特許第6366935号(P6366935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一般財団法人 リモート・センシング技術センターの特許一覧

<>
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000008
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000009
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000010
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000011
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000012
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000013
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000014
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000015
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000016
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000017
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000018
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000019
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000020
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000021
  • 特許6366935-擬似カラー化画像処理システム 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366935
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】擬似カラー化画像処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20180723BHJP
   G01S 13/90 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G06T1/00 285
   G06T1/00 510
   G01S13/90 191
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-267838(P2013-267838)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-125498(P2015-125498A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】598022646
【氏名又は名称】一般財団法人 リモート・センシング技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100088214
【弁理士】
【氏名又は名称】生田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100134588
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】古田 竜一
【審査官】 新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−085532(JP,A)
【文献】 特開2013−084072(JP,A)
【文献】 特開2009−047516(JP,A)
【文献】 特開2013−054660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 7/00−7/90
G01S 13/90
H04N 1/60
H04N 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレースケール画像情報を擬似カラー化する擬似カラー化画像処理システムであって,
前記擬似カラー化画像処理システムは,
処理対象となるグレースケール画像情報における画像特徴量を用いて,画像特徴量ごとの画像情報を生成する空間画像生成処理部と,
前記生成した各空間画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当て,合成することでカラー合成画像情報を生成するカラー合成処理部と,
前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報と前記カラー合成画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成する高分解能化処理部と,
