(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366907
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】車両ブレーキシステムのための流体制御式の圧力切換弁、および車両ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 15/36 20060101AFI20180723BHJP
B60T 8/48 20060101ALI20180723BHJP
F16K 31/122 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
B60T15/36 Z
B60T8/48
F16K31/122
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-145933(P2013-145933)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-19435(P2014-19435A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2016年7月5日
(31)【優先権主張番号】10 2012 212 546.9
(32)【優先日】2012年7月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ディネルマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ・ガルト
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−057204(JP,A)
【文献】
特開平05−178180(JP,A)
【文献】
特開2002−347605(JP,A)
【文献】
特開平08−034343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00−17/22
B60T 8/48
F16K 31/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取込開口部(12.6)およびリターンポンプ(9)の吸込側と接続される排出開口部(12.7)が連通する、バルブ内部空間(12)に配置されたバルブ室(12.3)と、第1のピストン面(14.2,14.2’)および第2のピストン面(14.3,14.3’)を備えるピストン(14.1,14.1’)および閉止部材(14.6,14.6’)を含む、前記バルブ内部空間(12)で可動に案内されるバルブ閉止体(14,14’)とを有する、車両ブレーキシステムのための流体制御式の圧力切換弁であって、前記バルブ閉止体(14,14’)は、前記第1のピストン面(14.2,14.2’)で作用する圧力と前記第2のピストン面(14.3,14.3’)で作用する圧力との間の圧力差に依存して、前記バルブ内部空間(12)に配置された調節ばね(16,16’)の力に抗して、前記取込開口部(12.6)と前記排出開口部(12.7)の間の流体接続が遮断される閉止位置と、前記取込開口部(12.6)と前記排出開口部(12.7)の間の流体接続が解放される開放位置との間で可動であり、前記第1のピストン面(14.2,14.2’)は、少なくとも1つの補償接続部(14.7,14.7’)を介して前記排出開口部(12.7)と接続された第1の制御室(12.1)を前記バルブ内部空間(12)で区切っており、前記第2のピストン面(14.3,14.3’)は、分離壁(18)によって前記バルブ室(12.3)から隔てられた第2の制御室(12.2)を区切っている、そのような圧力切換弁において、前記第2の制御室(12.2)は制御接続部(12.5,12.5’)を介して前記リターンポンプ(9)の圧力側と接続されていることを特徴とする圧力切換弁。
【請求項2】
前記ピストン(14.1,14.1’)は前記第1の制御室(12.1)を前記第2の制御室(12.2)から隔てており、ピストンシール材(14.4)を介してバルブ壁(15)に対して封止されていることを特徴とする、請求項1に記載の圧力切換弁。
【請求項3】
前記閉止部材(14.6,14.6’)は前記バルブ室(12.3)に配置されており、プランジャ(14.5,14.5’)を介して前記ピストン(14.1,14.1’)と連結されており、前記プランジャ(14.5,14.5’)は前記分離壁(18)の貫通部(18.1)によって案内されており、前記プランジャ(14.5,14.5’)はシール材(18.2)を介して前記貫通部(18.1)に対して封止されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の圧力切換弁。
