特許第6366895号(P6366895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366895
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】反転型の移植片固定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/08 20060101AFI20180723BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A61F2/08
   A61B17/56
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-18220(P2013-18220)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2013-158649(P2013-158649A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2016年2月1日
(31)【優先権主張番号】13/364,435
(32)【優先日】2012年2月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507083478
【氏名又は名称】デピュイ・ミテック・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ビー・スペンシナー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・チャン
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−535077(JP,A)
【文献】 米国特許第05306301(US,A)
【文献】 特開平10−127672(JP,A)
【文献】 特表2009−530061(JP,A)
【文献】 特表2004−528121(JP,A)
【文献】 特表2001−510364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/08
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植片保持装置であって、
上面、下面、第1の端部、および第2の端部を有する細長い胴体であって、前記細長い胴体は、前記上面と前記下面との間を前記細長い胴体を貫通して延在する一対の細長いスロットを含み、前記一対の細長いスロットの間に中子を画定する、細長い胴体と、
前記第1の端部に隣接する第1の位置から前記細長い胴体の中間点付近にある第2の位置まで前記細長い胴体に沿って移動できるように、前記細長い胴体に摺動可能に添着されている移植片保持ループであって、前記移植片保持ループが前記スロットを貫通し前記中子に巻着している、移植片保持ループと、を具備し、
前記移植片保持ループは、前記細長い胴体から下向きに垂下し、前記中子によって形成された摺動面に沿って前記第1の位置から前記第2の位置まで摺動可能であり、
前記一対の細長いスロットは、前記第1の端部の付近から前記第2の位置まで延在し、
前記摺動面は、前記細長い胴体の前記上面に対して前記第2の位置で前記第1の位置におけるより下方にあり、これにより前記ループが前記第2の位置の方へと移動するのを促す、移植片保持装置。
【請求項2】
前記細長い胴体の第2の端部に着脱自在に添着されている前端糸を更に含む、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項3】
前記細長い胴体の第1の端部に着脱自在に添着されている後端糸を更に含む、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項4】
前記中子が上側表面を有し、前記上側表面は前記第2の位置に近づくにつれて前記細長い胴体の前記上面から離れる方向に下方へ傾斜する、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項5】
前記細長い胴体及び前記ループが無菌であり、移植可能な生体適合性材料から形成される、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項6】
