特許第6366948号(P6366948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366948磁気共鳴イメージング装置及び傾斜磁場コイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366948
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及び傾斜磁場コイル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20180723BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A61B5/055 340
   G01N24/00 600Y
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-23692(P2014-23692)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-150018(P2015-150018A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山下 正幹
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 良知
(72)【発明者】
【氏名】高森 博光
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0261831(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/162233(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/055
G01R33/385
B23K103/10−103/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像空間に傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルを備え、
前記傾斜磁場コイルは、
アルミニウムで形成された第1のコイル部材と、
前記第1のコイル部材に接続され、銅で形成された第2のコイル部材と
を有し、
前記第1のコイル部材は、コイルを形成する導体パターンであり、
前記第2のコイル部材は、前記導体パターンに流れる電流を供給する給電ケーブルが接続される端子である、
とを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1のコイル部材と前記第2のコイル部材との接続部分は、前記第1のコイル部における前記第2のコイル部材との接続面にスズ又はニッケルのめっきが施されたうえで、はんだにより接続されることを特徴とする請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
撮像空間に傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルを備え、
前記傾斜磁場コイルは、
アルミニウムで形成された第1のコイル部材と、
前記第1のコイル部材に接続され、銅で形成された第2のコイル部材と
を有し、
前記第1のコイル部材と前記第2のコイル部材との接続部分は、前記第1のコイル部材における前記第2のコイル部材との接続面にスズ又はニッケルのめっきが施されたうえで、はんだにより接続されることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記第1のコイル部材と前記第2のコイル部材との接続部分は、ねじによって締結されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1のコイル部材と前記第2のコイル部材との接続部分は、複数のねじによって締結されることを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記第1のコイル部材と前記第2のコイル部材との接続部分は、複数のねじによって締結され、
前記複数のねじが設けられる間隔は、前記第1のコイル部材及び前記第2のコイル部材それぞれの線膨張係数の違いから接続面に生じるせん断ひずみによって前記はんだにかかるせん断応力の大きさが前記はんだの許容せん断応力以下となる間隔に設定されることを特徴とする請求項2又は3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記ねじの材質は、銅又は真鍮であることを特徴とする請求項4〜のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記ねじに形成されたおねじ部、前記第1のコイル部材に形成されためねじ部、及び、前記第2のコイル部材に形成されためねじ部のうち、少なくとも一つの表面にスズ又はニッケルのめっきが施されることを特徴とする請求項4〜のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記第1のコイル部材と前記第2のコイル部材との接続部分は、樹脂に封入されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記傾斜磁場コイルは、前記第1のコイル部材の周囲を樹脂で含浸して形成され、
