【実施例】
【0027】
次に本発明の方法を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は要旨を超えない
限り以下の実施例によって限定されるものではない。
【0028】
試験には、簡易吹付け試験装置を用い、塗料ミスト不粘着効果、塗料滓の浮上性、分散性を評価した。本例で使用した簡易吹付け試験装置図を
図1に示す。簡易吹付け試験装置は保有水量1L、循環水量5L/分であり、系内には受水槽、水膜形成板(塩ビ板)を設け、水膜部分にスプレーガンで塗料ミストを噴霧した水をマグネットポンプで循環することにより湿式塗装ブースを再現している。ベントナイトを受水槽に添加した後、自動車ボディ用塗料を吹付けて、吹付け前後の受水槽重量を測定することにより受水槽固着量を求め、これを全吹付け塗料量で除することにより塗料固着率を算出する。塗料固着率が小さいほど不粘着効果が良好なことを示す。
また、吹付け後の循環水を1L透明樹脂ボトルに移して静置後の塗料滓の浮上性を確認し、さらにボトル全体を振とうして再び静置した後の循環水の分散性を確認した。
浮上性の評価 ○:塗料滓の90%以上が浮上、△:塗料滓の50%以上が浮上、×:塗料滓の浮上は50%未満
分散性の評価 ○:塗料滓が全体に分散、△:塗料滓は分散するが一部塊状になって沈降、×:全体が塊状になって沈降
【0029】
<実施例1、2、3><比較例1、2>
膨潤力の異なるベントナイトを用いて試験した。
膨潤力は、日本ベントナイト工業会標準試験方法の膨潤力試験方法(JBAS−104−77)に準じて測定された値である。ベントナイトの添加量は0.1重量%である。
また、塗料は自動ボディ用油性溶剤系クリア塗料を20g吹付けて試験した。
試験結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1からわかるように、ベントナイトの膨潤力が20ml/2g以上になると顕著に不
粘着効果が向上し塗料固着率が小さくなり、塗料滓の分散性、浮上性が良好となる。
【0032】
<実施例4、5、6><比較例3、4>
塗料を自動ボディ用油性溶剤系クリア塗料に代えて自動車ボディ用水性上塗り塗料を使用した以外は実施例1同様に試験した。
試験結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2からわかるように、塗料が水性塗料であっても、ベントナイトの膨潤力が20ml/2g以上になると顕著に不粘着効果が向上し塗料固着率が小さくなり、塗料滓の分散性、浮上性が良好となる。
【0035】
<実施例7,8,9>
ベントナイトBの添加量を変えた以外は実施例1と同様に試験した。
試験結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
表3からわかるように、本発明のベントナイトの添加量は10mg/L以上、特に100ないし1000mg/Lで優れた効果が発揮される。
【0038】
<実施例10、11、12、13、14>
ベントナイトA、B、C、F、Gを用いてベントナイト水溶液を作成した。その水溶液の3ケ月後の水分散性を確認した。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
表4の結果より、均一に分散されたベントナイト水溶液を製造する場合のベントナイトの膨潤力とベントナイト水溶液濃度の関係は下記式(2)が成り立つ。この範囲外では長期保存した場合ベントナイトが水と分離することが分かった。
【0041】
y = 181 / x + a (2)
ただし、y = ベントナイト水溶液濃度(質量%)
x=ベントナイトの膨潤力(mL/2g)
−1.5 < a < 1.5
【0042】
<実施例15、16、17、18、19、20、21、22><比較例5、6>
ベントナイトBを用いて、油性溶剤系クリア塗料の吹付け量を50gに増量して、実施例1と同様に試験した。ベントナイトとポリエチレンイミンを併用した場合も試験した。
試験結果を表5に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
表3、実施例9と表5、実施例16の比較からわかるように、塗料の吹付け量が増大するとベントナイト単独の効果は低下傾向となる。表5から微量のポリエチレンイミンの併用で効果が著しく改善される。また、ポリエチレンイミンは相対的に分子量の高いものほど有効であるが、ベントナイトの配合を省略し、単独で用いた場合は効果が得られないことが分かる(比較例5、6)。
【0045】
<実施例23,24,25>
ベントナイトBを500mg/L添加して、更に本発明のポリエチレンイミン以外の有機凝結剤(カチオン性ポリマー)を併用して、実施例19と同様にして試験した。
試験結果を表6に示す。
【0046】
【表6】
【0047】
実施例19と表6を比較すると、有機凝結剤と本発明のベントナイトの相性についてはポチエチレンイミンが特に優れていることが分かる。
【0048】
<実施例26、27、28、29、30、31、32><比較例7、8>
実施例15と同様に、ベントナイトBを用いて、油性溶剤系クリア塗料の吹付け量を50gに増量して試験した。ベントナイトとアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(エーテル化度0.72品)を併用した場合を試験した。
試験結果を表7に示す。
【0049】
【表7】
【0050】
表7から微量のアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の併用で著しく効果が改善される。