特許第6366938号(P6366938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366938押圧を必要とする安全機能を有する車両ステアリングコラム用の盗難防止装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366938
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】押圧を必要とする安全機能を有する車両ステアリングコラム用の盗難防止装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/021 20130101AFI20180723BHJP
【FI】
   B60R25/021
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-537084(P2013-537084)
(86)(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公表番号】特表2013-544704(P2013-544704A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2011068979
(87)【国際公開番号】WO2012059424
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年10月20日
【審判番号】不服2016-18155(P2016-18155/J1)
【審判請求日】2016年12月1日
(31)【優先権主張番号】10/04353
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516364120
【氏名又は名称】ユーシン、フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】アリックス、デラ、フィオレンティナ
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 実開平4−84067(JP,U)
【文献】 実開昭62−30967(JP,U)
【文献】 特開2007−177575(JP,A)
【文献】 特開平11−71942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ステアリングコラム用の盗難防止装置(2)であって、
ロータ(14)と、ステータ(12)と、を有するロック(10)を備え、
前記ステータがペグ(24)を支持し、前記ロータがペグ収容溝(46)を有し、 前記ペグ収容溝は、所定の角度位置を発端として、前記ステータに対する前記ロータの所定方向の回転が、前記ロータを予め前記ステータに対して当該装置の内側へ向けて押し込むことを必要とするように構成され、
前記位置を「ON」位置と称し、前記方向が「OFF」方向である場合に、前記溝(46)は、前記ロータを予め押し込むことなく、ロータを「OFF」方向とは反対の方向に回転させて「ON」位置に到達させることができるように構成され、
前記ペグ(24)は、前記ロータ(14)が前記「OFF」方向に回転するとき及び前記「OFF」方向とは反対の前記方向に回転するときに、前記溝(46)に受けられる、 前記ペグ(24)は、前記ロータ(14)の回転軸と平行な摺動およびこの軸を中心とする回転において、前記ステータ(12)に対して固定され、
前記盗難防止装置(2)は、ケーシング(4)を備え、前記ペグ(24)が前記ケーシング(4)と係合し、それにより、前記ステータ(12)が前記ケーシング(4)に対して強固に固定されるようになっており、
前記ロータ(14)に対する前記ステータ(12)の特定の位置においては、前記ペグ(24)は、前記ロータ(14)に対して軸(26)に沿って摺動でき、
前記ロータ(14)に対する前記ステータ(12)の他の全ての位置においては、前記ペグ(24)の摺動が防止され、それにより、前記ペグ(24)が前記ステータ(12)を前記ケーシング(4)に強固に固定された状態に維持する
ことを特徴とする車両ステアリングコラム用の盗難防止装置(2)。
【請求項2】
前記溝(46)は、前記ロータの回転軸(16)に対して径方向であり、かつ、前記角度位置を決定する前記ペグ用の当接面(54)を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
