(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油圧機器が搭載された自動車では、燃費向上のため、油圧機器の駆動損失の低減が望まれている。
【0007】
シールリングは、油圧機器の駆動時に、ハウジングやシャフトに対して相対的に回転する。このため、油圧機器には、シールリングとハウジングとの間の摩擦力や、シールリングとシャフトとの間の摩擦力による駆動損失である摩擦損失(フリクションロス)が生じる。したがって、シールリングは、油圧機器の摩擦損失を低減するために、高い摺動特性を有することが好ましい。
【0008】
しかしながら、高い摺動特性を有する材料、つまり摩擦係数の低い材料では、充分な弾性が得られない場合がある。すなわち、このような材料で形成されたシールリングは、シャフトへの装着の際に、弾性限界を超えて大きく引き伸ばされると、塑性変形して元の径に戻らなくなる場合がある。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、シャフトに装着されるリングの変形を小さく抑えることが可能なリング装着治具、リング装着方法、及びシャフトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係るリング装着治具は、大径部と、小径部と、接続部とを具備する。
上記大径部は、第1中心軸を有する。
上記小径部は、上記第1中心軸に対して偏心された第2中心軸を有し、上記大径部より小径である。
上記接続部は、上記大径部と上記小径部との間にあり、上記小径部から上記大径部に向けて傾斜する傾斜面を有する。
【0011】
このリング装着治具を用いることにより、リングをシャフトの溝部に装着する際のリングの変形を小さく抑えることができる。したがって、このリング装着治具を用いてリングをシャフトの溝部に装着することにより、リングの塑性変形を防止することができる。
【0012】
上記接続部は、上記小径部から上記大径部に向けて上記第1中心軸に平行に延びる平行部を更に有してもよい。
上記接続部は、上記小径部から上記大径部に向けて連続的に径が大きくなっていてもよい。
この構成により、リングは、接続部上を摺動し、小径部上から大径部上にスムーズに案内されるようになる。
【0013】
上記小径部は上記第2中心軸に沿って延びていてもよい。
この構成により、小径部に複数のリングを保持可能となるため、リングを効率的に装着可能となる。
【0014】
本発明の一形態に係るリング装着方法は、シャフトの中心軸方向の端部に設けられ、上記シャフトの外周面の全周にわたって形成された溝部に、リングを装着可能なように構成される。
上記リング装着方法では、リング装着治具が用意される。上記リング装着治具は、大径部と、小径部と、接続部とを具備する。上記大径部は、第1中心軸を有し、前記外周面と同径に形成されている。上記小径部は、前記第1中心軸に対して偏心方向に偏心された第2中心軸を有し、前記大径部より小径である。上記接続部は、前記大径部と前記小径部との間にあり、前記小径部から前記大径部に向けて傾斜する傾斜面を有する。
前記第1中心軸が前記中心軸と一致させられ、前記大径部が前記端部に接続させられて上記リング装着治具が配置される。
前記リング装着治具が配置された後に、前記第2中心軸から前記偏心方向にある前記小径部上の位置に配置された前記リングの第1部分が、前記接続部上を摺動させられて、前記溝部に係合させられる。
前記第1部分が前記溝部に係合させられた後に、前記リングの前記第1部分以外の第2部分が、前記第1部分に近い位置から順次、前記傾斜面上を摺動させられて、前記溝部に係合させられる。
【0015】
本発明の一形態に係るシャフトの製造方法では、シャフトの中心軸方向の端部に設けられ、上記シャフトの外周面の全周にわたって形成された溝部に、リングが装着される。
上記シャフトの製造方法では、リング装着治具が用意される。上記リング装着治具は、大径部と、小径部と、接続部とを具備する。上記大径部は、第1中心軸を有し、前記外周面と同径に形成されている。上記小径部は、前記第1中心軸に対して偏心方向に偏心された第2中心軸を有し、前記大径部より小径である。上記接続部は、前記大径部と前記小径部との間にあり、前記小径部から前記大径部に向けて傾斜する傾斜面を有する。
前記第1中心軸が前記中心軸と一致させられ、前記大径部が前記端部に接続させられて上記リング装着治具が配置される。
