特許第6366970号(P6366970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366970
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】防食用電源装置
(51)【国際特許分類】
   C23F 13/02 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   C23F13/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-59922(P2014-59922)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-183223(P2015-183223A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591108710
【氏名又は名称】昌栄電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000107044
【氏名又は名称】ショーボンド建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126468
【弁理士】
【氏名又は名称】田久保 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】武藤 光夫
(72)【発明者】
【氏名】岡村 浩安
(72)【発明者】
【氏名】三村 典正
(72)【発明者】
【氏名】二木 有一
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−316850(JP,A)
【文献】 実開平02−083642(JP,U)
【文献】 特開平08−164778(JP,A)
【文献】 実開平03−103254(JP,U)
【文献】 米国特許第04136309(US,A)
【文献】 特開平07−286289(JP,A)
【文献】 特開平06−146030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 13/00−13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池を外部電源として、防食対象物に防食電流を供給する防食用電源装置において、
前記防食電流の設定電流値を設定する電流設定部と、
前記太陽電池から供給される入力電圧を制御し、前記設定電流値の前記防食電流を出力する電圧制御部と、
前記入力電圧を検出し、検出結果に応じて前記入力電圧を制御するための電圧制御信号を前記電圧制御部に出力する電圧検出部と、
を備え、
前記電圧検出部は、
前記入力電圧が閾値電圧以上の場合、前記電圧制御信号として前記入力電圧の制御を許可する信号を前記電圧制御部に出力し、
前記入力電圧が前記閾値電圧未満の場合、前記電圧制御信号として前記入力電圧の制御を停止する信号を前記電圧制御部に出力し、前記電圧制御部は、前記防食対象物への前記防食電流の出力を停止する
ことを特徴とする防食用電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の防食用電源装置において、
前記電圧制御部から出力される前記防食電流を検出し、前記防食電流の電流値を前記設定電流値に制御する防食電流制御信号を生成する制御信号生成部を備え、
前記電圧制御部は、前記防食電流制御信号に基づいて前記入力電圧を制御することを特徴とする防食用電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防食用電源装置において、
前記防食対象物から前記防食用電源装置への逆方向の電流の流れを阻止する電流阻止部を備えることを特徴とする防食用電源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の防食用電源装置において、
前記電流設定部は、可変抵抗器であることを特徴とする防食用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を外部電源として、防食対象物に防食電流を供給する防食用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防食対象物に直流電流を流して腐食電流を打ち消すことにより、防食対象物である金属の腐食を防止する電気防食法が知られている。電気防食法には、直流電流を供給する外部電源として太陽電池を利用した外部電源方式がある(特許文献1、2)。太陽電池は、商用電源の引き込みが困難な場所に対応可能である。また、太陽電池は、蓄電池を利用する場合と比較すると、電池交換等のメンテナンスが不要となる利点を有する。しかしながら、太陽電池には、天候によっては、安定した直流電流を供給できず、また、夜間に発電できないという不具合がある。