当該装置は、ロータを「OFF」位置とは反対の方向に回転させるための前記ロータに対する作用が、前記ロータを「ON」位置へと至らせるのに十分となるように設けられる、請求項1から2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記溝(46)は、前記ステータ内での前記ロータのいかなる摺動も不可能である、前記ロータの少なくとも1つの角度位置が存在するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記ロータを押し込み方向とは反対の方向(44)に付勢する戻りバネ(42)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記溝(46)は、前記ロータの外周面(48)に形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ロータは、前記ペグが前記ステータの外面を越えて突出することなく前記ステータ内へと延びるように前記ペグを所定位置で受け入れることができるキャビティ(55)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ステアリングコラム用の盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は既知であり、ロックおよびボルト機構を備えている。車両がOFFに切り換えられると、ステアリングホイールが回転し、ボルトをコラムの軸と平行でない方向に配置させ、それにより、ボルトがこのコラムと係合してステアリングホイールのいかなる操作も防止する。ユーザがイグニションキーをロック内へ挿入すると、機構がボルトを引き込んでコラムのロックが解除され、ステアリングホイールが自由になる。
【0003】
この装置の洗練されたバージョンでは、車両がONとなって走行しているときに、キーおよびロータをロックステータ内で回転させるだけではキーをロックから引き抜くことができない。このときにキーをロックから引き抜くことができるようにするには、キーをロック内へ押し込む必要がある。その結果、これは、特に車両がONとなって走行しているときにキーの取り外しが起こりうるという危険性があるため、キーのいかなる不用意な或いは不当な取り外しも防止する。特に、それは、車両の前の座席で抱かれている子供がその抱かれている最中にキーをつかみ取ることができないようにする。
【0004】
それにもかかわらず、前述した機能性を得るためにこれまで設けられた機構は、組み付けが比較的面倒であり、高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、これらの機能性を得るために組み付けがより簡単で安価な機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明は、車両ステアリングコラム用の盗難防止装置であって、ロータとステータとを備えるロックを備え、ロータおよびステータのうちの一方がペグを支持し、他方がペグ収容溝を有し、所定の角度位置を発端として、ステータに対するロータの所定方向の回転がロータを予めステータに対して当該装置の内側へ向けて押し込むことを必要とするようにペグ収容溝が構成される、車両ステアリングコラム用の盗難防止装置を提供する。
【0007】
したがって、ペグは、回転に関しておよび摺動に関して、ステータ内でのロータの相対的な位置を割り出す。車両がONとなって走行している際、ペグと溝との間の協働は、ロータが予めステータ内へ押し込まれなければキーが取り外されるのを防止する。ペグは、実施形態に応じて、ロータによって支持されてもよく或いはステータによって支持されてもよい。
【0008】
好適には、溝は、ロータの回転軸に対して径方向であり、かつ、角度位置を決定するペグ用の当接面を有する。
【0009】
好ましくは、位置を「ON」位置と称し、方向が「OFF」方向である場合に、溝は、ロータを予め押し込むことなく、ロータを「OFF」方向とは反対の方向に回転させて「ON」位置に到達させることができるように構成される。
【0010】
したがって、「ON」位置から出るためにロータを予めステータ内へ押し込まなければならないという事実にもかかわらず、事前の押し込みステップを要求する必要がない限りにおいて、車両の切り換えられた「OFF」位置から「ON」位置へ達するのが容易である。
【0011】
好ましくは、装置は、ロータを「OFF」位置とは反対の方向に回転させるためのロータに対する作用がロータを「ON」位置へと至らせるのに十分となるように設けられる。
【0012】
したがって、ユーザは、ロータを回転させるだけで済む。溝は、ロータ動作中の適した瞬間にロータをステータ内で摺動させるようにペグと協働する。したがって、ロックの操作は、ロータがその経路を経る際に異なるタイプの動きを伴って移動しているという事実にもかかわらず、ユーザが関与する限りは、簡単なままである。
【0013】
好適には、溝は、ステータ内でのロータのいかなる摺動も不可能であるロータの少なくとも1つの角度位置が存在するように構成される。
【0014】
好ましくは、装置は、ロータを押し込み方向とは反対の方向に付勢する戻りバネを備える。
