(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366967
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】粉体の払い方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
A21C 9/04 20060101AFI20180723BHJP
A23P 20/12 20160101ALI20180723BHJP
A21D 8/10 20060101ALN20180723BHJP
【FI】
A21C9/04
A23P20/12
!A21D8/10
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-54316(P2014-54316)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-173655(P2015-173655A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115924
【氏名又は名称】レオン自動機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上野 貞男
(72)【発明者】
【氏名】大貫 豊純
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭51−034599(JP,U)
【文献】
米国特許第04214548(US,A)
【文献】
実開昭54−015097(JP,U)
【文献】
特開昭50−126870(JP,A)
【文献】
特開昭55−144838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 9/04
A23P 20/12
A21D 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段によって搬送方向へ搬送される食品生地の表面に付着した粉体を払う粉払い方法であって、搬送される前記食品生地に対し相対的に移動する弾性体プレートの外端縁に複数のスリットを備えることによって形成される複数のヘラ状部を備え、前記弾性体プレートを適宜間隔ごとに隣接して複数枚設けると共に、移動方向に対して前側の弾性体プレートがその後側に隣接した弾性体プレートの高さ寸法より短く設け、前記ヘラ状部を前記食品生地の表面に弾性変形により湾曲させて接触させることによって、前記食品生地の表面の粉を払うことを特徴とする粉払い方法。
【請求項2】
請求項1に記載の粉払い方法であって、前記弾性体プレートは、前記搬送方向に対して交差する方向に水平に備えられた回転軸の周方向に適宜間隔に備えられており、前記回転軸を中心として回転することにより食品生地の表面の粉を払うことを特徴とする粉払い方法。
【請求項3】
請求項1に記載の粉払い方法であって、前記弾性体プレートは、前記搬送手段の搬送面に対し一定の間隔を維持しながら所用の距離を移動することにより前記食品生地の表面の粉を払うことを特徴とする粉払い方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の粉払い方法であって、前記複数のスリットが隣接した前記弾性体プレート同士で互いに重なり合わない前記弾性体プレートで前記食品生地の表面の粉を払うことを特徴とする粉払い方法。
【請求項5】
食品生地の表面に付着した粉体を払う粉払い装置であって、搬送手段により搬送される前記食品生地に対し相対的に移動可能な弾性体プレートを備え、前記弾性プレートは前記生地と接触する外端縁に複数のスリットを備えることによって複数のヘラ状部を備え、前記弾性体プレートは適宜間隔ごとに隣接して複数枚設けられ、移動方向に対して前側の弾性体プレートがその後側に隣接した弾性体プレートの高さ寸法より短く設けられていることを特徴とする粉払い装置。
【請求項6】
請求項5に記載の粉払い装置であって、前記搬送手段による搬送方向に対して交差する方向の回転軸を水平に備え、この回転軸の周方向に適宜間隔に備えた前記弾性体プレートを前記回転軸の放射外方向に突出して備えていることを特徴とする粉払い装置。
【請求項7】
請求項5に記載の粉払い装置であって、前記弾性体プレートは、前記搬送手段による搬送方向と相対的に移動する搬送方向成分を含む移動軌跡に沿って移動可能であることを特徴とする粉払い装置。
【請求項8】
請求項5に記載の粉払い装置であって、前記弾性体プレートは、前記搬送手段による搬送方向に対して交差する方向に沿って相対的に移動する幅方向成分を含む移動軌跡に沿って移動可能であることを特徴とする粉払い装置。
【請求項9】