【0003】
特許文献1には、対地電位の時間的推移が緩慢な防食対象物の場合、太陽電池から防食電流を断続に供給しても防食が可能であることが開示されている。また、特許文献2には、一日当たり3〜9時間、2〜50mA/mの電流密度の防食電流を防食対象物に供給することで、電気防食を有効に行えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−286289号公報
【特許文献2】特開2002−115085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、いずれの先行技術も、太陽電池から供給される入力電圧が所定値以下になった場合の対策については、何ら開示していない。入力電圧が所定値以下になると、電源装置は動作が不安定になり、防食電流を適切に制御できなくなるおそれがある。所望の防食電流が供給されないと、防食対象物の防食が有効に行われない。また、防食対象物に供給される防食電流が過少だと、防食対象物から電源装置に逆方向の電流が流れ、防食対象物の腐食が進行するおそれがある。一方、防食対象物に供給される防食電流が過剰だと、過防食により水素が発生し、防食対象物が損壊するおそれがある。
【0006】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであって、防食対象物に安定した防食電流を供給できる防食用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る防食用電源装置は、太陽電池を外部電源として、防食対象物に防食電流を供給する防食用電源装置において、前記防食電流の設定電流値を設定する電流設定部と、前記太陽電池から供給される入力電圧を制御し、前記設定電流値の前記防食電流を出力する電圧制御部と、前記入力電圧を検出し、検出結果に応じて前記入力電圧を制御するための電圧制御信号を前記電圧制御部に出力する電圧検出部と、を備え、前記電圧検出部は、前記入力電圧が閾値電圧以上の場合、前記電圧制御信号として前記入力電圧の制御を許可する信号を前記電圧制御部に出力し、前記入力電圧が前記閾値電圧未満の場合、前記電圧制御信号として前記入力電圧の制御を停止する信号を前記電圧制御部に出力し、前記電圧制御部は、前記防食対象物への前記防食電流の出力を停止することを特徴とする。
【0008】
前記防食用電源装置において、前記電圧制御部から出力される前記防食電流を検出し、前記防食電流の電流値を前記設定電流値に制御する防食電流制御信号を生成する制御信号生成部を備え、前記電圧制御部は、前記防食電流制御信号に基づいて前記入力電圧を制御することを特徴とする。
【0009】
前記防食用電源装置において、前記防食対象物から前記防食用電源装置への逆方向の電流の流れを阻止する電流阻止部を備えることを特徴とする。
【0010】
前記防食用電源装置において、前記電流設定部は、可変抵抗器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防食用電源装置では、太陽電池から供給される入力電圧が閾値電圧以上の場合、電圧制御部が入力電圧を設定電流値に従って制御するため、所望の防食電流が防食対象物に供給される。また、入力電圧が閾値電圧未満の場合、電圧制御部が入力電圧の制御を停止するため、不適切な防食電流が防食対象物に供給されるのを防ぐことができる。従って、防食対象物には、安定した防食電流が供給され、防食対象物の腐食が防止される。
【0012】
また、本発明の防食用電源装置は、防食対象物に供給される防食電流を検出し、防食電流制御信号を生成して電圧制御部を制御するため、所望の防食電流を防食対象物に供給できる。
【0013】
また、本発明の防食用電源装置は、防食対象物から防食用電源装置への逆方向の電流の流れを電流阻止部により阻止するため、逆方向の電流による防食対象物の腐食が進行する事態を回避できる。
【0014】
また、本発明の防食用電源装置は、可変抵抗器を用いて防食電流の設定電流値を容易に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の防食用電源装置の全体図である。
図2】本実施形態の防食用電源装置の詳細なブロック図である。
