(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記挟持状態切換え手段は、前記可動側ワーク挟持部材が装着されたピストンを含む流体圧シリンダと、前記流体圧シリンダを前記ピストンの進退方向に移動させるためシリンダ移動手段と、を有する、請求項5記載のワーク反転支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態によるロボットセルについて、図面を参照して説明する。
【0026】
本実施形態によるロボットセルは、ワークに対して研磨加工を施すためのものである。加工対象のワークは、典型的には、略平板状のワーク、或いは平板の側縁(の一部)から短い側壁が立ち上がった形状のワーク等である。ワークの材質は、非磁性体でも磁性体でも良く、典型的には、アルミ合金やマグネシウム合金などの非磁性体の金属である。
【0027】
図1乃至
図4に示したように、ロボットセル1は、全体として直方体を成すセル躯体2を備えており、このセル躯体2は、4つの側壁2Aと、側壁2Aの上端に配置された天井2Bと、側壁2Aの下端に配置された底壁2Cとを有している。
【0028】
セル躯体1内部の上下方向の中央部には、水平方向に延在する水平作業台3が設けられており、この水平作業台3の上方に作業空間4が形成されている。
【0029】
ロボットセル1の内部には、6軸多関節ロボット5が天吊り式に配置されている。ロボット5は、セル躯体2の天井2Bに固定された基部6と、基部6に基端部が接続されたロボットアーム7と、ロボットアーム7の先端に装着されたロボットハンド8と、を備えている。
【0030】
ロボットハンド8は、その用途に応じて使い分けるために複数種類が予め用意されており、ロボットアーム7の先端に着脱自在に装着される。非使用中のロボットハンド8は、ハンド置台9(
図4)の上に載置される。
【0031】
図1に示したように、水平作業台3の下方には、供給側および払出側のトレイ昇降装置10A、10Bおよび制御装置11が配置されている。制御装置11によって、ロボット5、加工装置12(
図3、
図4)、トレイ昇降装置10A、10Bなどが制御される。
【0032】
供給側トレイ昇降装置10Aは、加工前のワーク13を収容した複数のトレイ14を順次上昇させる供給側昇降部15Aを有し、払出側トレイ昇降装置10Bは、加工後のワーク13を収容した複数のトレイ14を順次降下させる払出側昇降部15Bを有する。
【0033】
一つのトレイ14には複数のワーク13(
図3では8個)が収容されており、供給側昇降部15Aおよび払出側昇降部15Bのそれぞれに、複数のトレイ14がそれらを上下に重ねた状態でセットされる。
【0034】
図2に示したようにセル躯体2の正面には、加工前のワーク13を収容したトレイ14をロボットセル1内に搬入するための搬入扉16と、加工後のワーク13を収容したトレイ14をロボットセル1内から搬出するための搬出扉17が設けられている。
【0035】
セル躯体2の正面における搬入扉16および搬出扉17の上方には、メインテナンス時に開放してロボットセル1内部へのアクセスを可能とする一対の作業用扉18A、18Bが設けられている。一対の作業用扉18A、18Bのうちの一方18Aには、ロボットセル1の操作パネル19が設けられている。
【0036】
図3および
図4に示したように、セル躯体2内部の作業空間4には、ロボットハンド8に保持された状態にあるワーク13を加工するための複数の加工装置12(12A、12B、12C、12D)が設置されている。
【0037】
即ち、水平作業台3の上には、3種類のベルト式研磨機12A、12B、12Cが設置されている。これら3種類の研磨機(加工装置)12A、12B、12Cは、いずれも、走行する研磨用ベルト(加工面)20A、20B、20Cにワーク13を押し付けて研磨加工を行うものである。
【0038】
ここで、ベルト式研磨機12A、12B、12Cの研磨用ベルト(加工面)20A、20B、20Cは、ワーク13が押し付けられる方向に弾発的に移動可能である。