を有することを特徴とする擬似カラー化画像処理システム。
【請求項2】
前記擬似カラー化画像処理システムは,さらに,
前記グレースケール画像情報の色調補正処理を実行する入力画像色調補正処理部,を有しており,
前記空間画像生成処理部は,
前記色調補正処理を行ったグレースケール画像情報に基づいてコントラスト強調画像情報を生成するコントラスト強調画像生成処理部と,
前記コントラスト強調画像情報を用いてテクスチャ画像情報を生成するテクスチャ画像生成処理部と,
前記コントラスト強調画像情報に基づいてエントロピー画像情報を生成するエントロピー画像生成処理部と,
前記コントラスト強調画像情報に基づいてエネルギー画像情報を生成するエネルギー画像生成処理部と,を備えており,
前記カラー合成処理部は,
前記生成したエネルギー画像情報,テクスチャ画像情報,エントロピー画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当て,合成することでカラー合成画像情報を生成する,
ことを特徴とする請求項1に記載の擬似カラー化画像処理システム。
【請求項3】
前記カラー合成処理部は,
前記エネルギー画像情報について赤色,前記テクスチャ画像情報について緑色,前記エントロピー画像情報について青色を割り当て,合成する,
ことを特徴とする請求項2に記載の擬似カラー化画像処理システム。
【請求項4】
前記カラー合成処理部は,
さらに前記コントラスト強調画像情報に対しても対応する色を割り当て,
前記エネルギー画像情報についてシアン,前記テクスチャ画像情報についてマゼンダ,前記エントロピー画像情報についてイエロー,前記コントラスト強調画像情報について黒を割り当て,合成する,
ことを特徴とする請求項2に記載の擬似カラー化画像処理システム。
【請求項5】
合成開口レーダで単偏波観測により撮影したグレースケール画像情報を擬似カラー化する擬似カラー化画像処理システムであって,
前記擬似カラー化画像処理システムは,
前記グレースケール画像情報の入力を受け付ける画像入力受付処理部と,
前記グレースケール画像情報に基づいて生成した複数の画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当てて一つの画像情報として合成した合成画像情報と,前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成する高分解能化処理部と,
を有することを特徴とする擬似カラー化画像処理システム。
【請求項6】
前記擬似カラー化画像処理システムは,
前記生成した擬似カラー化画像情報に対する色調補正処理の入力を受け付ける,または色調補正処理を実行することで出力画像を生成する出力画像色調補正処理部,
を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の擬似カラー化画像処理システム。
【請求項7】
前記グレースケール画像情報は,
単偏波観測による合成開口レーダで撮像した画像情報である,
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の擬似カラー化画像処理システム。
【請求項8】
コンピュータを,
処理対象となるグレースケール画像情報における画像特徴量を用いて,画像特徴量ごとの画像情報を生成する空間画像生成処理部,
前記生成した各空間画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当て,合成することでカラー合成画像情報を生成するカラー合成処理部,
前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報と前記カラー合成画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成する高分解能化処理部,
として機能させることを特徴とする擬似カラー化画像処理プログラム。
【請求項9】
コンピュータを,
合成開口レーダで単偏波観測により撮影したグレースケール画像情報の入力を受け付ける画像入力受付処理部,
前記グレースケール画像情報に基づいて生成した複数の画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当てて一つの画像情報として合成した合成画像情報と,前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成する高分解能化処理部,
として機能させることを特徴とする擬似カラー化画像処理プログラム。
【請求項10】
グレースケール画像情報に基づいて擬似カラー化画像情報を生成する擬似カラー化画像情報の生成方法であって,
コンピュータにおいて,
処理対象となるグレースケール画像情報における画像特徴量を用いて,画像特徴量ごとの画像情報を生成するステップと,
前記生成した各空間画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当て,合成することでカラー合成画像情報を生成するステップと,