図3】本実施形態の防食用電源装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
<防食用電源装置10の構成の説明>
図1は、本実施形態の防食用電源装置10の全体図である。防食用電源装置10には、外部電源である太陽電池12と、防食電流を供給する防食対象物14とが接続される。防食対象物14は、例えば、鉄筋16により補強されるコンクリート18である。コンクリート18の表面には、陽極20が配置される。防食用電源装置10は、鉄筋16を陰極とし、陽極20からコンクリート18を介して鉄筋16に防食電流を供給する。
【0018】
図2は、本実施形態の防食用電源装置10の詳細なブロック図である。防食用電源装置10は、ブレーカ22a、22b、バリスタ24、入力フィルタ26、突入電流制限部28、電圧制御部30、パルス幅制御信号生成部32(制御信号生成部)、電流阻止部34、バリスタ36、電圧検出部38、可変抵抗器40(電流設定部)及び電流検出器42を備える。太陽電池12は、ブレーカ22a、22bに接続される。
【0019】
ブレーカ22a、22bは、防食用電源装置10への過電流の流入を阻止する遮断器である。ブレーカ22a、22bは、バリスタ24に接続される。バリスタ24は、防食用電源装置10を高電圧から保護する素子である。バリスタ24は、入力フィルタ26に接続される。入力フィルタ26は、内外のノイズを除去するフィルタである。外部からのノイズとして、例えば、雷等によって発生するノイズがある。内部からのノイズとして、例えば、電圧制御部30のスイッチングによって発生するノイズがある。入力フィルタ26は、突入電流制限部28に接続される。突入電流制限部28は、例えば、ブレーカ22a、22bをオン、オフさせたときに生じる大電流を制限する回路である。突入電流制限部28は、電圧制御部30に接続される。
【0020】
電圧制御部30は、太陽電池12から供給される入力電圧Vinを制御し、設定電流値Isに制御された防食電流Iを出力する回路である。ここで、設定電流値Isは、防食対象物14の防食に適した所望の防食電流Iの電流値である。設定電流値Isは、防食に適した電流値として、0.0〜1.0Aの範囲で設定される。
【0021】
電圧制御部30は、パルス信号生成部44及びスイッチング素子46を備える。パルス信号生成部44は、電圧制御信号VCS、パルス幅制御信号PCSに基づき、パルス幅変調されたパルス信号PSを生成する回路である。
【0022】
スイッチング素子46は、パルス信号PSに基づき、入力電圧VinをPWM制御して防食電流Iを出力する素子である。電圧制御部30は、電流阻止部34に接続される。
【0023】
電流阻止部34は、防食対象物14から防食用電源装置10への逆方向の電流の流れを阻止する回路である。電流阻止部34は、例えば、防食対象物14から電圧制御部30へ向かう電流の流れを阻止するダイオードである。電流阻止部34は、バリスタ36に接続される。
【0024】
バリスタ36は、防食用電源装置10を高電圧から保護する素子である。バリスタ36は、防食対象物14に接続される。
【0025】
パルス幅制御信号生成部32は、パルス幅制御信号PCS(防食電流制御信号)を生成する回路である。ここで、パルス幅制御信号PCSは、電流検出器42により検出された防食電流Iの電流値が設定電流値Isとなるようにパルス信号PSのパルス幅を制御するための制御信号である。パルス幅制御信号生成部32には、可変抵抗器40及び電流検出器42が接続される。
【0026】
可変抵抗器40は、設定電流値Isを設定する抵抗器である。電流検出器42は、電圧制御部30から出力される防食電流Iの電流値を検出する検出器である。パルス幅制御信号生成部32は、パルス信号生成部44に接続される。
【0027】
電圧検出部38は、太陽電池12から供給される入力電圧Vinを検出して閾値電圧Vthと比較し、電圧制御信号VCSを出力する回路である。ここで、電圧制御信号VCSは、電圧検出部38が検出した入力電圧Vinの検出結果に応じて、電圧制御部30における入力電圧Vinを制御するための制御信号である。電圧制御信号VCSは、電圧制御部30における入力電圧Vinの制御を許可するH信号と、入力電圧Vinの制御を停止するL信号とを備える。電圧検出部38は、パルス信号生成部44に接続される。
【0028】
<防食用電源装置10の動作の説明>
次に、防食用電源装置10の動作について説明する。図3は、本実施形態の防食用電源装置10のフローチャートである。
【0029】
