特許第6366963号(P6366963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッドの特許一覧

特許6366963酸素の透過性及び涙の流動性を改善させるための隆起部分を有するヒドロゲルレンズ
<>
  • 特許6366963-酸素の透過性及び涙の流動性を改善させるための隆起部分を有するヒドロゲルレンズ 図000002
  • 特許6366963-酸素の透過性及び涙の流動性を改善させるための隆起部分を有するヒドロゲルレンズ 図000003
  • 特許6366963-酸素の透過性及び涙の流動性を改善させるための隆起部分を有するヒドロゲルレンズ 図000004
  • 特許6366963-酸素の透過性及び涙の流動性を改善させるための隆起部分を有するヒドロゲルレンズ 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366963
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】酸素の透過性及び涙の流動性を改善させるための隆起部分を有するヒドロゲルレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   G02C7/04
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-48796(P2014-48796)
(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-178685(P2014-178685A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年7月11日
(31)【優先権主張番号】13/799,783
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ダニエル・リオール
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−500554(JP,A)
【文献】 特表2012−507747(JP,A)
【文献】 特開平05−034644(JP,A)
【文献】 特表2011−523097(JP,A)
【文献】 特開平01−314222(JP,A)
【文献】 特表2014−514613(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0228213(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用装置であって、
光学ゾーン、外側ゾーン、および、前記光学ゾーンと前記外側ゾーンとの間に位置する周辺ゾーン、を含む少なくとも3つの同心のゾーンを有するヒドロゲルレンズを備え、
前記ヒドロゲルレンズの前記周辺ゾーンは、装着者の目の眼表面の近位側の前記レンズの表面上に複数の細長い隆起部分を有し、いずれの前記細長い隆起部分も前記光学ゾーンを完全には包囲しないように前記複数の細長い隆起部分はそれらの間の空隙部分によって分離されており、
前記細長い隆起部分は、前記光学ゾーンの外側、かつ前記外側ゾーンの内側に位置しており、
前記細長い隆起部分は、前記ヒドロゲルレンズの他の部分より硬質である、眼用装置。
【請求項2】
前記空隙部分が、酸素の透過及び涙の流動を可能にする、請求項1に記載の眼用装置。
【請求項3】
前記細長い隆起部分が、前記眼用装置が前記眼表面に不所望に付着することを防止する、請求項1に記載の眼用装置。
【請求項4】
前記細長い隆起部分が、前記眼表面と前記ヒドロゲルレンズとの間に空洞を生じるように構成される、請求項1に記載の眼用装置。
【請求項5】
酸素の透過及び涙の流動が前記空洞内で生じる、請求項4に記載の眼用装置。
【請求項6】
前記空洞が、前記ヒドロゲルレンズの厚さの少なくとも10%である厚さを有する、請求項4に記載の眼用装置。
【請求項7】
前記ヒドロゲルレンズの前記光学ゾーン内に能動レンズインサート、媒体インサート、または機能性層インサートを更に備える、請求項1に記載の眼用装置。
【請求項8】
前記細長い隆起部分が、前記能動レンズインサート、前記媒体インサート、または前記機能性層インサートの周縁に沿って配列されている、請求項7に記載の眼用装置。