前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報と前記カラー合成画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成するステップと,
を有することを特徴とする擬似カラー化画像情報の生成方法。
【請求項11】
合成開口レーダで単偏波観測により撮影したグレースケール画像情報に基づいて擬似カラー化画像情報を生成する擬似カラー化画像情報の生成方法であって,
コンピュータにおいて,
前記グレースケール画像情報の入力を受け付けるステップと,
前記グレースケール画像情報に基づいて生成した複数の画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当てて一つの画像情報として合成した合成画像情報と,前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成するステップと,
を有することを特徴とする擬似カラー化画像情報の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,グレースケール画像を擬似的にカラー画像に変換する擬似カラー化画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
グレースケール画像により撮像をした場合,被写体が白から黒に至るグレーのドットの集合体によって表現される。そのため,撮像した画像を見るユーザが不慣れな場合,何が写されているのか,よく分からない場合がある。とくに合成開口レーダによって地表を観測する場合,一般的に用いられる単偏波観測において,地表の観測データはグレースケール画像で表現される。しかし,それを視認する一般のユーザは不慣れなため,何が写っているのかがよく分からない場合がある。
【0003】
そこで一般のユーザがみる画像としてはカラー画像であることが望ましい。その方法として,カラー画像として撮像する手法と,グレースケール画像をカラー画像に変換する手法とがある。前者の手法の場合にはカラー画像が撮れる撮像装置や観測手法を用いればよい。合成開口レーダによる場合には,複数偏波観測と呼ばれる観測手法によってカラー画像を撮像できる。この場合,各偏波に対して色を割り当て,それを合成することでカラー画像として表示させる(非特許文献1乃至非特許文献6)。
【0004】
また後者の手法の場合にはグレースケール画像の濃度分布に着目し,濃度分布に基づいてカラー画像に変換することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】野中崇志,笹川正,浦塚清峰,梅原俊彦,佐竹誠,灘井章嗣,松岡建志,”航空機搭載合成開口レーダ(Pi−SAR)の多周波/多偏波データを利用した地物判読”,先端測量技術93号,インターネット<URL:http://archive.sokugikyo.or.jp/pdf/apa93_2007_01/APA9305.pdf>
【非特許文献2】独立行政法人宇宙航空研究開発機構,”PALSARによる偏波観測”,インターネット<URL:http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/img_up/jpal_polarization.htm>
【非特許文献3】独立行政法人宇宙航空研究開発機構,”航空機搭載Lバンド合成開口レーダ2(Pi−SAR−L2)による伊豆大島の台風26号被害観測結果について,インターネット<URL:http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/img_up/jdis_pisarl2_izuoshima_20131022.htm>
【非特許文献4】独立行政法人宇宙航空研究開発機構,”陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)によるハイチ地震にともなう緊急観測(3)”,インターネット<URL:http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/img_up/jdis_pal_haiti_100126.htm>
【非特許文献5】独立行政法人宇宙航空研究開発機構,”「テラサー・エックス」(TerraSAR−X)による新潟豪雨災害の観測結果”,インターネット<URL:http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/img_up/jdis_terrasarx_niigata_jul2011.htm>
【非特許文献6】日本スペースイメージング株式会社,”震災から1年 2012年1〜3月”,インターネット<URL:http://www.spaceimaging.co.jp/EastJapanEarthquake/record_collection/one-year/cosmo_skymed/tabid/681/Default.aspx>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者の手法による場合,複数偏波観測によってカラー画像を撮影することができるが,撮像したカラー画像の分解能が,単偏波観測によって撮像したグレースケール画像の分解能よりも低くなるという問題点がある。とくに合成開口レーダによって地表を観測する場合,分解能が重視されると,複数偏波観測によるカラー画像は,視認性は向上するものの,分解能の低下という大きな欠点を抱えることとなる。
