(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366919
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】服飾用簡易インナーおよび服飾用簡易インナーの生産方法
(51)【国際特許分類】
A41B 1/22 20060101AFI20180723BHJP
A41D 23/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
A41B1/22
A41D23/00
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-217593(P2013-217593)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-78472(P2015-78472A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】513019391
【氏名又は名称】株式会社まほらコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100083792
【弁理士】
【氏名又は名称】羽村 行弘
(72)【発明者】
【氏名】大倉 祐子
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0096623(US,A1)
【文献】
実開昭55−083712(JP,U)
【文献】
実開昭55−067102(JP,U)
【文献】
実開昭55−046693(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 1/22
A41D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の長尺布地のほぼ中央域で曲げられた中央部と、
前記長尺布地の長手方向両端側に位置する2つの片辺部の一方の表側を上にして他方の表側に斜めに直接重ねて縫着された重ね部と
を有することを特徴とする服飾用簡易インナー。
【請求項2】
請求項1に記載の服飾用簡易インナーにおいて、
前記重ね部は、
2つの前記片辺部それぞれの端縁のみが縫着されていること
を特徴とする服飾用簡易インナー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の服飾用簡易インナーにおいて、
2つの前記片辺部は、
それぞれ表側が装飾物で飾られていること
を特徴とする服飾用簡易インナー。
【請求項4】
帯状の長尺布地をほぼ中央域で曲げる工程と、
前記長尺布地の長手方向両端側に位置する2つの片辺部の一方の表側を上にして他方の表側に斜めに直接重ねて縫着させる工程と
を含むことを特徴とする服飾用簡易インナーの生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーツやジャケットの如く胸元のあく衣類の下に、ブラウスやワイシャツに代えて着用できる服飾用簡易インナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、スーツやジャケットの如く胸元のあく衣類では、インナーとしてブラウスやワイシャツが着用されることが多い。ところが、ブラウスやワイシャツは胸元の開いた個所を埋める前身頃があったばかりでなく、袖(腕を覆う部分)やウエスト回りの余分な布があることから全体的には嵩張るものであった。この嵩張りを避けるために実用新案登録第3041696号が提案されていた。これは肩部から胸元部までを覆う襟付きの前見頃布と、肩部から背上部までを覆う後見頃布とを、肩部で縫着してなるもので、袖やウエスト回りの余分な布を排除した点に特徴がある。
【特許文献1】実用新案登録第3041696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記実用新案登録第3041696号公報のものは、肩部で縫着した前見頃布や後見頃布だけのものは、スーツやジャケットのインナーとして着用した場合、袖やウエスト回りがないので、スーツやジャケットの内面に良く馴染まず、前見頃布や後見頃布がめくれたり、折れたり、ズレたりすることがあった。また、体着具(ゴム紐や布紐など)を備えなければ、前見頃布や後見頃布を身体に固定することもできず、ブラウスやワイシャツのようにふんわりとした着心地が得られなかったし、スーツやジャケットの胸元のあく衣類のインナーとして着用したときに、ブラウスやワイシャツを着用しているようには見え難いものであった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するもので、その目的とするところは、スーツやジャケットの胸元のあく衣類のインナーとして着用して胸元の開きをしっかり埋めつつ嵩張ることがなく、しかも、ブラウスやワイシャツのようにふんわりとした着心地が得られる服飾用簡易インナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る服飾用簡易インナーは、帯状の長尺布地のほぼ中央域で曲げられた中央部と、前記長尺布地の長手方向両端側に位置する2つの片辺部