【請求項4】
前記補償接続部(14.7,14.7’)は、前記第1の制御室(12.1)の補償開口部(12.4)を前記排出開口部(12.7)と接続する外部の補償通路(14.7)として構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧力切換弁。
【請求項5】
前記補償接続部(14.7,14.7’)は、前記バルブ閉止体(14,14’)が閉止位置にあるときに前記排出開口部(12.7)を前記第1の制御室(12.1)と接続するとともに前記バルブ閉止体(14,14’)が開放位置にあるときに前記バルブ室(12.3)を前記第1の制御室(12.1)と接続する、前記バルブ閉止体(14,14’)にある補償穴(14.7’)として構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧力切換弁。
【請求項6】
前記調節ばね(16)は前記第2の制御室(12.2)に配置されるとともに、前記分離壁(18)および前記第2のピストン面(14.3,14.3’)に支持されており、それにより前記バルブ閉止体(14,14’)は無圧状態のとき開放位置に配置され、前記取込開口部(12.6)と前記排出開口部(12.7)の間の流体接続が解放されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧力切換弁。
【請求項7】
前記調節ばね(16)は前記第1の制御室(12.1)に配置されるとともに、バルブルーフ(17)および前記第1のピストン面(14.2,14.2’)に支持されており、それにより前記バルブ閉止体(14,14’)は無圧状態のとき閉止位置に配置され、前記取込開口部(12.6)と前記排出開口部(12.7)の間の流体接続が遮断されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧力切換弁。
【請求項8】
ブレーキマスタシリンダ(3.3)と、流体制御ユニットと、少なくとも1つのホイールブレーキ(5.1)とを有する車両ブレーキシステムであって、前記流体制御ユニットは、少なくとも1つのブレーキ回路での少なくとも1つのホイールブレーキ(5.1)のブレーキ圧変換のために、切換弁(7.1)と、圧力切換弁(10,10’,11,11’)と、リターンポンプ(9)とを含んでいる、そのような車両ブレーキシステムにおいて、前記圧力切換弁(10,10’,11,11’)は請求項1から7のいずれか1項に基づいて施工されており、対応する前記リターンポンプ(9)と前記ブレーキマスタシリンダ(3.3)との間の吸込配管上に配置されていることを特徴とする車両ブレーキシステム。
【請求項9】
前記圧力切換弁(10,10’,11,11’)の前記取込開口部(12.6)は前記ブレーキマスタシリンダ(3.3)と接続されており、前記圧力切換弁(10,10’,11,11’)の前記排出開口部(12.7)は前記リターンポンプ(9)の入力部と接続されていることを特徴とする、請求項8に記載の車両ブレーキシステム。
【請求項10】
前記圧力切換弁(10,10’,11,11’)の前記制御接続部(12.5,12.5’)は前記リターンポンプ(9)の出力部と接続されていることを特徴とする、請求項8または9に記載の車両ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の分野に属する車両ブレーキシステムのための流体制御式の圧力切換弁を前提とするものであり、および、そのような圧力切換弁を備える対応する車両ブレーキシステムを前提とするものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術より、たとえばABS/TCS/ESPのようなドライブダイナミックコントロールを備える車両ブレーキシステムが知られている。工学システムとしての車両ブレーキシステムは、自動車の減速やローリング運動の防止を運転者の希望に応じて、ないし走行状況に応じて保証する役目を果たす。内蔵されたドライブダイナミックコントロールは、生じる可能性のある自動車のスリップを、個々のホイールの的確な制動によって防止する。車両ブレーキシステムの分野では、油圧装置での能動的または部分能動的な圧力生成が2段階の高圧切換弁を通じて具体化される、さまざまなシステムが知られている。高圧切換弁は、作動ないし操作されたときに、ブレーキマスタシリンダからリターンポンプへの吸込経路を解放する。高圧切換弁の制御は、通常、電気コイルにより生起される磁場を用いて行われる。
【0003】