【0007】
また後者の手法による場合,グレースケール画像に基づいて着色することはできるものの,自然な着色とまでは言えず,自然な画像にならないという問題点がある。そのため,却って視認性が低下する場合もあり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題に鑑み,グレースケール画像に基づいて擬似カラー化処理を施すことで,自然な着色を施すことのできる擬似カラー化画像処理システムを発明した。
【0009】
第1の発明は,グレースケール画像情報を擬似カラー化する擬似カラー化画像処理システムであって,前記擬似カラー化画像処理システムは,処理対象となるグレースケール画像情報における画像特徴量を用いて,画像特徴量ごとの画像情報を生成する空間画像生成処理部と,前記生成した各空間画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当て,合成することでカラー合成画像情報を生成するカラー合成処理部と,前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報と前記カラー合成画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成する高分解能化処理部と,を有する擬似カラー化画像処理システムである。
【0010】
本発明の擬似カラー化画像処理システムを用いることで,グレースケール画像情報に基づいて擬似カラー化画像情報を生成することができる。その結果,ユーザの視認性を向上させることができる。
【0011】
また,グレースケール画像情報から空間画像情報を用いてカラー画像を生成する場合に,一般的にはその分解能が低下してしまう。そこで本発明ではカラー画像と,もととなるグレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報とを合成する処理を実行することで分解能を回復することができる。
【0012】
上述のような処理はパンシャープン処理と呼ばれる。従来のパンシャープン処理では,分解能の異なる2つの画像情報を合成することで分解能を向上させる。たとえば,別々に撮像した分解能が10メートルのカラー画像情報と,分解能が2.5メートルのグレースケール画像情報とを合成することで分解能が2.5メートルの分解能のカラー画像情報を擬似的に作っている。しかし,本願発明では,もともと一つのグレースケール画像情報に基づいてパンシャープン処理を実行している。当初のグレースケール画像情報が分解能が2.5メートルであった場合,この2.5メートルのグレースケール画像情報に基づいて,たとえば,分解能が10メートルの擬似カラー化画像情報を生成する。そして,これら2つの画像情報を合成することで,分解能が2.5メートルの擬似カラー化画像情報を生成している。そのため,従来のパンシャープン処理では2つの異なる分解能の画像情報が必要であったが,本願発明を用いることによって,一つの画像情報で処理を実行できる。たとえば,従来であれば,同じ場所を撮像した分解能が10メートルのカラー画像情報と,分解能が2.5メートルのグレースケール画像情報とが必要であった。しかし,本願発明によって,分解能が2.5メートルのグレースケール画像情報のみで処理が実現できる。
【0013】
上述の発明において,前記擬似カラー化画像処理システムは,さらに,前記グレースケール画像情報の色調補正処理を実行する入力画像色調補正処理部,を有しており,前記空間画像生成処理部は,前記色調補正処理を行ったグレースケール画像情報に基づいてコントラスト強調画像情報を生成するコントラスト強調画像生成処理部と,前記コントラスト強調画像情報を用いてテクスチャ画像情報を生成するテクスチャ画像生成処理部と,前記コントラスト強調画像情報に基づいてエントロピー画像情報を生成するエントロピー画像生成処理部と,前記コントラスト強調画像情報に基づいてエネルギー画像情報を生成するエネルギー画像生成処理部と,を備えており,前記カラー合成処理部は,前記生成したエネルギー画像情報,テクスチャ画像情報,エントロピー画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当て,合成することでカラー合成画像情報を生成する,擬似カラー化画像処理システムのように構成することができる。
【0014】
空間画像情報を生成するには,本発明のように処理を実行することができる。
【0015】
上述の発明において,前記カラー合成処理部は,前記エネルギー画像情報について赤色,前記テクスチャ画像情報について緑色,前記エントロピー画像情報について青色を割り当て,合成する,擬似カラー化画像処理システムのように構成することができる。
【0016】
空間画像情報を構成する各画像情報には,任意の色を割り当てることができるが,カラーモデルとしてRGB系を用いる場合には,本発明のように割り当てると,合成した画像情報が自然に近い着色となる。
【0017】