請求項5乃至請求項8の何れかに記載の粉払い装置であって、前記複数のスリットが隣接した前記弾性体プレート同士で互いに重なり合わないことを特徴とする粉払い装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品の表面に散布された粉体の払い方法とその装置に関する。詳細には、回転する弾性体プレートを連続搬送される帯状の食品生地の上面に接触させることによって、前記食品生地の上面に散布されている粉体を払って均し全面的に付着させる方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の表面全体に粉体を付着させる装置は従来知られている。例えば、特許文献1には食品を搬送路上に堆積させた粉体に潜らせて前記粉体を前記食品表面に付着させる技術が開示されている。特許文献1の装置は、前記食材の上面をなぞって食材上面に所定の粉粒体を付着させるとともに余分な粉体を除去する複数の揺動部材を備えている。
【0003】
特許文献2には、粉媒体テープを備えた回転ドラムを回転させることによって、食品表面に薄く粉体を付着させる技術が開示されている。特許文献2の装置においては、ローラに付着した粉体が粉媒体テープに接触して含着され、前記粉媒体テープが食品に触れることによって前記食品に付着する。
【0004】
特許文献3には、回転するブラシロールによって粉体を食品生地の表面から掃き均す技術が開示されている。特許文献3の装置においては、食品生地の上面に摺接するように回転可能なブラシロールが設けられている。このブラシロールは、ロール軸にナイロン毛を植毛した構成である。また、あらかじめ粉体供給機構によって帯状の食品生地の上面に散布された粉体は、回転ブラシの撓って戻る動きを受けて掃かれることにより、前記食品生地上に全面的に付着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3090548号公報
【特許文献2】特開昭62−259536号公報
【特許文献3】実開昭51−34599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される装置においては、粉体をあらかじめ堆積させた中に食品を潜らせるため、食品が粉体中に滞留して搬送が滞る可能性がある。加えて、堆積させた粉体には生地滓等の異物が混入し易く、混入した異物は発見し難い。また、生産中は食品の全体が包まれるだけの粉体を常に堆積させておかなければならないため、実際に食品に付着させる分量以上の粉体が必要となり、経済的効率の観点から好ましくない。
【0007】
特許文献2に開示される装置は、上に述べたような異物混入及び経済性の問題は部分的には解決されているものの、依然として課題は残る。特許文献2の装置において、食品への粉体への付着量は粉媒体テープの粉体の保持量に影響されるが、前記粉媒体テープは回転しているために粉体を一定して保持することは難しく、したがって食品への粉体付着量の調整も難しい。また、粉媒体テープはステンレス線によって回転ドラムに取り付けられているが、粉体は前記取り付け部の上方から供給されるため、前記取り付け部に粉体が溜まり、固まりとなって食品上に落下付着し食製品不良の原因となる可能性がある。
【0008】
特許文献3に開示される装置においては、あらかじめ食品生地上に粉体を必要量散布し、回転ブラシを用いて前記粉体を掃き均すという技術が開示されている。この技術は食品生地への粉体付着量の問題を解決するものの、衛生管理及び保守点検に多くの時間を割く必要がある。回転ブラシの隙間に溜まり固まった粉体、生地滓、あるいは回転ブラシから抜け落ちるブラシの毛そのものが異物混入の原因になりうるからである。また、特許文献3の装置は食品生地の高さ、厚みの変化に対応し難いという課題がある。粉体を食品生地上に全面的に付着させるためには、回転ブラシの特に先端部が粉体に接触する必要があるためである。食品生地の高さ、厚みが大きくなったとき、回転ブラシはその先端部(回転ブラシの外周部)ではなく、より根元に近い部分で生地と接触することになる。ブラシの根元に近くなるほどブラシの撓りは低減し、粉体を効果的に掃けなくなり、毛の隙間に粉が溜まりやすくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解消することを目的とする。本発明は搬送手段によって搬送方向へ搬送される食品生地の表面に付着した粉体を払う粉払い方法であって、搬送される前記食品生地に対し相対的に移動する弾性体プレートの外端縁に複数のスリットを備えることによって形成される複数のヘラ状部を