特許文献1より、車両ブレーキシステムのための流体制御式のコントロールバルブ、およびこれに対応する車両ブレーキシステムが公知である。記載されているコントロールバルブは、取込開口部と排出開口部が連通する、バルブ内部空間に配置されたバルブ室と、第1のピストン面および第2のピストン面および閉止部材を備えるピストンを含む、バルブ内部空間で可動に案内されるバルブ閉止体とを含んでおり、バルブ閉止体は、第1のピストン面で作用する圧力と第2のピストン面で作用する圧力との間の圧力差に依存して、バルブ内部空間に配置された調節ばねの力に抗して、取込開口部と排出開口部の間の流体接続が遮断される閉止位置と、取込開口部と排出開口部の間の流体接続が解放される開放位置との間で可動であり、第1のピストン面は、少なくとも1つの補償接続部を介して排出開口部と接続された第1の制御室をバルブ内部空間で区切っており、第2のピストン面は、圧力解除された接続部を介して大気と接続された第2の制御室を区切っており、第2の制御室は分離壁によってバルブ室から隔てられている。大気ないし周囲圧力との圧力解除された接続に基づき、外部漏れすなわち外部への漏れが発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102009027706A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それに対して、独立請求項1の構成要件を有する、車両ブレーキシステムのための本発明による流体制御式の圧力切換弁は、車両ブレーキシステムないしドライブダイナミックコントロールシステムの簡素化ならびに耐荷重性の向上が、システム機能を少なくとも同じように保ったまま可能であるとともに、部品コストや開発コストの削減も可能であるという利点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要部は、たとえばリターンポンプの出力部で生成されるシステム圧を利用した、流体制御式の圧力切換弁の流体式の制御にある。本発明による流体制御式の圧力切換弁は、相応の油圧回路を備える油圧式の車両ブレーキシステムで、油圧制御式の圧力切換弁として適用されるのが好ましい。圧力切換弁を制御するための本発明に基づくシステム圧の利用によって、周囲圧力ないし大気との接続部が必要なくなり、外部漏れを回避ないし排除することができるという利点がある。さらに、従来技術から知られている、電気式のマグネットモジュールとして施工された操作部材を省略することができる。したがって本発明の利点は、電気コイルや制御装置のソフトウェアアルゴリズムを用いることなく、圧力切換弁が油圧式に制御されるという点にある。システム圧の利用に基づき、およびその結果として生じるはるかに高い圧力切換弁での操作力の生成に基づき、圧力切換弁の1段階式の施工形態が可能であるという利点がある。
【0007】
本発明の実施形態は、取込開口部および排出開口部が連通する、バルブ内部空間に配置されたバルブ室と、第1のピストン面および第2のピストン面を備えるピストンおよび閉止部材を含む、バルブ内部空間で可動に案内されるバルブ閉止体とを有する、車両ブレーキシステムのための流体制御式の圧力切換弁を提供する。このときバルブ閉止体は、第1のピストン面で作用する圧力と第2のピストン面で作用する圧力との間の圧力差に依存して、バルブ内部空間に配置された調節ばねの力に抗して、取込開口部と排出開口部の間の流体接続が遮断される閉止位置と、取込開口部と排出開口部の間の流体接続が解放される開放位置との間で可動である。さらに第1のピストン面は、少なくとも1つの補償接続部を介して排出開口部と接続された第1の制御室をバルブ内部空間で区切っており、第2のピストン面は、分離壁によってバルブ室から隔てられた第2の制御室を区切っている。本発明によると、第2の制御室は制御接続部を介してシステム圧と接続されている。
【0008】
さらに、ブレーキマスタシリンダと、流体制御ユニットと、少なくとも1つのホイールブレーキとを有する車両ブレーキシステムが提案される。流体制御ユニットは、少なくとも1つのブレーキ回路での少なくとも1つのホイールブレーキのブレーキ圧変換のために、切換弁と、リターンポンプと、対応するリターンポンプとブレーキマスタシリンダとの間の吸込配管でそれぞれすり合わされた、本発明に基づいて施工された圧力切換弁とをそれぞれ含んでいる。
【0009】
上に挙げた利点は、設計的に簡素な施工形態によるコスト削減など、その他の経済的な利点とも結びついている。さらに、一次回路と二次回路の間で、すなわちブレーキマスタシリンダとリターンポンプの間で、生じる可能性がある内部漏れが、本発明の圧力切換弁を通じて、ポンプの吸込側との接続に基づいてクリティカルではなくなる。漏れ容積をリターンポンプによって吸い込み、再び圧力側へ送出することができる。
【0010】
