特許第6366927号(P6366927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366927自己組織化構造、その製造方法およびそれを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366927
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】自己組織化構造、その製造方法およびそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/02 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   C08G81/02
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-237763(P2013-237763)
(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公開番号】特開2014-111763(P2014-111763A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年11月2日
(31)【優先権主張番号】13/681,002
(32)【優先日】2012年11月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(73)【特許権者】
【識別番号】500507397
【氏名又は名称】ザ・テキサス・エー・アンド・エム・ユニバーシテイ・システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ダブリュー.サッカレー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・トレフォナス,ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】サンホ・チョー
(72)【発明者】
【氏名】グオロン・サン
(72)【発明者】
【氏名】カレン・ウーリー
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−501719(JP,A)
【文献】 特表2010−511065(JP,A)
【文献】 特開2010−058403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G81
C08F255
C08F290
C08F299
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のブロックポリマーおよび第二のブロックポリマーを含むグラフトブロックコポリマーであって、
前記第一のブロックポリマーが骨格ポリマーおよび第一のグラフトポリマーを含み、
前記第一のグラフトポリマーがフッ素を含む表面エネルギー低下部分を含み、
前記第二のブロックポリマーが前記第一のブロックポリマーに共有結合されており、
前記第二のブロックポリマー前記骨格ポリマーおよび第二のグラフトポリマーを含んでおり、
前記第二のグラフトポリマーが、前記グラフトブロックコポリマーを架橋するように働く官能基を含む、
グラフトブロックコポリマー。
【請求項2】
前記骨格ポリマーがポリノルボルネンである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
前記第一のグラフトポリマーがポリ(フルオロスチレン)、ポリ(テトラフルオロ−ヒドロキシスチレン)、または前述のポリマーの少なくとも1種を含む組み合わせである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
前記第一のグラフトポリマーがポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記第二のグラフトポリマーがポリ(ヒドロキシスチレン)とポリ(N−フェニルマレイミド)とのコポリマーである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記ポリ(ヒドロキシスチレン):ポリ(N−フェニルマレイミド)のモル比が1:1である、請求項5に記載のコポリマー。
【請求項7】
前記第一のグラフトポリマーおよび/または前記第二のグラフトポリマーがそれぞれ、前記グラフトブロックコポリマーの架橋を促進する官能基を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項8】
前記官能基が、フェノール、ヒドロキシル芳香族、ヒドロキシル複素芳香族、アリールチオール、ヒドロキシルアルキル、第一級ヒドロキシルアルキル、第二級ヒドロキシルアルキル、第三級ヒドロキシルアルキル、アルキルチオール、ヒドロキシルアルケン、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミン、尿素、またはその組合せからなる群から選択される、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項9】
前記官能基がチオールである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項10】
骨格ポリマーの前駆体を第一の連鎖移動剤と反応させて、第一の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を形成する工程、
前記第一の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を、第一のグラフトポリマーの前駆体と反応させて、フッ素を含む表面エネルギー低下部分を含む第一のグラフトポリマーを形成する工程、
前記骨格ポリマーの前駆体を重合して、骨格ポリマーを形成する工程、
前記骨格ポリマーを、前記第一の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分と反応させて、第一のブロックポリマーを形成する工程、
前記骨格ポリマーの前駆体を第二の連鎖移動剤と反応させて、第二の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を形成する工程、
前記第二の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を、第二のグラフトポリマーの前駆体と反応させて、第二のグラフトポリマーを形成する工程、
前記骨格ポリマーを前記第二の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分と反応させて、第二のブロックポリマーを形成する工程、並びに
前記第一のブロックポリマーを前記第二のブロックポリマーと反応させて、グラフトブロックコポリマーを形成する工程、
を含むグラフトブロックコポリマーを製造する方法。
【請求項11】
前記第一のグラフトポリマーおよび前記第二のグラフトポリマーを形成する反応が、可逆的付加開裂連鎖移動重合を用いて行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記骨格ポリマーの前駆体を重合して前記第一のブロックポリマーを形成するか、または前記第二のブロックポリマーを形成する工程が開環メタセシス重合によって行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記骨格ポリマーの前駆体がノルボルネンであり、前記第一の連鎖移動剤および前記第二の連鎖移動剤がジチオエステルであり、前記第一のグラフトポリマーの前駆体がフルオロスチレン、テトラフルオロ−ヒドロキシスチレンもしくはこれらの組み合わせであり、並びに前記第二のグラフトポリマーの前駆体がヒドロキシスチレン、N−フェニルマレイミドもしくはこれらの組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
円柱状形態を有する架橋したグラフトブロックコポリマーを含む物品であって、
前記グラフトブロックコポリマーが第一のブロックポリマーおよび第二のブロックポリマーを含み、
前記第一のブロックポリマーが骨格ポリマーおよび第一のグラフトポリマーを含み、
前記第一のグラフトポリマーがフッ素を含む表面エネルギー低下部分を含み、
前記第二のブロックポリマーが前記第一のブロックポリマーに共有結合されており、
前記第二のブロックポリマー前記骨格ポリマーおよび第二のグラフトポリマーを含み、
前記第二のグラフトポリマーが、前記グラフトブロックコポリマーを架橋するように働く官能基を含んでおり、
前記架橋したグラフトブロックコポリマーがボトルブラシ形態を有する、
物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自己組織化構造、その製造方法およびそれを含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックコポリマーは、系の自由エネルギーを低下させるために自己組織化ナノ構造を形成する。ナノ構造は、100ナノメートル(nm)未満の平均最大幅または厚さを有する構造である。この自己組織化は、自由エネルギーの低下の結果として周期的構造を生成する。周期的構造は、ドメイン、ラメラまたは円柱の形をとることができる。これらの構造のために、ブロックコポリマーの薄膜は、ナノメートルスケールで空間的化学的コントラスト(spatial chemical contrast)を提供し、そのため、それらはナノスケール構造を生成するための代替的な低コストナノパターニング材料として使用されてきた。これらブロックコポリマー膜は、ナノメートルスケールでコントラストを提供することができるが、60nm未満で周期性を表示することのできるコポリマー膜を作成することは困難である場合が多い。しかし、現代の電子デバイスは、60nm未満の周期性を有する構造を利用する場合が多く、そのため、60nm未満の平均最大幅または厚さを有すると同時に、60nm未満の周期性を示す構造を容易に示すことのできるコポリマーを作成することが望ましい。
【0003】
60nm未満の平均最大幅または厚さを有すると同時に、60nm未満の周期性を示すコポリマーを開発するために多くの試みがなされてきた。ポリマー鎖の規則的配列、特に周期的配列への組織化は、時として「ボトムアップリソグラフィ」と呼ばれる。リソグラフィの中でブロックコポリマーから電子デバイスの周期的構造を形成するための方法は、「指向性自己組織化」として公知である。しかし、周期的配列から実行可能な電子デバイスを構築しようとする試みにおける4つの挑戦および実際に最大の困難は、第一に、その周期的配列を非常に精密かつ正確に下にある回路パターンの素子に正しく重ね合わせるかまたは整合する必要性、第二に、電子回路設計の一部としてパターンの中に非周期的形状を形成させる必要性、第三に、回路設計パターンレイアウト要件の一部として鋭い湾曲部およびコーナー部および線端部を形成するパターンの能力、そして第四に、複数の周期性で形成されるパターンの能力と関係がある。ブロックコポリマーから形成される周期的パターンを用いるボトムアップリソグラフィによるこれら制限は、アラインメント、パターン形成および欠陥低減のための複雑なケモエピタキシー(chemoepitaxy)またはグラホエピタキシー(graphoepitaxy)プロセススキームを設計する必要性をもたらした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の「トップダウン」リソグラフィは、基体上の薄いフォトレジスト層の上へのマスクを通した光もしくはエネルギー粒子の投影および焦点合わせによってパターンを作成するか、または電子線リソグラフィの場合には基体上の薄いフォトレジスト層の上への電磁場によるパターン様式での電子の投射を伴い得るものでありうるが、これは下にある回路パターンの素子へのパターン形成のアラインメントの従来法により従いやすく、および、回路設計の一部としてパターンに非周期的形状を形成することができ、線端部および鋭い湾曲部を直接形成することができるという利点、並びに多数の周期性でパターンを形成する能力を有する。しかし、トップダウンリソグラフィは、光リソグラフィの場合には、その寸法が波長と同様かまたは波長よりも小さいマスク開口部を通した光の回折が、マスクで覆った領域とマスクで覆っていない領域との間の光強度の調節ができなくなることを引き起し、その結果として、それが形成することのできる最小のパターンが制約される。解像度を制限するその他の重要な要素は、ライトフレア(light flare)、様々な膜界面からの反射の問題、レンズ素子の光学的品質の欠陥、焦点深度の変動、光子および光酸のショットノイズならびにラインエッジラフネスである。電子線リソグラフィの場合、形成することのできる最小の有用なパターンサイズは、ビームスポットサイズ、書き込みパターンを効果的かつ正確に綴じ合わせるかまたは統合する能力、フォトレジストおよび下にある基体における電子散乱および後方散乱、電子および光酸ショットノイズならびにラインエッジラフネスによって制限される。像は画素ごとにパターン様式で形成されるので、電子線リソグラフィは処理量によっても非常に制限される。なぜなら、画素寸法が小さいほど小さいパターンサイズが必要とされ、単位面積当たりのイメージング画素数は、画素の単位寸法の二乗として増加するためである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一のブロックポリマーおよび第二のブロックポリマーを含むグラフトブロックコポリマーであって、前記第一のブロックポリマーが骨格ポリマーおよび第一のグラフトポリマーを含み、前記第一のグラフトポリマーが表面エネルギー低下部分を含み、前記第二のブロックポリマーが前記第一のブロックに共有結合されており、前記第二のブロックが骨格ポリマーおよび第二のグラフトポリマーを含んでおり、前記第二のグラフトポリマーが、前記グラフトブロックコポリマーを架橋するように働く官能基を含む、グラフトブロックコポリマーが本明細書に開示される。