前記第1のコイル部材と前記第2のコイル部材との接続部分は、前記第1のコイル部材の周囲に含浸された前記樹脂に封入される
ことを特徴とする請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記第1のコイル部材と前記第2のコイル部材との接続部分は、前記傾斜磁場コイルの端面と前記第1のコイル部材との間に配置されることを特徴とする請求項10に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記第2のコイル部材は、当該第2のコイル部材の少なくとも一部が前記傾斜磁場コイルの外側に配置されることを特徴とする請求項10又は11に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記第1のコイル部材と前記第2のコイル部材との接続部分は、バリアー層で被覆されることを特徴とする請求項1011又は12に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
アルミニウムで形成された第1のコイル部材と、
前記第1のコイル部材に接続され、銅で形成された第2のコイル部材と
を備え
前記第1のコイル部材は、コイルを形成する導体パターンであり、
前記第2のコイル部材は、前記導体パターンに流れる電流を供給する給電ケーブルが接続される端子である、
とを特徴とする傾斜磁場コイル。
【請求項15】
アルミニウムで形成された第1のコイル部材と、
前記第1のコイル部材に接続され、銅で形成された第2のコイル部材と
を備え、
前記第1のコイル部材と前記第2のコイル部材との接続部分は、前記第1のコイル部材における前記第2のコイル部材との接続面にスズ又はニッケルのめっきが施されたうえで、はんだにより接続されることを特徴とする傾斜磁場コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及び傾斜磁場コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置は、撮像対象の被検体が置かれる撮像空間に傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルを備える。この傾斜磁場コイルは、一般的に、コイルを形成する導体として、銅で形成された導体パターンを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−201980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、傾斜磁場コイルの軽量化を実現することができる磁気共鳴イメージング装置及び傾斜磁場コイルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、撮像空間に傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルを備える。前記傾斜磁場コイルは、アルミニウムで形成された第1のコイル部材と、前記第1のコイル部材に接続され、銅で形成された第2のコイル部材とを有する。前記第1のコイル部材は、コイルを形成する導体パターンである。前記第2のコイル部材は、前記導体パターンに流れる電流を供給する給電ケーブルが接続される端子である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係るMRI装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係る傾斜磁場コイルにおける導体パターンと端子との接続部分を示す概要図である。
図3図3は、本実施形態に係る導体パターンと端子との接続部分の外観を示す斜視図である。
図4図4は、本実施形態に係る導体パターンと端子との接続部分の構造を示す斜視図である。
図5図5は、本実施形態に係る導体パターンと端子との接続部分を示す断面図である。
図6図6は、図5に示した導体パターンと端子との接続部分を拡大した拡大図である。
図7図7は、本実施形態に係るはんだの応力ひずみ線図を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係る傾斜磁場コイルにおける導体パターンと端子との接続部分周辺を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面に基づいて、本実施形態に係るMRI装置及び傾斜磁場コイルの実施形態を説明する。
【0008】
図1は、第1の実施例に係るMRI装置の構成例を示す図である。図1に示すように、MRI装置100は、架台装置110と、受信コイル120と、傾斜磁場電源130と、送信部140と、受信部150と、シーケンス制御装置160と、寝台装置170と、計算機システム180とを備える。
【0009】
架台装置110は、概略円筒形状に形成された静磁場磁石111、傾斜磁場コイル112及び送信コイル113を、静磁場磁石111の内周側に傾斜磁場コイル112が配置され、傾斜磁場コイル112の内周側に送信コイル113が配置された状態で、それぞれの中心軸が揃うように支持する。また、架台装置110は、送信コイル113の内周側に配置された円筒形状のボア114を有し、ボア114の内周側に撮像空間を形成する。
【0010】