従属請求項に記載されている方策および発展例により、独立請求項1に記載された車両のための流体制御式の圧力切換弁の、および独立請求項8に記載された車両ブレーキシステムの、好ましい改良が可能である。
【0011】
ピストンは第1の制御室を第2の制御室から隔てており、ピストンシール材を介してバルブ壁に対して封止することができるのが特別に好ましい。さらに閉止部材はバルブ室に配置することができるとともに、プランジャを介してピストンと連結することができ、プランジャは分離壁の貫通部によって案内されており、プランジャはシール材を介して貫通部に対して封止されている。別案として、ピストン、閉止部材、およびプランジャを一体的に可動のバルブ閉止体として施工することもできる。閉止位置にあるとき、対応するバルブシートで密閉をする閉止部材を介して、および補償接続部を介して、バルブ室から第1の制御室への漏れが発生した場合、漏れによって上昇する第1の制御室内の圧力に基づき、およびそれに伴うバルブ閉止体の第1のピストン面に対する閉止力作用に基づき、バルブシートでの密閉作用が高くなる。ピストンシール材を介して第2の制御室と第1の制御室の間で部分能動的または完全能動的なシステム動作のときに漏れが生じたとき、ないしは分離壁のシール材を介して第2の制御室とバルブ室の間で漏れが生じたとき、リターンポンプは吸込側を通じて漏れ容積を吸い込んで、圧力側を通じて第2の制御室へ圧力生成をしながら送出することができ、それと同時にブレーキ圧として、逆止弁および取込弁を介してホイールにある制動部材へと送出することができる。このように、生じる可能性がある上述した内部のシステム漏れは、本発明による車両ブレーキシステムの本発明による圧力切換弁では、本発明による圧力切換弁の開放位置のために必要な、吸込側ないし第1の制御室と圧力側ないし第2の制御室との間の圧力差が与えられている限り、機能を妨げることがない。
【0012】
本発明による圧力切換弁の好ましい実施形態では、補償接続部は、第1の制御室の補償開口部を排出開口部と接続する、外部の補償通路として構成することができる。補償通路は、たとえば本発明による圧力切換弁が中に配置された流体ブロックに構成することができる。別案として補償接続部は、バルブ閉止体が閉止位置にあるときに排出開口部を第1の制御室と接続するとともに、バルブ閉止体が開放位置にあるときにバルブ室を第1の制御室と接続する、バルブ閉止体にある補償穴として構成することができる。それにより、流体ブロックでの流体通路案内を簡素化できるという利点がある。
【0013】
本発明による圧力切換弁の別の好ましい実施形態では、調節ばねは第2の制御室に配置することができるとともに、分離壁および第2のピストン面に支持されることができ、それにより、無圧状態のときにバルブ閉止体は開放位置に配置されることになり、取込開口部と排出開口部との間の流体接続が解放される。このバルブ位置のとき、ブレーキマスタシリンダとリターンポンプのポンプ吸込側ないし入力部との間の流体接続部は開いている。受動的なブレーキプロセスのとき、すなわち運転者がブレーキをかけてリターンポンプがオフになっているとき、ブレーキマスタシリンダと接続された取込開口部を通じて、およびポンプ吸込側ないし補償接続部と接続された排出開口部を通じて、第1の制御室の圧力が上昇する。この圧力により生じる力が、第1の制御室の中でバルブ閉止体の第1のピストン面に対して、閉止をさせるように作用する。発生する圧力が調節ばねのばね力を上回ると、閉止部材がバルブシートの中に押し込まれ、それによって圧力切換弁が閉じられる。それにより、ブレーキマスタシリンダからリターンポンプの吸込側への流体経路が遮断され、リターンポンプならびにポンプシール材が、このような閉じたバルブ位置で防護される。
【0014】
本発明による圧力切換弁の別の好ましい実施形態では、調節ばねは第1の制御室に配置することができるとともに、バルブルーフと第1のピストン面とに支持されることができ、それによりバルブ閉止体は無圧状態のとき閉止位置に配置されることになり、取込開口部と排出開口部との間の流体接続が遮断される。このバルブ位置のとき、閉止部材はバルブシートの中へ押し込まれ、圧力切換弁が閉じられるので、ブレーキマスタシリンダとリターンポンプのポンプ吸込側ないし入力部との間の流体接続が遮断される。したがってポンプとポンプシール材は、受動的な制動プロセスのときに圧力切換弁によって防護される。圧力切換弁を開くためには、第1および第2の制御室の間の圧力差に基づいて生成される押圧力が、調節ばねのばね力を上回らなくてはならず、その結果、バルブ閉止体が動いて閉止部材がバルブシートから持ち上げられ、それにより、取込開口部と排出開口部との間の流体接続を成立させる。
【0015】