【0006】
骨格ポリマーの前駆体を第一の連鎖移動剤と反応させて、第一の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を形成する工程、前記第一の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を、第一のグラフトポリマーの前駆体と反応させて、表面エネルギー低下部分を含む第一のグラフトポリマーを形成する工程、前記骨格ポリマーの前駆体を重合して、骨格ポリマーを形成する工程、前記骨格ポリマーを、前記第一の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分と反応させて、第一のブロックポリマーを形成する工程、前記骨格ポリマーの前駆体を第二の連鎖移動剤と反応させて、第二の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を形成する工程、前記第二の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を、第二のグラフトポリマーの前駆体と反応させて、第二のグラフトポリマーを形成する工程、前記骨格ポリマーを前記第二の骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分と反応させて、第二のブロックポリマーを形成する工程、並びに前記第一のブロックポリマーを前記第二のブロックポリマーと反応させて、グラフトブロックコポリマーを形成する工程、を含むグラフトブロックコポリマーを製造する方法も本明細書に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、基体の上に配置されている、例となるブラシポリマーの概略図である。
図2A図2Aは、表面エネルギー低下部分を有するブラシポリマーを基体の上に配置した場合に起こる、例となる秩序化の概略図である。
図2B図2Bは、表面エネルギー低下部分を有するブラシポリマーを基体の上に配置した場合に起こる、例となる秩序化の概略図である。
図3図3は、上側の画像がタッピングモードAFMを示し、下側の画像が(A)ブラシ対照組成物(B)ブラシIおよび(C)ブラシIIについての位相像である、原子間力顕微鏡法(AFM)の結果を示す顕微鏡写真である。
図4図4は、30kV電子線リソグラフィ(EBL)によって生成されたパターンのタッピングモードAFM画像を示す。図4A−4Cは、露光線量250μC/cmでの化学増幅レジスト(CAR−I、CAR−II)、およびブラシ対照の露光後ベーク−電子線リソグラフィ(PEB−EBL)の後のパターンのAFM高さ像をそれぞれ表し、さらに図(D−F)は、露光線量400μC/cmでのCAR−I、CAR−II、およびブラシ対照のPEB−EBLの後のパターンのAFM高さ像をそれぞれ表す。図4G−4Hは、露光線量400μC/cm(G)および600μC/cm(H)でのCAR−Iの「直接」EBLから得たパターンのAFM高さ像をそれぞれ表す。スケールバー=500nm。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において使用される場合、「相分離」とは、ブロックコポリマーのブロックが別個のミクロ相分離ドメイン(「ミクロドメイン」または「ナノドメイン」とも称され、また単に「ドメイン」とも称される)を形成する性質をさす。同じモノマーのブロックは集合して周期的ドメインを形成し、ドメインの間隔および形態は、ブロックコポリマー中の異なるブロック間の相互作用、サイズ、および体積分率によって決まる。ブロックコポリマーのドメインは、適用中、例えばスピンキャスティング工程中、加熱工程中などに生じることができ、またはアニーリング工程によって調整され得る。本明細書において「ベーク」または「アニーリング」とも呼ばれる「加熱」とは、基体およびその上の被覆層の温度が周囲温度よりも高く上昇させられる一般的なプロセスである。「アニーリング」には、熱アニーリング、熱勾配アニーリング、溶媒蒸気アニーリング、またはその他のアニーリング法が含まれ得る。時に「熱硬化」とも呼ばれる熱アニーリングは、パターンを定着させ、ブロックコポリマーの集合体の層における欠陥を除去するための具体的なベークプロセスであり得、通常、膜形成プロセスの終わりまたは終わり近くの長期間(例えば、数分〜数日)にわたって、高温(例えば、150℃〜350℃)で加熱することを伴う。実施する場合、アニーリングは、ミクロ相分離ドメインの層(以降、「膜」と呼ぶ)の欠陥を低減または除去するために使用される。
【0009】
自己組織化層は、少なくとも第一のブロックおよび第二のブロックを有するブロックコポリマーを含み、これはアニーリングによって基体に垂直に配向する相分離によってドメインを形成する。「ドメイン」とは、本明細書において、ブロックコポリマーの対応するブロックによって形成されたコンパクトな結晶、半結晶、またはアモルファス領域を意味し、これらの領域は、ラメラであっても円筒状であってもよく、並びに基体の表面の平面に対して、および/または基体の上に配置された表面修飾層の平面に対して直角または垂直に形成される。ある実施形態では、このドメインは、1〜30ナノメートル(nm)、具体的には5〜22nm、さらにより具体的には5〜20nmの平均最大寸法を有し得る。
【0010】
本発明のブロックコポリマーに関して本明細書中で、かつ添付される特許請求の範囲において使用される用語「M」は、本明細書において実施例で使用される方法に従って決定される、ブロックコポリマーの数平均分子量である(単位g/mol)。本発明のブロックコポリマーに関して本明細書中で、かつ添付される特許請求の範囲において使用される用語「M」は、本明細書において実施例で使用される方法に従って決定される、ブロックコポリマーの重量平均分子量である(単位g/mol)。
【0011】
本発明のブロックコポリマーに関して本明細書中で、かつ添付される特許請求の範囲において使用される用語「PDI」または「D」は、以下の等式:
【数1】
に従って決定されるブロックコポリマーの多分散度である(多分散指数または単に「分散度」とも呼ばれる)。
【0012】
移行部用語「含む」は、移行部用語「からなる」および「から本質的になる」を含む。用語「および/または」は、本明細書において、「および」と「または」の両方を意味するために使用される。例えば、「Aおよび/またはB」は、A、B、またはAおよびBを意味すると解釈される。
【0013】
本明細書に開示されるものはグラフトブロックコポリマーであって、このグラフトブロックコポリマーは、ポリマーをその骨格として(以降、骨格ポリマー)、この骨格ポリマーにグラフトされている第一のポリマーとともに含む。第一のポリマーは、フッ素、シリコンまたはフッ素とシリコンとの組合せのいずれかを含む表面エネルギー低下部分を含む。また、第二のポリマーは、それが基体の上に配置された後にグラフトブロックコポリマーを架橋するために使用される官能基を含む。骨格ポリマーおよびグラフトポリマーの各々は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。グラフトブロックコポリマーは、基体の上に配置された場合に複数のボトルブラシの形で自己組織化することができる。次に、グラフトブロックコポリマーを架橋させて膜を形成することができる。架橋すると、膜は架橋したボトルブラシを含む。ポリマー骨格は、ボトルブラシの柄と位相的に類似し、一方、ポリマーグラフトは、グラフトブロックコポリマー骨格から外側に放射状に広がって、ボトルブラシの毛に類似する構造を形成し、よって「ボトルブラシ(bottle−brush)」という用語が使用される。
【0014】
また、本明細書に開示されるものは、複数のブロックコポリマーの各々が骨格ポリマーを含み、かつ第一のポリマーおよび第二のポリマーがその骨格にグラフトされている複数のブロックコポリマーを含むグラフトブロックコポリマーである。骨格ポリマーは、ホモポリマーであってもよいしブロックコポリマーであってもよい。第一のポリマーおよび第二のポリマーは、ホモポリマーであってもよいしコポリマーであってもよい。例となる実施形態では、第一のポリマーは、表面エネルギー低下部分を含むホモポリマーであり、一方、第二のポリマーは、それによってグラフトブロックコポリマーを架橋させる官能基を有するコポリマーである。グラフトブロックコポリマーが基体の上に配置された場合に、それはボトルブラシポリマーを含む膜を形成し、ボトルブラシポリマーは次に官能基を反応させることにより一緒に架橋される.
【0015】
一実施形態では、グラフトブロックコポリマーは、第一のブロックポリマーおよび第二のブロックポリマーを含む。よって第一のブロックポリマーは骨格ポリマーにグラフトされている第一のポリマー(ホモポリマー)とともに骨格ポリマーを含む。第一のポリマーはまた、本明細書において第一のグラフトポリマーとも称される。第二のブロックポリマーは、骨格ポリマーにグラフトされている第二のポリマー(コポリマー)とともに骨格ポリマーを含む。第二のポリマーはまた、本明細書において第二のグラフトポリマーとも称される。第一のグラフトポリマーおよび第二のグラフトポリマーはまた、可撓性ポリマーとも称される。そのため、第一のブロックポリマーはコポリマーであるが、第二のブロックポリマーはターポリマーである。第一のポリマーおよび/または第二のポリマーは、グラフトブロックコポリマーを架橋するために使用される官能基を含む。一実施形態では、グラフトブロックコポリマーは、それが基体の上に配置された後に架橋される。
【0016】
第一のポリマーは、グラフトブロックコポリマーが基体の上に配置された場合に、より高度な自己組織化をさせる表面エネルギー低下部分を含む。表面エネルギー低下部分が存在する結果、コポリマーが基体の上に配置された場合に、30ナノメートル未満、好ましくは20ナノメートル未満、より好ましくは15ナノメートル未満のドメインサイズおよびドメイン間の周期間隔が得られる。これらの狭いドメインサイズおよび狭いドメイン間間隔はリソグラフィに非常に有用である。それらを用いて半導体およびその他の電子部品を製造することができる。一実施形態では、グラフトブロックコポリマーは架橋されて、ネガ型フォトレジストとして使用され得る。もう一つの実施形態では、グラフトブロックコポリマーは架橋されずに、ポジ型フォトレジストとして使用され得る。
【0017】
また、本明細書に開示されるものは、グラフトブロックコポリマーを製造する方法である。この方法は、(骨格ポリマーを形成する)一連のマクロモノマーを製造すること、および次に逐次的なグラフトスルー(grafting−through)重合を実施してグラフトコポリマーを作成することを含む。あるいは、グラフトオントゥ(grafting−onto)またはグラフトフロム(grafting−from)技法を、グラフトコポリマーの合成に使用することができる。
【0018】
本明細書に開示されるものはまた、グラフトブロックコポリマー、光酸発生剤および架橋剤を含むフォトレジスト組成物である。フォトレジスト組成物は、表面エネルギー低下部分と反応性部分の両方を有するボトルブラシポリマーを含むフォトレジスト組成物を架橋することにより製造される。また、本明細書に開示されるものは、グラフトブロックコポリマーを含む物品である。一実施形態では、該物品は、フォトレジストを含む。