【0039】
また、セル躯体2の側壁2Aには、他の加工装置として、電動リュータ12Dおよび研磨ブラシ12Eが設置されている。研磨ブラシ12Eは、ワーク13をその研磨面(加工面)21に擦り付けることにより、ワーク13に研磨加工を施すものである。
【0040】
図5に示したように電動リュータ12Dは、駆動モータ22により回転駆動される回転研磨部材23の研磨面(加工面)24にワーク13を押し付けることにより、ワーク13に研磨加工を施すものである。電動リュータ12Dの近傍には、研磨加工時に飛散する研磨粉を回収するための吸引ダクト25(
図4)が設けられている。
【0041】
図5に示したように、電動リュータ12Dは、セル躯体2に固定されたLMガイド26を介して移動可能に設けられると共に、エアシリンダ等の弾発手段27によって、ワーク13が押し付けられる方向に弾発的に移動可能となっている。
【0042】
図4に示したように、ロボットセル2の側壁2Aには、研磨加工時にワーク13に付着した研磨粉をエアーで吹き飛ばすためのエアブローノズル28が、電動リュータ12Dおよび研磨ブラシ12Eの下方に設けられている。
【0043】
セル躯体2の天井2Bには、ロボットハンド8におけるワーク13の表裏反転を支援するためのワーク反転支援装置29が設置されている。このワーク反転支援装置29については、
図28乃至
図34を参照して後ほど詳述する。
【0044】
3種類のベルト式研磨機12A、12B、12C、電動リュータ12D、研磨ブラシ12E、エアブローノズル28、およびワーク反転支援装置29は、いずれも、セル躯体2内の作業空間4の後方側の領域に配置されている。
【0045】
水平作業台3の前方側には、供給側のトレイ14が配置される供給側開口30Aと、払出側のトレイ14が配置される払出側開口30Bとが形成されている。供給側トレイ昇降装置10Aの供給側昇降部15Aにセットされた複数のトレイ14のうち、その最上段にあるトレイ14が、供給側開口30Aを介して作業空間4内に設置される。
【0046】
一方、払出側トレイ昇降装置10Aの払出側昇降部15Aには、加工済みのワーク13を収納するための払出側トレイ14が、払出側開口30Bを介して作業空間4内に配置される。
【0047】
図2に示した操作パネル19を操作することにより、
図1に示した制御装置11を介して、ロボットハンド8による加工装置12の加工面20A、20B、20C、21に対するワーク13の押込み量をマニュアルで調整することができる。この場合、操作パネル19および制御装置11は、本発明におけるマニュアル調整手段として機能する。
【0048】
上述したように本実施形態によるロボットセル1は、ロボットハンド8で保持された状態にあるワーク13を、ロボットセル1内に設置された各種の加工装置12で加工するものである。このため、ロボットで単にワークを搬送する場合などに比べて、本実施形態におけるロボットセル1のロボット5は、より一層複雑な動きを要求される。
【0049】
そこで、本実施形態によるロボットセル1においては、ロボットハンド8で保持された状態にあるワーク13を加工するための各種の加工装置12をセル躯体2内に設置すると共に、ロボット5をセル躯体2の天井2Bから吊下させることにより、スペース効率を大幅に改善して、複雑な動きをするロボット5が周囲の機器・構造物と干渉することを回避するようにした。
【0050】
また、ロボットセル1内で使用する加工装置12は、いずれも、その加工面(研磨面)20A、20B、20C、21が、ワーク13の押し付け方向に弾発的に移動可能である。このため、ロボット5によるワーク13の押し付け動作を設定する際に、加工面(研磨面)20A、20B、20C、21の移動幅を、ロボット動作における許容誤差として利用することができる。
【0051】
