特許第6366949号(P6366949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366949
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】磁気共鳴撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   A61B5/055 372
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-25632(P2014-25632)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-150151(P2015-150151A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 資弘
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−058913(JP,U)
【文献】 特開2012−125426(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0311158(US,A1)
【文献】 Yongchuan Lai et al.,Spike noise removal in MR images using over sampling,Proc. Intl. Soc. Mag. reson. Med. 20 (2012),2012年,#2455
【文献】 S. Chavez et al.,A robust spike noise correction method for fMRI,Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 15 (2007),2007年,#1823
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を撮像する撮像部と、
撮像した前記被検体の生データを収集するデータ収集部と、
収集した前記生データにおいて、エンコード量の異なる隣接する位相エンコードの信号を信号ラインごとに比較するデータ比較部と、
比較した前記位相エンコードの信号うち、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して第1の閾値倍以上か否かを判定し、いずれか一方の信号の振幅が前記第1の閾値倍以上のときは、その位相エンコードの信号ラインはノイズを含む信号ラインであると判定するノイズ有無判定部と、
前記ノイズを含む信号ラインであると判定されたとき、そのノイズを含む信号ラインの位相エンコードの信号を無効とし、その位相エンコードに該当する位相エンコードの信号ラインのデータを再度収集するデータ再収集部と、
を備えることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項2】
前記データ比較部は、
再度収集された前記位相エンコードの信号を、前記ノイズを含む信号ラインの信号と置き換えて、その置き換えた位相エンコードの信号と、その隣接する位相エンコードの信号とを比較し、
前記ノイズ有無判定部は、
前記置き換えた位相エンコードの信号と、その隣接する位相エンコードの信号の振幅が前記第1の閾値倍以上か否かを判定し、前記置き換えた位相エンコードの信号はノイズを含む信号ラインであるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項3】
前記ノイズを含む信号ラインであると判定されたとき、前記ノイズを含む信号ラインの数を計数し、前記ノイズを含む信号ラインの数に基づいて、前記ノイズを含む信号ラインの位相エンコードに該当する位相エンコードの信号を再度収集するか否かを判定するノイズ数判定部を、さらに備え、
前記ノイズ数判定部は、
計数した前記ノイズを含む信号ラインの数が所定の信号ライン数以上のときには、前記ノイズを含む信号ラインの位相エンコードに該当する位相エンコードの信号を、再度収集する処理を中止する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項4】
被検体を撮像する撮像部と、
前記被検体の同一の領域に対する撮像により第1の生データと第2の生データとを収集するデータ収集部と、
前記第1の生データと前記第2の生データとにおいて、同一の収集順に収集された同位相の位相エンコードと、そのデータ位置とに基づいて、前記第1の生データの位相エンコードの信号と、前記第2の生データの位相エンコードの信号とを信号ラインごと比較するデータ比較部と、
前記第1の生データの位相エンコードの信号と、前記第2の生データの位相エンコードの信号の比較の結果に基づいて、比較した位相エンコードの信号のうち、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して第2の閾値倍以上のとき、その位相エンコードの信号ラインはノイズを含む信号ラインであると判定するノイズ有無判定部と、
前記ノイズを含む信号ラインであると判定された位相エンコードの信号ラインの信号を無効とし、その位相エンコードに該当する位相エンコードの信号ラインのデータを再度収集するデータ再収集部と、
を備えることを特徴とする気共鳴撮像装置。
【請求項5】
前記データ比較部は、
前記第1の生データの位相エンコードの信号ラインと、前記第2の生データの位相エンコードの信号ラインの比較の結果に基づいて、前記ノイズを含む信号ラインであると判定されたとき、その信号ラインに隣接する位相エンコーダの信号ラインにおいて、前記第1の生データの位相エンコードの信号と、それと同位相の前記第2の生データの位相エンコードの信号とを信号ラインごとに比較し、
前記ノイズ有無判定部は、
前記隣接する位相エンコードの前記第1の生データの位相エンコードの信号と、その第1の生データの位相エンコードの信号と同位相の前記第2の生データの位相エンコードの信号との比較の結果に基づいて、前記第1の生データの信号ラインにノイズが含まれるのか、前記第2の生データの信号ラインにノイズが含まれるのかを判定し、
前記データ再収集部は、
前記ノイズが含まれると判定された信号ラインに基づいて、前記第1の生データまたは前記第2の生データの位相エンコードの信号ラインのデータを再度収集する
ことを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項6】
前記ノイズを含む信号ラインであると判定されたときは、当該ノイズの検出を報知する報知部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項7】