【0019】
図1は、グラフトポリマー204(以降、「第一のグラフトポリマー」)に反応させられた長さ「l」のポリマー骨格202(以降、「骨格ポリマー」)を含む、ポリマー性グラフトブロックコポリマー200(ボトルブラシの形態を有する)を表す。第一のグラフトポリマーは、骨格の長さの一部分に沿って、または骨格の全長に沿ってポリマー骨格と共有結合反応され得る。第一のポリマーはまた、骨格の全長に沿って骨格ポリマー骨格202と共有結合されることができ、骨格から任意の方向にもしくは複数の組合せた方向に、または骨格の周囲の部分に沿って、外側に放射状に広がることができる。本発明者らの命名法では、ポリマーブラシでは、グラフトポリマーは基体の1表面としか反応させられないが、ボトルブラシポリマーでは、グラフトポリマーはポリマー骨格のすべての側面にグラフトされ、従って外観上はボトルブラシのように見える形態を生じるという点で、ボトルブラシポリマーはポリマーブラシとは異なる。ポリマーブラシは、形態が草原に類似し、そこではこのポリマーが草であり、(草が生育する土壌に類似する)基体の上に配置されている。
【0020】
一実施形態では、グラフトブロックコポリマー200は、得られる集合体が少なくとも1方向に、具体的には少なくとも2方向に、より具体的には少なくとも3方向に秩序を示すように、(表面の上に配置されることによって)自己組織化する。一実施形態では、グラフトブロックコポリマーボトルブラシは、得られる集合体が少なくとも2つの相互に垂直な方向に、より具体的には少なくとも3つの相互に垂直な方向に秩序を示すように、(表面の上に配置されることによって)自己組織化する。用語「秩序」とは、特定の方向で測定した場合の集合体中の反復構造間の周期性をさす。
【0021】
骨格ポリマーは、通常、グラフトブロックコポリマーのポリマー骨格202を形成するのに使用される。骨格を形成する骨格ポリマーは、グラフトブロックコポリマーを製造するためにマクロモノマーの逐次重合を可能にすることが望ましい。一実施形態では、骨格ポリマーは、歪んだ(strained)環をこの鎖骨格に沿って含むポリマーであり得る。もう一つの実施形態では、骨格ポリマーは、ポリアセタール、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリットイミド、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキシインドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリピロリジン、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリ無水物、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホネート、ポリノルボルネン、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホンアミド、ポリウレア、ポリホスファゼン、ポリシラザン、ポリウレタン、または同類のもの、あるいは前述のポリマーの少なくとも1種を含む組合せであり得る。例となる実施形態では、骨格ポリマーは、ポリノルボルネンである。ポリノルボルネン繰り返し単位の環は、必要に応じて、アルキル基、アラアルキル基、またはアリール基で置換されてよい。
【0022】
骨格ポリマー中の(コポリマーの骨格を形成する)繰り返し単位の数は、約3〜約75、具体的には約10〜約60、具体的には約25〜約45である。骨格の数平均分子量は、GPCで測定して200〜10,000グラム/モルである。好ましい実施形態では、骨格の数平均分子量は、GPCで測定して3,050〜5,500グラム/モルである。
【0023】
骨格ポリマー(ポリマー骨格を形成する)は、その上に第一のポリマーをグラフトして、それによりグラフトコポリマーを形成する。一実施形態では、骨格ポリマーは、その上に1種以上の異なる種類のグラフトポリマーをグラフトしている。もう一つの実施形態では、骨格ポリマーは、その上に2種以上の異なる種類のグラフトポリマーをグラフトしている。従ってグラフトブロックコポリマーは、ブロックコポリマー、交互コポリマー、交互ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、ランダムブロックコポリマー、またはその組合せであり得る。
【0024】
一実施形態では、グラフトブロックコポリマーは、骨格ポリマーにグラフトされている第一のポリマーとともに骨格ポリマーを含むことができる。第一のポリマーは、好ましくはホモポリマーであり、表面エネルギー低下部分を含む。表面エネルギー低下部分は、通常、シリコン原子、フッ素原子、またはフッ素原子とシリコン原子との組合せを含む。表面エネルギー低下部分は、グラフトブロックコポリマーが基体の上に配置された場合に高度な自己組織化を促進する。第一のポリマーは、骨格ポリマーに共有結合またはイオン結合されていることができる。例となる実施形態では、第一のポリマーは、骨格ポリマーに共有結合されている。
【0025】
一実施形態では、第一のポリマーは、スチレン部分に1〜5個のフッ素置換基を有するポリ(フルオロスチレン)、スチレン部分が1〜4個のヒドロキシル置換基および1〜4個のフッ素置換基を有することができ、ヒドロキシル置換基およびフッ素置換基の位置が相互に独立しているポリ(フルオロ−ヒドロキシスチレン)、ポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)、またはそのコポリマーである。例となる実施形態では、第一のポリマーは、ポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)である。例となる第一のポリマーは、ポリ(フルオロスチレン)、ポリ(テトラフルオロ−ヒドロキシスチレン)、または前述の第一のポリマーの少なくとも1種を含む組合せである。
【0026】
一実施形態では、第一のポリマー(例えば、ポリ(フルオロスチレン))は、70〜90度の水接触角を有することが望ましい。例となる実施形態では、第一のポリマーは、85〜90度の好ましい水接触角を有することが望ましい。第一のポリマーは、通常、5〜20、好ましくは7〜16、より具体的には8〜14の繰り返し単位数を有する。一実施形態では、第一のポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した場合に、1350〜6000ダルトンの数平均分子量を有する。第一のポリマーは、GPCで測定して1.05〜1.20、具体的には1.08〜1.12のPDIを有する。
【0027】
例となる実施形態では、グラフトブロックコポリマーの第一のブロックポリマーは、ポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)を含む第一のポリマーがグラフトされているポリノルボルネン骨格ポリマーを含み、下の式(1):
【化1】
(式中、nは5〜20であり、およびqは3〜75である)
の構造を有する。
【0028】
上に詳述したように、グラフトブロックコポリマーは、第一のポリマーに加えて骨格ポリマーにグラフトされている第二のポリマーも含むことができる。第一のポリマーは、上に詳述されるホモポリマーであるが、第二のポリマーはコポリマーである。一実施形態では、第二のポリマーは、シリコン、フッ素、あるいはシリコンまたはフッ素の組合せを含む表面エネルギー低下部分を含有しない。もう一つの実施形態では、第二のポリマーは、シリコン、フッ素、あるいはシリコンまたはフッ素の組合せを含む表面エネルギー低下部分を含むが、第一のポリマーとは異なる化学構造を有する。第二のポリマーはまた、グラフトブロックコポリマーの架橋を促進する官能基を含有する官能基を含有していてもよい。
【0029】
一実施形態では、第二のポリマーは、ポリ(ヒドロキシスチレン)、ポリ(N−フェニルマレイミド)、またはそのコポリマーである。もう一つの実施形態では、ポリ(ヒドロキシスチレン)は、ポリ(パラ−ヒドロキシスチレン)である。例となる実施形態では、第二のポリマーは、ポリ(パラ−ヒドロキシスチレン−コ−N−フェニルマレイミド)で表される、ポリ(ヒドロキシスチレン)とポリ(N−フェニルマレイミド)のコポリマーである。第二のポリマーが、ポリ(パラ−ヒドロキシスチレン−コ−N−フェニルマレイミド)で表される、ポリ(ヒドロキシスチレン)とポリ(N−フェニルマレイミド)のコポリマーである場合、ポリ(ヒドロキシスチレン)、ポリ(N−フェニルマレイミド)のポリ(パラ−ヒドロキシスチレン−コ−N−フェニルマレイミド)に対するモル比は、1:6〜6:1、具体的には1:3〜3:1、より具体的には1:2〜2:1である。例となる実施形態では、第二のポリマー中のポリ(N−フェニルマレイミド)のポリ(パラ−ヒドロキシスチレン−コ−N−フェニルマレイミド)に対するモル比は、1:1である。
【0030】
一実施形態では、第二のポリマー(例えば、ポリヒドロキシスチレンとポリ(N−フェニレンマレイミドのコポリマー)は、水と接触した場合に、15〜80度の接触角を有することが望ましい。例となる実施形態では、第二のポリマーは、45〜65度の好ましい水接触角を有することが望ましい。第二のポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した場合に、通常、6〜95、好ましくは12〜30、より好ましくは14〜28の繰り返し単位数を有する。一実施形態では、第二のポリマーは、GPCを用いて測定した場合に、1850〜6250ダルトンの数平均分子量を有する。第二のポリマーは、GPCで測定して1.05〜1.30、好ましくは1.05〜1.15のPDIを有する。
【0031】
別の例となる実施形態では、第二のブロックグラフトは、ポリ(パラ−ヒドロキシスチレン−コ−N−フェニルマレイミド)を含む第二のポリマーがグラフトされているポリノルボルネン骨格を含み、下の式(2):
【化2】
(式中、mは10〜40であり、xは0.25〜1.5であり、yは0.25〜1.5であり、pは3〜75である)
の構造を有する。
【0032】
第一のブロックポリマーを、第二のブロックポリマーと反応させて、下の式(3)の構造:
【化3】
(式中、m、n、p、q、xおよびyは、上に特定されている)
を有するグラフトブロックコポリマーを生成する。
【0033】
コポリマーは、回分法または連続法で製造され得る。回分法または連続法は、単一または複数の反応器、単一または複数の溶媒および単一または複数の触媒(開始剤とも呼ばれる)を伴い得る。
【0034】
一実施形態では、グラフトブロックコポリマーを生成する一方法において、第一のブロックポリマーは、第二のブロックポリマーとは別々に合成される。第一のブロックポリマーは、第二のブロックポリマーに反応的に結合されてグラフトブロックコポリマーを形成する。
【0035】
第一のブロックは、第一の反応器において、骨格ポリマーの前駆体を連鎖移動剤と反応させて骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を形成することにより製造される。次に、骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を第一のポリマーの前駆体と反応させて、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合を用いて、第一のポリマーを形成する。第一のポリマーは、RAFT重合中に骨格ポリマーの前駆体に共有結合され、RAFT重合は第一の反応器において第一の溶媒および第一の開始剤の存在下で行われる。次に、骨格ポリマーの前駆体は、開環メタセシス重合(ROMP)によって重合されて第一のブロックポリマーを形成する。ROMP反応は、第一の反応器において、または別の反応器において行われてよい。第一のブロックポリマーは、骨格ポリマーの上にグラフトされた第一のポリマーとともに骨格ポリマーを含む。この第一のブロックポリマーは、基体の上に配置されて第二のブロックに共重合することなく自己組織化膜を生成することができる。次に、この膜は放射線を用いて架橋されうる。
【0036】