前記リング装着治具が配置された後に、前記第2中心軸から前記偏心方向にある前記小径部上の位置に配置された前記リングの第1部分が、前記接続部上を摺動させられて、前記溝部に係合させられる。
前記第1部分が前記溝部に係合させられた後に、前記リングの前記第1部分以外の第2部分が、前記第1部分に近い位置から順次、前記傾斜面上を摺動させられて、前記溝部に係合させられる。
【0016】
これらの構成により、リングをシャフトの溝部に装着する際のリングの変形を小さく抑えることができる。したがって、このリング装着治具を用いてリングをシャフトの溝部に装着することにより、リングの塑性変形を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
シャフトに装着されるリングの変形を小さく抑えることが可能なリング装着治具、リング装着方法、及びシャフトの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0020】
[シャフト100及びシールリング200]
(シャフト100)
図1A及び
図1Bは本発明を適用可能なシャフト100を示す。
図1Aはシャフト100の側面図であり、
図1Bはシャフト100の平面図である。シャフト100は、シールリング200(後述)が装着される前のシャフト本体として構成される。
【0021】
シャフト100は、典型的には、自動車における油圧式の自動変速機用のシャフトである。しかし、本発明を適用可能なシャフト100は、下記の構成を有していれば、その用途やサイズなどは限定されない。
【0022】
シャフト100は、Y軸に平行な中心軸C100を有する円柱状の部品である。シャフト100は、本体部101と、本体部101と等しい外径の係止部103と、本体部101と係止部103との間に設けられる溝部102とを具備する。
【0023】
溝部102は、シャフト100の外周面の全周にわたって、シャフト100の外周面から凹むように形成されている。つまり、溝部102の外径は、本体部101及び係止部103の外径よりも小さい。溝部102は、シールリング200が装着されるための装着部として構成される。
【0024】
溝部102は、シャフト100のY軸方向端部に寄せて設けられるため、係止部103のY軸方向の肉厚は薄くなる。係止部103は、溝部102に装着されたシールリング200を係止するように作用する。つまり、係止部103は、シールリング200が溝部102からY軸方向に外れないように、シールリング200を本体部101との間に挟む。
【0025】
(シールリング200)
図2A及び
図2Bは、シャフト100に対応する、本発明を適用可能なシールリング200の一例を示す。
図2Aはシールリング200の平面図であり、
図2Bはシールリング200の
図2AのA−A'線に沿った断面図である。シールリング200は、シャフト100の溝部102に装着可能であるエンドレス構造(合口を設けない構造)のリングであればよく、特定の構成に限定されない。
【0026】
シールリング200は、シャフト100の構成に応じて形成される、シャフト100用の部品である。シールリング200は、樹脂リング210と、コイルエキスパンダ220とを具備する。樹脂リング210及びコイルエキスパンダ220はいずれもリング状に形成されている。
【0027】
樹脂リング210には、その内周面の全周にわたって、半円形状の溝底を有するU字形状に形成された内溝部211を有する。コイルエキスパンダ220は、樹脂リング210の内周側から、樹脂リング210の内溝部211内に嵌め込まれている。
【0028】
内溝部211内のコイルエキスパンダ220は、樹脂リング210に張力を付与して、樹脂リング210を補強する。より詳細には、コイルエキスパンダ220は、内溝部211の溝底を外周側に押圧することにより、樹脂リング210のリング形状を維持するように作用する。
【0029】
このように、シールリング200では、樹脂リング210及びコイルエキスパンダ220が共働することにより、弾性を有し、かつ、リング形状が損なわれにくい構成が実現されている。
【0030】
樹脂リング210を形成する材料は、シャフト100の駆動環境などにより適宜決定可能である。シールリング200の摩擦損失を低減するためには、シールリング200を形成する材料は摺動特性に優れることが好ましい。また、シャフト100は駆動時に高温になるため、シールリング200を形成する材料は耐熱性に優れることが好ましい。
【0031】
