特許第6366923号(P6366923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366923フロアマット及びフロアマットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366923
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】フロアマット及びフロアマットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/04 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   B60N3/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-229008(P2013-229008)
(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公開番号】特開2015-89687(P2015-89687A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年11月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595032152
【氏名又は名称】大伸工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】中川 恒靖
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3026350(JP,U)
【文献】 特開2000−108753(JP,A)
【文献】 特開2003−165373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マット本体の裏面に複数の防滑用突起部を有し、繊維から成る床部材上に載置されるフロアマットであって、
上記防滑用突起部は互いに隣接して配置され、上記マット本体の裏面側全域に密集した状態で設けられており、
上記防滑用突起部は、マット本体の裏面側一般面上に突出して設けられた台座部と、上記台座部と一体に形成され、上記台座部から裏面方向に突出して配設された複数の突起を有し、
上記マット本体及び防滑用突起部は軟質素材により一体に形成され、床部材上に載置された場合には、マット本体の厚さ方向に弾性変形して床部材と密接すると共に、
上記台座部は平面方形状に形成され、上記突起は上記台座部の四隅部に設けられていると共に上記台座部の中央部は凹部として形成されており、
上記突起の先端部にはマット本体の平面方向に沿って延設され、上記繊維から成る床部材と係合させうる係合部が形成され、
上記防滑用突起部は0.4mmから0.6mm間隔で配設されていると共に、上記台座部の幅寸法は一辺が2mmから4mmであって、上記床部材上に載置され上方から所定の圧力が加えられた場合には、上記台座部及び上記突起が外方に向かって拡開するように弾性変形することにより上記突起が床部材と密接すると共に上記台座部に復元力が働き、上記防滑用突起部に台座部中央部へ向かうグリップ力が得られることを特徴とするフロアマット。
【請求項2】
上記突起の高さ寸法は0.4mmから0.6mmであることを特徴とする請求項1記載のフロアマット。
【請求項3】
上記軟質素材はJIS−A表記が硬度50のオレフィン系エラストマからなることを特徴とする請求項1記載のフロアマット。
【請求項4】
上記オレフィン系エラストマはサーモプラスチックオレフィンであることを特徴とする請求項3に記載のフロアマット。
【請求項5】
マット本体の裏面に複数の防滑用突起部を有し、繊維から成る床部材上に載置されるフロアマットの製造方法であって、
上記防滑用突起部は互いに隣接し、上記マット本体の裏面側全域に密集した状態で設けられているフロアマットをプレス加工により製造すると共に、
上記防滑用突起部は、マット本体の裏面側一般面上に突出して設けられた台座部と、上記台座部と一体に形成され、上記台座部から裏面方向に突出して配設された複数の突起を有し、
上記マット本体及び防滑用突起部は軟質素材により一体に形成され、床部材上に載置された場合には、マット本体の厚さ方向に弾性変形して床部材と密接すると共に、
上記台座部は平面方形状に形成され、上記突起は上記台座部の四隅部に設けられていると共に上記台座部の中央部は凹部として形成され、
上記突起の先端部にマット本体の平面方向に沿って延設され、上記繊維から成る床部材と係合させうる係合部を形成するプレス加工工程をさらに有し、
