(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366955
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 23/04 20060101AFI20180723BHJP
F16L 21/06 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
F16L23/04
F16L21/06
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-34843(P2014-34843)
(22)【出願日】2014年2月26日
【出願変更の表示】実願2014-942(U2014-942)の変更
【原出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-161319(P2015-161319A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】504304363
【氏名又は名称】株式会社永島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】永島 剛士
【審査官】
小川 恭司
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−060680(JP,U)
【文献】
特開平07−151277(JP,A)
【文献】
実開平05−047683(JP,U)
【文献】
実開平06−082491(JP,U)
【文献】
特開2004−270801(JP,A)
【文献】
特開2008−241003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00−27/12
F16B 2/00− 2/26
5/00− 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面半円円弧状に形成された管継手本体部と、上記管継手本体部の端部に夫々形成された一対の固定フランジ部と、上記固定フランジ部に形成され、上記管継手本体部内に配設される管の軸方向に対して傾斜して配設された固定手段挿通部とを備えた一対のクランプ部材を上記管の上下方向から装着して上記固定手段挿通部に上記一対の固定フランジ部を貫通した状態で固定手段を挿通して固定するように構成され、
上記一のクランプ部材の上記固定手段挿通部と上記他のクランプ部材の上記固定手段挿通部とは、一のクランプ部材及び他のクランプ部材が管に装着された場合には一対のクランプ部材を上記管を介して固定できる固定手段を管の軸方向に対して傾斜した状態で挿通しうる固定手段挿通部を形成する管継手であって、
上記一のクランプ部材の固定手段挿通部及び他のクランプ部材の固定手段挿通部は管の軸方向に沿った当接面部を有しており、
上記固定手段は軸部を有して形成されると共に、上記固定手段挿通部は、上記固定手段の上記軸部全体を収納しうるように上記軸部に沿って連続した筒状に形成され、上記一対のフランジ部に、互いに両側方において、夫々、管軸方向に対して逆方向に傾斜して設けられており、
上記固定手段は、ボルト及びナットであるとともに、前記固定手段挿通部の内部には、前記ボルトの上記軸部が螺合しうるネジ部が形成されていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
上記固定手段挿通部は、互いに同一角度を以て傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、管路の端部を固定するために管継手が使用されている。このような管継手は、一般には、側面半円円弧状に形成された管継手本体部と、上記管継手本体部の端部に夫々形成された一対の固定フランジ部と、上記固定フランジ部に形成され、上記管継手本体部内に配設される管の軸方向に対して傾斜して配設された固定手段挿通部とを備えた一対のクランプ部材を上記管の上下方向から装着して上記固定手段挿通部に例えば、ボルト及びナットからなる固定手段を挿通して固定するように構成されている。
【0003】
このような従来の管継手にあっては、管の端部に管継手が装着された場合には、固定フランジ部に対して上記ボルト及びナットは、管の軸方向に対して直角であって、一般的には管に対して上下方向に配置された状態で固定フランジ部を固定する。
その結果、強い地震が発生した場合には、縦揺れは上記ボルト及びナットの軸方向に沿って直接に作用し、ボルトとナットの係合状態を緩めることとなる。また、同様に横揺れもボルトの軸方向に対して直角に作用し、ボルトとナットの係合状態を緩めるように作用する。
【0004】