上述の発明において,前記カラー合成処理部は,さらに前記コントラスト強調画像情報に対しても対応する色を割り当て,前記エネルギー画像情報についてシアン,前記テクスチャ画像情報についてマゼンダ,前記エントロピー画像情報についてイエロー,前記コントラスト強調画像情報について黒を割り当て,合成する,擬似カラー化画像処理システムのように構成することができる。
【0018】
カラーモデルとしてCMYK系を用いる場合には,本発明のように割り当てると,合成した画像情報が自然に近い着色となる。
【0019】
の発明は,合成開口レーダで単偏波観測により撮影したグレースケール画像情報を擬似カラー化する擬似カラー化画像処理システムであって,前記擬似カラー化画像処理システムは,前記グレースケール画像情報の入力を受け付ける画像入力受付処理部と,前記グレースケール画像情報に基づいて生成した複数の画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当てて一つの画像情報として合成した合成画像情報と,前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成する高分解能化処理部と,を有する擬似カラー化画像処理システムである。
【0020】
本発明のように構成することで,第1の発明と同様の技術的効果を得ることができる。とくに,分解能を維持するパンシャープン処理について,一つの画像情報で処理を実行することができる。
【0021】
上述の発明において,前記擬似カラー化画像処理システムは,前記生成した擬似カラー化画像情報に対する色調補正処理の入力を受け付ける,または色調補正処理を実行することで出力画像を生成する出力画像色調補正処理部,を有する擬似カラー化画像処理システムのように構成することができる。
【0022】
生成した擬似カラー化画像情報について,さらに色調補正処理を施すことで,より自然に近い着色とすることができる。
【0023】
上述の発明において,前記グレースケール画像情報は,単偏波観測による合成開口レーダで撮像した画像情報である,擬似カラー化画像処理システムのように構成することができる。
【0024】
単偏波観測による合成開口レーダではグレースケール画像しか撮像できない。一方,複数偏波観測による合成開口レーダで撮像をした場合,分解能が低下してしまう。とくに合成開口レーダによる撮像の場合,通常の画像情報よりも分解能が重視されることがある。そうすると視認性がグレースケール画像よりも良いものの,複数偏波観測による合成開口レーダでの撮像を用いることは,不利である。そこで,分解能を維持したままグレースケール画像に基づいて擬似的なカラー画像を生成できるので,本発明は視認性の向上と分解能の維持という相反する点を解決することができる。
【0025】
第1の発明は,本発明のプログラムをコンピュータで読み込むことで実現できる。すなわち,コンピュータを,処理対象となるグレースケール画像情報における画像特徴量を用いて,画像特徴量ごとの画像情報を生成する空間画像生成処理部,前記生成した各空間画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当て,合成することでカラー合成画像情報を生成するカラー合成処理部,前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報と前記カラー合成画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成する高分解能化処理部,として機能させる擬似カラー化画像処理プログラムである。
【0026】
また第の発明は,本発明のプログラムをコンピュータで読み込むことで実現できる。すなわち,コンピュータを,合成開口レーダで単偏波観測により撮影したグレースケール画像情報の入力を受け付ける画像入力受付処理部,前記グレースケール画像情報に基づいて生成した複数の画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当てて一つの画像情報として合成した合成画像情報と,前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成する高分解能化処理部,として機能させる擬似カラー化画像処理プログラムである。
【0027】
本発明の画像生成方法をコンピュータで実行することで,グレースケール画像情報に基づいて擬似カラー化画像情報を生成することができる。すなわち,グレースケール画像情報に基づいて擬似カラー化画像情報を生成する擬似カラー化画像情報の生成方法であって,コンピュータにおいて,処理対象となるグレースケール画像情報における画像特徴量を用いて,画像特徴量ごとの画像情報を生成するステップと,前記生成した各空間画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当て,合成することでカラー合成画像情報を生成するステップと,前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報と前記カラー合成画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成するステップと,を有する擬似カラー化画像情報の生成方法である。
【0028】