前記ノイズを含む信号ラインであると判定されたときは、そのノイズを含む信号ラインの数に応じて、保守を行うための通知を行う通知部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の磁気共鳴撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像(MRI: Magnetic Resonance Imaging)装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:Radio Frequency)信号で励起し、励起に伴って被検体から発生する磁気共鳴信号を再構成して画像を生成する撮像装置である。
【0003】
磁気共鳴撮像装置では、高品質の画像を得るために様々な補正処理が行われている。例えば、特許文献1等では、磁気共鳴データのサンプリング中において、傾斜磁場の制御値からの変動量による磁気共鳴データへの影響を補正するための補正データを取得し、その補正データを用いて磁気共鳴データの補正を行い、画像データを生成する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−172383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、撮像した生データ(k空間データ)に再現性のないスパイク状のノイズが混入することがある。例えば、何らかの原因で装置内部のいずれかの部分に故障や異常が発生し始めた場合等において、致命的な故障に至る前の予兆として、時間的にランダムに発生するスパイク状のノイズが生データに混入することがある。このようなスパイク状のノイズは、再現性がなく、補正データを作成しても補正することができなかった。
【0006】
そのため、スパイク状のノイズが発生した場合、スパイク状のノイズが発生した状態で逆フーリエ変換が行われ、周波数空間の画像データに再構成されていた。
【0007】
この場合、時間領域(k空間)で発生したスパイク状のノイズがフーリエ変換されると、周波数空間では広範囲の周波数帯域にノイズ成分が含まれることになり、再構成される画像データ全体にノイズが混入することになる。
【0008】
このように、スパイク状のノイズが発生した場合は、再構成することによって得られる画像データ全体にノイズ成分が含まれるので、再構成する前にスパイク状のノイズを検出し、スパイク状のノイズがない生データに対して逆フーリエ変換(再構成)する磁気共鳴撮像装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る磁気共鳴撮像装置は、被検体を撮像する撮像部と、撮像した前記被検体の生データを収集するデータ収集部と、収集した前記生データにおいて、エンコード量の異なる隣接する位相エンコードの信号を信号ラインごとに比較するデータ比較部と、比較した前記位相エンコードの信号うち、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して第1の閾値倍以上か否かを判定し、いずれか一方の信号の振幅が前記第1の閾値倍以上のときは、その位相エンコードの信号ラインはノイズを含む信号ラインであると判定するノイズ有無判定部と、前記ノイズを含む信号ラインであると判定されたとき、そのノイズを含む信号ラインの位相エンコードの信号を無効とし、その位相エンコードに該当する位相エンコードの信号ラインのデータを再度収集するデータ再収集部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の全体構成を示すブロック図。
図2】本実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の演算装置で実行するノイズ含有データ除去処理に関する機能ブロック図。
図3】本実施形態の磁気共鳴撮像装置で行うノイズ含有データ除去処理の詳細動作例を説明するフローチャート。
図4】本実施形態に係る演算装置のデータ比較部が、エンコード量の異なる隣接する位相エンコードの信号を信号ラインごとに比較する際の比較の方法を説明した説明図。
図5】第2の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の演算装置で実行するノイズ含有データ除去処理に関する機能ブロック図。
図6】第2の実施形態の磁気共鳴撮像装置で行うノイズ含有データ除去処理の詳細動作例を説明するフローチャート。
図7】第2の実施形態に係る演算装置のデータ比較部が、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、第2のデータセットの位相エンコードの信号とを信号ラインごとに比較する際の比較の方法を説明した説明図。
図8】第3の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の演算装置で実行するノイズ含有データ除去処理に関する機能ブロック図。
図9】第3の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置で行うノイズ検出報知処理の詳細動作例を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
(1)構成及び全般動作
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、磁気共鳴撮像装置1は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石22、静磁場用磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24、傾斜磁場コイル26、送信用或いは受信用のRFコイル28、制御系30、被検体(患者)Pが乗せられる寝台32等を備える。
【0013】
さらに、制御系30は、静磁場電源40、シムコイル電源42、傾斜磁場増幅ユニット44、RF送信器46、RF受信器48、シーケンスコントローラ56、コンピュータ58等を備えている。また、コンピュータ58は、その内部構成として、演算装置60、入力装置62、表示装置64、記憶装置66等を有している。
【0014】
静磁場用磁石22は静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給される電流により撮像空間に静磁場を形成させる。シムコイル24はシムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により静磁場を均一化する。静磁場用磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場用磁石22を永久磁石で構成してもよい。
【0015】
傾斜磁場増幅ユニット44は、X軸傾斜磁場増幅ユニット44x、Y軸傾斜磁場増幅ユニット44y、およびZ軸傾斜磁場増幅ユニット44zとで構成されている。なお、図1においては、静磁場用磁石22およびシムコイル24の軸方向をZ軸方向、鉛直方向をY軸方向、これらに直交する方向をX軸方向としている。
【0016】