従って、従来より、耐震性の高い管継手が要請されていた。このような観点から本件出願人は特許文献調査を行い、特許文献1を抽出した。特許文献1には、クランプ部材の上記固定手段挿通部と上記他のクランプ部材の上記固定手段挿通部とは、管継手を構成する一のクランプ部材及び他のクランプ部材が管に装着された場合には一対のクランプ部材を上記管を介して固定できる固定手段を管の軸方向に対して傾斜した状態で挿通しうるボルト挿通部が形成された管継手が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術にあっては、単に、ボルトの挿通部を管の軸方向に対して傾斜させて設けており、その課題は、「取付時の継手の端面のギャップ防止を行うための自動調節機能を付与する」点にあり、耐震性を高めることを目的とした技術ではない。
【0006】
その結果、特許文献1所載の技術にあっても、地震が発生した場合で、縦揺れ及び横揺れが作用した場合には、ボルト及びナット間の緩みが発生する可能性が大きい、という問題があった、
【特許文献1】特開昭63―167189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような従来からの不具合を解決するためのものであって、その課題は、耐震性に優れた管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題達成のため、請求項1記載の発明にあっては、側面半円円弧状に形成された管継手本体部と、上記管継手本体部の端部に夫々形成された一対の固定フランジ部と、上記固定フランジ部に形成され、上記管継手本体部内に配設される管の軸方向に対して傾斜して配設された固定手段挿通部とを備えた一対のクランプ部材を上記管の上下方向から装着して上記固定手段挿通部に
上記一対の固定フランジ部を貫通した状態で固定手段を挿通して固定するように構成され、
上記一のクランプ部材の上記固定手段挿通部と上記他のクランプ部材の上記固定手段挿通部とは、一のクランプ部材及び他のクランプ部材が管
に装着された場合には一対のクランプ部材を上記管を介して固定できる固定手段を管の軸方向に対して傾斜した状態で挿通しうる固定手段挿通部を形成する管継手であって、上記一のクランプ部材の固定手段挿通部及び他のクランプ部材の固定手段挿通部は管の軸方向に沿った当接面部を有して
おり、
上記固定手段は軸部を有して形成されると共に、上記固定手段挿通部は、上記固定手段の上記軸部全体を収納しうるように上記軸部に沿って連続した筒状に形成され、上記一対のフランジ部に、互いに両側方において、夫々、管軸方向に対して逆方向に傾斜して設けられており、
上記固定手段は、ボルト及びナットであるとともに、前記固定手段挿通部の内部には、前記ボルトの上記軸部が螺合しうるネジ部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
従って、請求項1記載の発明にあっては、地震発生時に、例えば、横揺れが作用した場合には、上記一対の当接面部が互いに管の軸方向(例えば、水平方向)に沿って互いに僅かにずれると共に、力を傾斜して配置された上記固定手段挿通部へ入力された力を逃がすことができる。
【0010】
また、地震の縦揺れは、配設された管の軸方向に対して直角(例えば、垂直方向)に入力されることから、上記一対の当接面部は縦揺れの力の入力に対して直角に配置され、縦揺れの力に対して対抗しうると共に、力を傾斜して配置された上記固定手段挿通部へ逃がすことができる。
【0011】
さらに、上記固定手段挿通部は筒状に形成され、上記一対のフランジ部に、互いに両側方において、夫々、管軸方向に対して逆方向に傾斜して設けられていることから、例えば、横揺れが管の軸方向に沿って入力された場合であっても、固定手段挿通部に挿通される固定手段(ボルト及び、ボルトを固定するためのナット)は、地震の横揺れに関する軸方向におけるいずれの方向からの力の入力に対しても逃がすことができる。
【0012】
請求項
2記載の発明にあっては、上記固定手段挿通部は、互いに同一角度を以て傾斜して設けられていることを特徴とする
。
【発明の効果】
【0013】
請求項1
及び2記載の発明にあっては、地震発生時に、例えば、横揺れが作用した場合には、上記一対の当接面部が互いに管の軸方向(例えば、水平方向)に沿って互いに僅かにずれると共に、
地震の揺れによる衝撃を、傾斜して配置された上記固定手段挿通部へ入力された力を管継手本体部へと逃がすことができると共に、上記一対の当接面部は縦揺れの力の入力に対して直角に配置され、縦揺れの力に対して対抗しうると共に、入力された衝撃を、傾斜して配置された上記固定手段挿通部へ逃がすことができるため、地震の揺れに対して非常に強く、地震時においても管路端部の固定が外れることのない管継手を提供することができる。
【0014】
また、上記固定手段挿通部は筒状に形成され、上記一対のフランジ部に、互いに両側方において、夫々、管軸方向に対して逆方向に傾斜して設けられていることから、例えば、横揺れが管の軸方向に沿って入力された場合であっても、固定手段挿通部に挿通される固定手段(ボルト及び、ボルトを固定するためのナット)は、地震の横揺れに関する軸方向におけるいずれの方向からの力の入力に対しても、管継手本体部へ逃がすことができるため
、より大きな耐震性を有する管継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る管継手の一実施の形態を示し、管の径方向に沿った側面図である。