【0015】
これにより、ロック操作が容易になる。
【0016】
1つの実施形態では、溝がロータまたはステータの外周面に形成される。
【0017】
好ましくは、ペグは、ロータの回転軸と平行な摺動およびこの軸を中心とする回転においてステータに対して固定される。
【0018】
好適には、装置がケーシングを備え、ペグがケーシングと係合し、それにより、ステータがケーシングに対して強固に固定される。
【0019】
したがって、ペグは、前述した割り出し機能を果たすだけでなく、装置のケーシングに対してステータを厳格に位置決めする。
【0020】
好ましくは、ロータは、ペグがステータの外面を越えて突出することなくステータ内へと延びるようにペグを所定位置で受け入れることができるキャビティを有する。
【0021】
このキャビティは、ロックをケーシング内に取り付けることができるようにペグを一時的に受け入れることができる。
【0022】
本発明の更なる特徴および利点は、添付図面を参照して非限定的な一例として与えられる1つの実施形態の以下の説明の過程において更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の装置の1つの実施形態の部分斜視図である。
図2】本発明の装置の1つの実施形態の部分軸方向断面図である。
図3】ケーシングを伴わない図1の装置のロックの部分分解斜視図である。
図4】ケーシングを伴わない図1の装置のロックの部分側面図である。
図5】それぞれ、一方では、ペグを伴うロータを単独で示し、他方では、装置をこの装置の4つのそれぞれの動作ステップの過程において示している。
図6】それぞれ、一方では、ペグを伴うロータを単独で示し、他方では、装置をこの装置の4つのそれぞれの動作ステップの過程において示している。
図7】それぞれ、一方では、ペグを伴うロータを単独で示し、他方では、装置をこの装置の4つのそれぞれの動作ステップの過程において示している。
図8】それぞれ、一方では、ペグを伴うロータを単独で示し、他方では、装置をこの装置の4つのそれぞれの動作ステップの過程において示している。
図9図8の構成におけるロータおよびペグの更なる拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図4は、車両ステアリングコラムのための盗難防止装置2を示している。装置は、互いに離れた2つの部分、すなわち、図示のロック部分6と、図1に部分的にのみ示される固定部分8とを装置内に画定するケーシング4を備える。固定部分8は不図示のボルトを特に備え、このボルトは、それが2つの位置、すなわち、固定位置と非固定位置とをとることができるように、ケーシングに対して摺動可能に取り付けられる。伸張位置である第1の位置において、ボルトは、コラムが車両の構造体に対して回転するのを防止するように、ステアリングコラムの一部と係合する。非固定位置つまり引き込み位置において、ボルトは、コラムが構造体に対して回転できるようにする。これらの位置の一方から他方へのボルトの摺動方向は、コラムの回転軸と平行ではない。固定部分はそれ自体は公知のタイプのものであるため、ここでは詳しく説明しない。
【0025】
ロック部分6はロック10を備え、このロック10は、ステータ12と、該ステータのハウジング内に収容されるロータ14とを有する。ロータ14は、ロック部分6の軸16を中心にステータに対して回転できるように取り付けられる。また、ロータは、この同じ軸16に沿ってステータに対して摺動できるように取り付けられる。したがって、ロータは、ステータと摺動回動接続を成して取り付けられる。
【0026】
ドライバーが車両を始動させるためにこの目的で設けられるキー20などの挿入体を使用してロックを作動させるときに、ボルトが既に非固定位置になかった場合、装置がボルトを非固定位置へと移動させてコラムを操作できるようにするように、装置は設けられる。
【0027】
ロック6は、ロータおよびステータのハウジング18内で摺動できるように取り付けられるタンブラーなど不図示の要素を備える。ロータは、外部軸方向口部23を伴う内部ハウジング22を有する。キー20が口部23を介してハウジング22内に挿入されると、キーによって、移動要素は、これらの移動要素のそれぞれが全体的にロータの内側で延びてステータに対するロータの回転を可能にするような構成となる。キーが存在しない場合には、不図示の戻りバネが、それぞれの移動要素がロータ内へと部分的に延びるとともにステータ内へと部分的に延びる位置に移動要素を配置し、それにより、これらの2種の任意の相対的な動きを防止する。
【0028】
ステータ12がケーシング4に強固に固定されるため、以下において、ロータの任意の動きは、ステータに対するロータの動きのことである。
【0029】