前記細長い胴体の長さの中央25%の範囲内に前記第2の位置がある、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項7】
前記ループが前記第2の位置から移動するのを防ぐための保持器を、前記細長い胴体に更に具備する、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項8】
前記保持器が1つ又は2つ以上の針毛突起を含む、請求項7に記載の移植片保持装置。
【請求項9】
3.5mm以下の反転距離を有する、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項10】
2mm以下の反転距離を有する、請求項9に記載の移植片保持装置。
【請求項11】
前記胴体の第1の端部と第2の端部との間における前記胴体の最大長さの1/3以下の反転距離を有する、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項12】
前記胴体の前記最大長さの1/4以下の反転距離を有する、請求項11に記載の移植片保持装置。
【請求項13】
前記保持器が前記中間点にて前記スロット同士の間にある前記中子の狭窄部を含む、請求項7に記載の移植片保持装置。
【請求項14】
前記保持器が前記中子の前記上側表面に陥凹を含み、前記陥凹が前記中子との移行部によって少なくとも部分的に画定されている、請求項に記載の移植片保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、移植片の固定に関し、より詳しくは、反転型固定装置を利用した移植片組織の固定に関する。
【背景技術】
【0002】
反転型固定装置(例えば、本明細書に参照により援用されている米国特許第5,306,301号、及び米国特許第5,645,588号で開示されたもの)では、前十字型靭帯(ACL)再建などの、単純な組織固定手順を利用できる。そのような装置は細長い棒材を具備し、その棒材からは中央縫合糸ループが懸吊している。大腿骨内に、膝蓋面位置から又は膝蓋面付近から大腿骨部分まで通って上位位置にて大腿骨の側面から抜け出すトンネルを作成する。細長い棒材に添着されたループに、移植片を巻きつける。棒材をトンネルに一方向に貫通させて上まで上げることができる。トンネルの上位端を出た後に、棒材をトンネルの中へ退却しないように約90度反転させて大腿骨に載置し、そこからループ及び移植片を懸吊させてトンネルの中に垂下させる。移植片に引っ張り力がかかると、棒材が骨表面に当接して所定位置にて定着する。
【0003】
ただし、反転を開始するには、棒材をトンネルの外側に完全に抜け出させる必要がある。次いで、その棒材を骨に当接すると、縫合糸ループはトンネルの外に引っ張り出された量だけ(棒材の長さの約50%)退却させてトンネルの中に垂下させる。これにより、トンネルの中での移植片と骨との接触が減る。また、ループの長さが長いほどトンネル内での移植片の動きが増えがちになり、結果として移植片が骨に癒着する修復プロセスが遅延する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、単純かつ洗練された設計で、従来技術のこれらの制限及び他の制限を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による方法は、移植片靭帯を骨トンネルに固定することを目的に提供されたものである。本方法は、a)固定バックルから垂下するループ上に移植片靭帯を掛着して移植片構造物を形成する工程であって、バックルが長手方向軸に沿った最大横寸法の少なくとも2倍の長さを有し、トンネルが骨から抜け出す出口を備え、そのバックルの長さが出口の最大幅を超える長さでもある、工程と、b)移植片構造物を骨トンネルにくぐらせて引っ張り上げる工程であって、ループをバックルの長さの中間点よりも下方に位置する第1の位置でバックルから垂下させた状態でバックルをトンネルに縦方向に貫通させる、工程と、c)バックルがトンネルの中へ退却しないように、バックルを出口を通してトンネルから引っ張り、その長手方向軸がトンネルに対して十分にずれるように回転させる工程と、d)第1の位置からバックルの中間点付近にある第2の位置までループをバックルに沿って移動させる工程と、e)出口で骨にバックルを係合させ、ループをバックルの第2の位置からトンネル内に垂下させる工程と、を含む。
【0006】