このように、加工面(研磨面)20A、20B、20C、21の移動幅を、ロボット動作時の許容誤差として利用できることも、ロボットセル1内の限られた作業空間4内でロボット5に複雑な動きをさせながら、周囲の機器・構造物との干渉を回避しつつ、所望の加工動作を実現する上で有効である。
【0052】
また、上述したようにロボット5の動作設定に対する許容誤差が確保されるため、ロボット動作のティーチング作業が容易になる。このため、工場内に同一のロボットセル1を複数台設置するような場合でも、オフラインで作成したティーチングデータを、すべてのロボットセル1で共有することができる。
【0053】
これにより、ロボットセル1の試運転調整は、現場に搬入する前に、例えば出荷元で行うと共に、現場ではロボット5の実際の動作を確認しながら、微調整を行う程度で足りる。この微調整は、操作パネル19を用いて、現場の作業員が行うことができる。
【0054】
図6は、上述したロボットセル1の一変形例を示しており、3種類のベルト式研磨機12A、12B、12Cが、いずれも、セル躯体2の側壁2Aに設置されている。これにより、ベルト式研磨機12A、12B、12Cの研磨面20A、20B、20Cが、略垂直方向(重力方向)に延在することになる。
【0055】
このようにベルト式研磨機12A、12B、12Cの研磨面20A、20B、20Cを略垂直方向に配向することにより、研磨加工時に発生した研磨粉が重力により落下するので、例えば、ベルト式研磨機12A、12B、12Cの下方に集塵ダクトを配置することで、研磨粉を容易且つ確実に回収することができる。
【0056】
また、
図6に示した変形例においては、水平作業台3上に加工装置12が存在しないので、メインテナンス作業を行う際の作業空間を十分に確保することができる。
【0057】
次に、本発明の一実施形態によるロボットハンドについて、
図7乃至
図27を参照して説明する。
【0058】
本実施形態によるロボットハンド8は、
図7乃至
図10に示したように、ロボットアーム7の先端に装着されるハンド基部31を有し、ハンド基部31には、搬送および加工中のワーク13を保持するためのワーク保持手段32が設けられている。
【0059】
ワーク保持手段32は、ワーク13の表面に吸着してワーク13を解放可能に保持するための4つの吸着部33を有する。各吸着部33は、ワーク13を吸着した状態において、ワーク13の表面に平行な方向に弾性変形可能に構成されている。好ましくは、各吸着部33は、ベローズ式の真空吸着パッドで構成される。
【0060】
ロボットハンド8は、さらに、ワーク保持手段32に保持されたワーク13をワーク保持手段32に対して所定の位置に位置決めするためのワーク位置決め手段34を有する。ワーク位置決め手段34は、ワーク13に当接されてワーク13を所定の位置に位置決めするための6つの位置決め当接部材35を有する。
【0061】
位置決め当接部材35は、位置決め位置においてワーク13を両側から挟み込む三組の一対の位置決め当接片36A、36Bからなる。三組の一対の位置決め当接片36A、36Bのうち、二組の一対の位置決め当接片36Aはワーク13の長辺側を挟持し、残りの一組の一対の位置決め当接片36Bはワーク13の短辺側を挟持する。
【0062】
ワーク長辺側の位置決め当接片36Aによるワーク13の挟み込み方向と、ワーク短辺側の位置決め当接片36Bによるワーク13の挟み込み方向とは直交している。
【0063】
ワーク短辺側の位置決め当接片36Bの幅は、ワーク長辺側の位置決め当接片36Aの幅よりも大きい。
【0064】
図8および
図9に示したように、ワーク長辺側の位置決め当接片36Aは、その先端が内方に突出している。
【0065】
ワーク位置決め手段34は、さらに、位置決め当接片36A、36Bを、ワーク保持手段32のワーク保持面37よりも前方に突出した前方突出位置と、ワーク保持面37から後方に退避した後方退避位置とで切り換えるための前後位置切換え手段38を有する。
【0066】
図7に示したように、前後位置切換え手段38は、一対の前後動作用エアシリンダ39を有し、各前後動作用エアシリンダ39のピストン39Aの先端に各当接片支持部材40が設けられている。各当接片支持部材40には、短辺側の位置決め当接片36Bが固定して設けられている。