バルブ内部空間での調節ばねの配置に関わりなく、ブレーキ圧は、圧力切換弁が閉止位置にあるときに、切換弁と取込弁とを介してホイールのブレーキ部材で生成される。このときリターンポンプの後に配置された逆止弁が、圧力差によって閉じられる。本発明による圧力切換弁が閉じたバルブ位置にあるとき、本発明による圧力切換弁の第2の制御室では圧力上昇ないし圧力低下が行われない。圧力切換弁が閉じているので、圧力切換弁の第1の制御室も圧力変化のないままに保たれる。バルブ室は設計面で圧力補償式に構成されており、それにより、ブレーキマスタシリンダにより生成される圧力が、バルブ室で閉止部材に対して結果的に生じる開放力もしくは閉止力を惹起しないようになっている。したがって、運転者がブレーキをかけている限り、圧力切換弁は閉じたままになっている。
【0016】
部分能動的なシステム動作のとき、すなわち、運転者がブレーキをかけ、ポンプがブレーキ作用増幅のため、もしくは並行するコントロール介入のために作動するとき、または完全能動的なシステム動作のとき、すなわち、車両ブレーキシステムが運転者の協力なしに自動的にブレーキプロセスや、たとえばABS、ESP介入のようなコントロールプロセスを行い、ホイールのブレーキ圧がリターンポンプによってのみ生成されるとき、リターンポンプが始動してシステム圧を生成する。このとき第2の制御室の圧力が上昇し、生成される力の結果、第2のピストン面に対して開放させるように作用する。それと同時にリターンポンプは第1の制御室から流体容積を吸い込み、発生する負圧およびその結果として第1の制御室で生じる追加の開放力により、圧力切換弁の開放プロセスないし開放位置をサポートする。
【0017】
本発明による車両ブレーキシステムの好ましい実施形態では、圧力切換弁の取込開口部はブレーキマスタシリンダと接続することができ、圧力切換弁の排出開口部は、リターンポンプの入力部ないし吸込側と接続することができる。さらに圧力切換弁の制御接続部は、リターンポンプの出力部ないし圧力側と接続することができる。
【0018】
本発明の実施例が図面に示されており、以下の記述で詳しく説明する。図面では、同じ符号は、同じ機能ないし類似の機能を果たすコンポーネントないし部材を表している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による圧力切換弁の第1の実施例を備える、車両ブレーキシステムの一部分を示す模式図である。
【
図2】本発明による圧力切換弁の第2の実施例を備える、車両ブレーキシステムの一部分を示す模式図である。
【
図3】本発明による圧力切換弁の第3の実施例を備える、車両ブレーキシステムの一部分を示す模式図である。
【
図4】本発明による圧力切換弁の第4の実施例を備える、車両ブレーキシステムの一部分を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図4に明らかなとおり、本発明による車両ブレーキシステム1,1’,2,2’の図示した実施例は、ブレーキペダル3.1、ブレーキ倍力装置3.2、ブレーキマスタシリンダ3.3、およびリザーブ容器3.4を備えるブレーキ集成装置3と、一方が少なくとも部分的に図示されている少なくとも2つのブレーキ回路を有する流体制御ユニットと、各々のホイール5にある少なくとも1つのホイールブレーキ5.1とをそれぞれ含んでいる。対応するブレーキ回路での少なくとも1つのホイールブレーキ5.1のブレーキ圧変換のために、流体制御ユニットは、切換弁7.1と、圧力切換弁10,10’,11,11’と、取込弁7.2と、排出弁7.3と、他のホイール5の他のホイールブレーキ5.1のために利用することもできるリザーブ室8を備えたリターンポンプ9とをそれぞれ含んでいる。さらに流体制御ユニットは、複数の逆止弁4.1,4.2,4.3および4.4…を含んでいる。流体制御式の圧力切換弁10,10’,11,11’は、対応するリターンポンプ9とブレーキマスタシリンダ3.3との間の吸込配管上に配置されている。
【0021】
図1から
図4にさらに明らかなとおり、本発明による流体制御式の圧力切換弁10,10’,11,11’の図示した実施例は、取込開口部12.6および排出開口部12.7が連通する、バルブ内部空間12に配置されたバルブ室12.3と、バルブ内部空間12の中で可動に案内されるバルブ閉止体14,14’とをそれぞれ含んでおり、このバルブ閉止体は、第1のピストン面14.2,14.2’および第2のピストン面14.3,14.3’を備えるピストン14.1,14.1’と、閉止部材14.6,14.6’とを含んでいる。バルブ閉止体14,14’は、第1のピストン面14.2,14.2’で作用する圧力と第2のピストン面14.3,14.3’で作用する圧力との間の圧力差に依存して、バルブ内部空間12に配置された調節ばね16,16’の力に抗して、取込開口部12.6と排出開口部12.7との間の流体接続が遮断される閉止位置と、取込開口部12.6と排出開口部12.7との間の流体接続が解放される開放位置との間で動くことができる。このとき第1のピストン面14.2,14.2’は、少なくとも1つの補償接続部14.7,14.7’を介して排出開口部12.7と接続された、バルブ内部空間12の第1の制御室12.1を区切っており、第2のピストン面14.3,14.3’は、第2の制御室12.2を区切っており、第2の制御室12.2は分離壁18によってバルブ室12.3から隔てられている。本発明によると、第2の制御室12.2は、制御接続部12.5,12.5’を介してシステム圧p