【請求項9】
前記ヒドロゲルレンズが、前記能動レンズインサート、前記媒体インサート、または前記機能性層インサートを支持する、請求項7に記載の眼用装置。
【請求項10】
前記ヒドロゲルレンズが、前記能動レンズインサート、前記媒体インサート、または前記機能性層インサートを封入する、請求項7に記載の眼用装置。
【請求項11】
前記細長い隆起部分が、前記ヒドロゲルレンズの他の部分のヒドロゲル材料とは異なるヒドロゲル材料を含む、請求項1に記載の眼用装置。
【請求項12】
前記細長い隆起部分が、シリコンヒドロゲルを含む、請求項11に記載の眼用装置。
【請求項13】
前記ヒドロゲルレンズが、シリコンヒドロゲルを含む、請求項1に記載の眼用装置。
【請求項14】
前記ヒドロゲルレンズ及び前記細長い隆起部分が、異なる材料から形成される、請求項1に記載の眼用装置。
【請求項15】
前記細長い隆起部分が、前記ヒドロゲルレンズの他の部分よりも硬質な材料を含む、請求項1に記載の眼用装置。
【請求項16】
前記ヒドロゲルレンズ及び前記細長い隆起部分が、注型成形によって形成される、請求項1に記載の眼用装置。
【請求項17】
前記細長い隆起部分が、前記眼表面の表面積の50%未満である全表面積を有する、請求項1に記載の眼用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には、酸素の透過性、涙の流動性、及び快適性を改善させるように構成された眼用装置に関する。より具体的には、媒体インサートを支持することが可能な眼用装置である。
【背景技術】
【0002】
眼用装置の分野において、特にコンタクトレンズの分野においては、レンズが生体適合性であり、接触期間に、周囲の眼組織に損傷を与えたり、眼液の生成又は流動を妨げたりしないことが、非常に重要である。特に、コンタクトレンズが装用されている間、十分な量の酸素が角膜に到達できることが重要であり、そうしなければ、目の健康に悪影響が及ぼされることがある。例えば、角膜への酸素供給が不十分となると、結果として浮腫、つまり腫脹、低酸素症が生じることがあり、また一般的に、相当な不快感が生じ、究極的には、コンタクトレンズが装用され得る期間が制限されることになり得る。
【0003】
一般に、コンタクトレンズの装用中、酸素は、レンズ物質を通じた拡散によって、あるいは、レンズが装用されているときにレンズの運動中に、新たに酸素化された涙液がレンズの下方で眼から生成されることによって、角膜に到達することができる。しかしながら、一部のコンタクトレンズは、酸素透過率の低い材料でできた構成要素又は調合物を含んでいることがあり、したがって、角膜に到達する酸素の大部分は、涙に混合することによる酸素に限定される。
【0004】
その結果、ヒドロゲルレンズは、より快適であり、より多くの酸素を眼に到達させるため、通常、他のコンタクトレンズ物質よりも好まれている。ヒドロゲルレンズが装用されるとき、一部の酸素は、直接、レンズを通じた拡散によって、角膜に到達する。レンズを通じて角膜に送達される酸素の量は、レンズの酸素透過率に依存する。また、酸素化された涙が眼によって幾分か自然に生成され、これはレンズの下方で生じるものであるが、それによって眼が更に酸素化される。
【0005】
更に最近では、しかしながら、眼用装置は、機能性を加えることが可能であると理論化されており、そのためには、眼用装置に、不透過性又は低透過性の構成要素及び調合物を組み込むことが必要となり得る。不透過性又は低透過性の構成要素及び調合物を含めることで、酸素の透過と涙の流動が更に困難となり、結果として、角膜に損傷を与えるリスクが増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、酸素の透過性を高め、涙の流動性を向上させて、角膜に損傷を与えるリスクを低減するように設計された、ヒドロゲルレンズで構成された眼用装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、上記の必要性は、本発明の1つ以上の実施形態によって大いに満たされる。本開示の幾つかの態様によれば、眼用装置が提供される。眼用装置がヒドロゲルレンズを備え、ヒドロゲルレンズの周辺ゾーンの一部分のトポグラフィーは、眼の眼表面の近位側のレンズの凹表面上に複数の隆起部分を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の例示的な実施形態による眼用装置の横断面を含む3次元斜視図を示している。