第二のブロックポリマーは、必要に応じて第二の反応器において重合されてよい。骨格ポリマーの前駆体を連鎖移動剤と反応させて骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を形成する。次に、骨格ポリマー前駆体−連鎖移動剤部分を第二のポリマーの前駆体と反応させて、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合を用いて第二のポリマーを形成する。第二のポリマーは、RAFT重合中に第一のポリマー前駆体−連鎖移動剤部分に共有結合され、RAFT重合は第二の溶媒および第二の開始剤の存在下で行われる。第二のポリマーはコポリマーであるので、骨格ポリマーの前駆体と一緒に反応させて第二のグラフトポリマーを形成する2種以上の前駆体が存在する。次に、第二のポリマーの前駆体は、第二の開環メタセシス重合(ROMP)によって重合されて第二のブロックポリマーを形成する。第二のブロックポリマーは、骨格ポリマーの上にグラフトされた第二のポリマーとともに骨格ポリマーを含む。第一および第二のブロックポリマーの製造において、第一の反応器は第二の反応器と同じであってもよく、第一の溶媒は第二の溶媒と同じであってもよく、第一の開始剤は第二の開始剤と同じであってもよい。一実施形態では、第一の反応器は第二の反応器と異なっていてもよく、第一の溶媒は第二の溶媒と異なっていてもよく、第一の開始剤は第二の開始剤と異なっていてもよい。
【0037】
一実施形態では、第一のブロックポリマーを第二の開環メタセシス重合において第二のブロックポリマーと反応させてグラフトブロックコポリマーを形成する。第二の開環メタセシス重合は、第一の反応器、第二の反応器または第三の反応器のいずれで行われてもよい。次に、グラフトブロックコポリマーは下に列挙される多様な異なる方法によって精製される。次に、それは基体の上に配置されて、第一のブロックポリマーかまたは第二のブロックポリマーを単独で基体の上に配置することによって生じる自己組織化よりも高度な自己組織化を生じ得る。例となる実施形態では、骨格ポリマーがポリノルボルネンである場合、第一のポリマーがポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)である場合、そして第二のポリマーがポリ(パラ−ヒドロキシスチレン−コ−N−フェニルマレイミド)である場合、グラフトブロックコポリマーを生成する反応は、次の通りである。
【0038】
第一のポリマーは、ノルボルネンをジチオエステル連鎖移動剤と反応させてノルボルネン−連鎖移動剤部分を生成することにより生成される。次に、ノルボルネン−連鎖移動剤部分を、テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレンをホモポリマー化するRAFT反応においてテトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン(TFpHS)モノマーと反応させて、ノルボルネ−ポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)ホモポリマー(すなわち、第一のポリマー)を形成する。この反応は、下の反応(1)に示される。
【化4】
【0039】
上の反応(1)において、ノルボルネンの連鎖移動剤に対するモル比は、0.5:1〜1:0.5、好ましくは0.75:1〜1:0.75、より好ましくは0.9:1〜1:0.9である。例となる実施形態では、ノルボルネンの連鎖移動剤に対するモル比は、1:1である。ノルボルネン−連鎖移動剤のテトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン(TFpHS)モノマーに対するモル比は、1:10〜1:100、好ましくは1:15〜1:50、より好ましくは1:20〜1:30である。例となる実施形態では、ノルボルネン−連鎖移動剤のテトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン(TFpHS)に対するモル比は、1:30である。
【0040】
上の反応(1)は、第一の溶媒中で行われてよい。前記反応を行うために適した溶媒は、極性溶媒、非極性溶媒、またはその組合せである。溶媒の例は、非プロトン性極性溶媒、極性プロトン性溶媒、または非極性溶媒である。一実施形態では、非プロトン性極性溶媒、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、2−ブタノン、アセトン、ヘキサノン、アセチルアセトン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、もしくは同類のものなど、または前述の溶媒の少なくとも1種を含む組合せが用いられてよい。もう一つの実施形態では、極性プロトン性溶媒、例えば水、メタノール、アセトニトリル、ニトロメタン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、もしくは同類のものなど、または前述の極性プロトン性溶媒の少なくとも1種を含む組合せも用いられてよい。その他の非極性溶媒、例えばベンゼン、アルキルベンゼン(例えばトルエンもしくはキシレンなど)、塩化メチレン、四塩化炭素、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、もしくは同類のものなど、または前述の溶媒の少なくとも1種を含む組合せも用いられてよい。少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒および少なくとも1種の非極性溶媒を含む共溶媒も、溶媒の膨潤力を改質し、それによって反応の速度を調節するために利用されてよい。例となる実施形態では、第一の溶媒は、2−ブタノンである。反応を行うために無水溶媒を使用することが望ましい。
【0041】
溶媒のTFpHSに対する重量比は、約1:1〜約5:1、具体的には約1.5:1〜約3:1、より具体的には約1.6:1〜約2:1である。
【0042】
第一の開始剤は、第一のRAFT反応を開始させるために使用されてよい。適した開始剤の例は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とも呼ばれる4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(ACVA)、過酸化ジ−tert−ブチル(tBuOOtBu)、過酸化ベンゾイル((PhCOO))、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−アミルパーオキシベンゾエート、ジセチルパーオキシジカーボネート、もしくは同類のもの、または前述の開始剤の少なくとも1種を含む組合せである。また、第一の開始剤はラジカル光開始剤であってもよい。例は、過酸化ベンゾイル、ベンゾインエーテル、ベンゾインケタール、ヒドロキシアセトフェノン、メチルベンゾイルホルメート、アントロキノン、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、ホスフィンオキサイド化合物、例えばIrgacure2100および2022(BASFにより販売)、もしくは同類のもの、または前述のラジカル開始剤の少なくとも1種を含む組合せである。
【0043】
開始剤は、ノルボルネン−連鎖移動剤に対して0.05〜0.2のモル比で使用される。例となる実施形態では、開始剤は、ノルボルネン−連鎖移動剤に対して0.07〜0.18のモル比で使用される。第一のポリマーを形成するためのノルボルネン−連鎖移動剤とテトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレンとの間の第一のRAFT反応は、第一の反応器において、撹拌下、50〜80℃、好ましくは60〜70℃の温度で行われる。例となる実施形態では、第一のRAFT反応は、65℃の温度で行われる。第一のポリマーは、その調製の後に沈殿、洗浄、蒸留、デカント、遠心分離、または同類のものにより精製されてよい。例となる実施形態では、第一のポリマーは、ヘキサン中での沈殿によって精製される。
【0044】
第二のポリマーは、ノルボルネンをジチオエステル連鎖移動剤と反応させて、ノルボルネン−連鎖移動剤部分を生成することにより生成される。次に、ノルボルネン−連鎖移動剤部分を第二の反応器においてパラ−ヒドロキシスチレン(pHS)およびN−フェニルマレイミド(PhMI)と反応させて第二のポリマーを生成する。この反応は、下の反応(2)に示される。
【化5】
【0045】
上の反応(2)において、ノルボルネンの連鎖移動剤に対するモル比は、0.5:1〜1:0.5、好ましくは0.75:1〜1:0.75、より好ましくは0.9:1〜1:0.9である。例となる実施形態では、ノルボルネンの連鎖移動剤に対するモル比は1:1である。
【0046】
パラ−ヒドロキシスチレンのN−フェニルマレイミドに対するモル比は、0.5:1〜1:0.5、好ましくは0.75:1〜1:0.75、より好ましくは0.9:1〜1:0.9である。例となる実施形態では、パラ−ヒドロキシスチレンのN−フェニルマレイミドに対するモル比は1:1である。ノルボルネン−連鎖移動剤のパラ−ヒドロキシスチレンおよびN−フェニルマレイミドに対するモル比は、1:10〜1:100、好ましくは1:15〜1:50、より好ましくは1:2〜1:40である。例となる実施形態では、ノルボルネン−連鎖移動剤のパラ−ヒドロキシスチレンおよびN−フェニルマレイミドのモノマーに対するモル比は1:1である。
【0047】
上の反応(2)は、第二の溶媒中で行われてよい。溶媒は、上に言及される溶媒のリストから選択されてよい。溶媒のモノマーに対する重量比は、約1:1〜約10:1、具体的には約2:1〜約6:1、より具体的には約3:1〜約4:1である。例となる実施形態では、第二の溶媒は、無水1,4−ジオキサンである。開始剤を用いて第二のRAFT反応を開始させてよい。上に開示される開始剤は第二のRAFT反応に使用されてよい。
【0048】
開始剤(第二のポリマーの調製用)は、ノルボルネン−連鎖移動剤に対して0.05〜0.2のモル比で使用される。例となる実施形態では、開始剤は、ノルボルネン−連鎖移動剤に対して0.06〜0.15のモル比で使用される。
【0049】
第二のポリマーを形成するためのノルボルネン−連鎖移動剤とパラ−ヒドロキシスチレンおよびN−フェニルマレイミドのコポリマーとの間の第二のRAFT反応は、第一の反応器において、撹拌下、50〜80℃、好ましくは55〜75℃、より好ましくは60〜65℃の温度で行われる。例となる実施形態では、第二のRAFT反応は、65℃の温度で行われる。第二のポリマーは、その調製の後に沈殿、洗浄、蒸留、デカント、遠心分離、または同類のものにより精製されてよい。例となる実施形態では、第二のポリマーは、ジエチルエーテル中での沈殿によって精製される。
【0050】
次に、反応(1)によって調製された第一のポリマーおよび反応(2)によって調製された第二のポリマーを、開環メタセシス重合反応(3)に供してノルボルネンをポリノルボルネンに変換し、グラフトブロックコポリマーを形成する。この反応は、第一の反応器で、第二の反応器で、または最初の2つの反応器から独立している第三の反応器で行われてよい。反応器は反応の前に清浄化されるべきである。反応は、修飾されたグラブス触媒の存在下で行われる。グラブス触媒は、第一世代グラブス触媒、第二世代グラブス触媒、ホベイダ−グラブス触媒、もしくは同類のもの、または前述のグラブス触媒の少なくとも1種を含む組合せであってよい。グラブス触媒は、必要に応じて高速開始触媒であってよい。
【0051】
例となる修飾されたグラブス触媒は、式(4)に示される。
【化6】
(式中、Mesはメシチレンまたは1,3,5−トリメチルベンゼンを表す)
【0052】
グラブス触媒の第一のポリマーに対するモル比は、1:1〜1:10である。例となる実施形態では、グラブス触媒の第一のポリマーに対するモル比は、1:4である。グラブス触媒の第二のポリマーに対するモル比は、1:1〜1:100である。例となる実施形態では、グラブス触媒の第二のポリマーに対するモル比は、1:30である。反応(3)において、第一のポリマーの第二のポリマーに対するモル比は、1:2〜1:20である。例となる実施形態では、反応(3)において、第一のポリマーの第二のポリマーに対するモル比は、1:7である。
【0053】
一実施形態では、グラフトブロックコポリマーを調製する一方法において、触媒は最初に反応器に溶媒とともに添加され、そして混合物がかき混ぜられて均質な溶液が得られる。次に第一のポリマーおよび第二のポリマーが逐次的に反応器に添加される。反応器は1〜5時間の間かき混ぜられる。次に、重合がクエンチャーでクエンチされた。次に、グラフトブロックコポリマーは精製される。
【0054】
【化7】
【0055】