上記防滑用突起部は0.4mmから0.6mm間隔で配設されていると共に、上記台座部の幅寸法は一辺が2mmから4mmであって、上記床部材上に載置され上方から所定の圧力が加えられた場合には、上記台座部及び上記突起が外方に向かって拡開するように弾性変形することにより上記突起が床部材と密接すると共に上記台座部に復元力が働き、上記防滑用突起部に台座部中央部へ向かうグリップ力が得られることを特徴とするフロアマットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット本体の裏面に複数の防滑用突起部を有し、床部材上に載置されるフロアマット及びフロアマットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のフロアパネルの車室内側には、塩化ビニール、ポリプロピレン等からなるニードルパンチカーペットが敷設され、グレードの高い車にはタフテッドカーペットが敷設されており、これらのカーペット上にフロアマットが載置されるようになっている。
【0003】
このような従来のフロアマットとしては、例えば、特許文献1に示すように、マット本体の裏面に複数の防滑用突起部を有し、マット本体の下面に多数個の防滑用突起が相互に所定の間隔をおいて離間して設けられており、上記防滑用突起部は、マット本体の下面に設けられた平面円盤状の台座部と、該台座部の下面に突設され、棒状に形成され所定角度に捻られて配設された3本の小突起とを備えている。
【0004】
また、特許文献2には、「硬度65〜80の熱可塑性エラストマーからなるマット本体(1)の裏面に、多数個の防滑用突起(2)(2)…が互いに間隔を置いて、一体的に設けられ、前記防滑用突起(2)が、盤状台座部(3)と、該台座部(3)の下面に垂下状に一体的に突設された複数個のスパイク状小突起(4)(4)(4)とからなり、「防滑用突起(2)が、前記マット本体(1)裏面又は前記裏打ち層(6)裏面に、10cm平方当り、36個〜98個配置されると共に、盤状台座部(3)が、高さ0.5〜1.5mm、下面の面積7〜30平方mmに設定される一方、スパイク状小突起(4)が、高さ0.7〜1.5mm、径0.7〜1.5mmに設定されてなる」自動車用フロアマットが記載されている。
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載された自動車用フロアマットは、床部材上に載置された場合、特許文献1では複数の小突起の先端部がカーペットと当接し、特許文献2では複数個のスパイク状小突起の先端部がカーペットと当接する。
従って、いずれの文献所載の技術にあっても、小突起の先端部のみがカーペットと当接することから、これら小突起の先端部が床部材上と当接する総面積は、自動車用フロアマットの面積に比べて極めて少ない。
その結果、フロアマットがニードルパンチカーペット又はタフテッドカーペットに載置されて使用された場合に、フロアマットのカーペットへの係合力が余り大きくなく、自動車の急発進、急制動、急回転時等において大きなモーメントが作用した場合や、乗員が足でフロアマットをフロアパネルに沿って押すように踏んだ場合には、フロアマットがカーペット上を滑って移動してしまい乗員が使用しにくい、という不具合があった。
【特許文献1】特開2012−76618号公報
【特許文献2】登録実用新案第3070743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、防滑用突起部が載置面と当接する面積を増やすことにより載置面に対しての密着力を高め、密着力を増大させうるフロアマットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、下記の手段によって達成される。請求項1記載の発明に係るフロアマットにあっては、マット本体の裏面に複数の防滑用突起部を有し、繊維から成る床部材上に載置されるフロアマットであって、上記防滑用突起部は互いに隣接して配置され、上記マット本体の裏面側全域に密集した状態で設けられており、
上記防滑用突起部は、マット本体の裏面側一般面上に突出して設けられた台座部と、上記台座部と一体に形成され、上記台座部から裏面方向に突出して配設された複数の突起を有し、上記マット本体及び防滑用突起部は軟質素材により一体に形成され、床部材上に載置された場合には、マット本体の厚さ方向に弾性変形して床部材と密接すると共に、上記台座部は平面方形状に形成され、上記突起は上記台座部の四隅部に設けられていると共に上記台座部の中央部は凹部として形成されており、
