【実施例】
【0074】
この実施例は、グラフトブロックコポリマーの調製を実証するために行われる。第一のブロックは、第一のポリマー、すなわちポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)がグラフトされたポリノルボルネン骨格ポリマーを含む。第二のブロックは、第二のポリマー、すなわちポリ(パラヒドロキシスチレン)とポリ(N−フェニルマレイミド)のコポリマーがグラフトされたポリノルボルネン骨格ポリマーを含む。
【0075】
グラフトブロックコポリマーの製造に使用される材料は次の通りである:
【0076】
修飾されたグラブス触媒、4−ヒドロキシスチレン(pHS)、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ヒドロキシスチレン(TFpHS)、およびノルボルネン−連鎖移動剤(NB−CTA)を、以下の参照文献に記載される文献報告に従って合成した:
1.Li,Z.;Ma,J.;Lee,N.S.;Wooley,K.L.J.Am.Chem.Soc.2011,133,1228。
2.Amir,R.J.;Zhong,S.;Pochan,D.J.;Hawker,C.J.,J.Am.Chem.Soc.2009,131,13949。
3.Pitois,C.;Wiesmann,D.;Lindgren,M.;Hult,A.Adv.Mater.2001,13,1483。
4.Li,A.;Ma,J.;Sun,G.;Li,Z.;Cho,S.;Clark,C.;Wooley,K.L.J.Polym.Sci.,Part A:Polym.Chem.2012,50,1681。
【0077】
N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサキス(メトキシメチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(HMMM)は、TCIより購入され、さらなる精製を行わずに使用された。光酸発生剤(PAG)−フォトリソグラフィ用のトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、および電子線リソグラフィ(EBL)用のトリフェニルスルホニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネートは、それぞれ、ダウ・エレクトロニック・マテリアルズにより提供された。その他の化学物質はAldrich、Acros、およびVWRより購入し、特に断りのない限りさらなる精製を行わずに使用した。使用の前に、テトラヒドロフラン(THF)はナトリウムを用いて蒸留され、N
2下で貯蔵された。ジクロロメタン(CH
2Cl
2)は水素化カルシウムを用いて蒸留され、窒素下で貯蔵された。
【0078】
前駆体および生成物の分析に用いた計測器は次の通り詳述される:
1Hおよび
13C NMRスペクトルは、Mercuryソフトウェアを用いるUNIX(登録商標)コンピュータにインターフェース接続されたVarian 500MHz分光計で記録された。化学シフトは、溶媒のプロトン共鳴を参照とした。IRスペクトルは、IR Prestige 21システム(島津製作所)で記録され、IRソリューションソフトウェアを用いて分析された。
【0079】
ポリマー分子量および分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された。GPCは、Waters 2414示差屈折計、PD2020デュアルアングル(15°および90°)光散乱検出器(Precision Detectors,Inc.)、および3カラムシリーズ(PLゲル5マイクロメートル(μm)混合C、500オングストローム(Å)、および10
4Å、300×7.5ミリメートル(mm)カラム;Polymer Laboratories,Inc.)を装備した、Waters 1515HPLC(Waters Chromatography,Inc.)で行われた。システムを、1分当たり1.0ミリリットル(mL/分)の流量でポリマー溶媒および溶出剤として機能したTHF中、40℃で平衡化させた。ポリマー溶液は、既知濃度(3〜5ミリグラム/ミリリットル(mg/mL))で調製され、200マイクロリットル(μL)の注入容積が使用された。データ収集および分析は、それぞれ、Precision AcquireソフトウェアおよびDiscovery 32ソフトウェア(Precision Detectors,Inc)で実施された。検出器間遅延容積および光散乱検出器較正定数は、ほぼ単分散のポリスチレン標準物質を用いる較正によって決定された(Polymer Laboratories、M
p=90キロダルトン(kDa)、M
w/M
n<1.04)。示差屈折計は、既知の特定の屈折率増分dn/dc(0.184ミリリットル/グラム(mL/g))の、標準のポリスチレン標準物質(SRM706NIST)によって較正された。次に、分析したポリマーのdn/dc値を示差屈折計応答から決定した。