【
図2】本発明に係る管継手の一実施の形態を示し、管の軸方向に沿って側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る管継手10にあっては、側面半円円弧状に形成された管継手本体部11と、上記管継手本体部11の端部に夫々形成された一対の固定フランジ部12、12と、上記固定フランジ部12、12に形成され、上記管継手本体部11内に配設される管13の軸方向に対して傾斜して配設された固定手段挿通部19とを備えた一対のクランプ部材15、16を上記管13の上下方向から装着して上記固定手段挿通部19、19に固定手段であるボルト17を挿通してナット18により固定するように構成されている。
【0017】
上記一のクランプ部材15、15の上記固定手段挿通部19、19と上記他のクランプ部材16の上記固定手段挿通部19、19とは、一のクランプ部材15及び他のクランプ部材16が管13に装着された場合には一対のクランプ部材15、16を上記管13を介して固定できる固定手段であるボルト17及びナット18を管13の軸方向に対して傾斜した状態で挿通しうる固定手段挿通部19、19を形成するように構成されている。
【0018】
そして、
図2に示すように、本実施の形態に係る管継手10にあっては、上記一のクランプ部材15の固定手段挿通部19、14及び他のクランプ部材16の固定手段挿通部19、19は管13の軸方向に沿った当接面部20、20を有している。
【0019】
即ち、
図2に示すように、固定手段挿通部19、19は、上下一対のクランプ部材15、16の固定フランジ部12、12に一体に形成され、管13の上部に配置されるクランプ部材15に設けられた上半部21と、上半部21と同一の角度を以て管13の下部に配置されるクランプ部材16に設けられた下半部22とにより構成されており、上記上半部22の下端部及び下半部22の上端部には夫々、互いに接合し合う当接面部20、20が形成されている。
【0020】
上半部21及び下半部22は、夫々、ボルト17が挿通されうる内径寸法を有する短円筒状に形成され、内部にはボルト17が螺合しうるネジ部(図示せず)が形成されている。クランプ部材15、16が管13の上部及び下部に装着されて接合された場合には、上半部21及び下半部22により細長円筒状の固定手段挿通部19、19が形成され、当接面部20、20は菅13の軸方向に沿って形成されていることから、当接面部20、20には管13の軸方向に沿った接合面が形成される。
【0021】
また、
図2に示すように、本実施の形態にあっては、固定手段挿通部19、19はクランプ部材15、16の一対のフランジ部12、12に、互いに両側方において、夫々、管13の軸方向に対して逆方向に傾斜して設けられている。
その結果、上下一対のクランプ部材15、16が管13の上部及び下部に装着された場合には、固定手段挿通部19、19は、上記上半部21及び下半部22が相互に連続し、固定フランジ部12、12を斜めに貫通する形で配置され、管の側方からはX字状に交叉するように配置されている。
【0022】
従って、本実施の形態に係る管継手10を用いて管13,13を接合する場合には、管13、13の端部に管継手10を構成するクランプ部材15、16を管13、13の、夫々、上部及び下部に配置する。この場合、上半部21及び下半部22が当接面部20を介して接合されて連続することにより固定手段挿通部19、19が形成される。
その後、固定手段挿通部19、19にボルト17を上方から挿入させて貫通配置し、先端部に、ナット18を螺合させることにより、ボルト17によってクランプ部材15、16により管13、13を結合固定する。
【0023】
このようにして本実施の形態に係る管継手10により管13が結合された場合、地震が発生して横揺れが管継手10に作用した場合であっても、上記一対の当接面部20、20が互いに管13の軸方向(例えば、水平方向)に沿って互いに僅かにずれると共に、力を傾斜して配置された上記固定手段挿通部19、19を介して管継手本体部11へ入力された力を逃がすことができる。
【0024】
また、地震の縦揺れは、配設された管13の軸方向に対して直角(例えば、垂直方向)に入力されることから、上記一対の当接面部20、20は縦揺れの力の入力に対して直角に配置され、縦揺れの力に対して対抗しうると共に、入力された力を傾斜して配置された上記固定手段挿通部19、19を介して管継手本体部11へ逃がすことができる。
【0025】
その結果、地震の揺れに対して非常に強く、地震時においても管路端部の結合が外れることのない管継手を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は広く管継手に適用することができることから、産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0027】
10 管継手
11 管継手本体部
12 固定フランジ部
13 管
15 クランプ部材
16 クランプ部材
17 ボルト(固定手段)
18 ナット(固定手段)
19 固定手段挿通部
20 当接面部
21 上半部
22 下半部