好ましくは、ループがバックル上の少なくとも1つの細長いスロットを通して受容され、少なくとも1つの細長いスロットに沿って摺動して第1の位置から第2の位置まで移動する。好ましくは、少なくとも1つのスロットがバックルの中間点付近に端部を有し、ループが第2の位置に移動したときにスロットの端部と係合する。
【0007】
好ましくは、ループがバックルの表面に沿って第1の位置と第2の位置との間を摺動し、その表面がバックルの中間点に近づくにつれて下方へ傾斜する。
【0008】
工程e)の後にループが第1の長さだけトンネル内に垂下し、工程c)の間にループが第1の長さより短い第2の長さだけトンネル内に垂下することが好ましい。工程c)の実行中に第2の長さが第1の長さよりも最大3.5mmまで短い長さである。
【0009】
本発明の一態様では、移植片靭帯がACLの代替であり、骨トンネルが脛骨を通って形成される。
【0010】
本発明による移植片保持装置は、第1の端部と第2の端部とを有し、それら両端部の間に中間点を有する、細長い胴体を含む。移植片保持ループは、細長い胴体に沿って第1の端部に隣接する第1の位置から中間点付近にある第2の位置まで移動できるように、細長い胴体に摺動可能に添着されている。細長い胴体上のストッパーは、ループが第2の位置を通り越して第2の端部の方へ摺動するのを防ぐ。
【0011】
本発明の一態様では、細長い胴体の第2の端部にて前端糸が着脱自在に添着されている。更に、細長い胴体の第1の端部に後端糸を着脱自在に取り付けてもよい。
【0012】
好ましくは、細長い胴体は、第1の端部に隣接したところから中間点付近まで延在してそれらの間に中子を画定する一対の細長いスロットを含み、ループがこのスロットを貫通して中子に巻着している。本発明の一態様では、細長い棒材が上側表面を有し、中子が上側表面を有し、中子が中間点に近づくにつれて、中子の上側表面がバックルの上側表面から離れる方向に下方へ傾斜する。
【0013】
好ましくは、細長い胴体及びループが無菌であり、移植可能な生体適合性材料から形成される。
【0014】
細長い棒材の第1の端部と第2の端部との間に、棒材の長さの中央25%の範囲内に第2の位置があることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様では、ループが第2の位置から移動するのを防ぐための保持器を、細長い胴体上に更に具備する。保持器は、1つ又は2つ以上の針毛突起を含んでもよい。
【0016】
本発明による移植片保持装置は、第1の端部と第2の端部とを有する、細長い胴体を具備する。移植片保持ループは、第1の端部に隣接する第1の位置から中間点付近にある第2の位置まで細長い胴体に沿って移動できるように、細長い胴体に摺動可能に添着されている。細長い胴体からループが第1の位置から第2の位置まで摺動面に沿って下向きに垂下する。第2の位置にて摺動面が第1の位置よりも下側にあり、これによりループが第2の位置の方へと移動するのを促す。
【0017】
本発明の一態様では、細長い胴体の第2の端部にて前端糸が着脱自在に添着されている。細長い胴体の第1の端部に後端糸を着脱自在に取り付けてもよい。
【0018】
好ましくは、細長い胴体及びループが無菌であり、移植可能な生体適合性材料から形成される。
【0019】
好ましくは、細長い胴体が、第1の端部に隣接したところから中間点付近まで延在してそれらの間に中子を画定する一対の細長いスロットを含み、ループがこのスロットを貫通して、摺動面を形成する中子に巻着している。
【0020】
本発明の一態様では、ループが第2の位置から移動するのを防ぐための保持器を、細長い胴体上に更に具備する。保持器は、1つ又は2つ以上の針毛突起を含んでもよい。保持器は、中間点にてスロット同士の間にある中子の狭窄部を含み得る。保持器は中子の上側表面に陥凹を含み、陥凹が中子との移行部によって少なくとも部分的に画定されており、この移行部は、陥凹からループが摺動するのを抑制する。
【0021】
好ましくは3.5mm以下、より好ましくは2mm以下の反転距離を有する。移植片保持装置は、好ましくは胴体の第1の端部と第2の端部との間における胴体の最大長さの1/3以下の反転距離を有し、より好ましくは最大長さの1/4以下の反転距離を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による固定装置バックルの斜視図。
図2図1のバックルを使用した本発明による固定装置の側立面図。