上に詳述したように、第一のポリマーおよび/または第二のポリマーは、グラフトブロックコポリマーを架橋するために使用される官能基を含む。一実施形態では、R−OHまたはR−SH官能基を有するどんな芳香族基もグラフトブロックコポリマーを架橋するために使用され得る。官能基は、フェノール、ヒドロキシル芳香族、ヒドロキシル複素芳香族、アリールチオール、ヒドロキシルアルキル、第一級ヒドロキシルアルキル、第二級ヒドロキシルアルキル、第三級ヒドロキシルアルキル、アルキルチオール、ヒドロキシルアルケン、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミン、エポキシ、尿素、またはその組合せからなる群から選択され得る。例となる官能基は、アルキルアルコール、例えばヒドロキシルエチルなど、またはアリールアルコール、例えばフェノールなどである。例となる実施形態では、第二のポリマーは、グラフトブロックコポリマーを架橋するために使用され得る官能基を含む。
【0056】
上記のように、第一のポリマー、第二のポリマーおよびグラフトブロックコポリマーは、多様な方法によって精製され得る。それぞれのポリマーの精製は任意である。反応体、それぞれのポリマー、およびグラフトブロックコポリマーは、反応の前および/または後に精製されてよい。精製には、洗浄、濾過、沈殿、デカンテーション、遠心分離、蒸留、もしくは同類のもの、または前述の精製方法の少なくとも1つを含む組合せが挙げられ得る。
【0057】
例となる一実施形態では、溶媒、開始剤、末端封止剤およびクエンチャーをはじめとするすべての反応体は、反応の前に精製される。通常、純度約90.0重量%以上、具体的には純度約95.0重量%以上、より具体的には純度約99.0重量%以上の量に精製された、反応体、溶媒および開始剤を使用することが望ましい。別の例となる実施形態では、グラフトブロックコポリマーの重合の後、それは洗浄、濾過、沈殿、デカンテーション、遠心分離または蒸留を含む方法による精製に供されてよい。実質的にすべての金属不純物および金属触媒不純物を除去するための精製も行われてよい。不純物の減少は、グラフトブロックコポリマーがアニールされた場合の秩序化の欠陥を減少させ、および電子デバイスで使用される集積回路の欠陥を減少させる。
【0058】
一実施形態では、コポリマーは、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、離型剤、熱安定剤、レベラー、粘度調整剤、フリーラジカルクエンチング剤、架橋剤、光酸発生剤、染料、漂白染料、感光剤、金属酸化物ナノ粒子、導電性充填剤、非導電性充填剤、熱伝導性充填剤、その他のポリマーまたはコポリマー、例えば耐衝撃性改良剤など、または同類のものを含有してよい。
【0059】
グラフトブロックコポリマーは、精製後にフォトレジスト組成物を製造するために使用されてよい。フォトレジスト組成物は、グラフトブロックコポリマー、溶媒、架橋剤、および光酸発生剤を含む。一実施形態では、グラフトブロックコポリマーは、光酸発生剤および架橋剤とともに溶媒に溶解されることができ、次いで、基体の表面上に配置されて1以上の方向、好ましくは2以上の方向、より好ましくは3以上の方向に秩序を示すグラフトブロックコポリマー膜を形成し得る。一実施形態では、これらの方向は、お互いに相互に垂直である。
【0060】
基体の表面上に配置されたグラフトブロックコポリマーは、基体の表面上でボトルブラシの形態で自己組織化を受ける。一実施形態では、コポリマーが単一のブロック(すなわち第一のブロックポリマーかまたは第二のブロックポリマーのいずれか)しか含まない場合には、ブラシは基体の表面上で二次元にしか自己組織化し得ない、すなわち骨格ポリマーは、基体の表面に垂直に配置されたその骨格で配向されない。
【0061】
コポリマーが2つのブロックを含む(すなわちそれがグラフトブロックコポリマーである)場合、および1つのブロックコポリマーが表面エネルギー低下部分を含む場合、このブラシは、骨格ポリマーが基体の表面に対して実質的に垂直に配向され、一方第一および第二のポリマーは骨格ポリマーから外側に放射状に広がるような方法で自己組織化する。第一および第二のポリマーは、骨格ポリマーが基体の表面に対して実質的に垂直に配置された場合に、基体の表面に実質的に平行である。この形態は、垂直に配向されたボトルブラシ形態と呼ばれる。
【0062】
一実施形態では、グラフトブロックコポリマーの単層が基体の上に配置された場合、個々のポリマー鎖は基体に実質的に垂直に配置されたそれらの骨格で整列し、そしてグラフトポリマーは骨格から外側に放射状に広がる。2以上の単層が基体の上に配置された場合、第二の層のボトルブラシは、第一の単層のボトルブラシと相互に指組み合わせ様(inter−digitated)であり得る。
【0063】
一実施形態では、ターポリマー中のフッ素原子の存在により、3方向へのブラシの自己組織化が促進される。フッ素原子はターポリマーの表面エネルギーを低下させるので、それは、基体から最も遠いコポリマー末端に位置する第一のブロック(フッ素原子を含有するブロック)でのターポリマーの配向を促進する。図2Aおよび2Bは、ポリマー骨格202を、骨格にグラフトされた第一のポリマー204とともに含有するターポリマーの上面図および側面図をそれぞれ示す。図2A(上面図を表す)は、ブラシが自己組織化して2つの相互に垂直な方向(基体の平面のyおよびz)の秩序を示すことを示し、一方、図2B(側面図を表す)は、第3の方向(基体の平面に垂直なx−方向)の秩序を示す。図2Aおよび2Bにおいて、骨格ポリマー200は、その上に第一のポリマー203(表面エネルギー低下部分を含む)と第二のポリマー205(表面エネルギー低下部分を含まない)の両方をグラフトしており、表面エネルギー低下部分の存在が3つの方向に相互に秩序を生成する。秩序は、図2Aおよび2Bに示される構造の周期性によって反映される。構造の周期性は、スクエア充填または六方最密充填(hcp)配列などの平面状の秩序化配列であり得る、あるいは充填配置は、様々な程度の充填不秩序を有し得る。第一および第二のポリマーの圧縮および伸長は、充填された膜の状態での局所的なエンタルピーおよびエントロピーエネルギー要件に従いかつ順応するためのボトルブラシ構造の平面状の充填を可能にする。ターポリマーが表面エネルギー低下部分(例えば、フッ素原子)を含有しない場合、基体の平面に垂直であるx−方向の自己組織化は完全には起こらず、従って膜内のいくつかのターポリマーがyおよびz方向に平らに横たわる場合が多い。
【0064】
グラフトブロックコポリマーは、多様な方法、例えば吹きつけ塗装、スピンキャスティング、浸漬被覆、ブラシ被覆、ドクターブレードによる適用、または同類のものなどによって基体の上に配置されてよい。
【0065】
一実施形態では、グラフトブロックコポリマー、架橋剤、および光酸発生剤を含むフォトレジスト組成物は、最初に混合され(ブレンドされ)、基体に適用されて自己組織化膜を形成し得る。次にこの膜を乾燥させて溶媒を除去する。得られる膜厚は、偏光解析法、AFM、およびSEMを含む多様な技法により測定され得る。ボトルブラシターポリマーが、基体の平面に垂直なx方向に実質的に自己組織化する場合で、かつ基体がターポリマー鎖の単層で覆われるように、キャスティング溶液が十分に希薄でありスピン速度が調節されているならば、膜厚はほぼターポリマー骨格の長さであろう。膜はターポリマーを架橋するために放射線に供される。膜の一部分をマスクによって放射線から保護することができ、この部分はどんな有意な架橋も受けない。次に、溶媒を用いるか、エッチングによって膜の非架橋部分を除去して、パターン形成された膜を残すことができる。パターン形成された膜は、ベークおよびさらなる現像の後にフォトレジストとして使用することができる。
【0066】
一実施形態では、グラフトブロックコポリマー、架橋剤、および光酸発生剤を含むフォトレジスト組成物は、最初に基体に適用されて自己組織化膜を形成し得る。次に膜を乾燥させて溶媒を除去する。膜はターポリマーを架橋するために照射電子線に供される。膜の一部分は、膜のこの部分の上に電子線を向けないことによるか、またはマスクによって、照射を受けないことができる。この非照射部分はどんな有意な架橋も受けないであろう。次に、溶媒を用いるか、エッチングによって膜の非架橋部分を除去して、パターン形成された膜を残すことができる。パターン形成された膜は、ベークし、さらに現像した後にフォトレジストとして使用することができる。
【0067】
例となる光酸発生剤は、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートであり、例となる架橋剤は、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサキス(メトキシメチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(HMMM)である。その他の架橋剤は、メチロール、アルコキシメチレンエーテル、エポキシ、ノボラック、メラミン、レゾルシノール、および同類のもの、あるいは前述の架橋剤の少なくとも1種を含む組合せである。
【0068】
フォトレジスト組成物において、フォトレジスト組成物の総重量に基づいて、コポリマーは50〜80重量%の量で使用され、光酸発生剤は5〜25重量%の量で使用され、架橋剤は5〜25重量%の量で使用される。フォトレジスト組成物は、必要に応じて溶媒を含有してよい。
【0069】
一実施形態では、グラフトブロックコポリマーは、ブロックコポリマーの形態の秩序およびレジストレーションを誘導するために、グラフトブロックコポリマーの上に配置されるブロックコポリマーのドメインと選択的に相互作用するか、またはこのドメインを固定するために使用されてよい。グラフトブロックコポリマーは、ブロックコポリマーのドメインの1以上のアラインメントおよびレジストレーションを誘導することのできるトポロジーを有する。
【0070】
グラフトブロックコポリマーは、電子工学、半導体などの分野で使用することのできる他の表面を装飾または製造するための鋳型として使用することができる。グラフトブロックコポリマーは、自己組織化することができて、かつフォトレジストの形成に使用されるその他のブロックコポリマーよりも有意な利点をいくつか有する。高度な制御が合成化学に及ぼされるグラフトブロックコポリマーを使用することにより、線状ブロックコポリマーリソグラフィの他の比較形態に必要とされるような超分子集合プロセスを必要とすることなく、グラフトブロックコポリマーの広範囲の垂直方向のアラインメントが、50ナノメートル(nm)未満、好ましくは30nm未満の厚さを有する膜において実現される。グラフトブロックコポリマーの構造的および形態学的特徴は、横方向および縦方向に調整することができ、従って高感度フォトレジストの調製を可能にさせる。さらに、グラフトブロックコポリマーの構造的および形態学的特徴を、横方向および縦方向に調整して光酸触媒の強化された異方性垂直拡散を促進することができる。これらのフォトレジスト(各々ほんのわずかのグラフトブロックコポリマーを含む)は、高エネルギー電磁放射線(例えば、X線、電子線、中性子線、イオン放射線、極端紫外線(10eVから124eVまでのエネルギーをもつ光子を有する)、および同類のもの)と併せて約30nm以下のライン幅解像度でフォトリソグラフィに使用され得る。高感度のグラフトブロックコポリマーフォトレジストは、露光後ベークを行わずに潜像の生成をさらに促進し、このことは、フォトリソグラフィにおいて酸反応−拡散プロセスを制御するための実際的なアプローチを提供する。グラフトブロックコポリマー、フォトレジスト組成物およびそれから誘導されるフォトレジストは以下の限定されない例において詳述される。
【実施例】
【0071】
この実施例は、グラフトブロックコポリマーの調製を実証するために行われる。第一のブロックは、第一のポリマー、すなわちポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)がグラフトされたポリノルボルネン骨格ポリマーを含む。第二のブロックは、第二のポリマー、すなわちポリ(パラヒドロキシスチレン)とポリ(N−フェニルマレイミド)のコポリマーがグラフトされたポリノルボルネン骨格ポリマーを含む。
【0072】
グラフトブロックコポリマーの製造に使用される材料は次の通りである:
【0073】
修飾されたグラブス触媒、4−ヒドロキシスチレン(pHS)、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ヒドロキシスチレン(TFpHS)、およびノルボルネン−連鎖移動剤(NB−CTA)を、以下の参照文献に記載される文献報告に従って合成した:
1.Li,Z.;Ma,J.;Lee,N.S.;Wooley,K.L.J.Am.Chem.Soc.2011,133,1228。
2.Amir,R.J.;Zhong,S.;Pochan,D.J.;Hawker,C.J.,J.Am.Chem.Soc.2009,131,13949。
3.Pitois,C.;Wiesmann,D.;Lindgren,M.;Hult,A.Adv.Mater.2001,13,1483。
