(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周波数コントローラは、推定されたインダクタンスとの積が一定となるように、前記パルス幅変調器のキャリア周波数を制御することを特徴とする請求項1に記載の産業車両用電源装置。
前記周波数コントローラは、ループゲインが実質的に一定となるように、前記キャリア周波数を設定することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の産業車両用電源装置。
【背景技術】
【0002】
近年のパワーショベルやクレーンをはじめとする建設機械において、上部旋回体の動力源として、油圧モータと交流電動機のハイブリッド型が利用される。ハイブリッド型の旋回動力源は、上部旋回体の加速時において、交流電動機によって油圧モータをアシストし、減速時においては交流電動機によって回生運転を行い、発電エネルギによってバッテリなどの蓄電器を充電する。
【0003】
交流電動機とバッテリ間でエネルギを相互に授受するために、双方向DC/DCコンバータ(昇降圧コンバータともいう)を用いた電源装置が設けられる。
図1は、電源装置100rの基本構成を示す回路図である。電源装置100rは、蓄電器102、DCバス104、双方向DC/DCコンバータ110、コントローラ120を備える。
【0004】
双方向DC/DCコンバータ42の1次側には蓄電器102が接続され、その2次側にはDCバス104が接続される。DCバス104は、負荷200と接続される。負荷200は、電動機およびインバータを含む。電源装置100rからみて、負荷200は、可変の負荷電流Imを生成する可変電流源として作用する。たとえば交流電動機が力行運転するとき、負荷電流Imは正であり、回生運転するとき負荷電流Imは負となる。
【0005】
双方向DC/DCコンバータ110は、インダクタ(リアクトル)L1、平滑キャパシタC1、トランジスタM1、M2を含む。双方向DC/DCコンバータ110のトポロジーは公知であるため説明を省略する。
【0006】
コントローラ120は、上流のコントローラから、DCバス104の電圧(DCリンク電圧)V
DCの目標値を指示する電圧指令Vrを受け、DCリンク電圧V
DCが電圧指令Vrと一致するように、トランジスタM1、M2のスイッチングのデューティ比を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インダクタL1に流れる直流電流が大きくなると磁気飽和によってそのインダクタンスが定格値よりも小さくなる。これをインダクタの直流重畳特性ともいう。
図2は、インダクタの直流重畳特性の一例を示す図である。インダクタンスが低下し始める電流を、直流重畳許容電流I
THという。
【0009】
インダクタL1の両端間に電圧V(t)が印加されたときの電流I
L(t)は式(1)で与えられる。
I
L(t)=1/L・∫V(t)dt …(1)
図3(a)、(b)は、同じ振幅の矩形パルス電圧が印加されたときのコイル電流I
Lを示す波形図である。
図3(a)と(b)とでは、コイル電流I
Lの直流成分I
DCが異なっており、
図1に示すように
図3(b)の直流成分I
DC2に対するインダクタンスLは、
図3(a)の直流成分I
DC1に対するインダクタンスLの略1/3となっている。コイル電流I
Lのリップル成分の振幅は、インダクタンスに反比例するから、
図3(b)では、
図3(a)の3倍のリップルが観測される。
【0010】
従来では、想定されるインダクタに流れる直流電流の最大値を見積もっておき、その最大値より大きな直流重畳許容電流I
THを有するインダクタを選定し、インダクタンスが低下する領域では動作しないように設計するのが一般的であった。しかしながら直流重畳許容電流I
THが大きなインダクタは、大きくまた高価であり、電源装置100rのコスト増の要因になっていた。
【0011】
本発明は、かかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、効率の低下を抑制しつつ、リップルを抑制可能な電源装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、電動機と、電動機を駆動するインバータと、を備える産業車両に搭載される電源装置に関する。電源装置は、蓄電器と、インバータが接続されるDCバスと、1次側に蓄電器が接続され、2次側にDCバスが接続され、1次側と2次側で双方向にエネルギを授受可能に構成された双方向DC/DCコンバータと、双方向DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、を備える。コンバータコントローラは、DCバスに生ずるDCリンク電圧が所定の目標電圧に近づくように値が調節されるデューティ指令値を生成するデューティコントローラと、デューティ指令値に応じたデューティ比を有するパルス信号を生成するパルス幅変調器と、(i)双方向DC/DCコンバータに含まれるインダクタに流れる電流を検出し、(ii)少なくとも検出された電流がインダクタの直流重畳許容電流より大きな範囲において、インダクタの直流重畳特性と検出された電流にもとづきインダクタンスを推定し、インダクタンスが小さくなるにしたがい、パルス幅変調器のキャリア周波数を高くし、(iii)インダクタンスの変化を相殺するようにデューティコントローラのループゲインを調節する周波数コントローラと、を備える。