図3図2の固定装置を使用した膝におけるACL修復の断面の側立面図。
図4A図2の固定装置を使用したACL修復手順の断面の側立面図。
図4B図2の固定装置を使用したACL修復手順の断面の側立面図。
図4C図2の固定装置を使用したACL修復手順の断面の側立面図。
図4D図2の固定装置を使用したACL修復手順の断面の側立面図。
図5】中間点に位置決めされているループを示した、本発明によるバックルの代替実施形態の上面斜視図。
図6】ループが添着されていない状態を示した、図5のバックルの下側面斜視図。
図7】中間点にてループを捉える陥凹を含む、本発明によるバックルの代替実施形態の側立面図。
図8A】中間点へ向かって幅が狭くなるスロットを含む、本発明によるバックルの代替実施形態の上面図。
図8B】中間点へ向かってスロット同士の距離が狭まっていく、本発明によるバックルの代替実施形態の上面図。
図8C】中間点にて互いに向けて内側方向へ曲がるスロットを含む、本発明によるバックルの代替実施形態の上面図。
図8D】単一のスロットを含む、本発明によるバックルの代替実施形態の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による移植片固定装置10の例示的な実施形態は、図1及び図2に示すとおりである。本移植片固定装置は、細長い棒材であるバックル12を具備し、移植片を受容するループ14をこのバックルから垂下させている。バックル12は、第1の端部16、第2の端部18、並びに上面20及び下面22を備える。(本明細書中では、先に定義したバックル12の表面に関して、「上側」及び「下側」、並びに「上方」などの関連する用語が使用されている。下側表面22は、バックル12が使用されているときに骨(図1及び図2には図示せず)に面する表面である。)バックル12の第1の端部及び第2の端部(それぞれ16及び18)にて第1の穴及び第2の穴(24及び26)は、上側表面20から下側表面22まで貫通している。第1の穴24は後端糸28を受容し、第2の穴26は前端糸30を受容する。後端糸28及び前端糸30は、ORTHOCORD #2縫合糸(供給元:Ethicon,Inc.(Somerville,NJ))から製造されていることが好ましい。固定装置10が配置されている間、前端糸30は後端糸28よりも大きい応力を呈し得ることは、配置手順に記載されているとおり明らになるであろう。第1の穴24よりも第2の穴26の方がわずかに大きく見える(ただし、両方の穴は同じサイズにすることもできる)。前端糸30は強度が大きい(例えば、後端糸28に比べて直径が大きい)縫合糸であり得る。こうした差異を付ければ、前端糸30と後端糸28とを見分けやすくすることができる。また、例えば、色又は視覚パターンの差異など他の特定の様式で見分けがつきやすいようにすることもできる。
【0024】
一対の長手方向スロット32は、バックル12の上側表面20から下側表面22まで貫通し、第1の穴24に隣接する第1の端部34からバックル12の中間点38にある第2の端部36まで延在している。スロット32の間には保持中子(retention tang)40が画定されている。移植時に、保持中子の上側表面42がスロット32の第1の端部34から第2の端部36まで下方へ傾斜し、ループ14が中間点38に向かって動く。ループ14は、スロット32の中を縫うようにして通り、保持中子の上側表面42に沿って摺動する。図2に図示されているように、保持中子40の垂直寸法は、第1の端部34から第2の端部36まで一定であることが強度及び剛性を増強するうえで好ましい。したがって、保持中子40は、中間点38にてバックルの下側表面22よりもわずかに下向きに垂下している。中子40は、上側表面20の下方へ13.6度だけ傾斜して図示されているが、0度〜約45度の間であればいずれの場所に位置していてもよい。中子はまた、中間点38の方へ次第に急勾配になるといったように傾斜度が可変であってもよく、これにより、移植後にループが中間点38に停留しやすくなる。
【0025】