図2】本開示の実施形態によるヒドロゲルレンズの隆起部分の部分拡大斜視図及び横断面を示している。
図3】本開示の実施形態による例示的な眼用装置の部分横断面図を示している。
図4】本開示の実施形態による別の例示的な眼用装置の部分横断面図を示しており、媒体インサートを備えたヒドロゲルレンズが示されている。
【0009】
このように、本発明の特定の実施形態が、幾分か大まかに略述されており、本明細書におけるそれら実施形態の詳細な説明がより理解され得るように、また当該技術分野への本発明の寄与がより認識され得るようになっている。言うまでもなく、本発明の更なる実施形態が以下で説明され、また本明細書に添付された特許請求の範囲の主題をなすことになる。
【0010】
この点において、本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、理解されたいこととして、本発明は、その用途において、以下の説明に記載した又は図面に示した各構成要素の構造又は構成に限定されない。本発明は、説明したもの以外の態様が可能であり、また様々な方式で実施及び実行され得る。また、理解されたいこととして、本明細書において用いられる表現法及び用語法、並びに要約は、説明を目的としたものであり、限定するものとしてみなされるべきではない。
【0011】
したがって、当業者には明らかなこととして、本開示が基づく構想は、本発明のいくつかの目的を実行するための他の構造、方法、及びシステムを設計する基礎として容易に利用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、そのような等価な構造を含むものと見なされることが重要である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、あるヒドロゲルレンズを備えた眼用装置を含み、そのヒドロゲルレンズの周辺ゾーンの一部分のトポグラフィーは、眼の眼表面の近位側の、レンズの凹面上に複数の隆起部分を含む。隆起部分は、酸素の透過と涙の流動が生じ得る空洞を、眼表面とヒドロゲルレンズとの間に形成するのを助け得る。
【0013】
語彙解説
提示する本発明に関するこの説明及び特許請求の範囲において、以下の定義が当てはまる様々な用語が用いられ得る。
能動レンズインサート:本明細書で用いられるとき、論理回路に基づいた制御装置を備える電子式又は電子機械式インサート装置を指し得る。
【0014】
機能性層インサート:本明細書で用いられるとき、少なくとも一部分が積み重ねられる複数の機能層から形成された眼用装置のインサートを指し得る。複数の層は、各層ごとに独自の機能性を有してもよく、あるいは、混成された機能性を複数の層に有してもよい。幾つかの実施形態では、層はリングであってもよい。
【0015】
眼用装置:本明細書で用いられるとき、眼の中又は上に存在することが可能な任意の眼用装置を指し得る。これらの装置は、光学的矯正、治療の一方又は両方をもたらすことができ、美容用にもなり得る。例えば、生医学眼用装置は、視力を矯正又は修正するとともに眼の状態を向上又は予防することができ、かつ/又は、眼の生理機能を美容的に向上させる(例えば、虹彩の色)、給電型コンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼球インサート、光学インサート、涙点プラグ、又は他の類似の眼用装置を指し得る。幾つかの実施形態では、本発明の眼用装置は、シリコーンエラストマー又はヒドロゲルから作製されたソフトコンタクトレンズを含み得るが、そのシリコーンエラストマー又はヒドロゲルには、限定するものではないが、シリコーンヒドロゲル、及びフルオロヒドロゲルが挙げられる。
【0016】
眼球インサート:本明細書で用いられるとき、任意の能動レンズインサート、媒体インサート、又は機能性層インサートを指し得る。
【0017】