【0067】
各前後動作用エアシリンダ39は、各シリンダ支持部材41に固定して設けられており、各シリンダ支持部材41は、ハンド基31部に固定して設けられた第1のLMガイド42によって直動可能に支持されている。
【0068】
各シリンダ支持部材41は、
図10に示した第1の駆動源43によって、ワーク13の長辺延在方向(第1の内外方向)D1に直動駆動される。これにより、短辺側の一対の位置決め当接片36Bの位置を、ワーク13を所定の位置に位置決めするときの位置決め位置と、位置決め位置よりも外方の外方拡開位置と、位置決め位置よりも内方の内方退避位置との間で切り換える。
【0069】
各当接片支持部材40の内面には、各第2のLMガイド44が設けられており、各第2のLMガイド44によってワーク長辺側の各位置決め当接片36Aが直動可能に支持されている。第2のLMガイド44による直動方向は、第1のLMガイド42による直動方向に対して直交している。
【0070】
ワーク長辺側の各位置決め当接片36Aは、
図10に示した第2の駆動源45によって、ワークの短辺延在方向(第2の内外方向)D2に直動駆動される。これにより、長辺側の一対の位置決め当接片36Aの位置を、ワーク13を所定の位置に位置決めするときの位置決め位置と、位置決め位置よりも外方の外方拡開位置と、位置決め位置よりも内方の内方退避位置との間で切り換える。
【0071】
上述した第1のLMガイド42、第1の駆動源43、第2のLMガイド44、および第2の駆動源45により、位置決め当接片36A、36Bを、ワーク13を所定の位置に位置決めするときの位置決め位置と、位置決め位置よりも外方の外方拡開位置と、位置決め位置よりも内方の内方退避位置との間で切り換えるワーク位置決め手段34が構成されている。
【0072】
ここで、位置決め当接片36A、36Bの内方退避位置は、
図10に示したように、ロボットアーム7の軸線方向(ワーク表面に垂直な方向)に見た場合、ワーク保持手段32で保持されたワーク13と重なる位置である。
【0073】
図7に示した前後動作用エアシリンダ39のピストン39Aの前進および後退動作によって、当接片支持部材40が前後方向(アーム軸線方向)D3に移動する。これにより、長辺側の位置決め当接片36Aおよび短辺側の位置決め当接片36Bの、前方突出位置と後方退避位置とを切り換える。前方突出位置と後方対置位置との切り換えについては、
図12乃至
図16を参照して後述する。
【0074】
ワーク保持手段32の各吸着部33は、
図10に示した真空源46によって真空引きされ、これによりワーク13の表面を吸着保持する。ワーク13を各吸着部33から解放する際には、真空破壊エアーを各吸着部33に供給し、各吸着部33内の真空状態を解除してワーク13を解放する。
【0075】
図11は、ロボットセル1において加工される複数のワーク13(
図11の例では8個)をトレイ14で収容した状態を示している。トレイ14には、各ワーク13を収納するための各収納凹部14Aが形成されており、収納凹部14Aの内周は、ワーク13の外周よりもやや大きな寸法とされている。これにより、収納凹部14Aの内周とワーク13の外周との間に、ある程度の間隙が形成されている。
【0076】
上記の通り、収納凹部14Aの内周とワーク13の外周との間に間隙が存在するため、収納凹部14Aの中に収納されているワーク13の向きが、
図11に示したようにワーク13毎にバラついてしまう。このため、ロボットハンド8のワーク保持手段32の各吸着部33によるワーク表面の吸着位置を、複数のワーク13において一定させることができない。
【0077】
上述したように本実施形態によるロボットセル1は、その内部に設置された加工装置12によって、ロボットハンド8に保持された状態にあるワーク13を加工するものである。このため、ロボットハンド8のワーク保持手段32に対して、ワーク13が所定の位置に正確に位置決めされていないと、加工装置12による加工品質にバラツキが生じてしまうか、或いはワーク13の加工自体が不可能となってしまう。