静磁場磁石111は、円筒状に形成された磁石であり、静磁場電源(図示せず)から供給される電流によって、撮像空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石111は、概略円筒状に形成された真空容器と、真空容器の中で冷却液に浸漬された超伝導コイルとを有する超電導磁石である。また、静磁場磁石111は、超電導磁石に限られず、永久磁石や常電導磁石であってもよい。
【0011】
傾斜磁場コイル112は、円筒状に形成されたコイルであり、傾斜磁場電源130から供給される電流によって、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸それぞれに沿って強度が変化する傾斜磁場を撮像空間に発生させる。例えば、傾斜磁場コイル112は、メインコイル112aと、シールドコイル112bとを有するASGC(Active Shield Gradient Coil)である。メインコイル112aは、X軸、Y軸及びZ軸それぞれに沿って強度が変化する傾斜磁場を撮像空間に発生させる。また、シールドコイル112bは、メインコイル112aの外周側に配置され、メインコイル112aの漏洩磁場をキャンセルする。なお、傾斜磁場コイル112は、ASGCに限られず、シールドコイル112bを有しないものであってもよい。
【0012】
送信コイル113は、円筒状に形成されたコイルであり、傾斜磁場コイル112の内側に配置される。また、送信コイル113は、送信部140から供給される高周波電流によって、撮像空間に高周波磁場を発生させる。
【0013】
受信コイル120は、被検体Sに装着され、送信コイル113により発生した高周波磁場の影響によって撮像空間に置かれた被検体Sから発生する磁気共鳴信号を受信する。また、受信コイル120は、受信した磁気共鳴信号を内部の増幅器によって増幅して出力する。
【0014】
なお、本実施形態では、送信コイル113と受信コイル120とが別のコイルである場合の例を説明するが、送信及び受信の両方の機能を備えた送受信兼用のコイルが用いられてもよい。その場合には、送信コイル113が受信機能をさらに備えてもよいし、受信コイル120が送信機能をさらに備えてもよい。
【0015】
傾斜磁場電源130は、シーケンス制御装置160からの指示に基づいて、傾斜磁場コイル112に電流を供給する。例えば、傾斜磁場電源130は、高圧発生回路や傾斜磁場アンプなどを含む。高圧発生回路は、商用交流電源から供給されるAC(Alternate Current)電流を所定の電圧のDC(Direct Current)電流に変換して傾斜磁場アンプに供給する。傾斜磁場アンプは、高圧発生回路から供給されるDC電流を増幅して傾斜磁場コイル112に供給する。
【0016】
送信部140は、シーケンス制御装置160からの指示に基づいて、送信コイル113にRFパルスを送信する。例えば、送信部140は、発振部や位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、RFアンプなどを含む。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数のRFパルスを発生する。位相選択部は、発信部によって発生したRFパルスの位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力されたRFパルスの周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変調部から出力されたRFパルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。RFアンプは、振幅変調部から出力されたRFパルスを増幅して送信コイル113に供給する。
【0017】
受信部150は、シーケンス制御装置160からの指示に基づいて、受信コイル120によって受信された磁気共鳴信号を検出する。また、受信部150は、検出した磁気共鳴信号をA/D(Analog-to-Digital)変換することで生データを生成し、生成した生データをシーケンス制御装置160に送信する。例えば、受信部150は、選択器や前段増幅器、位相検波器、A/D変換器などを含む。選択器は、送信コイル113から出力される磁気共鳴信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力される磁気共鳴信号を増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力される磁気共鳴信号の位相を検波する。A/D変換器は、位相検波器から出力される信号をデジタル信号に変換する。
【0018】
シーケンス制御装置160は、計算機システム180による制御のもと、傾斜磁場電源130、送信部140および受信部150をそれぞれ駆動することによって、データ収集を実行する。また、シーケンス制御装置160は、データ収集を行った結果、受信部150から生データが送信されると、その生データを計算機システム180に送信する。
【0019】
寝台装置170は、被検体Sが載置される天板171を備え、上下方向、前後方向及び左右方向に天板171を移動させる。ここで、前方向は、静磁場磁石111の軸方向に沿って、寝台装置170側から架台装置110側へ向かう方向であり、後方向は、静磁場磁石111の軸方向に沿って、架台装置110側から寝台装置170側へ向かう方向である。また、左方向は、寝台装置170側から架台装置110に正対した場合に、静磁場磁石111の軸から左側へ向かう方向であり、右方向は、寝台装置170側から架台装置110に正対した場合に、静磁場磁石111の軸から右側へ向かう方向である。例えば、寝台装置170は、被検体Sの撮像が行われる際に、被検体Sが載置された天板171を架台装置110が有するボアの内周側に形成された撮像空間へ移動させる。