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、およびZ軸傾斜磁場コイル26zを有し、静磁場用磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、およびZ軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、X軸傾斜磁場増幅ユニット44x、Y軸傾斜磁場増幅ユニット44y、Z軸傾斜磁場増幅ユニット44zに接続されている。
【0017】
各傾斜磁場増幅ユニット44x、44y、44zから傾斜磁場コイル26x、26y、26zにそれぞれ供給される電流により、X軸、Y軸、およびZ軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzが撮像空間にそれぞれ形成される。
【0018】
装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを合成して、論理軸としてのスライス方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、および、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groの各方向を任意に設定できる。各傾斜磁場は、静磁場に重畳される。なお、スライス方向、位相エンコード方向、および、読み出し方向の直交3軸で構成される座標系を画像座標系と呼ぶものとする。
【0019】
RF送信器46は、シーケンスコントローラ56から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのラーモア周波数のRFパルスを生成し、これを送信用のRFコイル28に送信する。RFコイル28には、RFパルスを送信すると共に被検体Pからの磁気共鳴信号(MR信号)を受信する送受信用全身コイル(WBC:Whole Body Coil)や、寝台32または被検体Pの近傍に設けられる受信専用のコイル(ローカルコイルとも呼ばれる)などがある。
【0020】
RFコイル28で受信したMR信号は、信号ケーブルを介してRF受信器48に供給される。RF受信器48は、受信したMR信号に対して、前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D(Analog to Digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データ(raw data)を生成する。RF受信器48は、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ56に出力する。
【0021】
シーケンスコントローラ56は、コンピュータ58の演算装置60の制御に従って、設定されたパルスシーケンスを含む撮像条件に対応する傾斜磁場Gx、Gy,GzおよびRFパルスを発生させるためのデータ列や制御情報を生成し、これらを各傾斜磁場増幅ユニット44x、44y、44zやRF送信器46に出力する。
【0022】
また、シーケンスコントローラ56は、これらの傾斜磁場Gx、Gy,GzおよびRFパルスに応答して受信されたMR信号を、生データ(raw data)としてRF受信器48から入力し、演算装置60に出力する。なお、図1のコンピュータ58以外の各構成を包括して撮像部10と呼ぶものとする。
【0023】
演算装置60は、磁気共鳴撮像装置1全体の制御を行う他、ユーザ操作によって入力装置62に入力された種々の設定情報に基づいて、各種のパルスシーケンスを含む撮像条件の設定や変更を行い、設定或いは変更された撮像条件に基づいてシーケンスコントローラ56を制御する。また、演算装置60は、シーケンスコントローラ56から入力した生データに対して、逆フーリエ変換等を含む再構成処理を行って画像データを生成する。
【0024】
コンピュータ58の演算装置60は、プロセッサ等を備えて構成され、記憶装置66に保存されるプログラムコードを実行することによって、上述した各機能を実現する。
【0025】
以下、第1の実施形態では、1枚の生データ(k空間データ)において、エンコード量の異なる隣接する位相エンコードの信号を信号ラインごとに比較するものとする。
【0026】
また、第2の実施形態では、収集した生データのうち、第1の生データと第2の生データとにおいて、同一の収集順に収集された同位相の位相エンコードの信号に基づいて、第1の生データの位相エンコードの信号と、第2の生データの位相エンコードの信号とを信号ラインごと比較するものとする。第3の実施形態では、第1の実施形態に、検出報知部と通知部とを備えたものとする。
【0027】
(第1の実施形態)
(2)ノイズ含有データ除去処理に係る構成と概略動作
図2は、本実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1(図1)の演算装置60で実行するノイズ含有データ除去処理に関する機能ブロックの構成例を示す図である。
【0028】
本実施形態の撮像部10は、被検体を撮像する機能を備えている。撮像で得られる画像データ(生データ)は、撮像部10のシーケンスコントローラ56(図1)から演算装置60に出力される。
【0029】
演算装置60は、データ収集部100、データ比較部110、ノイズ有無判定部120、ノイズ有設定部130、ノイズ数判定部140、データ再収集部150、再構成部160および3次元画像生成部170の機能ブロックを有し、これらの機能ブロックによって以下に示すような夫々の機能を実現する。
【0030】
データ収集部100は、撮像した被検体の生データを収集する機能を備えている。
【0031】
データ比較部110は、収集した生データにおいて、エンコード量の異なる隣接する位相エンコードの信号を信号ラインごとに比較する機能を備えている。
【0032】
ノイズ有無判定部120は、比較した位相エンコードの信号うち、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して、例えば、50倍(第1の閾値)以上か否かを判定し、いずれか一方の信号の振幅が50倍以上のときは、その位相エンコードの信号ラインはノイズを含む信号ラインであると判定する機能を備えている。
【0033】
ここで、本実施形態では、ノイズ含有データ除去処理として、所謂ポップコーンノイズと言われるノイズを対象としている。
【0034】
このポップコーンノイズとは、k空間(生データ空間)において発生する周期性のないノイズであり、ノイズの発生条件に再現性のないものをいう。このポップコーンノイズの発生は、何らかの原因で装置内部のいずれかの部分に故障や異常が発生し始めた場合等において、致命的な故障に至る前の予兆として、時間的にランダムに発生するスパイク状のノイズが生データに混入し得るものである。また、ポップコーンノイズの発生自体は、一般的には、事前に除去(防御)できないものとする。
【0035】