の一方の表側を上にして他方の表側に斜めに直接重ねて縫着された重ね部とを有することを特徴とし、曲げられた中央部を首に掛け、その両方の片辺部の重ね部が顎の真下になるようにすると、胸元のあくスーツやジャケットの胸元の開きを埋めるとともに、ブラウスやワイシャツを着用しているように見えるように構成した。
【0006】
また、請求項3に記載の服飾用簡易インナーに
おいては、2つの前記片辺部は、それぞれ表側が装飾物で飾られていることを特徴とし、スーツやジャケットの胸元を装飾物で華やかに、また、清楚に飾れるように構成した。
また、請求項4に記載の服飾用簡易インナーの生産方法は、帯状の長尺布地をほぼ中央域で曲げる工程と、前記長尺布地の長手方向両端側に位置する2つの片辺部の一方の表側を上にして他方の表側に斜めに直接重ねて縫着させる工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、
帯状の長尺布地のほぼ中央域で曲げられた中央部を頸に掛け、
重ね部を胸側に垂ら
して顎の真下になるように整え、その上からスーツやジャケットを着用すると、胸元の開きを埋めるとともに、ブラウスやワイシャツをインナーとして着用している如く見える上に嵩張ることがなく、ふんわりとした着心地が
得られる。
【0008】
また、請求項3の発明によれば、前記重ね部は、
2つの片辺部の一方の表側を上にして他方の表側に斜めに直接重ねて縫着されており、2つの前記片辺部は、それぞれ表側が装飾物で飾られているので、例えば、装飾物をフリルにしたときはスーツやジャケットの胸元をフリルで華やかに飾ることができるし、装飾物をボータイにしたときはリボンに結ぶことによりスーツやジャケットの胸元を清楚に飾ることができ、また、フリル、ボータイ以外の他の装飾物にしたときはフリル、ボータイでは得られない別の趣きが表現できるなど各種の優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の態様について図面を参照して説明する。
図1は本願インナーをジャケットの下に着用した状態を示す一部切欠斜視図、
図2は帯状の長尺生地の中央域を底辺としてその両脇から逆三角状に折った状態を示す平面図、
図3は帯状の長尺生地の端部を輪(環状)した場合の斜視図、
図4は両辺部にフリルを施した場合の斜視図で(a)襞状のフリル(b)は昆布状のフリル、
図5は両辺部にボータイを施した場合の斜視図で(a)結び前(b)結び後である。
【0010】
図において、1は本願インナーで、該本願インナー1は、胸元のあく衣類であるジャケット(スーツ上下の場合も同じ)2の下(肌着2′の上)に着用している。これによりジャケット2の胸元のあきが埋められ、該あきから前記本願インナー1に施した装飾物6が一部露出している。このためインナーとしてブラウスやワイシャツを着用したとほぼ同様の外観が得られている。
【0011】
前記本願インナー1は、
図2の如く、帯状の長尺布地3のほぼ中央部3aから屈曲3′し、一方の片辺部3bの表側Aが表面となるように、他方の片辺部3cの表側Aに斜めの重ね部4を作って重ねている。該重ね部4の端縁3b′、3c′は、縫着5され、整えられている。
【0012】
前記屈曲3′は、長尺布地3の中央部3aを円弧状に折り曲げるだけでもよいが、
図2の如く、中央部3aを底辺としてその両脇から逆三角状に折ることにより着物の襟の如くして頸に馴染み易くなるようにしてもよい。
【0013】
前記長尺布地3の一方の片辺部3bと他方の片辺部3cとの重ね部4は、一方の表側Aを上にして他方の表側Aに重ねて作るが、
図3の如く、一方の片辺部3bの表側Aを上にして他方の片辺部3cを捩じって裏側Bにし、その上に重ねて作るのはよくない。この場合には、長尺布地3がいわゆる輪(環状)になってしまい、上着のジャケット2との摩擦で頸を中心に回ってしまうからである。すなわち、最近、女性に用いられているいわゆる輪(環状)のストール(頸に2重に巻くもの)とは区別している。
【0014】
前記長尺布地3の横幅Yは、8〜20cmが良い。8cmより幅狭であるとジャケット2の胸元のあきを充分に埋められないし、20cmより幅広であると、ジャケット2の胸元のあきに対しては充分であるが、嵩張り感が出てしまうからである。なお、長尺布地3の横幅は常に同じでなくてもよい。頸回りに対応する部分は、布地自体を最初から細く幅狭にすることも、また、端折るように逢着して幅狭にすることもある。一方、長尺布地3の長さは、着用者の身長や体型によっても異なるが、130〜180cmぐらいあれば良いといえる。目安としては屈曲3′を頸に掛けて両片辺部を胸側に垂らしたときに端縁縫着5がヘソの辺り(ジャケット2の第1ボタンの下ぐらい)になっていれば良い。