【0013】
この態様によると、直流重畳許容電流を超える電流範囲において、インダクタンスの低下に反してキャリア周波数を高めることにより、電流リップルを抑制できる。またインダクタンスに流れる電流が直流重畳許容電流より小さな範囲では、キャリア周波数は低くなるため、定常的な電力損失の増大を抑制できる。
【0014】
周波数コントローラは、推定されたインダクタンスとの積が一定となるように、パルス幅変調器のキャリア周波数を制御してもよい。
【0015】
デューティコントローラは、DCリンク電圧が目標電圧に近づくように値が調節される電流指令を生成する電圧コントローラと、双方向DC/DCコンバータに流れるコンバータ電流の検出値が電流指令と一致するように、デューティ指令値を調節する電流コントローラと、含んでもよい。
【0016】
本発明の別の態様も、産業車両に搭載される産業車両用電源装置に関する。産業車両用電源装置は、蓄電器と、インバータが接続されるDCバスと、1次側に蓄電器が接続され、2次側にDCバスが接続され、1次側と2次側で双方向にエネルギを授受可能に構成された双方向DC/DCコンバータと、双方向DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、を備える。コンバータコントローラは、DCバスに生ずるDCリンク電圧が所定の目標電圧に近づくように値が調節されるデューティ指令値を生成するデューティコントローラと、デューティ指令値に応じたデューティ比を有するパルス信号を生成するパルス幅変調器と、双方向DC/DCコンバータに含まれるインダクタに流れる電流を検出し、少なくとも検出された電流が予め定めた所定の第1電流値より小さい範囲では、第1周波数を用い、大きい範囲では第1の周波数より高い第2周波数を用いるように、パルス幅変調器のキャリア周波数を調節する周波数コントローラと、を含む。
【0017】
周波数コントローラは、インダクタに流れる電流が第1電流値より大きい所定の第2電流値を超える範囲では、第2周波数より高い第3周波数を用いるように、パルス幅変調器のキャリア周波数を調節してもよい。
【0018】
周波数コントローラには、インダクタに流れる電流とキャリア周波数の関係が規定されており、検出された電流と関係にもとづいて、キャリア周波数を決定してもよい。
【0019】
周波数コントローラは、ループゲインが実質的に一定となるように、キャリア周波数を設定してもよい。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、効率の低下を抑制しつつ、リップルを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
図4は、実施の形態に係る建設機械の一例であるショベル1の外観を示す斜視図である。ショベル1は、主として走行機構2と、走行機構2の上部に旋回機構3を介して回動自在に搭載された上部旋回体(以下、単に旋回体ともいう)4とを備えている。
【0025】
旋回体4には、ブーム5と、ブーム5の先端にリンク接続されたアーム6と、アーム6の先端にリンク接続されたバケット10とが取り付けられている。バケット10は、土砂、鋼材などの吊荷を捕獲するための設備である。ブーム5、アーム6、及びバケット10は、それぞれブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によって油圧駆動される。また、旋回体4には、バケット10の位置や励磁動作および釈放動作を操作する操作者を収容するための運転室4aや、油圧を発生するためのエンジン11といった動力源が設けられている。エンジン11は、例えばディーゼルエンジンで構成される。
【0026】
図5は、実施の形態に係るショベル1の電気系統や油圧系統などのブロック図である。なお、
図5では、機械的に動力を伝達する系統を二重線で、油圧系統を太い実線で、操縦系統を破線で、電気系統を細い実線でそれぞれ示している。
【0027】
ショベル1は電動発電機12および減速機13を備えており、エンジン11及び電動発電機12の回転軸は、共に減速機13の入力軸に接続されることにより互いに連結されている。エンジン11の負荷が大きいときには、電動発電機12が自身の駆動力によりエンジン11の駆動力を補助(アシスト)し、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。一方、エンジン11の負荷が小さいときには、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電を行う。電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータによって構成される。電動発電機12の駆動と発電との切りかえは、ショベル1における電気系統の駆動制御を行うコントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
【0028】
減速機13の出力軸にはメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されており、メインポンプ14には高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。コントロールバルブ17は、ショベル1における油圧系の制御を行う装置である。コントロールバルブ17には、