ノイズ有設定部130は、ノイズ有無判定部120においてポップコーンノイズを含む信号ラインがあると判定されたとき、ポップコーンノイズが発生した位相エンコードの信号ラインの数を生データ上でカウントする機能を有している。また、ノイズ有設定部130は、磁気共鳴撮像装置1(図1)において、ポップコーンノイズが発生したことを示すフラグ(以下、POPフラグと呼ぶ。)を立てる機能を有している。
【0036】
ノイズ数判定部140は、ノイズ有設定部130においてカウントされたポップコーンノイズが発生した信号ライン数に基づいて、ポップコーンノイズを含む信号ラインの位相エンコードに該当する位相エンコードの信号を再度収集するか否かを判定する。
【0037】
具体的には、ノイズ数判定部140は、ポップコーンノイズを含む信号ライン数(以下、これをカウント値ともいう。)が5以上であるか否かを判定し、信号ライン数が5以上の場合には、ポップコーンノイズが多数発生していることにより磁気共鳴撮像装置1の異常が考えられるため、位相エンコードの信号の再収集を中止し、ノイズ含有データ除去処理を終了するようになっている。
【0038】
一方、ポップコーンノイズを含む信号ライン数が5未満の場合、ノイズ数判定部140は、ポップコーンノイズを含む信号ラインの信号を再度、収集すべきと判定する機能を有している。
【0039】
データ再収集部150は、ノイズ数判定部140において再度、収集すべきと判定された場合、ポップコーンノイズを含む信号ラインの位相エンコードの信号を無効とし、その位相エンコードに該当する位相エンコードの信号を再度収集する機能を備えている。
【0040】
再構成部160は、生データ(k空間データ)に対して逆フーリエ変換を行って実空間のスライス画像データに再構成する機能を備えている。
【0041】
3次元画像生成部170は、撮像された複数のスライス画像(再構成された実空間スライス画像)を実際のスライスの順序に並べ替え、これらを重ねて被検体の3次元画像データを生成する。
【0042】
(3)詳細動作
図3は、本実施形態の磁気共鳴撮像装置で行うノイズ含有データ除去処理の詳細動作例を説明するフローチャートである。以下、このフローチャートおよび図2を参照して説明する。
【0043】
撮像部10は、被検体を撮像する。データ収集部100は、撮像した被検体の生データを収集する(ステップS101)。
【0044】
データ収集部100は、例えば、k空間において、256の位相エンコードステップのエコーラインなど複数のエコーを撮像できればよく、シングルショットEPI法やマルチショットEPI法その他の任意の画像データを収集する撮像法を適用することができる。
【0045】
データ比較部110は、収集した生データにおいて、エンコード量の異なる隣接する位相エンコードの信号を信号ラインごとに比較する(ステップS103)。
【0046】
比較する方法は、1枚の生データにおいて、例えば、256の位相エンコードステップの信号を全て取得した後に、エンコード量の異なる隣接する位相エンコードの信号を、時間軸方向(リードアウト方向)の夫々の位置において比較する。
【0047】
ノイズ有無判定部120は、比較した位相エンコードの信号うち、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して、例えば、50倍(第1の閾値)以上か否かを判定し(ステップS105)、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して、50倍以上のときは(ステップS105のYes)、その位相エンコードの信号ラインはノイズを含む信号ラインであると判定する。
【0048】
図4は、本実施形態に係る演算装置60のデータ比較部110が、エンコード量の異なる隣接する位相エンコードの信号を信号ラインごとに比較する際の比較の方法を説明した説明図である。
【0049】
図4に示すように、例えば、k空間(生データ空間)において、256の位相エンコードステップがある場合、データ比較部110は、エンコード量の異なる隣接する位相エンコードの信号を、時間軸方向の夫々の位置において信号ラインごとに比較する。収集タイミングは異なるもの、被検体において対象とする組織は同一であり、また、隣接する位相エンコードの信号は、基本的にはほぼ同様な波形を示す。
【0050】
したがって、ノイズ有無判定部120は、図4に示した比較した位相エンコードの信号うち、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して、50倍以上か否かを判定することにより(ステップS105)、その生データにポップコーンノイズが含まれているか否かを判定することができる。
【0051】
そして、一方の信号の振幅が50倍以上のとき(ステップS105のYes)、ノイズ有無判定部120は、その位相エンコードの信号ラインはポップコーンノイズを含む信号ラインであると判定する。
【0052】
ノイズ有無判定部120は、ポップコーンノイズの特性として突発的に発生するパルス性のノイズ(スパイク状のノイズ)であることから、一例として、比較した振幅の差が、50倍以上のとき、ポップコーンノイズが発生した判定する。
【0053】
ノイズ有設定部130は、そのポップコーンノイズが発生したと判定された位相エンコードの信号ラインの数をカウントアップする(ステップS107)。
【0054】
また、ノイズ有設定部130は、磁気共鳴撮像装置1において、ポップコーンノイズが発生したことを示すPOPフラグを立てる(ステップS109)。具体的には、ノイズ有設定部130は、ノイズ数判定部140を介して表示装置64に、ポップコーンノイズが発生した旨を知らせる通知を表示させる。
【0055】
データ比較部110は、次に隣接する位相エンコードの信号ラインと、位相エンコードの信号の比較を行う(ステップS111)。すなわち、データ比較部110は、判定した位相エンコードの信号ラインと、その位相エンコードの信号ラインに隣接する位相エンコードとを比較する。
【0056】
これにより、データ比較部110は、図4に示した生データにおいて、例えば、上から順に256の位相エンコードのデータを取得した場合に、一番上の位相エンコードの信号から、逐次、順番に位相エンコードの信号を比較することができる。
【0057】
一方、ステップS105において、いずれも信号の振幅が50倍以上でないときは(ステップS105のNo)、いずれの位相エンコードの信号ラインもポップコーンノイズを含んでいない信号ラインであると判定され、ステップS111に進み、次に隣接する位相エンコードの信号ラインと、位相エンコードの信号の比較を行う。
【0058】
ノイズ有無判定部120は、次に比較した位相エンコードの信号うち、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して、例えば、50倍(第1の閾値)以上か否かを判定し(ステップS113)、いずれか一方の信号の振幅が50倍以上のときは(ステップS113のYes)、ステップS107に移行し、ポップコーンノイズを含む信号ラインが検出された回数をカウントアップする(ステップS107)