【0080】
膜の表面エネルギーは、光学張力計(KSV Instruments,Attension Theta)で接触角を測定した後にOwens−Wendt−Rabel−Kaelble(OWRK)法を用いて算出された。X線光電子分光法(XPS)実験は、単色アルミニウムX線源(10ミリアンペア(mA)、12キロボルト(kV))を備えたKratos Axis Ultra XPSシステムで実施された。結合エネルギースケールは、主要Cls(炭素ls)ピークについて285電子ボルト(eV)に較正された。
【0081】
二次イオン質量分析(SIMS)測定は、飛行時間型(TOF)質量分析器に連結された注文製のSIMS計測器で実行された。これらの研究で使用される計測器は、50キロ電子ボルト(keV)の全衝撃エネルギーでC
60+2投射体を生成する能力のあるC
60噴出源を備えている。ポリマー試料のSIMS分析は、表面の0.1%未満が衝撃を受ける、スーパースタティックレジーム(superstatic regime)で実行された。この制限は、表面が一次イオンにより衝撃を受けるたびに、表面の撹乱されていない範囲が標本抽出されたことを確実にした。このスーパースタティックな(superstatic)測定は、単一の一次イオンが表面に衝撃を及ぼし、そしてその次の一次イオンがその表面に衝撃を及ぼす前に、二次イオンが回収されて分析される、事象ごとの衝突検出モードで実行された。単一の衝撃で検出されたすべての二次イオンは、表面の半径10nmから起こった。
【0082】
各々のポリマー試料は、TOF−SIMSによって試料上の異なる位置で3回測定された。各々の測定は、半径約100μmの領域での約3×10
6の投射体による衝撃からなった。試料の一貫性を確保するために複数の測定が実施された。フッ素含有分子の表面被覆率の定量的推定値は、フッ素(F)アニオンに相当するm/z=19でのシグナルおよびC
8F
4H
3Oアニオンに相当するm/z=191でのシグナルを用いることにより、各々の試料について算出した。
【0083】
EBLは、DEBENレーザーステージを装備したJEOL JSM−6460走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて実行された。このシステムは、200〜600μC/cm
2(6〜18ミリジュール/平方センチメートル(mJ/cm
2)に相当)に及ぶ一連の露光線量を用いて、30kVの加速電圧および10ピコアンペア(pA)のビーム電流で操作された。様々なライン幅、すなわちそれぞれ10、20、30、40、50、60、70、80、90、および100nm、ならびに固定された500nmのスペースを含むフィーチャを備えた5×5μmのパターンを設計し、ポリマーレジストのリソグラフィ挙動を評価するために使用した。
【0084】
原子間力顕微鏡観察(AFM)イメージングは、標準的なシリコンチップ(VISTAプローブ、T190−25、共振定数:190キロヘルツ(kHz)、チップ半径:約10nm、ばね定数:48ニュートン/メートル(N/m))を用いて、タッピングモードでMFP−3Dシステム(Asylum Research)で実施された。電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)像は、JEOL JSM−7500Fで7kVの加速電圧を用いて収集された。
【0085】
実施例1
第一のポリマー(NB−P(TFpHS)
12)の合成。この実施例は、第一のポリマーの製造を実証するために実行された。ここで用いた用語は以下の通りである:NB−連鎖移動剤を伴うノルボルネン;TF−テトラフルオロ;pHS−パラ−ヒドロキシスチレン;P(TFpHS)
12)−12の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)。
【0086】
第一のポリマーは、以下の通り製造された。N
2雰囲気下で炎乾燥させた磁気撹拌棒を装備した25mLシュレンクフラスコに、ノルボルネン−連鎖移動剤(NB−CTA)(301ミリグラム(mg)、0.782ミリモル(mmol))、テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン(TFpHS)(4.49g、23.4mmol)、アゾビスイソニトリル(AIBN)(12.7mg、78.2マイクロモル(μmol))、および10.5mLの2−ブタノンを添加した。この混合物を10分間(min)室温(RT)で撹拌し、5サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、反応混合物を10分間RTで撹拌し、65℃で予熱した油浴に浸漬して共重合を開始させた。11時間(h)後、液体窒素(N