図4に示した走行機構2を駆動するための油圧モータ2A及び2Bの他、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続されており、コントロールバルブ17は、これらに供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御する。
【0029】
パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26(操作手段)が接続されている。操作装置26は、旋回用電動機21、走行機構2、ブーム5、アーム6、及びバケット10を操作するための操作装置であり、操作者によって操作される。操作装置26には、油圧ライン27を介してコントロールバルブ17が接続され、また、油圧ライン28を介して圧力センサ29が接続される。操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を操作者の操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
【0030】
圧力センサ29は、操作装置26に対して旋回機構3を旋回させるための操作が入力されると、この操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。この電気信号は、コントローラ30に入力され、旋回用電動機21の駆動制御に用いられる。
【0031】
コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置によって構成され、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUが実行することにより実現される。コントローラ30は、各種センサ及び操作装置26等からの操作入力を受けて、インバータ18A、18B、18C及び蓄電手段101等の駆動制御を行う。
【0032】
油圧モータ310は、ブーム5が下げられるときにブームシリンダ7から吐出される油によって回転されるように構成されており、ブーム5が重力に従って下げられるときのエネルギを回転力に変換するために設けられている。油圧モータ310は、コントロールバルブ17とブームシリンダ7の間の油圧管7Aに設けられている。ブーム回生用発電機300で発電された電力は、回生エネルギとしてインバータ18Bを経て蓄電手段101に供給される。
【0033】
旋回用電動機21は、
図4の旋回機構3に設けられ、上部旋回体4を回動させる。旋回用電動機21は交流電動機であり、旋回体4を旋回させる旋回機構3の動力源である。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。旋回用インバータ18Cは、蓄電手段101からの電力を受け、旋回用電動機21を駆動する。また旋回用電動機21の回生運転時には、旋回用電動機21からの電力を蓄電手段101に回収する。
【0034】
旋回用電動機21が力行運転を行う際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が旋回減速機24にて増幅され、旋回体4が加減速制御され回転運動を行う。また、旋回体4の慣性回転により、旋回減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させる。
【0035】
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出する。レゾルバ22が回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構3の回転角度及び回転方向が導出される。メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、コントローラ30からの指令によって、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構3に機械的に伝達する減速機である。
【0036】
続いて電気系統について詳細に説明する。電気系統は主として、コントローラ30、電源装置100、インバータ18A〜18Cを備える。
【0037】
(アシスト)
アシスト用のインバータ18Aの2次側(出力)端には、電動発電機12が接続される。インバータ18Aは、コントローラ30の一部であるアシスト用インバータコントローラ30Aからの指令にもとづき、電動発電機12の運転制御を行う。
【0038】
(ブーム回生)
インバータ18Bの2次側(出力)端には、ブーム回生用発電機300が接続されている。上述のようにブーム回生用発電機300は、ブーム5が重力の作用により下げられるときに、位置エネルギを電気エネルギに変換する電動作業要素である。インバータ18Bは、コントローラ30のブーム回生用のインバータコントローラ30Bによって制御され、ブーム回生用発電機300が発生する電気エネルギを直流電力に変換し、電源装置100に回収する。
【0039】
(旋回)
旋回用電動機21、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、旋回減速機24、旋回用インバータ18Cおよびコントローラ30の一部である旋回用のインバータコントローラ30Cは、電動旋回装置500を構成する。