【0059】
一方、ステップS113において、次に比較した位相エンコードの信号うち、いずれも信号の振幅が50倍(第1の閾値)以上ではない場合には(ステップS113のNo)、ノイズ有無判定部120は、全ての位相エンコーダの信号ラインのデータ比較が終了したか否かを判定する(ステップS115)。
【0060】
ここで、全ての位相エンコーダの信号ラインのデータ比較が終了していない場合は(ステップS115のNo)、ステップS111に移行して、ノイズ有無判定部120は、次に隣接する位相エンコードの信号ラインと位相エンコードの信号の比較を行い、データの比較を繰り返す。
【0061】
一方、全ての位相エンコーダの信号ラインのデータ比較が終了した場合は(ステップS115のYes)、ノイズ数判定部140は、ステップS107においてカウントされたポップコーンノイズの発生回数が5回以上か否かを判定し、ノイズ数判定部140は、ポップコーンノイズの発生回数が5回以上の場合には(ステップS117のYes)、ポップコーンノイズが5回以上発生したことにより磁気共鳴撮像装置1の異常が考えられるので、ノイズ含有データ除去処理を終了(異常有終了)する。
【0062】
他方、ノイズの発生回数が5回未満の場合には(ステップS117のNo)、ポップコーンノイズの発生回数が0回か否かを判定し(ステップS119)、S107のカウント値(ノイズの発生回数)が0回の場合には(ステップS119のYes)、ノイズ数判定部140は、ポップコーンノイズが一度も発生していないので、ノイズ含有データ除去処理を正常終了する。
【0063】
これに対し、S107のカウント値が1回から4回までの場合には(ステップS119のNo)、ノイズ数判定部140は、ポップコーンノイズを含む信号ラインの信号を再度、収集すべきと判定する。
【0064】
ノイズ数判定部140は、撮像部10を介して、ポップコーンノイズを含むと判定された位相エンコードに該当する位相エンコードの画像を撮像させ、データ再収集部150は、その位相エンコードに該当する位相エンコードの信号を再度収集し(ステップS121)、ステップS103に移行する。
【0065】
なお、この場合、ポップコーンノイズを含むと判定された位相エンコードに該当する位相エンコードに対応する生データのみを収集してもよく、また、256の位相エンコードに対応する生データを再度収集するようにしてもよい。
【0066】
ステップS103に移行した場合は、データ比較部110は、データ再収集部150において再度収集された位相エンコードを用いて、再度収集された位相エンコードの信号を、ノイズを含む信号ラインの信号と置き換えて、その置き換えた位相エンコードの信号と、その置き換えた位相エンコードの信号に隣接する位相エンコードの信号とを比較する(ステップS103)。
【0067】
ノイズ有無判定部120は、置き換えた位相エンコードの信号と、その置き換えた位相エンコードの信号に隣接する位相エンコードの信号のうち、いずれか一方の信号の振幅が他の信号の振幅に対して、50倍(第1の閾値)以上か否かを再び判定するようになっており(ステップS105)、ポップコーンノイズのカウント値(ノイズの発生回数)が0になるまで、ステップS103からステップS121までの処理を繰り返す。
【0068】
このように、本実施形態では、演算装置60の再構成部160は、ポップコーンノイズの除去に成功した状態で、逆フーリエ変換を行って実空間の画像データに再構成する。
【0069】
3次元画像生成部170は、撮像された複数の画像(再構成された実空間画像)を実際のスライスの順序に並べ替え、これらを重ねて被検体の3次元画像データを生成する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1の演算装置60は、再構成部160において再構成する前に、ステップS103からステップS121を繰り返すことにより、ポップコーンノイズがk空間において発生しても、ポップコーンノイズが発生した位相エンコードの信号(画像)を再度収集するようになっているので、ポップコーンノイズを含む位相エンコードを除去することができる。
【0071】
なお、ステップS113において、一方の信号の振幅が他の信号の振幅に対して、50倍以上のときは(ステップS113のYes)、ステップS107に移行するが、ステップS107のカウント値が、例えば、10回など反復継続して一方の信号の振幅が50倍以上となる場合には、磁気共鳴撮像装置1に異常の発生が想定されるので、強制終了するようにしてもよい。
【0072】
(第2の実施形態)
(4)ノイズ含有データ除去処理に係る構成と概略動作
第1の実施形態では、1枚の生データ(k空間データ)において、エンコード量の異なる隣接する位相エンコードの信号を信号ラインごとに比較するようになっていた。第2の実施形態では、同一撮像部位を複数回撮像し、複数枚の生データを収集する。以下の説明では、複数枚の生データのうち、任意の2枚の生データの一方を第1の生データと呼び、他方の生データを第2の生データと呼ぶ。
【0073】
そして、第2の実施形態では、収集した生データのうち、第1の生データと第2の生データとにおいて、同一の収集順に収集された同位相の位相エンコードの信号に基づいて、第1の生データの位相エンコードの信号と、第2の生データの位相エンコードの信号とを信号ラインごとに比較するようになっている。
【0074】
図5は、第2の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1の演算装置60Aで実行するノイズ含有データ除去処理に関する機能ブロックの構成例を示す図である。図5において、第1の実施形態の異なる点を中心に、以下に説明する。なお、同一の構成には同一の符号(または、ほぼ同一の構成には同一の符号にAを付加)を付し、説明を適宜、省略する。
【0075】
演算装置60Aは、データ収集部100A、データ比較部110A、ノイズ有無判定部120A、ノイズ有設定部130A、データ再収集部150A、再構成部160、3次元画像生成部170およびノイズ含有データ判定部180等を備えて構成されている。
データ収集部100Aは、撮像部10から、第1の生データおよび第2の生データとを収集するようになっている。
【0076】
データ比較部110Aは、収集した生データのうち、第1の生データと第2の生データとにおいて、同一の収集順に収集された同位相の位相エンコードと、そのデータ位置とに基づいて、第1の生データの位相エンコードの信号と、第2の生データの位相エンコードの信号とを信号ラインごと比較する機能を備えている。
【0077】
ノイズ有無判定部120Aは、第1の生データの位相エンコードの信号と、第2の生データの位相エンコードの信号との比較の結果に基づいて、比較した位相エンコードの信号のうち、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して、10倍(第2の閾値倍)以上のときは、その位相エンコードの信号ラインは、ポップコーンノイズを含む信号ラインであると判定する機能を備えている。