2)で反応フラスコを冷却することにより重合をクエンチした。コポリマーは、300ミリリットル(mL)のヘキサンへの2回の沈殿により精製された。ピンク色の油状物質を遠心分離によって回収し、300mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。収量は1.4グラム(g)の生成物であった、これは約45%のモノマー転化率に基づいて60%の収率である。M
n,GPC=2,750ダルトン(Da)(レーザー検出器)、PDI=1.07。
1H NMR(500MHz,DMSO−d
6)δ10.95−11.90(m,フェノールOH)、7.42−7.84(m,RAFT官能基に由来するAr H)、6.08(s,NB CH=CH)、5.10−5.30(br,骨格鎖末端CH)、3.90−4.10(m,NB CH
2OC(O))、1.02−3.45(m,TFpHS単位骨格およびNB環に由来するすべてのCH
2およびCH)。
13C NMR(125MHz,DMSO−d
6)δ206.9、172.2、145.6、144.3、144.1、138.7、137.2、136.5、135.0、133.8、129.3、127.0、123.2、108.4、73.1、68.4、63.0、45.0、43.5、42.4、41.5、40.5、38.3、37.9、35.8、34.6、34.4、33.2、31.4、31.1、29.6、29.4、28.9。IR(cm
−1):2610−3720、1714、1658、1523、1495、1459、1351、1245、1142、1048、947、866。T
g=150℃。
【0087】
実施例2
この実施例は、別の第一のポリマーの製造を実証するために実行された。
【0088】
第一のポリマー−(NB−P(TFpHS)
10)の合成。ここで用いた用語は以下の通りである:NB−連鎖移動剤を伴うノルボルネン;TF−テトラフルオロ;pHS−パラ−ヒドロキシスチレン;P(TFpHS)
10)−10の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)。
【0089】
第一のポリマーは、次の通り製造された。N
2雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した25mLシュレンクフラスコに、NB−CTA(510mg、1.32mmol)、TFpHS(5.06g、26.4mmol)、AIBN(12.9mg、79.2μmol)、および12mLの2−ブタノンを添加した。この混合物を10分間室温で撹拌し、5サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、反応混合物を10分間室温で撹拌し、65℃で予熱した油浴に浸漬して共重合を開始させた。11時間後、液体N
2で反応フラスコを冷却することにより重合をクエンチした。コポリマーは、300mLのヘキサンへの2回の沈殿により精製された。ピンク色の油状物質を遠心分離によって回収し、300mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量1.7g、約45%のモノマー転化率に基づく収率61%。M
n,GPC=2,450Da(レーザー検出器)、PDI=1.08。
1H NMR、
13C NMRおよびIRスペクトルは、第一のポリマーから得たものに類似していた。ガラス転移温度(T
g)=150℃。
【0090】
実施例3
第二のポリマー−(NB−P(pHS
13−コ−PhMI
13))の合成。この実施例は、第二のポリマーの製造を実証するために実行された。ここで用いた用語は以下の通りである:NB−連鎖移動剤を伴うノルボルネン;pHS−パラ−ヒドロキシスチレン;PhMI−N−フェニルマレイミド;P(pHS
13−コ−PhMI
13)−ポリ(パラ−ヒドロキシスチレン−コ−N−フェニルマレイミド)、ここで、パラ−ヒドロキシスチレンは重合されて13の繰り返し単位を有し、およびN−フェニルマレイミドはこのポリ(パラ−ヒドロキシスチレン)に重合されており、これも13の繰り返し単位を有する。
【0091】
第二のポリマーは、次の通り製造された。N
2雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した100mLシュレンクフラスコに、NB−CTA(635mg、1.65mmol)、pHS(3.95g、33.0mmol)、PhMI(5.76g、33.0mmol)、AIBN(26.7mg、165μmol)および35mLの無水1,4−ジオキサンを添加した。この混合物を10分間RTで撹拌し、4サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、反応混合物を15分間RTで撹拌し、65℃で予熱した油浴に浸漬して共重合を開始させた。6.5時間後、液体N
2で反応フラスコを冷却することにより重合をクエンチした。コポリマーは、600mLのジエチルエーテルへの2回の沈殿により精製された。ピンク色の沈殿物を遠心分離によって回収し、200mLのジエチルエーテルおよび200mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量3.4g、両方のモノマーに対し約55%の転化率に基づく収率60%。M