ロックは、軸16に対して垂直な径方向の軸26周りで回転対称を成す形状を有するペグ24を備える。ペグ24は、この特定の場合には、2つの端部、すなわち、これらの2つの端部から径方向に突出する環状膨出部32によって互いに分離される外端部28および内端部30を有する。それぞれの部分は円柱状の外面を有する。
【0030】
外端部28の円柱面は、内端部30の円柱面よりも大きい直径を有する。装置が図2に示されるように取り付けられると、外端部28がケーシング4の径方向オリフィス内へと延び、それにより、雄−雌結合が形成される。膨出部32および内端部30は、それら自体、ステータ12の回転対称を成すハウジング34内へと延びる。したがって、ペグ24は、ステータとの雄−雌結合も形成する。ロータに対するステータの特定の位置において、ペグ24は、以下で分かるように、ロータに対して軸26に沿って摺動できる。しかしながら、他の全ての位置では、この摺動が防止され、それにより、ペグがステータ12をケーシング4に強固に固定された状態に維持する。ハウジング34は、ステータに対するペグのこの動きを許容するように十分長い。圧縮バネ36が設けられ、この圧縮バネは、1つの軸方向端部によってハウジング34の肩部を押圧するとともに、他端部によって膨出部32を押圧し、それにより、ペグを軸26の方向に恒久的に付勢し、その方向の向きは軸16から離れる。このバネ力の作用下で膨出部32がケーシング4を押圧し、ペグを受け入れるケーシングのオリフィスは、膨出部が通過するのを防止できる十分に小さい直径を有し、それにより、ペグが抜け出るのを防止し、このため、ペグがステータ内に保持される。ペグは、軸16と平行な摺動およびこの軸周りの回転においてステータに対して固定される。また、ペグの内端部30は、肩部の向こう側に位置されるハウジング34の内部も通過する。
【0031】
ケーシングに対するステータ12の強固な取り付けが図4に示されている。その同じ図は、ケーシングに対して軸16周りに回転できるように取り付けられる装置のクランクシャフト40を示しており、ケーシングに対するクランクシャフトの任意の並進移動が防止される。図3に示される圧縮バネ42が、軸16の方向で、クランクシャフト40とロータ14との間に介挿され、それにより、ロータを軸16の方向に付勢し、その方向の向きは、ロータをステータから押し出そうとする向きであり、その方向が矢印44により示される。押し込み方向は、ロータをクランクシャフトの方向でステータ内へ押し込もうとする傾向を有する反対方向を意味する。
【0032】
装置2は、この場合には、ロータ14の円筒外周面48に形成される溝46を有する。溝は、軸16に対して径方向の面内でU形状の断面を有し、Uの枝は、ペグ24に軸方向で当接する2つの側面を形成する。溝は内端部30を受け入れる。軸16の方向の溝の幅は、溝内のペグの位置が軸16に沿うロータの位置を決定するように内端部30の直径を僅かに超える。溝は、シケイン48を除いて、軸16に中心付けられる環状の全体形状を有する。ペグが溝の環状部分に位置している限り、軸に沿うロータの位置は不変のままである。しかしながら、ペグがシケインを通過すると、ペグがロータを軸に沿って摺動させる。
【0033】
溝の形状は、装置がどのように使用されるのかについての以下の説明の中で更に詳しく記載される。
【0034】
図5を参照すると、車両がOFFに切り換えられており、ドライバーが車両をONに切り換えるためにキー20をロータ内に挿入すると想定する。このとき、ペグ24は、この場合には移動開始端部である溝の移動終端部に周方向で当接している。ロータのこの角度位置は、軸16周りの0°の基準位置としてとられる。ロックは、この構成でのみキーを軸16に沿ってロック内に挿入でき、或いは、ロックから引き抜くことができるようにそれ自体公知の態様で配置される。ロータが0°位置から離れると直ぐに、キーをロックから引き抜くことが不可能になる。
【0035】
図6を参照すると、ドライバーは、キーおよびロータを、ステータに対して軸16を中心に矢印50により示される時計回りに回転させる。それにより、ドライバーは、例えば20°の角度にわたってロータを回転させる。図5の位置から図6の位置へとペグによって移動される溝の部分は環状の部分であるため、ロータの動きは厳密な回転移動である。言い換えると、これらの2つの位置のうちの一方から他方への軸16に沿うロータのいかなる摺動動作も不可能である。
【0036】
図7を参照すると、キーおよびロータの回転が続けて40°の角度位置に達したと想定する。図6の位置から図7の位置へ移動するために、ペグはシケイン48の始まり部分を移動する。溝のこの部分を越えると、溝の側面52が軸16に対して径方向でない面内で延び、これらの2つの側面は互いに平行である。側面52によって画定される溝の部分はリフトランプと称される。したがって、ドライバーによりキーを介して駆動されるロータの回転動作はまた、側面52の一方を押圧するペグのカム作用により、バネ42の戻し力の作用に抗してロータ14を矢印44と反対の方向に押し込む。