上記突起の先端部にはマット本体の平面方向に沿って延設され、上記繊維から成る床部材と係合させうる係合部が形成され、上記防滑用突起部は0.4mmから0.6mm間隔で配設されていると共に、上記台座部の幅寸法は一辺が2mmから4mmであって、上記床部材上に載置され上方から所定の圧力が加えられた場合には、上記台座部及び上記突起が外方に向かって拡開するように弾性変形することにより上記突起が床部材と密接すると共に上記台座部に復元力が働き、上記防滑用突起部に台座部中央部へ向かうグリップ力が得られることを特徴とする。
請求項1記載の発明に係るフロアマットによれば、防滑用突起部が互いに隣接して配置され、上記マット本体の裏面側全域に密集した状態で設けられているので、マット本体の下面に多数個の防滑用突起部が相互に間隔をあけて設けられている従来の自動車用フロアマットに比べて単位面積当たりでより多くの防滑用突起部をマット本体の裏面側に設けることができる。従って、防滑用突起部が床部材上と当接する面積を増やすことができる。
【0008】
請求項1記載の発明に係るフロアマットによれば、突起が台座部と一体に形成されるので、例えば、一回のプレス加工によって台座部と突起とを同時に形成することができる。 従って、台座部と突起とを別々に形成する場合に比べて製造工程を簡略化することができる。
【0009】
請求項1記載の発明に係るフロアマットによれば、フロアマットが床部材上に載置された場合には、防滑用突起部がマット本体の厚さ方向に弾性変形して床部材と密接するので、防滑用突起部が弾性変形して床部材と密接した分だけ、より床部材と当接する面積を増やすことができる。
【0010】
請求項1記載の発明に係るフロアマットによれば、上記突起が上記台座部の四隅部に設けられていると共に上記台座部の中央部は凹部として形成されているので、上記台座部及び上記突起が弾性変形した場合には、上記突起を上記台座部の外縁に向かって拡開すると共に上記台座部も拡開し、上記台座部に上記台座部が弾性変形する前の形状に戻ろうとする復元力が働いて、上記防滑用突起部が床部材を上記台座部の中央部に向って掴む力を作用させた状態で上記突起を床部材と当接させることができる。
【0011】
請求項1記載の発明に係るフロアマットによれば、床部材が例えばニードルパンチカーペットのような荒い繊維である場合には、上記係合部と繊維とを強固に係合させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明に係るフロアマットにあっては、上記突起の高さ寸法が0.4mmから0.6mmであることを特徴とする。
請求項2記載の発明に係るフロアマットによれば、突起の高さ寸法が従来の小突起の高さ寸法に比べて小さい分、従来に比べて少ない材料で突起を形成することができる。
【0013】
請求項3記載の発明に係るフロアマットにあっては、上記軟質素材がJIS−A表記が硬度50のオレフィン系エラストマからなることを特徴とする。また、請求項4記載の発明に係るフロアマットにあっては、上記オレフィン系エラストマがサーモプラスチックオレフィンであることを特徴とする。
請求項3および4記載の発明に係るフロアマットによれば、硬度が従来よりも低いので、上記突起が従来の小突起に比べてマット本体の厚さ方向に弾性変形し易くなる。
【0014】
請求項5記載の発明に係るフロアマットの製造方法にあっては、マット本体の裏面に複数の防滑用突起部を有し、繊維から成る床部材上に載置されるフロアマットの製造方法であって、上記防滑用突起部は互いに隣接し、上記マット本体の裏面側全域に密集した状態で設けられているフロアマットをプレス加工により製造すると共に、上記防滑用突起部は、マット本体の裏面側一般面上に突出して設けられた台座部と、上記台座部と一体に形成され、上記台座部から裏面方向に突出して配設された複数の突起を有し、上記マット本体及び防滑用突起部は軟質素材により一体に形成され、床部材上に載置された場合には、マット本体の厚さ方向に弾性変形して床部材と密接すると共に、上記台座部は平面方形状に形成され、上記突起は上記台座部の四隅部に設けられていると共に上記台座部の中央部は凹部として形成され、上記突起の先端部にマット本体の平面方向に沿って延設され、上記繊維から成る床部材と係合させうる係合部を形成するプレス加工工程をさらに有し、上記防滑用突起部は0.4mmから0.6mm間隔で配設されていると共に、上記台座部の幅寸法は一辺が2mmから4mmであって、記床部材上に載置され上方から所定の圧力が加えられた場合には、上記台座部及び上記突起が外方に向かって拡開するように弾性変形することにより上記突起が床部材と密接すると共に上記台座部に復元力が働き、上記防滑用突起部に台座部中央部へ向かうグリップ力が得られることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明に係るフロアマットの製造方法によれば、プレス加工のみで、上記フロアマットを製造することができる。従って、プレス加工以外の加工を要する場合に比べて短時間で上記フロアマットを製造することができる。