n,GPC=3,520Da(RI検出器)、M
n,GPC=6,870Da(レーザー検出器)、PDI=1.20。
1H NMR(500MHz,DMSO−d
6)δ9.20−9.80(br,フェノールOH)、6.20−7.92(m,Ar H)、6.08(br,NB CH=CH)、5.10−5.43(br,骨格鎖末端CH)、3.90−4.13(m,NB CH
2OC(O))、0.76−3.22(m,pHS単位骨格およびNB環に由来するすべてのCH
2およびCH、MI単位に由来するすべてのCH)。
13C NMR(125 MHz,DMSO−d
6)δ 204.9、176.8、171.8、156.7、154.9、136.8、136.2、132.0、129.7、129.0、128.8、126.8、115.5、114.7、68.0、61.9、51.6、44.6、43.2、42.2、41.1、37.6、34.8、34.6、34.4、33.2、31.4、31.1、29.6、29.4、28.9。IR(cm
−1):3118−3700、2790−3090、1774、1701、1610、1506、1450、1380、1262、1185、845、750.ガラス転移温度(T
g)=130℃。
【0092】
実施例4
第二のポリマー−(NB−P(pHS
8−コ−PhMI
8))の合成。この実施例も、第二のポリマーの製造を実証するために実行された。ここで用いた用語は以下の通りである:NB−連鎖移動剤を伴うノルボルネン;pHS−パラ−ヒドロキシスチレン;PhMI−N−フェニルマレイミド;P(pHS
8−コ−PhMI
8)−ポリ(パラ−ヒドロキシスチレン−コ−N−フェニルマレイミド)ここで、パラ−ヒドロキシスチレンは重合されて8の繰り返し単位を有し、およびN−フェニルマレイミドはこのポリ(パラ−ヒドロキシスチレン)に重合されており、これも8の繰り返し単位を有する。
【0093】
第二のポリマーは、次の通り製造された。N
2雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した50mLシュレンクフラスコに、NB−CTA(802mg、2.08mmol)、pHS(2.50g、20.8mmol)、PhMI(3.60g、20.8mmol)、AIBN(16.9mg、104μmol)および20mLの無水1,4−ジオキサンを添加した。この混合物を10分間RTで撹拌し、4サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、反応混合物を15分間RTで撹拌し、65℃で予熱した油浴に浸漬して共重合を開始させた。4.5時間後、液体N
2で反応フラスコを冷却することにより重合をクエンチした。コポリマーは、600mLのジエチルエーテルへの2回の沈殿により精製された。ピンク色の沈殿物を遠心分離によって回収し、400mLのジエチルエーテルおよび400mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量2.8g、両方のモノマーに対し約60%の転化率に基づく収率73%。M
n,GPC=2,730Da(RI検出器)、M
n,GPC=3,800Da(レーザー検出器)、PDI=1.12。
1H NMR、
13C NMRおよびIRスペクトルは、実施例3において測定されたものに類似していた。ガラス転移温度(T
g)=130℃。
【0094】
実施例5
ブラシIの合成
この実施例は、構造((PNB−g−PTFpHS
12)
3−b−(PNB−g−P(pHS
13−コ−PhMI
13)
26)を有するブラシ(グラフトブロックコポリマー)の製造を実証するために実行された。ここで採用した用語は以下の通りである:PNB−骨格ポリマーであるポリノルボルネン;PTFpHS
12−12の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン);P(pHS
13−コ−PhMI
13)−は実施例3と同じである。そのため、((PNB−g−PTFpHS
12)
3−b−(PNB−g−P(pHS
13−コ−PhMI
13)
26)は、骨格上に12の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)(第一のポリマー)がグラフトされた、3の繰り返し単位のポリノルボルネン骨格を有する第一のブロック、ならびに、骨格上に13の繰り返し単位のポリ(パラヒドロキシスチレン)および13の繰り返し単位のポリ(N−フェニルマレイミド)を含むコポリマー(第二のポリマー)がグラフトされた、26の繰り返し単位のポリノルボルネン骨格を有する第二のブロックを含むコポリマーである。
【0095】
N
2雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した10mLシュレンクフラスコに、修飾グラブス触媒(3.37mg、4.63μmol)および0.6mLの無水CH
2Cl
2を添加した。この反応混合物をRTで1分間撹拌して均質な溶液を得て、3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、実施例1(51.0mg、18.5μmol)の0.2mL無水THF(2サイクルの凍結−排気−融解によって脱気)中の溶液を気密シリンジで素早く添加した。反応混合物をRTで40分間撹拌させた後、実施例3(584mg、139μmol)の4.3mLの無水THF/CH
2Cl
2(v/v=3.8:0.5、2サイクルの凍結−排気−融解によって脱気)中の溶液を気密シリンジで添加した。反応混合物をRTで4時間撹拌した後、0.6mLのエチルビニルエーテル(EVE)を添加することにより重合をクエンチし、RTで1時間さらに撹拌した。この溶液を5mLのTHFで希釈し、180mLのMeOHに沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、20mLのTHF/アセトン(v/v=1:1)に再び溶解した。次に、溶液を200mLのジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、200mLのジエチルエーテルおよび200mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量270mg、実施例1に対して約80%の転化率および実施例3に対して約90%の転化率にそれぞれ基づく収率48%。M
n,GPC=189kDa(レーザー検出器)、PDI=1.25。
1H NMR(500MHz,DMSO−d
6)δ10.95−11.90(m,フェノールOH)、9.20−9.80(br,フェノールOH)、7.42−7.84(m,RAFT官能基に由来するAr H)、6.20−8.20(br,Ar H)、4.98−5.56(br,ブラシ骨格CH=CH)、0.76−4.06(m,pHS、TFpHS、およびMI単位骨格およびPNB骨格に由来するCH
2およびCH)。
13C NMR(125 MHz,DMSO−d
6)δ 197.8、177.3、172.1、165.0、157.2、132.4、129.3、127.3、115.9、51.7、42.2、34.8。IR(cm
−1):3000−3690、2770−2990、1774、1697、1607、1509、1450、1380、1262、1175、1030、886、841、750。ガラス転移温度(T
g)は、それぞれ130および150℃であった。
【0096】
実施例6
ブラシIIの合成
この実施例もまた、構造((PNB−g−PTFpHS
10)
4−b−(PNB−g−P(pHS
8−コ−PhMI
8)
37)を有するブラシの製造を実証するために実行された。ここで採用した用語は以下の通りである:PNB−骨格ポリマーであるポリノルボルネン;PTFpHS
10−10の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン);P(pHS
8−コ−PhMI
8)−は実施例4におけるのと同じ。そのため、((PNB−g−PTFpHS
10)
4−b−(PNB−g−P(pHS
8−コ−PhMI
8)
37)は、骨格上に10の繰り返し単位を有するポリ(テトラフルオロ−パラ−ヒドロキシスチレン)(第一のポリマー)がグラフトされた4の繰り返し単位のポリノルボルネン骨格を有する第一のブロック、ならびに、骨格上に8の繰り返し単位のポリ(パラヒドロキシスチレン)および8の繰り返し単位のポリ(N−フェニルマレイミド)を含むコポリマー(第二のポリマー)がグラフトされた、37の繰り返し単位のポリノルボルネン骨格を有する第二のブロックを含むコポリマーである。
【0097】
この実施例で採用した用語は、実施例5で採用したものと同じである。N
2雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した10mLシュレンクフラスコに、修飾グラブス触媒(5.25mg、7.21μmol)および0.45mLの無水CH
2Cl
2を添加した。修飾グラブス触媒は、上の式(4)に示される。
【0098】