本発明の画像生成方法をコンピュータで実行することで,グレースケール画像情報に基づいて擬似カラー化画像情報を生成することができる。すなわち,合成開口レーダで単偏波観測により撮影したグレースケール画像情報に基づいて擬似カラー化画像情報を生成する擬似カラー化画像情報の生成方法であって,コンピュータにおいて,前記グレースケール画像情報の入力を受け付けるステップと,前記グレースケール画像情報に基づいて生成した複数の画像情報に対してそれぞれ対応する色を割り当てて一つの画像情報として合成した合成画像情報と,前記グレースケール画像情報と同じ分解能を有する画像情報とを用いて擬似カラー化画像情報を生成するステップと,を有する擬似カラー化画像情報の生成方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の擬似カラー化画像処理システムを用いることによって,撮像する画像はグレースケール画像であるが,ユーザには視認性の高いカラー画像(擬似カラー画像)を提供することができる。これによってユーザの視認性を向上させることができる。また,グレースケール画像に基づいて空間画像情報を用いて擬似カラー化画像を生成する場合,分解能が落ちることが一般的であるが,本発明の場合には分解能を落とすことがない。そのため,特に合成開口レーダで単偏波観測を行う場合のように,分解能が重視される場合に効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の擬似カラー化画像処理システムのシステム構成の一例を模式的に示す概念図である。
図2】本発明の擬似カラー化画像処理システムにおける空間画像生成処理部の構成の一例を模式的に示す概念図である。
図3】本発明の擬似カラー化画像処理システムを機能させるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す概念図である。
図4】本発明の擬似カラー化画像処理システムの処理プロセスの一例を模式的に示すフローチャートである。
図5】入力画像となる単偏波観測による合成開口レーダ画像情報の一例を模式的に示す図である。
図6】コントラスト強調画像情報の一例を模式的に示す図である。
図7】平均画像情報の一例を模式的に示す図である。
図8】標準偏差画像情報の一例を模式的に示す図である。
図9】テクスチャ画像情報の一例を模式的に示す図である。
図10】エントロピー画像情報の一例を模式的に示す図である。
図11】エネルギー画像情報の一例を模式的に示す図である。
図12】カラー合成画像情報の一例を模式的に示す図である。
図13】擬似カラー化画像情報の一例を模式的に示す図である。
図14】出力画像情報の一例を模式的に示す図である。
図15】出力画像情報と光学情報とを対比的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の擬似カラー化画像処理システム1のシステム構成の一例の概念図を図1および図2に示す。擬似カラー化画像処理システム1は,本システムを利用する企業などが利用するサーバやパーソナルコンピュータ,可搬型通信端末などの各種のコンピュータで起動する。図3にコンピュータのハードウェア構成の一例を示す。
【0032】
コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,キーボードやポインティングデバイス(マウスやテンキーなど)などの入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報をインターネットやLANなどのネットワークを介して送受信する通信装置74とを有している。
【0033】
なお,図1ではコンピュータが一台のコンピュータで実現される場合を示したが,複数台のコンピュータにその機能が分散配置され,実現されても良い。また,本発明における各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していても良い。
【0034】
擬似カラー化画像処理システム1は,画像入力受付処理部10と入力画像色調補正処理部11と空間画像生成処理部12とカラー合成処理部13と高分解能化処理部14と出力画像色調補正処理部15と表示処理部16とを有する。
【0035】
画像入力受付処理部10は,本発明の擬似カラー化画像処理システム1を用いて擬似カラー化の処理を行う対象となるグレースケール画像情報の入力を受け付ける。
【0036】
入力画像色調補正処理部11は,画像入力受付処理部10で入力を受け付けたグレースケール画像情報に対して,色調の補正処理を実行する。色調補正処理としては,たとえばガンマ補正処理を実行する。ガンマ補正処理に用いるガンマ補正係数は,あらかじめ表示装置72に表示されるグレースケール画像情報などに基づいて設定されていればよい。
【0037】
空間画像生成処理部12は,入力画像色調補正処理部11で色調補正処理が実行された画像情報における画像統計量を用いて空間画像情報を生成する。空間画像生成処理部12は,コントラスト強調画像生成処理部120とテクスチャ画像生成処理部121とエントロピー画像生成処理部122とエネルギー画像生成処理部123とを有する。空間画像情報とは,後述するテクスチャ画像情報,エントロピー画像情報,エネルギー画像情報を含み,場合によってはコントラスト強調画像情報も含む。
【0038】