【0020】
計算機システム180は、MRI装置100全体を制御する。例えば、計算機システム180は、操作者から各種入力を受け付ける入力部、操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス制御装置160にデータ収集を実行するシーケンス制御部、シーケンス制御装置160から送信された生データに基づいて画像を再構成する画像再構成部、再構成された画像などを記憶する記憶部、再構成された画像など各種情報を表示する表示部、操作者からの指示に基づいて各機能部の動作を制御する主制御部などを有する。
【0021】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の構成例について説明した。このような構成のもと、MRI装置100では、傾斜磁場コイル112が、アルミニウムで形成された第1のコイル部材と、第1のコイル部材に接続され、銅で形成された第2のコイル部材とを有する。
【0022】
一般的に、MRI装置において、傾斜磁場コイルが有する導体パターンや端子などの導電性のコイル部材は、電気伝導率が高い銅で形成される。これに対し、本実施形態に係るMRI装置100では、傾斜磁場コイル112が、アルミニウムと銅とを組み合わせて形成される。このため、本実施形態によれば、傾斜磁場コイルが有する導電性のコイル部材の全てが銅で形成される場合と比べて、傾斜磁場コイル112の軽量化を実現することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、第1のコイル部材が、コイルを形成する導体パターンであり、第2のコイル部材が、導体パターンに流れる電流を供給する給電ケーブルが接続される端子である場合の例を説明する。
【0024】
図2は、本実施形態に係る傾斜磁場コイル112における導体パターンと端子との接続部分を示す概要図である。例えば、図2に示すように、傾斜磁場コイル112は、メインコイル112aを形成する3層の導体パターン201〜203と、シールドコイル112bを形成する3層の導体パターン204〜206とを有する。ここで、傾斜磁場コイル112は、導体パターン201〜203及び導体パターン204〜206の周囲を樹脂112cで含浸して形成される。
【0025】
また、傾斜磁場コイル112は、シールドコイル112bに含まれる導体パターン206に接続される端子207を有する。端子207は、導体パターン206に流れる電流を供給する給電ケーブル208が接続される。例えば、端子207には、給電ケーブル208側の端子209がボルト210によって取り付けられる。ここで、給電ケーブル208は、傾斜磁場電源130と傾斜磁場コイル112との間に設けられ、傾斜磁場電源130から傾斜磁場コイル112へ電流を供給する。なお、図2では図示を省略しているが、導体パターン201〜205にも、それぞれ端子207と同様の端子が接続される。
【0026】
そして、導体パターン201〜206は、それぞれアルミニウムで形成される。また、導体パターン201〜206に接続される端子は、それぞれ銅で形成される。
【0027】
一般的に、MRI装置において、傾斜磁場コイルの導体パターン及び端子は、電気伝導率が高い銅で形成される。このことから、例えば、傾斜磁場コイルの軽量化を実現するための方法として、導体パターンと端子とを銅より軽いアルミニウムで形成することが考えられる。しかし、傾斜磁場コイルに接続される給電ケーブルは、静磁場内に置かれるため電流が流れるとローレンツ力が作用して振動するため、この振動によって端子が緩むことが考えられる。したがって、端子については、アルミニウムより強度が高い銅で形成するのが望ましい。
【0028】
これに対し、本実施形態では、傾斜磁場コイル112が有する導体パターンがアルミニウムで形成され、導体パターンに接続される端子が銅で形成される。そのため、本実施形態によれば、導体パターンと端子との接続部分の強度を確保しつつ、導体パターン及び端子の両方が銅で形成される場合と比べて、傾斜磁場コイル112の軽量化を実現することができる。また、例えば、近年のように、銅の価格がアルミニウムの価格より高い場合には、傾斜磁場コイル112のコストを低減させることもできる。
【0029】
なお、導体パターン206と端子207との接続部分は、銅とアルミニウムとが異種金属であるため、それぞれを単純に接触させてしまうと電気腐食が発生することが想定される。そこで、本実施形態では、導体パターン206と端子207との接続部分は、導体パターン206における端子207との接続面にスズ又はニッケルのめっきが施されたうえで、はんだにより接続される。
【0030】
また、導体パターン206と端子207との接続部分には、ローレンツ力による導電ケーブルの振動や傾斜磁場コイル112自体の振動によって機械的な負荷が生じることが想定される。そこで、本実施形態では、導体パターン206と端子207との接続部分は、ねじによって締結される。なお、導体パターン206と端子207との接続部分を締結するねじの本数は1本でもよいが、ねじによる締結部分に生じる機械的な負荷を減らすためには、複数のねじを用いるのが望ましい。このため、本実施形態では、導体パターン206と端子207との接続部分は、複数のねじによって締結される。
【0031】