反応混合物を1分間RTで撹拌して均質な溶液を得て、3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、0.65mLの無水THF(3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気)中の実施例2(69.7mg、30.3μmol)の溶液を気密シリンジで素早く添加した。この反応混合物をRTで40分間撹拌させた後、5.0mLの無水THF(3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気)中の実施例4(550mg、201μmol)の溶液を気密シリンジで添加した。反応混合物をRTで3時間撹拌した後、0.5mLのエチルビニルエーテル(EVE)を添加することにより重合をクエンチし、RTで1時間さらに撹拌した。この溶液を90mLのジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、20mLのアセトンに再び溶解させた。次に、この溶液を200mLのジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、200mLのジエチルエーテルおよび200mLのヘキサンで洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量550mg、実施例2に対して約90%の転化率および実施例4に対して約95%の転化率にそれぞれ基づく収率94%。M
n,GPC=152kDa(レーザー検出器)、PDI=1.26。
1H NMR、
13C NMRおよびIRスペクトルは、実施例5についてのものに類似していた。ガラス転移温度は、それぞれ130および150℃であった。
【0099】
実施例7
この実施例は、表面エネルギー低下部分を有するブロックを含有しない対照試料の製造を実証する。対照試料は、式((PNB−g−P(pHS
13−コ−PhMI
13)
24)を有し、13の繰り返し単位のポリ(パラヒドロキシスチレン)および13の繰り返し単位のポリ(N−フェニルマレイミド)を含むコポリマーをもつ24の繰り返し単位を有するポリノルボルネンの骨格ポリマーを含有する骨格を含む。このポリマーは、フッ素原子を含有するブラシと同じ程度の自己組織化を示さないブラシを形成する(フッ素原子は表面エネルギー低下部分の一例である)。
【0100】
このブラシポリマーは、次の通り製造された。N
2雰囲気下で炎乾燥させた磁気攪拌棒を装備した10mLシュレンクフラスコに、修飾グラブス触媒(1.04mg、1.43μmol)および0.3mLの無水CH
2Cl
2を添加した。この反応混合物を1分間RTで撹拌して均質な溶液を得て、3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気した。最後のサイクルの後、0.9mLの無水THF(3サイクルの凍結−排気−融解によって脱気)中の実施例3(120mg、28.6μmol)の溶液を気密シリンジで素早く添加した。反応混合物をRTで60分間撹拌させた後、0.3mLのEVEを添加することにより重合をクエンチし、RTで1時間さらに撹拌した。この溶液を60mLのジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、5mLのアセトンに再び溶解した。次に、この溶液を90mLのジエチルエーテル/ヘキサン(v/v=2:1)に沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、100mLのヘキサンで2回洗浄し、残りの溶媒を除去するために一晩真空下で保持した。生成物の収量95mg、実施例3に対して約95%の転化率に基づく収率83%。M
n,GPC=165kDa(レーザー検出器)、PDI=1.16。
1H NMR(500MHz,DMSO−d
6)δ9.20−9.80(br,フェノールOH)、7.42−7.84(m,RAFT官能基に由来するAr H)、6.20−8.20(br,Ar H)、4.98−5.56(br,ブラシ骨格CH=CH)、0.76−4.06(m,pHS、およびMI単位骨格およびPNB骨格に由来するCH
2およびCH)。
13C NMR(125 MHz,DMSO−d
6)δ 197.6、177.4、172.0、165.0、157.2、132.4、129.3、127.3、115.9、51.7、42.2、34.8。IR(cm
−1):2880−3690、1775、1694、1613、1596、1515、1499、1452、1381、1174、841、750、689。ガラス転移温度(T
g):130℃。
【0101】
実施例8
この実施例は、実施例5(ブラシI)、6(ブラシII)または7(ブラシ対照)のブラシからのポリマー薄膜の製造を実証するために実行された。シクロヘキサノン中のそれぞれのポリマーの溶液(1.0重量%)を調製し、使用前にPTFEシリンジフィルター(孔径220nm)に通した。この溶液をUV−O
3前処理シリコンウエハの上に塗布し(塗布されたポリマー溶液の量は、ウエハ表面全体を覆うのに十分であるべきである)、500回転/分(rpm)で5秒(s)間スピンコーティングし、その後に3,000rpmで30秒間スピニングすることにより(各工程に対して200rpm/sの加速度)、それぞれの薄膜を18〜25nmの厚さで得た。
【0102】
ポリマー膜をコーティングしたシリコンウエハを、真空下20時間、飽和アセトン雰囲気で満たしたデシケーター中で保持した。アニーリング工程の後、真空下でポンプ吸引することにより過剰な溶媒を除去し、N
2ガスをゆっくり充填し戻してデシケーターを開けた。