ACL修復用に好ましいバックル12は長さ約12mm、幅4mm、厚さ1.5〜2.5mmであり、中子40が懸垂する中間点38が最も厚い部分である。中子40は厚さが約1.5mmである。バックル12は、6Al−4Vチタン合金などの生体適合材料で形成されていることが好ましい。ループ14は、好ましくは、例えばDYNEEMA及びポリエステルなどの超高分子量ポリエチレンで製織されている。ループ14の材料は、好ましくは約2mm径、好適には#2−0から最大約4mmの範囲であり、ループ14の長さは約8mm〜60mmであることが好ましい。ループ14は、結び目のない連続的なループを形成するようにバックル12上に製織できる。そのような構造を達成するための方法の1つは、本明細書に参照によって援用される米国特許第6,352,603号(Bryantに付与)に例示されている。
【0026】
図3に示すように、移植片構造物44は、患者の脚48の所定位置に配置された固定装置10のループ14に巻きつけられている組織移植片46を含む。脚の大腿骨52内のトンネル50は、移植片46を収容するように寸法を定められた大径下位部分、つまりソケット54と、バックル12を長手の向きに受けるように寸法を定められた小径上位部分、つまり通過チャネル56と、を備える。バックル12は横向きに大腿骨52に位置決めされ、ループ14は通過チャネル56を通って、移植片46が載置されているソケット54の中に垂下している。移植片46の反対側の端部が脛骨60内の脛骨トンネル58の中に配置され、DePuy Mitek Inc.(Raynham,MA)から入手可能なINTRAFIX(登録商標)アンカーなどのアンカー62で定位置に保持される。
【0027】
図4A図4Dは、バックル12をトンネル50にくぐらせて上に上げるまでの過程を示す。手順の開始時に、移植片組織46をループ14に縫うようにして通す。バックル12の長手方向軸60をトンネル50の長手方向軸62と同軸方向に配向させ、スロット32の第1の端部34からループ14を垂下させる(図4A)。前端糸30にかかる引っ張り力によって、バックル12の第2の端部18が上方へ引っ張られてトンネル50から抜け出し、その後で、第1の端部16がトンネルから抜け出る(図4B)。ループ14及び通過チャネル56は好ましくは、移植片構造物44を引っ張り上げていくとソケット54の端部に移植片組織46が当接するような寸法である。バックル12の第1の端部16がトンネル50の端部から離れると、バックル12が回転できるよう正しく位置づけられたという触覚フィードバックが外科医に与えられる。
【0028】
回転は約90度であり、後端糸28に引っ張り力を印加することによって発生し得る(図4C)。最終的な配向は、トンネル50が大腿骨52を貫通する角度によって決まる。バックル12が回転したときに、移植片組織46によって対向する引っ張り力が生じると、ループ14が保持中子40に沿って摺動し、垂下したままの状態で、バックル12の中間点38からトンネル50に入る傾向がある。これは、外科医が後端糸28を介して感じ取れる明瞭なスナップモーションと共に発生し、移動が正しく発生したという触覚フィードバックが与えられる。続いて、後端糸28及び前端糸30を取り除くと、移植片組織46からの引っ張り力によって、バックル12の下側表面22が引っ張られ、大腿骨52にしっかりと当接する(図4D)。トンネル50、及びバックル12の中間点38から垂下するループ14に対してバックル12を横に配向すると、バックルがトンネル50の中へ退却するのを防げる。このようにして、移植片組織46を固着できる。
【0029】
中子の上側表面42を傾斜させると、ループ14を押圧し中間点38へ向かって移動する助けになる。また、大腿骨52上でトンネル50に対して角度を付けることによっても、ループ14がバックル12を横切るように引っ張られてから、スロットの第2の端部36及びバックル12にて位置決めされる傾向がある。端部36を中間点38に位置づけると、ループ14が中間点38に位置した状態を維持する助けになる。ループ14の最終的な位置決めという観点では、「中間点」という用語は、広く解釈できる。バックル12の厳密に中央に位置決めすると、その各側部に等量のバックルが占め、バックル12が骨に沿って滑動してその端部がトンネル50の中へ退却してしまう可能性が最小限に抑えられる。実際的には、ループ14は他の位置に位置決めすることもできるが、しっかり定着させることで、バックル12がトンネル50の中へ退却するのを防げる。ループ14は、好ましくはバックル12の長さの中央50%、より好ましくは中央25%以内の任意の場所に位置決めされる。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