コントラスト強調画像生成処理部120は,入力画像色調補正処理部11で色調補正処理が実行された画像情報を用いて,コントラスト強調画像情報を生成する。コントラスト強調画像情報の生成処理にあたっては,画像情報のすべての画素に対して,処理対象となる画素の周辺8画素の値から統計量を算出することで実行する。たとえば,色調補正処理が実行された画像情報に対して,画素単位で数1のように処理を行う。コントラストの値は,任意領域内のヒストグラムが高いレベルに偏っていれば大きな値を示すこととなる。
【数1】
なお,lは画素値,Lは画素値の取り得る値の数(たとえば8ビットだとすると256),P(l)は,周辺8画素における画素値lの出現率である。
【0039】
テクスチャ画像生成処理部121は,コントラスト強調画像生成処理部120で生成したコントラスト強調画像情報を用いて,テクスチャ画像情報を生成する。テクスチャ画像情報を生成する場合には,コントラスト強調画像情報に基づいて平均画像情報,標準偏差画像情報を生成し,画素単位で平均画像情報を標準偏差画像情報で除算することで生成する。
【0040】
平均画像情報の生成は,コントラスト強調画像情報に対して画素単位で数2のように処理を行う。平均の値では濃度レベルの平均を示す。
【数2】
【0041】
また,標準偏差画像情報の生成は,コントラスト強調画像情報に対して画素単位で数3のように処理を行う。標準偏差の値では任意領域内で平均値から離れた画素が多く存在すれば大きな値を示すこととなる。
【数3】
【0042】
そしてテクスチャ画像生成処理部121は,生成した平均画像情報と標準偏差画像情報について,画素単位で除算をすることでテクスチャ画像を生成する(数4)。テクスチャの値は,画像の粗さを示している。
【数4】
【0043】
エントロピー画像生成処理部122は,入力画像色調補正処理部11で色調補正処理が実行された画像情報を用いて,エントロピー画像情報を生成する。エントロピー画像情報の生成処理にあたっては,画像情報のすべての画素に対して,処理対象となる画素の周辺8画素の値から数5のように処理を行うことで実行する。エントロピーの値は,領域内に多くの濃度レベルの画素が存在していると大きな値を示すこととなる。
【数5】
【0044】
エネルギー画像生成処理部123は,入力画像色調補正処理部11で色調補正処理が実行された画像情報を用いて,エネルギー画像情報を生成する。エネルギー画像情報の生成処理にあたっては,画像情報のすべての画素に対して,処理対象となる画素の周辺8画素の値から数6のように処理を行うことで実行する。エネルギーの値は,領域内の画素が特定の濃度レベルに集中していると大きな値を示すこととなる。
【数6】
【0045】
カラー合成処理部13は,空間画像生成処理部12で生成した各空間画像情報に対して色を割り当て,それらを一つの画像情報(カラー合成画像情報)として合成する。たとえばRGB系のカラーモデルを用いる場合,エネルギー画像情報に対して赤色,テクスチャ画像情報に対して緑色,エントロピー画像情報に対して青色を割り当てると,自然なカラー画像となる。そしてこれらの画像情報を一つの画像情報として合成し,カラー合成画像情報を生成する。
【0046】
また,CMYK系のカラーモデルを用いる場合,エネルギー画像情報に対してシアン,テクスチャ画像情報に対してマゼンダ,エントロピー画像情報に対してイエロー,コントラスト強調画像情報に対して黒を割り当てると,自然なカラー画像となる。そしてこれらの画像情報を一つの画像情報として合成し,カラー合成画像情報を生成する。
【0047】
なおカラー合成処理についてはカラーモデルとしてRGB系,CMYK系について一例を説明したが,ほかのカラーモデルを使用してもよい。またその場合,各色に対して各画像を適宜,割り当てればよい。
【0048】
高分解能化処理部14は,カラー合成処理部13で生成したカラー合成画像情報と,入力画像色調補正処理部11で色調補正処理が実行された画像情報(画像入力受付処理部10で入力を受け付けた画像情報と同じ分解能を有する画像であればよい)とを合成することで,カラー合成画像情報の高分解能化処理を実行する。この際には,たとえばパンシャープン処理を用いる。
【0049】
具体的には,カラー合成画像情報の新規レイヤーとして,入力画像色調補正処理部11で色調補正処理が実行された画像情報(あるいは画像入力受付処理部10で入力を受け付けた画像情報)を読み込む。つぎにカラー合成画像情報のレイヤーと新規レイヤーとを輝度合成する。そして,カラー合成画像情報と新規レイヤーに読み込んだ画像情報とを一つの画像情報(擬似カラー化画像情報)として合成する。
【0050】
出力画像色調補正処理部15は,高分解能化処理部14で生成した擬似カラー化画像情報に対して,同じ場所を撮像した光学画像情報(カラー画像)と比較するなどの方法により,自然な色に近づくように色調補正を行い,出力画像とする。この際に,担当者が目視により色調補正を行い,その入力を受け付けてもよいし,擬似カラー化画像情報と光学画像情報との色調を自動的に比較することで色調補正を実行してもよい。
【0051】
表示処理部16は,出力画像色調補正処理部15で色調補正処理が終了した出力画像を,表示装置72などで表示させる。
【0052】