【0103】
次に、それぞれの膜をタッピングモード原子間力顕微鏡観察(AFM)により特性決定した。対照試料(実施例7)から得た25nm厚さの膜は、顕著な相分離を示した。
図3は、これらの試料の顕微鏡写真を表す。
図3Aは、ブラシ対照が円柱状の集合体の形成を示唆することを示す。しかし、これらの集合体は、低い程度の秩序および比較的大きいサイズを示した(>50nm、
図3Aの挿入された像から推定)。
【0104】
比較すると、ブラシI(実施例5)およびII(実施例6)からの膜は、0.2nm未満の二乗平均平方根(RMS)粗さで十分に均質な表面トポロジーを示した(それぞれ、
図3Bおよび3C)。膜厚は、AFMにより測定して、ブラシIおよびIIについて、それぞれ、18±2nmおよび22±2nmであった。これは各々のブラシ前駆体のPNB骨格の輪郭長さ(ブラシIおよびIIについて、それぞれ、17.4および24.6nm)との一致を示した。そのため、分子ブラシの半径方向寸法の調節可能性は、膜厚を操作するための実現可能なアプローチを提供することができ、そのため、直接描画リソグラフィプロセスにおけるパターンフィーチャを決定するためのパラメータを提供することができる。
【0105】
ブラシ膜の表面トポグラフィー均質性およびほぼ単分子の層厚さは、膜内のブラシポリマー成分がウエハ表面に対して垂直の配向を採るのを好むことを示唆する。理論に縛られるものではないが、この垂直方向のアラインメントの原因はブラシポリマーの本質的に円柱状のトポロジーであり得て、それは共有結合的に繋がれた密集したポリマーグラフト間の強いサイズ排除作用によって誘導される。独特のグラフトブロックコポリマー中のフッ素化ブロックセグメントは、それらの比較的低い表面エネルギーによって動かされるそれらの優先的表面移動に起因して、垂直方向のアラインメントを実現するのを促進し支援する効果に寄与していると思われる。
【0106】
実施例9
この実施例は、実施例5(ブラシI)、6(ブラシII)または7(ブラシ対照)のブラシを含有する組成物からのポリマー薄膜の製造を実証するため、かつ、膜の架橋ならびに(膜の一部分をUV光かまたは電子線のいずれかに露光することによる)ネガ型フォトレジストの調製を実証するために実行された。
【0107】
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを光酸発生剤(PAG)として使用し、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサキス(メトキシメチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(HMMM)を、多価架橋剤と酸クエンチャーの両方として選択した。ポリマー:HMMM:PAGの溶液を、シクロヘキサノン中、0.75:0.15:0.10重量%の重量比で混合し、調製し、PTFEシリンジフィルター(孔径220nm)に通した後、実施例8に詳述されるように膜をキャスティングした。この溶液をUV−O
3前処理シリコンウエハの上に塗布し(塗布された溶液の量は、ウエハ表面全体を覆うのに十分であるべきである)、500rpmで5秒間スピンコーティングし、その後に3,000rpmで30秒間スピニングすることにより(各工程に対して200rpm/sの加速度)、25〜28nmの厚さの薄膜を得た。
【0108】
ポリマーレジスト膜を塗布したウエハを、石英フォトマスクを介して約20cmの距離で2分間、UV光源(254nm、6W)に露光した。露光後、露光した膜を120℃のホットプレートで1分間ポストベークし、次にウエハを0.26M水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液の中に30秒間浸漬することによって、非露光領域を現像し、その後DI水ですすぎ、N
2流で乾燥させた。
【0109】
この膜は、あるいは、予め設計されたパターンによる電子線「書き込み」で露光され、露光されたウエハを90℃のホットプレートで1分間ポストベークし、0.26M TMAH水溶液の中に1分間浸漬した。ウエハをDI水ですすぎ、N
2流で乾燥させた。
【0110】
この薄膜をタッピングモード原子間力顕微鏡観察(AFM)により特性決定した。結果は
図3の顕微鏡写真に示される。ブラシ対照からの25nm厚さの膜は、顕著な相分離を示し(
図3Aの相の像)、それは円柱状の集合体の形成を示唆した。しかし、これらの集合体は、低い程度の秩序および比較的大きいサイズを示した(>50nm、
図3Aの挿入された像から推定)。比較すると、ブラシIおよびIIからの膜は、0.2nm未満のRMS粗さで十分に均質な表面トポグラフィーを示した(それぞれ、
図3Bおよび3C)。膜厚は、AFMにより測定して、ブラシIおよびIIについて、それぞれ、18±2nmおよび22±2nmであり、各々のブラシ前駆体のポリノルボルネン骨格の輪郭長さ(ブラシIおよびIIについて、それぞれ、17.4および24.6nm)との一致を示した。