移植片46とソケット54の端部との間にある間隙は、本発明により縮小し得る。この利点を評価するために、類似するサイズのバックル同士を比較した。バックルAは‘301特許に記載されている製品に類似する市販の製品であった。バックルBは本明細書中の図1に図示されているバックル12である。それぞれ長さ12.2mm、幅4.0mm、厚さ1.4mmで、バックルBは下側表面より下向きに中子の底部が垂下しているため中間点における厚さが2.5mmである。バックルには、互いに類似する太さ及び構造のループが縫うようにして通される。試験の実施に使用したループは15〜30mm長さのものである。バックルからループの最も遠く内側部分までに対して、ループのキャリパー測定(caliper measurement)を実施した。対象となった構成は次の2つである。1)ループをバックルに対して直交にかつ下向きに延伸した構成。最終的な固定位置を表す。2)ループをバックルの後端部から延伸してバックルと平行にした構成。バックルを反転する直前にトンネルに通して引っ張り上げるときの位置を表す。これらの測定の差異は反転距離を表す(バックルAの場合は6.6mm、バックルBの場合は3.2mm)。後続の試験では、図5及び図6とほぼ同じバックルデザインを使用して、反転距離を2mmに縮小した。
【0031】
反転距離は、移植片46とソケット54の端部との間の間隙を表す。理想的には、この間隙はゼロで、移植片46がソケット54の端部まで延在する。バックルBでは実質的に反転距離が縮小されている。
【0032】
図5及び図6は、本発明による別の固定バックル60を示す。このバックル60は、バックル12に類似の形状及び機能を含むが、外側フレーム62及びインサート64を含む二部分からなる構造を更に具備する。フレーム62は、第1の端部66に第1のフランジ65を有し、第2の端部70に第2のフランジ68を有する。インサート64はフレーム62内に嵌入しており、フランジ65及び68と嵌合するラベット71を有する。インサート64は第1の端部74に第1の穴72を含み、第2の端部78に第2の穴76を含み、加えて保持中子80を具備する。フレーム62の側壁82は、保持中子80に隣接しており、ループ83(図6中では図示せず)を収容できるように、わずかに薄くてよい。
【0033】
2部分からなる構造によって組み立てが容易である。図1の固定装置10を好適に形成するには、保持中子40の周囲にループ14を製織することによってループ14を形成する。これにより、製織プロセスが複雑になる可能性がある。バックル60では、ループ83を別個に製織してから保持中子80上に通し、その後でフレーム62内にインサート64を嵌入してもよい。インサート64は、摩擦嵌合、干渉嵌合、溶接、又は他の適切な手段によってフレーム62に保持できる。フランジ65及び68、並びにインサート62の間の相互作用によって、保持中子80に下方へ印加された力に対して構造的完全性がもたらされる。
【0034】
バックル12及びバックル60に対する改良及び変形態様は、第2の側部が第1の側部をミラーリングするように両側に延在するスロット32と、両端から中央へ向かって下方へ傾斜する保持中子40と、を具備し得る。これにより、外科医は、バックル12をトンネル50に通していずれか一方の端部から引っ張り上げることができる。また、保持中子40の上側表面42に丸みを付けてもよく、そうすることによって、ループ14の上に載せて擦傷を軽減できるようにループ14の表面が改善され得る。
【0035】
スロット32に沿って摺動するときに、上側表面42に沿って、又はバックル12においてループ14に係合し得る他の領域に沿って、例えば、針毛突起(barb)(図示せず)を含むことによって、ループ14が中間点38から離れる方向へ移動するのを防ぐ対策をとることもできる。図7は、中間点106にてループ14を捉えて保持する顕著な凹窩(dip)104がある中子102を有するバックル100を示す。図8A図8Dにおいて、同様の部品には、同様の部品番号が付いている。下側に記した番号は図面番号に対応する。図8Aにおいてバックル110aは、下方へ傾斜する中子114aを画定して中間点116aで終端する一対のスロット112aを備える。スロット112aは、ループ14を挟持して所定位置に保持できるように中間点116aへ向かって幅が狭くなる(図8A図8D中では図示せず)。図8Bは、中間点116bへ向かってスロット112b同士の距離が狭くなるバックル110bを示す。ループ14にかかる引っ張り力によって、ループ14が横に閉塞して中間点116bにおける停留が促される。ループ14が中間点116bから離れる方向へ移動するのを防ぐための一連の針毛突起117もまた、図示されている。図8Cも仕組みは同様であるが、中間点116cにてスロット112cが明確な内向きの移行部118を有する。図8Dでは、一対でなく1つのスロット112d、及びループ14が縫うようにして通る開口120が存在している。このため、バックル110dの中間点116dに向かって下方へ傾斜する表面122に沿って、ループの14の一部だけが摺動している。