4.Li,A.;Ma,J.;Sun,G.;Li,Z.;Cho,S.;Clark,C.;Wooley,K.L.J.Polym.Sci.,Part A:Polym.Chem.2012,50,1681。
【0074】
N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサキス(メトキシメチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(HMMM)は、TCIより購入され、さらなる精製を行わずに使用された。光酸発生剤(PAG)−フォトリソグラフィ用のトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、および電子線リソグラフィ(EBL)用のトリフェニルスルホニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネートは、それぞれ、ダウ・エレクトロニック・マテリアルズにより提供された。その他の化学物質はAldrich、Acros、およびVWRより購入し、特に断りのない限りさらなる精製を行わずに使用した。使用の前に、テトラヒドロフラン(THF)はナトリウムを用いて蒸留され、N下で貯蔵された。ジクロロメタン(CHCl)は水素化カルシウムを用いて蒸留され、窒素下で貯蔵された。
【0075】
前駆体および生成物の分析に用いた計測器は次の通り詳述される:Hおよび13C NMRスペクトルは、Mercuryソフトウェアを用いるUNIX(登録商標)コンピュータにインターフェース接続されたVarian 500MHz分光計で記録された。化学シフトは、溶媒のプロトン共鳴を参照とした。IRスペクトルは、IR Prestige 21システム(島津製作所)で記録され、IRソリューションソフトウェアを用いて分析された。
【0076】
ポリマー分子量および分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された。GPCは、Waters 2414示差屈折計、PD2020デュアルアングル(15°および90°)光散乱検出器(Precision Detectors,Inc.)、および3カラムシリーズ(PLゲル5マイクロメートル(μm)混合C、500オングストローム(Å)、および10Å、300×7.5ミリメートル(mm)カラム;Polymer Laboratories,Inc.)を装備した、Waters 1515HPLC(Waters Chromatography,Inc.)で行われた。システムを、1分当たり1.0ミリリットル(mL/分)の流量でポリマー溶媒および溶出剤として機能したTHF中、40℃で平衡化させた。ポリマー溶液は、既知濃度(3〜5ミリグラム/ミリリットル(mg/mL))で調製され、200マイクロリットル(μL)の注入容積が使用された。データ収集および分析は、それぞれ、Precision AcquireソフトウェアおよびDiscovery 32ソフトウェア(Precision Detectors,Inc)で実施された。検出器間遅延容積および光散乱検出器較正定数は、ほぼ単分散のポリスチレン標準物質を用いる較正によって決定された(Polymer Laboratories、M=90キロダルトン(kDa)、M/M<1.04)。示差屈折計は、既知の特定の屈折率増分dn/dc(0.184ミリリットル/グラム(mL/g))の、標準のポリスチレン標準物質(SRM706NIST)によって較正された。次に、分析したポリマーのdn/dc値を示差屈折計応答から決定した。
【0077】
膜の表面エネルギーは、光学張力計(KSV Instruments,Attension Theta)で接触角を測定した後にOwens−Wendt−Rabel−Kaelble(OWRK)法を用いて算出された。X線光電子分光法(XPS)実験は、単色アルミニウムX線源(10ミリアンペア(mA)、12キロボルト(kV))を備えたKratos Axis Ultra XPSシステムで実施された。結合エネルギースケールは、主要Cls(炭素ls)ピークについて285電子ボルト(eV)に較正された。
【0078】
二次イオン質量分析(SIMS)測定は、飛行時間型(TOF)質量分析器に連結された注文製のSIMS計測器で実行された。これらの研究で使用される計測器は、50キロ電子ボルト(keV)の全衝撃エネルギーでC60+2投射体を生成する能力のあるC60噴出源を備えている。ポリマー試料のSIMS分析は、表面の0.1%未満が衝撃を受ける、スーパースタティックレジーム(superstatic regime)で実行された。この制限は、表面が一次イオンにより衝撃を受けるたびに、表面の撹乱されていない範囲が標本抽出されたことを確実にした。このスーパースタティックな(superstatic)測定は、単一の一次イオンが表面に衝撃を及ぼし、そしてその次の一次イオンがその表面に衝撃を及ぼす前に、二次イオンが回収されて分析される、事象ごとの衝突検出モードで実行された。単一の衝撃で検出されたすべての二次イオンは、表面の半径10nmから起こった。
【0079】
各々のポリマー試料は、TOF−SIMSによって試料上の異なる位置で3回測定された。各々の測定は、半径約100μmの領域での約3×10の投射体による衝撃からなった。試料の一貫性を確保するために複数の測定が実施された。フッ素含有分子の表面被覆率の定量的推定値は、フッ素(F)アニオンに相当するm/z=19でのシグナルおよびCOアニオンに相当するm/z=191でのシグナルを用いることにより、各々の試料について算出した。
【0080】
EBLは、DEBENレーザーステージを装備したJEOL JSM−6460走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて実行された。このシステムは、200〜600μC/cm(6〜18ミリジュール/平方センチメートル(mJ/cm)に相当)に及ぶ一連の露光線量を用いて、30kVの加速電圧および10ピコアンペア(pA)のビーム電流で操作された。様々なライン幅、すなわちそれぞれ10、20、30、40、50、60、70、80、90、および100nm、ならびに固定された500nmのスペースを含むフィーチャを備えた5×5μmのパターンを設計し、ポリマーレジストのリソグラフィ挙動を評価するために使用した。
【0081】
原子間力顕微鏡観察(AFM)イメージングは、標準的なシリコンチップ(VISTAプローブ、T190−25、共振定数:190キロヘルツ(kHz)、チップ半径:約10nm、ばね定数:48ニュートン/メートル(N/m))を用いて、タッピングモードでMFP−3Dシステム(Asylum Research)で実施された。電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)像は、JEOL JSM−7500Fで7kVの加速電圧を用いて収集された。
【0082】
実施例1
第一のポリマー(NB−P(TFpHS)12)の合成。この実施例は、第一のポリマーの製造を実証するために実行された。ここで用いた用語は以下の通りである:NB−連鎖移動剤を伴うノルボルネン;TF−テトラフルオロ;pHS−パラ−ヒドロキシスチレン;P(TFpHS)12)−12の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)。
【0083】
第一のポリマーは、以下の通り製造された。N雰囲気下で炎乾燥させた磁気撹拌棒を装備した25mLシュレンクフラスコに、ノルボルネン−連鎖移動剤(NB−CTA)(301ミリグラム(mg)、0.782ミリモル(mmol))、テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン(TFpHS)(4.49g、23.4mmol)、アゾビスイソニトリル(AIBN)(12.7mg、78.2マイクロモル(μmol))、および10.5mLの2−ブタノンを添加した。この混合物を10分間(min)室温(RT)で撹拌し、5サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、反応混合物を10分間RTで撹拌し、65℃で予熱した油浴に浸漬して共重合を開始させた。11時間(h)後、液体窒素(N)で反応フラスコを冷却することにより重合をクエンチした。コポリマーは、300ミリリットル(mL)のヘキサンへの2回の沈殿により精製された。ピンク色の油状物質を遠心分離によって回収し、300mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。収量は1.4グラム(g)の生成物であった、これは約45%のモノマー転化率に基づいて60%の収率である。Mn,GPC=2,750ダルトン(Da)(レーザー検出器)、PDI=1.07。H NMR(500MHz,DMSO−d)δ10.95−11.90(m,フェノールOH)、7.42−7.84(m,RAFT官能基に由来するAr H)、6.08(s,NB CH=CH)、5.10−5.30(br,骨格鎖末端CH)、3.90−4.10(m,NB CHOC(O))、1.02−3.45(m,TFpHS単位骨格およびNB環に由来するすべてのCHおよびCH)。13C NMR(125MHz,DMSO−d)δ206.9、172.2、145.6、144.3、144.1、138.7、137.2、136.5、135.0、133.8、129.3、127.0、123.2、108.4、73.1、68.4、63.0、45.0、43.5、42.4、41.5、40.5、38.3、37.9、35.8、34.6、34.4、33.2、31.4、31.1、29.6、29.4、28.9。IR(cm−1):2610−3720、1714、1658、1523、1495、1459、1351、1245、1142、1048、947、866。T=150℃。
【0084】
実施例2
この実施例は、別の第一のポリマーの製造を実証するために実行された。
【0085】
第一のポリマー−(NB−P(TFpHS)10)の合成。ここで用いた用語は以下の通りである:NB−連鎖移動剤を伴うノルボルネン;TF−テトラフルオロ;pHS−パラ−ヒドロキシスチレン;P(TFpHS)10)−10の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)。
【0086】
第一のポリマーは、次の通り製造された。N雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した25mLシュレンクフラスコに、NB−CTA(510mg、1.32mmol)、TFpHS(5.06g、26.4mmol)、AIBN(12.9mg、79.2μmol)、および12mLの2−ブタノンを添加した。この混合物を10分間室温で撹拌し、5サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、反応混合物を10分間RTで撹拌し、65℃で予熱した油浴に浸漬して共重合を開始させた。11時間後、液体Nで反応フラスコを冷却することにより重合をクエンチした。コポリマーは、300mLのヘキサンへの2回の沈殿により精製された。ピンク色の油状物質を遠心分離によって回収し、300mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量1.7g、約45%のモノマー転化率に基づく収率61%。Mn,GPC=2,450Da(レーザー検出器)、PDI=1.08。H NMR、13C NMRおよびIRスペクトルは、第一のポリマーから得たものに類似していた。ガラス転移温度(T)=150℃。
【0087】
実施例3
第二のポリマー−(NB−P(pHS13−コ−PhMI13))の合成。この実施例は、第二のポリマーの製造を実証するために実行された。ここで用いた用語は以下の通りである:NB−連鎖移動剤を伴うノルボルネン;pHS−パラ−ヒドロキシスチレン;PhMI−N−フェニルマレイミド;P(pHS13−コ−PhMI13)−ポリ(パラ−ヒドロキシスチレン−コ−N−フェニルマレイミド)、ここで、パラ−ヒドロキシスチレンは重合されて13の繰り返し単位を有し、およびN−フェニルマレイミドはこのポリ(パラ−ヒドロキシスチレン)に重合されており、これも13の繰り返し単位を有する。
【0088】