つぎに本発明の擬似カラー化画像処理システム1の処理プロセスを図4のフローチャートを用いて説明する。なおカラーモデルとしてはRGB系を用いた場合を説明するが,CMYK系あるいはほかのカラーモデルを用いても実現できる。また,単偏波観測による合成開口レーダ画像情報に対して擬似カラー化処理を行う場合を説明するが,ほかのグレースケール画像情報であっても同様に処理を実現できる。
【0053】
擬似カラー化処理を行う処理対象とする合成開口レーダ画像情報を選択し,その入力を画像入力受付処理部10で受け付ける(S100)。たとえば処理対象とする合成開口レーダ画像情報の一例を図5に示す。
【0054】
S100で入力を受け付けた合成開口レーダ画像情報に対して,入力画像色調補正処理部11がガンマ補正処理を実行し(S110),色調を補正する。なおS110の処理が実行された画像情報を色調補正後画像情報と呼ぶ。
【0055】
S110において色調補正処理を実行後,空間画像生成処理部12は,S120乃至S150の処理を実行することにより空間画像情報を生成する。
【0056】
まず,コントラスト強調画像生成処理部は,色調補正後画像情報の各画素に対して,その周辺8画素の値から数1により統計量を算出し,コントラスト強調画像情報を生成する(S120)。コントラスト強調画像情報の一例を図6に示す。
【0057】
そしてテクスチャ画像生成処理部121は,S120で生成したコントラスト強調画像情報の各画素に対して,その周辺8画素の値から数2により統計量を算出し,平均画像情報を生成する。平均画像情報の一例を図7に示す。また同様に,数3により統計量を算出し,標準偏差画像情報を生成する。標準偏差画像情報の一例を図8に示す。
【0058】
そしてテクスチャ画像生成処理部121は,平均画像情報と標準偏差画像情報とを用いて,数4によりテクスチャ画像情報を生成する(S130)。テクスチャ画像情報の一例を図9に示す。
【0059】
エントロピー画像生成処理部122は,S120で生成した色調補正後画像情報の各画素に対して,その周辺8画素の値から数5により統計量を算出し,エントロピー画像情報を生成する(S140)。エントロピー画像情報の一例を図10に示す。
【0060】
また,エネルギー画像生成処理部123は,S120で生成した色調補正後画像情報の各画素に対して,その周辺8画素の値から数6により統計量を算出し,エネルギー画像情報を生成する(S150)。エネルギー画像情報の一例を図11に示す。
【0061】
なお,空間画像生成処理部12におけるS130乃至S150は任意の順番で処理の実行が可能である。
【0062】
以上の処理によって空間画像情報(ここではRGB系のカラーモデルなのでテクスチャ画像情報,エントロピー画像情報,エネルギー画像情報)が生成できると,カラー合成処理部13は,テクスチャ画像情報に対して緑色,エネルギー画像情報に対して赤色,エントロピー画像情報に対して青色を割り当て,これらの画像を一つのカラー合成画像情報に合成する(S160)。カラー合成画像情報の一例を図12に示す。
【0063】
そして高分解能化処理部14では,S160で生成したカラー合成画像情報に対してS110における色調補正後画像情報を合成することで,図13に示すように擬似カラー化画像情報を生成する(S170)。
【0064】
擬似カラー化画像情報を生成すると,出力画像色調補正処理部15において,担当者による色調補正処理の入力を受け付け,出力画像情報として生成する(S180)。出力画像情報を図14に示す。そして表示処理部16では生成した画像情報を表示装置72などで出力処理する(S190)。
【0065】
以上のような処理を実行することで光学画像に近い擬似カラー化処理が施された出力画像情報を得ることができる。図15に出力画像情報と光学画像情報との比較を示す。図15(a)が出力画像情報であり,図15(b)が光学画像情報である。また図5がもととなるグレースケール画像情報であるが,図5と比較して図15(a)の出力画像の視認性が向上していることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の擬似カラー化画像処理システム1を用いることによって,撮像する画像はグレースケール画像であるが,ユーザには視認性の高いカラー画像(擬似カラー画像)を提供することができる。これによってユーザの視認性を向上させることができる。また,グレースケール画像に基づいて空間画像情報を用いて擬似カラー化画像を生成する場合,分解能が落ちることが一般的であるが,本発明の場合には分解能を落とすことがない。そのため,特に合成開口レーダで単偏波観測を行う場合のように,分解能が重視される場合に効果を発揮する。
【符号の説明】
【0067】
1:擬似カラー化画像処理システム
10:画像入力受付処理部
11:入力画像色調補正処理部
12:空間画像生成処理部
13:カラー合成処理部
14:高分解能化処理部
15:出力画像補正処理部
16:表示処理部
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置
120:コントラスト強調画像生成処理部
121:テクスチャ画像生成処理部
122:エントロピー画像生成処理部
123:エネルギー画像生成処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15