【0078】
特に研磨加工においては、ワーク13の表面と、研磨機12A、12B、12Cおよび電動リュータ12Dの加工面20A、20B、20C、21との距離が加工品質に影響を与えるため、ロボットハンド8のワーク保持手段32に対して、ワーク13を所定の位置に正確に位置決めすることが極めて重要である。
【0079】
そこで、本実施形態によるロボットハンド8においては、トレイ14の収納凹部14A内にあるワーク13をワーク保持手段32によって一旦保持して取り出した後、ワーク位置決め手段34を用いて、ワーク13の保持位置を所定の位置に移動させて修正する。
【0080】
即ち、
図7および
図8に示したようにワーク保持手段32の吸着部33をワーク表面に当接し、
図10に示した真空源46を利用してワーク13の表面を吸着部33で吸着保持した後、トレイ14の収納凹部14Aからワーク13を引き上げて取り出す。
【0081】
なお、トレイ14の収容凹部14Aからワーク13を取り出す際には、
図7に示したようにワーク位置決め手段34の位置決め当接片36A、36Bが後方退避位置にある必要があるが、必ずしも内方退避位置にある必要はなく、外方拡開位置にあっても良い。要するに、ワーク保持手段32によるワーク13の吸着動作時に、ワーク位置決め手段34がワーク13やトレイ14に干渉しなければ良い。
【0082】
次に、第1の駆動源および第2の駆動源を作動させて、
図12乃至
図14に示したように、長辺側の位置決め当接片36Aおよび短辺側の位置決め当接片36Bを外方拡開位置に移動させる。なお、ワーク13の吸着動作時に既に位置決め当接片36A、36Bが外方拡開位置にある場合には、この拡開動作は不要である。
【0083】
ここで、位置決め当接片36A、36Bの外方拡開位置は、ロボットアーム7の軸線方向(ワーク表面に垂直な方向)に見た場合、
図14に示したように、ワーク保持手段32で保持されたワーク13の外周よりも外側にある位置である。外方拡開位置は、トレイ14の収納凹部14Aの内周とワーク13の外周との間の間隙の寸法、即ち、収納凹部14A内のワーク13の位置ズレ量を考慮して設定される。
【0084】
次に、
図15および
図16に示したように、後方退避位置にある長辺側の位置決め当接片36Aおよび短辺側の位置決め当接片36Bを、前後動作用エアシリンダ39を駆動して前方突出位置に前進させる。これにより、各位置決め当接片36A、36Bが、ワーク保持手段32のワーク保持面37よりも前方に突出する。
【0085】
次に、
図17乃至
図19に示したように、外方拡開位置にある長辺側の位置決め当接片36Aおよび短辺側の位置決め当接片36Bを、第1の駆動源43および第2の駆動源45を駆動して位置決め位置に移動させる。
【0086】
より具体的には、
図20および
図21に示した外方拡開位置にある位置決め当接片36A、36Bのうち、まず初めに短辺側の位置決め当接片36Bを、第1の駆動源43によって、
図22に示したように位置決め位置に移動させる。これにより、ワーク13は、ワーク保持手段32で保持された状態において、ワーク長辺延在方向D1において位置決めされる。
【0087】
次に、長辺側の位置決め当接片36Aを、第2の駆動手段45によって、
図23に示したように位置決め位置に移動させる。これにより、ワーク13は、ワーク保持手段32で保持された状態において、ワーク短辺延在方向D2において位置決めされる。
【0088】
これらの動作により、ワーク13は、
図23に示したように所定の位置に位置決めされる。このとき、ワーク保持手段32の吸着部33は、
図24に示したように、正常な形状からずれて変形した形状となっている。即ち、吸着部33は、ワーク13の表面に平行な方向に弾性変形可能であるので、位置決め当接片36A、36Bによってワーク13を移動させると、その移動に応じて
