維径よりも小さく、
前記第2繊維層に含まれる前記第2繊維の割合(質量%)が、前記第1繊維層に含まれる前記撥水性繊維の割合(質量%)よりも大きい、
吸収性物品用シート。
(態様2)
前記第2繊維の繊維径が前記撥水性繊維の繊維径よりも小さい、態様1の吸収性物品用シート。
(態様3)
前記第1繊維層は、前記撥水性繊維を5質量%以上50質量%以下の割合で含む、態様1または2の吸収性物品用シート。
(態様4)
前記第1繊維は、親水性繊維処理剤を含有する合成繊維である、態様1〜3のいずれかの吸収性物品用シート。
(態様5)
構成繊維同士が、第1繊維を構成する成分および第2繊維を構成する成分によって接着されている、態様1〜4のいずれかの吸収性物品用シート。
(態様6)
前記第1繊維は、二以上の成分を含む複合繊維であり、最も融点が低い成分(以下、「低融点成分」)が繊維表面の少なくとも一部を構成し、前記低融点成分の融点が、前記撥水性繊維の少なくとも表面を構成する成分の融点よりも低く、前記低融点成分によって構成繊維同士が接着されている、態様5の吸収性物品用シート。
(態様7)
前記撥水性繊維を構成する成分が、繊維同士を接着する成分として機能していない、態様1〜6のいずれかの吸収性物品用シート。
(態様8)
前記撥水性繊維は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる一種以上の樹脂から成る単一繊維である、態様1〜7のいずれかの吸収性物品用シート。
(態様9)
前記第2繊維層は、前記第2繊維を50質量%以上含む、態様1〜8のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
(態様10)
前記第1繊維と前記第2繊維とが同一の繊維である、態様1〜9のいずれかの吸収性物品用シート。
(態様11)
前記第1繊維層が、使用者の肌に近い側に配置される、態様1〜10のいずれかの吸収性物品用シート。
(態様12)
表面シートと、バックシートと、表面シートとバックシートとの間に配置される吸収体とを有する吸収性物品の、前記表面シートと前記吸収体との間に配置される中間シートである、態様1〜11のいずれかの吸収性物品用シート。
(態様13)
表面シートと、バックシートと、前記表面シートと前記バックシートとの間に配置される吸収体と、前記表面シートと前記吸収体との間に配置される中間シートとを有する吸収性物品であって、前記中間シートが態様1〜11のいずれかの吸収性物品用シートである、吸収性物品。
(態様14)
吸収性物品が、使い捨ておむつである、態様13に記載の吸収性物品。
(態様15)
吸収性物品が、生理用ナプキンである、態様13に記載の吸収性物品。
吸液速度、液戻り防止性、および液持ち防止性のバランスがより良好である吸収性物品用シートを提供する。第1繊維層と、前記第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層とを含む不織布であって、第1繊維層が、撥水性繊維処理剤を含有する合成繊維(以下、「撥水性繊維」)、および撥水性繊維よりも低い撥水度合いを有する繊維(以下、「第1繊維」)を含み、第2繊維層が、撥水性繊維よりも低い撥水度合いを有する繊維(以下、「第2繊維」)を含み、撥水性繊維の繊維径が23.5μm以上42μm以下であり、第1繊維の繊維径が撥水性繊維の繊維径よりも小さく、第2繊維層に含まれる第2繊維の割合(質量%)が、第1繊維層に含まれる前記撥水性繊維の割合(質量%)よりも大きい、吸収性物品用シート。