レンズ:本明細書で用いられるとき、眼の中又は上に存在するこ任意の眼用装置を指し得る。これらの装置は、光学的な矯正をもたらすことができ、あるいは美容的にもなり得る。例えば、レンズという用語は、視力を矯正又は修正するか、あるいは視覚を妨げることなく眼の生理機能を美容的に向上させる(例えば、虹彩の色)、コンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼球インサート、光学インサート、又は他の類似の装置を指し得る。幾つかの実施形態では、本発明の好ましいレンズは、シリコーンエラストマー又はヒドロゲルから作製されたソフトコンタクトレンズであり、そのシリコーンエラストマー又はヒドロゲルには、限定するものではないが、シリコーンヒドロゲル、及びフルオロヒドロゲルが挙げられる。
【0018】
レンズ設計:本明細書で用いられるとき、製作されると、限定するものではないが、屈折力矯正、発色性、治療目的の機能性、装用性、許容透過性、外形、組成、順応性、許容レンズ適合性(例えば、角膜被覆率及び移動性)、及び許容レンズ回転安定性を含む機能的な特徴をもたらし得る、所望のレンズの形状、機能及び/又は外観を指し得る。
【0019】
レンズ構成要素:本明細書で用いられるとき、限定するものではないが、眼用レンズの特定の機能性をもたらすのに好適な顔料、電機部品、UV遮断材、染料、光開始剤、触媒、光学部品、及び/又は活性剤を含み得る。機能性には例えば、光学的矯正、視力向上、美容的効果、及び治療目的の機能性のうちの1つ又は2つ以上を挙げることができる。
【0020】
媒体インサート:本明細書で用いられるとき、眼用レンズ内のエネルギー源を支持できる、成形性又は硬質基材を指し得る。幾つかの実施形態では、媒体インサートはまた、1枚以上の可変光学レンズを含む。
【0021】
成形型:本明細書で用いられるとき、未硬化の調合物からレンズを形成するために使用され得る、硬質又は半硬質の物体を指し得る。幾つかの成形型は、隆起部分を備えたヒドロゲルレンズを形成するために使用される、1つ又は2つの成形型部を備え得る。
【0022】
眼表面:本明細書で用いられるとき、眼の前面の領域を指し得る。
【0023】
光学ゾーン:本明細書で用いられるとき、眼用装置又はレンズのうちの、レンズの形成後に眼用レンズの装用者が通して見る領域を指し得る。
【0024】
周辺ゾーン:本明細書で用いられるとき、「周辺ゾーン」又は「非光学ゾーン」という用語は、眼用レンズのうちの、眼用レンズの光学ゾーンの外側にある領域、したがって、眼用レンズのうちの、通常に処方された方式で眼の上、近く、又は中に眼用レンズを装用する間にレンズ装用者が通して見る部分の外側にある領域を指し得る。
【0025】
積重ね:本明細書で用いられるとき、第1の構成要素の表面の少なくとも一部分が第2の構成要素の表面の少なくとも一部分と接触するように、少なくとも2つの構成要素の表面を互いに近接させて配置することを指し得る。幾つかの実施形態では、フィルムが、接着のためか他の機能のためかに関わらず、互いに近接する2つの表面の間に存在してもよい。幾つかの実施形態では、構成要素を積み重ねると、結果として、第1の構成要素が封じ込められ得る。それらの構成要素は、互いに眼用装置を形成する眼球インサートとヒドロゲルレンズであってもよい。
【0026】
ここで図1を参照すると、本開示による眼用装置10の3次元斜視図が示されている。特に、図1は、眼表面の近位側のレンズの凹面上に例示的な隆起部分を備えた眼用装置を示している。眼用装置10はヒドロゲルレンズ20を含んでいる。ヒドロゲルレンズ20は、光学ゾーン30と周辺ゾーン40とを備えている。ヒドロゲルレンズ20は、シリコンヒドロゲルから構成されても、眼用レンズに使用されることで知られている任意の生体適合性ヒドロゲル材料から構成されてもよい。幾つかの実施形態では、例えば、眼用レンズのタイプには、シリコーン含有構成要素が挙げられる。「シリコーン含有構成要素」は、モノマー、マクロマー、又はプレポリマーに少なくとも1つの[−Si−O−]単位を含有するものであってよい。好ましくは、ケイ素とそれに結合した酸素が総計で、シリコーン含有構成要素中に、シリコーン含有構成要素の総分子量の約20重量パーセント超、より好ましくは30重量パーセント超の量で存在する。有用なシリコーン含有構成要素は好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニル、N−ビニルラクタム、Nビニルアミド、及びスチリル官能基など、重合可能な官能基を含む。