【0016】
請求項5記載の発明に係るフロアマットの製造方法によれば、当該工程においてもプレス加工をするだけで上記係合部を形成することができるので、プレス機械があれば上記フロアマットを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明に係るフロアマットおよび請求項5記載の発明に係るフロアマットの製造方法によって製造されるフロアマットによれば、防滑用突起部が0.4mmから0.6mm間隔で互いに隣接して配置され、一辺の幅寸法が2mmから4mmである台座部が上記マット本体の裏面側全域に密集した状態で設けられているので、マット本体の下面に多数個の防滑用突起部が相互に間隔をあけて設けられている従来の自動車用フロアマットに比べて単位面積当たりでより多くの防滑用突起部をマット本体の裏面側に設けることができる。従って、防滑用突起部が床部材上と当接する面積を増やすことができる。この結果、従来のフロアマットに比べて床部材上と当接する面積が増えるので、床部材上におけるフロアマットのグリップ力をより高めることができる。
【0018】
請求項1記載の発明に係るフロアマットおよび請求項5記載の発明に係るフロアマットの製造方法によって製造されるフロアマットによれば、突起が台座部と一体に形成されるので、例えば、一回のプレス加工によって台座部が形成されると共に突起も形成される。この結果、台座部と突起とを別々に形成する場合に比べて製造工程を簡略化することができる。この結果、台座部と突起とを別々に形成する場合に比べて製造コストを低減させることができると共に、台座部と突起とを別々に形成する場合に比べて短時間で製造することができる。
【0019】
請求項1記載の発明に係るフロアマットおよび請求項5記載の発明に係るフロアマットの製造方法によって製造されるフロアマットによれば、フロアマットが床部材上に載置された場合には、防滑用突起部がマット本体の厚さ方向に弾性変形して床部材と密接するので、防滑用突起部が弾性変形して床部材と密接した分だけ、より床部材と当接する面積を増やすことができる。この結果、床部材上と当接する面積が更に増えるので、床部材上におけるフロアマットのグリップ力が更に高められる。
【0020】
請求項1記載の発明に係るフロアマットおよび請求項5記載の発明に係るフロアマットの製造方法によって製造されるフロアマットによれば、上記突起が上記台座部の四隅部に設けられていると共に上記台座部の中央部は凹部として形成されているので、上記台座部及び上記突起が弾性変形した場合には、上記突起が上記台座部の外縁に向かって拡開すると共に上記台座部も拡開し、上記台座部に上記台座部が弾性変形する前の形状に戻ろうとする復元力が働いて、上記突起が床部材を上記台座部の中央部に向って掴む力を作用させた状態で上記突起を床部材と当接させることができる。この結果、上記防滑用突起部は床部材を掴むようなグリップ力が得られる。
【0021】
請求項1の発明に係るフロアマットおよび請求項5記載の発明に係るフロアマットの製造方法によって製造されるフロアマットによれば、上記突起の先端部にはマット本体の平面方向に沿って延設され、上記繊維から成る床部材と係合させうる係合部が形成されているので、床面上が例えばニードルパンチ等のような荒い繊維である場合には、上記係合部と繊維とを強固に係合させることができる。この結果、例えば、自動車の急発進、急制動、急回転時等において大きなモーメントが作用した場合、あるいは乗員が足でフロアマットをフロアパネルに沿って押すように踏んだ場合に、係合部と繊維とが強固に係合した分だけ、フロアマットがニードルパンチ等の上を滑って移動してしまう事態をより確実に防止することができる。
【0022】
請求項2の発明に係るフロアマットにあっては、上記突起の高さ寸法が0.4mmから0.6mmであるので、突起の高さ寸法が従来の小突起の高さ寸法に比べて小さい分、従来に比べて少ない材料で突起を形成することができる。この結果、材料費のコストを低減することができる。
【0023】
請求項3および4の発明に係るフロアマットによれば、マット本体及び防滑用突起部が軟質素材により一体に形成され、上記軟質素材がJIS−A表記が硬度50のオレフィン系エラストマからなり、上記オレフィン系エラストマがサーモプラスチックオレフィンであるので、硬度が従来よりも低くなる。従って、上記突起が従来の小突起に比べてマット本体の厚さ方向に弾性変形し易くなる。この結果、上記突起が弾性変形することにより床部材上と当接する面積が増加させ易くなる。