備え、前記弾性体プレートを適宜間隔ごとに隣接して複数枚設けると共に、移動方向に対して前側の弾性体プレートがその後側に隣接した弾性体プレートの高さ寸法より短く設け、前記ヘラ状部を前記食品生地の表面に弾性変形により湾曲させて接触させることによって、前記食品生地の表面の粉を払うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の方法において、前記弾性体プレートは前記搬送方向に対して交差する方向に水平に備えられた回転軸の周方向に適宜間隔に備えられており、前記回転軸を中心として回転することにより食品生地の表面の粉を払うことを特徴とする
【0011】
また、本発明の方法における前記弾性体プレートは、前記搬送手段の搬送面に対し一定の間隔を維持しながら所用の距離を移動することにより前記食品生地の表面の粉を払うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の方法においては
、前記複数のスリットが隣接した前記弾性体プレート同士で互いに重なり合わない前記弾性体プレート
で前記食品生地の表面の粉を払うことを特徴とする。前記弾性体プレートが、前記食品生地の粉を払うに際し、前側の弾性体プレートが後ろ側の弾性体プレートより軽度に前記食品生地に接することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は食品生地の表面に付着した粉体を払う粉払い装置であって、搬送手段により搬送される前記食品生地に対し相対的に移動可能な弾性体プレートを備え、前記弾性プレートは前記生地と接触する外端縁に複数のスリットを備えることによって複数のヘラ状部を備え
、前記弾性体プレートは適宜間隔ごとに隣接して複数枚設けられ、移動方向に対して前側の弾性体プレートがその後側に隣接した弾性体プレートの高さ寸法より短く設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の装置は前記搬送手段による搬送方向に対して交差する方向の回転軸を水平に備え、この回転軸の周方向に適宜間隔に備えた
前記弾性体プレートを前記回転軸の放射外方向に突出して
備えていることを特徴とする。
【0015】
また本発明の粉払い装置における前記弾性体プレートは、前記搬送手段による搬送方向と相対的に移動する搬送方向成分を含む移動軌跡に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の粉払い装置における前記弾性体プレートは、前記搬送手段による搬送方向に対して交差する方向に沿って相対的に移動する幅方向成分を含む移動軌跡に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の粉払い装置においては
、前記複数のスリットが隣接した前記弾性体プレート同士で互いに重なり合わないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、外縁端にヘラ状部を備えた弾性体プレートによって、あらかじめ帯状の生地の上に散布された粉体を払うため、粉体を生地上に全面的に付着させることが出来る。また、構成が簡単で保守点検や衛生管理などが比較的容易であり、異物混入の可能性を低減できる。また、弾性体プレートの湾曲変形によって生地を均すために、弾性体プレートの先端部に限らずヘラ状部の面部分が生地と接触しても同様の効果を奏する。したがって生地の大きさ、厚みに変化に左右されず一定の作用を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る粉払い装置の側面説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係る粉払い装置の斜視説明図である。
【
図3】本発明の第2の実施例に係る粉払い装置の側面説明図である。
【
図4】本発明の第3の実施例に係る粉払い装置の側面説明図である。
【
図5】本発明の第4の実施例に係る粉払い装置の説明図であり、
図4におけるX−X線の矢視を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を用いて本発明にかかる粉払い装置の実施例について説明する。なお、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0021】
本発明の第1の実施例について
図1及び
図2により説明する。粉払い装置1は、食品生地10に対して粉体11を付着させる装置である。なお、本発明における食品生地10とは、例えばシート状に延展されて連続搬送されるパン生地、ペストリー生地、クッキー生地あるいはマッシュポテト生地等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。粉体11は、小麦粉、砂糖、パン粉、アーモンドプードル、コーングリッツ等が挙げられるが、生産する製品に応じて適宜用いられる。