【0027】
ヒドロゲルレンズ20の周辺ゾーン40は、眼表面100の近位側のレンズ20の凹面上に、複数の隆起部分50を備え得る。眼表面は、図3及び4において80として示されている。眼表面100の近位側にあるヒドロゲルレンズ20の表面がまた、図3及び4にも示されている。隆起部分50は、周辺ゾーン40に沿って離間又は位置付けされており、光学ゾーン30には存在しない。これは、隆起部分50がユーザーの視覚に干渉しないようにするためである。
【0028】
隆起部分50は、隣接する隆起部分50同士の間に空隙部分60が形成されるように、周辺ゾーン40に沿って離間している。図1は、2つの個別の空隙部分60を示している。空隙部分60によって酸素の透過が可能となるが、これは、眼表面80が空隙部分60において露出しており、酸素が隆起部分50を透過することなく眼表面80に到達し得るからである。涙の流動もまた、空隙部分60において生じ得るが、それによって更に、眼表面80に供給される酸素の量も増加する。
【0029】
任意の個数の隆起部分50が周辺ゾーン40に含められてよい。隆起部分の個数及び寸法により、空隙部分60の寸法及び個数が決まり、それによって酸素の透過量及び涙の流量が増減し得る。本開示による一実施形態では、4つの隆起部分が存在してもよく、空隙部分が1mm幅となり得る。
【0030】
本開示による幾つかの実施形態では、隆起部分50は、正弦波曲線のパターンをなして周辺ゾーン40に巻き付くように配列されてもよい。正弦波曲線の振幅は、約3マイクロメートル〜80マイクロメートルであってよい。正弦波曲線の各ピークの度数は、2程度の小さなものであっても、50程度の大きなものであってよい。しかしながら、隆起部分50の他の配列が考えられ、正弦波曲線や規則的な周期的形状に限定されない。
【0031】
隆起部分50は一般に、眼表面80の本来の柔らかさが隆起部分50の形状には適合せず、隆起部分50を有効流路として阻害するように、十分に大きなものであるべきである。他方で、隆起部分50は、高い接触応力を眼表面40に生じ、不快感又は損傷を装用者にもたらすような大きなものであるべきではない。
【0032】
隆起部分50は、前述した任意の生体適合性材料及び/又は眼用レンズに使用されることで知られている生体適合性材料から構成され得る。例えば、本開示の態様による幾つかの実施形態では、隆起部分50は、ヒドロゲル又はシリコンヒドロゲルから構成され得る。したがって、隆起部分50は、ヒドロゲルレンズ20の形成に使用されたものと同じヒドロゲルから構成されてもよい。更に他の実施形態では、隆起部分50は、ヒドロゲルレンズ20とは異なるものであり、特にヒドロゲルレンズ20よりも硬質な材料をなす材料から構成されてもよい。隆起部分50のための、より硬質な材料は、眼表面80の上方にヒドロゲルレンズ20を支持するのを支援するために有用となり得る。
【0033】
幾つかの実施形態では、ヒドロゲルレンズ20及び隆起部分50は、注型成形によって形成されてもよい。未硬化の調合物からヒドロゲルレンズ20及び隆起部分50を形成するために、成形型が使用されてもよい。幾つかの成形型は、ヒドロゲルレンズ20及び隆起部分50を形成する2つの成形型部分を含み得る。より長期間にわたって隆起部分50を選択的に重合化することによって、あるいは異なるモノマーを使用することによって、ヒドロゲルレンズ20とは異なる隆起部分50の特性を達成することが可能である。この結果として、隆起部分50は、例えば、硬質性、剛性、強度のより高いものとなり得る。
【0034】
ここで図2を参照すると、本開示の実施形態によるヒドロゲルレンズ20の隆起部分50の拡大斜視図が示されている。図2に示すように、隆起部分50は、ヒドロゲルレンズ20の周辺ゾーン40に沿って、半径方向と接線方向の両方に平滑に遷移している。隆起部分50の寸法及び形状は、ヒドロゲルレンズ20の寸法及び形状に適合するように設計され得る。
【0035】
ヒドロゲルレンズ20の隆起部分50は、ヒドロゲルレンズ20と眼の眼表面80との間に空洞70を生じ得る。隆起部分50によって形成された空洞70が図1及び2に示されている。本開示による幾つかの実施形態では、形成された空洞70は、ヒドロゲルレンズ20の厚さの少なくとも10%である厚さを有する。例えば、幾つかの実施形態では、空洞70は、眼表面80から0.065mmの高さをなす。