旋回用電動機21は、PWM(Pulse Width Modulation)制御指令により旋回用インバータ18Cによって交流駆動される。旋回用電動機21としては、例えば、磁石埋込型のIPMモータが好適である。
【0040】
旋回用インバータコントローラ30Cは、操作入力に応じた回転速度指令を受け、レゾルバ22により検出される旋回用電動機21の旋回速度が、回転速度指令と一致するように、旋回用インバータ18Cを制御する。
【0041】
(電源)
蓄電手段101とコントローラ30の一部であるコンバータコントローラ30Dは、電源装置100を構成する。蓄電手段101は、例えば蓄電池であるバッテリと、バッテリの充放電を制御する昇降圧コンバータ(双方向DC/DCコンバータ)と、正極及び負極の直流配線からなるDCバスとを備えている(図示せず)。蓄電器としては、リチウムイオン電池等の充電可能な2次電池、キャパシタ、そのほか電力の授受が可能なその他の形態の電源を用いてもよい。DCバスには、インバータ18A〜インバータ18Cそれぞれの1次側(直流入力)が接続されている。コントローラ30Dは、DCバスに生ずるDCリンク電圧が所定の電圧レベルとなるように、双方向DC/DCコンバータを制御する。電源装置100は、電動発電機12等が力行運転する際には、双方向DC/DCコンバータを昇圧動作させ、電動発電機12等が回生運転する際には、双方向DC/DCコンバータを降圧動作させ、電動発電機12が発生した電力を蓄電器に回収する。
【0042】
すなわち、インバータ18Aが電動発電機12を力行運転させる際には、必要な電力をバッテリ及び昇降圧コンバータからDCバスを介して電動発電機に供給する。また、電動発電機12を回生運転させる際には、電動発電機12により発電された電力をDCバス及び昇降圧コンバータを介してバッテリに充電する。なお、昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧値、バッテリ電圧値、及びバッテリ電流値にもとづき、コンバータコントローラ30Dによって行われる。これにより、DCバスを、予め定められた一定電圧値に蓄電された状態に維持することができる。
【0043】
以上がショベル1の全体構成である。続いて、実施の形態に係る電源装置100について詳細に説明する。
【0044】
図6は、実施の形態に係る電源装置100の回路図である。電源装置100は、蓄電器102、DCバス104、双方向DC/DCコンバータ110、コントローラ120を備える。
蓄電器102は、電池や大容量キャパシタである。DCバス104には、インバータ18A〜18Cが接続されうるが、理解の容易化と説明の簡潔化のため、
図6には、インバータ18Aのみを示している。
【0045】
双方向DC/DCコンバータ110の1次側には蓄電器102が接続され、2次側にはDCバス104が接続される。双方向DC/DCコンバータ110は、1次側と2次側で双方向にエネルギを授受可能に構成される。電動発電機12が力行運転するときには、双方向DC/DCコンバータ110は力行動作となり、蓄電器102から、インダクタL1およびトランジスタM1を介して充電電流を供給し、平滑キャパシタC1を充電する。電動発電機12が回生運転するときには、双方向DC/DCコンバータ110は回生動作となり、電動発電機12が生成する回生電流を、トランジスタM1およびインダクタL1を介して、蓄電器102に回収する。
【0046】
コントローラ120は、双方向DC/DCコンバータ110を制御する。コントローラ120は、DCバス104に生ずるDCリンク電圧V
DCが所定の目標電圧Vrに近づくように、双方向DC/DCコンバータ110を制御する。たとえばコントローラ120は、A/Dコンバータ122、124、ゲートドライバ126、128、デジタルコントローラ130を備える。
【0047】
A/Dコンバータ122は、DCリンク電圧V
DCの検出値をデジタル値S1に変換する。A/Dコンバータ124は、双方向DC/DCコンバータ110に流れるコンバータ電流、すなわち平滑キャパシタC1の充放電電流Icの検出値をデジタル値S2に変換する。デジタルコントローラ130は、ソフトウェア制御によって、トランジスタM1、M2のオン、オフを指示するパルス信号S4_1、S4_2を生成する。ゲートドライバ126、128は、パルス信号S4_1、S4_2に応じてトランジスタM1、M2をスイッチングする。
【0048】
デジタルコントローラ130は、デューティコントローラ140、パルス幅変調器142、周波数コントローラ144を備える。デューティコントローラ140は、DCバス104に生ずるDCリンク電圧V
DCが所定の目標電圧Vrに近づくように値が調節されるデューティ指令値S3を生成する。パルス幅変調器142は、デューティ指令値S3に応じたデューティ比を有するパルス信号S4_1、S4_2を生成する。デューティコントローラ140およびパルス幅変調器142の構成は特に限定されず、公知技術を用いればよい。
【0049】
周波数コントローラ144は、(i)双方向DC/DCコンバータ110に含まれるインダクタL1に流れる電流Icを検出する。そして周波数コントローラ144は、(ii)少なくとも検出された電流IcがインダクタL1の直流重畳許容電流I