【0022】
粉払い装置1は、食品生地10を搬送方向Aに搬送する搬送手段2と、前記搬送手段2の上方に設けられた粉体散布装置3と、前記搬送手段2の上方かつ粉体散布装置3の搬送方向下流に回転可能に設けられ回転方向Rに回転する粉払い機構4とを備える。搬送手段2は本実施形態においては無端ベルトを用いたベルトコンベヤであり、公知の装置を用いているので詳細は省略する。また、粉体散布装置3も任意の装置を用いればよく、本実施形態では公知の装置を用いているので詳細は省略するが、例えばホッパ内に粉体11を貯留し、ホッパの底部に設けられたメッシュ状の開口から粉体11を落下供給させるものが例示できる。
【0023】
食品生地10は、
図2における右手より、図示はしないが任意の手段によって粉払い装置1の搬送手段2に供給される。供給された食品生地10は搬送方向Aに搬送され、前述の粉体散布装置3は前記食品生地10の上面に粉体11を散布する。メッシュ状の開口から散布された粉体は生地上でダマとなっている箇所や、散布がなされていない箇所が散見される。粉体11を散布された前記食品生地10はさらに、前記粉払い機構4の下方へと搬送される。
【0024】
前記粉払い機構4は、前記搬送手段2の搬送方向Aに対して交差する方向の回転軸41を水平に備え、回転軸41はその周方向にプレート挟持部42を持つ。本実施形態においてプレート挟持部42は周方向に等間隔で5つ設けられているが、この数は適宜定めればよく、この実施形態により本発明が限定されるものではない。前記プレート挟持部42はそれぞれ幅方向に弾性体プレート43を挟持している。本実施形態においては前記弾性体プレート43のその幅方向の長さが210ミリ、前記幅方向と直交する高さ方向の長さは90ミリである。また、前記弾性体プレート43の素材として厚さ0.7ミリのポリウレタン製の食品用ベルト素材を用いているが、この素材は適宜選定すれば良く、例えば他の化学的に合成されてなる弾性素材や帆布等を用いることも出来る。
【0025】
前記弾性体プレート43はその放射外縁部に複数のスリット44を備えることによって前記ヘラ状部45を備える。本実施例では前記スリット44の深さ、すなわち放射方向への長さは20ミリから50ミリ、前記スリット44の間隔は4ミリから12ミリと定めてある。本実施例における弾性体プレート43の材質を用いた場合、この寸法の範囲内に前記スリット44の長さ及び間隔を定めることにより、前記へラ状部45の弾性が最適となって食品生地10を傷めることなく粉体を払うことができる。しかしながら、ヘラ状部45の寸法は弾性体プレート42の素材の弾性に応じて適宜調整されるべきものである。また、弾性体プレート43の素材として表面に微細な凹凸の設けられたベルト素材を用いることにより、前記ヘラ状部45の粉体保持力を向上させることも可能である。
【0026】
前記粉払い機構4は、制御モータ(図示省略)に連動連結された前記回転軸41を回転制御することにより、前記弾性体プレート43を食品生地10との接触面において搬送方向Aと対向するように回転している(
図1、2矢印R参照)。したがって、前記弾性体プレート43の前記ヘラ状部44は前記搬送方向下流側の斜め上方から食品生地10に接触し、そのまま接触を保って前記搬送方向上流側へ移動した後、前記食品生地10の前記搬送方向上流側の斜め上方へと離れていく。なお、本実施例においては、回転軸41の回転速度は13rpmから20rpmの間に定められている。この速度の下限値を下回ると食品生地10に粉体11の払い漏れができ、上限値を上回ると粉体11が前記ヘラ状部44によって飛び散って作業環境が悪化するためである。また、回転軸41の回転速度を調節することにより、食品生地10上の同一の箇所を複数の弾性体プレート43が通過させることができるので、食品生地10上に付着される粉体11の量を調整することができる。しかしながら、これらの速度範囲は食品生地10の搬送速度に依存するものであり、適宜設定されるべきものである。
【0027】
前記ヘラ状部45は、前記食品生地10の上面に散布された粉体11を払い、前記食品生地10上に全面的に付着した状態にする。すなわち、前記ヘラ状部45が前記食品生地10と接触する際に、前記粉体11のダマとなっている箇所を押し広げ、前記生地10上の前記粉体11が散布されていない箇所に前記粉体11を付着させる。この時、前記ヘラ状部45は前記食品生地10の抵抗によって湾曲しながら、その湾曲部で前記粉体11をせき止め、前記粉体11は食品生地10に対して幅方向に均される。
【0028】