【0024】
請求項5記載の発明に係るフロアマットの製造方法によれば、プレス加工のみで、上記フロアマットを製造することができる。従って、プレス加工以外の加工を要する場合に比べて短時間で上記フロアマットを製造することができる。この結果、より多くの上記フロアマットを量産することができる。
【0025】
請求項5の発明に係るフロアマットの製造方法にあっては、上記突起の先端部にマット本体の平面方向に沿って延設され、上記繊維から成る床部材と係合させうる係合部を形成するプレス加工工程をさらに有するので、本工程においてもプレス加工をするだけで上記係合部を形成することができる。この結果、プレス機械があれば上記フロアマットを製造することができるので製造に際して特別な機械を導入することが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は本発明に係るフロアマットの一実施の形態を示し、マット本体11の一部裏面における複数の防滑用突起部12を部分的に示す斜視図である。
図2図2は本発明に係るフロアマットの一実施の形態を示し、図1の複数の防滑用突起部12の側面図である。
図3図3は本発明に係るフロアマットの一実施の形態を示し、図1の複数の防滑用突起部12の平面図である。
図4図4は本発明に係るフロアマットの一実施の形態を示し、フロアマット10を床部材上に載置した場合における防滑用突起部12の側面図である。
図5図5は本発明に係るフロアマットの一実施の形態を示し、防滑用突起部12が弾性変形した場合の側面図である。
図6図6は本発明に係るフロアマットの製造方法の一実施の形態を示し、図1から図5に示す防滑用突起部12を有するフロアマット10の製造方法を示す図である。
図7図7は本発明に係るフロアマットの製造方法の一実施の形態を示し、係合部22の形成工程を示す図である。
図8図8は本発明に係るフロアマットの製造方法の一実施の形態を示し、係合部22の形成工程を示す図である。
図9図9は本発明に係るフロアマットの製造方法の一実施の形態を示し、係合部22の形成工程を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明のフロアマットおよびフロアマットの製造方法は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0028】
(1)フロアマットの構成
図1は本実施の形態に係るフロアマット10のマット本体11の裏面における複数の防滑用突起部12を部分的に示す斜視図である。また、図2図1の複数の防滑用突起部12の側面図である。また、図3図1の複数の防滑用突起部12の平面図である。
【0029】
図1から図3に示すように、床部材上に載置されるフロアマット10はマット本体11の裏面に複数の防滑用突起部12を有する。マット本体11及び複数の防滑用突起部12は軟質素材により一体に形成される。本実施の形態においては、軟質素材はJIS−A表記が硬度50のオレフィン系エラストマからなる。オレフィン系エラストマとしては、一例としてサーモプラスチックオレフィンである。
【0030】
複数の防滑用突起部12は互いに隣接して配置され、マット本体11の裏面側全域に密集した状態で設けられている。複数の防滑用突起部12は0.4mmから0.6mm間隔でマット本体11の裏面に配設されている。なお、一例として、フロアマット10を自動車用フロアマットとして用いる場合には、複数の防滑用突起部12は0.5mm間隔でマット本体11の裏面に配設される。
【0031】
防滑用突起部12は、マット本体11の裏面側一般面上に突出して設けられた台座部13と、当該台座部13と一体に形成され、台座部13から裏面方向に突出して配設された複数の突起14を有する。なお、図1から図3における複数の防滑用突起部12のうち、1つの防滑用突起部12にのみ台座部と突起の符号を付しているが、他の防滑用突起部12も同様の台座部と突起を有している。このためそれらの符号については省略する。
【0032】
台座部13は、四隅部の高さ寸法h1が0.4mmから0.6mmからなり、一辺の幅寸法wが2mmから4mmからなる平面方形状に形成されている。なお、一例として、フロアマット10を自動車用フロアマットとして用いる場合には、四隅部の高さ寸法h1は0.5mmからなり、一辺の幅寸法wは3mmからなる平面方形状に形成される。また、台座部13の形状は平面方形状であるが、台座部13の形状は平面方形状に限られることはなく、例えば平面三角形状等の他の形状であってもよい。台座部13の中央部は台座部13の四隅部23よりも低く形成され、台座部13の中央部に凹部15が形成されている。