摺動特性及び耐熱性に優れる樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)が挙げられる。
【0032】
また、樹脂リング210を形成する樹脂材料は、複数種類の樹脂材料が複合化された複合材料であってもよく、樹脂材料をカーボンや炭素繊維などによって強化したいわゆるエンジニアリングプラスチックであってもよい。
【0033】
コイルエキスパンダ220は、樹脂リング210に対して張力を付与可能な材料により形成される。このような材料としては、例えば、炭素鋼線(SWP−A)、シリコンクロム鋼オイルテンパ線(SWOSC−V)や、オーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)が挙げられる。
【0034】
図3は、シールリング200が装着されたシャフト100の側面図である。シールリング200は、シャフト100の溝部102に良好に嵌合可能となるように、シャフト100の溝部102の外径とほぼ等しい内径を有する。したがって、シールリング200の内径は、シャフト100の本体部101及び係止部103の外径よりも小さい。
【0035】
ところが、シールリング200は、溝部102よりもY軸方向手前にある係止部103を乗り越えなければ溝部102に到達することができない。したがって、シールリング200が溝部102に装着される際に、シールリング200は、係止部103を乗り超えることが可能なように、その内径が大きくなるように引き伸ばされる。
【0036】
なお、
図2Cに示すように、シールリング200は、樹脂リング210に溝部が形成されておらず、コイルエキスパンダ220を含まない構成であっても勿論構わない。
【0037】
(本発明に関連するリング装着治具300)
図4は、本発明に関連するリング装着治具300の側面図である。リング装着治具300は、シャフト100及びシールリング200に応じた構成を有し、シールリング200をシャフト100の溝部102に装着するための治具として構成される。
【0038】
リング装着治具300は、小径部310と、接続部320と、大径部330とを具備する。小径部310、接続部320、及び大径部330は、Y軸に平行な共通の中心軸を有し、Y軸方向に並んでいる。小径部310及び大径部330は円柱状であり、接続部320は円錐台状である。
【0039】
小径部310は、シールリング200の内径と同等か、シールリング200の内径よりやや小さい外径の外周面311を有する。大径部330は、シャフト100の係止部103と同等の外径の外周面331を有する。接続部320は、小径部310と大径部330との間に設けられ、外周面311と外周面331とを接続する外周面321を有する。
【0040】
接続部320の外周面321は、小径部310の外周面311に接続する第1の端部321aが外周面311と一致し、大径部330の外周面331に接続する第2の端部321bが外周面331と一致するように構成されている。接続部320の外周面321は、第1の端部321aから第2の端部321bに向けて連続的に外径が大きくなるテーパ状の傾斜面として構成される。
【0041】
このように、リング装着治具300では、接続部320の外周面321が、外径の異なる小径部310の外周面311と大径部330の外周面331とを段差無く接続している。
【0042】
図5A及び
図5Bは、リング装着治具300を用いてシールリング200をシャフト100の溝部102に装着する過程を示す側面図である。
【0043】
まず、
図5Aに示すように、リング装着治具300の小径部310の外周面311にシールリング200が取り付けられ、シールリング200が小径部310の外周面311によって保持される。そして、大径部330の外周面331と、シャフト100の係止部103の外周面とが一致するように、リング装着治具300がシャフト100に接続される。
【0044】
小径部310の外周面311に取り付けられたシールリング200は、リング装着治具300の外周面311,321,331に沿ってY軸方向に摺動させられる。接続部320の外周面321の外径は小径部310から大径部330に向けて徐々に大きくなるため、シールリング200は、接続部320の外周面321を摺動している間に、徐々に引き伸ばされる。
【0045】