第二のポリマーは、次の通り製造された。N雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した100mLシュレンクフラスコに、NB−CTA(635mg、1.65mmol)、pHS(3.95g、33.0mmol)、PhMI(5.76g、33.0mmol)、AIBN(26.7mg、165μmol)および35mLの無水1,4−ジオキサンを添加した。この混合物を10分間RTで撹拌し、4サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、反応混合物を15分間RTで撹拌し、65℃で予熱した油浴に浸漬して共重合を開始させた。6.5時間後、液体Nで反応フラスコを冷却することにより重合をクエンチした。コポリマーは、600mLのジエチルエーテルへの2回の沈殿により精製された。ピンク色の沈殿物を遠心分離によって回収し、200mLのジエチルエーテルおよび200mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量3.4g、両方のモノマーに対し約55%の転化率に基づく収率60%。Mn,GPC=3,520Da(RI検出器)、Mn,GPC=6,870Da(レーザー検出器)、PDI=1.20。H NMR(500MHz,DMSO−d)δ9.20−9.80(br,フェノールOH)、6.20−7.92(m,Ar H)、6.08(br,NB CH=CH)、5.10−5.43(br,骨格鎖末端CH)、3.90−4.13(m,NB CHOC(O))、0.76−3.22(m,pHS単位骨格およびNB環に由来するすべてのCHおよびCH、MI単位に由来するすべてのCH)。13C NMR(125 MHz,DMSO−d)δ 204.9、176.8、171.8、156.7、154.9、136.8、136.2、132.0、129.7、129.0、128.8、126.8、115.5、114.7、68.0、61.9、51.6、44.6、43.2、42.2、41.1、37.6、34.8、34.6、34.4、33.2、31.4、31.1、29.6、29.4、28.9。IR(cm−1):3118−3700、2790−3090、1774、1701、1610、1506、1450、1380、1262、1185、845、750.ガラス転移温度(T)=130℃。
【0089】
実施例4
第二のポリマー−(NB−P(pHS−コ−PhMI))の合成。この実施例も、第二のポリマーの製造を実証するために実行された。ここで用いた用語は以下の通りである:NB−連鎖移動剤を伴うノルボルネン;pHS−パラ−ヒドロキシスチレン;PhMI−N−フェニルマレイミド;P(pHS−コ−PhMI)−ポリ(パラ−ヒドロキシスチレン−コ−N−フェニルマレイミド)ここで、パラ−ヒドロキシスチレンは重合されて8の繰り返し単位を有し、およびN−フェニルマレイミドはこのポリ(パラ−ヒドロキシスチレン)に重合されており、これも8の繰り返し単位を有する。
【0090】
第二のポリマーは、次の通り製造された。N雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した50mLシュレンクフラスコに、NB−CTA(802mg、2.08mmol)、pHS(2.50g、20.8mmol)、PhMI(3.60g、20.8mmol)、AIBN(16.9mg、104μmol)および20mLの無水1,4−ジオキサンを添加した。この混合物を10分間RTで撹拌し、4サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、反応混合物を15分間RTで撹拌し、65℃で予熱した油浴に浸漬して共重合を開始させた。4.5時間後、液体Nで反応フラスコを冷却することにより重合をクエンチした。コポリマーは、600mLのジエチルエーテルへの2回の沈殿により精製された。ピンク色の沈殿物を遠心分離によって回収し、400mLのジエチルエーテルおよび400mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量2.8g、両方のモノマーに対し約60%の転化率に基づく収率73%。Mn,GPC=2,730Da(RI検出器)、Mn,GPC=3,800Da(レーザー検出器)、PDI=1.12。H NMR、13C NMRおよびIRスペクトルは、実施例3において測定されたものに類似していた。ガラス転移温度(T)=130℃。
【0091】
実施例5
ブラシIの合成
この実施例は、構造((PNB−g−PTFpHS12−b−(PNB−g−P(pHS13−コ−PhMI1326)を有するブラシ(グラフトブロックコポリマー)の製造を実証するために実行された。ここで採用した用語は以下の通りである:PNB−骨格ポリマーであるポリノルボルネン;PTFpHS12−12の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン);P(pHS13−コ−PhMI13)−は実施例3と同じである。そのため、((PNB−g−PTFpHS12−b−(PNB−g−P(pHS13−コ−PhMI1326)は、骨格上に12の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)(第一のポリマー)がグラフトされた、3の繰り返し単位のポリノルボルネン骨格を有する第一のブロック、ならびに、骨格上に13の繰り返し単位のポリ(パラヒドロキシスチレン)および13の繰り返し単位のポリ(N−フェニルマレイミド)を含むコポリマー(第二のポリマー)がグラフトされた、26の繰り返し単位のポリノルボルネン骨格を有する第二のブロックを含むコポリマーである。
【0092】
雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した10mLシュレンクフラスコに、修飾グラブス触媒(3.37mg、4.63μmol)および0.6mLの無水CHClを添加した。この反応混合物をRTで1分間撹拌して均質な溶液を得て、3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、実施例1(51.0mg、18.5μmol)の0.2mL無水THF(2サイクルの凍結−排気−融解によって脱気)中の溶液を気密シリンジで素早く添加した。反応混合物をRTで40分間撹拌させた後、実施例3(584mg、139μmol)の4.3mLの無水THF/CHCl(v/v=3.8:0.5、2サイクルの凍結−排気−融解によって脱気)中の溶液を気密シリンジで添加した。反応混合物をRTで4時間撹拌した後、0.6mLのエチルビニルエーテル(EVE)を添加することにより重合をクエンチし、RTで1時間さらに撹拌した。この溶液を5mLのTHFで希釈し、180mLのMeOHに沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、20mLのTHF/アセトン(v/v=1:1)に再び溶解した。次に、溶液を200mLのジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、200mLのジエチルエーテルおよび200mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量270mg、実施例1に対して約80%の転化率および実施例3に対して約90%の転化率にそれぞれ基づく収率48%。Mn,GPC=189kDa(レーザー検出器)、PDI=1.25。H NMR(500MHz,DMSO−d)δ10.95−11.90(m,フェノールOH)、9.20−9.80(br,フェノールOH)、7.42−7.84(m,RAFT官能基に由来するAr H)、6.20−8.20(br,Ar H)、4.98−5.56(br,ブラシ骨格CH=CH)、0.76−4.06(m,pHS、TFpHS、およびMI単位骨格およびPNB骨格に由来するCHおよびCH)。13C NMR(125 MHz,DMSO−d)δ 197.8、177.3、172.1、165.0、157.2、132.4、129.3、127.3、115.9、51.7、42.2、34.8。IR(cm−1):3000−3690、2770−2990、1774、1697、1607、1509、1450、1380、1262、1175、1030、886、841、750。ガラス転移温度(T)は、それぞれ130および150℃であった。
【0093】
実施例6
ブラシIIの合成
この実施例もまた、構造((PNB−g−PTFpHS10−b−(PNB−g−P(pHS−コ−PhMI37)を有するブラシの製造を実証するために実行された。ここで採用した用語は以下の通りである:PNB−骨格ポリマーであるポリノルボルネン;PTFpHS10−10の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン);P(pHS−コ−PhMI)−は実施例4におけるのと同じ。そのため、((PNB−g−PTFpHS10−b−(PNB−g−P(pHS−コ−PhMI37)は、骨格上に10の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)(第一のポリマー)がグラフトされた4の繰り返し単位のポリノルボルネン骨格を有する第一のブロック、ならびに、骨格上に8の繰り返し単位のポリ(パラヒドロキシスチレン)および8の繰り返し単位のポリ(N−フェニルマレイミド)を含むコポリマー(第二のポリマー)がグラフトされた、37の繰り返し単位のポリノルボルネン骨格を有する第二のブロックを含むコポリマーである。
【0094】
この実施例で採用した用語は、実施例5で採用したものと同じである。N雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した10mLシュレンクフラスコに、修飾グラブス触媒(5.25mg、7.21μmol)および0.45mLの無水CHClを添加した。修飾グラブス触媒は、上の式(4)に示される。
【0095】
反応混合物を1分間RTで撹拌して均質な溶液を得て、3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、0.65mLの無水THF(3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気)中の実施例2(69.7mg、30.3μmol)の溶液を気密シリンジで素早く添加した。この反応混合物をRTで40分間撹拌させた後、5.0mLの無水THF(3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気)中の実施例4(550mg、201μmol)の溶液を気密シリンジで添加した。反応混合物をRTで3時間撹拌した後、0.5mLのエチルビニルエーテル(EVE)を添加することにより重合をクエンチし、RTで1時間さらに撹拌した。この溶液を90mLのジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、20mLのアセトンに再び溶解させた。次に、この溶液を200mLのジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、200mLのジエチルエーテルおよび200mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量550mg、実施例2に対して約90%の転化率および実施例4に対して約95%の転化率にそれぞれ基づく収率94%。Mn,GPC=152kDa(レーザー検出器)、PDI=1.26。H NMR、13C NMRおよびIRスペクトルは、実施例5についてのものに類似していた。ガラス転移温度は、それぞれ130および150℃であった。
【0096】
実施例7
この実施例は、表面エネルギー低下部分を有するブロックを含有しない対照試料の製造を実証する。対照試料は、式((PNB−g−P(pHS13−コ−PhMI1324)を有し、13の繰り返し単位のポリ(パラヒドロキシスチレン)および13の繰り返し単位のポリ(N−フェニルマレイミド)を含むコポリマーをもつ24の繰り返し単位を有するポリノルボルネンの骨格ポリマーを含有する骨格を含む。このポリマーは、フッ素原子を含有するブラシと同じ程度の自己組織化を示さないブラシを形成する(フッ素原子は表面エネルギー低下部分の一例である)。
【0097】