【0078】
ノイズ有設定部130Aは、ノイズ有無判定部120Aにおいてポップコーンノイズを含む信号ラインであると判定されたとき、磁気共鳴撮像装置1において、ポップコーンノイズが発生した回数に加算するとともに、POPフラグを立てる機能を有している。
【0079】
ここで、比較した位相エンコードの信号のうち、いずれか一方の位相エンコードの信号ラインがポップコーンノイズを含む信号ラインであると判定された場合は、データ比較部110Aは、その信号ラインに隣接する位相エンコーダの信号ラインにおいて、第1の生データの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2の生データの位相エンコードの信号とを比較するようになっている。
【0080】
また、図5に示すように、第2の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1の演算装置60Aは、ノイズ含有データ判定部180を、さらに備えるようになっている。
【0081】
ノイズ含有データ判定部180は、データ比較部110Aにおいて、第1の生データの位相エンコードの信号と、第2の生データの位相エンコードの信号との比較の結果に基づいて、第1の生データの信号ラインにノイズが含まれるのか、または第2の生データの信号ラインにノイズが含まれるのかを判定する機能を有している。
【0082】
なお、ノイズ含有データ判定部180のいずれの生データにノイズが含まれるかを判定する機能は、ノイズ有無判定部120Aに設けるようにしてもよく、判定する機能を設ける部材に限定されるものではない。また、ノイズ含有データ判定部180は、ノイズ数判定部140(図2)の機能を備えるようにしてもよく、ポップコーンノイズが発生した信号ラインの数に基づいて、再度収集するか否かを判定するようにしてもよい。
【0083】
(5)詳細動作
図6は、第2の実施形態の磁気共鳴撮像装置1で行うノイズ含有データ除去処理の詳細動作例を説明するフローチャートである。以下、このフローチャートを参照して説明する。
【0084】
撮像部10は、被検体を撮像する。データ収集部100Aは、撮像した被検体の第1の生データを第1のデータセットとして収集するとともに(ステップS201)、第2の生データを第2のデータセットとして収集する(ステップS203)。
【0085】
データ比較部110Aは、収集した生データのうち、第1のデータセットと第2のデータセットとにおいて、同一の収集順に収集された同位相の位相エンコードと、そのデータ位置に基づいて、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、第2のデータセットの位相エンコードの信号とを信号ラインごとに比較する(ステップS205)。
【0086】
ノイズ有無判定部120Aは、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、第2のデータセットの位相エンコードの信号との比較の結果に基づいて、比較した位相エンコードの信号のうち、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して、10倍以上か否かを判定し(ステップS207)、いずれか一方の信号の振幅が10倍以上のときは、その位相エンコードの信号ラインはポップコーンノイズを含む信号ラインであると判定する。
【0087】
図7は、第2の実施形態に係る演算装置60Aのデータ比較部110Aが、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、第2のデータセットの位相エンコードの信号とを信号ラインごとに比較する際の比較の方法を説明した説明図である。
【0088】
図7に示すように、例えば、k空間(生データ空間)において、第1のデータセットと、第2のデータセットとを比較して、同じ収集順で撮像した同位相の位相エンコードの信号と、そのデータ位置を信号ラインごとに比較する。
【0089】
ここで、第1のデータセットの位相エンコードと第2のデータセットの位相エンコードは、基本的には同じ画像(生データの特徴が共通する画像)であることから、第1の実施形態で示した50倍(第1の閾値)よりも小さい10倍(第2の閾値)の値を用いて、ノイズの発生を判定する。
【0090】
そして、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して、10倍以上のときは(ステップS207のYes)、その位相エンコードの信号ラインはポップコーンノイズを含む信号ラインと判定され、ノイズ有設定部130Aは、磁気共鳴撮像装置1において、ポップコーンノイズが発生した回数を加算する(ステップS209)。
【0091】
一方、いずれも信号の振幅が10倍以上でないときは(ステップS207のNo)、その位相エンコードの信号ラインはノイズを含まない信号ラインと判定され、データ比較部110Aは、その信号ラインに隣接する位相エンコーダの信号ラインにおいて、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号とを信号ラインごとに比較する(ステップS211)。
【0092】
この場合、ノイズ有無判定部120Aは、ステップS207と同様に、その信号ラインに隣接する位相エンコーダの信号ラインにおいて、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号のいずれか一方の振幅が他方の信号の振幅に対して、10倍以上か否かを判定し(ステップS213)、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して、10倍以上のときは(ステップS213のYes)、ステップS209へ移行する。
【0093】
ノイズ有設定部130Aは、磁気共鳴撮像装置1において、ポップコーンノイズが発生した回数に加算する(ステップS209)。
【0094】
一方、ステップS213において、いずれの信号ラインも信号の振幅が10倍以上でないときは(ステップS213のNo)、いずれの位相エンコードの信号ラインもポップコーンノイズを含んでいない信号ラインであると判定され、ノイズ有無判定部120Aは、最終の位相エンコーダの信号ラインまで、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号との比較が終了したか判定する(ステップS215)。
【0095】
最終の位相エンコーダの信号ラインまで、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号の比較が終了していないときは(ステップS215のNo)、ステップS111に移行し、データ比較部110Aは、最終の位相エンコーダの信号ラインまで、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号の比較を繰り返し実行する。