図24に示したように変形する。
【0089】
図24に示した状態において、各吸着部33に真空破壊エアーを瞬間的に供給し、各吸着部33とワーク13の表面との吸着状態を瞬間的に解除する。すると、
図25に示したように各吸着部33が正常な形状に復帰すると共に、各吸着部33が、
図26に示したようにワーク13の表面上の所定の位置に移動し、所定の位置にてワーク13を吸着保持する。
【0090】
なお、吸着部33に真空破壊エアーを瞬間的に供給しても、ワーク13は位置決め当接片36A、36Bによって挟持されているので、ロボットハンド8から落下することはない。
【0091】
また、もし仮に、吸着部33に真空破壊エアーを供給した際にワーク13が押し動かされた場合でも、ワーク長辺側の位置決め当接片36Aはその先端が内方に突出しているので、この突出部でワーク13を受け止めることができ、ワーク13の落下を確実に防止することができる。
【0092】
上記の動作により、ワーク保持手段32でワーク13を所定の位置で保持したら、前後動作用エアシリンダ39を駆動して、位置決め当接片36A、36Bを後方退避位置に退避させる。続いて、第1の駆動源43および第2の駆動源45によって、位置決め当接片36A、36Bを内方退避位置に退避させる。
【0093】
図27は、上記の動作により所定の位置に位置決めされたワーク13を、ロボットハンド8のワーク保持手段32によって保持した状態で、加工装置12の加工面(研磨面)20A、20B、20Cによって加工する様子を示している。ここで、位置決め当接片36A、36Bを内方退避位置に退避させているので、
図27に示したように、ワーク13の側周面を研磨加工する際に、位置決め当接片36A、36Bが加工装置12の加工面(研磨面)20A、20B、20Cと干渉することを回避できる。
【0094】
以上述べたように、本実施形態によるロボットハンド8によれば、ロボットハンド8自身がワーク13の位置決め機能を備えているので、ワーク13の位置決めだけのために専用の機器を配置する必要が無く、ロボットセル1内の限られた作業空間4を有効に利用することができる。
【0095】
また、本実施形態によるロボットハンド8においては、ワーク13の表面を吸着して保持するワーク保持手段32を使用すると共に、ワーク13を加工する際には、位置決め当接片36A、36Bを後方退避位置および内方退避位置に退避させることができるので、例えばワーク13の側周部への研磨加工などを支障なく行うことができる。
【0096】
次に、本発明の一実施形態によるワーク反転支援装置29について、
図28乃至
図34を参照して説明する。
【0097】
上述したようにロボットハンド8は、ワーク保持手段32の各吸着部33によってワーク13の表面を吸着してワーク13を保持するものであるが、ワーク13の種類や加工内容によっては、トレイ14に収納された状態において上方を向いているワーク13の表面を加工装置12によって加工する場合がある。この場合には、ロボットハンド8によってトレイ14から取り出したワーク13を、表裏反転させてロボットハンド8で持ち替える必要がある。
【0098】
本実施形態によるワーク反転支援装置29は、このような場合にロボットハンド8におけるワーク13の表裏反転を支援するためのものであり、好ましくは、
図4に示したようにロボットセル1の天井12Bに設置される。
【0099】
図28(側面図)および
図29(下面図)に示したように、本実施形態によるワーク反転支援装置29は、ロボットハンド8によって保持されたワーク13の対向する側部に当接されてワーク13を挟持するための一対のワーク挟持部材47A、47Bを有する。一対のワーク挟持部材47A、47Bは、固定側ワーク挟持部材47Aと可動側ワーク挟持部材47Bとからなり、ロボットセル1の天井面に対してワーク13が略垂直となるようにワーク13を挟持する。
【0100】
固定側ワーク挟持部材47Aと可動側ワーク挟持部材47Bとにより挟持されたワーク13の上方には、天井側当接台48が設けられている。