このブラシポリマーは、次の通り製造された。N雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した10mLシュレンクフラスコに、修飾グラブス触媒(1.04mg、1.43μmol)および0.3mLの無水CHClを添加した。この反応混合物を1分間RTで撹拌して均質な溶液を得て、3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、0.9mLの無水THF(3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気)中の実施例3(120mg、28.6μmol)の溶液を気密シリンジで素早く添加した。反応混合物をRTで60分間撹拌させた後、0.3mLのEVEを添加することにより重合をクエンチし、RTで1時間さらに撹拌した。この溶液を60mLのジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、5mLのアセトンに再び溶解した。次に、この溶液を90mLのジエチルエーテル/ヘキサン(v/v=2:1)に沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、100mLのヘキサンで2回洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量95mg、実施例3に対して約95%の転化率に基づく収率83%。Mn,GPC=165kDa(レーザー検出器)、PDI=1.16。H NMR(500MHz,DMSO−d)δ9.20−9.80(br,フェノールOH)、7.42−7.84(m,RAFT官能基に由来するAr H)、6.20−8.20(br,Ar H)、4.98−5.56(br,ブラシ骨格CH=CH)、0.76−4.06(m,pHS、およびMI単位骨格およびPNB骨格に由来するCHおよびCH)。13C NMR(125 MHz,DMSO−d)δ 197.6、177.4、172.0、165.0、157.2、132.4、129.3、127.3、115.9、51.7、42.2、34.8。IR(cm−1):2880−3690、1775、1694、1613、1596、1515、1499、1452、1381、1174、841、750、689。ガラス転移温度(T):130℃。
【0098】
実施例8
この実施例は、実施例5(ブラシI)、6(ブラシII)または7(ブラシ対照)のブラシからのポリマー薄膜の製造を実証するために実行された。シクロヘキサノン中のそれぞれのポリマーの溶液(1.0重量%)を調製し、使用前にPTFEシリンジフィルター(孔径220nm)に通した。この溶液をUV−O前処理シリコンウエハの上に塗布し(塗布されたポリマー溶液の量は、ウエハ表面全体を覆うのに十分であるべきである)、500回転/分(rpm)で5秒(s)間スピンコーティングし、その後に3,000rpmで30秒間スピニングすることにより(各工程に対して200rpm/sの加速度)、それぞれの薄膜を18〜25nmの厚さで得た。
【0099】
ポリマー膜をコーティングしたシリコンウエハを、真空下20時間、飽和アセトン雰囲気で満たしたデシケーター中で保持した。アニーリング工程の後、真空下でポンプ吸引することにより過剰な溶媒を除去し、Nガスをゆっくり充填し戻してデシケーターを開けた。
【0100】
次に、それぞれの膜をタッピングモード原子間力顕微鏡観察(AFM)により特性決定した。対照試料(実施例7)から得た25nm厚さの膜は、顕著な相分離を示した。図3は、これらの試料の顕微鏡写真を表す。図3Aは、ブラシ対照が円柱状の集合体の形成を示唆することを示す。しかし、これらの集合体は、低い程度の秩序および比較的大きいサイズを示した(>50nm、図3Aの挿入された像から推定)。
【0101】
比較すると、ブラシI(実施例5)およびII(実施例6)からの膜は、0.2nm未満の二乗平均平方根(RMS)粗さで十分に均質な表面トポロジーを示した(それぞれ、図3Bおよび3C)。膜厚は、AFMにより測定して、ブラシIおよびIIについて、それぞれ、18±2nmおよび22±2nmであった。これは各々のブラシ前駆体のPNB骨格の輪郭長さ(ブラシIおよびIIについて、それぞれ、17.4および24.6nm)との一致を示した。そのため、分子ブラシの半径方向寸法の調節可能性は、膜厚を操作するための実現可能なアプローチを提供することができ、そのため、直接描画リソグラフィプロセスにおけるパターンフィーチャを決定するためのパラメータを提供することができる。
【0102】
ブラシ膜の表面トポグラフィー均質性およびほぼ単分子の層厚さは、膜内のブラシポリマー成分がウエハ表面に対して垂直の配向を採るのを好むことを示唆する。理論に縛られるものではないが、この垂直方向のアラインメントの原因はブラシポリマーの本質的に円柱状のトポロジーであり得て、それは共有結合的に繋がれた密集したポリマーグラフト間の強いサイズ排除作用によって誘導される。独特のグラフトブロックコポリマー中のフッ素化ブロックセグメントは、それらの比較的低い表面エネルギーによって動かされるそれらの優先的表面移動に起因して、垂直方向のアラインメントを実現するのを促進し支援する効果に寄与していると思われる。
【0103】
実施例9
この実施例は、実施例5(ブラシI)、6(ブラシII)または7(ブラシ対照)のブラシを含有する組成物からのポリマー薄膜の製造を実証するため、かつ、膜の架橋ならびに(膜の一部分をUV光かまたは電子線のいずれかに露光することによる)ネガ型フォトレジストの調製を実証するために実行された。
【0104】
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを光酸発生剤(PAG)として使用し、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサキス(メトキシメチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(HMMM)を、多価架橋剤と酸クエンチャーの両方として選択した。ポリマー:HMMM:PAGの溶液を、シクロヘキサノン中、0.75:0.15:0.10重量%の重量比で混合し、調製し、PTFEシリンジフィルター(孔径220nm)に通した後、実施例8に詳述されるように膜をキャスティングした。この溶液をUV−O前処理シリコンウエハの上に塗布し(塗布された溶液の量は、ウエハ表面全体を覆うのに十分であるべきである)、500rpmで5秒間スピンコーティングし、その後に3,000rpmで30秒間スピニングすることにより(各工程に対して200rpm/sの加速度)、25〜28nmの厚さの薄膜を得た。
【0105】
ポリマーレジスト膜を塗布したウエハを、石英フォトマスクを介して約20cmの距離で2分間、UV光源(254nm、6W)に露光した。露光後、露光した膜を120℃のホットプレートで1分間ポストベークし、次にウエハを0.26M水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液の中に30秒間浸漬することによって、非露光領域を現像し、その後DI水ですすぎ、N流で乾燥させた。
【0106】
この膜は、あるいは、予め設計されたパターンによる電子線「書き込み」で露光され、露光されたウエハを90℃のホットプレートで1分間ポストベークし、0.26M TMAH水溶液の中に1分間浸漬した。ウエハをDI水ですすぎ、N流で乾燥させた。
【0107】
この薄膜をタッピングモード原子間力顕微鏡観察(AFM)により特性決定した。結果は図3の顕微鏡写真に示される。ブラシ対照からの25nm厚さの膜は、顕著な相分離を示し(図3Aの相の像)、それは円柱状の集合体の形成を示唆した。しかし、これらの集合体は、低い程度の秩序および比較的大きいサイズを示した(>50nm、図3Aの挿入された像から推定)。比較すると、ブラシIおよびIIからの膜は、0.2nm未満のRMS粗さで十分に均質な表面トポグラフィーを示した(それぞれ、図3Bおよび3C)。膜厚は、AFMにより測定して、ブラシIおよびIIについて、それぞれ、18±2nmおよび22±2nmであり、各々のブラシ前駆体のポリノルボルネン骨格の輪郭長さ(ブラシIおよびIIについて、それぞれ、17.4および24.6nm)との一致を示した。
【0108】
ブラシ膜の表面トポグラフィー均質性およびほぼ単分子の層厚さは、膜内のブラシポリマー成分がウエハ表面に対して垂直の配向を採るのを好んだことを示唆する。垂直方向のアラインメントの原因はブラシポリマーの本質的に円柱状のトポロジーであり得て、それは骨格ポリマーにグラフトされている共有結合したポリマー間の強いサイズ排除作用によって誘導される。一方、グラフトブロックコポリマー中のフッ素化ブロックセグメントは、それらの比較的低い表面エネルギーによって動かされるそれらの優先的表面移動に起因して、垂直方向のアラインメントを促進し支援する効果に寄与することになる。
【0109】
実施例10
この実施例は、化学増幅レジストとしてのリソグラフィ用途におけるグラフトブロックコポリマーの性能を確認するために実行された。実施例9に記載される電磁放射線への露光の後、試料を下に詳述されるポストベークに供した。トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを光酸発生剤(PAG)として使用し、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサキス(メトキシメチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(HMMM)を、多価架橋剤と酸クエンチャーの両方として選択した。実施例9は、レジストの製造を詳述する。それぞれのブラシの原子間力顕微鏡写真(AFM)像を図4に示す。
【0110】
得られるパターンのAFMトポグラフィー像から、顕著に低いラインエッジラフネス(LER)および低いライン広幅化効果(line−broadening effects)によって示されるように、ブラシI(図4A)は、ブラシII(図4B)よりも良好なリソグラフィ性能を示す。架橋ポリマー残基は、ブラシIIレジストのパターン現像領域内に存在した、このことは、ブラシIIのCARがブラシIのCARよりも高い感度を有することを示した。両方のブラシに基づくCARは、マイクロスケールの254nmフォトリソグラフィ調査においてブラシ対照に基づくCAR(図4C)よりも有利な点を示さなかったが、ブラシレジストの電子線リソグラフィ(EBL)は、高解像度のナノスコピックパターン形成においてブラシ対照対応物よりもそれらが著しく優れていることを明らかにした。直接EBLは、露光後ベーク(PEB)のないEBLプロセスである。これは、ボトルブラシを使用することの利点である、すなわち、それは直接EBLの使用を可能にする。
【0111】
ブラシI、IIおよびブラシ対照に基づくCAR(それぞれ、CAR−I、CAR−II、およびCAR−LC)の露光後ベークEBL(PEB−EBL)研究は、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネートをPAGとして使用すると同時に、UV−フォトリソグラフィ(上に詳述)に使用されるものと同様のレジスト配合物を適用することにより実行された。10〜100nmの範囲のライン幅フィーチャをもつ、設計されたパターンを用いて、各々の得られるラインの高さおよび幅を2つの露光線量(250および400μC/cm、それぞれ、約7.5および12mJ/cmのEUV(13.5nm)線量に相当)でAFMにより測定することによってそれらのリソグラフィ性能を評価した。図2A〜2Dに示されるように、CAR−IおよびCAR−IIの両方は、各々の露光線量で完全なライン完全性(full line integrities)をもつパターンを作り出すことができた。比較すると、CAR−BC(ブラシ対照)からのパターンだけが、相対的に高い線量(400μC/cm)でさえも、50〜100nmの設計されたラインについて合理的なフィーチャを有していただけであった(図2F)。さらに、図2F中のパターン形成されたラインのパラメータは、本当に実際的な目的には適格でなかった(データは示さず)。
【0112】
この研究のブラシCARに関して、潜在的な30nm〜100nmラインのラインフィーチャは、特に400μC/cm露光後のCAR−IIについて満足のいくものであった(図2E)。本発明者らは、CAR−IIの良好な潜在的ライン幅フィーチャは、ブラシIIの固有の幾何学的要因によって誘導されると推測した。IとIIの両方が円柱状の形態を有するが、IIの比較的短いグラフトは、基体表面に垂直に整列した後の鎖の絡まりを減少させることによってそれを「より細い」円柱にしている。現在、約30nmの孤立したラインが、上述の条件下でCAR−IIに対して得られた。そのため、現在の「グラフトスルー」合成戦略によって容易に実現することのできる、ブラシ分子の長さ方向および幅方向の寸法の調整は、リソグラフィ性能に重要な役割を果たし、最終的には、化学組成とともに、ブラシ骨格およびグラフト長さのさらなる体系的な最適化によって、分子画素(molecular pixels)を実現することができたと結論付けることができる。
【符号の説明】
【0113】
200 ポリマー性グラフトブロックコポリマー
202 ポリマー骨格
203 第一のポリマー
204 グラフトポリマー
205 第二のポリマー
図1
図2A
図2B
図3
図4