【0096】
一方、ステップS215において、最終の位相エンコーダの信号ラインまで、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号との比較が終了したときは(ステップS215のYes)、ノイズ含有データ判定部180は、ポップコーンノイズは発生していないと判定し、ノイズ含有データ除去処理を正常終了する。
【0097】
他方、ステップS209において、ポップコーンノイズが発生した回数に加算された場合は、ノイズ有設定部130Aは、POPフラグを立てる(ステップS217)。
【0098】
また、データ比較部110Aは、ノイズを含む信号ラインに隣接する位相エンコーダの信号ラインに基づいて、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号とを信号ラインごとに比較する(ステップS219)。
【0099】
この場合、ノイズ有無判定部120Aは、ステップS207やステップS213と同様に、その信号ラインに隣接する位相エンコーダの信号ラインに基づいて、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して、10倍以上か否かを判定し(ステップS221)、いずれか一方の振幅が10倍以上のときは(ステップS221のYes)、ステップS209へ移行する。
【0100】
一方、いずれも信号の振幅が10倍以上でないときは(ステップS221のNo)、その位相エンコードの信号ラインはポップコーンノイズを含まない信号ラインと判定され、ノイズ有無判定部120Aは、最終の位相エンコーダの信号ラインまで、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号の比較が終了したか判定する(ステップS223)。
【0101】
最終の位相エンコーダの信号ラインまで、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号の比較が終了していない場合は(ステップS223のNo)、ステップS219に移行し、データ比較部110Aは、最終の位相エンコーダの信号ラインまで、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号の比較を繰り返し実行する。
【0102】
一方、最終の位相エンコーダの信号ラインまで、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号との比較が終了した場合(ステップS223のYes)、ノイズ含有データ判定部180は、ポップコーンノイズが発生した発生回数(カウント値)を取得して、そのカウント値が5回以上であるか否かを判定する(ステップS225)。
【0103】
ノイズ含有データ判定部180は、カウント値が5回以上である場合には(ステップS225のYes)、ポップコーンノイズが多数発生していることにより磁気共鳴撮像装置1の異常が考えられ、ノイズ含有データ除去処理を終了(異常有終了)する。
【0104】
一方、カウント値が5回未満である場合には(ステップS225のNo)、ノイズ含有データ判定部180は、10倍以上の振幅の差異が第1のデータセットであるか、または第2のデータセットにあるかを判定し(ステップS227)、第1のデータセットにあると判定した場合には(ステップS227のYes)、撮像部10に再度撮影を行う指示を出し、データ再収集部150Aに第1のデータセットを再収集させ(ステップS229)、ステップS205へ移行する。
【0105】
他方、ノイズ含有データ判定部180は、10倍以上の振幅の差異が第2のデータセットにあると判定した場合には(ステップS227のNo)、撮像部10に再度撮影を行う指示を出し、データ再収集部150Aに第2のデータセットを再収集させ(ステップS231)、ステップS205へ移行する。
【0106】
本実施形態では、位相エンコーダの信号ラインごとに比較を行っているため、ポップコーンノイズの発生した位相エンコーダを特定することができる。そのため、データ再収集部150Aは、ポップコーンノイズの発生した生データの位相エンコーダのデータ(画像)のみを再度収集すればよく、また、生データのサイズや収集時間に応じて、生データごとの再収集を行うようにしてもよい。
【0107】
また、ステップS229またはステップS231において、データの再収集を行う場合には、データ再収集部150Aは、ポップコーンノイズを含む信号ラインであると判定された位相エンコードの信号ラインの信号を無効とし、その位相エンコードに該当する位相エンコードの信号ラインのデータを再度収集する。
【0108】
ステップS205に移行した場合、データ比較部110Aは、データ再収集部150Aにおいて再度収集された位相エンコードを用いて、再度収集された位相エンコードの信号を、ポップコーンノイズを含む信号ラインの信号と置き換えて、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号とを比較する。
【0109】
ノイズ有無判定部120Aは、第1のデータセットの位相エンコードの信号と、それと同位相の第2のデータセットの位相エンコードの信号の比較の結果に基づいて、比較した位相エンコードの信号のうち、いずれか一方の信号の振幅が他方の信号の振幅に対して、10倍以上か否かを再び判定し(ステップS207)、第1のデータセットと第2のデータセットにポップコーンノイズが発生しなくなるまで、ノイズ含有データ除去処理を繰り返す。
【0110】
これにより、データ再収集部150Aは、10倍以上の振幅の差異があるデータセットについて再収集を行い、データ比較部110Aにおいて、再収集したデータセットを用いてポップコーンノイズの除去を判定することができる。
【0111】
また、ノイズ含有データ判定部180は、再収集したデータセットと、ポップコーンノイズが発生していないデータセットとの位相エンコードの信号の比較の結果に基づいて、いずれの信号も振幅が10倍以上の差異がないときは(ステップS207のNo)、ポップコーンノイズを含む信号ラインのノイズは解消されたと判定し、次に隣接する位相エンコードの信号を比較する処理を行う(ステップS211)。
【0112】
以上説明したように、第2の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1の演算装置60Aは、再構成部160において再構成する前に、ステップS205からステップS231を繰り返すことにより、ポップコーンノイズがk空間において発生しても、ポップコーンノイズが発生したデータセットの画像(位相エンコードの信号)を再度収集するようになっているので、ポップコーンノイズの影響を除去することができる。
【0113】