前記ヘラ状部45は前記弾性体プレート43にスリット44を入れて設けてあるために、前記ヘラ状部45が弾性プレート43から欠落することはなく、従来の回転ブラシのごとく粉体13を均す部材自体に由来する異物混入の可能性が低減できる。また、生地滓や粉体が固着することが比較的少なく、異物混入の可能性を低減できる。さらには、前記ヘラ状部45は食品生地10と相対的に摺動することによって粉体11を払うため、生地10の厚みの変化による前記ヘラ状部45の湾曲部の高さ位置に影響を受けず、一定した効果を得ることが可能である。また、複数のヘラ状部45を備えることにより、食品生地10表面の凹凸の変化にも対応できる。加えて、前記のごとく前記ヘラ状部45は前記粉体をその湾曲部で均しながら払うため、比較的少量の粉体11でも効率的に前記食品生地10に全面的に粉体11を付着させることが可能である。
【0029】
本発明の第1の実施の形態に係る搬送装置の説明は概ね上記のとおりであるが、これに限らず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。例えば、本実施例においては、粉払い機構4は弾性体プレート43を5枚備えているが、この数をより多く設けることも可能である。この場合、食品生地10が粉払い機構4の下方を通過する際に、同じ箇所を複数回均すことが可能であり、比較的多めの粉体11を均す必要があるときに有効である。また、前記回転軸41を断面が多角形状のシャフトとし、そのシャフト側面にそれぞれ弾性体プレート43をネジ等で固定しても良い。この場合、構成がより簡単であるため、保守点検等がより容易となる。
【0030】
また、各弾性体プレート43の前記ヘラ状部45を互いに重ならない構成としても良い。例えば、幅方向の長さが210ミリであり、側端部から5ミリの間隔でスリット44が設けられている前記弾性体プレートと、幅方向の長さが205ミリであり、側端部から5ミリの間隔でスリット44が設けられている弾性体プレートの2種のプレートを用意し、前記各プレート挟持部42に交互に挟持させる。この構成においては、ある弾性体プレートのヘラ状部45間の隙間から粉体11が漏れて食品生地10上で線状になってしまった場合も、その次の弾性体プレートのヘラ状部45によって払い均すことが可能である。
【0031】
また、シート状の生地食品10を連続供給する際は、生地食品10のシートの先端が粉払い機構4の下方を通過するときは粉払い機構4の回転方向を、弾性体プレート43が前記食品生地10との接触面において前記食品生地10の搬送方向と同一方向へ動く(
図1において時計回り)ように設けても良い。この場合、生地食品10のシートの先端部が粉払い機構4によって捲れ上がってしまうことを防止できる。前記シートの前記先端部が粉払い機構4の下方を通過した後、粉払い機構4の回転方向は逆方向(
図1において反時計回り)に変更されるものとする。
【0032】
次に、本発明の第2の実施例について
図3により説明する。本発明における第2の実施例は、第1の実施例に対し、粉払い装置1の弾性体プレート43の軌道を変更した構成である。第1の実施例の丸め成形装置1と同様な構成に関しては同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0033】
粉払い装置1は、食品生地10を搬送方向Aに搬送する搬送手段2と、前記搬送手段2の上方に設けられた粉体散布装置3と、前記搬送手段2の上方かつ粉体散布装置3の搬送方向下流に粉払い機構5とを備える。食品生地10は、
図2における右手より、図示はしないが任意の手段によって粉払い装置1の搬送手段2に供給される。供給された食品生地10は搬送方向Aに搬送され、前述の粉体散布装置3は前記食品生地10の上面に粉体11を散布する。メッシュ状の開口から散布された粉体11は生地上でダマとなっている箇所や、散布がなされていない箇所が散見される。粉体11を散布された前記食品生地10はさらに、前記粉払い機構5の下方へと搬送される。
【0034】
第2の実施例における粉払い装置1は、前記粉払い機構4を粉払い機5に変更した構成である。前記粉払い機構5は、前記搬送手段2の搬送方向Aに対して交差する方向の回転軸51A及び51Bを水平に備え、回転軸51A及び51Bには無端部材52が周回可能に掛けまわしてあり、前記無端部材52にはプレート挟持部53が備えられる。本実施例において前記無端部材52は帯状の無端ベルトを用い、この無端ベルトにネジなどの固定具でプレート挟持部53が固定されている。さらに、前記プレート挟持部53はそれぞれ幅方向に弾性体プレート54を挟持している。本実施形態においては前記弾性体プレート54の素材としてポリウレタン製の食品用ベルト素材を用いている。前記弾性体プレート54はその放射外縁部に複数のスリット55を備えることによって前記ヘラ状部56を備える。
【0035】