nPと接続されている。
【0022】
図1から
図4にさらに明らかなとおり、圧力切換弁10,10’,11,11’の取込開口部12.6はブレーキマスタシリンダ3.3と接続されており、圧力切換弁10,10’,11,11’の排出開口部12.7は、リターンポンプ9の入力部ないし吸込側と接続されている。圧力切換弁10,10’,11,11’の制御接続部12.5,12.5’は、リターンポンプ9の出力部ないし圧力側と接続されている。
図1から
図4にさらに見られるとおり、ピストン14.1,14.1’は第1の制御室12.1を第2の制御室12.2から隔てるとともに、ピストンシール材14.4を介してバルブ壁部15に対して封止されている。さらに閉止部材14.6,14.6’はバルブ室12.3の中に配置されており、プランジャ14.5,14.5’を介してピストン14.1,14.1’と連結されており、プランジャ14.5,14.5’は分離壁18にある貫通部18.1によって案内されるとともに、シール材18.2を介して貫通部18.1に対して封止されている。
【0023】
図1と
図2からさらに明らかなように、本発明による圧力切換弁10,10’の第1および第2の実施例は、無圧状態のときに開くバルブとして施工されている。すなわち、圧力切換弁10,10’が無圧状態のとき、圧力切換弁10,10’の取込開口部12.6と排出開口部12.7との間の流体接続が成立する。したがって、調節ばね16は第2の制御室12.2に配置されており、分離壁18と第2のピストン面14.3,14.3’とに支持されており、その結果、バルブ閉止体14,14’は無圧状態のとき開放位置に配置されることになり、取込開口部12.6と排出開口部12.7との間の流体接続が解放される。
【0024】
図1からさらに明らかなように、補償接続部は、本発明による圧力切換弁10の第1の実施例では、第1の制御室12.1の補償開口部12.4を排出開口部12.7と接続する外部の補償通路14.7として構成されている。
【0025】
図2からさらに明らかなとおり、補償接続部は、本発明による圧力切換弁10’の第2の実施例では、第1の実施例とは異なり、バルブ閉止体14’が閉止状態のときに排出開口部12.7を第1の制御室12.1と接続し、バルブ閉止体14’の図示した開放位置のときにバルブ室12.3を第1の制御室12.1と接続する、バルブ閉止体14’にある補償穴14.7’として構成されている。
【0026】
次に、
図1と
図2を参照しながら、本発明による圧力切換弁10,10’の第1および第2の実施例の機能形態について説明する。本発明による車両ブレーキシステム1,1’の
図1と
図2に示す実施例は、制御接続部12.5,12.5’に印加される、リターンポンプ9により出力部ないし圧力側で生成されるシステム圧p
nPによって制御される、無圧状態のときに開く圧力切換弁10,10’をそれぞれ含んでいる。
【0027】
リターンポンプ9がターンオフされ、ないしは不作動化される受動的なシステム動作のとき、調節ばね16は、圧力切換弁10,10’の第2の制御室12.2の中で、可動のバルブ閉止体14,14’の第2のピストン面14.3,14.3’に対して作用する。それによりバルブ閉止体14,14’は開放位置になっており、閉止部材14.6,14.6’は、バルブ底面19に配置されたバルブシート19.1から持ち上げられており、その結果としてこのバルブ位置では、ブレーキマスタシリンダ3.3と、リターンポンプ9の入力部ないし吸込側との間の油圧接続が成立する。受動的なブレーキプロセスのとき、すなわち運転者がブレーキをかけ、リターンポンプ9がオフになっているとき、バルブ室12.3、排出開口部12.7、および補償接続部12.7,12.7’を介して第1の制御室12.1に作用する、取込開口部12.6に印加されるブレーキマスタシリンダ3.3の圧力p