図5Bに示すように、シールリング200が大径部330の外周面331に到達すると、シールリング200の内径は、大径部330の外径と等しく、つまりシャフト100の係止部103の外径と等しくなっている。したがって、大径部330の外周面331に到達したシールリング200は、大径部330の外周面331に沿ってY軸方向に更に摺動させられると、そのままシャフト100の係止部103に進入する。
【0046】
シャフト100の係止部103に進入したシールリング200は、係止部103の外周面に沿ってY軸方向に更に摺動させられると、溝部102に到達する。これにより、リング装着治具300を用いたシールリング200のシャフト100の溝部102への装着が完了する。
【0047】
ところが、シールリング200は、シールリング200の内径がシャフト100の係止部103の外径と等しくなるまで引き伸ばされると、弾性限界を超え、塑性変形してしまう場合がある。この場合、シールリング200は、溝部102に到達しても、弾性回復を起こさないため元の内径に戻らない。
【0048】
そのため、リング装着治具300を用いて溝部102に到達したシールリング200は、溝部102に対して緩んだ状態となり、溝部102内に適切に収まらない場合がある。このようなシールリング200では、シャフト100の溝部102との間に生じる隙間により、オイルのシール特性が大幅に低下してしまう。
【0049】
[本発明の一実施形態に係るリング装着治具1]
図6は、本発明の一実施形態に係るリング装着治具1の側面図である。リング装着治具1は、シャフト100及びシールリング200に応じた構成を有し、シールリング200をシャフト100の溝部102に装着するための治具として構成される。
【0050】
以下に詳述するが、リング装着治具1は、シールリング200をシャフト100の溝部102に装着する際に、シールリング200が、その弾性限界を超えて、塑性変形することがないように構成されている。
【0051】
リング装着治具1は、Y軸方向に貫通する貫通口40が設けられた略円筒状に形成されている。リング装着治具1は、小径部10と、接続部20と、大径部30とを具備する。小径部10、接続部20、及び大径部30はY軸方向に並んでいる。大径部30及び貫通口40は、共通のY軸に平行な中心軸C31を有する。なお、貫通口40は、主にリング装着治具1の軽量化のために設けられ、リング装着治具1の必須構成ではない。
【0052】
説明の便宜上、リング装着治具1に、
図6に示す3本のY軸に平行な軸を設定する。すなわち、Z軸方向下端部の第1外周軸P1と、Z軸方向上端部の、中心軸C31について第1外周軸P1に対称な第2外周軸P2と、中心軸C31と第2外周軸P2との間にある第3外周軸P3との3本の軸である。
【0053】
リング装着治具1のZ軸方向下端部では、第1外周軸P1が、小径部10の外周面11、接続部20の外周面21、及び大径部30の外周面31のすべてを通る。リング装着治具1のZ軸方向上端部では、第2外周軸P2が大径部30の外周面31を通り、第3外周軸P3が小径部10の外周面11を通る。
【0054】
本実施形態では、リング装着治具1のY軸方向の寸法が50mmである。小径部10のY軸方向の寸法は45mmであり、接続部20のY軸方向の寸法は3.5mmであり、大径部30のY軸方向の寸法は1.5mmである。小径部10の接続部20とは反対側のY軸方向端部は面取り(C1)されている。
【0055】
図7A及び
図7Bはリング装着治具1の平面図である。
図7Aはリング装着治具1を小径部10側から示し、
図7Bはリング装着治具1を大径部30側から示している。リング装着治具1は、X軸方向に左右対称に形成されている。
【0056】
小径部10は、XZ平面に平行な断面が円形である外周面11を有する。外周面11は、シールリング200の内径と同等か、シールリング200の内径よりやや小さい外径を有する円筒面である。本実施形態では、シールリング200の内径、及び外周面11の外径が、いずれも155mmである。
【0057】
大径部30は、XZ平面に平行な断面が円形である外周面31を有する。外周面31は、シャフト100の係止部103の外径と同等の外径を有する円筒面である。本実施形態では、シャフト100の係止部103の外径、及び外周面31の外径は、いずれも159mmである。
【0058】
接続部20は、小径部10と大径部30との間に配置されている。接続部20は、小径部10の外周面11と、大径部30の外周面31とを接続する外周面21を有する。
【0059】