【0111】
ブラシ膜の表面トポグラフィー均質性およびほぼ単分子の層厚さは、膜内のブラシポリマー成分がウエハ表面に対して垂直の配向を採るのを好んだことを示唆する。垂直方向のアラインメントの原因はブラシポリマーの本質的に円柱状のトポロジーであり得て、それは骨格ポリマーにグラフトされている共有結合したポリマー間の強いサイズ排除作用によって誘導される。一方、グラフトブロックコポリマー中のフッ素化ブロックセグメントは、それらの比較的低い表面エネルギーによって動かされるそれらの優先的表面移動に起因して、垂直方向のアラインメントを促進し支援する効果に寄与することになる。
【0112】
実施例10
この実施例は、化学増幅レジストとしてのリソグラフィ用途におけるグラフトブロックコポリマーの性能を確認するために実行された。実施例9に記載される電磁放射線への露光の後、試料を下に詳述されるポストベークに供した。トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを光酸発生剤(PAG)として使用し、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサキス(メトキシメチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(HMMM)を、多価架橋剤と酸クエンチャーの両方として選択した。実施例9は、レジストの製造を詳述する。それぞれのブラシの原子間力顕微鏡写真(AFM)像を
図4に示す。
【0113】
得られるパターンのAFMトポグラフィー像から、顕著に低いラインエッジラフネス(LER)および低いライン広幅化効果(line−broadening effects)によって示されるように、ブラシI(
図4A)は、ブラシII(
図4B)よりも良好なリソグラフィ性能を示す。架橋ポリマー残基は、ブラシIIレジストのパターン現像領域内に存在した、このことは、ブラシIIのCARがブラシIのCARよりも高い感度を有することを示した。両方のブラシに基づくCARは、マイクロスケールの254nmフォトリソグラフィ調査においてブラシ対照に基づくCAR(
図4C)よりも有利な点を示さなかったが、ブラシレジストの電子線リソグラフィ(EBL)は、高解像度のナノスコピックパターン形成においてブラシ対照対応物よりもそれらが著しく優れていることを明らかにした。直接EBLは、露光後ベーク(PEB)のないEBLプロセスである。これは、ボトルブラシを使用することの利点である、すなわち、それは直接EBLの使用を可能にする。
【0114】
ブラシI、IIおよびブラシ対照に基づくCAR(それぞれ、CAR−I、CAR−II、およびCAR−LC)の露光後ベークEBL(PEB−EBL)研究は、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネートをPAGとして使用すると同時に、UV−フォトリソグラフィ(上に詳述)に使用されるものと同様のレジスト配合物を適用することにより実行された。10〜100nmの範囲のライン幅フィーチャをもつ、設計されたパターンを用いて、各々の得られるラインの高さおよび幅を2つの露光線量(250および400μC/cm
2、それぞれ、約7.5および12mJ/cm
2のEUV(13.5nm)線量に相当)でAFMにより測定することによってそれらのリソグラフィ性能を評価した。
図2A〜2Dに示されるように、CAR−IおよびCAR−IIの両方は、各々の露光線量で完全なライン完全性(full line integrities)をもつパターンを作り出すことができた。比較すると、CAR−BC(ブラシ対照)からのパターンだけが、相対的に高い線量(400μC/cm
2)でさえも、50〜100nmの設計されたラインについて合理的なフィーチャを有していただけであった(
図2F)。さらに、
図2F中のパターン形成されたラインのパラメータは、本当に実際的な目的には適格でなかった(データは示さず)。
【0115】
この研究のブラシCARに関して、潜在的な30nm〜100nmラインのラインフィーチャは、特に400μC/cm
2露光後のCAR−IIについて満足のいくものであった(
図2E)。本発明者らは、CAR−IIの良好な潜在的ライン幅フィーチャは、ブラシIIの固有の幾何学的要因によって誘導されると推測した。IとIIの両方が円柱状の形態を有するが、IIの比較的短いグラフトは、基体表面に垂直に整列した後の鎖の絡まりを減少させることによってそれを「より細い」円柱にしている。現在、約30nmの孤立したラインが、上述の条件下でCAR−IIに対して得られた。そのため、現在の「グラフトスルー」合成戦略によって容易に実現することのできる、ブラシ分子の長さ方向および幅方向の寸法の調整は、リソグラフィ性能に重要な役割を果たし、最終的には、化学組成とともに、ブラシ骨格およびグラフト長さのさらなる体系的な最適化によって、分子画素(molecular pixels)を実現することができたと結論付けることができる。