【0036】
スロット32の構成において、ループ14をバックルに取り付けるための中子40を形成し、ループ14を動かせるようにすることが、構造の材料の単純性、強度及び経済性の点で好ましい。ただし、ループをバックル12の第1の端部付近の位置からバックル12の中間点付近の位置まで移動できる他の装着技術も企図されており、それらの技術も本発明の範囲内に入る。バックルは、特にACL修復に適しているが、他の修復(例えば、上腕二頭筋腱の再接合)に有用であり得る。
【0037】
本発明について、その好ましい実施形態に関連して説明してきた。明らかに、先の詳細な説明を読み理解すると、修正及び変更が他者にも思いつくであろう。そのような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びその等価物の範疇に入る限り、本発明はそのような修正及び変更のすべてを含むと解釈されるものとする。
【0038】
〔実施の態様〕
(1) 移植片靭帯を骨トンネルに固定するための方法であって、
a)固定バックルから垂下するループ上に前記移植片靭帯を掛着して移植片構造物を形成する工程であって、前記バックルが長手方向軸に沿った最大横寸法の少なくとも2倍の長さを有し、前記トンネルが前記骨から抜け出す出口を有し、前記長さが出口の最大幅を超える長さでもある、工程と、
b)前記移植片構造物を前記骨トンネルにくぐらせて引っ張り上げる工程であって、前記ループを前記バックルの前記長さの中間点よりも下方に位置する第1の位置で前記バックルから垂下させた状態で前記バックルを前記トンネルに縦方向に貫通させる、工程と、
c)前記バックルが前記トンネルの中へ退却しないように、前記バックルを前記出口を通して前記トンネルから引っ張り、その長手方向軸が前記トンネルに対して十分にずれるように回転させる工程と、
d)前記第1の位置から前記バックルの前記中間点付近にある第2の位置まで前記ループを前記バックルに沿って移動させる工程と、
e)前記出口で前記骨に前記バックルを係合させ、前記ループを前記バックルの前記第2の位置から前記トンネル内に垂下させる工程と、を含む、方法。
(2) 前記ループが前記バックル上の少なくとも1つの細長いスロットを通して受容され、前記少なくとも1つの細長いスロットに沿って摺動して前記第1の位置から前記第2の位置まで移動する、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記少なくとも1つのスロットが前記バックルの前記中間点付近に端部を有し、前記ループが前記第2の位置に移動したときに前記スロットの前記端部と係合する、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記ループが前記バックルの表面に沿って前記第1の位置と前記第2の位置との間を摺動し、前記表面が前記バックルの前記中間点に近づくにつれて下方へ傾斜する、実施態様1に記載の方法。
(5) 工程e)の後に前記ループが第1の長さだけ前記トンネル内に垂下し、工程c)の間に前記ループが前記第1の長さより短い第2の長さだけ前記トンネル内に垂下し、前記工程c)の実行中に前記第2の長さが前記第1の長さよりも最大3.5mmまで短い長さである、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記移植片靭帯がACLの代替であり、前記骨トンネルが脛骨を通って形成される、実施態様1に記載の方法。
(7) 移植片保持装置であって、
第1の端部と第2の端部とを有し、それら両端部の間に中間点を有する細長い胴体と、
前記細長い胴体に沿って前記第1の端部に隣接する第1の位置から前記中間点付近にある第2の位置まで移動できるように、前記細長い胴体に摺動可能に添着されている移植片保持ループと、
前記ループが前記第2の位置を通り越して前記第2の端部の方へ摺動するのを防ぐ前記細長い胴体上のストッパーと、を含む、移植片保持装置。