以下では、本実施形態に係る導体パターン206と端子207との接続部分について詳細に説明する。なお、以下では、導体パターン206と端子207との接続部分を例に挙げて説明するが、他の導体パターン及び他の端子についても、導体パターン206及び端子207と同様に接続される。
【0032】
図3は、本実施形態に係る導体パターン206と端子207との接続部分の外観を示す斜視図である。例えば、図3に示すように、端子207は、概略円柱形状に形成され、一方の端部に、給電ケーブル208側の端子209を取り付けるためのボルト210が嵌合する穴207aが形成され、他方の端部に、導体パターン206の端部が取り付けられる。
【0033】
そして、例えば、図3に示すように、導体パターン206と端子207との接続部分は、2本のねじ211及び212によって締結される。なお、本実施形態では、導体パターン206と端子207との接続部分が2本のねじによって締結される場合の例を説明するが、3本以上のねじによって締結されてもよい。
【0034】
図4は、本実施形態に係る導体パターン206と端子207との接続部分の構造を示す斜視図である。例えば、図4に示すように、端子207において、導体パターン206が取り付けられる側の端部には、円筒形状の端面から突出する板状の取り付け部207bが形成される。ここで、取り付け部207bには、長さLの間隔で2つのねじ孔207c及び207dが形成される。一方、導体パターン206において、端子207に取り付けられる側の端部には、長さLの間隔で2つの貫通孔206a及び206bが形成される。
【0035】
そして、ねじ211が、導体パターン206の貫通孔206aを通って、取り付け部207bのねじ孔207cに嵌合する。また、ねじ212が、導体パターン206の貫通孔206bを通って、取り付け部207bのねじ孔207dに嵌合する。このように、ねじ211がねじ孔207cに嵌合し、ねじ212がねじ孔207dに嵌合することによって、導体パターン206と端子207とが締結される。
【0036】
このように、導体パターン206と端子207との接続部分を複数のねじによって締結させることで、当該接続部分に生じる負荷を低減させることができる。これにより、導体パターン206と端子207とをより強固に締結させることができる。
【0037】
なお、例えば、ねじ211及び212の材質は、銅又は真鍮である。このように、銅又は真鍮のねじを用いることで、導体パターン206と端子207との接続部分における電気抵抗を小さくすることができる。
【0038】
図5は、本実施形態に係る導体パターン206と端子207との接続部分を示す断面図である。例えば、図5に示すように、導体パターン206における端子207との接続面には、スズ又はニッケルのめっき213が施される。そして、導体パターン206と端子207との接続部分は、はんだ214により接続される。
【0039】
このように、導体パターン206における端子207との接続面にめっき213を施すことで、当該接続部分に発生する電気腐食の進行を抑制することができる。また、導体パターン206と端子207とをはんだ214により接続することで、接続部分における電気抵抗を小さくすることができる。なお、ここでは、導体パターン206側の接続面にめっき213が施される場合の例を説明するが、さらに、端子207における導体パターン206との接続面にめっきが施されてもよい。
【0040】
また、例えば、ねじ211に形成されたおねじ部の表面にも、スズ又はニッケルのめっき215が施される。同様に、ねじ212に形成されたおねじ部の表面にもめっき216が施される。なお、ここでは、おねじ部の表面にめっきが施される場合の例を説明するが、例えば、端子207の取り付け部207bに形成されためねじ部の表面にめっきが施されてもよい。また、導体パターン206にもめねじ部が形成される場合には、導体パターン206のめねじ部の表面にめっきが施されてもよい。ここで、おねじ部の表面及びめねじ部の表面の両方にめっきが施されてもよいし、おねじ部及びめねじ部のいずれか一方の表面みにめっきが施されてもよい。
【0041】
このように、導体パターン206と端子207とを締結するねじについて、おねじ部及びめねじ部の少なくとも一方の表面にめっきを施すことで、おねじ部分及びめねじ部分に発生する電気腐食の進行を抑制することができる。
【0042】
また、例えば、導体パターン206と端子207との接続部分を締結する複数のねじは、はんだ214にかかる負荷が所定の大きさ以下となる間隔で配設される。ここで、はんだ214にかかる機械的な負荷を減らすためには、ねじ211とねじ212との間隔Lをできるだけ大きく設定するのが望ましい。
【0043】
しかし、間隔Lを大きく設定しすぎると、銅とアルミニウムとの線膨張係数の差によってはんだ214にせん断ひずみが生じ、はんだ214が割れてしまうこともあり得る。このことから、本実施形態では、複数のねじが設けられる間隔は、導体パターン206及び端子207それぞれの線膨張係数の違いから接続面に生じるせん断ひずみによってはんだ214にかかるせん断応力の大きさが所定値以下となる間隔に設定される。
【0044】