【0101】
ワーク反転支援装置29は、さらに、
図30に示したようにワーク挟持部材駆動手段49を備えており、ワーク挟持部材駆動手段49は、可動側ワーク挟持部材47Bが装着されたピストン50Aを含む流体圧シリンダ50と、流体圧シリンダ50をピストン50Aの進退方向に移動させるためシリンダ移動手段51と、を有する。流体圧シリンダ50は、好ましくはエアシリンダである。
【0102】
シリンダ移動手段51は、流体圧シリンダ50が固定して設けられた走行部材52と、走行部材52を直動可能に支持する走行部材LMガイド53と、走行部材52を走行駆動する走行用駆動源54と、を備えている。シリンダ移動手段51によって、流体圧シリンダ50の位置を、
図31に示した第1位置と、
図32に示した第2位置とで切り換えることができる。
【0103】
流体圧シリンダ50とシリンダ移動手段51とによって、可動側ワーク挟持部材47Bの位置を、ワーク13の挟持状態における位置と解放状態における位置とで切換えるための挟持状態切換え手段55が構成されている。
【0104】
ワーク反転支援装置29を用いてロボットハンド8におけるワーク13を表裏反転させる際には、シリンダ移動手段51によって流体圧シリンダ50を
図31に示した第1位置にさせた状態で、
図31および
図34に示したように、ロボットハンド8のワーク保持手段32で保持したワーク13を、ロボット5の動作により固定側ワーク挟持部材47Aおよび天井側当接台48に当接させる。
【0105】
ここで、ロボットハンド8のワーク保持手段32により保持されたワーク13は、上述したワーク位置決め手段34によって、ワーク保持手段32に対して所定の位置に位置決めされている。このため、ロボット5の動作により、ワーク13を、固定側ワーク挟持部材47Aおよび天井側当接台48に正確に位置合わせすることができる。
【0106】
ロボット5によってワーク13を固定側ワーク挟持部材47Aおよび天井側当接台48に当接させた状態で、シリンダ移動手段51によって流体圧シリンダ50を、
図32に示したように第2位置に移動させる。続いて、流体圧シリンダ50を駆動して可動側ワーク挟持部材47Bを前進させ、
図33に示したように固定側ワーク挟持部材47Aと可動側ワーク挟持部材47Bとでワーク13を挟持して保持する。
【0107】
次に、ロボット5のワーク保持手段32によるワーク13の保持状態を解除して、ワーク反転支援装置29によってワーク13を暫定的に保持させた状態で、ロボット5を動作させて
図34に仮想線で示したように、ワーク13の裏面にワーク保持手段32の吸着部33を当接し、ワーク13を吸着保持する。
【0108】
このとき、ワーク反転支援装置29によって保持されているワーク13の位置および向きは、予め正確に把握されているので、予め把握されているワーク位置情報に基づいてロボット5を動作させることにより、ロボット6のワーク保持手段32によってワーク13を所定の位置にて保持することができる。
【0109】
続いて、流体圧シリンダ50およびシリンダ移動手段51を駆動して、固定側ワーク挟持部材47Aおよび可動側ワーク挟持部材47Bからワーク13を解放し、ロボット5を動作させてワーク反転支援装置29からワーク13を取り出す。
【0110】
その後、ロボット5は、ワーク13を3次元的にハンドリングしながら、加工装置12によってワークを加工する。
【0111】
上述したように本実施形態によるワーク反転支援装置29は、一対のワーク挟持部材47A、47Bによってワーク13を挟持して保持するようにしたので、ワーク反転支援装置29の設置態様(設置場所や設置姿勢など)の自由度を高めることができる。
【0112】
例えば、本実施形態によるワーク反転支援装置29のように、その設置場所をロボットセル1の天井面とすることが可能であり、これにより、ロボットセル1内の限られた作業空間4を有効に使用することができる。
【0113】