外周面21は、小径部10の外周面11に接続する第1の端部21aが外周面11と一致し、大径部30の外周面31に接続する第2の端部21bが外周面31と一致するように構成されている。接続部20の外周面21は、第1の端部から第2の端部に向けて連続的に外径が大きくなるように形成されている。
【0060】
図7Aに示すように、小径部10の外周面11と大径部30の外周面31とでは、外径が異なるとともに、中心軸も異なる。
図8は、小径部10の外周面11と大径部30の外周面31との関係について説明するための図である。
【0061】
図8の左図は大径部30の外周面31における第1中心軸C31を示し、
図8の右図は小径部10の外周面11における第2中心軸C11を示している。第2中心軸C11は、第1外周軸P1と第3外周軸P3との中央にある軸であり、第1中心軸C31に対してZ軸方向下方(偏心方向)に距離dだけ偏心している。
【0062】
また、
図8において、小径部10の外周面11が描く円は、大径部30の外周面31が描く円に、Z軸方向下端部において内接している。つまり、大径部30の外周面31と、小径部10の外周面11とは、第1外周軸P1を共通して含んでいる。
【0063】
中心軸C11が中心軸C31に対してオフセットしている距離dは、小径部10の外周面11が描く円の半径(小径部10の外径の半分)と、大径部30の外周面31が描く円の半径(大径部30の外径の半分)との差として決定する。本実施形態では、距離dが2mmである。
【0064】
図9Aはリング装着治具1の
図7AのB−B'線に沿った断面図であり、
図9Bはリング装着治具1の
図7AのC−C'線に沿った断面図である。つまり、
図9Aはリング装着治具1のZ軸方向上端部における断面S1を示し、
図9Bはリング装着治具1のZ軸方向下端部における断面S2を示している。
【0065】
図9Aに示すとおり、断面S1には第2外周軸P2及び第3外周軸P3が通っている。また、
図9Bに示すとおり、断面S2には第1外周軸P1が通っている。
【0066】
図9Bに示すリング装着治具1の断面S2では、小径部10の外周面11と、大径部30の外周面31とのZ軸方向における位置が一致するため、外周面11と外周面31との間に段差が生じていない。したがって、接続部20の外周面21は、外周面11と外周面31とを第1外周軸P1に沿って直線的に接続する。
【0067】
つまり、小径部10の外周面11と、接続部20の外周面21と、大径部30の外周面31とのZ軸方向下端部は第1外周軸P1に沿って連続して並んでいる。
【0068】
一方、
図9Aに示す断面S1では、外周面11と外周面31との間の段差が最大となる。断面S2において、接続部20の外周面21は、小径部10の外周面11と大径部30の外周面31とを緩やかな曲線で接続している。
【0069】
より詳細には、接続部20の外周面21は、小径部10側の凹面22と、大径部30側の凸面23とにより構成される。つまり、接続部20の外周面21は、凹面22が小径部10の外周面11に対して滑らかに接続するとともに、凸面23が大径部30の外周面31に対して滑らかに接続するように構成されている。
【0070】
凹面22及び凸面23の断面Sにおける曲率半径は、外周面11と外周面31との間の段差の大きさなどにより、適宜決定可能である。本実施形態では、凹面22の断面S1における曲率半径は3mmであり、凸面23の断面S1における曲率半径は0.5mmである。
【0071】
図7Aを参照すると、外周面11と外周面31との間の段差は、断面S1から、リング装着治具1の形状に沿って右回り又は左回りに断面S2に近づくにつれて徐々に小さくなっていることがわかる。つまり、外周面11と外周面31との間の段差は、断面S1に近い断面ほど大きく、断面S2に近い断面ほど小さくなる。
【0072】
外周面21を構成する凹面22及び凸面23の曲率半径は、断面S1から断面S2に向けて連続的に大きくなり、断面S2では無限大となる。つまり、リング装着治具1の各断面において接続部20の外周面21が描く線は、断面S1から断面S2に向けて連続的に平坦になり、断面S2では第1外周軸P1が通る直線となる。
【0073】
このように、接続部20の外周面21は、断面S2においてY軸に平行な平行部として構成され、断面S2以外においてY軸に対して傾いている傾斜面として構成されている。この傾斜面のY軸に対する傾きは、Z軸方向下方ほど小さく、Z軸方向上方ほど大きい。
【0074】
図10A及び
図10Bは、シールリング200が取り付けられたリング装着治具1を示している。