前記粉払い機構5は、制御モータ(図示省略)に駆動される回転軸51Aの回転により無端部材52を周回動させる。この際、前記弾性体プレート54の移動軌跡は、前記搬送手段による搬送方向に沿って相対的に平行移動する搬送方向成分Lを有することになる。前記弾性体プレート54は上方から前記搬送手段2に近接し、前記食品生地10と接触し、前記食品生地10と接した状態を保ったまま、前記搬送方向成分Lに沿って前記搬送方向Aと反対の方向へ一定の距離を平行移動し、その後前記食品生地10から離間する。
【0036】
前記弾性体プレート54の前記ヘラ状部56は、前記食品生地10の上面に散布された粉体11を払い、前記食品生地10上に全面的に付着した状態にする。すなわち、前記ヘラ状部56が前記食品生地10と接触する際に、前記粉体11のダマとなっている箇所を押し広げ、前記生地10上の前記粉体11が散布されていない箇所に前記粉体11を付着させる。この時、前記ヘラ状部45は前記食品生地10の抵抗によって湾曲しながら、その湾曲部で前記粉体11をせき止め、前記粉体11は食品生地10に対して幅方向に均される。
【0037】
本発明の第2の実施例においては、第1の実施例と同等の効果が見込める。すなわち、異物混入の可能性の低減、食品生地の厚みの変化及び表面の凹凸に対応容易であるという利点がある。加えて、前記ヘラ状部56が食品生地10との相対的な摺動距離が第1の実施例と比較して長いため、前述した粉体11のダマを押し広げかつせき止めて食品生地10に全面的に粉を払い均す効果が比較的高い。生地搬送速度との関係によって、前記粉払い機構5の回転数を上げても食品生地10を傷めにくいため、食品生地10の表面の同一箇所に対し何回払い均し動作を設けるか等の調整の幅が広い。
【0038】
本発明の第2の実施の形態に係る搬送装置の説明は概ね上記のとおりであるが、これに限らず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。例えば、本実施例ではプレート挟持部53は周方向に等間隔で6つ設けられているが、この数は適宜定めればよく、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、前記弾性体プレート53の素材やスリット54の長さ等は食品生地10に応じて適宜調整されるものである。また、本実施例においては粉払い機構5は回転軸51Aと51Bに無端部材52としてベルト部材を掛けまわした構成であるが、回転軸の数及び無端部材52の素材等は適宜調整されるものである。
【0039】
次に、本発明の第3の実施例について
図4及び
図5により説明する。本発明における第3の実施例は、第2の実施例に対し、粉払い装置1における粉払い機構の弾性体プレートの軌道を搬送方向に対し90度変更して上粉払い機構6とし、その下方に下粉払い機構7を設けた構成である。第2の実施例の粉払い装置1と同様な構成に関しては同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0040】
本実施例においては、あらかじめ搬送手段2の搬送面に粉体11を散布することによって前記食品生地10の下面にも粉体11が付着している。この際、搬送手段2と食品生地10が粘着しないように、比較的多くの粉体11が搬送手段2上に散布され、食品生地10の下面に付着する。粉体11を散布された前記食品生地10はさらに、前記上粉払い機構6の下方へと搬送される。
【0041】
前記上粉払い機構6は、前記搬送手段2の搬送方向Aと同方向の回転軸61A及び61Bを水平に備え、回転軸61A及び61Bには無端部材62が周回可能に掛けまわしてあり、前記無端部材62にはプレート挟持部63が備えられる。本実施例において前記無端部材62は無端ベルトを用い、この無端ベルトにネジでプレート挟持部63が等間隔で6箇所に固定されている。
【0042】
前記プレート挟持部63は複数枚の弾性体プレートを一組として挟持している。本実施例においては、前記前記プレート挟持部63はそれぞれ幅方向に弾性体プレート64A、64Bおよび64Cを一組として挟持する。前記弾性体プレート64A、64Bおよび64Cはそれぞれ高さ寸法が異なり、無端部材62の回転方向に対して前側より後側のほうが高く設けてある。
図5に即すると、弾性体プレート64Aより弾性体プレート64Bが高く弾性体プレート64Bより弾性体プレート64Cが高い。また、前記弾性体プレート64A、64Bおよび64Cの間には若干の隙間を設けてある。
【0043】
前記弾性体プレート64A、64Bおよび64Cはその放射外縁部にそれぞれ複数のスリット65A、65Bおよび65Cを備えることによってヘラ状部66A、66Bおよび66Cを備える。また、一組の前記弾性体プレート64A、64Bおよび64Cの各スリットは互いに重なり合わない。本実施例においては、前記弾性体プレート64Aおよび65Cは幅方向の長さが210ミリであり、側端部から5ミリの間隔でスリット65Aおよび65Cが設けられている。また、前記弾性体プレート64Bは幅方向の長さが205ミリであり、側端部から5ミリの間隔でスリット65Cが設けられている。前記プレート狭持部63は前記一組の弾性体プレートの幅方向の中心が一致するように挟持している。したがって、前記一組の弾性体プレートの進行方向に対して正面から見たとき、前記弾性体スリット65Aおよび65Cとスリット65Bは互い違いに設けられている。