【0036】
隆起部分50は、眼表面100の近位側のレンズ20の表面に設置され得るので、ヒドロゲルレンズ20ではなく、隆起部分50が眼表面80と接触する。したがって、隆起部分50は、ヒドロゲルレンズ20が眼表面80に付着するのを防止し、空洞70内における酸素の透過と涙の流動を可能にしている。
【0037】
形成される空洞70の寸法及び形状は、隆起部分50の個数と、眼表面100の近位側のヒドロゲルレンズの表面積に対する、眼表面80上の隆起部分50の全表面積とによって決まる。換言すれば、眼表面80のうちの依然として露出する面積が大きくなるにつれて、より高度な酸素透過と涙の流動が、空洞70を通じて生じ得る。隆起部分50の寸法が大きすぎる場合、あるいは隆起部分が多すぎる場合、眼表面80を通じた酸素の透過と涙の流動の有効性が制限されることがある。したがって、隆起部分50の寸法及び個数は、酸素の透過と涙の流動で眼の健康を促進するために、眼表面の大きさを最大にするように選択されるべきである。本開示による幾つかの実施形態では、隆起部分50は、眼表面80の表面積の50%未満である全表面積を有する。
【0038】
本開示による眼用装置10は更に、相補的な眼球インサートレンズ(図示せず)を備えてもよい。眼球インサートレンズは、眼表面110の遠位側のヒドロゲルレンズの表面に配設されてもよい。眼表面110の遠位側のヒドロゲルレンズの表面は、隆起部分50を有するヒドロゲルレンズ20の表面の反対側にある。本開示による一実施形態では、眼球インサートレンズは、硬質なガス透過性レンズである。
【0039】
隆起部分50を備えたヒドロゲルレンズ20を有する眼用装置10のレンズ設計により、眼の中における酸素の透過及び涙の流動に悪影響を及ぼすことなく、眼球インサートレンズが使用され得る。隆起部分50は、酸素の透過と涙の流動が中で生じ得る空洞70を形成しているため、ヒドロゲルレンズ20を備えた抱合わせレンズ(pigging back lens)により、装用者は、レンズを層状にすること、又は、眼表面80若しくは角膜に損傷を与えるリスクを伴わずに眼球インサートレンズを使用することで、恩恵を受けることができる。眼球インサートレンズを使用する利点の1つには、装用者が、外傷又は手術の結果、フィット性又は感度が原因で、硬質なガス透過性コンタクトレンズに耐えられない場合でも、装用者が硬質なガス透過性コンタクトレンズの利点を享受できることを挙げることができる。
【0040】
本開示による幾つかの実施形態では、隆起部分50が径方向内向き及び外向きに十分に延びてヒドロゲルレンズ20の表面に平滑に溶け込み、眼との接触応力を最小にするように、隆起部分50は、眼球インサートレンズの周縁に沿って配列されてもよい。眼球インサートレンズは硬質であってもよいため、眼球インサートレンズは、眼表面80との間で、ほぼ破断しないシールを形成する。隆起部分50はこの例において、眼球インサートレンズの外周に沿って形成されている。このことは、眼球インサートレンズが、カップ状の又はアーチ状のフィットを生じる眼球球面曲率と比べて、より険しい又はより湾曲した球面曲率を有する場合に特に当てはまる。
【0041】
カップ状又はアーチ状のフィットは、眼の中心との接触がないこと、涙の液量がより多くなること、及びフィットするレンズ寸法がより広範に及ぶことなど、幾つかの利点を有する。したがって、隆起部分50を眼球インサートレンズの周縁に沿って配列することにより、装用者は、眼の上でアーチ状又はカップ状のフィットを有する眼球インサートレンズを使用することで、眼表面80の周りで眼球インサートレンズから不所望な又は不快な縁部シールを生じることなく、恩恵を受けることができる。隆起部分50は、前述したように正弦波曲線のパターンをなして、眼球インサートレンズの周縁に沿って配列されてもよい。
【0042】
加えて、最近では電子部品がコンタクトレンズに組み込まれている。例えば、これらの電子部品には半導体素子を挙げることができる。幾つかの事例で、動物の眼の上に置かれたコンタクトレンズに埋め込まれた半導体装置が示されている。また、どのようにしてそれらの部品をレンズ構造自体の中で多数の方式で通電及び活性化させ得るかについても述べられてきた。