THより大きな範囲において、インダクタL1の直流重畳特性と、検出された電流Ic(S2)の直流成分にもとづきインダクタンスLを推定し、インダクタンスLが小さくなるにしたがい、パルス幅変調器142のキャリア周波数fcを高くする。また周波数コントローラ144は、(iii)インダクタンスLの変化を相殺するように、デューティコントローラ140のループゲインgを調節する。
【0050】
たとえば周波数コントローラ144には、直流重畳特性、すなわちインダクタンスLと直流電流I
DCの関係L=f(I
DC)が、数式あるいはテーブルとして保持される。そして直流重畳特性を参照し、検出されたコイル電流Icの直流レベルI
DCに対応するインダクタンスLを取得する。
【0051】
図2に示すように、検出された電流(重畳電流)Icの直流成分I
DCがインダクタL1の直流重畳許容電流I
THより小さな範囲においては、インダクタンスLは定格値L
0であり、実質的に一定とみなすことができる。したがって、Ic<I
THの範囲では、キャリア周波数fcを一定値fc
0としてもよい。
この場合、Ic>I
THの範囲においては、
fc=L
0×fc
0/L
としてもよい。なお、周波数コントローラ144は、fcとインダクタンスLの関係fc=g(I
DC)を保持してもよい。
fc=g(I
DC)=L
0×fc
0/f(I
DC)
【0052】
好ましくは、周波数コントローラ144は、キャリア周波数fcと、推定されたインダクタンスLとの積(fc×L)が一定となるように、キャリア周波数fcを制御する。
【0053】
図7は、
図6の電源装置100の制御ブロック図である。デューティコントローラ140は、電圧コントローラ132、電流コントローラ138、利得調節部139を含む。
【0054】
電圧コントローラ132は、DCリンク電圧V
DCの検出値S1が、電圧指令Vrと一致するように値が調節される電流指令Irを生成する。たとえば電圧コントローラ132は、PI補償器で構成される。PI制御に代えて、P制御あるいはPID制御を用いてもよい。
【0055】
電流コントローラ138は、双方向DC/DCコンバータ110に流れるコンバータ電流Icの検出値S2が電流指令Irと一致するように、デューティ指令値S3の値を調節する。電流コントローラ138は、電圧コントローラ132と同様にPI補償器が好適であるが、P補償器あるいはPID補償器を用いてもよい。
【0056】
利得調節部139は、利得gが可変に構成されており、ループゲインが一定となるように、言い換えれば、利得gとインダクタンスLの積が一定となるように、周波数コントローラ144により調節される。利得調節部139は、AVR(Automatic Voltage Regulator)の一部であってもよい。
【0057】
以上が電源装置100の構成である。続いてその動作を説明する。
図8(a)、(b)は、
図6の電源装置100の動作波形図である。
図8(a)には、I
DC<I
THのときのコイル電流波形I
L(t)が、
図8(b)には、I
DC>I
THのときのコイル電流波形I
L(t)が示される。
【0058】
図8(a)に示すように、コイル電流I
Lの平均値、すなわち重畳電流I
DCが、許容電流I
THより低いときには、インダクタンスLは定格値L
0を有し、コイル電流I
Lのリップルは、定格値L
0に応じた振幅となる。
【0059】
図8(b)に示すように、コイル電流I
Lの平均値、すなわち重畳電流I
DCが、許容電流I
THより大きくなると、インダクタンスLは定格値L
0から低くなる。これにより、コイル電流I
Lの傾きは大きくなるが、周波数コントローラ144によってキャリア周波数fcが高められるため、コイル電流I
Lのリップルは、
図8(a)と同程度に維持される。また周波数コントローラ144によって、利得調節部139の利得が調節されるため、ループゲインが一定に維持され、したがって系の応答性および安定性も不変である。
【0060】
このように、実施の形態に係る電源装置100によれば、直流重畳許容電流I
THを超える電流範囲において、インダクタンスLの低下に反してキャリア周波数fcを高めることにより、電流リップルを抑制できる。またインダクタL1に流れる電流Icが直流重畳許容電流I
THより小さな範囲では、キャリア周波数fcは低くなるため、定常的な電力損失の増大を抑制できる。
【0061】
加えて電源装置100によれば以下の効果が得られる。従来では、想定されるインダクタに流れる直流電流I
DCの最大値を見積もっておき、その最大値より大きな直流重畳許容電流I
THを有するインダクタを選定し、インダクタンスが低下する領域では動作しないように設計するのが一般的であった。これに対して実施の形態に係る電源装置100では、インダクタを、直流重畳許容電流I
THを超える範囲で使用することが可能となるため、直流重畳許容電流I
THが小さな部品を選定することができ、インダクタの低コスト化および小型化を実現することができる。
【0062】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0063】
実施の形態では、Ic<I
THの範囲においても、キャリア周波数fcおよびインダクタンスLを一定としたが、この範囲においてもキャリア周波数fcをインダクタンスLに応じて変化させてもよい。
【0064】
実施の形態では、本発明に係るハイブリッド型建設機械の一例として、ショベル1を示したが、本発明のハイブリッド型建設機械の他の例としては、旋回機構を備えるリフティングマグネット車両やクレーン等が挙げられる。