HZによって、第1の制御室12.1の圧力が上昇する。この圧力により発生する力は、第1の制御室12.1の中で、可動のバルブ閉止体14,14’の第1のピストン面14.2,14.2’に対して閉止させるように作用する。第1のピストン面14.2,14.2’で生じる押圧力が、たとえば渦巻ばねとして施工された調節ばね16のばね力、および場合によりシール材14.4,18.2の摩擦力を克服すると、圧力切換弁10,10’が閉じ、バルブ閉止体14,14’は、閉止部材14.6,14.6’がバルブシート19.1へ押し込まれて、ブレーキマスタシリンダ3.3とリターンポンプ9の吸込側ないし入力部との間の流体接続が遮断されるまで、閉止方向へと動く。圧力切換弁10,10’がこのような閉止位置にあるとき、リターンポンプ9ならびにポンプ吸込側のポンプシール材が防護される。リターンポンプ9の入力部ないし吸込側における圧力p
vPが、クリティカルな値を超えて上昇することがないからである。ブレーキ圧は、切換弁7.1および取込弁7.2を介して、ホイール5のホイールブレーキ5.1で生成される。このとき第1の逆止弁4.1は、圧力差によって閉じられる。圧力切換弁10,10’が閉止位置にあるとき、第2の制御室12.2で圧力上昇ないし圧力低下は行われない。圧力切換弁10,10’が閉じているので、第1の制御室12.1は圧力変化のないままに保たれる。バルブ室12.3は設計面で圧力補償式に構成されており、それにより、ブレーキマスタシリンダ3.3により生成される圧力p
HZは、バルブ室12.3で閉止部材14.6,14.6’に対して結果的に生じる開放力もしくは閉止力を惹起しないようになっている。運転者がブレーキをかけている限り、圧力切換弁10,10’は閉じたままに保たれる。
【0028】
部分能動式または完全能動式の動作では、リターンポンプ9が始動してシステム圧p
nPを生成する。それによって第2の制御室12.2の圧力が上昇し、可動のバルブ閉止体14,14’の第2のピストン面14.3,14.3’に対して開放させるように作用する。それと同時に、リターンポンプ9が流体容積を第1の制御室12.1から吸い込み、第1の制御室12.1で発生する負圧によって、およびその結果として生じる追加の開放力によって、圧力切換弁10,10’の開放位置をサポートする。リターンポンプ9により生成されるシステム圧p
nPにより、圧力切換弁10,10’の開放位置が保証される。それにより、ブレーキ集成装置3のブレーキマスタシリンダないしリザーブ容器3.4と、リターンポンプ9のポンプ吸込側ないし入力部との間の流体接続が維持され、リターンポンプ9はリザーブ容器3.4から流体を自由に吸い込んで、ホイール5のそれぞれのホイールブレーキ5.1で取込弁7.2を介して所要のブレーキ圧を生成することができる。リターンポンプ9が作動している限り、圧力切換弁10,10’はリターンポンプ9の圧力側ないし第2の制御室12.2における圧力p
nPにより、およびポンプの吸込側ないし第1の制御室12.1における負圧p
vPにより、確実に開放位置で保たれる。リターンポンプ9が不作動になるとシステム圧p
nPが低下し、圧力切換弁10,10’のバルブ閉止体14,14’は、第2の制御室12.2の中の調節ばね16の開放させようとするばね力にのみ基づいて開放位置に保たれる。
【0029】
図3と
図4からさらに明らかなように、本発明による圧力切換弁11,11’の第3および第4の実施例は、無圧状態のときに閉じる弁として施工されている。すなわち圧力切換弁11,11’が無圧状態のとき、圧力切換弁11,11’の取込開口部12.6と排出開口部12.7との間の流体接続が遮断される。したがって、調節ばね16は第1の制御室12.1の中に配置されており、バルブルーフ17と、第1のピストン面14.2,14.2’とに支持されており、その結果、バルブ閉止体14,14’は無圧状態のときに閉止位置に配置されることになり、取込開口部12.6と排出開口部12.7との間の流体接続は遮断される。
【0030】
図3からさらに明らかなように、本発明による圧力切換弁11の第3の実施例では、補償接続部は、本発明による圧力切換弁11の第1の実施例と同様に、第1の制御室12.1の補償開口部12.4を排出開口部12.7と接続する外部の補償通路14.7として構成されている。
【0031】
図4からさらに明らかなように、本発明による圧力切換弁11’の第4の実施例では、補償接続部は、第3の実施例とは異なり、本発明による圧力切換弁10’の第2の実施例と同様に、バルブ閉止体14’が閉止位置にあるときには排出開口部12.7を第1の制御室12.1と接続するとともに、バルブ閉止体14’の図示した開放位置ではバルブ室12.3を第1の制御室12.1と接続する、バルブ閉止体14’の補償穴14.7’として構成されている。
【0032】
次に、
図3と
図4を参照しながら、本発明による圧力切換弁11,11’の第3および第4の実施例の機能形態について説明する。
図3と
図4に示す本発明の車両ブレーキシステム2,2’の実施例は、制御接続部12.5,12.5’に印加される、リターンポンプ9により出力部ないし圧力側で生成されるシステム圧p