【0043】
しかしながら、これら部品の寸法及び形状を含めた物理的な制約により、特定の眼用レンズにそれらを使用する難しさが示されてきた。更に、これらの部品をヒドロゲルレンズ20に組み込むことで、酸素の透過性が阻害されることになり、またヒドロゲルレンズ20内の部品の配置によっては、レンズ20を取り除くことが困難となる。そのような眼科学的な背景に対処する技術的な実施形態は、眼科の要求に対処するだけでなく、給電式電気装置の更に一般的な技術的余地に対する新規な実施形態をも包含する解決策を生み出すことを必要としている。
【0044】
本明細書で開示するレンズ設計では、能動レンズインサート、媒体インサート、及び機能性層インサートなどの構成要素をヒドロゲルレンズ20に組み込むことが可能となる。加えて、これらの構成要素は積み重ねられてもよい。これらの構成要素は、ヒドロゲルレンズ20によって支持されても、あるいはそれに代わってヒドロゲルレンズ20に封入されてもよい。図3及び図4は、ヒドロゲルレンズ20に封入された媒体インサート90を有する眼用装置10の例を示している。隆起部分50は、図3及び4の眼用装置10の横断面図では見られない。隆起部分50によって形成された空洞70が図3及び4に示されている。図3及び4から分かるように、形成される空洞70の形状は異なり得る。
【0045】
本開示の更なる特徴、利点、及び態様が、以下の詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲を検討することにより、説明され、あるいは明らかとなり得る。更に、理解されたいこととして、本開示の上記の要約及び以下の詳細な説明は例示的なものであり、請求する本開示の範囲を限定することなく更に説明するためのものである。
【0046】
〔実施の態様〕
(1) ヒドロゲルレンズを備える眼用装置であって、前記ヒドロゲルレンズの周辺ゾーンは、眼表面の近位側の前記レンズの表面上に複数の隆起部分を有する、眼用装置。
(2) 前記隆起部分が、前記ヒドロゲルレンズの光学ゾーンの外側にある、実施態様1に記載の眼用装置。
(3) 隣接する隆起部分同士の間に形成された空隙部分、を更に備える、実施態様1に記載の眼用装置。
(4) 前記空隙部分が、酸素の透過及び涙の流動を可能にする、実施態様3に記載の眼用装置。
(5) 前記隆起部分が、前記眼用装置が前記眼表面に不所望に付着することを防止する、実施態様1に記載の眼用装置。
【0047】
(6) 前記隆起部分が、前記眼表面と前記ヒドロゲルレンズとの間に空洞を生じるように構成される、実施態様1に記載の眼用装置。
(7) 酸素の透過及び涙の流動が前記空洞内で生じる、実施態様6に記載の眼用装置。
(8) 前記空洞が、前記ヒドロゲルレンズの厚さの少なくとも10%である厚さを有する、実施態様6に記載の眼用装置。
(9) 眼球インサート(ocular insert)を更に備える、実施態様1に記載の眼用装置。
(10) 前記隆起部分が、前記眼球インサートの周縁に沿って配列されている、実施態様9に記載の眼用装置。
【0048】
(11) 前記ヒドロゲルレンズが、前記眼球インサートを支持する、実施態様9に記載の眼用装置。
(12) 前記ヒドロゲルレンズが、前記眼球インサートを封入する、実施態様9に記載の眼用装置。
(13) 前記隆起部分が、ヒドロゲル材料を含む、実施態様1に記載の眼用装置。
(14) 前記隆起部分が、シリコンヒドロゲルを含む、実施態様13に記載の眼用装置。
(15) 前記レンズ及び前記隆起部分が、同じヒドロゲルを含む、実施態様1に記載の眼用装置。
【0049】
(16) 前記ヒドロゲルレンズが、シリコンヒドロゲルを含む、実施態様1に記載の眼用装置。
(17) 前記ヒドロゲルレンズ及び前記隆起部分が、異なる材料から形成される、実施態様1に記載の眼用装置。
(18) 前記隆起部分が、前記ヒドロゲルレンズよりも硬質である、実施態様1に記載の眼用装置。
(19) 前記ヒドロゲルレンズ及び前記隆起部分が、注型成形によって形成される、実施態様1に記載の眼用装置。
(20) 前記隆起部分が、前記眼表面の表面積の50%未満である全表面積を有する、実施態様1に記載の眼用装置。
図1
図2
図3
図4