【0037】
図8を参照し、ロータが60°の位置に達するまでロータの回転が続いたと想定する。図7の位置から図8の位置へと移動するため、ペグは、シケインの中央を形成する溝の短い環状部を移動し、その結果、それ自体が、軸16に対して径方向の面内で延びる溝の平坦面54を乗り越えたこのシケインの出口と対向する。クランクシャフトに最も近い溝の側面はもはやバネ42の作用下でのロータの前進移動を防止しないため、ロータは矢印44の方向に摺動する。このように、図7の位置から図8の位置へのロータの移動は、厳密な回転動作の後に続く厳密な摺動動作によって起こる。ペグ24は、最終的に、それ自体がシケインから抜け出る。装置は、ロータのこの位置が車両を始動させるように設けられる。このとき、ドライバーはキーのいかなる動きをも停止させ、また、装置は、バネ42の作用下で、「ON」位置と称されるこの位置にとどまる。
【0038】
「ON」位置を発端として、ペグが溝の他の環状部への入口に至る程度までロータを方向50に回転し続けることができる。この場合、これはロータの厳密な回転動作である。一方、ロータの反対方向の任意の回転動作は、厳密であろうと或いはそうでなかろうと、面54に対するペグ24の当接により防止される。したがって、ロータを意図的に或いは意図せずに「ON」位置から元の「OFF」位置へと回転させてキーを取り外すことができない。
【0039】
ドライバーが関与する限り、「OFF」位置から「ON」位置へ動かすには、ドライバーがキーをロータと共に方向50へ回転させるしかなかった。溝46およびバネ42は、必要な場合にロータを摺動させた。
【0040】
ロータを「ON」位置から「OFF」位置への経路で移動させるためには、第1に、ペグ24が面54を乗り越えることができるようにロータに対して軸16に沿う厳密な摺動動作を与えるべくロータを押し込む必要がある。
【0041】
キーをロック内へ更に押し込むことによるドライバーのキーに対する意図的な行為によって行なわれるロータのこの厳密な摺動動作の終わりに、ドライバーは、方向50とは反対の方向にロータを回転させてシケインの端部を乗り越えさせる。これは厳密な回転動作である。
【0042】
次に、回転動作を続けると、ペグは側面52によって画定される溝の部分を移動し、そのため、圧縮バネ42の作用下で、ロータが矢印44の方向に摺動する。
【0043】
最後に、ペグが環状部へと戻り、それにより、ロータは、厳密な回転動作によって「OFF」位置に達する。
【0044】
このように、「ON」位置から「OFF」位置へ移動するために、ドライバーにより行なわれる動作は、最初にロータの厳密な押し込みであり、その後に続くロータの回転である。溝の形状およびバネ42の存在を考えると、この回転は、溝内のペグのその経路の一部にわたる摺動と組み合わされる。
【0045】
ロータの摺動が例えば2.6mmの移動にわたって行なわれるようにしてもよい。
【0046】
本例では、溝46の長さの大部分にわたって、溝の底部60が、軸16へと向かうペグ24の任意の移動を防止するように径方向で十分に高くなっている。しかしながら、膨出部32がハウジング34の底部と当接するまでペグを径方向に押し込むことができるように、底部が更に下がった溝の1つの単一の領域55が存在する。本例において、この領域は、面54と隣接しており、ロータが「ON」位置にあるときにペグに接近できる。
【0047】
装置2を組み付けるため、開口23と隣接する端部に対向する端部であるステータの内部軸方向端部62からロータ14がステータ12内へ導入され、ロータが「ON」位置に配置される。次に、ペグの軸方向外端部が円筒面48を越えて突出しないように、ペグがバネ36の作用に抗して溝46および領域55へ突き通るまで、バネ36およびペグ24がハウジング34内に配置される。
【0048】
その後、このアセンブリがケーシング4の軸方向外端部内へ導入される。ペグがそれを対象とするケーシングのオリフィスと対向する位置に達すると、バネ36の作用下でペグが径方向で配備される。このようにして、ロータ、ステータ、ペグ、および、ケーシングが組み付けられる。
【0049】
無論、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に対して多くの改変が成されてもよい。
【0050】
溝をステータに設けて、ペグをロータに設けるようにしてもよい。
【0051】
溝を、外周面ではなく、ロータまたはステータの軸16と垂直な面に形成することができる。
【0052】
溝の形状を変更することもできる。
【0053】
先に与えられた長さおよび角度の数値は、単なる一例として与えられており、限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9