【0033】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る台座部13は、四隅部23が最も高く、各隅部23の間においては厚さ寸法が中間部が最も小さくなるように下降するカーブを描く稜線で形成される4つの側面部24と、四隅部23から次第に同一曲率で下降して凹部15を形成する、いわゆる「回転2次曲面」からなる表面部25とを有している。
【0034】
突起14は、台座部13の四隅部23に設けられ、先端部に到るに従って径寸法が小さくなるテーパ状に形成されている。突起14は、全体が円錐形状に形成され、底面部が円形をしており、底面部の直径φは0.2mmから0.4mmである。また、突起14の高さ寸法h2は0.4mmから0.6mmである。なお、一例として、フロアマット10を自動車用フロアマットとして用いる場合には、底面部の直径φは0.3mmであり、突起14の高さ寸法h2は0.5mmである。
【0035】
図4はフロアマット10を床部材上に載置した場合における防滑用突起部12の側面図である。フロアマット10を床部材上に載置すると、突起14の先端部が床部材上と点接触する。当該状態において、例えばフロアマット10の上方から所定の圧力が加えられた場合には、防滑用突起部12は図5に示すように弾性変形する。
【0036】
具体的には、図5に示すように、台座部13は、凹部15がマット本体11の厚さ方向下方に沈み込むと共に、側壁部16が外方に向って拡開するように弾性変形する。突起14は台座部13の側壁部16の外縁に向かって拡開するように弾性変形する。突起14は弾性変形すると、床部材に対してつぶれ変形することによって当接面積が増大した状態で密接する。すなわち、フロアマット10が床部材上に載置された場合には、軟質素材がマット本体11の厚さ方向に弾性変形して床部材と密接する。
【0037】
なお、例えば、フロアマット10を自動車用フロアマットとして用いた場合、自動車の急発進、急制動、急回転時等において大きなモーメントが作用した場合や、乗員が足でフロアマットをフロアパネルに沿って押すように踏んだ場合には、フロアマット10が強く踏み込まれる。このような場合には、防滑用突起部12がより弾性変形し、突起14に加えて凹部15も床部材と面接触する。
【0038】
図5に示すような弾性変形が台座部13および突起14に生じると、台座部13には台座部13が弾性変形する前の形状、すなわち図4に示す形状に戻ろうとする復元力が働く。従って、突起14は床部材を台座部13の中央部に向って掴みこむように床部材と密接する。この結果、防滑用突起部12は床部材を掴むようなグリップ力が得られる。
【0039】
本実施の形態に係るフロアマット10によれば、防滑用突起部12が0.4mmから0.6mm間隔で互いに隣接して配置され、一辺の幅寸法wが2mmから4mmである台座部13がマット本体11の裏面側全域に密集した状態で設けられているので、例えば、マット本体11の下面に多数個の防滑用突起部が相互に間隔をあけて設けられている従来の自動車用フロアマットに比べて単位面積当たりでより多くの防滑用突起部12をマット本体11の裏面側に設けることができる。この結果、従来のフロアマットに比べて防滑用突起部12が床部材上と当接する面積を増やすことができる。従って、従来のフロアマットに比べて床部材上と当接する面積が増えるので、上記突起14及び台座部13のつぶれ変形から生ずる復元力とあいまって、床部材上におけるフロアマットのグリップ力をより高めることができる。
【0040】
また、本実施の形態に係るフロアマット10によれば、突起14が台座部13と一体に形成されているので、例えば、一回のプレス加工によって台座部13が形成されると共に突起14も形成される。この結果、台座部13と突起14とを別々に形成する場合に比べて製造工程を簡略化することができる。この結果、台座部13と突起14とを別々に形成する場合に比べて製造コストを低減させることができると共に、台座部13と突起14とを別々に形成する場合に比べて短時間で製造することができる。
【0041】
また、本実施の形態に係るフロアマット10によれば、突起14が先端部に到るに従って径寸法が小さくなるテーパ状に形成されているので、床面上が例えばニードルパンチ等のような荒い繊維である場合には、突起を繊維に食い込ませ易くすることができる。この結果、突起14を繊維に食い込ませることにより、例えば、自動車の急発進、急制動、急回転時等において大きなモーメントが作用した場合、あるいは乗員が足でフロアマットをフロアパネルに沿って押すように踏んだ場合に、フロアマット10がニードルパンチ等の上を滑って移動してしまう事態を有効に防止することができる。
【0042】