特に、研磨加工を実施するためのロボットセル1においては、ベルト式研磨機12A、12B、12Cのように比較的広い設置面積を必要とする装置を使用するので、ワーク反転支援装置29の設置場所の自由度が高いことは、機器配置設計上において極めて有利である。
【0114】
なお、好ましくは、ワーク反転支援装置29の一対のワーク挟持部材47A、47Bは、ワーク13の挟持方向軸線A1上にロボット5が位置するようにワーク13を挟持する(
図3参照)。
【0115】
ロボット5をワーク13の挟持方向軸線A1上に位置させることにより、ロボット5がワーク反転支援装置29にアクセスする際のロボット5の動作を、左右対称のものとすることができる。これにより、ロボットセル1内の限られた作業空間4内においても、ロボット5の動作空間を確保し易くなる。
【0116】
以下、上述したロボットセル1においてワーク13を研磨加工する際のプロセスの一例について説明する。
【0117】
作業者は、セル躯体2の正面の搬入扉16を開けて、供給側トレイ昇降装置10Aの供給側昇降部15Aに複数段のトレイ14をセットする。各トレイ14には、加工前のワーク13が複数載置されている。このとき、供給側昇降部15Aは最下位置に配置されている。
【0118】
次に、作業者は、搬入扉16を閉めたら、操作パネル19からワーク種別と数量を入力し、スタートボタンを押す。すると、ロボット5は、選択されたワーク用のロボットハンド8を、ハンド置台9上の複数のロボットハンド8の中から選択してチャックする。
【0119】
一方、供給側トレイ昇降装置10Aは、供給側昇降部15Aを上昇させて、最上段のトレイ14を所定のワーク取得位置、即ち供給側開口30Aの位置に移動させる。
【0120】
ロボット5は、供給側のトレイ14に収納された複数のワーク13のうちの1つを、ワーク保持手段32の吸着部33で吸着して取り出し、上述したワーク位置決め手段34の位置決め動作によりワーク13の位置決めを行う。
【0121】
ロボット5は、ロボットハンド8のワーク保持手段32に保持されたワーク13を、セル躯体2の天井2Bに設置されているワーク反転支援装置29まで搬送し、このワーク反転支援装置29にワーク13を暫定的に保持させる。
【0122】
ロボット5は、ワーク保持手段32の吸着部33を、ワーク反転支援装置29で保持されたワーク13の裏面に当接し、吸着させる。これにより、ワーク13を、ロボットハンド8において表裏反転させて持ち替える。
【0123】
次に、ロボット5は、加工装置12を用いてワーク13に対して所定の研磨加工を施し、研磨時にワーク13に付着した研磨粉をエアブローノズル28からのエアーで適宜吹き飛ばして、研磨加工を完了する。
【0124】
研磨加工が完了したワーク13は、ロボット5によってワーク反転支援装置29まで搬送され、再び反転操作を行う。ロボット5は、ワーク反転支援装置29を用いてワーク13を持ち替えた後、払出側トレイ昇降装置10Bの払出側昇降部15Bに載置された払出側トレイ14にワーク13を収納する。
【0125】
上述した一連の動作を繰り返して、最上段の供給側トレイ14に収納された複数のワーク13のすべてに対して研磨加工を実施する。加工済みのワーク13が収納された排出側トレイ14は、払出側トレイ昇降装置10Bによって一段分だけ降下される。
【0126】
ロボット5は、ワーク保持手段32によって、空になった供給側トレイ14を吸着保持して、加工済みのワーク13が収納された排出側トレイ14の上に載置する。供給側トレイ昇降装置10Aは、供給側昇降部15Aを一段分だけ上昇させ、加工前の複数のワーク13が収納された次のトレイ14を所定のワーク取得位置、即ち水平作業台3に形成された供給側開口30Aに配置する。
【0127】
上述の動作を繰り返し、供給側昇降部15Aにセットされたすべてのトレイ14のワーク13の研磨加工が完了したら、作業者は、搬出扉17を開放して、ロボットセル1の内部から払出側トレイ14を搬出する。
【0128】
以上の操作により、複数段のトレイ14に収納された複数のワーク13の加工処理、具体的には研磨処理が完了する。