図10Aはリング装着治具1の側面図であり、
図10Bはリング装着治具1の平面図である。
【0075】
図10A及び
図10Bに示すように、リング装着治具1の小径部10の外周面11にシールリング200が取り付けられ、シールリング200が小径部10の外周面11によって保持される。
【0076】
なお、
図11に示すように、リング装着治具1の小径部10は、複数のシールリング200を保持可能に構成されている。つまり、リング装着治具1の小径部10には、複数のシールリング200をストックしておくことができる。
【0077】
これにより、リング装着治具1では、小径部10にストックされた複数のシールリング200を、複数のシャフト100に対して連続して装着可能となる。このように、リング装着治具1では、シールリング200のシャフト100への装着を効率的に行うことが可能である。
【0078】
また、小径部10によって保持されるシールリング200の内周面には、小径部10の外周面11が対面している。したがって、
図2Bに示す樹脂リング210の内溝部211が小径部10の外周面11によって塞がれている。このように、小径部10によって保持されたシールリング200では、樹脂リング210の内溝部211からコイルエキスパンダ220が離脱することを防止することができる。
【0079】
リング装着治具1の小径部10によって一度に保持可能なシールリング200の数量は、小径部10のY軸方向の寸法によって決まる。したがって、小径部10のY軸方向の寸法は、一度に保持させるシールリング200の数量に応じて決定することができる。
【0080】
[リング装着治具1の使用方法]
図12A〜
図12Fは、リング装着治具1を用いてシールリング200をシャフト100の溝部102に装着する過程を示す側面図である。ユーザは、リング装着治具1を利用することにより、例えば、手指を用いてシールリング200をシャフト100の溝部102に容易に装着することができる。
【0081】
まず、
図12Aに示すように、
図10A及び
図10Bに示す状態から、シールリング200が、ユーザの手指によって、小径部10の外周面11に沿って接続部20の外周面21の手前まで摺動させられる。そして、リング装着治具1の大径部30がシャフト100の係止部103に対向配置される。
【0082】
次に、
図12Bに示すように、リング装着治具1の中心軸C31と、シャフト100の中心軸C100とが一致するように、リング装着治具1の大径部30がシャフト100の係止部103に接続される。
【0083】
このとき、リング装着治具1の大径部30の外周面31と、シャフト100の本体部101及び係止部103の外周面とが一致する。これにより、第1外周軸P1及び第2外周軸P2が、シャフト100の本体部101及び係止部103の外周面を通るようになる。
【0084】
そして、
図12Cに示すように、シールリング200のZ軸方向下端部(第1部分)が、ユーザの手指によって、第1外周軸P1に沿ってシャフト100の溝部102まで摺動させられ、シャフト100の溝部102に係合させられる。
【0085】
リング装着治具1の外周面11,21,31の下端部は、第1外周軸P1に沿って連続する直線を構成している。そのため、シールリング200のZ軸方向下端部は、リング装着治具1の外周面11,21,31に沿ってスムーズにシャフト100の係止部103まで誘導される。
【0086】
また、シャフト100の係止部103の外周面におけるZ軸方向下端部は、第1外周軸P1におけるリング装着治具1の外周面11,21,31の延長線上にある。そのため、係止部103まで誘導されたシールリング200のZ軸方向下端部は、そのまま第1外周軸P1に沿って係止部103を通過して溝部102に係合する。
【0087】
一方、シールリング200のZ軸方向上端部は、リング装着治具1の外周面21によって係合され、Y軸方向への進行が妨げられる。つまり、第3外周軸P3上にあるシールリング200のZ軸方向上端部は、外周面21の凹面22(
図9A参照)に当接するため、第3外周軸P3に沿って移動することができずに外周面21の凹面22の手前に留まる。
【0088】
したがって、
図12Cに示すシールリング200は、Z軸方向下端部がシャフト100の溝部102に係合し、Z軸方向上端部がリング装着治具1の外周面21に係合することにより、Y軸方向に傾斜した状態となる。
【0089】