また、第2の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1のデータ比較部110Aでは、複数のデータセットが存在する場合には、例えば、第1のデータセットと第2のデータセットを比較した後、第1のデータセットと第2のデータセットにポップコーンノイズが発生していないと判定した後に、第1のデータセットと第3のデータセットを比較したり、または、第2のデータセットと第3のデータセットを比較することができる。
【0114】
また、第2の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1のノイズ有無判定部120Aは、本実施形態に限定されるものではなく、データセットにポップコーンノイズを含む信号ラインが検出されたとき(ステップS207のYes)、そのポップコーンノイズが発生した位相エンコードの信号ラインの数を加算し(ステップS209)、その信号ライン数のカウント値によっては磁気共鳴撮像装置1の異常が考えられるため、ノイズ含有データ除去処理を強制終了するようにしてもよい。
【0115】
(6)ノイズ検出報知処理に係る構成と概略動作
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態または第2の実施形態に、さらに、検出報知部と、通知部とを備えるようになっている。第3の実施形態では、一例として、第1の実施形態に、検出報知部と通知部とを備えた場合について説明するが、第2の実施形態についても適用可能である。
【0116】
図8は、第3の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1の演算装置60Bで実行するノイズ含有データ除去処理に関する機能ブロックの構成例を示す図である。第3の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1の演算装置60Bが、第1の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1の演算装置60と異なる点は、検出報知部190と通知部195とを備える点である。同一の構成には同一の符号を付し、説明を適宜、省略する。
【0117】
検出報知部190は、ノイズ有設定部130においてポップコーンノイズを含む信号ラインであると判定されたときは、そのポップコーンノイズの検出を報知する機能を有している。
【0118】
通知部195は、ノイズ有設定部130においてカウントされたカウント値を取得して、そのカウント値に応じて、保守を行うための通知を行う機能を有している。
【0119】
(7)詳細動作
図9は、第4の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置1で行うノイズ検出報知処理の詳細動作例を説明するフローチャートである。以下、このフローチャートを参照して説明する。また、図9は、第1の実施形態を示す図3のフローチャートにおいて、ステップS109以降の処理を示すものである。
【0120】
ノイズ有設定部130は、磁気共鳴撮像装置1において、ポップコーンノイズが発生したことを示すPOPフラグを立てると(ステップS109)、検出報知部190は、表示装置64に、ポップコーンノイズが発生した旨を報知する(ステップS301)。
【0121】
具体的には、検出報知部190は、表示装置64に、「ポップコーンノイズが発生しました」と視覚的に表示する。また、検出報知部190は、さらに音声を用いて「ポップコーンノイズが発生しました」と視聴覚的に報知するようにしてもよい。この場合、ノイズ有設定部130からポップコーンノイズが発生したカウント値を取得して、ポップコーンノイズが発生した回数を報知するようにしてもよい。
【0122】
ノイズ数判定部140は、第1の実施形態と同様に、ポップコーンノイズを含む信号ライン数が規定値以上であるか否かを判定して(ステップS303)、例えば、信号ライン数のカウント値が、5回(規定値)以上の場合には(ステップS303のYes)、ポップコーンノイズの多数発生により磁気共鳴撮像装置の異常が考えられるため、磁気共鳴撮像装置のメンテナンスを行うサービスセンタに、通知部195とネットワーク(図示せず)とを介して、異常発生が発生した旨を通知する(ステップS305)。
【0123】
一方、ポップコーンノイズを含む信号ライン数が5未満の場合は(ステップS303のNo)、結合子Aを介して第1の実施形態のステップS111に移行し、次に隣接する位相エンコードの信号ラインと、位相エンコードの信号の比較を行う。
【0124】
なお、この場合、ステップS111への移行に限定されるものではなく、例えば、図3に示した第1の実施形態に示したデータの再収集へ移行し(ステップS121)、処理の途中でデータの再収集を行うようにしてもよい。
【0125】
この結果、ポップコーンノイズを含むと判定された位相エンコードの信号ラインのポップコーンノイズ除去に成功した場合には、ポップコーンノイズは発生したが、そのポップコーンノイズの除去に成功した旨の報知を行うようにしてもよい。
【0126】
以上説明したように、第3の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の演算装置60Bでは、再構成部160において再構成する前に、ポップコーンノイズが発生した旨を報知したり、ポップコーンノイズの発生回数が規定値(例えば、5回)以上の場合には、磁気共鳴撮像装置1の点検が必要な旨をサービスセンタに通知することができる。
【0127】
これにより、第3の実施形態では、例えば、ポップコーンノイズの影響を受けない画像データに基づいて再構成することができるだけでなく、磁気共鳴撮像装置にノイズが多数発生する装置であることを、利用者やメンテナンスを行う従事者に早期に通知することができる。
【0128】
また、図9に示したフローチャートは、磁気共鳴撮像装置にノイズが多数発生したときに報知や通知を行うことを特徴とするものであるため、被検体の撮像に限定されるものではなく、例えば、再起動したときの撮像や新規患者の撮像または新規シーケンスの実行などであっても、磁気共鳴撮像装置の故障検出として適用可能である。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0130】
また、本発明の実施形態では、フローチャートの各ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。
【符号の説明】
【0131】
1 磁気共鳴撮像装置
10 撮像部
60、60A、60B 演算装置
62 入力装置
64 表示装置(表示部)
100 データ収集部
110、110A データ比較部
120、120A ノイズ有無判定部
130、130A ノイズ有設定部
140、140A ノイズ数判定部
150、150A データ再収集部
160 再構成部
170 3次元画像生成部
180 ノイズ含有データ判定部
190 検出報知部
195 通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9