防食用電源装置10の陽極側は、防食対象物14に配置された陽極20に接続される。防食用電源装置10の陰極側は、防食対象物14の鉄筋16に接続される。
【0030】
(1)通常の処理
作業者は、可変抵抗器40を調整し、設定電流値Isをパルス幅制御信号生成部32に設定する(ステップS1)。この場合、作業者は、例えば、電圧制御部30から出力される防食電流Iを電流検出器42により検出し、防食電流Iが所望の電流値となるように可変抵抗器40を調整して設定電流値Isを設定できる。パルス幅制御信号生成部32は、パルス幅制御信号PCSを生成し、パルス信号生成部44に出力する。
【0031】
太陽電池12から供給された入力電圧Vinは、ブレーカ22a、22bを介して入力フィルタ26に供給される。入力フィルタ26の前段のバリスタ24は、入力電圧Vinが高くなると、抵抗値が小さくなるため、入力フィルタ26への高電圧の入力を遮断できる。入力電圧Vinは、入力フィルタ26でノイズが除去され、突入電流制限部28を介して、電圧制御部30に供給される。
【0032】
電圧検出部38は、入力電圧Vinを検出し、閾値電圧Vthと比較する(ステップS2)。入力電圧Vinが閾値電圧Vth以上の場合(ステップS2、YES)、電圧検出部38は、入力電圧Vinの制御を許可する電圧制御信号VCS(H信号)をパルス信号生成部44に出力する(ステップS3)。
【0033】
パルス信号生成部44は、電圧制御信号VCS(H信号)が入力されると、パルス信号PSの生成が可能となる。パルス信号生成部44は、パルス幅制御信号生成部32から供給されるパルス幅制御信号PCSに基づき、パルス幅が制御されたパルス信号PSを生成し、スイッチング素子46に出力する。スイッチング素子46は、パルス信号PSに基づいて入力電圧VinをPWM制御し、設定電流値Isに制御された防食電流Iを出力する(ステップS4)。
【0034】
防食電流Iは、電流阻止部34を介して防食対象物14に供給される(ステップS5)。防食対象物14には、陽極20から鉄筋16に防食電流Iが供給され、腐食電流が打ち消されて金属の腐食が防止される。
【0035】
(2)防食電流Iの出力が停止される場合の処理
天候の悪化や日没等により光量が減少すると、電圧制御部30に入力する入力電圧Vinが低下する。電圧検出部38は、入力電圧Vinを検出し、閾値電圧Vthと比較する(ステップS2)。入力電圧Vinが閾値電圧Vth未満の場合(ステップS2、NO)、電圧検出部38は、入力電圧Vinの制御を停止する電圧制御信号VCS(L信号)をパルス信号生成部44に出力する(ステップS6)。
【0036】
電圧制御信号VCS(L信号)が入力されると、パルス信号生成部44は、パルス信号PSを生成しない。従って、防食電流Iは、電圧制御部30から出力されないため、防食対象物14に防食電流Iが供給されない(ステップS7)。
【0037】
電圧制御部30では、低い入力電圧Vinに基づいた防食電流Iは出力されないため、防食対象物14に不適切な防食電流Iが供給されるのを防ぐことができる。例えば、防食対象物14には、不安定な電圧制御による過剰な防食電流Iが供給されないため、防食対象物14が過防食されない。
【0038】
(3)防食電流Iが変動する場合の処理
次に、電圧制御部30から出力される防食電流Iが変動する場合の処理について説明する。防食電流Iは、防食対象物14の負荷変動、防食用電源装置10の温度変化等により変動する場合がある。
【0039】
電流検出器42は、防食電流Iを検出する。パルス幅制御信号生成部32は、検出された防食電流Iの電流値と、可変抵抗器40により設定された設定電流値Isとを比較する。パルス幅制御信号生成部32は、防食電流Iが設定電流値Isよりも増加すると判定した場合、防食電流Iを減少させるパルス幅制御信号PCSを生成し、パルス信号生成部44に出力する。パルス信号生成部44は、パルス幅制御信号PCSに基づき、パルス幅が狭くなるように制御されたパルス信号PSを生成し、スイッチング素子46に出力する。スイッチング素子46は、パルス信号PSに基づいて入力電圧VinをPWM制御し、減少するように制御された防食電流Iを出力する。
【0040】
また、パルス幅制御信号生成部32は、防食電流Iが設定電流値Isよりも減少すると判定した場合、防食電流Iを増加させるパルス幅制御信号PCSを生成し、パルス信号生成部44に出力する。パルス信号生成部44は、パルス幅制御信号PCSに基づき、パルス幅が広くなるように制御されたパルス信号PSを生成し、スイッチング素子46に出力する。スイッチング素子46は、パルス信号PSに基づいて入力電圧VinをPWM制御し、増加するように制御された防食電流Iを出力する。