シールリング200のZ軸方向下端部は、シャフト100の溝部102に係合させられる過程において、シールリング200のZ軸方向上端部が外周面21によって係合された状態で、ユーザの手指による力を受ける。つまり、シールリング200は、Z軸方向下端部がユーザの手指によって引っ張られ、引き伸ばされる。
【0090】
本実施形態に係るリング装着治具1は、シールリング200のZ軸方向下端部がシャフト100の溝部102に係合させられる過程において、シールリング200の変形が弾性域に収まるように、つまりシールリング200が塑性変形しないように構成されている。
【0091】
次に、
図12Dに示すように、シールリング200は、Z軸方向下端部以外の部分(第2部分)が、Z軸方向下端部に近い位置から順次溝部102内に入るようにユーザの手指からの力を受ける。具体的には、ユーザがシールリング200に対してZ軸方向下方からZ軸方向上方へと手指を這わせる一連の動作によって、シールリング200が順次溝部102に連続的に係合させられてゆく。
【0092】
より詳細には、シールリング200は、Z軸方向下端部から近い順にユーザの手指からY軸方向の力を受けて、リング装着治具1の外周面21に沿って外周面31まで案内され、リング装着治具1の外周面31及びシャフト100の係合部103の外周面に沿ってY軸方向に溝部102まで摺動させられる。
【0093】
リング装着治具1には、Z軸方向下端部を除く全周において、第3外周軸P3が通る外周面11と、第2外周軸P2が通る外周面31との間に段差がある。しかし、外周面21が外周面11から外周面31まで滑らかな曲面で接続しているため、シールリング200は外周面11と外周面31との間の段差をスムーズに乗り越えることができる。
【0094】
また、リング装着治具1における外周面11と外周面31との間の段差は、Z軸方向下端部に近いほど小さく、Z軸方向上端部に近いほど大きい。シールリング200はZ軸方向下端部に近い順に外周面11と外周面31との間の段差を乗り越えるため、シールリング200が乗り越える段差は徐々に大きくなる。したがって、シールリング200は、その過程において、少しずつ引き伸ばされて径が大きくなる。
【0095】
本実施形態に係るリング装着治具1は、シールリング200が外周面11と外周面31との間の段差を乗り越える過程において、シールリング200の変形が弾性域に収まるように、つまりシールリング200が塑性変形しないように構成されている。
【0096】
また、リング装着治具1では、外周面11と外周面31との間の段差が連続的に徐々に変化するため、シールリング200が急激に引き伸ばされて、シールリング200に大きい負荷が加わることがない。したがって、リング装着治具1では、シールリング200が大きい負荷によって塑性変形することが防止される。
【0097】
そして、
図12Eに示すように、最後に、シールリング200のZ軸方向上端部が溝部102に係合させられる。このとき、シールリング200のZ軸方向上端部は、リング装着治具1の外周面21に沿って、第3外周軸P3上にある外周面11から、第2外周軸P2上にある外周面31に案内される。これにより、シールリング200の全周がシャフト100の溝部102に係合し、シールリング200のシャフト100の溝部102への装着が完了する。
【0098】
最後に、
図12Fに示すように、リング装着治具1がシャフト100から取り外される。
【0099】
以上述べたように、本実施形態に係るリング装着治具1は、シールリング200がシャフト100の溝部102に装着される全過程において、シールリング200が塑性変形しないように構成されている。したがって、リング装着治具1を用いてシールリング200をシャフト100の溝部102に装着することにより、シールリング200が塑性変形することを防止することができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0101】
例えば、本実施形態に係るリング装着治具1において、小径部30の中心軸C31が大径部10の中心軸C11に対してZ軸方向下方に偏心していればよく、小径部30と大径部10とでZ軸方向下端部が一致している構成は必須ではない。
【0102】
つまり、リング装着治具1は、Z軸方向下端部にて、小径部30と大径部10との間の段差が最も小さくなるように構成されていればよい。この場合にも、段差の小さいリング装着治具1のZ軸方向下端部をシールリング200が容易に乗り越えることが可能であるため、リング装着治具1は上記と同様の方法で使用可能である。