【0015】
前記長尺布地3の材質は、ブラウスやワイシャツで使用される生地で、比較的皺がつきにくく、透けない、縫い易いものが選ばれる。ここに「ブラウス」とは、通常、女性や子供などが着るシャツ風のゆったりした一重仕立ての上着を指すが、スーツやジャケットの着用時にインナーとしても着用される。
【0016】
前記両辺部3b、3cの表面には、それぞれ装飾物6が施されている。該装飾物6としては、飾り襟でもコサージュでもブラウスやワイシャツで使用される生地自体に地模様又は柄を施してもその他でも特に限定しないが、
図4には、フリル6aが、
図5には、ボータイ6bがそれぞれ示されている。また、装飾物6を施す位置(場所)は自由に決められることは勿論である。
【0017】
前記フリル6aの形状には、種々のデザインのものが考えられるが、
図4(a)では、リボン布を襞状に繰り返し折曲して長尺布地3の片辺部3b、3cの内縁3b″、3c″に沿って縫い付けたものが示されている。また、
図4(b)には、リボン布の一縁を昆布状に波形に繰り返し裁断して長尺布地3の片辺部3b、3cの内縁3b″、3c″に沿って波形裁断部を外にして縫い付けたもの(着用時は立てて使用)が示されている。
【0018】
前記ボータイ6bは、蝶むすび用のネクタイである。該ボータイ6bは、長尺布地3の片辺部3b、3cの内縁3b″、3c″に沿って縫い付けたものが示されている。通常は、
図5(a)の如く、両端部6b′、6b′を垂らしたままにあるが、着用時には、両端部6b′、6b′を
図5(b)の如く、「蝶むすび」に結んだ状態にすることとなる。なお、図示していないが、前記長尺布地3の重ね部4の交叉部位には、ボタンとボタン穴を設けてもよいし、ホックの雄側と雌側を対向的に設けてもよい。
【0019】
次に、本願インナーの使用方法を説明する。まず、本願インナー1を、例えば、肌着2′の上から着用する。この着用には、屈曲した中央部3aを頸に掛け、重ね部4を持つ両辺部3b、3cを胸側に垂らす。次いで、端縁の縫着5を顎の真下になるように整える。このうえから、スーツ又はジャケット2を着る。そして、本願インナー1は長尺布地3の各片辺部3b、3cが胸部のあきを埋めるとともに各片辺部3b、3cに施された装飾物6をスーツ又はジャケットの胸元の開き部分から露出させる。
図1は昆布状の波形を立てて使用している。
【0020】
本願インナー1は、前記長尺布地3は一方の片辺部3bの表側Aが上になるように他方の片辺部3cの表側Aに重ねられ逢着されていても、いわゆる輪になっていないので、この上に着たスーツやジャケットとの摩擦によって頸を中心に回ってしまうことがなく、装飾物6がズレ動くことがない。また、肌着の上からスーツ又はジャケットの胸元の開き部分を埋めるから、肌着を外部に見せないし、ブラウスやワイシャツの如く嵩張らない。ブラウスやワイシャツをインナーとして着用している如く見える上に嵩張ることがなく、ふんわりとした着心地が得られる。しかも、両辺部の表側が斜めに重ねられ、かつ、端縁が縫着されているため、スーツやジャケットとの摩擦で装飾物が首の周囲を回るようにズレ動くということがないなど各種の優れた効果を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本願インナーは、ブラウスやワイシャツの如く前身頃や後身頃や袖もない。それでいてスーツ又はジャケットのインナーとして簡単に、しかもブラウスやワイシャツを綺麗に着ているように見えながら嵩張らない。したがって、服飾の加工業者やアパレル業界などにおいて、広く利用される可能性は高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本願インナーをジャケットの下に着用した状態を示す一部切欠斜視図である。
【
図2】帯状の長尺生地の中央域を底辺としてその両脇から逆三角状に折った状態を示す平面図である。
【
図3】帯状の長尺生地の端部を輪(環状)した場合の斜視図である。
【
図4】両辺部にフリルを施した場合の斜視図で(a)襞状のフリル(b)は昆布状のフリルである。
【
図5】両辺部にボータイを施した場合の斜視図で(a)結び前(b)結び後である。
【符号の説明】
【0023】
1 本願インナー
2 ジャケット(スーツの場合も同じ)
2′ 肌着
3 長尺布地
3a 中央部
3b 一方の片辺部
3c 他方の片辺部
3b′、3c′ 端縁
3b″、3c″ 内縁
4 重ね部
5 縫着
6 装飾物
6a フリル
6b ボータイ
A 表側
B 裏側