nPによって制御される、無圧状態のときに閉じる圧力切換弁11,11’をそれぞれ含んでいる。
【0033】
リターンポンプ9がターンオフされ、ないしは不作動化される受動的なシステム動作のとき、調節ばね16’は圧力切換弁11,11’の第1の制御室12.1の中で、可動のバルブ閉止体14,14’の第1のピストン面14.2,14.2’に対して作用する。それによってバルブ閉止体14,14’は閉止位置になり、閉止部材14.6,14.6’はバルブシート19.1に押し込まれ、その結果としてこのバルブ位置では、ブレーキマスタシリンダ3.3と、リターンポンプ9の入力部ないし吸込側との間の油圧接続が遮断される。リターンポンプ9およびポンプシール材は吸込側ないし入力部で、受動的なブレーキプロセスのときに、すなわち運転者がブレーキをかけていてリターンポンプ9がオフになっているときに、閉止位置にある圧力切換弁11,11’によって高すぎる圧力から防護される。ブレーキ圧は、切換弁7.1および取込弁7.2を介して、ホイール5のホイールブレーキ5.1で生成される。このとき第1の逆止弁4.1は、圧力差によって閉じられる。圧力切換弁11,11’が閉止位置にあるとき、第2の制御室12.2で圧力上昇ないし圧力低下は行われない。圧力切換弁11,11’が閉じているので、第1の制御室12.1は圧力変化のないままに保たれる。バルブ室12.3は設計面で圧力補償式に構成されており、それにより、ブレーキマスタシリンダ3.3により生成される圧力p
HZは、バルブ室12.3で閉止部材14.6,14.6’に対して結果的に生じる開放力もしくは閉止力を惹起しないようになっている。
【0034】
部分能動式または完全能動式の動作では、リターンポンプ9が始動して、システム圧p
nPを生成する。それによって第2の制御室12.2の圧力が上昇し、可動のバルブ閉止体14,14’の第2のピストン面14.3,14.3’に開放させるように作用する。それと同時に、リターンポンプ9が流体容積を第1の制御室12.1から吸い込み、第1の制御室12.1で発生する負圧によって、およびその結果として生じる追加の開放力によって、バルブ閉止体14,14’の開放運動ないし開放位置をサポートする。開放力が、調節ばね16’のばね力、および場合によりシール材14.4,18.2の摩擦力を克服すると、バルブ閉止体14,14’が開放方向へと動き、閉止部材14.6,14.6’がバルブシート19.1から持ち上げられる。リターンポンプ9により生成されるシステム圧p
nPにより、圧力切換弁11,11’の開放位置が実現されて確保され、それにより、ブレーキ集成装置3のブレーキマスタシリンダないしリザーブ容器3.4と、リターンポンプ9のポンプ吸込側ないし入力部との間の流体接続が成立し、維持される。それによってリターンポンプ9はリザーブ容器3.4から自由に吸引をすることができ、取込弁7.2を介して、ホイール5のそれぞれのホイールブレーキ5.1で所要のブレーキ圧を生成することができる。リターンポンプ9が動いている限り、圧力切換弁10,10’は、リターンポンプ9の圧力側ないし第2の制御室12.2における圧力p
nPにより、およびポンプの吸込側ないし第1の制御室12.1における負圧p
vPにより、確実に開放位置で保たれる。リターンポンプ9が不作動になると、システム圧p
nPが低下し、圧力切換弁11,11’のバルブ閉止体14,14’は、第1の制御室12.1の中の調節ばね16’の閉止させようとするばね力に基づき、閉止部材14.6,14.6’が封止をするようにバルブシート19.1へ押圧される閉止位置へと動く。
【0035】
リターンポンプ9としては、当業者に周知であるさまざまな適当な種々の形式と形態のポンプまたはポンプ部材、たとえばピストンポンプ、歯車ポンプ等を使用することができる。本発明による圧力切換弁10,10’,11,11’は、1段階式の圧力切換弁としても、2段階式または多段階式の圧力切換弁としても施工することができる。圧力切換弁の設計的な構成は、ここでは一例を挙げているにすぎない。ピストンシール材14.4、ないし分離壁18とプランジャ14.5,14.5’の間のシール材18.2は、当業者に周知であるさまざまな適当な種々の形式と施工形態のシール材、たとえばゴムシール、テフロンシール、ダイヤフラム、スリーブシール等を使用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 車両ブレーキシステム
3 ブレーキ集成装置
3.1 ブレーキペダル
3.2 ブレーキ倍力装置
3.3 ブレーキマスタシリンダ
3.4 リザーブ容器
4.1 逆止弁
5 ホイール
5.1 ホイールブレーキ
7.1 切換弁
7.2 取込弁
7.3 排出弁
8 リザーブ室
9 リターンポンプ
10 圧力切換弁