【0044】
前記上粉払い機構6は、制御モータ(図示省略)に連動連結された回転軸61A及び61Bの回転により無端部材62を周回動させる。この際、前記弾性体プレート64の移動軌跡は、前記搬送手段2による搬送方向と交差する方向に相対的に移動する幅方向成分Wを有することになる。前記弾性体プレート64は上方から前記搬送手段2に近接し、前記食品生地10と接触し、前記食品生地10と接した状態を保ったまま、前記幅方向成分Wに沿って前記搬送方向Aと交差する方向へ一定の距離を移動した後、前記食品生地10から離間する。前記弾性体プレート64が食品生地10と摺接して移動する際、前記ヘラ状部65A、65B及び65Cはそれぞれ粉体11を払い均す。
【0045】
本実施例においては、前記上粉払い機構6の下方に下粉払い機構7を設けている。前記下粉払い機構7は、前記搬送手段2の搬送方向Aに対して交差する方向の回転軸71を水平に備えている。前記回転軸71は断面が六角形状のシャフトであり、そのシャフト側面にそれぞれ弾性体プレート72をネジ等で固定してあるが、この実施形態により本発明が限定されるものではない。例えば本発明の第1の実施例と同様の構成としても良い。前記弾性体プレート73はその放射外縁部に複数のスリット74を備えることによって前記ヘラ状部75を備える。
【0046】
第3の実施例における搬送手段2において下粉払い機構7が設けられている箇所は、無端状の丸ベルト8を間隔を空けて複数本回転軸にかけまわした構成としているが、公知の装置を用いているので詳細は省略する。前記ヘラ状部75の先端部の軌道は前記丸ベルト8の搬送面より上方を通過しており、前記ヘラ状部75は前記丸ベルト8同士の間隙から前記食品生地10の下面に接触し、食品生地10の下面に付着した必要以上の粉体11を払う。本発明はこの構成に限定されるものではなく、前記下粉払い機構7のヘラ状部75が前記食品生地10の下面に接することが出来るように設けられれば良い。
【0047】
本発明の第3の実施例の上粉払い機構6においては、第1及び第2の実施例と同等の効果が見込める。すなわち、異物混入の可能性の低減、食品生地の厚みの変化及び表面の凹凸に対応容易であるという利点がある。加えて、この時、前記ヘラ状部65A、65Bおよび65Cは前述の通り、三枚重ねられているので粉払い効果を比較的高く保つことが可能である。また、前記弾性体プレート64A、64Bおよび64Cの各スリットは互いに重なり合わないため、スリットに由来する払い漏らしを防ぐことが出来る。例えば、スリット65Aが開いて粉体11の払い漏れが生じても、後続のヘラ状部66Bが前記払い漏れを払うことが出来るので、粉体11が食品生地10上に線状に残ることがない。また、それぞれ高さ寸法が異なって設けられているので、食品生地10表面の凹凸に対応でき、払い漏れの可能性を低減できる。また、食品生地10の下面の粉を払う下粉払い機構7を備えているため、食品生地10の表面から不要な粉体11を払うことができる、より高品質な製品を生産することに寄与する。
【0048】
本発明の第3の実施の形態に係る搬送装置の説明は概ね上記のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上粉払い装置6の前記ヘラ状部65が食品生地10の上面と接触する位置の手前に、前記ヘラ状部65が当接自在な当接部材を設けても良い。このことにより、食品生地10の側面端部に前記ヘラ状部75が接触する時の衝撃を緩和することが出来、前記食品生地10の側面端部がめくれ上がる等の不具合を防ぐことが出来る。また、本実施例においては前記弾性体プレート64A、64Bおよび64Cの高さ寸法がそれぞれ異なっているか、本発明はこれに限定されるものではなく、前記弾性体プレート64A、64Bおよび64Cの高さ寸法は同じとしても良い。
【0049】
以上で本発明の主たる実施例を述べたが、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。例えば、食品生地10を饅頭等の半球状生地片として本技術を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 粉均し装置
2 搬送手段
3 粉体供給装置
4 粉払い機構
41 回転軸
42 プレート挟持部
43 弾性体プレート
44 スリット
45 ヘラ状部
10 食品生地
11 粉体