図6は、図5に示した導体パターン206と端子207との接続部分を拡大した拡大図である。なお、図6では、図5に示した部分Aを拡大して示している。一般的に、銅とアルミニウムとでは、線膨張係数が異なることが知られている。そのため、導体パターン206と端子207との接続部分の温度が上昇した場合には、導体パターン206及び端子207がそれぞれ異なる量だけ熱膨張することになる。この結果、導体パターン206の接続面と端子207の接続面とによってせん断力が発生し、導体パターン206と端子207との間に介在するはんだ214にせん断ひずみが生じることになる。例えば、図6に示すように、はんだ214において、導体パターン206側の面と端子207側の面との間に、面方向に沿った長さの差ΔLが生じる。
【0045】
図7は、本実施形態に係るはんだ214の応力ひずみ線図を示す図である。例えば、図7に示すように、はんだ214の応力ひずみ線図が引張試験等によって得られていたとする。図7において、縦軸は、はんだ214に生じる応力σを示しており、横軸は、はんだ214に生じるひずみεを示している。また、σyuは上降伏点であり、εyuは上降伏点σyuにおけるひずみであり、Eはヤング率である。また、σsは、上降伏点σyuと所定の安全率とから求められた許容応力であり、εsは、許容応力σsにおけるひずみである。なお、許容応力σsは、はんだ214の引張強度と安全率とから求められてもよい。
【0046】
このような応力ひずみ線図が得られている場合に、例えば、ねじ211とねじ212との間隔Lは、以下に示す式(1)に基づいて設定される。ここで、αCuは、銅の線膨張係数であり、αAlは、アルミニウムの線膨張係数である。また、wは、はんだ214の厚さであり、Gは、横弾性係数である。また、ΔTは接続部分における上昇温度であり、τsは許容応力σsから概算された許容せん断応力である。
【0047】
【数1】
【0048】
このように、はんだ214にかかるせん断応力の大きさが所定値以下となるように、ねじ211とねじ212との間隔Lを設定することによって、はんだ214に作用するせん断力によってはんだ214が割れるのを防ぐことができる。これにより、電気腐食の進行を抑えつつ、導体パターン206と端子207とをより強固に接続することができる。
【0049】
また、一般的に、銅やアルミニウムなどの導体は、空気と接触すると、空気の湿気によって電気腐食が進行することが知られている。このことから、本実施形態では、導体パターン206と端子207との接続部分は、樹脂に封入される。
【0050】
図8は、本実施形態に係る傾斜磁場コイル112における導体パターン206と端子207との接続部分周辺を示す図である。例えば、図8に示すように、導体パターン206と端子207との接続部分は、導体パターン206の周囲に含浸された樹脂112cに封入される。これにより、導体パターン206と端子207との接続部分は、導体パターン206とともに一体の樹脂112cに封入される。このように、導体パターン206と端子207との接続部分を樹脂で封入することで、当該接続部分に発生する電気腐食の進行を抑制することができる。
【0051】
また、例えば、導体パターン206と端子207との接続部分は、傾斜磁場コイル112の端面112dと導体パターン206との間に配置される。このとき、例えば、端子207は、端子207の少なくとも一部が傾斜磁場コイル112の外側に配置される。例えば、図8に示すように、端子207は、給電ケーブル208側の端子209が取り付けられる側の端部が傾斜磁場コイル112の端面112dから突出するように設けられる。
【0052】
また、例えば、導体パターン206と端子207との接続部分は、バリアー層で被覆される。例えば、図8に示すように、導体パターン206と端子207との接続部分は、当該接続部分に巻き付けられたガラス繊維のバリアー層217によって被覆される。このように、導体パターン206と端子207との接続部分をバリアー層217で被覆することで、当該接続部分の周囲で樹脂112cがクラックしたり剥離したりした場合でも、当該接続部分の周囲に侵入する空気を遮断することができる。これにより、導体パターン206と端子207との接続部分の周囲で樹脂112cがクラックしたり剥離したりした場合でも、当該接続部分に発生する電気腐食の進行を抑制することができ、樹脂112cの内部で断線が起こるのを防ぐことができる。なお、バリアー層217の材料はガラス繊維に限られず、他の素材が用いられてもよい。
【0053】
上述したように、本実施形態に係るMRI装置100では、傾斜磁場コイル112において、コイルを形成する導体パターンがアルミニウムで形成され、導体パターンに流れる電流を供給する給電ケーブルが接続される端子が銅で形成される。したがって、本実施形態によれば、導体パターン及び端子の両方が銅で形成される場合と比べて、傾斜磁場コイル112の軽量化を実現することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、導体パターン206と端子207との接続部分にめっきを施したり、当該接続部分を樹脂で封入したりすることで、当該接続部分に発生する電気腐食の進行を抑制することができる。これにより、導体パターン206と端子207との接続部分を長期的に安定した状態に保つことができる。
【0055】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、傾斜磁場コイルの軽量化を実現することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
100 MRI(磁気共鳴イメージング)装置
110 架台装置
112 傾斜磁場コイル
201〜206 導体パターン
207 端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8