(8) 前記細長い胴体の第2の端部に着脱自在に添着されている前端糸を更に含む、実施態様7に記載の移植片保持装置。
(9) 前記細長い胴体の第1の端部に着脱自在に添着されている後端糸を更に含む、実施態様7に記載の移植片保持装置。
(10) 前記細長い胴体が、前記第1の端部に隣接したところから前記中間点付近まで延在してそれらの間に中子を画定する一対の細長いスロットを含み、前記ループが前記スロットを貫通して前記中子に巻着している、実施態様7に記載の移植片保持装置。
【0039】
(11) 前記細長い棒材が上側表面を有し、前記中子が上側表面を有し、前記中子が前記中間点に近づくにつれて、前記中子の前記上側表面が前記バックルの前記上側表面から離れる方向に下方へ傾斜する、実施態様10に記載の移植片保持装置。
(12) 前記細長い胴体及び前記ループが無菌であり、移植可能な生体適合性材料から形成される、実施態様7に記載の移植片保持装置。
(13) 前記細長い棒材の第1の端部と第2の端部との間に、前記棒材の長さの中央25%の範囲内に前記第2の位置がある、実施態様7に記載の移植片保持装置。
(14) 前記ループが前記第2の位置から移動するのを防ぐための保持器を、前記細長い胴体に更に具備する、実施態様7に記載の移植片保持装置。
(15) 前記保持器が1つ又は2つ以上の針毛突起を含む、実施態様14に記載の移植片保持装置。
(16) 3.5mm以下の反転距離を有する、実施態様7に記載の移植片保持装置。
(17) 2mm以下の反転距離を有する、実施態様16に記載の移植片保持装置。
(18) 前記胴体の第1の端部と第2の端部との間における前記胴体の最大長さの1/3以下の反転距離を有する、実施態様7に記載の移植片保持装置。
(19) 前記胴体の前記最大長さの1/4以下の反転距離を有する、実施態様18に記載の移植片保持装置。
(20) 移植片保持装置であって、
第1の端部と第2の端部とを有する細長い胴体と、
前記第1の端部に隣接する第1の位置から前記中間点付近にある第2の位置まで前記細長い胴体に沿って移動できるように、前記細長い胴体に摺動可能に添着されている移植片保持ループと、を具備し、
前記ループが前記細長い胴体から下向きに垂下し、摺動面に沿って前記第1の位置から前記第2の位置まで摺動可能であり、前記第2の位置にて前記摺動面が前記第1の位置よりも下側にあり、これにより前記ループが前記第2の位置の方へと移動するのを促す、移植片保持装置。
【0040】
(21) 前記細長い胴体の第2の端部に着脱自在に添着されている前端糸を更に含む、実施態様20に記載の移植片保持装置。
(22) 前記細長い胴体の第1の端部に着脱自在に添着されている後端糸を更に含む、実施態様20に記載の移植片保持装置。
(23) 前記細長い胴体及び前記ループが無菌であり、移植可能な生体適合性材料から形成される、実施態様20に記載の移植片保持装置。
(24) 前記細長い胴体が、前記第1の端部に隣接したところから前記中間点付近まで延在してそれらの間に中子を画定する一対の細長いスロットを含み、前記ループが前記スロットを貫通して、前記摺動面を形成する前記中子に巻着している、実施態様20に記載の移植片保持装置。
(25) 前記ループが前記第2の位置から移動するのを防ぐための保持器を、前記細長い胴体に更に具備する、実施態様24に記載の移植片保持装置。
(26) 前記保持器が1つ又は2つ以上の針毛突起を含む、実施態様25に記載の移植片保持装置。
(27) 前記保持器が前記中間点にて前記スロット同士の間にある前記中子の狭窄部を含む、実施態様25に記載の移植片保持装置。
(28) 前記保持器が前記中子の前記上側表面に陥凹を含み、前記陥凹が前記中子との移行部によって少なくとも部分的に画定されている、実施態様25に記載の移植片保持装置。
(29) 3.5mm以下の反転距離を有する、実施態様20に記載の移植片保持装置。
(30) 2mm以下の反転距離を有する、実施態様29に記載の移植片保持装置。
【0041】
(31) 前記胴体の第1の端部と第2の端部との間における前記胴体の最大長さの1/3以下の反転距離を有する、実施態様20に記載の移植片保持装置。
(32) 前記胴体の前記最大長さの1/4以下の反転距離を有する、実施態様31に記載の移植片保持装置。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D