また、本実施の形態に係るフロアマット10によれば、突起14の高さ寸法h2が0.2mmから0.4mmであるので、突起の高さ寸法が従来の小突起の高さ寸法に比べて小さい分、従来に比べて少ない材料で突起を形成することができる。この結果、材料費のコストを低減することができる。
【0043】
また、本実施の形態に係るフロアマット10によれば、マット本体11及び防滑用突起部12が軟質素材により一体に形成され、上記軟質素材がJIS−A表記が硬度50のオレフィン系エラストマからなり、上記オレフィン系エラストマがサーモプラスチックオレフィンであるので、フロアマット10の硬度が従来のものよりも低くなる。従って、突起14が従来の小突起に比べてマット本体11の厚さ方向に弾性変形し易くなる。この結果、突起14が弾性変形することにより床部材上と当接する面積が増加させ易くなる。
【0044】
(2)フロアマットの製造方法
本実施の形態に係るフロアマット10の製造方法は、プレス加工により、防滑用突起部12が互いに隣接し、マット本体11の裏面側全域に密集した状態で設けられているフロアマット10を製造するように構成されている。当該プレス加工の一例を図6に示す。
【0045】
当該プレス加工は、防滑用突起部12の凸形状を表面に有する防滑突起部形成ローラ17と、平らな表面を有する平面ローラ18とを有するプレス装置19によって行われる。なお、プレス装置19における防滑突起部形成ローラ17および平面ローラ18等を回転させる機構およびマット本体11を搬送する機構等については一般的な技術を用いるため、説明は省略する。
【0046】
マット本体11は、防滑突起部形成ローラ17と平面ローラ18とに挟まれることによってプレス加工される。マット本体11は、一例として4kg重の圧力で防滑突起部形成ローラ17と平面ローラ18とに挟まれることにより、マット本体11の裏面に複数の防滑用突起部12が形成される。複数の防滑用突起部12が形成されたマット本体は、防滑突起部形成ローラ17および平面ローラ18の回転によって矢印20の方向に搬出される。
【0047】
本実施の形態に係るフロアマット10の製造方法によれば、プレス加工のみで上記実施の形態に係るフロアマット10を製造することができる。従って、プレス加工以外の加工を要する場合に比べて短時間で上記フロアマットを製造することができる。この結果、より多くの上記フロアマットを量産することができる。
【0048】
なお、本実施の形態に係るフロアマット10の製造方法は、上記プレス加工後のフロアマット10を更にプレスするプレス工程を加えたものであってもよい。この場合のプレス工程を図7から図9に示す。
【0049】
図7に示すように、マット本体11の裏面と対向する位置に予め加熱したプレス板21を配置する。次に、図8に示すように、プレス板21を突起14の先端部に押し当て、突起14の先端部にマット本体11の平面方向に沿って延設された係合部22を形成する。その後、図9に示すように、プレス板21を元の位置に戻す。突起14の先端部は、当該プレス加工によってマット本体11の平面方向に沿って延設された係合部22が形成される。
【0050】
本実施の形態に係るフロアマット10の製造方法によれば、本工程においてもプレス加工をするだけで上記係合部を形成することができる。この結果、プレス機械があれば上記フロアマット10を製造することができるので製造に際して特別な機械を導入することが不要となる。
【0051】
本実施の形態に係るフロアマット10によれば、突起14の先端部にマット本体11の平面方向に沿って延設された係合部22が形成されているので、床面上が例えばニードルパンチ等のような荒い繊維である場合には、係合部22と繊維とを強固に係合させることができる。この結果、例えば、自動車の急発進、急制動、急回転時等において大きなモーメントが作用した場合、あるいは乗員が足でフロアマットをフロアパネルに沿って押すように踏んだ場合に、係合部22と繊維とが係合した分だけ、フロアマット10がニードルパンチ等の上を滑って移動してしまうような事態をより有効に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は床部材上に載置されるフロアマットおよびその製造方法に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 フロアマット
11 マット本体
12 防活用突起部
13 台座部
14 突起
15 凹部
16 突起
17 防滑突起部形成ローラ
18 平面ローラ
19 プレス装置
20 矢印
21 プレス板
22 係合部
23 四隅部
24 側面部
25 表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9