【0041】
なお、パルス幅制御信号生成部32は、検出された防食電流Iと設定電流値Isとの差分値を算出し、差分値に応じてパルス幅を制御するパルス幅制御信号PCSを生成できる。また、パルス幅制御信号生成部32は、所定時間の前後に検出された防食電流Iの増加率又は減少率を算出し、増加率又は減少率に応じてパルス幅を制御するパルス幅制御信号PCSを生成してもよい。
【0042】
(4)出力電圧Voutが変動する場合の処理
電圧制御部30の出力電圧Voutが変動する場合の処理について説明する。出力電圧Voutは、防食電流Iと同様に、防食対象物14の負荷変動、防食用電源装置10の温度変化等により変動する場合がある。
【0043】
出力電圧Voutは、パルス信号生成部44に供給される。パルス信号生成部44は、入力された出力電圧Voutと、設定電流値Isの防食電流Iが出力される場合の電圧値Vsとを比較する。パルス信号生成部44は、出力電圧Voutが電圧値Vsよりも増加すると判定した場合、パルス幅が狭くなるように制御されたパルス信号PSを生成し、スイッチング素子46に出力する。スイッチング素子46は、パルス信号PSに基づいて入力電圧VinをPWM制御し、減少するように制御された出力電圧Voutを出力する。
【0044】
また、パルス信号生成部44は、出力電圧Voutが電圧値Vsよりも減少すると判定した場合、パルス幅が広くなるように制御されたパルス信号PSを生成し、スイッチング素子46に出力する。スイッチング素子46は、パルス信号PSに基づいて入力電圧VinをPWM制御し、増加するように制御された出力電圧Voutを出力する。
【0045】
ここで、パルス信号生成部44は、出力電圧Voutと電圧値Vsとの差分値を算出し、差分値に応じてパルス信号PSのパルス幅を制御できる。また、パルス信号生成部44は、所定時間の前後で検出された出力電圧Voutから増加率又は減少率を算出し、増加率又は減少率に応じてパルス信号PSのパルス幅を制御してもよい。
【0046】
また、パルス信号生成部44は、防食電流Iの変動と出力電圧Voutの変動とを同時に検出した場合、防食電流Iの変動による制御を優先する。すなわち、パルス信号生成部44は、パルス幅制御信号生成部32からパルス幅制御信号PCSが入力されるとともに、出力電圧Voutの変動を検出した場合には、防食電流Iの変動に対するパルス信号PSの制御を優先する。
【0047】
また、電圧制御部30から防食対象物14に防食電流Iが供給されない場合、防食用電源装置10の電位が防食対象物14の電位よりも低くなることがある。この場合、防食対象物14から防食用電源装置10に逆方向の電流が流れ、防食対象物14の腐食が進行するおそれがある。しかしながら、電圧制御部30と防食対象物14との間には、電流阻止部34が接続されているため、防食対象物14からの逆方向の電流の流れは、電流阻止部34によって阻止される。この結果、逆方向の電流により防食対象物14の腐食が進行する事態が回避される。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。
【0049】
本実施形態では、設定電流値Isは、防食電流Iを電流検出器42で検出し、その電流値が所望の設定電流値Isとなるように、可変抵抗器40で調整して設定されるものとしたが、設定電流値Isを設定できるのであれば、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、可変抵抗器40の抵抗値と対応する防食電流Iの電流値との関係を予め測定することで決定しておけば、防食電流Iを検出することなく、抵抗値を調整するだけで所望の設定電流値Isを設定できる。
【0050】
また、本実施形態では、陽極20は、コンクリート18の表面に配置されるものとしたが、防食対象物14を防食できるのであれば、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、陽極20は、コンクリート18の内部に埋設されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…防食用電源装置
12…太陽電池
14…防食対象物
16…鉄筋
18…コンクリート
20…陽極
22a、22b…ブレーカ
24、36…バリスタ
26…入力フィルタ
28…突入電流制限部
30…電圧制御部
32…パルス幅制御信号生成部
34…電流阻止部
38…電圧検出部
40…可変抵抗器
42…電流検出器
44…パルス信号生成部
46…スイッチング素子
図1
図2
図3